説明

時間分割分析用測定システム及び時間分割分析用測定方法

【課題】複数材料によって起こる一連の化学反応を時間分割分析し得る装置及び方法を提供する。
【解決手段】流路Lを構成する管状反応容器2に複数の測定用ポイントたる測定位置21、22、23、24、25を設定するとともに、この各測定位置21、22、23、24、25ごとに第1材料r1、第2材料r2、第3材料r3及び触媒Cによって起こる反応の進行段階が定常となるように、流速維持装置1によって流路L内の流速を維持しておき、この各測定位置21、22、23、24、25における反応状態を管状反応容器2の外側に配した測定装置3によって測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数材料が反応する反応系の各進行段階を測定するための測定システム或いは測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の材料が反応する反応系における各反応段階を測定する装置或いは手法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の方法は、反応途中の段階での反応物を、検出面を有する成形体として抜き出し、当該検出面に存在する物質を解析することにより、合成反応の進行度合いを確認すると云ったものである。一方、特許文献2に記載のものは、電子顕微鏡のグリッド上に配置した資料における反応の経過を観察するというものである。
【特許文献1】特開2001−99834号公報
【特許文献2】特開平8−327627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、上述の通り、各反応段階における反応物を成形体に成形するという手順が必須であるため、そのために多大な労力を要するばかりか、解析するのは成形後であるため、反応段階をリアルタイムに解析し得るものではない。また、成形可能な固体にしか適用できないため、液体や気体における化学反応に対して適用できない。
【0005】
一方、特許文献2に記載のものは資料を電子顕微鏡グリッド上に配置する必要があるため、特許文献1に記載と同様に固体にしか適用できない。
【0006】
また、この特許文献2に記載された方法によれば、電子顕微鏡グリッド上に配置した資料において起こる化学反応が電子顕微鏡によってリアルタイムすなわち時間分割して観察することができる。しかし、言い換えれば同方法は、電子顕微鏡グリッド上に配置した資料ごとにバッチ式で資料を準備するものであるため、同一資料内で複数ステージの化学反応が同時に起こる場合も同時に観察されてしまうこととなり、一連の化学反応において、各ステージごとに正確に解析し得るものとはなっていない。
【0007】
他方、特許文献2に記載の方法は、リアルタイムに観察し得る電子顕微鏡観察によって資料を解析するものであるため、短時間の化学反応を時間分割分析し得るものとなっている。ここで、化学反応を解析し得る他の方法としては例えばXAFS測定や蛍光X線回析等の他の手法も挙げることができる。しかしこれらの手法を用い得る装置、すなわち、バッチ式によって準備された資料内で起こる一連の化学反応を上述した手法で時間分割分析し得る装置、施設となると限られたものとなってしまう。
【0008】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、複数材料によって起こる一連の化学反応を好適に時間分割分析し得る装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち、本発明に係る時間分割分析用測定システムは、複数材料の全部又は一部が流路に沿って流れながら反応する反応系を対象とするものであって、前記流路を構成する管状反応容器と、この管状反応容器の各ポイントごとに前記材料の反応進行段階が定常となるように前記流路内の流速を維持するための流速維持装置と、前記管状反応容器の複数ポイントにおける反応状態を同時間帯に又は異なった時間帯に測定する測定装置とを具備してなることを特徴とする。
【0010】
ここで、測定装置が適用し得る手法は、化学反応すなわち化合物に係る態様を解析し得る手法であればどのようなものであっても良く、例えば、蛍光X線回析やXAFS測定、電子顕微鏡観察やガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMRなど、種々の手法を適用することが可能である。
【0011】
このようなものであれば、複数材料が、管状反応容器内の流路を流れながら反応し得る反応系を実現し得るものであれば、材料の態様、すなわち固体、液体或いは気体のいずれであるかを問いこと無く解析することができる。また、複数材料をバッチ式ではなく、流速維持装置によって反応容器中を反応進行段階が定常となるように流速が維持されるため、反応容器中の流路に沿った各ポイントにおいては、常に同じ段階の化学反応が起こるように設定することができる。そのため、所定の複数ポイントを分析するのみで反応系における複数の段階をそれぞれ高い精度で解析することが可能である。
【0012】
併せて本発明に係る時間分割分析用測定方法は、複数材料の全部又は一部が流路に沿って流れながら反応する反応系を対象とする測定方法であって、前記流路を構成する管状反応容器に複数の測定用ポイントを設定するとともに、この管状反応容器の各ポイントごとに前記材料の反応進行段階が定常となるように前記流路内の流速を維持しておき、前記管状反応容器の複数ポイントにおける反応状態を管状反応容器の外側に配した測定装置によって同時間帯に又は異なった時間帯に設定することを特徴とする。
【0013】
このような方法であれば、流路を流れながら反応し得る反応系を実現し得る材料であれば、材料の態様、すなわち固体、液体或いは気体のいずれであるかを問うこと無く分析することができる。また、複数材料をバッチ式ではなく、反応容器中を反応進行段階が定常となるように流速を維持することによって、反応容器中の流路に沿った各ポイントにおいては、常に同じ段階の化学反応が起こるように設定することができる。そのため、所定の複数ポイントを分析するのみで反応系における複数の段階をそれぞれ高い精度で解析することが可能である。
【0014】
反応系における複数段階の反応を確実に解析し得るものとするためには、前記管状反応容器の複数ポイントにおける反応状態を同時間帯に測定し得るように、各ポイントに対応させて測定装置を複数設けることが望ましい。
【0015】
また、単一の測定装置を用いて反応系における複数段階の反応を好適に解析し得るものとするためには、測定装置と管状反応容器との間に、測定装置と前記管状反応容器との相対位置を変更するための相対位置変更装置を設けておき、各ポイントにおける反応状態を単一の測定装置によって異なった時間帯にそれぞれ測定し得るようにしたものとすることが望ましい。ここで相対位置変更装置は、測定装置を移動させるものであっても、管状反応容器を移動させるものであっても、或いは測定装置及び管状反応容器の両方を移動させるものであっても良い。
【0016】
前記測定装置としてXAFS測定装置を用いたものとすれば、例えば反応系における所定の原子に着目し、当該原子の電荷をリアルタイムで解析することによって、反応系における複数段階の反応を好適に解析することができる。
【0017】
そして、材料のひとつを触媒とし、その触媒を管状反応容器の所要領域に配置しているものとすれば、触媒を配置する領域を適宜設定することにより、当該触媒によって起こる一連の化学反応を測定するポイントを管状反応容器内に容易に設定することができ、当該一連の化学反応をリアルタイムに解析することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の材料の態様、すなわち固体、液体或いは気体のいずれであるかに拘わらず分析することができる。また、複数材料をバッチ式ではなく、反応進行段階が定常となるように反応容器中での複数の材料の流速を維持することにより、常に同じ段階の化学反応が起こる反応容器中での流路に沿った各ポイントを分析するのみで反応系における複数の段階をそれぞれ容易且つ確実に解析することが可能である。すなわち、複数の材料によって起こる一連の化学反応の状態を容易割確実に、リアルタイムで解析することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
<時間分割分析用測定システムの構成>
本実施形態に係る時間分割分析用測定システムSは、図1に示すように、流路Lの基端に設けられ、それぞれ第1材料r1、第2材料r2及び第3材料r3を所定濃度の溶液として保存し得る貯蔵部Tと、貯蔵部Tの下流側に設けた流速維持装置1と、合流部LMの下流に設けた管状反応容器2と、管状反応容器2内の反応を解析するための測定装置3と、当該測定装置3を移動させるための位置変更装置4とを主たる構成要素としている。なお、管状反応容器2の下流側には、さらに、これら化学反応が終わった後の生成物を回収するための構成要素が存在するが、本実施形態において図示及び詳細な説明は省略するものとする。
【0020】
ここで、本実施形態に係る時間分割分析用測定システムSは、複数材料たる第1材料r1、第2材料r2及び第3材料r3が流路Lに沿って流れながら反応する反応系を対象とするものであって、流路Lを構成する管状反応容器2と、この管状反応容器2の後述する各ポイントたる各測定位置21、22、23、24、25ごとに第1材料r1、第2材料r2及び第3材料r3の反応進行段階が定常となるように流路L内の流速を維持するための流速維持装置1と、各測定位置21、22、23、24、25における反応状態を同時間帯に又は異なった時間帯に測定する測定装置3とを具備してなることを特徴としている。
【0021】
以下、時間分割分析用測定システムSの構成について、図1を参照して説明する。
【0022】
流路Lは、第1材料r1、第2材料r2及び第3材料r3を流すための導入路L1、L2、L3と、これら3つの導入路L1、L2、L3を合流させる合流部LMと、合流部LMの下流側において管状反応容器2を配する反応路L4とによって構成している
貯蔵部Tは、本実施形態では導入路のそれぞれ基端に設けたタンクt1、t2、t3からなるものとしている。各タンクt1、t2、t3にはそれぞれ第1材料r1、第2材料r2及び第3材料r3を、本実施形態では溶液の状態で充填、保管している。また貯蔵部Tの構成として、各タンクt1、t2、t3内を所定温度に調節するための温度調節手段を設けても良い。ここで本実施形態では3つのタンクt1、t2、t3を配したものとしているが、この構成は反応系に要する材料の種類を限定するものではない。なお、本実施形態ではタンクt1に充填する第1材料をブロモアニソールの2-メトキシ1-プロパノール溶液、タンクt2に充填する第2材料をフェニルボロン酸の脱イオン水水溶液、タンクt3に充填する第3材料を炭酸カリウムの脱イオン水水溶液としている(図4参照)。
【0023】
流速維持装置1は、本実施形態において、それぞれの各導入路L1、L2、L3に設けたポンプ11、12、13によって主に構成されている。そして本実施形態ではこのポンプ11、12、13を適宜制御することによって各導入路L1、L2、L3における流速を調節し得るものとしているが、第1材料r1、第2材料r2及び第3材料r3の反応進行段階が定常となるように流路L内の流速を維持し得るものであれば、図示しないセンサを用いたフィードバック制御やその他の制御方法など、その制御方法は限定されない。また、当該ポンプ11、12、13の若干下流には各材料r1、r2、r3が流れるタイミングを同期させるため、或いは不使用時に各材料を留めておくためにストップバルブstを配置している。なお、本実施形態では各タンクt1、t2、t3に液体を貯蔵し流路Lに液体を流す構成としており、材料が固体であった場合はタンク内に当該固体を溶液として充填する態様を採用している。しかし本発明において複数材料は液体及び固体に限定されることはなく、気体を用いることも可能である。その場合、流速維持装置1にはポンプ11、12、13の代わりに調節弁等を設けることが考えられるが、本実施形態はそのような態様を否定するものではない。
【0024】
管状反応容器2は、合流部LMの下流側すなわち反応路L4に配置されており、当該管状反応容器2内において、一連の化学反応が開始から終結に至るように設定されたものである。具体的には、管状反応容器2内において、一の材料である触媒Cを所要領域に配置することによって、第1材料r1、第2材料r2及び第3材料r3並びに触媒Cといった計4つの材料による一連の化学反応が開始から終結に至るように設定されている。また、管状反応容器2は、反応条件に合わせた所定温度に維持するよう加温若しくは冷却し得るように設定されている。そして、管状反応容器2内において、後述する測定装置3によって測定される触媒Cの上流、下流の所定位置、並びに触媒Cの存在下における所定の3箇所を、反応前測定位置21、反応初期測定位置22、反応中期測定位置23、反応終期測定位置24及び反応後測定位置25としてそれぞれ設定している。なお、本実施形態では触媒Cとして、パラジウム原子が3価の状態で存在するパラジウムペロブスカイトを用いている。また後述するように、管状反応容器2は相対位置変更装置4によって基端位置(a)から終端位置(b)まで移動し得るように構成されている。
【0025】
測定装置3は、例えば、蛍光X線回析やXAFS測定、電子顕微鏡やガスクロマトグラフィーなど、種々の装置を適用することが可能であるが、本実施形態においては、いわゆるXAFS測定装置を採用している。照射部31、検出部32とを少なくとも具備している。照射部31はX線発生装置31a及びモノクロメータ31bを有しているものであり、X線発生装置によって発生されたX線をモノクロメータ31bを介して管状反応容器2及び検出部32へ照射するものである。検出部32は、照射部31より照射されたX線を、を例えばCCD等によって検出するものである。なお、測定装置3は照射部31、検出部32の他に、照射するX線の強度を制御する手段や検出部32が検出したX線に係るデータを解析する手段を備えているが、同図において図示を省略するとともに詳細な説明を省略するものとする。なお、本実施形態では当該XAFS測定装置を適用して、反応中のパラジウム原子の電荷を測定し得るように構成している。
【0026】
相対位置変更装置4は、上述の通り管状反応容器2を段階的或いは無段階に移動させることによって、測定装置3の照射部31が反応前測定位置21、反応初期測定位置22、反応中期測定位置23、反応終期測定位置24並びに反応後測定位置25にX線を照射し得るように管状反応容器2を移動させるものである。具体的には、測定装置Xが反応前測定位置21を測定し得る破線で示す基端位置(a)から反応後測定位置25を測定し得る破線で示す終端位置(b)の範囲で管状反応容器2の位置を移動させるものである。なお、同図には測定装置Xが反応初期測定位置22を測定し得る位置に管状反応容器2を配置した状態を一例として実線で示している。勿論、この相対位置変更装置4を用いて上記各測定位置21、22、23、24、25において測定を行う際には、測定に掛かる所要時間並びに管状反応容器2を移動させる所要時間か掛かることにより、異なった時間帯にそれぞれ測定することとなる。
【0027】
<変形例>
また、図1に示した相対位置変更装置4の他の例として、図2に示すように、測定装置3を管状反応容器2に対して移動させる相対位置変更装置4Aとしても良い。この場合、照射部31並びに検出部32を基端位置(a)から終端位置(b)まで段階的或いは無段階に移動させることによって、反応前測定位置21、反応初期測定位置22、反応中期測定位置23、反応終期測定位置24並びに反応後測定位置25に対して測定装置3の照射部31がX線を照射し得るように、管状反応容器2に対して測定装置3を移動させるものである。
【0028】
<変形例>
さらに、相対位置変更装置4、4Aを設けない構成として、図3に示すように、管状反応容器2における各測定位置21、22、23、24、25に対応させてそれぞれ測定装置3をそれぞれ配置したものであっても良い。この場合、測定装置3が各測定位置21、22、23、24、25を同時に測定することが可能である。
【0029】
<時間分割分析用測定システムを用いた測定例>
続いて、以上に説明した時間分割分析用測定システムSを用いて反応系をリアルタイムに解析する態様の一例を、図4を参照して説明する。
【0030】
上述の通り、本実施形態では複数の材料として、第1材料r1としてブロモアニソール、第2材料r2としてフェニルボロン酸、第3材料r3として炭酸カリウムを用いるとともに、材料のひとつである触媒Cとしてパラジウムペロブスカイトを用いている。そして、斯かる複数の材料から、いわゆる鈴木カップリング反応によってメトキシビフェニールmbを生成する反応系を、本実施形態に係る時間用測定分析システムSを用いて分析する態様について説明する。なお反応初期測定位置22、反応中期測定位置23及び反応終期測定位置24において、触媒C由来の3価のパラジウム原子が検出されるが、以下において説明を省略し、0価のパラジウム原子並びに2価のパラジウム原子の態様についてのみ説明することとする。
【0031】
反応前測定位置21において、触媒Cが存在しないため測定装置3はパラジウム原子を全く検出しない状態となっている。
【0032】
反応初期測定位置22において、触媒Cから0価のパラジウム原子(Pdクラスター或いはナノパーティクル)が溶出するため測定装置3はこの0価のパラジウム原子を検出する。また、0価のパラジウム原子が第1材料r1すなわちブロモアニソールと即反応した場合は、後述する第一中間体n1が生成され始めるため、2価のパラジウム原子も併せて検出される可能性が考えられる。
【0033】
反応中期測定位置23において、反応初期測定位置22で溶出した0価のパラジウム原子が第1材料r1たるブロモアニソールと反応することにより第1中間体n1が一時的に生成された状態となる。このとき、パラジウム原子は2価の状態となっている。続いて第1中間体n1内のパラジウム原子がさらに第2材料たるフェニルボロン酸と反応して第2中間体n2となる。この場合においてもパラジウム原子は2価の状態となっている。すなわち、測定装置3はこの反応中期測定位置23において、2価のパラジウム原子を検出することとなる。
【0034】
反応終期測定位置24において、第2中間体n2内のパラジウム原子が放出されることにより、第2中間体n2は、反応生成物であるメトキシビフェニールmbに代わることとなる。このとき、第2中間体n2から放出されたパラジウム原子は0価のパラジウム原子として測定装置3に検出される。
【0035】
反応後測定位置25においては触媒Cが存在しないため、測定装置3はパラジウム原子を全く検出しない状態となっている。しかし可能性として、0価のパラジウム原子が検出されるか或いは触媒Cが脱落する等によって触媒C由来の3価のパラジウム原子が検出されることが考えられる。
【0036】
以上のように本実施形態に係る時間分割分析用測定システムSによれば、第1材料r1、第2材料r2及び第3材料r3をバッチ式ではなく、流速維持装置1によって管状反応容器2中での反応進行段階が定常となるように流速が維持されるといった方式を採用しているため、管状反応容器2中の流路に沿った各ポイントたる各測定位置21、22、23、24、25においては、常に同じ段階の化学反応が起こるように設定することができる。そのため、各測定位置21、22、23、24、25をそれぞれ分析するのみで反応系における複数の反応段階をそれぞれ高い精度で解析し得るものとなっている。
【0037】
また、本実施形態に係る時間分割分析用測定方法を、流路Lを構成する管状反応容器2に複数の測定用ポイントたる測定位置21、22、23、24、25を設定するとともに、この各測定位置21、22、23、24、25ごとに第1材料r1、第2材料r2、第3材料r3及び触媒Cによって起こる反応の進行段階が定常となるように流路L内の流速を維持しておき、この各測定位置21、22、23、24、25における反応状態を管状反応容器2の外側に配した測定装置3によって測定する方法とすることによって、反応の進行段階における複数の段階をそれぞれ高い精度で解析し得るものとなっている。
【0038】
特に本実施形態では、図1、図2に示すように、相対位置変更装置4、4Aを設けた時間分割分析用測定システムについては、上述した貯蔵部Tと、流路Lと、流速維持装置1によって、管状反応容器2内で定常化された反応系を実現することにより、当該反応系の各ポイントを管状反応容器2内の各測定位置21、22、23、24、25に設定することを可能にしている。そうすることにより各測定位置21、22、23、24、25における反応状態を、同時に測定する必要性を有効に回避して、単一の測定装置3によって反応系におけるそれぞれの反応段階における反応物の態様を正確に解析することが可能となっている。また勿論、定常化された反応系を実現することにより、測定装置3の測定に掛かる所要時間に拘わらず経時的に変化する反応系における各反応段階を測定し得るものとなっている。
【0039】
また、本実施形態では測定装置としてXAFS測定装置を採用することにより、上述の通りパラジウム原子の電荷に係る態様を好適に解析し得るものとなっている。
【0040】
材料のひとつを触媒Cとし、その触媒Cを管状反応容器2の所要領域に配置しているので、反応系における一連の化学反応を管状反応容器内で確実に起こさせ得るものとなっている。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。例えば上記実施形態における相対位置変更装置4と相対位置変更装置4Aとを併用したものであってもよい。また相対位置測定装置は、測定装置3以外の全ての構成要素を移動させるものであってもよい。
【0042】
例えば、図3に示すように、測定装置3を複数設けておき、管状反応容器2の各測定位置21、22、23、24、25における反応状態を同時間帯に測定し得るようにしたものであっても、測定装置3の測定に掛かる所要時間に関係なく複数の測定位置を平行してリアルタイムに測定、解析することが可能である。
【0043】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係る時間分割分析用測定システムを示す構成説明図。
【図2】同実施形態の変形例に係る要部説明図。
【図3】同実施形態の他の変形例に係る要部説明図。
【図4】同実施形態に係る反応系における化合物の態様を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0045】
1…流速維持装置
2…管状反応容器
21…ポイント(反応前測定位置)
22…ポイント(反応初期測定位置)
23…ポイント(反応中期測定位置)
24…ポイント(反応終期測定位置)
25…ポイント(反応後測定位置)
3…測定装置、XAFS測定装置(測定装置)
4、4A…相対位置変更装置
r1…複数材料(第1材料)
r2…複数材料(第2材料)
r3…複数材料(第3材料)
C…材料、触媒(触媒)
L…流路
S…時間分割分析用測定システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数材料の全部又は一部が流路に沿って流れながら反応する反応系を対象とするものであって、前記流路を構成する管状反応容器と、この管状反応容器の各ポイントごとに前記材料の反応進行段階が定常となるように前記流路内の流速を維持するための流速維持装置と、前記管状反応容器の複数ポイントにおける反応状態を同時間帯に又は異なった時間帯に測定する測定装置とを具備してなることを特徴とする時間分割分析用測定システム。
【請求項2】
各ポイントに対応させて測定装置を複数設けておき、前記管状反応容器の複数ポイントにおける反応状態を同時間帯に測定し得るようにした請求項1記載の時間分割分析用測定システム。
【請求項3】
単一の測定装置と前記管状反応容器との間に、前記測定装置と前記管状反応容器との相対位置を変更するための相対位置変更装置を設けておき、各ポイントにおける反応状態を単一の測定装置によって異なった時間帯にそれぞれ測定し得るようにしたことを特徴とする請求項1記載の時間分割分析用測定システム。
【請求項4】
前記測定装置がXAFS測定装置である請求項1、2又は3記載の時間分割分析用測定システム。
【請求項5】
前記材料のひとつが触媒であり、その触媒を前記管状反応容器の所要領域に配置している請求項1、2、3又は4記載の時間分割分析用測定システム。
【請求項6】
複数材料の全部又は一部が流路に沿って流れながら反応する反応系を対象とする測定方法であって、前記流路を構成する管状反応容器に複数の測定用ポイントを設定するとともに、この管状反応容器の各ポイントごとに前記材料の反応進行段階が定常となるように前記流路内の流速を維持しておき、前記管状反応容器の複数ポイントにおける反応状態を管状反応容器の外側に配した測定装置によって同時間帯に又は異なった時間帯に設定することを特徴とする時間分割分析用測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−101417(P2007−101417A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292926(P2005−292926)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000242002)北興化学工業株式会社 (182)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】