説明

映像表示装置及びヘッドマウントディスプレイ

【課題】防塵性及び防水性を備えた小型で軽量なシースルー性を有する映像表示装置を提供することである。
【解決手段】映像表示装置1は、映像を表示する表示素子14と、表示素子14に表示された映像の光を光学瞳Eに導くとともに、透過して外界も見ることができる接眼プリズム17と、表示素子14と接眼プリズム17の一部とを内包するとともに保持する筐体15と、接眼プリズム17の周囲の映像光が反射しない部分及び筐体15に接するように第1のパッキン4aを設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子にて表示された映像を虚像として観察者に提供する映像表示装置と、その映像表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも称する)とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、いわゆるHMDと呼ばれる頭部搭載型の映像表示装置が種々提案されている。近年、HMDは一般民生品としての利用だけでなく、様々な情報をユーザに提供することにより業務を円滑に行うことを支援する用途にも利用されはじめている。そして、その利用環境によっては一般民生用途では必要でない機能を必要とされることがある。例えば、屋外での利用を想定した場合、防塵性や防水性が望まれ、これらの機能を付加した技術もいくつか提案されている。
【0003】
例えば特許文献1のHMDには、二次元映像を表示するための素子であるLCD及びこのLCDを照明するためのバックライトが内蔵されている。また、LCD及びバックライトはLCDホルダにより一体的に保持され、さらにこのLCDホルダは固定部材に取り付けられている。固定部材にはプリズム及びバックライトを駆動するための基板が固定されている。プリズムの第1面とLCDホルダとの間には防塵部材が配置され、LCDの映像射出面上及びプリズムの第1面上に塵埃等の汚れが付着することを防止している。
【0004】
また特許文献2の頭部装着型表示装置では、虚像形成ユニットを側面形状が略台形の筐体内に収納して一体化している。そして、筐体の使用者側後面には画像光を出射するための開口が形成され、その開口はレンズまたは別の透明な平板により概ね密閉されている。
【特許文献1】特開平11−296095号公報
【特許文献2】特開平9−318905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、映像表示部内部の防塵性は確保されるものの、表示装置全体が大きく重くなってしまい、ユーザが長時間使用することは難しい。また、特許文献2の技術では、筐体とレンズとを合わせているだけなので、その間の防塵性や防水性は不完全である。
【0006】
このように、シースルー性を有する従来の映像表示装置と、その映像表示装置を備えたHMDにおいては、防塵性及び防水性を備えようとすると大型化、重量化していた。
【0007】
本発明は、防塵性及び防水性を備えた小型で軽量なシースルー性を有する映像表示装置を提供することを目的とする。またその映像表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、映像を表示する表示素子と、該表示素子に表示された映像の光を光学瞳に導くとともに、透過して外界も見ることができるプリズムと、前記表示素子と、前記プリズムの一部と、を内包するとともに保持する筐体とを備えた映像表示装置において、前記プリズムの周囲の映像光が反射しない部分及び前記筐体に接するように第1のパッキンを設けたことを特徴とする。
【0009】
この構成によると、第1のパッキンにより、筐体とプリズムとの隙間が塞がれ、その部分の防水性及び防塵性が確保されるとともに、パッキンが映像光の反射を妨げることもない。
【0010】
上記の映像表示装置において、具体的に前記第1のパッキンは、前記筐体と前記プリズムとの隙間に設ければよい。
【0011】
また上記の映像表示装置において、前記筐体が複数の部品からなり、複数の部品のうち外観部分を有する各部品同士の嵌合部に第2のパッキンを設けることが望ましい。一般的な筐体の構成において筐体部品間の防水性及び防塵性を確保するためである。
【0012】
また上記の映像表示装置において、前記表示素子と電気的に接続して駆動電力及び映像信号を供給するケーブルと、該ケーブルを貫通させて固定するとともに、前記筐体に挟まれて前記ケーブルを保持するブッシュとを備え、該ブッシュと前記第2のパッキンとが一体である構成とすることが望ましい。
【0013】
ブッシュと第2のパッキンとを一体成型することにより、簡素な構造となる。さらに、第1のパッキンも一体成型してもよい。
【0014】
また上記の映像表示装置において、前記表示素子と電気的に接続して駆動電力及び映像信号を供給するケーブルと、該ケーブルを貫通させて固定し、前記筐体に挟まれて前記ケーブルを保持するブッシュとを備え、該ブッシュと前記第1のパッキンとが一体である構成とすることが望ましい。
【0015】
ブッシュと第1のパッキンとを一体成型することにより、簡素な構造となる。
【0016】
また上記の映像表示装置において、前記プリズムに前記第1のパッキンの位置を規制する規制部を形成することが望ましい。
【0017】
規制部を設けることにより、組み立て時のプリズムの位置決めが容易になるとともに、使用によるずれも生じない。また、ずれが生じないことから、第1のパッキンが、映像光が反射する部分に接触することを防止できる。
【0018】
また本発明は、映像を表示する表示素子と、該表示素子に表示された映像の光を光学瞳に導くとともに、透過して外界も見ることができるプリズムと、前記表示素子と、前記プリズムの一部と、を内包するとともに保持する筐体とを備えた映像表示装置において、前記筐体が複数の部品からなり、複数の部品のうち外観部分を有する部品はゴムとプラスチックからなり、ゴム部分の少なくとも一部は前記プリズムの周囲の映像光が反射しない部分及び前記外観部分を有する各部品同士の嵌合部に接することを特徴とする。
【0019】
この構成によると、筐体のゴム部分により、筐体とプリズムとの隙間及び筐体部品間の隙間が塞がれ、その部分の防水性及び防塵性が確保されるとともに、プリズムに接触する筐体部分が映像光の反射を妨げることもない。
【0020】
また上記の映像表示装置において、体積位相型のホログラム光学素子を備え、該ホログラム光学素子は、前記表示素子からの映像光を回折反射させて光学瞳に導くと同時に、外光を透過させて光学瞳に導くことが望ましい。
【0021】
ホログラム光学素子により、明るい映像を見ながら、外界も観察しやすくなる。
【0022】
また上記の映像表示装置において、前記プリズムは、前記表示素子からの映像光を内部で全反射させて光学瞳に導く一方、外光を透過させて光学瞳に導く第1の透明基板と、該第1の透明基板での外光の屈折をキャンセルするための第2の透明基板とを有することが望ましい。
【0023】
この構成によると、明るい映像と明るく自然な外界とを観察することができる。また、ホログラム光学素子の露出がなく取り扱いが容易になる。
【0024】
また本発明のヘッドマウントディスプレイは、上記の何れかに記載の映像表示装置と、前記映像表示装置を観察者の眼前で支持する支持手段とを備えたことを特徴とする。これにより、頭部装着を可能としている。
【0025】
上記のヘッドマウントディスプレイにおいて、前記支持手段は、観察者の側頭部に当接する左右一対のテンプルと、各テンプルを回動可能に支持するとともに、前記映像表示装置を支持するフレームと、観察者の鼻に当接する鼻当てとを有することが望ましい。
【0026】
これにより、眼鏡のように装着することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、パッキンを用いることにより、大型化、重量化することなく、筐体とプリズムとの隙間、筐体部品同士の嵌合部に生じる隙間を塞ぎ、防水性、防塵性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(1.HMDについて)
図1は、本実施形態に係るHMDの概略の構成を示す斜視図であり、図2は、HMDを観察者が装着した状態でのHMDの側面図である。HMDは、映像表示装置1と、支持手段2と、ケーブル3とを有して構成されている。
【0029】
映像表示装置1は、映像を表示して観察者に提供するものであり、支持手段2は、映像表示装置1を観察者の眼前で支持する。本実施形態では、支持手段2は、映像表示装置1を観察者の右眼の前に位置するように支持しているが、映像表示装置1を2つ設け、これらを両眼の前に位置するように支持してもよい。いずれにしても、映像表示装置1を支持手段2で支持することにより、観察者は映像表示装置1に表示される映像をハンズフリーで観察することが可能となる。ケーブル3は、外部の制御手段と映像表示装置1とを接続し、制御手段からの少なくとも駆動電力および映像信号を映像表示装置1に供給する。以下、映像表示装置1および支持手段2について詳細に説明する。
【0030】
(2.映像表示装置について)
図3は、映像表示装置1の概略の構成を示す断面図であり、図4は、図3の映像表示装置1の分解斜視図である。映像表示装置1は、光源11と、一方向拡散板12と、集光レンズ13と、表示素子14と、接眼光学系16とを有している。光源11、一方向拡散板12、集光レンズ13および表示素子14は、筐体15内にユニット10として収容されており、接眼光学系16の一部(後述する接眼プリズム17の一部)も筐体15内に位置している。上記したケーブル3は、筐体15を貫通して設けられ、光源11や表示素子14に駆動電力や映像信号が供給される。
【0031】
なお、以下での説明の便宜上、方向を以下のように定義しておく。まず、表示素子14の表示領域の中心と、接眼光学系16によって形成される光学瞳Eの中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とする。そして、光源11から光学瞳Eまでの光路を展開したときの光軸方向をZ方向とする。また、接眼光学系16の後述するホログラム光学素子19への光軸の入射面に垂直な方向をX方向とし、ZX平面に垂直な方向をY方向とする。なお、ホログラム光学素子19への光軸の入射面とは、ホログラム光学素子19における入射光の光軸と反射光の光軸とを含む平面、すなわち、YZ平面を指す。以下、上記入射面を単に入射面または光軸入射面と称する。なお、本実施形態では、XYZの各方向において正負は問わないものとする。
【0032】
光源11は、表示素子14を照明するものであり、例えば、光強度のピーク波長および光強度半値の波長幅で462±12nm(B光)、525±17nm(G光)、635±11nm(R光)となる3つの波長帯域の光を発するRGB一体型のLEDで構成されている。このように、光源11が所定の波長幅の光を出射することにより、表示素子14を照明して得られる映像光に所定の波長幅を持たせることができ、後述するホログラム光学素子19にて映像光を回折させたときに、光学瞳Eの位置にて観察画角全域にわたって観察者に映像を観察させることができる。また、光源11の各色についてのピーク波長は、ホログラム光学素子19の後述する回折効率のピーク波長の近傍に設定されており、光利用効率の向上が図られている。
【0033】
また、光源11は、RGBの光を出射するLEDで構成されているので、光源11を安価に実現することができるとともに、表示素子14を照明したときに、表示素子14にてカラー映像を表示することが可能となり、そのカラー映像を観察者に提供することが可能となる。また、各LEDは、発光波長幅が狭いので、そのようなLEDを複数用いることにより、色再現性が高く、明るい映像表示が可能となる。
【0034】
一方向拡散板12は、光源11からの出射光を拡散させるものであるが、その拡散度は方向によって異なっている。より詳細には、一方向拡散板12は、X方向には入射光を約40゜拡散させ、Y方向には入射光を約0.5゜拡散させる。なお、一方向拡散板12の配置を省略することも可能である。
【0035】
集光レンズ13は、一方向拡散板12にて拡散された光をY方向に集光するシリンダレンズで構成されており、その拡散光が効率よく光学瞳Eを形成するように配置されている。
【0036】
表示素子14は、光源11からの出射光を画像データに応じて変調して映像を表示するものであり、光が透過する領域となる各画素をマトリクス状に有する透過型の液晶表示素子で構成されている。表示素子14は、矩形の表示領域の長辺方向がX方向となり、短辺方向がY方向となるように配置されている。なお、表示素子14は、反射型であってもよい。反射型の表示素子14としては、例えば反射型の液晶表示素子や、DMD(Digital Micromirror Device;米国テキサスインスツルメント社製)を用いることができる。
【0037】
接眼光学系16は、表示素子14に表示された映像の光を光学瞳Eに導き、表示素子14の表示映像の拡大虚像を観察者に提供する拡大光学系であり、接眼プリズム17(第1の透明基板)と、偏向プリズム18(第2の透明基板)と、ホログラム光学素子19とを有して構成されている。
【0038】
接眼プリズム17は、面17aを介して入射する表示素子14からの映像光を、対向する2つの面17b・17cで全反射させ、ホログラム光学素子19を介して観察者の瞳に導く一方、外光を透過させて観察者の瞳に導くものであり、偏向プリズム18とともに、例えばアクリル系樹脂で構成されている。この接眼プリズム17は、平行平板の下端部を下端に近くなるほど薄くして楔状にし、その上端部を上端に近くなるほど厚くした形状で構成されている。また、接眼プリズム17は、その下端部に配置されるホログラム光学素子19を挟むように、偏向プリズム18と接着剤で接合されている。
【0039】
偏向プリズム18は、平面視で略U字型の平行平板で構成されており(図1、図4参照)、接眼プリズム17の下端部および両側面部(左右の各端面)と貼り合わされたときに、接眼プリズム17と一体となって略平行平板となるものである。この偏向プリズム18を接眼プリズム17に接合することにより、観察者が接眼光学系16を介して観察する外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0040】
つまり、例えば、接眼プリズム17に偏向プリズム18を接合させない場合、外光は接眼プリズム17の楔状の下端部を透過するときに屈折するので、接眼プリズム17を介して観察される外界像に歪みが生じる。しかし、接眼プリズム17に偏向プリズム18を接合させて一体的な略平行平板を形成することで、外光が接眼プリズム17の楔状の下端部を透過するときの屈折を偏向プリズム18でキャンセルすることができる。その結果、シースルーで観察される外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0041】
なお、接眼プリズム17および偏向プリズム18の互いに対向する2面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。後者の場合、接眼光学系16に矯正眼鏡レンズとしての機能を持たせることができる。
【0042】
ホログラム光学素子19は、表示素子14から出射される映像光(3原色に対応した波長の光)を回折反射して光学瞳Eに導き、表示素子14に表示される映像を拡大して観察者の瞳に虚像として導く体積位相型の反射型ホログラムである。このホログラム光学素子19は、例えば、回折効率のピーク波長および回折効率半値の波長幅で465±5nm(B光)、521±5nm(G光)、634±5nm(R光)の3つの波長域の光を回折(反射)させるように作製されている。ここで、回折効率のピーク波長とは、回折効率がピークとなるときの波長のことであり、回折効率半値の波長幅とは、回折効率が回折効率ピークの半値となるときの波長幅のことである。
【0043】
反射型のホログラム光学素子19は、高い波長選択性を有しており、上記波長域(露光波長近辺)の波長の光しか回折反射しないので、回折反射される波長以外の波長を含む外光はホログラム光学素子19を透過することになり、高い外光透過率を実現することができる。
【0044】
また、ホログラム光学素子19は、軸非対称な正の光学パワーを有している。つまり、ホログラム光学素子19は、正のパワーを持つ非球面凹面ミラーと同様の機能を持っている。これにより、装置を構成する各光学部材の配置の自由度を高めて装置を容易に小型化することができるとともに、良好に収差補正された映像を観察者に提供することができる。
【0045】
筐体15は、上側の第1筐体15aと、下側の第2筐体15bとを嵌合し、ビス止めするようになっている。なお、筐体15は3つ以上の部品を嵌合することにより構成してもよい。そして、第1筐体15aと第2筐体15bとの間及び筐体15と接眼プリズム17との間には、パッキン4が設けられている。パッキン4は、筐体15と接眼プリズム17との間に位置する第1のパッキン4aと、第1筐体15aと第2筐体15bとの間に位置する第2のパッキン4bとが一体成型されたものである。
【0046】
第1のパッキン4aは、接眼プリズム17の周囲の映像光が反射しない部分及び筐体15に接するように設けられており、具体的には筐体15と接眼プリズム17との隙間に設けられている。この第1のパッキン4aにより、筐体15と接眼プリズム17との隙間が塞がれ、その部分の防水性及び防塵性が確保される。
【0047】
もし、第1のパッキン4aを映像光が反射する部分に接するように設ければ、本来反射すべき映像光の一部が第1のパッキン4aに吸収されてしまい、所望の映像が得られなくなる。そのため、接眼プリズム17の映像光が反射する部分は、パッキン4も筐体15も接触しない構造になっている。つまり、その部分には空気層が設けられている。
【0048】
また、接眼プリズム17の筐体15に内包された部分であって、映像光が入射及び反射しない部分は、黒又はそれに類する色とすることが望ましい。散乱した不要光を吸収して鮮明な映像を得るためである。また、第1のパッキン4aを黒又はそれに類する色としたり、第1のパッキン4aの接眼プリズム17との接触面を黒又はそれに類する色とすることも有効である。
【0049】
また、接眼プリズム17の両側面に第1のパッキン4aの位置を規制する規制部である溝17d、17dが形成されている。溝17dがあることにより、第1のパッキン4aの側部分が溝17dに嵌合するので、組み立て時の接眼プリズム17の位置決めが容易になるとともに、使用によるずれも生じない。また、ずれが生じないことから、第1のパッキン4aが、映像光が反射する部分に接触することを防止できる。なお、溝17dは少なくとも何れか一方が形成されていればその効果を得ることができる。この規制部の形状は溝17dに限定されることはなく、第1のパッキン4aの位置を規制できる形状であればよく、例えば、溝の一方の突起を省略した片溝形状などとしてもよい。
【0050】
第2のパッキン4bは、複数の筐体部品のうち外観部分を有する筐体部品(ここでは2つ)同士の嵌合部に沿って設けられる。この第2のパッキン4bにより、外観部分を有する筐体部品同士の隙間が塞がれ、外観部分の防水性及び防塵性が確保される。また、ケーブル3を貫通させて固定するとともに、第1筐体15aと第2筐体15bとに挟まれてケーブル3を保持するブッシュ5が、第2のパッキン4bと一体成型されている。ブッシュ5により、ケーブル3が曲げ半径の小さい屈曲によって断線することを防止できる。また、ブッシュ5と第2のパッキン4bとを一体成型することにより、簡素な構造となる。なお、ブッシュ5は第2のパッキン4bと別体であっても何ら問題はない。
【0051】
パッキン4及びブッシュ5は、易加工性、易装着性、防水性、防塵性などの観点からゴムなどの弾性体を用いることが好ましい。また、パッキン4としては、接着剤やコーキングを用いてもよい。
【0052】
次に、筐体の他の形態について説明する。図5は、映像表示装置1の他の例の概略構成を示す断面図であり、図6は、図5の映像表示装置1の分解斜視図である。以下では上記の実施形態と異なる箇所のみ説明し、同様の構成部分については説明を省略する。
【0053】
筐体15は、上側の第1筐体15aと、下側の第2筐体15bと、それらを覆う上側の第3筐体15cと、下側の第4筐体15dとからなり、第1筐体15aと第2筐体15bとが嵌合し、第3筐体15cと第4筐体15dとが嵌合するようになっている。ここで、第1及び第2筐体15a、15bはプラスチックからなり、第3及び第4筐体15c、15dはゴムなどの弾性体からなる。そして、第3及び第4筐体15c、15dは第1及び第2筐体15a、15bの外面全体を覆うように設けられている。したがって、第1及び第2筐体15a、15b同士の隙間が第3及び第4筐体15c、15dに覆われ、その部分の防水性及び防塵性が確保される。
【0054】
なお、第3及び第4筐体15c、15dは第1及び第2筐体15a、15bの内側を覆うように設けても問題はない。
【0055】
また、第1〜第4筐体15a〜15dの端部は、それぞれ接眼プリズム17の周囲の映像光が反射しない部分に接する構造になっている。これにより、接眼プリズム17と筐体15との隙間が塞がれ、その部分の防水性及び防塵性が確保される。また、ブッシュ5が、筐体15とは別体になっている。なお、ブッシュ5は第3又は第4筐体15c、15dと一体成型すれば、簡素な構造とすることができる。
【0056】
また、散乱した不要光を吸収して鮮明な映像を得るため、筐体15を黒又はそれに類する色としたり、筐体15の接眼プリズム17との接触面を黒又はそれに類する色とすることも有効である。
【0057】
このように、パッキン4又は第3及び第4筐体15c、15dを用いることにより、大型化、重量化することなく、筐体15と接眼プリズム17との隙間、筐体部品同士の嵌合部に生じる隙間を塞ぎ、防水性、防塵性を付与することができる。
【0058】
次に、上記構成の映像表示装置1の動作について説明する。光源11から出射された光は、一方向拡散板12にて拡散され、集光レンズ13にて集光されて表示素子14に入射する。表示素子14に入射した光は、画像データに基づいて各画素ごとに変調され、映像光として出射される。つまり、表示素子14には、カラー映像が表示される。
【0059】
表示素子14からの映像光は、接眼光学系16の接眼プリズム17の内部にその上端面(面17a)から入射し、対向する2つの面17b・17cで複数回全反射されて、ホログラム光学素子19に入射する。ホログラム光学素子19に入射した光は、そこで反射され、面17bを透過して光学瞳Eに達する。光学瞳Eの位置では、観察者は、表示素子14に表示された映像の拡大虚像を観察することができる。
【0060】
一方、接眼プリズム17、偏向プリズム18およびホログラム光学素子19は、外光をほとんど全て透過させるので、観察者はこれらを介して外界像を観察することができる。したがって、表示素子14に表示された映像の虚像は、外界像の一部に重なって観察されることになる。
【0061】
このように、映像表示装置1では、表示素子14から出射される映像光を接眼プリズム17内での全反射によって導光し、ホログラム光学素子19を介して観察者の瞳に導くので、通常の眼鏡レンズと同様に、接眼プリズム17および偏向プリズム18の厚さを3mm程度にすることができ、映像表示装置1を小型化、軽量化することができる。また、表示素子14からの映像光を内部で全反射させる接眼プリズム17を用いることにより、高い外光の透過率を確保して、明るい外界像を観察者に提供することができる。
【0062】
また、体積位相型の反射型のホログラム光学素子19は、回折効率半値の波長幅が狭く、回折効率が高いので、このようなホログラム光学素子19を用いることにより、色純度が高く、明るい映像を提供することができるとともに、外光の透過率が高くなるので、観察者は明るい外界像を観察することができる。
【0063】
また、上記の説明からもわかるように、ホログラム光学素子19は、表示素子14からの映像光と外光とを同時に観察者の瞳に導くコンバイナとして機能している。これにより、観察者は、ホログラム光学素子19を介して、表示素子14から提供される映像と外界像とを同時に観察することができる。
【0064】
(3.支持手段について)
次に、支持手段2について、図1および図2に基づいて説明する。
支持手段2は、テンプル21と、フレーム22とを有している。テンプル21は、観察者の側頭部に当接する左右一対のテンプル21R・21Lからなっている。フレーム22は、各テンプル21R・21Lを回動可能に支持するとともに、上記した映像表示装置1を支持するものであり、略T字形で形成されている。テンプル21およびフレーム22は、例えば樹脂で構成されており、可撓性を有している。また、フレーム22には、観察者の鼻と当接する左右一対の鼻当て23が設けられている。
【0065】
本実施形態では、テンプル21Rは、第1テンプル部21R1と、第2テンプル部21R2とが一体化されて構成されている。同様に、テンプル21Lは、第1テンプル部21L1と、第2テンプル部21L2とが一体化されて構成されている。第1テンプル部21R1・21L1および第2テンプル部21R2・21L2は、それぞれ、前後方向に長尺状に形成されており、第2テンプル部21R2・21L2は、第1テンプル部21R1・21L1よりも若干長く形成されている。
【0066】
第1テンプル部21R1・21L1は、フレーム22の左右端において、フレーム22に対してそれぞれ回動可能に連結されているとともに、第2テンプル部21R2・21L2に対して前方にずれた状態でその上方に位置するように連結されている。
【0067】
第2テンプル部22R2・21L2は、第1テンプル部21R1・21L1を介してフレーム22に支持されている。第2テンプル部21R2は、前後方向に移動可能にイヤホン25を保持するイヤホン保持部24を有しており、観察者はイヤホン保持部24にイヤホン25を保持させたまま(イヤホン25を耳に差し込まなくても)、音声を聞くことが可能となっている。
【0068】
また、第2テンプル部22R2・21L2は、フレーム22に対する第1テンプル部21R1・21L1の支持位置とは異なる高さ位置で前方に露出する露出面21RS・21LSを有している。そして、上述したケーブル3は、例えば第2テンプル部21R2の内部を通り、露出面21RSから引き出されて映像表示装置1と接続されている。このような接続方式により、以下の第1〜第4の効果を得ることができる。
【0069】
第1に、ケーブル3は、テンプル21R(第2テンプル部21R2)で一旦支持された状態で映像表示装置1と接続されるので、ケーブル3が映像表示装置1に直接接続される場合のように、ケーブル3の重量が映像表示装置1に直接加わることがない。その結果、観察者がHMDを長時間使用しても、疲労感や不快感が増大するのを回避することができ、長時間使用における観察者の使用負担を軽減することができる。
【0070】
特に、本実施形態では、テンプル21Rが第1テンプル部21R1と第2テンプル部21R2との2段構成であるので、テンプル21Rにおいてフレーム22で支持される位置(第1テンプル部21R1とフレーム22との連結位置)と、露出面21RSの位置とを高さ方向に確実に異ならせることができる。これにより、フレーム22と第1テンプル部21R1とを回動可能に連結した状態で、ケーブル3を第2テンプル部21R2の内部から露出面21RSを介して外部に引き出すことが確実に可能となり、上記の接続方式を採用することが確実に可能となる。
【0071】
第2に、テンプル21Rは、観察者の側頭部との当接により、安定した状態でケーブル3を支持することができるので、本実施形態のように一方のテンプル21Rでケーブル3を支持する場合でも、観察者は安定してHMDを装着することが可能となる(HMDが前後左右にぐらつくことはない)。
【0072】
第3に、ケーブル3は、テンプル21Rの露出面21RSを介してフレーム22とは異なる高さ位置を通ることになるので、フレーム22に対するテンプル21Rの回動時に、ケーブル3が回動部分に巻き付き、テンプル21Rの回動を阻害することはない。したがって、テンプル21Rを容易に折りたたむことが可能となる。
【0073】
第4に、ケーブル3がフレーム22の内部を通らないので、フレーム22を必要以上に太く形成しなくても済む。これにより、フレーム22が観察者の頭部の大きさに合わせて変形しやすくなり、観察者はHMDを安定して違和感なく装着することが可能となる。
【0074】
また、ケーブル3は、図2に示すように、第2テンプル部21R2において観察者の耳と接触する位置よりも後方の位置から、第2テンプル部21R2の内部に進入している。これにより、ケーブル3は観察者の耳よりも後方で垂れ下がるので、観察者の耳を基準とした前後方向の重量バランスを良好にすることができ、観察者の使用負担を確実に軽減することができる。また、ケーブル3が観察者の側方の視界を遮って邪魔になることもなくなる。
【0075】
また、第1テンプル部21R1および第2テンプル部21R2は、前後方向に長尺状に形成されており、かつ、第1テンプル部21R1が第2テンプル部21R2に対して前方にずれた状態で互いに連結されているので、第1テンプル部21R1および第2テンプル部21R2を、必要最小限の厚さ(高さ)でそれぞれ細く形成して、テンプル21R全体を小型で軽量にすることができる。それに加えて、フレーム22に対して第1テンプル部21R1を回動させたときに、第2テンプル部21R2が第1テンプル部21R1よりも内側に折りたたまれ、第2テンプル部21R2が外に張り出すことがなく、HMDをコンパクトに収納することが可能となる。
【0076】
また、第1テンプル部21R1は、第2テンプル部21R2よりも上方に位置しているので、観察者の頭部へのHMDの装着時には(第2テンプル部21R2が観察者の耳の上部に位置するときには)、第1テンプル部21R1は、観察者の眼よりも上方に位置することになる。したがって、少なくとも観察者の前方から側方にかけて、第1テンプル部21R1と連結されるフレーム22を観察者の眼よりも上方に位置させることができ、観察者の視界を広く確保することが可能となる。また、観察者が一般の眼鏡をかけた状態でも、HMDのフレーム22が眼鏡のテンプルやフレームと干渉しにくくなり、HMDと眼鏡との併用が容易となる。
【0077】
ところで、第2テンプル部21R2・21L2において、観察者の側頭部と当接する面は、平面または略平面であることが望ましい。本実施形態では、図1に示すように、第2テンプル部21R2・21L2の外形に沿って縁取られた面が平面となっている。これにより、第2テンプル部21R2・21L2は、線接触の場合に比べて、観察者の側頭部との接触面積が大きくなるので、観察者はHMDを安定して装着することが可能となる。また、左右の第2テンプル部21R2・21L2によって頭部を挟む力が分散し、観察者は違和感なくHMDを長時間使用することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の映像表示装置及びヘッドマウントディスプレイは、屋外での利用などのように、防塵性や防水性が必要となる過酷な環境下で使用する製品に特に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の一形態に係るHMDの概略の構成を示す斜視図である。
【図2】観察者が装着した状態での上記HMDの側面図である。
【図3】上記HMDが有する映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。
【図4】上記映像表示装置の分解斜視図である。
【図5】本発明の映像表示装置の他の例の概略の構成を示す断面図である。
【図6】上記映像表示装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0080】
1 映像表示装置
2 支持手段
3 ケーブル
4 パッキン
4a 第1のパッキン
4b 第2のパッキン
14 表示素子
15 筐体
16 接眼光学系
17 接眼プリズム(第1の透明基板)
18 偏向プリズム(第2の透明基板)
19 ホログラム光学素子
21 テンプル
21R テンプル
21R1 第1テンプル部
21R2 第2テンプル部
21L テンプル
21L1 第1テンプル部
21L2 第2テンプル部
22 フレーム
23 鼻当て

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する表示素子と、
該表示素子に表示された映像の光を光学瞳に導くとともに、透過して外界も見ることができるプリズムと、
前記表示素子と、前記プリズムの一部と、を内包するとともに保持する筐体とを備えた映像表示装置において、
前記プリズムの周囲の映像光が反射しない部分及び前記筐体に接するように第1のパッキンを設けたことを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記第1のパッキンは、前記筐体と前記プリズムとの隙間に設けたことを特徴とする請求項1記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記筐体が複数の部品からなり、複数の部品のうち外観部分を有する各部品同士の嵌合部に第2のパッキンを設けたことを特徴とする請求項2記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記表示素子と電気的に接続して駆動電力及び映像信号を供給するケーブルと、
該ケーブルを貫通させて固定するとともに、前記筐体に挟まれて前記ケーブルを保持するブッシュとを備え、
該ブッシュと前記第2のパッキンとが一体であることを特徴とする請求項3記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記表示素子と電気的に接続して駆動電力及び映像信号を供給するケーブルと、
該ケーブルを貫通させて固定するとともに、前記筐体に挟まれて前記ケーブルを保持するブッシュとを備え、
該ブッシュと前記第1のパッキンと前記第2のパッキンとが一体であることを特徴とする請求項3記載の映像表示装置。
【請求項6】
前記プリズムに前記第1のパッキンの位置を規制する規制部を形成したことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の映像表示装置。
【請求項7】
映像を表示する表示素子と、
該表示素子に表示された映像の光を光学瞳に導くとともに、透過して外界も見ることができるプリズムと、
前記表示素子と、前記プリズムの一部と、を内包するとともに保持する筐体とを備えた映像表示装置において、
前記筐体が複数の部品からなり、複数の部品のうち外観部分を有する部品はゴムとプラスチックからなり、ゴム部分の少なくとも一部は前記プリズムの周囲の映像光が反射しない部分及び前記外観部分を有する各部品同士の嵌合部に接することを特徴とする映像表示装置。
【請求項8】
体積位相型のホログラム光学素子を備え、
該ホログラム光学素子は、前記表示素子からの映像光を回折反射させて光学瞳に導くと同時に、外光を透過させて光学瞳に導くことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の映像表示装置。
【請求項9】
前記プリズムは、
前記表示素子からの映像光を内部で全反射させて光学瞳に導く一方、外光を透過させて光学瞳に導く第1の透明基板と、
該第1の透明基板での外光の屈折をキャンセルするための第2の透明基板とを有することを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の映像表示装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の映像表示装置と、
前記映像表示装置を観察者の眼前で支持する支持手段とを備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項11】
前記支持手段は、
観察者の側頭部に当接する左右一対のテンプルと、
各テンプルを回動可能に支持するとともに、前記映像表示装置を支持するフレームと、
観察者の鼻に当接する鼻当てとを有することを特徴とする請求項10記載のヘッドマウントディスプレイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−157290(P2009−157290A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338438(P2007−338438)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】