説明

映像信号処理装置、映像表示システム、及び映像信号処理方法

【課題】安価な構成で、ディスプレイモニタ等に被写体の色を正確に再現して表示することを可能とする。
【解決手段】モニタ120に入力される映像信号を処理する映像信号処理装置110は、光源136の照明スペクトル特性に関連する照明特性情報と、モニタ120の表示特性に関連するモニタ特性情報を入力する。映像信号変換部114は、照明特性情報とモニタ特性情報とに基づき、入力される映像信号に対して色変換の処理を行ってモニタ120に映像表示信号を出力する。その結果、モニタに表示される映像の色補正がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーディスプレイ装置を用いて被写体の正確な色再現を可能とする映像表示の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体の正確な色再現をカラーディスプレイ装置で可能とする技術として、種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、カラーディスプレイ装置の色特性(ディスプレイ・プロファイル)と、当該のカラーディスプレイ装置の置かれる環境の照明条件(観察照明情報)とを取得し、ネットワークを介して画像サーバから送られて来る画像データに対して上述した観察照明情報及びディスプレイ・プロファイルに基づいて調整をし、映像を表示するものが開示されている。このような構成によって、例えばネットワークを介しての電子ショッピングに際し、顧客がカラーディスプレイ装置を観視している照明環境下で商品を見たときにどのような色調となるかをシミュレートすることが可能となり、注文して顧客の元に届けられた商品の色が予想していた物と異なっていたと云った理由で返品される不都合を抑制することが可能となる。
【0003】
また、上記の技術とは別に、カラーディスプレイ装置の色特性及び当該のカラーディスプレイ装置の置かれる環境の照明条件を計測して、当該のカラーディスプレイ装置に表示される映像の色調を調整するものとして「アイワン」(登録商標)などが知られている。「アイワン」は、いわゆるカラーマネジメントのためのツールであり、カラーディスプレイ装置のメーカーの違い、機種の違い、あるいは個体差等による発色の違いを減少せしめ、同一の画像データに基づく表示映像の色調をカラーディスプレイ装置の違いによらず同じに見えるようにするためのものである。カラーディスプレイ装置のキャリブレーションに際して、色彩計を内蔵するセンサユニットをカラーディスプレイ装置上に吸着(密着)させて、カラーディスプレイ装置に表示される色標の色再現性を計測し、ディスプレイ・プロファイルを得る。
【0004】
このセンサユニットにはまた、カラーディスプレイ装置の置かれる場所の照明光(環境光)を計測するセンサを有する。上述のようにして得られたディスプレイ・プロファイルと、環境光の計測結果とから、表示される映像の色調を調節し、カラーディスプレイ装置の色特性がニュートラルとなるようにするとともに、以下に説明するように環境光の影響を減ずる。すなわち、カラーディスプレイ装置に表示される映像を観視する観視者の眼が環境光に順応した場合(本明細書中ではこれを「環境光順応」と称する)や、カラーディスプレイ装置の管面で環境光が反射された場合(本明細書中ではこれを「管面反射」と称する)、カラーディスプレイ装置上に表示される映像の色調がニュートラルな状態から外れて見えてしまうことがある。環境光の計測結果に基づいて、表示される映像の色調を調節することにより、上述した環境光の影響を減ずることが可能となる。
【特許文献1】特開2001−60082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した構成では、ディスプレイ・プロファイルを計測するためのセンサと、環境光を計測するためのセンサとを備える必要があり、高価となる。また、カラーディスプレイ装置(モニタ)の使用にあたってカラーディスプレイ装置の上述したようなキャリブレーションを行うことは、ユーザにとって煩わしいことであることは否めない。また、上述したカラーマネジメントのためのツールが正しく使用されないと、カラーディスプレイ装置に表示される映像の色調が不所望のものとなる可能性もある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するための手段を提供することを目的としており、ディスプレイの色特性や環境光の特性を検出するためのセンサ等を用いることなく安価に、かつユーザに複雑な操作を強いることなく、被写体の色を正確に再現して表示することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明の第1の態様は、モニタ装置に入力される映像信号を処理するための映像信号処理装置に適用され、
前記モニタ装置の周辺を照明する照明装置から、前記照明装置の照明スペクトル特性に関連する情報である照明特性情報を入力する照明特性情報入力部と、
前記モニタ装置から、前記モニタ装置の表示特性に関連する情報であるモニタ特性情報を入力するモニタ特性情報入力部と、
前記照明特性情報と前記モニタ特性情報とに基づき、前記映像信号の色変換処理をして前記モニタ装置に表示される映像の色補正をする映像信号変換部と
を有することを特徴とすることにより上述した課題を解決する。
(2) 本発明の別の態様は、モニタ装置に入力される映像信号を処理するための映像信号処理方法に適用され、
前記モニタ装置の周辺を照明する照明装置から、前記照明装置の照明スペクトル特性に関連する情報である照明特性情報を入力することと、
前記モニタ装置から、前記モニタ装置の表示特性に関連する情報であるモニタ特性情報を入力することと、
前記照明特性情報と前記モニタ特性情報とに基づき、前記映像信号の色変換処理をして前記モニタ装置に表示される映像の色補正をすることと
を有することを特徴とする。
(3) 本発明のさらに別の態様は、映像表示システムに適用され、
映像を表示するモニタ装置であって、前記モニタ装置の表示特性に関連する情報であるモニタ特性情報を出力可能なモニタ装置と、
前記モニタ装置の周辺を照明するための照明装置であって、前記照明装置の照明スペクトル特性に関連する情報である照明特性情報を出力可能な照明装置と、
前記照明特性情報を入力する照明特性情報入力部と、
前記モニタ特性情報を入力するモニタ特性情報入力部と、
前記照明特性情報入力部及び前記モニタ特性情報入力部でそれぞれ入力される前記照明特性情報及び前記モニタ特性情報に基づき、入力される映像信号に対して色変換処理をして、前記モニタ装置に表示される映像の色補正をするように構成される映像信号処理部と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モニタ装置の周辺を照明する照明装置から照明装置の照明スペクトル特性に関連する情報である照明特性情報を入力し、モニタ装置から、前記モニタ装置の表示特性に関連する情報であるモニタ特性情報を入力して、照明特性情報とモニタ特性情報とに基づき、映像信号の色変換処理をしてモニタ装置に表示される映像の色補正をする構成を有することにより、単純かつ安価な構成でありながらモニタ装置に表示される映像の色再現性を高めることが可能となる。すなわち、モニタ装置の表示特性を検出するためのセンサや、モニタ装置の周辺を照明する照明装置のスペクトル特性を検出するためのセンサを設けることなく、モニタ装置に表示される映像の色再現性を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
− 第1の実施の形態 −
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る映像表示システム100の概略的構成を示すブロック図である。映像表示システム100は、モニタ120と、モニタ120の周辺(室内)を照明するための照明装置130と、入力される映像信号を処理してモニタ120に出力するための映像信号処理装置110とを有する。
【0010】
照明装置130は、照明光を出射する光源136と、光源136の照明スペクトル特性に関連する情報である照明特性情報を記憶する照明特性情報記憶部132と、照明特性情報を含む信号を電波、光、あるいは音波などの無線技術を用いて出力可能に構成される送信部134とを有する。照明特性情報は一例として、380nmから780nmまでの可視波長帯域における、光源136のスペクトル特性を表すデータとすることができる。例えば、上記可視波長帯域において1nmごとのスペクトル特性が記録されるデータとした場合、2ないし4バイトのデータが401組集められたものとなる。
【0011】
光源136は、従来からある照明装置と同様に適宜交換が可能に構成される。照明特性情報記憶部132には、装着された光源136の種類(例:白熱電球、ハロゲンランプ、LED、あるいは高演色タイプ、昼光色タイプ、タングステン光タイプ等の照明特性を有する蛍光ランプなど)、メーカー、製品種別等に対応して照明特性情報が記憶される。本発明の実施の形態に係る照明装置がランプカバー等を有するものである場合、これらのランプカバー等は被照明部に向かう照明光のスペクトル特性に影響を及ぼすことが無い、あるいは影響があっても僅かであることが望ましい。しかし、上記カバー等が照明光のスペクトル特性に影響を及ぼす場合には、照明特性情報記憶部132に記憶される照明特性情報にランプカバー等の分光特性を加味しておくか、送信部134から出力される信号に含まれる照明特性情報に上記分光特性を加味しておくことが望ましい。
【0012】
モニタ120は、LCD、CRT、PDP、FED(表面電界ディスプレイ)、有機EL、プロジェクタ等のうちのいずれかを用いた映像表示部126と、モニタ120に入力される映像表示信号に基づく映像が映像表示部126に表示されるように制御をする映像表示制御部124と、モニタ120の表示特性に関連する情報であるモニタ特性情報を記憶するモニタ特性情報記憶部122とを有する。モニタ特性情報としては、映像表示部126の色度や階調特性等を含むことができる。
【0013】
映像信号処理装置110は、照明特性情報受信部112と、モニタ特性情報受信部116と、映像信号変換部114とを有する。照明特性情報受信部112は、照明装置130の送信部134から出力される電波、光、あるいは音波等による信号を受信し、受信した信号中から照明特性情報を分離して映像信号変換部114に出力する。モニタ特性情報受信部116は、モニタ特性情報記憶部122に記憶されるモニタ特性情報を含む信号をモニタ120から有線又は無線の形態で受信し、受信した信号中からモニタ特性情報を分離して映像信号変換部114に出力する。
【0014】
映像信号変換部114は、上記のように照明特性情報受信部112及びモニタ特性情報受信部116から入力される照明特性情報及びモニタ特性情報に基づき、入力される映像信号に後述する色変換の処理をしてモニタ120に映像表示信号を出力する。映像信号には、映像を表示するのに必要な画像データに加えて、画像が撮影されたときの撮影照明情報や入力機器情報等がヘッダ情報などと共に含まれる。撮影照明情報中には撮影時の照明光データ、すなわち撮影時の照明光スペクトルや照明光の色温度に関連するデータが含まれる。入力機器情報には撮影に用いたカメラ(画像入力装置)の分光感度特性、撮影レンズのF値、焦点距離等に関連するデータが含まれる。ヘッダ情報には画像データのフォーマットバージョン、ヘッダサイズ、ファイル形式、画像サイズ等の情報が含まれる。本明細書中では、上記撮影照明情報、入力機器情報等を総称して撮影特性情報と称する。
【0015】
図2に映像信号変換部114の詳細構成を示し、この映像信号変換部114に含まれる色変換処理部208及びモニタ色変換部210の詳細構成を図3に示す。
【0016】
図2に示されるように、映像信号変換部114は、色変換データ演算部202と、モニタ色変換データ演算部204と、映像特性情報分離部206と、色変換処理部208と、モニタ色変換部210とを有する。撮影特性情報分離部206は、入力される映像信号を処理して、上述した撮影特性情報と画像データとを分離する。なお、以下の説明においては、撮影特性情報分離部で分離された画像データは、Mバンドの画像データであるものとして説明をする。
【0017】
色変換データ演算部202は、撮影特性情報分離部206から入力した撮影特性情報と、照明特性情報受信部112から入力した照明特性情報とから、画像データの色変換処理に際して用いる演算パラメータ(以降、これを「演算パラメータ1」と称する)を求め、求めた演算パラメータ1を色変換処理部208に出力する。
【0018】
色変換処理部208は、撮影特性情報分離部206から入力するMバンド画像データに対して、色変換データ演算部202から入力した演算パラメータ1に基づいて色変換の処理をしてX、Y、Z表色系の映像信号、すなわち測色値映像信号を生成する。この処理の詳細については後で図3を参照して説明する。なお、以下では色変換処理部208がX、Y、Zの測色値映像信号を生成する例のみについて説明するが、色変換処理部208によってMバンドの画像データが変換されて生成される信号としてはsRGBやxvYCCの表色系を用いるものであっても良い。
【0019】
モニタ色変換データ演算部204は、モニタ特性情報受信部116から入力したモニタ特性情報から、モニタ色変換部210で測色値映像信号に色変換処理をする(後述)際に用いる演算パラメータ(以降、これを「演算パラメータ2」と称する)を求め、求めた演算パラメータ2をモニタ色変換部210に出力する。
【0020】
モニタ色変換部210は、色変換処理部208から入力するX、Y、Zの測色値映像信号をN原色の映像表示信号に分解(変換)するとともに、モニタ装置の色度及びガンマ特性に対応する補正処理を行う。この処理の詳細については後で図3を参照して説明する。
【0021】
以上に説明したように、映像信号変換部114は、入力される映像信号からMバンドの画像データを分離し、撮影特性情報及び照明特性情報に基づいて求められた演算パラメータ1を用いてMバンド画像データに色変換処理をして測色値映像信号を生成し、モニタ特性情報に基づいて求められた演算パラメータ2を用いて測色値映像信号をN原色の映像表示信号に分解して色度及びガンマの補正をし、モニタ120へ出力する。なお、本発明においては、上記Mバンド及びN原色のM、Nの値は一般に3以上を想定している。
【0022】
図3は、色変換処理部208及びモニタ色変換部210の詳細を説明するブロック図である。色変換処理部208に入力される演算パラメータ1により、入力されるMバンドの各画像データに対応するルックアップ・テーブル(LUT)1,LUT2,…,LUT M (以下、これらのLUTを「LUT 302」と総称する)及びマトリクス演算部304内のM×3マトリクスが生成される。LUT302により、Mバンド画像データのそれぞれに対していわゆるトーンカーブの補正がなされてカメラのレベル・ガンマ特性の影響が除去される。続いて、マトリクス演算部304でMバンド画像データに対してマトリクス演算がなされ、測色値映像信号X、Y、Zに変換される。上述した色変換処理部208における処理によって、被写体が照明装置130によって照明されたときの色合いがシミュレートされるように色変換される。すなわち、観視者が映像を観視するためのモニタが設置されている環境を照明する照明装置の照明特性が、表示される映像の色に反映され、モニタの設置される環境下に被写体があった場合にどのような色合いに見えるかをシミュレートすることができる。また、上記の色変換処理に際して、先に説明した環境光順応や管面反射の影響を低減することも可能となる。
【0023】
モニタ色変換部210に入力される演算パラメータ2により、入力される3バンド(X、Y、Z)の映像信号を原色1から原色Nの映像表示信号に分解するための色分解演算部314内のデータテーブルと、色分解演算部314から出力されるN原色の各信号のそれぞれに対応するルックアップ・テーブル(LUT)1,LUT2,…,LUT N(以下、「LUT 312」と称する)とが生成される。色分解演算部314内に生成されるデータテーブルは、出力される映像表示信号が3原色のものである場合には3×3のマトリクスとすることができる。出力される映像表示信号の原色数が4以上の場合には、モニタ色変換部210に入力される3バンドの映像信号から4色以上の原色の映像表示信号を生成するためのルックアップ・テーブルが色分解演算部314内に生成される。LUT312は、モニタ120のガンマ特性を補正するためのものである。
【0024】
以上で説明した映像信号処理装置110は、モニタ120の上部等に設置されるような、いわゆるセットトップボックスとして実施することができる。この場合、従来からあるケーブルテレビ用のセットトップボックスに映像信号処理装置110を内蔵することもできるし、映像信号処理機能だけを有するセットトップボックスとすることもできる。
【0025】
映像信号処理装置110はまた、モニタ120に接続されて映像を記録、再生可能な機器に内蔵することもできる。映像を記録、再生できる機器としては、DVD、HD−DVD、ブルーレイディスク等の再生専用器、ハードディスク、DVD、HD−DVD、ブルーレイディスク等の録画・再生器などを含む。
【0026】
以上では映像信号処理装置110がモニタ120の外部に設置される、いわゆる外付け機器として構成される例について説明したが、モニタ120に映像信号処理装置が内蔵されるものであっても良い。その例を、図4及び図5を参照して説明する。なお、図4に示される映像表示システム100Aにおいて、図1に示されるものと同様の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。また、基本的に同じ機能を有する構成要素ではあるが、内部の構成に違いがある場合や設置形態等に若干の違いがあるだけのものには同じ符号にA,B等のアルファベットを付加して詳細な説明を省略する。
【0027】
図4において、照明特性情報受信部112Aはモニタ120Aに内蔵あるいは取り付けられている。その一例を図5に示す。図5に示すモニタ120Aにおいて、照明特性情報受信部112Aはモニタ120Aの筐体の天面部分に取り付けられていて、照明装置130の送信部134から出力される信号を受信可能に構成される。図4に戻り、映像信号変換部114はモニタ120Aに内蔵されているので、図1の映像信号処理装置110が有していたモニタ特性情報受信部116は省略され、モニタ特性情報記憶部122は映像信号変換部114に直接接続されている。
【0028】
図1に示されるもののように映像信号処理装置110が外付け機器として構成される場合、既に買いそろえた映像機器に映像処理装置110を買い足して接続をするだけで色再現性に優れた映像表示システムを構築することが可能となり、最小限の出費で映像表示システムの能力を高めることが可能となる。一方、図4に示されるように映像処理装置がモニタ120Aに内蔵される形態では、ユーザが装置の接続方法、接続箇所について迷うことも無くなるとともに映像表示システム全体としての製造コストを低減し、かつ美観に優れた映像表示システムを提供することが可能となる。
【0029】
以上の実施の形態の説明では、照明装置130の送信部134から信号が出力されるタイミングについて触れていないが、10秒、30秒、1分、10分と云った、所定の時間間隔で出力することが可能である。あるいは、照明装置130の側に受信器を、映像信号処理装置110の側に発信器を、それぞれ追加して設け、映像信号処理装置110から照明特性情報を要求する信号が発せられるのに応じて照明装置130から当該の情報を出力する構成とすることも可能である。
【0030】
以上では、照明装置130と映像信号処理装置110との間、あるいは照明装置130とモニタ120Aとの間で照明特性情報が授受される際に、無線技術が用いられる例について説明したが、有線方式で情報の授受が行われるものであってもよい。この場合、電力線通信(PLC)の技術を用いて情報の授受を行うことも可能である。
【0031】
以上ではまた、例えば図1に示されるように光源136は一つ、ないしは一種類のものとして説明したが、モニタ120が設置される部屋に複数の種類の照明装置が設置される場合には本発明を以下で図6を参照して説明するようなかたちで実施することも可能である。図6に示される映像表示システム100Bは、互いに異なる照明スペクトルを有する光源136A及び136Bを有する。例えば、光源136Aはメインライト用として備えられる昼光色の蛍光灯とし、光源136Bはダウンライト用として備えられるハロゲンランプとすることができる。なお、図6に示される映像表示システム100Bにおいて、図1に示される映像表示システム100が有するのと同様の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。また、同じ機能を有する構成要素ではあるが、内部の構成に違いがある場合や設置形態等に違いがあるだけのものには同じ符号にA,B等のアルファベットを付加して、詳細な説明を省略する。
【0032】
光源136A及び136Bは、照明コントローラ140に接続される。照明コントローラ140は、調光装置138と、照明特性情報記憶部132Aと、送信部134Aとを有する。光源136A及び136Bの照明スペクトル情報は、照明特性情報記憶部132Aに記憶される。光源136A及び136Bは、モニタ120の観視者が調光装置138を操作することにより、それぞれの点灯・消灯を制御し、そして点灯時には光量を調節することが可能に構成される。また、光源136A及び136Bの双方を点灯させた状態で、それぞれの光源の照度比率を任意に変えることもできるように構成される。それぞれの光源136A、136Bの点灯・消灯状態、照度に関連する情報が送信部134Aに出力される。照明コントローラ140の送信部134Aと、映像信号処理装置110Aの映像信号変換部114とは、有線及び無線のいずれによって接続されていても良いが、図6に示す例においては、送信部134Aと映像信号変換部114とはPLC等の有線通信方式で接続されている。送信部134Aは、調光装置138から出力される上記情報と、照明特性情報記憶部132Aから出力される各光源136A及び136Bの照明スペクトル情報とから、モニタ120の周辺を照明する光源全体としての照明スペクトルを算出し、算出された照明スペクトルに対応する照明特性情報を映像信号変換部114に出力する。映像信号処理装置110Aは、入力される照明特性情報及びモニタ特性情報に基づいて、先に説明した方法によって映像信号に色変換の処理を行う。なお、図6を参照しての説明においては照明装置130Aが2種類の光源136A及び136Bを有する例を示したが、3種類以上の光源を有するものとすることも可能である。
【0033】
− 第2の実施の形態 −
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る映像表示システム100Cの概略的構成を示すブロック図である。図7に示される映像表示システム100Cにおいて、図1に示される第1の実施の形態に係る映像表示システム100が有するのと同様の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。また、同じ機能を有する構成要素ではあるが、内部の構成に違いがある場合や設置形態等に違いがあるだけのものには同じ符号にA,B等のアルファベットを付加して詳細な説明を省略する。
【0034】
図1に示される第1の実施の形態に係る映像表示システム100は、照明装置130の送信部134と映像信号処理装置110の照明特性情報受信部112との間で照明特性情報が授受され、モニタ120のモニタ特性情報記憶部122と映像信号処理装置110のモニタ特性情報受信部116との間でモニタ特性情報が授受されるものであった。そのため、授受される情報の量が数kバイトと比較的多くなる。これに対して第2の実施の形態に係る映像表示システムにおいては、照明光ID情報及びモニタID情報、すなわち照明装置130Bに装着される光源(電球や蛍光管等)136やモニタ120Bのメーカー、型番等を特定可能な製品特定情報のみが授受されるのでデータ量を大幅に低減することが可能である。
【0035】
以下、図1に示す第1の実施の形態に係る映像表示システム100との違いを中心にして第2の実施の形態に係る映像表示システム100Cについて説明をする。
【0036】
照明装置130Bは、装着される光源136の製品特定情報である照明光ID情報を記憶する照明光ID情報記憶部132Bを有する。モニタ120Bは、当該のモニタ120Bの製品特定情報であるモニタID情報を記憶するモニタID情報記憶部122Aを有する。これらの照明光ID情報及びモニタID情報は、ユーザが入手することのできる製品の種類を、一意に特定することのできる情報である。
【0037】
映像信号処理装置110Bが有する照明光ID情報受信部112B、モニタID情報受信部116A及び情報抽出部170について説明する。照明光ID情報受信部112Bは、上記の送信部134から無線の通信手段によって照明光ID情報を含む信号を受信し、その信号中から照明光ID情報を分離して情報抽出部170に出力する。モニタID情報受信部116Aは、上記のモニタ120BからモニタID情報を含む信号を受信し、その信号からモニタID情報を分離して情報抽出部170に出力する。
【0038】
情報抽出部170は、入力した照明光ID情報及びモニタID情報に基づいて以下に説明するように照明特性情報及びモニタ特性情報を抽出する。すなわち、情報抽出部170は、インターネット等を介して、遠隔地にあるデータセンター200にアクセスし、照明光ID情報及びモニタID情報をデータセンター200の情報検索部202に送出する。データセンター200には、照明光ID情報とその照明光ID情報で特定される光源(電球、蛍光管等)に対応する照明特性情報、そしてモニタID情報とそのモニタID情報で特定されるモニタに対応するモニタ特性情報が網羅的に記憶されるデータベース204を有する。情報検索部202は、データベース204にアクセスして、情報抽出部170から送出された照明光ID情報及びモニタID情報に対応する照明特性情報及びモニタ特性情報を検索し、得られた照明特性情報及びモニタ特性情報を情報抽出部170に送信する。
【0039】
情報抽出部170は、入力された照明特性情報及びモニタ特性情報を映像信号変換部114に出力し、映像信号変換部114は入力される映像信号に対して、図1を参照して第1の実施の形態で説明したのと同様の処理を行う。
【0040】
以上に説明したように、第2の実施の形態に係る映像表示システム100Cにおいては映像信号処理装置110Bと、照明装置130B及びモニタ120Bとの間で照明光ID情報、モニタID情報が授受されるだけであるので、照明装置130Bと映像信号処理装置110B、モニタ120Bと映像信号処理装置110B、それぞれの間で行われる情報の授受に際してのデータ量を減じることが可能となる。また、照明光ID情報記憶部132B及びモニタID情報記憶部122Aの記憶容量も少ないもので済むようになるので、これらの照明装置130B及びモニタ120Bの構成を単純化することが可能となる。
【0041】
以上では情報抽出部170が遠隔地にあるデータセンター200にアクセスする例について説明したが、このデータセンター200内のデータベース204及び情報検索部202を映像信号処理装置110Bに内蔵するものであってもよい。この場合、例えば地上ディジタル放送の信号に重畳して送られて来るデータをデータベース内に逐次貯え、新しい照明装置(光源)やモニタが発売され、あるいは製造中止となるのに対応してデータベースを常に最新のものにアップデートすることも可能となる。あるいは、映像信号処理装置110Bをインターネットに接続し、所定のデータセンターから新たに発売される照明装置やモニタに対応するデータを取得するように構成してもよい。
【0042】
また、ビデオオンデマンド(VOD)サービス等で、映像信号がインターネット等を介してデータセンターから送出されるような場合には、データセンターに映像信号処理装置110Bに相当するものを備えることも可能である。その場合、データセンターは照明光ID情報及びモニタID情報をクライアント、すなわち映像信号を受ける側から受信し、それらの情報に基づいて映像信号の色変換処理をデータセンターの側で行う。色変換処理の行われた映像信号を受信することにより、クライアント側では映像信号変換部114での処理が不要となる。
【0043】
さらに、IPv6の普及に伴って、各機器がインターネットに接続され、それぞれに固有のIPアドレスが付与されたときには、上記の照明ID情報、モニタID情報に代えてIPアドレスを用い、そのIPアドレスからモニタ特性情報を検索・抽出することも可能となる。また、固有のIPアドレスが付与されていない場合であっても、MACアドレス等、機器のそれぞれに対して付与される固有のアドレスや識別コードが付与されている場合、それらのアドレスやコードをもとに、対応する照明特性情報やモニタ特性情報を検索・抽出することも可能となる。
【0044】
本発明の第2の実施の形態に係る映像表示システム100Cにおいても、第1の実施の形態で説明したのと同様に、照明装置130Bと映像信号処理装置110Bとの間で有線の方式で照明光ID情報を含む信号が授受されるものであってもよい。また、映像信号処理装置110Bをモニタ120B内に内蔵するものであってもよい。さらにまた、第2の実施の形態に係る映像表示システム100Cにおいても、図6を参照して説明したのと同様に、照明スペクトルの互いに異なる複数種類の光源を有するものとすることができる。
【0045】
− 第3の実施の形態 −
照明装置の光源(蛍光管等)は、使用を開始してからの時間の経過とともに照明スペクトルが変化することが知られている。照明スペクトルの変化する要因としては、以下に説明する二つが主なものとして挙げられる。すなわち、コールドスタート後のウォームアップによる変化と、新品状態で最初に使用を開始してからの累積点灯時間が増すことに伴い、光源が劣化することによる変化である。
【0046】
図8には、コールドスタートしてから、すなわち暫く使われずにいて室温程度にまで冷えた状態の光源が点灯を開始してからの時間が経過するのに伴い、光源から放射される光の輝度(照明輝度)が変化する様子の一例を示してある。図8の例では、コールドスタートしてから30分程度で最大輝度に達し、その後輝度は安定する。この輝度の変化に伴って、照明スペクトルも変化する。モニタに関しても同様の特性を有している。図8に示す例ではコールドスタート後、30分程度で定常状態に達しているが、これは室温(光源やモニタ周囲の温度)の影響も受け、室温が高い程コールドスタート直後の照明輝度は増し、定常状態に達するまでの時間も短くなる傾向にある。
【0047】
図9には、光源を新品(出荷時)の状態で最初に使用を開始してから点灯させた時間の累積値(本明細書では、これを単に「累積点灯時間」と称する)が増すのに伴い、光源が劣化して、放射される光の照明スペクトルが変化する様子の一例を示している。一般に、新品(出荷時)の状態から累積点灯時間が増すのにつれて輝度が低下する傾向にあるが、輝度が変化するとともに発光スペクトルも変化する。図9に示される例では、使用開始時、すなわち累積点灯時間が0に近い状態で3つの大きなピークA、B、Cを有しているが、累積点灯時間が1,000時間、10,000時間と増加するにつれて、全体として輝度が低下するのに加えてピークBがピークA及びピークCが低下するのに比べて大きなレートで低下している。このように累積点灯時間が増すのに伴って発光スペクトルが変化することから、この変化を考慮してモニタに表示される映像の色補正をすることが望ましい。
【0048】
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る映像表示システム100Dの概略的構成を示すブロック図である。図10に示される映像表示システム100Dにおいて、図1に示される第1の実施の形態に係る映像表示システム100が有するのと同様の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。また、同じ機能を有する構成要素ではあるが、内部の構成に違いがある場合や設置形態等に違いがあるだけのものには同じ符号にA,B等のアルファベットを付加して詳細な説明を省略する。
【0049】
図10に示される映像表示システム100Dでは、上述したような、いわば経時的及び温度的な要因を排除すべく、照明特性情報受信部112から出力される照明特性情報と、モニタ特性情報受信部116から出力されるモニタ特性情報とのそれぞれに対して以下で詳述するように補正をする。
【0050】
図10に示される映像信号処理装置110Cは、図1に示される映像信号処理装置110に対して、照明特性情報補正部118とモニタ特性情報補正部119とをさらに有する点で異なる。そして、照明特性情報が照明特性情報受信部112から照明特性情報補正部118に出力され、モニタ特性情報がモニタ特性情報受信部116からモニタ特性情報補正部119に出力される。照明特性情報補正部118で照明特性情報が補正されて補正後の照明特性情報が後で詳述するように映像信号変換部114に出力される。また、モニタ特性情報補正部119でモニタ特性情報が補正されて補正後のモニタ特性情報が後で詳述するように映像信号変換部114に出力される。
【0051】
図11は、照明特性情報補正部118の概略的内部構成を示すブロック図である。照明特性情報補正部118は、補正データテーブル302と補正係数算出部304とを有する。補正データテーブル302には、累積点灯時間、コールドスタート後の点灯時間、及び光源周囲の温度に応じて光源136の照明スペクトル情報に補正を加えるためのデータが記憶される。一例としては、1nm、10nm、あるいは100nmといった波長間隔で各波長に対応する補正係数が記憶される。そして、照明特性情報補正部118に入力される照明特性情報のうち、累積点灯時間、コールドスタート後の点灯時間、及び光源周囲の温度に関連する情報が補正データテーブル302に入力され、これらの情報に対応する補正係数が抽出されて補正係数算出部304に出力される。補正係数算出部304は、照明特性情報補正部118に入力される照明特性情報のうち、光源136の照明スペクトルに関連する情報を上述した補正係数とともに入力し、照明スペクトルに関連する情報を補正する処理を行う。一例として、補正係数算出部304は照明スペクトルに関連する情報に補正係数を乗ずる処理を行う。このようにして、照明特性情報補正部118からは補正後の照明特性情報(図2及び図3の演算パラメータ1に対応)が映像信号変換部114に出力される。
【0052】
図12は、モニタ特性情報補正部119の概略的内部構成の一例を示すブロック図である。モニタ特性情報補正部119は、補正データテーブル306と補正係数算出部308とを有する。補正データテーブル306には、モニタを新品の状態から使用を開始してから、実際に作動させた時間の累積値(本明細書では、これをモニタの「累積使用時間」と称する)、コールドスタート後の経過時間、及びモニタ周囲の温度に応じてモニタ120のモニタスペクトル情報に補正を加えるためのデータが記憶される。一例として、モニタが通常のRGB入力モニタである場合には、赤、青、緑の3色の発光スペクトル情報が記憶される。例えばモニタがRGB入力のLCDモニタである場合、バックライト用として蛍光管が利用されることが多い。そのような場合、累積使用時間が増すにつれて、バックライトは図9に示されるような照明スペクトル特性の変化をする。従って、照明特性情報補正部118の補正データテーブル302に記憶されるのと同様の補正係数を記憶することができる。そして、モニタ特性情報補正部119に入力される照明特性情報のうち、累積使用時間、コールドスタート後の経過時間、及びモニタ周囲の温度に関連する情報が補正データテーブル306に入力され、この情報に対応する補正係数が抽出されて補正係数算出部308に出力される。補正係数算出部308は、モニタ特性情報補正部119に入力されるモニタ特性情報のうち、モニタ120のモニタスペクトルに関連する情報を上述した補正係数とともに入力し、モニタスペクトルに関連する情報を補正する処理を行う。一例として、補正係数算出部308はモニタスペクトルに関連する情報に補正係数を乗ずる処理を行う。このようにして、モニタ特性情報補正部119からは補正後のモニタ特性情報(図2及び図3の演算パラメータ2に対応)が映像信号変換部114に出力される。
【0053】
図13は、モニタ特性情報補正部の概略的内部構成の、別の一例を示すブロック図である。モニタ特性情報補正部119Aは、補正データテーブル306Aと補正係数算出部308Aとを有する。補正データテーブル306Aには、モニタの累積使用時間、コールドスタート後の経過時間、及びモニタ周囲の温度に応じてモニタ120のモニタ色度情報及びモニタ階調特性情報に補正を加えるためのデータが記憶される。モニタ色度情報は、一例として、モニタが通常のRGB入力モニタである場合には、赤、青、緑の各色のXYZ値に対応する。モニタ階調特性情報は、モニタへの入力信号の大きさに対する出力(表示輝度)の関係を表す情報であり、ガンマ特性情報とも称される。赤、青、緑の各色ごとにこの階調特性(ガンマ特性)は異なる。モニタ特性情報補正部119Aに入力されるモニタ特性情報のうち、累積使用時間、コールドスタート後の経過時間、及びモニタ周囲の温度に関連する情報が補正データテーブル306Aに入力され、この情報に対応する補正係数が抽出されて補正係数算出部308Aに出力される。補正係数算出部308Aは、モニタ特性情報補正部119Aに入力されるモニタ特性情報のうち、モニタ120のモニタ色度及びモニタ階調特性に関連する情報を上述した補正係数とともに入力し、モニタ色度及びモニタ階調特性に関連する情報を補正する処理を行う。一例として、補正係数算出部308Aはモニタ色度に関連する上記XYZ値の情報に対して、補正データテーブル306Aから出力された補正係数でもって加減算、あるいは乗除算を行うことができる。同様に、補正係数算出部308Aは、モニタ色度情に関連する情報と、モニタ階調特性に関連する情報とに対して、補正データテーブル306Aから出力された補正係数でもって加減算によって変更を加えることができる。このようにして、モニタ特性情報補正部119Aから補正後のモニタ特性情報(図2及び図3の演算パラメータ2に対応)を映像信号変換部114に出力することもできる。
【0054】
ここで、上述した光源136の累積点灯時間及びコールドスタート後点灯時間並びにモニタ120の累積使用時間及びコールドスタート後経過時間の計時方法について説明する。映像信号処理装置110Cが常時オンの状態に維持されている場合には、映像信号処理装置110Cは照明装置130及びモニタ120の動作状態を監視することが可能である。例えば照明特性情報受信部112及びモニタ特性情報受信部116のそれぞれで照明装置130及びモニタ120の動作状態を監視し、光源136の累積点灯時間及びコールドスタート後点灯時間並びにモニタ120の累積使用時間及びコールドスタート後経過時間を計時して、その計時結果を照明特性情報補正部118及びモニタ特性情報補正部119に出力することができる。この場合、観視者が光源136やモニタ120を新しいものに交換したときには映像信号処理装置110Cに備えられるスイッチやリモートコントローラ等(不図示)を操作して上記の計時結果を初期化することが望ましい。
【0055】
図14は、上述した光源の累積点灯時間及びコールドスタート後点灯時間を計時するための経過時間計測部139を照明装置130Cが有する例を示すブロック図である。図14に示す照明装置130Cは、照明ID情報読み取り装置135と経過時間計測部139と、送信部134Bとを有する。照明ID情報読み取り装置135は、光源136Cに付されている照明ID情報137を読み取り可能に構成されている。光源136Cに付される照明ID情報137が文字、バーコード、二次元バーコード等である場合には、照明ID情報読み取り装置135としてはカメラモジュール等の画像入力可能な装置を用いることが可能である。あるいは、光源136Cに付される照明ID情報137がICタグ(RFIDタグ)のようなものである場合、照明ID情報読み取り装置135としてはRF信号を受信可能なリーダとすることが可能である。さらに、照明装置130Cに装着可能な光源136Cの種類が数種類に限られる実施の形態においては、照明ID情報読み取り装置135としてマイクロスイッチやフォトリフレクタ等を用い、光源136Cに照明ID情報137として設けられるノッチや突起、あるいは反射物等の有無やパターン等を検出して光源136Cの種類を特定可能に構成されていてもよい。
【0056】
照明ID情報読み取り装置135から出力される照明ID情報は、経過時間計測部139に入力される。経過時間計測部139は、照明ID情報読み取り装置135から出力される情報の有無に基づいて光源136Cが交換されたか否かを判定することができる。すなわち、照明ID情報読み取り装置135で読み取られた照明ID情報が変化した場合、あるいは照明ID情報の読み取りが所定時間以上、例えば10秒以上にわたって不能となり、その後照明ID情報の読み取りが可能となった場合、経過時間計測部139は、光源136Cが新しい物に交換されたと判定することが可能である。経過時間計測部139はまた、光源136Cが最後に消灯されてから次に点灯開始となった時点までの経過時間(インターバル)に基づき、そのインターバルが例えば15分以上であった場合に光源136Cはコールドスタートしたと判定することができる。経過時間計測部139は、この判定結果に基づいて、光源136Cの累積点灯時間及びコールドスタート後点灯時間を計時し、計時結果を照明ID情報とともに送信部134Bへ出力する。このとき、不図示の温度センサで検出された照明装置130C(光源136C)周囲の温度に関連する情報も送信部134Bへ出力される。送信部134Bは、照明ID情報、累積点灯時間、コールドスタート後経過時間、及び温度に関連する情報を含む信号を予め定められた時間間隔で出力する。図14に示される例においては、無線によって上記信号が出力される様子が示されているが、PLC等の有線通信の手段を用いて上記信号を出力するものであってもよい。
【0057】
なお、図10、図12及び図13を参照してのモニタ特性情報補正部119(119A)の説明において、モニタ用の経過時間計測部について詳しく触れていないが、上記経過時間計測部139と同様の構成をモニタ120内に設けて累積使用時間及びコールドスタート後経過時間を計時し、その計時結果を、モニタ特性情報記憶部122、モニタ特性情報受信部116を経てモニタ特性情報補正部119へ出力することができる。
【0058】
以上に説明した本発明の第3の実施の形態に係る映像表示システム100Dにおいても、第1の実施の形態で説明したのと同様に、照明装置130と映像信号処理装置110Cとの間で有線の方式で信号が授受されるものであってもよい。また、映像信号処理装置110Cをモニタ120内に内蔵するものであってもよい。さらにまた、第3の実施の形態に係る映像表示システム100Dにおいても、図6を参照して説明したのと同様に、照明スペクトルの互いに異なる複数種類の光源を有するものとすることができる。
【0059】
以上に説明した第1から第3の実施の形態においては、モニタの設置される環境下に被写体があった場合にどのような色合いに見えるかをシミュレートするように映像信号変換部114が照明特性情報に基づいて映像信号に色変換の処理を行う例について説明した。しかし、照明特性情報に基づく色変換の処理として、上記のシミュレーションは行わずに、先に説明した環境光順応や管面反射の影響のうち、少なくともいずれかの影響を低減するためだけの処理を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る映像信号処理の技術は、テレビジョン受像器、ビデオモニタ、コンピュータ用のモニタ、そしてデータ・プロジェクタなどの画像投影装置等に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る映像表示システムの概略的構成を説明するブロック図である。
【図2】映像信号変換部の内部構成例を説明するブロック図である。
【図3】色変換処理部及びモニタ色変換部の内部構成例を説明するブロック図である。
【図4】映像信号処理装置がモニタ内に組み込まれる例を説明するブロック図である。
【図5】照明特性情報受信部をモニタ上部に設置する例を説明する図である。
【図6】異なる種類の光源を複数有する場合の構成例を説明するブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る映像表示システムの概略的構成を説明するブロック図である。
【図8】照明装置をコールドスタートさせてからの経過時間と照明輝度との関係の一例を説明するグラフである。
【図9】照明装置を最初に使い始めてからの累積点灯時間が変化するのに伴い、照明スペクトルが変化する様子を例示するグラフである。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る映像表示システムの概略的構成を説明するブロック図である。
【図11】照明特性情報補正部の内部構成例を説明するブロック図である。
【図12】モニタ特性情報補正部の内部構成例を説明するブロック図である。
【図13】モニタ特性情報補正部の内部構成の別例を説明するブロック図である。
【図14】照明装置内に光源を使用開始してからの経過時間を計測する経過時間計測部を設ける例を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0062】
100、100A、100B、100C、100D … 映像表示システム
110、110A、110B、110C … 映像信号処理装置
112、112A … 照明特性情報受信部
112B … 照明光ID情報受信部
114 … 映像信号変換部
116、116A … モニタ特性情報受信部
118 … 照明特性情報補正部
119 … モニタ特性情報補正部
120、120A、120B … モニタ
122 … モニタ特性情報記憶部
122A … モニタID情報記憶部
124 … 映像表示制御部
126 … 映像表示部
130、130A、130B、130C … 照明装置
132、132A … 照明特性情報記憶部
132B … 照明ID情報記憶部
134、134A、134B … 送信部
136、136A、136B、136C … 光源
138 … 調光装置
135 … 照明ID情報読み取り装置
137 … 照明ID情報
139 … 経過時間計測部
170 … 情報抽出部
200 … データセンター
204 … データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニタ装置に入力される映像信号を処理するための映像信号処理装置であって、
前記モニタ装置の周辺を照明する照明装置から、前記照明装置の照明スペクトル特性に関連する情報である照明特性情報を入力する照明特性情報入力部と、
前記モニタ装置から、前記モニタ装置の表示特性に関連する情報であるモニタ特性情報を入力するモニタ特性情報入力部と、
前記照明特性情報と前記モニタ特性情報とに基づき、前記映像信号の色変換処理をして前記モニタ装置に表示される映像の色補正をする映像信号変換部と
を有することを特徴とする映像信号処理装置。
【請求項2】
前記照明特性情報入力部は、前記照明装置から無線式又は有線式で前記照明特性情報を入力可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記照明装置が、照明スペクトル特性の互いに異なる複数種類の照明装置を含み、前記照明特性情報入力部は、前記複数種類の照明装置のうち、点灯中の照明装置の照明特性情報を入力するように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記照明特性情報は、前記照明装置の製品種別を特定可能な照明ID情報であり、
前記照明ID情報とその照明スペクトル特性との対応が網羅的に記憶されるデータベースにアクセスして前記照明ID情報に対応する照明スペクトル特性を検索して抽出する情報検索抽出部をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
前記照明装置は、光源が交換可能に構成されており、
前記照明装置はまた、装着されている光源に記録又は添付されている照明ID情報を読み取り、読み取った照明ID情報を出力可能に構成されることを特徴とする請求項4に記載の映像信号処理装置。
【請求項6】
前記照明装置の累積点灯時間、前記照明装置がコールドスタートしてからの経過時間、及び前記照明装置の周囲における温度を検出した結果に基づいて、前記映像信号の色変換処理に際して用いる変換パラメータを補正する照明特性情報補正部をさらに有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の映像信号処理装置。
【請求項7】
前記照明装置が、前記照明装置の累積点灯時間及びコールドスタートしてからの経過時間を検出するための照明用計時部を有することを特徴とする請求項6に記載の映像信号処理装置。
【請求項8】
前記照明装置は、光源が交換可能に構成されており、前記照明用計時部は、前記光源が新しい物に交換された後、初めて点灯を開始したときに前記累積点灯時間が初期化されるように構成されることを特徴とする請求項7に記載の映像信号処理装置。
【請求項9】
前記モニタ装置の累積使用時間、コールドスタートしてからの経過時間、及び前記モニタ装置の周囲における温度を検出した結果に基づいて、前記映像信号の色変換処理に際して用いる変換パラメータを補正するためのモニタ特性情報補正部をさらに有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の映像信号処理装置。
【請求項10】
前記モニタ装置が、前記モニタ装置の累積使用時間及びコールドスタートしてからの経過時間を検出するためのモニタ用計時部を有することを特徴とする請求項9に記載の映像信号処理装置。
【請求項11】
モニタ装置に入力される映像信号を処理するための映像信号処理方法であって、
前記モニタ装置の周辺を照明する照明装置から、前記照明装置の照明スペクトル特性に関連する情報である照明特性情報を入力することと、
前記モニタ装置から、前記モニタ装置の表示特性に関連する情報であるモニタ特性情報を入力することと、
前記照明特性情報と前記モニタ特性情報とに基づき、前記映像信号の色変換処理をして前記モニタ装置に表示される映像の色補正をすることと
を有することを特徴とする映像信号処理方法。
【請求項12】
映像を表示するモニタ装置であって、前記モニタ装置の表示特性に関連する情報であるモニタ特性情報を出力可能なモニタ装置と、
前記モニタ装置の周辺を照明するための照明装置であって、前記照明装置の照明スペクトル特性に関連する情報である照明特性情報を出力可能な照明装置と、
前記照明特性情報を入力する照明特性情報入力部と、
前記モニタ特性情報を入力するモニタ特性情報入力部と、
前記照明特性情報入力部及び前記モニタ特性情報入力部でそれぞれ入力される前記照明特性情報及び前記モニタ特性情報に基づき、入力される映像信号に対して色変換処理をして、前記モニタ装置に表示される映像の色補正をするように構成される映像信号処理部と、
を有することを特徴とする映像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−252515(P2008−252515A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91069(P2007−91069)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】