説明

映像監視システム

【課題】カメラをパン、チルト、回転等の動作をさせることなく撮影位置や撮影方向を検出可能な映像監視システムを提供する。
【解決手段】監視カメラ30、32が撮影した映像を監視するための映像監視システムにおいて、位置方向情報検出モジュール34、36は、カメラの撮影位置及び撮影方向を把握するための管理データを与える。この際、各監視カメラの周辺に配置した複数の無線基地局10〜20からの電波をカメラ側で受信して、無線基地局10〜20のID毎の電波受信強度の情報を取得し、管理データを生成する。監視サーバ50は、監視カメラから管理データを収集して監視カメラとその位置を特定し、管理データの送信元アドレスと管理データに含まれる位置及び方向の情報とを関連付けてデータベースに登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの監視カメラが撮影して得られた映像を監視するための映像監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カメラの位置で被写体の方向を検出するための技術として、例えば特許文献1及び特許文献2に開示された技術が知られている。
【0003】
特許文献1においては、被写体上に存在する無線タグに取り付けられた無指向性アンテナから送出される電波をカメラ側で検出し、カメラ方向を変化させながら、受信感度が最高となる方向に被写体があると判定することを提案している。
【0004】
特許文献2では、カメラ方向を変化させた場合の、複数の指向性アンテナの受信感度の変化からカメラ方向を求めることを提案している。
【特許文献1】特開2006−261999号公報
【特許文献2】特開2007−104253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、特許文献2のいずれの従来技術においても、被写体側の電波送出部から送出された電波を指向性アンテナを持つカメラで受信する。また、受信時にカメラの方向を変化させて、方向の変化と受信強度の変化との相関に基づいて電波の到来方向を検出している。
【0006】
しかしながら、例えば天井や壁に固定的に設置されている一般的な監視カメラを利用しようとする場合には、カメラの方向を変化させることはできないので、特許文献1、特許文献2に開示されているような従来技術は採用できない。従って、カメラから見た電波の発信源の方向を調べることができないし、設置場所や設置状況(撮影する方向など)が予め分かっている既知のカメラでない限り、カメラ自身が撮影している方向やその位置を知ることはできない。
【0007】
例えば、インターネットのようなネットワーク上には様々なネットワークカメラが接続されているが、それぞれのネットワークカメラの設置場所や設置状況は不明である場合が多く、設置場所や設置状況が変化する可能性もあるので、仮にこのような未知のネットワークカメラから画像を取得できたとしても、その画像がどの地点からどの方向を撮影することにより得られた画像なのかは不明である。そのため、このようなネットワークカメラは監視などの目的に利用する場合不便な面があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、カメラをパン、チルト、回転等の動作をさせることなく撮影位置や撮影方向を検出することが可能な映像監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも1つの監視カメラが撮影して得られた映像を監視するための映像監視システムであって、前記監視カメラに撮影位置及び撮影方向を把握するための管理データを与える情報付加部と、前記管理データを収集して監視カメラとその位置を特定するデータ収集部と、前記管理データを収集する際に送信元アドレスと前記管理データに含まれる位置及び方向の情報とを関連付けて所定のデータベースに登録するデータ登録制御部と、を備える映像監視システムを提供する。
上記構成により、情報付加部の働きにより該当する監視カメラの撮影位置及び撮影方向が検出され、撮影位置及び撮影方向の情報と監視カメラとを対応付ける情報が収集されてデータベースに登録される。従って、設置場所や設置状況が未知の監視カメラから得られる映像についても、データベースを利用することにより該当する撮影位置及び撮影方向の情報を把握することが可能になる。また、データベース上から希望する撮影位置及び撮影方向を撮影している特定の監視カメラを探しだし、この監視カメラから希望する映像を取得することも可能である。このように、カメラをパン、チルト、回転等の動作をさせることなく、撮影位置や撮影方向を検出することが可能となる。
【0010】
また、本発明は、上記の映像監視システムであって、前記情報付加部は、それぞれ個別IDの情報を電波として送出する複数の電波送出装置からの電波を受信する指向性アンテナと無指向性アンテナと、前記指向性アンテナ及び無指向性アンテナにより受信した電波の信号を処理して前記管理データを生成する管理データ生成部とを備えるものを含む。
上記構成により、複数の電波送出装置からそれぞれ送出される電波を指向性アンテナ及び無指向性アンテナを使ってそれぞれ検出し、それぞれの電波の個別IDと受信強度とをアンテナ毎に判定することにより、該当する監視カメラの撮影位置及び撮影方向を把握することが可能になる。
【0011】
また、本発明は、上記の映像監視システムであって、前記管理データ生成部は、前記指向性アンテナ及び無指向性アンテナによる受信信号から各電波送出装置のIDと電波受信強度の情報を取得するモジュール化した検出回路を備え、前記検出回路を前記監視カメラの本体に対して脱着自在に構成したものを含む。
上記構成により、モジュール化した検出回路と、指向性アンテナ及び無指向性アンテナを目的の監視カメラに装着することにより、撮影位置及び撮影方向の情報を取得可能な監視カメラを増やすことができ、一般的な監視カメラも本システムでそのまま利用可能になる。
【0012】
また、本発明は、上記の映像監視システムであって、前記監視カメラの撮影範囲に含まれる位置に発光装置を設け、前記管理データもしくはそれの生成に利用可能な情報に応じて前記発光装置の発光状況を制御する発光制御部を備えるものを含む。
上記構成により、管理データもしくはそれの生成に利用可能な情報が、発光装置の発光状況の変化として監視カメラの撮影する映像に含まれることになるので、この映像の内容から監視カメラの撮影位置及び撮影方向の情報を抽出することが可能になる。このため、撮影位置及び撮影方向の情報を転送するために特別な通信回線や接続ケーブルを追加する必要がなくなる。
【0013】
また、本発明は、上記の映像監視システムであって、前記監視カメラ及び前記データ収集部は、それぞれ所定のIPネットワークと接続するための通信部を備えるものを含む。
上記構成により、例えばインターネットやローカルネットワーク(LAN)のようなIPネットワークを経由して、監視カメラとデータ収集部とが通信できるので、データ収集部は多数の監視カメラから情報を収集することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カメラをパン、チルト、回転等の動作をさせることなく撮影位置や撮影方向を検出することが可能な映像監視システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る映像監視システム全体の構成例を示す構成図である。
【0016】
図1に示す構成例では、映像を撮影するためのカメラとして、互いに異なる場所に設置された監視カメラ(A)30と監視カメラ(B)32とが設けてある。また、監視カメラ(A)30、監視カメラ(B)32等の情報を収集するために監視サーバ50が設けてあり、これらはローカルネットワーク(LAN:例えばイーサネットのようなIP(Internet Protocol)網)を介して互いに接続されている。
【0017】
具体的には、監視カメラ(A)30はハブ(No.1)40と接続され、監視カメラ(B)32はハブ(No.2)42と接続され、ハブ(No.1)40及びハブ(No.2)42は各々ハブ(No.3)44と接続され、ハブ(No.3)44は監視サーバ50と接続されているので、監視サーバ50は監視カメラ(A)30及び監視カメラ(B)32の情報を収集することができる。監視サーバ50には監視モニタ52が接続されている。
【0018】
監視カメラ(A)30、監視カメラ(B)32の周辺には、複数の電波送出装置として、互いに異なる場所に無線基地局(No.1)10、無線基地局(No.2)12、無線基地局(No.3)14、無線基地局(No.4)16、無線基地局(No.5)18、無線基地局(No.6)20が設置してある。
【0019】
無線基地局(No.1)10は、当局に予め割り当てられた識別コード(ID=1)の情報を含む電波を無指向性のアンテナを利用して送信する。無線基地局(No.2)12は、当局に予め割り当てられた識別コード(ID=2)の情報を含む電波を無指向性のアンテナを利用して送信する。無線基地局(No.3)14は、当局に予め割り当てられた識別コード(ID=3)の情報を含む電波を無指向性のアンテナを利用して送信する。無線基地局(No.4)16は、当局に予め割り当てられた識別コード(ID=4)の情報を含む電波を無指向性のアンテナを利用して送信する。無線基地局(No.5)18は、当局に予め割り当てられた識別コード(ID=5)の情報を含む電波を無指向性のアンテナを利用して送信する。無線基地局(No.6)20は、当局に予め割り当てられた識別コード(ID=6)の情報を含む電波を無指向性のアンテナを利用して送信する。
【0020】
これらの無線基地局10〜20は、各監視カメラ30、32の設置場所及び方向を検出するために必要なシステムの構成要素であり、各監視カメラ30、32の監視エリア内に一定数以上設置することが望ましい。また、各無線基地局10〜20の設置位置に関する情報は、それぞれの識別コードに対応付けて監視サーバ50上に予め記録しておく。
【0021】
監視カメラ(A)30は、周期的に撮影して得られた監視映像の情報を符号化するとともに、後述の位置方向情報検出モジュールより入力した情報と合わせてIP網に送出する。同様に、監視カメラ(B)32も周期的に撮影して得られた監視映像の情報を符号化するとともに、後述の位置方向情報検出モジュールより入力した情報と合わせてIP網に送出する。
【0022】
監視カメラ(A)30上に設けられている位置方向情報検出モジュール34は、その周辺に設置されている各無線基地局(10〜20)からの電波をそれぞれ指向性アンテナと無指向性アンテナとで受信し、受信電波の強度及び識別コードの情報をカメラ(30)に出力する。
【0023】
同様に、監視カメラ(B)32上に設けられている位置方向情報検出モジュール36は、その周辺に設置されている各無線基地局(10〜20)からの電波をそれぞれ指向性アンテナと無指向性アンテナとで受信し、受信電波の強度及び識別コードの情報をカメラ(32)に出力する。
【0024】
本実施形態では、これらの各無線基地局のID毎の電波受信強度の情報を、カメラの撮影位置及び撮影方向を把握するための管理データの一例として用いる。ここで、無線基地局10〜20、位置方向情報検出モジュール34、36が情報付加部の機能を実現する。
【0025】
ハブ(No.1)40、ハブ(No.2)42、ハブ(No.3)44はローカルネットワーク上で複数の機器を相互に接続するために設けてある。
【0026】
監視サーバ50は、このローカルネットワークに接続された各カメラからの映像パケットと位置・方向情報パケットを受信し、データ送信元のIPアドレスと位置、及び方向を関連付けてデータベース化するとともに、映像パケットの内容をデコードし、さらに位置・方向情報を映像に多重したビデオ信号を出力する。この監視サーバ50がデータ収集部及びデータ登録制御部の機能を実現する。
【0027】
監視モニタ52は、監視サーバ50からの入力映像を監視者に見えるように画面に出力する。
【0028】
図1に示した監視カメラ(A)30及び監視カメラ(B)32として利用可能な監視カメラの具体的な構成例が図2、図3にそれぞれ示されている。図2は映像監視システムに設けられる監視カメラ及びそれに付加された無線モジュールの位置関係に関する第1構成例を示す図、図3は映像監視システムに設けられる監視カメラ及びそれに付加された無線モジュールの位置関係に関する第2構成例を示す図である。
【0029】
まず、図2に示した第1構成例の監視カメラについて説明する。図2に示すように、監視カメラ(本体)100の下部にアンテナモジュール102が装着されており、このアンテナモジュール102には無指向性アンテナ104及び指向性アンテナ106がそれぞれ接続してある。監視カメラ100とアンテナモジュール102との間はシリアル通信ケーブル108を介して接続されている。
【0030】
指向性アンテナ106については、例えば八木アンテナのような指向性を有するアンテナが想定される。すなわち、水平面内で電波送出方向を0度方向とした場合に、0度方向、±90度、180度方向でそれぞれ受信感度(アンテナ利得)が異なる性質が望ましい。
【0031】
図2に示すように、アンテナモジュール102の下部に無指向性アンテナ104と、指向性アンテナ106とが設置されるが、指向性アンテナ106の指向性方向(アンテナ利得が最高となる方向)は図2に示すようにカメラレンズの光軸方向(撮影方向)と一致するように向きを合わせておく。さらにアンテナモジュール102と監視カメラ100をシリアル通信ケーブル108で接続する。
【0032】
一方、図3に示した第2構成例では、図2の第1構成例と同様に、監視カメラ100、アンテナモジュール102、無指向性アンテナ104、指向性アンテナ106を設けてあるが、シリアル通信ケーブル108の代わりに発光装置110が設けてある。
【0033】
発光装置110は、図3に示すように監視カメラ100の撮像部の前面(撮影範囲に含まれる領域)に配置されている。この発光装置110は、発光状況を制御する発光制御部を備えており、アンテナモジュール102が出力する情報(各アンテナが受信した電波の強度や識別コード)に従って一定の規則で発光状態が変化する。つまり、光の強度変化パターンの信号として発光装置110が監視カメラ100に情報を出力する。
【0034】
監視カメラ100側には、撮影した映像に含まれる発光パターンの情報を読み取るために、所定の発光パターン識別部を設けて、識別したパターンによってアンテナモジュール102からの伝送データを識別する。発光パターンとしては、色や点滅周期、あるいはその組み合わせを用いても良い。発光装置110を用いることにより、シリアル通信ケーブル108は不要になる。
【0035】
図4は本実施形態の映像監視システムの主要部に関する具体的な構成例を示すブロック図である。
【0036】
図4において、アンテナモジュール筐体200は図1に示す位置方向情報検出モジュール34又は36に相当し、カメラ筐体300は図1に示す監視カメラ30又は32に相当し、監視サーバ筐体400は図1に示す監視サーバ50に相当する。
【0037】
まず、図4中に示すアンテナモジュール筐体200について説明する。このアンテナモジュール筐体200の中には、無指向性アンテナ用無線受信LSI202、指向性アンテナ用無線受信LSI204、CPU(マイクロプロセッサ)206、メモリ208、シリアルIF(インタフェース)210が設けてある。このアンテナモジュール筐体200が、カメラの撮影位置及び撮影方向を把握するための管理データを生成する管理データ生成部の機能を実現する。ここで、無指向性アンテナ用無線受信LSI202、指向性アンテナ用無線受信LSI204、CPU206、メモリ208が各無線基地局のIDと電波受信強度の情報を取得する検出回路として機能する。
【0038】
無指向性アンテナ用無線受信LSI202は、無指向性アンテナ104で受信した各無線基地局(10〜20)毎のIDと電波強度をCPU206へ通知し、指向性アンテナ用無線受信LSI204は指向性アンテナ106で受信した各無線基地局(10〜20)毎のIDと電波強度をCPU206へ通知する。
【0039】
CPU206は、無指向性アンテナ用無線受信LSI202と指向性アンテナ用無線受信LSI204から通知された各無線基地局毎のIDと指向性アンテナ106、及び無指向性アンテナ104の電波強度をシリアルIF210を経由して監視カメラへ通知するためにデータフォーマット化しシリアルIF210へ出力する。シリアルIF210はCPU206から入力されたデータをシリアルIFを経由して監視カメラへ出力する。以上のように、アンテナモジュールは各無線基地局から送出されるIDと指向性アンテナと無指向性アンテナの電波強度を監視カメラへ通知する機能を有する。
【0040】
次に、図4中に示すカメラ筐体300について説明する。カメラ筐体300の内部には、CPU(マイクロプロセッサ)302、メモリ304、シリアルIF(インタフェース)306、レンズ308、CCD(二次元イメージセンサ)310、信号処理部312、符号化部314、ネットワークIF(インタフェース)316が設けてある。
【0041】
CCD310は、レンズ308が結像させた映像を入力し電気信号として出力する。信号処理部312は、CCD310から入力した映像の電気信号を圧縮符号化用途に適した方式であるYCbCr信号に変換して出力する。符号化部314は、入力したYCbCr信号をIPネットワークで伝送可能となるよう圧縮符号化し、圧縮データをメモリ304へ出力する。圧縮符号化方式としては例えばJPEG、MPEG2、MPEG4方式のように一般に知られている形式を利用すればよい。シリアルIF306はアンテナモジュール筐体200側のシリアルIF210から送出された各無線基地局毎のID、指向性アンテナ電波強度、無指向性アンテナ電波強度を入力しメモリ304へ出力する。
【0042】
ネットワークIF316は、通信部として機能するもので、メモリ304から圧縮データと各無線基地局毎のID、指向性アンテナ電波強度、無指向性アンテナ電波強度を入力し、映像の圧縮データをIPパケット化して監視サーバ筐体400側に向けてネットワークに送出する。さらに各無線基地局毎のID、指向性アンテナ電波強度、無指向性アンテナ電波強度の情報についても別途IPパケット化しこれも監視サーバ筐体400側に向けてネットワークに送出する。
【0043】
ネットワークIF316のアドレスを特定するためのIPアドレスについては、図に示していないDHCPサーバにより自動的に決定すればよい。また、監視サーバ筐体400が、アドレスを振付けたIPアドレス一覧をDHCPサーバから通知を受けて宛先IPアドレスに指定してIPパケットを送出すれば、ネットワークIF316が監視サーバのIPアドレスを知ることができる。
【0044】
以上のように、カメラ筐体300は撮影した映像を圧縮符号化したデータと、アンテナモジュール筐体200より入力した各無線基地局毎のID、指向性アンテナ電波強度、無指向性アンテナ電波強度を監視サーバにIPパケット化して送出することができる。
【0045】
次に、図4中に示す監視サーバ筐体400について説明する。この監視サーバ筐体400の内部には、ネットワークIF(インタフェース)402、CPU(マイクロプロセッサ)404、デコーダ(1)406、デコーダ(2)408、デコーダ(3)410、デコーダ(4)412、位置・方向検出CPU(マイクロプロセッサ)414、画面合成部418、アドレス・位置・方向データベース420が設けてある。ここで、CPU404、位置・方向検出CPU414がデータ収集部の機能を実現し、アドレス・位置・方向データベース420がデータ登録制御部の機能を実現する。
【0046】
ネットワークIF402は、通信部として機能するもので、監視カメラのネットワークIF316より出力された圧縮データと各無線基地局毎のID、指向性アンテナ電波強度、無指向性アンテナ電波強度を入力し、メモリ416に出力する。
【0047】
図1に示すシステムのように、監視カメラは一般的に複数設置されるので、ネットワークIF402は送信元IPアドレス毎に監視カメラを区別し、メモリ416上で監視カメラ毎に個別に確保されたメモリ領域にそれぞれの監視カメラからの受信パケットを出力する。これにより、後述のデコーダや位置・方向検出CPUがメモリ上のデータと各カメラを対応付けることができる。
【0048】
デコーダ(1)406は、CPU404から指定されたアドレスに保存されている圧縮データを伸張してベースバンド映像信号を復号し画面合成部418へ出力する。デコーダ(2)408、デコーダ(3)410、デコーダ(4)412の動作はデコーダ(1)406の動作と同様である。
【0049】
位置・方向検出CPU414は、メモリ416から各無線基地局毎のID、指向性アンテナ電波強度、無指向性アンテナ電波強度を入力し、後述の方法により各監視カメラの位置と方向を求めて、カメラのIPアドレスと関連付けて、アドレス・位置・方向データベース420へ出力する。
【0050】
アドレス・位置・方向データベース420は、位置・方向検出CPU414が出力した各カメラのIPアドレスと位置と方向を互いに関連付けて登録及び保持し、画面合成部418からの要求に応じてカメラ位置と方向の情報を出力する。
【0051】
画面合成部418は、各デコーダ(406〜412)が出力した映像とアドレス・位置・方向データベース420が出力したカメラのIPアドレスと位置と方向を入力し、多チャンネルの映像を縮小して1つの映像に貼り付けるとともに、各カメラの位置と方向を文字情報として各カメラの表示領域に多重した映像信号を出力する。
【0052】
以上のように、監視サーバ筐体400はネットワークより入力した複数のカメラの圧縮映像を復号して表示するとともに、各カメラを特定するIPアドレスと撮影条件を表す位置、方向の情報をベータベース化して保持するので、映像表示に各監視メラのIPアドレス、位置、方向を文字情報として多重した映像信号を出力することができる。
【0053】
次に、監視サーバ筐体400内の位置・方向検出CPU414が各監視カメラの設置位置及び撮影方向を算出するための方法について図5〜図10を参照しながら説明する。
【0054】
図5は指向性アンテナの受信電波の強度と無線基地局との距離の関係を示すグラフである。図6は各無線基地局からの距離の条件からカメラ設置位置を求めるための位置関係を表す平面図である。図7は建物の壁方向等を基準軸としカメラ位置における基準軸と無線基地局方向の角度である基地局角度との関係を表す平面図である。図8はカメラ位置における基地局方向とカメラ撮影方向の角度であるカメラ角度を表す平面図である。図9は指向性アンテナと無指向性アンテナの受信感度の比からカメラ角度の候補を求めるためのカメラ角度と電界強度との関係を表すグラフである。図10はカメラ角度の候補と基地局角度との関係を表す模式図である。
【0055】
図5に示すグラフにおいては、横軸は無指向性アンテナと無線基地局までの距離を表し、縦軸は受信した電波強度(電界強度)を表している。図5に示すように、伝播距離が長くなるにしたがって電波強度が小さくなる。
【0056】
位置・方向検出CPU414は、は各無線基地局のIDと各監視カメラの無指向性アンテナ104における電波強度の情報を受信するので、図5に示すような特性に従って、このグラフの内容から、あるいは予め定めた計算式により、各無線基地局と該当する監視カメラとの距離を求めることができる。
【0057】
図5に示すグラフの内容を利用する場合、例えば(ID=2)の電波(無線基地局No.2からの電波)の電界強度がE2、(ID=5)の電波(無線基地局No.5からの電波)の電界強度がE5、(ID=1)の電波(無線基地局No.1からの電波)の電界強度がE1、(ID=4)の電波(無線基地局No.4からの電波)の電界強度がE4であるとすると、図5に示すグラフの内容から、無線基地局No.2までの距離はD2、無線基地局No.5までの距離はD5、無線基地局No.1までの距離はD1、無線基地局No.4までの距離はD4としてそれぞれ求めることができる。
【0058】
各無線基地局(10〜20)の位置は既知(位置が固定されておりその位置情報も予め取得している)であるので、図6に示すように水平面上での監視カメラとその周辺の各無線基地局との位置関係を求めることができる。すなわち、水平面上の各位置に無線基地局を置き、各無線基地局を中心に図5で求めた距離に相当する円を描く。図6のように円が重なった位置が距離条件を満足するので、同図の水平/垂直軸の交点が監視カメラの設置位置と分かる。
【0059】
次に基地局角度の定め方について説明する。図7に示すように、基準軸はカメラ位置を通り、建物の壁等と平行な方向として定義する。そして、カメラ位置において、基準軸と各基地局方向との角度を各基地局角度とする。図7においては、無線基地局No.1、No.2、No.4、No.5の各基地局角度はそれぞれΘb1、Θb2、Θb4、Θb5と求まる。
【0060】
次に水平面内のカメラ角度について説明する。この例では、図8に示すようにカメラ位置における基地局方向とカメラ撮影方向との相対的な角度をカメラ角度として定義する。つまり、監視カメラから見た各無線基地局の方向がカメラの撮影方向に対してどれだけずれているかをカメラ角度として表している。
【0061】
次に、水平面内のカメラ角度の求め方について説明する。図9に示すグラフにおいては、横軸がカメラ角度を表し、縦軸が指向性アンテナと無指向性アンテナの受信電波強度を表している。
【0062】
例えばカメラ角度が0度の場合、指向性アンテナの感度が最も良好な方向に無線基地局があるので、このときの受信強度比(指向性アンテナの受信強度/無指向性アンテナの受信強度)を基準値0dBとする。一方、指向性アンテナと無指向性アンテナの受信強度が異なり前記受信強度比が0dBにならない場合は、所定の補正係数(定数)を乗算することにより0dBに補正する。
【0063】
指向性アンテナとしては八木アンテナが想定されるので、その指向性(利得)は感度が良好は正面方向に対する角度が±90度で0となり±180度でわずかにゲインが存在するものとなる。したがって、カメラ角度と前記の乗算定数で補正後の指向性アンテナの受信強度/無指向性受信強度の関係は、図9に示すように0度で0dB、±90度で−∞、±180度で0dBから−∞までのいずれかに存在するような関係となる。
【0064】
そこで、図9に示すようにカメラ角度の候補を求める。例えば、無線基地局No.2に対するカメラ角度の候補を以下のように求める。Gb2=無線基地局No.2に対する指向性アンテナの受信強度/無指向性アンテナでの受信強度とする。但しGb2はカメラ角度が0度のとき0dBとなるよう補正した値とする。同図の縦軸の値がGb2となるカメラ角度±Θc2が候補となる。また、無線基地局No.1に対するカメラ角度の候補を以下のように求める。Gb1=無線基地局No.1に対する指向性アンテナの受信強度/無指向性アンテナでの受信強度とし、グラフから±Θc1、±Θc1'が候補として求まる。以下同様にして無線基地局No.5に対するカメラ角度の候補±Θc5、±Θc5'、無線基地局No.4に対するカメラ角度の候補±Θc4、±Θc4'を求める。
【0065】
次に、カメラ方向を求める方法について図10を参照しながら説明する。図10においては、横軸が前記基準軸からの角度を表し、横軸上に基地局角度Θbn(n=1,2,3,4,5)と各基地局角度に対するカメラ角度候補の加算を記載してある。無線基地局No.2について基地局角度Θb2にカメラ角度の候補±Θc2を加えたΘb2+Θc2、Θb2−Θc2がカメラ方向の候補となる。無線基地局No.1についても基地局角度Θb1にカメラ角度の候補±Θc1、±Θc1'を加えたΘb1+Θc1、Θb1−Θc1、Θb1+Θc1'、Θb1−Θc1'が最終的なカメラ方向の候補となる。無線基地局No.5、無線基地局No.4についても同様にしてカメラ方向の候補を求める。以上の方法でカメラ方向の候補が複数求まるが、全ての無線基地局について、基地局角度+カメラ角度の候補が一致するΘcがカメラ方向として求まる。カメラ撮影方向は基準軸からΘc相当回転させた方向である。
【0066】
上述したように、本実施形態の映像監視システムは、例えばIPネットワーク上に接続されたネットワークカメラなどを利用して映像を撮影し監視する場合に、設置場所や撮影方向などが事前に判明していないか、あるいは設置場所や撮影方向などが変化する可能性のあるような未知の監視カメラを利用して様々な地点の映像を監視しようとするような用途に利用することができる。この際、監視カメラの情報収集を自動化することが可能であり、各監視カメラの位置と撮影方向を自動的に監視サーバに集めて、カメラアドレス、位置、撮影方向のデータベースを構築することができる。また、監視画面にカメラの位置や方向を表示させることができるので、監視モニタに表示さている映像がどの部分からどの方向を撮影したものかを容易に判別できる。よって、カメラをパン、チルト、回転等の動作をさせることなく、撮影位置や撮影方向を検出することができる。また、特定の位置の映像に切り替えたい場合も、前記データベースを利用して簡単に実施でき、監視用システムの高機能化、省力化に効果が大きい。
【0067】
なお、本発明は上記の実施形態において示されたものに限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、カメラをパン、チルト、回転等の動作をさせることなく撮影位置や撮影方向を検出することが可能となる効果を有し、少なくとも1つの監視カメラが撮影して得られた映像を監視するための映像監視システム等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に係る映像監視システム全体の構成例を示す構成図
【図2】映像監視システムに設けられる監視カメラ及びそれに付加された無線モジュールの位置関係に関する第1構成例を示す図
【図3】映像監視システムに設けられる監視カメラ及びそれに付加された無線モジュールの位置関係に関する第2構成例を示す図
【図4】本実施形態の映像監視システムの主要部に関する具体的な構成例を示すブロック図
【図5】指向性アンテナの受信電波の強度と無線基地局との距離の関係を示すグラフ
【図6】各無線基地局からの距離の条件からカメラ設置位置を求めるための位置関係を表す平面図
【図7】建物の壁方向等を基準軸としカメラ位置における基準軸と無線基地局方向の角度である基地局角度との関係を表す平面図
【図8】カメラ位置における基地局方向とカメラ撮影方向の角度であるカメラ角度を表す平面図
【図9】指向性アンテナと無指向性アンテナの受信感度の比からカメラ角度の候補を求めるためのカメラ角度と電界強度との関係を表すグラフ
【図10】カメラ角度の候補と基地局角度との関係を表す模式図
【符号の説明】
【0070】
10 無線基地局(No.1)
12 無線基地局(No.2)
14 無線基地局(No.3)
16 無線基地局(No.4)
18 無線基地局(No.5)
20 無線基地局(No.6)
30 監視カメラ(A)
32 監視カメラ(B)
34 位置方向情報検出モジュール
36 位置方向情報検出モジュール
40 ハブ(No.1)
42 ハブ(No.2)
44 ハブ(No.3)
50 監視サーバ
52 監視モニタ
100 監視カメラ
102 アンテナモジュール
104 無指向性アンテナ
106 指向性アンテナ
108 シリアル通信ケーブル
110 発光装置
200 アンテナモジュール筐体
202 無指向性アンテナ用無線受信LSI
204 指向性アンテナ用無線受信LSI
206 CPU
208 メモリ
210 シリアルIF
300 カメラ筐体
302 CPU
304 メモリ
306 シリアルIF
308 レンズ
310 CCD
312 信号処理部
314 符号化部
316 ネットワークIF
400 監視サーバ筐体
402 ネットワークIF
404 CPU
406 デコーダ(1)
408 デコーダ(2)
410 デコーダ(3)
412 デコーダ(4)
414 位置・方向検出CPU
416 メモリ
418 画面合成部
420 アドレス・位置・方向データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの監視カメラが撮影して得られた映像を監視するための映像監視システムであって、
前記監視カメラにおける撮影位置及び撮影方向を把握するための管理データを与える情報付加部と、
前記管理データを収集して監視カメラとその位置を特定するデータ収集部と、
前記管理データを収集する際に送信元アドレスと前記管理データに含まれる位置及び方向の情報とを関連付けて所定のデータベースに登録するデータ登録制御部と、
を備える映像監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の映像監視システムであって、
前記情報付加部は、それぞれ個別IDの情報を電波として送出する複数の電波送出装置からの電波を受信する指向性アンテナと無指向性アンテナと、前記指向性アンテナ及び無指向性アンテナにより受信した電波の信号を処理して前記管理データを生成する管理データ生成部とを備える映像監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の映像監視システムであって、
前記管理データ生成部は、前記指向性アンテナ及び無指向性アンテナによる受信信号から各電波送出装置のIDと電波受信強度の情報を取得するモジュール化した検出回路を備え、前記検出回路を前記監視カメラの本体に対して脱着自在に構成した映像監視システム。
【請求項4】
請求項1に記載の映像監視システムであって、
前記監視カメラの撮影範囲に含まれる位置に発光装置を設け、
前記管理データもしくはそれの生成に利用可能な情報に応じて前記発光装置の発光状況を制御する発光制御部を備える映像監視システム。
【請求項5】
請求項1に記載の映像監視システムであって、
前記監視カメラ及び前記データ収集部は、それぞれ所定のIPネットワークと接続するための通信部を備える映像監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−302717(P2009−302717A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152748(P2008−152748)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】