説明

暖房便座装置

【課題】クッション部の圧縮変形性が損なわれることを抑えることができる、あるいは快適な座り心地が得られる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】基材と、前記基材の上に設けられ、弾力性および絶縁性を有するクッション部と、前記クッション部を覆う表皮層と、前記基材と前記表皮層との間に設けられた発熱部と、前記表皮層と前記発熱部との間に設けられ、前記表皮層よりも高い耐刃性を有する材料により形成され、前記クッション部の圧縮変形に追従して伸縮変形する遮蔽層と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、暖房便座装置に関し、具体的には便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、便座の座面は、PP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂で製造されている。そのため、使用者が便座に座ったときに、硬い座り心地を与えている。また、冬場などの気温の低いときに冷えた便座に座ると、冷感を感じる。そこで、少なくとも一部に使用者の体形に沿うように変形する弾性体層と、便座を加熱する便座ヒータと、便座ヒータを覆う遮蔽層と、を備えた便座装置がある(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載された便座装置によれば、遮蔽層があることによって、破損がヒータまで達することを防止するとともに、人体が直接便座ヒータに接触しないため、感電等の危険性を最小限にする事が可能となり、座り心地がよく、かつ安全性の高い便座装置とすることができる。
【0004】
また、断熱性、圧縮変形性を有する基材に挟持された発熱体と、熱伝導性の良好な材料からなる防水シートと、を備えた着座採暖具がある(特許文献2)。特許文献2に記載された着座採暖具によれば、基材中に防水シートを設けることで、防水処理された外表面であっても、何れかの理由で機械的あるいは科学的に表面が破壊され基材中に水分等が浸透してきても、発熱体への水分の浸入を防ぎ、感電や漏電等の事故防止や水分による基材の劣化を防止し、安全で信頼性の高い構成とすることができる。
【0005】
しかしながら、遮蔽層を特許文献1に記載されたような板状の金属で形成したり、防水シートを特許文献2に記載されたようなアルミシートで構成すると、遮蔽層および防水シートが、特許文献1に記載された弾性体層および特許文献2に記載された基材のそれぞれの圧縮変形の支障となるという問題がある。また、この場合には、快適な座り心地が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−289313号公報
【特許文献2】特開2000−210231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、クッション部の圧縮変形性が損なわれることを抑えることができる、あるいは快適な座り心地が得られる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、基材と、前記基材の上に設けられ、弾力性および絶縁性を有するクッション部と、前記クッション部を覆う表皮層と、前記基材と前記表皮層との間に設けられた発熱部と、前記表皮層と前記発熱部との間に設けられ、前記表皮層よりも高い耐刃性を有する材料により形成され、前記クッション部の圧縮変形に追従して伸縮変形する遮蔽層と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0009】
この暖房便座装置によれば、表皮層と発熱部との間には、遮蔽層が設けられている。遮蔽層は、表皮層よりも高い耐刃性を有する材料により形成されている。そのため、表皮層やクッション部が破損した場合でも、発熱部が便座の外部に露出することを防止することができる。つまり、意識的あるいは無意識的に表皮層やクッション部が傷つけられた場合でも、遮蔽層は、その傷が発熱部まで到達することを防止し、発熱部が便座の外部に露出することを防止できる。そのため、人体が発熱部と直接的に接触することを防止し、火傷防止あるいは感電防止を図ることができる。
また、遮蔽層は、クッション部の圧縮変形に追従して伸縮変形する。そのため、クッション部の圧縮変形性が損なわれることを抑えることができ、快適な座り心地を得ることができる。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記遮蔽層は、前記クッション部よりも高い耐刃性を有する材料により布状または網状に形成されたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0011】
この暖房便座装置によれば、遮蔽層は、クッション部よりも高い耐刃性を有する材料により布状または網状に形成されている。そのため、クッション部の圧縮変形への遮蔽層の追従性は、より高くなる。この場合には、遮蔽層の圧縮変形性が損なわれることをより抑えることができ、より快適な座り心地を得ることができる。
【0012】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記遮蔽層と前記発熱部との間に設けられ、前記クッション部の圧縮変形に追従して伸縮変形する絶縁層をさらに備えたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0013】
この暖房便座装置によれば、クッション部の圧縮変形に追従して伸縮変形する絶縁層が、遮蔽層と発熱部との間に設けられている。そのため、遮蔽層の材料として種々の材料を用いることができる。例えば、遮蔽層として、金網などを用いることができる。つまり、クッション部の圧縮変形に追従して伸縮変形する限りにおいて、遮蔽層を金属により形成することができる。遮蔽層が金属により形成された場合には、発熱部から表皮層へ伝わる熱の伝達性をより高めることができる。そのため、着座面をより早く温めることができる。
【0014】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記発熱部は、前記クッション部の内部、または前記表皮層と前記クッション部との間に設けられ、前記クッション部の圧縮変形に追従して伸縮変形するヒータであることを特徴とする暖房便座装置である。
【0015】
この暖房便座装置によれば、発熱部は、クッション部の圧縮変形に追従して伸縮変形するヒータである。そのため、ヒータを着座面の近い位置に設けることができる。言い換えれば、ヒータは、クッション部の圧縮変形に追従して伸縮変形するため、ヒータが着座面の近い位置に設けられても、クッション部の圧縮変形性が損なわれることを抑えることができる。また、ヒータが着座面の近い位置に設けられても、快適な座り心地を得ることができる。
【0016】
また、ヒータは、クッション部と表皮層との間すなわち着座面の近い位置に設けられた場合には、クッション部の表面をより早く加熱することができ、着座面をより早く温めることができる。つまり、この場合には、熱応答性をより向上させることができる。
【0017】
また、第5の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、通電されて磁界を発生する加熱コイルと、前記加熱コイルから発生する磁界で誘導される渦電流により発熱する導電体と、を有する誘導加熱手段を備え、前記発熱部は、前記導電体であることを特徴とする暖房便座装置である。
【0018】
この暖房便座装置によれば、発熱部は、加熱コイルから発生する磁界で誘導される渦電流により発熱する導電体である。導電体は、加熱コイルから発生する磁界で誘起される渦電流により発熱するため、冷めている便座を急速に加熱することができる。そのため、使用者が便座を使用していないときには便座を保温しておく必要はない。これにより待機時の電力を削減することができ、さらなる省エネルギー化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の態様によれば、クッション部の圧縮変形性が損なわれることを抑えることができる、あるいは快適な座り心地が得られる暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
【図3】本発明の他の実施の形態にかかる暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
【図4】本発明のさらに他の実施の形態にかかる暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
【図5】本発明のさらに他の実施の形態にかかる暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
【図6】本発明のさらに他の実施の形態にかかる暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【0022】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、暖房便座機能部400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、暖房便座機能部400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0023】
便座200は、便座200を暖めることができる発熱部を内蔵する。発熱部は、例えばヒータや、誘導加熱手段の加熱層(導電体)などである。また、暖房便座機能部400は、例えば温度センサからの検知信号に基づいて発熱部を加熱させるための通電を制御する制御部410(図2〜図6参照)。これらについては、後に詳述する。
【0024】
暖房便座機能部400は、衛生洗浄装置としての機能部を併設してもよい。すなわち、暖房便座機能部400は、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などを適宜備えてもよい。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0025】
また、暖房便座機能部400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0026】
以下、発熱部がヒータである場合を例に挙げて説明する。
図2は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
なお、図2は、図1に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【0027】
本実施形態の便座200は、図2に表したように、基材230と、弾力性(クッション性)および絶縁性を有するクッション部240と、クッション部240の上面や側面を覆う表面部(表皮層)250と、基材230と表面部250との間に設けられたヒータ(発熱部)210と、表面部250とヒータ210との間に設けられた遮蔽層260と、を有する。基材230は、上板231と底板233とを有する。但し、基材230は、一体的に形成されていてもよい。また、表面部250の表面は、着座面として機能する。なお、本願明細書において「弾力性(クッション性)」とは、荷重を受けて圧縮変形したり、荷重を受けて厚みが変化する性質をいう。
【0028】
ヒータ210は、通電されて発熱することにより、便座200を暖めることができる。つまり、ヒータ210は、便座の表面(着座面)に伝えられる熱を発生する。なお、ヒータ210の設置形態や設置数は、図2に表したヒータ210の設置形態や設置数に限定されるわけではない。
【0029】
ヒータ210としては、いわゆる「チュービングヒータ」や、「シーズヒータ」、「ハロゲンヒータ」、「カーボンヒータ」などを用いることができる。また、ヒータ210の形状は、ワイヤ状やシート状やメッシュ状などのいずれであってもよい。
【0030】
基材230は、例えばPP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂から形成されている。クッション部240は、基材230よりも柔らかい材料により形成され、使用者が便座200に着座すると、その体重に応じて変形して体重を分散させる。クッション部240は、基材230の上に設けられクッション性を有するため、使用者が便座200に座ったときの座り心地を向上させることができる。なお、基材230の内部には、断熱材が設けられていてもよい。これによれば、便座200の下への放熱を抑止することができる。
【0031】
遮蔽層260は、表面部250よりも高い耐刃性を有する材料により形成されている。また、遮蔽層260は、クッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形する。本願明細書において「伸縮」という範囲には、材料自体や素材自体の伸縮だけではなく、例えば編み物や織物などの構造としての伸縮も含まれる。遮蔽層260としては、例えば金網や、高強度繊維などと言われるアラミド繊維を編み込んだ布または不織布などが挙げられる。また、遮蔽層260としては、例えば、クッション部240よりも高い耐刃性を有する材料を布状または網状に形成したものが挙げられる。
【0032】
本実施形態によれば、表面部250やクッション部240が破損した場合でも、表面部250よりも高い耐刃性を有する遮蔽層260が表面部250とヒータ210との間に設けられているため、ヒータ210が便座200の外部に露出することを防止することができる。つまり、意識的あるいは無意識的に表面部250やクッション部240が傷つけられた場合でも、遮蔽層260は、その傷がヒータ210まで到達することを防止し、ヒータ210が便座200の外部に露出することを防止できる。そのため、人体がヒータ210と直接的に接触することを防止し、火傷防止あるいは感電防止を図ることができる。
【0033】
また、遮蔽層260は、クッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形する。そのため、クッション部240の圧縮変形性が損なわれることを抑えることができ、快適な座り心地を得ることができる。また、遮蔽層260が、クッション部240よりも高い耐刃性を有する材料により布状または網状に形成された場合には、クッション部240の圧縮変形への追従性は、より高くなる。この場合には、遮蔽層260の圧縮変形性が損なわれることをより抑えることができ、より快適な座り心地を得ることができる。
【0034】
図3は、本発明の他の実施の形態にかかる暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
なお、図3は、図1に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【0035】
本実施形態の便座200aでは、遮蔽層260は、クッション部240と表面部250との間に設けられている。つまり、本実施形態の遮蔽層260は、表面部250の下面に付設されている。その他の構造は、図2に関して前述した便座200の構造と同様である。
【0036】
本実施形態によれば、遮蔽層260は、クッション部240と表面部250との間に設けられているため、表面部250が傷つけられた場合でも、その傷がクッション部240まで到達することを防止することができる。また、遮蔽層260は、クッション部240が便座200の外部に露出することを防止できる。
【0037】
さらに、クッション部240の内部ではなく表面部250の下面に遮蔽層260を付設させることにより、便座200aの製造がより容易となる。そのため、便座200aの生産性をより向上させることができる。なお、その他の効果についても、図2に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0038】
図4は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
なお、図4は、図1に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【0039】
図2および図3に関して前述した便座200、200aでは、ヒータ210がクッション部240の内部に設けられているのに対し、本実施形態にかかる便座200bでは、図4に表したように、ヒータ210は、クッション部240と表面部250との間に設けられている。その他の構造は、図3に関して前述した便座200の構造と同様である。
【0040】
本実施形態のヒータ210は、遮蔽層260と同様に、クッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形する。より具体的に説明すると、本実施形態のヒータ210は、例えばワイヤ状やメッシュ状に形成されており、構造として伸縮変形することができる。つまり、ヒータ210の素材自体が必ずしもクッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形しなくともよく、ヒータ210の構造全体としてクッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形できればよい。
【0041】
本実施形態によれば、ヒータ210は、クッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形するため、ヒータ210を着座面の近い位置に設けることができる。言い換えれば、ヒータ210は、クッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形するため、ヒータ210が着座面の近い位置に設けられても、クッション部240の圧縮変形性が損なわれることを抑えることができる。また、ヒータ210が着座面の近い位置に設けられても、快適な座り心地を得ることができる。さらに、ヒータ210が着座面の近い位置に設けられても、クッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形する遮蔽層260がヒータ210と表面部250との間に設けられているため、クッション部240の圧縮変形性が損なわれることを抑えることができる。
【0042】
さらに、ヒータ210は、クッション部240と表面部250との間すなわち着座面の近い位置に設けられているため、クッション部240の表面をより早く加熱することができ、着座面をより早く温めることができる。つまり、着座面の熱応答性をより向上させることができる。また、遮蔽層260がクッション部240と表面部250との間に設けられているため、図2および図3に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0043】
図5は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
なお、図5は、図1に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【0044】
本実施形態の便座200cは、ヒータ210と遮蔽層260との間に設けられた絶縁層270をさらに有する。絶縁層270は、例えば樹脂フィルムやゴムフィルムなどにより形成され、電気的な絶縁性を有する。また、絶縁層270は、遮蔽層260と同様に、クッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形する。ヒータ210は、図4に関して前述したヒータ210と同様に、クッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形する。その他の構造は、図4に関して前述した便座200の構造と同様である。
【0045】
なお、絶縁層270は、樹脂フィルムやゴムフィルムであることに限定されるわけではなく、独立発泡性を有するクッション部240であってもよい。つまり、絶縁層270は、クッション部240とは異なる層として設けられてもよいし、クッション部240の層であってもよい。クッション部240は、独立発泡構造を有する場合には絶縁性を有する。そのため、絶縁層270は、独立発泡性を有するクッション部240であってもよい。
【0046】
本実施形態によれば、ヒータ210の遮蔽層260との間に絶縁層270が設けられているため、遮蔽層260の材料として種々の材料を用いることができる。例えば、本実施形態の遮蔽層260として、金網などを用いることができる。つまり、本実施形態では、クッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形する限りにおいて、遮蔽層260を金属により形成することができる。これは、前述したように、絶縁層270が電気的な絶縁性を有することでより確実な感電防止を図ることができるためである。
【0047】
遮蔽層260が金属により形成された場合には、ヒータ210から表面部250へ伝わる熱の伝達性をより高めることができる。そのため、着座面をより早く温めることができる。また、その他の効果についても、図2〜図4に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0048】
次に、発熱部が誘導加熱手段の加熱層である場合を例に挙げて説明する。
図6は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
なお、図6は、図1に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【0049】
本実施形態の便座200dは、誘導加熱手段280を内蔵する。誘導加熱手段280は、通電されて磁界を発生する加熱コイル281と、加熱コイル281から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する加熱層(発熱部)283と、を有する。加熱層283は、クッション部240と遮蔽層260との間すなわち遮蔽層260の下面に付設されている。また、加熱層283は、クッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形する。一方、加熱コイル281は、基材230の内部に設けられている。加熱層283は、加熱層283自身が発熱する熱により便座200の着座面を急速に加熱することができる。
【0050】
なお、加熱コイル281および加熱層283の設置形態や設置数は、これだけに限定されるわけではない。例えば、加熱層283は、クッション部240の内部に設けられていてもよい。また、図5に関して前述したように、加熱層283と遮蔽層260との間に絶縁層270が設けられていてもよい。また、加熱コイル281は、便座200dに内蔵されていることに限定されず、例えば便蓋300に内蔵されていてもよい。
【0051】
加熱層283は、導電体により形成されている。導電体としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、またはアルミニウムなどの常磁性体といった金属を用いることができる。また、加熱層283は、導電性を有していればよく、金属だけに限定されず例えば炭素により形成されていてもよい。なお、便座200の外部に磁界を放出させにくくするためには、電気抵抗が大きい鉄やステンレスなどの強磁性体を加熱層283に用いることがより好ましい。
なお、その他の構造は、発熱部がヒータ210である場合の便座の構造と同様である。
【0052】
本実施形態によれば、クッション部240と遮蔽層260との間すなわち着座面の近い位置に設けられた加熱層283は、加熱コイル281から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱するため、冷めている便座200dを急速に加熱することができる。そのため、使用者が便座200dを使用していないときには便座200dを保温しておく必要はない。これにより待機時の電力を削減することができ、さらなる省エネルギー化を図ることができる。
【0053】
また、本実施形態の便座200dは、図2〜図5に関して前述した遮蔽層260を有する。そのため、意識的あるいは無意識的に表面部250やクッション部240が傷つけられた場合でも、遮蔽層260は、その傷が加熱層283まで到達することを防止し、加熱層283が便座200dの外部に露出することを防止できる。そのため、人体が加熱層283と直接的に接触することを防止し、火傷防止を図ることができる。また、遮蔽層260は、クッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形するため、図1に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、表面部250と発熱部との間には、遮蔽層260が設けられている。遮蔽層260は、表面部250よりも高い耐刃性を有する材料により形成されている。そのため、表面部250やクッション部240が破損した場合でも、発熱部が便座200の外部に露出することを防止することができる。つまり、意識的あるいは無意識的に表面部250やクッション部240が傷つけられた場合でも、遮蔽層260は、その傷が発熱部まで到達することを防止し、発熱部が便座200の外部に露出することを防止できる。そのため、人体が発熱部と直接的に接触することを防止し、火傷防止を図ることができる。
【0055】
また、加熱層283および遮蔽層260は、クッション部240の圧縮変形に追従して伸縮変形する。そのため、クッション部240の圧縮変形性が損なわれることを抑えることができ、快適な座り心地を得ることができる。また、遮蔽層260が、クッション部240よりも高い耐刃性を有する材料により布状または網状に形成された場合には、クッション部240の圧縮変形への追従性は、より高くなる。この場合には、遮蔽層260の圧縮変形性が損なわれることをより抑えることができ、より快適な座り心地を得ることができる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座200、200a、などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや遮蔽層260やヒータ210や加熱コイル281や加熱層283の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0057】
100 暖房便座装置、 200、200a、200b、200c、200d 便座、 210 ヒータ、 230 基材、 231 上板、 233 底板、 240 クッション部、 250 表面部、 260 遮蔽層、 270 絶縁層、 280 誘導加熱手段、 281 加熱コイル、 283 加熱層、 300 便蓋、 400 暖房便座機能部、 410 制御部、 800 洋式腰掛便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上に設けられ、弾力性および絶縁性を有するクッション部と、
前記クッション部を覆う表皮層と、
前記基材と前記表皮層との間に設けられた発熱部と、
前記表皮層と前記発熱部との間に設けられ、前記表皮層よりも高い耐刃性を有する材料により形成され、前記クッション部の圧縮変形に追従して伸縮変形する遮蔽層と、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記遮蔽層は、前記クッション部よりも高い耐刃性を有する材料により布状または網状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記遮蔽層と前記発熱部との間に設けられ、前記クッション部の圧縮変形に追従して伸縮変形する絶縁層をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記発熱部は、前記クッション部の内部、または前記表皮層と前記クッション部との間に設けられ、前記クッション部の圧縮変形に追従して伸縮変形するヒータであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項5】
通電されて磁界を発生する加熱コイルと、
前記加熱コイルから発生する磁界で誘導される渦電流により発熱する導電体と、
を有する誘導加熱手段を備え、
前記発熱部は、前記導電体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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