説明

映像信号処理装置

【課題】クロマキー技術において、4:2:2映像を基に生成されたクロマキー映像は背景映像と解像度が異なるために、クロマキー合成した被写体と背景の境界が目だってしまうという課題を有していた。
【解決手段】2:3プルダウンされた60P映像信号206〜208において、同一映像が複数フレーム連続する際に複数フレームのうち1フレーム目が出力されるタイミングを示す信号である変換制御信号302に基づいてクロマキー映像を前記輝度信号に多重する第2の選択手段104を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル化した映像信号の処理技術の1つであるクロマキー技術に関し、特に、クロマキー技術において出力される映像の解像度に大きく関わるクロマキー映像を出力するための映像信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル映像制作に関する技術の1つとして、フィルムなどで撮影した映像やそれと同等のフレーム数で記録した映像信号を様々なフレームレートに変換する技術がある。この技術は特許文献1等で公知である。特に、24フレーム/秒で構成されるプログレッシブ映像信号(以下24P映像信号)方式の映像を、60フレーム/秒で構成されるプログレッシブ映像信号(以下60P映像信号)方式の映像に変換して記録する場合、2:3プルダウンという変換方式での変換が一般的に使われている(以下、2:3プルダウン方式での変換を2:3プルダウン変換と呼ぶ)。
【0003】
図10を用いて映像信号のフレームレート変換方式について説明する。なお、上記60フレーム/秒は現状の規格においては59.94フレーム/秒が正確な値であるが、本明細書においては60フレーム/秒として記載する。同様に、29.97フレーム/秒についても30フレーム/秒として記載する。
【0004】
図10は、24P映像信号を2:3プルダウン方式で60P映像信号に変換した時のタイミング図である。図10においては、24P映像信号の連続する4フレームをA、B、C、Dと表しており、フレームAをフレーム番号1、2に連続して変換し、フレームBをフレーム番号3、4、5に連続して変換し、フレームCをフレーム番号6、7に連続して変換し、フレームDをフレーム番号8、9、10に連続して変換している。2:3プルダウン方式では24P映像信号を4フレーム単位で60P映像信号方式に時間軸を合わせながら変換している。このように、2:3プルダウン方式は、24P映像信号の1フレームを60P映像信号の2フレームまたは3フレームに対応させるように、2:3:2:3…と変換していく方式である。
【0005】
一方、上記の技術以外に、ディジタル映像制作に関する技術の1つとして、クロマキー技術がある。以下、クロマキー技術について図6を用いて説明する。
【0006】
図6は、クロマキー技術を用いて合成映像を作成する過程を説明した図である。クロマキー技術とは、まず特定の色、ここでは例として青(コンポーネント映像601の斜線部分)を背景に用いて被写体を撮影したコンポーネント映像601を用意する。その背景の色である青の信号(以下、色信号のひとつであるB信号)だけを抜き出して、背景と被写体とを分離するためのクロマキー映像602を作り出す。そして、コンポーネント映像601とクロマキー映像602とを合成し、被写体のみを抜き出した被写体映像603を作り出す。被写体映像603は、被写体以外の部分、すなわち背景部分が透明となっている。最後に、被写体映像603を別途用意しておいた背景映像604に重ね合わせることで合成映像605を得る。このようなクロマキー合成技術は特許文献2等で公知である。
【0007】
図9は、クロマキー映像を生成するための従来の映像信号処理装置の構成図である。従来の映像信号処理装置901はカメラ部902とカメラ制御部903とを備えており、入射光904がレンズ905を通して撮像部906でR、G、Bの各色信号成分からなるRGB映像に変換され、アナログ処理部907とA/D変換部908を経てディジタル処理部909に入力される。このディジタル処理部909でRGB映像は、コンポーネント映像を構成する輝度信号Y、色差信号Cr及びCb(後述)に変換される。コンポーネント映像はパラレル/シリアル(P/S)変換部910で伝送用の信号に変換され、カメラ制御装置903に伝送される。入力された信号は、シリアル/パラレル(S/P)変換部911で再び元のコンポーネント映像に変換され、ディジタル処理部912に入る。ここでコンポーネント映像からRGB映像を生成し、クロマキー処理部914を経てクロマキー映像915が得られる。なお、ディジタル処理部912からはコンポーネント映像913が別途出力される。
【0008】
ここでコンポーネント映像とは、人間の視覚特性は輝度信号に比べて色信号の方が鈍感であることを利用して、RGB映像から輝度信号Yと、色差信号Cr、Cbを作り出した信号である。NTSCのRGB映像をコンポーネント映像にする場合、輝度信号及び色差信号とRGB映像の関係は、次式で表される。
Y = 0.299R+0.587G+0.114B (式1)
Cr= 0.713×(R−Y)
= 0.500R−0.419G−0.081B (式2)
Cb= 0.564×(B−Y)
=−0.169R−0.331G+0.500B (式3)
ここで、輝度信号Yの周波数帯域はRGB映像を構成する各色信号成分と同じであるが、色差信号Cr、Cbの周波数帯域は、輝度信号Yの周波数帯域の2分の1にして出力する。すなわちこれらのコンポーネント映像は、ディジタル信号に変換する時の水平方向のサンプリング周波数の比が輝度信号Y:色差信号Cr:色差信号Cb=4:2:2であり、このことからこのようなコンポーネント映像は4:2:2映像と呼ばれる。周波数帯域の狭い色差信号Cr及び色差信号Cbは周波数帯域の広い輝度信号Yに比べて解像度が低い。
【特許文献1】特開2003−284007号公報
【特許文献2】特開平7−154819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の映像信号処理装置によってクロマキー合成を行うと、被写体映像603と背景映像604との境界が目立ってしまうことがあるという問題点があった。それは従来の技術では4:2:2映像を基にしてクロマキー映像の生成をしているためである。すなわち、解像度の低い4:2:2信号から再び生成されるRGB映像は解像度が元のRGB映像の解像度に対して4:2と半分になる。したがって、背景映像604を構成する信号の中で最も高い解像度を持つ輝度信号Yと解像度が半分となったRGB映像から生成されたクロマキー映像602との解像度の比はやはり4:2となり解像度が異なる。この結果、被写体映像と背景との境界の水平方向の解像度が低くなるからである。この境界が目立つという問題を解決するためには、クロマキー映像602を構成する信号の解像度を、背景映像604を構成する信号の中で最も高い解像度を持つ信号である輝度信号Yと同じ解像度にする必要がある。
【0010】
このことを図6で示すと次のようになる。高解像度合成画像の拡大映像606は、仮に輝度信号Yと同じ解像度のクロマキー映像を用いて合成映像605を生成した場合における被写体と背景との境界線を拡大したものである。高解像度合成画像の拡大映像606のうち黒色の画素は被写体部分であり、白色の画素は背景部分を表している。背景映像604の輝度信号Yと解像度が同じクロマキー映像602でコンポーネント映像601から被写体を抜き取って被写体映像603を作る場合は、高解像度合成画像の拡大映像606のように実際の境界にそって抜き取るため、がたつきは発生せず境界部分の解像度は低下しないため、高解像度の合成映像を得ることができる。
【0011】
一方、低解像度合成画像の拡大映像607は、輝度信号Yに対して水平方向の解像度が半分のクロマキー映像を用いて合成映像605を生成した場合における被写体と背景との境界線を拡大したものである。低解像度合成画像の拡大映像607のうち黒色の画素は被写体部分であり、白色の画素は背景部分を表している。また、灰色の折れ線は、真の境界線を表している。背景映像604の輝度信号Yよりも解像度の低いクロマキー映像602を用いて、コンポーネント映像601から被写体を抜き取って被写体映像603を作る場合は、低解像度合成画像の拡大映像607のように実際の境界部分を越えて背景から抜き取っている部分や、実際の境界よりも手前で抜き取ってしまっている部分があり、境界にがたつきが目立ってしまうため、境界部分の解像度は低下する。
【0012】
本発明はこのような問題点に鑑み、輝度信号と同じ高解像度のクロマキー映像を生成することができる映像信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記問題点を解決するために本発明の映像信号処理装置は、Nフレーム/秒(N>0)で構成されるプログレッシブ映像信号をプルダウンしてMフレーム/秒(M≧2×N)で構成されるプログレッシブ映像信号に変換した信号を入力映像信号とし前記入力映像信号のR、G、Bの色信号成分を輝度信号及び色差信号を含むコンポーネント映像に変換して出力する変換手段と、前記入力映像信号のR、G、Bの色信号成分のうちいずれか1つの色信号成分を選択してクロマキー映像として出力する第1の選択手段と、前記コンポーネント映像及び前記クロマキー信号のうちいずれか一方を選択して出力する第2の選択手段とを備え、前記第2の選択手段は、Nフレーム/秒で構成されるプログレッシブ映像信号がMフレーム/秒で構成されるプログレッシブ映像信号に変換されることにより同一映像が複数フレーム連続して出力される際に前記複数フレームのうち1フレーム目が出力されるタイミングを示す信号である変換制御信号に同期して前記クロマキー映像を前記輝度信号に多重する構成としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フレームレートを変換した時の変換制御信号により、同じ映像が複数フレーム続いた時の2回目以降のフレームの輝度信号の代わりに、その映像の色信号をクロマキー映像として記録しておくことにより、別途このクロマキー映像を取り出してクロマキー合成に用いることができるので、より高い解像度の合成映像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態1)
はじめに、本発明の映像信号処理装置を含んだ映像信号記録装置の概略構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における映像信号記録装置の構成図である。24Hz同期信号213に同期した24P映像信号は、24P映像信号R201、24P映像信号G202及び24P映像信号B203の3つの色信号成分で構成される。これらの色信号は入力端子から入力され、24Hz同期信号213と共にフレームレート変換手段113に送られる。フレームレート変換手段113は、これらの24P映像信号のフレームレートを2:3プルダウン方式により60Hz同期信号205に同期して60フレーム/秒に変換して、60P映像信号R206、60P映像信号G207及び60P映像信号B208として出力する。本発明の映像信号処理装置101は、2:3プルダウン変換された60P映像信号R206、60P映像信号G207及び60P映像信号B208を60フレーム/秒のコンポーネント映像に変換すると共にクロマキー映像を多重化して、多重信号303、色差信号Cr304、色差信号Cb305を出力する。記録手段114は、映像信号処理装置101によって出力される多重信号303、色差信号Cr304、色差信号Cb305を磁気テープ、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録する。
【0017】
このように映像信号処理装置101の前段にフレームレート変換手段113を、後段に記録手段114を設けることにより、本実施の形態の映像信号記録装置が構成される。なお、映像信号処理装置としては、フレームレート変換手段113を含めた構成としてもよい。
【0018】
次に、映像信号処理装置101の構成について説明する。変換手段102は、フレームレート変換手段113の出力を入力とし、これらをコンポーネント映像、すなわち輝度信号Y209、色差信号Cr210、色差信号Cb211に変換して出力する。第1の選択手段103は、フレームレート変換手段113の出力を入力とし、その入力信号のうち切換制御信号によって選択されたいずれか1つの信号を選択してクロマキー映像212として出力する。第2の選択手段104は、変換手段102の出力であるコンポーネント映像及び第1の選択手段103の出力であるクロマキー映像212を入力とし、フレームレート変換手段113から入力された2:3プルダウン変換の変換制御信号302(後述)に同期してこれら2つの入力のうちいずれかを選択して出力する。なお、第2の選択手段104及び記録手段114は、共に変換制御信号302に同期して動作する。
【0019】
図2及び図3を用いて、24P映像信号を60P映像信号に2:3プルダウン変換しながらクロマキー映像を作成する場合の映像信号記録装置の動作について説明する。図2は、本実施の形態の映像信号記録装置を用いて、24P映像信号を60P映像信号に2:3プルダウン変換しながらクロマキー映像を作成した場合の、映像信号記録装置への入力信号から第2の選択手段104へ入力される信号までのタイミング図である。24P映像信号R201、24P映像信号G202、24P映像信号B203は、連続した4つのフレームの映像をそれぞれA、B、C、Dで表している。フレーム番号205は、2:3プルダウン変換の結果出力される60P映像信号に便宜的に付与した番号である。
【0020】
図3は、本実施の形態の映像信号記録装置を用いて、24P映像信号を60P映像信号に2:3プルダウン変換しながらクロマキー映像を作成した場合の、第2の選択手段104以降の信号のタイミング図である。
【0021】
まず、フレームレート変換手段113は、24P映像信号R201、24P映像信号G202、24P映像信号B203が入力されると、24Hz同期信号213及び60Hz同期信号204に同期して入力信号のフレームレートを2:3プルダウン変換して60P映像信号R206、60P映像信号G207、60P映像信号B208として出力する。具体的には、フレーム番号205のフレーム番号1、2でフレームAを、3、4、5でフレームBを、フレーム番号6、7でフレームCを、8、9、10、でフレームDをそれぞれ変換している。
【0022】
また、フレームレート変換手段113は、この2:3プルダウン変換の位相に同期して変換制御信号302を出力する。変換制御信号302は、24P映像信号が2:3プルダウン変換によって60P映像信号に変換されることにより、同一の映像が複数フレーム連続して出力される際に、その連続する複数フレームのうち1フレーム目が出力されるタイミングを示す信号であり、より具体的には、連続するフレームのうち1フレーム目のタイミングでハイレベルとなり、2フレーム目以降のタイミングでローレベルとなる信号である(ハイレベル、ローレベルが逆転していてもよい)。すなわち、変換制御信号302は、フレーム番号1、3、6、8のタイミングでハイレベル、フレーム番号2、4、5、7、9、10でローレベルとなる。このように、フレームレート変換手段113での2:3プルダウン変換の位相と変換制御信号302の位相とは同期することになる。
【0023】
次に、変換手段102に60P映像信号を構成する60P映像信号R206、60P映像信号G207、60P映像信号B208を入力すると、色空間変換が行われて輝度信号Y209、色差信号Cr210、色差信号Cb211が出力される。また、第1の選択手段103は60P映像信号R206、60P映像信号G207及び60P映像信号B208のうちいずれかひとつを、外部入力である切換制御手段112により選択してクロマキー映像212として出力する。切換制御手段112はこれらの映像信号RGB映像のうちいずれかひとつの信号を選ぶ手段であればどのような方法でもよく、用途に合わせて使用者が設定できる方法の他に例えば、入力映像を分析して一番クロマキー映像として適切な色信号を自動的に選択する手段を映像信号処理装置または映像信号記録装置に内蔵する方法等の様々な方法を適用できる。
【0024】
そして、フレームレート変換手段113の出力信号である変換制御信号302を第2の選択手段104に入力する。フレームを判別して切換を制御する変換制御信号302は、例えば60Hz同期信号204に同期して1から5までの5フレーム分を繰り返し計数する巡回カウンタを2:3プルダウン変換の位相に同期して動作させて、図3のように巡回カウンタ番号301が1と3のときにハイレベルになるように設計すればよい。
【0025】
この変換制御信号302がハイレベルのとき、第2の選択手段104はこれに同期して多重信号303として輝度信号Y209を、色差信号Cr304として色差信号Cr210を、色差信号Cb305として色差信号Cb211を、各々出力する。また、制御信号301がローレベルのとき、第2の選択手段104はこれに同期して多重信号303としてクロマキー映像212を、色差信号Cr304としてローレベルの信号を、色差信号Cb305として同じくローレベルの信号を選択して出力する。言い換えると、第2の選択手段104は出力を3つ備えており、1つ目の出力信号は輝度信号209にクロマキー映像212を多重した信号を多重信号303として出力し、2つ目の出力信号は色差信号Cr210を色差信号Cr304として出力し、3つ目の出力信号は色差信号Cb211を色差信号Cb305として出力する。なお、図1では制御信号301がローレベルのとき、第2の選択手段104は色差信号Cr304と色差信号Cb305の出力をGNDにつないでローレベルの信号を出力するように設計されているが、制御信号301がローレベルのときにハイレベルの信号を出力したり、変換制御信号302の状態に関わらず常に色差信号Cr210、色差信号Cb211を各々出力してもよい。
【0026】
最後に、映像信号処理装置101の出力映像信号である多重信号303、色差信号Cr304、色差信号Cb305は記録手段114に入力され、ガンマ補正などのディジタル処理が行われた後、変換制御信号302と共に記録媒体に記録される。なお、多重信号303、色差信号Cr304、色差信号Cb305は映像フォーマットとしては60フレーム/秒のコンポーネント映像と変わらないため、既存の記録方法で記録媒体に記録することができる。
【0027】
以上のように、本発明の映像信号処理装置を用いることによって、2:3プルダウン変換された映像に対して、広帯域の輝度信号と同じ帯域のクロマキー映像を輝度信号に多重して出力できるため、広帯域の輝度信号と同じ帯域のクロマキー映像を作成できることから高い解像度の合成映像を作り出すことができる。
【0028】
なお、本実施の形態では24P映像信号を60P映像信号に変換しながらクロマキー映像を作成した場合を例にして説明したが、本発明は、M≧2×N(ただしM>0、N>0)としたときにNフレーム/秒の映像信号をMフレーム/秒に変換した映像信号に対してクロマキー映像を生成して多重化する場合に適用可能である。言い換えれば、フレームレート変換の結果、変換前のフレームが少なくとも2フレーム繰り返されるような変換がなされる場合であれば、同一映像の2フレーム目にクロマキー映像を多重化することができる。たとえば、24P映像信号を50P映像信号に変換する場合や、30P映像信号を60P映像信号に変換する場合にも適用可能である。また、フレームレート変換方式も、2:3プルダウン方式以外に、2:3:3:2プルダウン方式等、他の方式を適用することも可能である。例えば2:3:3:2プルダウン方式を適用する場合、フレームレート変換手段113からは、変換制御信号302として、フレーム番号1、3、6、9のタイミングでハイレベル、フレーム番号2、4、5、7、8、10でローレベルが出力されるようにすればよい。また、第2の選択手段104は、このタイミングに従って出力を切り替えるようにすればよい。
【0029】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2として、本発明の映像信号処理装置を用いた映像信号記録装置をクロマキー合成映像生成システムの一部として使用した例を示した構成図である。映像信号記録装置401は、ディジタル化された24P映像信号を入力映像信号405とする本発明の実施の形態1で説明した映像信号記録装置である。映像信号記録装置401は、入力映像信号405にクロマキー映像を多重した映像信号、すなわち多重信号303、色差信号Cr304、色差信号Cb305および変換制御信号302を記録媒体に記録する。映像抽出手段402は、前記映像信号記録装置401で記録したこれらの映像信号を記録媒体から再生して入力信号とし、その入力信号から輝度信号Y502、色差信号Cr503、色差信号Cb504及びクロマキー映像602を抽出する。抽出した輝度信号Y502、色差信号Cr503及び色差信号Cb504が図6におけるコンポーネント映像601を構成する。映像入力手段404は、映像合成手段403に背景映像604を入力する。背景映像604は、外部から伝送されてくる映像でも、記録媒体から再生される映像でもよい。映像合成手段403は、輝度信号Y502、色差信号Cr503、色差信号Cb504、クロマキー映像602及び背景映像604を入力とし、図6のようなクロマキー合成処理を行い、合成映像信号605を出力する。
【0030】
図5は、本発明の実施の形態2における各信号のフレームごとのタイミング図である。まず、本発明の実施の形態1と同様に、映像信号記録装置401で記録媒体に記録された信号である多重信号303、色差信号Cr304、色差信号Cb305、変換制御信号302を映像抽出処理手段402に入力し、下記のように映像信号の抽出を行う。
【0031】
映像抽出手段402は、変換制御信号302がハイレベルのとき入力信号である多重信号303から輝度信号502を、色差信号Cr304から色差信号Cr503を、色差信号Cb305から色差信号Cr503を各々抽出する。また変換制御信号302がローレベルのとき多重信号303からクロマキー映像505を、色差信号Cr304からローレベル信号を、色差信号Cb305からローレベル信号を各々抽出する。
【0032】
次にこれらの信号を映像合成手段403へ入力し、コンポーネント映像601、クロマキー映像602を合成することで被写体映像603のように被写体が抜き取られる。そして、映像合成手段403が映像入力手段404から入力された背景映像604に被写体映像603を合成すると、背景と被写体が合成された合成映像605が得られる。
【0033】
以上のように本発明の実施の形態2によると、本発明の映像信号処理装置が出力した映像信号から、広帯域のクロマキー映像とコンポーネント映像とを取り出して高解像度の画像の合成を行うクロマキー合成映像生成システムを実現することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では24P映像信号を60P映像信号に変換しながらクロマキー映像を作成した場合を例にして説明したが、本発明は、M≧2×N(ただしM>0、N>0)としたときにNフレーム/秒の映像信号をMフレーム/秒に変換した映像信号に対してクロマキー映像を生成して多重化する場合にも適用可能であるのは実施の形態1と同様である。
【0035】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3としての、本発明の映像信号処理装置を用いた映像信号記録装置の構成図である。図1に示した実施の形態1と相違する点は、記録手段114に映像信号を出力する3つのモードを備えた点であり、その他の構成は同じである。3つのモードとは、輝度信号Y209、色差信号Cr210及び色差信号Cb211から構成されるコンポーネント映像を常に出力するコンポーネントモード、クロマキー映像212を常に出力するクロマキーモード、これらを多重化して出力する多重モードである。これらのモードの切り換えは、外部での所定の操作を入力する選択操作手段702により切り替え動作をする切換制御信号発生手段701を設けることで行う。すなわち、切換制御信号発生手段701が第2の選択手段104に入力する制御信号を選択操作手段からの切り替え動作に基づいて多重モード制御信号801、コンポーネントモード制御信号802、クロマキーモード制御信号803のように選択するようにする。
【0036】
図8は、本発明の実施の形態3における各制御信号のフレームごとのタイミング図である。選択操作手段702により、切換制御信号発生手段701の入力を多重モード制御信号801に選択した場合、多重モード制御信号801は図8のように、変換制御信号302をそのまま出力した信号となる。そして多重モード制御信号801がハイレベルのときは輝度信号と色差信号が第2の選択手段104から出力され、制御信号801がローレベルのときはクロマキー映像が第2の選択手段104から出力されるので、第2の選択手段104は輝度信号にクロマキー映像を多重した信号と、色差信号とを出力する。これは前述の実施の形態のときと同じ動作である。切換制御信号発生手段701の入力としてコンポーネントモード制御信号802のように常にハイレベルである信号を選択すると、第2の選択手段104の出力は、このハイレベルの入力に応じて常に輝度信号と色差信号のコンポーネント映像となる。また、切換制御信号発生手段701の入力としてクロマキーモード制御信号803のように常にローレベルである信号を選択すると、第2の選択手段104の出力は、このローレベルの入力に応じて常にクロマキー映像となる。
【0037】
以上、切換制御信号発生手段701を設けることによって、クロマキー映像が不要なときはコンポーネントモードにしておけばコンポーネント映像のみを出力できる。これは、撮影前にモニターでコンポーネント映像を確認するときにも利用することができる。また、クロマキー映像のみ必要な場合や、撮影前にモニターでクロマキー映像を確認する場合はクロマキーモードに設定しておけばよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の映像信号処理装置によれば、従来のクロマキー映像よりも広帯域の信号を出力することができ、より高画質な合成映像を得ることができるため、高い解像度を持つ合成映像を撮影する映像撮影装置や映像編集装置等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1における映像信号記録装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における信号のフレームごとのタイミング図
【図3】本発明の実施の形態1における信号のフレームごとのタイミング図
【図4】本発明の実施の形態2におけるクロマキー合成映像生成システムの構成図
【図5】本発明の実施の形態2における各信号のフレームごとのタイミング図
【図6】クロマキー技術で合成映像を作成する過程を説明した図
【図7】本発明の実施の形態3における映像信号記録装置の構成図
【図8】本発明の実施の形態3における制御信号のフレームごとのタイミング図
【図9】従来の映像信号処理装置の構成図
【図10】24P映像信号を60P映像信号に2:3プルダウン変換したときのタイミング図
【符号の説明】
【0040】
101・・・映像信号処理装置
102・・・変換手段
103・・・第1の選択手段
104・・・第2の選択手段
112・・・切換制御手段
113・・・フレームレート変換手段
114・・・記録手段
201・・・24P映像信号R
202・・・24P映像信号G
203・・・24P映像信号B
204・・・60Hz同期信号
206・・・60P映像信号R
207・・・60P映像信号G
208・・・60P映像信号B
209・・・輝度信号Y
210・・・色差信号Cr
211・・・色差信号Cb
212・・・クロマキー映像
213・・・24Hz同期信号
302・・・変換制御信号
303・・・多重信号
304・・・色差信号Cr
305・・・色差信号Cb
401・・・映像信号記録装置
402・・・映像抽出手段
403・・・映像合成手段
404・・・映像入力手段
405・・・入力映像信号
605・・・出力映像信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nフレーム/秒(N>0)で構成されるプログレッシブ映像信号をプルダウンしてMフレーム/秒(M≧2×N)で構成されるプログレッシブ映像信号に変換した信号を入力映像信号とし前記入力映像信号のR、G、Bの色信号成分を輝度信号及び色差信号を含むコンポーネント映像に変換して出力する変換手段と、
前記入力映像信号のR、G、Bの色信号成分のうちいずれか1つの色信号成分を選択してクロマキー映像として出力する第1の選択手段と、
前記コンポーネント映像及び前記クロマキー映像のうちいずれか一方を選択して出力する第2の選択手段とを備え、
前記第2の選択手段は、Nフレーム/秒で構成されるプログレッシブ映像信号がMフレーム/秒で構成されるプログレッシブ映像信号に変換されることにより同一映像が複数フレーム連続して出力される際に前記複数フレームのうち1フレーム目が出力されるタイミングを示す信号である変換制御信号に同期して前記クロマキー映像を前記輝度信号に多重する映像信号処理装置。
【請求項2】
前記入力映像信号は、24フレーム/秒で構成されるプログレッシブ映像信号を2:3プルダウン処理することにより60フレーム/秒で構成されるプログレッシブ映像信号に変換したものである請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記入力映像信号は、24フレーム/秒で構成されるプログレッシブ映像信号を2:3:3:2プルダウン処理することにより60フレーム/秒で構成されるプログレッシブ映像信号に変換したものである請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記第2の選択手段は、前記変換制御信号に基づいて、前記複数フレームのうち1フレーム目が出力されるタイミングに同期して前記輝度信号及び前記色差信号を選択して出力し、その他のフレームの入力タイミングに同期して前記クロマキー映像を選択して出力する請求項1乃至3記載の映像信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−229673(P2006−229673A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41968(P2005−41968)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】