映像情報処理装置およびプログラム
【課題】 映像情報に含まれる粗い階調変化のみを選択的に滑らかにし、画質を向上させる。
【解決手段】 複数の画素からなる入力映像情報を平滑化して、平滑化映像情報を生成する平滑化部と、前記入力映像情報と前記平滑化映像情報との階調差を算出する減算部と、前記入力映像情報と前記平滑化映像情報とを前記階調差に応じた割合で混合して、混合映像情報を生成する混合部と、前記入力映像情報のそれぞれの画素および当該画素の周辺に位置する画素を含む周辺画素領域が、所定以上の階調変化を含まない低周波領域であるか否かを判定する判定部と、前記判定部が前記周辺画素領域を前記低周波領域であると判定した場合には前記混合映像情報を出力し、前記判定部が前記周辺画素領域を前記低周波領域でないと判定した場合には前記入力映像情報を出力する出力選択部と、を有する。
【解決手段】 複数の画素からなる入力映像情報を平滑化して、平滑化映像情報を生成する平滑化部と、前記入力映像情報と前記平滑化映像情報との階調差を算出する減算部と、前記入力映像情報と前記平滑化映像情報とを前記階調差に応じた割合で混合して、混合映像情報を生成する混合部と、前記入力映像情報のそれぞれの画素および当該画素の周辺に位置する画素を含む周辺画素領域が、所定以上の階調変化を含まない低周波領域であるか否かを判定する判定部と、前記判定部が前記周辺画素領域を前記低周波領域であると判定した場合には前記混合映像情報を出力し、前記判定部が前記周辺画素領域を前記低周波領域でないと判定した場合には前記入力映像情報を出力する出力選択部と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像情報処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多チャンネル化や高精細化などが可能となるデジタルテレビ放送が多くの国で開始され、携帯電話などの移動体向けの放送が行われている国もある。例えば、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting - Terrestrial)方式を採用する日本の地上デジタルテレビジョン放送では、各チャンネルを13セグメントに分割したうちの1セグメントを利用して、1セグメント放送(携帯電話・移動体端末向けの1セグメント部分受信サービス)が行われている。また、他の移動体向けデジタルテレビ放送としては、DVB−H(Digital Video Broadcasting - Handheld)方式や、T−DMB(Terrestrial - Digital Multimedia Broadcasting)方式などが知られている。
【0003】
上記のような移動体向けデジタルテレビ放送は、携帯電話を用いて視聴されるほか、カーナビゲーション装置や、風呂場などに設置される小型のテレビなどを用いて視聴される。また、アナログ放送用のテレビやパーソナルコンピュータなどに受信部(チューナ)を接続して、視聴することもできる。例えば、特許文献1では、携帯電話などに搭載されている1セグメント放送用のチューナを利用して、より大きな表示画面で視聴することができるワンセグ映像表示方法・装置が開示されている。
【0004】
このようにして、携帯電話などの小さな表示画面だけでなく、より大きな表示画面で移動体向けデジタルテレビ放送を視聴することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−111559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような移動体向けデジタルテレビ放送では、H.246/MPEG−4 AVCのような映像圧縮技術が用いられ、通常の固定受信向けデジタルテレビ放送より情報ビットレートが低くなっている。
【0007】
そのため、空や人の肌などの階調変化(グラデーション)を滑らかに表現することができず、グラデーションが粗い表現となってしまう。このような粗いグラデーションは、特に、画素変換などを用いて映像情報を拡大(アップスケーリング)し、より大きな表示画面で視聴する場合に顕著となる。また、アップスケーリングによって輪郭線がぼやけるのを防止する目的でエッジ強調処理を行う場合には、粗いグラデーションがさらに強調されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する主たる本発明は、複数の画素からなる入力映像情報を平滑化して、平滑化映像情報を生成する平滑化部と、前記入力映像情報と前記平滑化映像情報との階調差を算出する減算部と、前記入力映像情報と前記平滑化映像情報とを前記階調差に応じた割合で混合して、混合映像情報を生成する混合部と、前記入力映像情報のそれぞれの画素および当該画素の周辺に位置する画素を含む周辺画素領域が、所定以上の階調変化を含まない低周波領域であるか否かを判定する判定部と、前記判定部が前記周辺画素領域を前記低周波領域であると判定した場合には前記混合映像情報を出力し、前記判定部が前記周辺画素領域を前記低周波領域でないと判定した場合には前記入力映像情報を出力する出力選択部と、を有することを特徴とする映像情報処理装置である。
【0009】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、映像情報に含まれる粗い階調変化のみを選択的に滑らかにし、画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態における映像情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】平滑化部1に一例として用いられる平均化フィルタ(移動平均フィルタ)を示す図である。
【図3】平滑化部1に一例として用いられる加重平均化フィルタ(ガウシアンフィルタ)を示す図である。
【図4】混合部3における階調差と混合比との関係の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の第2実施形態における映像情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】エッジ強調部6に用いられる鮮鋭化フィルタの一例を示す図である。
【図7】エッジ強調部6に用いられる鮮鋭化フィルタの他の例を示す図である。
【図8】入力映像情報V0の画素位置と階調値との関係の一例を示す模式図である。
【図9】入力映像情報V0にエッジ強調処理を行った場合の画素位置と階調値との関係の一例を示す模式図である。
【図10】出力映像情報V3の画素位置と階調値との関係の一例を示す模式図である。
【図11】出力映像情報V4の画素位置と階調値との関係の一例を示す模式図である。
【図12】入力映像情報V0によって表示される映像の一例である。
【図13】出力映像情報V4によって表示される映像の一例である。
【図14】平滑化部1、減算部2、混合部3、判定部4、および出力選択部5の機能をコンピュータに実現させるためのプログラムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
<第1実施形態>
===映像情報処理装置の構成===
以下、図1を参照して、本発明の第1の実施形態における映像情報処理装置の構成について説明する。
【0014】
図1に示されている映像情報処理装置は、平滑化部1、減算部2、混合部3、判定部4、および出力選択部(マルチプレクサ)5を含んで構成されている。当該映像情報処理装置には、例えば1セグメント放送の映像情報をアップスケーリングした入力映像情報V0が入力されている。
【0015】
平滑化部1には、入力映像情報V0が入力され、平滑化部1からは、平滑化映像情報V1が出力されている。また、減算部2には、入力映像情報V0および平滑化映像情報V1が入力され、減算部2からは、階調差Dvが出力されている。さらに、混合部3には、入力映像情報V0、平滑化映像情報V1、および階調差Dvが入力され、混合部3からは、混合映像情報V2が出力されている。そして、判定部4には、入力映像情報V0が入力され、判定部4からは、判定結果Svが出力されている。
【0016】
出力選択部5のデータ入力には、入力映像情報V0および混合映像情報V2が入力され、選択制御入力には、判定結果Svが入力されている。そして、出力選択部5からは、出力映像情報V3が出力されている。
【0017】
===映像情報処理装置の動作===
次に、本実施形態における映像情報処理装置の動作について説明する。
【0018】
映像情報処理装置の各部に入力、または各部から出力される映像情報は、例えばM行N列の行列状に配置された複数の画素で構成されている。以下の説明において、映像情報の各画素の位置をP(m,n)(1≦m≦M、1≦n≦N)と表すこととする。また、各画素位置Pにおける要素(画素の階調値など)は、(P)または(m,n)を付けて表すこととする。例えば、入力映像情報V0の各画素位置Pにおける階調値は、V0(P)またはV0(m,n)と表される。
【0019】
平滑化部1は、入力映像情報V0を平滑化して、平滑化映像情報V1を生成する。当該平滑化処理によって、入力映像情報V0に含まれる空や人の肌などの粗いグラデーション部分が平滑化される。
【0020】
例えば、図2に示すような平均化フィルタ(移動平均フィルタ)を用いて、平滑化映像情報V1を生成することができる。ここで、図2の3×3(3行3列)サイズの平均化フィルタを用いる場合、フィルタ中央の画素(中心画素)の位置をPとすると、平滑化映像情報V1の各中心画素位置Pにおける階調値V1(P)は、
V1(P)
=[V0(m−1,n−1)+V0(m−1,n)+V0(m−1,n+1)
+V0( m ,n−1)+V0( m ,n)+V0( m ,n+1)
+V0(m+1,n−1)+V0(m+1,n)+V0(m+1,n+1)]/9
となる。すなわち、階調値V1(P)は、入力映像情報V0の画素位置Pを中心とする3×3サイズの局所領域の階調値の移動平均となり、9個の画素に対する重みは、いずれも1/9で等しい。同様に、図2の5×5(5行5列)サイズの平均化フィルタを用いる場合、階調値V1(P)は、入力映像情報V0の画素位置Pを中心とする5×5サイズの局所領域の階調値の移動平均となり、25個の画素に対する重みは、いずれも1/25で等しい。
【0021】
また、例えば、図3に示すような加重平均化フィルタを用いて、平滑化映像情報V1を生成することもできる。図3に示されているように、加重平均化フィルタは、各画素に対して異なる重み付けがなされており、階調値V1(P)は、入力映像情報V0の画素位置Pを中心とする局所領域の、当該重み付けがなされた階調値の移動平均となる。なお、図3に示されている加重平均化フィルタは、重み付けが中心画素位置Pからの距離のガウス関数に従うガウシアンフィルタである。
【0022】
減算部2は、入力映像情報V0と平滑化映像情報V1との階調差Dv(>0)を算出する。なお、各画素位置Pにおける階調差Dv(P)は、
Dv(P)=|V1(P)−V0(P)|
と表すことができる。
【0023】
混合部3は、入力映像情報V0と平滑化映像情報V1とを階調差Dvに応じた割合で混合して、混合映像情報V2を生成する。なお、当該混合処理における平滑化映像情報V1の割合を混合比Rとすると、混合映像情報V2の各画素位置Pにおける階調値V2(P)は、
V2(P)=V1(P)×R(P)+V0(P)×[1−R(P)]
と表すことができる。
【0024】
ここで、混合部3における階調差Dvと混合比Rとの関係の一例を図4に示す。Dv<Dref1(第1の基準値)の場合、混合部3は、R=1となるように、すなわち、入力映像情報V0および平滑化映像情報V1の割合がそれぞれ0%および100%となるように混合して、混合映像情報V2を生成する。また、Dv≧Dref2(第2の基準値)>Dref1の場合、混合部3は、R=0となるように、すなわち、入力映像情報V0および平滑化映像情報V1の割合がそれぞれ100%および0%となるように混合して、混合映像情報V2を生成する。そして、Dref1≦Dv<Dref2の場合、混合比Rは略線形に変化する。
【0025】
前述したように、平滑化部1は、入力映像情報V0に含まれる粗いグラデーション部分を平滑化するが、空などの広いグラデーション部分を平滑化するためには、平均化フィルタや加重平均化フィルタのサイズを大きくすることが望ましい。しかしながら、平滑化部1は、入力映像情報V0全体に対して一様に平滑化処理を行うため、大きなサイズのフィルタを用いると、グラデーション部分以外の細部の情報(ディテール感)が失われてしまう。そのため、混合映像情報V2は、階調差Dvが相対的に大きくなる細部ほど、平滑化映像情報V1の割合(混合比R)が小さくなっている。このようにして、混合部3は、細部の情報を保持しつつ、粗いグラデーション部分を平滑化した混合映像情報V2を生成している。
【0026】
判定部4は、入力映像情報V0の各画素およびその周辺に位置する画素を含む周辺画素領域が、所定以上の階調変化を含まない低周波領域であるか否かを判定する。例えば、判定対象の画素(対象画素)の階調値と、対象画素に隣接する8個の画素(隣接画素)の階調値との差分(>0)をそれぞれ算出し、いずれの差分も設定された閾値未満の場合に、対象画素および隣接画素を含む周辺画素領域を低周波領域であると判定する。また、例えば、周辺画素領域の階調値の最大値および最小値の差が閾値未満の場合に低周波領域であると判定してもよい。なお、各画素位置Pにおける判定結果Sv(P)は、判定部4が周辺画素領域を低周波領域であると判定した場合にはSv(P)=Lとなり、低周波領域でないと判定した場合にはSv(P)=Hとなるものとする。
【0027】
出力選択部5は、判定部4の判定結果Svに応じて入力映像情報V0または混合映像情報V2の何れか一方を選択して、出力映像情報V3を生成する。より具体的には、出力映像情報V3の各画素位置Pにおける階調値V3(P)は、Sv(P)=Lの場合にV3(P)=V2(P)となり、Sv(P)=Hの場合にV3(P)=V0(P)となる。
【0028】
このようにして、本実施形態の映像情報処理装置は、入力映像情報V0の周辺画素領域が低周波領域であるか否かの判定結果Svに応じて、入力映像情報V0または混合映像情報V2の何れか一方を選択して出力する。周辺画素領域が低周波領域でない場合、当該周辺画素領域は、所定以上の階調変化を含んでおり、グラデーション部分ではないため、映像情報処理装置は、入力映像情報V0の階調値をそのまま出力する。一方、周辺画素領域が低周波領域である場合、映像情報処理装置は、細部の情報を保持しつつ、粗いグラデーション部分を平滑化した混合映像情報V2の階調値を出力する。したがって、入力映像情報V0に含まれる粗いグラデーションのみを選択的に滑らかにし、画質を向上させることができる。
【0029】
<第2実施形態>
===映像情報処理装置の構成===
以下、図5を参照して、本発明の第2の実施形態における映像情報処理装置の構成について説明する。
【0030】
図5に示されている映像情報処理装置は、第1実施形態の映像情報処理装置に対して、エッジ強調部6をさらに含んで構成されている。また、エッジ強調部6には、出力選択部5の出力映像情報V3が入力され、エッジ強調部6からは、出力映像情報V4が出力されている。
【0031】
===映像情報処理装置の動作===
次に、本実施形態における映像情報処理装置の動作について説明する。
【0032】
本実施形態における映像情報処理装置の動作は、エッジ強調部6の動作を除いて、第1実施形態の映像情報処理装置の動作と同様である。
エッジ強調部6は、出力選択部5の出力映像情報V3のエッジを強調して、出力映像情報V4を生成する。当該エッジ強調処理によって、特にアップスケーリングされた映像情報が入力映像情報V0として入力されている場合に、ぼやけてしまった輪郭線がはっきりする。
【0033】
例えば、図6に示すような鮮鋭化フィルタを用いて、出力映像情報V4を生成することができる。なお、図6に示されている鮮鋭化フィルタは、入力される出力映像情報V3から、行方向および列方向の2次微分に基づく3×3サイズのラプラシアンフィルタの出力を減算したものであり、出力映像情報V4の各中心画素位置Pにおける階調値V4(P)は、
V4(P)=5×V3(m,n)
−[V3(m,n−1)+V3(m,n+1)
+V3(m−1,n)+V3(m+1,n)]
となる。
【0034】
また、例えば、図7に示すような鮮鋭化フィルタを用いて、出力映像情報V4を生成することもできる。なお、図7に示されている鮮鋭化フィルタは、入力される出力映像情報V3から、行方向、列方向、および斜め方向の2次微分に基づく3×3サイズのラプラシアンフィルタの出力を減算したものであり、出力映像情報V4の各中心画素位置Pにおける階調値V4(P)は、
V4(P)=9×V3(m,n)
−[V3(m,n−1)+V3(m,n+1)
+V3(m−1,n)+V3(m+1,n)]
+V3(m−1,n−1)+V3(m+1,n+1)
+V3(m−1,n+1)+V3(m+1,n−1)]
となる。
【0035】
===映像情報処理装置の動作の具体例===
以下、図8ないし図13を参照して、映像情報処理装置の動作の具体例について説明する。
【0036】
図8は、入力映像情報V0の一例を示しており、横軸が平面上の画素位置Pの変位を、縦軸が画素位置Pにおける階調値V0(P)を、それぞれ示している。図8において、領域Aは、粗いグラデーション部分を示しており、階調値V0(P)の変化が小さいため、判定部4によって低周波領域であると判定される。一方、領域Bは、エッジ部分を示しており、階調値V0(P)の変化が大きいため、判定部4によって低周波領域でないと判定される。
【0037】
ここで、当該入力映像情報V0に直接エッジ強調処理を行った場合、エッジ部分である領域Bは、図9に示すように、階調値の変化が強調される。しかしながら、領域Aのグラデーションは、滑らかに表現されていないため、当該エッジ強調処理によって領域Aの階調値の変化も強調されてしまう。
【0038】
一方、出力選択部5の出力映像情報V3は、図10に示すように、低周波領域であると判定された領域Aに対して、粗いグラデーション部分を平滑化した混合映像情報V2の階調値が出力される。また、低周波領域でないと判定された領域Bに対して、入力映像情報V0の階調値がそのまま出力される。
【0039】
したがって、出力映像情報V3にエッジ強調処理を行った出力映像情報V4は、図11に示すように、領域Aのグラデーションが滑らかに表現され、領域Bのエッジが強調される。
【0040】
このようにして、本実施形態の映像情報処理装置は、入力映像情報V0に含まれる粗いグラデーションのみを選択的に滑らかにするとともに、アップスケーリングによってぼやけてしまった輪郭線をはっきりさせ、画質を向上させることができる。一例として、本実施形態の映像情報処理装置は、図12に示すような入力映像情報V0に対して、図13に示すような出力映像情報V4を出力する。空のグラデーションを表現している領域Gは、入力映像情報V0では粗い表現となっているが、出力映像情報V4では滑らかに表現されている。一方、山の稜線を表現している領域Eは、平滑化処理によって細部の情報が失われることなく、エッジ強調処理が行われている。
【0041】
===プログラムの動作===
上記実施形態の映像情報処理装置の各部の機能は、コンピュータによって実現することもできる。以下、図14を参照して、当該コンピュータに、映像情報処理装置の各部に相当する機能を実現させるためのプログラムの動作について説明する。
【0042】
プログラムの処理が開始されると(S1)、まず、入力映像情報V0が入力され(S2)、以下、S3からS8LまたはS8Hまでの処理を各画素位置P(m,n)に対して行う(ループ処理)。
【0043】
ループ処理においては、まず、平均化フィルタなどを用いて入力映像情報V0(P)を平滑化して、平滑化映像情報V1(P)を生成する(S3)。
【0044】
次に、入力映像情報V0(P)と平滑化映像情報V1(P)との階調差Dv(P)を算出する(S4)。
【0045】
次に、例えば図4に示したように、階調差Dv(P)に応じて混合比R(P)を算出する(S5)。
【0046】
次に、入力映像情報V0(P)と平滑化映像情報V1(P)とを混合比R(P)で混合して、混合映像情報V2(P)を生成する(S6)。
【0047】
次に、前述したような方法によって、画素位置Pの周辺画素領域が低周波領域であるか否かを判定する(S7)。
【0048】
S7において、周辺画素領域を低周波領域であると判定した場合(S7:L)には、出力映像情報V3(P)として混合映像情報V2(P)を出力する(S8L)。一方、S7において、周辺画素領域を低周波領域でないと判定した場合(S7:H)には、出力映像情報V3(P)として入力映像情報V0(P)を出力する(S8H)。
【0049】
S3からS8LまたはS8Hまでのループ処理を各画素位置Pに対して行うことによって、出力映像情報V3全体を生成し、処理を終了する(S9)。なお、以上の処理は、フレーム単位など、入力映像情報V0が入力されるごとに行われる。また、第2実施形態の映像情報処理装置のように、生成された出力映像情報V3に対して、エッジ強調処理を行ってもよい。
【0050】
前述したように、入力映像情報V0と平滑化映像情報V1とを階調差Dvに応じた割合で混合して、混合映像情報V2を生成し、入力映像情報V0の周辺画素領域が低周波領域であるか否かの判定結果Svに応じて入力映像情報V0または混合映像情報V2の何れか一方を選択して、出力映像情報V3を生成することによって、入力映像情報V0に含まれる粗いグラデーションのみを選択的に滑らかにし、画質を向上させることができる。
【0051】
また、さらに出力映像情報V3のエッジを強調して出力映像情報V4を生成することによって、入力映像情報V0に含まれる粗いグラデーションのみを選択的に滑らかにするとともに、輪郭線をはっきりさせ、画質を向上させることができる。
【0052】
また、階調差Dvが大きくなるほど平滑化映像情報V1の割合が小さくなるように混合映像情報V2を生成することによって、細部の情報を保持しつつ、粗いグラデーション部分を平滑化した混合映像情報V2を生成することができる。
【0053】
また、1セグメント放送の映像情報をアップスケーリングした入力映像情報V0を映像情報処理装置に入力することによって、映像圧縮技術によって粗い表現となってしまったグラデーションを滑らかにしたり、アップスケーリングによってぼやけてしまった輪郭線をはっきりさせたりすることができる。
【0054】
また、映像情報処理装置の各部に相当する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムにおいて、入力映像情報V0(P)と平滑化映像情報V1(P)とを混合比R(P)で混合して、混合映像情報V2(P)を生成し、画素位置Pの周辺画素領域が低周波領域であるか否かの判定結果Sv(P)に応じて、入力映像情報V0(P)または混合映像情報V2(P)の何れか一方を出力映像情報V3(P)として出力するループ処理を各画素位置Pに対して行うことによって、入力映像情報V0に含まれる粗いグラデーションのみを選択的に滑らかにし、画質を向上させることができる。
【0055】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0056】
上記実施形態では、入力映像情報V0の一例として、1セグメント放送の映像情報の場合について説明したが、これに限定されるものではない。本発明の映像情報処理装置およびプログラムは、グラデーションを滑らかに表現することが困難な、圧縮されたデジタル映像情報に広く適用することができる。例えば、他の方式の移動体向けデジタルテレビ放送や、インターネットを介した動画配信サービスなどの映像情報にも適用することができる。
【0057】
上記実施形態では、平滑化部1は、平均化フィルタや加重平均化フィルタを用いて平滑化映像情報V1を生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、入力映像情報V0を2次元FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)して得られる空間周波数成分のうち高い周波数成分を小さくし、2次元IFFT(Inverse FFT:逆高速フーリエ変換)することによって、平滑化映像情報V1を生成することもできる。この場合、平滑化部1は、低い空間周波数成分を相対的に強調するLPF(Low-Pass Filter:低域通過フィルタ)として機能する。
【0058】
上記第2実施形態では、エッジ強調部6は、鮮鋭化フィルタを用いて出力映像情報V4を生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、入力される出力映像情報V3を2次元FFTして得られる空間周波数成分のうち低い周波数成分を小さくし、2次元IFFTすることによって、出力映像情報V4を生成することもできる。この場合、エッジ強調部6は、高い空間周波数成分を相対的に強調するHPF(High-Pass Filter:高域通過フィルタ)として機能する。
【符号の説明】
【0059】
1 平滑化部
2 減算部
3 混合部
4 判定部
5 出力選択部(マルチプレクサ)
6 エッジ強調部
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像情報処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多チャンネル化や高精細化などが可能となるデジタルテレビ放送が多くの国で開始され、携帯電話などの移動体向けの放送が行われている国もある。例えば、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting - Terrestrial)方式を採用する日本の地上デジタルテレビジョン放送では、各チャンネルを13セグメントに分割したうちの1セグメントを利用して、1セグメント放送(携帯電話・移動体端末向けの1セグメント部分受信サービス)が行われている。また、他の移動体向けデジタルテレビ放送としては、DVB−H(Digital Video Broadcasting - Handheld)方式や、T−DMB(Terrestrial - Digital Multimedia Broadcasting)方式などが知られている。
【0003】
上記のような移動体向けデジタルテレビ放送は、携帯電話を用いて視聴されるほか、カーナビゲーション装置や、風呂場などに設置される小型のテレビなどを用いて視聴される。また、アナログ放送用のテレビやパーソナルコンピュータなどに受信部(チューナ)を接続して、視聴することもできる。例えば、特許文献1では、携帯電話などに搭載されている1セグメント放送用のチューナを利用して、より大きな表示画面で視聴することができるワンセグ映像表示方法・装置が開示されている。
【0004】
このようにして、携帯電話などの小さな表示画面だけでなく、より大きな表示画面で移動体向けデジタルテレビ放送を視聴することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−111559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような移動体向けデジタルテレビ放送では、H.246/MPEG−4 AVCのような映像圧縮技術が用いられ、通常の固定受信向けデジタルテレビ放送より情報ビットレートが低くなっている。
【0007】
そのため、空や人の肌などの階調変化(グラデーション)を滑らかに表現することができず、グラデーションが粗い表現となってしまう。このような粗いグラデーションは、特に、画素変換などを用いて映像情報を拡大(アップスケーリング)し、より大きな表示画面で視聴する場合に顕著となる。また、アップスケーリングによって輪郭線がぼやけるのを防止する目的でエッジ強調処理を行う場合には、粗いグラデーションがさらに強調されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する主たる本発明は、複数の画素からなる入力映像情報を平滑化して、平滑化映像情報を生成する平滑化部と、前記入力映像情報と前記平滑化映像情報との階調差を算出する減算部と、前記入力映像情報と前記平滑化映像情報とを前記階調差に応じた割合で混合して、混合映像情報を生成する混合部と、前記入力映像情報のそれぞれの画素および当該画素の周辺に位置する画素を含む周辺画素領域が、所定以上の階調変化を含まない低周波領域であるか否かを判定する判定部と、前記判定部が前記周辺画素領域を前記低周波領域であると判定した場合には前記混合映像情報を出力し、前記判定部が前記周辺画素領域を前記低周波領域でないと判定した場合には前記入力映像情報を出力する出力選択部と、を有することを特徴とする映像情報処理装置である。
【0009】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、映像情報に含まれる粗い階調変化のみを選択的に滑らかにし、画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態における映像情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】平滑化部1に一例として用いられる平均化フィルタ(移動平均フィルタ)を示す図である。
【図3】平滑化部1に一例として用いられる加重平均化フィルタ(ガウシアンフィルタ)を示す図である。
【図4】混合部3における階調差と混合比との関係の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の第2実施形態における映像情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】エッジ強調部6に用いられる鮮鋭化フィルタの一例を示す図である。
【図7】エッジ強調部6に用いられる鮮鋭化フィルタの他の例を示す図である。
【図8】入力映像情報V0の画素位置と階調値との関係の一例を示す模式図である。
【図9】入力映像情報V0にエッジ強調処理を行った場合の画素位置と階調値との関係の一例を示す模式図である。
【図10】出力映像情報V3の画素位置と階調値との関係の一例を示す模式図である。
【図11】出力映像情報V4の画素位置と階調値との関係の一例を示す模式図である。
【図12】入力映像情報V0によって表示される映像の一例である。
【図13】出力映像情報V4によって表示される映像の一例である。
【図14】平滑化部1、減算部2、混合部3、判定部4、および出力選択部5の機能をコンピュータに実現させるためのプログラムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
<第1実施形態>
===映像情報処理装置の構成===
以下、図1を参照して、本発明の第1の実施形態における映像情報処理装置の構成について説明する。
【0014】
図1に示されている映像情報処理装置は、平滑化部1、減算部2、混合部3、判定部4、および出力選択部(マルチプレクサ)5を含んで構成されている。当該映像情報処理装置には、例えば1セグメント放送の映像情報をアップスケーリングした入力映像情報V0が入力されている。
【0015】
平滑化部1には、入力映像情報V0が入力され、平滑化部1からは、平滑化映像情報V1が出力されている。また、減算部2には、入力映像情報V0および平滑化映像情報V1が入力され、減算部2からは、階調差Dvが出力されている。さらに、混合部3には、入力映像情報V0、平滑化映像情報V1、および階調差Dvが入力され、混合部3からは、混合映像情報V2が出力されている。そして、判定部4には、入力映像情報V0が入力され、判定部4からは、判定結果Svが出力されている。
【0016】
出力選択部5のデータ入力には、入力映像情報V0および混合映像情報V2が入力され、選択制御入力には、判定結果Svが入力されている。そして、出力選択部5からは、出力映像情報V3が出力されている。
【0017】
===映像情報処理装置の動作===
次に、本実施形態における映像情報処理装置の動作について説明する。
【0018】
映像情報処理装置の各部に入力、または各部から出力される映像情報は、例えばM行N列の行列状に配置された複数の画素で構成されている。以下の説明において、映像情報の各画素の位置をP(m,n)(1≦m≦M、1≦n≦N)と表すこととする。また、各画素位置Pにおける要素(画素の階調値など)は、(P)または(m,n)を付けて表すこととする。例えば、入力映像情報V0の各画素位置Pにおける階調値は、V0(P)またはV0(m,n)と表される。
【0019】
平滑化部1は、入力映像情報V0を平滑化して、平滑化映像情報V1を生成する。当該平滑化処理によって、入力映像情報V0に含まれる空や人の肌などの粗いグラデーション部分が平滑化される。
【0020】
例えば、図2に示すような平均化フィルタ(移動平均フィルタ)を用いて、平滑化映像情報V1を生成することができる。ここで、図2の3×3(3行3列)サイズの平均化フィルタを用いる場合、フィルタ中央の画素(中心画素)の位置をPとすると、平滑化映像情報V1の各中心画素位置Pにおける階調値V1(P)は、
V1(P)
=[V0(m−1,n−1)+V0(m−1,n)+V0(m−1,n+1)
+V0( m ,n−1)+V0( m ,n)+V0( m ,n+1)
+V0(m+1,n−1)+V0(m+1,n)+V0(m+1,n+1)]/9
となる。すなわち、階調値V1(P)は、入力映像情報V0の画素位置Pを中心とする3×3サイズの局所領域の階調値の移動平均となり、9個の画素に対する重みは、いずれも1/9で等しい。同様に、図2の5×5(5行5列)サイズの平均化フィルタを用いる場合、階調値V1(P)は、入力映像情報V0の画素位置Pを中心とする5×5サイズの局所領域の階調値の移動平均となり、25個の画素に対する重みは、いずれも1/25で等しい。
【0021】
また、例えば、図3に示すような加重平均化フィルタを用いて、平滑化映像情報V1を生成することもできる。図3に示されているように、加重平均化フィルタは、各画素に対して異なる重み付けがなされており、階調値V1(P)は、入力映像情報V0の画素位置Pを中心とする局所領域の、当該重み付けがなされた階調値の移動平均となる。なお、図3に示されている加重平均化フィルタは、重み付けが中心画素位置Pからの距離のガウス関数に従うガウシアンフィルタである。
【0022】
減算部2は、入力映像情報V0と平滑化映像情報V1との階調差Dv(>0)を算出する。なお、各画素位置Pにおける階調差Dv(P)は、
Dv(P)=|V1(P)−V0(P)|
と表すことができる。
【0023】
混合部3は、入力映像情報V0と平滑化映像情報V1とを階調差Dvに応じた割合で混合して、混合映像情報V2を生成する。なお、当該混合処理における平滑化映像情報V1の割合を混合比Rとすると、混合映像情報V2の各画素位置Pにおける階調値V2(P)は、
V2(P)=V1(P)×R(P)+V0(P)×[1−R(P)]
と表すことができる。
【0024】
ここで、混合部3における階調差Dvと混合比Rとの関係の一例を図4に示す。Dv<Dref1(第1の基準値)の場合、混合部3は、R=1となるように、すなわち、入力映像情報V0および平滑化映像情報V1の割合がそれぞれ0%および100%となるように混合して、混合映像情報V2を生成する。また、Dv≧Dref2(第2の基準値)>Dref1の場合、混合部3は、R=0となるように、すなわち、入力映像情報V0および平滑化映像情報V1の割合がそれぞれ100%および0%となるように混合して、混合映像情報V2を生成する。そして、Dref1≦Dv<Dref2の場合、混合比Rは略線形に変化する。
【0025】
前述したように、平滑化部1は、入力映像情報V0に含まれる粗いグラデーション部分を平滑化するが、空などの広いグラデーション部分を平滑化するためには、平均化フィルタや加重平均化フィルタのサイズを大きくすることが望ましい。しかしながら、平滑化部1は、入力映像情報V0全体に対して一様に平滑化処理を行うため、大きなサイズのフィルタを用いると、グラデーション部分以外の細部の情報(ディテール感)が失われてしまう。そのため、混合映像情報V2は、階調差Dvが相対的に大きくなる細部ほど、平滑化映像情報V1の割合(混合比R)が小さくなっている。このようにして、混合部3は、細部の情報を保持しつつ、粗いグラデーション部分を平滑化した混合映像情報V2を生成している。
【0026】
判定部4は、入力映像情報V0の各画素およびその周辺に位置する画素を含む周辺画素領域が、所定以上の階調変化を含まない低周波領域であるか否かを判定する。例えば、判定対象の画素(対象画素)の階調値と、対象画素に隣接する8個の画素(隣接画素)の階調値との差分(>0)をそれぞれ算出し、いずれの差分も設定された閾値未満の場合に、対象画素および隣接画素を含む周辺画素領域を低周波領域であると判定する。また、例えば、周辺画素領域の階調値の最大値および最小値の差が閾値未満の場合に低周波領域であると判定してもよい。なお、各画素位置Pにおける判定結果Sv(P)は、判定部4が周辺画素領域を低周波領域であると判定した場合にはSv(P)=Lとなり、低周波領域でないと判定した場合にはSv(P)=Hとなるものとする。
【0027】
出力選択部5は、判定部4の判定結果Svに応じて入力映像情報V0または混合映像情報V2の何れか一方を選択して、出力映像情報V3を生成する。より具体的には、出力映像情報V3の各画素位置Pにおける階調値V3(P)は、Sv(P)=Lの場合にV3(P)=V2(P)となり、Sv(P)=Hの場合にV3(P)=V0(P)となる。
【0028】
このようにして、本実施形態の映像情報処理装置は、入力映像情報V0の周辺画素領域が低周波領域であるか否かの判定結果Svに応じて、入力映像情報V0または混合映像情報V2の何れか一方を選択して出力する。周辺画素領域が低周波領域でない場合、当該周辺画素領域は、所定以上の階調変化を含んでおり、グラデーション部分ではないため、映像情報処理装置は、入力映像情報V0の階調値をそのまま出力する。一方、周辺画素領域が低周波領域である場合、映像情報処理装置は、細部の情報を保持しつつ、粗いグラデーション部分を平滑化した混合映像情報V2の階調値を出力する。したがって、入力映像情報V0に含まれる粗いグラデーションのみを選択的に滑らかにし、画質を向上させることができる。
【0029】
<第2実施形態>
===映像情報処理装置の構成===
以下、図5を参照して、本発明の第2の実施形態における映像情報処理装置の構成について説明する。
【0030】
図5に示されている映像情報処理装置は、第1実施形態の映像情報処理装置に対して、エッジ強調部6をさらに含んで構成されている。また、エッジ強調部6には、出力選択部5の出力映像情報V3が入力され、エッジ強調部6からは、出力映像情報V4が出力されている。
【0031】
===映像情報処理装置の動作===
次に、本実施形態における映像情報処理装置の動作について説明する。
【0032】
本実施形態における映像情報処理装置の動作は、エッジ強調部6の動作を除いて、第1実施形態の映像情報処理装置の動作と同様である。
エッジ強調部6は、出力選択部5の出力映像情報V3のエッジを強調して、出力映像情報V4を生成する。当該エッジ強調処理によって、特にアップスケーリングされた映像情報が入力映像情報V0として入力されている場合に、ぼやけてしまった輪郭線がはっきりする。
【0033】
例えば、図6に示すような鮮鋭化フィルタを用いて、出力映像情報V4を生成することができる。なお、図6に示されている鮮鋭化フィルタは、入力される出力映像情報V3から、行方向および列方向の2次微分に基づく3×3サイズのラプラシアンフィルタの出力を減算したものであり、出力映像情報V4の各中心画素位置Pにおける階調値V4(P)は、
V4(P)=5×V3(m,n)
−[V3(m,n−1)+V3(m,n+1)
+V3(m−1,n)+V3(m+1,n)]
となる。
【0034】
また、例えば、図7に示すような鮮鋭化フィルタを用いて、出力映像情報V4を生成することもできる。なお、図7に示されている鮮鋭化フィルタは、入力される出力映像情報V3から、行方向、列方向、および斜め方向の2次微分に基づく3×3サイズのラプラシアンフィルタの出力を減算したものであり、出力映像情報V4の各中心画素位置Pにおける階調値V4(P)は、
V4(P)=9×V3(m,n)
−[V3(m,n−1)+V3(m,n+1)
+V3(m−1,n)+V3(m+1,n)]
+V3(m−1,n−1)+V3(m+1,n+1)
+V3(m−1,n+1)+V3(m+1,n−1)]
となる。
【0035】
===映像情報処理装置の動作の具体例===
以下、図8ないし図13を参照して、映像情報処理装置の動作の具体例について説明する。
【0036】
図8は、入力映像情報V0の一例を示しており、横軸が平面上の画素位置Pの変位を、縦軸が画素位置Pにおける階調値V0(P)を、それぞれ示している。図8において、領域Aは、粗いグラデーション部分を示しており、階調値V0(P)の変化が小さいため、判定部4によって低周波領域であると判定される。一方、領域Bは、エッジ部分を示しており、階調値V0(P)の変化が大きいため、判定部4によって低周波領域でないと判定される。
【0037】
ここで、当該入力映像情報V0に直接エッジ強調処理を行った場合、エッジ部分である領域Bは、図9に示すように、階調値の変化が強調される。しかしながら、領域Aのグラデーションは、滑らかに表現されていないため、当該エッジ強調処理によって領域Aの階調値の変化も強調されてしまう。
【0038】
一方、出力選択部5の出力映像情報V3は、図10に示すように、低周波領域であると判定された領域Aに対して、粗いグラデーション部分を平滑化した混合映像情報V2の階調値が出力される。また、低周波領域でないと判定された領域Bに対して、入力映像情報V0の階調値がそのまま出力される。
【0039】
したがって、出力映像情報V3にエッジ強調処理を行った出力映像情報V4は、図11に示すように、領域Aのグラデーションが滑らかに表現され、領域Bのエッジが強調される。
【0040】
このようにして、本実施形態の映像情報処理装置は、入力映像情報V0に含まれる粗いグラデーションのみを選択的に滑らかにするとともに、アップスケーリングによってぼやけてしまった輪郭線をはっきりさせ、画質を向上させることができる。一例として、本実施形態の映像情報処理装置は、図12に示すような入力映像情報V0に対して、図13に示すような出力映像情報V4を出力する。空のグラデーションを表現している領域Gは、入力映像情報V0では粗い表現となっているが、出力映像情報V4では滑らかに表現されている。一方、山の稜線を表現している領域Eは、平滑化処理によって細部の情報が失われることなく、エッジ強調処理が行われている。
【0041】
===プログラムの動作===
上記実施形態の映像情報処理装置の各部の機能は、コンピュータによって実現することもできる。以下、図14を参照して、当該コンピュータに、映像情報処理装置の各部に相当する機能を実現させるためのプログラムの動作について説明する。
【0042】
プログラムの処理が開始されると(S1)、まず、入力映像情報V0が入力され(S2)、以下、S3からS8LまたはS8Hまでの処理を各画素位置P(m,n)に対して行う(ループ処理)。
【0043】
ループ処理においては、まず、平均化フィルタなどを用いて入力映像情報V0(P)を平滑化して、平滑化映像情報V1(P)を生成する(S3)。
【0044】
次に、入力映像情報V0(P)と平滑化映像情報V1(P)との階調差Dv(P)を算出する(S4)。
【0045】
次に、例えば図4に示したように、階調差Dv(P)に応じて混合比R(P)を算出する(S5)。
【0046】
次に、入力映像情報V0(P)と平滑化映像情報V1(P)とを混合比R(P)で混合して、混合映像情報V2(P)を生成する(S6)。
【0047】
次に、前述したような方法によって、画素位置Pの周辺画素領域が低周波領域であるか否かを判定する(S7)。
【0048】
S7において、周辺画素領域を低周波領域であると判定した場合(S7:L)には、出力映像情報V3(P)として混合映像情報V2(P)を出力する(S8L)。一方、S7において、周辺画素領域を低周波領域でないと判定した場合(S7:H)には、出力映像情報V3(P)として入力映像情報V0(P)を出力する(S8H)。
【0049】
S3からS8LまたはS8Hまでのループ処理を各画素位置Pに対して行うことによって、出力映像情報V3全体を生成し、処理を終了する(S9)。なお、以上の処理は、フレーム単位など、入力映像情報V0が入力されるごとに行われる。また、第2実施形態の映像情報処理装置のように、生成された出力映像情報V3に対して、エッジ強調処理を行ってもよい。
【0050】
前述したように、入力映像情報V0と平滑化映像情報V1とを階調差Dvに応じた割合で混合して、混合映像情報V2を生成し、入力映像情報V0の周辺画素領域が低周波領域であるか否かの判定結果Svに応じて入力映像情報V0または混合映像情報V2の何れか一方を選択して、出力映像情報V3を生成することによって、入力映像情報V0に含まれる粗いグラデーションのみを選択的に滑らかにし、画質を向上させることができる。
【0051】
また、さらに出力映像情報V3のエッジを強調して出力映像情報V4を生成することによって、入力映像情報V0に含まれる粗いグラデーションのみを選択的に滑らかにするとともに、輪郭線をはっきりさせ、画質を向上させることができる。
【0052】
また、階調差Dvが大きくなるほど平滑化映像情報V1の割合が小さくなるように混合映像情報V2を生成することによって、細部の情報を保持しつつ、粗いグラデーション部分を平滑化した混合映像情報V2を生成することができる。
【0053】
また、1セグメント放送の映像情報をアップスケーリングした入力映像情報V0を映像情報処理装置に入力することによって、映像圧縮技術によって粗い表現となってしまったグラデーションを滑らかにしたり、アップスケーリングによってぼやけてしまった輪郭線をはっきりさせたりすることができる。
【0054】
また、映像情報処理装置の各部に相当する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムにおいて、入力映像情報V0(P)と平滑化映像情報V1(P)とを混合比R(P)で混合して、混合映像情報V2(P)を生成し、画素位置Pの周辺画素領域が低周波領域であるか否かの判定結果Sv(P)に応じて、入力映像情報V0(P)または混合映像情報V2(P)の何れか一方を出力映像情報V3(P)として出力するループ処理を各画素位置Pに対して行うことによって、入力映像情報V0に含まれる粗いグラデーションのみを選択的に滑らかにし、画質を向上させることができる。
【0055】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0056】
上記実施形態では、入力映像情報V0の一例として、1セグメント放送の映像情報の場合について説明したが、これに限定されるものではない。本発明の映像情報処理装置およびプログラムは、グラデーションを滑らかに表現することが困難な、圧縮されたデジタル映像情報に広く適用することができる。例えば、他の方式の移動体向けデジタルテレビ放送や、インターネットを介した動画配信サービスなどの映像情報にも適用することができる。
【0057】
上記実施形態では、平滑化部1は、平均化フィルタや加重平均化フィルタを用いて平滑化映像情報V1を生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、入力映像情報V0を2次元FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)して得られる空間周波数成分のうち高い周波数成分を小さくし、2次元IFFT(Inverse FFT:逆高速フーリエ変換)することによって、平滑化映像情報V1を生成することもできる。この場合、平滑化部1は、低い空間周波数成分を相対的に強調するLPF(Low-Pass Filter:低域通過フィルタ)として機能する。
【0058】
上記第2実施形態では、エッジ強調部6は、鮮鋭化フィルタを用いて出力映像情報V4を生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、入力される出力映像情報V3を2次元FFTして得られる空間周波数成分のうち低い周波数成分を小さくし、2次元IFFTすることによって、出力映像情報V4を生成することもできる。この場合、エッジ強調部6は、高い空間周波数成分を相対的に強調するHPF(High-Pass Filter:高域通過フィルタ)として機能する。
【符号の説明】
【0059】
1 平滑化部
2 減算部
3 混合部
4 判定部
5 出力選択部(マルチプレクサ)
6 エッジ強調部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素からなる入力映像情報を平滑化して、平滑化映像情報を生成する平滑化部と、
前記入力映像情報と前記平滑化映像情報との階調差を算出する減算部と、
前記入力映像情報と前記平滑化映像情報とを前記階調差に応じた割合で混合して、混合映像情報を生成する混合部と、
前記入力映像情報のそれぞれの画素および当該画素の周辺に位置する画素を含む周辺画素領域が、所定以上の階調変化を含まない低周波領域であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記周辺画素領域を前記低周波領域であると判定した場合には前記混合映像情報を出力し、前記判定部が前記周辺画素領域を前記低周波領域でないと判定した場合には前記入力映像情報を出力する出力選択部と、
を有することを特徴とする映像情報処理装置。
【請求項2】
前記出力選択部から出力される映像情報のエッジを強調して出力するエッジ強調部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の映像情報処理装置。
【請求項3】
前記混合部は、
前記階調差が第1の基準値未満の場合には、前記入力映像情報の割合が0となるように前記混合映像情報を生成し、
前記階調差が前記第1の基準値より大きい第2の基準値以上の場合には、前記平滑化映像情報の割合が0となるように前記混合映像情報を生成し、
前記階調差が前記第1の基準値以上かつ前記第2の基準値未満の場合には、前記入力映像情報と前記平滑化映像情報との混合の割合が略線形に変化することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の映像情報処理装置。
【請求項4】
前記入力映像情報は、1セグメント放送の映像情報を拡大した映像情報であることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の映像情報処理装置。
【請求項5】
複数の画素からなる入力映像情報が入力されるコンピュータに、
前記入力映像情報を平滑化して、平滑化映像情報を生成する機能と、
前記入力映像情報と前記平滑化映像情報との階調差を算出する機能と、
前記入力映像情報と前記平滑化映像情報とを前記階調差に応じた割合で混合して、混合映像情報を生成する機能と、
前記入力映像情報のそれぞれの画素および当該画素の周辺に位置する画素を含む周辺画素領域が、所定以上の階調変化を含まない低周波領域であるか否かを判定する機能と、
前記周辺画素領域を前記低周波領域であると判定した場合には前記混合映像情報を出力し、前記周辺画素領域を前記低周波領域でないと判定した場合には前記入力映像情報を出力する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項1】
複数の画素からなる入力映像情報を平滑化して、平滑化映像情報を生成する平滑化部と、
前記入力映像情報と前記平滑化映像情報との階調差を算出する減算部と、
前記入力映像情報と前記平滑化映像情報とを前記階調差に応じた割合で混合して、混合映像情報を生成する混合部と、
前記入力映像情報のそれぞれの画素および当該画素の周辺に位置する画素を含む周辺画素領域が、所定以上の階調変化を含まない低周波領域であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記周辺画素領域を前記低周波領域であると判定した場合には前記混合映像情報を出力し、前記判定部が前記周辺画素領域を前記低周波領域でないと判定した場合には前記入力映像情報を出力する出力選択部と、
を有することを特徴とする映像情報処理装置。
【請求項2】
前記出力選択部から出力される映像情報のエッジを強調して出力するエッジ強調部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の映像情報処理装置。
【請求項3】
前記混合部は、
前記階調差が第1の基準値未満の場合には、前記入力映像情報の割合が0となるように前記混合映像情報を生成し、
前記階調差が前記第1の基準値より大きい第2の基準値以上の場合には、前記平滑化映像情報の割合が0となるように前記混合映像情報を生成し、
前記階調差が前記第1の基準値以上かつ前記第2の基準値未満の場合には、前記入力映像情報と前記平滑化映像情報との混合の割合が略線形に変化することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の映像情報処理装置。
【請求項4】
前記入力映像情報は、1セグメント放送の映像情報を拡大した映像情報であることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の映像情報処理装置。
【請求項5】
複数の画素からなる入力映像情報が入力されるコンピュータに、
前記入力映像情報を平滑化して、平滑化映像情報を生成する機能と、
前記入力映像情報と前記平滑化映像情報との階調差を算出する機能と、
前記入力映像情報と前記平滑化映像情報とを前記階調差に応じた割合で混合して、混合映像情報を生成する機能と、
前記入力映像情報のそれぞれの画素および当該画素の周辺に位置する画素を含む周辺画素領域が、所定以上の階調変化を含まない低周波領域であるか否かを判定する機能と、
前記周辺画素領域を前記低周波領域であると判定した場合には前記混合映像情報を出力し、前記周辺画素領域を前記低周波領域でないと判定した場合には前記入力映像情報を出力する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−35776(P2011−35776A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181710(P2009−181710)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]