説明

暖房便座

【課題】便座本体の表面が好適な温度になるまでが迅速であり、消費電力量をより低減でき、かつ清掃性に難点を有さない暖房便座を提供する。
【解決手段】便座本体10と、便座本体10内に配置され、通電により便座本体10の表面材10aを加熱可能なヒータ11とを備えた暖房便座3である。ヒータ11は、通電によって発熱し、設定温度がサーモスタット55、56のON・OFFによって維持される熱源部材15と、伝熱性が高く、便座本体10の表面に伝熱可能な蓋13と、伝熱性の低い真空空間13aと、熱源部材15が蓋13に接触する状態と真空空間13aに覆われている状態とを切り替える電磁石20とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は暖房便座に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便座本体と、この便座本体内に配置され、通電により便座本体の表面を加熱可能なヒータとを備えた暖房便座が知られている。ヒータは、通電によって発熱し、設定温度が維持される熱源部材からなる。この暖房便座では、便座本体の表面側の裏面に熱源部材が直接配置されている。
【0003】
この種の暖房便座では、人の接近を検知可能な人体検知センサ、人の着座を検知可能な着座センサのON・OFF又はタイマにより、ヒータへの通電量を切り替えている。そして、暖房便座を使用しない待機状態における便座本体の設定温度を使用状態における設定温度より低くしている。例えば、従来の暖房便座では、着座センサがOFFである場合における便座本体の設定温度を25°Cとし、着座センサがONである場合における便座本体の設定温度を39〜40°Cとしている。また、便座本体の設定温度はサーモスタット等の温度センサのON・OFFによって維持されるようになっている。そして、待機状態中、便座本体は便蓋によって覆われ、便座本体の表面からの放熱を防ぐようになっている。
【0004】
この暖房便座では、一般に待機状態の方が使用状態に比べてはるかに長く、待機状態の設定温度を使用状態の設定温度より低くしていることから、消費電力量を低減することができる。特に、待機状態においては、便蓋が便座本体の放熱を防いでヒータへの通電時間を短くしており、これによって消費電力量の低減が図られている。
【0005】
そして、この暖房便座では、待機状態から使用状態へと変化があれば、ヒータの設定温度が上昇されるため、使用者は比較的迅速に好適な温度で暖房便座に着座することが可能になる。
【0006】
しかし、この暖房便座では、待機状態において、たとえ便蓋によって便座本体の表面からの放熱を防いでいたとしても、ヒータの熱は、便座本体の表面側からだけでなく、便座本体内の空洞にも放出されてしまう。このため、ヒータへの通電時間が未だ十分に短くなく、消費電力量の低減効果が十分でない。
【0007】
かといって、待機状態でヒータへの通電を行わなかったり、設定温度をより低くしたりすれば、待機状態から使用状態への変化において、便座本体は、表面が低温から上昇しなければならないことになるため、表面が好適な温度になるまでに長時間を要することとなってしまう。
【0008】
この点、便座本体の表面側の裏面に熱源部材からなるヒータを配し、このヒータの下部と空洞との間に真空断熱材を配置した暖房便座も提案されている(特許文献1)。この暖房便座では、真空断熱材により空洞への放熱を抑えることができるため、待機状態において、ヒータへの通電時間を従来よりも短くすることができる。このため、この暖房便座によれば、便座本体の表面が好適な温度になるまでが比較的迅速であり、かつ消費電力量をより低減できると考えられる。
【0009】
【特許文献1】特開2000−350678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1記載の暖房便座では、待機状態において、便座本体の空洞への放熱を抑えることはできるものの、便座本体の表面への放熱を未だ抑えることができない。そのため、この暖房便座では、ヒータへの通電時間が未だ長く、消費電力量が未だ十分に低減できていないと考えられる。
【0011】
このため、便蓋によって便座本体の表面からの放熱をより防ごうとすれば、便座本体と便蓋との隙間内の空気の流通を防止するために便座本体に便蓋を密着させなければならず、その場合には便座本体の表面に付着した汚れが便蓋に移着しやすく、清掃性に難点を有してしまう。
【0012】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便座本体の表面が好適な温度になるまでが迅速であり、消費電力量をより低減でき、かつ清掃性に難点を有さない暖房便座を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の暖房便座は、便座本体と、該便座本体内に配置され、通電により該便座本体の表面を加熱可能なヒータとを備えた暖房便座において、
前記ヒータは、通電によって発熱し、設定温度が維持される熱源部材と、伝熱性が高く、前記便座本体の表面に伝熱可能な高伝熱層と、伝熱性の低い低伝熱層と、前記熱源部材が該高伝熱層に接触している状態と該低伝熱層に覆われている状態とを切り替える駆動手段とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の暖房便座は、便座本体と、該便座本体内に配置され、通電により該便座本体の表面を加熱可能なヒータとを備えた暖房便座において、
前記ヒータは、通電によって発熱し、設定温度が維持される熱源部材と、伝熱性が高く、前記便座本体の表面に伝熱可能な高伝熱層と、伝熱性の低い低伝熱層とを有し、
該熱源部材が該高伝熱層に接触し、該便座本体の表面の裏側を暖める状態と、該熱源部材が該低伝熱層に覆われ、放熱を抑える状態とをとり得ることを特徴とする。
【0015】
本発明の暖房便座では、待機状態で熱源部材への通電を行っていたとしても、その熱源部材は駆動手段によって低伝熱層に覆われている状態に切り替えられている。低伝熱層は伝熱性が低いものであるため、熱源部材の熱は低伝熱層をゆっくり伝わる。この際、低伝熱層は熱源部材から受け取った熱を他に放出しにくいため、熱源部材も低伝熱層に放熱し難い。このため、熱源部材の設定温度を維持するための通電時間が短くなり、消費電力量が低減される。
【0016】
そして、待機状態から使用状態へと変化があれば、熱源部材は駆動手段によって高伝熱層に接触する状態に切り替えられる。高伝熱層は伝熱性が高いものであるため、熱源部材の熱は高伝熱層を迅速に伝わり、便座本体を迅速に加熱する。このため、使用者は比較的迅速に好適な温度で暖房便座に着座することが可能である。
【0017】
また、この暖房便座では、便座本体に便蓋を密着させて便座本体の表面からの放熱を防ぐ必要がないため、便座本体の表面に付着した汚れは便蓋に移着し難く、清掃性に難点を有さない。
【0018】
したがって、本発明の暖房便座は、便座本体の表面が好適な温度になるまでが迅速であり、消費電力量をより低減でき、かつ清掃性に難点を有さない。
【0019】
本発明に係る駆動手段はバネの付勢力に抗して作動する電磁石であることが好ましい。電磁石を採用することにより、比較的安価でかつ確実な動作を得ることができる。
【0020】
また、本発明に係る駆動手段は、人の接近を検知可能な人体検知センサ又は人の着座を検知可能な着座センサにより作動するように構成されていることが好ましい。これにより、暖房便座の使用状態と待機状態とを確実に検知することができる。
【0021】
本発明に係る熱源部材と高伝熱層とは、低伝熱層を存在させずに接触可能であるとともに、低伝熱層を存在させて離反可能に構成されていることが可能である。この場合、待機状態では、熱源部材が低伝熱層を存在させて高伝熱層と離反し、使用状態では、熱源部材が低伝熱層を存在させずに高伝熱層と接触する。これにより、熱源部材が高伝熱層に接触する状態と低伝熱層に覆われている状態とを容易に切り替えることができる。
【0022】
この際、低伝熱層を真空空間とすることができる。真空空間は、伝熱性が極めて低く、熱源部材から受け取った熱を他にほとんど放出しないため、熱源部材が真空空間にほとんど放熱しない。このため、熱源部材の設定温度を維持するための通電時間が確実に短くなり、消費電力量が確実に低減される。
【0023】
そして、低伝熱層が真空空間である場合、熱源部材と高伝熱層とは互いの当接面と直角の方向に離反するように構成されていることができる。こうであれば、熱源部材を真空空間で囲むことにより、熱源部材が高伝熱層に接触する状態と低伝熱層に覆われている状態とを容易に切り替えることができる。
【0024】
また、低伝熱層を断熱材とすることができる。断熱材は、伝熱性が極めて低く、熱源部材から受け取った熱を他にほとんど放出しないため、熱源部材が断熱材にほとんど放熱しない。このため、熱源部材の設定温度を維持するための通電時間が確実に短くなり、消費電力量が確実に低減される。
【0025】
そして、低伝熱層が断熱材である場合、熱源部材と高伝熱層とは互いの当接面と平行な方向に離反するように構成されていることができる。こうであれば、熱源部材と高伝熱層との間に断熱材を配することにより、熱源部材が高伝熱層に接触する状態と低伝熱層に覆われている状態とを容易に切り替えることができる。
【0026】
本発明に係るヒータは熱源部材を収納するハウジングを有し、ハウジングの外面のうち少なくとも熱源部材側には断熱材が設けられていることが好ましい。これにより、便座本体の空洞への放熱を抑えることができるため、消費電力量を低減することができる。
【0027】
また、本発明に係る熱源部材は、低伝熱層に覆われている場合の設定温度が高伝熱層と接触している場合の設定温度より低くされていることが好ましい。これにより、さらに消費電力量を低減することができる。
【0028】
さらに、本発明に係る便座本体の表面が樹脂製の表面材によって形成されている場合、表面材の裏面に高伝熱層を接触させていることが好ましい。これにより、熱源部材が高伝熱層を介して表面材に接触するすることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0030】
図1に示すように、実施例1の暖房便座3は洋風水洗式便器1に使用される。洋風水洗式便器1は、陶磁器製の洋風便器本体2、暖房便座3、便蓋4、洗浄装置5、人体検知センサ6を備えている。この洋風水洗式便器1の平面図を図2に示す。ただし、図2では便蓋4を省略している。
【0031】
また、暖房便座3の断面図を図3及び図4に示す。図3及び図4に示すように、暖房便座3は、樹脂製の便座本体10と、便座本体10内に配置され、通電により便座本体10の表面材10aを加熱可能なヒータ11とを備えている。
【0032】
ヒータ11は、通電によって発熱する板状の熱源部材15を収納するハウジング12を有している。ハウジング12はケース本体14と蓋13とからなる。ケース本体14は断熱材等の伝熱性の低い低伝熱材からなっており、蓋13は、伝熱性プラスチック、金属等の伝熱性の高い高伝熱材からなっている。蓋13は便座本体10の表面材10aの裏面に接着されている。また、ハウジング12内の内部空間14aは真空状態にされている。なお、熱源部材15の熱容量は、便座本体10の表面材10aの熱容量に比べて十分に大きくなっている。また、熱源部材15は熱ムラが少なくなるように設計されており、表面材10aは可能な限り熱容量が小さくなるように設計されている。
【0033】
熱源部材15の両端にはホルダ16が固定されている。これらのホルダ16内には円筒状の電磁石20の外周面が固定されている。各電磁石20にはガイド棒22が挿通され、各電磁石20は各ガイド棒22に沿って摺動可能になっている。各ガイド棒22の上端は蓋13に固定され、各ガイド棒22の下端はケース本体14に固定されている。また、各ガイド棒22の上端には磁性材料からなる磁性板21が固定され、磁性板21と各電磁石20との間には押圧バネ23が設けられている。
【0034】
図3に示すように、熱源部材15と蓋13とが離反した状態では、両者の間に真空空間13aが形成される。一方、図4に示すように、熱源部材15と蓋13とが接触した状態では、両者の間に真空空間13aは存在しない。ここで、蓋13が高伝熱層であり、真空空間13aが低伝熱層である。また、両電磁石20が駆動手段である。なお、両電磁石20に通電するための導線は省略している。
【0035】
この洋風水洗式便器1の配線図を図5(A)及び(B)に示す。図5(A)に示すように、マイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と省略)50の入力ポートには、人体検知センサ6が接続されている。また、マイコン50の出力ポートには、低温リレー52、高温リレー53及び電磁石リレー54が接続されている。なお、低温リレー52、高温リレー53及び電磁石リレー54の駆動用トランジスタアレイ等の入出力インターフェイスは省略されている。
【0036】
また、図5(B)に示すように、熱源部材15は、低温サーモスタット55、高温サーモスタット56及び抵抗体57を備えている。家庭用交流電源に接続される電源プラグ58の一端は低温リレー52の接点52aと高温リレー53の接点53aとに接続される。そして、接点52aは低温サーモスタット55に接続され、接点53aは高温サーモスタット56に接続される。また、低温サーモスタット55と高温サーモスタット56とは抵抗体57に接続され、抵抗体57は電源プラグ58の他端に接続されている。すなわち、接点52a及び低温サーモスタット55と、接点53a及び高温サーモスタット56とは並列回路を構成し、この並列回路と抵抗体57とが直列に接続されている。また、電磁石リレー54の接点54aと両電磁石20のコイル20aとが接続され、その両端が電源プラグ58に接続されている。
【0037】
以上の構成をした洋風水洗式便器1では、図示しない暖房便座3の暖房スイッチがONにされると、図6に示すプログラムが起動する。なお、このプログラムが起動しない間は、低温リレー52、高温リレー53及び電磁石リレー54のすべてがOFFしており、抵抗体57及びコイル20aには電流は流れていない。そして、暖房便座3は図3に示す状態になっている。この状態において、熱源部材15と蓋13とは、押圧バネ23の付勢力により、真空空間13aを挟んで離反した状態となっている。また、便座本体10の表面材10aの温度は室温になっている。
【0038】
プログラムが起動すると、まずステップS1が実行される。ステップS1では、低温リレー52をONにする。これにより、接点52aが閉じる。そのため、接点52a及び低温サーモスタット55を経由して抵抗体57に通電され、抵抗体57の温度が上昇する。この際、低温サーモスタット55は25°Cに設定されている。これにより、抵抗体57の温度が25°Cになると、低温サーモスタット55がOFFし、抵抗体57への通電が停止される。また、抵抗体57の温度が25°Cより低くなると、再度、低温サーモスタット55がONになり、抵抗体57に通電される。このようにして、抵抗体57の温度は25°Cに維持される。なお、人が暖房便座3に着座した時、不快に感じない温度の下限の目安が25°Cである。
【0039】
ステップS2では、人が洋風水洗式便器1の使用を開始するまで待つ。人体検知センサ6がONしている場合(YES)、人が洋風水洗式便器1の使用を開始していると判断し、ステップS3を実行する。また、人体検知センサ6がOFFしている場合(NO)、人が洋風水洗式便器1の使用を開始していないと判断し、再度、ステップS2を実行する。
【0040】
ステップS3では、低温リレー52をOFFにし、高温リレー53をONにする。これにより、接点52aが開き、接点53aが閉じる。そのため、接点53a及び高温サーモスタット56を経由して抵抗体57に通電される。この際、高温サーモスタット56は40°Cに設定されている。これにより、抵抗体57の温度が40°Cになると、高温サーモスタット56がOFFし、抵抗体57への通電が停止される。また、抵抗体57の温度が40°Cより低くなると、再度、高温サーモスタット56がONになり、抵抗体57に通電される。このようにして、抵抗体57の温度は40°Cに維持される。
【0041】
次いで、ステップS4では、電磁石リレー54をONにする。これにより、接点54aが閉じ、コイル20aに通電され、両電磁石20が磁化される。このため、両電磁石20は、押圧バネ23の付勢力に抗して磁性板21に引き寄せられ、ガイド棒22に沿って磁性板21に向かって上方に摺動する。両電磁石20がガイド棒22に沿って摺動すると、熱源部材15も上方に移動する。こうして、暖房便座3は、図4に示すように、熱源部材15と蓋13とが接触する状態となり、急激に便座本体10の表面材10aの温度が上昇する。そして、人が暖房便座3に着座する時には、便座本体10の表面材10aは十分な温度にまで上昇する。
【0042】
ステップS5では、人が洋風水洗式便器1の使用を終了するまで待つ。人体検知センサ6がONしている場合(YES)、人が洋風水洗式便器1を未だ使用中であると判断し、再度、ステップS5を実行する。人体検知センサ6がOFFしている場合(NO)、人が洋風水洗式便器1の使用を終了したと判断して、ステップS6を実行する。
【0043】
ステップS6では、高温リレー53をOFFにし、低温リレー52をONにする。これにより、接点53aが開き、接点52aが閉じる。そのため、接点52a及び低温サーモスタット55を経由して抵抗体57に通電される。そして、ステップS1と同様、低温サーモスタット55の働きにより、抵抗体57の温度は25°Cに保たれる。
【0044】
ステップS7では、電磁石リレー54をOFFにする。これにより、接点54aが開き、コイル20aの通電が停止され、両電磁石20が消磁される。このため、両電磁石20は、押圧バネ23の付勢力により、ガイド棒22に沿って下方に摺動する。これに伴って、熱源部材15も下方に移動する。こうして、図3に示すように、熱源部材15と蓋13とは、真空空間13aを挟んで離反する状態となる。ステップS7実行後、ステップS2に戻る。
【0045】
なお、暖房便座3の暖房スイッチがOFFにされると、このプログラムの実行が停止する。プログラムの実行が停止すると、低温リレー52、高温リレー53及び電磁石リレー54のすべてがOFFし、抵抗体57及びコイル20aに電流が流れることはない。
【0046】
実施例1の暖房便座3では、待機状態で暖房スイッチがONにされ、熱源部材15の抵抗体57への通電を行っていても、その熱源部材15は両電磁石20によって真空空間13aに覆われている状態に切り替えられている。真空空間13aは伝熱性が極めて低いものであるため、熱源部材15の熱は真空空間13aにほとんど伝わらない。この際、真空空間13aは熱源部材15から受け取った熱を他にほとんど放出しないため、熱源部材15も真空空間13aにほとんど放熱しない。このため、熱源部材15を25°Cに維持する低温サーモスタット55はONしている時間が短くなる。その結果、通電時間が短くなって、消費電力量が低減される。
【0047】
そして、待機状態から使用状態へと変化があれば、熱源部材15は両電磁石20によって蓋13に接触する状態に切り替えられる。蓋13は伝熱性が高いものであるため、熱源部材15の熱は蓋13を迅速に伝わり、便座本体10を迅速に加熱する。このため、使用者は比較的迅速に好適な温度で暖房便座3に着座することが可能である。
【0048】
また、この暖房便座3では、便座本体10に便蓋4を密着させて便座本体10の表面からの放熱を防ぐ必要がないため、便座本体10の表面に付着した汚れは便蓋4に移着し難く、清掃性に難点を有さない。
【0049】
したがって、この暖房便座3は、便座本体10の表面が好適な温度になるまでが迅速であり、消費電力量をより低減でき、かつ清掃性に難点を有さない。
【0050】
実施例1の暖房便座3における時間と便座本体10の表面材10aの温度との関係を模式的に図7に示す。時刻t1が人体検知センサ6がONになった時であり、時刻t2が人が暖房便座3に着座した時である。図7によれば、実施例1の暖房便座3では、短時間で表面材10aの温度が40°Cに達していることがわかる。
【0051】
この点、従来の暖房便座においても、着座センサがOFFである場合における便座本体の設定温度を25°Cとすれば、同様に短時間で表面材の温度が40°Cに達するのであるが、この暖房便座は放熱量が多いことから、温度センサがONである時間が長く、消費電力量が多くなってしまう。これに対し、実施例1の暖房便座3では、待機状態において、熱源部材15は真空空間13aに覆われているため放熱を防ぐことができるため、表面材10aの温度を25°Cに維持するために熱源部材15に通電する時間が短くなり、消費電力量が低減される。
【0052】
また、従来の暖房便座において、図8に示すように、着座センサがOFFである場合における便座本体の設定温度を日本の平均気温程度である15°Cとすれば、消費電力量を小さくすることはできるものの、人が暖房便座に着座する時刻t2でも表面材の温度が40°Cに達し難く、それからしばらく経過した時刻t3でようやく表面材の温度が40°Cに達することとなり、便座本体の表面の温度が40°Cに達するのに時間がかかってしまう。
【0053】
なお、実施例1の洋風水洗式便器1では、人体検知センサ6により両電磁石20を作動させているが、人体検知センサ6と人の着座を検知可能な着座センサとを組み合わせて使用してもよい。例えば、ステップS5において、人体検知センサ6の代わりに着座センサを使用することが考えられる。
【実施例2】
【0054】
実施例2の暖房便座も実施例1と同様、図1に示す洋風水洗式便器1に使用される。ただし、図9及び図10に示す暖房便座30が用いられる。
【0055】
図9及び図10に示すように、暖房便座30は、便座本体30aと、便座本体30a内に配置され、通電により便座本体30aの表面を加熱可能なヒータ31とを備えている。
【0056】
ヒータ31は、通電によって発熱する板状の発熱体35を収納するハウジング32を有している。ハウジング32はケース本体34と蓋33とからなる。ケース本体34は低断熱材からなり、蓋33は高伝熱材からなっている。蓋33が便座本体30aの上面に面一になるように、便座本体30a内にハウジング32が嵌め込まれている。そのため、蓋33が便座本体30aの表面を構成している。
【0057】
発熱体35は、発熱体35に貼着された第1部材36とともに、ハウジング32内に固定されている。第1部材36は、高伝熱材からなる高伝熱部36aと、低伝熱材からなる低伝熱部36bとをストライプ状に交互に有している。ここで、発熱体35と高伝熱部36aとで熱源部材を構成している。
【0058】
蓋33と第1部材36との間には第2部材37が摺動可能に設けられている。第2部材37は、高伝熱材からなる高伝熱部37aと、低伝熱材からなる低伝熱部37bとをストライプ状に交互に有している。第2部材37の両端には第1ホルダ38及び第2ホルダ39が固定されている。
【0059】
第1ホルダ38内には、円筒状の電磁石40の外周面が固定されている。電磁石40には、一端をケース本体34に固定されたガイド棒42が挿通されている。そして、電磁石40はガイド棒42に沿って摺動可能になっている。ガイド棒42の一端には、磁性材料からなる磁性板41が固定されている。第1ホルダ38とケース本体34との間には、押圧バネ43が設けられている。
【0060】
また、第2ホルダ39には、一端をケース本体34に固定されたガイド棒44が挿通されている。この第2ホルダ39はガイド棒44に沿って摺動可能になっている。ここで、高伝熱部37aが伝熱性の高い高伝熱層であり、低伝熱部37bが伝熱性の低い低伝熱層である。また、電磁石40が駆動手段である。なお、電磁石40に通電するための導線は省略している。
【0061】
この洋風水洗式便器1では、実施例1と同様、図5(A)及び(B)に示す配線図を用いている。発熱体35は、図5に示す低温サーモスタット55、高温サーモスタット56及び抵抗体67を備えている。ただし、低温サーモスタット55と高温サーモスタット56とは抵抗体67に接続され、抵抗体67は電源プラグ58の他端に接続されている。また、電磁石リレー54の接点54aには電磁石40のコイル40aが接続されている。その他の構成は実施例1と同様である。
【0062】
以上の構成をした洋風水洗式便器1では、図示しない暖房便座の暖房スイッチがONにされると、実施例1と同様、図6に示すプログラムが起動する。なお、このプログラムが起動しない間は、低温リレー52、高温リレー53及び電磁石リレー54のすべてがOFFしており、抵抗体67及びコイル40aには電流は流れていない。そして、暖房便座30は図9に示す状態になっている。この状態において、高伝熱部36aと高伝熱部37aとは互いの当接面と平行な方向に離反した状態となっており、高伝熱部36aと低伝熱部37bとが互いに接触している。また、蓋33の温度は室温になっている。
【0063】
プログラムが起動すると、まずステップS1が実行される。ステップS1では、低温リレー52をONにする。これにより、接点52aが閉じる。そのため、接点52a及び低温サーモスタット55を経由して抵抗体67に通電され、抵抗体67の温度が上昇する。この際、低温サーモスタット55は25°Cに設定されている。これにより、抵抗体67の温度が25°Cになると、低温サーモスタット55がOFFし、抵抗体67への通電が停止される。また、抵抗体67の温度が25°Cより低くなると、再度、低温サーモスタット55がONになり、抵抗体67に通電される。このようにして、抵抗体67の温度は25°Cに維持される。
【0064】
ステップS2では、人が洋風水洗式便器1の使用を開始するまで待つ。人体検知センサ6がONしている場合(YES)、人が洋風水洗式便器1の使用を開始していると判断し、ステップS3を実行する。また、人体検知センサ6がOFFしている場合(NO)、人が洋風水洗式便器1の使用を開始していないと判断し、再度、ステップS2を実行する。
【0065】
ステップS3では、低温リレー52をOFFにし、高温リレー53をONにする。これにより、接点52aが開き、接点53aが閉じる。そのため、接点53a及び高温サーモスタット56を経由して抵抗体67に通電される。この際、高温サーモスタット56は40°Cに設定されている。これにより、抵抗体67の温度が40°Cになると、高温サーモスタット56がOFFし、抵抗体67への通電が停止される。また、抵抗体67の温度が40°Cより低くなると、再度、高温サーモスタット56がONになり、抵抗体67に通電される。このようにして、抵抗体67の温度は40°Cに維持される。
【0066】
ステップS4では、電磁石リレー54をONにする。これにより、接点54aが閉じ、コイル40aに通電され、電磁石40が磁化される。このため、電磁石40は、押圧バネ43の付勢力に抗して磁性板41に引き寄せられ、ガイド棒42に沿って磁性板41に向かって図面右方向に摺動する。そして、電磁石40、第1ホルダ38、第2部材37及び第2ホルダ39は各々固定されているため、第1ホルダ38、第2部材37及び第2ホルダ39も図面右方向に摺動する。こうして、暖房便座30は、図10に示すように、高伝熱部36aと高伝熱部37aとが接触する状態となり、急激に蓋33の温度が上昇する。そして、人が便座30に着座する時には、蓋33は十分な温度にまで上昇している。
【0067】
ステップS5では、人が洋風水洗式便器1の使用を終了するまで待つ。人体検知センサ6がONしている場合(YES)、人が洋風水洗式便器1を未だ使用中であると判断し、再度、ステップS5を実行する。人体検知センサ6がOFFしている場合(NO)、人が洋風水洗式便器1の使用を終了したと判断して、ステップS6を実行する。
【0068】
ステップS6では、高温リレー53をOFFにし、低温リレー52をONにする。これにより、接点53aが開き、接点52aが閉じる。そのため、接点52a及び低温サーモスタット55を経由して抵抗体67に通電される。そして、ステップS1と同様、低温サーモスタット55の働きにより、抵抗体67の温度は25°Cに維持される。
【0069】
ステップS7では、電磁石リレー54をOFFにする。これにより、接点54aが開き、コイル40aの通電が停止され、電磁石40が消磁される。このため、第2ホルダ39は押圧バネ43の付勢力によってガイド棒44に沿って図面左方向に摺動する。そして、電磁石40、第1ホルダ38、第2部材37も図面左方向に摺動する。こうして、図9に示すように、高伝熱部36aと高伝熱部37aとは互いの当接面と平行な方向に離反した状態となる。ステップS7実行後、ステップS2に戻る。
【0070】
なお、暖房便座の暖房スイッチがOFFにされると、このプログラムの実行が停止する。プログラムの実行が停止すると、低温リレー52、高温リレー53及び電磁石リレー54のすべてがOFFし、抵抗体67及びコイル40aに電流が流れることはない。
【0071】
こうして、実施例2の暖房便座30においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0072】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は洋風水洗式便器等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例1、2に係り、洋風水洗式便器の正面図である。
【図2】実施例1、2に係り、洋風水洗式便器の平面図である。
【図3】実施例1の暖房便座に係り、待機状態における図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】実施例1の暖房便座に係り、使用状態における図2のIII−III矢視断面図である。
【図5】実施例1、2の暖房便座の配線図である。
【図6】実施例1、2の暖房便座のフローチャートである。
【図7】実施例1、2の暖房便座に係り、時間と暖房便座の表面の温度との関係を示すグラフである。
【図8】比較例の暖房便座に係り、時間と暖房便座の表面の温度との関係を示すグラフである。
【図9】実施例2の暖房便座に係り、待機状態における図2のIII−III矢視断面図である。
【図10】実施例2の暖房便座に係り、使用状態における図2のIII−III矢視断面図である。
【符号の説明】
【0075】
3、30…暖房便座
10、30a…便座本体
10a、33…表面材(33…蓋)
11、31…ヒータ
15、35、36a…熱源部材(35…発熱体、36a…高伝熱部)
13、37a…高伝熱層(13…蓋、37a…高伝熱部)
13a、37b…低伝熱層(13a…真空空間、37b…低伝熱部)
20、40…駆動手段(電磁石)
23、43…押圧バネ
6…人体検知センサ
12、32…ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座本体と、該便座本体内に配置され、通電により該便座本体の表面を加熱可能なヒータとを備えた暖房便座において、
前記ヒータは、通電によって発熱し、設定温度が維持される熱源部材と、伝熱性が高く、前記便座本体の表面に伝熱可能な高伝熱層と、伝熱性の低い低伝熱層と、前記熱源部材が該高伝熱層に接触している状態と該低伝熱層に覆われている状態とを切り替える駆動手段とを有することを特徴とする暖房便座。
【請求項2】
前記駆動手段はバネの付勢力に抗して作動する電磁石であることを特徴とする請求項1記載の暖房便座。
【請求項3】
前記駆動手段は、人の接近を検知可能な人体検知センサ又は人の着座を検知可能な着座センサにより作動するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の暖房便座。
【請求項4】
前記熱源部材と前記高伝熱層とは、前記低伝熱層を存在させずに接触可能であるとともに、該低伝熱層を存在させて離反可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の暖房便座。
【請求項5】
前記低伝熱層は真空空間であることを特徴とする請求項4記載の暖房便座。
【請求項6】
前記熱源部材と前記高伝熱層とは互いの当接面と直角の方向に離反するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の暖房便座。
【請求項7】
前記低伝熱層は断熱材からなることを特徴とする請求項4記載の暖房便座。
【請求項8】
前記熱源部材と前記高伝熱層とは互いの当接面と平行な方向に離反するように構成されていることを特徴とする請求項7記載の暖房便座。
【請求項9】
前記ヒータは前記熱源部材を収納するハウジングを有し、該ハウジングの外面のうち少なくとも該熱源部材側には断熱材が設けられていることを特徴とする請求項6又は8記載の暖房便座。
【請求項10】
前記熱源部材は、前記低伝熱層と接触している場合の前記設定温度が前記高伝熱層と接触している場合の該設定温度より低くされていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の暖房便座。
【請求項11】
前記便座本体の表面が樹脂製の表面材によって形成されている場合、該表面材の裏面に前記高伝熱層を接触させていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の暖房便座。
【請求項12】
便座本体と、該便座本体内に配置され、通電により該便座本体の表面を加熱可能なヒータとを備えた暖房便座において、
前記ヒータは、通電によって発熱し、設定温度が維持される熱源部材と、伝熱性が高く、前記便座本体の表面に伝熱可能な高伝熱層と、伝熱性の低い低伝熱層とを有し、
該熱源部材が該高伝熱層に接触し、該便座本体の表面の裏側を暖める状態と、該熱源部材が該低伝熱層に覆われ、放熱を抑える状態とをとり得ることを特徴とする暖房便座。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate