説明

映像信号通信システムおよびその通信方法

【課題】複数の回線の映像信号を同時送信する要求に対して伝送帯域が確保されない場合でも、ネットワークの輻輳を防ぎ、映像信号の品質劣化を最小限に抑える映像信号通信システムおよびその通信方法を提供。
【解決手段】映像信号通信システム70は映像信号送信装置78および映像信号受信装置88を含み、映像信号送信装置78は、優先順位が設定された8つのHD SDI信号それぞれをY/PbPr 301に変換し、生成した帯域変換情報306を基にサンプリングレート変換し、組み立てたIPパケットを選択して多重化し、受信した帯域制御信号311から帯域制御情報305を生成して、多重化パケットデータ304を映像信号受信装置88に送信し、映像信号受信装置88は、受信した多重化パケットデータ401を分離し、分離されたパケット毎に抽出し変換したY/PbPr 403を復元した帯域変換情報405に基づきサンプリングレート逆変換し、S/P変換して原映像信号407を復元する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号通信システムおよびその通信方法に関するものであり、とくに、非圧縮の高品位テレビジョン(HDTV:High-Definition Television)などの映像信号をインターネットなどのIP(Internet Protocol)プロトコル通信網で伝送する通信システムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インターネットなどのIPネットワークを利用してHDTVなどの映像信号を伝送するサービスが実用化され、その方法が各種提案されている。インターネットのようにQoS(Quality of Service)が保証されていない通信網では、伝送帯域や伝送品質が一定に維持されない。このため、映像信号や音声信号などの連続信号をリアルタイムで伝送する場合に、品質が劣化してしまい、高品質な伝送ができない場合が多い。
【0003】
たとえば、特許文献1や特許文献2に示された方法は、ネットワークの伝送帯域の情報を逐次送信側にフィードバックして、送信される信号の帯域を制御することにより、ネットワーク上での輻輳を制御し、品質の劣化を抑制して送信信号を効率的に伝送している。
【0004】
非特許文献1として挙げたBTA S-001B、S-002B、S-004B、S-005S、S-006S、1125/60方式HDTVスタジオシステム標準規格では、標準化されているHDTVの非圧縮信号のようにデータ量が固定である場合の例が開示されている。また、非特許文献2にて開示された装置は、HDTVの非圧縮信号をIPネットワークを利用して伝送するものである。
【特許文献1】特開2002-135783号公報
【特許文献2】特開2003-244695号公報
【非特許文献1】BTA S-001B、S-002B、S-004B、S-005S、S-006S、1125/60方式HDTVスタジオシステム標準規格
【非特許文献2】持田武明他「10ギガビットネットワークにおける非圧縮HDTV映像多重伝送技術」NTT技術ジャーナル2005.2、第46頁〜第49頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献2に示された方法では、送信される信号は、MPEG(Moving Picture Experts Group)方式などにより符号化された信号を前提にして、元々伝送レートが制御できる信号をできるだけ高品質を保つように制御する方法である。したがって、非特許文献1で標準化されているHDTVの非圧縮信号のようにデータ量が固定である場合には、この方法は適用できない。
【0006】
さらに、非特許文献2にて開示された装置は、HDTVの非圧縮信号を、IPネットワークを利用して伝送するものであるが、ネットワークは、10ギガイーサネットなどの高速回線を使用して、十分な伝送帯域が保証された中での使用を前提としている。このため、ネットワークのトラヒック輻輳への対処としては、とくに示されているものはない。
【0007】
ところで、最近、IPネットワークを利用した信号の伝送において、QoSと称する帯域の保証されたネットワークが取り入られてきている。これは、伝送する信号の宛先やサービス種別に応じてクラス分けし、このクラスごとに優先制御や帯域制御を行なうものである。通常は、映像信号や音声信号などのリアルタイム性を必要とする信号を優先する。この他のリアルタイム性が要求されないデータなどは、ベストエフォート型での伝送方法がとられる場合が多い。
【0008】
しかし、非圧縮のHDTV信号などの高速信号の場合、この伝送帯域は1チャンネルで1.5Gbit/s以上を要する。たとえば、2.4Gbit/sの伝送帯域にこのHDTVの非圧縮信号を複数流そうとした場合や、10Gbit/sの伝送帯域で複数の映像信号を流そうとした際に伝送帯域が10Gbit/sを超えるような場合では、ネットワークが輻輳してしまう。この輻輳の対処として、同じ種類の映像信号に対してQoSのクラス分けで帯域保証をすることは困難であった。また、MPEG圧縮信号のように、伝送レートを制御することも困難であった。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑み、複数の回線の映像信号を同時送信する要求に対して伝送帯域が確保されない場合でも、ネットワークの輻輳を防ぎ、映像信号の品質劣化を最小限に抑えることのできる映像信号通信システムおよびその通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上述の課題を解決するために、複数の映像信号を多重化して通信ネットワークを通して送信する映像信号送信装置と、この映像信号を受信する映像信号受信装置とを含む映像信号通信システムにおいて、映像信号送信装置は、優先順位に無関係に信号を帯域変換するか否かを指定する指定情報を有し、優先順位が設定された複数の原映像信号のそれぞれを第1の輝度信号および第1の色差信号に変換する原映像信号別変換手段と、複数の原映像信号ごとに、指定情報、ならびに帯域制御情報および優先順位から帯域変換を優先制御するための帯域変換情報を生成し、この帯域変換情報に基づき第1の輝度信号および第1の色差信号の伝送帯域を制御し、それぞれ伝送帯域を制御された第2の輝度信号および第2の色差信号を生成する原映像信号別伝送帯域制御手段と、複数の原映像信号ごとに、第2の輝度信号および第2の色差信号を帯域変換情報が付与されたパケットに組み立てる原映像信号別パケット化手段と、帯域変換情報に基づきパケットのうち伝送可能なパケットを選択して多重化し、多重化パケットデータを生成する選択多重化手段と、映像信号受信装置から帯域制御信号を受信して、この帯域制御信号に基づいて帯域制御情報を生成するとともに、多重化パケットデータをネットワークを経由して映像信号受信装置に送信する送信制御手段とを含み、映像信号受信装置は、ネットワークを経由して送られた多重化パケットデータを受信するとともに、このネットワークの回線状況から帯域制御信号を生成して、この帯域制御信号を映像信号送信装置に送出する受信制御手段と、受信した多重化パケットデータからパケットを分離するとともに、帯域変換情報を復元する多重化パケット分離手段と、分離されたパケットごとに、映像データを抽出し、この映像データを第2の輝度信号および第2の色差信号に変換して出力するパケット別映像データ抽出変換手段と、パケットごとに、復元された帯域変換情報に基づき、第2の輝度信号および第2の色差信号の伝送帯域を第1の輝度信号および第1の色差信号の伝送帯域に復元するパケット別伝送帯域復元手段と、パケットごとに、復元された第1の輝度信号およびこの第1の色差信号から原映像信号を復元するパケット別映像信号復元手段とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は上述の課題を解決するために、複数の原映像信号を映像信号データに変換し多重化して通信ネットワークを通して伝送する映像信号通信システムにおける通信方法において、この方法は、映像信号データを送信する側の映像信号送信装置において、多重化された映像信号データの送出に先立ち、通信ネットワークの使用可能な伝送帯域を帯域制御情報として取得し、複数の原映像信号ごとに設定されている優先順位を取得し、優先順位に無関係に信号を帯域変換するか否かを指定する指定情報を取得する第1の工程と、原映像信号ごとに、取得した指定情報、ならびに帯域制御情報および優先順位に基づき帯域を優先制御するための帯域変換情報を生成し、この帯域変換情報に基づき原映像信号の伝送帯域を変換して伝送帯域変換後の映像信号データを生成するか、または原映像信号を破棄するかを適応的に選択して帯域変換を行なう第2の工程と、帯域変換後の映像信号データに帯域変換情報を付与して、これらをパケットとして生成し、この生成されたパケットを帯域変換情報に基づき選択して多重化を行ない、多重化パケットデータを生成する第3の工程と、この生成された多重化パケットデータを通信ネットワークを介して、このシステムにおける受信側の映像信号受信装置に送信する第4の工程と、この映像信号受信装置において、多重化パケットデータを受信し、受信映像信号データを生成するとともに、帯域制御情報を生成して映像信号送信装置に送信する第5の工程と、受信映像信号データをパケットに分離するとともに、帯域変換情報を復元し、パケット別に、受信映像信号データの伝送帯域を帯域変換情報に基づき原映像信号の伝送帯域に逆変換し、この逆変換された信号データから原映像信号を復元する第6の工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の回線の映像信号を同時送信する要求を受けた際にその伝送帯域が確保されない場合でも、選択的な多重化によりネットワークの輻輳を防いで、映像信号の品質劣化を最小限に抑えて伝送することができる。本発明は、たとえば、IPネットワークを利用して非圧縮映像信号を伝送するテレビジョン放送の番組素材伝送や映像配信などの映像通信システムに、とりわけ有利に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る映像信号通信システムの実施例における映像信号送信装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る映像信号通信システムの実施例における映像信号受信装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図3】図1の映像信号送信装置における輝度信号サンプリングレート変換部の一構成例を示す図である。
【図4】図1の映像信号送信装置における色差信号サンプリングレート変換部の一構成例を示す図である。
【図5】図1の映像信号送信装置におけるサンプリングレート変換の演算例を説明する図である。
【図6】図1の映像信号送信装置におけるローパスフィルタ特性の一例を示すフィルタ特性図である。
【図7】図1に示す映像信号送信装置による映像データのIPパケット化を説明する図である。
【図8】図7に関連して映像データのIPパケット化を説明する図である。
【図9】図1の映像信号送信装置が作成する送信者レポートの構成例を示す図である。
【図10】図2の映像信号受信装置が作成する受信者レポートの構成例を示す図である。
【図11】本発明に係る映像信号通信システムの他の実施例における映像信号送信装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図12】図11の送信装置に対応する映像信号受信装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図13A】図11に示す映像信号送信装置の優先制御と多重方法の例を示し、6信号をフル帯域多重し、2信号を破棄する場合を説明する図である。
【図13B】図11に示す映像信号送信装置の優先制御と多重方法の例を示し、4信号をフル帯域多重し、4信号を帯域1/2で多重する場合を説明する図である。
【図13C】図11に示す映像信号送信装置の優先制御と多重方法の例を示し、8信号を帯域3/4で多重する場合を説明する図である。
【図13D】図11に示す映像信号送信装置の優先制御と多重方法の例を示し、8信号を帯域3/4で多重する場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に添付図面を参照して本発明による映像信号通信システムの実施例を詳細に説明する。まず、図11および図12を参照すると、これらは、本発明による映像信号通信システムの実施例の構成ブロック図であるが、図11は、映像信号通信システム70における送信側、すなわち映像信号送信装置78を示し、図12は、受信側、すなわち映像信号受信装置88を示す。両装置78および88は、インターネットなどのIP(Internet Protocol)プロトコル通信網56に接続されている。
【0015】
実施例の映像信号通信システム70において、映像信号送信装置78は、SDI-INF S/P変換部71で優先順位に無関係に信号を帯域変換するか否かを指定する指定情報を有し、優先順位が設定された8つのHD SDI信号それぞれを出力信号301として輝度信号および色差信号に変換し、サンプリングレート変換処理部72で8つのHD SDI信号ごとに、指定情報、ならびに帯域制御情報および優先順位から帯域変換を優先制御するための帯域変換情報306を生成し、この帯域変換情報306に基づき輝度信号および色差信号の伝送帯域を制御し、それぞれ伝送帯域を制御された他の輝度信号および他の色差信号を生成して出力信号302として出力し、IPパケット化部73で8つのHD SDI信号ごとに、他の輝度信号および他の色差信号を帯域変換情報が付与されたパケットに組み立てた出力信号303を出力して、選択多重化部74で帯域変換情報306に基づきパケットのうち伝送可能なパケットを選択して多重化し、多重化パケットデータ304を生成し、送信制御部77で映像信号受信装置88から帯域制御信号311を受信して、この帯域制御信号311に基づいて帯域制御情報305を生成するとともに、多重化パケットデータをネットワーク56を経由して映像信号受信装置88に送信する。
【0016】
映像信号受信装置88は、受信制御部81でネットワーク56を経由して送られた多重化パケットデータ310を受信するとともに、このネットワーク56の回線状況から帯域制御信号311を生成して、この帯域制御信号311を映像信号送信装置78に送出し、多重化パケット分離部82で受信した多重化パケットデータ401からパケットを分離するとともに、帯域変換情報405を復元し、映像データ抽出変換部83で分離されたパケットごとに、映像データを抽出し、この映像データを他の輝度信号および他の色差信号に変換し、出力信号403として出力し、サンプリングレート逆変換処理部84でパケットごとに、復元された帯域変換情報405に基づき、他の輝度信号および他の色差信号の伝送帯域を輝度信号および色差信号の伝送帯域に復元して出力信号404を出力し、SDI-INF S/P変換部85でパケットごとに、復元された輝度信号およびこの色差信号から原映像信号407を復元する。
【0017】
これにより、複数の回線の映像信号300を同時送信する要求を受けた際にその伝送帯域が確保されない場合でも、選択的な多重化によりネットワークの輻輳を防いで、映像信号の品質劣化を最小限に抑えて伝送することができ、たとえば、IPネットワークを利用して非圧縮映像信号を伝送するテレビジョン放送の番組素材伝送や映像配信などの映像通信システムに、とりわけ有利に適用される。
【0018】
まず、図1を参照すると、映像信号送信装置52には、本実施例では、映像信号100が入力される。この映像信号100は、たとえば非特許文献1にて標準化されている1.485/1.001 Gbit/sのHD-SDI(High Definition-Serial Digital Interface)信号でよい。HD-SDI信号100はSDI INF-S/P変換部61に入力される。SDI INF-S/P変換部61は、HD-SDI信号100とインタフェース(INF)し、これをシリアルパラレル(S/P)変換して、輝度(Y)信号101、色差(PbPr)信号102および同期タイミング信号103を出力する映像信号変換手段を構成している。輝度(Y)信号101は、輝度信号サンプリングレート変換部62および輝度信号遅延調整部66に接続される。また、色差(PbPr)信号102は、色差信号サンプリングレート変換部63および色差信号遅延調整部67に接続される。また、同期タイミング信号103は、タイミング抽出部64に接続される。
【0019】
タイミング抽出部64は、SDI INF-S/P変換部61、輝度信号サンプリングレート変換部62および色差信号サンプリングレート変換部63に接続され、SDI INF-S/P変換部61で生成された同期タイミング信号103からサンプリングレート変換に必要なタイミング信号を生成する機能部である。
【0020】
映像信号送信装置52はサンプリングレート制御部65を有し、これは、送信制御部10、輝度信号サンプリングレート変換部62および色差信号サンプリングレート変換部63に接続され、後述の送信制御部10からの帯域制御情報104に基づいてサンプリングレート制御情報105および106を生成して、輝度信号サンプリングレート変換部62および色差信号サンプリングレート変換部63を制御する制御回路である。
【0021】
輝度信号サンプリングレート変換部62は、SDI INF-S/P変換部61、選択部68、タイミング抽出部64およびサンプリングレート制御部65に接続されている。輝度信号サンプリングレート変換部62は、SDI INF-S/P変換部61より輝度信号101が入力され、タイミング抽出部64の出力信号107でタイミングをとり、サンプリングレート制御部65からのサンプリングレート制御情報105により輝度信号101をサンプリングレート変換して選択部68に送る機能を有する。同様に、色差信号サンプリングレート変換部63は、SDI INF-S/P変換部61より色差信号102が入力され、タイミング抽出部64の出力信号108でタイミングをとり、サンプリングレート制御部65からのサンプリングレート制御情報106により色差信号102をサンプリングレート変換して選択部68に送る機能部である。
【0022】
輝度信号遅延調整部66は、選択部68に接続され、サンプリングレート変換部62の輝度信号出力110を適応的に切り替える際に、輝度信号についてデータのずれがないように遅延時間を調整する機能部である。同様に、色差信号遅延調整部67は、選択部68に接続され、サンプリングレート変換部63の色差信号出力を適応的に切り替える際に、色差信号についてデータのずれがないように遅延時間を調整する機能部である。
【0023】
選択部68は、輝度信号112および色差信号114を出力し、これらの信号が、IPパケット化部69に供給されている。選択部69は、送信制御部10からの帯域制御情報104に基づいて、輝度信号サンプリングレート変換部62からの出力信号110について、後述のサンプリングレートを変換した信号としない信号とを選択的に切り替え、結果の信号を出力112に出力し、また、色差信号サンプリングレート変換部63からの出力信号111について、サンプリングレートを変換した信号としない信号とを選択的に切り替える選択機能を有する。これらタイミング抽出部64、サンプリングレート制御部65、輝度信号サンプリングレート変換部62、色差信号サンプリングレート変換部63、輝度信号遅延調整部66、色差信号遅延調整部67および選択部68は、伝送帯域制御手段を構成している。
【0024】
IPパケット化部69は、選択部68からの出力112および114をIPパケットに組み立てるIPパケット化機能部である。その出力115には、送信制御部10に接続されている。送信制御部10には、サンプリングレート制御部65、選択部68およびIPパケット化部69に帯域制御情報104が制御信号として供給され、さらにネットワーク56を介して受信側の映像信号受信装置54と接続されている。送信制御部10は、受信側の受信制御部11と通信リンクの確立のためプロトコルの送受を行なうとともに、IPパケット化された映像信号202を受信側の映像信号受信装置54に送信する制御機能部である。
【0025】
次に、図2を参照して、映像信号受信装置54を記述する。映像信号受信装置54は受信制御部11を有し、受信制御部11は、ネットワーク56および映像データ抽出変換部12に接続されている。受信制御部11は、ネットワーク56と接続され、送信側の映像信号送信装置52の送信制御部10と通信リンクの確立のためプロトコルの送受を行なうとともに、IPパケット化された映像信号202を受信して映像データ抽出変換部12に送る機能部である。受信制御部11はまた、後述のRTCPパケットの送受信などの各種通信制御を行ない、たとえば、送信側の映像信号送信装置52へRTCPパケットを使用して帯域制御情報200を送信する機能を有する。
【0026】
映像データ抽出変換部12は、輝度信号サンプリングレート逆変換部13、色差信号サンプリングレート逆変換部14、輝度信号遅延調整部17、色差信号遅延調整部18、タイミング抽出部15、サンプリングレート制御部16および選択部19に接続され、受信したIPパケットから映像データを抽出して、輝度(Y)信号201、色差(PbPr)信号202、同期タイミング信号203および帯域制御信号205を生成する機能部である。
【0027】
映像データ抽出変換部12から出力された輝度(Y)信号201は、輝度信号サンプリングレート逆変換部13および輝度信号遅延調整部17に接続される。また、色差(PbPr)信号202は、色差信号サンプリングレート逆変換部14および色差信号遅延調整部18に接続される。さらに、同期タイミング信号203および帯域制御信号205は、それぞれタイミング抽出部15およびサンプリングレート制御部16に接続されている。
【0028】
タイミング抽出部15は、輝度信号サンプリングレート逆変換部13および色差信号サンプリングレート逆変換部14に接続され、映像データ抽出変換部12で生成された同期タイミング信号203からサンプリングレート逆変換に必要なタイミング信号206および207を生成する機能を有する。サンプリングレート制御部16は、輝度信号サンプリングレート逆変換部13および色差信号サンプリングレート逆変換部14に接続され、映像データ抽出変換部12からの帯域制御情報205に基づいてサンプリングレート制御情報208および209を生成し、それぞれによって輝度信号サンプリングレート逆変換部13および色差信号サンプリングレート逆変換部14を制御する機能部である。
【0029】
輝度信号サンプリングレート逆変換部13は、タイミング抽出部15、サンプリングレート制御部16および選択部19に接続され、映像データ抽出変換部12からの輝度(Y)信号201をタイミング抽出部15からのタイミング信号206とサンプリングレート制御部16からのサンプリングレート制御情報208によりサンプリングレート逆変換を行なう逆変換機能を有する。
【0030】
同様に、色差信号サンプリングレート逆変換部14は、タイミング抽出部15、サンプリングレート制御部16および選択部19に接続され、映像データ抽出変換部12からの色差(PbPr)信号202をタイミング抽出部15からのタイミング信号207とサンプリングレート制御部16からのサンプリングレート制御情報209によりサンプリングレート逆変換を行なう機能を有する。
【0031】
輝度信号遅延調整部17は、選択部19に接続され、サンプリングレート逆変換部13の輝度信号出力210を適応的に切り替える際に、データのずれがないように遅延時間を調整する機能部である。同様に、色差信号遅延調整部18は、選択部19に接続され、サンプリングレート逆変換部14の色差信号出力211を適応的に切り替える際に、データのずれがないように遅延時間を調整する。
【0032】
選択部19は、SDI INF-P/S変換部20に接続され、映像データ抽出変換部12からの帯域制御情報205に基づいて輝度信号サンプリングレート逆変換部13の出力210および色差信号サンプリングレート変換部14の出力211と、輝度信号遅延調整部17の出力および色差信号遅延調整部18の出力との切換選択を行ない、結果の信号212をSDI INF-P/S変換部20に送る選択機能を有する。これら輝度信号サンプリングレート逆変換部13、色差信号サンプリングレート逆変換部14、タイミング抽出部15、サンプリングレート制御部16、輝度信号遅延調整部17、色差信号遅延調整部18および選択部19は、伝送帯域復号手段を構成している。
【0033】
SDI INF-P/S変換部20は、選択部19の出力212をパラレルからシリアルに変換して元の映像信号であるHD-SDI信号213を出力するSDIインタフェース機能およびパラレルシリアル(P/S)変換機能を有する映像信号復元手段を構成している。
【0034】
動作状態において、本システム50は、送信側の映像信号送信装置52で、ネットワーク56側から受信した帯域制御情報200に基づいて非圧縮の映像信号100をサンプリングレート変換し、データ数を削減して伝送帯域を制御して、これを受信側の映像信号受信装置54に送る。受信側の映像信号受信装置54では、この伝送帯域制御後の映像信号202を受信し、帯域制御情報に基づいてサンプリングレート逆変換して、元の映像信号の伝送帯域に復元し、さらに元の映像信号に復元する。
【0035】
より詳細には、映像信号送信装置52において、HD-SDI映像信号100は1.485/1.001 Gbit/sで到来する。HD-SDI信号100がSDI INF-S/P変換部61に入力されると、SDI INF-S/P変換部61はHD-SDI信号100をシリアル形式からパラレル形式に変換し、さらに、輝度(Y)信号101、色差(PbPr)信号102および同期タイミング信号103を出力する。
【0036】
輝度(Y)信号101は、輝度信号サンプリングレート変換部62に入力される。輝度信号サンプリングレート変換部62は、タイミング抽出部64の出力信号107によりタイミングをとり、すなわちこれに同期して、サンプリングレート制御部65からのサンプリングレート制御情報105によりサンプリングレート変換を行ない、結果の信号110を選択部68に送る。同様に、色差(PbPr)信号102は、色差信号サンプリングレート変換部63に入力され、色差信号サンプリングレート変換部63は、タイミング抽出部64の出力信号108によりタイミングをとり、サンプリングレート制御部65からのサンプリングレート制御情報106によりサンプリングレート変換を行ない、結果の信号111を選択部68に送る。
【0037】
輝度信号サンプリングレート変換部62と色差信号サンプリングレート変換部63は、サンプリングレートで変換するためのフィルタによって構成され、本実施例では入力信号であるHD-SDI信号100の帯域を3/4および1/2にする帯域圧縮機能を有する。図3に輝度信号サンプリングレート変換部62の構成例を、また図4に色差信号サンプリングレート変換部63の構成例を示す。本実施例において、サンプル数を変換するのは、入力映像信号100のうち有効映像領域のみ、つまり垂直ブランキング部および水平ブランキング部を除く信号領域であり、1ライン当り1920サンプルである。この有効映像領域の信号を有効映像信号と称する。
【0038】
本実施例において、サンプリングレート変換は、以下のようにして行なっている。輝度信号サンプリングレート変換部62と色差信号サンプリングレート変換部63は、図3および図4に示すように、いずれも有限インパルス応答(FIR:Finite Impulse Response)フィルタで構成され、1920サンプルを1440または960サンプルに変換する。両図において、符号「D」は、1サンプル遅延素子33または37を示している。本実施例では、10サンプルを使用するフィルタが形成され、たとえば輝度(Y)信号101に対しては10段の遅延素子33によって形成されている。また、色差(PbPr)信号102については、サンプル数は輝度(Y)信号101の半分であるが、青色差(Pb)信号と赤色差(Pr)信号が多重化されて、全体で輝度(Y)信号101と同じ1920サンプル数となっている。このフィルタ構成では、Pb信号とPr信号が互いに混合しないように、2サンプルずつ遅延させた構成をとっている。また、両図に示すFIFO部34および38は、先入れ先出し(First-In First-Out)のレジスタである。
【0039】
図5にサンプリングレート変換における具体的な演算例を示す。1920サンプルを1440サンプルに変換する場合は、4:3の変換となる。そこで、たとえば同図における3種類のフィルタ係数b4、b5、b6を以下の計算式に示すように順に切り替えることで、出力が得られる。
b4 = k12 x a1 + k9 x a2 + k6 x a3 + k3 x a4 + k0 x a5 + k3 x a6 + k6 x a7 + k9 x a8 + k12 x a9
b5 = k13 x a2 + k10 x a3 + k7 x a4 + k4 x a5 + k1 x a6 + k2 x a7 + k5 x a8 + k8 x a9 + k11 x a10 + k14 x a11
b6 = k14 x a3 + k11 x a4 + k8 x a5 + k5 x a6 + k2 x a7 + k1 x a8 + k4 x a9 + k7 x a10 + k10 x a11 + k13 x a12
この計算式のフィルタ係数は、図3および図4にそれぞれ示す係数制御部31および35が制御する。輝度信号サンプリングレート変換部62におけるFIFO書込制御部32は、タイミング信号39を制御して、サンプリング係数b4、b5、b6のようにFIFO部34の出力を順に切り替えていく。これにより、輝度信号サンプリングレート変換部62の入力輝度信号101を1920サンプルから1440サンプルに変換する。また、色差信号サンプリングレート変換部63におけるFIFO書込制御部36は、タイミング信号40を制御して、サンプリング係数b4、b5、b6のようにFIFO部38の出力を順に切り替えていく。これにより、サンプリングレート変換部63の入力色差信号102を1920サンプルから1440サンプルに変換する。
【0040】
同様に、1920サンプルから960サンプルに変換する場合は、たとえば次の計算式C3に示すようにフィルタ係数を順に切替えていくことで、出力が得られる。
c3 = k’12 x a1 + k’9 x a2 + k’6 x a3 + k’3 x a4 + k’0 x a5 + k’3 x a6 + k’6 x a7 + k’9 x a8 + k’12 x a9
図6には、このフィルタ係数を有するフィルタ62および63の周波数特性を例示する。周波数帯域fを有する入力信号100について、1920サンプルを1440サンプルに変換する場合、この変換は4:3の関係であるため、入力信号100を仮想的に3倍のオーバーサンプリングを行なうと、変換後の信号100Aは、元の信号100の3/4の帯域、すなわちオーバーサンプリングした信号に対しては1/4の帯域圧縮となる。つまり、このフィルタは、ローパスフィルタの特性を有する。また、1920サンプルを960サンプルに変換する場合は、2:1の変換となるので、上掲の計算式c3を毎サンプルに適用することで、出力特性100Bが得られる。
【0041】
同様に、図6は、このフィルタの周波数特性を示している。ここで、フィルタ係数は、出力特性100Aの1920サンプルから1440サンプルへの変換の場合と同様に、3倍にオーバーサンプリングした後、元の信号の1/2の帯域(オーバーサンプリングした信号に対しては1/6の帯域)にするローパスフィルタ特性となっているデータへの係数を示している。なお、フィルタ特性100Bについては、オーバーサンプリングせずに1/2の帯域のフィルタ特性を計算することも可能である。
【0042】
図1に戻ると、輝度信号サンプリングレート変換部62と色差信号サンプリングレート変換部63の出力は、選択部68に入力される。輝度信号遅延調整部66と色差信号遅延調整部67は、サンプリングレート変換部62および63の出力を適応的に切り替える際にデータのずれがないように、それぞれ入力信号101および102の遅延時間を調整する。輝度信号遅延調整部66と色差信号遅延調整部67の出力は選択部68に入力される。輝度信号遅延調整部66と色差信号遅延調整部67の出力は、サンプリングレート変換されない信号であり、それぞれ入力信号101および102を遅延時間調整したものである。
【0043】
選択部68は、入力された信号110および111について、サンプリングレート変換したものか変換しないものかのどちらかを選択的に切り替える。この切替え後の信号112および114は、IPパケット化部69に入力される。IPパケット化部69は、入力された信号をIPパケットに組み立て、すなわちパケット化する。図7、図8および図9は、IPパケット化部69が出力する映像データ112および114と、そのIPパケット化を説明するものである。
【0044】
本実施例では、HDTV信号をIPパケット化するフォーマットや方法は、インターネットに関する技術標準を定める団体IETF(The Internet Engineering Task Force)が発行しているRFC(Request For Comments)のRFC3550(RTP: A Transport Protocol for Real-Time Applications)、RFC3497(RTP Payload Format for Society of Motion Picture and Television Engineers (SMPTE) 292M Video)やPro-MPEG Forumから発行されているPro-MPEG Code of Practice #4 release 1(Transmission of High Bit Rate Studio Streams over IP Networks)などで規定された方法に準ずるものでよい。
【0045】
より詳細には、映像データは、RTPパケットのPayloadに乗せて伝送するが、データを基本的にバイト単位で処理する必要があるため、図7に示すように、1サンプル当り輝度(Y)信号、色差(PbPr)信号をそれぞれ10ビット、つまり計20ビットの信号を8ビット単位に変換する。これにより、図8に示すように、EAV(End of Active Video)、SAV(Start of Active Video)およびANC(ANCyillary data)DATA領域の280サンプル分のデータは、8bit*700で表される。有効映像信号の1920サンプル分のデータは、4つの480サンプルに分割して、各480サンプルのデータは、8bit*1200で表される。
【0046】
また、RTPパケットは、Ethernet(商標)で伝送することを想定しているので、パケット長は、MAC(Media Access Control)フレームに収まるようにする必要がある。通常、MACフレームは、ユーザデータが1500バイト以内と決められているため、IPパケットおよびRTPパケットのヘッダ部も考慮し、1パケット当りのデータを1200バイトまでとしている。図8に示すように、EAV、SAVおよびANC DATAの700バイトは独立した1つのパケットとして伝送する。映像データは、サンプリングレート変換を行なわない場合は、4つの1200バイトのデータを4パケットで伝送して、1ラインのデータとする。3/4にサンプリングレート変換した場合は、3つの1200Byteのデータを3パケットで、また、1/2にサンプリングレート変換した場合は、2つの1200バイトのデータを2パケットで、それぞれ映像データを伝送する。つまり、映像データは、最大1200バイトで、1パケット1ラインのデータを3〜5パケットで伝送する。
【0047】
図1に戻って、IPパケット化された信号115は、送信制御部10を介してネットワーク56へ送出される。送信制御部10はまた、サンプリングレート制御のための帯域制御信号200を受信側の映像信号受信装置54からネットワーク56を介して受信する。この帯域制御は、図9の送信者レポートSRおよび図10の受信者レポートRRを含むようにRTCP(RTP Control Protocol)で規定されたパケットを使用して、映像信号送信装置52と映像信号受信装置54との間でやり取りを行なうことで実現している。
【0048】
これは、RFC3550にて規定された方法であり、受信側の映像信号受信装置54において、受け取ったパケットから廃棄率および廃棄パケット数を計算して、図10に例示する受信者レポートRRとして送信側52へ送出する。送信側52では、受け取ったレポートRRにおける廃棄率によって、適切なサンプリングレートを選択して、輝度信号サンプリングレート変換部62、色差信号サンプリングレート変換部63および選択部68の制御を行なう。したがって、サンプリングレートを切り替える単位はRTCPパケットの送受信のサイクルと一致する。
【0049】
ところで、映像信号受信装置54において、受信制御部11は、ネットワーク56と接続され、RTCPパケットの送受信などの各種通信制御を行なう。たとえば、送信側52へRTCPパケットを使用して帯域制御情報200を送信する。映像データ抽出変換部12は、受信したIPパケットから映像データを抽出し、バイト単位の信号を輝度(Y)信号202および色差(PbPr)信号203に、それぞれ10ビットの信号として変換する。
【0050】
映像データ抽出変換部12から出力された輝度(Y)信号202と色差(PbPr)信号203は、それぞれ、輝度信号サンプリングレート逆変換部13と色差信号サンプリングレート逆変換部14に入力され、これとともに輝度信号遅延調整部17と色差信号遅延調整部18にも入力される。輝度信号サンプリングレート逆変換部13と色差信号サンプリングレート逆変換部14は、送信側のサンプリングレート変換とは逆の変換を帯域制御情報に基づいて行なって、サンプル数を元の入力のものに戻す。この基本的な構成は、図3ないし図6に示したサンプリングレート変換と同様の構成および手法にて実現する。サンプリングレート変換処理は、HDTV信号をSDTV(Standard Definition Television)信号にダウンコンバートするアプリケーションを始めとして、一般的に知られた手法であるので、演算方法やフィルタ特性の説明は、省略する。
【0051】
輝度信号遅延調整部17と色差信号遅延調整部18は、1920サンプルのフルレートの信号に対して、輝度信号サンプリングレート逆変換部13の出力210および色差信号サンプリングレート逆変換部14の出力211とのタイミングを一致させるための遅延調整を行なう。選択部19は、受信した信号のサンプリング数に合わせて選択を行なう。SDI INF-P/S変換部20は、選択部19の出力212をパラレル形式からシリアル形式に変換するとともにHD-SDI信号213に復元して出力する。
【0052】
以上のように、本実施例によれば、インターネットなどのQoS保証がされていないネットワークを使用して、非圧縮HDTV信号などの高速な連続信号を伝送する際、送信する映像信号のサンプリングレートをネットワークの伝送帯域に応じて変換し、これにより伝送帯域を制御し、結果として、ネットワーク上で輻輳が生ぜず品質の劣化が抑制された効率的な映像の伝送を行なうことが可能となる。また、帯域制御を行なう際に、サンプル数を削減することにより、ネットワークの輻輳による連続データの中断やデータ破綻といった致命的なエラーを防ぐことができる。
【0053】
さらに、サンプリングレート変換によるデータ量削減処理は、MPEGなどの高能率符号化を行なった場合に比べ、処理時間がはるかに短く、また処理自体も簡素であり、サンプリングレートを変えない非圧縮信号との切替えも容易に実現することができる。とくに、テレビジョン放送で使用される素材伝送などの用途に好適である。
【0054】
次に、本発明の他の実施例を説明する。他の実施例による映像信号通信システム70は、図11および図12に構成ブロック図として示されている。図11は、映像信号通信システム70における送信側、つまり映像信号送信装置78を示し、図12は、受信側、つまり映像信号受信装置88を示す。両装置78および88は、インターネットなどのIPプロトコル通信網56に接続されている。
【0055】
本実施例の映像信号通信システム70は、送信側の映像信号送信装置78において、システム値として「優先順位に関係なくすべての信号を同一に帯域変換を行なうか否か」を示す同一帯域変換要否指定値を有する。また、本実施例で複数とは8つの映像信号300それぞれに優先順位が設定されている。そこで、映像信号ごとに、同一帯域変換要否指定値やネットワーク56側から受信した帯域制御情報311および優先順位から帯域変換情報306を生成し、この帯域変換情報306に基づいて非圧縮の映像信号300についてサンプリングレート変換を行ない、データ数を削減するよう伝送帯域を制御して、結果の信号302をIPパケット化する。さらに、複数のIPパケットを選択して多重化を行ない、この多重化信号310を受信側の映像信号受信装置に送る。受信側の映像信号受信装置54では、多重化信号310を受信すると、IPパケット別に分離し、IPパケットごとに、帯域変換情報に基づいてサンプリングレート逆変換を行なって元の映像信号の伝送帯域に復元し、さらに元の映像信号を復元する。
【0056】
まず、図11を参照しながら映像信号送信装置78を記述する。映像信号送信装置78は、SDI INF-S/P変換部71、サンプリングレート変換処理部72、IPパケット化部73、選択多重化部74、有線制御部75、サンプリングレート制御部76および送信制御部77を含む。とくに、SDI INF-S/P変換部71、サンプリングレート変換処理部72およびIPパケット化部73は、入力する映像信号の本数に対応した数が設けられている。映像信号送信装置78には、本実施例では、8つの映像信号300(HD-SDI信号1〜信号8)が入力される。この映像信号300は、たとえば非特許文献1にて標準化されている1.485/1.001 Gbit/sのHD-SDI(High Definition-Serial Digital Interface)信号でよい。HD-SDI信号300は、信号ごとに優先順位が設定され、それぞれのSDI INF-S/P変換部71に入力される。SDI INF-S/P変換部71は、先の実施例におけるSDI INF-S/P変換部61(図1)と同様の機能を有する。つまり、SDI INF-S/P変換部71は、HD-SDI信号300とインタフェースして取り込み、取り込んだHD-SDI信号300を3種類の信号に分離し、分離した信号に対してそれぞれシリアルパラレル変換し、得られた輝度(Y)信号101、色差(PbPr)信号102および同期タイミング信号103を出力する。これらの出力信号101、102および103がSDI INF-S/P変換部71の出力信号301に対応している。
【0057】
SDI INF-S/P変換部71は、S/P変換した出力信号301をサンプリングレート変換処理部72に供給する。サンプリングレート変換処理部72は、図示しないが、先の実施例における輝度信号サンプリングレート変換部62および輝度信号遅延調整部66、色差信号サンプリングレート変換部63および色差信号遅延調整部67、タイミング抽出部64、選択部68と同じ構成および機能を有する。各サンプリングレート変換処理部72には、サンプリングレート制御部76からそれぞれのサンプリングレート制御情報307が供給され、供給されたサンプリングレート制御情報に応じてサンプリング制御される。
【0058】
ここで、サンプリングレート制御部76は、帯域変換情報306からサンプリングレート制御情報307を生成する機能を有する。サンプリングレート制御部76は、優先制御部75から帯域変換情報306を受信して、この帯域変換情報306からサンプリングレート制御情報307を生成し、これによりサンプリングレート変換処理部72を制御している。
【0059】
サンプリングレート変換処理部72は、選択した出力信号302を、IPパケット化部73に供給している。IPパケット化部73は、先の実施例におけるIPパケット化部69とほぼ同じ機能を有し、サンプリングレート変換処理部72の出力302をIPパケットに組み立てるIPパケット化機能部である。しかし、IPパケットを組み立てる際、帯域変換情報306をもIPパケットに付与する点が先の実施例のIPパケット化部69と異なる。
【0060】
ところで、サンプリングレート変換処理部72の出力302は、先の実施例における映像信号送信装置50内の選択部68からの出力112および114に対応する。IPパケット化部73は、IPパケット化した出力信号303を、選択多重化部74に出力する。選択多重化部74は、複数のIPパケット303を優先制御部75から供給される帯域変換情報306に基づき選択して多重化し、多重化IPパケット304を生成する。選択多重化部74は、この多重化IPパケット304を、送信制御部77に供給する。
【0061】
送信制御部77は、優先制御部75に接続され、さらにネットワーク56を介して受信側88とも接続されている。送信制御部77は、先の実施例における送信制御部10と同じ機能を有し、受信側の装置88の受信制御部81と通信リンクの確立のためプロトコルに応じたパケットの送受を行なうとともに、多重IPパケット化された映像信号310を受信側の装置88に送信する制御機能部である。
【0062】
優先制御部75は、送信制御部77、サンプリングレート制御部76、IPパケット化部73および選択多重化部74に接続されている。優先制御部75は、同一帯域変換要否指定値と、送信制御部77から受信する帯域制御情報と、入力された映像信号ごとに設定された優先順位とに基づき帯域変換情報306を生成し、サンプリングレート制御部76、IPパケット化部73および選択多重化部74に生成した帯域変換情報306を送る。
【0063】
次に、優先制御について図11〜図13Dを参照してさらに詳しく説明する。優先制御部75は、システム設定値である同一帯域変換要否指定値を取得し、送信制御部77から帯域制御情報を取得し、また映像信号ごとに設定されている優先順位を取得する。本実施例では、映像回線300は8回線(信号1〜信号8)である。帯域制御情報311はネットワーク回線の送信可能な帯域Aの情報から構成され、図13A〜図13Dに示すように、帯域Aは10 Gbit/sである。また、それぞれの映像回線の映像信号帯域は1.6 Gbit/sに相当する。
【0064】
図13A〜図13Dに示す例の場合、信号1〜信号8が同時に映像信号送信装置78に入力され、それぞれの信号が速度1.6 Gbit/sを有するので、必要な伝送帯域Bは1.6*8=12.8 Gbit/sである。ところが、ネットワーク回線の送信可能な帯域Aは、上述のように10Gbit/sであるため、帯域Bが帯域Aを上回り、信号1〜信号8のすべてを伝送することは、できない。このため、それぞれの映像信号1〜信号8に設定されている優先順位に基づき、信号1〜信号8の帯域の変換や廃棄などを行なう。
【0065】
ある例では、優先順位は、低いものから「廃棄可」、「1/2帯域化」、「3/4帯域化」、および「1/1帯域化=フル帯域化」の4つのレベルで構成されている。この他に、映像信号送信装置78は、システム値として「優先順位に関係なくすべての信号を同一に帯域変換するか否か」の設定値である「同一帯域変換要否指定値」を有している。この同一帯域変換要否指定値が「否」の場合は、次のように帯域変換情報306を生成する。
【0066】
4つの優先レベルがa、b、c、dであり、帯域変換前の信号回線総数が8とするとき、次の3つの条件により帯域変換情報306を生成する。
【0067】
a+b+c+d=8 ・・・条件(1)
B=1.6*(0*a +(1/2)*b +(3/4)*c (1/1)*d)<10 (=A) ・・・条件(2)
優先順位の低いものから適用して帯域変換するが、帯域Aに最も近くなるようにa、b、c、dの優先レベルを変更して、最適な優先レベルとa、b、c、dを算出すること・・・・条件(3)
図13Aに示す場合、a=2、b=1、c=1、d=4とすると、すなわち、信号7および信号8がaに相当し、信号6がbに相当し、信号5がcに相当し、信号1〜信号4がdに相当すると、1番目に最低優先レベルのa=2を適用する。すなわち、aに相当している信号7および信号8を廃棄する。このとき、
B=1.6*((1/2)*1 +(3/4)*1 +(1/1)*4)=8.4<10
となり、条件(2)を満足するが、条件(3)を満足するために、bのレベルを1/2帯域化から1/1帯域化に変更し、同様にcのレベルを3/4帯域化から1/1帯域化に変更する。
【0068】
これにより、
B=1.6*((1/1)*1 +(1/1)*1 +(1/1)*4)=9.6 <10
となり、条件(2)および条件(3)をも満足する。よって、a=2、d=6となり、信号7および信号8が廃棄、信号1〜信号6が1/1帯域化となり、この信号ごとの情報が帯域変換情報306となる。
【0069】
次に、図13Bに示す場合、信号4〜信号8が1/2帯域化、信号1〜信号3が1/1帯域化に設定されていると、a=0、b=5、c=0、d=3である。このとき、条件(2)は、
B=1.6*((0)*0 +(1/2)*5 +(3/4)*0 +(1/1)*3)=8.8<10
となり、条件(2)を満足するが、条件(3)を満足するために、b=5をb=4に変更し、さらにd=3をd=4に変更する。このとき
B=1.6*((0)*0 +(1/2)*4 +(3/4)*0 +(1/1)*4)=9.6<10
となり、条件(2)および条件(3)をも満足する。よって、b=4、d=4となり、信号5〜信号8が1/2帯域化、信号4が1/1帯域化となり、結果として信号1〜信号4が1/1帯域化となり、この信号ごとの情報が帯域変換情報306となる。
【0070】
次に、図13Cに示す場合、信号3〜信号8が3/4帯域化、信号1〜信号2が1/1帯域化に設定されていると、a=0、b=0、c=6、d=2である。このとき、条件(2)は、
B=1.6*((0)*0 +(1/2)*0 +(3/4)*6 +(1/1)*2)=10.4>10
となり、条件(2)を満足しないので、条件(2)および条件(3)を満足するために、c=6をc=8に変更し、さらにd=2をd=0に変更する。このとき
B=1.6*((0)*0 +(1/2)*0 +(3/4)*8 +(1/1)*0)=9.6<10
となり、条件(2)および条件(3)をも満足する。よって、c=8、d=0となり、信号1〜信号8が3/4帯域化となり、この信号ごとの情報が帯域変換情報306となる。
【0071】
次に、同一帯域変換要否指定値が「要」の場合は、次のように帯域変換情報306を生成する。この場合、帯域変換の条件は、
B=1.6*P*8<10(=A) ・・・・条件(4)
Pは定められた帯域化値のうち最大となること ・・・条件(5)
である。
【0072】
この場合の例を図13Dに示す。Pは定められた帯域化値であり、本実施例では1/2帯域化、3/4帯域化、1/1帯域化のいずれかであるが、条件(4)および(5)を満足するのは、P=3/4帯域化であり、このとき、B=1.6*(3/4)*8=9.6<10である。すなわち、信号1〜信号8が3/4帯域化となり、この情報が帯域変換情報306となる。
【0073】
これらの帯域変換情報306により、図13Aに示す場合、信号1〜信号8のうち6つの信号を選択してフル帯域で、すなわち帯域変換しないで多重化し、2つの信号を廃棄することになる。図13Bに示す場合は、信号1〜信号8のうち4つの信号をフル帯域で、すなわち帯域変換しないで多重化し、4つの信号を1/2に帯域変換して多重化することになる。図13Cに示す場合は、信号1〜信号8のすべてを3/4に帯域変換して多重化することになる。また、図13Dに示す場合も、信号1〜信号8のすべてを3/4に帯域変換して多重化することになる。
【0074】
このように優先制御部75は、同一帯域変換要否指定値が「否」の場合、帯域制御情報や各信号の優先順位に基づき、各映像信号をどの比率で帯域変換するか、あるいは廃棄するかを、優先順位の低いものから適用して、伝送可能帯域Aを最大限に利用するための帯域変換値を各映像信号ごとに帯域変換情報306として生成する。また、同一帯域変換要否指定値が「要」の場合、最適な均一帯域変換値を各映像信号ごとに帯域変換情報306として生成する。
【0075】
次に、図12を参照して映像信号受信装置88について説明する。映像信号受信装置88は受信制御部81を有し、これは、ネットワーク56および多重化パケット分離部82に接続されている。受信制御部81は、先の実施例における受信制御部11と同じ機能を有し、ネットワーク56と接続され、送信側78の送信制御部77と通信リンクの確立のためプロトコルの送受を行なうとともに、多重IPパケット化された映像信号310を受信して多重化パケット分離部82に送る機能部である。受信制御部81はまた、先の実施例における受信制御部11と同様、RTCPパケットの送受信などの各種通信制御を行ない、たとえば、送信側77へRTCPパケットを使用して帯域制御情報311を送信する機能を有する。
【0076】
多重化パケット分離部82は、受信制御部81、8個の映像データ抽出変換部83およびサンプリングレート制御部86に接続される。多重化パケット分離部82は、受信制御部81から受け取る多重IPパケット化された映像信号310からなる出力信号401を個々のIPパケットに分離し、それぞれの映像データ抽出変換部83に送る。また、IPパケット内にある帯域変換情報306を復元し、出力信号405としてサンプリングレート制御部86に送る。
【0077】
サンプリングレート制御部86は、帯域変換情報306からなる出力信号405を受信し、この帯域変換情報306よりサンプリングレート制御信号406を生成し、これによりサンプリングレートを制御してサンプリングレート逆変換処理部84を制御する。
【0078】
映像データ抽出変換部83は、先の実施例における映像データ抽出変換部12とほぼ同じ機能を有し、受信したIPパケットから映像データを抽出して、輝度(Y)信号201、色差(PbPr)信号202、および同期タイミング信号203を生成する機能部である。先の実施例では、帯域制御信号205を映像データ抽出変換部12で生成するように構成されていたが、この機能は、本実施例における映像データ抽出変換部83には無いところが異なる。それぞれの映像データ抽出変換部83の出力403は、それぞれのサンプリングレート逆変換処理部84に送られる。
【0079】
サンプリングレート逆変換処理部84は、映像データ抽出変換部83、サンプリングレート制御部86およびSDI INF-P/S変換部85に接続される。サンプリングレート逆変換処理部84は、先の実施例における輝度信号サンプリングレート逆変換部13、色差信号サンプリングレート逆変換部14、輝度信号遅延調整部17、色差信号遅延調整部18、タイミング抽出部15および選択部19と同じ構成と機能を有し、輝度信号および色差信号の伝送帯域を映像信号の伝送帯域に復元する。
【0080】
それぞれのサンプリングレート逆変換処理部84の出力404は、それぞれのSDI INF-P/S変換部85に送られる。SDI INF-P/S変換部85は、先の実施例と同様であり、出力404をパラレルからシリアルに変換して元の映像信号であるHD-SDI信号407を出力するSDIインタフェース機能およびパラレルシリアル(P/S)変換機能を有する。
【0081】
動作状態において、本システム70は、送信側の映像信号送信装置78で、ネットワーク56側から受信した帯域制御情報311と映像信号300ごとに設定されている優先順位から生成される帯域変換情報306とに基づいて、非圧縮の複数の映像信号300についてサンプリングレート変換を行ない、データ数を削減して伝送帯域の制御を行なって、これを多重化して受信側に送る。
【0082】
受信側の映像信号受信装置88において、多重化された伝送帯域制御後の映像信号310を受信すると、多重化された映像信号310を個々の映像信号に分離し、個々の映像信号ごとに、帯域変換情報に基づいてサンプリングレート逆変換を行なって、元の映像信号の伝送帯域に復元し、さらに元の映像信号を復元する。
【0083】
より詳細には、映像信号送信装置78において、複数のHD-SDI映像信号300は1.485/1.001 Gbit/sで到来する。HD-SDI信号300がSDI INF-S/P変換部71に入力されると、SDI INF-S/P変換部71は、先の実施例と同様にして、HD-SDI信号300をシリアル形式からパラレル形式に変換し、出力信号301を出力する。この出力信号301は、先の実施例における輝度(Y)信号101、色差(PbPr)信号102および同期タイミング信号103に対応する。この出力信号301は、サンプリングレート変換処理部72に送られる。
【0084】
サンプリングレート変換処理部72は、サンプリング制御部76からサンプリング制御情報307を受け取ると、サンプリング制御情報307に基づき、それぞれの出力信号301をサンプリングレート変換する。このサンプリングレート変換方法は、先の実施例と同じでよい。サンプリングレート変換された信号302は、IPパケット化部73に送られIPパケット化される。IPパケット化の方法は、先の実施例とほぼ同じでよいが、IPパケットに帯域変換情報306をさらに付加するところが異なっている。この帯域変換情報306は、優先制御部75から受信する。
【0085】
IPパケット化されたIPパケット化信号303は次に、選択多重化部74に送られる。選択多重化部74は、優先制御部75から受信した帯域変換情報306に基づき、複数のIPパケット化信号303のうち、破棄モードでないIPパケット化信号303を選択し、これを多重化して多重化IPパケット信号304を生成し、送信制御部77に送る。送信制御部77は、多重化IPパケット信号304を送信信号310としてネットワーク56に送る。
【0086】
送信制御部77はまた、受信側からネットワーク56を経由して帯域制御情報311を受信し、優先制御部75に送る。優先制御部75は、システム設定値である同一帯域変換要否指定値を取得し、送信制御部77から帯域制御情報311を出力305として取得し、また映像信号ごとに設定されている優先順位を取得する。
【0087】
本実施例では、前述のように、8本の映像回線300(信号1〜信号8)で、ネットワーク回線の送信可能な帯域Aは10 Gbit/sであり、必要な伝送帯域Bは12.8 Gbit/sである。そこで、同一帯域変換要否指定値や映像信号1〜8に設定されている優先順位に基づき、信号1〜信号8の帯域の変換や廃棄などを行なう。
【0088】
たとえば、同一帯域変換要否指定値が「否]のとき、図13Aに示す場合は、信号1〜信号8のうち6つの信号を選択してフル帯域ですなわち帯域変換しないで多重化し、2つの信号を廃棄する。図13Bに示す場合は、信号1〜信号8のうち4つの信号をフル帯域ですなわち帯域変換しないで多重化し、4つの信号を1/2に帯域変換して多重化する。図13Cに示す場合は、信号1〜信号8のすべてを3/4に帯域変換して多重化する。また、図13Dに示すように、同一帯域変換要否指定値が「要]の場合は、信号1〜信号8のすべてを3/4に帯域変換して多重化する。
【0089】
このように優先制御部75は、同一帯域変換要否指定値が「否」の場合、帯域制御情報や各信号の優先順位に基づき、各映像信号をどの比率で帯域変換するか、あるいは廃棄するかを、優先順位の低いものから適用して、伝送可能帯域Aを最大限に利用するための帯域変換値を各映像信号ごとに帯域変換情報306として生成する。また、同一帯域変換要否指定値が「要」の場合は、最適な均一帯域変換値を各映像信号ごとに帯域変換情報306として生成する。この生成された帯域変換情報306は、サンプリング制御部76、IPパケット化部73および選択多重化部74に送られる。
【0090】
そこで、映像信号受信装置88では、ネットワーク56を経由して送信側の映像信号送信装置78より送信信号310を受信制御部81にて受信する。受信制御部81は、先の実施例と同様に動作し、受信した信号310である多重化IPパケット信号304を出力401として多重化パケット分離部82に送る。
【0091】
多重化パケット分離部82は、多重化IPパケット信号304を個々のIPパケット信号402に分離するとともに、IPパケットごとに帯域変換情報405を復元する。この帯域変換情報405は帯域変換情報306と同一である。それぞれのIPパケット信号402は、それぞれの映像データ抽出変換部83に送られ、また、それぞれの帯域変換情報405は、サンプリング制御部76に送られる。
【0092】
サンプリング制御部76は、IPパケット信号402ごとの帯域変換情報405を受け取り、サンプリング制御情報406を生成して、これをそれぞれのサンプリングレート逆変換処理部84に送る。
【0093】
映像データ抽出変換部83は、先の実施例とほぼ同様に動作し、受信したIPパケットから映像データを抽出して、輝度(Y)信号201、色差(PbPr)信号202、同期タイミング信号203を出力信号403として生成する。帯域制御信号205は生成されない。また、サンプリングレート逆変換処理部84は、先の実施例における輝度信号サンプリングレート逆変換部13、色差信号サンプリングレート逆変換部14、輝度信号遅延調整部17、色差信号遅延調整部18、タイミング抽出部15および選択部19と同様に動作し、出力信号403をサンプリングレート逆変換して出力信号404として出力する。
【0094】
それぞれのサンプリングレート逆変換処理部84の出力信号404は、それぞれのSDI INF-P/S変換部85に送られる。それぞれのSDI INF-P/S変換部85は、先の実施例と同様に動作し、出力信号404をパラレルからシリアルに変換して、元の映像信号であるHD-SDI信号407をそれぞれ出力する。
【0095】
以上のように、本実施例によれば、インターネットなどのQoSが保証されていないネットワークを使用して、複数の非圧縮HDTV信号などの高速な連続信号を同時に伝送する際、それぞれの送信する映像信号のサンプリングレートをネットワークの伝送帯域に応じて変換し、これにより伝送帯域を制御するとともに、これらの映像信号を選択的に多重化して伝送する。これによって、複数の映像信号について、ネットワーク上で輻輳せず品質の劣化が抑制された効率的な映像の伝送を行なうことができる。また、帯域制御を行なう際に、サンプル数を削減することにより、ネットワークの輻輳による連続データの中断やデータ破綻といった致命的なエラーを防ぐことができる。
【0096】
上述の実施例は、非圧縮のHDTV信号を扱うものであったが、SDTV信号についても、同様の構成および方法で本発明を実現することが可能である。また、サンプリングレート変換の例として、3/4および1/2の場合を述べたが、本発明は、他の変換比率にも勿論、適用可能である。
【0097】
上述の実施例では、伝送帯域に応じてサンプリングレート変換を適応的に切り替えるよう構成されているが、たとえば、常に低いサンプリングレートに固定的に切替えることも可能である。
【0098】
上述の実施例はまた、送信側と受信側が別々の装置であったが、勿論、1台の装置で送信側機能と受信側機能を有し、双方向で映像通信する例にも適用可能である。
【0099】
さらに、上述の実施例は、IPネットワークに適用されていたが、本発明は、必ずしもIPネットワークに限定されるものではなく、既存の専用線や非同期転送モード(ATM)回線、また、有線網に限らず無線回線などにおいても、伝送帯域を削減する方法として有利に適用される。
【符号の説明】
【0100】
10、77 送信制御部
11、81 受信制御部
12、83 映像データ抽出変換部
13 輝度信号サンプリングレート逆変換部
14 色差信号サンプリングレート逆変換部
15、64 タイミング抽出部
16、65、76 サンプリングレート制御部
17、66、86 輝度信号遅延調整部
18、67 色差信号遅延調整部
19、68 選択部
20、71 SDI INF-P/S変換部
50、70 映像信号通信システム
52、78 映像信号送信装置
54、88 映像信号受信装置
61、85 SDI INF-S/P変換部
62 輝度信号サンプリングレート変換部
63 色差信号サンプリングレート変換部
69、73 IPパケット化部
72 サンプリングレート変換処理部
74 選択多重化部
75 優先制御部
82 多重化パケット分離部
84 サンプリングレート逆変換処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の映像信号を多重化して通信ネットワークを通して送信する映像信号送信装置と、該映像信号を受信する映像信号受信装置とを含む映像信号通信システムにおいて、
前記映像信号送信装置は、優先順位に無関係に信号を帯域変換するか否かを指定する指定情報を有し、
優先順位が設定された複数の原映像信号のそれぞれを第1の輝度信号および第1の色差信号に変換する原映像信号別変換手段と、
前記複数の原映像信号ごとに、前記指定情報、ならびに帯域制御情報および前記優先順位から帯域変換を優先制御するための帯域変換情報を生成し、該帯域変換情報に基づき第1の輝度信号および第1の色差信号の伝送帯域を制御し、それぞれ伝送帯域を制御された第2の輝度信号および第2の色差信号を生成する原映像信号別伝送帯域制御手段と、
前記複数の原映像信号ごとに、第2の輝度信号および第2の色差信号を前記帯域変換情報が付与されたパケットに組み立てる原映像信号別パケット化手段と、
前記帯域変換情報に基づき前記パケットのうち伝送可能なパケットを選択して多重化し、多重化パケットデータを生成する選択多重化手段と、
前記映像信号受信装置から帯域制御信号を受信して、該帯域制御信号に基づいて前記帯域制御情報を生成するとともに、前記多重化パケットデータを前記ネットワークを経由して前記映像信号受信装置に送信する送信制御手段とを含み、
前記映像信号受信装置は、
前記ネットワークを経由して送られた多重化パケットデータを受信するとともに、該ネットワークの回線状況から前記帯域制御信号を生成して、該帯域制御信号を前記映像信号送信装置に送出する受信制御手段と、
前記受信した多重化パケットデータからパケットを分離するとともに、前記帯域変換情報を復元する多重化パケット分離手段と、
前記分離されたパケットごとに、映像データを抽出し、該映像データを第2の輝度信号および第2の色差信号に変換して出力するパケット別映像データ抽出変換手段と、
前記パケットごとに、前記復元された帯域変換情報に基づき、第2の輝度信号および第2の色差信号の伝送帯域を第1の輝度信号および第1の色差信号の伝送帯域に復元するパケット別伝送帯域復元手段と、
前記パケットごとに、前記復元された第1の輝度信号および該第1の色差信号から前記原映像信号を復元するパケット別映像信号復元手段とを含むことを特徴とする映像信号通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記帯域変換情報は、前記原映像信号別に、前記指定情報が帯域変換不要を示す場合、該帯域制御情報から得られる前記通信ネットワークの使用可能な伝送帯域を、前記優先順位の低い信号から順に、第1の輝度信号および第1の色差信号からなる第1の映像信号の伝送帯域に適応的に割り当てる情報として生成され、また、前記指定情報が帯域変換要を示す場合、前記帯域制御情報から得られる前記通信ネットワークの使用可能な伝送帯域を、すべての第1の映像信号に均一な帯域として割り当てる情報として生成され、サンプリングレート変換する場合は、サンプリングレート情報を、また、サンプリングレート変換を行なわないで破棄する場合は、破棄情報を含むことを特徴とする映像信号通信システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、
前記原映像信号別伝送帯域制御手段は、前記原映像信号別に、前記帯域変換情報に基づき、第1の輝度信号および第1の色差信号のサンプリングレートを制御して、第1の輝度信号および第1の色差信号をサンプリングレート変換し、これにより前記原映像信号における有効映像信号のサンプル数を変更して第2の輝度信号および第2の色差信号を生成し、または第1の輝度信号および第2の色差信号を破棄することで映像信号の伝送帯域を制御し、
前記パケット別伝送帯域復元手段は、前記パケット別に、前記受信した映像信号データの第2の輝度信号および第2の色差信号のサンプリングレートを前記帯域変換情報に基づき制御してサンプリングレート逆変換し、これにより前記有効映像信号のサンプル数を前記原映像信号のサンプル数に復元することで、前記原映像信号の第1の輝度信号および第1の色差信号の伝送帯域に復元することを特徴とする映像信号通信システム。
【請求項4】
請求項1または3に記載のシステムにおいて、前記原映像信号別変換手段は、前記原映像信号別に、前記原映像信号のうちの有効映像信号を第1の輝度信号および第1の色差信号に変換することを特徴とする映像信号通信システム。
【請求項5】
複数の原映像信号を映像信号データに変換し多重化して通信ネットワークを通して伝送する映像信号通信システムにおける通信方法において、該方法は、
前記映像信号データを送信する側の映像信号送信装置において、前記多重化された映像信号データの送出に先立ち、前記通信ネットワークの使用可能な伝送帯域を帯域制御情報として取得し、複数の原映像信号ごとに設定されている優先順位を取得し、優先順位に無関係に信号を帯域変換するか否かを指定する指定情報を取得する第1の工程と、
前記原映像信号ごとに、前記取得した指定情報、ならびに帯域制御情報および優先順位に基づき帯域を優先制御するための帯域変換情報を生成し、該帯域変換情報に基づき前記原映像信号の伝送帯域を変換して伝送帯域変換後の映像信号データを生成するか、または前記原映像信号を破棄するかを適応的に選択して帯域変換を行なう第2の工程と、
前記帯域変換後の映像信号データに前記帯域変換情報を付与して、これらをパケットとして生成し、該生成されたパケットを前記帯域変換情報に基づき選択して多重化を行ない、多重化パケットデータを生成する第3の工程と、
該生成された多重化パケットデータを前記通信ネットワークを介して、該システムにおける受信側の映像信号受信装置に送信する第4の工程と、
該映像信号受信装置において、前記多重化パケットデータを受信し、受信映像信号データを生成するとともに、前記帯域制御情報を生成して前記映像信号送信装置に送信する第5の工程と、
前記受信映像信号データをパケットに分離するとともに、前記帯域変換情報を復元し、パケット別に、前記受信映像信号データの伝送帯域を前記帯域変換情報に基づき前記原映像信号の伝送帯域に逆変換し、該逆変換された信号データから前記原映像信号を復元する第6の工程とを含むことを特徴とする通信方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記帯域変換情報は、前記原映像信号別に、前記指定情報が帯域変換不要を示す場合、該帯域制御情報から得られる前記通信ネットワークの使用可能な伝送帯域を、優先順位の低い信号から順に、第1の輝度信号および第1の色差信号からなる第1の映像信号の伝送帯域に適応的に割り当てる情報として生成され、また、前記指定情報が帯域変換要を示す場合、前記帯域制御情報から得られる前記通信ネットワークの使用可能な伝送帯域を、すべての第1の映像信号に均一に割り当てる情報として生成され、サンプリングレート変換する場合は、サンプリングレート情報を、また、サンプリングレート変換を行なわないで破棄する場合は、破棄情報を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法において、
第2の工程は、前記帯域変換情報に基づき、前記原映像信号のサンプリングレートを制御して該原映像信号をサンプリング変換し、これにより前記原映像信号のうちの有効映像信号のサンプル数を変更することで、該映像信号の伝送帯域を変換し、
第6の工程は、前記受信映像信号データのサンプリングレートを前記帯域変換情報に基づき制御して、前記受信映像信号データをサンプリング逆変換し、これにより前記有効映像信号のサンプル数を前記原映像信号のサンプル数に復元することで、該原映像信号の伝送帯域に復元することを特徴とする通信方法。
【請求項8】
請求項5または7に記載の方法において、前記映像信号送信装置は、前記原映像信号のうちの有効映像信号について該原映像信号の伝送帯域を前記帯域変換情報に基づき制御することを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【公開番号】特開2013−62819(P2013−62819A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−228432(P2012−228432)
【出願日】平成24年10月15日(2012.10.15)
【分割の表示】特願2008−48275(P2008−48275)の分割
【原出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】