説明

映像信号処理装置及び映像信号の処理方法

【課題】線順次伝送される色差信号を同時化して復調するに際して、不足している色差信号を隣接ラインの色差信号の合成によって生成する際の混合比率を適切に調整する。
【解決手段】比率算出部1555は、C(n+1)及びC(n−1)の差分絶対値D1と閾値Th1との比較によって、C(n+1)とC(n−1)の類似度を判定する。そして、当該類似度が所定の基準より小さいと判定される場合に、比率算出部1555は、C(n+2)及びC(n)の差分絶対値D2に対するC(n)及びC(n−2)の差分絶対値D3の相対的な大きさに応じて、C(n+1)及びC(n−1)の混合比率を規定するパラメータMを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色差信号の伝送に線順次式を採用しているSECAM方式等の映像信号から色差信号を同時化して出力する映像信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン方式の1つであるSECAM方式は、2つの色差信号Cr及びCbを線順次式で伝送する。より具体的に述べると、SECAM方式では、それぞれ異なる周波数を有する2つの色副搬送波を使用する。これら2つの色副搬送波は、色差信号Cr及びCbのいずれかによって周波数変調される。以下では、2つの色副搬送波を色差信号Cr又はCbによって周波数変調して得られる2つの変調信号を搬送色差信号DR及びDBと呼ぶ。SECAM方式では、搬送色差信号DR及びDBが、1ライン毎に交互に伝送される。なお、SECAM方式はコンポジット方式であるから、搬送色差信号DR及びDBは、輝度信号Y多重された後にコンポジット映像信号として伝送される。
【0003】
SECAM方式のコンポジット映像信号(以下SECAM信号と呼ぶ)を受信して再生画像を生成するためには、2つの色差信号Cr及びCbの同時化が必要となる(例えば、特許文献1〜3を参照)。ここで、同時化とは、線順次伝送される色差信号を受信し、不足する一方の色差信号をライン毎に生成する処理である。最も原始的な同時化方法の1つは、1ライン前の色差信号によって着目ラインの不足している色差信号を補間する方法である。また、他の原始的な同時化方法には、上下に隣接する2ラインの色差信号の平均値によって、着目ラインの不足している色差信号を補間する方法がある。
【0004】
上述した原始的な同時化方法では、色差信号の垂直解像度の低下が生じてしまう。このため改良された同時化方法として、色差信号の垂直方向の相関(垂直相関)の大きさに応じて上下ラインの色差信号の混合比を調節し、当該混合比で混合された色差信号によって着目ラインの不足する色差信号を補間する方法が知られている(特許文献1を参照)。
【0005】
特許文献1は、線順次伝送される色差信号の同時化処理を行う映像信号処理装置について開示している。以下では、特許文献1の装置の動作について、図4を参照しながら説明する。図4は線順次伝送される色差信号を示している。以下では、同時化の対象ライン(着目ライン)を第nラインとする。図4の例では、Cr(n)が第nラインで伝送されているため、同時化によって生成される補間色差信号はCb(n)である。
【0006】
特許文献1の装置は、着目する第nラインの不足している色差信号Cb(n)を、上下隣接ラインの色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の混合によって生成する。このとき、特許文献1の装置は、線順次で伝送される色差信号のライン間での相関に基づいて、Cb(n+1)及びCb(n−1)の混合比率を変更する。
【0007】
さらに、特許文献1の装置は、第n−1ラインと第nラインの間(図4のL1)又は第nラインと第n+1ラインの間(図4のL2)のいずれで色調変化が生じているのかを判別するために、Cb(n+1)及びCb(n−1)の相関と、Cr(n)及びCr(n−2)の相関を共に利用する。具体的には、Cb(n+1)及びCb(n−1)の相関が小さく、かつCr(n)及びCr(n−2)間の相関が小さい場合には、Cb(n−1)の混合比率を相対的に小さくし、Cb(n+1)の混合比率を相対的に大きくする。この場合、第n−1ラインと第nラインの間(図4のL1)に大きな色調変化が存在すると推定されるためである。一方、Cb(n+1)及びCb(n−1)間の相関が小さく、かつCr(n)及びCr(n−2)の相関が大きい場合には、Cb(n−1)の混合比率を相対的に大きくし、Cb(n+1)の混合比率を相対的に小さくする。
【特許文献1】特公平6−83458号公報
【特許文献2】特開2006−108779号公報
【特許文献3】特開平6−54338号公報
【特許文献4】特開2002−58043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、特許文献1は、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の混合比率を決定するために、Cb(n+1)及びCb(n−1)の相関と、Cr(n)及びCr(n−2)の相関を共に利用することを開示している。しかしながら、特許文献1は、混合比率を具体的にどのように決定するかについて開示していない。
【0009】
また、特許文献1は、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の混合比率を決定するためにCr(n)及びCr(n−2)間の相関値を用いている。しかし仮に、ある基準を用いてCr(n−2)及びCr(n)間の相関が大きいと判断した場合であっても、実際はCr(n)及びCr(n+2)間の相関の方が大きい場合もある。そのため、特許文献1の開示のみでは、Cr(n−2)とCr(n)の相関の大小を判定するための基準を適切に設けることができず、Cb(n+1)及びCb(n−1)の混合比率を適切に調整することが困難であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様にかかる映像信号処理装置は、遅延部、相関値生成部、混合比率決定部、信号合成部、及び出力部を含む。前記遅延部は、線順次伝送される2種の色差信号を含む映像信号C(n+2)を1乃至4水平期間遅延させた映像信号C(n+1)乃至C(n−2)を生成する。前記相関値生成部は、前記映像信号C(n+1)とC(n−1)の類似度を示す第1の相関値、前記映像信号C(n+2)とC(n)の類似度を示す第2の相関値、及び前記映像信号C(n)とC(n−2)の類似度を示す第3の相関値を生成する。前記混合比率生成部は、前記第1の相関値と予め定められた値との比較によって前記映像信号C(n+1)とC(n−1)の類似度が所定の基準より小さいと判定される場合に、前記第2の相関値に対する前記第3の相関値の相対的な大きさに応じて、前記映像信号C(n+1)及びC(n−1)の混合比率を生成する。前記信号合成部は、前記混合比率に基づいて前記映像信号C(n+1)及びC(n−1)を混合する。最後に、前記出力部は、前記信号合成部の出力信号及び前記映像信号C(n)を、同時化された前記2種の映像信号として出力する。
【0011】
上述したように、本発明の第1の態様にかかる映像信号処理装置は、前記第2の相関値(前記映像信号C(n+2)とC(n)の類似度を示す)に対する前記第3の相関値(前記映像信号C(n)とC(n−2)の類似度を示す)の相対的な大きさに応じて、前記映像信号C(n+1)及びC(n−1)の混合比率を生成する。このため、映像信号C(n+1)及びC(n−1)の相関が小さい場合に、これらの混合比率を適切に調節することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、線順次伝送される色差信号を同時化して復調するに際して、不足している色差信号を隣接ラインの色差信号の合成によって生成する際の混合比率を適切に調整でき、色差信号の垂直解像度の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0014】
<発明の実施の形態1>
本実施の形態にかかる映像信号処理装置1は、SECAM方式のコンポジット映像信号CVBSを入力し、輝度信号Yと2種類の色差信号Cr及びCbとを分離して出力する。図1は、本実施の形態にかかる映像信号処理装置1の構成を示すブロック図である。以下では、図1に示した各構成要素について説明する。
【0015】
A/D変換器10は、アナログコンポジット映像信号CVBSを所定のシステムクロックによりサンプリングする。同期処理部11は、A/D変換器10によってサンプリングされたデータを入力し、垂直同期信号Vsync及び水平同期信号Hsyncを検出する。
【0016】
Y/C分離部12は、輝度信号Yと搬送色信号DR及びDBを分離する。分離された輝度信号Yは、遅延回路13によって所定の遅延を与えられた後に出力処理部16に供給される。一方、搬送色信号DR及びDBは、色復調部14に供給される。
【0017】
色復調部14は、搬送色信号DR及びDBから色差信号Cr及びCbを復調する。ただし、SECAM方式では、色差信号Cr及びCbは線順次でライン毎に交互に伝送される。このため、色復調部14の出力する信号には、ライン毎にCr及びCbが交互に含まれている。以下では、色復調部14から出力される同時化処理前の色差信号を"線順次色差信号"と呼ぶ。
【0018】
同時変換部15は、ライン毎に不足している色差信号を隣接ラインの色差信号を用いて生成し、2種類の色差信号をライン毎に出力する。なお、同時変換部15の構成と信号処理内容の詳細については後述する。
【0019】
出力処理部16は、輝度信号Y、色差信号Cr及びCbを入力し、これらに対する視覚的な補正処理、サンプリングレート変換などの各種画像処理を実行する。
【0020】
続いて以下では、同時変換部15の構成と信号処理内容の詳細について説明する。同時変換部15は、色復調部14から入力される線順次色差信号を4水平期間遅延させ、合計5ラインの線順次色差信号を用いて同時化処理を行う。
【0021】
図2は、同時変換部15の構成例を示すブロック図である。図2において、遅延回路151〜154は、それぞれ1水平期間だけ入力信号を遅延させる。なお、説明の便宜のため、図2の同時変換部15に入力される線順次色差信号を第(n+2)ライン目の色差信号Cr(n+2)とする。よって、遅延回路151〜154の出力は、それぞれCb(n+1)、Cr(n)、Cb(n−1)、Cr(n−2)となる。
【0022】
混合比率決定部155は、5ラインの色差信号を入力し、後述する信号合成部156における色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の混合比率を規定するパラメータMを生成する。
【0023】
信号合成部156は、混合比率決定部155にから供給されるパラメータMに基づいて色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)を混合する。混合によって生成された色差信号は、第nラインにおいて不足している色差信号Cb(n)の補間信号として選択部157に供給される。例えば、パラメータMを第(n−1)ライン目の色差信号Cb(n−1)の混合比率を示す0以上1以下の値とした場合、信号合成部156は以下の(1)式に示す演算によって色差信号Cb(n)を生成すればよい。
【数3】

【0024】
選択部157は、水平同期信号Hsyncに基づいて同期処理部11から出力されるタイミング信号に応じて動作し、色復調部14から供給された第nラインの線順次色差信号Cr(b)と、補間によって生成された第nラインの色差信号Cb(n)を出力処理部16に供給する。
【0025】
続いて、混合比率決定部155の具体的な構成例と、パラメータMの具体例について図3を参照しながら説明する。図3は、混合比率決定部155の構成例を示すブロック図である。
【0026】
図3において、差分絶対値生成部1551は、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)を入力し、これらの差分絶対値D1を生成する。同様に、差分絶対値生成部1552は、色差信号Cr(n+2)及びCr(n)の間の差分絶対値D2を生成する。また、差分絶対値生成部1553は、色差信号Cr(n)及びCr(n−2)の間の差分絶対値D3を生成する。差分絶対値D1〜D3は、以下の(2)〜(4)式により表される。ところで、差分絶対値D1〜D3は、2つの色差信号間の類似度、つまり相関の大きさを表す相関パラメータの1つである。例えば、差分絶対値D1が大きいほど、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の類似度は小さく、相関が小さいことを意味する。
D1=|Cb(n+1)−Cb(n−1)| (2)
D2=|Cr(n+2)−Cr(n)| (3)
D3=|Cr(n)−Cr(n−2)| (4)
【0027】
比較部1554は、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の類似度(相関)が予め定められた基準値より大きいか否かを判定する。具体的には、図3に示すように、比較部1554は、差分絶対値D1を予め定められた閾値Th1と比較し、比較結果Aを出力すればよい。例えば、差分絶対値D1が閾値Th1より大きい場合にA=1とし、差分絶対値D1が閾値Th1以下である場合にA=0とすればよい。
【0028】
比率算出部1555は、差分絶対値D2及びD3並びに比較結果Aを入力し、これらに基づいてパラメータMを計算する。パラメータMの算出手順の具体例を以下に示す。比率算出部1555は、比較結果Aを参照し、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の類似度(相関)が予め定められた基準値より大きい場合に、パラメータMを1/2とする。具体的には、比較結果A=0であるときに、パラメータMを1/2とすればよい。上述した(1)式から明らかであるように、M=1/2であるとき、補間信号Cb(n)は色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の平均値となる。
【0029】
一方、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の類似度(相関)が予め定められた基準値より小さい場合、比率算出部1555は、パラメータMをD2/(D2+D3)とする。つまり、比率算出部1555は、パラメータMを以下の(5)式により算出する。
【数4】

【0030】
つまり、比率算出部1555は、Cr(n+2)及びCr(n)の類似度(相関)に対するCr(n)及びCr(n−2)の類似度(相関)の相対的な大きさに応じて、混合比率を規定するパラメータMを決定する。例えば、Cr(n)がCr(n+2)に比べてCr(n−2)に類似していると評価される場合に、比率算出部1555は、Cb(n+1)よりCb(n−1)の混合比率が大きくなるようパラメータMを生成する。逆に、Cr(n)がCr(n−2)に比べてCr(n+2)に類似していると評価される場合に、比率算出部1555は、Cb(n−1)よりCb(n+1)の混合比率が大きくなるようパラメータMを生成する。
【0031】
上述したように、本実施の形態では、Cb(n+1)とCb(n−1)の類似度が所定の基準より小さいと判定される場合に、Cr(n+2)及びCr(n)の類似度に対するCr(n)及びCr(n−2)の類似度の相対的な大きさに応じて、Cb(n+1)とCb(n−1)の混合比率を決定することとした。これにより、第nラインの上下近傍における色調の変化を判定して補間用の色差信号Cb(n)を生成することができる。
【0032】
なお、上述した説明では、映像信号処理装置1がデジタル回路である場合について説明した。しかしながら、映像信号処理装置1の少なくとも一部は、アナログ回路として構成してもよい。
【0033】
(参考例1)
以下では、本願の発明者によって考案された、同時変換部15の変形例について説明する。図5に示す同時変換部25は、線順次色差信号の同時化処理を行うものであり、図1に示した映像信号処理装置1に対して同時変換部15と置換して適用可能である。同時変換部25は、色復調部14から入力される線順次色差信号を3水平期間遅延させ、合計4ラインの線順次色差信号を用いて同時化処理を行う。なお、図5において、遅延部151〜153、信号合成部156及び選択部157は、図2に示した同時変換部15に含まれる同一符号の要素と共通とすればよい。
【0034】
混合比率決定部255は、4ラインの色差信号を入力し、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の混合比率を規定するパラメータMを生成する。混合比率決定部255の具体的な構成例と、パラメータMの具体例について図6を参照しながら説明する。図6は、混合比率決定部255の構成例を示すブロック図である。
【0035】
図5において、差分絶対値生成部1551及び1553は、図3に示した同一符号の要素と共通である。つまり、差分絶対値生成部1551は、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の差分絶対値D1を生成する。また、差分絶対値生成部1553は、色差信号Cr(n)及びCr(n−2)の差分絶対値D3を生成する。
【0036】
比較部2554は、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の類似度(相関)が予め定められた基準値より大きいか否かを判定する。具体的には、図6に示すように、比較部2554は、差分絶対値D1を予め定められた閾値Th21と比較し、比較結果B1を出力すればよい。例えば、差分絶対値D1が閾値Th21より大きい場合にB1=1とし、差分絶対値D1が閾値Th21以下である場合にB1=0とすればよい。
【0037】
同様に、比較部2556は、色差信号Cr(n)及びCr(n−2)の類似度(相関)が予め定められた基準値より大きいか否かを判定する。具体的には、図6に示すように、比較部2556は、差分絶対値D3を予め定められた閾値Th22と比較し、比較結果B2を出力すればよい。例えば、差分絶対値D3が閾値Th22より大きい場合にB2=1とし、差分絶対値D3が閾値Th22以下である場合にB2=0とすればよい。
【0038】
図6に示す比率算出部2555は、比較結果B1及びB2を入力し、これらに基づいてパラメータMを計算する。パラメータMの算出手順の具体例を以下に示す。比率算出部2555は、比較結果B1を参照し、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の類似度(相関)が予め定められた基準値より大きいに場合に、パラメータMを1/2とする。具体的には、比較結果B1=0であるときに、パラメータMを1/2とすればよい。上述した通り、M=1/2であるとき、補間信号Cb(n)は色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の平均値となる。比率算出部2555における当該処理内容は、上述した比率算出部1555と共通である。
【0039】
一方、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の類似度(相関)が予め定められた基準値より小さい場合、比率算出部2555は、比較結果B2を参照してパラメータMを決定する。具体的には、比率算出部2555は、パラメータMを以下の(6)式により算出すればよい。
【数5】

【0040】
上記の(6)式に従うと、Cr(n)とCr(n−2)が類似していると評価される場合に、Cb(n−1)の混合比率が1となり、Cb(n+1)の混合比率がゼロとなるように、比率算出部2555はパラメータMを生成する。逆に、Cr(n)とCr(n−2)が類似していないと評価される場合に、比率算出部2555は、Cb(n−1)の混合比率がゼロとなり、Cb(n+1)の混合比率が1となるようパラメータMを生成する。
【0041】
(参考例2)
図7に示す混合比率決定部355は、図5に示した同時変換部25に対して混合比率決定部255と置換して適用可能である。図7において、差分絶対値生成部1551及び1553は、図3に示した同一符号の要素と共通である。
【0042】
比較部3554は、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の類似度(相関)が予め定められた基準値より大きいか否かを判定する。具体的には、図7に示すように、比較部3554は、差分絶対値D1を予め定められた閾値Th31と比較し、比較結果Eを出力すればよい。例えば、差分絶対値D1が閾値Th31より大きい場合にE=1とし、差分絶対値D1が閾値Th31以下である場合にE=0とすればよい。
【0043】
差分生成部3556は、差分絶対値D3と予め定められた閾値Th32との差分(D3−Th32)を計算し、計算結果F1を比率算出部3555に供給する。ここで、閾値Th32は正の値とする。
【0044】
また、差分生成部3557は、差分絶対値D3と予め定められた閾値Th33との差分(Th33−D3)を計算し、計算結果F2を比率算出部3555に供給する。ここで、閾値Th33は、正の値かつTh32により大きな値とする。
【0045】
図7に示す比率算出部3555は、比較結果E並びに計算結果F1及びF2を入力し、これらに基づいてパラメータMを計算する。パラメータMの算出手順の具体例を以下に示す。比率算出部3555は、比較結果Eを参照し、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の類似度(相関)が予め定められた基準値より大きいに場合に、パラメータMを1/2とする。具体的には、比較結果E=0であるときに、パラメータMを1/2とすればよい。上述した通り、M=1/2であるとき、補間信号Cb(n)は色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の平均値となる。比率算出部3555における当該処理内容は、上述した比率算出部1555と共通である。
【0046】
一方、色差信号Cb(n+1)及びCb(n−1)の類似度(相関)が予め定められた基準値より小さい場合、比率算出部3555は計算結果F1及びF2を参照してパラメータMを決定する。具体的には、比率算出部3555は、パラメータMを以下の(7)式により算出すればよい。
【数6】

【0047】
上記の(7)式に従うと、Cr(n)とCr(n−2)が類似していると評価される場合に、Cb(n−1)の混合比率が1となり、Cb(n+1)の混合比率がゼロとなるように、比率算出部3555はパラメータMを生成する。逆に、Cr(n)とCr(n−2)が類似していないと評価される場合に、比率算出部3555は、Cb(n−1)の混合比率がゼロとなり、Cb(n+1)の混合比率が1となるようパラメータMを生成する。
【0048】
さらに、上記の(7)式に従うと、Cr(n)とCr(n−2)の類似度が中程度と評価される場合に、比率算出部3555は、Cb(n+1)及びCb(n−1)が共に混合されるようにパラメータMを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる映像信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した映像信号処理装置が有する同時変換部の構成例を示すブロック図である。
【図3】図2に示した同時変換部が有する混合比率決定部の構成例を示すブロック図である。
【図4】背景技術にかかる映像信号処理装置によって行われる、4ラインの色差信号を利用した同時化処理を説明するための図である。
【図5】同時変換部の参考例を示すブロック図である。
【図6】混合比率決定部の参考例を示すブロック図である。
【図7】混合比率決定部の参考例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
1 映像信号処理装置
10 A/D変換器
11 同期処理部
12 Y/C分離部
13 遅延回路
14 色復調部
15、25 同時変換部
16 出力処理部
151〜154 遅延回路
155、255、355 混合比率決定部
156 信号合成部
1551〜1553 差分絶対値生成部
1554、2554、2556、3554 比較部
1555、2555、3555 比率算出部
3556、3557 差分生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線順次伝送される2種の色差信号を含む映像信号C(n+2)を1乃至4水平期間遅延させた映像信号C(n+1)乃至C(n−2)を生成する遅延部と、
前記映像信号C(n+1)とC(n−1)の類似度を示す第1の相関値、前記映像信号C(n+2)とC(n)の類似度を示す第2の相関値、及び前記映像信号C(n)とC(n−2)の類似度を示す第3の相関値を生成する相関値生成部と、
前記第1の相関値と予め定められた値との比較によって前記映像信号C(n+1)とC(n−1)の類似度が所定の基準より小さいと判定される場合に、前記第2の相関値に対する前記第3の相関値の相対的な大きさに応じて、前記映像信号C(n+1)及びC(n−1)の混合比率を生成する混合比率生成部と、
前記混合比率に基づいて前記映像信号C(n+1)及びC(n−1)を混合する信号合成部と、
前記信号合成部の出力信号及び前記映像信号C(n)を、同時化された前記2種の映像信号として出力する出力部と、
を備える映像信号処理装置。
【請求項2】
前記混合比率生成部は、前記映像信号C(n+1)とC(n−1)の類似度が前記所定の基準より大きいと判定される場合に、前記第2及び前記第3の相関値に依拠せずに、前記混合比率を予め定められた値に決定する、請求項1に記載の色差信号処理装置。
【請求項3】
前記第2の相関値は、前記映像信号C(n+2)とC(n)の差分絶対値D2であり、
前記第3の相関値は、前記映像信号C(n)とC(n−2)の差分絶対値D3であり、
前記信号合成部は、前記映像信号C(n+1)とC(n−1)の類似度が前記所定の基準より小さいと判定される場合に、以下の計算式により前記映像信号C(n+1)及びC(n−1)を混合する、請求項1又は2に記載の映像信号処理装置。
【数1】

【請求項4】
線順次伝送される2種の色差信号を含む映像信号C(n+2)を1乃至4水平期間遅延させた映像信号C(n+1)乃至C(n−2)を生成すること、
前記映像信号C(n+1)とC(n−1)の類似度を示す第1の相関値、前記映像信号C(n+2)とC(n)の類似度を示す第2の相関値、及び前記映像信号C(n)とC(n−2)の類似度を示す第3の相関値を生成すること、
前記第1の相関値と予め定められた値との比較によって前記映像信号C(n+1)とC(n−1)の類似度が所定の基準より小さいと判定される場合に、前記第2の相関値に対する前記第3の相関値の相対的な大きさに応じて、前記映像信号C(n+1)及びC(n−1)の混合比率を生成すること、
前記混合比率に基づいて前記映像信号C(n+1)及びC(n−1)を混合すること、
前記信号合成部の出力信号及び前記映像信号C(n)を、同時化された前記2種の映像信号として出力すること、
を含む映像信号の処理方法。
【請求項5】
前記映像信号C(n+1)とC(n−1)の類似度が前記所定の基準より大きいと判定される場合に、前記第2及び前記第3の相関値に依拠せずに、前記混合比率を予め定められた値に決定すること、
をさらに含む請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
前記第2の相関値は、前記映像信号C(n+2)とC(n)の差分絶対値D2であり、
前記第3の相関値は、前記映像信号C(n)とC(n−2)の差分絶対値D3であり、
前記映像信号C(n+1)とC(n−1)の類似度が前記所定の基準より小さいと判定される場合に、以下の計算式により前記映像信号C(n+1)及びC(n−1)を混合する、請求項4又は5に記載の処理方法。
【数2】


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−34832(P2010−34832A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194711(P2008−194711)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】