説明

暖房便座装置

【課題】温風が人体にかかることがなく、温風の風路が分断された場合におけるエネルギーの損失を低減できる暖房便座装置を提供する。
【解決手段】ケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられ、空気を送風するファンと、空気を加熱するヒータと、を有する温風発生機能部と、前記ケーシングに対して開閉可能に軸支され、前記温風発生機能部から供給される温風を流す風路を内包した便座と、前記便座を開閉させる便座電動開閉部と、前記便座電動開閉部により前記便座を開くための便座開操作スイッチと、前記便座開操作スイッチが操作されると前記温風発生機能部の動作を停止させる制御部と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房便座装置に関し、具体的には温風により便座を暖房する暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗便器の便座を暖房できると、気温の低い冬場などでもトイレを快適に使用することができる。便座を暖房する手段として、ケーシング内に設けられた温風発生機能部から便座内に温風を導入して、便座を暖房する暖房便座装置がある(例えば、特許文献1、2)。特許文献1、2に記載された暖房便座装置においては、便座の使用の有無に関わらず温風を発生させているため、電力の無駄が発生している。
【0003】
特に、男子小用時の際に便座を開いた場合においては、温風の風路が分断されてしまうため、ケーシングから便座に温風を導入することができない。そのため、温風が風路の外部に無駄に流れることになる。また、温風の風路が分断された状態において温風を送り出すファンを動作させ続けると、ケーシング側の温風の風路にこもっていた温風が逃げてしまうため、エネルギーを損失してしまう。
【0004】
さらに、便座を適温に暖房するために風路内に供給する温風の温度は50℃を超えることもあるため、温風の風路が分断された状態において、温風が人体に直接接触することは好ましくない。
【特許文献1】特開2003−235764号公報
【特許文献2】特開2003−310483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、温風が人体にかかることがなく、温風の風路が分断された場合におけるエネルギーの損失を低減できる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、ケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられ、空気を送風するファンと、空気を加熱するヒータと、を有する温風発生機能部と、前記ケーシングに対して開閉可能に軸支され、前記温風発生機能部から供給される温風を流す風路を内包した便座と、前記便座を開閉させる便座電動開閉部と、前記便座電動開閉部により前記便座を開くための便座開操作スイッチと、前記便座開操作スイッチが操作されると前記温風発生機能部の動作を停止させる制御部と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、ケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられ、空気を送風するファンと、空気を加熱するヒータと、を有する温風発生機能部と、前記ケーシングに対して開閉可能に軸支され、前記温風発生機能部から供給される温風を流す風路を内包した便座と、前記便座が開いたことを検知する便座開閉検知部と、前記便座が開いたことを前記便座開閉検知部が検知すると前記温風発生機能部の動作を停止させる制御部と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温風が人体にかかることがなく、温風の風路が分断された場合におけるエネルギーの損失を低減できる暖房便座装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置の模式斜視図である。
本実施形態のトイレ装置は、便器300と、その上部に設けられたケーシング500を有する暖房便座装置と、を備える。なお、便器300の洗浄機構としては、いわゆる「ロータンク式」でもよく、あるいはロータンクを用いない「水道直圧式」であってもよい。
【0010】
暖房便座装置のケーシング500には、便座410と便蓋400とがそれぞれ開閉自在に軸支されている。後に詳述するように、これら便座410及び便蓋400は、手動により開閉できるとともに、電動開閉機構により自動的に開閉可能としてもよい。ケーシング500の内部には、温風発生機能部550が設けられ、閉じた(下げた)状態の便座410の中に温風を導入することにより便座410の暖房が可能とされている。この点については、後に詳述する。
【0011】
またさらに、ケーシング500には、衛生洗浄装置としての機能部を併設してもよい。すなわち、この暖房便座装置は、便座410に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する吐水ノズル615を有する洗浄機能部などを適宜備える。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0012】
暖房便座装置は、さらに、便座に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる温風乾燥機能や、便器300のボウル内の空気を吸い込み、フィルタや触媒などを介して臭気成分を低減させる脱臭機能などを有するものとすることができる。これらの動作は、例えば、ケーシング500とは別体として設けられたリモコン200により操作可能としてもよい。ただし、本発明においては、吐水ノズル615やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0013】
次に、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作について説明する。
図2は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の概略を説明する模式図であり、図2(a)は、使用者がトイレに入室した時の状態を表す模式図であり、図2(b)は、使用者が便座開操作スイッチを押した時の状態を表す模式図である。
【0014】
使用者10がトイレに入室する前においては、暖房便座装置は待機状態にあり、便座410および便蓋400は閉じた状態にある。図2(a)に表した状態のように、使用者10がトイレに近づき、トイレに入室すると、ケーシング500やリモコン200などに設けられたセンサがこれを検知する。センサが使用者10の入室を検知すると、便蓋400が自動的に開く。
【0015】
次に、図2(b)に表した状態のように、使用者10はリモコン200の便座開操作スイッチを操作して便座410を開き、便器300を使用する。ここで、従来技術の暖房便座装置においては、便座410が開いた状態の場合、温風の風路が分断されてしまうため、温風が風路の外部に無駄に流れることになる。また、温風の風路が分断された状態において温風を送り出すファンを動作し続けると、ケーシング側の温風の風路にこもっていた温風が逃げてしまうため、エネルギーを損失してしまう。温風が逃げてしまうため、便座も急に冷えてしまう。さらに、温風が使用者に直接接触するため、使用者が不快感を感じるおそれがある。
【0016】
これに対して、本実施形態にかかる暖房便座装置は、使用者が便座開操作スイッチを操作すると、温風発生機能部550の動作を停止させる制御部を有する。そのため、温風の風路が分断されても温風が風路の外部に無駄に流れることはない。また、温風を送り出すファンの動作が停止するため、ケーシング側の温風の風路にこもっていた温風が逃げることなく、エネルギーの損失を低減させることができる。温風が逃げないため、便座が急に冷えることもない。さらに、温風が使用者に直接接触しなくなり、使用者に不快感を与えることもない。
【0017】
なお、便座410が開いたことを検知する便座開閉検知部によって、便座410が開いたことを検知すると温風発生機能部550を停止させるようにしてもよい。この場合においては、使用者は便座410を手動で開けてもよいし、センサなどの人体検知部によって便座410が開くようにしてもよい。もちろん、便座開操作スイッチを操作して便座410が開くようにしてもよい。
【0018】
使用者10がトイレを退室すると、ケーシング500あるいはリモコン200などに設けられたセンサによりこれを検知する。使用者10の退室を検出した後、適宜設定された時間が経過すると、便座410及び便蓋400が自動的に閉じる。便座410及び便蓋400が自動的に閉じた後、再び温風発生機能部550の動作を開始して便座の暖房を再開する。
【0019】
以下、本実施形態にかかる暖房便座装置の詳細について説明する。
図3は、便座暖房機構を表す概念図である。
ケーシング500の中においては、温風発生機能部550として、例えば、ファン552とヒータ554とが設けられている。ファン552から送出された空気はヒータ554により加熱されて温風が生成され、この温風は送出部560を介して、閉じられた(下げられた)状態の便座410の中に導入される。便座410の中には、温風の風路412が形成されており、送出部560から便座410の風路412に導入された温風は、便座410の中を流れ、戻入部570を介してケーシング500の温風発生機能部550に戻る。
【0020】
すなわち、本実施形態の暖房便座装置は、便座410が閉じられた状態において、温風発生機能部550、送出部560、風路412、戻入部570、温風発生機能部550という温風循環路を形成し、温風がこの温風循環路を繰り返し流れるようにされている。このようにすれば、排熱を抑制して熱効率の優れた温風暖房が可能となる。そして、この暖房便座装置の動作は、例えばリモコン200により制御可能とされている。すなわち、リモコン200に便座410の温度を表示させたり、温度を設定可能とすることができる。
【0021】
送出部560においては、ケーシング500の側に温風の吹出口が設けられ、便座410の側にも、この吹出口に対応した導入口が設けられている。戻入部570についても、便座410の側に温風の吹出口が設けられ、ケーシング500の側も、これに対応した導入口が設けられたものとすることができる。またさらに、例えば特許文献1に記載されているように、これら送出部560、戻入部570において、吹出口をダクトに突出させたり、開閉板をダクトの中に進出させたりすることにより、温風の漏れを抑制する機構を設けてもよい。なお、後に図4に関して説明するように、戻入部570は送出部560に隣接させてもよい。
【0022】
図4は、便座暖房機構の内部構造を例示する概念図である。
ケーシング500には、送風部552、加熱部554が設けられている。送風部552には、第1のダンパ546、第2のダンパ548が付設されている。図4に表した暖房便座装置は、第1のダンパ546が閉じて、第2のダンパ548が開いた状態を表す。この状態においては、便座410の風路412を含む温風循環路が形成されている。
【0023】
一方、第1のダンパ546が開き、第2のダンパ548が閉じると、外気を導入して加熱する動作が実行される。これは、例えば、図示しない戻入部570内に設けたダンパとそれに続く吹きだしダクトから、便座410に座った使用者の「おしり」に向けて温風を吹き出す温風乾燥動作の際などに実行することができる。第1温度検知部540は、便座410の風路412から戻入部570を介してケーシング500に戻ってきた温風の風路上に設けられている。一方、第2温度検知部542は、加熱部554により加熱された温風の風路上に設けられている。
【0024】
図5は、送出部560の断面構造を例示する概念図である。
本実施形態の場合、ケーシング500においては、突出した吹出口562が設けられている。吹出口562の先端にはダンパ564が開閉自在に設けられている。吹出口562は、便座410を開いた状態においては後退し、ケーシング500の前端面が略平坦な面となるようにしてもよい。
【0025】
便座410を閉じた状態においては、図5に表した送出部560ように、吹出口562は突出し、便座410に設けられた導入口414に挿入された状態となる。すなわち、便座410を閉じたこの状態でのみ、吹出口562と導入口414とが接合され、便座410の風路412に温風を導入することができる。また、吹出口562の周囲に、弾性材料からなるパッキン568を適宜設けることにより、送出部560おける温風の「漏れ」を抑制できる。
【0026】
なお、図3及び図4においては、温風の循環風路が形成される具体例を表したが、本発明はこれには限定されない。すなわち、ケーシング500に設けられた温風発生機能部550から供給された温風が便座410の中を通過し、循環せずに外部に排出されるような温風便座装置も、本発明の範囲に包含される。
【0027】
図6は、本実施形態にかかる暖房便座装置の基本構成を例示するブロック図である。
便座410に温風を導入する便座暖房機構として、第1温度検知部540と、送風部(ファン)552と、加熱部(ヒータ)554と、第2温度検知部542と、が設けられている。第1温度検知部540は、便座410に設けられた風路412から戻ってきた温風の温度を測定する。送風部552は、温風を循環させる流れを形成する。加熱部554は、挿入する温風を所定の温度まで加熱する。第2温度検知部542は、便座410に送出する温風の温度を検知する。制御部510は、第1温度検知部540、第2温度検知部542の検知の結果に基づいて、送風部552、加熱部554の動作を制御する。
【0028】
本実施形態にかかる暖房便座装置においては、さらに、人体検知部520、環境温度検知部522、表面温度推定部524、温度設定部526、便蓋電動開閉部528、便蓋開閉検知部530、便座電動開閉部532、または便座開閉検知部534などが適宜設けられている。
【0029】
人体検知部520は、例えば、焦電センサや測距センサ、赤外線投光式のセンサ、またはマイクロ波センサなどを用いてトイレ室への使用者の入室や、使用者の存在の有無を検知する。これらのセンサは、ケーシング500に設けてもよく、またはリモコン200(図1など参照)に設けてもよく、あるいはケーシング500ともリモコン200とも別体のセンサユニット(図示せず)として設けてもよい。
【0030】
また、人体検知部520を複数のセンサにより構成してもよい。例えば、焦電センサを用いて使用者のトイレ室への入室を検知し、測距センサを用いてトイレ室における使用者の存在の有無を検知するようにしてもよい。さらに、便座410に座った状態の使用者を検知する着座センサを含めてもよい。焦電センサは、使用者の接近を迅速に検知できる点で入室検知に適している。一方、使用者がトイレ室の中にいるか否かについては、焦電センサよりも測距センサの方がより人体検知に適している。
【0031】
環境温度検知部522は、暖房便座装置が配置されている周囲の環境温度を検知する。例えば、暖房便座装置が設置されているトイレ室の気温を測定することにより、温風暖房機構の動作にフィードバックすることができる。また、表面温度推定部524は、便座410の座面の温度を推定する。例えば、第1温度検知部540と第2温度検知部542の検知結果に基づき、さらにこれに環境温度検知部522の検知の結果を加味して、便座410の座面の温度を推定する。そして、この推定温度と、設定温度との差に基づき、送風部552及び加熱部554の動作を制御する。
【0032】
温度設定部526は、便座410の温度を設定する。例えば、リモコン200のスイッチを操作することにより、便座410の目標温度を設定することができる。便蓋電動開閉部528は、便蓋400を電動により開閉する。便蓋開閉検知部530は、便蓋400の開閉状態を検知する。同様に、便座電動開閉部532は、便座410を電動により開閉する。また、便座開閉検知部534は、便座410の開閉状態を検知する。
【0033】
以上説明したように、本実施形態においては、閉じられた状態の便座410の中に温風を導入し暖房可能とされている。しかし、従来技術における暖房便座装置の場合、便座410を開いた状態においては、ケーシング500から便座410の中に温風を導入することができないため、温風が風路の外部に無駄に流れてしまう。
これに対して、本実施形態にかかる暖房便座装置の場合、使用者10が便座開操作スイッチを操作するなどの所定の動作を行うと、制御部510は温風発生機能部550の動作を停止させる。そのため、温風の風路412が分断されても温風が風路412の外部に無駄に流れることはない。
【0034】
以下、本実施形態の具体例について図面を参照しつつ説明する。
図7は、本実施形態の具体例にかかる暖房便座装置の動作を例示する模式図である。すなわち、図7(a)は、使用者がトイレに入室する前の状態を表す模式図であり、図7(b)は、使用者がトイレ室に入室した時の状態を表す模式図であり、図7(c)は、使用者が便座開操作スイッチを押した時の状態を表す模式図であり、図7(d)は、使用者がトイレから退室した時の状態を表す模式図である。
【0035】
図7(a)に表した状態のように、待機状態においては、便座410及び便蓋400は閉じた状態にある。使用者10がトイレに近づき、図7(b)に表した状態のようにトイレの中に入室すると、ケーシング500やリモコン200などに設けられた焦電センサがこれを検知する。すると、便蓋400が自動的に開く。
【0036】
ここで、リモコン200について図面を参照しつつ説明する。
図8は、リモコン200に設けられたスイッチを例示する模式図である。
リモコン200の上面には、その両端にケーシング500との通信のための赤外線透過窓231が設けられている。また、大洗浄スイッチ232、小洗浄スイッチ234、便蓋閉操作スイッチ236、便蓋開操作スイッチ238、便座開操作スイッチ240などがそれぞれ設けられている。
【0037】
使用者10が、便座開操作スイッチ240を押すと、便座410を開けることができる。また、便蓋開操作スイッチ238を押すと便蓋400を開けることができ、便蓋閉操作スイッチ236を押すと便蓋400を閉じることができる。
【0038】
なお、本具体例においては、リモコン200の正面に設けられたオート開閉モードの入/切スイッチ250を「入」の状態にしているため、使用者10がトイレ室の中に入室すると、便蓋400が自動的に開くようになっている。オート開閉モードの入/切スイッチ250においては、使用者10がスイッチ250を押す毎に、オート開閉モードが「入」と「切」とに切り替えられる。
【0039】
再び、図7に戻って説明を続けると、図7(c)に表した状態のように、使用者10はリモコン200の便座開操作スイッチ240を操作して便座410を開き、便器300を使用する。
【0040】
ここで、従来技術の暖房便座装置においては、便座410が開いた状態の場合、温風の風路412(図3、図4参照)が分断されてしまうため、温風が風路412の外部に無駄に流れることになる。また、温風の風路412が分断された状態において温風を送り出すファン552を動作させ続けると、ケーシング側の温風の風路412にこもっていた温風が逃げてしまうため、エネルギーを損失してしまう。温風が逃げてしまうため、便座410を閉じた後における温風暖房の再開時に、便座410も急に冷えてしまう。さらに、温風が使用者10に直接接触するため、使用者10が不快感を感じるおそれがある。
【0041】
これに対して、本具体例にかかる暖房便座装置においては、使用者10が便座開操作スイッチ240を操作すると、制御部510(図6参照)は、温風発生機能部550の動作を停止させる。そのため、温風の風路412が分断されても温風が風路412の外部に無駄に流れることはない。また、温風を送り出すファン552の動作が停止するため、ケーシング側の温風の風路にこもっていた温風が逃げることなく、エネルギーの損失を低減させることができる。温風が逃げないため、便座410を閉じた後における温風暖房の再開時に、便座410が急に冷えることもない。さらに、温風が使用者10に直接接触しなくなり、使用者10に不快感を与えることもない。
【0042】
使用者10がトイレを退室すると、ケーシング500あるいはリモコン200などに設けられた測距センサが非検知となる。使用者10の退室を検出した後、適宜設定された時間が経過すると、便座410及び便蓋400が自動的に閉じられる。便座410及び便蓋400が自動的に閉じられた後、制御部510は、再び温風発生機能部550の動作を開始して便座410の暖房を再開する。
【0043】
なお、使用者10がトイレに入室する時に、使用者10がトイレに入室したことをケーシング500やリモコン200などに設けられた焦電センサが検知して、便蓋400と便座410とを自動的に同時に開いてもよい。男子の小用が多い場合などは、このように設定すると便利である。この場合には、焦電センサが使用者10を検知することによって、制御部510は温風発生機能部550の動作を停止させるようにすればよい。なおこの場合、便座を使用する際には、手動により、または便座閉操作スイッチ(図示せず)を押すことによって、便座を閉めればよい。この際に、制御部510は、再び温風発生機能部550の動作を開始させるようにすればよい。
【0044】
図9は、本具体例にかかる暖房便座装置の動作を表すフローチャート図である。
まず、待機状態においては、便蓋400も便座410も閉じられた状態で、便座410の温風暖房が実行されている(ステップS102)。この状態から、ケーシング500やリモコン200などに設けられた焦電センサによって、使用者10のトイレへの入室を検知する(ステップS104)。使用者10がトイレへ入室し、焦電センサが使用者10の入室を検知すると(ステップS104:yes)、便蓋電動開閉部528を動作させて便蓋400を自動的に開く(ステップS106)。これは、オート開閉モードに基づく動作である。
【0045】
便蓋400が自動的に開いた後、ケーシング500やリモコン200などに設けられた測距センサによって、使用者10がトイレの室内に居るか否かを検知する(ステップS108)。測距センサが使用者10を検知しない場合においては(ステップS108:no)、所定の時間が経過した後、便蓋400を自動的に閉めて(ステップS120)、再び待機状態に戻り、便蓋400も便座410も閉じられた状態で、便座410の温風暖房を続ける。
【0046】
ステップS108において、測距センサが使用者10を検知している場合は(ステップS108:yes)、使用者10が便座開操作スイッチ240を押すか否かを判定する(ステップS110)。使用者10が便座開操作スイッチ240を押さない場合においては(ステップS110:no)、ステップS108に戻り、再び測距センサによって、使用者10がトイレの室内に居るか否かを検知する(ステップS108)。
【0047】
ステップS110において、使用者10が便座開操作スイッチ240を押した場合は(ステップS110:yes)、便座電動開閉部532を動作させて便座410を開き、制御部510は温風発生機能部550の動作を停止させる(ステップS112)。制御部510が温風発生機能部550の動作を停止させた後、再び測距センサによって、使用者10がトイレの室内に居るか否かを検知する(ステップS114)。使用者10がトイレの室内に居る場合においては(ステップS114:yes)、測距センサによる人体検知を引き続き行う。
【0048】
測距センサが使用者10を検知しない場合においては(ステップS114:no)、所定の時間が経過した後、便蓋400および便座410を自動的に閉めて、温風発生機能部550の動作を再び開始させる(ステップS116)。その後、再び待機状態に戻り、便蓋400も便座410も閉じられた状態で、便座410の温風暖房を続ける。
【0049】
以上説明したように、本具体例においては、使用者10が便座開操作スイッチ240を押すと、制御部510が温風発生機能部550の動作を停止させるため、便座410が開くことによって温風の風路412が分断されても、温風が風路412の外部に無駄に流れることはない。また、温風を送り出すファン552の動作が停止するため、ケーシング側の温風の風路にこもっていた温風が逃げることなく、エネルギーの損失を低減させることができる。温風が逃げないため、便座410を閉じた後における温風暖房の再開時に、便座410が急に冷えることもない。さらに、温風が使用者10に直接接触しなくなり、使用者10に不快感を与えることもない。なお、便座開操作スイッチ240を押した場合には、風路412から温風が無駄に流れないようにするために、まず温風発生機能部550の動作を停止させ、その後に便座電動開閉部532を動作させて便座410を開く手順とすることが好ましい。
【0050】
図10は、本実施形態の他の具体例にかかる暖房便座装置の動作を例示する模式図である。すなわち、図10(a)は、使用者がトイレに入室する前の状態を表す模式図であり、図10(b)は、使用者が便蓋を手動で開けた時の状態を表す模式図であり、図10(c)は、使用者が便座を手動で開けた時の状態を表す模式図であり、図10(d)は、使用者がトイレから退室した時の状態を表す模式図である。
【0051】
図10(a)に表した状態のように、待機状態においては、便座410及び便蓋400は閉じた状態にある。そして、温風発生機能部550(図3〜図6参照)を動作させて便座410の暖房が実行されている。その後、図10(b)に表した状態のように、使用者10は便器300に近づき、便蓋400を手動で開ける。これは、オート開閉モードの入/切スイッチ250が「切」になっていることに基づく動作である。
【0052】
次に、使用者10は便座410を手動で開ける。この動作が行われると、便座開閉検知部534は、便座410が開いたことを検知する。便座開閉検知部534が便座410の開放を検知すると、制御部510は温風発生機能部550の動作を停止させる。そのため、便座410が開くことによって温風の風路412が分断されても、温風が風路412の外部に無駄に流れることはない。また、温風を送り出すファン552の動作が停止するため、ケーシング側の温風の風路にこもっていた温風が逃げることなく、エネルギーの損失を低減させることができる。温風が逃げないため、便座410を閉じた後における温風暖房の再開時に、便座410が急に冷えることもない。さらに、温風が使用者10に直接接触しなくなり、使用者10に不快感を与えることもない。
【0053】
使用者10がトイレを退室すると、ケーシング500あるいはリモコン200などに設けられた測距センサが非検知となる。使用者10の退室を検出した後、適宜設定された時間が経過すると、便座410及び便蓋400が自動的に閉じられる。この便座410及び便蓋400の自動閉止は、オート開閉モードの入/切スイッチ250を「切」にしていても実行されるものである。便座410及び便蓋400が自動的に閉じられたことを便座開閉検知部534が検知した後、再び温風発生機能部550の動作を開始して便座410の暖房を再開する。なお、便座410を手で閉じた場合においても、便座410が閉じられたことを便座開閉検知部534が検知して、温風発生機能部550の動作を開始する。
【0054】
なお、オート開閉モードの入/切スイッチ250を「入」にしておいて、使用者10が入室した時に、使用者10の人体を測距センサによって検知して、便座410を自動的に開けるようにしてもよい。この場合においても、便座開閉検知部534が便座410の開放を検知することによって、制御部510が温風発生機能部550の動作を停止させればよい。
【0055】
図11は、本具体例にかかる暖房便座装置の動作を表すフローチャート図である。
まず、待機状態においては、便蓋400も便座410も閉じられた状態で、便座410の温風暖房が実行されている(ステップS132)。この状態から、使用者10が便器300に近づき、便蓋400を手動で開ける(ステップS134)。これは、オート開閉モードの入/切スイッチ250が「切」なっていることに基づく動作である。
【0056】
便蓋400を開放した後、ケーシング500やリモコン200などに設けられた測距センサによって、使用者10がトイレの室内に居るか否かを検知する(ステップS136)。測距センサが使用者10を検知しない場合においては(ステップS136:no)、所定の時間が経過した後、便蓋400を自動的に閉めて(ステップS152)、待機状態に戻る。すなわち、便蓋400も便座410も閉じられた状態で、便座410の温風暖房を続ける。
【0057】
ステップS136において、測距センサが使用者10を検知する場合においては(ステップS136:yes)、便座開閉検知部534は便座410が開いているか否かを検知する(ステップS138)。便座410が開いていない場合においては(ステップS138:no)、ステップS136に戻り、測距センサによって、使用者10がトイレの室内に居るか否かを再び検知する(ステップS136)。
【0058】
ステップS138において、便座開閉検知部534によって便座410が開いていることを検知すると(ステップS138:yes)、制御部510は温風発生機能部550の動作を停止させる(ステップS140)。制御部510が温風発生機能部550の動作を停止させた後、再び測距センサによって、使用者10がトイレの室内に居るか否かを検知する(ステップS142)。使用者10がトイレの室内に居る場合においては(ステップS142:yes)、測距センサによる人体検知を引き続き行う。
【0059】
測距センサが使用者10を検知しない場合においては(ステップS142:no)、便座開閉検知部534は便座410が開いているか否かを検知する(ステップS144)。便座410が開いていなければ(ステップS144:yes)、制御部510は温風発生機能部550の動作を再び開始させて(ステップS150)、再び待機状態に戻る。すなわち、便蓋400も便座410も閉じられた状態で、便座410の温風暖房を続ける。なお、ステップS150において、便蓋400を同時に閉じてもよい。
【0060】
ステップS144において、便座開閉検知部534が便座410の開放を検知すると(ステップS144:no)、所定の時間が経過した後、便蓋400および便座410を自動的に閉めて、温風発生機能部550の動作を再び開始させる(ステップS146)。その後、再び待機状態に戻り、便蓋400も便座410も閉じられた状態で、便座410の温風暖房を続ける。
【0061】
以上説明したように、本具体例においては、便座開閉検知部534が便座410の開放を検知すると、制御部510が温風発生機能部550の動作を停止させるため、便座410が開くことによって温風の風路412が分断されても、温風が風路412の外部に無駄に流れることはない。また、温風を送り出すファン552の動作が停止するため、ケーシング側の温風の風路にこもっていた温風が逃げることなく、エネルギーの損失を低減させることができる。温風が逃げないため、便座410を閉じた後における温風暖房の再開時に、便座410が急に冷えることもない。さらに、温風が使用者10に直接接触しなくなり、使用者10に不快感を与えることもない。
【0062】
なお、以上説明した本実施形態の便座410の表面において、クッション部と生地製の表皮部とを有する座部を設けてもよい。
図12は、本実施形態の暖房便座装置において用いることができる便座410の組立図である。
また、図13(a)は、本具体例の便座410のA−A線断面構造を表す模式図であり、図13(b)はその組立断面図である。
【0063】
本具体例の便座410は、基部410Aと、その上に着脱自在に積層される表皮部410Bと、を有する。基部410Aは、上板420と、便器の側に設けられる下板422と、を、例えばネジ430などにより結合した構造を有する。下板422は、断熱材423と底板424とからなる。上板420と下板422とを結合した状態において、上板420と断熱材423との間に風路412が形成される。断熱材423は熱伝導率の低い材料からなり、風路412を流れる温風から下方に向けた熱の放出を抑制する役割を有する。断熱材423を設けることにより、風路412を流れる温風から座面(上方)の方向に優先的に熱を供給することができる。上板420と底板424は、例えばポリプロピレンなどの樹脂で形成してもよく、あるいはアルミニウムなどの金属で形成してもよい。
【0064】
一方、表皮部410Bは、表面層442とクッション層(多孔質層)444とからなるものとすることができる。表面層442は、例えば布や通気性あるいは透湿性を有する樹脂層などからなり、使用者が座った時の座面の「ヒヤリ感」を低減する。クッション層444は、多孔質の材料からなる層である。具体的には、発泡性のウレタンなどの柔軟な材料や低反発性の材料などからなり、便座410に座った使用者の「おしり」にかかる応力を分散して快適な座り心地を与えることができる。
【0065】
そして、図12及び図13に表したように、表皮部410Bが基部410Aに対して着脱可能としてもよい。このようにすれば、例えば表皮部410Bが汚れた時に取り外して洗うことができ、また、これとは逆に、例えば底板424の裏面側に汚れが付着した場合などに、表皮部410Bを取り外してから下板422を水洗いすれば、表皮部410Bを濡らすことがない。またさらに、表皮部410Bを水洗いした後に、別の表皮部410Bを装着すれば、便座410を速やかに使用することができる。また、クッション層444の硬さや、表面層442の肌触りあるいは色などに関して、使用者の好みに応じて、表皮部410Bを交換することもできる。
【0066】
なお、表皮部410Bを上板420または下板422に固定する方法としては、例えば、ボタンやジッパー、フックなどの各種の方法を挙げることができる。また、基部410Aの上板420の上面の形状を座面に適した形状にすれば、表皮部410Bを取り外した状態でも使用者は便座410に座ることができ、便座410を使用することが可能となる。表皮部410Bを取り外した状態においても、基部410Aの中に風路412は形成されているので、温風により暖房することも可能である。
【0067】
ここで、表面層442とクッション層444とは、互いに分離可能な別体として構成してもよいが、接着や一体成形などの方法により一体的に形成してもよい。一体的に形成すると、基部410Aからの着脱や取り扱いが容易となる。また、表面層442とクッション層444を一体的に形成し、さらに定形性を与えることができる。すなわち、表皮部410Bを基部410Aから取り外した時にも、表皮部410Bがその形状をある程度維持するか、若しくは変形しても形状が復元するようにすれば、基部410Aに再び取り付ける際に再装着の作業がしやすくなる。また、表皮部410Bを取り外しての清掃や、表皮部410Bの水洗いなどの際に、表皮部410Bの変形を気にする必要がないため、清掃や水洗いなどの作業が容易になる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、暖房便座装置などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などやリモコン200の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置の模式斜視図である。
【図2】本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の概略を説明する模式図であり、図2(a)は、使用者がトイレに入室した時の状態を表す模式図であり、図2(b)は、使用者が便座開操作スイッチを押した時の状態を表す模式図である。
【図3】便座暖房機構を表す概念図である。
【図4】便座暖房機構の内部構造を例示する概念図である。
【図5】送出部560の断面構造を例示する概念図である。
【図6】本実施形態にかかる暖房便座装置の基本構成を例示するブロック図である。
【図7】本実施形態の具体例にかかる暖房便座装置の動作を例示する模式図であり、図7(a)は、使用者がトイレに入室する前の状態を表す模式図であり、図7(b)は、使用者がトイレ室に入室した時の状態を表す模式図であり、図7(c)は、使用者が便座開操作スイッチを押した時の状態を表す模式図であり、図7(d)は、使用者がトイレから退室した時の状態を表す模式図である。
【図8】リモコン200に設けられたスイッチを例示する模式図である。
【図9】本具体例にかかる暖房便座装置の動作を表すフローチャート図である。
【図10】本実施形態の他の具体例にかかる暖房便座装置の動作を例示する模式図であり、図10(a)は、使用者がトイレに入室する前の状態を表す模式図であり、図10(b)は、使用者が便蓋を手動で開けた時の状態を表す模式図であり、図10(c)は、使用者が便座を手動で開けた時の状態を表す模式図であり、図10(d)は、使用者がトイレから退室した時の状態を表す模式図である。
【図11】本具体例にかかる暖房便座装置の動作を表すフローチャート図である。
【図12】本実施形態の暖房便座装置において用いることができる便座410の組立図である。
【図13】(a)は、図12に表した便座410のA−A線断面構造を表す模式図であり、(b)はその組立断面図である。
【符号の説明】
【0070】
10 使用者、 200 リモコン、 231 赤外線透過窓、 232 大洗浄スイッチ、 234 小洗浄スイッチ、 236 便蓋閉操作スイッチ、 238 便蓋開操作スイッチ、 240 便座開操作スイッチ、 250 スイッチ、 300 便器、 400 便蓋、 410 便座、 412 風路、 414 導入口、 500 ケーシング、 510 制御部、 520 人体検知部、 522 環境温度検知部、 524 表面温度推定部、 526 温度設定部、 528 便蓋電動開閉部、 530 便蓋開閉検知部、 532 便座電動開閉部、 534 便座開閉検知部、 540 第1温度検知部、 542 第2温度検知部、 546 ダンパ、 548 ダンパ、 550 温風発生機能部、 552 ファン(送風部)、 554 ヒータ(加熱部)、 560 送出部、 562 吹出口、 564 ダンパ、 568 パッキン、 570 戻入部、 615 吐水ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングの内部に設けられ、空気を送風するファンと、空気を加熱するヒータと、を有する温風発生機能部と、
前記ケーシングに対して開閉可能に軸支され、前記温風発生機能部から供給される温風を流す風路を内包した便座と、
前記便座を開閉させる便座電動開閉部と、
前記便座電動開閉部により前記便座を開くための便座開操作スイッチと、
前記便座開操作スイッチが操作されると前記温風発生機能部の動作を停止させる制御部と、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
ケーシングと、
前記ケーシングの内部に設けられ、空気を送風するファンと、空気を加熱するヒータと、を有する温風発生機能部と、
前記ケーシングに対して開閉可能に軸支され、前記温風発生機能部から供給される温風を流す風路を内包した便座と、
前記便座が開いたことを検知する便座開閉検知部と、
前記便座が開いたことを前記便座開閉検知部が検知すると前記温風発生機能部の動作を停止させる制御部と、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項3】
前記便座電動開閉部により前記便座を閉じるための便座閉操作スイッチをさらに備え、
前記制御部は、前記便座電動閉操作スイッチが操作されると、前記温風発生機能部の動作を開始させることを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記便座が閉じたことを前記便座開閉検知部が検知すると、前記温風発生機能部の動作を開始させることを特徴とする請求項2記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記便座の表面に、クッション部と、生地製の表皮部と、を有する座部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−82196(P2009−82196A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252088(P2007−252088)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】