説明

時刻修正装置、時刻修正装置付き計時装置及び時刻修正方法

【課題】位置情報衛星から軌道情報等を取得することなく、効率的に受信に必要な位置情報衛星を選択できると共に、消費電力も低減することができる時刻修正装置等を提供すること。
【解決手段】位置情報衛星15から送信される衛星時刻情報を含む衛星信号を受信する衛星信号受信部20と、時刻情報を生成する時刻情報生成部22と、衛星信号受信部が受信した衛星時刻情報に基づいて時刻情報を修正する時刻情報修正部36と、を有し、衛星信号受信部が衛星時刻情報を受信すべき位置情報衛星を選択する位置情報衛星選択部33を備え、位置情報衛星選択部は、位置情報衛星から発信される衛星信号の送信周波数の変動情報に基づいて位置情報衛星を選択する構成となっている時刻修正装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばGPS衛星等の位置情報衛星からの信号に基づいて時刻修正を行う時刻修正装置、時刻修正装置付き計時装置及び時刻修正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自己位置を測位するためのシステムであるGPS(Global Positioning System)システムでは、地球を周回する軌道等を有するGPS衛星が用いられており、このGPS衛星には、原子時計が備えられている。このため、GPS衛星は、極めて正確な時刻情報(GPS時刻)を有している。
そして、GPS衛星からの信号を受信する受信機側が、GPS衛星の時刻情報を得るには、GPS衛星からの信号のうち、TOW(Time of Week、GPS時刻、週の初めから一週間毎に示される秒単位の情報)信号を受信する必要がある(例えば、特許文献1)。
そして、このようにGPS衛星から信号を受信して時刻修正をするには、GPS衛星からの信号を障害物等を介さずに受信する必要がある。しかし、受信機側が例えば、屋内等に配置等されている場合は、建物等が障害物等なるので、窓等を介して衛星信号を受信することになる。
このように、窓等から衛星信号を受信するには、仰角が低いGPS衛星を受信機側が選択することで効率良く受信することが可能となる。
そして、この仰角が低いか否かは、GPS衛星の軌道情報であるアルマナック情報をGPS衛星から取得して初めて分かるため、受信機側では、このようなアルマナック情報を予め取得する必要があった。
【特許文献1】特開平10−10251号公報(要約等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このGPS衛星の軌道情報であるアルマナック情報は、その内容が更新されるため、この内容が更新された後、受信機側は、GPS衛星のアルマナック情報を受信して自己の有するアルマナック情報を更新する必要がある。
そして、このアルマナック情報は全GPS衛星の軌道情報であるため受信機側で全情報を受信するには長時間を要し、受信機側の電力の消耗が大きくなるという問題があった。
また、このように消費電流増が生じると受信機側の製品寿命が縮むだけでなく、受信機側が使用する使用電池の規制となるという問題もあった。
【0004】
そこで、本発明は、位置情報衛星から軌道情報等を取得することなく、効率的に受信に必要な位置情報衛星を選択できると共に、消費電力も低減することができる時刻修正装置、時刻修正装置付き計時装置及び時刻修正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、本発明によれば、位置情報衛星から送信される衛星時刻情報を含む衛星信号を受信する衛星信号受信部と、時刻情報を生成する時刻情報生成部と、前記衛星信号受信部が受信した衛星時刻情報に基づいて前記時刻情報を修正する時刻情報修正部と、を有し、前記衛星信号受信部が前記衛星時刻情報を受信すべき前記位置情報衛星を選択する位置情報衛星選択部を備え、前記位置情報衛星選択部は、前記位置情報衛星から発信される前記衛星信号の送信周波数の変動情報に基づいて前記位置情報衛星を選択する構成となっていることを特徴とする時刻修正装置により達成される。
【0006】
前記構成によれば、位置情報衛星選択部は、位置情報衛星から発信される衛星信号の送信周波数の変動情報に基づいて位置情報衛星を選択する構成となっている。この衛星信号の送信周波数の変動情報は、例えば、ドップラーシフトと呼ばれるものが含まれる。
つまり、ドップラーシフトは、衛星信号の送信周波数の理論値との誤差を示すもので、誤差がない、つまり「0kHz」のときは、位置情報衛星が当該時刻修正装置の天頂に配置されていることを示す。そして、1kHzから2kHz等と誤差が広がるに従い、位置情報衛星は、徐々にその仰角が低くなるように配置されることになる。
したがって、位置情報衛星選択部は、衛星信号の送信周波数に基づいて、当該位置情報衛星の仰角等を把握し、その位置を認識し、これに基づき選択することが可能となる。すなわち、位置情報衛星選択部は、位置情報衛星の軌道情報であるアルマナック情報を取得することなく、位置情報衛星の位置情報を取得し、その衛星信号を速やかに取得することができる。
ゆえに、前記構成では、従来のように、アルマナック情報等を取得するための長時間かけて位置情報衛星から衛星信号を受信する必要がないので、極めて低消費電力な装置となっている。
【0007】
好ましくは、前記送信周波数の変動情報が、前記送信周波数の理論値との誤差情報であり、前記位置情報衛星選択部は、前記送信周波数の理論値との誤差情報が小さい前記位置情報衛星を優先的に選択する構成となっていることを特徴とする時刻修正装置である。
【0008】
前記構成によれば、送信周波数の変動情報が、送信周波数の理論値との誤差情報であり、位置情報衛星選択部は、送信周波数の理論値との誤差情報が小さい位置情報衛星を優先的に選択する構成となっている。
このように、送信周波数の変動情報は、送信周波数の理論値との誤差情報、例えば、ドップラーシフト等であり、位置情報衛星選択部は、この送信周波数の理論値との誤差情報が小さい、すなわち、仰角が高く、天頂に近い側の位置情報衛星を優先的に選択する。
したがって、時刻修正装置が、より受信し易い位置にある位置情報衛星を選択できるので、その衛星信号をより効果的に受信することができる。
【0009】
好ましくは、前記送信周波数の理論値との誤差情報は、前記位置情報衛星が近接方向に移動している近接周波数誤差情報と、前記位置情報衛星が遠ざかる方向に移動する情報である遠隔周波数誤差情報と、を有し、前記位置情報衛星選択部は、前記近接周波数誤差情報と前記遠隔周波数誤差情報とを交互に、及び/又は前記近接周波数誤差情報を前記遠隔周波数誤差情報に優先して周波数走査をする構成となっていることを特徴とする時刻修正装置である。
【0010】
前記構成によれば、位置情報衛星選択部は、近接周波数誤差情報と遠隔周波数誤差情報とを交互に、及び/又は近接周波数誤差情報を遠隔周波数誤差情報に優先して周波数走査をする構成となっている。
つまり、近接周波数誤差情報は、例えば、位置情報衛星が天頂に向かって移動している情報であり、遠隔周波数誤差情報は、例えば、位置情報衛星が天頂から遠ざかる方向に移動している情報である。
したがって、前記構成では、時刻修正装置が、位置情報衛星の衛星信号を受信するために周波数走査をする際、例えば、天頂に向かってくる位置情報衛星及び天頂から遠ざかる位置情報衛星の双方をサーチすることができ、効果的なサーチを行うことができる。
特に、受信する衛星信号としては、天頂に向かってくる位置情報衛星の衛星信号である近接周波数誤差情報の方が、遠隔周波数誤差情報より受信に適した衛星信号である。
このため、前記構成のように、近接周波数誤差情報を遠隔周波数誤差情報に優先して周波数走査をし、当該周波数に該当する位置情報衛星の衛星信号を優先的に受信するとより迅速且つ適確に時刻情報を取得等することができる。
【0011】
好ましくは、前記送信周波数の変動情報が、周波数変化量の大小情報であり、前記位置情報衛星選択部は、この周波数変化量が大きい前記位置情報衛星を優先的に選択する構成となっていることを特徴とする時刻修正装置である。
【0012】
前記構成によれば、送信周波数の変動情報が、周波数変化量の大小情報であり、位置情報衛星選択部は、この周波数変化量が大きい位置情報衛星を優先的に選択する構成となっている。この送信周波数の変動情報は、例えば、ドップラーシフトの変動情報である。すなわち、ドップラーシフトにおいて、仰角が低い領域では、その変動は急激ではなく、穏やかに変動する。しかし、仰角が高い領域では、その変動が急激となる。
したがって、位置情報衛星選択部が、この周波数変化量が大きい領域の位置情報衛星を選択すると、それは、結果的に仰角が高い、すなわち、天頂に近づく方向の位置情報衛星を選択することとなり、時刻修正装置がより適確に衛星信号を受信することができることになる。
特に、時刻修正装置が、特定の仰角の範囲である周波数範囲を受信しようとした場合で、自己の発振回路等に周波数の狂いが生じていた場合、所望の範囲内で適確な位置情報衛星を選択し、衛星信号を受信できないおそれがある。
しかし、この場合でも、前記構成では、より周波数範囲にかかわらず、より仰角の高い、すなわち天頂に近い位置情報衛星を選択することができるので、より好ましい位置情報衛星を適確に選択することができる。
【0013】
好ましくは、前記時刻修正装置の環境情報の相違に基づいて、前記位置情報衛星を受信すべき受信範囲を定める受信範囲情報を格納する受信範囲情報格納部を有し、前記位置情報衛星選択部は、この受信範囲情報に基づいて前記位置情報衛星を選択することを特徴とする時刻修正装置である。
【0014】
前記構成によれば、時刻修正装置の環境情報の相違に基づいて、位置情報衛星を受信すべき受信範囲を定める受信範囲情報を格納する受信範囲情報格納部を有し、位置情報衛星選択部は、この受信範囲情報に基づいて前記位置情報衛星を選択する構成となっている。
すなわち、受信範囲情報としては、例えば、時刻修正装置が屋内配置の場合は、仰角が30°(度)乃至60°(度)の範囲という情報であり、屋外配置の場合は、仰角が0°(度)乃至30°(度)の範囲という情報である。つまり、屋内の場合は窓等を介して衛星信号を受信するので仰角が低い方が好ましい。一方、屋外の場合は、より適確に衛星信号を受信できる天頂に近い領域、すなわち仰角の高い範囲が好ましいからである。
この例の場合、位置情報衛星選択部は、時刻修正装置が屋内の場合は、仰角が30°乃至60°の範囲内の位置情報衛星の周波数走査をし、最適な位置情報衛星を選択し、その時刻情報を受信する。
一方、時刻修正装置が屋外の場合は、仰角が0°乃至30°の範囲で周波数走査をし、最適な位置情報衛星を選択し、その時刻情報を受信することとなる。
【0015】
好ましくは、前記受信範囲情報が、前記時刻修正装置が屋内に配置されるときに周波数走査すべき屋内受信範囲情報と、前記時刻修正装置が屋外に配置されるときに周波数走査すべき屋外受信範囲情報と、を有すると共に、前記時刻修正装置が屋内又は屋外のいずれに配置されているかを判断する屋内外判断部を有することを特徴とする時刻修正装置である。
【0016】
好ましくは、前記屋内外判断部が、光発電による発電量に基づいて屋内外を判断することを特徴とする時刻修正装置である。
【0017】
前記構成によれば、屋内外判断部が、光発電による発電量に基づいて屋内外を判断するので、簡易かつ確実に屋内外を判断することができる。
【0018】
前記課題は、本発明によれば、位置情報衛星から送信される衛星時刻情報を含む衛星信号を受信する衛星信号受信部と、時刻情報を生成する時刻情報生成部と、前記衛星信号受信部が受信した衛星時刻情報に基づいて前記時刻情報を修正する時刻情報修正部と、を有し、前記衛星信号受信部が前記衛星時刻情報を受信すべき前記位置情報衛星を選択する位置情報衛星選択部を備え、前記位置情報衛星選択部は、前記位置情報衛星から発信される前記衛星信号の送信周波数の変動情報に基づいて前記位置情報衛星を選択する構成となっていることを特徴とする時刻修正装置付き計時装置により達成される。
【0019】
前記課題は、本発明によれば、衛星信号受信部が、位置情報衛星から送信される衛星時刻情報を含む衛星信号を受信する衛星信号受信工程と、時刻情報修正部が、前記衛星信号受信部が受信した衛星時刻情報に基づいて時刻情報生成部の時刻情報を修正する時刻情報修正工程と、を有し、位置情報衛星選択部は、前記衛星信号受信部が前記衛星時刻情報を受信すべき前記位置情報衛星を選択すると共に、前記位置情報衛星から発信される前記衛星信号の送信周波数の変動情報に基づいて前記位置情報衛星を選択する構成となっていることを特徴とする時刻修正方法により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る時刻修正装置付き計時装置である例えば、GPS時刻修正装置付き腕時計10(以下「GPS付き腕時計10」という)を示す概略図であり、図2は、図1のGPS付き腕時計10の内部の主なハードウエア構成等を示す概略図である。
図1に示すように、GPS付き腕時計10は、その表面に文字板12、長針、短針等の針13等が配置されると共に、各種メッセージが表示されるLED等からなるディスプレイ27が形成されている。なお、ディスプレイ27は、LEDの他、LCD、アナログ表示等でも構わない。
さらに、GPS付き腕時計10は、使用者が各種指示を入力するための入力装置14も有している。
【0022】
また、図1に示すように、GPS付き腕時計10は、アンテナ11を有しており、このアンテナ11は、例えば、地球の上空を所定の軌道で周回しているGPS衛星15からの信号を受信する構成となっている。なお、GPS衛星15は、位置情報衛星の一例となっている。
【0023】
また、図2に示すように、GPS付き腕時計10は、その内部に時刻表示装置21やGPS装置20等を備え、コンピュータとしての機能も発揮する構成となっている。
また、本実施の形態における時刻表示装置21は、いわゆる電子時計として機能する構成となっている。以下、図2に示す各構成について説明する。
図2に示すように、GPS付き腕時計10は、バス16を備え、バス16には、CPU(Central Processing Unit)17、RAM(Random Access Memory)18、ROM(Read Only Memory)19
等が接続されている。
また、バス16には、GPS衛星15から発信される衛星信号を受信するGPS装置20が接続されている。さらに、バス16には、時刻表示装置21も接続されている。
【0024】
このGPS装置20は、具体的には、アンテナ11を有すると共に、アンテナ11で受信した信号を中間周波数(I/F)等とするRF部や、信号を復調処理するベースバンド部等を有している。すなわち、GPS装置20は、図1のGPS衛星15a等から受信した信号を、アンテナ11、RF部及びベースバンド部等を介してGPS信号として取り出すことができる構成となっている。このように、GPS装置20は、衛星信号受信部の一例となっている。
そして、このGPS信号(衛星信号の一例)には、原子時計に基づく精度の高いGPS時刻情報(Zカウント)が含まれている。なお、このGPS時刻信号については後述する。
【0025】
また、バス16に接続されている時刻表示装置21は、IC(半導体集積回路)等からなるリアルタイムクロック(RTC)22やディスプレイ27等を有している。また、バス16には、電源となる光発電で発電する太陽電池23も接続されている。
このようにRTC22が時刻情報生成部の一例となっている。
【0026】
バス16は、すべてのデバイスを接続する機能を有し、アドレスやデータパスを有する内部バスである。RAM18等は、所定のプログラムの処理を行う他、バス16に接続されたROM19等を制御している。ROM19は、各種プログラムや各種情報等を格納している。
【0027】
図3は、GPS付き腕時計10の主なソフトウエア構成等を示す概略図である。
図3に示すように、GPS付き腕時計10は、制御部28を有し、制御部28は、図3に示す各種プログラム格納部30内の各種プログラム、各種データ格納部40内の各種データを処理する構成となっている。
また、図3には、各種プログラム格納部30と各種データ格納部40とを分けて示してあるが、実際に、このようにデータが分けて格納されているわけではなく、説明上の便宜のために分けて記載したものである。
【0028】
図4は、図3の各種プログラム格納部30内のデータを示す概略図であり、図5は、図3の各種データ格納部40内のデータを示す概略図である。
図6は、本実施の形態にかかるGPS付き腕時計10の主な動作等を示す概略フローチャートである。
【0029】
本実施の形態では、GPS付き腕時計10は、GPS衛星15から発信される衛星信号に含まれる時刻情報を取得して、その時刻情報に基づいて図2のRTC22の時刻の補正を行う構成となっている。しかし、その一方で、GPS付き腕時計10は、GPS衛星15の軌道情報であるアルマナックデータを有していない。このため、何時、どの位置にGPS衛星15が位置するかの情報を有してない。
そこで、かかるアルマナックデータを用いることなく、効率的にGPS衛星15を捕捉し、その時刻情報を取得することが本実施の形態の特徴の一つとなっている。
この特徴について説明する前に、その前提となる衛星信号について説明する。
【0030】
図7は、衛星信号を示す概略説明図である。
GPS衛星15からは、図7(a)に示すように、1フレーム(30秒)単位で信号が送信されてくる。この1フレームは、5個のサブフレーム(1サブフレームは6秒)を有している。各サブフレームは、10ワード(1ワードは0.6秒)を有している。
また、各サブフレームの先頭のワードは、TLM(Telemetry word)データが格納されたTLMワードとなっており、このTLMワード内には、図7(b)に示すように、その先頭にプリアンブルデータが格納されている。
また、TLMに続くワードは、HOW(hand over word)データが格納されたHOWワードとなり、その先頭には、TOW(Time of week)というGPS衛星のGPS時刻情報(Zカウント)が格納されている。
このZカウントは、次に続く、サブフレームのTLMの開始部分の時刻が格納されている。
GPS時刻は毎週日曜日の0時から経過時間が秒で表示され、翌週の日曜日の0時に0に戻るようになっている。
そして、本実施の形態の時刻情報では、TOWというGPS衛星のGPS時刻情報(Zカウント)をGPS衛星15から取得することで時刻修正が可能な構成となっている。
【0031】
次に、アルマナックを用いることなく、適確且つ効率良くGPS衛星15をサーチし、捕捉する構成等について、図6のフローチャートを用いて説明する際の前提となる事項について説明する。
本実施の形態では、GPS付き腕時計10が、アルマナックデータを有していないため、本来、GPS付き腕時計10のGPS装置20がGPS衛星15を捕捉するには、全てのGPS衛星15をサーチする必要がある。また、GPS衛星15からの衛星信号を適確に受信するには、GPS装置20の天頂に位置するGPS衛星15から衛星信号を受信することが好ましい。
しかし、これは、GPS付き腕時計10が、屋外に配置されている場合であって、屋内では、逆に天頂付近からのGPS衛星15の衛星信号を受信することは困難となる。
つまり、GPS付き腕時計10が屋内に配置されている場合は、建物の窓等から衛星信号を受信するのが好ましいこととなる。このときのGPS衛星15は、天頂ではなく仰角の低い位置となる。
そこで、本実施の形態では、GPS付き腕時計10が、屋外に配置されている場合のGPS衛星15のサーチ範囲と、屋内に配置されている場合のGPS衛星15のサーチ範囲を予め区分して、サーチを行う構成となっている。詳細については後述する。
【0032】
さらに、本実施の形態では、GPS付き腕時計10の屋内外判断を2つの方法で実行している。一つは、GPS付き腕時計10の所持者が図1の入力装置14を操作することで屋内外のいずれかであるかをGPS付き腕時計10が認識する方法である。
もう一つは、図1の太陽電池23の発電量が多い場合は、屋外と判断し、少ない場合は屋内と判断する方法である。この発電量が環境情報の一例となっている。
本実施の形態では、以下で詳細に説明するように、これら2つの方法を併用する構成となっている。
【0033】
次に、図6のフローチャートに従い、詳細に説明する。
先ず、図6のST1でGPS付き腕時計10の利用者であるユーザーが屋外指示を入力したか否かを判断する。具体的には、図1及び図2の入力装置14をユーザーが操作すると、例えば屋外と判断する構成となっている。そして、その操作が行われると、図4のユーザー入力判断プログラム31が動作して、GPS付き腕時計10は、自己が屋外に配置されていることを認識することとなる。
本実施の形態では、ユーザーが屋外指示を入力する例を示したが、ユーザーが屋内指示、若しくは屋内外指示を入力する構成としても構わない。
【0034】
ST1では、ユーザー屋外指示の入力を判断する代わりに光発電量が所定値以上であるか否かを判断しても構わない。この場合は、図4の光発電量判断プログラム32が動作し、図1等の太陽電池23の発電量が所定値以上となっているか否かを判断し、所定値以上となっている場合は「屋外」、所定値以上となっていない場合は「屋内」と判断する構成となっている。
このように、ユーザー入力判断プログラム31及び光発電量判断プログラム32は、屋内外判断部の一例となっている。
【0035】
ST1でユーザーから屋外指示が入力され、若しくは光発電量が所定値以上の場合は、GPS付き腕時計10は、屋外に配置されていると判断され、ST2へ進む。
ST2では、相関取得の同期周波数範囲を、ドップラーシフトの値で、0kHzから±3kHzに設定する。
ここで、ドップラーシフトについて説明する。ドップラーシフトは、基本的にドップラー効果、すなわち、衛星信号等の発生源(GPS衛星15)と観測者(GPS付き腕時計10)との相対的な速度によって、信号の周波数が異なって観測されることに基づくものである。また、ドップラー効果では、衛星信号が近づく場合は、周波数が高くなり、遠ざかる場合は、周波数が低くなる。
この関係を衛星信号の本来の周波数である理論値との誤差(ズレ)を示したのが「ドップラーシフト(kHz)」となる。
【0036】
図8は、このような「ドップラーシフト」、GPS衛星15の仰角及び距離との関係を示すものである。
図8で縦軸がドップラーシフト(kHz)を示し、横軸がGPS衛星15の仰角を示す。具体的には、GPS衛星15は、移動しているため、図の左側から右側にかけて移動することになる。つまり、GPS付き腕時計10が配置されている位置から見て、GPS衛星15が、地平線等に見えるように位置する場合が、図8の「−90°」となる。その後、GPS衛星15が徐々にGPS付き腕時計10の天頂に近づくに伴い、その仰角も、「0°」に近づく。そして、更に、GPS衛星15が移動し、天頂から遠ざかる方向に移動し、反対側の地平線等に位置すると、その仰角は「+90°」となる。
このように、図8の横軸で示す仰角の「−90°」から「+90°」の変動に対応して、縦軸のドップラーシフト(kHz)も変動する。具体的には、同図の仰角「−90°」がドップラーシフトでは「5kHz」に対応し、仰角「0°」が、ドップラーシフトでは「0kHz」に対応し、更に、仰角「+90°」がドップラーシフトでは「−5kHz」に対応することになる。
【0037】
このように、GPS衛星15の位置する仰角は、GPS衛星15から受信した衛星信号のドップラーシフトの値(kHz)から判断することができる。
つまり、本実施の形態では、GPS衛星15等の全衛星の軌道情報であるアルマナックデータをGPS付き腕時計10が保有していなくても、ドップラーシフトから、その位置を適確に把握することができる構成となっている。
【0038】
ここで、説明を図6のST2に戻すと、ST2では、ドップラーシフトが、0kHz〜±3kHzの幅のGPS衛星15等をサーチする設定となっている。これは、図8を参照すると、仰角−30°から0度、そして+30°の範囲となっている。つまり、天頂を中心とした高仰角の範囲となっている。
したがって、ST2では、GPS付き腕時計10は、屋外に配置されているため最も衛星信号を受信し易い高仰角の範囲を設定する工程となっている。
【0039】
一方、ST3は、GPS衛星15等をサーチすべきドップラーシフト(kHz)の範囲が+3kHzから+4.5kHzと、−3kHzから−4.5kHzとなっている。これは、図8を参照すると、仰角−60から−30°の範囲と、仰角+30°から+60°の範囲となっている。
すなわち、ST3の場合は、GPS付き腕時計10が屋内に配置されているため、天頂を中心とした高仰角の範囲に位置するGPS衛星15等から衛星信号を受信することができない。
このため、窓等の開放部分が配置されていると予測される仰角、すなわち+30°から+60°及び−30°から−60°の範囲をGPS衛星15等のサーチ範囲としている。
【0040】
次にST4について説明する。ST4では、図1のGPS装置20がGPS衛星15等をサーチする順番が説明されている。すなわち、ドップラーシフトが0kHzから3kHzにかけて衛星をサーチすると共に、このサーチは、ドップラーシフトの+kHzを優先して、ドップラーシフトの+kHzから−kHzの順で行われる。
具体的には、図4の衛星サーチプログラム33が動作し、図5の屋外衛星サーチデータ42に基づいて実行される。この屋外衛星サーチデータ42には、サーチ範囲とその方法のデータが記載されている。屋外衛星サーチデータ42は、屋外受信範囲情報の一例である。
これを図8で説明すると、図8の矢印Aで示す斜線部分が屋外衛星サーチデータ42に格納されているサーチ範囲のデータであり、この範囲内で図1のGPS装置20が衛星サーチを行う。そして、衛星サーチを行う順番は、天頂部分(0kHz)から順に3kHzにかけてサーチし、その際、例えば、ドップラーシフトの+kHz(0kHzの上側)からドップラーシフトの−kHz(0kHzの下側に)にかけて実施される。
【0041】
図9は、衛星サーチの順番を示した概略説明図である。図9のうち、aからpで示すのが屋外サーチにおける衛星サーチの順番である。
図9に示すように、天頂付近であるaから開始し、先ずドップラーシフトの+kHzの領域、つまり、GPS付き腕時計10に近づいて来るGPS衛星15等が位置する領域をサーチし、その後、ドップラーシフトの−kHzの領域、つまり、GPS付き腕時計10から遠ざかるGPS衛星15等が位置する領域をサーチすることで、双方の領域の衛星を効率的にサーチすることができる構成となっている。
【0042】
一方、ST5では、図1のGPS装置20が、GPS衛星15等をサーチする順番が説明されている。すなわち、ドップラーシフトが+3kHzから+4.5kHz及び−3kHzから−4.5kHzにかけて衛星をサーチすると共に、このサーチは、ドップラーシフトの+kHzを優先して、+kHzから−kHzの順で行われる。
具体的には、図4の衛星サーチプログラム33が動作し、図5の屋内衛星サーチデータ41に基づいて実行される。この屋内衛星サーチデータ41には、サーチ範囲とその方法のデータが記載されている。屋内衛星サーチデータ41は、屋内受信範囲情報の一例である。
これを図8で説明すると、図8の矢印Bで示す斜線部分が屋内衛星サーチデータ41に格納されているサーチ範囲のデータであり、この範囲内で図1のGPS装置20が衛星サーチを行う。そして、衛星サーチを行う順番は、ドップラーシフトの3kHz(仰角30°)から順に4.5kHz(仰角60°)にかけてサーチし、その際、例えば、ドップラーシフトの+kHz(0kHzの上側)から−kHz(0kHzの下側に)にかけて実施される。
【0043】
図9のうち、「1」から「11」で示すのが屋内サーチにおける衛星サーチの順番である。
図9に示すように、ドップラーシフトの3kHz(仰角30°)の先ず+3kHzの領域「1」から衛星サーチを開始し、その後、−3kHzの領域(イ)をサーチする。その後は、図9の「3」乃至「11」に示すように、ドップラーシフトの+kHzと−kHz、つまり、GPS付き腕時計10に近づいて来るGPS衛星15等が位置する領域と、GPS付き腕時計10から遠ざかるGPS衛星15等が位置する領域を交互にサーチする構成となっている。このため、これら双方の領域の衛星を効率的にサーチすることができる構成となっている。
このように、衛星サーチプログラム33は、位置情報衛星選択部の一例となっており、ドップラーシフトが、衛星信号の送信周波数の変動情報や送信周波数の理論値との誤差情報の一例となっている。
さらに、衛星サーチプログラム33は、ドップラーシフトの値が小さいGPS衛星15等を優先的に選択する構成となっているので、これは、位置情報衛星選択部が、送信周波数の理論値との誤差情報が小さい位置情報衛星を優先的に選択する構成の一例ともなっている。
そして、ドップラーシフトの「+kHz」は、近接周波数誤差情報の一例であり、「−kHz」は、遠隔周波数誤差情報の一例となっている。
【0044】
ST4又はST5に示すように、衛星サーチをすると、次にST6へ進む。ST6では、図4の衛星捕捉判断プログラム34が動作して、図9のa乃至p、若しくは「1」乃至「11」のサーチで1つでもGPS衛星15を捕捉できれば、サーチが終了する。
つまり、ST4及びST5では、衛星信号を受信する位置として、好ましい順番に衛星サーチを行うため、捕捉に成功した衛星が、その状況下で最も好ましい位置にいるGPS衛星15と考えられるからである。
つまり、ST4及びST5では、図5の衛星サーチデータのサーチ範囲内で、できるだけ仰角が高いGPS衛星15等を優先的に選択するので、その分、衛星信号を適確に受信し易いこととなる、
【0045】
次に、ST7に進む。捕捉したGPS衛星15の図7の衛星信号からTOW(時刻データ)を受信して、デコードし、Zカウントを取得する。これは、図4の時刻データ取得プログラム35が動作して行われる(衛星信号受信工程の一例)。
このST7で、正しい正確なGPS時刻(Zカウント)が取得できるので、次にST8に進む。
ST8では、図4の時刻表示更新プログラム36が動作して、図2のRTC22の時刻が修正され、図1で示される時刻も修正される(時刻情報修正工程の一例)。このように、TOWが、衛星時刻情報の一例となっており、時刻表示更新プログラム36が、時刻情報修正部の一例となっている。
一方、ST6で衛星を捕捉できないときは、ST9へ進み、同期周波数範囲を他の範囲に変更し、衛星を捕捉する。例えば、同期周波数範囲がST2の「0〜±3kHz」の場合で、衛星を捕捉できないときは、その範囲を「±3〜±4.5kHz」に変更する。逆に、ST3の「±3〜±4.5kHz」の場合は、その範囲を「0〜±3kHz」に変更する。これにより、確実に衛星を捕捉することができる。
【0046】
このように、本実施の形態では、GPS付き腕時計10は、アルマナック等のGPS衛星15等の全軌道情報を取得、更新しなくても、最も適当なGPS衛星15を適確に選択し、時刻修正をすることができるので、消費電力を低減させることができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
図10は、本発明の第2の実施の形態にかかる時刻修正装置付き計時装置である例えば、GPS時刻修正装置付き腕時計100の主なソフトウエア構成等を示す概略図であり、図11は、本実施の形態にかかるGPS時刻修正装置付き腕時計100の主な動作等を示す概略フローチャートである。
具体的には、図10は、本実施の形態の各種データ格納部400内の各種データを示す概略図である。
本実施の形態にかかるGPS時刻修正装置付き腕時計100の構成等は、上述の第1の実施の形態に係るGPS付き腕時計10の構成等と多くが共通しているため、共通の構成等は同一符号等とし、または、その旨を記載することでそれらの説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0048】
本実施の形態と上述の第1の実施の形態との大きな相違点は、図11のフローチャートのST15及びST16であるが、その相違点を説明する前に、前提となる事項を説明する。
図12は、GPS衛星15の衛星軌道暦を示す概略説明図である。図12に示す、楕円形の最外周は、図8の仰角90°に相当する部分であり、その内側の楕円形は、仰角60°に相当する部分であり、その内側が仰角30°に相当する部分である。また、中心部分は仰角0°、すなわち、天頂に相当する部分となっている。
そして、このような仰角が異なる範囲を横断等するように、GPS衛星15が移動している状態を示すのが、図12の衛星軌道暦である。
具体的には、例えば、図12の15aは、GPS衛星(1)を示す。このGPS衛星(1)15aは、16時には仰角60°から90°の範囲内に位置していたが、その後、天頂方向に向かって移動し、18時では仰角30°近辺まで移動している。したがって、GPS衛星(1)15aは、ドップラーシフトが「+kHz」となっている。
一方、図12の15bは、GPS衛星(2)を示すが、このGPS衛星(2)15bは、16時には仰角30°近辺に位置していたが、その後、移動し、18時には仰角60°まで移動している。したがって、GPS衛星(2)15bは、ドップラーシフトが「−kHz」となっている。
【0049】
このように、地球を周回等するGPS衛星15は、全てが同一の衛星軌道を有するものではなく、GPS付き腕時計10が、衛星信号を受信するには、ドップラーシフトが「+kHz」、すなわち、天頂方向に向かってくるGPS衛星15から衛星信号を受信することが望ましい。
そこで、本実施の形態では、図11のST15に示すように、GPS付き腕時計10が屋外に配置されると判断された場合、衛星サーチプログラム33は、ドップラーシフトが「+」の範囲内にあるGPS衛星15(天頂に向かってくるGPS衛星15)を最初にサーチし、その後、「−」の範囲内にあるGPS衛星15(天頂から遠ざかるGPS衛星15)をサーチする構成となっている。
具体的には、衛星サーチプログラム33は、図10の第2の屋外衛星サーチデータ412を参照し、ドップラーシフトが「0」から「+3kHz」にかけて徐々にサーチし、その後、「0」から「−3kHz」にかけて徐々にサーチする。
つまり、図9を用いて説明すれば、「+」側である、a、b、d、f、h、i、l、n、pの順番に衛星サーチをした後、「−」側であるc、e、g、i、h、m、oの順番で衛星サーチを実行する。
【0050】
このように、サーチすることで、受信するうえで好ましい、天頂に向かって移動するGPS衛星15を最初にサーチし、迅速に捕捉することができるので、速やかに時刻修正が可能なGPS付き腕時計100となっている。
【0051】
また、図11のST16は、GPS付き腕時計100が、屋内に配置されている場合であるが、この場合は、ドップラーシフトが3kHzから4.5kHzにかけて、ST15と同様に、「+kHz」を優先に衛星サーチをする工程となっている。
具体的には、図10の第2の屋内衛星サーチデータ411を参照して実行する。
図9を用いて説明すれば、「+」側である、「1」、「3」、「5」、「7」、「9」「11」の順番で衛星サーチをした後、「−」側である、「2」、「4」、「6」、「8」、「10」の順番で衛星サーチを実行する。
【0052】
なお、衛星サーチプログラム33、第2の屋外衛星サーチデータ412及び第2の屋内衛星サーチデータ411は、位置情報衛星選択部が、近接周波数誤差情報を遠隔周波数誤差情報に優先して周波数走査をする構成の一例である。
【0053】
(第3の実施の形態)
図13及び図14は、本発明の第3の実施の形態にかかる時刻修正装置付き計時装置である例えば、GPS時刻修正装置付き腕時計200(以下「GPS付き腕時計200」という。)の主なソフトウエア構成等を示す概略図であり、図15は、本実施の形態にかかるGPS時刻修正装置付き腕時計200の主な動作等を示す概略フローチャートである。
具体的には、図13は、本実施の形態の各種プログラム格納部200内の各種プログラムを示す概略図であり、図14は、本実施の形態の各種データ格納部500内の各種データを示す概略図である。
本実施の形態にかかるGPS時刻修正装置付き腕時計200の構成等は、上述の第1の実施の形態に係るGPS付き腕時計10の構成等と多くが共通しているため、共通の構成等は同一符号等とし、または、その旨を記載することでそれらの説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0054】
上述の実施の形態では、GPS衛星15の位置を把握するために、図8に示すような、ドップラーシフト(kHz)の値で判断している。これは衛星信号の理論値との周波数の差分データであるため、この差分の周波数の値は、GPS付き腕時計200自身で判断することになる。
GPS付き腕時計200は、RTC22を有しているため、図示しない発振回路を有し、この発振回路は、その振動子を基準に動作している。しかし、この振動子は、温度等の影響を受け易いため、発振回路の周波数も変動する、いわゆる「周波数のドリフト」が生じ、周波数に誤差が生じることになる。
このような「周波数のドリフト」、例えば2ppm程度の誤差が生じた状態で、上述のドップラーシフト(kHz)の値をGPS衛星15の衛星信号から取得すると、実際には3kHz程度ズレることになり、この3kHzのズレは、仰角にすると30°のズレとなる。
すなわち、上述の第1の実施の形態を例に説明すると、GPS付き腕時計10が屋外に配置されたと判断し、ドップラーシフトの値を0乃至±3kHzの範囲でサーチしようとした場合でも、実際は3kHzズレた範囲をサーチすることとなる。
【0055】
この点を更に説明する。図16は、上述の周波数ドリフトの影響を示す概略説明図である。図16の矢印Aで示す四角の範囲が、図8の矢印Aで示す範囲である。そして、上述の周波数ドリフトが「+」側に生じた場合の誤差が、図16の矢印A1で示す範囲である。図16に示すように、衛星サーチをすべき範囲が仰角で30°、「+」方向にズレている。
逆に、図16の矢印A2で示す範囲は、図8の矢印Aで示す範囲が、「−」側にズレた場合である。
これでは、本来、屋外での衛星サーチで、0(天頂)乃至±3kHzの間をサーチすべきが、0乃至+6kHzの間、又は0乃至−6kHzの間をサーチすることになる。
この場合、図12の例では、屋外で仰角0°乃至30°をサーチしたにも拘わらず、仰角30°乃至60°に位置するGPS衛星15a(「+」側にズレたとき)やGPS衛星15b(「−」側にズレたとき)を受信するに適したGPS衛生15として誤って選択する可能性がある。
【0056】
そこで、本実施の形態では、このような「周波数のドリフト」がGPS付き腕時計200に発生している場合でも、目的とする仰角範囲に位置するGPS衛星15を適確に選択するため、図15に示す工程を実施する。
図15では、その説明の便宜のため、GPS付き腕時計200が屋外に配置されている場合を例に説明する。
先ず、図15のST21では、相関取得の同期周波数範囲として、ドップラーシフトを0kHz乃至±3kHzの値とする。このとき、既に、GPS付き腕時計200には、周波数のドリフトが発生しており、その同期周波数範囲が図16の矢印A1又はA2にズレている。
そして、ST21では、図13の衛星屋外サーチプログラム331が動作して、衛星サーチを行う。この動作は、図4の衛星サーチプログラム33が、図5の屋外衛星サーチデータ42を参照して、衛星サーチをする場合と実質的に同一である。
【0057】
次に、ST22で1個以上のGPS衛星15等を捕捉できたか否かを判断し、ST23で2個以上のGPS衛星15等を捕捉できたか否かを判断する。
具体的には、図13の捕捉衛星数判断プログラム332が動作して、捕捉したGPS衛星15等の数を判断する。
【0058】
次に、ST23で2個以上のGPS衛星15等を捕捉した場合は、ST24へ進む。ST24では、捕捉したGPS衛星の衛星信号のうち、同期周波数変動値が最も大きい衛星を選択する。
この同期周波数変動値は、上述のドップラーシフトの値とは異なり、ドップラーシフトの変動量である。すなわち、図16には、GPS衛星15等のドップラーシフトの値の変動が曲線で表されている。この曲線は、図16に示すように仰角が低い部分では、曲線の変動量が小さく、仰角が大きく天頂に近づくに伴い、その変動量が大きくなっている。
【0059】
つまり、GPS衛星15毎のドップラーシフトの変化量の大きさのデータを取得し、その変化量が大きいGPS衛星15等を選択すれば、その衛星が最も天頂に近いことになる。
このように、ドップラーシフトの変化量の大小で、GPS衛星15を選択すれば、たとえ、周波数のドリフトが発生していても、その範囲内で最も天頂に近いGPS衛星15を選択でき、衛星信号を円滑に受信できることとなる。
このような動作は、図13の同期周波数変動値比較プログラム334が動作して実行される。
【0060】
一方、ST23で、2個以上のGPS衛星15を捕捉できない場合は、ST25へ進む。この場合は、ST24にように、ドップラーシフトの値の変動量を比較することができないため、予め仰角が高い場合の同期周波数変動であるドップラーシフトの値の変動量を定めておき、この値と比較することで、受信に適当であるか否かを判断する。
この予め仰角が高い場合のドップラーシフトの値の変動量は、図14の同期周波数変動値データ501に格納されているため、図13の捕捉衛星の同期周波数変動判断プログラム333が参照し、当該捕捉したGPS衛星15の衛星信号のドップラーシフトの変動量と比較して判断する。
この判断の結果、当該捕捉したGPS衛星15の衛星信号のドップラーシフトの変動量が、図14の同期周波数変動値データ501を上回っている場合は、仰角の高いGPS衛星15であるとして、その衛星信号から時刻情報を取得し、ST7及びST8に示すように時刻修正を行うこととなる。
【0061】
このように、本実施の形態では、たとえGPS付き腕時計200に周波数のドリフトが発生し、ドップラーシフトを基準とした衛星サーチに誤りが生じる場合であっても、その誤りを補って、適確なGPS衛星15を選択できる構成となっている。
ところで、上述の同期周波数変動値が、特許請求の範囲で示す、周波数変化量の一例となっている。
【0062】
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。なお、上述の実施の形態では、位置情報衛星として、地球を周回するGPS衛星を例に説明しているが、本発明の位置情報衛星は、これに限らず、静止衛星や準天頂衛星等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る時刻修正装置付き計時装置である例えば、GPS時刻修正装置付き腕時計を示す概略図である。
【図2】図1のGPS付き腕時計の内部の主なハードウエア構成等を示す概略図である。
【図3】GPS付き腕時計の主なソフトウエア構成等を示す概略図である。
【図4】図3の各種プログラム格納部内のデータを示す概略図である。
【図5】図3の各種データ格納部内のデータを示す概略図である。
【図6】図6は、第1の実施の形態にかかるGPS付き腕時計の主な動作等を示す概略フローチャートである。
【図7】衛星信号を示す概略説明図である。
【図8】「ドップラーシフト」、GPS衛星の仰角及び距離との関係を示すものである。
【図9】衛星サーチの順番を示した概略説明図である。
【図10】第2の実施の形態にかかる時刻修正装置付き計時装置である例えば、GPS時刻修正装置付き腕時計の主なソフトウエア構成等を示す概略図である。
【図11】第2の実施の形態にかかるGPS時刻修正装置付き腕時計の主な動作等を示す概略フローチャートである。
【図12】GPS衛星の衛星軌道暦を示す概略説明図である。
【図13】第3の実施の形態にかかる時刻修正装置付き計時装置である例えば、GPS時刻修正装置付き腕時計の主なソフトウエア構成等を示す概略図である。
【図14】第3の実施の形態にかかる時刻修正装置付き計時装置である例えば、GPS時刻修正装置付き腕時計の主なソフトウエア構成等を示す他の概略図である。
【図15】第3の実施の形態にかかるGPS時刻修正装置付き腕時計の主な動作等を示す概略フローチャートである。
【図16】周波数ドリフトの影響を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0064】
10・・・GPS時刻修正装置付き腕時計、11・・・アンテナ、12・・・文字板、13・・・針、14・・・入力装置、15・・・GPS衛星、20・・・GPS装置、21・・・時刻表示装置、22・・・RTC、23・・・太陽電池、27・・・ディスプレイ、31・・・ユーザー入力判断プログラム、32・・・光発電量判断プログラム、33・・・衛星サーチプログラム、34・・・衛星捕捉判断プログラム、35・・・時刻データ取得プログラム、36・・・時刻表示更新プログラム、41・・・屋内衛星サーチデータ、42・・・屋外衛星サーチデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報衛星から送信される衛星時刻情報を含む衛星信号を受信する衛星信号受信部と、
時刻情報を生成する時刻情報生成部と、
前記衛星信号受信部が受信した衛星時刻情報に基づいて前記時刻情報を修正する時刻情報修正部と、を有し、
前記衛星信号受信部が前記衛星時刻情報を受信すべき前記位置情報衛星を選択する位置情報衛星選択部を備え、
前記位置情報衛星選択部は、前記位置情報衛星から発信される前記衛星信号の送信周波数の変動情報に基づいて前記位置情報衛星を選択する構成となっていることを特徴とする時刻修正装置。
【請求項2】
前記送信周波数の変動情報が、前記送信周波数の理論値との誤差情報であり、
前記位置情報衛星選択部は、前記送信周波数の理論値との誤差情報が小さい前記位置情報衛星を優先的に選択する構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の時刻修正装置。
【請求項3】
前記送信周波数の理論値との誤差情報は、前記位置情報衛星が近接方向に移動している近接周波数誤差情報と、前記位置情報衛星が遠ざかる方向に移動する情報である遠隔周波数誤差情報と、を有し、
前記位置情報衛星選択部は、前記近接周波数誤差情報と前記遠隔周波数誤差情報とを交互に、及び/又は前記近接周波数誤差情報を前記遠隔周波数誤差情報に優先して周波数走査をする構成となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の時刻修正装置。
【請求項4】
前記送信周波数の変動情報が、周波数変化量の大小情報であり、前記位置情報衛星選択部は、この周波数変化量が大きい前記位置情報衛星を優先的に選択する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の時刻修正装置。
【請求項5】
前記時刻修正装置の環境情報の相違に基づいて、前記位置情報衛星を受信すべき受信範囲を定める受信範囲情報を格納する受信範囲情報格納部を有し、
前記位置情報衛星選択部は、この受信範囲情報に基づいて前記位置情報衛星を選択することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の時刻修正装置。
【請求項6】
前記受信範囲情報が、前記時刻修正装置が屋内に配置されるときに周波数走査すべき屋内受信範囲情報と、前記時刻修正装置が屋外に配置されるときに周波数走査すべき屋外受信範囲情報と、を有すると共に、前記時刻修正装置が屋内又は屋外のいずれに配置されているかを判断する屋内外判断部を有することを特徴とする請求項5に記載の時刻修正装置。
【請求項7】
前記屋内外判断部が、光発電による発電量に基づいて屋内外を判断することを特徴とする請求項6に記載の時刻修正装置。
【請求項8】
位置情報衛星から送信される衛星時刻情報を含む衛星信号を受信する衛星信号受信部と、
時刻情報を生成する時刻情報生成部と、
前記衛星信号受信部が受信した衛星時刻情報に基づいて前記時刻情報を修正する時刻情報修正部と、を有し、
前記衛星信号受信部が前記衛星時刻情報を受信すべき前記位置情報衛星を選択する位置情報衛星選択部を備え、
前記位置情報衛星選択部は、前記位置情報衛星から発信される前記衛星信号の送信周波数の変動情報に基づいて前記位置情報衛星を選択する構成となっていることを特徴とする時刻修正装置付き計時装置。
【請求項9】
衛星信号受信部が、位置情報衛星から送信される衛星時刻情報を含む衛星信号を受信する衛星信号受信工程と、
時刻情報修正部が、前記衛星信号受信部が受信した衛星時刻情報に基づいて時刻情報生成部の時刻情報を修正する時刻情報修正工程と、を有し、
位置情報衛星選択部は、前記衛星信号受信部が前記衛星時刻情報を受信すべき前記位置情報衛星を選択すると共に、前記位置情報衛星から発信される前記衛星信号の送信周波数の変動情報に基づいて前記位置情報衛星を選択する構成となっていることを特徴とする時刻修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−36547(P2009−36547A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199091(P2007−199091)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】