説明

暖房便座装置

【課題】快適な使い心地を得ることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】着座面を有する便座と、前記着座面を覆う便蓋と、前記着座面を加熱する加熱部と、前記便蓋を開く便蓋駆動装置と、前記便蓋を開く必要があると判断すると前記加熱部の通電量を増大させて前記着座面の温度が第1の温度に接近した後に前記便蓋駆動装置を駆動させて前記便蓋を開く第1のモードと、前記便蓋を開く必要があると判断すると前記着座面の温度が前記第1の温度に接近していなくても前記便蓋駆動装置を駆動させて前記便蓋を開く第2のモードと、を実行可能な制御部と、前記第1および第2のモードのいずれかを選択可能な選択手段と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、暖房便座装置に関し、具体的には便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房便座装置において、例えば、省エネルギー化を図るために、使用時以外には暖房便座の加熱を「オフ」に設定したり、その加熱を抑えたものがある。そして、このような暖房便座装置では、例えば人体検知センサが人体を検知することにより、暖房便座の加熱を「オン」に設定したり、その加熱を増大させて便座を暖めている。しかしながら、このような暖房便座装置では、使用者が素早く行動し、便座が暖まる前に便座に着座すると、その使用者は、冷感を感じ不快感を感じるおそれがある。
【0003】
これに対して、人体検知センサが人体を検知することによりヒータに通電し、便座が所定温度になったことを温度検知センサが検知することにより、便座開閉装置により便座蓋を開成する暖房便座がある(特許文献1)。しかしながら、トイレ室内が冷えているときには、便座が適温になるまでに時間がかかる。そのため、特許文献1に記載された暖房便座では、使用者は、便座が開くまで待つ必要がある。あるいは、使用者は、便座が適温になる前に、自らその便座を開く必要がある。これにより、使い勝手が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−321372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、快適な使い心地を得ることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、着座面を有する便座と、前記着座面を覆う便蓋と、前記着座面を加熱する加熱部と、前記便蓋を開く便蓋駆動装置と、前記便蓋を開く必要があると判断すると前記加熱部の通電量を増大させて前記着座面の温度が第1の温度に接近した後に前記便蓋駆動装置を駆動させて前記便蓋を開く第1のモードと、前記便蓋を開く必要があると判断すると前記着座面の温度が前記第1の温度に接近していなくても前記便蓋駆動装置を駆動させて前記便蓋を開く第2のモードと、を実行可能な制御部と、前記第1および第2のモードのいずれかを選択可能な選択手段と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置である。 この暖房便座装置によれば、着座面の温度を優先的に制御する第1のモードと、便蓋を開く時間(タイミング)を優先的に制御する第2のモードと、のいずれかを選択手段により選択することができる。これにより、暖房便座装置の使用者は、好みに応じて便蓋を開くタイミングを設定できるため、快適な使い心地を得ることができる。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記便座に近づいた人体を検知する人体検知手段をさらに備え、前記制御部は、前記人体検知手段が前記便座に近づいた人体を検知すると前記便蓋を開く必要があると判断することを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、選択手段により第2のモードが選択されている場合には、使用者が便座に近づくと、便蓋は開放される。そのため、使用者は、着座面の温度が適温(第1の温度)に接近するまで、すなわち便蓋が開くまで待つ必要はなく、より早く便器を使いたいという要求が満たされる。したがって、使用者は、より快適な使い心地を得ることができる。
【0008】
また、第3の発明は、第1の発明において、前記制御部は、前記第2のモードにおいて、前記便蓋を開く必要があると判断すると前記加熱部の通電量を増大させてから所定時間が経過した後に、前記着座面の温度が前記第1の温度に接近していなくても前記便蓋駆動装置を駆動して前記便蓋を開くことを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、選択手段により第2のモードが選択されている場合には、着座面が昇温を始めてから所定時間後に、便蓋は、着座面の温度にかかわらず開放される。そのため、使用者は、便蓋が開くまで待つ必要はなく、より早く便器を使いたいという要求が満たされる。したがって、使用者は、より快適な使い心地を得ることができる。
【0009】
また、第4の発明は、第1の発明において、前記制御部は、前記第2のモードにおいて、前記便蓋を開く必要があると判断すると前記着座面の温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度に接近したときに前記便蓋駆動装置を駆動して前記便蓋を開くことを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、着座面が適温(第1の温度)よりも低く使用者が着座したときに冷感を感じない程度の第2の温度に接近すると、便蓋は開放される。そのため、使用者は、便蓋が開くまで待つ必要はなく、より早く便器を使いたいという要求が満たされる。したがって、使用者は、より快適な使い心地を得ることができる。
【0010】
また、第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、トイレ室の室温を検知する室温検知手段をさらに備え、前記制御部は、前記室温検知手段により検知された室温が第3の温度よりも高い場合には、選択手段により第1のモードが選択されていても前記第2のモードを実行することを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、トイレ室の室温がある程度高い場合には、便蓋を開いても着座面からの放熱はより少ないため、着座面の温度が上昇することを予測することができる。そのため、選択手段により第1のモードが選択されていても、着座面の温度が第1の温度に接近する前に便蓋を開く第2のモードを実行することができる。これにより、使用者は、第1のモードを選択していても、トイレ室の室温に応じて、より早く便器を使用することができる。
【0011】
また、第6の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記加熱部の近傍の温度を検知する便座温度検知手段をさらに備え、前記制御部は、前記便座温度検知手段により検知された温度の単位時間あたりの変化量が所定値よりも大きい場合には、選択手段により第1のモードが選択されていても前記第2のモードを実行することを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、トイレ室の室温がある程度高い場合には、便座ヒータ近傍の温度変化率が所定値よりも大きくなり、便蓋を開いても着座面からの放熱はより少ないため、着座面の温度が上昇することを予測することができる。そのため、選択手段により第1のモードが選択されていても、着座面の温度が第1の温度に接近する前に便蓋を開く第2のモードを実行することができる。これにより、使用者は、第1のモードを選択していても、便座ヒータ近傍の温度変化率に応じて、より早く便器を使用することができる。
【0012】
また、第7の発明は、第1〜第6のいずれか1つの発明において、トイレ室への人体の入室を検知する入室検知手段をさらに備え、前記制御部は、前記入室検知手段が前記トイレ室への人体の入室を検知すると前記便蓋を開く必要があると判断することを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、入室検知手段がトイレ室への人体の入室を検知したときに、制御部は、加熱部の通電量を増大させるため、使用者が暖房便座装置を使用していないときの消費電力を削減しつつ、着座面を早く快適な温度に昇温することができる。
【0013】
また、第8の発明は、第1〜第7のいずれか1つの発明において、前記便座は、前記着座面の下方に設けられ弾力性を有するクッション部を有することを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、クッション部は、使用者が便座に着座すると、その体重に応じて変形して体重を分散させるため、使用者が便座に座ったときの座り心地を向上させることができる。
【0014】
また、第9の発明は、第1〜第8のいずれか1つの発明において、前記加熱部は、前記便座に内蔵され前記着座面を前記便座内から加熱する便座ヒータと、前記便蓋に設けられ前記着座面を表面から加熱する便蓋ヒータと、を有し、前記制御部は、前記便蓋駆動装置を駆動して前記便蓋を開いたときに、前記便蓋ヒータの通電を停止することを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、便座ヒータおよび便蓋ヒータにより便座の着座面を上下から迅速に加熱することができるため、着座面の温度をより早く適温に近づけることができる。また、制御部は、便蓋を開いたときには便蓋ヒータの通電を停止する。そのため、便蓋を開いた後に無駄な放熱が行われることを抑制することができる。これにより、エネルギーロスを低減し、省エネルギー化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、快適な使い心地を得ることができる暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施形態の便座および便蓋の断面を表す断面模式図である。
【図3】本実施形態の変形例にかかる便座および便蓋の断面を表す断面模式図である。
【図4】本実施形態の他の変形例にかかる便座および便蓋の断面を表す断面模式図である。
【図5】本実施形態にかかる暖房便座装置の第1のモードの動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
【図6】本実施形態にかかる暖房便座装置の第2のモードの動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
【図7】本実施形態にかかる暖房便座装置の第2のモードの動作の他の具体例を例示するタイミングチャートである。
【図8】本実施形態にかかる暖房便座装置の第2のモードの動作のさらに他の具体例を例示するタイミングチャートである。
【図9】本実施形態にかかる暖房便座装置の第2のモードの動作のさらに他の具体例を例示するタイミングチャートである。
【図10】本実施形態にかかる暖房便座装置の第1および第2のモードの動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
【図11】本実施形態にかかる暖房便座装置の第1および第2のモードの動作の他の具体例を例示するタイミングチャートである。
【図12】本発明の第2の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図13】本実施形態の便座および便蓋の断面を表す断面模式図である。
【図14】本実施形態にかかる暖房便座装置の第1のモードの動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
【図15】本実施形態にかかる暖房便座装置の第2のモードの動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態の便座および便蓋の断面を表す断面模式図である。
また、図3は、本実施形態の変形例にかかる便座および便蓋の断面を表す断面模式図である。
また、図4は、本実施形態の他の変形例にかかる便座および便蓋の断面を表す断面模式図である。
なお、図2〜図4は、便蓋が閉じた状態における図1に表したA−A断面図に相当する。
【0018】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、暖房便座機能部400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、暖房便座機能部400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0019】
便座200は、図2に表したように、便座ヒータ(加熱部)210を内蔵する。この便座ヒータ210は、通電されて発熱することにより、便座200を暖めることができる。つまり、便座ヒータ210は、便座の表面(着座面)に伝えられる熱を発生する。なお、図1に表した便座200では、1本の便座ヒータ210が往復するように設置されているが、便座ヒータ210の設置形態や設置数はこれだけに限定されず、例えば2本以上の複数の便座ヒータ210が設置されていてもよい。
【0020】
また、図1に表した暖房便座装置100では、加熱部は、便座ヒータ210として便座200に内蔵されているが、これだけに限定されず、例えば、便蓋300に内蔵されていてもよい。この場合には、便蓋300に内蔵された加熱部は、便蓋300が閉じた状態、すなわち便蓋300が便座200の上方を覆った状態において、便座200の着座面に放熱される熱を発生する。つまり、加熱部は、便座200の着座面を加熱することができればよい。
【0021】
便座ヒータ210としては、いわゆる「チュービングヒータ」や、「シースヒータ」、「ハロゲンヒータ」、「カーボンヒータ」などを用いることができる。また、便座ヒータ210の形状は、ワイヤ状やシート状やメッシュ状などのいずれであってもよい。
【0022】
便座200は、基材230と、便座ヒータ210の上に隣接して設けられた熱伝導体260と、便座200を支持する支持体270と、を有する。基材230は、上板231と底板233とを有する。但し、基材230は、一体的に形成されていてもよい。なお、上板231の表面は、着座面として機能する。基材230は、例えばPP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂から形成されている。熱伝導体260としては、例えばアルミシートやカーボンシートなどが挙げられる。また、便座200は、便座温度検知手段280を内蔵する。便座温度検知手段280は、便座ヒータ210の近傍に設けられ、便座ヒータ210の近傍の温度を検知できる。
【0023】
なお、本実施形態の便座200は、図3に表した便座200aのように、弾力性(クッション性)を有するクッション部240と、クッション部240の上面や側面を覆う表面部250と、をさらに有していてもよい。これによれば、クッション部240は、基材230よりも柔らかい材料により形成され、使用者が便座200aに着座すると、その体重に応じて変形して体重を分散させる。クッション部240は、基材230の上に設けられクッション性を有するため、使用者が便座200aに座ったときの座り心地を向上させることができる。
【0024】
また、本実施形態の便座200は、図4に表した便座200bのように、基材230の内部に設けられた断熱材220をさらに有していてもよい。また、本実施形態の便蓋300は、図4に表した便蓋300aのように、基材330の内部に設けられた断熱材320をさらに有していてもよい。この場合には、基材330は、上板331と底板333とを有する。但し、基材330は、一体的に形成されていてもよい。これによれば、便座200bの断熱材220は、便座200bの下方への放熱を抑制でき、一方で、便蓋300aの断熱材320は、便蓋300aの上方への放熱を抑制できる。
【0025】
暖房便座機能部400は、図1に表したように、便座ヒータ210の通電量を制御する制御部410を有する。また、暖房便座機能部400は、便座200への使用者(人体)の着座を検知する着座検知手段420と、便座200に近づいた使用者(人体)を検知する人体検知手段430と、トイレ室への使用者(人体)の入室を検知する入室検知手段440と、トイレ室の室温を検知する室温検知手段460と、を有する。
【0026】
着座検知手段420の検知領域は、便座200の上、且つ着座検知手段420の設置位置近傍である。すなわち、着座検知手段420は、例えば便座200に座った状態の使用者の臀部あるいは背中を検知する。これにより、着座検知手段420は便座200への使用者の着座を検知できる。
また、人体検知手段430の検知領域は、便座200の前方である。すなわち、人体検知手段430は、トイレ室に入室し便座200の前に移動してきた使用者、あるいは便座200の前に立った使用者を検知できる。
また、入室検知手段440の検知領域は、便座200から前へ離間した位置までである。すなわち、入室検知手段440は、人体検知手段430よりも遠方まで検知しており、例えばトイレ室の扉近傍まで検知している。そのため、入室検知手段440はトイレ室への使用者の入室を検知できる。
【0027】
着座検知手段420、人体検知手段430、および入室検知手段440としては、例えば、焦電センサや、測距センサなどの赤外線投光式のセンサ、超音波センサ、またはドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。なお、焦電センサは、使用者の接近を迅速に検知できる点で入室検知手段440により適している。また、測距センサは、使用者がトイレ室の中に居るか否かなどを検知する人体検知手段430により適している。
【0028】
図1に表したトイレ装置では、暖房便座機能部400の上面に凹設部441が形成され、この凹設部441に一部が埋め込まれるように入室検知手段440が設けられている。入室検知手段440は、便蓋300が閉じた状態では、その基部付近に設けられた透過窓301を介して使用者の入室を検知する。なお、室温検知手段460は、暖房便座機能部400の内部に限定されず、例えば暖房便座機能部400とは別体として設けられたリモコンなどの選択手段600の内部に設けられていてもよい。すなわち、室温検知手段460は、トイレ室の室温を検知できればよい。
【0029】
また、暖房便座機能部400は、便蓋300を開閉させる便蓋駆動装置450を有する。便蓋駆動装置450は、例えば、便蓋300が暖房便座機能部400に対して軸支された位置の近傍に設置され、制御部410からの信号により便蓋300を開閉できる。この動作は、暖房便座機能部400とは別体として設けられたリモコンなどの選択手段600により操作可能とされてもよい。この場合には、使用者が選択手段600を適宜操作すると、その操作内容の信号は、暖房便座機能部400に送信される。そうすると、制御部410は、選択手段600から送信された信号により便蓋駆動装置450の駆動を制御し、便蓋300を開閉することができる。
【0030】
なお、暖房便座機能部400は、衛生洗浄装置としての機能部を併設してもよい。すなわち、暖房便座機能部400は、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などを適宜備えてもよい。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0031】
またさらに、暖房便座機能部400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。この際、暖房便座機能部400の側面には、脱臭ユニットからの排気口443及び室内暖房ユニットからの排出口445が適宜設けられる。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0032】
次に、本実施形態にかかる暖房便座装置100の動作について説明する。
本実施形態にかかる暖房便座装置100が待機状態であるときには、制御部410は、便座ヒータ210に通電し、その便座ヒータ210の出力を低出力に設定している。そのため、便座200の着座面の温度は、低温となっている(低温待機)。これにより、暖房便座装置100は、省エネルギー化を図ることができる。
【0033】
ここで、入室検知手段440がトイレ室への人体の入室を検知すると、制御部410は、便蓋300を開く必要があると判断する。そして、制御部410は、便座ヒータ210の通電量を増大させ、その便座ヒータ210の出力を低出力よりも大きい高出力に設定する。つまり、制御部410は、着座面の加熱要求に基づいて便座ヒータ210の通電量を増大させ、その便座ヒータ210の出力を低出力よりも大きい高出力に設定する。これにより、便座200の着座面の温度は上昇する。そして、着座面の温度が、使用者などにより予め設定された温度(適温:第1の温度)に接近すると、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を開放できる(第1のモード)。あるいは、着座面の温度が、使用者などにより予め設定された温度(適温:第1の温度)に接近しなくとも、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を開放できる(第2のモード)。
【0034】
つまり、本実施形態の制御部410は、着座面の温度が設定温度に接近すると便蓋300を開放する第1のモードと、着座面の温度が設定温度に接近する前に便蓋300を開放する第2のモードと、のいずれかを実行できる。制御部410が、第1のモードおよび第2のモードのいずれの動作モードを実行するかについては、使用者が選択手段600において選択することにより決定される。
【0035】
第1のモードが選択された場合には、制御部410は、便座200の着座面の温度が適温に接近してから便蓋300を開放するため、第1のモードは、着座面の温度を優先的に制御する動作モードである。これによれば、使用者は、より確実に適温近傍の着座面に着座できるため、冷感を感ずることなくより快適な座り心地を得ることができる。
一方、第2のモードが選択された場合には、制御部410は、便座200の着座面の温度が適温に接近する前であっても便蓋300を開放するため、第2のモードは、便蓋300を開放する時間(タイミング)を優先的に制御する動作モードである。これによれば、使用者は、着座面の温度が適温に接近するまで、すなわち便蓋300が開くまで待つ必要はなく、より早く便器800を使いたいという要求が満たされるため、より快適な使い心地を得ることができる。
【0036】
このように、使用者は、着座面の温度を優先的に制御する第1のモードと、便蓋300を開放する時間(タイミング)を優先的に制御する第2のモードと、を選択できる。これによれば、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、暖房便座装置100を使用する人の好みに応じて便蓋300を開放するタイミングを設定できるため、快適な使い心地を提供できる。以下、本実施形態にかかる暖房便座装置100の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
【0037】
図5は、本実施形態にかかる暖房便座装置の第1のモードの動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
まず、前述したように、暖房便座装置100が待機状態であるときには、制御部410は、便座ヒータ210に通電し、その便座ヒータ210の出力を低出力に設定している(タイミングt1以前)。これにより、便座200の着座面の温度は、低温となっている(低温待機)。
【0038】
続いて、入室検知手段440がトイレ室への人体の入室を検知すると、制御部410は、便蓋300を開く必要があると判断する。そして、便座ヒータ210の通電量を増大させ、その便座ヒータ210の出力を低出力よりも大きい高出力に設定する(タイミングt1)。これにより、便座200の着座面の温度は上昇する。続いて、制御部410は、人体検知手段430が便座200に近づいた使用者を検知しても便蓋300を開放せず(タイミングt2)、便座200の着座面の温度が適温になると、あるいは接近すると便蓋自動開閉装置450を駆動し便蓋300を開放させる(タイミングt3)。
【0039】
また、これと略同時に、制御部410は、便座ヒータ210の通電量を低減させ、その便座ヒータ210の出力を高出力よりも小さく低出力よりも大きい中出力に設定する(タイミングt3)。これにより、着座面の温度は、適温近傍に維持される。なお、図5に表した「便座表面温度」は、着座面の温度の実測値ではなく、着座面の理想的な温度を表している。すなわち、「便座表面温度」は、着座面の温度あるいは目標温度を模式的に表したグラフであり、実際に測定した着座面の温度を表しているわけではない。これは、以下説明する図6〜図11および図14〜図15における「便座表面温度」についても同様である。
【0040】
続いて、使用者が便座200に着座し(タイミングt4)、用便を済ませて便座200から立ち上がり(タイミングt5)、便座200の前から離れトイレ室から退室する(タイミングt6およびt7)。使用者がトイレ室から退室したタイミングと略同時に、あるいは使用者がトイレ室から退室してから一定時間後に、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を閉止させる(タイミングt7)。また、これと略同時に、制御部410は、便座ヒータ210の通電量を低減させ、その便座ヒータ210の出力を低出力に設定する(タイミングt7)。これにより、便座200の着座面の温度は、徐々に低下し、低温となる(低温待機)(タイミングt8)。
【0041】
本具体例の動作(第1のモード)によれば、制御部410は、便座200の着座面の温度が適温になってから、あるいは接近してから便蓋300を開放するため、使用者は、より確実に適温近傍の着座面に着座できる。そのため、使用者は、冷感を感ずることなくより快適な座り心地を得ることができる。
【0042】
図6は、本実施形態にかかる暖房便座装置の第2のモードの動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
本具体例の動作(第2のモード)では、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知すると、便蓋300を開く必要があると判断する。そして、着座面の温度が適温になっていなくとも、あるいは接近していなくとも、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を開放させる(タイミングt2)。そのため、使用者は、着座面の温度が適温に接近するまで、すなわち便蓋300が開くまで待たなくとも便座200に着座できる(タイミングt3)。その他の動作については、図5に関して前述した具体例の動作と同様である。
【0043】
本具体例の動作によれば、制御部410は、便座200の着座面の温度が適温に接近する前であっても便蓋300を開放するため、使用者は、便蓋300が開くまで待つ必要はなく、より早く便器800を使いたいという要求が満たされる。そのため、使用者は、より快適な使い心地を得ることができる。
【0044】
なお、図6に表した具体例では、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知すると、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を開放させる場合を例に挙げて説明したが、暖房便座装置の動作は、これだけに限定されるわけではない。例えば、使用者は、着座面の温度が適温になっていなくとも、あるいは接近していなくとも、手動により便蓋300を開放することも可能である。
【0045】
図7は、本実施形態にかかる暖房便座装置の第2のモードの動作の他の具体例を例示するタイミングチャートである。
なお、本具体例の動作は、図6に関して前述した動作の変形例である。
図6に関して前述した具体例では、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知すると、制御部410は便蓋300を開放する。一方、本具体例では、入室検知手段440がトイレ室への人体の入室を検知すると、制御部410は、便蓋300を開く必要があると判断する。そして、入室検知手段440が人体を検知してから所定時間T1が経過すると、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を開放させる(タイミングt3)。ここで、本具体例における「所定時間T1」とは、入室検知手段440がトイレ室への人体の入室を検知してから、あるいは制御部410が便座ヒータ210の通電量を増大させてから、着座面が適温よりも低く使用者が着座したときに冷感を感じない程度の温度になるまでの推定時間である。この所定時間T1は、便座ヒータ210の出力や便座200の構造などを考慮して決定される。
【0046】
そのため、本具体例の制御部410は、便蓋300を開放するタイミングと、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知するタイミングと、をずらすことができる。より具体的には、制御部410は、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知した後であって、着座面の温度が適温になる前に、便蓋300を開放できる。あるいは、制御部410は、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知する前に、便蓋300を開放できる。その他の動作については、図6に関して前述した具体例の動作と同様である。
【0047】
本具体例の動作(第2のモード)によれば、人体検知手段430の検知結果にかかわらず、所定時間T1を適宜設定することにより、好みに応じたタイミングで便蓋300を開放させることができる。つまり、着座面の温度がより適温に近いタイミングで開放させたり、使用者が便座200に近づく前のより早いタイミングで開放させたりすることができる。また、その他の効果についても、図6に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0048】
図8は、本実施形態にかかる暖房便座装置の第2のモードの動作のさらに他の具体例を例示するタイミングチャートである。
なお、本具体例の動作は、図6に関して前述した動作の変形例である。
図6に関して前述した具体例では、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知すると、制御部410は便蓋300を開放する。一方、本具体例では、人体検知手段430がトイレ室への人体の入室を検知してから所定時間T2が経過すると、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を開放させる(タイミングt3)。ここで、本具体例における「所定時間T2」とは、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知してから、あるいは制御部410が便座ヒータ210の通電量を増大させてから、着座面が適温よりも低く使用者が着座したときに冷感を感じない程度の温度になるまでの推定時間である。この所定時間T2は、便座ヒータ210の出力や便座200の構造などを考慮して決定される。
【0049】
そのため、本具体例の制御部410は、図7に関して前述した具体例と同様に、便蓋300を開放するタイミングと、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知するタイミングと、をずらすことができる。より具体的には、制御部410は、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知した後であって、着座面の温度が適温になる前に、便蓋300を開放できる。その他の動作については、図6に関して前述した具体例の動作と同様である。本具体例の動作(第2のモード)によれば、着座面の温度がより適温に近いタイミングでより確実に開放させることができる。また、その他の効果についても、図6に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0050】
図9は、本実施形態にかかる暖房便座装置の第2のモードの動作のさらに他の具体例を例示するタイミングチャートである。
なお、本具体例の動作は、図6に関して前述した動作の変形例である。
本具体例では、着座面が適温(第1の温度)よりも低く使用者が着座したときに冷感を感じない程度の温度(第2の温度)になると、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を開放させる(タイミングt3)。
【0051】
そのため、制御部410は、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知した後であって、着座面の温度が適温になる前に、便蓋300を開放できる。あるいは、制御部410は、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知する前に、便蓋300を開放できる。その他の動作については、図6に関して前述した具体例の動作と同様である。
【0052】
本具体例の動作(第2のモード)によれば、制御部410は、便座200の着座面の温度が適温に接近する前であっても便蓋300を開放するため、使用者は、便蓋300が開くまで待つ必要はなく、より早く便器800を使いたいという要求が満たされる。また、着座面の温度がより適温に近いタイミングで開放させたり、使用者が便座200に近づく前のより早いタイミングで開放させたりすることができる。
【0053】
図10は、本実施形態にかかる暖房便座装置の第1および第2のモードの動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
本具体例の動作では、選択手段600により第1のモードが選択されている場合を想定する。この場合において、室温検知手段460により検知されたトイレ室の室温が、所定温度(第3の温度)よりも高い場合には、制御部410は、第1のモードが動作モードとして選択されている場合であっても、第2のモードを実行する。
【0054】
これは、トイレ室の室温がある程度高い場合には、便蓋300を開放しても着座面からの放熱はより少ないためである。つまり、トイレ室の室温がある程度高い場合には、便蓋300を開放してから使用者が着座するまでの間に、着座面の温度が上昇することを予測できるためである。あるいは、トイレ室の室温がある程度高い場合には、着座面の温度が適温より低い場合であっても、使用者は着座したときに冷感を感じない可能性があるためである。なお、室温検知手段460により検知されたトイレ室の室温が、第3の温度よりも低い場合には、制御部410は、第1のモードを実行する。
【0055】
より具体的には、まず、暖房便座装置100が待機状態であるときには、制御部410は、便座ヒータ210に通電し、その便座ヒータ210の出力を低出力に設定している(タイミングt1以前)。これにより、便座200の着座面の温度は、低温となっている(低温待機)。
【0056】
続いて、入室検知手段440がトイレ室への人体の入室を検知すると、制御部410は、便蓋300を開く必要があると判断する。そして、制御部410は、便座ヒータ210の通電量を増大させ、その便座ヒータ210の出力を高出力に設定する(タイミングt1)。これにより、便座200の着座面の温度は上昇する。またこのとき、制御部410は、室温検知手段460により検知されたトイレ室の室温が、第3の温度よりも高いか否かを判断する。室温検知手段460により検知されたトイレ室の室温が、第3の温度よりも高い場合には、制御部410は、選択手段600により第1のモードが選択されている場合であっても、第2のモードを実行する。
【0057】
つまり、例えば、図7に関して前述したように、入室検知手段440がトイレ室への人体の入室を検知してから所定時間T3が経過すると、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を開放させる(タイミングt3)。あるいは、例えば、制御部410は、図6に関して前述したように、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知すると(タイミングt2)、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を開放させてもよい。すなわち、本具体例における第2のモードの動作は、図6〜図9に関して前述した具体例の動作(第2のモード)のいずれでもよい。その他の動作については、第1のモードを実行する場合には、図5に関して前述した具体例の動作と同様であり、第2のモードを実行する場合には、図6に関して前述した具体例の動作と同様である。
【0058】
なお、制御部410は、入室検知手段440がトイレ室への人体の入室を検知するよりも前に、室温検知手段460により検知されたトイレ室の室温が、第3の温度よりも高いか否かを予め判断しておいてもよい。これによれば、入室検知手段440がトイレ室への人体の入室を検知したときには、制御部410は、室温検知手段460により検知されたトイレ室の室温が第3の温度よりも高いか否かをすでに判断している。そのため、制御部410は、第1のモードおよび第2のモードのいずれの動作を実行するかをより早く判断できる。
【0059】
本具体例の動作によれば、選択手段600により第1のモードが選択されている場合であっても、室温検知手段460により検知されたトイレ室の室温が第3の温度よりも高い場合には、制御部410は、便座200の着座面の温度が適温に接近する前に便蓋300を開放させる。そのため、使用者は、便蓋300が開くまで待つ必要はなく、より早く便器800を使いたいという要求が満たされる。これにより、使用者は、より快適な使い心地を得ることができる。
【0060】
図11は、本実施形態にかかる暖房便座装置の第1および第2のモードの動作の他の具体例を例示するタイミングチャートである。
なお、本具体例の動作は、図10に関して前述した動作の変形例である。
本具体例の動作では、図10に関して前述した具体例と同様に、選択手段600により第1のモードが選択されている場合を想定する。この場合において、便座温度検知手段280により検知された便座ヒータ210近傍の温度の単位時間当たりの変化量(温度変化率あるいは温度勾配)が、所定値よりも大きい場合には、制御部410は、第1のモードが動作モードとして選択されている場合であっても、第2のモードを実行する。
【0061】
これは、トイレ室の室温がある程度高い場合には、便座ヒータ210近傍の温度変化率が所定値よりも大きくなり、便蓋300を開放しても着座面からの放熱はより少ないためである。つまり、トイレ室の室温がある程度高い場合には、便座ヒータ210近傍の温度変化率が所定値よりも大きくなり、便蓋300を開放してから使用者が着座するまでの間に、着座面の温度が上昇することを予測できるためである。なお、便座温度検知手段280により検知された便座ヒータ210近傍の温度変化率が所定値よりも小さい場合には、制御部410は、第1のモードを実行する。
【0062】
より具体的には、入室検知手段440がトイレ室への人体の入室を検知すると、制御部410は、便蓋300を開く必要があると判断する。そして、制御部410は、便座ヒータ210の通電量を増大させ、その便座ヒータ210の出力を高出力に設定する(タイミングt1)。これにより、便座200の着座面の温度は上昇する。また、制御部410は、便座温度検知手段280により検知された便座ヒータ210近傍の温度変化率が所定値よりも大きいか否かを判断する(タイミングt1以降)。便座温度検知手段280により検知された便座ヒータ210近傍の温度変化率が、所定値よりも大きい場合には、制御部410は、選択手段600により第1のモードが選択されている場合であっても、第2のモードを実行する。
【0063】
つまり、例えば、図7に関して前述したように、入室検知手段440がトイレ室への人体の入室を検知してから所定時間T4が経過すると、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を開放させる(タイミングt3)。あるいは、例えば、制御部410は、図6に関して前述したように、人体検知手段430が便座200に近づいた人体を検知すると(タイミングt2)、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を開放させてもよい。すなわち、本具体例における第2のモードの動作は、図6〜図9に関して前述した具体例の動作(第2のモード)のいずれでもよい。その他の動作については、図10に関して前述した具体例の動作と同様である。
【0064】
本具体例の動作によれば、選択手段600により第1のモードが選択されている場合であっても、便座温度検知手段280により検知された便座ヒータ210近傍の温度変化率が所定値よりも大きい場合には、制御部410は、便座200の着座面の温度が適温に接近する前に便蓋300を開放させる。そのため、使用者は、便蓋300が開くまで待つ必要はなく、より早く便器800を使いたいという要求が満たされる。これにより、使用者は、より快適な使い心地を得ることができる。
【0065】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図12は、本発明の第2の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図13は、本実施形態の便座および便蓋の断面を表す断面模式図である。
なお、図13は、便蓋が閉じた状態における図12に表したB−B断面図に相当する。
【0066】
本実施形態の暖房便座装置100aが備える便蓋300bは、便座200bと同様に、便蓋ヒータ(加熱部)310を内蔵する。この便蓋ヒータ310は、通電されて発熱することにより、便座200bの表面(着座面)を暖めることができる。つまり、便蓋ヒータ310は、便蓋300bが閉じた状態、すなわち便蓋300bが便座200bの上方を覆った状態において、便座200bの着座面に放熱される熱を発生する。
【0067】
なお、図12に表した便蓋300bでは、1本の便蓋ヒータ310が往復するように設置されているが、便蓋ヒータ310の設置形態や設置数はこれだけに限定されず、例えば2本以上の複数の便蓋ヒータ310が設置されていてもよい。また、図12および図13に表した暖房便座装置100aは、図4に関して前述した便座200bを有しているが、これだけに限定されず、例えば、図2に関して前述した便座200、あるいは図3に関して前述した便座200aを有していてもよい。
【0068】
便蓋ヒータ310としては、便座ヒータ210と同様に、いわゆる「チュービングヒータ」や、「シースヒータ」、「ハロゲンヒータ」、「カーボンヒータ」などを用いることができる。また、便蓋ヒータ310の形状は、ワイヤ状やシート状やメッシュ状などのいずれであってもよい。便蓋ヒータ310の通電量は、便座ヒータ210と同様に、制御部410により制御される。
【0069】
便蓋300bは、基材330と、便蓋ヒータ310に隣接して設けられた熱伝導体360と、基材330の内部に設けられた断熱材320と、を有する。基材330は、上板331と底板333とを有する。但し、基材330は、一体的に形成されていてもよい。
【0070】
基材330は、便座200bの基材230と同様に、例えばPP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂から形成されている。熱伝導体360としては、便座200bの熱伝導体260と同様に、例えばアルミシートやカーボンシートなどが挙げられる。また、断熱材320は、便蓋300bの上方への放熱を抑制できる。その他の暖房便座装置100aの構造については、図1〜図4に関して前述した暖房便座装置100の構造と同様である。
【0071】
次に、本実施形態にかかる暖房便座装置100aの動作について説明する。
本実施形態にかかる暖房便座装置100aは、第1の実施の形態にかかる暖房便座装置100と同様に、着座面の温度が設定温度に接近すると便蓋300bを開放する第1のモードと、着座面の温度が設定温度に接近する前に便蓋300bを開放する第2のモードと、のいずれかを実行できる。すなわち、本実施形態にかかる暖房便座装置100aは、着座面の温度を優先的に制御する第1のモードと、便蓋300bを開放する時間(タイミング)を優先的に制御する第2のモードと、のいずれかを実行できる。そして、使用者は、第1のモードおよび第2のモードのいずれかを選択手段600により選択できる。以下、本実施形態にかかる暖房便座装置100aの動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
【0072】
図14は、本実施形態にかかる暖房便座装置の第1のモードの動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
入室検知手段440がトイレ室への人体の入室を検知すると、制御部410は、便蓋300を開く必要があると判断する。そして、制御部410は、便座ヒータ210および便蓋ヒータ310の通電量を増大させ、便座ヒータ210および便蓋ヒータ310の出力を高出力に設定する(タイミングt1)。このように、本実施形態にかかる暖房便座装置100aでは、便座ヒータ210および便蓋ヒータ310により便座200bの着座面を上下から迅速に加熱することができる。
【0073】
弾力性を有するクッション部240の熱抵抗は、一般的に大きく、便座ヒータ210の熱が着座面に伝わるまでに長い時間がかかる場合があるが、便蓋300bはクッション部240を有していないため、便蓋ヒータ310の熱は、便座ヒータ210の熱よりも早く着座面に伝わる。そのため、本実施形態にかかる暖房便座装置100aは、第1の実施の形態にかかる暖房便座装置100よりも便座200bの着座面の温度をより早く適温に近づけることができる。
【0074】
続いて、制御部410は、人体検知手段430が便座200bに近づいた使用者を検知しても便蓋300bを開放せず(タイミングt2)、便座200bの着座面の温度が適温になると、あるいは接近すると便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300bを開放させる(タイミングt3)。
【0075】
また、これと略同時に、制御部410は、便座ヒータ210の通電量を低減させ、その便座ヒータ210の出力を中出力に設定する(タイミングt3)。またさらに、制御部410は、便蓋ヒータ310の通電を停止する。そのため、便蓋300bを開放させた後に無駄な放熱が行われることを抑制することができる。これにより、エネルギーロスを低減し、省エネルギー化を図ることができる。また、制御部410は、便座ヒータ210に通電し、その出力を中出力に設定するため、着座面の温度は、適温近傍に維持される。その他の動作については、図5に関して前述した動作と同様である。
【0076】
本具体例の動作(第1のモード)によれば、制御部410は、便座200bの着座面の温度が適温になってから、あるいは接近してから便蓋300bを開放するため、使用者は、より確実に適温近傍の着座面に着座できる。そのため、使用者は、冷感を感ずることなくより快適な座り心地を得ることができる。また、便座ヒータ210および便蓋ヒータ310により便座200bの着座面を上下から迅速に加熱することができるため、着座面の温度をより早く適温に近づけることができる。
【0077】
図15は、本実施形態にかかる暖房便座装置の第2のモードの動作の具体例を例示するタイミングチャートである。
本具体例の動作(第2のモード)では、人体検知手段430が便座200bに近づいた人体を検知すると、着座面の温度が適温になっていなくとも、あるいは接近していなくとも、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300bを開放させる(タイミングt2)。
【0078】
そして、これと略同時に、制御部410は、便蓋ヒータ310の通電を停止する。そのため、便蓋300bを開放させた後に無駄な放熱が行われることを抑制することができる。これにより、エネルギーロスを低減し、省エネルギー化を図ることができる。一方、制御部410は、便座200bの着座面の温度が適温になると、あるいは接近すると、便座ヒータ210の通電量を低減させ、その便座ヒータ210の出力を中出力に設定する(タイミングt4)。その他の動作については、図5に関して前述した動作と同様である。
【0079】
本具体例の動作によれば、制御部410は、便座200bの着座面の温度が適温に接近する前であっても便蓋300bを開放するため、使用者は、便蓋300bが開くまで待つ必要はなく、より早く便器800を使いたいという要求が満たされる。そのため、使用者は、より快適な使い心地を得ることができる。また、便座ヒータ210および便蓋ヒータ310により便座200bの着座面を上下から迅速に加熱することができる。そのため、人体検知手段430が便座200bに近づいた人体を検知したときに便蓋300bを開放させても、使用者が冷感を感じない程度の温度まで着座面をより確実に昇温させることができる。
【0080】
なお、図6に関して前述した具体例と同様に、人体検知手段430の検知結果により制御部410が便蓋300bを開放する動作だけではなく、使用者が手動により便蓋300bを開放する動作についても、本具体例の動作(第2のモード)の範囲に包含される。また、本具体例では、人体検知手段430が便座200bに近づいた人体を検知すると、制御部410は、便蓋300bを開放し、便蓋ヒータ310の通電を停止する場合を例に挙げて説明したが、本実施形態の第2のモードの動作は、これだけに限定されるわけではない。本実施形態の第2のモードの動作は、図7〜図9に関して前述した具体例の動作と同様の動作であってもよい。また、本実施形態にかかる暖房便座装置100aは、図10および図11に関して前述した具体例の動作と同様に、トイレ室の室温あるいは便座ヒータ210近傍の温度変化率に応じて、動作モードとして選択されている第1のモードを第2のモードに切り替えて実行してもよい。これらの場合であっても、制御部410は、便蓋300bを開放させたときに、便蓋ヒータ310の通電を停止することが好ましい。
【0081】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、着座面の温度が設定温度に接近すると便蓋300、300a、300bを開放する第1のモードと、着座面の温度が設定温度に接近する前に便蓋300、300a、300bを開放する第2のモードと、のいずれかを実行できる。つまり、着座面の温度を優先的に制御する第1のモードと、便蓋300、300a、300bを開放する時間(タイミング)を優先的に制御する第2のモードと、のいずれかを実行できる。そして、使用者は、第1のモードおよび第2のモードのいずれかを選択手段600により選択できる。これによれば、使用者の好みに応じて便蓋300、300a、300bを開放するタイミングを設定できるため、快適な使い心地を提供できる。
【0082】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座200や便蓋300などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや着座検知手段420、人体検知手段430、入室検知手段440、および室温検知手段460の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0083】
100、100a 暖房便座装置、 200 、200a、200b 便座、 210 便座ヒータ、 220 断熱材、 230 基材、 231 上板、 233 底板、 240 クッション部、 250 表面部、 260 熱伝導体、 270 支持体、 280 便座温度検知手段、 300、300a、300b 便蓋、 301 透過窓、 310 便蓋ヒータ、 320 断熱材、 330 基材、 331 上板、 333 底板、 360 熱伝導体、 400 暖房便座機能部、 410 制御部、 420 着座検知手段、 430 人体検知手段、 440 入室検知手段、 441 凹設部、 443 排気口、 445 排出口、 450 便蓋駆動装置、 460 室温検知手段、 600 選択手段、 800 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座面を有する便座と、
前記着座面を覆う便蓋と、
前記着座面を加熱する加熱部と、
前記便蓋を開く便蓋駆動装置と、
前記便蓋を開く必要があると判断すると前記加熱部の通電量を増大させて前記着座面の温度が第1の温度に接近した後に前記便蓋駆動装置を駆動させて前記便蓋を開く第1のモードと、前記便蓋を開く必要があると判断すると前記着座面の温度が前記第1の温度に接近していなくても前記便蓋駆動装置を駆動させて前記便蓋を開く第2のモードと、を実行可能な制御部と、
前記第1および第2のモードのいずれかを選択可能な選択手段と、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記便座に近づいた人体を検知する人体検知手段をさらに備え、
前記制御部は、前記人体検知手段が前記便座に近づいた人体を検知すると前記便蓋を開く必要があると判断することを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2のモードにおいて、前記便蓋を開く必要があると判断すると前記加熱部の通電量を増大させてから所定時間が経過した後に、前記着座面の温度が前記第1の温度に接近していなくても前記便蓋駆動装置を駆動して前記便蓋を開くことを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2のモードにおいて、前記便蓋を開く必要があると判断すると前記着座面の温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度に接近したときに前記便蓋駆動装置を駆動して前記便蓋を開くことを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項5】
トイレ室の室温を検知する室温検知手段をさらに備え、
前記制御部は、前記室温検知手段により検知された室温が第3の温度よりも高い場合には、選択手段により第1のモードが選択されていても前記第2のモードを実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項6】
前記加熱部の近傍の温度を検知する便座温度検知手段をさらに備え、
前記制御部は、前記便座温度検知手段により検知された温度の単位時間あたりの変化量が所定値よりも大きい場合には、選択手段により第1のモードが選択されていても前記第2のモードを実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項7】
トイレ室への人体の入室を検知する入室検知手段をさらに備え、
前記制御部は、前記入室検知手段が前記トイレ室への人体の入室を検知すると前記便蓋を開く必要があると判断することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項8】
前記便座は、前記着座面の下方に設けられ弾力性を有するクッション部を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項9】
前記加熱部は、前記便座に内蔵され前記着座面を前記便座内から加熱する便座ヒータと、前記便蓋に設けられ前記着座面を表面から加熱する便蓋ヒータと、を有し、
前記制御部は、前記便蓋駆動装置を駆動して前記便蓋を開いたときに、前記便蓋ヒータの通電を停止することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の暖房便座装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate