説明

映像配信システム、制御方法およびプログラム

【課題】カメラの設置状態に応じてローテーションの制御方法を変更することで、使用者の操作性を向上させるネットワークカメラシステムを提供する。
【解決手段】カメラの撮影アングルを制御端末から制御する映像配信システムであって、映像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段を光軸を中心に回転させるローテーション部を制御するローテーション制御手段と、前記撮影手段の設置状態を判定する設置状態判定手段とを有し、前記設置状態判定手段で判定した前記撮影手段の設置状態に応じて、前記ローテーション制御手段を変更することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像配信システム、制御方法およびプログラムに関し、特に遠隔地で撮影された映像データをネットワークを介して配信するネットワークカメラシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラなどで撮影した映像をインターネットやLANなどのネットワークを介して配信し、遠隔地のクライアント(コンピュータ端末)によりモニタリングを可能としたネットワークカメラシステムが多く提案されている。更に、カメラの映像をモニタリングするだけでなく、クライアント側からカメラのパン、チルト角度などを遠隔制御することにより撮影アングルの変更を可能にしたシステムも広く知られた技術である。
【0003】
このようなネットワークカメラシステムでは、多様な被写体を撮影するためにカメラを設置する場所も様々であり、天井や壁などに設置することを可能とした構造のカメラも多く使用されている。
【0004】
壁などの垂直方向にカメラを設置する場合は、パン、チルト角度の制御だけでは被写体を正立状態に撮影することができないため、レンズの光軸を中心にしてレンズユニット部を回転させるローテーション機構を備えたカメラが使用されている。このようにパン、チルト、ローテーションなどの複数の回転軸を有するカメラにおいては、撮影アングルを調整するために煩雑な操作が必要になるため、各軸を制御する操作部を共通にすることなどで使用者の操作性の問題に対応している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−114503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カメラを天井に設置する場合、設置後の取付け状態が水平であれば、パン、チルトの2軸の回転角度を調整することで被写体を正立に撮影することが可能になる。しかし、カメラのローテーション制御用のUI(ユーザーインターフェース)はカメラの設置状態に関わらず表示されているため、使用者は誤ってローテーションを操作してしまうという問題が生じる。
【0007】
また、カメラを天井に設置する場合、設置後の取付け状態が水平でなければ、ローテーションの回転角度を微調整することで被写体を正立に撮影することが可能になる。しかし、カメラの水平調整のローテーション制御は、撮影アングルの調整方法と同様なので、回転時の角速度が速い、角度の制御範囲が広いなど、微調整することが難しいという問題が生じる。
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、カメラの設置状態に応じてローテーションの制御方法を変更することで、使用者の操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の映像配信システムは、映像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段を光軸を中心に回転させるローテーション駆動を制御するローテーション制御手段と、前記撮影手段の設置状態を判定する設置状態判定手段とを有し、前記設置状態判定手段で判定した設置情報に応じて、前記ローテーション制御手段を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カメラの設置状態に応じてローテーションの制御方法を変更することにより、使用者の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係るネットワークカメラシステムのブロック図である。
【図2】カメラのパン、チルト、ローテーションの動作を示す図である。
【図3】カメラの設置状態と撮影映像との関係を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係るローテーションのUIを変更する処理を示すフローチャートである。
【図5】UIの一例を示す図である。
【図6】映像ウィンドウとアラートパネルの一例を示す図である。
【図7】アラートパネルを表示する処理を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態に係るネットワークカメラシステムのブロック図である。
【図9】第2の実施形態に係るローテーション部の制御を変更する処理を示すフローチャートである。
【図10】カメラの取付け角度とローテーションのUIの一例を示す図である。
【図11】第3の実施形態に係るローテーションのUIを変更する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態では、ネットワークカメラ(以下、カメラ)の設置状態(設置場所)を使用者が事前に設定し、その設定情報に応じてローテーションのUI(ユーザーインターフェース)の表示内容を変更する処理について説明する。
まず、本実施形態のカメラのパン、チルト、ローテーションの機構について、図2を参照して説明する。図2(a)はカメラ110の側面図であり、図2(b)はカメラ110の正面図である。カメラ110はパン、チルト、ローテーションの機構として、パン部112、チルト部113、ローテーション部114を備えている。
パン部112は、ボトムケース201と、ターンテーブル202とで構成され、図示しないモータおよび駆動回路で構成される駆動部によりパン軸203を中心にターンテーブル202が回転する構造である。
チルト部113は、レンズ支柱204と、レンズケース206とで構成され、図示しないモータおよび駆動回路で構成される駆動部によりチルト軸205を中心にレンズケース206が回転する構造である。
ローテーション部114、レンズケース206と、レンズユニット207とで構成され、図示しないモータおよび駆動回路で構成される駆動部によりローテーション軸(光軸)208を中心にレンズユニット207が回転する構造である。
【0013】
図3(a)に示すように、カメラ110は正立設置302、天井設置303、壁掛け設置304など、様々な場所に設置される。カメラ110は、パン部112、チルト部113、ローテーション部114の駆動によって所望の撮影アングルに変更され、被写体301を正立状態で撮影することが可能となる。
【0014】
例えば、正立設置302における撮影映像は図3(b)の映像305のように被写体301は正立状態で撮影される。
また、天井設置303における撮影映像は図3(c)の映像306のように被写体301が倒立状態で撮影される。ただし、映像信号の読み出し順や表示順を変更することにより正立状態の映像に変換することが可能である。
また、壁掛け設置304における撮影映像は図3(d)の映像307のように被写体301が斜めの状態で撮影される。ただし、ローテーション部114によるレンズユニット207の回転によって図3(e)の映像308のように被写体を正立状態に調整することが可能になる。
このようなカメラ110の構成により、正立設置や天井設置のようにカメラ110の撮像部が水平となるように設置した場合には、被写体が斜めに撮影されることはないのでローテーションの機構を使用した調整は不要である。
【0015】
次に、本実施形態に係る映像配信システムとしてのネットワークカメラシステムにおけるローテーションのUIの表示制御について説明する。図1は、本実施形態に係るネットワークカメラシステムのブロック図である。
図1に示すようにネットワークカメラシステムは、カメラ110と、クライアント130とを備え、カメラ110で撮影された映像データはネットワーク190を介してクライアント130に送信され、表示装置170で表示される。ここで、クライアント130はコンピュータであり、表示装置170はコンピュータ用のモニターである。またクライアント130からはマウスなどの入力装置150からUIを介してカメラ110に対して、パン、チルト、ローテーションのコマンドを送信し、所望の撮影アングルで被写体を撮影することが可能となる。すなわち、クライアント130はカメラ110を遠隔で制御することができる制御端末として機能する。
【0016】
まず、カメラ110の動作について説明する。撮影部111で撮影された映像データは映像処理部116でゲイン調整などの処理が行われた後にメモリ117に書き込まれる。CPU115はメモリ117に書き込まれた映像データをJPEGフォーマット等で圧縮する。通信部118は圧縮された映像データをネットワーク190を介してクライアント130に送信する。
また、カメラ110はクライアント130からCPU115を介して送信されるカメラ制御コマンドに応じて、モータを回転させてパン部112、チルト部113、ローテーション部114を駆動させることで、撮影部111の撮影アングルを変更することができる。
【0017】
次に、クライアント130の動作について説明する。ネットワーク190を介して送信されてくる映像データは通信部131で受信し、CPU137で映像データを伸張してからメモリ132に書き込む。映像表示部133ではメモリ132に書き込まれた映像データを表示装置170に表示する。メモリ132に書き込まれた映像データの読み出し順序を変更すれば、倒立の映像を正立の映像に変更することが可能である。表示装置170には設置状態設定UI部134を介してカメラ110の設置状態を設定することが可能なUIが表示されており、正立設置302、天井設置303、壁掛け設置304の設置状態を設置状態判定部136に登録しておくことが可能である。更に、表示装置170にはアングル調整UI部135を介してカメラ110の撮影アングルを調整することが可能なUIが表示されており、マウスなどの入力装置150を介してUI画面を操作し所望の撮影アングルに変更して撮影する。
【0018】
本実施形態では、設置状態判定部136に設定されたカメラ110の設定情報、具体的にはカメラ110の設置状態に応じてアングル調整UI部135が表示するローテーションのUIを変更することを特徴とする。この処理手順を図4のフローチャートを用いて説明する。なお、図4のフローチャートは、CPU137がメモリ132に格納されているプログラムを実行し、各構成部を制御することにより実現する。
まず、ステップS401ではアングル調整UI部135がパン、チルト、ローテーションの制御用のUIを表示する。具体的には図5(a)で示す操作ボタンであり、上段はパン部112の駆動を制御するパンボタン501、中段はチルト部113の駆動を制御するチルトボタン502、下段はローテーション部114の駆動を制御するローテーションボタン503である。
【0019】
ステップS402では設置状態設定UI部134がカメラ110の正立設置、天井設置、壁掛け設置の3種類を設定できる設置状態設定UI(設置状態設定ユーザーインターフェース)を表示する。設置状態設定UI部134は、ユーザの選択に応じて使用するカメラ110の設置状態を設置状態判定部136に設定して登録する。
【0020】
ステップS403では設置状態判定部136は設定情報に基づいてカメラ110の設置状態が壁掛け設置であるか否かを判定し、壁掛け設置である場合はローテーション操作が必要であり、ステップS407で図5(a)のUIを介して撮影アングルを変更できる。
一方、ステップS403でカメラ110の設置状態が壁掛け設置以外である場合、ステップS404に処理を進め、設置状態判定部136はカメラの設置状態が天井設置か否かを判定する。天井設置の場合、被写体が倒立状態で撮影されているため、ステップS405では、映像表示部133は映像の表示を反転して正立状態で表示する。ステップS404において、設置状態が天井設置ではない場合、カメラ110の設置状態は正立設置であり、そのままステップS406に処理を進める。
【0021】
ステップS406ではカメラ110が水平面に設置されておりローテーション操作が必要ではないため、アングル調整UI部135はローテーションのUIを消去する。具体的には図5(a)に示す操作ボタンを図5(b)に示す操作ボタンに変更する。
【0022】
ステップS407ではローテーションの操作ボタンがないUIが表示されているため、使用者の誤操作を防止することが可能となり、また、不要なUIの表示による煩雑さが減少し操作性が向上する。
以上のようにカメラの設置状態を判定し、その情報に応じてローテーションのUIを消去することで使用者による誤操作を防止することが可能になる。
【0023】
なお、本実施形態は、上述した場合に限定されるものではなく、ローテーションのUIを消去した場合と同等の効果がある方法について説明する。
第1例は、図5(a)で示す操作ボタンに対して、アングル調整UI部135が図5(c)で示す操作ボタンのようにローテーションのボタンを操作できない状態で表示する。このようなUIによれば、使用者はローテーションが使用できないことを容易に認識することが可能となる。
【0024】
第2例は、図5(a)に示す操作ボタンに対して、アングル調整UI部135が図5(d)に示す操作ボタンのようにローテーションの操作ボタンの大きさを小さくする。このようなUIによれば、使用者によるローテーションのUIへのアクセスを困難にし、ローテーションの誤操作を防止するとともに、ローテーション部114の駆動も可能となる。
【0025】
第3例は、図5(a)に示す操作ボタンに対して、アングル調整UI部135が図6(a)に示すスクロールバーに変更する。図6(a)の映像ウィンドウ601において、映像表示領域602に近接した位置にパン制御用スクロールバー603、チルト制御用スクロールバー604、ローテーション制御用スクロールバー605を配置する。このように、制御ボタンをドラッグ&ドロップが必要なスクロールバーに変更することで、使用者によるローテーション操作までの手順を増やし、ローテーションの誤操作を防止するとともに、ローテーション部114の駆動も可能となる。
【0026】
第4例は、図5(a)に示す操作ボタンに対して、使用者がローテーションボタン503を押下した場合には、アングル調整UI部135が図6(b)に示すアラートパネルを表示する。ここでアラートパネルを表示する処理を図7のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS701ではアングル調整UI部135がパン、チルト、ローテーションの制御用のUIを表示する。具体的には図5(a)に示す操作ボタンである。
【0027】
ステップS702では使用者がローテーションボタン503を押下する。
ステップS703では設置状態判定部136は設定情報に基づいてカメラ110の設置場所が水平面であるか否かを判定する。カメラ110の設置状態が正立設置または天井設置の場合、カメラ110の設置場所が水平面と判定し、ステップS704に処理を進める。カメラ110の設置状態が壁掛け設置の場合、カメラ110の設置場所が水平面ではないと判定し、ステップS706に処理を進める。
【0028】
ステップS706ではカメラ110が水平面に設置されていないためローテーション操作が必要であり、CPU137はステップS702のローテーションボタンの押下方向に応じたローテーション部114の駆動制御を実施する。
一方、ステップS704ではカメラ110の設置場所が水平面でありローテーション操作が不要であるため、上述した図6(b)のアラートパネルを表示する。
【0029】
ステップS705ではアングル調整UI部135は、図6(b)に示すアラートパネルのボタン606とボタン607との押下状態を判定する。ボタン606が押下された場合、ステップS706で、CPU137はステップS702のローテーションボタンの押下方向に応じたローテーション部114の駆動制御を実施する。一方、ボタン607が押下された場合、ローテーション部114の駆動制御を禁止するため、アングル調整UI部135はボタン押下前の待機状態に戻る。
このようなUIによれば、使用者に対してアラートパネルを表示して確認することにより、使用者に対してローテーション操作の意思を確認し、ローテーションの誤操作を防止することが可能となる。
【0030】
本実施形態によれば、カメラの設置状態を判定し、その情報に応じてローテーションのUIの表示方法を変更することで使用者の誤操作を防止することが可能になる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態においてはカメラの設置状態を使用者が事前に設定する構成であったが、被写体の映像情報からカメラの設置状態を推定することも可能である。例えば、人物の顔、空と地面、など被写体映像から画像認識技術、画像処理技術によって上下方向や傾き角度を検出し、その情報からカメラの設置状態を推定するという方法も可能である。
【0031】
(第2の実施形態)
本実施形態では、カメラの傾斜センサーの情報に応じてローテーションの駆動を制限する処理について説明する。
まず、本実施形態に係るネットワークカメラシステムにおけるローテーションの駆動制御について説明する。図8は、本実施形態に係るネットワークカメラシステムのブロック図である。
本実施形態に係るカメラ110は、第1の実施形態と異なり、傾斜センサー120と設置状態判定部121とを備えている。また、本実施形態に係るクライアント130は、第1の実施形態と異なり、設置状態設定UI部と設置状態判定部とを備えていない。その他のシステム構成については図1に示すシステム構成と同様である。また、カメラ110およびクライアント130で実施される映像データの処理方法についても同様である。本実施形態では、カメラ110の傾斜センサー120の情報に応じたローテーション部114の駆動方法を中心に説明する。
【0032】
まず、クライアント130の動作について説明する。表示装置170にはアングル調整UI部135を介してカメラ110のアングル調整が可能となるUIが表示されている。マウスなどの入力装置150を介してUIを操作することでカメラ110の撮影アングルを変更し所望の被写体を撮影することが可能である。アングル調整UI部135での操作情報はCPU137でカメラ制御コマンドとして発行され、通信部131、ネットワーク190を介してカメラ110に送信される。
【0033】
次に、カメラ110の動作について説明する。ネットワーク190を介して受信したカメラ制御コマンドは、通信部118を介してCPU115に送信される。CPU115はパン、チルトのカメラ制御コマンドに応じて、パン部112、チルト部113に対して駆動信号を送信する。また、CPU115はローテーションのカメラ制御コマンドを設置状態判定部121に送信する。カメラ110は撮影部111に装着された傾斜センサー120を備えており、撮像素子の傾きを検出した傾き情報を設置状態判定部121に送信する。設置状態判定部121では傾斜センサー120の傾き情報からカメラ110の設置状態を推定する。カメラ110の設置場所が水平面であった場合はローテーション操作が不要であるため、ローテーション部114への駆動信号の出力を禁止する。
【0034】
本実施形態では、傾斜センサー120で検出した傾き情報に応じてローテーション部114の駆動を制限することを特徴としており、この処理手順を図9のフローチャートを用いて説明する。なお、図9のフローチャートは、CPU115がメモリ117に格納されているプログラムを実行し、各構成部を制御することにより実現する。
まず、ステップS901ではCPU115はローテーションのカメラ制御コマンドを受信し、設置状態判定部121に駆動情報を送信する。
【0035】
ステップS902では設置状態判定部121は傾斜センサー120の傾き情報に基づいてカメラ110の設置状態が水平であるか否かを判定する。水平である場合、ステップS901に処理を戻し、水平でない場合、ステップS903に処理を進める。
ステップS903ではカメラ110が水平に設置されていないのでローテーション操作が必要となり、CPU115はローテーションのカメラ制御コマンドに対応した駆動信号をローテーション部114に送信する。
【0036】
ステップS904ではローテーション部114は駆動信号に応じてモータが駆動することで、撮影アングルを変更する。
なお、ステップS902において、カメラ110の設置状態が水平の場合、ステップS901に処理を戻し、継続してローテーションのカメラ制御コマンドを受信し、設置状態判定部121に駆動情報を送信する。すなわち、ローテーション操作が不要となるため、ローテーションのカメラ制御コマンドを受信してもローテーション部114の駆動信号は送信しない。
以上のようにカメラの設置状態を判定し、その情報に応じてローテーション部の駆動を制限することで誤操作を防止することが可能になる。
【0037】
なお、本実施形態は、上述した場合に限定されるものではない。上述の実施形態においては、撮影部に装着した傾斜センサーの傾き情報からカメラの設置状態を判定する構成であったが、パン部、チルト部、ローテーション部の各回転軸に対して傾斜センサーや重力センサーなどの検出手段を設けてもよい。このように構成することで、カメラの設置場所の多様化や携帯等の変動に対しても精度の高い位置検出が可能となる。また、カメラ設置時にメカニカルスイッチで設置状態を設定したり、重力を利用したメカ的な方向判定機構を利用したりすることで設置状態を判定するという方法も可能である。
【0038】
(第3の実施形態)
本実施形態では、カメラの傾斜センサーの角度情報をクライアントに送信し、角度情報に応じてローテーションのUIの表示内容を変更する処理について説明する。
上述のように、カメラ110を水平面に設置した場合はパン部112、チルト部113の駆動のみで所望の撮影アングルに変更することが可能であるが、天井などの設置環境によっては水平面に対して取付け角度だけ傾いて設置されていることがある。例えば図10(a)に示すように天井が10°傾いている場合には、カメラ110は水平取付け角度10°となってしまう。したがって、図10(b)に示すように、被写体も取付け角度に応じて10°傾いた状態で撮影される。このような場合において、図10(b)に示すように、ローテーション部114を駆動して被写体を正立状態に調整することが可能である。しかしながら、従来のローテーション部114の制御手段は撮影アングルを変更するための手段であって、このように微小な傾きの調整には適していない。
【0039】
本実施形態では、カメラ110の傾斜センサー120の角度情報に応じてローテーションのUIを変更することで、このような取付け角度による被写体の傾きを調整しやすくすることを特徴としており、この処理手順を図11のフローチャートを用いて説明する。なお、図11に示すフローチャートは、CPU115、137がそれぞれのメモリ117、132に格納されているプログラムを実行し、各構成部を制御することにより実現する。
【0040】
まず、ステップS1101では撮影部111に装着された傾斜センサー120が角度情報を検出する。
ステップS1102では設置状態判定部121は傾斜センサー120の角度情報からカメラ110の設置状態が水平設置であるか否かを判定する。水平設置でない場合、ステップS1106に処理を進める。ステップS1106では、パン部112、チルト部113、ローテーション部114の駆動による撮影アングルの変更が必要であるため、CPU115は通信部118を介してクライアント130のアングル調整UI部135に通知する。アングル調整UI部135は、通知を受けて、図6(a)に示すようなパン制御用スクロールバー603、チルト制御用スクロールバー604、ローテーション制御用スクロールバー605の3種類を有するUIを表示する。
【0041】
一方、ステップS1102でカメラ110の設置状態が水平設置であると判定した場合、ステップS1103において、設置状態判定部121はアングルの微調整が必要か否か判定する。具体的には、取り付け角度が閾値内であるか否かを判定する。例えば閾値を5°としたとき、傾斜センサー120の角度情報が5°未満の場合、取付け角度が小さいので調整は不要と判定し、ステップS1107でCPU115は通信部118を介してクライアント130のアングル調整UI部135に通知する。通知を受けて、アングル調整UI部135は、パン制御用スクロールバー603、チルト制御用スクロールバー604の2種類を有するUIを表示する。
【0042】
上述したように閾値を5°としたとき、ステップS1103で傾斜センサー120の角度情報が5°以上の場合、取付け角度が大きいので調整が必要と判定する。この場合、ステップS1104でCPU115は通信部118を介してクライアント130に角度情報を通知する。
【0043】
ステップS1105ではクライアント130のアングル調整UI部135は通知を受けた角度情報に応じて構成した水平微調整用UIと、パン制御用スクロールバー603と、チルト制御用スクロールバー604とを有するUIを表示する。
ここで水平微調整用UIについて説明する。上述した図6(a)のローテーション制御用スクロールバー605は、通常の撮影アングルの調整で使用する場合には図10(c)のように回転角度が360°制御できるUIで構成されており、どの撮影アングルにおいても被写体を正立で撮影することが可能である。一方、水平微調整用UIは図10(d)のように回転角度が制限されており、カメラ110の角度情報が10°の場合は10°〜−10°で制限されたUIである。このように、ローテーション部114の制御範囲を制限し、ローテーション部114の駆動ステップを細かくすることで、微調整が容易なUIを提供することが可能となる。
【0044】
また、図10(e)のようにUIのサイズを大きくすることでも、ローテーション部114の駆動ステップを細かくすることが可能であり、図10(d)と同様の効果が得られるUIを提供することが可能となる。
本実施形態によれば、カメラの取付け角度を判定し、その情報に応じてローテーションのUIの表示方法を変更することで水平の微調整を容易にすることが可能になる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
110:ネットワークカメラ 111:撮影部 112:パン部 113:チルト部 114:ローテーション部 115:CPU 120:傾斜センサー 121:設置状態判定部 130:クライアント 134:設置状態設定UI部 135:アングル調整UI部 136:設置状態判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラの撮影アングルを制御端末から制御する映像配信システムであって、
映像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段を光軸を中心に回転させるローテーション部を制御するローテーション制御手段と、
前記撮影手段の設置状態を判定する設置状態判定手段とを有し、
前記設置状態判定手段で判定した前記撮影手段の設置状態に応じて、前記ローテーション制御手段を変更することを特徴とする映像配信システム。
【請求項2】
前記ローテーション制御手段は、前記制御端末のユーザーインターフェースであって、
前記設置状態に応じて、前記ユーザーインターフェースの表示内容を変更することを特徴とする請求項1に記載の映像配信システム。
【請求項3】
前記ユーザーインターフェースの表示内容を変更することで、前記ローテーション部に対する制御方法を変更することを特徴とする請求項2に記載の映像配信システム。
【請求項4】
前記ローテーション制御手段は、前記制御端末のユーザーインターフェースであって、
前記設置状態に応じて、前記ユーザーインターフェースの表示を制限することで、前記ローテーション部の駆動を禁止することを特徴とする請求項1に記載の映像配信システム。
【請求項5】
前記設置状態判定手段は、設置状態設定ユーザーインターフェースによって設定された設定情報に基づいて設置状態を判定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の映像配信システム。
【請求項6】
前記設置状態判定手段は、前記カメラの設置状態を検出するセンサーによって検出された情報から設置状態を判定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の映像配信システム。
【請求項7】
前記センサーによって検出された情報を前記制御端末に送信する送信手段を有し、
前記制御端末では、前記送信手段により送信された情報に応じて、前記ローテーション制御手段を変更することを特徴とする請求項6に記載の映像配信システム。
【請求項8】
前記設置状態判定手段は、前記撮影手段で撮影した映像情報に基づいて設置状態を判定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の映像配信システム。
【請求項9】
前記ローテーション制御手段は、前記ローテーション部を駆動するためのモータおよび駆動回路で構成される駆動部であって、
前記設置状態に応じて、前記駆動部の制御方法を変更することを特徴とする請求項1に記載の映像配信システム。
【請求項10】
映像を撮影する撮影手段を備えるカメラの撮影アングルを制御端末から制御し、前記撮影手段を光軸を中心に回転させるローテーション部を制御するローテーション制御手段を有する映像配信システムにおける制御方法であって、
前記撮影手段の設置状態を判定する設置状態判定ステップと、
前記設置状態判定ステップで判定した前記撮影手段の設置状態に応じて、前記ローテーション制御手段を変更するステップと、を有することを特徴とする映像配信システムの制御方法。
【請求項11】
映像を撮影する撮影手段を備えるカメラの撮影アングルを制御端末から制御し、前記撮影手段を光軸を中心に回転させるローテーション部を制御するローテーション制御手段を有する映像配信システムを制御するためのプログラムであって、
前記撮影手段の設置状態を判定する設置状態判定ステップと、
前記設置状態判定ステップで判定した前記撮影手段の設置状態に応じて、前記ローテーション制御手段を変更するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−4672(P2012−4672A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135354(P2010−135354)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】