説明

映像回路

【課題】素子特性にバラツキが発生していてもチャージポンプ回路の動作が映像信号に悪影響を与えることがないようにする。
【解決手段】同期信号検出回路30の出力信号S22の立上りタイミングに基づいてチャージポンプ回路20の出力コンデンサC3への負電圧の充電を開始し、同出力信号S22の終了タイミングtbから所定時間の経過後に出力コンデンサC3への前記負電圧の充電を終了させる。前記所定時間は、同期信号検出回路30の出力信号S22の終了タイミングtbを0Vとして、そこから第2時定数回路45の定電流充電を開始し閾値Vth3に達するまでの時間で決まるようする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像処理回路とその映像処理回路に負電圧を供給するチャージポンプ回路とを備えた映像回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に、チャージポンプ回路により負電圧を発生させて映像処理回路に供給する従来の映像回路の構成を示す。映像処理回路10は、同期信号を含むRGBの入力映像信号のシンクチップとペデスタルのレベルをクランプするクランプ回路11、そのクランプ回路11から出力する映像信号に対して種々の画像処理(色相調整、コントラスト調整、拡大、縮小、エッジ強調、その他の処理)を加える映像信号処理回路12、その映像信号処理回路12の出力信号を映像駆動信号に増幅して例えば75Ωの負荷に供給する出力駆動回路13を有する。この出力駆動回路13には、ダイナミックレンジ拡大化のために、正電源電圧+Vと負電源電圧−Vが電源として供給される。C1はDCカット用のコンデンサである。なお、クランプ回路11と映像信号処理回路12には正電源電圧+Vと接地電圧GNDが印加される。
【0003】
50は100kHz前後の周波数のパルスを発生するフリーラン発振器である。20はチャージポンプ回路であり、フリーラン発振器50から出力するフリーラン信号S51を入力する駆動制御回路21と、その駆動制御回路21によって駆動制御される出力回路22からなり、出力回路22から出力する負電圧−Vが、映像処理回路10の出力駆動回路13に負電源電圧として供給される。
【0004】
出力回路22は、図4に示すように、チャージ用コンデンサC2、出力用コンデンサC3、スイッチSW1〜SW4からなり、フリーラン信号S51がLレベルのときはスイッチSW1,SW2をオン、スイッチSW3,SW4をオフし、HレベルのときはスイッチSW1,SW2をオフ、スイッチSW3,SW4をオンし、その信号S51のHレベルとLレベルの繰り返しにより、コンデンサC2,C3には図示の極性の電荷が充電され、負電圧−Vが生成される。
【0005】
一方、フリーラン発振器50を使用せす、入力映像信号から同期信号を抽出し、その同期信号に基づいて連続パルスを生成し、この連続パルスをチャージポンプ回路に入力して、負電圧を生成し、この負電圧をメインアンプ(図3の出力駆動回路13に相当)に供給するようにした特許文献1に記載のアンプがある。
【0006】
また、図5に、従来の別の映像回路を示す。この映像回路は、図3の映像回路におけるフリーラン発振器50の代わりに、同期信号検出回路30、検波時定数回路60、比較回路70を備えたものである。同期信号検出回路30は、クランプ回路11の出力信号から同期信号S22を検出して出力する。検波時定数回路60は、図6に示すように、同期信号S22を入力して、その立上りに同期して立ち上り、立下りに同期して所定の時定数で低下する信号S61を出力させる。比較回路70は、図6に示すように、信号S61の立上りに同期して立ち上り、信号S61が閾値Vth4にまて低下すると立ち下がる信号S62を出力する。チャージポンプ回路20の出力回路22(図4)は、駆動制御回路21によって、その比較回路70から出力する信号S62がLレベルのときスイッチSW1,SW2をオン、スイッチSW3,SW4をオフし、HレベルのときはスイッチSW1,SW2をオフ、スイッチSW3,SW4をオンする。
【0007】
以上の図3に示す映像回路および図5に示す映像回路によれば、映像処理回路10の出力駆動回路13に正電源電圧+Vの他に負電源電圧−Vが印加されるので、ダイナミックレンジの拡大化を図ることができる。前記特許文献1に示されるアンプも同様である。
【特許文献1】特開2005−151468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、図3に示した従来の映像回路および特許文献1に記載のアンプでは、連続信号によりチャージポンプ回路20を駆動し続け、映像信号の期間にもチャージポンプ回路20が動作しているため、チャージポンプ回路20のスイッチSW1〜SW4のスイッチングによる正電圧+Vの揺れや生成された負電圧のリップル成分により、映像信号が影響を受け、実際の映像にビートノイズのような模様が映るなどの不具合が発生する。
【0009】
また、図5に示した従来の別の映像回路では、コンデンサC3の充電終了タイミングtaが、検波時定数回路60の出力信号S61が閾値Vth4に降下した時点で決まるが、この信号S61の放電開始タイミングtbの電圧は、信号S61のピーク値であり、そのピーク値は素子特性のバラツキの影響を受けやすい。このため、コンデンサC3の充電終了タイミングtaにバラツキが発生し、例えば映像期間にこの充電終了タイミングtaが入ると、前記したと同様に、実際の映像にビートノイズのような模様が映るなどの不具合が発生する。これを避けるために、閾値Vth4を高めに設定すると、充電期間が短くなり、充電効率が悪くなる。また、映像信号の等化パルスを利用して負電圧を発生させる場合も、上記と同様な問題がある。
【0010】
本発明の目的は、同期信号や等化パルスを利用して負電圧を発生させるとき、素子特性にバラツキが発生していても、チャージポンプ回路の動作が映像信号に悪影響を与えることがないようにした映像回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明の映像回路は、同期信号又は等化パルスを含む映像信号のシンクチップあるいはペデスタルをクランプ回路によりクランプし、映像処理し、映像駆動信号として出力する映像処理回路と、該映像処理回路に供給する負電圧を出力コンデンサに充電するチャージポンプ回路と、前記クランプ回路の出力信号から同期信号又は等化パルスを検出する同期信号検出回路と、該同期信号検出回路から出力する前記同期信号又は前記等化パルスの開始タイミングに基づいて前記チャージポンプ回路の前記出力コンデンサへの負電圧の充電を開始し、前記同期信号検出回路から出力する前記同期信号又は前記等化パルスの終了タイミングから所定時間の経過後に前記出力コンデンサへの前記負電圧の充電を終了するチャージポンプ駆動回路とを備え、且つ、前記所定時間が、前記同期信号又は前記等化パルスの終了タイミングを0Vとして、そこから第2時定数回路の定電流充電を開始し第3閾値に達するまでの時間で決まるようにしたことを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の映像回路において、前記第2時定数回路は、前記同期信号又は前記等化パルスの開始タイミングから少なくとも該等化パルスのパルス幅だけ経過した後に発生し前記同期信号又は前記等化パルスの終了タイミングに消滅する第2信号発生回路から出力する信号により、クリアされるようにしたことを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の映像回路において、前記出力コンデンサへの負電圧の充電の開始タイミングは、前記同期信号又は前記等化パルスの開始タイミングを0Vとして、そこから第1時定数回路を定電流充電して第1閾値に達するタイミングであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、素子特性のバラツキの影響が少ないので、チャージポンプ回路によるコンデンサの充電終了タイミングを、ペデスタル期間のより終わりに近づけることができ、充電効率を高くすることができる。等化パルスによっても同期信号の場合と全く同様に充電できるので、全体の充電効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の1つの実施例の映像回路の構成を示すブロック図、図2はその動作波形図である。映像処理回路10、チャージポンプ回路20、および同期信号検出回路30は図5で説明したものと同じである。40はチャージポンプ駆動回路であり、ノイズフィルタ41、第1時定数回路42、第1信号発生回路43、第2信号発生回路44、第2時定数回路45、第3信号発生回路46、および駆動信号発生回路47を備える。
【0014】
ノイズフィルタ41は、同期信号検出回路30の出力信号S22内に含まれるノイズを除去する回路であるが、等化パルスは通過させる。つまり、等化パルスよりパルス幅の短い信号はこのノイズフィルタ41で遮断される。
【0015】
第1時定数回路42は、ノイズフィルタ41の出力信号S22の立上りエッジに同期して時定数Taで0Vから定電流充電を開始し、飽和値に達した後は、信号S22が立ち下がりに同期してリセット(一挙放電)される波形の出力信号S24を出力する。時定数Taは、等化パルスのパルス幅より大きい時間に設定されている。
【0016】
第1信号発生回路43は、第1時定数回路42の出力信号S24が閾値Vth1に達すると立ち上り、同信号S24がリセット(一挙放電)されると立ち下がる波形の信号S25を発生する。
【0017】
第2信号発生回路44は、第1時定数回路42の出力信号S24が閾値Vth2(>Vth1)に達すると立ち上り、同信号S24がリセット(一挙放電)されると立ち下がる波形の信号S26を発生する。この閾値Vth2は、第1時定数回路42の出力信号S24の充電開始から時間T1が経過する時点のレベルに設定されている。この時間は、等化パルスのパルス幅より若干短い時間である。
【0018】
第2時定数回路45は、第2信号発生回路44の出力信号S26の立上りに同期してリセット(一挙放電)され、同信号S26の立下りに同期して0Vから時定数Tb(>Ta)で定電流充電を開始する波形の信号S27を出力する。
【0019】
第3信号発生回路46は、第2時定数回路45の出力信号S27のリセット(一挙放電)に同期して立ち上り、同信号S27が閾値Vth3に達すると立ち下がる波形の信号S28を出力する。
【0020】
駆動信号発生回路47は、第1信号発生回路43の出力信号S25の立上りに同期して立ち上がり、第3信号発生回路47の出力信号S28の立下りに同期して立ち下がる波形の信号S29を出力する。この駆動信号発生回路47は、入力する信号S25と信号S28の論理和をとる構成であり、信号S25と信号S28の一部がオーバーラップしていても問題ない。
【0021】
さて、映像信号入力端子に映像信号S21が入力されると、外付けコンデンサC1で映像信号のDC成分が除去され、映像処理回路10のクランプ回路11で映像信号のシンクチップとペデスタルが所定の電圧にクランプされ、映像信号処理回路12で種々の画像処理(色相調整、コントラスト調整、拡大、縮小、エッジ強調、その他の処理)が加えられ、出力駆動回路13で正電源電圧+Vと負電源電圧−Vによって広いダイナミックレンジの映像駆動信号に増幅され、例えば75Ωの負荷に供給される。
【0022】
ここで、同期信号検出回路30の出力信号S22が水平同期信号である場合は、信号S22〜S28が図2に示すような波形となり、第1信号発生回路43の出力信号S25の立上りが駆動信号発生回路47の出力信号S29の立上りタイミングt1を決め、第3信号発生回路46の出力信号S28の立下りが駆動信号発生回路47の出力信号S29の立下りタイミングt2を決める。
【0023】
このとき、第3信号発生回路46の出力信号S28は、第2時定数回路45の出力信号S27のレベルが閾値Vth3に達したときに立ち下がるので、立下りタイミングt2のバラツキは極めて少ない。すなわち、第2時定数回路45の出力信号S27は、同期信号の終了タイミングtbにおいて、安定した0V(=GND)から時定数Tbで上昇するので、閾値Vth3に達するタイミングt2は、精度が高くなる。これに対し、前記した図6の検波時定数回路60の出力信号S61は、同期信号の終了タイミングtbにおいて、不安定なピーク値(素子特性のバラツキの影響を大きく受ける)から低下し、閾値Vth4に達したときにそのタイミングtaが比較回路70で検出されるので、その検出精度が低い。したがって、本実施例によれば、素子特性のバラツキの影響が小さいので、充電終了のタイミングt2をペデスタル区間において映像信号の開始端に極力近づけることができ、充電期間を長くすることが可能となる。
【0024】
また、同期信号検出回路30の出力信号S22が垂直期間の等化パルスである場合は、そのパルス幅は水平同期信号の約半分(時間T1以上)であるので、第1時定数回路42の出力信号S24は少なくとも閾値Vth2までは上昇するので、第2信号発生回路44の出力信号S26が立ち上がり、これにより第2時定数回路45の出力信号S27も発生するので、第3信号発生回路46の出力信号S28も発生する。したがって、駆動信号発生回路47の出力信号S29も発生し、チャージポンプ回路20により負電圧が生成される。
【0025】
また、同期信号検出回路30の出力信号S22のパルス幅が短く(通常ではノイズフィルタ41で遮断されるが、遮断されなかった場合)、第1時定数発生回路43の出力信号S24が閾値Vth2にまで上昇しない場合は、第2信号発生回路44の出力信号S26は立ち上がらず、第2時定数回路45の出力信号S27はハイレベルのままであるので、第3信号発生回路46の出力信号S28は立ち上がらない。このときは、第1信号発生回路43の出力信号S25のパルス幅が狭くなり、このパルス幅に応じて駆動発生回路47の出力信号S29が出力する。
【0026】
また、同期信号検出回路30の出力信号S22のパルス幅が短く(通常ではノイズフィルタ41で遮断されるが、遮断されなかった場合)、第1時定数発生回路43の出力信号S24が閾値Vth1にまで上昇しない場合は、第1信号発生回路43からの出力信号S25は立ち上がらず、第2信号発生回路44からの出力信号S26も立ち上がらないので、駆動信号発生回路47からの出力信号S29も立ち上がらない。この閾値Vth1は、このようにパルス幅の短いノイズの影響を防ぐ点で効果的であるが、そのレベルが高いほど駆動信号発生回路47の出力信号S29の立上りのタイミングt1が遅れるので、正常動作時の充電期間が短くなる。よって、その閾値Vth1のレベルは、ノイズフィルタ41の性能とのトレードオフとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の1つの実施例の映像回路の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の映像回路の動作波形図である。
【図3】従来の映像回路の構成を示すブロック図である。
【図4】チャージポンプ回路の出力回路の回路図である。
【図5】従来の別の映像回路の構成を示すブロック図である。
【図6】図5の映像回路の動作波形図である。
【符号の説明】
【0028】
10:映像処理回路、11:クランプ回路、12:映像信号処理回路、13:出力駆動回路
20:チャージポンプ回路、21:駆動制御回路、22:出力回路
30:同期信号検出回路
40:チャージポンプ駆動回路、41:ノイズフィルタ、42:第1時定数回路、43:第1信号発生回路、44:第2信号発生回路、45:第2時定数回路、46:第2信号発生回路、47:駆動信号発生回路
50:フリーラン発振器
60:検波時定数回路
70:比較回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期信号又は等化パルスを含む映像信号のシンクチップあるいはペデスタルをクランプ回路によりクランプし、映像処理し、映像駆動信号として出力する映像処理回路と、
該映像処理回路に供給する負電圧を出力コンデンサに充電するチャージポンプ回路と、
前記クランプ回路の出力信号から同期信号又は等化パルスを検出する同期信号検出回路と、
該同期信号検出回路から出力する前記同期信号又は前記等化パルスの開始タイミングに基づいて前記チャージポンプ回路の前記出力コンデンサへの負電圧の充電を開始し、前記同期信号検出回路から出力する前記同期信号又は前記等化パルスの終了タイミングから所定時間の経過後に前記出力コンデンサへの前記負電圧の充電を終了するチャージポンプ駆動回路とを備え、
且つ、前記所定時間が、前記同期信号又は前記等化パルスの終了タイミングを0Vとして、そこから第2時定数回路の定電流充電を開始し第3閾値に達するまでの時間で決まるようにしたことを特徴とする映像回路。
【請求項2】
請求項1に記載の映像回路において、
前記第2時定数回路は、前記同期信号又は前記等化パルスの開始タイミングから少なくとも該等化パルスのパルス幅だけ経過した後に発生し前記同期信号又は前記等化パルスの終了タイミングに消滅する第2信号発生回路から出力する信号により、クリアされるようにしたことを特徴とする映像回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の映像回路において、
前記出力コンデンサへの負電圧の充電の開始タイミングは、前記同期信号又は前記等化パルスの開始タイミングを0Vとして、そこから第1時定数回路を定電流充電して第1閾値に達するタイミングであることを特徴とする映像回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−4879(P2009−4879A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161511(P2007−161511)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)
【Fターム(参考)】