映像品質推定装置および方法、符号化ビットレート推定装置および方法、並びにプログラム
【課題】符号化ビットレートを考慮した、安定した高精度のユーザ体感品質を推定する。
【解決手段】パケット解析部17Bで、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出し、符号化ビットレート算出部17Cで、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出する。
【解決手段】パケット解析部17Bで、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出し、符号化ビットレート算出部17Cで、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質推定技術に関し、特に映像系IPサービスによりパケット網を介して受信再生される映像の映像品質を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
映像系IPサービスは、近年、IPTVサービスとして世界各国で本格的なサービス提供が始まり、市場が拡大しつつある。また、電話サービスを拡張したIPテレビ電話等のサービスも提供されつつある。一方、IP網の品質が保証されないため、アプリケーションの品質管理技術が注目され、品質測定器市場も拡大しつつある。品質管理技術においては、網の品質に留まらず、ユーザ体感品質(QoE:Quality of Experience)を管理することが重要視されるようになってきている。
【0003】
ユーザ体感品質を管理するため、従来より、網や端末から取得できる様々なパラメータを利用してユーザ体感品質を推定する技術が検討されており、網上で取得できる情報(パケットの挙動)を利用するアプローチとして、後述の特許文献1が存在する。また、パケットの挙動を利用する際に、符号化もしくはパケット転送レートを利用して、ユーザ体感品質を推定するアプローチとして、非特許文献1や非特許文献2などが存在する。特に、特許文献2では、映像ビットレートとユーザ体感品質に相関関係があることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−301027号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K.Yamagishi, T.Hayashi,"Video-Quality Planning Model for Videophone Services," TheJournal of The Institute of Image Information and Television Engineers, Vol. 62, No. 7, pp. 1050.1058, 2008.
【非特許文献2】ITU−T勧告 G.1070
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来技術では、パケットの挙動を利用するアプローチで品質管理を実現する場合、パケットの挙動を測定するポイントは受信端末もしくは中継網上のノードであり、映像信号送信側で設定される符号化ビットレートを確認する手段は備えていない。例外的に、メタデータ等を用いて設定情報が送信端末からメディア情報と一緒に転送される方式等も利用可能な場合もあるが、多くのアプリケーションでは、そのような方式をとっていない。そのため、符号化もしくはパケット転送レートを利用するユーザ体感品質推定アプローチの場合、符号化ビットレートの代用として、パケット転送レートを利用することが多い。
【0007】
しかしながら、パケット転送レートは、符号化ビットレートと異なり、転送される映像コンテンツの内容に応じて大きく変動するアプリケーションも多く存在する。例えば、静止画や背景が黒等の単色の場合、パケット転送レートが低下する。このため、パケット転送レートの変動が激しいアプリケーションの場合、符号化ビットレートを考慮した安定した高精度のユーザ体感品質推定ができないという問題点があった。
【0008】
例えば、従来技術のうち特許文献2等のアプローチは、符号化ビットレートを考慮するためのアプローチであり、伝送される映像コンテンツの内容に関わらず、映像配信側で設定される符号化ビットレートに応じた画像の繊細さや動きのなめらかさ等に基づいて、事前に一意の品質基準値を設定するアプローチである。
この際、設定される符号化ビットレートが20Mbpsの場合のユーザ体感品質の最大値は「4.5」、設定される符号化ビットレートが 2Mbpsの場合のユーザ体感品質の最大値は「2.5」のように、設定される符号化ビットレートに応じてユーザ体感品質の最大値を事前に設定する。
【0009】
したがって、設定される符号化ビットレートが同じストリーム(セッション)では、符号化ビットレートに応じた基準となるユーザ体感品質の最大値は一致しなければならず、伝送される映像コンテンツ内容によって変動するパケット転送レートを用いてユーザ体感品質を推定してしまうと、本来、基準として利用しなければならないユーザ体感品質の最大値が大きく異なる場合があるため、ユーザ体感品質推定精度は低下する。そのため、パケット転送レートの変動が激しいアプリケーションの場合、符号化ビットレートを考慮した、安定した高精度のユーザ体感品質推定ができなくなる。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、符号化ビットレートを考慮した、安定した高精度のユーザ体感品質を推定できる映像品質推定技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明にかかる映像品質推定装置は、符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得したパケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートに基づいて、当該映像通信の受信映像に関するユーザ体感品質を推定する映像品質推定装置であって、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析部と、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出部と、映像品質推定時点における符号ビットレートに基づいて、映像品質推定時点におけるユーザ体感品質を算出するユーザ体感品質算出部とを備えている。
【0012】
この際、符号化ビットレート算出部に、各時刻におけるパケット受信レートのうちから、時間的に連続する各パケット受信レートが許容範囲内に収まる区間を算出対象区間として選択する対象選択部と、この算出対象区間に含まれるパケット受信レートの統計値を、当該算出対象区間の後端に位置する後端パケット受信レートの時刻における符号化ビットレートとして算出する統計値算出部とを設けてもよい。
【0013】
また、対象選択部で、算出対象区間に含まれるパケット受信レートの平均値と標準偏差とを算出し、当該平均値を中心としてその上下に当該標準偏差の幅を持つ範囲を許容範囲として選択し、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートと当該許容範囲とを比較した比較結果に基づいて、当該後続パケット受信レートを当該算出対象区間に含めるか否かを判定するようにしてもよい。
【0014】
あるいは、対象選択部で、算出対象区間に含まれるパケット受信レート標準偏差を算出し、後端パケット受信レートを中心としてその上下に当該標準偏差の幅を持つ範囲を許容範囲として選択し、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートと当該許容範囲とを比較した比較結果に基づいて、当該後続パケット受信レートを当該算出対象区間に含めるか否かを判定するようにしてもよい。
【0015】
また、符号化ビットレート算出部に、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが許容範囲内に収まらない場合、後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数のパケット受信レートについて変化率を算出し、この変化率と予め設定されている変化率判定値との比較結果に基づいてパケット受信レートの変動有無を確認する変動確認部をさらに設け、対象選択部で、パケット受信レートの変動なしを確認した場合、後続パケット受信レートを算出対象区間に含めるようにしてもよい。
【0016】
また、符号化ビットレート算出部に、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが許容範囲内に収まらない場合、後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数のパケット受信レートについて変化率を算出し、この変化率と予め設定されている変化率判定値との比較結果に基づいてパケット受信レートの変動有無を確認し、パケット受信レートの変動ありを確認した場合、後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるか否かを確認する変動確認部と、パケット受信レートの変動ありを確認し、かつ後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れた場合は、後続パケット受信レートから許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるまでのパケット受信レートを、符号化ビットレートの算出対象から除外する対象除外部とをさらに設けてもよい。
【0017】
また、符号化ビットレート算出部に、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが許容範囲内に収まらない場合、後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数のパケット受信レートについて変化率を算出し、この変化率と予め設定されている変化率判定値との比較結果に基づいてパケット受信レートの変動有無を確認し、パケット受信レートの変動ありを確認した場合、後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるか否かを確認する変動確認部と、パケット受信レートの変動ありを確認し、かつ、後続パケット受信レートから所定長の安定判定期間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れない場合は、後続パケット受信レート以降のパケット受信レートを新たな算出対象区間として選択する対象切替部とをさらに設けてもよい。
【0018】
また、本発明にかかる映像品質推定方法は、符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得したパケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートに基づいて、当該映像通信の受信映像に関するユーザ体感品質を推定する映像品質推定方法であって、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析ステップと、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出ステップと、映像品質推定時点における符号ビットレートに基づいて、映像品質推定時点におけるユーザ体感品質を算出するユーザ体感品質算出ステップとを備えている。
【0019】
また、本発明にかかる符号化ビットレート推定装置は、符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得したパケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートを推定する符号化ビットレート推定装置であって、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析部と、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出部とを備えている。
【0020】
また、本発明にかかる符号化ビットレート推定方法は、符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得したパケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートを推定する符号化ビットレート推定方法であって、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析ステップと、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出ステップとを備えている。
【0021】
また、本発明にかかるプログラムは、コンピュータを、前述したいずれかの映像品質推定装置を構成する各部として機能させるためのプログラムである。
また、本発明にかかる他のプログラムは、コンピュータを、前述した符号化ビットレート推定装置を構成する各部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、評価対象となる映像通信について、各時刻における符号化ビットレートを精度良く算出することができる。したがって、パケット転送レートの変動が激しいアプリケーションであっても、符号化ビットレートを考慮した、安定した高精度のユーザ体感品質を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】設定情報の構成例である。
【図3】パケット受信レートデータの構成例である。
【図4】符号化ビットレートデータの構成例である。
【図5】符号化ビットレート算出部の構成を示すブロック図である。
【図6】第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置の映像品質推定動作を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置の符号化ビットレート算出処理を示すフローチャートである。
【図8】対象選択部での処理例を示す説明図である。
【図9】変動確認部での変動有無確認処理例を示す説明図である。
【図10】変動確認部での安定判定処理例を示す説明図である。
【図11】変動確認部での他の安定判定処理例を示す説明図である。
【図12】第2の実施の形態にかかる符号化ビットレート推定装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置の構成を示すブロック図である。
【0025】
この映像品質推定装置10は、全体としてサーバ装置などの情報通信処理装置からなり、符号化した映像データをパケットに格納して、送信端末1からパケット網5を介して、STP(Set Top Box)などの受信端末2へ伝送し、映像モニタ3で受信映像を再生する映像通信について、パケット網5内の中継装置5A、パケット網5から受信端末2までの伝送経路6に設けられた分岐器6A、あるいは受信端末2からキャプチャした映像通信のパケットに基づいて、映像モニタ3で再生される受信映像に関する映像品質を算出する装置である。
【0026】
本実施の形態では、映像品質推定装置10が独立した情報通信処理装置からなる場合を例として説明するが、これに限定されるものではなく、例えば中継装置5A、分岐器6A、受信端末2などの通信装置内へ実装してもよい。
【0027】
本実施の形態は、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出し、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出し、映像品質推定時点における符号ビットレートに基づいて、映像品質推定時点におけるユーザ体感品質を算出するようにしたものである。
【0028】
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる映像品質推定装置の構成について詳細に説明する。
この映像品質推定装置10には、主な機能部として、通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、パケット受信レート記憶部15、符号化ビットレート記憶部16、および演算処理部17が設けられている。
【0029】
通信I/F部11は、専用の通信回路からなり、中継装置5A、分岐器6A、あるいは受信端末2から、各種パケットをキャプチャする機能を有している。
操作入力部12は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して演算処理部17へ出力する機能を有している。
画面表示部13は、LCDなどの画面表示装置からなり、演算処理部17の制御に基づいて、操作メニューや設定画面、さらには算出した符号化ビットレートやユーザ体感品質などの各種情報を画面表示する機能を有している。
【0030】
記憶部14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部17で用いる各種処理情報やプログラムを記憶する機能を有している。記憶部14で記憶する主な処理情報として、設定情報14A、推定モデル14B、およびプログラム14Pがある。
【0031】
設定情報14Aは、符号化ビットレートの算出処理に用いる各種の設定情報である。図2は、設定情報の構成例である。ここでは、変動判定基準値として、変動判定時間長Tcと変動判定変動量ΔRが設定されており、安定判定基準値として、安定判定継続時間Tsとが設定されている。これら設定情報の内容については後述する。
【0032】
推定モデル14Bは、映像通信に関する符号化ビットレートと網品質情報とから、当該映像通信のユーザ体感品質を推定するための推定モデルである。この推定モデルについては、公知のモデルを用いればよい。本実施の形態では、推定モデル14Bとして、符号化ビットレートおよびパケット損失率とユーザ体感品質との対応関係を示す関数を用いる場合を例として説明する。
【0033】
パケット受信レート記憶部15は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部17で算出した、単位時間当たりに受信端末2で受信したパケット数を示すパケット受信レートを記憶する記憶部である。
図3は、パケット受信レートデータの構成例である。ここでは、任意の算出対象区間における時間位置を示す時刻情報と、当該時間位置における映像通信のパケット受信レートとの組が登録されている。
【0034】
符号化ビットレート記憶部16は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部17で算出した、単位時間当たりに受信端末2で受信した符号化データ量を示す符号化ビットレートを記憶する記憶部である。
図4は、符号化ビットレートデータの構成例である。ここでは、任意の算出対象区間における時間位置を示す時刻情報と、当該時間位置における映像通信の符号化ビットレートとの組が登録されている。
【0035】
演算処理部17は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部14のプログラムを読み込んで実行することにより、各種処理部を実現する機能を有している。演算処理部17で実現される主な処理部としては、パケット取得部17A、パケット解析部17B、符号化ビットレート算出部17C、およびユーザ体感品質算出部17Dがある。
【0036】
パケット取得部17Aは、通信I/F部11でキャプチャしたパケットのうちから、評価対象となる映像通信のポート番号やIDなどの識別情報に基づいて、当該映像通信に関するパケットを取得する機能を有している。例えば、IPTVサービス(MPEG2−TSを利用した場合)では、IPパケット中に含まれるPAT(Program Allocation Table)やPMT(Program Map Table)の情報を用いて、ユーザ体感品質を推定する対象チャンネル(TV番組)を特定すればよい。
【0037】
パケット解析部17Bは、パケット取得部17Aで取得したパケットの取得パケット数と取得時刻とに基づいて、これらパケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出し、パケット受信レート記憶部15へ保存する機能と、パケット取得部17Aで取得したパケットからパケット損失率などの網品質情報を算出する機能とを有している。網品質情報の算出方法については、公知の技術を用いればよい。
【0038】
符号化ビットレート算出部17Cは、パケット解析部17Bで算出された記憶部14のパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出し、符号化ビットレート記憶部16へ保存する機能を有している。
図5は、符号化ビットレート算出部の構成を示すブロック図である。符号化ビットレート算出部17Cには、主な処理部として、対象選択部18A、統計値算出部18B、変動確認部18C、対象除外部18D、および対象切替部18Eが設けられている。
【0039】
対象選択部18Aは、各時刻におけるパケット受信レートのうちから、時間的に連続する各パケット受信レートが許容範囲内に収まる区間を算出対象区間として選択する機能と、変動確認部18Cでパケット受信レートの変動なしが確認された場合、後続パケット受信レートを算出対象区間に含める機能とを有している。
【0040】
この際、対象選択部18Aで、算出対象区間に含まれるパケット受信レートの平均値と標準偏差とを算出し、当該平均値を中心としてその上下に当該標準偏差の幅を持つ範囲を許容範囲として選択し、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートと当該許容範囲とを比較した比較結果に基づいて、当該後続パケット受信レートを当該算出対象区間に含めるか否かを判定するようにしてもよい。
【0041】
あるいは、対象選択部18Aで、算出対象区間に含まれるパケット受信レート標準偏差を算出し、後端パケット受信レートを中心としてその上下に当該標準偏差の幅を持つ範囲を許容範囲として選択し、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートと当該許容範囲とを比較した比較結果に基づいて、当該後続パケット受信レートを当該算出対象区間に含めるか否かを判定するようにしてもよい。
なお、許容範囲については、標準偏差に限定されるものではなく、最大値、最小値、分散、95%信頼幅など、パケット受信レートの変動を確認できる統計値であればよい。
【0042】
統計値算出部18Bは、算出対象区間に含まれるパケット受信レートの統計値を、当該算出対象区間の後端に位置する後端パケット受信レートの時刻における符号化ビットレートとして算出する機能を有している。この際、算出対象区間に含まれるすべてのパケット受信レートを用いて符号化ビットレートを算出してもよく、後端パケット受信レートから所定長だけ遡った区間内のパケット受信レートを用いて符号化ビットレートを算出してもよい。また、符号化ビットレートとしては、平均値のほか、最大値、最小値など、利用者のポリシやアプリケーションに応じた統計値を用いればよい。また、符号化ビットレートについては、個々のパケット受信レートに対応する時刻ごとに算出してもよく、一定の時間間隔で算出してもよい。
【0043】
変動確認部18Cは、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが許容範囲内に収まらない場合、後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数のパケット受信レートについて回帰直線(変化率)を算出し、この回帰直線の傾き(変化率)と予め設定されている傾き判定値(変化率判定値)との比較結果に基づいてパケット受信レートの変動有無を確認する機能と、パケット受信レートの変動ありを確認した場合、後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるか否かを確認する機能とを有している。なお、回帰直線やその傾き、および傾き判定値は、パケット受信レートの変化率を算出して判定するための一例であり、他の算出方法でパケット受信レートの変化率を算出して判定してもよい。
【0044】
対象除外部18Dは、変動確認部18Cでパケット受信レートの変動ありが確認され、かつ後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れた場合は、後続パケット受信レートから許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるまでのパケット受信レートを、符号化ビットレートの算出対象から除外する機能を有している。
【0045】
対象切替部18Eは、変動確認部18Cでパケット受信レートの変動ありが確認され、かつ、後続パケット受信レートから所定長の安定判定期間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れない場合は、後続パケット受信レート以降のパケット受信レートを新たな算出対象区間として選択する機能を有している。
【0046】
ユーザ体感品質算出部17Dは、記憶部14の推定モデル14Bを参照して、符号化ビットレート記憶部16から取得した、映像品質推定時点における符号ビットレートと、パケット解析部17Bで算出した映像品質推定時点におけるパケット損失率とに基づいて、映像品質推定時点におけるユーザ体感品質を算出する機能を有している。
【0047】
[第1の実施の形態の動作]
次に、本実施の形態にかかる映像品質推定装置の動作について説明する。
まず、図6を参照して、本実施の形態にかかる映像品質推定装置の映像品質推定動作について説明する。図6は、第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置の映像品質推定動作を示すフローチャートである。
映像品質推定装置10の演算処理部17は、定期的、外部装置からの指示、あるいは操作入力部12からのオペレータ指示に応じて、図6の映像品質推定動作を実行する。
【0048】
まず、演算処理部17は、パケット取得部17Aにより、通信I/F部11でキャプチャしたパケットのうちから、評価対象となる映像通信のポート番号やIDなどの識別情報に基づいて、評価対象となる映像通信に関するパケットを取得する(ステップ100)。
次に、演算処理部17は、パケット解析部17Bにより、パケット取得部17Aで取得したパケットの取得パケット数と取得時刻とに基づいて、これらパケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出し、パケット受信レート記憶部15へ保存する(ステップ101)。
【0049】
続いて、演算処理部17は、符号化ビットレート算出部17Cにより、パケット解析部17Bで算出された記憶部14のパケット受信レートを統計処理することにより、各時刻における当該映像通信の符号化ビットレートを算出する、後述の符号化ビットレート算出処理を実行し、算出した符号化ビットレートを符号化ビットレート記憶部16へ保存する(ステップ102)。
【0050】
この後、演算処理部17は、ユーザ体感品質算出部17Dにより、記憶部14の推定モデル14Bを参照して、符号化ビットレート記憶部16から取得した、映像品質推定時点における符号ビットレートと、パケット解析部17Bで算出した映像品質推定時点におけるパケット損失率とに基づいて、映像品質推定時点におけるユーザ体感品質を、評価対象となる映像通信の映像品質として算出し(ステップ103)、一連の映像品質推定動作を終了する。
【0051】
次に、図7を参照して、本実施の形態にかかる映像品質推定装置の符号化ビットレート算出動作について説明する。図7は、第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置の符号化ビットレート算出処理を示すフローチャートである。
【0052】
符号化ビットレート算出部17Cは、パケット受信レート記憶部15に保存されているパケット受信レートのうち、指定された指定区間に含まれるパケット受信レートに基づいて、符号化ビットレートをそれぞれ算出する際、図7の符号化ビットレート算出処理を実行する。ここでは、指定区間に含まれる個々のパケット受信レートが観測された時刻における符号化ビットレートを算出するものとし、すでに選択された算出対象区間に対して時間的に連続する未処理の新たなパケット受信レートを算出対象区間に追加して、新たなパケット受信レートの観測時刻における符号化ビットレートを算出する場合を例として説明する。
【0053】
まず、符号化ビットレート算出部17Cは、対象選択部18Aにより、指定区間に含まれるパケット受信レートのうちから、すでに選択した算出対象区間の後端パケット受信レートに対して、時間的に連続する未処理の新たなパケット受信レートを、後続パケット受信レートとして1つ選択し(ステップ110)、このパケット受信レートが許容範囲内に収まるか否かを確認する(ステップ111)。
【0054】
図8は、対象選択部での処理例を示す説明図であり、縦軸がパケット受信レートR(Mbps)を示し、横軸がパケット受信レートの観測時刻T(sec)を示している。ここでは、時刻Teまでのパケット受信レートが算出対象区間として選択されており、時刻Teのパケット受信レートが後端パケット受信レートR(Te)となる。また、時刻Teの1sec後の時刻Txのパケット受信レートが後続パケット受信レートR(Tx)となり、この後続パケット受信レートR(Tx)が選択対象区間に含まれるか否か判定される。
【0055】
許容範囲の主な選択方法としては、図8に示す許容範囲のように、算出対象区間のパケット受信レートから算出した平均値μを中心としてその上下に、同じく算出対象区間のパケット受信レートから算出した標準偏差σの幅を持つ範囲である。例えば、μ=4.8でσ=1.2の場合、許容範囲は、3.6(=μ−σ)〜6.0(=μ+σ)の範囲となる。この場合、R(Tx)=4.2であるから、R(Tx)は許容範囲内に含まれる。
この際、平均値に代えて、後端パケット受信レートR(Te)を許容範囲の中心としてもよい。例えば、R(Te)=5.0でσ=1.2の場合、許容範囲は、3.8(=R(Te)−σ)〜6.2(=R(Te)+σ)の範囲となる。
【0056】
このようにして、対象選択部18Aは、後続パケット受信レートR(Tx)が許容範囲内に含まれるか確認し(ステップ111)、後続パケット受信レートR(Tx)が許容範囲内に含まれる場合(ステップ111:YES)、対象選択部18Aは、後続パケット受信レートR(Tx)を算出対象区間に含める(ステップ112)。
【0057】
続いて、符号化ビットレート算出部17Cは、統計値算出部18Bにより、後続パケット受信レートR(Tx)を含めた算出対象区間に関する平均値などの統計値を算出し、この統計を時刻Txにおける符号化ビットレートとして、符号化ビットレート記憶部16へ保存する(ステップ113)。この際、統計値算出部18Bで、後続パケット受信レートR(Tx)を含めた算出対象区間に関する許容範囲として用いる、平均値や標準偏差などの統計値を算出しておいてもよい。
【0058】
その後、符号化ビットレート算出部17Cは、指定区間に含まれるすべてのパケット受信レートに対する処理が終了したか確認し(ステップ114)、未処理のパケット受信レートが存在する場合は(ステップ114:NO)、ステップ110へ戻る。また、すべてのパケット受信レートについての処理が終了した場合は(ステップ114:YES)、一連の符号化ビットレート算出処理を終了する。
【0059】
また、ステップ111において、後続パケット受信レートR(Tx)が許容範囲内に含まれない場合(ステップ111:NO)、符号化ビットレート算出部17Cは、変動確認部18Cにより、パケット受信レートに関する変動有無を確認する(ステップ120)。
【0060】
図9は、変動確認部での変動有無確認処理例を示す説明図である。ここでは、時刻Txにおける後続パケット受信レートR(Tx)が許容範囲に含まれないため、変動確認部18Cは、まず、記憶部14の設定情報14Aで設定されている変動判定期間Lcと変動判定変動量ΔRとに基づいて、傾き判定値A=ΔR/Lcを算出し、後端パケット受信レートR(Te)から始まる変動判定期間Lcに含まれる複数のパケット受信レートについて回帰直線R=aT+bを算出する。そして、回帰直線の傾きaと傾き判定値Aとを比較することにより、パケット受信レートの変動有無を確認する。
【0061】
ここで、傾きaが傾き判定値A以下の場合には、変動なしと判定し(ステップ120:NO)、前述したステップ112へ移行して、後続パケット受信レートR(Tx)を算出対象区間に含めて、符号化ビットレートを算出する。
【0062】
一方、傾きaが傾き判定値Aより大きい場合には、変動ありと判定し(ステップ120:YES)、変動確認部18Cにより、後続パケット受信レートR(Tx)以降の変動区間Lfが、記憶部14の設定情報14Aで設定されている安定判定時間Lsより短いか否か確認する。
【0063】
図10は、変動確認部での安定判定処理例を示す説明図である。変動区間Lfとは、後続パケット受信レートR(Tx)以降のパケット受信レートが、後端パケット受信レートの許容範囲に収まらない区間のことである。したがって、後続パケット受信レートR(Tx)から安定判定時間Lsが経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるか否か確認することにより、変動区間Lfが、安定判定時間Lsより短いか否かを確認できる。図10の場合、時刻Tsのパケット受信レートR(Ts)が許容範囲内に戻っており、時刻Txから時刻Tsまでの変動区間Lfは、時刻Txからの安定判定時間Lsより短い。
【0064】
したがって、図10に示すように、変動区間Lfが安定判定時間Lsより短い場合(ステップ121:YES)、符号化ビットレート算出部17Cは、対象除外部18Dにより、後続パケット受信レートR(Tx)から許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるまでのパケット受信レート、すなわち時刻Tcまでのパケット受信レートを、符号化ビットレートの算出対象から除外し(ステップ122)、ステップ114へ移行する。
【0065】
これにより、時刻Teから時刻Tcのパケット受信レートは、時刻Tcより後の符号化ビットレートの算出には用いられない。なお、時刻Teから時刻Tcの符号化ビットレートについては、例えば、対象除外部18Dにより、時刻Teにおける符号化ビットレートと同じ値を、符号化ビットレート記憶部15へ保存すればよい。
また、図10に示すように、時刻Ts以降の符号化ビットレートについては、時刻Te以前のパケット受信レートと時刻Ts以降のパケット受信レートに基づき算出される。
【0066】
図11は、変動確認部での他の安定判定処理例を示す説明図である。この場合、時刻Tsのパケット受信レートR(Ts)が許容範囲内に戻っており、時刻Txから時刻Tsまでの変動区間Lfは、時刻Txからの安定判定時間Lsより長い。
このように、ステップ121において、変動区間Lfが安定判定時間Ls以上の場合(ステップ121:NO)、符号化ビットレート算出部17Cは、対象切替部18Eにより、後続パケット受信レートR(Tx)以降のパケット受信レートを新たな算出対象区間として選択し(ステップ123)、ステップ113へ移行する。
【0067】
これにより、時刻Teまでの各時刻については、時刻Teまでのパケット受信レートに基づいて符号化ビットレートが算出され、時刻Tx以降の各時刻については、時刻Tx以降の新たな算出対象区間におけるパケット受信レートに基づいて、符号化ビットレートが算出する。なお、時刻Txから時刻Tsまでの符号化ビットレートについては、ステップ123で新たな算出対象区間を選択した直後のステップ113において、統計値算出部18Bにより、一括して算出すればよい。
【0068】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、パケット解析部17Bで、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出し、符号化ビットレート算出部17Cで、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出するようにしたので、評価対象となる映像通信について、各時刻における符号化ビットレートを精度良く算出することができる。
したがって、パケット転送レートの変動が激しいアプリケーションであっても、符号化ビットレートを考慮した、安定した高精度のユーザ体感品質を推定できる。
【0069】
また、本実施の形態では、符号化ビットレート算出部17Cにおいて、対象選択部18Aで、各時刻におけるパケット受信レートのうちから、時間的に連続する各パケット受信レートが許容範囲内に収まる区間を算出対象区間として選択し、統計値算出部18Bで、この算出対象区間に含まれるパケット受信レートの統計値を、当該算出対象区間の後端に位置する後端パケット受信レートの時刻における符号化ビットレートとして算出するようにしたので、安定した符号化ビットレートを得ることができる。
【0070】
また、本実施の形態では、符号化ビットレート算出部17Cにおいて、変動確認部18Cで、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが許容範囲内に収まらない場合、後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数のパケット受信レートについて回帰直線(変化率)を算出し、この回帰直線の傾き(変化率)と予め設定されている傾き判定値(変化率判定値)との比較結果に基づいてパケット受信レートの変動有無を確認し、対象選択部18Aで、パケット受信レートの変動なしを確認した場合、後続パケット受信レートを算出対象区間に含めるようにしたので、パケット受信レートが緩やかに変化するような場合でも、これに応じた符号化ビットレートを算出することができる。
【0071】
また、本実施の形態では、符号化ビットレート算出部17Cにおいて、パケット受信レートの変動ありを確認し、かつ後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れた場合は、対象除外部18Dにより、後続パケット受信レートから許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるまでのパケット受信レートを、符号化ビットレートの算出対象から除外するようにしたので、パケット受信レートが一時的に変動した場合でも、その変動区間の影響を含まない、安定した符号化ビットレートを算出することができる。
【0072】
また、本実施の形態では、符号化ビットレート算出部17Cにおいて、パケット受信レートの変動ありを確認し、かつ、後続パケット受信レートから所定長の安定判定期間が経過する前の時点で、対象切替部18Eにより、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れない場合は、後続パケット受信レート以降のパケット受信レートを新たな算出対象区間として選択するようにしたので、バケット受信レートの変動が継続的な場合には、それまでの区間の影響を含まない、高い精度の符号化ビットレートを算出することができる。
【0073】
[第2の実施の形態]
次に、図12を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる符号化ビットレート推定装置について説明する。図12は、第2の実施の形態にかかる符号化ビットレート推定装置の構成を示すブロック図である。
第1の実施の形態では、映像品質推定装置10を例として説明したが、符号化ビットレート推定装置として実現してもよい。図12に示すように、具体的には、図1に示した映像品質推定装置10の構成から、演算処理部17のユーザ体感品質算出部17Dを削除したものが、符号化ビットレート推定装置20の構成となる。
【0074】
すなわち、パケット解析部17Bで、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出し、符号化ビットレート算出部17Cで、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出する。
これにより、評価対象となる映像通信について、各時刻における符号化ビットレートを精度良く算出することができる。
【0075】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0076】
1…送信端末、2…受信端末、3…映像モニタ、5…パケット網、5A…中継装置、6…伝送経路、6A…分岐器、10…映像品質推定装置、11…通信I/F部、12…操作入力部、13…画面表示部、14…記憶部、14A…設定情報、14B…推定モデル、14P…プログラム、15…パケット受信レート記憶、16…符号化ビットレート記憶部、17…演算処理部、17A…パケット取得部、17B…パケット解析部、17C…符号化ビットレート算出部、17D…ユーザ体感品質算出部、Lc…変動判定期間、ΔR…変動判定変動量、Ls…安定判定期間、Lf…変動区間、R(Te)…後端パケット受信レート、R(Tx)…後続パケット受信レート、μ…平均値、σ…標準偏差、a…回帰曲線の傾き、A…傾き判定値。
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質推定技術に関し、特に映像系IPサービスによりパケット網を介して受信再生される映像の映像品質を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
映像系IPサービスは、近年、IPTVサービスとして世界各国で本格的なサービス提供が始まり、市場が拡大しつつある。また、電話サービスを拡張したIPテレビ電話等のサービスも提供されつつある。一方、IP網の品質が保証されないため、アプリケーションの品質管理技術が注目され、品質測定器市場も拡大しつつある。品質管理技術においては、網の品質に留まらず、ユーザ体感品質(QoE:Quality of Experience)を管理することが重要視されるようになってきている。
【0003】
ユーザ体感品質を管理するため、従来より、網や端末から取得できる様々なパラメータを利用してユーザ体感品質を推定する技術が検討されており、網上で取得できる情報(パケットの挙動)を利用するアプローチとして、後述の特許文献1が存在する。また、パケットの挙動を利用する際に、符号化もしくはパケット転送レートを利用して、ユーザ体感品質を推定するアプローチとして、非特許文献1や非特許文献2などが存在する。特に、特許文献2では、映像ビットレートとユーザ体感品質に相関関係があることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−301027号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K.Yamagishi, T.Hayashi,"Video-Quality Planning Model for Videophone Services," TheJournal of The Institute of Image Information and Television Engineers, Vol. 62, No. 7, pp. 1050.1058, 2008.
【非特許文献2】ITU−T勧告 G.1070
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来技術では、パケットの挙動を利用するアプローチで品質管理を実現する場合、パケットの挙動を測定するポイントは受信端末もしくは中継網上のノードであり、映像信号送信側で設定される符号化ビットレートを確認する手段は備えていない。例外的に、メタデータ等を用いて設定情報が送信端末からメディア情報と一緒に転送される方式等も利用可能な場合もあるが、多くのアプリケーションでは、そのような方式をとっていない。そのため、符号化もしくはパケット転送レートを利用するユーザ体感品質推定アプローチの場合、符号化ビットレートの代用として、パケット転送レートを利用することが多い。
【0007】
しかしながら、パケット転送レートは、符号化ビットレートと異なり、転送される映像コンテンツの内容に応じて大きく変動するアプリケーションも多く存在する。例えば、静止画や背景が黒等の単色の場合、パケット転送レートが低下する。このため、パケット転送レートの変動が激しいアプリケーションの場合、符号化ビットレートを考慮した安定した高精度のユーザ体感品質推定ができないという問題点があった。
【0008】
例えば、従来技術のうち特許文献2等のアプローチは、符号化ビットレートを考慮するためのアプローチであり、伝送される映像コンテンツの内容に関わらず、映像配信側で設定される符号化ビットレートに応じた画像の繊細さや動きのなめらかさ等に基づいて、事前に一意の品質基準値を設定するアプローチである。
この際、設定される符号化ビットレートが20Mbpsの場合のユーザ体感品質の最大値は「4.5」、設定される符号化ビットレートが 2Mbpsの場合のユーザ体感品質の最大値は「2.5」のように、設定される符号化ビットレートに応じてユーザ体感品質の最大値を事前に設定する。
【0009】
したがって、設定される符号化ビットレートが同じストリーム(セッション)では、符号化ビットレートに応じた基準となるユーザ体感品質の最大値は一致しなければならず、伝送される映像コンテンツ内容によって変動するパケット転送レートを用いてユーザ体感品質を推定してしまうと、本来、基準として利用しなければならないユーザ体感品質の最大値が大きく異なる場合があるため、ユーザ体感品質推定精度は低下する。そのため、パケット転送レートの変動が激しいアプリケーションの場合、符号化ビットレートを考慮した、安定した高精度のユーザ体感品質推定ができなくなる。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、符号化ビットレートを考慮した、安定した高精度のユーザ体感品質を推定できる映像品質推定技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明にかかる映像品質推定装置は、符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得したパケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートに基づいて、当該映像通信の受信映像に関するユーザ体感品質を推定する映像品質推定装置であって、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析部と、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出部と、映像品質推定時点における符号ビットレートに基づいて、映像品質推定時点におけるユーザ体感品質を算出するユーザ体感品質算出部とを備えている。
【0012】
この際、符号化ビットレート算出部に、各時刻におけるパケット受信レートのうちから、時間的に連続する各パケット受信レートが許容範囲内に収まる区間を算出対象区間として選択する対象選択部と、この算出対象区間に含まれるパケット受信レートの統計値を、当該算出対象区間の後端に位置する後端パケット受信レートの時刻における符号化ビットレートとして算出する統計値算出部とを設けてもよい。
【0013】
また、対象選択部で、算出対象区間に含まれるパケット受信レートの平均値と標準偏差とを算出し、当該平均値を中心としてその上下に当該標準偏差の幅を持つ範囲を許容範囲として選択し、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートと当該許容範囲とを比較した比較結果に基づいて、当該後続パケット受信レートを当該算出対象区間に含めるか否かを判定するようにしてもよい。
【0014】
あるいは、対象選択部で、算出対象区間に含まれるパケット受信レート標準偏差を算出し、後端パケット受信レートを中心としてその上下に当該標準偏差の幅を持つ範囲を許容範囲として選択し、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートと当該許容範囲とを比較した比較結果に基づいて、当該後続パケット受信レートを当該算出対象区間に含めるか否かを判定するようにしてもよい。
【0015】
また、符号化ビットレート算出部に、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが許容範囲内に収まらない場合、後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数のパケット受信レートについて変化率を算出し、この変化率と予め設定されている変化率判定値との比較結果に基づいてパケット受信レートの変動有無を確認する変動確認部をさらに設け、対象選択部で、パケット受信レートの変動なしを確認した場合、後続パケット受信レートを算出対象区間に含めるようにしてもよい。
【0016】
また、符号化ビットレート算出部に、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが許容範囲内に収まらない場合、後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数のパケット受信レートについて変化率を算出し、この変化率と予め設定されている変化率判定値との比較結果に基づいてパケット受信レートの変動有無を確認し、パケット受信レートの変動ありを確認した場合、後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるか否かを確認する変動確認部と、パケット受信レートの変動ありを確認し、かつ後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れた場合は、後続パケット受信レートから許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるまでのパケット受信レートを、符号化ビットレートの算出対象から除外する対象除外部とをさらに設けてもよい。
【0017】
また、符号化ビットレート算出部に、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが許容範囲内に収まらない場合、後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数のパケット受信レートについて変化率を算出し、この変化率と予め設定されている変化率判定値との比較結果に基づいてパケット受信レートの変動有無を確認し、パケット受信レートの変動ありを確認した場合、後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるか否かを確認する変動確認部と、パケット受信レートの変動ありを確認し、かつ、後続パケット受信レートから所定長の安定判定期間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れない場合は、後続パケット受信レート以降のパケット受信レートを新たな算出対象区間として選択する対象切替部とをさらに設けてもよい。
【0018】
また、本発明にかかる映像品質推定方法は、符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得したパケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートに基づいて、当該映像通信の受信映像に関するユーザ体感品質を推定する映像品質推定方法であって、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析ステップと、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出ステップと、映像品質推定時点における符号ビットレートに基づいて、映像品質推定時点におけるユーザ体感品質を算出するユーザ体感品質算出ステップとを備えている。
【0019】
また、本発明にかかる符号化ビットレート推定装置は、符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得したパケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートを推定する符号化ビットレート推定装置であって、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析部と、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出部とを備えている。
【0020】
また、本発明にかかる符号化ビットレート推定方法は、符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得したパケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートを推定する符号化ビットレート推定方法であって、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析ステップと、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出ステップとを備えている。
【0021】
また、本発明にかかるプログラムは、コンピュータを、前述したいずれかの映像品質推定装置を構成する各部として機能させるためのプログラムである。
また、本発明にかかる他のプログラムは、コンピュータを、前述した符号化ビットレート推定装置を構成する各部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、評価対象となる映像通信について、各時刻における符号化ビットレートを精度良く算出することができる。したがって、パケット転送レートの変動が激しいアプリケーションであっても、符号化ビットレートを考慮した、安定した高精度のユーザ体感品質を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】設定情報の構成例である。
【図3】パケット受信レートデータの構成例である。
【図4】符号化ビットレートデータの構成例である。
【図5】符号化ビットレート算出部の構成を示すブロック図である。
【図6】第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置の映像品質推定動作を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置の符号化ビットレート算出処理を示すフローチャートである。
【図8】対象選択部での処理例を示す説明図である。
【図9】変動確認部での変動有無確認処理例を示す説明図である。
【図10】変動確認部での安定判定処理例を示す説明図である。
【図11】変動確認部での他の安定判定処理例を示す説明図である。
【図12】第2の実施の形態にかかる符号化ビットレート推定装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置の構成を示すブロック図である。
【0025】
この映像品質推定装置10は、全体としてサーバ装置などの情報通信処理装置からなり、符号化した映像データをパケットに格納して、送信端末1からパケット網5を介して、STP(Set Top Box)などの受信端末2へ伝送し、映像モニタ3で受信映像を再生する映像通信について、パケット網5内の中継装置5A、パケット網5から受信端末2までの伝送経路6に設けられた分岐器6A、あるいは受信端末2からキャプチャした映像通信のパケットに基づいて、映像モニタ3で再生される受信映像に関する映像品質を算出する装置である。
【0026】
本実施の形態では、映像品質推定装置10が独立した情報通信処理装置からなる場合を例として説明するが、これに限定されるものではなく、例えば中継装置5A、分岐器6A、受信端末2などの通信装置内へ実装してもよい。
【0027】
本実施の形態は、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出し、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出し、映像品質推定時点における符号ビットレートに基づいて、映像品質推定時点におけるユーザ体感品質を算出するようにしたものである。
【0028】
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる映像品質推定装置の構成について詳細に説明する。
この映像品質推定装置10には、主な機能部として、通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、パケット受信レート記憶部15、符号化ビットレート記憶部16、および演算処理部17が設けられている。
【0029】
通信I/F部11は、専用の通信回路からなり、中継装置5A、分岐器6A、あるいは受信端末2から、各種パケットをキャプチャする機能を有している。
操作入力部12は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して演算処理部17へ出力する機能を有している。
画面表示部13は、LCDなどの画面表示装置からなり、演算処理部17の制御に基づいて、操作メニューや設定画面、さらには算出した符号化ビットレートやユーザ体感品質などの各種情報を画面表示する機能を有している。
【0030】
記憶部14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部17で用いる各種処理情報やプログラムを記憶する機能を有している。記憶部14で記憶する主な処理情報として、設定情報14A、推定モデル14B、およびプログラム14Pがある。
【0031】
設定情報14Aは、符号化ビットレートの算出処理に用いる各種の設定情報である。図2は、設定情報の構成例である。ここでは、変動判定基準値として、変動判定時間長Tcと変動判定変動量ΔRが設定されており、安定判定基準値として、安定判定継続時間Tsとが設定されている。これら設定情報の内容については後述する。
【0032】
推定モデル14Bは、映像通信に関する符号化ビットレートと網品質情報とから、当該映像通信のユーザ体感品質を推定するための推定モデルである。この推定モデルについては、公知のモデルを用いればよい。本実施の形態では、推定モデル14Bとして、符号化ビットレートおよびパケット損失率とユーザ体感品質との対応関係を示す関数を用いる場合を例として説明する。
【0033】
パケット受信レート記憶部15は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部17で算出した、単位時間当たりに受信端末2で受信したパケット数を示すパケット受信レートを記憶する記憶部である。
図3は、パケット受信レートデータの構成例である。ここでは、任意の算出対象区間における時間位置を示す時刻情報と、当該時間位置における映像通信のパケット受信レートとの組が登録されている。
【0034】
符号化ビットレート記憶部16は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部17で算出した、単位時間当たりに受信端末2で受信した符号化データ量を示す符号化ビットレートを記憶する記憶部である。
図4は、符号化ビットレートデータの構成例である。ここでは、任意の算出対象区間における時間位置を示す時刻情報と、当該時間位置における映像通信の符号化ビットレートとの組が登録されている。
【0035】
演算処理部17は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部14のプログラムを読み込んで実行することにより、各種処理部を実現する機能を有している。演算処理部17で実現される主な処理部としては、パケット取得部17A、パケット解析部17B、符号化ビットレート算出部17C、およびユーザ体感品質算出部17Dがある。
【0036】
パケット取得部17Aは、通信I/F部11でキャプチャしたパケットのうちから、評価対象となる映像通信のポート番号やIDなどの識別情報に基づいて、当該映像通信に関するパケットを取得する機能を有している。例えば、IPTVサービス(MPEG2−TSを利用した場合)では、IPパケット中に含まれるPAT(Program Allocation Table)やPMT(Program Map Table)の情報を用いて、ユーザ体感品質を推定する対象チャンネル(TV番組)を特定すればよい。
【0037】
パケット解析部17Bは、パケット取得部17Aで取得したパケットの取得パケット数と取得時刻とに基づいて、これらパケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出し、パケット受信レート記憶部15へ保存する機能と、パケット取得部17Aで取得したパケットからパケット損失率などの網品質情報を算出する機能とを有している。網品質情報の算出方法については、公知の技術を用いればよい。
【0038】
符号化ビットレート算出部17Cは、パケット解析部17Bで算出された記憶部14のパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出し、符号化ビットレート記憶部16へ保存する機能を有している。
図5は、符号化ビットレート算出部の構成を示すブロック図である。符号化ビットレート算出部17Cには、主な処理部として、対象選択部18A、統計値算出部18B、変動確認部18C、対象除外部18D、および対象切替部18Eが設けられている。
【0039】
対象選択部18Aは、各時刻におけるパケット受信レートのうちから、時間的に連続する各パケット受信レートが許容範囲内に収まる区間を算出対象区間として選択する機能と、変動確認部18Cでパケット受信レートの変動なしが確認された場合、後続パケット受信レートを算出対象区間に含める機能とを有している。
【0040】
この際、対象選択部18Aで、算出対象区間に含まれるパケット受信レートの平均値と標準偏差とを算出し、当該平均値を中心としてその上下に当該標準偏差の幅を持つ範囲を許容範囲として選択し、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートと当該許容範囲とを比較した比較結果に基づいて、当該後続パケット受信レートを当該算出対象区間に含めるか否かを判定するようにしてもよい。
【0041】
あるいは、対象選択部18Aで、算出対象区間に含まれるパケット受信レート標準偏差を算出し、後端パケット受信レートを中心としてその上下に当該標準偏差の幅を持つ範囲を許容範囲として選択し、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートと当該許容範囲とを比較した比較結果に基づいて、当該後続パケット受信レートを当該算出対象区間に含めるか否かを判定するようにしてもよい。
なお、許容範囲については、標準偏差に限定されるものではなく、最大値、最小値、分散、95%信頼幅など、パケット受信レートの変動を確認できる統計値であればよい。
【0042】
統計値算出部18Bは、算出対象区間に含まれるパケット受信レートの統計値を、当該算出対象区間の後端に位置する後端パケット受信レートの時刻における符号化ビットレートとして算出する機能を有している。この際、算出対象区間に含まれるすべてのパケット受信レートを用いて符号化ビットレートを算出してもよく、後端パケット受信レートから所定長だけ遡った区間内のパケット受信レートを用いて符号化ビットレートを算出してもよい。また、符号化ビットレートとしては、平均値のほか、最大値、最小値など、利用者のポリシやアプリケーションに応じた統計値を用いればよい。また、符号化ビットレートについては、個々のパケット受信レートに対応する時刻ごとに算出してもよく、一定の時間間隔で算出してもよい。
【0043】
変動確認部18Cは、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが許容範囲内に収まらない場合、後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数のパケット受信レートについて回帰直線(変化率)を算出し、この回帰直線の傾き(変化率)と予め設定されている傾き判定値(変化率判定値)との比較結果に基づいてパケット受信レートの変動有無を確認する機能と、パケット受信レートの変動ありを確認した場合、後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるか否かを確認する機能とを有している。なお、回帰直線やその傾き、および傾き判定値は、パケット受信レートの変化率を算出して判定するための一例であり、他の算出方法でパケット受信レートの変化率を算出して判定してもよい。
【0044】
対象除外部18Dは、変動確認部18Cでパケット受信レートの変動ありが確認され、かつ後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れた場合は、後続パケット受信レートから許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるまでのパケット受信レートを、符号化ビットレートの算出対象から除外する機能を有している。
【0045】
対象切替部18Eは、変動確認部18Cでパケット受信レートの変動ありが確認され、かつ、後続パケット受信レートから所定長の安定判定期間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れない場合は、後続パケット受信レート以降のパケット受信レートを新たな算出対象区間として選択する機能を有している。
【0046】
ユーザ体感品質算出部17Dは、記憶部14の推定モデル14Bを参照して、符号化ビットレート記憶部16から取得した、映像品質推定時点における符号ビットレートと、パケット解析部17Bで算出した映像品質推定時点におけるパケット損失率とに基づいて、映像品質推定時点におけるユーザ体感品質を算出する機能を有している。
【0047】
[第1の実施の形態の動作]
次に、本実施の形態にかかる映像品質推定装置の動作について説明する。
まず、図6を参照して、本実施の形態にかかる映像品質推定装置の映像品質推定動作について説明する。図6は、第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置の映像品質推定動作を示すフローチャートである。
映像品質推定装置10の演算処理部17は、定期的、外部装置からの指示、あるいは操作入力部12からのオペレータ指示に応じて、図6の映像品質推定動作を実行する。
【0048】
まず、演算処理部17は、パケット取得部17Aにより、通信I/F部11でキャプチャしたパケットのうちから、評価対象となる映像通信のポート番号やIDなどの識別情報に基づいて、評価対象となる映像通信に関するパケットを取得する(ステップ100)。
次に、演算処理部17は、パケット解析部17Bにより、パケット取得部17Aで取得したパケットの取得パケット数と取得時刻とに基づいて、これらパケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出し、パケット受信レート記憶部15へ保存する(ステップ101)。
【0049】
続いて、演算処理部17は、符号化ビットレート算出部17Cにより、パケット解析部17Bで算出された記憶部14のパケット受信レートを統計処理することにより、各時刻における当該映像通信の符号化ビットレートを算出する、後述の符号化ビットレート算出処理を実行し、算出した符号化ビットレートを符号化ビットレート記憶部16へ保存する(ステップ102)。
【0050】
この後、演算処理部17は、ユーザ体感品質算出部17Dにより、記憶部14の推定モデル14Bを参照して、符号化ビットレート記憶部16から取得した、映像品質推定時点における符号ビットレートと、パケット解析部17Bで算出した映像品質推定時点におけるパケット損失率とに基づいて、映像品質推定時点におけるユーザ体感品質を、評価対象となる映像通信の映像品質として算出し(ステップ103)、一連の映像品質推定動作を終了する。
【0051】
次に、図7を参照して、本実施の形態にかかる映像品質推定装置の符号化ビットレート算出動作について説明する。図7は、第1の実施の形態にかかる映像品質推定装置の符号化ビットレート算出処理を示すフローチャートである。
【0052】
符号化ビットレート算出部17Cは、パケット受信レート記憶部15に保存されているパケット受信レートのうち、指定された指定区間に含まれるパケット受信レートに基づいて、符号化ビットレートをそれぞれ算出する際、図7の符号化ビットレート算出処理を実行する。ここでは、指定区間に含まれる個々のパケット受信レートが観測された時刻における符号化ビットレートを算出するものとし、すでに選択された算出対象区間に対して時間的に連続する未処理の新たなパケット受信レートを算出対象区間に追加して、新たなパケット受信レートの観測時刻における符号化ビットレートを算出する場合を例として説明する。
【0053】
まず、符号化ビットレート算出部17Cは、対象選択部18Aにより、指定区間に含まれるパケット受信レートのうちから、すでに選択した算出対象区間の後端パケット受信レートに対して、時間的に連続する未処理の新たなパケット受信レートを、後続パケット受信レートとして1つ選択し(ステップ110)、このパケット受信レートが許容範囲内に収まるか否かを確認する(ステップ111)。
【0054】
図8は、対象選択部での処理例を示す説明図であり、縦軸がパケット受信レートR(Mbps)を示し、横軸がパケット受信レートの観測時刻T(sec)を示している。ここでは、時刻Teまでのパケット受信レートが算出対象区間として選択されており、時刻Teのパケット受信レートが後端パケット受信レートR(Te)となる。また、時刻Teの1sec後の時刻Txのパケット受信レートが後続パケット受信レートR(Tx)となり、この後続パケット受信レートR(Tx)が選択対象区間に含まれるか否か判定される。
【0055】
許容範囲の主な選択方法としては、図8に示す許容範囲のように、算出対象区間のパケット受信レートから算出した平均値μを中心としてその上下に、同じく算出対象区間のパケット受信レートから算出した標準偏差σの幅を持つ範囲である。例えば、μ=4.8でσ=1.2の場合、許容範囲は、3.6(=μ−σ)〜6.0(=μ+σ)の範囲となる。この場合、R(Tx)=4.2であるから、R(Tx)は許容範囲内に含まれる。
この際、平均値に代えて、後端パケット受信レートR(Te)を許容範囲の中心としてもよい。例えば、R(Te)=5.0でσ=1.2の場合、許容範囲は、3.8(=R(Te)−σ)〜6.2(=R(Te)+σ)の範囲となる。
【0056】
このようにして、対象選択部18Aは、後続パケット受信レートR(Tx)が許容範囲内に含まれるか確認し(ステップ111)、後続パケット受信レートR(Tx)が許容範囲内に含まれる場合(ステップ111:YES)、対象選択部18Aは、後続パケット受信レートR(Tx)を算出対象区間に含める(ステップ112)。
【0057】
続いて、符号化ビットレート算出部17Cは、統計値算出部18Bにより、後続パケット受信レートR(Tx)を含めた算出対象区間に関する平均値などの統計値を算出し、この統計を時刻Txにおける符号化ビットレートとして、符号化ビットレート記憶部16へ保存する(ステップ113)。この際、統計値算出部18Bで、後続パケット受信レートR(Tx)を含めた算出対象区間に関する許容範囲として用いる、平均値や標準偏差などの統計値を算出しておいてもよい。
【0058】
その後、符号化ビットレート算出部17Cは、指定区間に含まれるすべてのパケット受信レートに対する処理が終了したか確認し(ステップ114)、未処理のパケット受信レートが存在する場合は(ステップ114:NO)、ステップ110へ戻る。また、すべてのパケット受信レートについての処理が終了した場合は(ステップ114:YES)、一連の符号化ビットレート算出処理を終了する。
【0059】
また、ステップ111において、後続パケット受信レートR(Tx)が許容範囲内に含まれない場合(ステップ111:NO)、符号化ビットレート算出部17Cは、変動確認部18Cにより、パケット受信レートに関する変動有無を確認する(ステップ120)。
【0060】
図9は、変動確認部での変動有無確認処理例を示す説明図である。ここでは、時刻Txにおける後続パケット受信レートR(Tx)が許容範囲に含まれないため、変動確認部18Cは、まず、記憶部14の設定情報14Aで設定されている変動判定期間Lcと変動判定変動量ΔRとに基づいて、傾き判定値A=ΔR/Lcを算出し、後端パケット受信レートR(Te)から始まる変動判定期間Lcに含まれる複数のパケット受信レートについて回帰直線R=aT+bを算出する。そして、回帰直線の傾きaと傾き判定値Aとを比較することにより、パケット受信レートの変動有無を確認する。
【0061】
ここで、傾きaが傾き判定値A以下の場合には、変動なしと判定し(ステップ120:NO)、前述したステップ112へ移行して、後続パケット受信レートR(Tx)を算出対象区間に含めて、符号化ビットレートを算出する。
【0062】
一方、傾きaが傾き判定値Aより大きい場合には、変動ありと判定し(ステップ120:YES)、変動確認部18Cにより、後続パケット受信レートR(Tx)以降の変動区間Lfが、記憶部14の設定情報14Aで設定されている安定判定時間Lsより短いか否か確認する。
【0063】
図10は、変動確認部での安定判定処理例を示す説明図である。変動区間Lfとは、後続パケット受信レートR(Tx)以降のパケット受信レートが、後端パケット受信レートの許容範囲に収まらない区間のことである。したがって、後続パケット受信レートR(Tx)から安定判定時間Lsが経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるか否か確認することにより、変動区間Lfが、安定判定時間Lsより短いか否かを確認できる。図10の場合、時刻Tsのパケット受信レートR(Ts)が許容範囲内に戻っており、時刻Txから時刻Tsまでの変動区間Lfは、時刻Txからの安定判定時間Lsより短い。
【0064】
したがって、図10に示すように、変動区間Lfが安定判定時間Lsより短い場合(ステップ121:YES)、符号化ビットレート算出部17Cは、対象除外部18Dにより、後続パケット受信レートR(Tx)から許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるまでのパケット受信レート、すなわち時刻Tcまでのパケット受信レートを、符号化ビットレートの算出対象から除外し(ステップ122)、ステップ114へ移行する。
【0065】
これにより、時刻Teから時刻Tcのパケット受信レートは、時刻Tcより後の符号化ビットレートの算出には用いられない。なお、時刻Teから時刻Tcの符号化ビットレートについては、例えば、対象除外部18Dにより、時刻Teにおける符号化ビットレートと同じ値を、符号化ビットレート記憶部15へ保存すればよい。
また、図10に示すように、時刻Ts以降の符号化ビットレートについては、時刻Te以前のパケット受信レートと時刻Ts以降のパケット受信レートに基づき算出される。
【0066】
図11は、変動確認部での他の安定判定処理例を示す説明図である。この場合、時刻Tsのパケット受信レートR(Ts)が許容範囲内に戻っており、時刻Txから時刻Tsまでの変動区間Lfは、時刻Txからの安定判定時間Lsより長い。
このように、ステップ121において、変動区間Lfが安定判定時間Ls以上の場合(ステップ121:NO)、符号化ビットレート算出部17Cは、対象切替部18Eにより、後続パケット受信レートR(Tx)以降のパケット受信レートを新たな算出対象区間として選択し(ステップ123)、ステップ113へ移行する。
【0067】
これにより、時刻Teまでの各時刻については、時刻Teまでのパケット受信レートに基づいて符号化ビットレートが算出され、時刻Tx以降の各時刻については、時刻Tx以降の新たな算出対象区間におけるパケット受信レートに基づいて、符号化ビットレートが算出する。なお、時刻Txから時刻Tsまでの符号化ビットレートについては、ステップ123で新たな算出対象区間を選択した直後のステップ113において、統計値算出部18Bにより、一括して算出すればよい。
【0068】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、パケット解析部17Bで、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出し、符号化ビットレート算出部17Cで、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出するようにしたので、評価対象となる映像通信について、各時刻における符号化ビットレートを精度良く算出することができる。
したがって、パケット転送レートの変動が激しいアプリケーションであっても、符号化ビットレートを考慮した、安定した高精度のユーザ体感品質を推定できる。
【0069】
また、本実施の形態では、符号化ビットレート算出部17Cにおいて、対象選択部18Aで、各時刻におけるパケット受信レートのうちから、時間的に連続する各パケット受信レートが許容範囲内に収まる区間を算出対象区間として選択し、統計値算出部18Bで、この算出対象区間に含まれるパケット受信レートの統計値を、当該算出対象区間の後端に位置する後端パケット受信レートの時刻における符号化ビットレートとして算出するようにしたので、安定した符号化ビットレートを得ることができる。
【0070】
また、本実施の形態では、符号化ビットレート算出部17Cにおいて、変動確認部18Cで、後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが許容範囲内に収まらない場合、後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数のパケット受信レートについて回帰直線(変化率)を算出し、この回帰直線の傾き(変化率)と予め設定されている傾き判定値(変化率判定値)との比較結果に基づいてパケット受信レートの変動有無を確認し、対象選択部18Aで、パケット受信レートの変動なしを確認した場合、後続パケット受信レートを算出対象区間に含めるようにしたので、パケット受信レートが緩やかに変化するような場合でも、これに応じた符号化ビットレートを算出することができる。
【0071】
また、本実施の形態では、符号化ビットレート算出部17Cにおいて、パケット受信レートの変動ありを確認し、かつ後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れた場合は、対象除外部18Dにより、後続パケット受信レートから許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れるまでのパケット受信レートを、符号化ビットレートの算出対象から除外するようにしたので、パケット受信レートが一時的に変動した場合でも、その変動区間の影響を含まない、安定した符号化ビットレートを算出することができる。
【0072】
また、本実施の形態では、符号化ビットレート算出部17Cにおいて、パケット受信レートの変動ありを確認し、かつ、後続パケット受信レートから所定長の安定判定期間が経過する前の時点で、対象切替部18Eにより、許容範囲内に収まるパケット受信レートが現れない場合は、後続パケット受信レート以降のパケット受信レートを新たな算出対象区間として選択するようにしたので、バケット受信レートの変動が継続的な場合には、それまでの区間の影響を含まない、高い精度の符号化ビットレートを算出することができる。
【0073】
[第2の実施の形態]
次に、図12を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる符号化ビットレート推定装置について説明する。図12は、第2の実施の形態にかかる符号化ビットレート推定装置の構成を示すブロック図である。
第1の実施の形態では、映像品質推定装置10を例として説明したが、符号化ビットレート推定装置として実現してもよい。図12に示すように、具体的には、図1に示した映像品質推定装置10の構成から、演算処理部17のユーザ体感品質算出部17Dを削除したものが、符号化ビットレート推定装置20の構成となる。
【0074】
すなわち、パケット解析部17Bで、パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出し、符号化ビットレート算出部17Cで、各時刻におけるパケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における映像通信に関する符号化ビットレートを算出する。
これにより、評価対象となる映像通信について、各時刻における符号化ビットレートを精度良く算出することができる。
【0075】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0076】
1…送信端末、2…受信端末、3…映像モニタ、5…パケット網、5A…中継装置、6…伝送経路、6A…分岐器、10…映像品質推定装置、11…通信I/F部、12…操作入力部、13…画面表示部、14…記憶部、14A…設定情報、14B…推定モデル、14P…プログラム、15…パケット受信レート記憶、16…符号化ビットレート記憶部、17…演算処理部、17A…パケット取得部、17B…パケット解析部、17C…符号化ビットレート算出部、17D…ユーザ体感品質算出部、Lc…変動判定期間、ΔR…変動判定変動量、Ls…安定判定期間、Lf…変動区間、R(Te)…後端パケット受信レート、R(Tx)…後続パケット受信レート、μ…平均値、σ…標準偏差、a…回帰曲線の傾き、A…傾き判定値。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得した前記パケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートに基づいて、当該映像通信の受信映像に関するユーザ体感品質を推定する映像品質推定装置であって、
前記パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、前記パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析部と、
各時刻における前記パケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における前記映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出部と、
前記映像品質推定時点における前記符号ビットレートに基づいて、前記映像品質推定時点における前記ユーザ体感品質を算出するユーザ体感品質算出部と
を備えることを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像品質推定装置において、
前記符号化ビットレート算出部は、
各時刻における前記パケット受信レートのうちから、時間的に連続する各パケット受信レートが許容範囲内に収まる区間を算出対象区間として選択する対象選択部と、
この算出対象区間に含まれる前記パケット受信レートの統計値を、当該算出対象区間の後端に位置する後端パケット受信レートの時刻における前記符号化ビットレートとして算出する統計値算出部と
を含むことを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の映像品質推定装置において、
前記対象選択部は、前記算出対象区間に含まれる前記パケット受信レートの平均値と標準偏差とを算出し、当該平均値を中心としてその上下に当該標準偏差の幅を持つ範囲を前記許容範囲として選択し、前記後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートと当該許容範囲とを比較した比較結果に基づいて、当該後続パケット受信レートを当該算出対象区間に含めるか否かを判定することを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項4】
請求項2に記載の映像品質推定装置において、
前記対象選択部は、前記算出対象区間に含まれる前記パケット受信レート標準偏差を算出し、前記後端パケット受信レートを中心としてその上下に当該標準偏差の幅を持つ範囲を前記許容範囲として選択し、前記後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートと当該許容範囲とを比較した比較結果に基づいて、当該後続パケット受信レートを当該算出対象区間に含めるか否かを判定することを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項5】
請求項2に記載の映像品質推定装置において、
前記符号化ビットレート算出部は、
前記後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが前記許容範囲内に収まらない場合、前記後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数の前記パケット受信レートについて変化率を算出し、この変化率と予め設定されている変化率判定値との比較結果に基づいて前記パケット受信レートの変動有無を確認する変動確認部をさらに含み、
前記対象選択部は、前記パケット受信レートの変動なしを確認した場合、前記後続パケット受信レートを前記算出対象区間に含める
ことを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の映像品質推定装置において、
前記符号化ビットレート算出部は、
前記後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが前記許容範囲内に収まらない場合、前記後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数の前記パケット受信レートについて変化率を算出し、この変化率と予め設定されている変化率判定値との比較結果に基づいて前記パケット受信レートの変動有無を確認し、前記パケット受信レートの変動ありを確認した場合、前記後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、前記許容範囲内に収まる前記パケット受信レートが現れるか否かを確認する変動確認部と、
前記パケット受信レートの変動ありを確認し、かつ前記後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、前記許容範囲内に収まる前記パケット受信レートが現れた場合は、前記後続パケット受信レートから前記許容範囲内に収まる前記パケット受信レートが現れるまでの前記パケット受信レートを、前記符号化ビットレートの算出対象から除外する対象除外部と
をさらに含むことを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項7】
請求項5に記載の映像品質推定装置において、
前記符号化ビットレート算出部は、
前記後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが前記許容範囲内に収まらない場合、前記後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数の前記パケット受信レートについて変化率を算出し、この変化率と予め設定されている変化率判定値との比較結果に基づいて前記パケット受信レートの変動有無を確認し、前記パケット受信レートの変動ありを確認した場合、前記後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、前記許容範囲内に収まる前記パケット受信レートが現れるか否かを確認する変動確認部と、
前記パケット受信レートの変動ありを確認し、かつ、前記後続パケット受信レートから所定長の安定判定期間が経過する前の時点で、前記許容範囲内に収まる前記パケット受信レートが現れない場合は、前記後続パケット受信レート以降の前記パケット受信レートを新たな算出対象区間として選択する対象切替部と
をさらに含むことを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項8】
符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得した前記パケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートに基づいて、当該映像通信の受信映像に関するユーザ体感品質を推定する映像品質推定方法であって、
前記パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、前記パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析ステップと、
各時刻における前記パケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における前記映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出ステップと、
前記映像品質推定時点における前記符号ビットレートに基づいて、前記映像品質推定時点における前記ユーザ体感品質を算出するユーザ体感品質算出ステップと
を備えることを特徴とする映像品質推定方法。
【請求項9】
符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得した前記パケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートを推定する符号化ビットレート推定装置であって、
前記パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、前記パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析部と、
各時刻における前記パケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における前記映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出部と
を備えることを特徴とする符号化ビットレート推定装置。
【請求項10】
符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得した前記パケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートを推定する符号化ビットレート推定方法であって、
前記パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、前記パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析ステップと、
各時刻における前記パケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における前記映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出ステップと
を備えることを特徴とする符号化ビットレート推定方法。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の映像品質推定装置を構成する各部として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
コンピュータを、請求項9に記載の符号化ビットレート推定装置を構成する各部として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得した前記パケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートに基づいて、当該映像通信の受信映像に関するユーザ体感品質を推定する映像品質推定装置であって、
前記パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、前記パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析部と、
各時刻における前記パケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における前記映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出部と、
前記映像品質推定時点における前記符号ビットレートに基づいて、前記映像品質推定時点における前記ユーザ体感品質を算出するユーザ体感品質算出部と
を備えることを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像品質推定装置において、
前記符号化ビットレート算出部は、
各時刻における前記パケット受信レートのうちから、時間的に連続する各パケット受信レートが許容範囲内に収まる区間を算出対象区間として選択する対象選択部と、
この算出対象区間に含まれる前記パケット受信レートの統計値を、当該算出対象区間の後端に位置する後端パケット受信レートの時刻における前記符号化ビットレートとして算出する統計値算出部と
を含むことを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の映像品質推定装置において、
前記対象選択部は、前記算出対象区間に含まれる前記パケット受信レートの平均値と標準偏差とを算出し、当該平均値を中心としてその上下に当該標準偏差の幅を持つ範囲を前記許容範囲として選択し、前記後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートと当該許容範囲とを比較した比較結果に基づいて、当該後続パケット受信レートを当該算出対象区間に含めるか否かを判定することを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項4】
請求項2に記載の映像品質推定装置において、
前記対象選択部は、前記算出対象区間に含まれる前記パケット受信レート標準偏差を算出し、前記後端パケット受信レートを中心としてその上下に当該標準偏差の幅を持つ範囲を前記許容範囲として選択し、前記後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートと当該許容範囲とを比較した比較結果に基づいて、当該後続パケット受信レートを当該算出対象区間に含めるか否かを判定することを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項5】
請求項2に記載の映像品質推定装置において、
前記符号化ビットレート算出部は、
前記後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが前記許容範囲内に収まらない場合、前記後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数の前記パケット受信レートについて変化率を算出し、この変化率と予め設定されている変化率判定値との比較結果に基づいて前記パケット受信レートの変動有無を確認する変動確認部をさらに含み、
前記対象選択部は、前記パケット受信レートの変動なしを確認した場合、前記後続パケット受信レートを前記算出対象区間に含める
ことを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の映像品質推定装置において、
前記符号化ビットレート算出部は、
前記後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが前記許容範囲内に収まらない場合、前記後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数の前記パケット受信レートについて変化率を算出し、この変化率と予め設定されている変化率判定値との比較結果に基づいて前記パケット受信レートの変動有無を確認し、前記パケット受信レートの変動ありを確認した場合、前記後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、前記許容範囲内に収まる前記パケット受信レートが現れるか否かを確認する変動確認部と、
前記パケット受信レートの変動ありを確認し、かつ前記後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、前記許容範囲内に収まる前記パケット受信レートが現れた場合は、前記後続パケット受信レートから前記許容範囲内に収まる前記パケット受信レートが現れるまでの前記パケット受信レートを、前記符号化ビットレートの算出対象から除外する対象除外部と
をさらに含むことを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項7】
請求項5に記載の映像品質推定装置において、
前記符号化ビットレート算出部は、
前記後端パケット受信レートに続く後続パケット受信レートが前記許容範囲内に収まらない場合、前記後端パケット受信レートから始まる所定長の変動判定期間に含まれる複数の前記パケット受信レートについて変化率を算出し、この変化率と予め設定されている変化率判定値との比較結果に基づいて前記パケット受信レートの変動有無を確認し、前記パケット受信レートの変動ありを確認した場合、前記後続パケット受信レートから所定長の安定判定時間が経過する前の時点で、前記許容範囲内に収まる前記パケット受信レートが現れるか否かを確認する変動確認部と、
前記パケット受信レートの変動ありを確認し、かつ、前記後続パケット受信レートから所定長の安定判定期間が経過する前の時点で、前記許容範囲内に収まる前記パケット受信レートが現れない場合は、前記後続パケット受信レート以降の前記パケット受信レートを新たな算出対象区間として選択する対象切替部と
をさらに含むことを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項8】
符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得した前記パケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートに基づいて、当該映像通信の受信映像に関するユーザ体感品質を推定する映像品質推定方法であって、
前記パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、前記パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析ステップと、
各時刻における前記パケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における前記映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出ステップと、
前記映像品質推定時点における前記符号ビットレートに基づいて、前記映像品質推定時点における前記ユーザ体感品質を算出するユーザ体感品質算出ステップと
を備えることを特徴とする映像品質推定方法。
【請求項9】
符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得した前記パケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートを推定する符号化ビットレート推定装置であって、
前記パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、前記パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析部と、
各時刻における前記パケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における前記映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出部と
を備えることを特徴とする符号化ビットレート推定装置。
【請求項10】
符号化した映像データをパケットにそれぞれ格納しパケット網を介して伝送する映像通信について、この映像通信から取得した前記パケットから得た当該映像通信に関する符号化ビットレートを推定する符号化ビットレート推定方法であって、
前記パケットを取得した取得パケット数と取得時刻とに基づいて、前記パケットに関する各時刻におけるパケット受信レートを算出するパケット解析ステップと、
各時刻における前記パケット受信レートを統計処理することにより、任意の映像品質推定時点における前記映像通信に関する符号化ビットレートを算出する符号化ビットレート算出ステップと
を備えることを特徴とする符号化ビットレート推定方法。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の映像品質推定装置を構成する各部として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
コンピュータを、請求項9に記載の符号化ビットレート推定装置を構成する各部として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−130176(P2011−130176A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286643(P2009−286643)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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