説明

時計および携帯機器

【課題】扁平形状の電池についての誤挿入対策をコスト高や大型化を招くことなく確実に行うことができる時計および携帯機器を提供すること。
【解決手段】扁平形状における一方の平面部411および側面部412を構成するプラス極41と、他方の平面部を構成するマイナス極42とを有する電池4を電源とする回路基板2と、電池4が収納される電池収納部5とを備える時計であって、回路基板2は、基準電位が前記マイナス極側に設定された電源電圧で動作し、電池収納部5は、少なくとも回路基板2とは反対側の部分を含む位置に形成された開口部501を有する収納部本体50と、開口部501の内周面部に少なくとも一部が設けられて回路基板2に導通されるプラス接続端子51と、開口部501の回路基板2側とは反対側に設けられ電池4を回路基板2との間に押圧固定するとともに回路基板2に導通されるマイナス接続固定端子52とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイン型電池やボタン型電池などの扁平形状の電池が組み込まれる時計および携帯機器における電池の接続端子構造に関する。詳しくは、これらの偏平形状の電池が逆極性に組み込まれた場合でも安全性を確保できる電池の接続端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、時計をはじめとする小型薄型の携帯機器における電源として、高容量のリチウム電池を搭載したり、充放電が可能なリチウムイオン電池などを搭載することが多くなっている。これらの電池は扁平なコイン型が主流であり、扁平であるために表裏を判別し難いので、プラス極とマイナス極とが逆の状態で組み込まれ易い。このため、このようなコイン型電池は、電池ケースの一方の平面部および側面部に亘ってプラス極が形成され、マイナス極が電池ケースの他方の平面部にのみ形成された構造に標準化されており(例えば、特許文献1参照)、このようなプラス極とマイナス極との形状の相違によって極性の区別がつくようになっている。ただし、コイン型電池におけるプラス極とマイナス極との形状の差は僅かであって、各種機器における電池の固定構造には種々のものがあるため、電池交換時などに誤って、逆極性に誤挿入される可能性が高い。このように誤挿入されると、電池や回路部の損傷や、電池の破裂などが生じかねない。
【0003】
ところで、誤挿入の問題への対応としては、次の2つの考え方がある。
i)逆極性では挿入不可能な構造とする。
ii)逆極性で挿入されても安全な構造とする。
【0004】
従来、誤挿入の問題を解決しうる構造としては、コイン型ではないが円筒状の電池に関して、特許文献2〜4などが知られている。これらはいずれも電池のプラス極とマイナス極との形状差を利用した物理的な解決手段である。特許文献2では、マイナス接続端子が電池のマイナス極の中心から外れた位置に設けられるとともに、このマイナス接続端子近傍にリブが形成されていて、誤挿入時に電池のプラス極がリブに当たることによって誤挿入を防止している。また、特許文献3では、電池収納部のプラス接続端子に突起が形成され、誤挿入時にこの突起に電池のマイナス極の端縁部が当たることによって電池マイナス極と電池収納部のプラス接続端子とが通電しないようにしている。そして、特許文献4では、縦穴状の電池収納部において、電池をプラス極側から挿入した場合にのみ電池の挿入を許容するラッチ手段、ストッパ手段、および付勢手段が設けられている。また、特許文献5には、複数のボタン型電池が直列に配置される電池ホルダにおいて、プラス極よりも幅が狭いマイナス極を支持する一対のリブが所定間隔で形成されており、これによって電池の誤挿入を防止する構造が示されている(特許文献5)。
なお、特許文献2、4、5の考え方は、前記i)であり、特許文献3の考え方は、前記ii)である。
【0005】
ここで、扁平なコイン型電池においても、前述したプラス極およびマイナス極の形状の差に基づいて誤挿入の問題に対処することが考えられるが、コイン型電池は凸部などがない平坦な形状のため、特許文献2〜5のように電池収納部にリブ等を形成するなどの手法は適用できない。このようなコイン型電池では電池形状による誤挿入対策が難しいため、前記i)の考え方として、一方の電極に板状の端子やコネクタ等を取り付けることによって固有化し(カスタマイズ)、誤挿入を防止していた。このように固有化された電池は、その端子やコネクタに対応する機器専用となる。
このほか、前記ii)の考え方として、回路上にダイオード等を追加して電流を一方向に規制し、誤挿入された場合には回路に電流が流れないようにしていた。
【0006】
【特許文献1】特開2006−59704号公報
【特許文献2】特開平7−301093号公報
【特許文献3】特開平11−3692号公報
【特許文献4】特開2005−353483号公報
【特許文献5】特開2005−216719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、コイン型などの扁平形状の電池は凸部などがない平坦な形状のため、物理的な誤挿入対策が難しい。また、電池の固有化には、端子の溶接等に伴うサイズアップやコストアップといった課題があり、そのうえ市場での消費者の電池選択の巾を狭める事になってしまう。
他方、回路にダイオード素子等を設ける場合には、回路部に素子配置スペースが必要となって小型薄型化が阻害され、部品点数が増えるためコスト的にも不利となる。
なお、プラス極とマイナス極との形状差が少なく、比較的平坦な形状のボタン型電池にも、コイン型電池と共通の課題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記課題に鑑みて、扁平形状の電池についての誤挿入対策をコスト高や大型化を招くことなく確実に行うことができる時計および携帯機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の時計は、扁平形状における一方の平面部および側面部を構成するプラス極と、他方の平面部を構成するマイナス極とを有する電池を電源とする回路部と、前記電池が収納される電池収納部とを備える時計であって、前記回路部は、基準電位が前記マイナス極側に設定された電源電圧で動作し、前記電池収納部は、少なくとも前記回路部とは反対側の部分を含む位置に形成された開口部を有する収納部本体と、前記開口部の内周面部に少なくとも一部が設けられて前記回路部に導通されるプラス接続端子と、前記開口部の前記回路部側とは反対側に設けられ前記電池を前記回路部との間に押圧固定するとともに前記回路部に導通されるマイナス接続固定端子とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明では、電池のプラス極が電池側面で接続され、電池のマイナス極が平面的に接続されるように、プラス接続端子およびマイナス接続固定端子が配置されている。これにより、電池が正常に組み込まれた場合には、プラス接続端子は電池のプラス極にマイナス接続固定端子は電池のマイナス極に接続され、逆に組み込まれた場合には、プラス接続端子およびマイナス接続固定端子の両方とも電池のプラス極に接続される。すなわち、誤挿入時にプラス接続端子およびマイナス接続固定端子の両方とも電池のプラス極に接続されるので、回路部に電流が流れず、誤挿入による逆電圧印加を回避できる。これにより、電池や回路部の損傷や、電池の破裂、過熱などを防止できる。また、誤挿入の状態のまま外部印加電力により電池が充電されても逆方向に電流が流れないため、逆充電を防止できる。さらに、回路部に電流が流れず、時計が動作しないため、誤挿入を使用者に容易に知らせることができる。
このような本発明では、前記ii)の考え方によって電池の誤挿入対策が行われている。
【0011】
ここで、本発明における電池は、前述のようにプラス極とマイナス極との形状が標準化されたものであって、本発明の誤挿入対策は、基準電位がマイナス極側に設定された電源電圧で回路部が動作することによって可能となる。本発明では、電池のマイナス極側が基準電位となるマイナスアースとされる。
すなわち、基準電位がプラス極側に設定された電源電圧で動作する一般的な時計の電子回路では、誤挿入時に電池のプラス極が回路部の低電位側に接続されるため、逆電圧印加となって電子回路や電池が損傷してしまう。このように電池のプラス極側が基準電位となるプラスアースでは、マイナス極が平面部および側面部を構成する特殊構造の電池を使用しない限り、本発明のようなプラス接続端子およびマイナス接続固定端子の配置による誤挿入対策は実現できない。
【0012】
本発明は、物理的な誤挿入対策が難しい扁平形状の電池に関し、プラス接続端子およびマイナス接続固定端子が上述のように配置される簡易な構造によって誤挿入対策を確実に行うことができる。すなわち、電池の固有化やダイオードを用いることが不要であり、固有化のコストや、ダイオード等の部品コスト、実装コスト等を削減できる。また、コネクタやダイオード等が不要となるため電池収納部や回路部が大型化しない。本発明では固有化されていない標準の電池が使える為、汎用品を安価に入手できる。
【0013】
そのうえ、開口部の回路部側とは反対側に設けられたマイナス接続固定端子によって電池が回路部との間に押圧固定されていることにより、開口部からの電池の離脱が防止されるとともに電池と回路部との電気的結合が安定する。なお、マイナス接続端子が開口部の回路部側に設けられている場合でも、プラス接続端子を電池の端面のみで導通する事で、誤挿入時にプラス接続端子とマイナス接続端子との両方が電池のプラス極に接続される構成にはできるが、別途、電池のプラス極を押さえる絶縁性部材が必要となるため、コストが増加する。すなわち、マイナス接続固定端子が電池の回路部への導通と、電池の電池収納部への固定とに兼用されることにより、コスト的に有利となり、小型薄型化が阻害されない。
【0014】
本発明の時計では、前記マイナス接続固定端子は、前記電池の平面部における2以上の位置に圧接することが好ましい。
【0015】
この発明によれば、マイナス接続固定端子が電池の平面部を2以上の位置で圧接することにより、電池が厚み方向に対して傾きにくくなるため、携帯に伴う外乱、衝撃の際も電池と回路部との電気的結合が安定する。
なお、マイナス接続固定端子における複数の圧接箇所はそれぞれ、別部材で構成することも一体に構成することもできる。
【0016】
本発明の時計では、前記マイナス接続固定端子による圧接箇所は、前記電池の平面部において3以上でかつ前記電池の周方向に略均等に配置されていることが好ましい。
【0017】
この発明によれば、マイナス接続固定端子が電池の平面部を3箇所で均等に圧接することにより、電池が厚み方向に対してより傾きにくくなるため、電池と回路部との電気的結合がより安定する。
【0018】
本発明の時計では、前記マイナス接続固定端子は、前記回路部における2以上の位置に当接することが好ましい。
【0019】
この発明によれば、マイナス接続固定端子が回路部に2箇所以上で当接することにより、携帯に伴う外乱、衝撃の際も電池と回路部との電気的結合が安定する。
【0020】
本発明の時計では、前記プラス接続端子は、前記電池の周方向における2箇所以上で前記電池の側面部に圧接することが好ましい。
【0021】
この発明によれば、プラス接続端子によって電池が周方向の2箇所以上で圧接されることにより、開口部の内周面部に対する電池の移動が規制されるため、携帯に伴う外乱、衝撃の際も電池と回路部との電気的結合が安定する。
なお、プラス接続端子における複数の圧接箇所はそれぞれ、別部材で構成することも一体に構成することもできる。
【0022】
本発明の時計では、前記開口部の前記電池の厚み方向における寸法は、前記電池の厚みよりも大きく、前記マイナス接続固定端子は、前記収納部本体における前記開口部の平面方向外側の位置と前記電池の平面部とに架設されることが好ましい。
【0023】
この発明によれば、開口部の寸法と電池の厚みとの関係により、マイナス接続固定端子と電池プラス極の側面部との間に空隙が形成されるので、簡易な構造により、電池のプラス極とマイナス極との短絡を防止できる。
【0024】
本発明の時計では、前記マイナス接続固定端子は、前記収納部本体の前記回路部側とは反対側に設けられて前記電池に圧接する金属製弾性部と、この金属製弾性部と前記回路部とを導通する金属製導通部材とを有することが好ましい。
【0025】
この発明では、マイナス接続固定端子の機能のうち電池マイナス極への圧接を弾性部に、電池マイナス極から回路部への導通を金属製導通部材にそれぞれ分担させることにより、電池から回路部への導通構造を容易に形成できる。
なお、金属製導通部材は例えば、電池収納部を貫通する孔に配設されればよい。金属製導通部材には、金属製コイルばねや金属製ねじ、はんだ、鋼線などがある。
【0026】
本発明の時計では、前記マイナス接続固定端子は、前記収納部本体の前記回路部側とは反対側に設けられて前記電池に圧接する板バネ部と、前記回路部に導通される板バネ部とを一体に有する金属製の板部材であることが好ましい。
【0027】
この発明によれば、電池マイナス極への圧接と、電池マイナス極から回路部への導通とが一つの板部材により行われるので、部品点数が減少し、安価な構造とできる。
【0028】
本発明の携帯機器は、扁平形状における一方の平面部および側面部を構成するプラス極と、他方の平面部を構成するマイナス極とを有する電池を電源とする回路部と、前記電池が収納される電池収納部とを備える携帯機器であって、前記回路部は、基準電位が前記マイナス極側に設定された電源電圧で動作し、前記電池収納部は、少なくとも前記回路部とは反対側の部分を含む位置に形成された開口部を有する収納部本体と、前記開口部の内周面部に少なくとも一部が設けられて前記回路部に導通されるプラス接続端子と、前記開口部の前記回路部側とは反対側に設けられ前記電池を前記回路部との間に押圧固定するとともに前記回路部に導通されるマイナス接続固定端子とを備えることを特徴とする。
【0029】
この発明によれば、前述と同様に、誤挿入時にプラス接続端子およびマイナス接続固定端子の両方とも電池のプラス極に接続されるので、回路部に電流が流れず、電池や回路部の損傷や、電池の破裂、逆充電などを防止できる。また、回路部に電流が流れず、時計が動作しないため、誤挿入を使用者に容易に知らせることができる。
このような本発明によれば、電池の固有化やダイオード等を用いることが不要となるため、コスト高とならず、携帯機器の小型薄型化を促進できる。また、消費者は汎用品の電池を安価に入手できる。
そのうえ、マイナス接続固定端子によって電池が押圧固定されていることにより、開口部からの電池の離脱が防止されるとともに電池と回路部との電気的結合が安定し、このようにマイナス接続固定端子が電池の回路基板への導通と、電池の電池収納部への固定とに兼用されることにより、コスト的に有利となり、小型薄型化が阻害されない。
【発明の効果】
【0030】
以上の本発明によれば、扁平形状の電池についての誤挿入対策をコスト高や大型化を招くことなく確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以降の説明において、既に説明した構成と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略または簡略にする。
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態に係る腕時計を裏蓋側から見た平面図である(裏蓋を外した状態)。図2は、図1のII−II´線断面図である。本実施形態の時計1は、ディジタル表示式の電子時計であり、図2に示すように、回路部としての回路基板2と、表示パネル3と、コイン型の電池4を収納する電池収納部5と、外装ケース6とを備えている。外装ケース6は、胴61と、風防ガラス62と、金属製の裏蓋63とを有している。なお、61Aは胴61の内周面である。
【0032】
回路基板2には、表示パネルのドライバICや制御IC等の回路素子21が実装され、回路基板2上の電子回路は電池4を電源として動作する。ここで、本実施形態の電子回路では、電池4のマイナス極に接続される低電位側を基準電位GNDとしており、電池4のプラス極に接続される高電位側と基準電位GNDとにより正電圧の電源電圧が印加される。
【0033】
表示パネル3は、液晶パネル、有機ELパネル、電気泳動パネルなどで構成され、電池4から供給される電力によって駆動する。表示パネル3の周縁部には、パネル枠31が設けられており、このパネル枠31により、表示パネル3の平面位置および断面位置(厚み方向位置)が規定されている。
【0034】
図2に、電池4の概略構成を示した。本実施形態の電池4は、充放電が可能なリチウム二次電池である。電池4の金属製ケース40は、電池4の一方の平面部411および当該平面部411の外周部から起立する円筒面状の側面部412を構成するプラス極41と、プラス極41の内側にプラス極41の平面部411と対向するように配置されて電池4の他方の平面部を構成するマイナス極42とを有して構成されている。
マイナス極42は、プラス極41の側面部412の内側に重なる側面部42Aを有している。プラス極41の側面部412とマイナス極42の側面部42Aとの間には、ガスケット43が介装されており、このガスケット43は、プラス極41とマイナス極42とを絶縁するとともに電池内圧に対し封止する。
【0035】
電池収納部5は、絶縁性樹脂で形成された収納部本体50と、電池4のプラス極41に接続される金属製のプラス接続端子51と、電池4のマイナス極42に接続される金属製のマイナス接続固定端子52とを有している。なお、図1において、マイナス接続固定端子52を二点鎖線で示す。
収納部本体50は、図1に示すように、電池4の形状に倣って開口部501が形成された環状の枠体である。ここで、開口部501の電池4の厚み方向における寸法は電池4の厚みよりも大きい。
開口部501の内周面部の一部は、電池4の平面方向外側に拡がっており、これによって空間502が形成されている。この空間502が形成された部分における収納部本体50の回路基板2側の端部には、図2に示すように段差部503が形成されている。
また、収納部本体50において空間502が形成された位置と平面的に異なる位置には、回路基板2の図示しない基準電位GNDのパターンに対向する2つの貫通孔504が形成されている。
【0036】
プラス接続端子51は、図1に示すように、段差部503(図2)に支持固定される略矩形状の固定部510と、空間502に設けられ電池4の側面部412に沿って延びる弾性部511,512とを有している。
固定部510は、段差部503に支持固定される部分から回路基板2側に曲げられた2つの接続部510A,510Bを有しており、これらの接続部510A,510Bはそれぞれ、回路基板2における図示しないVDD(高電位側電圧)のパターンに当接した状態で係止されている。
また、弾性部511,512の先端はそれぞれ、電池4のプラス極41の側面部412に圧接している。
【0037】
マイナス接続固定端子52は、図1に示すように、裏蓋63側から収納部本体50に重ねられる金属製の板部材521と、収納部本体50の各貫通孔504にそれぞれ挿通される2つの金属製圧縮コイルばね522とを有している。各コイルばね522は板部材521で押さえられており、図2のようにコイルばね522の端部が回路基板2の基準電位GNDのパターン(図示せず)に当接した状態で係止されている。
【0038】
板部材521は収納部本体50に重ねられる部分の外周部の数箇所に、収納部本体50の側面に沿って曲げられた取付部521Aを有している。図2に示すように、この取付部521Aの先端部がパネル枠31の側面部に係合することにより、収納部本体50、回路基板2、およびパネル枠31が積層された状態で一体に組み付けられている。この一体とされた収納部本体50、回路基板2、およびパネル枠31により、時計体のモジュールが構成されている。
【0039】
また、板部材521の略円形状の平面部における中央部には、図1に示すように打ち抜きによって3つの弾性部521Bが電池4の平面中心から等距離かつ円周方向に均等に形成されている。これらの弾性部521Bは、収納部本体50における開口部501の平面方向外側の位置と電池4のマイナス極42とに架設された状態となっている。すなわち、各弾性部521Bにおける基端部側は、図2のように電池4に接触しておらず、この基端部側から電池4側に曲げられた弾性部521Bの先端部が電池4のマイナス極42に圧接している。
【0040】
ここで、収納部本体50は、電池4の位置を規定しているとともに、プラス接続端子51およびマイナス接続固定端子52のそれぞれの位置を規定している。
そして、マイナス接続固定端子52により収納部本体50、回路基板2、およびパネル枠31が組み付けられることにより、回路基板2の平面位置および断面位置が規定されている。
さらに、滑らかなモジュール外周部を構成する収納部本体50とパネル枠31とが胴61の内部に固定されることにより、モジュールの各構成部品の平面位置および断面位置がそれぞれ規定されている。
【0041】
以上のような電池収納部5を組み立てる際には、収納部本体50の開口部501に電池4が挿入され、かつ貫通孔504にコイルばね522が挿通された状態で、収納部本体50にマイナス接続固定端子52の板部材521を重ねた状態とし、収納部本体50、回路基板2、およびパネル枠31をマイナス接続固定端子52の取付部521Aによって一体に組み立てる。これにより、電池4はマイナス接続固定端子52と回路基板2との間に押圧固定される。また、プラス接続端子51の弾性部511,512が電池4の側面部412に圧接し、マイナス接続固定端子52の3つの弾性部521Bが電池4のマイナス極42に圧接するため、電池4の平面位置および断面位置が固定される。
【0042】
ここで、図2に示すように電池4が正しい極性で電池収納部5に挿入された場合、プラス接続端子51により、電池4のプラス極41との導通が取られ、マイナス接続固定端子52(板部材521およびコイルばね522)により、電池4のマイナス極42との導通が取られる。この場合、電池4のプラス極41はプラス接続端子51の接続部510A,510Bにより回路基板2のVDD(高電位電圧側)に導通され、電池4のマイナス極42はコイルばね522を介して回路基板2の基準電位GNDに導通される。これにより、回路基板2の電子回路に電源電圧が印加される。
【0043】
図3は、電池4が逆極性で電池収納部5に誤挿入された状態を示す。この場合、プラス接続端子51とマイナス接続固定端子52との両方とも電池4のプラス極41に接続されるため、GNDとVDDとが同電位となり、回路基板2の電子回路に電流が流れない。すなわち、誤挿入時に電子回路において逆電圧が印加されるおそれはない。また、誤挿入のまま外部印加電力により電池4が充電された場合でも、逆充電されない。
【0044】
以上の本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)電池収納部5のプラス接続端子51およびマイナス接続固定端子52が上述の位置に設けられているとともに、マイナス極42が基準電位GNDに導通されるマイナスアースとされていることにより、誤挿入時に回路基板2の電子回路に電流が流れず、電子回路への逆電圧印加を防止できる。これにより、回路基板2の電子回路や電池4の損傷や、電池4の破裂、過熱、逆充電などを防止できる。さらに、回路基板2に電流が流れず、時計が動作しないため、誤挿入を使用者に容易に知らせることができる。すなわち、電池4が逆極性に組み込まれた場合でも安全性を確保できる。
【0045】
(2)ダイオード等を用いることなく、汎用の電池4により誤挿入に対処できるので、コスト高とならず、そして電池収納部5や回路基板2が大型化しない。
【0046】
(3)マイナス接続固定端子52が電池4を回路基板2との間に押圧固定していることにより、開口部501からの電池4の離脱が防止されるとともに、電池4と回路基板2との電気的結合が安定する。すなわち、マイナス接続固定端子52が電池4の回路基板への導通と、電池4の電池収納部5への固定とに兼用されることにより、コスト的に有利となり、小型薄型化が阻害されない。
【0047】
(4)マイナス接続固定端子52の3つの弾性部521Bによって電池4のマイナス極42が3箇所で圧接されることにより、電池4が厚み方向に対して傾きにくくなる。これにより、時計1の携帯に伴う外乱、落下衝撃の際も電池4と回路基板2との電気的結合が安定する。
【0048】
(5)マイナス接続固定端子52の各弾性部521Bが電池4の平面中心から等距離でかつ電池4の周方向に均等に形成されているため、電池4が厚み方向に対してより傾きにくくなり、電池4と回路基板2との電気的結合がより安定する。
【0049】
(6)回路基板2に当接する2つのコイルばね522によって電池4が回路基板2に2箇所以上で接続されることにより、電池4と回路基板2との電気的結合が安定する。
【0050】
(7)プラス接続端子51によって電池4が周方向の2箇所以上で圧接されることにより、開口部501の内周面部に対する電池4の移動が規制されるため、電池4と回路基板2との電気的結合が安定する。
【0051】
(8)開口部501の電池4の厚み方向における寸法と電池4の厚みとの関係により、マイナス接続固定端子52の弾性部521Bと電池4の側面部412との間に空隙が形成されるので、簡易な構造により、電池4のプラス極41とマイナス極42との短絡を防止できる。
【0052】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について図4および図5を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る時計を裏側から見た平面図である(裏蓋を外した状態)。図5は、図4のV−V´線断面図である。本実施形態では、電池収納部7の構成の一部が第1実施形態とは相違する。本実施形態における他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0053】
本実施形態の電池収納部7は、収納部本体70と、第1実施形態と同様のプラス接続端子51と、板部材としてのマイナス接続固定端子72とを有している。
ここで、マイナス接続固定端子72は、取付部521Aと、板バネ部としての弾性部521Bと、板バネ部としての弾性部721Cとを有し、これらの取付部521A、弾性部521B、および弾性部721Cは一体に形成されている。なお、弾性部721Cも、弾性部521Bと同様に板部材の打ち抜きによって形成されている。
【0054】
図5に示すように、弾性部721Cは、収納部本体70に形成された切欠701を介して回路基板2の図示しない基準電位GNDに接続されている。
このような本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加え、次のような効果が得られる。
(9)電池4のマイナス極42への圧接と、マイナス極42の回路基板2への導通とが一つの板部材(マイナス接続固定端子72)により行われるので、部品点数が減少し、安価な構造とできる。
【0055】
〔本発明の変形例〕
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲でのあらゆる改良、変形が可能である。
図6は、本発明の変形例を示す。本例の構成は、第1実施形態と略同様であるが、本例では、マイナス接続固定端子52と電池4との間にドーナツ状の絶縁性シート部材8が介装されている。これにより、電池4の形状がばらついても、プラス極41とマイナス極42との短絡をより確実に防止できる。
【0056】
本発明は、前記各実施形態などで示したディジタルクォーツに限らず、電池からの供給電力により動作する回路部を備えた各種の時計に適用できる。例えば、輪列を駆動して指針により時刻を表示するアナログクォーツにも適用できる。また、本発明は、電子時計(クォーツ)に限らず、ぜんまいを動力源とし、ぜんまいで発電された電力によって回路部を駆動し計時を行う電子制御式機械時計にも適用できる。
さらに、本発明は、扁平形状の電池を電源とする回路部を備える各種携帯機器への適用が可能であり、これらの各携帯機器においても、前述の時計と同様の効果を奏する。
これらの携帯機器としては、例えば情報通信携帯機器やディジタルカメラ、計測器などがある。
【0057】
本発明における扁平形状の電池としては、コイン型リチウム電池やボタン型酸化銀電池などを例示できる。
ここで、本発明における電池は、一次電池、二次電池のいずれでも良いことは言うまでもない。二次電池は、太陽電池パネルを搭載した時計や機器において光発電された電力を蓄電したり、回転錘の回転時やりゅうずの回転時に発電された電力を蓄電したりするのに使用される。
【0058】
また、前述した電池収納部5,7の収納部本体50,70は環状の枠体であり、内側に開口部501が貫通形成されていたが、収納部本体および開口部の構成はこれに限らない。収納部本体の開口部は、例えば、裏蓋側から回路部に向かって窪む凹部とされていてもよい。
【0059】
以上、本発明を実施するための最良の構成について具体的に説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形および改良を加えることができるものである。
上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態に係る時計を裏側から見た平面図。
【図2】図1のII−II´線断面図(電池正常挿入状態)。
【図3】電池を逆極性に挿入した状態の図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る時計を裏側から見た平面図。
【図5】図4のV−V ´線断面図。
【図6】本発明の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0061】
1・・・時計、2・・・回路基板(回路部)、4・・・電池、5,7・・・電池収納部、41・・・プラス極、42・・・マイナス極、50・・・収納部本体、51・・・プラス接続端子、52・・・マイナス接続固定端子、70・・・収納部本体、72・・・マイナス接続固定端子(板部材)、411・・・平面部、412・・・側面部、501・・・開口部、511,512・・・弾性部、521B・・・弾性部(金属製弾性部・板バネ部)、522・・・コイルばね(金属製導通部材)、721C・・・弾性部(板バネ部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平形状における一方の平面部および側面部を構成するプラス極と、他方の平面部を構成するマイナス極とを有する電池を電源とする回路部と、前記電池が収納される電池収納部とを備える時計であって、
前記回路部は、基準電位が前記マイナス極側に設定された電源電圧で動作し、
前記電池収納部は、少なくとも前記回路部とは反対側の部分を含む位置に形成された開口部を有する収納部本体と、前記開口部の内周面部に少なくとも一部が設けられて前記回路部に導通されるプラス接続端子と、前記開口部の前記回路部側とは反対側に設けられ前記電池を前記回路部との間に押圧固定するとともに前記回路部に導通されるマイナス接続固定端子とを備える
ことを特徴とする時計。
【請求項2】
請求項1に記載の時計であって、
前記マイナス接続固定端子は、前記電池の平面部における2以上の位置に圧接する
ことを特徴とする時計。
【請求項3】
請求項2に記載の時計であって、
前記マイナス接続固定端子による圧接箇所は、前記電池の平面部において3以上でかつ前記電池の周方向に略均等に配置されている
ことを特徴とする時計。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の時計であって、
前記マイナス接続固定端子は、前記回路部における2以上の位置に当接する
ことを特徴とする時計。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の時計であって、
前記プラス接続端子は、前記電池の周方向における2箇所以上で前記電池の側面部に圧接する
ことを特徴とする時計。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の時計であって、
前記開口部の前記電池の厚み方向における寸法は、前記電池の厚みよりも大きく、
前記マイナス接続固定端子は、前記収納部本体における前記開口部の平面方向外側の位置と前記電池の平面部とに架設される
ことを特徴とする時計。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の時計であって、
前記マイナス接続固定端子は、前記収納部本体の前記回路部側とは反対側に設けられて前記電池に圧接する金属製弾性部と、この金属製弾性部と前記回路部とを導通する金属製導通部材とを有する
ことを特徴とする時計。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の時計であって、
前記マイナス接続固定端子は、前記収納部本体の前記回路部側とは反対側に設けられて前記電池に圧接する板バネ部と、前記回路部に導通される板バネ部とを一体に有する金属製の板部材である
ことを特徴とする時計。
【請求項9】
扁平形状における一方の平面部および側面部を構成するプラス極と、他方の平面部を構成するマイナス極とを有する電池を電源とする回路部と、前記電池が収納される電池収納部とを備える携帯機器であって、
前記回路部は、基準電位が前記マイナス極側に設定された電源電圧で動作し、
前記電池収納部は、少なくとも前記回路部とは反対側の部分を含む位置に形成された開口部を有する収納部本体と、前記開口部の内周面部に少なくとも一部が設けられて前記回路部に導通されるプラス接続端子と、前記開口部の前記回路部側とは反対側に設けられ前記電池を前記回路部との間に押圧固定するとともに前記回路部に導通されるマイナス接続固定端子とを備える
ことを特徴とする携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−48979(P2009−48979A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216787(P2007−216787)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】