説明

時刻装置および可搬型電子機器

【課題】要求される時刻精度を維持しながら、低消費電力でかつ調整コストを低減できる時刻装置を提供する。
【解決手段】GPS受信機11からの基準1秒パルスに基づいて、周波数誤差測定部(12,13a)により電圧制御型水晶発振器15の発振周波数の誤差を測定する。その測定結果に基づいて、制御部13は、D/A変換器14の制御電圧を制御して、電圧制御型水晶発振器15に対する周波数校正動作を、時間間隔をあけて繰り返す。周波数校正動作が終了する毎に、制御電圧データを電圧制御型水晶発振器15の温度と対応づけて温度補償用データとして不揮発性メモリ17に記憶する。周波数校正動作時を除く期間は、GPS受信機11の電源を電源制御回路19によりオフする。周波数校正動作時を除く期間、温度補償用データに基づいて、電圧制御型水晶発振器15の現在温度に対応する制御電圧データを制御部13からD/A変換器14に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、時刻装置および可搬型電子機器に関し、詳しくは、商用電源の得られない場所で用いられるバッテリー駆動の測定装置やシステムに好適な時刻装置およびその時刻装置を用いた可搬型電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS(Global Positioning Satellite)衛星からの電波を受信して、協定世界時UTC(Coordinated Universal Time)に同期した基準時刻信号から電圧制御型水晶発振器の発振周波数を常時校正する基準周波数発生装置がある(例えば、特開平8−146166号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
このような高精度の発振周波数のクロック信号が得られる時刻装置を用いて、標準時刻信号に対する誤差が極めて少ない波形データサンプリングを行う測定装置が考えられる。しかしながら、商用電源の得られない場所で使用するバッテリー駆動の地震観測用レコーダに、上記時刻装置を用いて要求される時刻精度を実現した場合、消費電力の大きいGPS受信機を用いて電圧制御型水晶発振器の周波数校正を常時行うと、バッテリー駆動時間が短くなるため、長時間の測定ができないという問題がある。
【0004】
また、上記時刻装置では、電圧制御型水晶発振器の発振周波数は、温度変化により変動するため、装置内の温度を温度センサにより検出して、その検出された温度に基づいて、予め発振周波数の温度特性を測定して得た温度補償データにより、電圧制御型水晶発振器の制御電圧を制御するものがある(例えば、特開平10−93343号公報(特許文献1)参照)。
【0005】
このような時刻装置では、複数の時刻装置を製造するとき、精密に管理された温度環境下で個々の時刻装置の補正データを取得して記憶させる必要があり、時刻装置の調整コストが高くつくという問題がある。
【特許文献1】特開平8−146166号公報
【特許文献2】特開平10−93343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明の課題は、要求される時刻精度を維持しながら、低消費電力でかつ調整コストを大幅に低減できる時刻装置および可搬型電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の時刻装置は、
基準時刻信号およびその基準時刻信号に同期した基準1秒パルスを出力する基準時刻情報出力部と、
電源投入時に上記基準時刻情報出力部からの上記基準時刻信号に合わせて時刻が修正され、時刻計時に同期した1秒パルスを出力する時刻計時部と、
上記時刻計時部に発振周波数に基づくクロック信号を出力する電圧制御型水晶発振器と、
上記電圧制御型水晶発振器の発振周波数を制御する制御電圧を出力するD/A変換器と、
上記電圧制御型水晶発振器の温度を検出する温度センサと、
上記基準時刻情報出力部からの上記基準1秒パルスに基づいて、標準発振周波数に対する上記電圧制御型水晶発振器の発振周波数の誤差を測定する周波数誤差測定部と、
上記周波数誤差測定部の測定結果に基づいて、上記D/A変換器から出力される上記制御電圧を制御して、上記電圧制御型水晶発振器の発振周波数を校正する周波数校正動作を、時間間隔をあけて繰り返し行う制御部と、
上記周波数校正動作が終了する毎に、上記制御部から上記D/A変換器に出力された上記制御電圧を制御するための制御電圧データを、上記温度センサにより検出された上記電圧制御型水晶発振器の温度と対応づけて温度補償用データとして記憶する不揮発性メモリと、
上記制御部により制御され、上記周波数校正動作時を除く期間は少なくとも上記基準時刻情報出力部の電源をオフする電源制御回路と
を備え、
上記制御部は、上記周波数校正動作時を除く期間、上記不揮発性メモリに記憶された上記温度補償用データに基づいて、上記温度センサにより検出された上記電圧制御型水晶発振器の現在温度に対応する上記制御電圧データを上記D/A変換器に出力することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、基準時刻情報出力部からの基準1秒パルスに基づいて、標準発振周波数に対する電圧制御型水晶発振器の発振周波数の誤差を周波数誤差測定部により測定し、その測定結果に基づいて、制御部は、D/A変換器から出力される制御電圧を制御して、電圧制御型水晶発振器の発振周波数を校正する。この周波数校正動作を、制御部は、時間間隔をあけて繰り返し行う。そして、上記周波数校正動作が終了する毎に、制御部からD/A変換器に出力された上記制御電圧を制御するための制御電圧データを、温度センサにより検出された電圧制御型水晶発振器の温度と対応づけて温度補償用データとして不揮発性メモリに記憶する。また、上記周波数校正動作時を除く期間は、制御部により制御された電源制御回路により、少なくとも基準時刻情報出力部の電源をオフする。また、上記制御部は、周波数校正動作時を除く期間、不揮発性メモリに記憶された温度補償用データに基づいて、温度センサにより検出された電圧制御型水晶発振器の現在温度に対応する制御電圧データをD/A変換器に出力する。これにより、個別部品の温度係数のバラツキも含めた個々の装置固有の温度補正データが自動的に取得でき、生産時の調整コストが大幅に削減できる。したがって、要求される時刻精度を維持しながら、低消費電力でかつ調整コストを大幅に低減できる。
【0009】
また、一実施形態の時刻装置では、
上記周波数誤差測定部は、上記基準時刻情報出力部からの上記基準1秒パルスの立ち上がりまたは立ち下がりと、上記時刻計時部からの上記1秒パルスの立ち上がりまたは立ち下がりとの時間差の測定を、上記基準1秒パルスに基づく所定の比較時間をあけて少なくとも2回繰り返して、上記所定の比較時間をあけて測定された前後の時間差の差分を算出する時間差の差分算出部を有すると共に、
上記制御部は、上記周波数誤差測定部により算出された上記時間差の差分がゼロになるように、上記制御電圧データを補正して上記D/A変換器に出力する制御電圧データ出力部を有する。
【0010】
上記実施形態によれば、上記周波数誤差測定部は、基準時刻情報出力部からの基準1秒パルスの立ち上がり(または立ち下がり)と、時刻計時部からの1秒パルスの立ち上がり(または立ち下がり)との時間差の測定を、所定の比較時間をあけて少なくとも2回繰り返して、前後の時間差の差分(標準発振周波数に対する電圧制御型水晶発振器の発振周波数の誤差に相当)を時間差の差分算出部により算出する。ここで、「時間差」は、基準時刻情報出力部から出力される基準時刻信号と時刻計時部の計時時刻との時刻差を表す。
【0011】
そうして算出された前後の時間差の差分がゼロになるように、制御部の制御電圧データ出力部は、制御電圧データを補正してD/A変換器に出力する。上記基準時刻情報出力部からの基準1秒パルスと時刻計時部からの1秒パルスとの時間差の差分は、標準発振周波数に対する電圧制御型水晶発振器の発振周波数の誤差に相当するから、この時間差の差分を略ゼロにすることにより、電圧制御型水晶発振器の発振周波数の誤差を略ゼロ(要求される時刻精度を満足する誤差範囲内)にすることが可能となる。このように、電圧制御型水晶発振器の発振周波数の誤差を、基準時刻情報出力部からの基準1秒パルスの立ち上がり(または立ち下がり)と、時刻計時部からの1秒パルスの立ち上がり(または立ち下がり)との時間差の差分により求めることができ、桁数の大きなカウンタを用いることなく、簡単な構成で周波数誤差を測定できる。
【0012】
また、一実施形態の時刻装置では、上記制御部は、上記周波数誤差測定部における上記所定の比較時間を、要求される時刻精度に基づいて設定するための比較時間設定部を有する。
【0013】
上記実施形態によれば、上記制御部の比較時間設定部により、要求される時刻精度に基づいて周波数誤差測定部における上記所定の比較時間を設定することによって、例えば、要求される時刻精度が高いときは、上記所定の比較時間を長くして、周波数誤差の検出精度を上げて周波数校正動作を行う。また、要求される時刻精度が低いときは、上記所定の比較時間を短くして、周波数誤差の検出精度を下げて周波数校正動作を行うことにより、基準時刻情報出力部の電源オン時間を少なくできる。
【0014】
また、一実施形態の時刻装置では、上記制御部は、上記周波数校正動作が終了して上記基準時刻情報出力部の電源を上記電源制御回路によりオフしてから、次に上記GPS受信機の電源をオンして上記周波数校正動作を開始するまでの時間間隔を、上記電圧制御型水晶発振器の発振周波数の誤差が大きくなるほど短くする一方、上記誤差が小さくなるほど長くする。
【0015】
上記実施形態によれば、上記制御部は、周波数校正動作が終了して基準時刻情報出力部の電源を電源制御回路によりオフしてから、次に基準時刻情報出力部の電源をオンして周波数校正動作を開始するまでの時間間隔を、電圧制御型水晶発振器の発振周波数の誤差が大きくなるほど短くすることにより、電圧制御型水晶発振器の発振周波数の校正をより早く行うことができる。一方、電圧制御型水晶発振器の発振周波数の誤差が小さくなるほど長くすることにより、時刻精度を維持したままで、周波数校正動作の頻度を少なくして、基準時刻情報出力部の電源オン時間を少なくできる。
【0016】
また、一実施形態の時刻装置では、上記制御部は、上記周波数校正動作が終了して上記基準時刻情報出力部の電源を上記電源制御回路によりオフしてから、次に上記GPS受信機の電源をオンして上記周波数校正動作を開始するまでの時間間隔を、要求される時刻精度が高くなるほど短くする一方、上記要求される時刻精度が低くなるほど長くする。
【0017】
上記実施形態によれば、上記制御部は、周波数校正動作が終了して基準時刻情報出力部の電源を電源制御回路によりオフしてから、次にGPS受信機の電源をオンして周波数校正動作を開始するまでの時間間隔を、要求される時刻精度が高くなるほど短くすることにより、電圧制御型水晶発振器の発振周波数を校正した後の次の周波数校正までの周波数変動が小さくなり、要求される時刻精度を維持できる。一方、要求される時刻精度が低くなるほど長くすることにより、次の周波数校正までの周波数変動が大きくなっても要求される時刻精度を維持することが可能となり、周波数校正動作の頻度を少なくして、基準時刻情報出力部の電源オン時間を少なくできる。
【0018】
また、一実施形態の時刻装置では、上記基準時刻情報出力部は、協定世界時(UTC)に同期した上記基準時刻信号および上記基準1秒パルスを出力するGPS受信機である。
【0019】
上記実施形態によれば、上記基準時刻情報出力部としてGPS受信機を用いることによって、協定世界時(UTC)に同期した高精度の基準時刻信号と基準1PPS信号を容易に得ることができる。
【0020】
また、一実施形態の時刻装置では、上記基準時刻情報出力部は、原子周波数標準器を内蔵する人工衛星からの基準時刻信号を含む電波を受信して、上記基準時刻信号および上記基準1秒パルスを出力する電波受信機である。
【0021】
上記実施形態によれば、上記基準時刻情報出力部として原子周波数標準器を内蔵する人工衛星からの基準時刻信号を含む電波を受信する電波受信機を用いることによって、人工衛星の基準時刻に同期した高精度の基準時刻信号と基準1PPS信号を容易に得ることができる。
【0022】
また、一実施形態の時刻装置では、上記基準時刻情報出力部は、高精度の基準時刻情報を含む信号を受信して、上記基準時刻信号および上記基準1秒パルスを出力する受信回路である。
【0023】
上記実施形態によれば、上記基準時刻情報出力部として高精度の基準時刻情報を含む信号を受信する電波受信回路を用いることによって、高精度の基準時刻情報に同期した基準時刻信号と基準1PPS信号を容易に得ることができる。
【0024】
また、一実施形態の時刻装置では、上記電圧制御型水晶発振器は、上記電圧制御型水晶発振器の外側と熱的に分離されている。
【0025】
上記実施形態によれば、上記電圧制御型水晶発振器が外側と熱的に分離されていることによって、電圧制御型水晶発振器の温度変化を抑えて、発振周波数を安定させることができる。
【0026】
また、一実施形態の時刻装置では、上記D/A変換器は、上記制御電圧データを保持するラッチ機能を有する。
【0027】
上記実施形態によれば、上記D/A変換器が上記制御電圧データを保持するラッチ機能を有することにより、制御電圧データを出力する制御部側で保持する必要がなくなる。
【0028】
また、この発明の可搬型電子機器では、
上記のいずれか1つの時刻装置と、
少なくとも上記時刻装置に電力を供給するバッテリーと
を備えたことを特徴とする。
【0029】
上記構成によれば、要求される時刻精度を維持しながら、低消費電力でかつ調整コストを大幅に低減できる時刻装置を用いることによって、少なくとも上記時刻装置に電力を供給するバッテリーの寿命を長くできると共に、商用電源の得られない場所で長時間の運転ができる。
【発明の効果】
【0030】
以上より明らかなように、この発明の時刻装置によれば、要求される時刻精度を維持しながら、低消費電力でかつ調整コストを大幅に低減できる時刻装置を実現することができる。
【0031】
また、この発明の可搬型電子機器によれば、上記時刻装置を用いることにより、商用電源の得られない場所で長時間の運転が可能なバッテリー駆動の可搬型電子機器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明の時刻装置および可搬型電子機器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0033】
図1はこの発明の実施の一形態の時刻装置の構成を示すブロック図である。
【0034】
この実施形態の図1に示す時刻装置は、屋外で使用することを前提としたバッテリー駆動の地震観測用レコーダ(図示せず)に搭載される。この地震観測用レコーダにおいて要求される時刻精度は、協定世界時UTC(Coordinated Universal Time)に対して常時1msec以下の誤差である。
【0035】
この時刻装置は、図1に示すように、基準時刻情報出力部の一例としてのGPS受信機11と、上記GPS受信機11から出力された基準1PPS(1パルス/秒)信号を受ける時間差測定部12と、上記GPS受信機11から出力された基準時刻信号および時間差測定部12により測定された時間差を表す信号を受ける制御部13と、上記制御部13からの制御電圧データを表す信号を受けて、制御電圧を出力するD/A変換器14と、上記D/A変換器14からの制御電圧により発振周波数が制御される電圧制御型水晶発振器15(標準発振周波数4MHz)と、上記電圧制御型水晶発振器15の温度を測定する温度センサ16と、上記制御部13により読出しおよび書き込みが行われる不揮発性メモリ17と、上記制御部13により制御され、電圧制御型水晶発振器15からのクロック信号(4MHz)により時刻を計時する時刻計時部の一例としてのリアルタイムクロック18と、上記制御部13により制御され、各部の電源のオンオフを制御する電源制御回路19とを備えている。
【0036】
上記GPS受信機11から出力される基準時刻信号および基準1PPS信号は、協定世界時UTCに同期している。
【0037】
また、上記時間差測定部12は、GPS受信機11からの基準1PPS信号とリアルタイムクロック18から出力される1PPS信号との時間差を、電圧制御型水晶発振器15からのクロック信号を用いて測定する。ここで、時間差の測定分解能は、4MHzのクロック信号に基づく0.25μsecである。
【0038】
具体的には、基準1PPS信号が30パルス分(30秒)の比較時間で、時間差測定部12によりGPS受信機11からの基準1PPS信号の立ち上がりと、リアルタイムクロック18からの1PPS信号の立ち上がりとの時間差を測定する。ここで、時間差の測定分解能は、電圧制御型水晶発振器15からの4MHzのクロック信号に基づく0.25μsecである。そして、上記制御部13の時間差の差分算出部13aにより、時間差測定部12で上記比較時間をあけて測定された前後の時間差の差分(標準発振周波数に対する電圧制御型水晶発振器15の発振周波数の誤差に相当)を算出する。
【0039】
図7(a)〜(d)は時間差の差分の測定を説明するための図を示しており、(a)はGPS受信機11からの基準1PPS信号、(b)はリアルタイムクロック18からの1PPS信号、(c)は基準1PPS信号と1PPS信号との時間差△t1,△t2,…に対応する時間だけオンするゲート信号、(c)は上記ゲート信号がオンのときにカウンタ(図示せず)に入力されるクロック信号を夫々示している。なお、図7(c),(d)では、図を見やすくするために時間軸を拡大して示している。
【0040】
ここで、時間差△t1と時間差△t2との差分は、基準1PPS信号の30パルス分(30秒)の時間において、標準発振周波数4MHzに対するクロック信号の周波数誤差を表している。すなわち、周波数誤差がゼロなら、時間差△t1,△t2は一致する。また、電圧制御型水晶発振器15の発振周波数が低い場合は、時間差の差(△t1−△t2)は正の値となる一方、電圧制御型水晶発振器15の発振周波数が高い場合は、時間差の差(△t1−△t2)が負の値となる。
【0041】
なお、時間差の差分を算出する代わりに大きな桁数のカウンタを用いて、GPS受信機11からの基準1PPS信号が30パルス分(30秒)の間、電圧制御型水晶発振器15からの4MHzのクロック信号をカウントしても良い。
【0042】
図8(a)〜(c)は大きな桁数のカウンタ(図示せず)を用いて電圧制御型水晶発振器15のクロック信号をカウントする場合について説明するための図を示しており、(a)はGPS受信機11からの基準1PPS信号、(b)は基準1PPS信号の30パルス分(30秒)の間、オンするゲート信号、(c)は上記ゲート信号がオンのときに大きな桁数のカウンタに入力されるクロック信号を夫々示している。
【0043】
例えば、電圧制御型水晶発振器15からの4MHzのクロック信号に誤差がなく正確であれば、基準1PPS信号が30パルス分(30秒)の間のカウント数は、4×10×30となる。電圧制御型水晶発振器15の発振周波数が低い場合は、カウント数は少なくなる一方、電圧制御型水晶発振器15の発振周波数が高い場合は、カウント数が多くなる。
【0044】
上記電圧制御型水晶発振器15は、温度補償型水晶発振器(VC−TCXO(Voltage Controlled - Temperature Compensated crystal Oscillator))を用いている。電圧制御型であれば必ずしも温度補償型でなくても良い。この電圧制御型水晶発振器15の4MHzの発振周波数の温度特性は−30℃〜75℃において±2.5ppmである。この電圧制御型水晶発振器15は、時刻装置だけでなく、図示しない地震観測用レコーダの他の回路にもクロック信号を供給している(*印参照)。
【0045】
また、上記電圧制御型水晶発振器15に対して制御電圧を出力して発振周波数を制御するD/A変換器14は、高分解能での制御が必要なために14ビットのD/A変換器を用いている。また、上記温度センサ16は、測定範囲が−30℃〜100℃である。この温度センサ16は、測定再現性が良ければ必ずしも絶対温度精度や直線性が優れていなくても良い。
【0046】
上記不揮発性メモリ17は、EEPROM(電気的消去書込み可能な読出し専用メモリ)を用いている。この不揮発性メモリ17に記憶する制御電圧データと温度データのセットデータ(温度補償用データ)は、温度データを基準に管理する(温度データ分解能は0.1℃)。
【0047】
また、上記リアルタイムクロック18は、オートカレンダ機能付きである。
【0048】
上記電源制御回路19は、この時刻装置だけでなく、図示しない地震観測用レコーダの他の回路の電源も制御している(*印参照)。
【0049】
上記制御部13は、マイクロコンピュータと入出力回路などからなり、時刻装置だけでなく、地震観測用レコーダの他の回路の制御も兼ねている。また、制御部13は、時間差の差分算出部13aと、D/A変換器14に制御電圧データを出力する制御電圧データ出力部13bと、要求される時刻精度に基づいて所定の比較時間を設定する比較時間設定部13cとを有している。上記時間差測定部12と時間差の差分算出部13aで周波数誤差測定部を構成している。
【0050】
図2は上記制御部13の電圧制御型水晶発振器15の周波数校正動作およびGPS受信機11の電源制御に関するフローチャートを示している。
【0051】
電源投入時、電圧制御型水晶発振器15は初期状態で水晶発振が行われ、リアルタイムクロック18は、仮の日付時刻でスタートする。
【0052】
そして、図2のステップS1でGPS受信機11の電源をオンして立ち上げた後、ステップS2に進み、GPS受信機11からの基準時刻信号でリアルタイムクロック18を正しい日付時刻に修正する。ここで、リアルタイムクロック18の時刻精度は、協定世界時UTCに対して数μsec以下の誤差となるようにしている。
【0053】
次に、ステップS3に進み、この状態でGPS受信機11からの基準1PPS信号とリアルタイムクロック18の1PPS信号の時間差の測定を時間差測定部12により30秒間隔(基準1PPS信号の30パルス分)で行い、時間差測定部12により測定された前回の時間差と今回の時間差の差分を時間差の差分算出部13aにより算出する。
【0054】
次に、ステップS4に進み、ステップS3で算出された時間差の差分がゼロでないとき、ステップS12に進み、時間差の差分がゼロになるように、制御電圧データ出力部13bからD/A変換器14に制御電圧データを出力した後、ステップS3に戻る。
【0055】
一方、ステップS4で時間差の差分がゼロと判断すると、ステップS5に進む。ここで、時間差の差分は、完全にゼロでなくともよい。4MHzのクロック信号で±1カウント以内に調整すれば、電圧制御型水晶発振器15の発振周波数の誤差を1×10−8程度で調整できる。
【0056】
次に、制御電圧データ出力部13bからD/A変換器14に出力される制御電圧データを固定し、ステップS5で現在の時間差データを不揮発性メモリ17に記憶する。
【0057】
そして、ステップS6に進み、電圧制御型水晶発振器15の温度を測定した後、ステップS7に進み、制御電圧データと温度データのセットデータを不揮発性メモリ17に記憶する。
【0058】
次に、ステップS8に進み、GPS受信機11の電源を遮断した後、ステップS9に進み、次のGPS受信機11の電源オン時刻の計算を行う。ここで、次のGPS受信機11の電源立ち上げるまでの時間間隔は初回のみ固定値とし、この実施の形態では1時間としている。
【0059】
そして、ステップS10でGPS受信機11の電源オン時刻になったと判定すると、ステップS11に進み、GPS受信機11の電源をオンした後、ステップS3に戻る。
【0060】
ステップS3以降は、同様にGPS受信機11からの基準1PPS信号とリアルタイムクロック18の1PPS信号の時間差測定を行い、その時間差データを前回の時間差データと比較をする。
【0061】
次回のGPS受信機11を立ち上げるまでの時間間隔は、この時間差の差分に基づいて判断する。この実施の形態における時間間隔の判断基準を表1に示している。
【0062】
【表1】

【0063】
図3は上記制御部13のセットデータ記憶処理(ステップS7)のフローチャートを示している。
【0064】
このセットデータ記憶処理では、ステップS21で測定された温度に該当するセットデータが不揮発性メモリ17にあるか否かを判定する。
【0065】
そして、ステップS21で測定された温度に該当するセットデータが不揮発性メモリ17にあると判定したときは、ステップS22に進み、電圧制御データを不揮発性メモリ17に記憶された既存データと平均値処理する。
【0066】
次に、ステップS23に進み、ステップS22で求めた平均値を不揮発性メモリ17の既存データに上書きして、この処理を終了する。
【0067】
一方、ステップS21で測定された温度に該当するセットデータが不揮発性メモリ17にないと判定したときは、ステップS24に進み、不揮発性メモリ17にセットデータを記憶して、この処理を終了する。
【0068】
上記制御電圧データと温度データのセットデータは、温度データを基準にして0.1℃分解能で記憶するが、同じ温度によるセットデータが取得できた場合は、上述のとおり上書きを行う。この上書きを行うとき、データ急変のリスクを避けるために既存データとの平均化を行ったが、既存データとの比較である一定以上の変動が生じる場合は上書きしない等の判断を加えても良い。このセットデータは、水晶発信周波数に関する個別の時刻装置の部品の持つ温度係数に関する影響を全て包含したものになり、最新データに書き換えることにより経時変動にも対応できる。
【0069】
また、図4A,図4Bは上記制御部13のGPS受信機11の電源オン時刻計算(ステップS9)のフローチャートを示している。
【0070】
この電源オン時刻計算の処理では、図4Aに示すステップS31で前回の時間差データがないと判定すると、ステップS32に進み、次回のGPS受信機11の電源オン時刻を1時間後として、図4Bに示すステップS41進み、今回の時間間隔を記憶する。
【0071】
一方、図4Aに示すステップS31で前回の時間差データがあると判定すると、ステップS33に進み、前回の時間差との差分が1msec以上か否かを判定する。そして、ステップS33で前回の時間差との差分が1msec以上であると判定すると、ステップS32に戻る。
【0072】
また、ステップS33で前回の時間差との差分が1msec未満であると判定すると、ステップS34に進み、前回の時間差との差分が0.8msec以上か否かを判定する。
【0073】
そして、ステップS34で前回の時間差との差分が0.8msec以上であると判定すると、ステップS35に進む一方、前回の時間差との差分が0.8msec未満であると判定すると、図4Bに示すステップS42に進む。
【0074】
次に、ステップS35で前回の時間間隔が1時間であると判定すると、ステップS32に進む一方、前回の時間間隔が1時間でないと判定すると、ステップS36に進む。
【0075】
そして、ステップS36で次回のGPS受信機11の電源オン時刻は、(前回の時間間隔−1時間)後として、図4Bに示すステップS41進む。
【0076】
また、図4Bに示すステップS42では、前回の時間差との差分が0.6msec以上であると判定すると、ステップS43に進み、次回のGPS受信機11の電源オン時刻は、前回の時間間隔と同一として、ステップS41に進む。
【0077】
一方、ステップS42では、前回の時間差との差分が0.6msec未満であると判定すると、ステップS44に進み、次回のGPS受信機11の電源オン時刻は、(前回の時間間隔+1時間)後として、ステップS41に進む。
【0078】
上記GPS受信機11の電源がオフの期間において、図5のフローチャートにしたがって電圧制御型水晶発振器15の温度計測による電圧制御が行われる。
【0079】
この電圧制御の処理では、まず、図5に示すステップS51で電圧制御型水晶発振器15の温度を温度センサ16により測定した後、ステップS52に進む。
【0080】
次に、ステップS52で、ステップS51で測定された温度に該当するセットデータが不揮発性メモリ17にあると判定すると、ステップS53に進み、電圧制御型水晶発振器15の電圧制御を行った後、この処理を終了する。
【0081】
具体的には、温度センサ16により測定された温度データに対応する制御電圧データを不揮発性メモリ17から読み出して、その制御電圧データを制御電圧データ出力部13bからD/A変換器14に出力する。
【0082】
一方、ステップS52で、ステップS51で測定された温度に該当するセットデータが不揮発性メモリ17にないと判定すると、ステップS54に進み、制御電圧データの近似値計算を行った後、ステップS53に進む。
【0083】
図6は上記ステップS54の制御電圧データの近似値計算のフローチャートを示している。ここで、予め少なくとも1組の代表的なセットデータ(温度補償用データ)を不揮発性メモリ17に記憶しているものとする。
【0084】
この制御電圧データの近似値計算の処理では、まず、ステップS61でセットデータが1組だけ存在すると判定すると、ステップS62に進み、不揮発性メモリ17に記憶されているセットデータを使用して、この処理を終了する。
【0085】
一方、ステップS61で該当するセットデータが2組以上存在すると判定すると、ステップS63に進み、測定温度の高温側と低温側にセットデータが存在するか否かを判定する。そして、ステップS63で、測定温度の高温側と低温側にセットデータが存在すると判定すると、ステップS64に進む一方、測定温度の高温側と低温側にセットデータが存在しないと判定すると、ステップS65に進む。
【0086】
そして、ステップS64では、高温側と低温側で測定温度に最も近いセットデータで比例配分法により近似値を計算した後、この処理を終了する。
【0087】
一方、ステップS65では、測定温度に最も近い2点のセットデータで比例配分法により近似値計算した後、この処理を終了する。
【0088】
このように、上記GPS受信機11が電源オフ状態で動作していない間は、不揮発性メモリ17に記憶されている制御電圧データと温度データのセットデータに基づいて、電圧制御型水晶発振器15の電圧制御を行う。そして、定期的に電圧制御型水晶発振器15の温度を測定し、測定温度が0.1℃以上変化した場合、記憶されているセットデータと同一温度の制御電圧に変更する。また、測定温度と同一温度のセットデータが無い場合は、最も近い2点の温度データを比例配分等で近似して制御電圧を決定する。
【0089】
この実施形態では、比例配分法を用いて近似値計算をしたが、近似曲線などを用いた他の方法により近似値計算をしてもよい。
【0090】
上記電圧制御型水晶発振器15を装置筐体や他の回路から熱的に分離した構造にすることによって、温度変化による発振周波数の変動が抑えられるので、電圧制御型水晶発振器15の温度測定による電圧制御の時間間隔を長期化できる。
【0091】
以上により、この第1実施形態の時刻装置は、電源投入後の時間経過と共に回路の安定化とデータの蓄積が進み、要求される時刻精度を維持しながら、GPS受信機11の電源投入の時間間隔が長期化でき、消費電力を低減することができる。
【0092】
また、出荷時には、制御電圧データと温度データのセットデータの蓄積を進めておくことが望ましいが、GPS信号が受信可能な状態で装置の仕様範囲内で比較的緩やかな温度勾配で周囲温度が変化する環境下において、装置を動作させることにより、制御電圧データと温度データのセットデータの蓄積することができるので、特段の調整作業は不要である。
【0093】
上記構成の時刻装置において、GPS受信機11からの基準1秒パルスに基づいて、標準発振周波数4MHzに対する電圧制御型水晶発振器15の発振周波数の誤差を周波数誤差測定部(12,13a)により測定し、その測定結果に基づいて、制御部13は、D/A変換器14から出力される制御電圧を制御して、電圧制御型水晶発振器15の発振周波数を校正する。この周波数校正動作を、制御部13は、時間間隔をあけて繰り返し行う。そして、上記周波数校正動作が終了する毎に、制御部13からD/A変換器14に出力された制御電圧データを、温度センサ16により検出された電圧制御型水晶発振器15の温度を表す温度データと対応づけて温度補償用データとして不揮発性メモリ17に記憶する。また、上記周波数校正動作時を除く期間は、制御部13により制御された電源制御回路19により、消費電力が他の回路と比べて大きいGPS受信機11の電源をオフする。また、上記制御部13は、周波数校正動作時を除く期間、不揮発性メモリ17に記憶された温度補償用データに基づいて、温度センサ16により検出された電圧制御型水晶発振器15の現在温度に対応する制御電圧データをD/A変換器14に出力する。これにより、個別部品の温度係数のバラツキも含めた個々の装置固有の温度補償用データが自動的に取得でき、生産時の調整コストが大幅に削減できる。
【0094】
したがって、この第1実施形態の時刻装置において、要求される時刻精度を維持しながら、低消費電力でかつ調整コストを大幅に低減することができる。
【0095】
また、周波数誤差測定部(12,13a)は、GPS受信機11からの基準1PPS信号の立ち上がり(または立ち下がり)と、リアルタイムクロック18からの1PPS信号の立ち上がり(または立ち下がり)との時間差の測定を、所定の比較時間(この実施形態では基準1PPS信号の30パルス分)をあけて少なくとも2回繰り返して、前後の時間差の差分を時間差の差分算出部13aにより算出する。そうして算出された前後の時間差の差分がゼロになるように、制御部13の制御電圧データ出力部は、制御電圧データを補正してD/A変換器14に出力する。上記GPS受信機11からの基準1PPS信号とリアルタイムクロック18からの1PPS信号との時間差の差分は、標準発振周波数に対する電圧制御型水晶発振器15の発振周波数の誤差に相当するから、この時間差の差分を略ゼロにすることにより、電圧制御型水晶発振器15の発振周波数の誤差を略ゼロにすることが可能となる。このように、電圧制御型水晶発振器15の発振周波数の誤差を、GPS受信機11からの基準1PPS信号の立ち上がり(または立ち下がり)と、リアルタイムクロック18からの1PPS信号の立ち上がり(または立ち下がり)との時間差の差分により求めることができ、桁数の大きなカウンタを用いることなく、簡単な構成で周波数誤差を測定できる。
【0096】
また、上記制御部13の比較時間設定部13cにより、要求される時刻精度に基づいて周波数誤差測定部(12,13a)における上記所定の比較時間を設定することによって、例えば、要求される時刻精度が高いときは、上記所定の比較時間を長くして、周波数誤差の検出精度を上げて周波数校正動作を行う。また、要求される時刻精度が低いときは、上記所定の比較時間を短くして、周波数誤差の検出精度を下げて周波数校正動作を行うことにより、GPS受信機11の電源オン時間を少なくできる。
【0097】
例えば、地震観測用レコーダでは、要求される時刻精度は、協定世界時UTCに対して常時1msec以下の誤差であるが、この時刻装置によれば、他の分野において、要求される時刻精度が100msec以下の場合や、100μsec以下の場合などに対応することが可能となる。
【0098】
また、周波数校正動作が終了してGPS受信機11の電源を電源制御回路19によりオフしてから、次にGPS受信機11の電源をオンして周波数校正動作を開始するまでの時間間隔を、電圧制御型水晶発振器15の発振周波数の誤差(時間差の差)が大きくなるほど短くすることにより、電圧制御型水晶発振器15の発振周波数の校正をより早く行うことができる。一方、電圧制御型水晶発振器15の発振周波数の誤差(時間差の差)が小さくなるほど長くすることにより、時刻精度を維持したままで、周波数校正動作の頻度を少なくして、GPS受信機11の電源オン時間を少なくできる。
【0099】
また、周波数校正動作が終了してGPS受信機11の電源を電源制御回路19によりオフしてから、次にGPS受信機の電源をオンして周波数校正動作を開始するまでの時間間隔を、要求される時刻精度が高くなるほど短くすることにより、電圧制御型水晶発振器15の発振周波数を校正した後の次の周波数校正までの周波数変動が小さくなり、要求される時刻精度を維持できる。一方、要求される時刻精度が低くなるほど時間間隔を長くすることにより、次の周波数校正までの周波数変動が大きくなっても要求される時刻精度を維持することが可能となり、周波数校正動作の頻度を少なくして、GPS受信機11の電源オン時間を少なくできる。
【0100】
この要求される時刻精度に応じて上記時間間隔を調整する処理は、前述の電圧制御型水晶発振器15の発振周波数の誤差(時間差の差)に応じて上記時間間隔を調整する処理と合わせて行ってもよいし、いずれか一方のみを行ってもよい。
【0101】
また、上記GPS受信機11を用いることによって、協定世界時(UTC)に同期した高精度の基準時刻信号と基準1PPS信号を容易に得ることができる。
【0102】
また、上記D/A変換器14が制御電圧データを保持するラッチ機能を有することにより、制御電圧データを出力する制御部13側で保持する必要がなくなる。
【0103】
〔第2実施形態〕
図9はこの発明の第2実施形態の可搬型電子機器の一例としての地震観測用レコーダの構成を示すブロック図である。
【0104】
この第2実施形態の地震観測用レコーダは、第1実施形態の図1に示す時刻装置20を備えると共に、速度センサ(図示せず)からの第1〜第3入力信号をA/D変換する3つのA/D変換器21〜23と、上記時刻装置20からの時刻信号とA/D変換器21〜23からの信号を連続して記憶する記憶装置24と、上記A/D変換器21〜23にサンプリング信号を出力するサンプリング信号生成部25と、バッテリー26とを備えている。
【0105】
上記サンプリング信号生成部25は、時刻装置20からのクロック信号に基づいて、サンプリング信号を生成する。
【0106】
上記2実施形態の地震観測用レコーダでは、時刻装置20からの高精度なクロック信号に基づいて、A/D変換器21〜23によるサンプリングを行って、図1に示すリアルタイムクロック18からの時刻データと対応づけてA/D変換器21〜23のサンプリングデータが記憶装置24に記憶される。これと同時に、図1に示す不揮発性メモリ17に記憶された時間差データも記憶装置24に記憶される。そうして、記憶装置24に記憶されたサンプリングデータについて、時刻データから対応する時間差データ分を補正することにより、協定世界時UTCに対して誤差が1msec以下の正確な時刻が得られる。
【0107】
また、時刻装置20は、最初の電源投入時に図1に示すGPS受信機11からの基準時刻信号でリアルタイムクロック18を正しい日付時刻に修正するが、その後は、リアルタイムクロック18の時刻修正をせずに、電圧制御型水晶発振器15の周波数校正を行うことにより時刻精度を維持している。これにより、サンプリングデータの時系列が不連続になることがなく、全てのサンプリングデータについて協定世界時(UTC)に対する時刻誤差が1msec以下となる。
【0108】
上記構成の地震観測用レコーダによれば、要求される時刻精度を維持しながら、低消費電力でかつ調整コストを大幅に低減できる時刻装置20を用いることによって、電力を供給するバッテリーの寿命を長くでき、商用電源の得られない場所において長時間の運転が要求される地震観測用レコーダに特に好適である。
【0109】
上記第1,第2実施形態では、基準時刻情報出力部として協定世界時(UTC)に同期した基準時刻信号および基準1秒パルスを出力するGPS受信機11を用いたが、基準時刻情報出力部はこれに限らず、原子周波数標準器を内蔵する人工衛星からの基準時刻信号を含む電波を受信して、基準時刻信号および基準1秒パルスを出力する電波受信機であってもよいし、高精度の基準時刻情報を含む信号を受信して、基準時刻信号および基準1秒パルスを出力する受信回路であってもよい。
【0110】
一般的に、電圧制御型水晶発振器の発振周波数の変動要因は、機械的ストレス、温度変化、電圧変化、経時変化、であるが、適切に実装された装置の場合、振動や衝撃の少ない環境下では機械的ストレス要因は排除できる。本発明では、温度変化、電圧変化、を制御下に置き、また記憶させる制御電圧と温度のセットデータを最新調整測定データに書き換えることにより、経時変化にも対応できる。
【0111】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記第1,第2実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態の時刻装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は上記時刻装置の制御部による電圧制御型水晶発振器の周波数校正動作およびGPS受信機の電源制御を説明するフローチャートである。
【図3】図3は上記制御部のセットデータ記憶処理のフローチャートを示す図である。
【図4A】図4Aは上記制御部のGPS受信機の電源オン時刻計算のフローチャートを示す図である。
【図4B】図4Bは図4Aに続くフローチャートを示す図である。
【図5】図5は電圧制御型水晶発振器の温度計測による電圧制御の処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は制御電圧データの近似値計算の処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】図7(a)〜(d)は時間差の差分の測定を説明するための図である。
【図8】図8(a)〜(c)は大きな桁数のカウンタ(図示せず)を用いて電圧制御型水晶発振器のクロック信号をカウントする場合について説明するための図である。
【図9】図9はこの発明の第2実施形態の可搬型電子機器の一例としての地震観測用レコーダの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0113】
11…GPS受信機
12…時間差測定部
13…制御部
14…D/A変換器
15…電圧制御型水晶発振器
16…温度センサ
17…不揮発性メモリ
18…リアルタイムクロック
19…電源制御回路
20…時刻装置
21,22,23…A/D変換器
24…記憶装置
25…サンプリング信号生成部
26…バッテリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準時刻信号およびその基準時刻信号に同期した基準1秒パルスを出力する基準時刻情報出力部と、
電源投入時に上記基準時刻情報出力部からの上記基準時刻信号に合わせて時刻が修正され、時刻計時に同期した1秒パルスを出力する時刻計時部と、
上記時刻計時部に発振周波数に基づくクロック信号を出力する電圧制御型水晶発振器と、
上記電圧制御型水晶発振器の発振周波数を制御する制御電圧を出力するD/A変換器と、
上記電圧制御型水晶発振器の温度を検出する温度センサと、
上記基準時刻情報出力部からの上記基準1秒パルスに基づいて、標準発振周波数に対する上記電圧制御型水晶発振器の発振周波数の誤差を測定する周波数誤差測定部と、
上記周波数誤差測定部の測定結果に基づいて、上記D/A変換器から出力される上記制御電圧を制御して、上記電圧制御型水晶発振器の発振周波数を校正する周波数校正動作を、時間間隔をあけて繰り返し行う制御部と、
上記周波数校正動作が終了する毎に、上記制御部から上記D/A変換器に出力された上記制御電圧を制御するための制御電圧データを、上記温度センサにより検出された上記電圧制御型水晶発振器の温度と対応づけて温度補償用データとして記憶する不揮発性メモリと、
上記制御部により制御され、上記周波数校正動作時を除く期間は少なくとも上記基準時刻情報出力部の電源をオフする電源制御回路と
を備え、
上記制御部は、上記周波数校正動作時を除く期間、上記不揮発性メモリに記憶された上記温度補償用データに基づいて、上記温度センサにより検出された上記電圧制御型水晶発振器の現在温度に対応する上記制御電圧データを上記D/A変換器に出力することを特徴とする時刻装置。
【請求項2】
請求項1に記載の時刻装置において、
上記周波数誤差測定部は、上記基準時刻情報出力部からの上記基準1秒パルスの立ち上がりまたは立ち下がりと、上記時刻計時部からの上記1秒パルスの立ち上がりまたは立ち下がりとの時間差の測定を、上記基準1秒パルスに基づく所定の比較時間をあけて少なくとも2回繰り返して、上記所定の比較時間をあけて測定された前後の時間差の差分を算出する時間差の差分算出部を有すると共に、
上記制御部は、上記周波数誤差測定部により算出された上記時間差の差分がゼロになるように、上記制御電圧データを補正して上記D/A変換器に出力する制御電圧データ出力部を有することを特徴とする時刻装置。
【請求項3】
請求項2に記載の時刻装置において、
上記制御部は、上記周波数誤差測定部における上記所定の比較時間を、要求される時刻精度に基づいて設定するための比較時間設定部を有することを特徴とする時刻装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1つに記載の時刻装置において、
上記制御部は、上記周波数校正動作が終了して上記基準時刻情報出力部の電源を上記電源制御回路によりオフしてから、次に上記GPS受信機の電源をオンして上記周波数校正動作を開始するまでの時間間隔を、上記電圧制御型水晶発振器の発振周波数の誤差が大きくなるほど短くする一方、上記誤差が小さくなるほど長くすることを特徴とする時刻装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1つに記載の時刻装置において、
上記制御部は、上記周波数校正動作が終了して上記基準時刻情報出力部の電源を上記電源制御回路によりオフしてから、次に上記GPS受信機の電源をオンして上記周波数校正動作を開始するまでの時間間隔を、要求される時刻精度が高くなるほど短くする一方、上記要求される時刻精度が低くなるほど長くすることを特徴とする時刻装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1つに記載の時刻装置において、
上記基準時刻情報出力部は、協定世界時(UTC)に同期した上記基準時刻信号および上記基準1秒パルスを出力するGPS受信機であることを特徴とする時刻装置。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれか1つに記載の時刻装置において、
上記基準時刻情報出力部は、原子周波数標準器を内蔵する人工衛星からの基準時刻信号を含む電波を受信して、上記基準時刻信号および上記基準1秒パルスを出力する電波受信機であることを特徴とする時刻装置。
【請求項8】
請求項1から5までのいずれか1つに記載の時刻装置において、
上記基準時刻情報出力部は、高精度の基準時刻情報を含む信号を受信して、上記基準時刻信号および上記基準1秒パルスを出力する受信回路であることを特徴とする時刻装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1つに記載の時刻装置において、
上記電圧制御型水晶発振器は、上記電圧制御型水晶発振器の外側と熱的に分離されていることを特徴とする時刻装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1つに記載の時刻装置において、
上記D/A変換器は、上記制御電圧データを保持するラッチ機能を有することを特徴とする時刻装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1つに記載の時刻装置と、
少なくとも上記時刻装置に電力を供給するバッテリーと
を備えたことを特徴とする可搬型電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−222486(P2009−222486A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65690(P2008−65690)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(592061599)株式会社近計システム (14)
【Fターム(参考)】