説明

映像処理装置及び映像処理装置の制御方法

【課題】3D映像用の焼き付き軽減技術を提供する。
【解決手段】左目用画像を表示する第1表示部と右目用画像を表示する第2表示部とを含む表示領域を持つ表示装置に映像を出力する映像処理装置であって、同一の場面に対応する1組の左目用画像と右目用画像の集合として構成される3次元映像から、左目用画像及び右目用画像の配置パターンが前記表示領域における前記第1表示部及び前記第2表示部の配置パターンに一致するように処理された表示用3次元画像を生成する生成手段と、前記表示用3次元画像の一部を切り出す映像処理手段と、前記映像処理手段が切り出した部分画像を前記表示装置に出力する出力手段と、を備え、前記映像処理手段は、前記部分画像の切り出し位置を変更する場合、切り出し位置の変更後の部分画像における左目用画像及び右目用画像の配置パターンが前記表示領域における前記第1表示部及び前記第2表示部の配置パターンに一致するように、前記表示用3次元画像から前記部分画像を切り出すことを特徴とする映像処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像処理装置及び映像処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、3次元(3D)映像の放送(3D放送)が行われている。例えば、デジタル衛星放送のBS11チャンネルでは、1画面の映像を左目用映像と右目用映像とに分割して送信する「サイドバイサイド方式」による3D放送が行われている。また、3D映像の主な表示方式として、「偏光方式」と「アクティブシャッタ方式」とが知られている。
【0003】
偏光方式の場合、3D放送の受信装置は、表示パネル上に偏光特性を有するフィルムを持ち、左目用映像と、右目用映像とをインターレース表示する。視聴者は、偏光メガネを装着し、左目用映像の表示ラインを左目で、右目用映像の表示ラインを右目で見ることにより、映像を立体的に認識することができる。
【0004】
アクティブシャッタ方式の場合、3D放送の受信装置は、左目用映像と右目用映像とを交互に表示する。視聴者は、液晶シャッタを有するメガネを装着する。メガネは、左目用映像は左目のみに、右目用映像は右目のみに入るように液晶シャッタを制御する。これにより、視聴者は映像を立体的に認識することができる。
【0005】
ところで、表示パネルでは、「焼き付き」と呼ばれる現象が発生する場合がある。焼き付きとは、発光素子を長時間点灯させることにより素子の劣化が進み発光機能が正常に働かなくなる現象である。特に、静止画像や、静止領域の含まれる動画像が長時間に亘って表示される場合には、焼き付きにより画像が残像のように残る場合がある。
【0006】
このように、焼き付きは発光素子の劣化により発生するものであり、2次元(2D)映像及び3D映像のいずれの場合においても発生し得る。現在、焼き付きの発生を抑制するためのいくつかの技術が知られている。
【0007】
特許文献1は、入力画像が一定時間変化しない場合に、画像の表示サイズを変更して表示位置を移動させる、いわゆる「画素ずらし」と呼ばれる手法で焼き付きを軽減する技術を開示する。
【0008】
特許文献2は、入力フォーマットを検出し、表示サイズに合わせて補間処理を行うことを開示する。そして、画像の表示位置を水平方向および垂直方向に所定の画素範囲で、所定時間毎に1画素ずつ移動させることにより、画像の移動が視覚的に気になることを軽減しつつ、焼き付きを軽減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−338947号公報
【特許文献2】特開2004−264366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1及び2は、2D映像に対して画素ずらしを適用することを意図したものであり、映像が左目用映像と右目用映像とを含むということを考慮していない。しかしながら、3D映像に対して従来の画素ずらしなどの処理を適用すると、以下の理由により、3D映像の製作者が意図した本来の立体感とは異なる立体感で映像が認識される可能性がある。
【0011】
例えば、偏光方式の場合、左目用映像の画素が右目用映像の画素の位置に移動し、右目用映像の画素が左目用映像の画素の位置に移動すると、左右の視差が反転してしまう。また、アクティブシャッタ方式の場合、左目用映像における画素の移動量と右目用映像における画素の移動量とが異なると、両映像の視差が変化してしまう。3D映像では、左目用映像と右目用映像の視差(両眼視差)が設けられていることで、人間は映像を立体的に認識することができる。しかし、映像設計時に考慮された視差が焼き付き制御により変化してしまうことで、立体映像がぼけてしまったり、場合によっては3Dに見えなくなったりすることが想定される。つまり、従来の焼き付き軽減技術は3D映像における焼き付きの問題について考慮されていなかった。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、3D映像用の焼き付き軽減技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、左目用画像を表示する第1表示部と右目用画像を表示する第2表示部とを含む表示領域を持つ表示装置に映像を出力する映像処理装置であって、同一の場面に対応する1組の左目用画像と右目用画像の集合として構成される3次元映像から、左目用画像及び右目用画像の配置パターンが前記表示領域における前記第1表示部及び前記第2表示部の配置パターンに一致するように処理された表示用3次元画像を生成する生成手段と、前記表示用3次元画像の一部を切り出す映像処理手段と、前記映像処理手段が切り出した部分画像を前記表示装置に出力する出力手段と、を備え、前記映像処理手段は、前記部分画像の切り出し位置を変更する場合、切り出し位置の変更後の部分画像における左目用画像及び右目用画像の配置パターンが前記表示領域における前記第1表示部及び前記第2表示部の配置パターンに一致するように、前記表示用3次元画像から前記部分画像を切り出すことを特徴とする映像処理装置を提供する。
【0014】
なお、その他の本発明の特徴は、添付図面及び以下の発明を実施するための形態における記載によって更に明らかになるものである。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成により、本発明によれば、3D映像用の焼き付き軽減技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】偏光方式による3D映像を表示する表示パネル101を側面から見た概念図。
【図2】表示パネル101を正面から見た概念図。
【図3】実施例1に係る放送受信装置300の概略構成を示すブロック図。
【図4】2D用画素ずらしテーブル、及び3D用画素ずらしテーブルの概念図。
【図5】放送受信装置300による焼き付き軽減処理を示すフローチャート。
【図6】アクティブシャッタ方式による3D映像表示の概念図。
【図7】実施例2に係る放送受信装置700の概略構成を示すブロック図。
【図8】放送受信装置700による焼き付き軽減処理を示すフローチャート。
【図9】図8のフローチャートに従って表示開始位置が移動する様子を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例を説明する。なお、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施例によって限定されるわけではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが、本発明に必須とは限らない。
【0018】
以下の各実施例では、本発明の映像処理装置を放送受信装置に適用した場合を説明するが、適用例はこれに限定されず、例えばDVDプレーヤなどの映像再生装置に本発明の映像処理装置を適用することも可能である。
【実施例1】
【0019】
実施例1では、3次元映像(3D映像)の表示方式として偏光方式を使用する場合を説明する。従って、3次元映像は、同一の場面に対応する1組の左目用画像と右目用画像の集合として構成される。図1は、偏光方式による3D映像を表示する表示パネル101を側面から見た概念図である。図2は、表示パネル101を正面から見た概念図である。
【0020】
表示パネル101は、放送受信装置が出力した映像を受信して表示する。表示パネル101は、液晶方式、プラズマ方式、又はSED(Surface-Conduction Electron-emitter Display)方式などの任意の方式により構成される。
【0021】
表示パネル101(表示装置)上には、偏光フィルタ102が貼り付けられている。図2に示すように、偏光フィルタ102は、奇数ライン(L1、L2、...)が左目用表示ライン(第1表示部)となり、偶数ライン(R1、R2、...)が右目用表示ライン(第2表示部)となるように構成される。そのため、左目用画像と右目用画像とがそれぞれ異なる振動方向の光により表示される。視聴者(ユーザ)は、左右の目(図1は片目103のみを示す)でそれぞれ異なる方向の偏光フィルタを使った専用の偏光メガネ104を装着して映像を視聴することにより、映像を3D映像として認識する。
【0022】
図3は、実施例1に係る放送受信装置300の概略構成を示すブロック図である。図3において、CPU301は、ROM302に格納されたプログラムに従って放送受信装置300全体を制御する。
【0023】
RAM303は揮発性メモリであり、CPU301のワークメモリとして使用される、また、各種データの一時記憶エリアとしても使用される。特に、第1メモリエリア304には2D用画素ずらしテーブルが格納され、第2メモリエリア305には3D用画素ずらしテーブルが格納される。
【0024】
図4は、2D用画素ずらしテーブル、及び3D用画素ずらしテーブルの概念図である。各テーブルは、焼き付き軽減トリガ信号(表示位置制御部311の説明と併せて後述)の発生回数(N=1、2、3、...)に対応する映像の表示開始位置(例えば、[1,1])を示す。図4の例では、2D用画素ずらしテーブルは、トリガ信号が発生する度に表示開始位置をx方向又はy方向に1画素ずつ変更する(変更処理)ように構成される。また、3D用画素ずらしテーブルは、トリガ信号が発生する度に表示開始位置をx方向(水平方向)には1画素ずつ、y方向(垂直方向)には2n画素ずつ(nは自然数)変更するように構成される。即ち、各フレームが同一の場面に対応する1組の左目用映像と右目用映像とを水平ライン単位で交互に含む3次元映像に対して画素ずらしを行う場合、表示開始位置は垂直方向については2n(nは自然数)ライン移動する。また、映像フォーマット(2D映像であるか3D映像であるか)に応じた法則で移動を行うことにより、映像の乱れを抑制することができる。
【0025】
なお、テーブルの代わりに、例えば表示開始位置を定める計算式を用いてもよい。また、図4にはトリガ信号の発生回数として4回目(N=4)までしか示されていないが、実際には画素ずらしテーブルは5回目以降のトリガ信号に対応する表示開始位置も保持可能である。しかしながら、4回のトリガ信号を1周期とする場合は、画素ずらしテーブルは4回分のトリガ信号に対応する表示開始位置を保持すれば十分である。
【0026】
チューナー部306は、アンテナ(不図示)から受信した放送波を復調し、ビデオ及びオーディオのベースバンドデータを出力する。デマルチプレクサ部307は、チューナー部306から受信したデータのフレーム分解を行い、ビデオデータ、オーディオデータ、及び番組情報データを分離する。
【0027】
デマルチプレクサ部307で分離されたビデオデータおよびオーディオデータは、デコーダ部308に入力される。デコーダ部308は、MPEG2符号化されたビデオデータを復号して3D映像生成部310に入力する。また、MPEG2−AAC符号化されたオーディオデータを復号してリニアPCM形式に変換し、音声処理部315に入力する。
【0028】
デマルチプレクサ部307で分離された番組情報データは、映像判定部309に入力される。番組情報データは、社団法人電波産業会(ARIB)の標準規格「デジタル放送に使用する番組配列情報」等で規定されるデータ構造で伝送される。主な構成データとして、編成チャンネルに関する情報を伝送するSDTと、番組の名称や放送時間や伝送されるコンポーネント種別などの、番組に関する情報を伝送するEITとが含まれる。なお、SDTはService Description Tableの省略形であり、EITは(Event Information Tableの省略形である。
【0029】
本実施例では、現在規格化されている映像コンポーネント種別(component_type)に3D映像フォーマットが追加定義される。そして、映像判定部309は、デコーダ部308が復号中のビデオデータのフォーマットが2次元映像(2D映像)であるか3D映像であるかを、EITに挿入されるコンポーネント種別に基づいて判定し、判定結果を3D映像生成部310へ通知する。
【0030】
3D映像生成部310は、映像判定部309から通知された映像フォーマットが3D映像である場合に、デコーダ部308から入力された映像の3D化処理を行う。具体的には、3D映像生成部310は、図2の奇数ラインに左目用画像が表示され、偶数ラインに右目用画像が表示されるように、デコーダ部308から入力された映像を構成するフレーム画像を加工し、解像度変換部313に入力する。映像フォーマットが2D映像である場合は、3D映像生成部310は、デコーダ部308から入力された映像を加工せずに解像度変換部313に入力する。なお、本発明の実施例としては、映像とは、複数の画像を時間方向に順次表示するものとして定義する。従って、解像度変換や表示位置の切り出し処理は、映像に対して行うものではなく、映像を構成する各画像に対してそれぞれ実行するものである。
【0031】
表示位置制御部311は、解像度変換部313(後述)で解像度が変換された画像の表示領域(所定領域)を、映像判定部309の判定結果に基づいて決定する。そして、表示位置制御部311は、決定した表示領域から切り出した画像(部分画像)を映像処理部314へ入力する。具体的には、2D映像の場合には第1メモリエリア304に格納されている2D用画素ずらしテーブルを使用し、3D映像の場合には第2メモリエリア305に格納されている3D用画素ずらしテーブルを使用して、映像の表示開始位置を決定する。そして、例えば映像の画像サイズが1920×1080である場合、サイズが1900×1070の画像を表示開始位置から切り出して映像処理部314へ入力する。従って、「画素ずらし」とは、表示パネル101に出力される画像の切り出し領域を表示開始位置に従って移動させる処理として解釈してもよい。もちろん、画像を切り出すことなく、単に表示位置を移動させる処理も画素ずらし処理に相当する。
【0032】
フレーム数計測部312は、表示パネルへ出力された映像のフレーム数をカウントし、カウントが所定数に達すると、表示位置制御部311に対して、焼き付き軽減トリガ信号を送信する。表示位置制御部311は、焼き付き軽減トリガ信号を受信すると、映像フォーマットに応じた画素ずらしテーブルに基づき、表示開始位置の更新を行う。
【0033】
なお、焼き付き軽減トリガ信号の発生条件はフレーム数に限定されない。例えば、前述した番組情報データに基づいてチャンネル変更が検出された場合や、リモコン317などによるユーザ操作に基づくチャンネル切換えが行われた場合などに、トリガ信号が発生してもよい。
【0034】
解像度変換部313は、3D映像生成部310から入力された映像に対して、表示パネル101に合わせた解像度変換を施す。こうして、画素ずらし処理の対象となる2D映像又は3D映像が取得される。従って、解像度変換部313は、2D映像又は3D映像を取得可能である。解像度変換部313は、解像度変換がなされた映像を表示位置制御部311へ送出する。
【0035】
映像処理部314は、表示位置制御部311から入力された画像(部分画像)に対してγ処理等を施した後、例えばLVDS信号等、表示パネル101に合わせた映像データに変換して出力する。
【0036】
音声処理部315は、オーディオデータに対してD/A変換処理等を施し、スピーカ316に出力する。リモコン317は、ユーザ操作に応じて制御信号を赤外線信号として送信する。CPU301は、赤外線受光部318で受光された赤外線信号から、放送受信装置300を制御するための各種コマンドや制御信号を生成して出力する。
【0037】
なお、本実例では説明のため、左目用画像を表示パネル101の奇数ラインに表示し、右目用画像を表示パネル101の偶数ラインに表示するものとした(図2参照)。しかしながら、左目用画像及び右目用画像の配置はこれに限定されず、例えば、左目用画像の画素と右目用画像の画素とが市松模様に配置されてもよい。左目用画像及び右目用画像の配置がどのような形態であれ、左目用画像の画素は別の左目用画像の画素の位置へ移動し、右目用画像の画素は別の右目用画像の画素の位置へ移動するように画素ずらしテーブルを作成すれば、所期の効果を達成することができる。換言すれば、表示位置制御部311は、3D映像の左目用画像及び右目用画像の配置パターンが偏光フィルタ102の配置パターンに一致するように3D映像を構成する表示用3次元画像の表示部分、つまり部分画像として切り出される領域を選択する。これにより、3D映像として表示が行われる。そして、焼き付き軽減処理に際しては、左目用画像及び右目用画像の配置パターンが変化しないように部分画像の切り出し位置を移動させる。つまり、切り出し位置の移動後(変更後)も偏光フィルタ102の配置パターンに一致するように移動させるものである。なお、切り出し位置の移動は、本発明においては、必ずしも必要ではない。つまり、表示画像自体の表示位置を変更する処理も可能である。この処理では、表示画面中に画像が表示されない領域、即ち、ブランキング領域が発生することになるが、表示画像が常に同じ位置に表示されることは解消できるため、焼き付きの軽減は図られる。
【0038】
図5は、放送受信装置300による焼き付き軽減処理を示すフローチャートである。前述の焼き付き軽減トリガ信号が発生すると、本フローチャートの処理が開始する。S501で、映像判定部309は、EITのコンポーネント記述子からコンポーネント種別を抽出する。そして、S502で、映像判定部309は、デコーダ部308が復号中のビデオデータの映像フォーマットが2D映像であるか3D映像であるかを判定する。2D映像の場合はS503へ進み、3D映像の場合はS505へ進む。
【0039】
S503で、表示位置制御部311は、2D用画素ずらしテーブルをRAM303から読み出す。S504で、表示位置制御部311は、トリガ信号の発生回数(即ち、本フローチャートの現在の処理を開始させたのが何回目のトリガ信号であるか)に基づき、対応する表示開始位置を2D用画素ずらしテーブルから取得する。
【0040】
一方、S505では、表示位置制御部311は、表示位置制御部311は、3D用画素ずらしテーブルをRAM303から読み出す。そしてS506で、表示位置制御部311は、トリガ信号の発生回数に基づき、対応する表示開始位置を3D用画素ずらしテーブルから取得する。
【0041】
S507で、表示位置制御部311は、S504又はS506で取得した表示開始位置に基づいて画像を切り出し、映像処理部314へ入力する。
【0042】
なお、焼き付き軽減トリガ信号の発生原因を表示位置制御部311が認識可能なように、焼き付き軽減トリガ信号のフォーマットを定義してもよい。この場合、映像フォーマットの種別を判定する処理(S501及びS502)を1度行えば、その後は、発生原因が映像フォーマットの変更を伴う可能性のあるもの(例えば、チャンネル切換え)でない限り、この処理を省略することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施例によれば、放送受信装置300は、表示パネル101の焼き付きを軽減するために、表示パネル101に出力する映像の領域を移動させる。映像が3D映像である場合、放送受信装置300は、左目用画像の画素は表示パネル101の左目用画像の画素の位置に表示され、右目用画像の画素は表示パネル101の右目用画像の画素の位置に表示されるように、領域の移動を行う。このようにして、3D映像用の焼き付き軽減技術が提供される。
【実施例2】
【0044】
実施例2では、3D映像の表示方式としてアクティブシャッタ方式を使用する場合を説明する。図6は、アクティブシャッタ方式による3D映像表示の概念図である。図6に示すように、左目用画像(L_t1、L_t3、...)と右目用画像(R_t2、R_t4、...)とが時系列に交互に表示され、両画像の視差により立体感が得られる。
【0045】
図7は、実施例2に係る放送受信装置700の概略構成を示すブロック図である。図7において、放送受信装置300(図3)と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0046】
デコーダ部701は、左目用画像を復号する第1デコーダ702と、右目用画像をデコードする第2デコーダ703とを有し、デマルチプレクサ部307から入力されたMPEG2符号化されたビデオデータを復号してデコーダ切換え部704に入力する。また、MPEG2−AAC符号化されたオーディオデータを復号してリニアPCM形式に変換し、音声処理部315に入力する。
【0047】
デコーダ切換え部704は、デコーダ部701から入力された左目用画像と右目用画像とを交互に解像度変換部313へ入力する。このように、2つのデコーダを併用することにより、より高フレームレートで映像を表示することが可能になる。
【0048】
表示位置制御部705は、解像度変換部313で解像度が変換された画像の表示領域を、その画像が左目用か右目用か、及び映像判定部309の判定結果に基づいて決定し、決定した表示領域から切り出した部分画像を映像処理部314へ入力する。表示領域の決定に際して、表示位置制御部705は、1組の左目用画像と右目用画像とについて、表示開始位置を一致させる。
【0049】
メガネ制御部706は、ビデオデータが3D映像である場合に、左目用画像及び右目用画像を交互に表示するタイミングと同期して、左目用画像は左目のみに、右目用画像は右目のみに入るようにメガネ707の液晶シャッタを制御する。
【0050】
表示パネル708は、実施例1の表示パネル101と異なり、偏光フィルムを持たない。第1メモリエリア709は2D用画素ずらしテーブルを保持し、第2メモリエリア710は3D用画素ずらしテーブルを保持する。但し、実施例1と異なり、1フレームに左目用画像と右目用画像とが混在することがないため、3D用画素ずらしテーブルの設計に際しては偏光フィルムの配置による制約を受けない。
【0051】
図8は、放送受信装置700による焼き付き軽減処理を示すフローチャートである。図8において、実施例1(図5)と同様の処理が行われるステップには同一の符号を付し、説明を省略する。焼き付き軽減トリガ信号が発生すると、本フローチャートの処理が開始する。
【0052】
実施例2では、画素ずらしテーブルは、例えばN={1,2,,,}={[1,1],[7,1],,,}のように、1回のトリガ信号に対して表示開始位置が2画素以上移動するように構成されているものとする。この場合、あるフレームから次のフレームに移る際に表示開始位置を1度に移動させると、その移動が人の目にとまり、映像の乱れとして知覚される可能性がある。そこで、本実施例では、表示位置制御部705は、トリガ信号の発生前の表示開始位置(例えば[1,1])から発生後の表示開始位置(例えば[7,1])へ向かって、何フレームかに亘って表示開始位置を徐々に移動させるものとする。
【0053】
S801で、表示位置制御部705は、トリガ信号の発生回数に対応する表示開始位置を2D用画素ずらしテーブルから取得し、目標移動位置として設定する。S802で、表示位置制御部705は、表示開始位置を所定単位(例えば、1画素)で移動させる。例えば、移動前の表示開始位置が[1,1]であり目標移動位置が[7,1]である場合、移動後の表示開始位置は[2,1]となる。
【0054】
S803で、表示位置制御部705は、S802で移動した表示開始位置に基づいて画像を切り出し、映像処理部314へ入力する。S804で、表示位置制御部705は、表示開始位置が目標移動位置に到達したか否かを判定する。到達していない場合はS802に戻り、到達した場合は処理を終了する。
【0055】
一方、S805では、表示位置制御部705は、トリガ信号の発生回数に対応する表示開始位置を3D用画素ずらしテーブルから取得し、目標移動位置として設定する。S806で、表示位置制御部705は、処理対象の映像が左目用画像であるか否かを判定する。左目用画像であればS807に進み、そうでなければS808に進む。
【0056】
S807で、表示位置制御部705は、表示開始位置を所定単位(例えば、1画素)で移動させる。例えば、移動前の表示開始位置が[1,1]であり目標移動位置が[5,1]である場合、移動後の表示開始位置は[2,1]となる。
【0057】
S808で、表示位置制御部705は、S807で移動した表示開始位置に基づいて画像を切り出し、映像処理部314へ入力する。S809で、表示位置制御部705は、表示開始位置が目標移動位置に到達したか否かを判定する。到達していない場合はS806に戻り、到達した場合は処理を終了する。
【0058】
S806〜S809から理解できるように、処理対象の映像が右目用画像である場合は表示開始位置の移動が行われないので、同一の場面に対応する1組の左目用画像及び右目用画像の表示開始位置が一致する。従って、同一の場面に対応する左目用画像と右目用画像とで視差が変化することが防止される。
【0059】
図9は、図8のフローチャートに従って表示開始位置が移動する様子を示す概念図である。図9に示されるように、3D映像の場合、同一の場面に対応する1組の左目用画像及び右目用画像(例えば、L_t1及びR_t2)では、表示開始位置が一致している。換言すれば、同一の場面に対応する1組の左目用画像及び右目用画像が次の1組の左目用画像及び右目用画像に切り替わるタイミング以外のタイミングでは、表示開始位置の移動が行われない。
【0060】
なお、3D用画素ずらしテーブルの座標値として移動量を0とすれば、画素ずらし処理の停止を意味する。デコーダ部701においてフレーム間の動きベクトルが大きい場合、映像中の物体の動きが激しいと考えられる。この場合、画素ずらしを適用すると、映像の乱れが顕著に表れ3D効果が低減する。そこで、デコーダ部701では、フレームを複数の領域に分割し、小領域毎に動きベクトルを参照しフレーム内の物体の平均動き量を表示位置制御部705に通知する。
【0061】
表示位置制御部705では、焼き付き軽減トリガ信号が発生した場合であっても、受信した平均動き量が予め定めている閾値を越える場合は、3D用画素ずらしテーブルの座標値として移動量を0に置き換えて処理する。その結果、3D効果の低減を回避することができる。なお、この場合、映像内の物体自体の動きが大きい為、残像が残るような焼き付きは発生しにくい。
【0062】
以上説明したように、本実施例によれば、放送受信装置700は、表示パネル708の焼き付きを軽減するために、表示パネル708に出力する映像の領域を移動させる。映像が3D映像である場合、放送受信装置700は、同一の場面に対応する左目用画像及び右目用画像の表示開始位置が一致するように、領域の移動を行う。従って、同一の場面に対応する左目用画像と右目用画像とで視差が変化することが防止される。このようにして、3D映像用の焼き付き軽減技術が提供される。
【0063】
[その他の実施例]
以上の各実施例で説明した構成要素及び処理は、ハードウェアで実装してもよいし、ソフトウェアで実装してもよいし、その組み合わせで実装してもよい。これらの構成要素及び処理の一部又は全部を実装するソフトウェア(プログラム)、及びこれを格納した記憶媒体も、本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左目用画像を表示する第1表示部と右目用画像を表示する第2表示部とを含む表示領域を持つ表示装置に映像を出力する映像処理装置であって、
同一の場面に対応する1組の左目用画像と右目用画像の集合として構成される3次元映像から、左目用画像及び右目用画像の配置パターンが前記表示領域における前記第1表示部及び前記第2表示部の配置パターンに一致するように処理された表示用3次元画像を生成する生成手段と、
前記表示用3次元画像の一部を切り出す映像処理手段と、
前記映像処理手段が切り出した部分画像を前記表示装置に出力する出力手段と、を備え、
前記映像処理手段は、前記部分画像の切り出し位置を変更する場合、切り出し位置の変更後の部分画像における左目用画像及び右目用画像の配置パターンが前記表示領域における前記第1表示部及び前記第2表示部の配置パターンに一致するように、前記表示用3次元画像から前記部分画像を切り出すことを特徴とする映像処理装置。
【請求項2】
前記表示領域は、前記第1表示部と前記第2表示部とが水平ライン単位で交互に設けられており、
前記映像処理手段は、前記切り出し位置を、垂直方向については2n(nは自然数)ライン移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項3】
表示装置に映像を出力する映像処理装置であって、
同一の場面に対応する1組の左目用画像と右目用画像とを時系列に交互に含む3次元映像を取得する取得手段と、
前記取得した3次元映像から、前記左目用画像及び前記右目用画像それぞれの画像の一部を切り出す映像処理手段と、
前記映像処理手段が切り出した部分画像を前記表示装置に出力する出力手段と、
を備え、
前記映像処理手段は、前記部分画像の切り出し位置を変更する処理を実行し、
前記映像処理手段は、前記切り出し位置の変更処理を、前記3次元映像において同一の場面に対応する1組の左目用画像と右目用画像とが次の1組の左目用画像と右目用画像とに切り替わるタイミング以外のタイミングでは行わないように制御することを特徴とする映像処理装置。
【請求項4】
左目用映像を表示する第1表示部と右目用映像を表示する第2表示部とを含む表示領域を持つ表示装置に映像を出力する映像処理装置の制御方法であって、
生成手段が、同一の場面に対応する1組の左目用画像と右目用画像の集合として構成される3次元映像から、左目用画像及び右目用画像の配置パターンが前記表示領域における前記第1表示部及び前記第2表示部の配置パターンに一致するように処理された表示用3次元画像を生成する生成工程と、
映像処理手段が、前記表示用3次元画像の一部を切り出す映像処理工程と、
出力手段が、前記映像処理工程において前記映像処理手段が切り出した部分画像を前記表示装置に出力する出力工程と、を備え、
前記映像処理工程において、前記映像処理手段は、前記部分画像の切り出し位置を変更する場合、切り出し位置の変更後の部分画像における左目用画像及び右目用画像の配置パターンが前記表示領域における前記第1表示部及び前記第2表示部の配置パターンに一致するように、前記表示用3次元画像から前記部分画像を切り出すことを特徴とする制御方法。
【請求項5】
表示装置に映像を出力する映像処理装置の制御方法であって、
取得手段が、同一の場面に対応する1組の左目用画像と右目用画像とを時系列に交互に含む3次元映像を取得する取得工程と、
映像処理手段が、前記取得した3次元映像から、前記左目用画像及び前記右目用画像それぞれの画像の一部を切り出す映像処理工程と、
出力手段が、前記映像処理工程において前記映像処理手段が切り出した部分画像を前記表示装置に出力する出力工程と、
を備え、
前記映像処理工程において、前記映像処理手段は、前記部分画像の切り出し位置を変更する処理を実行し、
前記映像処理工程において、前記映像処理手段は、前記切り出し位置の変更処理を、前記3次元映像において同一の場面に対応する1組の左目用画像と右目用画像とが次の1組の左目用画像と右目用画像とに切り替わるタイミング以外のタイミングでは行わないように制御することを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−283528(P2010−283528A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134298(P2009−134298)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】