説明

映像表示装置及び映像表示方法

【課題】
クロマキー合成による映像表示装置において、前景被写体の浮き上がりと、前景被写体と背景との境界域のちらつきを無くした高品質な合成映像を表示可能な映像表示装置と映像表示方法を提供する。
【解決手段】
前景被写体と背景との境界部分における複数画素の透過率を、前景被写体/背景の各基準色の混合率から算出して半透過とし、これら境界部分における複数画素の色データとして境界域に隣接した前景被写体の基準色を採用して合成表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマキー合成による映像表示装置と映像表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のクロマキー合成による映像表示装置では、前景被写体が欠けるのを防止する為、前景被写体と背景との境界域を非透過処理して、実際の前景被写体の外周よりも外側迄切り出して合成表示していた。
【0003】
【特許文献1】特開2000−306091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のクロマキー合成による映像表示装置では、実際の前景被写体の外周よりも外側迄切り出す為、青色や緑色といった背景色の写り込みにより前景被写体が浮き上がって見えるという現象が発生していた。また前景被写体の動きに応じて前景被写体と背景との境界域で細かく透過/非透過が切り替わる為、ちらつきも発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決し、前景被写体の浮き上がりと境界域のちらつきを無くした高品質な合成映像表示装置と映像表示方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決する為に、本発明の映像表示装置は、前景被写体と背景との境界域における複数画素の透過率を、前景被写体と背景の各基準色の混合率から算出して半透過とし、これら複数画素の色データとして境界域に隣接した前景被写体の基準色を採用して表示する事を特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クロマキー合成における前景被写体と背景との境界域の複数画素が、前景被写体色で半透過表示されるので、前景被写体の浮き上がりや境界域のちらつきも無く、自然で高品質な映像表示が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図によって本発明の処理方法を説明する。
【0009】
図1は各ピクセルデータのPbPr値と透過範囲の関係を示す図であり、ピクセルデータをPb、Pr平面上に展開した時、扇形部分1に当たる色のみ透過設定を行い、それ以外の色は非透過として設定し、2値化設定する。
【0010】
この段階での合成イメージを図2として示す。図中の2は前景被写体、3は背景である。本状態では前景被写体の浮き上がりや境界域のちらつきが発生する。
【0011】
図3は本発明によるクロマキー合成の説明図である。上記処理後のデータをX軸(縦方向)、Y軸(横方向)に沿って走査し、透過→非透過、非透過→透過の切り替わりを検出し、切り替わり位置から前景被写体に食い込む方向に、数ピクセルの非透過ピクセルの透過率を例えば99%に設定して、この透過率を境界フラグとして使用する事により境界域5を設定する事で、前景被写体4の輪郭を抽出する。
【0012】
図3における境界域近傍領域7内の1ライン当たりの各ピクセル状態を拡大して図4に示す。本例は境界域5を4ピクセルに設定した例である。
【0013】
上記処理により境界領域として設定された4ピクセルは、背景と前景被写体の最外周が混ざっていると仮定し、まず、X軸方向で、境界域に接する背景のピクセルデータと前景被写体のピクセルデータを基準に混合率を計算し、背景の混合率(%)を透過率(%)として使用する。また、境界域5の色データは、隣接した前景被写体ピクセルの基準色をそのまま使用する。
【0014】
例えば、背景基準色(Y,Pb,Pr)=(127,127,0)、前景基準色(Y,Pb,Pr)=(255,0,-128)、境界域ピクセルデータ(Y,Pb,Pr)=(159,63,-63)の場合、
Y混合率=(255-159)/(255-127)=75%、
Pb混合率=(0-63)/(0-127)=49.6%、
Pr混合率=(-128-(-63))/(-128-0)=50.8%
Y,Pb,Pr平均混合率=(75%+49.6%+50.8%)/3=58.5%
よって補正後の境界域ピクセルデータ=(255,0,-128)、透過率58.5%となる。
【0015】
尚、Y,Pb,Prの各混合率が負の値もしくは100%以上の値であった場合は無効データとして50%として処理する。
【0016】
次に、透過率99%のピクセルをX軸方向の走査で処理されていないとみなし、X軸方向に行った処理をY軸方向に対しても行う。
【0017】
最後に作成された前景被写体の透過率、色データを背景と合成することにより補完した最終合成画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】各ピクセルデータのPbPr値と透過範囲の関係を示す図である。
【図2】従来のクロマキー合成のイメージ図である。
【図3】本発明によるクロマキー合成の説明図である。
【図4】本発明による境界域近傍の拡大説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 扇形部分
2 前景被写体
3 背景
4 前景被写体
5 境界域
6 背景
7 境界域近傍領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマキー合成において、
前景被写体と背景との境界域を検出し、
前記境界域における複数画素の透過率を、前景被写体と背景の各基準色の混合率から算出して半透過とし、
前記境界域における複数画素の色データとして前記境界域に隣接した前景被写体の基準色を採用して合成表示する事を特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記前景被写体と背景との境界域の検出は、
ピクセル毎にPb,Pr平面上の所定の範囲を透過、それ以外の範囲を非透過とする2値化後、
X軸とY軸に沿って各々走査し、透過/非透過の切り替わり位置を検出し、
前記切り替わり位置から所定の数非透過ピクセルを境界域として設定する事を特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記境界域の透過率はY,Pb,Prの算術平均混合率とし、
Y,Pb,Prの各混合率は、前景被写体基準色のデータから境界域ピクセルのデータを減じた値を、前記前景被写体基準色のデータから背景基準色のデータを減じた値で除した各数値であり、この数値が負の値もしくは100%以上の値であった場合は無効データとして50%として処理する事を特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項4】
クロマキー合成において、
前景被写体と背景との境界域を検出し、
前記境界域における複数画素の透過率を、前景被写体と背景の各基準色の混合率から算出して半透過とし、
前記境界域における複数画素の色データとして前記境界域に隣接した前景被写体の基準色を採用して合成表示する事を特徴とする映像表示方法。
【請求項5】
前記前景被写体と背景との境界域の検出は、
ピクセル毎にPb,Pr平面上の所定の範囲を透過、それ以外の範囲を非透過とする2値化後、
X軸とY軸に沿って各々走査し、透過/非透過の切り替わり位置を検出し、
前記切り替わり位置から所定の数非透過ピクセルを境界域として設定する事を特徴とする請求項4に記載の映像表示方法。
【請求項6】
前記境界域の透過率はY,Pb,Prの算術平均混合率とし、
Y,Pb,Prの各混合率は、前景被写体基準色のデータから境界域ピクセルのデータを減じた値を、前記前景被写体基準色のデータから背景基準色のデータを減じた値で除した各数値であり、この数値が負の値もしくは100%以上の値であった場合は無効データとして50%として処理する事を特徴とする請求項4に記載の映像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−113100(P2008−113100A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293433(P2006−293433)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000101330)アストロデザイン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】