説明

曲面ガラスの面取り装置

【課題】簡単な構成でありながら、複雑な曲面を有する曲面ガラスであっても、確実にかつ生産性良く面取りを行うことが可能な面取り装置を提供する。
【解決手段】曲面ガラス板400を保持し、回転かつ傾斜可能な保持機構102〜114と、支柱201の周りに回転可能なアーム202に取り付けられた回転砥石205を備えたガラス端部の研磨機構201〜210と、保持機構の水平面に対する傾斜角を調節する傾斜角調節機構301〜309と、からなり、アームを支柱の周りに回して回転砥石を前記ガラス板端部に所定の力で押し当て、保持機構を回転させながらガラス板全周の面取りを行う面取り装置であって、回転砥石と保持機構の回転軸との距離に応じて保持機構の傾斜角を調節し、ガラス板端部を常に回転砥石の中央部に押し当てて面取りを行う構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面ガラスの面取り装置に係り、特に、非円形の曲面ガラス板の面取りを容易、かつ生産性良くに行うことが可能なガラス面取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガラス板の自動面取り装置としては、例えば特開平10−180603号公報に開示される矩形平板ガラス板の面取り装置が一般的である。この装置においては、回転砥石と矩形平板ガラス板の一辺との位置合わせを行った後、回転砥石をガラス端部に押しつけながら、直線移動させて一辺の面取りを行う。続いて、ガラス板を90°回転し、同様に位置合わせした後回転砥石を直線移動させてこの辺の面取りを行う。以上を繰り返し全周の面取りを行って、面取り作業を終了する。
【特許文献1】特開平10−180603
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上のように、従来の面取り装置は、矩形の平板ガラスを対象とするものであるため、完全に矩形でなく曲線部を有する平板ガラスやさらには曲面ガラスになると、ガラス端面と回転砥石との間に加わる力が位置により変動してしまい、面取りが不十分であったり、また、エッジの片側しか面取りできなくなったり、場合によってはチッピングが起こるなど、面取り不良やガラス板の破損が起こって歩留まりが低下すると問題があった。特に、曲率半径が1500mm程度以下の曲面ガラスになるとこの傾向は顕著になり、さらに曲率半径が1200mm程度以下の曲面ガラスの面取りは手動で行わざるを得ず、生産性が低いという問題があった。
【0004】
かかる状況に鑑み、本発明者は、簡単な構成でありながら、曲面ガラスの面取りを確実にかつ生産性良くを行うことが可能な面取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の曲面ガラスの面取り装置は、曲面ガラス板を保持し、回転かつ傾斜可能な保持機構と、支柱の周りに回転可能なアームに取り付けられた回転砥石を備えたガラス端部の研磨機構と、前記保持機構の水平面に対する傾斜角を調節する傾斜角調節機構と、からなり、前記アームを前記支柱の周りに回して前記回転砥石を前記ガラス板端部に所定の力で押し当て、前記保持機構を回転させながら前記ガラス板全周の面取りを行う面取り装置であって、前記回転砥石と前記保持機構の回転軸との距離に応じて前記保持機構の傾斜角を調節し、前記ガラス板端部を常に前記回転砥石の中央部に押し当てて面取りを行う構成としたことを特徴とする。
さらに、前記傾斜角調節機構は、前記保持機構の外周部の下方に配置された傾斜用ローラと、前記アームがガラス板方向に回転したときに前記傾斜用ローラを下降させ、逆方向に回転したときに前記傾斜用ローラを上昇させる昇降機構と、で構成するのが好ましい。
【0006】
回転砥石とガラス板回転軸との距離が増加すると、保持機構(ガラス板)の傾斜を大きくし、距離が減少するときは傾斜を小さくすることにより、非円形の曲面ガラス板であっても、ガラス板外周の全周にわたり、ガラス板端面は常に回転砥石の中央部に押し当てられ、チッピング等の破損を防止するとともに、部分的に未面取り部が残ったり、エッジの片側しか面取りできない等の問題も解決し、安定した面取りを行うことが可能となる。
また、本発明において、前記アームにワイヤでおもりを吊り下げ、これによりガラス板の方向にアームを回転させる力を加える構成するのが好ましく、面取り工程中においては、常に一定の力(おもりの重量)で前記回転砥石をガラス板に押しつけることになり、複雑な形状の非円形ガラスであっても安定して面取りを行うことができる。
【0007】
本発明において、傾斜用ローラの昇降機構は、傾斜用ローラの回転軸に連結されたラックと、該ラックと噛合するピニオンと、を備え、前記アームの回転が前記ピニオンを回転させる構成とするのが好ましく、より具体的には、例えば、前記ピニオンの軸に垂直方向に固定されたピニオンアームが、ボールジョイントとユニバーサルジョイントを介して、前記アームに連結されるようにすればよい。
【0008】
さらに、前記アームの回転とは独立して前記傾斜用ローラを上下移動させる機構を設けるの好ましく、この機構で傾斜用ローラの高さを調節することにより、曲率が異なる曲面ガラスに対しても容易に適用することができ、種々形状のガラスに対して高精度で安定した面取りを行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、例えば、自動車のサイドミラーのように、非円形でしかも曲面を有する曲面ガラスであっても、ガラス全周にわたって、回転砥石のガラス板端部への押しつけ圧は常に一定に保たれ、しかも砥石の中央部にガラス端部が押しつけられるため、安定して面取りを行うことが可能となる。その上、全周にわたり連続して面取り工程を行うことができることから、歩留まり及び生産性に優れた面取り装置を提供することが可能となる。
さらに、本発明の面取り装置は、以上の優れた特徴を有しているにも関わらず、構成は極めて簡単であり、面取り装置の低価格化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の曲面ガラス面取り装置の一例を図1及び2に示し、図を参照して本発明を詳細に説明する。図1及び2は、面取り装置の模式的正面図及び上面図である。図に示す面取り装置は、曲面ガラス板400を連続して傾斜、回転させながら回転砥石205でガラス板全周にわたり面取り作業を行う自動面取り装置である。
面取り装置は、ガラス板400を保持し、傾斜かつ回転可能な保持機構102〜114と、ガラス板端部に所定の力を加えて回転砥石を押し当て、面取り研磨を行う研磨機構201〜210と、常にガラス板の端部を前記回転砥石の中央部に当接させるために、回転砥石とガラス板の回転軸との距離に応じて、円板102の外周部を上下させて、保持機構の傾斜角を調節する傾斜角調節機構301〜309と、から構成され、これらがベース板101上に配置されている。
【0011】
ガラス板の保持機構において、ガラス板400を保持するゴム製の保持台108が円板102上に固定され、さらに空気バネのような弾性体103で支持されている。ここで、弾性体の回転軸113はベアリングボックス104を介して回転可能にベース板に支持され、さらに、ベース板の下方で回転軸113には、モータ107のギア106と噛合するギア105が取り付けられている。
真空パッド109に連結された真空配管110は、弾性体103及び回転軸113を貫通し、ロータリジョイント108を介して真空ポンプ(不図示)に接続されている。
また、円板102底面の外周部には、円板傾斜用ローラ309が接触する突起部111が設けられている。さらに、円板の回転を補助するガイドローラ112が、円板傾斜用ローラ309から±90°の位置に2つ配置されている。なお、ガイドローラ112は、台座(不図示)に回転可能に配置され、台座はスプリング(不図示)を介してベース板101に取り付けられている。
【0012】
次に、ガラス板の面取り研磨を行う研磨機構を説明する。
ベース板101の支柱201に回転可能にアーム202が取り付けられている。アーム202にはL字部材204を用いて砥石用モータ203及び回転砥石205が取付られる。また、アーム202にはワイヤ208を介しておもり209が連結され、滑車210で吊り下げされる。おもりの重量によりアームは図2の反時計方向に回転し、回転砥石をガラス板端部に所定の力で押し当てる。従って、おもりの重量を調節することにより、回転砥石をガラス板端部に押しつける力を調節することができる。このおもりの作用とは逆に、回転砥石をガラス板から引き離すためのアーム引き離し用シリンダ206が設けられており、ピストンロッド207を送り出すことにより、おもりの重量に打ち勝ってアームを押し戻し、回転砥石をガラス板から離した状態で待機させる。
【0013】
傾斜角度調節機構は、回転砥石とガラス板の回転軸との距離によって、円板傾斜用ローラ309の高さを調節して円板102を傾斜させ、ガラス板の端部を常に回転砥石205の中央部に押し当てるための機構である。円板傾斜用ローラ309はシリンダ307のピストンロッド308に取り付けられ、シリンダ307はピニオン及びラックのラック306に固定されている。
一方、ピニオン305の軸305’に連結するピニオンアーム304は、ユニバーサルジョイント(例えば三好キカイ製HJ−8)302及びボールジョイント(例えばTHK株式会社製RBL−8)303を介して支持板310に取り付けられたノブ301に連結されている。
【0014】
このような構成において、アーム202が支柱201の周りに回転してガラス板の回転軸に近づくと、ピニオンアーム304が振れてピニオン305が回転し、ラック306が下降する。即ち、円板傾斜用ローラ309は下降することになる。逆にアームがガラス板の回転軸から遠ざかると円板傾斜用ローラは上昇する。
一方、ノブ301を回すことにより、アームの動きとは独立してピニオンを回転させ、ラック306を上昇、下降させることができる。このノブ301による傾斜用ローラの高さ調節は、例えば、曲率の異なるガラスの面取りを行うときに行われる。
【0015】
次に、以上の面取り装置を用いて、面取り動作手順を説明する。
まず、アーム引き離しシリンダ206のピストンロッド207を送り出し、アーム202を回転砥石がガラス板と離れた位置の待機位置に停止させる。このとき、円板傾斜用ローラのシリンダ307のピストンロッド308送り出し量は最小であり、円板傾斜用ローラ309は円板外周部の突起部111から離れ、円板102は水平に保たれている。
ここで、面取りするガラスの種類に応じてローラ高さ調節ノブ301を調節して、円板傾斜用ローラ309を所定の高さに調節する。
【0016】
続いて、ガラス板10を保持台108上に載置し、続いてロータリジョイント114に連結された真空ポンプ(不図示)を駆動して、保持台108の内側の真空配管110を排気し、ガラス板10を真空パッド109で吸着保持する。
砥石用モータ203を駆動し、回転砥石205を所定の回転数に回転する。この時点で、アーム引き離しシリンダ206のピストンロッド縮めると、アームはおもり209の作用によりガラス板400の方向に移動する。即ち、回転砥石205とガラス板400が接近する方向に移動に、これにより、ピニオンアームが振れてピニオン300が回転し、ラック306が下方に移動する。
【0017】
ここで、シリンダ307のピストンロッド308を所定量(200×160mm、曲率半径1250mmのガラス板の場合で10mm程度)送り出し、円板傾斜用ローラ309を上方に移動させる。回転砥石205がガラス板端部に接触したときに円板102は傾斜し、これにより回転砥石308の中央部にガラス板400端部が当接する。さらに、回転砥石とガラス板が接触すると同時にモーター107を駆動し、円板102(及びガラス板400)を回転させる。以上の操作で、ガラス板端部の面取りが開始し、ガラス板端部には、おもり209により常に一定の力で回転砥石が押しつけられることになる。なお、上記形状のガラス場合、長辺側のエッジを回転砥石の中央部に当接させるために必要な円板外周部の持ち上げ量は6mm程度である。
【0018】
ガラス基板の長辺部の面取りが終了し、短辺部の面取りに移る場合でも、連続して円滑に移行する。この場合、回転砥石205とガラス板の回転軸との距離は短くなるため、ピニオンが回転してラック及びシリンダ307が下降し、その結果として円板傾斜用ローラ309が下降して円板の傾斜の程度は小さくなり、ガラス板の端部が回転砥石の中央部に来るようになる。即ち、ガラス板の端部は、常に回転砥石の中央部に同じ力で当接されることになる。
【0019】
ガラス板が一回転して元の位置に戻ると、モータ107の回転を停止させる。同時に、シリンダ206のピストンロッドを送り出してアームを引き離す、さらにシリンダ307のピストンロッドを10mm程度下降させて、ローラ309を突起部から分離させる。
以上を繰り返し行うことにより多数のガラス板を連続して面取り処理することができる。なお、曲率が異なるガラス板の処理をするときは、上述したように、ローラ高さ調節ノブを調整する。ローラ高さ調節ノブはアームの動きと無関係に傾斜用ローラの高さを調節できるので、ガラス板の種類毎に曲率に応じた高さ調節を行えばよい。また、上記実施例では、ガラス板が一回転する間に面取りを完了させる構成としたが、2回転又はそれ以上回転させ面取りを複数回繰り返す構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のガラス面取り装置の構成例を示す模式的正面図である。
【図2】本発明のガラス面取り装置の構成例を示す模式的上面図である。
【符号の説明】
【0021】
101 ベース板、
102 円板、
103 弾性体(空気バネ)、
104 ベアリングボックス、
105,106 ギア、
107 モータ、
108 保持台、
109 真空パッド、
110 真空配管、
111 突起部、
112 ガイドローラ、
113 回転軸、
114 ロータリジョイント、
201 支柱、
202 アーム、
203 砥石用モータ、
204 L字部材、
205 回転砥石、
206 アーム引き離し用シリンダ、
207 ピストンロッド、
208 ワイヤ、
209 おもり、
210 滑車、
301 ローラ高さ調節ノブ、
302 ユニバーサルジョイント、
303 ボールジョイント、
304 ピニオンアーム、
305 ピニオン、
305’ピニオンシャフト、
306 ラック、
307 シリンダ、
308 ピストンロッド、
309 円板傾斜用ローラ、
310 支持板、
400 曲面ガラス板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面ガラス板を保持し、回転かつ傾斜可能な保持機構と、支柱の周りに回転可能なアームに取り付けられた回転砥石を備えたガラス端部の研磨機構と、前記保持機構の水平面に対する傾斜角を調節する傾斜角調節機構と、からなり、前記アームを前記支柱の周りに回して前記回転砥石を前記ガラス板端部に所定の力で押し当て、前記保持機構を回転させながら前記ガラス板全周の面取りを行う面取り装置であって、前記回転砥石と前記保持機構の回転軸との距離に応じて前記保持機構の傾斜角を調節し、前記ガラス板端部を常に前記回転砥石の中央部に押し当てて面取りを行う構成としたことを特徴とする曲面ガラスの面取り装置。
【請求項2】
前記傾斜角調節機構は、前記保持機構の外周部の下方に配置された傾斜用ローラと、前記アームがガラス板方向に回転したときに前記傾斜用ローラを下降させ、逆方向に回転したときに前記傾斜用ローラを上昇させる昇降機構と、からなることを特徴とする請求項1に記載の曲面ガラスの面取り装置。
【請求項3】
前記昇降機構は、前記傾斜用ローラの回転軸に連結されたラックと、該ラックと噛合するピニオンと、を備え、前記アームの回転が前記ピニオンを回転させる構成としたことを特徴とする請求項2に記載の曲面ガラス板の面取り装置。
【請求項4】
前記ピニオンの軸に垂直方向に固定されたピニオンアームが、ボールジョイントとユニバーサルジョイントを介して、前記アームに連結されていることを特徴とする請求項3に記載の曲面ガラスの面取り装置。
【請求項5】
前記アームの回転とは独立して前記傾斜用ローラを上下移動させる機構を設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の 曲面ガラスの面取り装置。
【請求項6】
前記アームは、ワイヤで吊り下げられたおもりによりガラス板方向に力が加えられ、面取り工程中において、常に一定の力で前記回転砥石をガラス板に押しつける構成としたことを特徴とする間請求項2〜5のいずれか1項に記載の曲面ガラスの面取り装置。
【請求項7】
前記ガラス板は、自動車のサイドミラーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の曲面ガラスの面取り装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−223010(P2007−223010A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49241(P2006−49241)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(397002119)ハイテックエンジニアリング株式会社 (4)
【Fターム(参考)】