説明

暖房便座およびそれを用いた衛生洗浄装置

【課題】本発明は、暖房機能を有する便座に関し、着座部に装着する発熱体の破損を防止し、均一な加熱分布と低コスト性を実現することを目的とする。
【解決手段】便座ヒータ450Uは、左右に分割された便座ヒータ450L、450Rを単一電流系に構成したことにより、第一の金属箔453、および第二の金属箔451に使用する材料を有効活用してコスト低減を実現するのみならず、着座面410Uへの便座ヒータ450Uの貼着を容易化し、かつ、しわ、浮きなどの貼着不良なく確実に行え、その結果、線状発熱体460の部分的な自己発熱を防止し、併せて線状発熱体460の熱膨張、収縮による熱応力歪を緩和、低減する熱応力緩衝作用で、線状発熱体460の破損を防止して耐久性を大幅に向上させるのみならず、比較的簡便な制御構成で着座面410Uの温度分布特性を高めて快適な暖房が実現できるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房便座およびそれを用いた衛生洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の暖房便座は、図16に示すように、合成樹脂製の略馬蹄形の便座の着座部に、馬蹄形の単一の面状発熱体101を埋設していた。この面状発熱体101は馬蹄形の単一金属箔シート102と粘着テープ103との間にフッ素樹脂を絶縁皮膜104とした外径1mm以下のコード状ヒータ105を略長U字形状の連続した配線パターンで挟持したものである。
【0003】
実際には、7本の0.05mmのニッケルクロム合金線を撚り線状態にした抵抗線106にフッ素樹脂としてETFE(エチレン−テトラフルオロエチレンの共重合体の架橋体)で被覆して、外径約0.55mmのコード状ヒータ105としている。
【0004】
これによって、コード状ヒータ105の絶縁皮膜104として薄肉であっても十分な機械的強度を有し、かつ比較的高温まで溶融しにくいフッ素樹脂を使用したことにより、コード状ヒータ105の外径を1mm以下の細径にすることが可能で、面状発熱体101の表面を平滑に近くでき、便座に埋設する際に合成樹脂の流れを円滑にできるというものであった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−78143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成においては、面状発熱体101は馬蹄形の単一のヒータユニット構成であり、面状発熱体101を便座に貼着する過程においては、便座の着座部の形状に沿うように貼着する必要上、面状発熱体101の馬蹄形の中央部近傍に左右の貼着ずれ等から起こるしわや浮きなどといった貼着不良部が発生しやすく、貼着操作そのものも煩雑になりやすい。
【0006】
さらに、面状発熱体101が馬蹄形に形成される過程では、金属箔シート102と粘着テープ103の馬蹄形の内方部分は廃材となる場合が多く、材料活用の非効率性、コスト増大といった課題があった。
【0007】
またこのような状態で、コード状ヒータ105に通電がなされると、抵抗線106が発熱する際には熱膨張が発生し、略長U字形状の長手方向や、前記の面状発熱体101の馬蹄形の中央部近傍のしわや貼着不良部において、抵抗線106からの放熱が低下しての自己発熱が増大するため、特にその伸張度が高い傾向となる。
【0008】
そして、暖房便座においては、その保温機能を維持するために、通電のON、OFFなどの制御がなされ、それに伴い、コード状ヒータ105の抵抗線106は熱膨張、収縮を繰り返す。
【0009】
この熱膨張、収縮による歪みは、コード状ヒータ105、金属箔シート102、粘着テープ103の三者の間に発生した空隙107などで集中して発生して増幅されるため、前記の略長U字形状の長手方向や、面状発熱体101の馬蹄形の中央部近傍のしわや貼着不良部において、時として断線を生起し、便座の暖房性能が失われることがあった。
【0010】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、便座の着座面への便座ヒータの貼着を容易かつ確実に行え、同時に材料を有効活用してコスト低減を実現するだけでなく、線状発熱体の熱膨張、収縮を吸収して線状発熱体の破損を防止し、耐久性を大幅に向上させることを併せて目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の暖房便座は、着座面を有する便座と、着座面の裏側に配設した複数の便座ヒータとを備え、便座ヒータは着座面の内周側と外周側とに曲げ部が位置するようにそれぞれ蛇行状に形成された複数系列の線状発熱体で構成するとともに、単一または複数の電流系に設定したものである。
【0012】
このように、便座ヒータを複数に分割することにより、例えば着座面の裏側に略馬蹄形に便座ヒータを貼着する場合、左右2分割した便座ヒータをそれぞれ左右の該当箇所に貼着することで良く、各便座ヒータの貼着の位置決めが容易で、前記従来技術におけるしわや浮きといった貼着不良部の発生がほとんどない。したがって、通電時にそのような貼着不良部で発生しやすい線状発熱体の部分的な自己発熱を防止することができる。
【0013】
また、個々の便座ヒータの材用取りは、裁断過程において廃材が最も少なくなるように自在な配置が可能となり、材料を有効活用してコスト低減を実現することができる。
【0014】
また、複数の便座ヒータを複数の電流系に設定することにより、各便座ヒータにおいて発生しうる多少の昇温状態の差を、各便座ヒータへの入力を制御によって個別に調整することが可能で、その結果、使用者により快適な使用感を提供することができる。また電流系の数に関わらず、一方の便座ヒータに故障などが発生した場合でも、故障した便座ヒータのみを交換、貼着しなおすことも容易に行えるため、製品の修理、メンテナンスの面においても、必要最小限の処理で済む利点がある。
【0015】
さらに、通電のON、OFFの繰返しでなどで発生する線状発熱体の熱膨張、収縮は、曲げ部で吸収されて発熱体の断線といった問題を防止し、また複数系列の蛇行状の線状発熱体であるために、熱放散が大きい着座部の内、外周での加熱分布を高めて暖房温度の均一化が図れることとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の暖房便座は、便座ヒータに使用する材料を有効活用してコスト低減を実現するのみならず、着座面への便座ヒータの貼着を容易化し、かつしわ、浮きなどの貼着不良なく確実に行え、その結果、線状発熱体の部分的な自己発熱を防止し、併せて線状発熱体の熱膨張、収縮による熱応力歪を緩和、低減する熱応力緩衝作用で、線状発熱体の破損を防止して耐久性を大幅に向上させるのみならず、着座面の温度分布特性を高めて快適な暖房が実現できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
第1の発明は、着座面を有する便座と、着座面の裏側に配設した複数の便座ヒータとを備え、便座ヒータは着座面の内周側と外周側とに曲げ部が位置するようにそれぞれ蛇行状に形成された複数系列の線状発熱体で構成するとともに、単一の電流系に設定したものである。これにより、例えば着座面の裏側に略馬蹄形に便座ヒータを貼着する場合、左右に分割した便座ヒータをそれぞれ左右の該当箇所に貼着することで良く、各便座ヒータの貼着の位置決めが容易で、しわや浮きといった貼着不良部の発生がほとんどない。また、個々の便座ヒータの材用取りは、裁断過程において廃材が最も少なくなるように自在な配置が可能となり、材料を有効活用してコスト低減を実現することができる。また、一方の便座ヒータに故障などが発生した場合でも、故障した便座ヒータのみを交換、貼着しなおす
ことも容易に行えるため、製品の修理、メンテナンスの面においても、必要最小限の処理で済む。さらに、複数の便座ヒータであっても、単一の電流系に設定することにより、例えば左右の着座部の片側の代表点の温度を検知することにより、便座ヒータ全体の制御が行え、比較的簡単な制御構成にできる。そして、通電のON、OFFの繰返しでなど発生するコード状発熱体の熱膨張、収縮は曲げ部で吸収されて発熱体の断線といった問題を防止し、また複数系列の蛇行状の線状発熱体であるために、熱放散が大きい着座部の内、外周での加熱分布を高めて暖房温度の均一化が図れることとなる。
【0018】
第2の発明は、着座面を有する便座と、着座面の裏側に配設した複数の便座ヒータとを備え、便座ヒータは着座面の内周側と外周側とに曲げ部が位置するようにそれぞれ蛇行状に形成された複数系列の線状発熱体で構成するとともに、複数の電流系に設定したものである。これにより、複数の便座ヒータにおいて多少の昇温状態の差が発生する場合があるが、少なくとも主要な便座ヒータへの入力電圧の調整や、細かいON/OFFなど、ある程度便座ヒータ毎に個別に調整することが可能で、その結果、使用者により快適な使用感を提供することができる。
【0019】
第3の発明は、特に第2の発明において、便座ヒータに設定する電流系の系統数を、便座ヒータの個数に一致させたものである。これにより、便座ヒータへの入力電圧の調整や、細かいON、OFFなど、全便座ヒータ毎に個別に調整することが可能で、使用者により快適な使用感を提供することができる。
【0020】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれかの発明において、便座ヒータは、2つの略対称形状に構成したものである。これにより、馬蹄形や略O字形状の着座部に合わせて左右2対の略弓なりの対称形の便座ヒータが構成でき、極めて貼着しやすく、また個々の便座ヒータの材用取りも、裁断過程において廃材が最も少なくなるような配置が可能となり、材料を有効活用してコスト低減を実現することができる。
【0021】
第5の発明は、特に第1〜4のいずれかの発明において、便座ヒータは、着座面の温度を検知する少なくとも一つ以上の温度検知センサと、温度検知センサの出力信号によって便座ヒータへの通電量を制御する制御部と連動させたものである。これにより、温度検知センサの出力信号と制御部の連動による所定の便座ヒータの通電量制御が行われ、その結果着座面が常時最適な温度状態を維持できる。
【0022】
第6の発明は、特に第1〜5のいずれかの発明において、便座ヒータは、エナメル線で構成しさらにその外周を絶縁被覆で被覆した蛇行状の線状発熱体を熱良導性の箔体に固定化して構成し、着座面の裏側に貼着したものである。これにより、耐薬品性、耐熱性に優れたエナメル層が導体線を被覆して第1の絶縁層を形成でき、さらにその外周に例えばフッ素含有樹脂などの第2の絶縁被覆が構成されるため、二重の絶縁被覆が構成されてコード状発熱体の絶縁性が大きく向上する。
【0023】
第7の発明は、特に第6の発明において、便座ヒータは、線状発熱体を二層の熱良導性の箔体で挟持し、一方の熱良導性箔体を着座部の内面に貼着したものである。これにより、例えばアルミニウム箔、銅箔等の高い熱良導性(高熱伝導率)を有する二層の金属箔体で挟持することでシート状の便座ヒータを構成でき、そのため線状発熱体からの発熱を箔体の全面に分散させて便座ヒータ全体をほぼ均一な発熱状態に保ち、線状発熱体の不必要な高温化を回避して断線などを防止することができる。したがって、この便座ヒータを着座部の内面に貼着することにより、着座部全体に素早く均一に熱伝導させることができる。
【0024】
第8の発明は、特に第1〜7のいずれかに記載の暖房便座と、本体部と、洗浄装置とを
備えたものである。これにより、発熱体の破損を防止して耐久性を大幅に向上させるのみならず、併せて着座部の温度分布特性を高め、快適な暖房が実現できる暖房便座を備えた衛生洗浄装置を提供することができる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における暖房便座に用いた便座ヒータの正面図、図2は同便座ヒータを単一電流系に構成した正面図、図3は同便座全体の分解斜視図、図4は同便座ヒータを着座面に貼着した状態図、図5は図2でEの領域の部分拡大図、図6は同便座ヒータの線状発熱体の部分拡大断面図、図7は同便座ヒータの他の線状発熱体の例の部分拡大断面図、図8は同実施の形態における暖房便座の制御ブロックの概念図、図9は馬蹄形の単一の便座ヒータの材料取りを示す概念図、図10は同実施の形態に用いた便座ヒータの材料取りを示す概念図である。
【0027】
以上の図面を用いて、本発明の実施の形態1における便座装置の構成、および動作、作用について説明する。
【0028】
図1で、便座ヒータ450Uは、左右対称形に分割された便座ヒータ450L、450Rをもって構成される。
【0029】
図2は、便座ヒータ450L、450Rを単一電流系に構成した便座ヒータ450Uで、線状発熱体460の端部は、絶縁被覆が施されたリード線465に接続されている。便座ヒータ450Lと450Rは、リード線465の各一端部をコネクタ465Aで接続されることにより、単一電流系の便座ヒータ450Uを構成する。
【0030】
図3は、合成樹脂製の便座基盤420と、アルミニウムなどの高い熱伝導性を有する金属で形成された着座面410Uと、便座基盤420と着座面410Uの間に便座ヒータ450L、450Rが介在する構成で、便座ヒータ450Lと450Rは、個々に粘着層452aを着座面410Uの内面部の一定の位置に貼着されて固定されている。
【0031】
図4は、便座ヒータ450L、450Rを着座面410Uの裏面に貼着し、略馬蹄形の便座ヒータ450Uを構成した状態である。このように、着座面410Uの裏側に略馬蹄形に便座ヒータを貼着する場合、左右に分割した弓なりの便座ヒータ450L、450Rを、それぞれ左右の該当箇所に貼着することで良い。したがって、便座ヒータ450L、450Rの貼着の位置決めが容易で、それぞれを確実に着座面410Uの裏面に貼着できる。そのため、単一馬蹄形の便座ヒータ構成を貼着する場合に発生しやすい、しわや浮きといった貼着不良部の発生がほとんどない。これにより、そのような貼着不良部で発生しやすい線状発熱体の部分的な自己発熱といった耐久的問題を防止することができ、加熱分布を高めて暖房温度の均一化が図れることとなる。
【0032】
図1、図5に示すように、線状発熱体460は、着座面410Uの形状に合わせて左右方向に蛇行する蛇行形状に配設される。線状発熱体460は、蛇行形状の曲げ部が着座面の外側の側辺および内側の側辺の近傍に位置するように配置されている。具体的には、1本の連続する線状発熱体460が、第1系列Aの線状発熱体460aと、第2系列Bの線状発熱体460bとに分けられ、両者はほぼ平行に配列されている。この配列は、曲げ部間の線間隔が短いため、熱膨張、収縮に起因する線状発熱体460の線長の変化が小規模となり、また曲げ部で熱膨張、収縮による熱ストレスを緩衝し、断線などを抑制する構成となっている。なお、図1のEの領域の曲げ部の長さLa、Lbおよび曲げ部間の間隔S
は、任意の調整が可能で、それによって便座ヒータ450Uの加熱分布を調整することができる。例えば、便座ヒータ450Uの外側および内側の側辺近傍の加熱密度が便座ヒータ450Uの中央部の加熱密度よりも高くなるように、曲げ部の長さLa,Lbおよび曲げ部間の間隔Sを調整し、便座ヒータ450Uのほぼ全領域において均等な暖房温度を維持することができる。
【0033】
また、本例では、第1系列Aの線状発熱体460aでの電流の向きが、第1系列Bの線状発熱体460bでの電流の向きと対向するため、双方の線状発熱体460a、460bから発生する磁場が打ち消される傾向にあり、その結果、ノイズ等の発生が抑制される。
【0034】
図6で、着座面410Uは、例えば厚さ1mmのアルミニウム板413により形成される。アルミニウム板413の上面には、下塗り層412および表面化粧層411が二層で厚さ約0.08〜0.14mmで形成され、下面にも厚さ約0.06〜0.1mmの下面塗装膜414が形成される。本例では、下塗り層412、表面化粧層411、および下面塗装膜414は、約150℃の耐熱性を有するポリエステル樹脂材料で構成されている。なお、着座面410Uには、アルミニウム板413以外にも、銅板、ステンレス板、アルミニウムめっき鋼板および亜鉛アルミニウムめっき鋼板のうちいずれか、または複数の組合せを用いてもよい。
【0035】
一方、着座面410Uの下面塗装膜414側には便座ヒータ450Uが貼着されている。便座ヒータ450Uは、第一の金属箔453の粘着層452b側と第二の金属箔451の非粘着層側との間に線状発熱体460を挟持させて、前述の蛇行形状配列を保持させたものである。第一の金属箔453、第二の金属箔451は、例えば、比較的熱伝導率の高い厚さ0.05mmのアルミニウム箔を用いているが、その他、銅箔などさらに高い熱伝導率を有する金属材料を使用すると、便座ヒータ450Uとしての加熱性能は上昇する。
【0036】
線状発熱体460は、断面が略円形の発熱線463a、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462により構成される。断面円形の発熱線463aの外周面がエナメル層463bおよび絶縁被覆層462で順に被覆される。発熱線463aおよびエナメル層463bによりエナメル線463が構成される。
【0037】
発熱線463aは、例えば0.16〜0.25mmの直径を有する、銅または銅合金からなる。本実施の形態では、発熱線463aとして、直径0.168mmの4%Ag−Cu合金からなる高抗張力型ヒータ線が用いられる。因みに抵抗値は0.88Ω/mである。
【0038】
また、発熱線463aの第一の絶縁被覆であるエナメル層463bは、例えば180〜300℃の耐熱性を有するポリエステルイミド(PEI)からなる。エナメル層463bの膜厚は、0.02mm以下であり、本実施の形態では0.01〜0.016mmである。このようなエナメル線463は、エナメル層463bの膜厚が極薄い0.01〜0.02mm程度であっても、電気用品技術基準である1000Vで1分間以上の電気絶縁耐圧性能を十分確保することができる。また、エナメル層463bの他の材料としては、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)などを用いれば、さらに耐熱性が上昇する。
【0039】
さらに、第二の絶縁被覆は、例えば260℃の耐熱性を有するパーフルオロアルコキシ混合物(以下PFA層462と称する)等のフッ素樹脂からなる。PFA層462の厚みは、例えば0.05〜0.15mmである。PFA層462の形成は、押出し加工により行うことができる。この場合、PFA層462の厚みが0.05程度に薄くても、雷サージにも耐える電気絶縁耐圧性能を確保することができる。
【0040】
したがって、発熱線上に二重、かつ薄膜状の絶縁被覆を構成した線状発熱体460が得られる。その外径は、0.3〜0.50mmの範囲に留まり、本例の場合0.35mm程度にでき、絶縁耐圧を確保すると共に、発熱線463aから金属箔451および着座面410Uへの熱伝導を極めて俊敏に行うことができる。
【0041】
このように耐熱性能に優れたエナメル線463をヒータ線として使用した場合、十分短時間で便座を昇温でき、かつ電気絶縁性および安全性を確保できるので、種々の便座装置への適用が可能である。
【0042】
図7は、線状発熱体460の他の構成例で、複数のエナメル線463が撚り合わされたもので、各エナメル線463は、直径0.09mmの発熱線463aに第一の絶縁被覆として膜厚0.01mmのエナメル層463bが形成される。
【0043】
さらに、複数のエナメル線463の線束を囲繞するように、第二の絶縁被覆としてPFA層462を形成することにより二重の絶縁構造を確保している。
【0044】
なお、図7では、7本のエナメル線463が撚り合わされているが、エナメル線463の数は7本に限定されるものではない。
【0045】
この構成では、複数のエナメル線463を撚り合わせた線束とすることで、熱膨張、収縮による熱ストレスを線束全体に分散させることができるため、断線などの事態を抑制できる。また、撚り線のうち少なくとも1本をエナメル層463bのない非絶縁電線とすることにより、局所高熱等によりいずれかのエナメル線463のエナメル層463bが絶縁破壊された場合にも、その絶縁破壊を迅速に検知し、安全に発熱線463aへの通電を遮断することができる。
【0046】
なお、図2において、リード線465の単位長さあたりの電気抵抗値は、線状発熱体460の単位長さあたりの電気抵抗値より十分小さいことが重要である。リード線465の単位長さあたりの電気抵抗値少なくとも四分の一望ましくは十分の一以下にすることにより、リード線465における不要な発熱を防止することができ、安全性と省エネ性を確保することができる。併せてリード線465と線状発熱体460との接続部466、467、468、469を熱良導性の箔体451、453で挟み込まれる位置に設けることが重要な構成である。
【0047】
もしも、リード線465と線状発熱体460との接続部466、467、468、469が熱良導性の箔体451、453で挟み込まれない位置に存在したならば、その線状発熱体460の発熱が熱良導性の箔体451、453に高速で伝熱されないため、部分的に高温となり、接続部466、467、468、469付近の線状発熱体460およびリード線465の絶縁被覆が損傷しかねない。
【0048】
上記したように、複数の便座ヒータ450L、450Rを接続するリード線465および接続部466、467、468、469を熱良導性の箔体451、453で挟み込まれる位置に設けた構成により、不要な高温発生を防止し安全性をすることが確保できる。
【0049】
図8で、暖房便座110は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および人体検知センサ600を備える。本体部200は、制御部90、温度測定部401、ヒータ駆動部402、便座温調ランプRA1および着座センサ610を含む。また、便座400には、便座ヒータ450L、450Rを単一電流系に構成した便座ヒータ450U、およびサーミスタ401aを備える。サーミスタ401aは、着座面410Uの裏面、また
は便座ヒータ450L、450Rの片方側に配設され、便座400の代表温度を検知する。
【0050】
制御部90は、例えばマイクロコンピュータからなり、使用者の入室および便座400の温度等の判定、タイマ機能、種々の情報の記憶、ならびに、ヒータ駆動部402の動作を制御するための通電率切替などの機能を有する。
【0051】
温度測定部401は、サーミスタ401aに接続され、サーミスタ401aから出力される信号に基づいて便座400の温度を測定し、ヒータ駆動部402は、便座ヒータ450Uに接続され、便座ヒータ450Uを駆動する。
【0052】
本例では通常の使用状態として、初期設定時では、制御部90がヒータ駆動部402を制御することにより、便座400が待機温度として例えば約18℃に温度調整される。制御部90では、人体検知センサ600からの入室検知信号により使用者のトイレットルームへの入室を検知する。ついで、制御部90は、便座400の測定温度値、および便座設定温度に基づき、所定のヒータ制御パターンの選択を経て、ヒータ駆動部402により便座ヒータ450が駆動され、便座400の温度が便座設定温度へと瞬時に加温される。そして、サーミスタ401aが便座400の代表温度を検知して、便座400の温度を一定の適温、例えば34〜42℃の範囲に使用者の好みに応じて保持される。したがって、使用者が便座400に着座した時に冷感を覚えることなく、快適な使用が可能である。
【0053】
一般に、暖房便座110は便座400に直接皮膚を接触させて着座するため、安全に対しては十分な配慮が必要である。通常使用では安全、快適に使用できるが、万一何らかの異常により制御部90に不具合が生じ、便座ヒータ450Uへの通電制御が不能となった場合は、早急な安全装置の作動が必要であり、例えば便座ヒータ450Uへの通電経路内に温度過昇防止装置(図示せず)などを設けて、便座ヒータ450Uの温度過昇を速やかに検知し、便座ヒータ450Uへの通電経路を遮断することが可能である。
【0054】
図9は、便座ヒータを単一馬蹄形で構成する場合の材料取りの例で、必要な材料の寸法は、W0×H0となる。一方、図10に示すように、本例における便座ヒータ450L、450Rを構成する場合の材料取りは、W=0.79×W0、H1=1.05×H0の長方形となって、面積としては単一馬蹄形での材料取りに比べ約83%となって、第一の金属箔453、および第二の金属箔451の材料を17%削減可能である。したがって、便座ヒータ450Uを、便座ヒータ450L、450Rに分割配置して加工することにより、使用コストを低減可能である。
【0055】
以上のように、使用する材料を有効活用してコスト低減を実現するのみならず、着座面410Uへの便座ヒータ450Uの貼着を容易化し、かつ、しわ、浮きなどの貼着不良なく確実に行え、その結果、線状発熱体460の部分的な自己発熱を防止し、併せて線状発熱体460の熱膨張、収縮による熱応力歪を緩和、低減する熱応力緩衝作用で、線状発熱体460の破損を防止して耐久性を大幅に向上させるのみならず、比較的簡便な制御構成で着座面410Uの温度分布特性を高めて快適な暖房が実現できるものである。
【0056】
(実施の形態2)
図11は本発明の実施の形態2における暖房便座に用いた二つの便座ヒータを二電流系に構成した正面図、図12は同実施の形態における暖房便座の制御ブロックの概念図である。
【0057】
以上の図面を用いて、本発明の実施の形態2における便座装置の構成、および動作、作用について説明する。
【0058】
図11、図12において、実施の形態1と異なる点は、便座ヒータ450AUを構成する左右の便座ヒータ450AL、450ARに、それぞれ一電流系を構成し、便座ヒータAUとして二電流系を構成したところ、および、便座400に、便座400の左右部の代表温度の測定に用いるサーミスタ401a、401bを、便座ヒータ450AL、450ARに対応する位置にそれぞれ設けて温度測定部401に接続し、さらに、便座ヒータ450AL、450ARからのそれぞれの電流系をヒータ駆動部402に接続したところである。なお、実施の形態1と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0059】
以上の構成で、実施の形態1と同様に、使用者がトイレットルーム内に入室すると、制御部90は、便座400のサーミスタ401a、および401bによる測定温度値、および便座設定温度に基づき、左右それぞれの所定のヒータ制御パターンの選択を経て、ヒータ駆動部402により、左右の便座ヒータ450AL、450ARが個々に駆動され、便座400の温度が便座設定温度へと瞬時に加温される。この時、ヒータ駆動部402は、サーミスタ401a、および401bからの温度信号に基づき、制御部90を介して便座ヒータ450AL、450ARの通電量を最適化する。したがって、便座400の温度は、そのときの便座ヒータ450AL、450ARの仕上がり、貼着度合い、または線状発熱体460のばらつきなどに関らず、全体として左右の温度差の少ない均一性の良好な温度分布を確保でき、使用者にとっての快適性をさらに実現することができる。
【0060】
(実施の形態3)
図13は本発明の実施の形態3における便座ヒータの材料取りを示す概念図である。
【0061】
以上の図面を用いて、本発明の実施の形態3における便座装置の構成、および動作、作用について説明する。
【0062】
図13において、実施の形態1と異なる点は、便座ヒータ450Uの左右の便座ヒータ450L、450Rの材料取りを平行四辺形の中に収めたところである。なお、実施の形態1と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0063】
左右の便座ヒータ450L、450Rの材料取りは、幅W2=0.79×W0、高さH2=1.02×H0の平行四辺形で、面積としては単一馬蹄形での材料取り(図9)に比べ約80%となって材料を20%削減可能である。したがって、便座ヒータ450Uを、便座ヒータ450BL、450BRに分割配置して平行四辺形として斜めに裁断加工することにより、使用コストをさらに低減可能である。
【0064】
(実施の形態4)
図14は、本発明の実施の形態4における衛生洗浄装置を示す外観斜視図で、実施の形態1〜3に示した暖房便座、便座ヒータのうちいずれか一つを備えたものである。
【0065】
図14で、トイレットルーム内に設置された衛生洗浄装置900は便器700の上面に取り付けられる。衛生洗浄装置800は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。
【0066】
便座400は、実施の形態1〜3に示した便座装置のうちいずれか一つを包含し、本体部200には、便座400および蓋部500が開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、便器700内に出入りする洗浄装置800と洗浄水供給機構(図示せず)が設けられるとともに、制御部90が内蔵される。
【0067】
使用者がトイレットルーム内に入室すると、人体検知センサ600(例えば反射型の赤
外線センサ)が、人体から反射された赤外線を検出し、使用者の入室を検知する。
【0068】
その時点で、実施の形態1で述べたように、便座400の着座面410Uが、少なくとも使用者が冷感を感じない温度まで急速に、例えば6秒以内に昇温する。
【0069】
次いで、使用者が着座面410Uに着座すると、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ610(例えば反射型の赤外線センサ)が、人体から反射された赤外線を検出することにより、便座400上に使用者が存在することを検知して、着座面410Uは快適に着座できる適温に保持される。
【0070】
そして、使用者が用便終了後に遠隔操作装置300を操作して洗浄指示を信号として本体部200に送ると、水道配管(図示せず)に接続された洗浄水供給機構と直結した洗浄装置800が突出して、その先端近傍から洗浄水(矢印)が噴出して使用者の局部を洗浄する。さらに、使用者が洗浄終了後に遠隔操作装置300を操作して洗浄停止を信号として本体部200に送ると、洗浄装置900が本体200内に収納される。最終的に、使用者が着座面410Uから立ち上がり、トイレットルームから退出する。
【0071】
以上のように、コスト低減、耐久性の大幅な向上、併せて比較的簡便な制構成で快適な暖房が実現可能な衛生洗浄装置を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明の暖房便座は、便座ヒータに使用する材料を有効活用してコスト低減を実現するのみならず、着座面への便座ヒータの貼着を容易化し、かつしわ、浮きなどの貼着不良なく確実に行え、その結果、線状発熱体の部分的な自己発熱を防止し、併せて線状発熱体の熱膨張、収縮による熱応力歪を緩和、低減する熱応力緩衝作用で、線状発熱体の破損を防止して耐久性を大幅に向上させるのみならず、着座面の温度分布特性を高めて快適な暖房が実現できるため、暖房便座に限らず使用者が着座する暖房機器の汎用的な安全機構技術としての適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態1における暖房便座に用いた便座ヒータの正面図
【図2】同実施の形態における便座ヒータを単一電流系に構成した正面図
【図3】同実施の形態における便座全体の分解斜視図
【図4】同実施の形態における便座ヒータを着座面に貼着した状態図
【図5】同実施の形態における便座ヒータのEの領域の部分拡大図
【図6】同実施の形態における線状発熱体の部分拡大断面図
【図7】同実施の形態における線状発熱体の他の例の部分拡大断面図
【図8】同実施の形態における便座装置の制御ブロックの概念図
【図9】馬蹄形の単一の便座ヒータの材料取りを示す概念図
【図10】同実施の形態における便座ヒータの材料取りを示す概念図
【図11】本発明の実施の形態2における暖房便座に用いた二つの便座ヒータを二電流系に構成した正面図
【図12】同実施の形態における暖房便座の制御ブロックの概念図
【図13】本発明の実施の形態3における暖房便座の便座ヒータの材料取りを示す概念図
【図14】本発明の実施の形態4における衛生洗浄装置を示す外観斜視図
【図15】(a)従来の便座装置の面状発熱体の正面図、(b)同面状発熱体の部分拡大断面図
【符号の説明】
【0074】
110、120 暖房便座
200 本体部
400 便座
410U 着座面
450AL、450AR、450AU、450L、450R、450U 便座ヒータ
460、460a、460b 線状発熱体
463 エナメル線
463a、463b 絶縁被覆
451 (熱良導性の箔体)第二の金属箔
453 (熱良導性の箔体)第一の金属箔
401a、401b 温度検知センサ(サーミスタ)
800 洗浄装置
900 衛生洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座面を有する便座と、前記着座面の裏側に配設した複数の便座ヒータとを備え、便座ヒータは着座面の内周側と外周側とに曲げ部が位置するようにそれぞれ蛇行状に形成された複数系列の線状発熱体で構成するとともに、単一の電流系に設定したことを特徴とする暖房便座。
【請求項2】
着座面を有する便座と、着座面の裏側に配設した複数の便座ヒータとを備え、便座ヒータは着座面の内周側と外周側とに曲げ部が位置するようにそれぞれ蛇行状に形成された複数系列の線状発熱体で構成するとともに、複数の電流系に設定したことを特徴とする暖房便座。
【請求項3】
便座ヒータに設定する電流系の系統数を、便座ヒータの個数に一致させたことを特徴とする請求項2に記載の暖房便座。
【請求項4】
便座ヒータは、2つの略対称形状に構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の暖房便座。
【請求項5】
便座ヒータは、着座面の温度を検知する少なくとも一つ以上の温度検知センサと、温度検知センサの出力信号によって便座ヒータへの通電量を制御する制御部と連動させたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の暖房便座。
【請求項6】
便座ヒータは、エナメル線で構成しさらにその外周を絶縁被覆で被覆した蛇行状の線状発熱体を熱良導性の箔体に固定化して構成し、着座面の裏側に貼着した請求項1〜5のいずれか1項に記載の暖房便座。
【請求項7】
便座ヒータは、線状発熱体を二層の熱良導性の箔体で挟持し、一方の熱良導性箔体を着座部の内面に貼着した請求項6に記載の暖房便座。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の暖房便座と、本体部と、洗浄装置とを備えた衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−29425(P2010−29425A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194470(P2008−194470)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】