説明

映写用スクリーン

【課題】スピーカー機能を有し、かつ巻き取り収納が可能な映写用スクリーンを提供する。
【解決手段】その両面に電極膜が積層された圧電性フィルムからなるスピーカーを、シート状のスクリーン本体の背面および前面のうち少なくともどちらか一方に貼り合わせて、映写用スクリーンを得る。その際、前記圧電性フィルムがポリフッ化ビニリデン樹脂で形成され、電極膜が蒸着されたアルミで形成されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカー機能を有し、かつ巻き取り収納が可能な映写用スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
会議用やホームシアター用の映写用スクリーンは、通常、不使用時には収納ケースに巻き取られ収納される(例えば、特許文献1参照)。そして、かかる映写用スクリーンでは、音波発生装置として外付けのスピーカーが用いられており、スピーカーの設置スペースを必要とした。
【0003】
他方近年では、スピーカーの設置スペースを省くため、スピーカー機能を有するスクリーンが提案されている。例えば、振動モード方式のパネル型スクリーン(例えば、特許文献2参照)や、発泡プラスチックスクリーンにスピーカーを一体的に備えて設けたもの(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。しかしながら、これらのスクリーンは巻き取り収納が可能なものではなかった。
なお、吸音性を目的とするものではあるが、圧電性フィルムに繊維構造体を積層させることが知られている(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−115340号公報
【特許文献2】特開2000−236595号公報
【特許文献3】特開2002−64898号公報
【特許文献4】特開2000−148155号公報
【特許文献5】特開2003−241765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、スピーカー機能を有し、かつ巻き取り収納が可能な映写用スクリーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、その両面に電極膜が積層された圧電性フィルムからなるスピーカーを、シート状のスクリーン本体に貼り合せることにより、スピーカー機能を有し、かつ巻き取り収納が可能な映写用スクリーンが得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「映写用スクリーンであって、
その両面に電極膜が積層された圧電性フィルムからなるスピーカーが、シート状のスクリーン本体の背面および前面のうち少なくともどちらか一方に、貼り合わされてなることを特徴とする映写用スクリーン。」が提供される。
【0008】
その際、前記の圧電性フィルムがポリフッ化ビニリデン樹脂で形成されることが好ましい。また、前記の電極膜が蒸着されたアルミで形成されることが好ましい。また、前記の電極膜が導電性ポリマーで形成されることが好ましい。
本発明の映写用スクリーンにおいて、巻き取り収納が可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スピーカー機能を有し、かつ巻き取り収納が可能な映写用スクリーンが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明において、スピーカーは、その両面に電極膜が積層された圧電性フィルムからなる。ここで、圧電性フィルムとしては、面方向に振動するよう分極された、ポリフッ化ビニリデン樹脂やポリビニリデンサイアナイト樹脂などの高分子圧電性フィルムや複合圧電性フィルム、さらには圧電セラミック板などが例示される。特に、分極処理された、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂からなる圧電性フィルムは、可撓性に優れる、薄膜化や任意の形状のものが簡易にできる、感度特性が良好である、といった優れた特徴を有しており特に好ましい。該圧電性フィルムの厚さとしては、40〜250μmの範囲内であることが好ましい。
【0011】
かかる圧電性フィルムの両面には電極膜が積層されている。電極膜としては、通常の蒸着方法により蒸着されたアルミにより形成されることが好ましいが、導電性ポリマーで形成されていてもよい。その際、導電性ポリマーとしては、ポリエチレンジオキシチオフェンなどが例示される。電極膜の厚さとしては、100〜2000Åの範囲内であることが好ましい。
【0012】
本発明の映写用スクリーンにおいて、前記のスピーカーが、シート状のスクリーン本体の背面および前面(映像を映写する面)のうち少なくともどちらか一方(特に好ましくは、背面のみ)に貼り合わされている。
ここで、シート状のスクリーン本体としては、シート状である限り特に限定されず、例えば、布帛状繊維構造体、フィルム、金属箔、これらの積層体などが例示される。
【0013】
前記の布帛状繊維構造体を構成する繊維としては特に限定されず、綿、羊毛、麻、ビスコースレーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリエーテルエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、セルロースアセテート繊維、アラミド繊維などの通常の繊維でよい。なかでも、引張り強度や染色性の点でポリエステル系繊維からなるポリエステル系糸条が特に好ましい。
【0014】
かかるポリエステルとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、炭素数2〜6のアルキレングリコール、すなわちエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種のグリコール、特に好ましくはエチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルが例示される。かかるポリエステルには、必要に応じて少量(通常30モル%以下)の共重合成分を有していてもよい。
【0015】
その際、使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、P−オキシ安息香酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のごとき芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。また、上記グリコール以外のジオール化合物としては、例えばシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのごとき脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
【0016】
かかるポリエステルは任意の方法によって合成したものでよい。例えばポリエチレンテレフタレートの場合について説明すると、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのごときテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるかまたはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合体を生成させる第1段階の反応と、第1段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造されたものでよい。
【0017】
また、ポリエステル中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン可染剤、着色防止剤、熱安定剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、帯電防止剤、吸湿剤、抗菌剤、マイナスイオン発生剤等を1種又は2種以上を添加してもよい。
【0018】
前記繊維の形態としては、短繊維でもよいし長繊維でもよい。なかでも長繊維のほうが、ソフトな風合いが得られやすく好ましい。さらには、仮撚捲縮加工が施された長繊維であってもよい。その際、長繊維の総繊度、フィラメント数としては、総繊度33〜330dtex、フィラメント数1〜200の範囲が好ましい。また、単繊維の断面形状は特に限定されず通常の丸断面でもよいし、扁平断面、くびれつき扁平断面、三角断面、四角断面、3〜14葉断面、中空断面などの異型断面でもよい。
【0019】
布帛状繊維構造体の組織は特に限定されず、通常の方法で製編織された織編物や不織布でよい。例えば、織物の織組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。編物の種類は、よこ編物であってもよいしたて編物であってもよい。よこ編組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示され、たて編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。シート状のスクリーン本体の目付けとしては500g/m以下(より好ましくは30〜300g/m)であることが好ましい。該目付けが500g/mよりも大きいと音波発生機能が損なわれるおそれがある。
【0020】
かかるシート状のスクリーン本体には、本発明の目的が損なわれない範囲内であれば、常法の染色仕上げ加工、プリント加工、撥水加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0021】
また、フィルムは、フィルム上で映写ができればよく、ポリエステル等の有機ポリマーからなるものが好ましく、白色のポリエステルフィルムが特に好ましい。また、金属箔としては、アルミ等の光沢のある金属が特に好ましい。なお、スクリーン本体には、樹脂がコーティングされていてもよい。かかる樹脂としては、かかる透明樹脂としては、セルロース誘導体、スチレン樹脂、スチレン共同体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、ポリウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂などが例示される。なかでも、アクリル樹脂が特に好ましい。
【0022】
その両面に電極膜が積層された圧電性フィルムからなるスピーカーを、シート状のスクリーン本体に貼り合せる方法としては、例えばエポキシ系接着剤を用いて接合する方法などが好適に例示される。
【0023】
本発明の映写用スクリーンにおいて、その両面に電極膜が積層された圧電性フィルムからなるスピーカーが、シート状のスクリーン本体に積層されているので、スピーカー機能を有するだけでなく、柔軟性も有するので、収納ケースに巻き取り収納が可能である。
【実施例】
【0024】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
【0025】
[実施例1]
通常のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸56dtex/72filを経糸および緯糸に用いて平織物(目付け130g/m)を織成することにより、シート状のスクリーン本体を得た。
一方、スピーカーとして、分極されたポリフッ化ビニリデン樹脂からなるフィルムの両面にアルミ(厚さ500Å)が蒸着された可撓圧電性フィルム(呉羽化学(株)製KFピエゾフィルム(商品名))を用意した。
【0026】
次いで、前記のスクリーン本体の背面側(映写しない方の面)に、該可撓圧電性フィルムをポリウレタン系接着剤で接着することにより、映写用スクリーンを得た。
次いで、前記スピーカーのアルミ層と携帯型音楽プレーヤーのヘッドフォン端子とを導電線にてつなぎ、音楽を再生したところ、スクリーンから音楽が聞こえてきて、スピーカー機能を有するものであった。
また、該映写用スクリーンは、収納ケースに巻き取り収納が可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、スピーカー機能を有し、かつ巻き取り収納が可能な映写用スクリーンが提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映写用スクリーンであって、
その両面に電極膜が積層された圧電性フィルムからなるスピーカーが、シート状のスクリーン本体の背面および前面のうち少なくともどちらか一方に、貼り合わされてなることを特徴とする映写用スクリーン。
【請求項2】
前記の圧電性フィルムがポリフッ化ビニリデン樹脂で形成される、請求項1に記載の映写用スクリーン。
【請求項3】
前記の電極膜が蒸着されたアルミで形成される、請求項1または請求項2に記載の映写用スクリーン。
【請求項4】
前記の電極膜が導電性ポリマーで形成される、請求項1〜3のいずれかに記載の映写用スクリーン。
【請求項5】
巻き取り収納が可能な、請求項1〜4のいずれかに記載の映写用スクリーン。

【公開番号】特開2007−187976(P2007−187976A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7254(P2006−7254)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】