説明

映像信号処理装置及び映像表示装置

【課題】映像信号における色の濃淡を適切に補正することができ、画質の品位を向上させることができる映像信号処理装置及び映像表示装置を提供する。
【解決手段】映像信号処理装置は、輝度を表すY信号と、輝度と青色成分との色差を表すU信号と、輝度と赤色成分との色差を表すV信号とを含む入力映像信号から彩度値を生成し、Y信号、U信号及びV信号に基づいて算出した赤色成分、緑色成分及び青色成分に応じて彩度値を補正する彩度値生成部11と、彩度値に対応するU信号及びV信号の補正ゲインを決定する補正ゲイン決定部12と、補正ゲインをU信号及びV信号に乗算する第1及び第2の乗算器13,14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される映像信号における色の濃淡を補正する映像信号処理装置及び映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
映像表示装置においては、映像の高画質化を目的とする様々な映像信号処理が行われている。例えば、特許文献1では、輝度信号と色信号とからなる映像用信号の輝度信号レベルを検出し、輝度信号レベルに基づいて出力ゲイン係数を発生させ、出力ゲイン係数を色信号レベルに乗じることによって、色信号を補正する色濃淡補正方法について開示されている。
【0003】
また、従来、特許文献1のように輝度に基づいて色信号を補正するのではなく、彩度に基づいて色信号を補正する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−300596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に画質補正機能で扱う色空間には、YUV(Y:輝度、U:輝度信号と青色成分との差、V:輝度信号と赤色成分との差)色空間、RGB(R:赤、G:緑、B:青)色空間及びHSV(H:色相、S:彩度、V:明度)色空間などがある。
【0006】
ここで、彩度に基づいて色信号を補正する方法について説明する。入力される映像信号がYUV色空間で表される場合、彩度は、輝度信号と青色成分との色差を表すU信号と、輝度信号と赤色成分との色差を表すV信号とに基づいて算出される。そして、彩度に応じた補正ゲインが決定され、決定された補正ゲインがU信号及びV信号に乗算される。このようにして、彩度に基づいて色信号(U信号及びV信号)が補正され、映像信号に対して色の濃淡が補正されることになる。
【0007】
図7は、YUV色空間とRGB色空間とを模式的に表す図である。通常、YUV色空間は円柱形状であり、RGB色空間は、立方体形状である。図7に示すように、RGB色空間は、YUV色空間に内包される。RGB色空間をYUV色空間に当てはめた場合、RGB色空間の形状は、立方体を歪ませた形状となる。
【0008】
このように、YUV色空間とRGB色空間とでは、表現できる色の数が異なっており、YUV色空間の方がRGB色空間よりも多くの色を表現することが可能である。
【0009】
上述の彩度に基づいて色信号を補正する方法では、彩度は、色信号(U信号及びV信号)に基づいて算出され、輝度を表すY信号については考慮されない。そのため、単純にU信号及びV信号のみを用いて算出された彩度から補正ゲインを決定し、補正ゲインをU信号及びV信号に乗算した場合、補正後のU信号及び補正後のV信号がRGB色空間で表現できない値となる虞がある。この場合、映像信号における色の濃淡を適切に補正することができず、画質の品位を低下させてしまう。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、映像信号における色の濃淡を適切に補正することができ、画質の品位を向上させることができる映像信号処理装置及び映像表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る映像信号処理装置は、輝度を表すY信号と、輝度と青色成分との色差を表すU信号と、輝度と赤色成分との色差を表すV信号とを含む入力映像信号から彩度値を生成し、前記Y信号、前記U信号及び前記V信号に基づいて算出した赤色成分、緑色成分及び青色成分に応じて前記彩度値を補正する彩度値生成部と、前記彩度値生成部によって生成された前記彩度値に対応する前記U信号及び前記V信号の補正ゲインを決定する補正ゲイン決定部と、前記補正ゲイン決定部によって決定された補正ゲインを前記U信号及び前記V信号に乗算する乗算器とを備える。
【0012】
この構成によれば、彩度値生成部は、輝度を表すY信号と、輝度と青色成分との色差を表すU信号と、輝度と赤色成分との色差を表すV信号とを含む入力映像信号から彩度値を生成する。また、彩度値生成部は、Y信号、U信号及びV信号に基づいて算出した赤色成分、緑色成分及び青色成分に応じて彩度値を補正する。そして、補正ゲイン決定部は、彩度値生成部によって生成された彩度値に対応するU信号及びV信号の補正ゲインを決定する。乗算器は、補正ゲイン決定部によって決定された補正ゲインをU信号及びV信号に乗算する。
【0013】
したがって、赤色成分、緑色成分及び青色成分に応じて彩度値が補正され、補正された彩度値に基づいてU信号及びV信号が補正されるので、映像信号における色の濃淡を適切に補正することができ、画質の品位を向上させることができる。
【0014】
また、上記の映像信号処理装置において、前記彩度値生成部は、前記U信号及び前記V信号がRGB色空間で表示可能な範囲内に収まるように前記彩度値を補正することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、U信号及びV信号がRGB色空間で表示可能な範囲内に収まるように彩度値が補正される。したがって、U信号及びV信号に補正ゲインを乗算したとしても、当該U信号及びV信号はRGB色空間で表示可能な範囲内に収まるので、映像信号における色の濃淡を適切に補正することができ、画質の品位を向上させることができる。
【0016】
また、上記の映像信号処理装置において、前記彩度値生成部は、前記U信号及び前記V信号から前記彩度値を算出する彩度値算出部と、赤色成分Rと輝度Yとの色差R−Y、緑色成分Gと輝度Yとの色差G−Y及び青色成分Bと輝度Yとの色差B−Yのそれぞれの逆数を、前記彩度値を補正するための彩度補正値として算出する彩度補正値算出部と、前記彩度補正値算出部によって算出された前記彩度補正値に基づいて、前記彩度値算出部によって算出された前記彩度値を補正する彩度値補正部とを含むことが好ましい。
【0017】
この構成によれば、彩度値算出部は、U信号及びV信号から彩度値を算出する。そして、彩度補正値算出部は、赤色成分Rと輝度Yとの色差R−Y、緑色成分Gと輝度Yとの色差G−Y及び青色成分Bと輝度Yとの色差B−Yのそれぞれの逆数を、彩度値を補正するための彩度補正値として算出する。続いて、彩度値補正部は、彩度補正値算出部によって算出された彩度補正値に基づいて、彩度値算出部によって算出された彩度値を補正する。
【0018】
したがって、赤色成分Rと輝度Yとの色差R−Y、緑色成分Gと輝度Yとの色差G−Y及び青色成分Bと輝度Yとの色差B−Yのそれぞれの逆数が、彩度値を補正するための彩度補正値として算出され、算出された彩度補正値に基づいて彩度値が補正されるので、U信号及びV信号がRGB色空間で表示可能な範囲内に収まるように彩度値を補正することができる。
【0019】
また、上記の映像信号処理装置において、前記彩度補正値算出部は、前記Y信号、前記U信号及び前記V信号から、赤色成分Rと輝度Yとの色差R−Y、緑色成分Gと輝度Yとの色差G−Y及び青色成分Bと輝度Yとの色差B−Yを算出する色差算出部と、前記色差R−Yが正である場合、|R−Y|/(1.0−Y)を赤色色差補正値として算出し、前記色差R−Yが負である場合、|R−Y|/Yを赤色色差補正値として算出し、前記色差G−Yが正である場合、|G−Y|/(1.0−Y)を緑色色差補正値として算出し、前記色差G−Yが負である場合、|G−Y|/Yを緑色色差補正値として算出し、前記色差B−Yが正である場合、|B−Y|/(1.0−Y)を青色色差補正値として算出し、前記色差B−Yが負である場合、|B−Y|/Yを青色色差補正値として算出する色差補正値算出部と、前記赤色色差補正値、前記緑色色差補正値及び前記青色色差補正値のうちの最大値を前記彩度補正値として出力する最大値出力部とを含むことが好ましい。
【0020】
この構成によれば、色差算出部は、Y信号、U信号及びV信号から、赤色成分Rと輝度Yとの色差R−Y、緑色成分Gと輝度Yとの色差G−Y及び青色成分Bと輝度Yとの色差B−Yを算出する。そして、色差補正値算出部は、色差R−Yが正である場合、|R−Y|/(1.0−Y)を赤色色差補正値として算出し、色差R−Yが負である場合、|R−Y|/Yを赤色色差補正値として算出し、色差G−Yが正である場合、|G−Y|/(1.0−Y)を緑色色差補正値として算出し、色差G−Yが負である場合、|G−Y|/Yを緑色色差補正値として算出し、色差B−Yが正である場合、|B−Y|/(1.0−Y)を青色色差補正値として算出し、色差B−Yが負である場合、|B−Y|/Yを青色色差補正値として算出する。続いて、最大値出力部は、赤色色差補正値、緑色色差補正値及び青色色差補正値のうちの最大値を彩度補正値として出力する。
【0021】
したがって、色差R−Yが正である場合、|R−Y|/(1.0−Y)が赤色色差補正値として算出され、色差R−Yが負である場合、|R−Y|/Yが赤色色差補正値として算出され、色差G−Yが正である場合、|G−Y|/(1.0−Y)が緑色色差補正値として算出され、色差G−Yが負である場合、|G−Y|/Yが緑色色差補正値として算出され、色差B−Yが正である場合、|B−Y|/(1.0−Y)が青色色差補正値として算出され、色差B−Yが負である場合、|B−Y|/Yが青色色差補正値として算出され、赤色色差補正値、緑色色差補正値及び青色色差補正値のうちの最大値が彩度補正値として出力されるので、U信号及びV信号がRGB色空間で表示可能な範囲内に収まるように彩度値を補正することができる。
【0022】
本発明に係る映像表示装置は、上記のいずれかに記載の映像信号処理装置と、前記映像信号処理装置によって画質が補正された映像信号を表示する表示装置とを備える。
【0023】
この構成によれば、映像信号における色の濃淡を適切に補正し、画質の品位を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、赤色成分、緑色成分及び青色成分に応じて彩度値が補正され、補正された彩度値に基づいてU信号及びV信号が補正されるので、映像信号における色の濃淡を適切に補正することができ、画質の品位を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態に係る映像信号処理装置を適用した映像表示装置の概略構成図である。
【図2】図1に示すUV信号補正部の構成を示す図である。
【図3】輝度Yが20〜50%である場合において、RGB色空間で表現することが可能なU信号及びV信号の範囲を示す図である。
【図4】輝度Yが60〜80%である場合において、RGB色空間で表現することが可能なU信号及びV信号の範囲を示す図である。
【図5】補正ゲイン決定部における補正ゲインの決定方法について説明するための図である。
【図6】図2に示す彩度値生成部の構成を示す図である。
【図7】YUV色空間とRGB色空間とを模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0027】
図1は、本実施の形態に係る映像信号処理装置を適用した映像表示装置の概略構成図である。図1において、映像表示装置10は、UV信号補正部1、画質補正部2、YUV−RGB変換部3、RGB−HSV変換部4、記憶色補正部5、HSV−RGB変換部6、ガンマ補正部7、駆動制御部8及び表示装置9を備える。
【0028】
UV信号補正部1に入力される入力映像信号VDは、YUV色空間で表され、輝度を表すY信号と、輝度と青色成分との色差を表すU信号と、輝度と赤色成分との色差を表すV信号とを含む。UV信号補正部1は、入力映像信号VDに含まれるU信号及びV信号を補正する。なお、UV信号補正部1の具体的な構成については後述する。
【0029】
画質補正部2は、UV信号補正部1によって補正された映像信号に対して画質を補正する。例えば、画質補正部2は、UV信号補正部1によって補正された映像信号の階調を補正する。具体的には、画質補正部2は、YUV色空間で表される映像信号に基づいて、階調補正の対象となる特定の色領域を検出し、検出した特定の色領域における映像信号から、APL(Average Picture Level)、最大輝度又は最小輝度などの特徴量を検出し、検出した特徴量に応じて階調のゲインを決定し、決定したゲインを映像信号に乗算する。これにより、UV信号補正部1によって変換された映像信号の色領域毎の階調が補正される。
【0030】
また、画質補正部2は、UV信号補正部1によって変換された映像信号の輪郭部分を補正する。画質補正部2は、YUV色空間で表される映像信号に基づいて、輪郭補正の対象となる特定の色領域を検出し、検出した特定の色領域における映像信号の輪郭部分を補正する。
【0031】
YUV−RGB変換部3は、YUV色空間で表される映像信号をRGB色空間で表される映像信号に変換する。なお、YUV色空間からRGB色空間への変換方法は、公知であるので説明を省略する。
【0032】
RGB−HSV変換部4は、RGB色空間で表される映像信号をHSV色空間で表される映像信号に変換する。なお、RGB色空間からHSV色空間への変換方法は、公知であるので説明を省略する。
【0033】
記憶色補正部5は、RGB−HSV変換部4によって変換されたHSV色空間で表される映像信号に対して記憶色補正を行う。記憶色とは、多くの人がイメージする色である。記憶色補正部5は、実際の色よりも彩度及びコントラストを高くし、実際の色よりも明るく鮮やかな色になるように補正する。記憶色補正部5は、H信号、S信号及びV信号を予め設定されている所定の値に補正することにより、例えば、肌色、青色及び緑色をそれぞれ記憶色に近づける。
【0034】
HSV−RGB変換部6は、HSV色空間で表される映像信号をRGB色空間で表される映像信号に変換する。なお、HSV色空間からRGB色空間への変換方法は、公知であるので説明を省略する。
【0035】
ガンマ補正部7は、HSV−RGB変換部6によって変換されたRGB色空間で表される映像信号に対して、各色成分R,G,Bのガンマ特性を補正する。
【0036】
駆動制御部8は、入力された映像信号を基に、映像に対応した駆動信号を生成し、表示装置9を駆動させる。それにより、映像が表示装置9に表示される。表示装置9は、例えばプラズマディスプレイパネル、液晶パネル又は有機ELパネルであってもよく、特にその種類を問わない。
【0037】
次に、図1に示すUV信号補正部1についてさらに詳細に説明する。図2は、図1に示すUV信号補正部の構成を示す図である。
【0038】
図2に示すUV信号補正部1は、彩度値生成部11、補正ゲイン決定部12、第1の乗算器13及び第2の乗算器14を備える。
【0039】
彩度値生成部11は、Y信号とU信号とV信号とを含む入力映像信号から彩度値を生成し、Y信号、U信号及びV信号に基づいて算出した赤色成分、緑色成分及び青色成分に応じて彩度値を補正する。さらに、彩度値生成部11は、U信号及びV信号がRGB色空間で表示可能な範囲内に収まるように彩度値を補正する。
【0040】
図3及び図4は、RGB色空間で表現することが可能なU信号及びV信号の範囲を示す図である。図3(A)〜図4(C)は、図7に示す円柱形状のYUV色空間を、輝度Y=20,30,40,50,60,70,80%となる位置でそれぞれ輪切りにした図である。
【0041】
すなわち、図3(A)は、輝度Yが20%である場合において、RGB色空間で表現することが可能なU信号及びV信号の範囲を示す図であり、図3(B)は、輝度Yが30%である場合において、RGB色空間で表現することが可能なU信号及びV信号の範囲を示す図であり、図3(C)は、輝度Yが40%である場合において、RGB色空間で表現することが可能なU信号及びV信号の範囲を示す図であり、図3(D)は、輝度Yが50%である場合において、RGB色空間で表現することが可能なU信号及びV信号の範囲を示す図である。
【0042】
また、図4(A)は、輝度Yが60%である場合において、RGB色空間で表現することが可能なU信号及びV信号の範囲を示す図であり、図4(B)は、輝度Yが70%である場合において、RGB色空間で表現することが可能なU信号及びV信号の範囲を示す図であり、図4(C)は、輝度Yが80%である場合において、RGB色空間で表現することが可能なU信号及びV信号の範囲を示す図である。
【0043】
図3(A)に示すように、輝度Yが20%である場合、RGB色空間では、青色については表現することができるが、赤色及び緑色についは殆ど表現することができない。また、図3(B)〜図3(D)に示すように、輝度Yが30〜50%である場合、RGB色空間では、青色及び赤色については表現することができるが、緑色についは殆ど表現することができない。そして、図4(A)〜図4(C)に示すように、輝度Yが60〜80%である場合、RGB色空間では、緑色については表現することができるが、青色及び赤色についは殆ど表現することができない。
【0044】
このように、YUV色空間とRGB色空間とでは、表現できる色の数が異なっており、RGB色空間で表現可能な色の範囲は、YUV色空間で表現可能な色の範囲よりも狭い。
【0045】
そのため、彩度に基づいて色信号を補正する場合に、単純にU信号及びV信号のみを用いて算出された彩度から補正ゲインを決定し、補正ゲインをU信号及びV信号に乗算すると、補正後のU信号及び補正後のV信号がRGB色空間で表現できない値となる虞があり、映像信号における色の濃淡を適切に補正することができない場合がある。
【0046】
そこで、本実施の形態における彩度値生成部11は、U信号及びV信号がRGB色空間で表示可能な範囲内に収まるように彩度値を補正する。なお、彩度値生成部11の具体的な構成については後述する。
【0047】
補正ゲイン決定部12は、彩度値生成部11によって生成された彩度値に対応するU信号及びV信号の補正ゲインを決定する。ここで、補正ゲイン決定部12における補正ゲインの決定方法について説明する。図5は、補正ゲイン決定部における補正ゲインの決定方法について説明するための図である。図5において、横軸は、彩度値を表し、縦軸は、補正ゲインを表している。
【0048】
図5に示すように、補正ゲインは、彩度値が大きくなるとともに大きくなるような補正関数で表される。補正ゲイン決定部12は、図5に示す補正関数を予め記憶している。補正ゲイン決定部12は、予め記憶されている補正関数を参照し、彩度値生成部11によって生成された彩度値に対応するU信号及びV信号の補正ゲインを決定する。例えば、図5において、彩度値がMxである場合、当該Mxに対応するMyが、補正ゲインとして決定される。
【0049】
なお、本実施の形態では、補正ゲイン決定部12は、彩度値と補正ゲインとを対応付けた補正関数を予め記憶しているが、本発明は特にこれに限定されず、彩度値と補正ゲインとを対応付けたテーブルを記憶してもよい。
【0050】
第1の乗算器13は、補正ゲイン決定部12によって決定された補正ゲインをU信号に乗算し、補正後のU信号を出力する。第2の乗算器14は、補正ゲイン決定部12によって決定された補正ゲインをV信号に乗算し、補正後のV信号を出力する。
【0051】
このように、赤色成分、緑色成分及び青色成分に応じて彩度値が補正され、補正された彩度値に基づいてU信号及びV信号が補正されるので、映像信号における色の濃淡を適切に補正することができ、画質の品位を向上させることができる。
【0052】
また、U信号及びV信号に補正ゲインを乗算したとしても、当該U信号及びV信号はRGB色空間で表示可能な範囲内に収まるので、映像信号における色の濃淡を適切に補正することができ、画質の品位を向上させることができる。
【0053】
次に、図2に示す彩度値生成部11についてさらに詳細に説明する。図6は、図2に示す彩度値生成部の構成を示す図である。
【0054】
図6に示す彩度値生成部11は、彩度値算出部101、彩度補正値算出部102及び彩度値補正部103を備える。
【0055】
彩度値算出部101は、U信号及びV信号から彩度値を算出する。具体的に、彩度値算出部101は、下記の(1)式に基づいて彩度値を算出する。
【0056】
【数1】

【0057】
なお、上記の(1)式において、Sは、彩度値を表し、Uは、U信号の値を表し、Vは、V信号の値を表している。
【0058】
彩度値算出部101によって算出された彩度値は、彩度値補正部103へ出力される。
【0059】
彩度補正値算出部102は、赤色成分Rと輝度Yとの色差R−Y、緑色成分Gと輝度Yとの色差G−Y及び青色成分Bと輝度Yとの色差B−Yのそれぞれの逆数を、彩度値を補正するための彩度補正値として算出する。彩度補正値算出部102は、RGB色差算出部111、色差補正値算出部112及び最大値回路113を備える。
【0060】
RGB色差算出部111は、Y信号、U信号及びV信号から、赤色成分Rと輝度Yとの色差R−Y、緑色成分Gと輝度Yとの色差G−Y及び青色成分Bと輝度Yとの色差B−Yを算出する。具体的に、RGB色差算出部111は、下記の(2)式に基づいて、色差R−Y、色差G−Y及び色差B−Yを算出する。
【0061】
【数2】

【0062】
なお、上記の(2)式において、K1〜K4は、係数を表し、Uは、U信号の値を表し、Vは、V信号の値を表し、R−Yは、赤色成分Rと輝度Yとの色差を表し、G−Yは、緑色成分Gと輝度Yとの色差を表し、B−Yは、青色成分Bと輝度Yとの色差を表している。なお、上記の(2)式は、YUV信号からRGBの色差信号へ変換する、公知のマトリックス変換式であり、例えば、係数K1は、1.140であり、係数K2は、−0.394であり、係数K3は、−0.3581であり、係数K4は、2.032である。また、係数K1〜K4は、固定値ではなく、可変値であってもよい。また、本実施の形態において、RGB色差算出部111が色差算出部の一例に相当する。
【0063】
色差補正値算出部112は、色差R−Yが正である場合、|R−Y|/(1.0−Y)を赤色色差補正値として算出し、色差R−Yが負である場合、|R−Y|/Yを赤色色差補正値として算出し、色差G−Yが正である場合、|G−Y|/(1.0−Y)を緑色色差補正値として算出し、色差G−Yが負である場合、|G−Y|/Yを緑色色差補正値として算出し、色差B−Yが正である場合、|B−Y|/(1.0−Y)を青色色差補正値として算出し、色差B−Yが負である場合、|B−Y|/Yを青色色差補正値として算出する。
【0064】
このように、赤色成分Rと輝度Yとの色差R−Y、緑色成分Gと輝度Yとの色差G−Y及び青色成分Bと輝度Yとの色差B−Yのそれぞれの逆数が、彩度値を補正するための彩度補正値として算出され、算出された彩度補正値に基づいて彩度値が補正されるので、U信号及びV信号がRGB色空間で表示可能な範囲内に収まるように彩度値を補正することができる。
【0065】
また、色差R−Yが正である場合、|R−Y|/(1.0−Y)が赤色色差補正値として算出され、色差R−Yが負である場合、|R−Y|/Yが赤色色差補正値として算出され、色差G−Yが正である場合、|G−Y|/(1.0−Y)が緑色色差補正値として算出され、色差G−Yが負である場合、|G−Y|/Yが緑色色差補正値として算出され、色差B−Yが正である場合、|B−Y|/(1.0−Y)が青色色差補正値として算出され、色差B−Yが負である場合、|B−Y|/Yが青色色差補正値として算出され、赤色色差補正値、緑色色差補正値及び青色色差補正値のうちの最大値が彩度補正値として出力されるので、U信号及びV信号がRGB色空間で表示可能な範囲内に収まるように彩度値を補正することができる。
【0066】
最大値回路113は、色差補正値算出部112によって算出された、赤色色差補正値、緑色色差補正値及び青色色差補正値のうちの最大値を彩度補正値として出力する。最大値回路113は、彩度補正値を彩度値補正部103へ出力する。なお、本実施の形態において、最大値回路113が最大値出力部の一例に相当する。
【0067】
彩度値補正部103は、彩度補正値算出部102によって算出された彩度補正値に基づいて、彩度値算出部101によって算出された彩度値を補正する。彩度値補正部103は、彩度値算出部101によって算出された彩度値と、彩度補正値算出部102によって算出された彩度補正値とを所定の割合で合成する。
【0068】
具体的に、彩度値補正部103は、不図示の制御部から内分点調整値(α値)が入力され、下記の(3)式に基づいて、彩度値と彩度補正値とを合成する。
【0069】
S’=S×α+C×(1.0−α)・・・・(3)
なお、上記の(3)式において、S’は、補正後の彩度値を表し、Sは、彩度値算出部101によって算出された彩度値を表し、Cは、彩度補正値算出部102によって算出された彩度補正値を表し、αは、彩度値と彩度補正値とを合成する割合を表している。なお、αは、0≦α≦1.0を満たす。また、αは、固定値及び可変値のいずれであってもよい。
【0070】
このように、α値により、彩度値と彩度補正値とを合成する割合を可変することにより、U信号及びV信号を必ずしもRGB表示可能範囲の境界内の値に収めるのではなく、U信号及びV信号をRGB表示可能範囲の境界上の値にすることが可能となる。すなわち、U信号及びV信号を、RGB表示可能範囲の境界内の値に収めるよりも、RGB表示可能範囲の境界上の値にした方が、画質が向上する場合がある。そこで、本実施の形態では、彩度値と彩度補正値とを合成する割合を可変することによって、より高精度に色の濃淡を補正することができ、画質の品位をより向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る映像信号処理装置及び映像表示装置は、映像信号における色の濃淡を適切に補正することができ、画質の品位を向上させることができ、入力される映像信号における色の濃淡を補正する映像信号処理装置及び映像表示装置として有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 UV信号補正部
2 画質補正部
3 YUV−RGB変換部
4 RGB−HSV変換部
5 記憶色補正部
6 HSV−RGB変換部
7 ガンマ補正部
8 駆動制御部
9 表示装置
10 映像表示装置
11 彩度値生成部
12 補正ゲイン決定部
13 第1の乗算器
14 第2の乗算器
101 彩度値算出部
102 彩度補正値算出部
103 彩度値補正部
111 RGB色差算出部
112 色差補正値算出部
113 最大値回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輝度を表すY信号と、輝度と青色成分との色差を表すU信号と、輝度と赤色成分との色差を表すV信号とを含む入力映像信号から彩度値を生成し、前記Y信号、前記U信号及び前記V信号に基づいて算出した赤色成分、緑色成分及び青色成分に応じて前記彩度値を補正する彩度値生成部と、
前記彩度値生成部によって生成された前記彩度値に対応する前記U信号及び前記V信号の補正ゲインを決定する補正ゲイン決定部と、
前記補正ゲイン決定部によって決定された補正ゲインを前記U信号及び前記V信号に乗算する乗算器とを備えることを特徴とする映像信号処理装置。
【請求項2】
前記彩度値生成部は、前記U信号及び前記V信号がRGB色空間で表示可能な範囲内に収まるように前記彩度値を補正することを特徴とする請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記彩度値生成部は、
前記U信号及び前記V信号から前記彩度値を算出する彩度値算出部と、
赤色成分Rと輝度Yとの色差R−Y、緑色成分Gと輝度Yとの色差G−Y及び青色成分Bと輝度Yとの色差B−Yのそれぞれの逆数を、前記彩度値を補正するための彩度補正値として算出する彩度補正値算出部と、
前記彩度補正値算出部によって算出された前記彩度補正値に基づいて、前記彩度値算出部によって算出された前記彩度値を補正する彩度値補正部とを含むことを特徴とする請求項2記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記彩度補正値算出部は、
前記Y信号、前記U信号及び前記V信号から、赤色成分Rと輝度Yとの色差R−Y、緑色成分Gと輝度Yとの色差G−Y及び青色成分Bと輝度Yとの色差B−Yを算出する色差算出部と、
前記色差R−Yが正である場合、|R−Y|/(1.0−Y)を赤色色差補正値として算出し、前記色差R−Yが負である場合、|R−Y|/Yを赤色色差補正値として算出し、前記色差G−Yが正である場合、|G−Y|/(1.0−Y)を緑色色差補正値として算出し、前記色差G−Yが負である場合、|G−Y|/Yを緑色色差補正値として算出し、前記色差B−Yが正である場合、|B−Y|/(1.0−Y)を青色色差補正値として算出し、前記色差B−Yが負である場合、|B−Y|/Yを青色色差補正値として算出する色差補正値算出部と、
前記赤色色差補正値、前記緑色色差補正値及び前記青色色差補正値のうちの最大値を前記彩度補正値として出力する最大値出力部とを含むことを特徴とする請求項3記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の映像信号処理装置と、
前記映像信号処理装置によって画質が補正された映像信号を表示する表示装置とを備えることを特徴とする映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−182233(P2011−182233A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45302(P2010−45302)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】