説明

曲げ剛性が変化する2点固定熱アクチュエータ

2点固定熱アクチュエータは、相対する固定部分を有するくぼみ部が形成されたベース素子を含む。ベース素子に、相対する固定端縁において接合されている変形素子は熱膨張率が低い第一の材料の第一の層と、熱膨張率が高い第二の材料の第二の層を含む平坦の積層構造として構成される。変形素子は、固定端縁の付近に固定部分を有し、固定部分の間に中央部分を有し、固定部分の曲げ剛性は中央部分の曲げ剛性より実質的に低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、微小電気機械デバイス、特に、インクジェットデバイスおよびその他の液滴吐出装置に使用されるタイプ等の微小電気機械熱アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(MEMS)は、比較的最近開発された技術である。このようなMEMSは、アクチュエータ、弁、ポジショナをはじめとする従来の電気機械デバイスに代わるものとして使用されている。微小電気機械デバイスは、超小型電子加工技術を使用できるため、低コストで実現できる。MEMSデバイスの小型さから、新規な用途も発見されつつある。MEMS技術の用途として考えられるものの多くは、熱作動を利用して、そのデバイスに必要な動作を実現する。たとえば、多くのアクチュエータ、弁、ポジショナは、動作のために熱アクチュエータを使用している。ある用途では、パルス運動が必要とされる。たとえば、第一の位置から第二の位置に高速で移動し、その後アクチュエータが第一の位置に復帰するという運動を使い、液体中に圧力パルスを発生させ、あるいは機構を作動パルス1個につき1単位距離または1回転だけ進めることができる。ドロップ・オン・デマンド方式の液滴吐出装置は、個別の圧力パルスを使って、ノズルから別々の量の液体を噴出させる。
【0003】
ドロップ・オン・デマンド(DOD)方式の液体吐出デバイスは、長年にわたり、インクジェット印刷システムのインク印刷装置として知られている。初期のデバイスは、カイザー等の米国特許第3,946,398号およびステムの米国特許第3,747,120号において開示されているような圧電アクチュエータに基づくものであった。
【0004】
宮田等は米国特許第5,754,205号と第5,922,218号において、圧電式インクジェット液滴生成装置の効率的な構成を開示している。これらの開示は、液滴生成装置の長方形の液体圧力室の上に可撓性の柔らかい隔膜層を形成し、その後、隔膜の上に長方形の圧力室と整合させて板状の圧電膨張部を形成することによって積層圧電変換器を構成することを教示する。開示された実験データは、圧電板が隔膜層によって覆われている圧力室の長方形の開口部の幅より幾分狭いと、圧電積層体の変位量が大きくなることを示している。宮田特許‘205号と宮田特許‘218号の開示は、(110)格子面に沿ってカットされたシリコン基板の使用と、圧力室が<112>格子方向に沿って配置される点に関する。
【0005】
現在人気の高いインクジェット印刷形態であるサーマルインクジェット(または「バブルジェット(登録商標)」)は、原等の米国特許第4,296,421号において開示されているように、電気抵抗ヒータを用いて気泡を発生させ、それによって液滴を吐出させる。電気抵抗ヒータのアクチュエータは、十分に開発の進んだ微小電気機械工程を使って製造できるため、圧電アクチュエータと比較して、製造コスト面で有利である。その反面、サーマルインクジェット液滴吐出機構は、インクに気化性成分を含める必要があり、局所的にインク温度がこの成分の沸点以上に上昇する。このような高温にさらされることから、インクや、サーマルインクジェットデバイスによって高い信頼性で吐出されるその他の液体の調合に厳しい制約が加わる。一方、圧電式デバイスの場合、液体は機械的に加圧されるため、噴射可能な液体がこのように厳しく制約されることがない。
【0006】
インクジェットデバイス供給者が実現させてきた有用性、コストおよび技術的性能の改善によっても、液体の微量計量を必要とするその他の用途にこのデバイスを応用することに対する関心が高まっている。このような新たな用途としては、ピース等の米国特許第5,599,695号において開示されている微量分析化学物質のための特殊化学薬品の定量吐出、ナカ等の米国特許第5,902,648号で開示されている電子デバイス製造のための被覆材料定量吐出、プサロ等の米国特許第5,771,882号において開示されている薬品吸入療法のための微小液滴定量吐出等がある。最高品質の画像印刷のためだけでなく、液体定量吐出が超微小滴の単分散、正確な着弾位置とタイミングおよび微量増分を必要とする新たな用途のためにも、さまざまな種類の液体の微小液滴をオン・デマンドで吐出可能なデバイスと方法が必要である。
【0007】
広範な種類の調合の液体に使用できる微小液滴吐出と液体用マイクロバルブを低コストで実現する方法が求められている。サーマルインクジェットに使用される超小型電子加工技術の利点に圧電機械デバイスで利用可能な液体組成の自由度を複合させた装置が必要である。
【0008】
熱機械アクチュエータを使用するDODインクジェットデバイスは、的場等の米国特許第5,684,519号において紹介された。このアクチュエータは、インク室の中の、インク吐出ノズルの反対に配置された単独の電気抵抗材料で構成された薄い梁として構成される。電流が梁を通過すると、梁は圧縮熱機械力によって曲がる。梁は、製造中にノズルの方向にたわむ形状へと予め曲げられており、熱機械的な曲がりが常に予め曲げられた方向に生じる。
【0009】
K.シルバーブルックは、米国特許第6,067,797号、第6,087,638号、第6,239,821号、第6,243,113号において、熱機械的DODインクジェットの構成を開示している。超小型電子加工工程を使用した熱機械的インクジェットデバイスの製造方法は、K.シルバーブルックの米国特許第6,180,427号、第6,254,793号および第6,274,056号において開示されている。開示された熱アクチュエータは、熱膨張率が実質的に異なる層の間で熱モーメントが生成されるバイレイヤカンチレバー型である。加熱により、カンチレバー型マイクロビームは熱膨張率の高いほうの層から遠ざかるように曲がり、自由端を曲げ、液滴を吐出させる。
【0010】
熱膨張する電気抵抗層としてチタンアルミナイド金属間化合物等、特に有効な材料の組み合わせを使用した熱機械アクチュエータについての開示がいくつか行われてきた。たとえば、ジェロルド等の米国特許第6,561,627号、レーベンス等の米国特許第6,631,979号、カバル等の米国特許第6,598,960号である。後者2件の米国特許はさらに、梁型アクチュエータの長さの一部を加熱することによってエネルギー効率を改善したカンチレバー型の熱アクチュエータを開示している。
【0011】
カバル等は、公開米国特許広報2003/0214556号において、「スナップ・スルー」モードで動作する2点固定両持ち梁型熱アクチュエータを開示している。この開示では、梁を半硬質の状態に固定することによって、スナップ・スルーモードが実現できることが教示されている。
【0012】
熱機械的に作動する液滴吐出装置は、超小型電子加工材料と設備を使って大量生産が可能である上に、サーマルインクジェットデバイスでは信頼性の高い動作ができない液体を利用できるため、低コストのデバイスとして将来性が大きい。熱サイクル二層構成によって、大きく、信頼性の高い力による動作が実現される。しかしながら、熱アクチュエータ型の液滴吐出装置の動作には、高い液滴繰り返し周波数において、過熱を防止するよう、液滴噴射に必要なエネルギーに注意する必要がある。液滴生成は、ノズル内の液体において大きな圧力インパルスを生成することに依存している。したがって、力と容積変位をなるべく大きくするような構成と設計のものが、より効率的に動作し、粘性と濃度の高い液体にも使用できる。
【0013】
二流体用マイクロバルブは開状態から閉状態への高速遷移の利点を利用して、中間圧力状態の時間をなるべく短くする。エネルギー効率が改善された熱機械アクチュエータを用いることで、より頻繁な作動が可能となり、動作状態に保たれたときのエネルギー消費量が低減する。バイナリマイクロスイッチの場合も、マイクロバルブと同様に、熱アクチュエータの特性の改善による利益が得られる。
【0014】
熱機械アクチュエータの設計としては、梁または平板を、その両端縁でデバイス構造に固定し、中央で外側に曲がり、梁または平板の名目上の休止面に対して垂直な機械的動作を可能にするものが有益である。少なくとも2つの相対する端縁に沿って固定された熱機械梁は、2点固定による熱アクチュエータと呼ばれる。このような熱アクチュエータの可動部材の構成を本明細書において変形素子と称し、その平面形状と周辺固定量はさまざまで、たとえば、変形素子の周辺全体が固定されるものもある。このような多点固定の変形素子のすべても本発明の構成に含まれ、「2点固定」の用語の範囲内に含まれるものとする。
【0015】
変形素子の変形は、変形素子の平面内で熱膨張効果を生じさせることによって起こる。変形素子の材料の体積の膨張収縮および変形素子の厚さ内での勾配は、熱機械アクチュエータの設計において有益である。このような膨張勾配は、温度勾配あるいは変形素子全体の中で実際の材料を変更すること、つまり層によって生じる。こうした体積と勾配による熱機械効果を一緒に使って、所定の変位量で所定の方向に曲がることによって動作するアクチュエータが設計される。
【0016】
さまざまな種類の流体を使って、高い周波数で作動させ、MEMS製造方法によって製造することが可能なシステムを構築するために、容認可能なピーク温度で動作でき、その一方で大きな力と加速度が得られる2点固定熱アクチュエータが求められる。エネルギー効率を大幅に改善する設計上の特徴は、MEMSに基づく熱アクチュエータとそれに設置される電子機器の商業的利用にとって有益である。
【0017】
【特許文献1】米国特許第3747120号明細書
【特許文献2】米国特許第3946398号明細書
【特許文献3】米国特許第4296421号明細書
【特許文献4】米国特許第5599695号明細書
【特許文献5】米国特許第5684519号明細書
【特許文献6】米国特許第5754205号明細書
【特許文献7】米国特許第5771882号明細書
【特許文献8】米国特許第5902648号明細書
【特許文献9】米国特許第5922218号明細書
【特許文献10】米国特許第6067797号明細書
【特許文献11】米国特許第6087638号明細書
【特許文献12】米国特許第6180427号明細書
【特許文献13】米国特許第6254793号明細書
【特許文献14】米国特許第6274056号明細書
【特許文献15】米国特許第6345424号明細書
【特許文献16】米国特許第6561627号明細書
【特許文献17】米国特許第6598960号明細書
【特許文献18】米国特許第6631979号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2003/0214556号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の目的は、大きな力と加速度を得ることができ、過剰なピーク温度を必要としない2点固定熱アクチュエータを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、2点固定熱アクチュエータにより作動される液滴吐出装置を提供することである。
【0020】
本発明のまた別の目的は、2点固定熱アクチュエータにより作動される、液体用マイクロバルブを提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、2点固定熱アクチュエータにより作動される、電気マイクロスイッチを提供することである。
【0022】
本発明の上記およびその他多数の特徴、目的、利点は、本明細書の詳細な説明、特許請求範囲および図面を読み、参照すれば容易にわかるであろう。これらの特徴、目的、利点は、相対する固定端縁を有するくぼみ部が形成されたベース素子を備える微小電気機械デバイスのための2点固定熱アクチュエータを構成することによって実現される。相対する固定端縁においてベース素子に固定され、第一の位置にある変形素子は、低い熱膨張率を有する第一の材料の第一の層と高い熱膨張率を有する第二の材料の第二の層とを含む平坦積層体として構成される。変形素子は、固定端縁に隣接する固定部分と固定部分の間の中央部分を有し、固定部分の曲げ剛性は、中央部分の曲げ剛性より実質的に低い。2点固定熱アクチュエータはさらに、変形素子に熱パルスを印加することによって変形素子の温度を急上昇させる装置を備える。変形素子は、第二の層の方向へと外側に曲がって第二の位置に移行し、温度が下がると、弛緩して第一の位置に移行する。
【0023】
本発明は、DODインクジェット印刷に使用される液滴吐出装置のための熱アクチュエータとして特に有益である。この好ましい実施形態の場合、2点固定熱アクチュエータは液体を吐出するためのノズルを備える液体封入室の内部にある。2点固定熱アクチュエータの変形素子に熱パルスを印加することにより、変形素子はノズル方向に急速に曲がり、液体をノズルから押し出す。
【0024】
本発明は、高速の圧力切り替えを必要とする液体測定装置もしくはシステムにおいて使用される液体用マイクロバルブのための熱アクチュエータとして有益である。この好ましい実施形態の場合、2点固定熱アクチュエータは、液流ポートを備える液体封入室の中にある。2点固定アクチュエータは、本発明によるノーマリーオープン弁またはノーマリークローズ弁の実施形態のための液流ポートを開閉するように動作する。2点固定熱アクチュエータの変形素子に熱パルスを印加することにより、まず、液流ポートを開閉するように構成された曲がりが生じる。
【0025】
本発明はまた、電気回路の制御に使用される電気的マイクロスイッチのための熱アクチュエータとしても有益である。この好ましい実施形態の場合、2点固定熱アクチュエータは、スイッチ電極と接触、切断し、外部回路の開閉を行う制御電極を作動させる。2点固定熱アクチュエータの変形素子に熱パルスを印加することにより、マイクロスイッチを開閉するように構成された曲がりが生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を、その特定の好ましい実施形態を特に参照しながら詳細に説明しているが、本発明の範囲内で変更や改変を加えることができると理解されるであろう。
【0027】
以下に詳細に説明するように、本発明は、2点固定熱アクチュエータ、ドロップ・オン・デマンド液滴吐出デバイス、ノーマリークローズおよびノーマリーオープンマイクロバルブ、ノーマリークローズおよびノーマリーオープンマイクロスイッチのための装置を提供する。このようなデバイスのうち最もよく知られているものが、インクジェット印刷システムの印刷ヘッドにおいて使用されている。その他にも、インクジェット印刷ヘッドと同様のデバイスを利用しているが、インク以外の液体を精密に計量し、高い空間精度で着弾させることが必要なデバイスを使う色々な用途が出現している。インクジェットおよび液滴吐出装置という用語は、本明細書においては互換的に使用される。以下に説明する発明によれば、各種の液体特性に関する液滴吐出性能が改善された熱機械アクチュエータに基づく液滴吐出装置が提供される。さらに本発明によれば、エネルギー効率が改善されたマイクロバルブとマイクロスイッチも実現する。
【0028】
本発明の発明者は、変形素子を締着、あるいは2点固定するタイプのマイクロ熱アクチュエータは、変形素子の曲げ剛性を固定端縁近辺の部分で低下させれば、そのエネルギー効率を大幅に改善できることを発見した。加熱された多層変形素子は、熱膨張率が最も高い層の方向に曲がる。加熱を中央部分に集中させ、変形素子の曲げ剛性を、締着されている場所と端縁付近で低下させることによって、所与の量の熱入力エネルギーで、より大きな曲げが実現される。
【0029】
図1は、従来の2点固定熱アクチュエータの側面図である。変形素子20は、2つの相対する固定端縁14においてベース素子10に固定される。図の変形素子は、第一の層22と第二の層24の2層でなる薄い梁である。第一の層22は、酸化シリコンもしくは窒化シリコン等、熱膨張率が低い材料で構成される。第二の層24は、金属等、熱膨張率が高い材料で構成される。図1(a)は、通常の動作温度で休止している変形素子20を示す。図に示す従来の熱アクチュエータにおいて、第二の材料は、図中、はんだバンプ43,45とTAB接合リード41,46として図示されている電気接続を通じて層24に電流が流れると自己発熱するチタンアルミナイド等の電気抵抗金属である。電流の供給によって変形素子を加熱することにより、図1(b)に示すように、変形素子は熱膨張率が高い層24の方向に変形する(曲がる、あるいはゆがむ)。
【0030】
図2(a)と図2(b)は、本発明による2点固定熱アクチュエータ15の側面図である。図2(a)において、2点固定熱アクチュエータは休止位置である第一の位置にある。図2(b)では、第二の層24における電気抵抗材料を通過する電流によって変形素子が加熱され、温度が上昇し、その結果、変形素子が曲がり、あるいはゆがみ、第二の平衡形状となっている。第二の層24は、固定部分24aと中央部分24cを有するよう図示されている。本発明の重要な態様は、変形素子の曲げ剛性が、中央部分の19の曲げ剛性に対して、固定部分18では固定端縁14の近辺で低減されていることである。機械的剛性の低減は、固定部分18の曲げ剛性が変形素子20の中央部分19の曲げ剛性より少なくとも20%低いと、実質的であるといわれる。
【0031】
図2には、第二の層24の上に形成される第三の層26もまた示されている。この層は、2点固定熱アクチュエータの具体的な用途に応じてさまざまな機能を有する。液滴吐出装置もしくはマイクロバルブに使用される場合、第三の層26は適当な耐薬品性と電気的絶縁特性を有するパシベーション層となる。マイクロスイッチの用途の場合、第三の層26は絶縁性を有する副層と導電性を有する副層を含む多層構造とすることができる。第三の層26は、第二の層24における第一の層22とは反対側に形成されるため、その曲げ剛性が変形素子の熱による曲がりの妨げにならないことが重要である。第三の層26は通常、第一の層22または第二の層24より実質的に薄く、また実現可能であれば非常に低いヤング係数を持つ材料を使って構成される。
【0032】
図2において、変形素子20は三層で構成されるように図示されている。本発明の現実的な実施態様には、製造上の理由、あるいは追加の保護およびパシベーションのためにさらに層を追加したものもある。また、図の層のいずれかを性能の改善または製造上の利点のために、複数の副層で構成することも可能であることがわかる。本発明のすべての実施形態に共通する特徴は、熱膨張率が実質的に異なる第一と第二の層22,24を有し、その結果、加熱されたときに熱機械変形が発生することである。これら以外の層、たとえば被覆層26を追加し、信頼性の改善をはじめとするさらに別の有利な機能を提供することができる。
【0033】
本発明のいくつかの好ましい実施形態について、第二の層の中央部分を形成する材料より実質的に小さなヤング係数を有する材料を使って第二の層の固定部分を構成することによって、固定部分の剛性を低くすることができる。たとえば、第二の層24の固定部分24aはアルミニウムで、中央部分24cはチタンアルミナイドでそれぞれ形成することができる。変形素子の中央部分と比較して固定部分の剛性を低くするためのその他の方法には、変形素子の固定部分の層を薄くする、あるいはその有効幅を狭める等の方法がある。
【0034】
図2および本願の他の図に示される2点固定熱アクチュエータ15の形状は、一般的なマイクロビーム構造の正しい縮尺比とはなっていない。通常、第一の層22と第二の層24は厚さ数ミクロン(μm)であり、2点固定変形素子20の長さは100ミクロン(μm)以上、一般には300ミクロン(μm)以下である。
【0035】
変形素子の挙動の根拠となる物理的過程の理解は、2つの固定点で支持される梁に適用される偏部分方程式の分析によって深められる。本明細書で使用する座標と幾何学パラメータは図2に示されている。変形素子20は、相対する固定端縁14で基板10に固定される梁である。変形素子に沿った軸は“χ”とされ、左側の固定端縁14ではχ=0、変形素子の中央においてはχ=L、右側の固定端縁14ではχ=2Lである。さらに、変形素子の固定部分18と中央部分19の間の境界は、各固定端縁から距離Laの位置にある。固定部分と中央部分の境界は、現実的に構成された本発明による変形素子が中央部分の実効値から固定部分の有効部分にかけて剛性が変化する有限移行領域を有するという点で、おおよそのものであると理解すべきである。梁の、χ軸に垂直なたわみをf(χ)とする。図の対称梁の変形は、中心に関して対称であるため、軸を外れた最大たわみ、fmaxは、χ=Lの位置で発生し、fmax=f(L)となる。
【0036】
図の変形素子20は、厚さhの第一の層22と厚さh2の第二の層24を含む。相対する固定端縁14の間のマイクロビームの長さは2Lである。現実的に構成された梁は、有限幅wを有する。図2の側面図では、幅の寸法が示されない。幅は変形素子全体を通じて均一な構成に関する本発明を理解する上で、幅の寸法は重要ではない。しかしながら、本発明のいくつかの好ましい実施形態について、変形素子の幅、あるいは変形素子のいくつかの層の幅は、曲げ剛性を低下させるために固定部分で狭められる場合もある。
【0037】
図2のχ軸は、相対する固定端縁の位置14の間の空間に示されている。χ軸は、本願において、変形素子20の中心平面と言われる場所にある。この平面は、残留変形や曲がりのない、フラットな状態の変形素子の位置を示す。
【0038】
振動梁の微小振動の標準的方程式は
【数1】

であり、この式とともに各種の標準的境界条件が使用される。ここで、χは梁の長さに沿った空間軸、tは時間、u(χ,t)は梁の変位、ρは梁の密度、hは厚さ、wは幅、Εはヤング係数、σはポアソン比である。梁の曲げ剛性Dは式(1)の第2項において、材料特性Eとσ、幾何学パラメータhとw、形状係数1/12によって捉えられる。曲げ剛性は次のとおり。
【数2】

【0039】
多層構造による梁の場合、物理的定数はすべて有効パラメータであり、各種の層jの物理的定数の重み付け平均として計算される。
【数3】

αjはj番目の層の熱膨張率、αは多層構造による梁の有効熱膨張率である。
【0040】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、ひとつまたは複数の層jの幅は、変形素子20の中央部分19と比較して固定部分18において実質的に狭められる。したがって、有効ヤング係数Eは、上記式(4)において、各層についてj番目の層の個々の幅wjiのヤング係数Ejiの総和を出し、変形素子の全体の幅wによって正規化することによって計算される。たとえば、層の幅が半分に減らされると、その層の有効ヤング係数Eはバルク材のヤング係数の数値の半分に減少する。この例において、各層の有効幅が異なることを考慮し、幅が均一な変形素子のモデルを使って、次の分析を行うことができる。固定部分18の全幅wが中央部分の幅wより狭い場合、これは、分析において、式(2)で曲げ剛性D、式(4)で層の有効ヤング係数の数値Eをそれぞれ評価する場合、wにそれぞれの全幅wまたはwを使うことによって説明される。
【0041】
標準的方程式(1)を、加熱による梁の圧縮または膨張、残留ひずみ、および取付け具の連結によって梁端部にかかるモーメントによる境界条件を含めた、他のいくつかの物理的影響を説明するように補正する。
【0042】
拘束されたマイクロビームを加熱することによる最初の影響は、圧縮応力である。加熱されたマイクロビームは、拘束されていなければ膨張する。梁が膨張しないように拘束する際、取付け具の連結がマイクロビームの相対する固定端14の間の部分を圧縮する。マイクロビームの変形していない形状について、この熱によって誘発される応力は、式(1)に以下の形の項を追加することによって表される。
【数4】

上記の式(10)において、αは式(7)で得られた平均熱膨張率、Tは温度である。このような項は、均一に圧縮された梁を示す。
【0043】
しかしながら、マイクロビームは均一に圧縮されない。これは変形し、外側にたわみ、変形によって圧縮が緩和される。マイクロビームの局所展開は次のとおり。
【数5】

【0044】
式(11)の右辺は、式の左辺の完全式のテイラ展開における初項である。ここでは、右辺の項は局所展開の近似値として使用されているが、これは、関係する変形量が非常に小さいため、妥当である。式(10)のテイラ近似を使い、熱により誘発された正味局所ひずみは次のとおり。
【数6】

その結果生じる応力の垂直成分は次のとおり。
【数7】

【0045】
したがって、梁の微小振動の全体の数理モデルは次のとおり。
【数8】

【0046】
本発明を解釈する上で、梁は、図2(a)と図2(b)において休止位置と変形後の平衡位置によって示される曲がり動作を起こすように設計された、時間依存温度周期T(t)を周期的に繰り返すように作られているため、さまざまな形状をとる。分析を進めるために、熱平衡でu(χ,t)=f(χ)とする。つまり、f(χ)は、所与の温度Tにおける梁の平衡状態の非時間変動形状である。
【0047】
式(14)を一定の温度Tにおける平衡形状f(χ)で再計算すると、次の微分方程式が得られる。
【数9】

式(15)の第二項を微分すると、以下が得られる。
【数10】

【0048】
分析を進めるために、変形素子の加熱、熱モーメントcTの発生および、たとえば液滴吐出装置における作用液の背圧、マイクロバルブの弁座の作用、またはマイクロスイッチを閉じることによって発生する負荷Pを導入することが役立つ。本発明を単純化するために、加熱と負荷はどちらも、その大部分が変形素子の中央部分19、つまり図2においてx軸に沿って固定端縁14からLまでの固定部分18の間の部分にかかる、という仮説を立てる。
【0049】
本発明では、変形後の素子の温度が上昇したときに発生する膨張による曲がりの予め偏向された方向に反して作用する内部熱機械力が発生する必要がある。この必要な力を得るために、異なる熱機械特性、特に実質的に異なる熱膨張率を有する材料を含む異質の構造、一般的には平坦積層体を設計する。図2に示される二層素子の場合、第一の層22と第二の層24の熱膨張率が実質的に異なり、その一方で各々のヤング係数の数値が同程度の場合、上昇した温度Tにおいて、大きな熱モーメントcTが発生する。
【0050】
熱モーメントの作用によって構造が曲がり、熱膨張率が大きい層が曲がりの外側となる平衡形状となる。したがって、第二の層24の熱膨張率が第一の層22のそれより実質的に大きいと、熱モーメントの作用により、変形素子20は図2において上方向に曲がる。
【0051】
二次元積層構造の熱モーメント係数cは、積層構造を形成する層の材料の特性と厚さからわかる。
【数11】

ただし、yは上記の式(9)から得られる。
【0052】
変形素子の特性、加熱および使用荷重がχ=Lを中心に対称であるかぎり、「ハーフビーム」、つまりχ=0からLまでの区間の積分方程式を分析することにより、変形素子20全体の挙動を知ることができる。本発明は、変形素子の中央を中心として特性と力が対称であるという単純化のための仮説を立てることによって理解できるであろう。そこで、ここで、方程式16を図2の変形素子20に当てはめるが、変形素子20の特性と力は、空間範囲χ=LからLまでの中央部分19の数値と比較して、空間範囲χ=0からLまでの固定部分18は異なる数値を有する。これは、対称の変形素子20の「左」側である。右側は、左側の分析結果と対称の結果を示す。
【0053】
上記の方程式を図2の変形素子20の左側に適用すると、以下の均衡微分方程式と一連の関連する境界条件によって、周辺温度より高い特定の平衡温度Tについての変形素子の曲がりまたは形状f(χ)を説明することができる。
【数12】

ここで、添字(ラベル: label)“a”は、χ=0からχ=Lまでの固定部分18、標識“c”はχ=LからLまでの中央部分19を示す。負荷Pは、中央部分19にのみかかるものと仮定する。P=0,P=P(χ),χ=L〜Lである。
【0054】
適用可能な境界条件は、
【数13】

であり、χ=Lの移行部においては、
【数14】

となる。
とDは、変形素子20のそれぞれ固定部分18と中央部分19の曲げ剛性係数である。
【0055】
χ=0,L,Lでの境界条件による上記の非線形微分方程式は数学的に、以下のような変数xの変換を用いることによって、より容易に解くことができる。
【数15】

これらの変換により、新たな区間[0,L]について、すべての境界条件が左端(z=0)に、また固定部分から中央部分までの移行部におけるすべての条件が右端(z=L)に畳み込まれる(collapse)。その結果として以下の境界値の問題が生じる。
【数16】

付随する境界条件は、以下のように変換される。
【数17】

【0056】
上記の方程式は、非線形常微分方程式を解くための計算ソフトウェア、アッシャー、クリスチャンセン、ラッセルによるCOLSYSを使って数値的に解いた。この計算のサブルーチンは、インターネットのウェブサイト、www.netlib.orgに掲載されている。
【0057】
好ましい材料と層の厚さの設計例のモデルを、数値的計算により作成した。この例による変形素子は、5層により構成される。第一の層22は、2つの副層、つまりβシリコンカーバイド(β−SiC)で形成された厚さ0.3μmの副層22aと酸化シリコン(SiO2)で形成された厚さ0.2μmの副層22bで構成した。第二の層24は、層24の中に部分24aと24cとしてアルミニウム(Al)またはチタンアルミナイド(TiAl)の2つの材料によって、厚さ1.5μmに形成したもので構成し、固定部分18と中央部分19について異なる特性を持たせた。第三の層26は2つの副層、つまり、酸化シリコン(SiO2)で形成された厚さ0.5μmの副層26aとテフロン(登録商標)、つまりPTFEで形成された厚さ0.3μmの副層26bによって構成した。
【0058】
モデルとして作られた変形素子は、全体の厚さが3.8μmとなった。全体の長さ2Lは300μmであり、幅はすべての層で等しく、30μmであった。有効ヤング係数、密度および熱膨張率の数値は、上記の方程式3から9を使って計算できる。モデル計算に使用した材料の数値と計による実効パラメータを表1に示す。
【表1】

【0059】
第二の層24の固定部分24aの2つのモデル構成を作り、計算した。ケース1は、固定部分24aにアルミニウムを使用したもの、ケース2は、固定部分24aにチタンアルミナイドを使用したものである。どちらのモデル構成も、変形素子20の中央部分19の材料配置は同じで、第二の層24の中央部分24cはチタンアルミナイドとした。変形素子20の中央部分19の熱モーメント率は、式(17)から、表1のパラメータを使い、c=0.0533cm−1−1と算出された。
【0060】
第二の層24全体を通じてチタンアルミニウムを使用したケース2のモデル構成の場合の式(25)〜(30)の数値的解を曲線で表したものが図3である。これらの曲線は、中央部分19を周辺温度から100℃の温度Tまで加熱した後の変形素子20の左側の平衡形状f(χ)を計算したものである。変形量f(χ)は、変形素子に沿った位置χとしてミクロン(μm)単位で表わされる。変形した素子20の形状は対称で、右側は相補的形状を有するものと仮定する。最大変形fmaxは、梁の中央、χ=150μmで発生する。
【0061】
各曲線210から222は、固定部分から中央部分への移行の異なる位置、つまりLの異なる数値をグラフにしたものである。各曲線に関するLの数値は以下のとおりである。曲線210(L=5/6L)、曲線212(L=4/6L)、曲線214(L=3/6L)、曲線216(L=2/6L)、曲線218(L=1/4L)、曲線220(L=1/5L)、曲線222(L=1/6L)。
【0062】
このケース2の構成において、変形素子20の固定部分18と中央部分19は、同じ機械的特性を有する。したがって、最大変形量が異なるのは、中央部分だけが加熱され、中央部分だけに負荷Pがかかるという仮定による。この仮定は、ヒータが中央部分においてのみ有効となるようパターン化され、負荷が変形素子20の中央に最も大きな抵抗を与えるよう構成されているケースを近似するものである。後者の条件は、液滴生成装置において、後の図7,8に示される砂時計形の液体封入室によって実現される。液体封入室は変形素子20の中央部分19の周辺で最も収縮するため、液体のほとんどの背圧負荷が中央部分19にかかる。図3のグラフを良く見ると、ケース2の場合、最大変形量を最大限にするLの最適値があることがわかる。つまり、L=1/4Lのときfmax≒2.27μmである。
【0063】
第二の層24の固定部分24aにアルミニウム、中央部分24cにチタンアルミナイドを使用したケース1のモデル構成の場合の式(25)〜(30)の数値的解を曲線で表したものが図4である。これらの曲線は、中央部分19を周辺温度から100℃の温度Tまで加熱した後の変形素子20の左側の平衡形状f(χ)を計算したものである。変形量f(χ)は、変形素子に沿った位置χとしてミクロン(μm)単位で表わされる。変形した素子20の形状は対称で、右側は相補的形状を有するものと仮定する。最大変形fmaxは、梁の中央、χ=150μmで発生する。
【0064】
各曲線230から236は、固定部分から中央部分への移行の異なる位置、つまりLの異なる数値をグラフにしたものである。各曲線に関するLの数値は以下のとおりである。曲線230(L=5/6L)、曲線232(L=4/6L)、曲線234(L=3/6L)、曲線236(L=2/6L)。
【0065】
このケース1の構成の場合、変形素子20の固定部分18と中央部分19の機械的特性は異なる。特に、固定部分について、ケース2と比較してケース1は剛性が低い。これは、表1における有効ヤング係数の数値を比較することによって評価される。ケース1では、有効ヤング係数は114Gpaであり、ケース2の有効ヤング係数、194GPaより約40%低い。図4の曲線230〜236により示されるように、最大変形量が異なるのは、固定部分18の曲げ剛性が低いことと、中央部分だけが加熱され、中央部分だけに負荷Pがかかるとの仮定によるものである。
【0066】
ケース1の変形素子の最大変形量は、L=1/3Lでfmax≒2.69μmである。固定部分の曲げ剛性を40%低減することにより、最大変形量は18%増大した。
【0067】
図3、図4において曲線で表された結果は、二次元解析に基づいて得たものである。三次元数値的解析もまた、ケース1とケース2の構成の変形素子20について実施した。三次元解析には、数値解法であるESI CFD,Inc.のCFD−ACEを使用した。このソフトウェアパッケージは、インターネットのウェブサイト、www.esi−group.comから入手できる。
【0068】
三次元計算を行い、中央部分に対する固定部分の位置Lの関数として、f(L)=fmaxの数値を求めた。モデルに関する式(25)〜(30)のこれらの三次元数値解を図5のグラフに表す。図5の曲線240は、第二の層の固定部分24aがアルミニウムで構成されるケース1に関する。図5の曲線242は、第二の層の固定部分24aがチタンアルミナイドで形成されるケース2に関する。三次元計算から、二次元解析で得られた変形量が大きすぎることがわかる。しかしながら、三次元計算からは、二次元解析の結果が、固定部分18の剛性を低下させた場合に相応に得られる利点を実際より低く評価していることもわかる。図5の曲線240,242は、固定部分の剛性を〜40%減少させることにより、最大変形量が〜45%増加すること、つまりfmaxが1.51μmから2.2μmに増加することを示している。
【0069】
図5の曲線は、2点固定熱アクチュエータ15の変形素子20の、固定端縁14に隣接した部分の曲げ剛性を低下させることによって実現される最大変形量の増大を明確に示している。同じエネルギー入力に対する変形量を改善することで、アクチュエータの位置の間の距離を増大させ、全体としてのエネルギー量を減らし、あるいは動作の繰り返し周波数を増大させることができる。
【0070】
改善幅は、上記のような多くの材料、形状および幾何学要因に応じて異なる。先に解析したモデルの変形素子20における曲げ剛性を低下させるための手段は、第二の層24の一部を、ヤング係数が実質的に低い材料に代えることであった。式(2)および式(25)〜(30)を確認すると、どのような方法によって曲げ剛性パラメータDを減らしても、所与のエネルギー入力に対する変形が改善されることがわかる。曲げ剛性を低下させるためには、有効厚さhを減らす方法、有効幅wを減らす方法、有効ヤング係数Eを減らす方法、あるいはこれらを組み合わせた方法がある。
【0071】
次に、固定位置付近の曲げ剛性を低下させた2点固定熱アクチュエータを複数のマイクロデバイスに応用することについて説明する。本発明は、このような熱アクチュエータを液滴吐出装置、特にインクジェット印刷ヘッドならびに、液体用マイクロバルブおよび電気マイクロスイッチに組み込んだものを含む。
【0072】
図6は、本発明による装置を使用したインクジェット印刷システムの概略図である。このシステムは、画像データソース400を備え、これが供給する信号は、コントローラ300により液滴を印刷するコマンドとして受信される。コントローラ300は、電気パルス発生源200に信号を出力する。次に、パルス発生源200は、電気エネルギーパルスで構成される電圧信号を発生し、この信号がインクジェット印刷ヘッド100の中の各2点固定熱アクチュエータ15に関連する電気抵抗手段に印加される。電気エネルギーパルスにより、2点固定熱アクチュエータ15は高速で変形し、ノズル30にあるインク60を加圧し、インク滴50を吐出し、インク滴50はレシーバ500に着弾する。
【0073】
図7は、インクジェット印刷ヘッド100の一部の平面図である。熱によって作動するインクジェットユニット110のアレイは、中央に整列されたノズル30とインク室12を有する。インクジェットユニット110は、超小型電子加工技術を使って基板10の上と中に形成される。
【0074】
各液滴吐出ユニット110は、それぞれ関連する電気ヒータ電極コンタクト42,44を有し、これらは2点固定熱アクチュエータの変形素子20の第二の層の中に形成され、後述のように熱機械効果に貢献する電気抵抗ヒータと一体的に構成されるか、あるいはこれに電気的に接続されている。この実施形態における電気抵抗器は、変形素子20の第二の層24と一致し、図7の平面図では個別に見えない。印刷ヘッド100の素子80は、超小型電子基板10のための取付け面と、液体供給、電子信号、及び機械的インタフェース機能を相互接続するためのその他の手段を提供する取付け構造である。
【0075】
図8(a)は、ひとつの液滴吐出ユニット110の平面図であり、図8(b)の第二の平面図では、ノズル30を備える液体封入室のカバー28が外されている。
【0076】
図8(a)において破線で示される2点固定熱アクチュエータ15は、図8(b)では実線で示される。2点固定熱アクチュエータ15の変形素子20は、基板10の中のくぼみ部として形成される液体封入室12の相対する固定端縁14から伸びる。変形素子の固定部分20bは基板10に接合され、変形素子20を固定する。
【0077】
アクチュエータの変形素子20は、長く、薄く、幅広の梁の形状を有する。この形状は単に、使用可能な2点固定熱アクチュエータの変形素子の例に過ぎない。その他多くの形状が利用できる。本発明のいくつかの実施形態において、変形素子は、その周辺全体に連続的に基板素子に接合された平板である。
【0078】
図8において、液体封入室12は、12cで変形素子20の中央部分19と一致する狭い壁部を有し、これらは離間され、2点固定状態で変形する間にアクチュエータが移動するための空隙が確保される。2点固定アクチュエータの最大変形が発生する場所において、液体封入室12の壁を近い位置に配置することは、生成された圧力インパルスを集中させ、ノズル30での液滴吐出を効率的に行うのに役立つ。
【0079】
図8(b)は、ヒータ電極42,44において、電気パルス発生源200を電気抵抗ヒータ(変形素子20の第二の層24と一致)に取り付ける様子を示す概略図である。電圧差が電圧端子42,44に印加され、抵抗器による抵抗加熱が起こる。これは一般に、電流Iを示す矢印で示される。図8の平面図において、変形素子20の中央部分19は、電気的パルスを受け、その中心平面から外側に曲がると、図の手前に向かって動く。液滴は、カバー28のノズル30から図の手前に向かって吐出される。この動作と液滴吐出の形状は、インクジェットに関する多くの開示の中で「ルーフシュータ(roof shooter)」と呼ばれる。
【0080】
図9は、本発明の好ましい実施形態による2点固定熱アクチュエータの側面図である。図9(a)において、変形素子20は第一の休止位置にある。図9(b)は、変形素子が第二の位置に曲がった様子を示す。変形素子20は基板10に固定され、基板10は2点固定熱アクチュエータのベース素子としての役割を果たす。
【0081】
液滴吐出装置のアクチュエータとして使用される場合、変形素子20の曲がり反応は、ノズルの液体を十分に加圧できる素早さで起こらなければならない。一般に、電気抵抗加熱装置は熱パルスを印加するように構成されている。パルス幅が10μsecs.未満、好ましくは2μsecs未満の電気パルスが使用される。
【0082】
図10から図16は、本発明の好ましい実施形態のいくつかによる1個の液滴吐出装置を構成するための製造工程のステップを示す。これらの実施形態では、第二の層24は、チタンアルミナイド等の電気抵抗材料を用いて構成され、一部がパターニングされて、電流Iが流れるための抵抗が形成される。第二の層24の固定部分24aを、アルミニウム等、より柔らかい導電性金属に置き換え、加熱領域を中央部分に限定し、また変形素子20の固定部分18の曲げ剛性を大きく低下させる。
【0083】
図10は、微小電気機械加工製造工程シーケンスの最初の段階において、たとえば、単結晶シリコン等の超小型電子材料による基板10を示す。図の製造シーケンスにおいて、基板10は、2点固定熱アクチュエータのベース素子10となる。パシベーション層21は、酸化物、窒化物、ポリシリコン等の材料とすることができ、製造シーケンスの終了時近くで、裏側エッチングのためのエッチストッパの役割も果たす。層21にエッチング可能領域62が開けられ、完成した変形素子の周辺に液体を補充でき、変形素子を解放することができる。
【0084】
図10はまた、先に準備された基板の上に付着され、パターニングされた将来の変形素子の第一の層22も示す。第一の層22のために使用される第一の材料は、熱膨張率が低く、ヤング係数は比較的高い。第一の層22に適した一般的な材料は、シリコン酸化物または窒化物やβシリコンカーバイドである。しかしながら、多くの超小型電子材料は、強力な熱モーメントの生成を助け、変形したときに弾性エネルギーを蓄積するという第一の層22の機能に役立つ。第一の層22はまた、複数の種類の材料の副層で構成することもできる。多くのマイクロアクチュエータデバイスにおいて、第一の層22の厚さは数ミクロン(μm)である。
【0085】
図11は、第一の層22の上に付着される将来の変形素子の第二の層24を形成する様子を示す。第二の層24は、金属等、熱膨張率の高い第二の材料で構成される。大きな熱モーメントを生成し、2点固定された状態で動作するための弾性エネルギーの蓄積を最大限にするために、第二の材料は第一の材料と同等のヤング係数を有することが好ましい。本発明にとって好ましい第二の材料は、チタンアルミナイド金属間化合物である。チタンアルミナイド金属間化合物の付着は、たとえば、RFまたはパルスDCマグネトロンスパッタリングによって実行される。図10から図16に示される本発明の実施形態の場合、第二の層24はまた電気的抵抗性を有し、抵抗器のパターンを形成し、これが第二の層24の中央部分24cと変形素子20の中央部分19を画定する。
【0086】
図12は、アルミニウム等のより柔らかい金属材料を追加することにより、第二の層24の形成が完了する様子を示す。この材料は、第二の層24の固定部分24aを形成する。アルミニウムはまた、第二の層の中央部分24cとして形成される電気抵抗材との電気接続にもなる。
【0087】
図13は、変形素子のそれまでに形成された層の上に第三の層26を形成し終わった様子を示す。前述のように、第三の層26は、各種の機能のために使用される。図10から図16において製造されているインクジェット印刷ヘッドの場合、第三の層26は、変形素子をインク(作動流体)との化学的および電気的相互作用から保護する。第三の層は、たとえば、酸化物と有機物、両方の被覆等、異なる材料の副層で構成することができる。
【0088】
第三の層26には窓を設け、電気コンタクト電極42,44を設置する。ヒータ電極42,44は、第一の層22とパシベーション層21(図13には示されていない)を介して基板10の中にすでに形成された回路と接触してもよい。あるいは、図のように、ヒータ電極42,44は、TAB(Tape Automated Bonding)またはワイヤボンディング等、他の標準的な電気相互接続方法によって外部から接触させることもできる。
【0089】
本発明の別の実施形態は、追加の電気抵抗素子を用いて変形素子に熱パルスを印加する。この場合、このような素子は第一の層22と第二の層24の間、あるいは第二の層24の上に付着される、さらに多くの追加の積層のひとつとして構成することができる。熱膨張層である第二の層24に直接熱パルスを印加することは、第二の層24と第一の層22の間の熱膨張の差を最大限にすることによって、最大熱モーメントを発生させる上で有益である。しかしながら、電気抵抗ヒータ素子を構成する追加の積層体が変形素子の全体的な熱機械的挙動に貢献するため、これらの積層体を第二の層24の上または下のどちらに配置するのが最も有利かは、追加の層の機械的特性によって異なる。
【0090】
図14は犠牲層29を追加して設置する様子を示し、この犠牲層29は、液滴吐出装置の液体封入室の内部の形状に形成される。犠牲層29は、すでに付着された層の上に形成される。この目的に適した材料は、ポリイミドである。ポリイミドはデバイスの基板に、第一の層22、第二の層24、第三の層26、及び各種の目的のために追加された他の層の形状を有する表面を平坦化するのに十分な深さに塗布される。隣接する材料に対して選択的に除去できる材料を使って、犠牲層29を形成する。
【0091】
図15は、犠牲層構造29の上に、プラズマ蒸着された酸化シリコン、窒化シリコンまたはその他の共形材料を蒸着することによって形成される、液滴吐出装置の液体封入室の上壁とカバー28を示す。この層がパターニングされて、液滴吐出装置の液体封入室が完成し、さらに基板10を部分的にエッチングすることによって形成され、図7,8において液体封入室12として示される。ノズル30は、液滴吐出装置の液体封入室の上壁28の中に形成され、製造シーケンスのこの段階では、液滴吐出装置の液体封入室の上壁28の中に残っている犠牲材料の層29と連通する。
【0092】
図16(a)から図16(c)は、図15のA−Aで示す断面から見たデバイスの側面図である。図16(a)において、犠牲層29は、ノズル用の開口部30を除き、液滴吐出装置の液体封入室の上壁28の中に囲まれている。図16(a)では、基板10は原型のままである。図16(b)において、基板10は変形素子20と液体封入室が形成される領域12(図10から図13参照)の下で、変形素子20の周辺と横が除去される。この除去は、リアクティブイオンエッチング、単結晶シリコンの基板が使用されている場合は結晶異方性エッチング、あるいはウェットおよびドライエッチング方式を組み合わせたもの等、異方性エッチング工程によって行われる。2点固定熱アクチュエータだけを構成する場合は、犠牲構造と液体封入室のためのステップは不要となり、基板10をエッチングで除去するこのステップで変形素子を切り離すことができる。
【0093】
図16(c)において、犠牲材料層29は、ポリイミドを使用した場合、酸素とフッ素の供給源を使ったドライエッチングによって除去されている。エッチングガスは、ノズル30を通って、また、基板10の裏側からすでにエッチングされ、新たに開けられた液体供給室を形成する領域12から入る。このステップにより、変形素子20が切り離され、液滴吐出構造の製造が完了する。
【0094】
図10から図16は、好ましい製造シーケンスを示す。しかしながら、周知の超小型電子加工製造工程と材料を使用して、他の多くの構成方法を採用することができる。本発明の目的のために、第一の層22と第二の層24とを含み、中央部分19の曲げ剛性より固定部分18の曲げ剛性が実質的に小さい変形素子が得られるどのような製造方法でも利用できる。さらに、図10から図16に示されるシーケンスにおいて、液滴吐出装置の液体封入室12の壁28とノズル30は、基板10の上のその位置に形成された。あるいは、2点固定熱アクチュエータを別に形成して、液体封入室コンポーネントに接合し、液滴吐出装置を構成してもよい。
【0095】
図10から図16は、第二の層が電気抵抗材料で構成されている好ましい実施形態を示す。第二の層24の一部は、電気パルスが一対のヒータ電極42,44に印加されたときに電流を流し、これによって第二の層24を直接加熱するように、一体の抵抗器の一部として形成される。本発明の別の実施形態において、第二の層24は、変形素子に熱を供給するよう構成された他の装置により加熱される。たとえば、薄膜抵抗構造は、第一の層22の上に形成され、次にその上に第二の層24が形成される。あるいは、薄膜抵抗構造は、第二の層24の上に形成してもよい。
【0096】
熱は、電気抵抗器以外の装置によって第二の層24に導入される。光エネルギーのパルスが、変形素子の第一の層と第二の層によって、あるいは特定のスペクトルの光エネルギーを効率的に吸収するものとして機能させるために追加された追加層によって吸収されるようにすることもできる。以下、光エネルギーパルスを使って加熱パルスを印加する例を、本発明による2点固定熱アクチュエータマイクロバルブに関連して図20に示して説明する。熱エネルギーのパルスを変形素子に伝えるように構成された装置であれば、どのような装置でも本発明を実現するための実行可能な手段とすることができる。
【0097】
本発明による2点固定熱アクチュエータは、液体用マイクロバルブの構成において有益である。ノーマリークローズ液体用マイクロバルブの構成が図17に、ノーマリーオープン液体用マイクロバルブが図18にそれぞれ示される。ノーマリーオープンおよびノーマリークローズ弁のどちらの構成においても、2点固定熱アクチュエータは、エネルギー効率または最大たわみ量が大幅に改善されているため、有利である。
【0098】
ノーマリークローズマイクロバルブは図17(a)に示すように構成され、第一の層22は、変形素子がその休止形状にあるときに液流ポート32に押し付けられる。図の弁構成において、弁シール部材38は、第一の層22の上に設置される。弁シール部材38は、弁座36を密閉する。パシベーション層21は、第一の層22がパシベーション機能を実行できるため、この弁構成では省くことができる。図の構成において、液体は、加圧された供給源から、図8に示したインクジェット液滴発生器の液体封入室についてすでに説明したように、変形素子周辺の注入路(図示せず)を介して注入される。熱パルスが変形素子20に印加されると、弁は最大限に開き、流れ52が放出される(図17(b))。弁は、変形素子が上方に曲がった状態に保たれるように十分な加熱を継続することにより、開いた状態に維持できる。
【0099】
ノーマリーオープンマイクロバルブは、図18(a)のように構成される。変形素子20は、液流ポート32の付近に、変形素子20の曲げ変形によって液流ポート32が閉じるような近さで配置される。図18には示されていないが、弁シール部材を変形素子20に設け、弁座を図17に示されたノーマリークローズマイクロバルブと同様に設置することができる。熱パルスが変形素子20に印加されると、変形素子が液流ポート32を圧迫することによって弁が閉じる。弁は、変形素子が上方に曲がった状態に保たれるように十分な加熱を継続することにより、閉じた状態に維持できる。
【0100】
ここまでに説明した2点固定熱アクチュエータ、液滴吐出装置およびマイクロバルブは、相対する端部において、相対する固定端縁に半剛結状態に接合された薄い長方形のマイクロビームの形状とされている。変形素子の長い端縁は接合されず、自由に動けるため、二次元の曲がり変形が発生した。しかし、変形素子を完全に閉じた状態の周辺部を接合させた平板として構成することもできる。
【0101】
図19は、その円形周辺部の周囲全体を接合した円形積層体として構成された変形素子20の平面図である。このような変形素子は、三次元的に曲がり、あるいは縮む。全体が接合された変形素子の周辺部の構成は、作動流体の中に変形素子を沈めて動作させることが望まれない場合に有利である。あるいは、この変形素子は、その面のひとつにおいて空気、真空その他の低抵抗媒体に反して作用しながら、反対の面に衝突する作動流体に対して変形する点でも有利である。
【0102】
図19(a)は、中央ノズル30を備えた正方形の上側液体封入室28を有する液滴吐出装置を示す。図19(a)において点線で示されているように、円形の変形素子20は周辺固定端縁14に接続されている。変形素子20は、液体封入室の底壁の一部を形成する。液体は、注入ポート31を介して液体封入室に入る。図19(b)では、上側液体封入室28が外されている。熱パルスは、変形素子20の積層構造の中に含まれる電気抵抗層を通り、ヒータ電極42,44へと電流を通過させることによって印加される。
【0103】
図20は、本発明の別の実施形態を示し、変形素子は、円形周辺全体に接合された円形積層体である。変形素子は、ノーマリークローズマイクロバルブの壁の一部を形成する。変形素子の第二の層24側は、集光合焦素子40によって方向付けられる光エネルギー39にアクセスできるように構成された。液体は、注入ポート31を介してマイクロバルブに入る。弁は、適当な温度時間プロフィールによって変形素子を加熱して、2点固定状態の曲がりを発生させるように、十分な強度を持った光エネルギーのパルスを方向付けることによって動作する。弁は、変形素子の温度が十分高く保たれるように光エネルギーパルスの供給を継続することによって、開状態に維持できる。
【0104】
本発明による光作動デバイスは、マイクロバルブを開状態にしながら、完全な電気的および機械的絶縁を保つことができる点で有利である。本発明によれば、液滴吐出装置、マイクロバルブまたはその他の2点固定熱アクチュエータのための光作動装置も同様に設計することができる。
【0105】
本発明による2点固定熱アクチュエータはまた、電気回路を制御するためのマイクロスイッチの構成にも有益である。本発明によるマイクロスイッチユニット150の平面図を図21に示す。図22(a)と図22(b)は、ノーマリークローズマイクロスイッチユニット160の側面図であり、図23(a)と図23(b)は、ノーマリーオープンマイクロスイッチユニット170の側面図である。
【0106】
図21の平面図において、変形素子20は電気抵抗手段により加熱される。電気パルスは、電気パルス発生源200により、ヒータ電極42,44を介して印加される。マイクロスイッチは、第一のスイッチ電極155と第二のスイッチ電極157を介して電気回路を制御する。第一のスイッチ電極155と第二のスイッチ電極157は、変形素子20の上の位置に空間保持用支持材152によって支持される。空間159は第一と第二のスイッチ電極155,157を分離し、第一と第二のスイッチ電極が電気的に橋絡(ブリッジ)されないかぎり、スイッチ入力パッド156,158に接続された外部回路は開いている。第一と第二のスイッチ電極155,157の下の制御電極154は圧迫され、空間保持構造152の電極アクセス用開口部153を通じてブリッジ接触する。制御電極154は、導電性の高い材料で構成される。変形素子20は、熱パルスの印加によって曲がるように構成されているため、第一と第二のスイッチ電極155,157に向かって、あるいはこれから遠ざかるように制御電極を移動させるように配置される。
【0107】
ノーマリークローズマイクロスイッチは、図22に示すように構成することができる。図22の側面図は、図21の直線C−Cに沿って作成されたものである。変形素子20の第一の層22は、変形素子20がその残留形状にあるときに、制御電極154を圧迫し、第一のスイッチ電極155と第二のスイッチ電極157(図示せず)と接触させ、これによって入力パッド156,158(図示せず)を通じて外部回路を閉じる。熱パルスが変形素子20に印加されると、マイクロスイッチは最大限に開き(図22(b))、外部回路を遮断し、つまり、マイクロスイッチを開く。マイクロスイッチは、変形素子を上方に曲がった状態に保つように加熱を継続することによって、開いた状態に維持することができる。
【0108】
ノーマリーオープンマイクロスイッチは、図23に示すように構成できる。図23の側面図は、図21の直線C−Cに沿って作成されたものである。変形素子20は、曲がった後に制御電極154を圧迫し、第一のスイッチ電極155と第二のスイッチ電極157(図示せず)とブリッジ接触するのに十分に変形するような近さで電極アクセス用開口部159の近くに配置される。熱パルスが変形素子20に印加されると、マイクロスイッチは制御電極154を圧迫して閉じ、第一と第二のスイッチ電極155,157と電気的に接触する。マイクロスイッチは、変形素子を上方に曲がった状態に保つように加熱を継続することによって、閉じた状態に保つことができる。第二の層24が電気抵抗性を有する本発明の実施形態の場合、電気絶縁層151を制御電極154の下に設置できる。
【0109】
図21から図23に示すマイクロスイッチ構成の場合、第一と第二のスイッチ電極はどちらも、間隔保持用構造152と制御電極154によって支持され、スイッチの開閉のためにブリッジ接触を実現する。図24に別のマイクロスイッチの構成を示し、この構成では、第二のスイッチ電極157は変形素子20の上に形成され、制御電極154と永久的に電気接続する。第一のスイッチ電極155は、間隔保持用構造152によって支持され、電気アクセス用開口部153から制御電極と接触するようアクセス可能である。したがって、本発明のこの実施形態において、マイクロスイッチは、変形素子20が制御電極154を圧迫して第一のスイッチ電極155と接触させ、また接触させないことによって開閉する。
【0110】
図24は、第二のスイッチ電極と制御電極154が永久的に電気接触している別のマイクロスイッチユニット150の構成を示す平面図である。図25(a)は、本発明のこの構成によるノーマリークローズマイクロスイッチユニット160の側面図である。図25(a)の側面図は、図24の線D−Dに沿って作成されたもので、スイッチはノーマリークローズの残留状態にある。この図においては、外部電気回路入力リード156,158は見られるが、変形素子を加熱するために電気抵抗手段に接合されたヒータ電極42,44は示されていない。図25(b)は、熱パルスが印加され、変形素子が曲がった後、制御電極154と第一のスイッチ電極155の間に空間159が設けられ、その結果、外部回路を開いた状態としているノーマリークローズマイクロスイッチユニット160の側面図である。図25(b)は、図24の直線E−Eに沿って作成されたもので、ヒータ電極42,44は図示されているが、入力リード156,158は図示されていない。
【0111】
ここまで紹介した2点固定熱アクチュエータマイクロスイッチの例は、変形素子が相対する端部で相対する固定端縁に接合させた薄い長方形のマイクロビームの形態であった。変形素子の長いほうの端縁は接合されず、自由に動くことができるため、二次元的な曲がり変形が発生した。しかし、マイクロスイッチ用の変形素子は、マイクロバルブに関して図19に示したように、閉じた周辺全体の周りに接合された平板として構成してもよい。周辺全体が接着された変形素子の形状は、変形素子を、制御電極と反対側が真空またはその他の低抵抗ガスに接した状態で動作させることが望ましくない場合に有利である。
【0112】
図26はノーマリークローズマイクロスイッチユニット160の別の実施形態の側面図であり、変形素子は円形の周辺全体にわたって接着された円形積層構造である。変形素子の第二の層24側は、集光合焦素子40によって方向付けられた光エネルギー39にアクセスできるように構成されている。マイクロスイッチは、2点固定状態での曲がりが発生するように変形素子を加熱するのに十分な強度の光エネルギーのパルスを方向付けることによって作動される。マイクロスイッチは、変形素子の十分に高い温度を保つのに十分な光エネルギーパルスを供給し続けることにより、開状態に維持される。
【0113】
本発明による光作動デバイスは、マイクロスイッチを開いた状態で、完全な電気的および機械的絶縁が維持される点で有利である。本発明によれば、ノーマリーオープンマイクロスイッチの光作動装置も同様の方法で設計できる。
【0114】
図27は、変形素子20の曲げ剛性を固定部分18で低下させる別の設計の平面図である。スロット27で示されるように、変形素子20のひとつまたは複数の層の、固定部分にあたる材料が除去されている。このように材料を除去することにより、変形素子20の中央部分19と比較して、固定部分18における梁構造の有効幅が狭くなるため、曲げ剛性が低減する。
【0115】
図28は、変形素子20の固定部分18における曲げ剛性を低減するための他の設計の側面図である。図の2点固定熱アクチュエータの場合、固定部分の第一の層22は完全に除去される。このように材料を除去することにより、固定部分18における有効厚さと有効ヤング係数が減り、曲げ剛性が実質的に低下する。
【0116】
本願の図面は、変形素子20の休止形状が平坦で、中心平面にあるように図示されている。しかしながら、製造工程の影響や温度の昇降による動作のために、変形素子の休止形態は中心平面からたわんでいてもよい。本発明は、変形素子20の異なる休止形態も意図し、含んでいる。
【0117】
上記の説明のほとんどは、単独の2点固定熱アクチュエータ、液滴吐出装置、マイクロバルブまたはマイクロスイッチの構成と動作に関するものであったが、本発明は、かかる単独のデバイスユニットのアレイやアセンブリを形成する場合にも応用できることを理解すべきである。また、本発明による2点固定熱アクチュエータデバイスは、他の電子コンポーネントや回路と同時に製造し、あるいは電子コンポーネントや回路の製造の前または後に同じ構造体の上に形成することができることも理解すべきである。
【0118】
さらに、上記の詳細な説明は基本的に、電気抵抗装置またはパルス型の光エネルギーによって加熱される2点固定熱アクチュエータに関するものであったが、誘導加熱等、他の熱パルス生成方法を使って発明による変形素子に熱パルスを印加してもよい。
【0119】
以上のことから、本発明は、すべての目的を実現するように十分に考案されていることがわかる。本発明の好ましい実施形態に関する上記の説明は、例示と説明のために紹介されたにすぎない。開示された詳細な形態以外のものが排除されることはなく、これらの形態に本発明が限定されることもない。改造と変形も可能であり、当業者は上記の教示を参照することによって改造や変形も考案できるであろう。こうした他の実施形態も、付属の特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】2点固定熱アクチュエータの2つの位置を示す側面図である。
【図2】本発明による2点固定熱アクチュエータの2つの位置を示す側面図である。
【図3】その長さに沿って加熱量が異なる変形素子の平衡変位の理論計算を示す図である。
【図4】その長さに沿って加熱量が異なり、機械的剛性が中央部分より低い固定部分を有する変形素子の平衡変位の論理計算を示す図である。
【図5】その長さに沿って加熱量が異なり、機械的剛性が中央部分と同等もしくはそれより低い固定部分を有する変形素子の最大平衡変位の理論計算を示す図である。
【図6】本発明によるインクジェットシステムの概略図である。
【図7】本発明によるインクジェットユニットもしくは液滴吐出ユニットのアレイの平面図である。
【図8】図7に示す個々のインクジェットユニットと2点固定熱アクチュエータの拡大平面図である。
【図9】本発明による液滴吐出装置の休止位置と液滴排出位置を示す側面図である。
【図10】本発明による2点固定熱アクチュエータを構成するのに適した工程の第一段階で、基板が作成され、変形素子の第一の層が形成され、パターニングされている様子を示す透視図である。
【図11】図10に示す工程の次の段階で、変形素子の第二の層が形成され、パターニングされている様子を示す透視図である。
【図12】図10と図11に示す工程の次の段階で、変形素子の第二の層の固定部分が形成された様子を示す透視図である。
【図13】図10から図12に示す工程の次の段階で、保護用パシベーション層が形成され、パターニングされている様子を示す透視図である。
【図14】図10から図13に示す工程の次の段階で、本発明による液滴吐出装置の液体封入室の形状の犠牲層が形成された様子を示す透視図である。
【図15】図10から図14に示す工程の次の段階で、本発明による液滴吐出装置の液体封入室とノズルが形成されている様子を示す透視図である。
【図16】図10から図15に示す工程の最終段階で、液体供給路が形成され、犠牲層が除去され、本発明による液滴吐出装置が完成した様子を示す側面図である。
【図17】本発明によるノーマリークローズ液体マイクロバルブの閉位置と開位置を示す側面図である。
【図18】本発明の好ましい実施形態によるノーマリーオープンマイクロバルブの動作を示す側面図である。
【図19】本発明の好ましい実施形態による、閉じた周辺部全体が固定されている変形部材を有する、ノーマリークローズマイクロバルブを示す平面図である。
【図20】本発明の好ましい実施形態による光エネルギー加熱パルスによって動作する、ノーマリークローズマイクロバルブの動作を示す側面図である。
【図21】本発明の好ましい実施形態による電気マイクロスイッチを示す平面図である。
【図22】本発明の好ましい実施形態によるノーマリークローズマイクロスイッチの動作を示す側面図である。
【図23】本発明の好ましい実施形態によるノーマリーオープンマイクロスイッチの動作を示す側面図である。
【図24】本発明の好ましい実施形態による電気マイクロスイッチの別の設計を示す平面図である。
【図25】本発明の好ましい実施形態による図24の構成を有する、ノーマリークローズマイクロスイッチの動作を示す側面図である。
【図26】本発明の好ましい実施形態による、光エネルギー加熱パルスによって動作するノーマリークローズマイクロスイッチの動作を示す側面図である。
【図27】変形素子の固定部分の曲げ剛性を低下させるために、固定部分の幅を有効に狭めた2点固定熱アクチュエータの平面図である。
【図28】変形素子の固定部分の曲げ剛性を低下させるために、固定部分が有効に薄くされている2点固定熱アクチュエータの側面図である。
【符号の説明】
【0121】
10 基板ベース素子、11 液体封入室の壁の幅狭部、12 液体封入室、12c 液体封入室の幅狭の中央部分、13 柔らかい結合材料、14 変形素子の固定部分における相対する固定端縁、15 本発明による2点固定熱アクチュエータ、16 変形素子の自由端縁部分、17 ベース素子の起伏部分、18 変形素子の固定部分、19 変形素子の中央部分、20 変形素子、20b 基板に接合された変形素子の固定部分、21 パシベーションまたはエッチング防止マスキング層、22 第一の層、24 第二の層、24a 第二の層の固定部分、24c 第二の層の中央部分、26 第三の層、27 固定部分の変形素子材料を除去するためのスロット、28 液体封入室の構造、壁、及びカバー、29 犠牲層、30 ノズル、31 液体注入ポート、32 液流ポート、34 液体注入路、36 弁座、38 弁シール部材、39 光エネルギー、40 光偏向素子、41 TABリード、42 ヒータ電極、43 はんだバンプ、44 ヒータ電極、45 はんだバンプ、46 TABリード、47 電気抵抗素子、薄膜ヒータ抵抗器、50 液滴、52 液流、60 液体、62 エッチング可能領域、80 取付け構造、90 従来の設計による2点固定熱アクチュエータ、100 インクジェット印刷ヘッド、110 液滴吐出ユニット、120 ノーマリークローズマイクロバルブユニット、130 ノーマリーオープンマイクロバルブユニット、150 マイクロスイッチユニット、151 制御電極の下の電気絶縁層、152 間隔保持構造、153 電極アクセス用開口部、154 制御電極、155 第一のスイッチ電極、156 第一のスイッチ電極への入力パッド、157 第二のスイッチ電極、158 第二のスイッチ電極への入力パッド、159 第一と第二のスイッチ電極の間の空間、160 ノーマリークローズマイクロスイッチユニット、170 ノーマリーオープンマイクロスイッチユニット、200 電気パルス発生源、300 コントローラ、400 画像データ供給源、500 レシーバ。
【図1(a)】

【図1(b)】

【図2(a)】

【図2(b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路を制御するためのノーマリークローズマイクロスイッチであって、
(a)相対する固定端縁を有するくぼみ部が形成されたベース素子と、
(b)前記ベース素子により支持される間隔保持構造と、
(c)前記間隔保持構造によって支持される第一のスイッチ電極と、前記第一のスイッチ電極と離間させて配置される第二のスイッチ電極と、前記第一と第二のスイッチ電極を電気的に連結して前記電気回路を閉じるための制御電極と、
(d)前記相対する固定端縁に接合され、前記制御電極を圧迫して前記第一と第二のスイッチ電極と電気的に接触させる変形素子であって、低い熱膨張率を有する第一の材料の第一の層と高い熱膨張率を有する第二の材料の第二の層とを含む平坦積層構造として構成され、前記固定端縁に隣接する固定部分と前記固定部分の間の中央部分を有し、前記固定部分の曲げ剛性が前記中央部分の曲げ剛性より実質的に低い変形素子と、
(e)前記変形素子に熱パルスを印加し、前記変形素子の温度を急上昇させる装置であって、前記変形素子が前記制御電極を前記第一のスイッチ電極と接触させない方向にたわみ、それによって前記電気回路を開け、その後、温度が下降すると、たわみが解放され、前記電気回路を閉じるようにする装置と、
を備えることを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記制御電極は、前記変形素子に結合されていることを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項3】
請求項1に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記第二のスイッチ電極は、前記間隔保持構造によって支持されることを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項4】
請求項1に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記第二のスイッチ電極は、前記制御電極に電気的に接合されていることを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項5】
請求項1に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記変形素子に熱パルスを印加する装置は、前記変形素子と良好に熱接触する電気抵抗素子を備えることを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項6】
請求項1に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記第二の材料は電気抵抗材料であり、前記変形素子に熱パルスを印加する装置は、前記第二の層に連結され、電流が前記第二の層を通過するようにする一対のヒータ電極を備えることを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項7】
請求項6に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記第二の材料はチタンアルミナイドであることを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項8】
請求項1に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記変形素子に熱パルスを印加する装置は、光エネルギーパルスを前記変形素子に衝突させる光偏向素子を備えることを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項9】
請求項1に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記相対する固定端縁は閉鎖周辺部を形成し、前記変形素子のすべての端縁が前記固定端縁に接合されていることを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項10】
請求項1に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記変形素子の自由端縁部は、前記固定端縁に接合されていないことを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項11】
請求項1に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記固定部分の有効ヤング係数はEであり、前記中央部分の有効ヤング係数はEであり、EはEより実質的に低いことを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項12】
請求項1に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記固定部分の有効厚さはhであり、前記中央部分の有効厚さはhであり、hはhより実質的に小さいことを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項13】
請求項12に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記固定部分の前記第一の層の厚さは、前記中央部部分の前記第一の層の厚さより実質的に小さいことを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項14】
請求項1に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記固定部分の有効幅はwであり、前記中央部分の有効幅はwであり、wはwより実質的に小さいことを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項15】
請求項1に記載のノーマリークローズマイクロスイッチであって、
前記変形素子の特性長は2Lであり、前記固定部分の特性長はLであり、1/4×L≦L≦1/2×Lであることを特徴とするノーマリークローズマイクロスイッチ。
【請求項16】
電気回路を制御するためのノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
(a)相対する固定端縁を有するくぼみ部が形成されたベース素子と、
(b)前記ベース素子により支持される間隔保持構造と、
(c)前記間隔保持構造によって支持される第一のスイッチ電極と、前記第一のスイッチ電極と離間させて配置される第二のスイッチ電極と、前記第一と第二のスイッチ電極を電気的に連結して前記電気回路を閉じるための制御電極と、
(d)前記相対する固定端縁に接合され、前記制御電極を前記第一のスイッチ電極の近位に位置づける変形素子であって、低い熱膨張率を有する第一の材料の第一の層と高い熱膨張率を有する第二の材料の第二の層とを含む平坦積層構造として構成され、前記固定端縁に隣接する固定部分と前記固定部分の間の中央部分を有し、前記固定部分の曲げ剛性が前記中央部分の曲げ剛性より実質的に低い変形素子と、
(e)前記変形素子に熱パルスを印加し、前記変形素子の温度を急上昇させる装置であって、前記変形素子が前記制御電極を前記第一のスイッチ電極及び第二のスイッチ電極と接触させる方向にたわみ、それによって前記電気回路を閉じ、その後、温度が下降すると、たわみが解放され、前記電気回路を開けるようにする装置と、
を備えることを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項17】
請求項16に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記制御電極は、前記変形素子に結合されていることを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項18】
請求項16に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記第二のスイッチ電極は、前記間隔保持構造によって支持されることを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項19】
請求項16に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記第二のスイッチ電極は、前記制御電極に電気的に接合されていることを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項20】
請求項16に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記変形素子に熱パルスを印加する装置は、前記変形素子と良好に熱接触する電気抵抗素子を備えることを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項21】
請求項16に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記第二の材料は電気抵抗材料であり、前記変形素子に熱パルスを印加する装置は、前記第二の層に連結され、電流が前記第二の層を通過するようにする一対のヒータ電極を備えることを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項22】
請求項21に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記第二の材料はチタンアルミナイドであることを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項23】
請求項16に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記変形素子に熱パルスを印加する装置は、光エネルギーパルスを前記変形素子に衝突させる光偏向素子を備えることを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項24】
請求項16に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記相対する固定端縁は閉鎖周辺部を形成し、前記変形素子のすべての端縁が前記相対する固定部に接合されていることを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項25】
請求項16に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記変形素子の自由端縁部は、前記相対する固定端縁に接合されていないことを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項26】
請求項16に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記固定部分の有効ヤング係数はEであり、前記中央部分の有効ヤング係数はEであり、EはEより実質的に低いことを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項27】
請求項16に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記固定部分の有効厚さはhであり、前記中央部分の有効厚さはhであり、hはhより実質的に小さいことを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項28】
請求項27に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記固定部分の前記第一の層の厚さは、前記中央部部分の前記第一の層の厚さより実質的に小さいことを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項29】
請求項16に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記固定部分の有効幅はwであり、前記中央部分の有効幅はwであり、wはwより実質的に小さいことを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。
【請求項30】
請求項16に記載のノーマリーオープンマイクロスイッチであって、
前記変形素子の特性長は2Lであり、前記固定部分の特性長はLであり、1/4×L≦L≦1/2×Lであることを特徴とするノーマリーオープンマイクロスイッチ。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16(a)】
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【図16(b)】
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【図16(c)】
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【図17(a)】
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【図17(b)】
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【図18(a)】
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【図18(b)】
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【図19(a)】
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【図19(b)】
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【図20(a)】
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【図20(b)】
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【図21】
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【図22(a)】
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【図22(b)】
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【図23(a)】
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【図23(b)】
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【図24】
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【図25(a)】
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【図25(b)】
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【図26(a)】
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【図26(b)】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2008−521205(P2008−521205A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543284(P2007−543284)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/041867
【国際公開番号】WO2006/057910
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】