説明

有効なコンジュゲートおよび親水性リンカー

薬物を細胞結合剤に結合させるためのリンカーを、ポリエチレングリコールスペーサーを組み込むことにより修飾して、親水性リンカーにする。細胞結合剤−薬物コンジュゲートの有効性または効能は、細胞表面に少ない数の抗原を発現するものまたは処置に対して耐性である癌細胞を含めた種々の癌細胞タイプにおいて、驚くべきことに数倍向上する。チオエーテル部位および反応性基を持つメイタンシノイドを調製するための方法であって、本質的に単一の工程においてメイタンシノイドを細胞結合剤に連結させる方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年4月30日に提出された米国仮出願第61/049,289号に対する優先権を主張する、2009年4月30日に提出された米国本出願第12/433,668号の一部継続である。先願である出願第12/433,668号および第61/049,289号の全開示内容は、付随する継続出願の開示の部分と見なされ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、薬物(例えば、細胞毒性剤)を、細胞結合剤(例えば、抗体)に、リンカーが薬物の活性を増大させるのに寄与するように連結させる新規のリンカーに関する。特に、本発明は、新規の親水性リンカーの使用であって、かかるリンカーが、細胞表面に少ない数の抗原を発現するものまたは処置に対して耐性である癌細胞を含めた種々の癌細胞タイプにおいて、細胞結合剤−薬物コンジュゲートの有効性または効能を数倍向上させる、使用に関する。本発明はまた、チオエーテル部位および反応性基を持つメイタンシノイドを調製するための方法であって、メイタンシノイドを細胞結合剤に連結させる、方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
標的特異的治療剤として細胞毒性薬物の抗体コンジュゲートが開発されつつある。種々の癌細胞表面抗原に対する抗体は、種々の本質的な細胞標的、例えば、微小管(メイタンシノイド、オーリスタチン、タキサン:米国特許第5,208,020号;同第5,416,064号;同第6.333,410号;同第6,441,163号;同第6,340,701号;同第6,372,738号;同第6,436,931号;同第6,596,757号;同第7,276.497号)、DNA(カリケアマイシン、ドキソルビシン、CC−1 065アナログ;米国特許第5,475,092号;同第5,585,499号;同第5,846,545号;同第6,534,660号;同第6,756,397号;同第6,630,579号)を阻害する種々の細胞毒性剤とコンジュゲートされている。これらの細胞毒性薬物のいくつかとの抗体コンジュゲートが、癌の治療のための臨床において積極的に調査されている(Richart、A.D.、およびTolcher、A.W.、2007、Nature Clinical Practice、4、245−255)。
【0004】
抗体−細胞毒性剤コンジュゲートは、抗体上の反応性部位、例えば、リシンアミノ基、またはシステイン基(天然ジスルフィド結合の還元によって、または分子生物学的方法を用いた、抗体へのさらなる非天然システイン残基のエンジニアリングによって生成される)の初期修飾によって典型的には調製される。したがって、抗体は、ヘテロ二官能性リンカー試薬、例えば、SPDB、SMCCおよびSIABによって例示される、これまでに記載されているもの(米国特許第6,913,758号および米国特許出願公開第20050169933号)によって最初に修飾されて、反応性基、例えば、混合されたピリジルジスルフィド、マレイミドまたはハロアセトアミドを有するリンカーを組み込む。抗体に組み込まれた反応性リンカー基は、チオール基などの反応性部位を含有する細胞毒性剤によってその後コンジュゲートされる。別のコンジュゲーション経路は、チオール反応性基(例えば、ハロアセトアミド、またはマレイミド)を含有する細胞毒性剤誘導体と細胞結合剤上のチオール基との反応によるものである。チオール基は、天然ジスルフィド残基の還元によって(R.Singhら、Anal.Biochem.、2002、304、147−156)、または組み込まれたジスルフィド部位の還元によって(SPDP、スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネートを介し、続いて、ジチオトレイトールによって還元、D.G.Gillilandら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、1980、77、4539−4543)、あるいはさらなる非天然システイン残基(J.B.Stimmelら、J.Biol.Chem.、2000、275、30445−30450)の組み込み、または2−イミノチオラン(R.Jueら、Biochemistry、1978、17、5399−5406)もしくはメチル3−メルカプトプロピオンイミデートエステル(T.P.Kingら、Biochemistry、1978、17、1499−1506)との反応によるチオール基の組み込みによって、細胞結合剤、例えば、抗体に組み込まれる。
【0005】
ジスルフィドまたはチオエーテル連結部を有する抗体−細胞毒性剤コンジュゲートは、細胞内で、恐らくはリソソームにおいて開裂して、活性な細胞毒性剤を癌細胞内に送達する(H.K.Ericksonら、2006、Cancer Research、66、4626−4433)。還元性ジスルフィド連結部を有する抗体−細胞毒性剤コンジュゲートはまた、標的細胞の死滅に加えて、インビトロにおいておよび異種移植モデルにおいてインビボで抗原陰性細胞と抗原陽性細胞との混合集団中の近接する抗原陰性細胞も死滅させ、これは、不均一な抗原発現を伴う腫瘍内の隣接する非抗原発現細胞に対する有効性を改善させる際の、標的−細胞で放出された細胞毒性剤の役割を示唆している(Y.V.Kovtunら、Cancer Research、2006、66、3214−3221)。
【0006】
抗体−細胞毒性薬物コンジュゲートは、インビトロにおいて細胞死滅活性、インビボにおいて抗腫瘍活性を示すが、これらの有効性は、多くの場合において、特に、標的癌細胞における抗原発現が低い場合、または標的細胞が処置に対して耐性である場合に減少する。これは、臨床的状況においてしばしば起こり、患者において低度から中程度の抗腫瘍活性をもたらす。耐性を回避しようとするための可能性のあるアプローチは、親水性または疎油性官能基を持つ新規の薬物を合成することである(G.Szokacsら、Nature Reviews、5;219−235、2006を参照)。しかし、このプロセスは、煩雑であり、いくつかのアナログが合成されなければならず、薬物の構造の修飾が、生物学的活性の損失をしばしばもたらす。したがって、異なるアプローチが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非開裂性リンカーを介した細胞結合剤および薬物の細胞毒性コンジュゲートを調製するための、当該分野において記載されている方法は、2つの反応工程を必要とする(米国特許第5,208,020号および米国特許出願公開第2005/0169933号)。まず、細胞結合剤、例えば、抗体は、細胞結合剤の反応性基、例えば、リシン残基上のアミン基またはシステイン残基上のスルフヒドリル基との反応を経て共有結合による化学結合を形成する二官能性架橋剤によって修飾される。細胞結合剤の修飾に続いて、生成物が精製されて、所望の修飾された細胞結合剤を未反応の架橋剤から分離する。コンジュゲーション工程として知られている第2工程において、反応性薬物誘導体、例えば、チオール含有メイタンシノイドが、修飾された細胞結合剤との反応のために、修飾された細胞結合剤に添加される。この反応に続いて、最終コンジュゲートから、いずれの未反応の薬物種および他の副生成物も除去するためのさらなる精製が必要とされる。これらの複数の反応および精製工程は、低収率の最終コンジュゲートをもたらし、これらの工程を大規模で実行することを考えるとき、高価かつ煩雑であり得る。これらの方法のさらなる欠点は、薬物が付着することなく未反応の架橋剤が細胞結合剤に連結したままであるときに導入される、コンジュゲートの不均一性である。未反応の架橋剤は、次いで、さらなる副反応、例えば、加水分解および分子内または分子間反応を経る可能性がある。したがって、本質的に1つの反応工程において細胞結合剤、例えば、抗体に非開裂性結合を介して共有結合的に連結され得る、官能化された反応性薬物誘導体、例えば、メイタンシノイドが必要とされている。
【0008】
本発明は、薬物を細胞結合剤に、リンカーが薬物の活性を増大させるのに寄与するように連結させる新規のリンカーを設計することによって耐性の問題に対処する。したがって、本発明は、薬物が細胞結合剤に連結される様式を、リンカー設計が、特に抗原発現が低い広範な腫瘍、または薬物耐性腫瘍に対して活性であるコンジュゲートを提供するように、改善する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリエチレングリコール[PEG,(−CHCHO))]スペーサーを組み込むことによって常套のリンカー(米国特許出願公開第20050169933号に記載されている例えば、SMCC、SIABなど)が修飾されて親水性リンカーとされるときの新規の所見に基づいており、細胞結合剤−薬物コンジュゲートの有効性または効能が、細胞表面において少ない数の抗原を発現するものを含めた種々の癌細胞タイプにおいて、驚くべきことに数倍向上する。
【0010】
また、これらのPEG含有コンジュゲートは、予想外にも、処置に対して耐性である細胞株に対して、これまで記載されているコンジュゲートよりも有効である。
【0011】
さらに、抗体コンジュゲートの場合には、親水性リンカーの組み込みが、抗体1分子あたり最大で15分子の薬物のコンジュゲーションを高収率で凝集も沈澱もなく可能にした。抗体1分子あたり最大で15分子の薬物が連結した、親水性リンカーを有するこれらのコンジュゲートは、(非修飾抗体の場合と同様に)高い親和性によって標的抗原に結合した。
【0012】
本発明はまた、細胞結合剤を有するチオエーテル連結メイタンシノイドコンジュゲートが、細胞結合剤の従来の化学修飾によらず、本質的に1つの反応工程において調製され得るように、細胞結合剤のアミン基またはチオール基に対して反応性である新規のメイタンシノイドも開示する。
【0013】
本発明は、チオエーテル部位および反応性基を持つ新規のメイタンシノイド誘導体の合成のためのプロセスを開示する。これらの新規のメイタンシノイドは、細胞結合剤を有するチオエーテル連結コンジュゲートの、本質的に1つの反応工程における調製に有用である。これらの新規の反応性メイタンシノイドを使用する細胞結合剤コンジュゲートの調製のためのプロセスも開示される。
【0014】
したがって、本発明は、式(1)の化合物または式(1’)の特定の化合物:
Z−X,−(−CH−CH−O−)−Y−D (1)
D−Y−(−CH−CH−O−)−X−Z (1’)
式中:
Zは、細胞結合剤とアミドまたはチオエーテル結合を形成することができる反応性官能基を表し;
Dは、薬物を表し;
Xは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、またはエーテル結合を介して細胞結合剤に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
Yは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、エーテル結合、アミン結合、炭素−炭素結合およびヒドラゾン結合からなる群から選択される共有結合を介して薬物に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
lは、0または1であり;
pは、0または1であり;
nは、1〜2000の整数である;
を提供する。
【0015】
本発明の別の態様は、式(2)の細胞結合剤薬物コンジュゲートまたは式(2’)の特定の化合物:
CB−[XK−CH−CH−O−)−Y−D] (2)
[D−Y−(−CH−CH−O−)−X−CB (2’)
式中、
CBは、細胞結合剤を表し;
Dは、薬物を表し;
Xは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、またはエーテル結合を介して細胞結合剤に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
Yは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、エーテル結合、アミン結合、炭素−炭素結合およびヒドラゾン結合からなる群から選択される共有結合を介して薬物に付着した脂肪族、芳香族、または複素環式基を表し;
lは、0または1であり;
pは、0または1であり;
mは、2〜15の整数であり;
nは、1〜2000の整数である;
である。
【0016】
本発明の別の態様は、式(3)の化合物または式(3’)の特定の化合物:
Z−X,−(−CH−CHO−)−Y−D (3)
D−Y−(−CH−CHO−)−Xi−Z (3’)
式中:
Zは、細胞結合剤とアミドまたはチオエーテル結合を形成することができる反応性官能基を表し;
Dは、薬物を表し;
Xは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、またはエーテル結合を介して細胞結合剤に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
Yは、ジスルフィド結合を介して薬物に付着した脂肪族、非芳香族複素環式または芳香族複素環式基を表し;
lは、0または1であり;
nは、1〜14の整数である;
である。
【0017】
本発明の別の態様は、式(4)の細胞結合剤薬物コンジュゲートまたは式(4’)の特定の化合物:
CB−(Xi−(−CH−CHO−)−Y−D) (4)
[D−Y−(−CH−CHO−)−X,]−CB (4’)
式中、
CBは、細胞結合剤を表し;
Dは、薬物を表し;
Xは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、またはエーテル結合を介して細胞結合剤に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
Yは、ジスルフィド結合を介して薬物に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
lは、0または1であり;
mは、3〜8の整数であり;
nは、1〜14の整数である;
である。
【0018】
本発明のなおさらなる態様は、その方法による処置に対して感受性の癌を処置するための方法であって、有効用量の、式(2)または(4)のコンジュゲートを含む組成物を、処置を必要とする患者に非経口投与することを含む方法である。
【0019】
本発明のさらに別の態様において、反応性基を持ち、式(5):
D’−Y’−V−Q−W−Z’(5)
式中:
D’は、スルフヒドリル保持メイタンシノイド、例えば、N2’−デアセチル−iV2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1)またはTV2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)メイタンシン(DM4)を表し;
Y’は、チオエーテル結合を表し、
Vは、1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;
Qは、適宜、芳香族または複素環式部位を表し;
Wは、1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;
Z’は、アミンまたはスルフヒドリル反応性基を表す;
によって表される、チオエーテル部位を有する新規のメイタンシノイドが提供される。
【0020】
チオエーテル部位を持つ反応性メイタンシノイド誘導体は、スルフヒドリル保持メイタンシノイド(例えば、DM1およびDM4)およびヘテロ二官能性架橋剤から調製される。反応は、以下の化学方程式:
D’+V−V−Q−W−Z’→D’−Y’−V−Q−W−Z’
式中:
D’は、N2’−デアセチル−TV2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1)または2−デアセチル−N2−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)メイタンシン(DM4)などのスルフヒドリル保持メイタンシノイドを表し;
Vは、1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;
Qは、適宜、芳香族または複素環式部位を表し;
Wは、1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;
Z’は、アミンまたはスルフヒドリル反応性基であり;
Y”は、スルフヒドリル反応性部位を表し;
Y’は、スルフヒドリル保持メイタンシノイドと架橋剤との間のチオエーテル結合を表す;
によって表される。
【0021】
本発明はまた、非開裂結合を介して連結された、メイタンシノイドおよび細胞結合剤の細胞毒性コンジュゲート(式10)の調製のためのプロセスであって、細胞結合剤を式Z’−W−Q−V−Y’−D’の化合物と反応させて、式CB−(Z”−W−Q−V−Y’−D’)
式中、
Z’は、アミンまたはスルフヒドリル反応性基を表し;
Wは、1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;
Qは、適宜、芳香族または複素環式部位を表し;
Vは、1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;
Y’は、チオエーテル結合を表し;
D’は、スルフヒドリル保持メイタンシノイド、例えば、N2’−デアセチル−iV2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1)またはN2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−l−オキソペンチル)メイタンシン(DM4)を表し;
CBは、細胞結合剤を表し;
Z”は、アミド結合を表し;
mは、2〜8の整数である;
の細胞結合剤コンジュゲートを提供することを含むプロセスを開示する。
【0022】
細胞結合剤メイタンシノイドコンジュゲートは、さらに精製されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の代表的なPEG含有チオスクシンイミジル連結コンジュゲートの構造的表示を示す(mAb=モノクローナル抗体)。
【図2】本発明の代表的なPEG含有チオアセトアミジル連結コンジュゲートの構造的表示を示す。
【図3】本発明の代表的なPEG含有ジスルフィド連結化合物の構造的表示を示す。
【図4】本発明のPEG含有チオスクシンイミジル連結コンジュゲートのための合成スキームを示す。
【図5】本発明のPEG含有チオアセトアミジル連結コンジュゲートのための合成スキームを示す。
【図6】本発明のPEG含有ジスルフィド連結化合物のための合成スキームを示す:a.)細胞結合剤への1工程コンジュゲーションのためのPEG含有ジスルフィド連結化合物の合成;およびb.)ヘテロ二官能性PEG含有ジスルフィド連結架橋化合物の合成。
【図7】本発明のPEG含有チオスクシンイミジル連結コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(1工程コンジュゲーション)。
【図8】本発明のPEG含有チオスクシンイミジル連結コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(2工程コンジュゲーション)。
【図9】本発明のPEG含有チオエーテル連結(チオアセトアミジル連結)コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(1工程コンジュゲーション)。
【図10】本発明のPEG含有チオエーテル連結(チオアセトアミジル連結)コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(2工程コンジュゲーション)
【図11】本発明のPEG含有ジスルフィド連結コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(1工程コンジュゲーション)。
【図12】本発明のPEG含有ジスルフィド連結コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(2工程コンジュゲーション)。
【図13】本発明のPEG含有スルフヒドリル反応性チオスクシンイミジル連結化合物の合成スキームを示す。
【図14】本発明のPEG含有チオスクシンイミジル連結コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(1工程コンジュゲーション)。
【図15】本発明のPEG含有チオスクシンイミジル連結コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(2工程コンジュゲーション)。
【図16】本発明のPEG含有スルフヒドリル反応性チオアセトアミジル連結化合物のための合成スキームを示す;a.)1工程コンジュゲーションでのPEG含有スルフヒドリル反応性チオアセトアミド連結化合物の合成;およびb.)2工程コンジュゲーションでのヘテロ二官能性PEG含有スルフヒドリル反応性架橋化合物の合成。
【図17】本発明のPEG含有チオアセトアミジル連結コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(1工程コンジュゲーション)。
【図18】本発明のPEG含有チオアセトアミジル連結コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(2工程コンジュゲーション)。
【図19】本発明のPEG含有スルフヒドリル反応性チオエーテル連結化合物のための合成スキームを示す:a.)1工程コンジュゲーションでのPEG含有スルフヒドリル反応性チオアセトアミジル連結化合物の合成;およびb.)2工程コンジュゲーションでのホモ二官能性PEG含有スルフヒドリル反応性架橋化合物の合成。
【図20】本発明のPEG含有チオアセトアミジル連結コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(1工程コンジュゲーション)。
【図21】本発明のPEG含有チオアセトアミジル連結コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(2工程コンジュゲーション)。
【図22】脱グリコシル化HuAb−PEGMaI−DM1コンジュゲート(10.7DM1/Ab、平均)の質量スペクトル(MS)を示す。
【図23】HuAb−PEGMaI−DM1コンジュゲート(10.7DM1/Ab、平均)のサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を示す。
【図24】HuAb−PEG4MaI−DM1コンジュゲート(10.7メイタンシノイド/抗体)のFACS結合が非修飾抗体の該結合に類似することを示す。
【図25】多剤耐性COLO205−MDR細胞に対する抗EpCAM抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。
【図26】多剤耐性COLO205−MDR細胞に対する抗CanAg抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。
【図27】Molp−8多発性骨髄腫細胞に対する抗CD56抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。
【図28】HCT15細胞に対するEpCAM抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。
【図29】COLO205mdr細胞に対する抗EpCAM抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。
【図30】HCT15異種移植に対する抗EpCAM抗体−メイタンシノイドコンジュゲートのインビボ腫瘍活性を示す。
【図31】COLO205mdr異種移植に対する抗EpCAM抗体−メイタンシノイドコンジュゲートのインビボ腫瘍活性を示す。
【図32】COLO205異種移植に対する抗EpCAM抗体−メイタンシノイドコンジュゲートのインビボ腫瘍活性を示す。
【図33】COLO205mdr異種移植に対する抗CanAg抗体−メイタンシノイドコンジュゲートのインビボ腫瘍活性を示す。
【図34】最大17D/Aを有する抗CanAg抗体(huC242)−PEG24−Mal−DM1コンジュゲートの結合を示す。
【図35】COLO205細胞に対する、4〜17D/Aを有する抗CanAg抗体(huC242)−PEG24−MaI−DM1コンジュゲートのインビトロ有効性を示す。
【図36】多剤耐性(pgp+)COLO205−MDR細胞に対する、4〜17D/Aを有する抗CanAg抗体(huC242)−PEG24−MaI−DM1コンジュゲートのインビトロ有効性を示す。
【図37】UO−31細胞に対する抗EGFR抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。
【図38】抗体−PEG4−MaI−DM1の血漿薬物動態を示す。
【図39】本発明のチオスクシンイミジル連結コンジュゲートの構造的表示を示す(mAb=抗体、m=2〜8)。
【図40】本発明のチオアセトアミジル連結コンジュゲートの構造的表示を示す(mAb=抗体、m=2〜8)。
【図41】本発明の化合物によって調製されるチオスクシンイミジル連結コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(mAb=抗体、m=2〜8)。
【図42】本発明の化合物によって調製されるチオアセトアミジル連結コンジュゲートのためのコンジュゲーション手順を示す(mAb=抗体、m=2〜8)。
【図43】本発明のアミン−反応性チオスクシンイミジル連結化合物のための合成スキームを示す。
【図44】マレイミドとNHSエステルとの間に直鎖炭化水素を含有するアミン反応性チオスクシンイミジル連結化合物の調製のための合成スキームを示す。
【図45】本発明の化合物によって調製される脱グリコシル化mAb−SMCC−DM1コンジュゲート(3.42DM1/mAb、平均)の質量スペクトル(MS)を示す。
【図46】マレイミドとNHSエステルとの間にシクロルキル基を含有するアミン−反応性チオスクシンイミジル連結化合物の2工程調製のための合成スキームを示す。
【図47】マレイミドとNHSエステルとの間にサイロアキル基を含有するアミン−反応性非開裂性チオスクシンイミジル連結化合物の2工程調製のための合成スキームを示す。
【図48】本発明のチオアセトアミジル連結化合物の調製のための合成スキームを示す。
【図49】本発明のチオアセトアミジル連結化合物の2工程調製での合成スキームを示す。
【図50】本発明のチオスクシンイミジル連結コンジュゲート(mAb=抗体、m=2〜8)のための構造を示す。
【図51】本発明の化合物によって調製されるチオスクシンイミジル連結コンジュゲート(mAb=抗体、m=2〜8)のためのコンジュゲーション手順を示す。
【図52】本発明のスルフヒドリル反応性チオスクシンイミジル連結化合物の調製のための合成スキームである。
【図53】3.8またはD/Aを有する抗CanAg(huC242)−Mal−(CH−Mal−DM1コンジュゲートが抗原陽性COL205細胞に結合することを示す。
【図54】3.8D/Aを有する抗CanAg抗体(huC242)−Mal−(CH−Mal−DM1コンジュゲートが、抗原陽性COLO205細胞に対して有効であるが、抗原陰性Namalwa細胞に対してはあまり有効でないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、ポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキサイドリンカー((−CHCHO))によって薬物、例えば細胞毒性剤に連結した細胞結合剤、例えば抗体のコンジュゲートが、典型的な脂肪族リンカーおよび同様の薬物負荷を有する常套の細胞結合剤薬物コンジュゲートとの比較に基づいて予測したよりも数倍高い細胞毒性を標的癌細胞に対して示すという新規の所見を開示する。重要なことに、本発明において記載されているコンジュゲートは、多剤耐性(mdr)であり、細胞毒性薬物による処置に対して低い感度を有する癌細胞に対してかなり有効または効果的である。癌の治療は、異なる化学治療剤による複数のラウンドの処置の後にしばしば遭遇する薬物耐性メカニズムを克服するという困難を有する。癌細胞において観察されるかかる1つのメカニズムは、多剤耐性と呼ばれ、ATP結合カセット(ABC)輸送体による薬物の輸送の向上によって引き起こされる(C.Drumond、B.I.Sikic、J Clin.Oncology、1999, 17、1061−1070、G、Szokacsら、Nature Reviews、5;219−234、2006)。これらの薬物耐性メカニズムを克服する治療、例えば、癌細胞によるかかる薬物流出を妨げるまたは克服することがかなり有用である。細胞結合剤および細胞毒性薬物のPEG連結コンジュゲートの細胞毒性が、多剤耐性癌細胞に対して評価されて、PEGリンカーが、これらの耐性細胞に対して何らかの利点を付与するかを試験した。mdr細胞に対するかかるアッセイにおいて、細胞結合剤および細胞毒性薬物のPEG連結コンジュゲートは、従来のリンカーから誘導されるはるかに有効でないコンジュゲートと比較して予想外に有効なmdr細胞死滅を示した。加えて、本発明のコンジュゲートはまた、多剤耐性腫瘍細胞によって確立された動物モデルにおいて顕著に、より高い抗腫瘍活性を示す。
【0025】
親水性ポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシドリンカー(PEGまたはPEO;(−CHCHO))の使用はまた、治療用途に望まれる1mg/mlを超える濃度において90%を超える高いタンパク質モノマーレベルで、細胞結合剤分子あたり比較的多数の薬物の組み込みも可能にする。さらに、広範な細胞毒性薬物負荷(細胞結合剤あたり2の小さな値から例えば15の多数までの薬物が連結)を有する細胞結合剤のポリエチレングリコール(PEG)連結コンジュゲートは、標的癌細胞に対して、コンジュゲートの薬物負荷の増大に基づく薬物送達の化学量論的増大から予想されたものより著しく向上した細胞毒性を示した。PEGスペーサーを有する、細胞結合剤および薬物のコンジュゲートが、本発明において記載されており、これらは、標的癌細胞に対し、同様の薬物負荷を有する常套的に調製されたコンジュゲートと比較して260〜650倍もの有効性の向上という超化学量論的増大を細胞毒性において示した(例えば、図29を参照)。
【0026】
したがって、本発明の一態様において、ポリエチレングリコールスペーサー(−CHCHO)および細胞結合剤と反応することが可能である反応性基を有するリンカーを有する薬物が記載される。
【0027】
この態様において特に考慮されるのは、式(1)の修飾化合物または式(1’)の特定の化合物:
Z−X,−(−CH−CH−O−)−Y−D (i)
D−Y−(−CH−CH−O−)−X−Z (1’)
式中:
Zは、細胞結合剤とアミドまたはチオエーテル結合を形成することができる反応性官能基を表し;
Dは、薬物を表し;
Xは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、またはエーテル結合を介して細胞結合剤に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
Yは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、エーテル結合、アミン結合、炭素−炭素結合およびヒドラゾン結合からなる群から選択される共有結合を介して薬物に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
lは、0または1であり;
pは、0または1であり;
nは、1〜2000の整数である;
である。
【0028】
好ましくは、Yを薬物に付着させる共有結合は、チオエーテル結合またはアミド結合である。
【0029】
好ましくは、nは、1〜100の整数である。なおより好ましくは、nは、1〜14の整数である。最も好ましい態様において、nは、1〜4の整数である。
【0030】
本発明の第2態様において、ポリエチレングリコールリンカー(−CHCHO)を有する、細胞結合剤および薬物の新規のコンジュゲートが記載される。これらのコンジュゲートは、常套のリンカーおよび等価の薬物負荷を有するコンジュゲートよりも癌細胞に対して有効である。
【0031】
好ましい態様において特に考慮されるのは、式(2)の、細胞結合剤および薬物のコンジュゲート、または式(2’)の特定の化合物:
CB−[X,−(−CH−CH−O−)−Y−D] (2)
[D−Y−(−CH−CH−O−)−X−CB (T)
式中、
CBは、細胞結合剤を表し;
Dは、薬物を表し;
Xは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、またはエーテル結合を介して細胞結合剤に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
Yは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、エーテル結合、アミン結合、炭素−炭素結合およびヒドラゾン結合からなる群から選択される共有結合を介して薬物に付着した脂肪族、芳香族、または複素環式基を表し;
lは、0または1であり;
pは、0または1であり;
mは、2〜15の整数であり;
nは、1〜2000の整数である;
である。
【0032】
好ましくは、共有結合は、チオエーテル結合またはアミド結合である。
【0033】
好ましくは、mは、3〜8の整数である。
【0034】
好ましくは、nは、1〜100の整数である。なおより好ましくは、nは、1〜14の整数である。最も好ましい態様において、nは、1〜4の整数である。
【0035】
本発明は、抗体が細胞毒性薬物にジスルフィド結合を介して連結している抗体コンジュゲートの場合、イムノコンジュゲートの有効性または効能を向上させる際、連結される薬物の数とポリエチレングリコールスペーサーの長さとの間に重要な相関が存在するという新規の所見にも基づく。このリンカー設計のさらなる利益は、抗体−薬物コンジュゲートの望ましい高いモノマー比および最小限の凝集である。したがって、一態様において、本発明は、ジスルフィド連結コンジュゲートのためのポリエチレングリコールスペーサーが2〜8のエチレンオキシ基からなり、連結された薬物の数が3〜8の範囲であるとき、それは、抗体−薬物コンジュゲートに最高の生物学的有効性または効能を与え、また、望ましい高いモノマー含量を与えるという重要な所見に基づく。
【0036】
好ましい態様において、短いポリエチレングリコールスペーサー((CHCHO)n=I〜I4)を有するジスルフィド基(−S−S−)を介して、細胞結合剤と反応することが可能な官能基と連結された細胞毒性薬物が記載される。
【0037】
この態様において特に考慮されるのは、式(3)の修飾細胞毒性化合物または式(3’)の特定の化合物:
Z−XH−CH−CHO−)−Y−D (3)
D−Y−(−CH−CHO−)−X,−Z (3’)
式中:
Zは、細胞結合剤とアミドまたはチオエーテル結合を形成することができる反応性官能基を表し;
Dは、薬物を表し;
Xは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、またはエーテル結合を介して細胞結合剤に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
Yは、ジスルフィド結合を介して薬物に付着した脂肪族、非芳香族複素環式または芳香族複素環式基を表し;
lは、0または1であり;
nは、1〜14の整数である;
である。
【0038】
好ましくは、nは、2〜8の整数である。
【0039】
別の好ましい態様において、ポリエチレングリコールスペーサー((CHCHO)n=I〜I4)を有するジスルフィド基(−S−S−)を介して3〜8の狭い薬物負荷によって連結された、細胞結合剤および薬物のコンジュゲートが記載され、これは、癌細胞に対して相対的に高い有効な生物学的活性を示し、また最小限のタンパク質凝集で望ましい生化学的特性:高いコンジュゲーション収率および高いモノマー比;を有する。
【0040】
この態様において特に考慮されるのは、式(4)の細胞結合剤薬物コンジュゲートまたは式(4’)の特定の化合物:
CB−(XK−^H−CHO−V−Y−D)ln (4)
[D−Y−(−CH−CHO−)−X,]−CB(4’)
式中:
CBは、細胞結合剤を表し;
Dは、薬物を表し;
Xは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、またはエーテル結合を介して細胞結合剤に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
Yは、ジスルフィド結合を介して薬物に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
lは、0または1であり;
mは、3〜8の整数であり;
nは、1〜14の整数である;
である。
【0041】
好ましくは、mは、3〜6の整数である。
【0042】
また、好ましくは、nは、2〜8の整数である。
【0043】
本発明において、薬物は親油性分子であり、これらは細胞結合剤、例えば、抗体にコンジュゲートされると、タンパク質の凝集または沈殿に起因してしばしば収率の損失が生じる。細胞結合剤あたりの薬物の数を増大させることで、さらに悪いタンパク質の凝集または沈殿を典型的にはもたらし、これによりモノマー百分率が低くなり、収率が低下する。従来のリンカーによる典型的なコンジュゲート挙動と対照的に、PEGリンカーは、治療適用に有用である1mg/ml以上の高濃度で、細胞結合剤と薬物とのコンジュゲートのモノマー百分率(>90%のモノマー)および収率(>70%)において望ましい改善をもたらす。加えて、これらのコンジュゲートは、4℃での長期貯蔵に際して安定である。
【0044】
本発明において、反応性基を持つチオエーテル部位を有する新規のメイタンシノイドが開示され、これらの化合物は、式(5):
D’−Y’−V−Q−W−Z’(5)
式中:
Vは、好ましくは、1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;より好ましくは、1〜5個の炭素原子を有する線状アルキルであり、さらにより好ましくは、Vは、1個の炭素のアルキル基(CH)であり;
Wは、1〜10個の炭素原子を有する;より好ましくは、2〜8個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;さらにより好ましくは、Wは、シクロヘキシル基であり;
D’は、スルフヒドリル保持メイタンシノイドを表し、より好ましくは、DM1、DM3およびDM4から選択され;
Y’は、チオエーテル結合を表し;
Qは、適宜、芳香族または複素環式部位を表し、好ましくは、Qは、存在せず;
Z’は、限定されないが、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、パラまたはオルトニトロフェニルエステル、ジニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステルおよびスルホテトラフルオロフェニルエステルから選択されるアミン反応性基またはチオール反応性基であり;マレイミドまたはハロアセトアミドであり、より好ましくは、Zは、Nヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステルまたはマレイミドである;
によって表されるようになっている。
【0045】
別の実施形態において、チオエーテル部位を持つ反応性メイタンシノイド誘導体は、スルフヒドリル保持メイタンシノイド(例えば、DM1およびDM4)およびヘテロ二官能性架橋剤から調製される。反応順序は、式(6):
D’+γ”−V−Q−W−Z’→D’−Y’−V−Q−W−Z’ (6)
式中:
Vは、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基;より好ましくは、1〜5個の炭素原子を有する線状アルキルであり、さらにより好ましくは、Vは1個の炭素のアルキル基(CH)であり;
Wは、1〜10個の炭素原子を有する;より好ましくは、2〜8個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、さらにより好ましくは、Wは、シクロヘキシル基であり;
Y”は、マエイミドまたはハロアセトアミドから選択されるチオール反応性基、好ましくはマレイミドを表し;
D’は、スルフヒドリル保持メイタンシノイドを表し、より好ましくは、DM1、DM3およびDM4から選択され;
Y’は、チオエーテル結合を表し
Qは、適宜、芳香族または複素環式部位を表し、好ましくは、Qは存在せず
Z’は、限定されないが、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、パラまたはオルトニトロフェニルエステル、ジニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステルおよびスルホテトラフルオロフェニルエステルから選択されるアミン反応性基またはチオール反応性基を表し;マレイミドまたはハロアセトアミド、より好ましくは、Zは、Nヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステルまたはマレイミドを表し
Y’は、チオエーテル結合を表す;
によって表される。
【0046】
本発明はまた、非開裂結合を介して連結された、メイタンシノイドおよび細胞結合剤の細胞毒性コンジュゲートの調製のためのプロセスであって、細胞結合剤を式Z’−W−Q−V−Y’−D’の化合物と反応させて、式CB−(Z”−W−Q−V−Y’−D’)
式中、
Wは、1〜10個の炭素原子を有する;より好ましくは、2〜8個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、さらにより好ましくは、Wは、シクロヘキシル基であり;
Qは、適宜、芳香族または複素環式部位を表し、好ましくは、Qは存在せず;
Vは、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;より好ましくは、1〜5個の炭素原子を有する線状アルキル基であり、さらにより好ましくは、Vは、1個の炭素のアルキル基(CH2)であり;
Y’は、チオエーテル結合を表し;
D’は、メイタンシノイドを持つスルフヒドリルを表し、より好ましくは、DM1、DM3およびDM4から選択され;
CBは、抗体、単鎖抗体、抗体フラグメント、ペプチド、成長因子、ホルモン、ビタミン、またはアンキリンリピートタンパク質(DARPin)から選択される細胞結合剤を表し、好ましくは、細胞結合剤は、抗体もしくは抗体フラグメントまたはDarpinであり;
Z’は、限定されないが、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、パラまたはオルトニトロフェニルエステル、ジニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステルおよびスルホテトラフルオロフェニルエステルから選択されるアミン反応性基またはチオール反応性基であり;マレイミドまたはハロアセトアミドであり、より好ましくは、Zは、Nヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステルまたはマレイミドであり;
Z”は、チオエーテル結合またはアミド結合を表す;
の細胞結合剤コンジュゲートを提供することを含むプロセスも提供する。
【0047】
プロセスは、細胞結合剤、例えば抗体の、最大で20%の有機溶媒を適宜、含有する、細胞結合剤の水性緩衝液中の溶液と、有機溶媒または有機溶媒および水性緩衝液もしくは水の混合物中の溶液中の式Z’−W−Q−V−Y’−D’の化合物とを混合し、反応を5分〜72時間の間進行させることによって行われ得る。コンジュゲートは、クロマトグラフィ、透析、クロスフロー濾過または前記方法の組み合わせによって精製されてよい。
【0048】
全ての態様において、「脂肪族基」は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基として定義される。アルキル基は、鎖に好ましくは1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝状であってよい脂肪族炭化水素基、または好ましくは3〜10個の炭素原子を有する環状である脂肪族炭化水素基である。より好ましいアルキル基は、鎖に1〜12個の炭素原子を有する。「分枝状」は、1種以上の低級アルキル基、例えば、メチル、エチルまたはプロピルが、線状アルキル鎖に付着していることを意味する。例示的なアルキル基として、メチル、エチル、nプロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、3−ペンチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。
【0049】
アルケニル基は、炭素−炭素二重結合を含有し、好ましくは2〜15個の炭素原子を鎖に有する、直鎖または分枝状であってよい脂肪族炭化水素基である。より好ましいアルケニル基は、鎖に2〜12個の炭素原子;より好ましくは、鎖に約2〜4個の炭素原子を有する。例示的なアルケニル基として、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、i−ブテニル、3−メチルブタ−2−エニル、n−ペンテニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルが挙げられる。
【0050】
アルキニル基は、炭素−炭素三重結合を含有し、好ましくは2〜15個の炭素原子を鎖に有する、直鎖または分枝状であってよい脂肪族炭化水素基である。より好ましいアルキニル基は、鎖に2〜12個の炭素原子;より好ましくは、鎖に約2〜4個の炭素原子を有する。例示的なアルキニル基として、エチニル、プロピニル、n−ブチニル、2−ブチニル、3−メチルブチニル、n−ペンチニル、ヘプチニル、オクチニルおよびデシニルが挙げられる。
【0051】
本明細書において用いられるとき、用語「芳香族基」は、6〜14個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子の芳香族単環式または多環式炭化水素環系からなる置換または非置換のアリール基を意味する。例示的なアリール基として、フェニルおよびナフチルが挙げられる。置換基として、限定されないが、アルキル基、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシルおよびアルコキシ基が挙げられる。
【0052】
ハロゲンとして、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子が挙げられる。フッ素および塩素原子が好ましい。
【0053】
用語「複素環式基」は、本明細書において用いられるとき、飽和、部分不飽和または不飽和の、非芳香族の安定な3〜14、好ましくは5〜10員の単、二または多環式環であって、環の少なくとも一員が、ヘテロ原子であるもの、あるいは、少なくとも1個のヘテロ原子を有する芳香族の好ましくは5〜10員の単、二または多環式環を称する。典型的には、ヘテロ原子として、限定されないが、酸素、窒素、硫黄、セレニウム、およびリン原子が挙げられる。好ましいヘテロ原子は、酸素、窒素および硫黄である。
【0054】
好ましい複素環式基として、限定されないが、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、オキシラニル、テトラヒドロフラニル、ジオキソラニル、テトラ−ピラニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、ピラニル、イミダゾリニル、ピロリニル、ピラゾリニル、チアゾリジニル、テトラチオピラニル、ジチアニル、チオモルホリニル、ジヒドロピラニル、テトラピラニル、ジヒドロピラニル、テトラ−ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラピリニジニル、ジヒドロチオピラニル、アゼパニル、ピロリル、ピリジル、ピラゾリル、チエニル、ピリミジニル、ピラジニル、テトラゾリル、インドリル、キノリニル、プリニル、イミダゾリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、フラニル、ベンゾフラニル、1,2,4−チアジアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキノリル、ベンゾチエニル、イソベンゾフリル、ピラゾリル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、およびイソオキサゾリル、ピリジル−N−オキシド、ならびにフェニル基との縮合から得られる融合系が挙げられる。
【0055】
XおよびYによって表される脂肪族、芳香族および複素環式基は、荷電した置換基を保有することもできる。荷電した置換基は、限定されないがカルボキシレート、スルホネートおよびホスフェートから選択され、負に帯電していても、第三級または第四級アミノ基から選択され、正に帯電していてもよい。
【0056】
表記「細胞結合剤に連結された」は、本明細書において用いられるとき、好適な連結基、またはその前駆体を介して、細胞結合剤に結合した少なくとも1個の薬物誘導体を含むコンジュゲート分子を称する。好ましい連結基は、チオールもしくはジスルフィド結合、またはその前駆体である。
【0057】
本明細書において用いられるとき、所与の基の「前駆体」は、いずれかの保護、化学修飾、またはカップリング反応によって基を生じ得るいずれの基も称する。例えば、前駆体は、チオール前駆体としてのチオエステルまたはチオエーテルによって例示される適切に保護された官能基であり得る。
【0058】
本明細書において用いられるとき、用語「反応性官能基」は、アミン−、チオール−またはヒドロキシル−反応性官能基を称する。換言すると、反応性官能基は、細胞結合剤に存在するアミン、スルフヒドリル(チオール)、またはヒドロキシル基と反応し得る。例えば、アミン反応性官能基では、官能基は、アミド結合を提供する、反応性カルボン酸エステル(iV−スクシンイミジル、N−スルホスクシンイミジル、N−フタルイミジル、N−スルホフタルイミジル、2−ニトロフェニル、4−ニトロフェニル、2,4−ジニトロフェニル、3−スルホ−4−ニトロフェニル、3−カルボキシ−4−ニトロフェニル、テトラフルオロフェニルエステルを含む)、反応性スルホン酸誘導体、または反応性チオエステルであり得;チオール反応性官能基では、官能基は、チオエター結合を提供するマレイミド、ハロアセトアミド、またはビニルスルホンであり得;ヒドロキシル反応性官能基では、官能基は、エステル結合を提供する反応性カルボン酸エステルであり得る。
【0059】
修飾された薬物および修飾された細胞結合剤を有する親水性リンカー
リンカーは、薬物、例えばメイタンシノイドを細胞結合剤に安定な共有結合様式で連結させることが可能であるあらゆる化学部位である。リンカーは、薬物または細胞結合剤が活性を維持する条件で、酸誘発開裂、光誘発開裂、ペプチダーゼ誘発開裂、エステラーゼ誘発開裂、およびジスルフィド結合開裂に対して、感受性または実質的に耐性の可能性がある。図1、2および3は、本発明のコンジュゲートの構造的表示を例示的に提供する。
【0060】
薬物と細胞結合剤との間にリンカーを形成する親水性PEG鎖を含む好適な架橋試薬は当該分野で周知であるか、あるいは市販されている(例えば、Quanta Biodesignから、オハイオ州パウエル)。好適なPEG含有架橋剤は、市販のPEG自体から、当業者に公知の標準的な合成化学技術を用いて合成することもできる。薬物は、本明細書に記載の方法により、二官能性PEG含有架橋剤と反応して、式(1)、Z−X−(−CH−CH−O−)−Y−Dの化合物を与えることができる。例えば、チオール含有メイタンシノイド薬物は、PEGスペーサーを有するビスマレイミド架橋剤と反応して、チオエーテル結合を介してPEGスペーサーに結合されたメイタンシノイド薬物を与えることができる(例えば、図13を参照)。PEGスペーサーおよび末端マレイミド基を有するこの修飾されたメイタンシノイドは、次いで例えば図14に示される細胞結合剤と反応して、本発明の式(2)の細胞結合剤−薬物コンジュゲートを提供することができる。
【0061】
代替的には、細胞結合剤は、反応性アミン基、例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを持つ二官能性PEG含有架橋剤の一方の端でまず反応して、リンカーにアミド結合を通して共有結合的に結合した修飾された細胞結合剤を与えることができる(例えば、図15を参照)。次の工程で、メイタンシノイドは、PEGスペーサーの他方の端のマレイミド置換基と反応して、本発明の細胞結合剤−薬物コンジュゲートを与える。
【0062】
図16および17は、例えばPEG架橋剤の合成、およびチオアセトアミド連結を通してのそれとメイタンシノイドとの反応を示す。次いでマレイミド置換基は、PEGに組み込まれて、チオエーテル結合を介しての細胞結合剤との反応を可能にする。代替的には、例えば図18に示されるように、細胞結合剤が、まずPEG架橋剤にチオエーテル結合を通して連結する。修飾された細胞結合剤は、次いで、メイタンシノイド薬物と反応して、コンジュゲートを与える。PEGスペーサーの両端がヨードアセトアミド部分を含みホモ二官能性PEG架橋剤であって、細胞毒性薬物と細胞結合剤の両方をチオエーテル結合を介して連結させて親水性PEGスペーサーを含むコンジュゲートを与えることができるホモ二官能性PEG架橋剤の合成は、例えば図19に示される。本発明のコンジュゲートを提供するためのコンジュゲーション手順は、例えば図20および21に示される。
【0063】
当業者は、種々の反応性基を持つ他のPEG含有架橋剤が、本明細書に記載されている方法により容易に合成され得ることを理解するであろう。例えば、ヒドロキシル基を持つ薬物、例えば19−デメチルメイタンシノイド(米国特許第4,361,650号)が、ヨード−アセチル−PEGリンカー(図5)と、塩基、例えば炭酸カリウムの存在下で反応されて、メイタンシノイドを、エーテル結合を介して連結させることができる。同様に、アミン含有メイタンシノイド(米国特許第7,301,019号に記載されているように合成)が、ヨードアセチルPEG(図5に示される)と、塩基、例えばピリジンまたはトリエチルアミンの存在下で反応されて、アミン連結を介してPEGに連結されたメイタンシノイドを提供することができる。アミド結合を介したPEGへの薬物の連結部については、カルボキシ−PEG(図5に示される)が、アミン含有メイタンシノイドと、縮合剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下で反応して、アミド結合されたPEG−メイタンシノイドを提供することができる。薬物をPEGスペーサーにカルバメート連結を介して連結させるためには、PEGがまずジホスゲンと反応されてPEGクロロホルメートを付与し、次いでこれがアミン含有メイタンシノイドと、塩基、例えばトリエチルアミンの存在下で反応して、カルバメート連結されたPEG−メイタンシノイドを与えることができる。
【0064】
好適なリンカーの例として、細胞結合剤との反応のためのiV−スクシンイミジルエステルまたはN−スルホスクシンイミジルエステル部位、および薬物との反応のためのマレイミドまたはハロアセチルをベースとする部位を有するリンカーが挙げられる。PEGスペーサーが、本明細書に記載されている方法によって当該分野において公知のいずれの架橋剤によって組み込まれてもよい。マレイミド系部位を含む架橋試薬であってPEGスペーサーが組み込まれ得る架橋試薬として、限定されないが、N−スクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、7V−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート):これはSMCCの「長鎖」アナログである(LC−SMCC)、κ−マレイミドウンデカン酸N−スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ−マレイミド酪酸N−スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε−マレイミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N−(α−マレイミドアセトキシ)−スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N−スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)−ブチレート(SMPB)、およびN−(p−マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)が挙げられる。ハロアセチルをベースとする部位を含む架橋試薬として、N−スクシンイミジル−4−(ヨードアセチル)−アミノベンゾエート(SIAB)、N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、N−スクシンイミジルブロモアセテート(SBA)、およびN−スクシンイミジル3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)が挙げられる。
【0065】
硫黄原子を含まない他の架橋試薬も本発明方法に用いられ得る。かかる架橋試薬は、ジカルボン酸をベースとする部位から誘導され得る。ジカルボン酸をベースとする好適な部位として、限定されないが、以下に示される一般式:
HOOC−A’−E’−(CHCHO)G’−COOH
式中:A’は2〜20個の炭素原子を有する、適宜、直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、E’は3〜10個の炭素原子を有する、適宜、シクロアルキルまたはシクロアルケニル基であり、G’は6〜10個の炭素原子を有する、適宜、置換もしくは非置換芳香族基、またはヘテロ原子がN、OもしくはSから選択される置換もしくは非置換複素環式基であり、p、qおよびrはそれぞれ0または1であり、ただし、p、qおよびrが同時にすべてゼロであることはなく、nは1から2000までの整数である;のα,ω−ジカルボン酸が挙げられる。
【0066】
本明細書に開示されているリンカーの多くは米国特許出願公開第20050169933号に詳細に記載されている。
【0067】
本発明の別の態様において、細胞結合剤は、二官能性架橋試薬を細胞結合剤と反応させることにより修飾され、これにより細胞結合剤へのリンカー分子の共有結合が得られる。「二官能性架橋試薬」は、本明細書において用いられるとき、細胞結合剤を薬物、例えば本明細書に記載されている薬物に共有結合的に連結させるあらゆる化学部位である。本発明の好ましい態様において、連結部位の一部は薬物により与えられる。この態様において、薬物は、細胞結合剤を薬物につなげるために用いられる、より大きいリンカー分子の部分である連結部位を含む。例えば、メイタンシノイドDM1を形成するために、メイタンシンのC−3ヒドロキシ基における側鎖が、遊離スルフヒドリル基(SH)を有するように修飾される。このチオール化された形態のメイタンシンは、修飾された細胞結合剤と反応して、コンジュゲートを形成することができる。したがって、最終リンカーは2成分から組み立てられ、その一方は架橋試薬によって付与され、他方はDM1からの側鎖により付与される。
【0068】
本発明の別の態様において、薬物は、ジスルフィド結合を通して細胞結合剤に連結される。リンカー分子は、細胞結合剤と反応し得る反応性化学基を含む。細胞結合剤との反応に好ましい反応性化学基は、N−スクシンイミジルエステルおよびN−スルホスクシンイミジルエステルである。さらにリンカー分子は、薬物と反応してジスルフィド結合を形成し得る反応性化学基、好ましくはジチオピリジル基を含む。特に好ましいリンカー分子にとして、例えば、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(例えば、Carlssonら、Biochem.J.,173:723−737(1978)を参照)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)(例えば、米国特許第4,563,304号)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)(例えば、CAS登録番号341498−08−6)、および他の反応性架橋剤、例えば、米国特許第6,913,748号に記載されているもの:その全体が参照によって本明細書に組み込まれる;が挙げられる。
【0069】
代替的には、米国特許第6,441,163B1号に開示されるように、薬物が、まず修飾されて、細胞結合剤と反応するのに好適な反応性エステルを導入することができる。活性化されたリンカー部位を含むこれらの薬物と細胞結合剤との反応は、細胞結合剤−薬物コンジュゲートを製造する別の方法を提供する。siRNAの連結部のために、siRNAが、オリゴヌクレオチドの修飾に一般に用いられる方法により、本発明の架橋剤に連結され得る(例えば、米国特許出願公開第20050107325号および同第20070213292号)。したがって、3’または5’−ホスホロアミダイト形態のsiRNAが、ヒドロキシル官能基を持つ架橋剤の一方の端と反応して、siRNAと架橋剤との間にエステル結合を与える。同様に、siRNAホスホロアミダイトと末端アミノ基を持つ架橋剤との反応により、アミンを通しての架橋剤のsiRNAへの連結をもたらす。
【0070】
B.細胞結合剤
本発明に用いられる細胞結合剤は、癌細胞上の標的抗原に特異的に結合するタンパク質(例えば免疫グロブリンおよび非免疫グロブリンタンパク質)である。これらの細胞結合剤として、以下:
−以下を含む抗体:
−表面再構成抗体(米国特許第5,639,641号);
−ヒト化抗体または完全ヒト抗体(ヒト化抗体または完全ヒト抗体は、限定されないが、huMy9−6、huB4、huC242、huN901、DS6、CD38、IGF−IR、CNTO95、B−B4、トラスツヅマブ、ビバツヅマブ、シブロツヅマブ、ペルツヅマブおよびリツキシマブ(例えば、米国特許第5,639,641号、同第5,665,357号、および同第7,342,110号;米国仮特許出願第60/424,332号、国際特許出願WO02/16,401号、米国特許出願公開第20060045877号、米国特許出願公開第20060127407号、米国特許出願公開第20050118183号、Pedersenら(1994)J.Mol.Biol.235,959−973,Roguskaら、(1994) Proceedings of the National Academy of Sciences,Vol91,969−973,Colomerら、Cancer Invest.,19:49−56(2001),Heiderら、Eur.J.Cancer,31A:2385−2391(1995),Weltら、J.Clin.Oncol.,12:1193−1203(1994)、およびMaloneyら、Blood,90:2188−2195(1997));ならびに
−抗体のエピトープ結合フラグメント、例えば、sFv、Fab、Fab’、およびF(ab’)(Parham,J.Immunol.131:2895−2902(1983);Springら、J.Immunol.113:470〜478(1974);Nisonoffら、Arch.Biochem.Biophys.89:230〜244(1960));
が挙げられる。
【0071】
さらなる細胞結合剤として、限定されないが:
−アンキリンリピートタンパク質(DARPin;Zahndら、J.Biol.Chem.,281,46,35167−35175,(2006);Binz,H.K.,Amstutz,P.& Pluckthun,A.(2005)Nature Biotechnology,23,1257−1268)、または、例えば米国特許出願公開第20070238667号;米国特許第7,101,675号;WO/2007/147213;およびWO/2007/062466に記載されているアンキリン様リピートタンパク質もしくは合成ペプチド);
−インターフェロン(例えばα、β、γ);
−リンホカイン、例えばIL−2、IL−3、IL−4、IL−6;
−ホルモン、例えば、インスリン、TRH(チロトロピン放出ホルモン)、MSH(メラノサイト刺激ホルモン)、ステロイドホルモン、例えばアンドロゲンおよびエストロゲン;ならびに
−成長因子およびコロニー刺激因子、例えばEGF、TGF−α、IGF−I、G−CSF、M−CSFおよびGM−CSF(Burgess,Immunology Today 5:155−158(1984));
によって例示される他の細胞結合性タンパク質およびポリペプチドが挙げられる。
【0072】
細胞結合剤は、抗体である場合、ポリペプチドでありかつ膜貫通分子(例えば受容体)であり得る抗原、またはリガンド、例えば成長因子に結合する。例示的な抗原として、分子、例えば、レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出ホルモン;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α−1−アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えばvmc因子、IX因子、組織因子(TF)、およびフォンビルブラント因子;抗凝固因子、例えばプロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性物質;プラスミノーゲン活性化因子、例えばウロキナーゼもしくはヒトの尿、または組織タイプのプラスミノーゲン活性化剤(t−PA);ボンベシン;トロンビン;造血性成長因子;腫瘍壊死因子−αおよび−β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−I−α);血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えばβラクタマーゼ;DNアーゼ;IgE;細胞毒性T−リンパ球関連抗原(CTLA)、例えばCTLA−4;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモンまたは成長因子の受容体;プロテインAまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5もしくは−6(NT−3、NT4、NT−5またはNT−6)、または神経成長因子、例えばNGF−β;血小板由来成長因子(PDGF);線維芽細胞成長因子、例えばaFGFおよびbFGF;上皮成長因子(EGF);トランスフォーミング成長因子(TGF)、例えばTGF−αおよびTGF−β:TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4またはTGF−β5を含む;インスリン様成長因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);デス(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様成長因子結合タンパク質、EpCAM、GD3、FLT3、PSMA、PSCA、MUC1、MUC16、STEAP、CEA、TENB2、EphA受容体、EphB受容体、葉酸受容体、FOLR1、メソテリン、クリプト、αβ、インテグリン、VEGF、VEGFR、トランスフェリン受容体、IRTA1、IRTA2、IRTA3、IRTA4、IRTA5;CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD8、CD11、CD14、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD26、CD28、CD30、CD33、CD36、CD37、CD38、CD40、CD44、CD52、CD55、CD56、CD59、CD70、CD79、CD80、CD81、CD103、CD105、CD134、CD137、CD138、CD152;エリスロポエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形態形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えばインターフェロン−α、−β、および−γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばM−CSF、GM−CSFおよびG−CSF;インターロイキン(IL)、例えばIL−1〜IL−10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例えばHIVエンベロープの一部;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4およびVCAM;腫瘍関連抗原、例えばHER2、HER3またはHER4受容体;ならびに先に列挙したポリペプチドのいずれかのフラグメント、抗体模倣体アドネクチン(米国特許出願第20070082365号)、または1種以上の腫瘍関連抗原もしくは細胞表面受容体に結合する抗体:全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20080171040号または米国特許出願公開第20080305044号に開示されているものが挙げられる。
【0073】
さらに、骨髄細胞に結合するGM−CSFが、急性骨髄性白血病由来の罹患細胞に対する細胞結合剤として用いられ得る。活性T細胞に結合するIL−2は、移植の移植片拒絶の予防のために、移植片対宿主疾患の治療および予防のために、ならびに急性T細胞性白血病の処置のために用いられ得る。メラノサイトに結合するMSHは、黒色腫の処置のために用いられ得る。葉酸が用いられて、卵巣および他の腫瘍に発現する葉酸受容体を標的化することができる。上皮成長因子が用いられて、扁平上皮癌、例えば肺癌および頭頚部癌を標的化することができる。ソマトスタチンが用いられて、神経芽細胞腫および他の腫瘍タイプを標的化することができる。
【0074】
乳腺および精巣の癌は、それぞれ細胞結合剤としてのエストロゲン(またはエストロゲンアナログ)またはアンドロゲン(またはアンドロゲンアナログ)によって成功裏に標的化され得る。
【0075】
本発明に包含される抗体に対する好ましい抗原として、CDタンパク質、例えば、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD8、CD11、CD14、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD26、CD27、CD28、CD30、CD33、CD36、CD37、CD38、CD40、CD44、CD52、CD55、CD56、CD70、CD79、CD80、CD81、CD103、CD105、CD134、CD137、CD138、およびCD152;ErbB受容体ファミリーのメンバー、例えば、EGF受容体、HER2、HER3またはHER4受容体;細胞接着分子、例えば、LFA−1、Mac1、pi50.95、VLA−4、ICAM−1、VCAM、EpCAM、α4/β7インテグリン、およびα/βインテグリン(そのαまたはβサブユニットを含む)(例えば、抗−CD11a、抗−CD18または抗−CD11b抗体);成長因子、例えばVEGF;組織因子(TF);TGF−β;αインターフェロン(α−IFN);インターロイキン、例えばIL−8;IgE;血液型抗原Apo2、デス受容体;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA−4;プロテインCなどが挙げられる。本明細書において最も好ましい標的は、IGF−IR、CanAg、EphA2、MUC1、MUC16、VEGF、TF、CD19、CD20、CD22、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD138、CA6、Her2/neu、EpCAM、クリプト(大部分のヒト乳癌細胞において高レベルで産生されるタンパク質)、ダルピン、α/βインテグリン、α/βインテグリン、α/βインテグリン、TGF−β、CD11a、CD18、Apo2およびC242、または、全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20080171040号もしくは米国特許出願公開第20080305044号に開示されている、1以上の腫瘍関連抗原もしくは細胞表面受容体に結合する抗体が挙げられる。
【0076】
本発明に包含される抗体に対する好ましい抗原として、CDタンパク質、例えばCD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD34、CD37、CD38、CD46、CD56およびCD138;ErbB受容体ファミリーのメンバー、例えばEGF受容体、HER2、HER3またはHER4受容体;細胞接着タンパク質、例えばLFA−1、Mac1、p150.95、VLA−4、ICAM−1、VCAM、EpCAM、α4/β7インテグリン、およびαv/β3インテグリン(そのαまたはβサブユニットを含む)(例えば、抗−CD11a、抗−CD18または抗−CD11b抗体);成長因子、例えばVEGF;組織因子(TF);TGF−β;αインターフェロン(αIFN);インターロイキン、例えばIL−8;IgE;血液型抗原Apo2、デス受容体;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA−4;プロテインCなども挙げられる。本発明において最も好ましい標的は、IGF−IR、CanAg、EGF−R、EphA2、MUC1、MUC16、VEGF、TF、CD19、CD20、CD22、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD138、CA6、Her2/neu、クリプト(大部分のヒト乳癌細胞において高レベルで産生されるタンパク質)、α/βインテグリン、α/βインテグリン、TGF−β、CD11a、CD18、Apo2、EpCAMおよびC242である。
【0077】
モノクローナル抗体技術により、モノクローナル抗体の形態の特異的細胞結合剤の製造を可能にする。当該分野において特に周知のものは、マウス、ラット、ハムスター、またはいずれかの他の哺乳動物を、目的とする抗原、例えば無傷の標的細胞、標的細胞から分離された抗原、全ウイルス、弱毒化した全ウイルス、およびウイルスタンパク質、例えばウイルスコートタンパク質で免疫化することにより産生されるモノクローナル抗体を作製するための技術である。感作されたヒト細胞も用いられ得る。モノクローナル抗体を作製する別の方法は、sFv(一本鎖可変領域)、特にヒトsFvのファージライブラリーの使用である(例えば、Griffithsら、米国特許第5,885,793号;McCaffertyら、WO92/01047;Limingら、WO99/06587)。
【0078】
適切な細胞結合剤の選択は、標的化されるべき特定の細胞集団に依存する選択肢であるが、適切なものが利用可能であるならば、一般にモノクローナル抗体およびそのエピトープ結合フラグメントが好ましい。
【0079】
例えば、モノクローナル抗体My9は、急性骨髄性白血病(AML)細胞上に見出されるCD33抗原に対して特異的なネズミIgG2a抗体であり(Royら、Blood 77:2404−2412(1991))、AML患者を処置するのに用いられ得る。同様に、モノクローナル抗体、抗−B4は、B細胞上のCD19抗原に結合するネズミIgGiであり(Nadlerら、J.Immunol.131:244−250(1983))、非ホジキンリンパ腫または慢性リンパ芽球性白血病の場合などの標的細胞がこの抗原を発現するB細胞または罹患細胞であるとき用いられ得る。抗体N901は、小細胞性肺癌腫細胞上および神経内分泌由来の他の腫瘍の細胞上に見出されるCD56に結合するネズミモノクローナルIgGi抗体である(Royら、J.Nat.Cancer Inst.88:1136−1145(1996));huC242はCanAg抗原に結合する抗体である;トラスツヅマブはHER2/neuに結合する抗体である;抗EGF受容体抗体はEGF受容体に結合する。
【0080】
C.薬物
本発明に用いられる薬物は、細胞結合剤に連結され得る細胞毒性薬物である。好適な薬物の例にとして、メイタンシノイド、DNA結合性薬物、例えばCC−1065およびそのアナログ、カリケアマイシン、ドキソルビシンおよびそのアナログ、ビンカアルカロイド)、クリプトフィシン、ドラスタチン、オーリスタチンおよびそのアナログ、ツブライシン、エポチロン、タキソイド、およびsiRNAが挙げられる。
【0081】
好ましいメイタンシノイドは、米国特許第5,208,020号;同第5,416,064号;同第6,333.410号;同第6,441,163号;同第6,716,821;RE39,151および同第7,276,497号に記載されているものである。好ましいCC−1065アナログは、米国特許第5,475,092号;同第5,595,499号;同第5,846,545号;同第6,534,660号;同第6,586,618号;同第6,756,397号および同第7,049,316に記載されているものである。好ましいドキソルビシンおよびそのアナログは、米国特許第6,630,579号に記載されているものである。好ましいタキソイドは、米国特許第6,340,701号;同第6,372,738号;同第6.436,931号;同第6,596,757号;同第6,706,708号;同第7,008,942号;同第7,217,819号および同第7,276,499号に記載されているものである。カリケアマイシンは、米国特許第5,714,586号および同第5739,116号に記載されている。
【0082】
ビンカアルカロイド化合物、ドラスタチン化合物、およびクリプトフィシン化合物は、WO01/24763に詳細に記載されている。オーリスタチンとして、オーリスタチンE、オーリスタチンEB(AEB)、オーリスタチンEFP(AEFP)、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)が挙げられ、米国特許第5,635,483号、Int.J.Oncol.15:367−72(1999);Molecular Cancer Therapeutics,vol.3,No.8,pp.921−932(2004);米国特許出願第11/134826号、米国特許出願公開第20060074008号、同第2006022925号に記載されている。ツブライシン化合物は、米国特許出願公開第20050249740号に記載されている。クリプトフィシン化合物は、米国特許第6,680,311号および同第6,747,021号に記載されている。エポチロンは、米国特許第6,956,036号および同第6,989,450号に記載されている。
【0083】
siRNAは、米国特許出願公開第20070275465号、同第20070213292号、同第20070185050号、同第20070161595号、同第20070054279号、同第20060287260号、同第20060035254号、同第20060008822号、同第20050288244号、同第20050176667号に詳細に記載されている。
【0084】
アナログおよび誘導体
細胞毒性剤の当業者は、本明細書に記載されている細胞毒性剤のそれぞれが、得られる化合物が出発化合物の特異性および/または活性を依然として保持する様式で修飾され得ることを容易に理解するであろう。当業者は、これらの化合物の多くが本明細書に記載されている細胞毒性剤の代わりに用いられ得ることも理解するであろう。したがって、本発明の細胞毒性剤には、本明細書に記載されている化合物のアナログおよび誘導体が含まれる。
【0085】
細胞結合剤は、これまでに記載されている方法(米国特許第6,013,748号;同第6,441,1631号、および同第6,716,821号;米国特許出願公開第20050169933号;ならびにWO2006/034488A2)によって細胞毒性薬物にコンジュゲートされ得る。
【0086】
治療的用途
本発明の細胞結合剤−薬物コンジュゲート(例えばイムノコンジュゲート)は、化学治療剤とも併用され得る。かかるそのような化学治療剤は、米国特許第7,303,749号に記載されている
【0087】
本発明の細胞結合剤−薬物コンジュゲート(例えば、イムノコンジュゲート)は、インビトロ、インビボおよび/またはエクスビボで投与されて、患者を処置し、および/または選択された細胞集団の成長を調節することができ、これには、例えば以下が含まれる:肺、血液、血漿、乳腺、大腸、前立腺、腎臓、膵臓、脳、骨、卵巣、精巣、およびリンパ器官の癌;自己免疫疾患、例えば全身性狼瘡、関節リウマチ、および多発性硬化症;移植片拒絶、例えば腎移植拒絶、肝移植拒絶、肺移植拒絶、心臓移植拒絶、および骨髄植拒絶;移植片対宿主疾患;ウイルス感染症、例えばCMV感染症、HIV感染症、およびAIDS;ならびに寄生虫感染症、例えばジアルジア症、アメーバ症、住血吸虫症など。好ましくは、本発明のイムノコンジュゲートおよび化学治療剤は、インビトロ、インビボおよび/またはエクスビボで投与されて、患者の癌を処置し、および/または癌細胞の成長を調節することができ、これには例えば血液、血漿、肺、乳腺、大腸、前立腺、腎臓、膵臓、脳、骨、卵巣、精巣、およびリンパ器官の癌;より好ましくは肺、大腸前立腺、血漿、血液または大腸の癌が含まれる。最も好ましい態様において、癌は多発性骨髄腫である。
【0088】
「選択された細胞集団の成長を調節する」こととして、選択された細胞集団(例えば多発性骨髄腫の細胞集団、例えばMOLP−8細胞、OPM2細胞、H929細胞など)の分裂による増殖によりさらなる細胞を生ずることを阻害すること;例えば非処置細胞と比較して、細胞分裂が増加する速度を低下させること;選択された細胞集団を死滅させること;および/または選択された細胞集団(例えば癌細胞)が転移するのを防止することが含まれる。選択された細胞集団の成長は、インビトロ、インビボまたはエクスビボで調節され得る。
【0089】
本発明の方法において、細胞結合剤−薬物コンジュゲート(例えばイムノコンジュゲート)が、インビトロ、インビボまたはエクスビボで投与され得る。細胞結合剤−薬物コンジュゲート(例えばイムノコンジュゲート)は、好適な、薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤と共に用いられ得、これらは周知であり、臨床状況に応じて当業者によって決定され得る。適切な担体、希釈剤および/または賦形剤の例として:(1)約1mg/ml〜25mg/mlのヒト血清アルブミンを含有する、ダルベッコのリン酸緩衝化生理食塩水、pH約6.5、(2)0.9%生理食塩水(0.9% w/v NaCl)、および(3)5%(w/v)デキストロースが挙げられる。
【0090】
本明細書に記載されている化合物および組成物は、適切な形態で、好ましくは非経口的に、より好ましくは静脈内に投与されてよい。非経口投与のために、化合物または組成物は、水性または非水性の無菌の液剤、懸濁液または乳剤であり得る。プロピレングリコール、植物油、および注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが、溶剤またはビヒクルとして用いられ得る。組成物は、助剤、乳化剤または分散剤を含有することもできる。
【0091】
該組成物は、無菌水またはいずれかの他の注射可能な無菌媒体に溶解または分散され得る無菌固体組成物の形態であってもよい。
【0092】
本明細書に記載されている細胞結合剤−薬物コンジュゲート(例えばイムノコンジュゲート)の「治療有効量」は、選択された細胞集団の成長を調節しおよび/または患者の疾患を処置するための投薬計画を称し、患者の年齢、体重、性別、食事および医学的状態、疾患の重症度、投与経路、ならびに薬理学的考慮事項、例えば、用いられる特定の化合物の活性、効能、薬物動態および毒性プロファイルを含めた種々の因子に従って選択される。「治療有効量」は、標準的な医療テキスト、例えばPhysicians Desk Reference 2004を参照して決定することもできる。患者は、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。患者は雄または雌であってよく、乳児、小児または成人であってよい。
【0093】
細胞結合剤−薬物コンジュゲート(例えばイムノコンジュゲート)投与の好適なプロトコルの例は、以下の通りである。コンジュゲートは、毎日の静脈内ボーラスとして約5日間、または約5日間の連続注入として、1日1回、約5日間与えられ得る。
【0094】
代替的には、コンジュゲートは、週1回、6週間以上投与され得る。別の代替法として、コンジュゲートは、2または3週毎に1回投与され得る。ボーラス用量は、約50〜約400mlの通常の生理食塩水中で与えられ、これに約5〜約10mlのヒト血清アルブミンが添加され得る。連続注入は、24時間の期間あたり、約250〜約500mlの通常の生理食塩水中で与えられ、これに約25〜約50mlのヒト血清アルブミンが添加され得る。投与量は、静脈内に一人あたり約10pg〜約1000mg/kg(約100ng〜約100mg/kgの範囲)であろう。
【0095】
処置の約1〜4週間後、患者は第2コースの処置を受けることができる。投与経路、賦形剤、希釈剤、投与量および時間に関する具体的な臨床プロトコルは、臨床状況に応じて当業者によって決定され得る。
【0096】
組成物およびコンジュゲート(例えばイムノコンジュゲート)は、例えば異常な細胞成長を特徴とする障害(例えば癌)の処置またはその重症度の軽減に有用な医薬の製造にも用いられ得る。
【0097】
本発明は、1種以上のイムノコンジュゲートおよび1種以上の化学治療剤を含む本発明の医薬化合物および/または組成物の1種以上の成分を充填した1個以上の容器を含む医薬キットも提供する。かかるキットは、例えば他の化合物および/または組成物、それらの化合物および/または組成物を投与するため装置(複数可)、ならびに医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関により指示された形態の指示書を含むこともできる。
【0098】
癌治療ならびにそれらの投与量、投与経路および推奨される用途は当該分野で公知であり、Physician’s Desk Reference(PDR)などの文献に記載されている。PDRには、種々の癌の処置に用いられている薬剤の投与量が開示されている。治療的に有効であるこれらの前記化学治療薬物の投与計画および投与量は、処置されている特定の癌、疾患の程度、および当該分野の医師によく知られている他の因子に依存し、医師によって決定され得る。例えば、2006年版のPhysician’s Desk Referenceには、タキソテール(2947頁を参照)がチューブリン脱重合の阻害剤であること、ドキソルビシン(786頁を参照)、ドキシル(3302頁を参照)およびオキサリプラチン(2908頁を参照)がDNA相互作用剤であること、イリノテカル(2602頁を参照)がトポイソメラーゼI阻害剤であること、エルビタックス(937頁を参照)およびタルセバ(2470頁を参照)が上皮成長因子受容体と相互作用することが開示されている。PDRの内容は、全体が本明細書に明確に組み込まれる。当業者は、以下のパラメータのうち1個以上を用いてPDRを検討して、本発明の教示に従って用いられ得る化学治療剤およびコンジュゲートの投与計画および投与量を決定することができる。これらのパラメータとして以下が挙げられる:
1.包括的インデックス
a)製造業者による
b)製品(企業名または商標薬物名による)
c)カテゴリーインデックス(例えば「抗ヒスタミン」、「DNAアルキル化剤」、タキサンなど)
d)一般/化学インデックス(商標でない一般の薬物名)
2.医薬の外観
3.FDA標識と一致した製品情報
a)化学的情報
b)機能/作用
c)適応症および配合禁忌
d)試験研究、副作用、警告。
【0099】
上記の参考文献、特許出願、および特許のそれぞれの全内容は、限定されないが、明細書、特許請求の範囲および要約ならびにあらゆる図、表または図式を含めて全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0100】
E.反応性基を持つチオエーテル部位を有するメイタンシノイドの合成
反応性基を持つ非開裂性チオエーテル部位を有する新規のメイタンシノイドは、式(5)、D’−Y’−V−Q−W−Z’の化合物である。細胞結合剤との反応のための化学基Z’として、限定されないが、iV−スクシンイミジルエステル、iV−スルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロスルホフェニル、およびニトロフェニルエステルが挙げられる。これらの化合物の調製の方法は、本明細書に記載されている。スルフヒドリル保持メイタンシノイドは、反応性基を持つヘテロ二官能性架橋剤に非開裂性チオエーテル結合を介して共有結合的に連結されており、細胞結合剤とのコンジュゲーションの前に単離される。
【0101】
非開裂性リンカーは、安定な共有結合により細胞毒性薬物を細胞結合剤に連結することが可能であるあらゆる化学部位である。非開裂性リンカーは、酸誘発開裂、光誘発開裂、ペプチダーゼ誘発開裂、エステラーゼ誘発開裂、およびジスルフィド結合開裂に実質的に耐性である。非開裂性リンカーの例として、メイタンシノイドとの反応のためのiV−スクシンイミジルエステルまたはTV−スルホスクシンイミジルエステル部位およびマレイミド−もしくはハロアセチル系部位を有するリンカーが挙げられる。マレイミド系部位を含む架橋試薬として、SMCC(LC−SMCC)の「長鎖」アナログであるiV−スクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、iV−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート);κ−マレイミドウンデカン酸Nスクシンイミジルエステル(KMUA)、γ−マレイミド酪酸iV−スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε−マレイミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m−マレイミドベンゾイル−iVヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N−(α−マレイミドアセトキシ)−スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N−スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)−ブチレート(SMPB)、および7V−(p−マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)が挙げられる。ハロアセチル−系部位を含む架橋試薬として、iV−スクシンイミジル−4−(ヨードアセチル)−アミノベンゾエート(SIAB)、7V−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、iV−スクシンイミジルブロモアセテート(SBA)、およびiV−スクシンイミジル3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)が挙げられる。
【0102】
本発明において用いられて、細胞結合剤に共有結合的に連結され得る、チオエーテル部位を持つ反応性メイタンシノイド誘導体を生成することができるメイタンシノイドが当該分野において周知であり、公知の方法に従って天然源から単離され得る。
【0103】
反応性基を持つチオエーテル部位を有するメイタンシノイドの合成は、図1〜4を参照して記載され得、ここで、反応性基を持つチオエーテル保持メイタンシノイドが調製される。
【0104】
本発明の代表的な化合物を、チオール含有メイタンシノイドから調製した:構造式(1)によって表される、N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシンと呼ばれるDM1:および構造式(2)によって表されるN2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)メイタンシンと呼ばれるDM4を以下に示す:
【化1】

【0105】
反応性基を持つチオエーテル部位を有する新規のメイタンシノイドは、以下の新たに記載されている方法によって調製される。
【0106】
式(5):D’−Y’−V−Q−W−Z’(5)の、反応性基を持つチオエーテル部位を有する新規のメイタンシノイドの合成が記載され、以下の工程から構成される:
a.)式V−V−Q−W−Z’のヘテロ二官能性リンカーを、チオール保持メイタンシノイドD’と共有結合的に連結させる工程;ここで、Y”は、マレイミドまたはハロアセトアミドなどのチオール反応性基であり;Vは、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する、より好ましくは、1〜5個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;Wは、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する、より好ましくは、1〜5個の原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、Qは、適宜、芳香族または複素環式部位を表し;Z’は、アミン反応性基、例えば、限定されないが/V−スクシンイミジルエステル、7V−スルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロスルホフェニル、またはニトロフェニルエステルである。反応は、順序(6)から構成される:
D’+V−V−Q−W−Z’→D’−Y’−V−Q−W−Z’ (6)
b.)チオール保持メイタンシノイド、D’、例えば、DM1およびDM4に対して化学量論または過剰当量のヘテロ二官能性架橋剤V−V−QW−Z’が用いられてよい。反応は、完了まで進行し、分析方法、例えば、HPLCおよびTLCによってモニタリングされ得る。反応は、ヘテロ二官能性リンカー、V−V−Q−W−Z’に対して過剰のチオール保持メイタンシノイドD’によって実施されてもよい。
c.)反応は、チオール保持メイタンシノイドD’およびヘテロ二官能性リンカーV−V−Q−W−Z’が完全に可溶性であるように、好適な有機溶媒または水性緩衝液と有機溶媒との混合物において実施されてよい。好適な有機溶媒の例として、テトラフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン、N,iV−ジメチルホルムアミド(DMF)、iV,7V−ジメチルアセトアミド(DMA)、メタノールおよびエタノールが挙げられる。有機溶媒と水性緩衝液との混合物中で反応を実施するとき、pHは、アミン反応性基Zの加水分解の可能性を最小にしながらスルフヒドリル保持メイタンシノイドとマレイミドまたはハロアセトアミドY”との反応を促進するように制御されなければならない。この反応に好適なpH範囲は、pH3〜10であり、好ましいpHは、5〜9であり、最も好ましいpHは、pH6〜8である。
d.)チオール保持メイタンシノイドD’とチオール反応性基Y”との間のチオエーテル形成は、好適な有機塩基および純有機溶媒、例えば上記されているものを用いて調製されてもよい。有機塩基、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、トリエチルアミンおよび4−メチルモルホリンが用いられて、式(5)D’−Y’−V−Q−W−Z’の、反応性基を持つ所望のチオエーテル含有メイタンシノイドを形成してよい。
e.)式(5)D’−Y’−V−Q−W−Z’の化合物が単離されて、続いて反応が完了し得る。アミン反応性基Z’を持つチオエーテル部位を有するメイタンシノイド(例えば、iV−スクシンイミジルエステル)の精製に好適な技術として、シリカゲルクロマトグラフィ、順または逆相高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、分取薄層クロマトグラフィ(TLC)および結晶化が挙げられる。
f.)式(5)D’−Y’−V−Q−W−Z’の単離された生成物の純度および同定は、HPLC、質量分析(MS)、LC/MS、H NMRおよび13C NMRを含めた分析方法によって確立され得る。
【0107】
F.チオエーテル部位を有するメイタンシノイド誘導体の生成
反応性基を持つ非開裂性のチオエーテル部位を含有するメイタンシノイドの調製に有用である、チオエーテル部位を含有する新規のメイタンシノイド誘導体が本明細書に記載されている。DM1(1)およびDM4(2)からのこれらの誘導体の調製が開示されており、式(10):
D’−Y’−V−Q−W−COOH(10)
式中、
Vは、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する、より好ましくは、1〜5個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、
Wは、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する、より好ましくは、1〜5個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、
D’は、スルフヒドリル保持メイタンシノイド、DM1またはDM4を表し;
Y’は、チオエーテル結合を表し;
Qは、適宜、芳香族または複素環式部位を表す;
によって表される。
【0108】
式(10)の、カルボン酸を持つチオエーテル部位を有する新規のメイタンシノイド誘導体の合成が記載されており、以下の工程から構成される:
a.)式V−V−Q−W−COOHのカルボン酸リンカーをチオール保持メイタンシノイドD’に共有結合的に連結させる工程;ここで、Y”は、マレイミドまたはハロアセトアミドなどのチオール反応性基であり;Qは、適宜、芳香族または複素環式部位を表す。反応順序は、式(11):
D’+Y”−V−Q−W−COOH→D’−Y’−V−Q−W−COOH (11)
式中:
VおよびWは、先に定義されている通りであり;
D’は、先に定義されている通りであり;
Y”は、先に定義されている通りであり;
Y’は、スルフヒドリル保持メイタンシノイドとカルボン酸COOHとの間のチオエーテル結合であり;
Qは、適宜、芳香族または複素環式部位を表す;
によって表される。
b.)チオール保持メイタンシノイド、D’、例えば、DM1およびDM4に対して化学量論または過剰当量の式Y”−V−Q−W−COOHのカルボン酸リンカーが用いられてよい。反応は、完了まで進行し、分析方法、例えば、HPLCおよびTLCによってモニタリングされ得る。反応は、式Y”−VQ−W−COOHのカルボン酸リンカーに対して過剰のチオール保持メイタンシノイドD’によって実施されてもよい。
c.)反応は、チオール保持メイタンシノイド、D’および式V−V−Q−W−COOHのカルボン酸リンカーが完全に可溶性であるように、好適な有機溶媒または水性緩衝液と有機溶媒との混合物において実施されてよい。好適な有機溶媒の例として、テトラフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン、NJN−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、メタノールまたはエタノールが挙げられる。有機溶媒と水性緩衝液との混合物中で反応を実施するとき、pHは、スルフヒドリルとマレイミドまたはハロアセトアミドY”との反応を促進するように制御されなければならない。この反応に好適なpH範囲は、pH3〜10、好ましいpHは、5〜9であり、最も好ましいpHは、pH6〜8である。
d.)チオール保持メイタンシノイドD’とチオール反応性基Y”との間のチオエーテル形成は、好適な有機塩基および純有機溶媒、例えば上記されているものを用いるときにも起こる。有機塩基、例えば、N,N−プロピルエチルアミン(DIPEA)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、トリエチルアミンおよび4−メチルモルホリンが用いられて、カルボン酸を持つ所望のチオエーテル含有メイタンシノイドを形成してよい。
e.)式(10)D’−Y’−V−Q−W−COOHの化合物が単離されて、続いて反応が完了し得る。カルボン酸を持つチオエーテル部位を有するメイタンシノイドの精製に好適な技術として、シリカゲルクロマトグラフィ、順または逆相高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、分取薄層クロマトグラフィ(TLC)または結晶化が挙げられる。
f.)式(10)D’−Y’V−Q−WCOOHの単離された生成物の純度および同定は、HPLC、質量分析(MS)、LC/MS、H NMRおよび13C NMRを含めた分析方法によって確立され得る。
【0109】
式(11)D’−Y’−V−Q−W−COOHの、末端カルボン酸を持つチオエーテル部位を含有する新規のメイタンシノイド誘導体は、式(5)D’−Y’−V−Q−W−Z’の化合物の調製において有用である。式(11)D’−Y’−V−Q−W−COOHのメイタンシノイド誘導体は、アミン反応性基Zを与えるようにさらに誘導体化されてよい。好ましいアミン反応性基Z’は、活性エステル、例えば、限定されないがiV−スクシンイミジルエステル、7V−スルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロスルホフェニル、またはニトロフェニルエステルである。式(11)の化合物からの式(5)の化合物の調製のための方法は、反応順序:
D’−Y’−V−Q−W−COOH+X→D−Y’−V−Q−W−Z’
式中、Xは、活性化されたエステルZ’を与えるN−ヒドロキシスクシンイミドである、すなわち、アミン反応性である;
に従う。
【0110】
式(5)D’−Y’−V−Q−W−Z’のメイタンシノイドは、本明細書に記載されている公知の方法によって、式(11)D’−Y’−V−Q−W−COOHの新規のメイタンシノイドから調製されてよい。
a.)式(11)D’−Y’−V−Q−W−COOHのメイタンシノイドは、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチル−カルボジイミド塩酸塩(EDCHCl)の存在下に、乾燥有機溶媒(例えば、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、テトラフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル)中、僅かに過剰のTV−ヒドロキシスクシンイミド(X)と反応されてよい。EDCHCl以外の縮合剤が反応に使用され得る。
b.)反応の完了は、標準の化学技術、例えば、TLCまたはHPLCを用いてモニタリングされてよい。
c.)反応の完了後に、反応性7V−ヒドロキシスクシンイミジルエステルを持つメイタンシノイド誘導体が、シリカゲルクロマトグラフィによって、またはHPLCによって、または結晶化によって精製されてよい。
d.)式(5)D’−Y’−V−Q−W−Z’の単離された生成物の純度および同定は、HPLC、質量分析(MS)、LC/MS、H NMRおよび13C NMRを含めた分析方法によって確立され得る。
【0111】
G.反応性基を持つチオエーテル部位を有するメイタンシノイドとの抗体コンジュゲートの調製
式(8)CB−(Z”−W−Q−VY’−D’)の、反応性基を持つチオエーテル部位を有する単離された反応性メイタンシノイド誘導体を用いた、細胞結合剤による非開裂性チオエーテル連結メイタンシノイドコンジュゲートの調製のためのプロセス(図39および40)が記載されており、以下の工程から構成される:
a.)細胞結合剤のリシン残基とチオエーテル結合を有するメイタンシノイドに連結したアミン反応性基との間で、共有結合によるアミド結合形成を介して、細胞結合剤CB(抗体)に、本発明の式(5)D’−Y’−W−Q−V−Z’の、チオエーテル部位を持つ精製されたアミン反応性メイタンシノイドを共有結合的に連結させる工程。
b.)コンジュゲーション反応は、抗体の性質に応じて0.5〜10mg/mLの抗体濃度で実施されてよい。
b.)チオエーテル部位を持つアミン反応性非開裂性メイタンシノイドの原液は、抗体とのコンジュゲーションの前に純有機溶媒中で調製されてよい。原液の調製に好適な有機溶媒として、メタノール、エタノール、N,iV−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,iV−ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。
c.)メイタンシノイドの疎水性の性質に起因して、メイタンシノイドがコンジュゲーションの間に溶液中に残存することを確実にするには、水性緩衝液と有機溶媒との混合物中での抗体へのコンジュゲーションを行う必要があり得る。水性緩衝液中の好ましい有機溶媒量は、これらの条件下で試薬の溶解度および抗体の挙動に応じて0〜30%(v/v)の範囲である。コンジュゲーションは、pH3〜10で行われてよく、好ましいpHは5〜9であり、最も好ましいpHは、pH6〜8である。コンジュゲーション反応に用いられる緩衝液は、このpH範囲付近のpKa値を有する緩衝液、例えば、リン酸およびHEPES緩衝液である。
c.)抗体に対して5〜50倍過剰の、チオエーテル部位を持つアミン反応性メイタンシノイドは、コンジュゲーション反応に用いられて、抗体1分子あたり所望の数の連結されたメイタンシノイド分子とのコンジュゲートを生じることができる。1抗体につき好ましくは2〜8個の範囲の連結されたメイタンシノイドが、最終コンジュゲートに望ましい。条件、例えば、抗体濃度、試薬の溶解度およびpHは、所要のメイタンシノイド試薬の過剰倍数ならびに最終コンジュゲートにおける抗体1モルあたりの連結されたメイタンシノイド分子の数に影響し得る。
d.)クロスフロー濾過、透析、またはクロマトグラフィ(ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ)またはこれらの組み合わせによる、式(8)CB−(Z”−V−Q−W−Y’−D’)の非開裂性コンジュゲートの精製。
実施例
【0112】
いずれの特定の態様にも拘束されないが、細胞結合剤とのコンジュゲーションのための種々の反応性リンカーによるポリエチレングリコール((CHCHO))連結薬物の合成のための方法が記載される。これらのコンジュゲーション方法として、抗体と薬物、例えば、7V−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)反応性基における反応によってポリエチレングリコール((CHCHO))リンカーを介して連結されたメイタンシノイドとの1工程コンジュゲーションが挙げられる。
【0113】
また、抗体による、コンジュゲーションのための種々の反応性リンカーを有するジスルフィド基含有ポリエチレングリコール((CHCHθ))連結薬物を合成する方法も記載される。これらのコンジュゲーション方法として、抗体と薬物、例えば、iV−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)反応性基における反応を介して、ジスルフィド基保有ポリエチレングリコール((CHCHO))リンカーと連結したメイタンシノイドとの1工程コンジュゲーションが挙げられる。
【0114】
以下の実施例は、例示のみであって、本発明を限定することは意図されない。
【0115】
実施例I
常套の脂肪族炭素スペーサーを含有するジスルフィドリンカーによる、抗体と、抗体分子あたり数個の連結されたメイタンシノイド分子とのコンジュゲーション:
【0116】
抗体と数個のメイタンシノイドDM4またはDM1分子とをコンジュゲートする2工程プロセスにおいて、ヒト化抗体を、アミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミド基(NHS基)およびチオール反応性2−ピリジルジチオ基(−SSPy基)の両方を含有する市販のヘテロ二官能性リンカー(SPDB)によってまず修飾し、数個のリンカー分子を抗体分子に組み込んだ(W.C.Widdisonら、J Med.Chem.、2006、49、4392−4408に記載されている)。抗体分子への反応性リンカーの組み込みに続いて、第2反応工程において、反応性チオール基を有するメイタンシノイドDM4またはDM1をリンカー修飾抗体に添加して、ジスルフィド結合によってメイタンシノイドを抗体にコンジュゲートした。具体例では、5〜10mg/mlの濃度のヒト化抗体を、10〜15倍モル過剰の、−(CH)−アルキル基を有する市販のヘテロ二官能性リンカー(例えば、SPDB、SPP、SPDP)を用いて、水性緩衝液中pH6.5〜8で0.25〜3時間、周囲温度で修飾し、次いで、ゲル濾過(例えば、Sephadex G25クロマトグラフィを用いる)によって精製して、抗体1分子あたり平均8〜12個のリンカー基によって修飾された抗体を高収率で得た(典型的には80〜90%の収率)。連結された基を、過剰の1,4−ジチオトレイトール(DTT)試薬を少量のアリコートのリンカー修飾抗体サンプルに添加する際の343nmの吸光度に基づいて(343nm=8080M−1cm−1)2−チオピリドンの放出を測定することによって推定した。抗体に連結された反応性基を測定した後、2.5mg/mlの濃度のリンカー修飾抗体を過剰のメイタンシノイドDM4(反応性リンカーに対して1.7倍モル過剰のDM4チオール)によってpH6.5でコンジュゲートした。しかし、抗体−メイタンシノイドコンジュゲーション反応の間に沈澱が見られ、ゲル濾過による抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの精製の際には低い収率の抗体−メイタンシノイドコンジュゲート(−38〜60%の収率)を得た。抗体1分子あたりの連結メイタンシノイドの数を、252nmおよび280nmにおける吸光度の測定値から、メイタンシノイドおよび抗体について252nmおよび280nmにおける減衰係数を用いて求めた。抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの沈澱および約1〜1.5mg/mlの低い収量に加えて、抗体1分子あたりの組み込まれたメイタンシノイドの数は、抗体1分子あたりの組み込まれた最初の反応性リンカー基のはるかに高い平均数(抗体1分子あたり−8〜12個の反応性リンカー基)に基づいて予想したよりもはるかに低かった(抗体1分子あたり平均で−5.2〜5.5個のメイタンシノイド分子)。これは、より多くのメイタンシノイド保持抗体コンジュゲートの沈澱を示唆している。別の例において、ヒト化抗体を、SPDBヘテロ二官能性リンカーによってまず修飾し、抗体1分子あたり11個のピリジルジチオ基を組み込み、これは、1.7倍モル過剰のDM4メイタンシノイドチオールによる第2反応の際、反応混合物中にかなり沈澱することを示し、<30%の抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの非常に低い回収を結果としてもたらした。市販のヘテロ二官能性リンカー、例えば、脂肪族スペーサーを有するSPDBまたはSPDPを用いるとき、1mg/ml以上の抗体−メイタンシノイドコンジュゲート濃度では高いコンジュゲーションの収率で1抗体あたり4または5個を超えるメイタンシノイド分子を組み込むことが典型的には困難である。これにより、SPDB−またはSPDP誘導リンカーを有する抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの沈澱および低収率が、抗体の最初のSPDB−またはSPDPリンカー修飾の際(メイタンシノイドによるコンジュゲーションの前)に見られなかったことが観察された。これは、抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの凝集および沈澱が疎水性分子の付着によって恐らく引き起こされたことを示唆した。
【0117】
実施例II
親水性ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−O)n=1−14)を含有するジスルフィドリンカーによる、抗体と、抗体分子あたり数個の連結メイタンシノイド分子とのコンジュゲーション
親水性スペーサー、例えばポリエチレンオキシド(PEG、または(−CH−CH−O)n=Ui4)が、高い個数のメイタンシノイド分子(抗体分子当たり平均>4)を含む抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの凝集および沈殿を防止することができるかを調査するために、いくつかの新規のヘテロ二官能性および一官能性メイタンシノイド誘導体を調製し、これらを、直接修飾により、または抗体のリジン残基における最初の誘導体化、続いてのメイタンシノイドの反応による2工程反応により、抗体にコンジュゲートさせることができた(例えば、図3、6、11および12を参照)。
【0118】
15−(2−ピリジルジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸の合成
アルドリチオール−2(1.17g,5.31mmol)の溶液を、10mLの丸底フラスコにおいて5.0mLの1,2−ジメトキシエタン中で調製した。この反応フラスコに、1.0mLの1,2−ジメトキシエタンに溶解した3−(2−チオテトラエチレングリコール)プロピオン酸(QuantaBiodesign,490mg,1.73mmol)の溶液を添加した。撹拌しながら3.5時間、反応を進行させ、生成物をシリカクロマトグラフィにより、塩化メチレン中5%のメタノールで溶離して精製した。溶媒を真空中で除去して、432mg(64%の収率)の所望の生成物を得た。
【0119】
PySS−PEG−NHS[15−(2−ピリジルジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル]の合成
10mLの丸底フラスコに、15−(2−ピリジルジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸(431mg,1.10mmol)、5.0mLの塩化メチレンおよび撹拌棒を投入した。7V−ヒドロキシスクシンイミド(3.6mg,0.31mmol)および1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(6.8mg,0.036mmol)を反応容器に添加し、室温で2時間、撹拌しながら反応を進行させた。生成物をシリカクロマトグラフィにより、塩化メチレン中7%の1,2−ジメトキシエタンで溶離して精製した。溶媒を真空中で除去して、206mg(38%の収率)の所望の生成物を得た。MS:m/z:実測値:511.1(M+Na),計算値:511.2。
【0120】
15−(DM4−ジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸の合成
2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)メイタンシン(DM4,18.6mg,0.0239mmol)および15−(2−ピリジルジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸(14.0mg,0.0358mmol)の溶液を、0.75mLの1,2−ジメトキシエタン中で調製した。4−メチルモルホリン(6.0mg,0.0597mmol)を反応容器に添加し、室温で24時間、撹拌しながら反応を進行させた。反応が完了すると、粗反応混合物を真空中で乾燥させ、さらに精製せずに用いた(図6)。
【0121】
15−(DM4−ジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(DM4−SPEG−NHS)の合成
粗15−(DM4−ジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸を2.0mLの塩化メチレンに溶解し、7V−ヒドロキシスクシンイミド(3.6mg,0.31mmol)および1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(6.8mg,0.036mmol)と合わせた。溶液を2.5時間撹拌し、生成物をシリカクロマトグラフィにより、塩化メチレン中4%のメタノールで溶離して精製した。溶媒を真空下で除去して、15.0mg(54%の収率)の所望の生成物を得た。MS:m/z:実測値:1179.3(M+Na),計算値:1179.4(図6)。
【0122】
抗体分子あたり高い個数のメイタンシノイド分子を連結するための、親水性ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−O)n=J−I4)を含むジスルフィドリンカーを用いる2工程の抗体コンジュゲーション:
親水性スペーサー、例えばポリエチレンオキシド(PEG、または(−CH−CH−O)n=I−I4)を含む新規のヘテロ二官能性試薬を用いて抗体を修飾し、続いてDM4チオールとコンジュゲートさせたときに、新規の観察が得られた。親水性PEGスペーサーを有する抗体−メイタンシノイドコンジュゲートのコンジュゲーション混合物は、何ら沈殿を示さず、非常に高いモノマー画分(>90%)で高いコンジュゲート収率(>70%)を一貫して与えた。一例として、8mg/mlの濃度のヒト化抗体を、抗体濃度に対して数倍モル過剰のPySS−PEG−NHS試薬で、pH8の緩衝液中において30℃で1時間修飾し、次いでゲル濾過により精製した。抗体分子あたりの連結されたジチオピリジル基は、過剰のジチオトレイトールを用いてアリコートの2−チオピリドン放出アッセイにより約4〜16個であると推定され、これに基づいて、pH6.5、25℃で一晩のコンジュゲーション工程について、1.4倍モル過剰のDM4メイタンシノイドチオールをジチオピリジル−PEG−リンカー修飾した抗体の各溶液に添加し、次いでコンジュゲートをゲル濾過により精製した(図12)。種々の初期リンカー組み込みを有する種々のコンジュゲーション混合物について抗体あたり組み込まれたメイタンシノイドの最終値は、抗体分子あたり平均3〜9個のメイタンシノイドの範囲であり、沈殿は観察されず、>70%の収率および非常に高いモノマーであった(20%イソプロパノールまたは0.4M過塩素酸ナトリウムを用いるサイズ排除TSK−GEL G3000 HPLCに基づいて>90%のモノマー)。最終コンジュゲート中のコンジュゲートされていない薬物は0.6%未満であることがHiSep Mixed−Modeクロマトグラフィ(HiSepカラム、Supelco)により測定され、メイタンシノイドが抗体に共有結合的に連結したことを示した。別の例において、8mg/mlの濃度のヒト化抗体を、抗体濃度に対して数倍モル過剰のPySS−PEG−NHS試薬で、pH6.5の緩衝液中において25℃で1.5時間修飾し、次いでゲル濾過により精製した。抗体試料上のジチオピリジル−PEG保持リンカー基は抗体分子あたり6〜18個と推定され、次いでこれを1.3〜1.7倍モル過剰のDM4メイタンシノイドチオールとpH6.5、25℃で一晩反応させ、次いでゲル濾過により精製した。沈殿は観察されず、約1〜2mg/mlで抗体−メイタンシノイドコンジュゲート最終試料は高いモノマー画分(>90%)を示し、これは、凝集がなく、抗体分子あたり約3.1〜7.1個の高い個数のメイタンシノイドが共有結合的に付着しており、コンジュゲートされていないメイタンシノイドが非常に少ないことを示した(HiSepクロマトグラフィにより推定された、コンジュゲートされていないメイタンシノイドは<1.7%)。抗体あたりの薬物負荷が高いこのコンジュゲートは、4℃での貯蔵に際し、分析した最長期間(1.5カ月間)まででも安定であった。
【0123】
抗体分子あたり高い個数のメイタンシノイド分子を連結するための、親水性ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−O)n=Li4)を含むジスルフィドリンカーを用いる1工程の抗体コンジュゲーション:
1工程コンジュゲーションのアプローチにおいて、親水性ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−O)n=I−I4)を含むジスルフィドリンカーを用いた抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを、4mg/mlの濃度のヒト化抗体と10〜20倍モル過剰のDM4−SPEG−NHS試薬とをpH8の緩衝液中30℃で2時間コンジュゲートさせた後にゲル濾過により精製することによって生成させ、抗体分子あたり6.6個のコンジュゲートされたメイタンシノイド(82%のモノマー)を含む1.4mg/mlの濃度の抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを得た(図11)。したがって、2工程および1工程のアプローチの両方により、親水性ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−O)n=M4)を含むジスルフィドリンカーを用いて、抗体分子あたり高い数の連結されたメイタンシノイドが得られた。
【0124】
実施例HI
親水性ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−OU)を含有するチオエーテルリンカーによる、抗体と、抗体分子あたり数個の連結されたメイタンシノイド分子とのコンジュゲーション
抗体のリジン残基を直接修飾するために、SPPから誘導した従来の脂肪族リンカー、例えば常套の脂肪族リンカーを有するメイタンシノイドのiV−ヒドロキシスクシンイミドエステル(W.C.Widdisonら、J.Med.Chem.,2006,49,4392−4408に記載されている)をまず用いて、抗体を1工程方法でコンジュゲートさせた。ヒト化抗体と、試験試薬としての8倍モル過剰の5mg/mlのDM1−SPP−NHS試薬とを、pH8の緩衝液中30℃で2時間コンジュゲートさせる試み(続いてゲル濾過および透析による)は、かなりの沈殿および凝集を生じ、したがって最終コンジュゲートはわずか61%のモノマーであり、抗体あたり連結したメイタンシノイドは約3.3個であった。対照的に、DM1−MaI−PEG−NHS試薬を同様の条件下で用いると1.1mg/mlで抗体あたり5.4個のメイタンシノイド分子が連結したコンジュゲートが得られ、最終コンジュゲート中に沈殿はなかった(図7または9)。同様に、DM1−MaI−PEG−NHS試薬を用いて、抗体分子あたり高い数の連結されたメイタンシノイドがチオエーテル結合を介してコンジュゲートされたものを得た。別の例において、ネズミIgG抗体を4mg/mlで10および20倍モル過剰のDM1−MaI−PEG−NHS試薬と、pH8の緩衝液中30℃で2時間コンジュゲートさせ、続いてゲル濾過して、約1mg/mlの濃度の抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを得、抗体分子あたり4.1および7.8個のメイタンシノイド分子が共有結合的にコンジュゲートし(98%のモノマー)、コンジュゲートされていない薬物は検出不可能なレベルであった(HiSep HPLCアッセイ)。別の例において、ヒト化抗体を過剰のDM1−MaI−PEG−NHS試薬とコンジュゲートさせて、抗体あたり平均10.7個の連結メイタンシノイド分子を得た(99%モノマー;1.1mg/mlの濃度)。図8および図10に概説した2工程コンジュゲーション手段を用いて、抗体からPEG連結チオエーテルコンジュゲートも調製した。したがって、親水性リンカー、例えばPEGまたは(−CH−CH−O)の使用により、抗体あたり多数のメイタンシノイド分子を導入することができる(例えば図1、2、4、5、7、8、9、10、13、14、15、16、17、18、19、20および21を参照)。
【0125】
DM1−MaI−PEG−NHSの合成
2’−デアセチル−7V2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1,13.4mg,0.0182mmol)の溶液を0.70mLのTHF中で調製し、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ジエチレングリコール]エステル(NHS−PEG−マレイミド,Quanta Biodesign,11.6mg,0.0273mmol)を、水性リン酸カリウム緩衝液(50mM,pH6)およびTHFの1.5mLの2:1(v/v)混合物中において添加した。室温で撹拌しながら1時間、反応を進行させ、TLC分析は反応が完了したことを示した。粗反応混合物をシリカクロマトグラフィにより、塩化メチレン中8%のエタノールで溶離して精製した;溶媒を真空下で除去して、6.0mg(28%の収率)の所望の生成物を得た。MS:m/z実測値:1185.3(M+Na),計算値:1184.4(図4)。
【0126】
DM1−MaI−PEG−NHSの合成
2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1,28.1mg,0.0381mmol)の溶液を0.50mLのTHF中で調製し、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−テトラエチレングリコール]エステル(NHS−PEG−マレイミド,Quanta Biodesign,39.1mg,0.0762mmol)を、水性リン酸カリウム緩衝液(50mM,pH6)およびTHFの1.5mLの2:1(v/v)混合物中において添加した。室温で撹拌しながら1時間、反応を進行させ、TLC分析は反応が完了したことを示した。粗反応混合物をシリカクロマトグラフィにより、塩化メチレン中6%のエタノールで溶離して精製した;溶媒を真空下で除去して、9.6mg(20%の収率)の所望の生成物を得た。MS:m/z実測値:1273.5(M+Na),計算値:1273.5(図4)。
【0127】
実施例IV
高メイタンシノイド保持抗体種の質量分析:
親水性PEGリンカーを有する高メイタンシノイド保持抗体種を分析するために、抗体あたり平均10.7個のDM1を含む非常に高いメイタンシノイド保持Ab−PEG−MaI−DM1コンジュゲートを選択した。該コンジュゲートを脱グリコシル化し、次いでESI−TOF MSにより分析した(図22)。質量スペクトルは、抗体あたり薬物4〜15個の範囲の種々の数の連結されたメイタンシノイドで標識された種々の抗体種を示し、抗体あたり薬物8〜9個付近に最大値を有する。この分布は正規であり、高い薬物保持種について選択的な消失が見られなかったことを示唆し、これは最終コンジュゲートの高い溶解度と一致する。抗体あたり平均10.7個のDM1を含む高メイタンシノイド保持Ab−PEG−MaI−DM1コンジュゲートのサイズ排除クロマトグラフィHPLCは、驚くべきことに高い>99%の量のモノマーを示した(図23)。
【0128】
実施例V
高メイタンシノイド保持抗体種のFACS結合は非修飾抗体の該結合に類似する:
EpCAM、CanAgおよびCD56などの種々の標的に対する、いくつかの抗体の高メイタンシノイド保持コンジュゲートの結合を、フローサイトメトリーにより非修飾抗体と比較した。要約すると、抗原陽性細胞をコンジュゲートまたは非修飾抗体と共に4℃でインキュベートし、次いで二次抗体FITCコンジュゲートと共に4℃でインキュベートし、ホルムアルデヒド(PBS中1%)で固定し、フローサイトメトリーにより分析した。評価したすべてのコンジュゲートについて、コンジュゲートの結合と非修飾抗体の結合との間に有意な差は観察されなかった。一例を図24に示し、ここで、10.7個のメイタンシノイド保持Ab−PEG−MaI−DM1コンジュゲートが非修飾抗体のものに類似する高い親和性によって抗原陽性細胞に結合した。
【0129】
実施例VI
ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−O))を含有するチオエーテルおよびジスルフィドリンカーを含む、抗体のメイタンシノイドコンジュゲートのインビトロ細胞毒性評価
PEGスペーサーを含有するチオエーテルおよびジスルフィドリンカーを含む抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性効果を、WST−8細胞生存率アッセイを用いて、癌細胞とコンジュゲートとの4〜5日連続のインキュベーションの後に典型的に評価した。抗原発現癌細胞(約1000〜5000細胞/ウェル)を、96ウェルプレートにおいて、ウシ胎仔血清を種々の濃度の抗体−メイタンシノイドコンジュゲートと共に含有する慣習的な成長培地において約5日間インキュベートした。次いでWST−8試薬を添加し、約2〜5時間後に450nmにおけるプレートの吸光度を測定した。生存画分をコンジュゲート濃度に対してプロットして、コンジュゲートの/C50値(50%の細胞が死滅する濃度)を求めた。
【0130】
図25は、抗EpCAM Ab−メイタンシノイドコンジュゲートの有効性の、PEG連結チオエーテルコンジュゲート(Ab−PEG−MaI−DM1)のための薬物負荷の増加に伴う向上を示し、これは、抗体あたり約4個のメイタンシノイドの同様の薬物負荷におけるチオエーテル連結SMCC−DM1およびジスルフィド連結SPDB−DM4コンジュゲートよりも、EpCAM抗原陽性COLO205−多剤耐性細胞(COLO205−MDR細胞)に対する有効性が大きいことも示す。メイタンシノイド負荷が4.1および7.8のチオエーテル連結抗EpCAM Ab−PEG−MaI−DM1コンジュゲートの有効性は新規であり、治療的適用にとって非常に有望な可能性を有する。
【0131】
図26は、CanAg抗原陽性COLO205−MDRに対する抗CanAg Ab−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。この場合も、チオエーテル連結Ab−PEG−MaI−DM1およびAb−PEG−MaI−DM1コンジュゲートは、同様のメイタンシノイド負荷を有するチオエーテル連結Ab−SMCC−DM1コンジュゲートと比較して、より大きい有効性を示した。
【0132】
図27は、CD56発現Molp−8多発性骨髄腫細胞に対する、PEG含有チオエーテルおよびジスルフィドリンカーを有する抗CD56抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性活性を示す。抗体あたり7.7個の薬物を有するチオエーテル連結PEG4コンジュゲート(Ab−PEGMaI−DM1)は、3.8個の薬物を持つコンジュゲート(/C50=1.9nM)と比較して、細胞毒性有効性の予想されない100倍の増大を示した(/C50値0.019nM)。
【0133】
図28は、EpCAM陽性多剤耐性HCT15細胞に対する、PEG連結チオエーテルコンジュゲートを持つ抗EpCAM Ab−メイタンシノイドコンジュゲート(Ab−PEG−MaI−DM1)の有効性が、抗体あたり約4個のメイタンシノイドの同様の薬物負荷の従来のチオエーテル連結SMCC−DM1に対して向上したことを示す。チオエーテル連結抗EpCAM Ab−PEG−MaI−DM1コンジュゲートの高い有効性は新規の所見であり、治療的適用にとって非常に有望な可能性を有する。図29は、EpCAM陽性多剤耐性COLO205細胞に対する、PEG連結チオエーテルコンジュゲートを持つ抗EpCAM Ab−メイタンシノイドコンジュゲート(Ab−PEG−MaI−DM1)の有効性が、抗体あたり約4個のメイタンシノイドの同様の薬物負荷の従来のチオエーテル連結SMCC−DM1より向上したことを示す。チオエーテル連結抗EpCAM Ab−PEG−MaI−DM1コンジュゲートの向上した有効性は新規の所見であり、治療的適用にとって非常に有望な可能性を有する。図37は、EGFR陽性UO−31ヒト腎癌腫細胞に対する、親水性チオエーテル結合PEGリンカーを有する抗EGFR Ab−メイタンシノイドコンジュゲート(Ab−PEG−MaI−DM1)の細胞毒性が、3.7個のメイタンシノイド/Abを有する非親水性SMCC−DM1コンジュゲートと比較して著しく向上したことを示す。PEG−MaI−DM1の有効性は、常套のリンカーを有するSMCC−DM1コンジュゲートのものより約10倍大きかった。
【0134】
実施例VII
インビボ薬物動態:
親水性PEGリンカーを含有し6.7D/A(メイタンシノイド/抗体)を持つヒト化−抗CD56抗体(Ab)−PEG−MaI−DM1コンジュゲートの血漿薬物動態を、常套の脂肪族炭素鎖リンカーを含有し4D/Aを持つAb−SMCC−DM1コンジュゲートのものと比較した(図38A)。CD1マウスに5mg/kgのコンジュゲートを単回ボーラスにより静脈内注射した(抗体基準の用量;グループあたり3匹のマウス)。血漿サンプルを4週間までの数回の時点で収集した。血漿サンプルを抗体濃度およびコンジュゲート濃度についてELISAを用いて分析した。抗体ELISAについては、コーティングした固定化−ヤギ−抗ヒトIgG(H+L)抗体を含有するマイクロタイタープレートに血漿サンプルを添加し、洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートしたヤギ−抗ヒトIgG(Fcγ)抗体を用いて検出した。コンジュゲート濃度については、コーティングした固定化−ヤギ−抗ヒトIgG(H+L)抗体を含有するマイクロタイタープレートに血漿サンプルを添加し、洗浄し、ビオチニル化−抗メイタンシン抗体およびアルカリホスファターゼコンジュゲートしたストレプトアビジンを用いて検出した。抗体濃度およびコンジュゲート濃度の両方のELISA結果は、親水性PEGリンカーを有し6.7DM1/Abの高い負荷を持つAb−PEG−MaI−DM1コンジュゲートが4週間の研究期間にわたって血漿中に良好に保持されることを証明した。
【0135】
図38Aは、PEGリンカーを用いた、高いメイタンシノイド負荷(6.7DM1/Ab)を有する抗体−メイタンシノイドコンジュゲートのインビボ薬物動態を、4DM1/Abを持つ標準的なリンカーコンジュゲートと比較して示す。高いメイタンシノイド負荷によってでも、6.7個のメイタンシノイド/Abを有するPEG連結チオエーテルコンジュゲート(Ab−PEG−MaI−DM1)は、標準的なコンジュゲートより長い半減期を有する。別の例において、H標識DM1を有するヒト化C242Ab−PEG−MaI−H−DM1コンジュゲート(3.3個のメイタンシノイド/Ab)の血漿薬物動態を、コンジュゲートしていない抗体、および常套の脂肪族炭素鎖リンカーを含有する同様の4.2D/Aの負荷を持つAb−SMCC−H−DM1コンジュゲートと、CD−1マウスにおいて10〜12mg/kgの静脈内用量で比較した(図38B)。Ab−PEG−MaI−H−DM1コンジュゲートは、4週間にわたって、同様のメイタンシノイド負荷を持つ常套のSMCCリンカーコンジュゲートと比較してより高い血漿濃度を示し、これは、抗体濃度(ELISA;図38B)およびコンジュゲート濃度(H標識計数)の両方により測定された。PEG−MaI連結コンジュゲートの半減期は、SMCC連結コンジュゲートについての12.6日と比較して16日であり、したがって、SMCCコンジュゲートよりもはるかに向上した(図38B)。重要なことに、CD−1マウスにおいて、3.3D/Aを有するAb−PEG−MaI−DM1コンジュゲートの、10mg/kgの静脈内用量における曲線下面積(AUC)(AUC=38790h.μg/mL)は、コンジュゲートしていない抗体の、同様の12mg/kgの静脈内用量におけるもの(AUC=38798h.μg/mL)と類似しており、4.2D/Aを有するAb−SMCC−DM1コンジュゲートの、10mg/kgの静脈内用量におけるもの(AUC=25910h.μg/mL)よりもはるかに良好であった(図38B)。
【0136】
実施例VIII
耐性大腸癌(HCT15)異種移植に対する抗EpCAM−メイタンシノイドコンジュゲート、muB38.1−MCC−DM1およびmuB38.1−PEG4−mal−M1コンジュゲートのインビボ抗腫瘍活性の比較
muB38.1−MCC−DM1およびmuB38.1−PEG4−mal−DM1コンジュゲートの抗腫瘍効果を、P糖タンパク質を過剰発現して種々の薬物に対し耐性であることが示されているヒト大腸癌腫HCT15の異種移植モデルにおいて評価した。HCT15細胞をSCIDマウスの右肩下の領域に皮下注射した(1×10細胞/動物)。腫瘍の体積が約140mmのサイズに達した時点で(腫瘍細胞接種後9日)、マウスを腫瘍体積によりランダム化して3グループに分け(5匹/グループ)、各グループをmuB38.1−MCC−DM1(コンジュゲートタンパク質20mg/kg)、muB38.1−PEG4−mal−DM1(コンジュゲートタンパク質20mg/kg)またはリン酸緩衝化生理食塩水(ビヒクル対照)のいずれかの静脈内単回ボーラスで処置した。腫瘍サイズを週2回測定することにより腫瘍の成長をモニタリングした。腫瘍サイズを式:長さ×幅×高さ×1/2;により算出した。
【0137】
腫瘍体積の平均変化を、例えば図30に示す。PBS対照群では、細胞接種後20日目までに腫瘍が600mmの腫瘍体積に達した。muB38.1−MCC−DM1による処置は15日の腫瘍成長遅延をもたらした。muB38.1−PEG4−mal−DM1による処置は、さらなる抗腫瘍効果を示し、5匹中2匹の動物は完全な腫瘍退縮を有して44日間持続し、3匹は32日間の腫瘍成長遅延を伴った。
【0138】
したがって、本発明のコンジュゲートmuB38.1−PEG4−mal−DM1は、このヒト大腸癌異種移植モデルにおいてmuB38.1−MCC−DM1より有意に有効である。
【0139】
実施例IX
耐性大腸癌(COLO205−MDR)の異種移植に対する抗EpCAM−メイタンシノイドコンジュゲート(muB38.1−MCC−DM1およびmuB38.1−PEG4−mal−DM1)のインビボ抗腫瘍活性の比較
muB38.1−MCC−DM1およびmuB38.1−PEG4−mal−DM1コンジュゲートの抗腫瘍効果を、P糖タンパク質を過剰発現するように工学的処理されたヒト大腸癌COLO205−MDRの異種移植モデルにおいて評価した。COLO205−MDR細胞をSCIDマウスの右肩下の領域に皮下注射した(1×10細胞/動物)。腫瘍の体積が約170mmのサイズに達した時点で(細胞接種後8日)、マウスをランダムに3グループに分け(6匹/グループ)、各グループをmuB38.1−MCC−DM1(コンジュゲートタンパク質20mg/kg)、muB38.1−PEG4−mal−DM1(抗体投与量20mg/kg)またはリン酸緩衝化生理食塩水(ビヒクル対照)のいずれかの静脈内単回ボーラスで処置した。腫瘍サイズを週2回測定することにより腫瘍の成長をモニタリングした。腫瘍サイズを式:長さ×幅×高さ×1/2;により算出した。
【0140】
腫瘍体積の平均変化を、例えば図31に示す。PBS対照群では、38日で腫瘍が約1000mmにまで成長した。muB38.1−MCC−DM1による処置は、14日の腫瘍成長遅延をもたらした。muB38.1−PEG4−mal−DM1による処置は顕著な抗腫瘍効果を有し、6匹すべての動物において完全な腫瘍退縮をもたらした(図31)。
【0141】
同様な実験をCOLO205異種移植に対しても行った。この場合も、B38.1−PEG4−mal−DM1による処置は、より有効であり、完全な腫瘍退縮をもたらした一方で、標準的なSMCCコンジュゲートは中等度の腫瘍成長遅延を示すのみである(図32)。
【0142】
同様な結果がヒト化抗CanAg抗体のコンジュゲートによって得られた(図33)。
【0143】
したがって、本発明のコンジュゲートmuB38.1−PEG4−mal−DM1は、このヒト大腸癌異種移植モデルにおいて、これまでに記載されたリンカーを用いて調製されたコンジュゲートmuB38.1−MCC−DM1より有意に有効である。
【0144】
実施例X
PEGの長さの評価:
PEG、PEG、PEGi、PEG24リンカーを用い、かつ抗体あたり種々の数のDMxを組み込み、いくつかのAb−PEG−MaI−DMxコンジュゲートを調製した。図34は、非常に高い17.1D/Aの負荷を有するAb−PEG24−MaI−DM1コンジュゲートが、抗原発現癌細胞への非修飾抗体と同様の結合を示すことを示す(フローサイトメトリーによる相対平均蛍光RMF単位で測定された結合)。4〜8D/Aを持つAb−PEG−MaI−DM1およびAb−PEG12−MaI−DM1コンジュゲートも、細胞結合フローサイトメトリーによって非修飾抗体と同様の結合を示す。PEG、PEG、PEGj、PEG24リンカーを用いて調製したAb−PEG−MaI−DMxコンジュゲートは、抗原陽性細胞に対する細胞毒性において有効であった。図35は、4〜17D/Aを有する抗CanAg抗体(huC242)−PEG−Mal−DM1コンジュゲートが、CanAg抗原陽性COLO205細胞を5日間のインキュベーションに際し約0.1〜0.5nMの有効なIC50で死滅させたことを実証する。pgp発現多剤耐性COLO205−MDR細胞は、4〜17D/Aを持つhuC242−PEG−Mal−DM1コンジュゲートによって、約0.05〜0.5nMのIC50で有効に死滅した(図36)。高い17.1D/Aを有するPEG24−MaI−DM1コンジュゲートは、細胞毒性において、4D/Aを有するPEG24−MaI−DM1コンジュゲートより有効であった(図34、36)。
【0145】
実施例XI
アミン反応性基を含有する非開裂性チオスクシンイミジル部位を持つメイタンシノイドの、抗体に対するコンジュゲーション
非開裂性チオスクシンイミジル基を持つメイタンシノイドのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを用いて、1工程方法を用いて抗体をコンジュゲートした(図41)。スルフヒドリル保持メイタンシノイドをヘテロ二官能性マレイミド保持架橋剤によって修飾し、単離し(図43)、その後、抗体によるコンジュゲーションにより非開裂性チオスクシンイミジル連結抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを与えた(図39)。反応をマレイミドとNHSエステルとの間に炭化水素環を含有するSMCC試薬によって行い、同様の方法を用いて、スルフヒドリル保持メイタンシノイドをマレイミドとNHSエステルとの間に直鎖炭化水素を含有するヘテロ二官能性リンカーと反応させることができた(図44)。
【0146】
DM1−SMCCの合成
丸底フラスコに、N2’−デアセチル−iV2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1、67.9mg、0.092mmol)、スクシンイミジル−4−(7Vマレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC、32.1mg、0.096mmol、1.05当量)およびTHF(4mL)を投入した。試薬として撹拌された溶液を溶媒に溶解し、透明の無色溶液を生じさせた。次いで、pH6のリン酸緩衝液(4mL、100mMのリン酸カリウム、2mMのEDTA)を添加した。反応フラスコにセプタムおよび撹拌棒を装備し、激しく撹拌しながら室温で反応を進行させた。反応は、逆相HPLCによって示されるように、30分以内に完了したと見られた。反応の完了後、反応物体積を真空中で減少させ、白色固体/残渣を与えた。生成物を塩化メチレン中3%のメタノールの混合物で溶離しながら、シリカゲルクロマトグラフィによって単離した。生成物含有画分を合わせ、真空中で乾固させて、63mg(63.9%の収率)のDM1−SMCCを白色固体として与えた。単離した生成物の質量分析により、予測値m+Na(m/z1094.4)およびm+Cl(m/z1106.2)の主な分子イオン(図43)を与えた。
【0147】
DM1−SMCCによる抗体の1工程コンジュゲーション
DM1−SMCC試薬の10mMの原料(w/v)をDMA(10.7mg/mL)中で調製した。原液をEtOHで希釈し、EtOHおよびDMAの試薬のブランクに対して吸光度を280nmで測定した。原料であるDM1−SMCC試薬の濃度を280nmで5700M−1の減衰係数(この波長におけるDM1の減衰係数である)を用いることによって算出した。DM1−SMCCの実際の減衰係数を求めていないため、これが唯一の濃度推定値である。
【0148】
抗体を、7倍モル過剰の試薬を用いて5mg/mLでDM1−SMCCによってコンジュゲートした。数倍過剰のDM1−SMCCによる抗体の滴定を最初に実施して所望のDM1:Ab比を求め、典型的にはこの範囲はヒト抗体に関して6〜10倍モル過剰である。反応をDMA(5%v/v)を含むpH7.5の緩衝液において室温で90分間行った。次いで反応混合物を4℃で12〜36時間維持した。次いでコンジュゲートを、pH5.5のクエン酸緩衝液において平衡化したNAP−5(Sephadex G25)カラム上で精製し、濾過し、pH5.5のクエン酸緩衝液に対して透析して、あらゆる未反応の遊離薬物を除去した。透析後、コンジュゲートは、抗体1モルあたり3.1個の連結したDM1分子を有し、検出可能な遊離薬物はコンジュゲートにおいて存在しなかった(図39、m=3.1)。最終コンジュゲートにおけるAb抗体分子1個あたりのDM1分子の数(平均)を、252および280nmにおけるコンジュゲートの吸光度を決定し、これらの2波長におけるDM1および抗体についての既知の減衰係数を用いることによって測定した。
【0149】
SEC HPLCをコンジュゲートにおいて実施し、コンジュゲーション後に96.8%がモノマー性であったことを示した。
【0150】
最終コンジュゲートもまた、サイズ排除LC/MSによって分析した。本発明において記載されている方法を介して作製したコンジュゲートは、脱グリコシル化されたコンジュゲートの、予測されたピーク分布のみを含有する所望のMSスペクトルを示す(図45)。
【0151】
DM4−SMCCの合成
丸底フラスコに、N2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)メイタンシン(DM4、22.0mg、0.0282mmol)およびスクシンイミジル−4−(7Vマレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC、24.2mg、0.0723mmol、2.50当量)およびガラス蒸留したTHF(1mL)を投入した。試薬として撹拌した溶液を溶媒に溶解し、透明な無色溶液を生じさせた。次いで、pH6のリン酸緩衝液(1mL、100raMのリン酸カリウム、2mMのEDTA)を添加した。反応フラスコにセプタムおよび撹拌棒を装備し、激しく撹拌しながら室温で反応を進行させた。反応は、逆相HPLCによって示されるように、7時間後に完了したと見られた。反応の完了後、生成物を酢酸エチル中に抽出し(3×25mL)、塩水(5mL)で洗浄させ、真空中で乾燥させた。生成物を塩化メチレン中3%のメタノールの混合物で溶離しながら、シリカゲルクロマトグラフィによって単離した。生成物含有画分を合わせ、真空中で濃縮して、19.74mg(62.8%の収率)のDM4−SMCCを与えた。単離した生成物の質量分析により、予測値m+Na(m/z1136.4)およびm+Cl(m/z1148.4)の主な分子イオンを与えた。
【0152】
DM4−SMCCによる、抗体の1工程コンジュゲーション
ヒト化抗体(2.5mg/mL)のpH8.0の水性緩衝液(100mMのリン酸ナトリウム)中の溶液を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中の10倍モル過剰のDM4−SMCCによってインキュベートして、20%の最終DMSO濃度を与えた。周囲温度で1時間、コンジュゲーションを進行させた。コンジュゲートを。pH5.5の緩衝液(10mMのヒスチジン、130mMのグリシン、5%(w/v)のスクロース、pH5.5)中で平衡化させたSephadex G25ゲル濾過カラム上の通過によって精製した。最終コンジュゲートにおける抗体1分子あたりの連結されたDM4分子(平均)の数を、252および280nmにおけるコンジュゲートの吸光度を決定し、これらの2波長におけるDM4および抗体についての既知の減衰係数を用いることによって測定した。
【0153】
精製後、コンジュゲートは、抗体1分子あたり3.7個の連結されたDM4分子を有した。SEC分析を最終コンジュゲートにおいて実施して、>95%がモノマー性であったことを示したが、>5%の遊離薬物種が最終コンジュゲートにおいて存在した。コンジュゲートの透析は、望ましくない遊離薬物種の存在を減少させた場合がある。
【0154】
実施例XII
アミン反応性基を含有する非開裂性チオアセトアミジル部位を持つメイタンシノイドの、抗体へのコンジュゲーション
メイタンシノイドDM1を持つスルフヒドリルをブロモ酢酸と反応させ、チオアセトアミジル連結カルボン酸誘導体を与えた。N−ヒドロキシスクシンイミドとのエステル化は、アミン反応性非開裂性チオアセトアミジル連結メイタンシノイドを与えた(図48)。単離された化合物と抗体との1工程コンジュゲーション(図42)は、非開裂性抗体メイタンシノイドコンジュゲートを与えた(図40)。
【0155】
代替的には、スルフヒドリル保持メイタンシノイドDM4をヘテロ二官能性のハロアセトアミド保持架橋剤によって修飾して、チオアセトアミジル部位を持つアミン反応性メイタンシノイドを与えた(図49)。単離された化合物の抗体による1工程コンジュゲーション(図42)は、非開裂性チオアセトアミジル連結抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを与えた(図40)。
【0156】
DM1−SBAの合成
丸底フラスコに、N2’−デアセチル−/V2’−(3−メルカプト−1-オキソプロピO−メイタンシン(DM1、183.4mg、0.248mmol)および無水N,TV−ジメチルホルムアミド(DMF、3mL)を投入した。ブロモ酢酸(37.9mg、0.273mmol、1.1当量)および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、75.6mg、0.497mmol)を順次添加しながら反応溶液を撹拌した。フラスコにセプタムおよび撹拌棒を装備し、1時間の間、激しく撹拌しながら室温で反応を進行させた。反応の完了後、反応物体積を粗油まで真空中で減少させた。粗生成物を最小体積の塩化メチレンに溶解し、生成物を、5%のエタノール、0.5%の酢酸および94.5%の塩化メチレンの混合物で溶離しながらシリカゲルクロマトグラフィによって単離した。生成物含有画分を合わせ、体積を真空中で減少させ、HPLCによって、94.6%の純度を有する、158.8mg(80.4%の収率)のチオアセトアミジル連結DM1カルボン酸誘導体を与えた。
【0157】
丸底フラスコを、先の反応の生成物(158.8mg、0.199mmol)および塩化メチレン(15mL)を投入した。次いで、/V−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、25.2mg、0.219mmol、1.1当量)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC、57.2mg、0.298mmol)を添加した。完了するまで室温にて撹拌しながら反応を進行させた。反応の完了後(約45分)、反応混合物を酢酸エチルで希釈し(20mL)、分離漏斗に移し、pH6のリン酸緩衝液(15mL、100mMのリン酸ナトリウム、2mMのEDTA)および塩水(7mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、真空中で濃縮して、粗オフホワイト固体を与えた。生成物を酢酸エチル中10%の1,2−ジメトキシエタンの混合物で溶離しながらシリカゲルクロマトグラフィによって単離した。生成物含有画分を合わせ、真空中で濃縮して、逆相HPLCによって96.0%の純度を有する、34.5mg(19.4%の収率)のDM1−SBAを与えた。単離した生成物の質量分析により、予測値m+Na(m/z915.2)およびm+Cl(m/z927.0)の主な分子イオンを与えた。
【0158】
DM1−SBAによる、抗体の1工程コンジュゲーション
DM1−SBA試薬の10.8mMの原料(w/v)をDMA中で調製した。抗体を、10.2倍モル過剰の試薬を用いて2.5mg/mLでDM1−SBAによってコンジュゲートした。反応を、DMA(10%v/v)によって、pH7.5の緩衝液(100mMのリン酸カリウム)中で室温にて90分間行った。次いでコンジュゲートをpH6.5の緩衝液(10mMのリン酸カリウム、140mMの塩化ナトリウム)で溶離しながらS300ゲル濾過(Sephadex S300)カラム上で精製した。精製後、コンジュゲートは、抗体1モルあたり3.7個の連結されたDM1分子、および約0.18%の遊離薬物を有した(図40、m=3.7)。
【0159】
SEC HPLCをコンジュゲートにおいて実施し、コンジュゲーション後に99.6%がモノマー性であったことを示した。
【0160】
N−スクシンイミジルブロモアセテート(市販も)の合成
100mLの丸底フラスコに、2−ブロモ酢酸(2.79g、20.08mmol)、7V−ヒドロキシスクシンイミド(2.54g、22.12mmol)および塩化メチレン(30mL)を投入した。TV−TV−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、4.46g、22.14mmol)として氷浴中で撹拌した溶液を添加した。反応物を氷浴で1時間および室温でさらに1時間撹拌した。
【0161】
反応混合物を焼結ガラス漏斗を通して濾過し、真空中で濃縮して粗白色固体を与えた。固体を温塩化メチレン(30mL)に溶解し、ヘキサン(25mL)で再結晶した。固体を濾過によって収集し、ヘキサンで洗浄し、真空中で乾燥させて、3.99g(84%の収率)のiV−スクシンイミジルブロモアセテートを白色固体として与えた。H NMR(CDCl)δ2.864(s、4H)および4.100(s、2H)ppm.
【0162】
DM4−SBAの合成
丸底に、N2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)メイタンシン(DM4、71.9mg、0.092mmol)および無水N,Nジメチルホルムアミド(DMF、2.5mL)を投入した。反応をアルゴン雰囲気下に置き、iV−スクシンイミジルブロモアセテート(SBA、23.9mg、0.101mmol、1.1当量)および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、14.7mg、0.097mmol、1.05当量)を順次添加した。フラスコにセプタムおよび撹拌棒を装備し、完了まで激しく撹拌しながら室温で反応を進行させた。生成物を、ヘキサン中15〜65%の酢酸エチルの勾配で30分かけて、続いて10分間での65〜95%酢酸エチルの増大によって溶離しながら、分取シアノHPLCによって単回注入において単離した。これらの条件下で、DM4−SBAが22〜24分の間に溶離した。生成物を収集し、真空中で濃縮して、50.1mg(55.2%の収率)の所望のDM4−SBA(95%純度)生成物を与えた。単離した生成物の質量分析により、予測値m+Na(m/z957.4)およびm+Cl(m/z969.2)の主な分子イオンを与えた。
【0163】
実施例XIII
カルボキシル部位を持つ非開裂性チオスクシンイムジル連結メイタンシノイド誘導体の調製
スルフヒドリル保持メイタンシノイド、例えば、DM1およびDM4を修飾して、非開裂性チオスクシンイミジル保持カルボン酸誘導体を与えることができる(図45、46および48)。これらの誘導体は、本明細書に記載されているアミン反応性の非開裂性チオスクシンイミジル連結メイタンシノイドの調製に有用であろう。図45、46および48は、N−ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルの形成を示すが、いくつかの他の活性化エステルが形成され得ることが当業者に明らかであり、これらとして、限定されないが、N−スルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェノールエステル、テトラフルオロスルホフェノール、およびニトロフェノールエステルが挙げられる。スルフヒドリル保持メイタンシノイド、例えば、DM1およびDM4をホモ二官能性マレイミド試薬によって修飾して、図50に示すようなマレイミド基を持つメイタンシノイドを与えることができる。
【0164】
DM1−MCCの調製
10mLの丸底フラスコに、DM1(44.6mg、0.0571mmol)、1,2−ジメトキシエタン(2.5mL)を投入し、撹拌棒を装備した。N−[4−(カルボキシシクロヘキシルメチル)]マレイミド(Toronto Research Chemicals、Inc.、MCC、20.3mg、0.08430mmol)の1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)中の溶液を反応フラスコに添加し、続いて、pH7.5の緩衝液(2.5mL、50mMのリン酸カリウム、2mMのEDTA)を添加した。数滴の飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を反応溶液に添加し、反応のpHを維持した。反応を室温で進行させ、2時間後に完了した。反応物体積を真空中で半分に減少させ、pH3に酸性化し、生成物を酢酸エチル中に抽出させた(3×10mL)。抽出物を合わせ、塩水(5mL)で洗浄し、真空中で濃縮して、粗生成物を生じさせた。生成物を塩化メチレンおよびエタノールの93:7混合物で溶離しながらシリカゲルクロマトグラフィによって単離した。生成物含有画分を合わせ、濃縮して、46.5mg(83.5%の収率)のDM1−MCC(99.3%純度)を白色固体として与えた。単離した生成物の質量分析により、予測値m+Na(m/z997.3)の主な分子イオンを与えた。
【0165】
DM4−SMCCの調製
3mLのガラスバイアルに、DM4(24.3mg、0.0311mmol)、N−[A−(カルボキシシクロヘキシルメチル)]マレイミド(MCC、Toronto Research Chemicals、Inc,.8.1mg、0.0342mmol)および1,2−ジメトキシエタン(1mL)を投入した。pH7.5の緩衝液(1mL、50mMのリン酸カリウム、2niMのEDTA)として撹拌した溶液を反応に添加した。室温で反応が進行し、2時間以内に完了した。反応物体積を真空中で半分に減少させ、pH3に酸性化し、生成物を酢酸エチル中で抽出させた(3×10mL)。抽出物を合わせ、塩水(5mL)で洗浄し、真空中で濃縮して、粗生成物を生じさせた。生成物を塩化メチレンおよびエタノールの9:1の混合物で溶離しながらシリカゲルクロマトグラフィによって単離した。生成物含有画分を合わせ、濃縮して、14.8mg(46.9%の収率)のDM4−MCC(96.7%純度)を白色固体として与えた。単離した生成物の質量分析により、予測値m+Na(m/z1039.5)の主な分子イオンを与えた。
【0166】
実施例XlV
チオール反応性部位を持つ非開裂性チオスクシンイムジル連結メイタンシノイド誘導体の調製
非開裂性チオスクシンイミジル基を含有するマレイミド保持メイタンシノイドをチオール含有抗体にコンジュゲートした(図51)。非開裂性チオスクシンイミジル基を含有するマレイミド保持メイタンシノイドを、チオール含有メイタンシノイドの、ビス−マレイミド架橋剤(図52)へのカップリングによって調製した。ここで行った反応を、Mal−(CH−Mal試薬によって行ったが、スルフヒドリル保持メイタンシノイドが、マレイミド部位間に異なるスペーサー単位を含有するビス−マレイミド試薬に対してであり得ることが当業者に明らかである。
【0167】
DM1−MaI−(CJLyMaIの調製
ビス(マレイミド)ヘキサノエート(17.9mg、0.0648mmol、3当量)のTHF(0.75mL)中の溶液を反応バイアルにおいて調製した。DM1(15.9mg、0.0216mmol)をTHF(0.75mL)中に添加しながら溶液を撹拌した。次いで、JV, LT−ジイソプロピルエチルアミン(3.3mg、0.0259mmol、1,2当量)を添加し、室温で撹拌しながら反応を進行させた。反応の完了後、反応物体積を真空中で減少させ、粗油を与えた。粗生成物を最小量のCHClに溶解し、CHCl中7%メタノールで溶離しながら20cm×20cmの1000ミクロンのガラスプレートにて分取薄層クロマトグラフィによって精製した。生成物含有バンドをプレートから擦り取り、CHCl中メタノールで抽出し、焼結ガラス漏斗を通して濾過し、真空中で濃縮して、10mg(45.9%の収率)のDM1−Mal−(CH,)−Mal(95.8%純度)を与えた。単離した生成物の質量分析により、予測値m+Na(m/z1036.4)およびm+Cl(m/z1048.3)の主な分子イオンを与えた。
【0168】
DM4−Mal−(CH−Malの調製
丸底フラスコに、ビス(マレイミド)ヘキサノエート(25.0mg、0.090mmol、3当量)およびTHF(1mL)を投入した。完全に溶解したら、N2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)メイタンシン(DM4、23.5mg、0.030mmol)のTHF(1mL)中の溶液を反応フラスコに添加した。次いで、pH6のリン酸緩衝液(2mL、100mMのリン酸カリウム、2mMのEDTA)を反応フラスコに添加した。反応フラスコに撹拌棒およびセプタムを装備し、撹拌しながら室温で反応を進行させた。反応の完了後(約8時間)、反応物体積を真空中で減少させて乾燥させた。粗生成物を最小体積のアセトニトリルに再溶解し、生成物をセミ分取C18HPLCによって単離した。生成物含有画分を合わせ、真空中で濃縮して、10.6mg(33.3%の収率)のDM4−Mal−(CH−MaI(99.9%純度)を与えた。単離した生成物の質量分析により、予測値m+Na(m/z1078.4)およびm+Cl(m/z1090.3)の主な分子イオンを与えた。
【0169】
huC242−Mal−(CH−Mal−DM1の調製
5%のジメチルアセトアミドを含有する150mMのHEPES緩衝液(pH8.0)中のhuC242(8mg/mL)を9当量のSPDBで30℃にて1時間修飾し、次いで50mMのリン酸塩、50mMのNaClのpH7.5の緩衝液を用いてNAP5サイジングカラムを通して溶離した。回収された修飾された抗体に2μLの1Mのジチオトレイトールに30℃で添加した。10分後、50mMのリン酸塩、50mMのNaClのpH6.5の緩衝液を用いて反応物をNAPlOカラムにおいて精製した。ジメチルホルムアミド中のDM1−mal−(CH−mal(1.7モル当量)を所望の生成物を含有する画分に添加し、10%v/vのジメチルホルムアミド/緩衝液を得た。1時間後、粗コンジュゲートを、10mMのクエン酸塩、135mMのNaClのpH5.5の緩衝液で溶離しながらNAP25カラムにおいて精製した。先に記載した結合アッセイを用いて、huC242−Mal−(CH−Mal−DM1が、ネイキッドhuC242抗体と同程度に抗原陽性COLO205細胞に結合することが示された(図53)。huC242−Mal−(CH−Mal−DM1コンジュゲートは、抗原陰性Namalwa細胞よりも抗原陽性COLO205細胞に対してはるかに細胞毒性であることが示された(図54)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)または(T):
Z−X,−(−CH−CH−O−)−Yp−D (1)
D−Y−(−CH−CH−O−)−Xi−Z (V)
式中:
Zは、細胞結合剤とアミドまたはチオエーテル結合を形成することができる反応性官能基を表し;
Dは、薬物を表し;
Xは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、またはエーテル結合を介して細胞結合剤に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
Yは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、エーテル結合、アミン結合、炭素−炭素結合およびヒドラゾン結合からなる群から選択される共有結合を介して薬物に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
lは、0または1であり;
pは、0または1であり;
nは、1〜2000の整数である;
の化合物。
【請求項2】
式(2)または(2’):
CB−[X,−(−CH−CH−O−)n−Yp−D] (2)
[D−Yp−C−CH−CH−O−V−XJln−CB (T)
式中;
CBは、細胞結合剤を表し;
Dは、薬物を表し;
Xは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、またはエーテル結合を介して細胞結合剤に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
Yは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、エーテル結合、アミン結合、炭素−炭素結合およびヒドラゾン結合からなる群から選択される共有結合を介して薬物に付着した脂肪族、芳香族、または複素環式基を表し;
lは、0または1であり;
pは、0または1であり;
mは、2〜15の整数であり;
nは、1〜2000の整数である;
の細胞結合剤細胞毒性薬物コンジュゲート。
【請求項3】
式(3)または(3’):
Z−XK−CH−CHO−V−Y−D (3)
D−Y−(−CH−CHO−)−Xi−Z (3’)
式中:
Zは、細胞結合剤とアミドまたはチオエーテル結合を形成することができる反応性官能基を表し;
Dは、薬物を表し;
Xは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、またはエーテル結合を介して細胞結合剤に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
Yは、ジスルフィド結合を介して薬物に付着した脂肪族、非芳香族複素環式または芳香族複素環式基を表し;
lは、0または1であり;
nは、1〜14の整数である;
の化合物。
【請求項4】
式(4)または(4’):
CB−(Xi−(−CH−CHO−)−Y−D) (4)
[D−Y−(−CH−CHO−)−X,]−CB (4’)
式中:
CBは、細胞結合剤を表し;
Dは、薬物を表し;
Xは、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、またはエーテル結合を介して細胞結合剤に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
Yは、ジスルフィド結合を介して薬物に付着した脂肪族、芳香族または複素環式基を表し;
lは、0または1であり;
mは、3〜8の整数であり;
nは、1〜14の整数である;
の細胞結合剤細胞毒性薬物コンジュゲート。
【請求項5】
前記細胞結合剤が、抗体、単鎖抗体、標的細胞に特異的に結合する抗体フラグメント、モノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、標的細胞に特異的に結合するフラグメント、抗体模倣体であるアドネクチン、DARPin、リンホカイン、サイトカイン、ホルモン、成長因子、酵素、または栄養素輸送分子である、請求項2または4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記細胞結合剤が、表面再構成モノクローナル抗体、表面再構成単鎖モノクローナル抗体、または標的細胞に優先的に結合する表面再構成モノクローナル抗体フラグメントである、請求項2または4に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記細胞結合剤が、ヒト化モノクローナル抗体、ヒト化単鎖モノクローナル抗体、または標的細胞に優先的に結合するヒト化モノクローナル抗体フラグメントである、請求項2または4に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記抗体が、キメラ抗体、キメラ抗体フラグメント、ドメイン抗体、またはこれらのドメイン抗体フラグメントである、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記抗体が、MY9、抗B4、EpCAM、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD11、CD19、CD20、CD22、CD26、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD79、CD105、CD138、EphA受容体、EphB受容体、EGFR、EGFRvIII、HER2、HER3、メソテリン、クリプト、αvβ、αvβ、αvβインテグリンまたはC242である、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記抗体が、My9−6、B4、C242、N901、DS6、EphA2受容体、CD38、IGF−IR、CNTO95、B−B4、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ビバツズマブ、シブロツズマブ、またはリツキシマブから選択されるヒト化、ヒトまたは表面再構成抗体である、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
前記細胞結合剤が、腫瘍細胞;ウイルス感染細胞、微生物感染細胞、寄生虫感染細胞、自己免疫細胞、活性化細胞、骨髄細胞、活性化T細胞、B細胞、またはメラニン細胞;IGF−IR、CanAg、EGFR、MUC1、MUC16、VEGF、TF、MY9、抗B4、EpCAM、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD11、CD 11a、CD18、CD19、CD20、CD22、CD26、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD70、CD79、CD105、CD138、EphA受容体、EphB受容体、EGFRvIII、HER2/neu、HER3、メソテリン、クリプト、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、Apo2、およびC242抗原の1種以上を発現する細胞;またはインスリン成長因子受容体、上皮成長因子受容体、および葉酸受容体を発現する細胞から選択される標的細胞に結合する、請求項2または4に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
腫瘍細胞が、乳癌細胞、前立腺癌細胞、卵巣癌細胞、結腸直腸癌細胞、胃癌細胞、扁平上皮癌細胞、小細胞性肺癌細胞、および精巣癌細胞から選択される、請求項11に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
有効量の請求項2または4に記載の薬物−細胞結合剤コンジュゲート、その薬学的に許容される塩または溶媒和物、および薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項14】
その方法による処置に対して感受性の疾患を処置するための方法であって、有効用量の請求項2または4に記載のコンジュゲートを、該処置を必要とする患者に非経口投与することを含む方法。
【請求項15】
前記疾患が、腫瘍、自己免疫疾患、移植片拒絶、移植片対宿主疾患、ウイルス感染症、および寄生虫感染症から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記腫瘍が、肺、血液、血漿、乳腺、大腸、前立腺、腎臓、膵臓、脳、骨、卵巣、精巣、およびリンパ器官の癌のうち1種以上から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記腫瘍が、IGF−IR、FOLRl、CanAg、EGFR、EphA2、MUC1、MUC16、VEGF、TF、MY9、抗B4、EpCAM、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD11、CD1Ia、CD18、CD19、CD20、CD22、CD26、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD70、CD79、CD105、CD138、EphA、EphB、EGFRvIII、HER2/neu、HER3、メソテリン、クリプト、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、Apo2、およびC242抗原の1種以上を発現する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
式(5):
D’−Y’−V−Q−W−Z’ (5)
式中:
D’は、スルフヒドリル保持メイタンシノイドであり;
Vは、1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;
Wは、1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;
Y’は、チオエーテル結合を表し;
Qは、適宜、芳香族または複素環式部位を表し;
Z’は、アミンまたはスルフヒドリル反応性基を表す;
によって表される反応性基を持つチオエーテル部位を有するメイタンシノイド。
【請求項19】
スルフヒドリル保持メイタンシノイドが、N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1)またはN2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)メイタンシン(DM4)である、請求項18に記載のメイタンシノイド。
【請求項20】
以下の構造式:
【化1】

によって表される、請求項18に記載のメイタンシノイド。
【請求項21】
以下の構造式:
【化2】

によって表される、請求項18に記載のメイタンシノイド。
【請求項22】
以下の構造式7aまたは7b:
【化3】

によって表される、請求項18に記載のメイタンシノイド。
【請求項23】
請求項18に記載のメイタンシノイドの調製のためのプロセスであって:
以下の化学方程式:
D’+Y”.V−Q−W−Z’→D’−Y’−V−Q−W−Z’ (6)
式中
D’は、スルフヒドリル保持メイタンシノイドを表し;
Vは、1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;
Qは、適宜、芳香族または複素環式部位を表し;
Wは、1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;
Z’は、アミンまたはスルフヒドリル反応性基であり;
Y”は、スルフヒドリル−反応性部位を表し;
Y’は、スルフヒドリル保持メイタンシノイドと架橋剤との間のチオエーテル結合を表す;
によって表される、チオール含有メイタンシノイドをヘテロ二官能性架橋剤と反応させることを含む方法。
【請求項24】
スルフヒドリル保持メイタンシノイドが、N2’−デアセチル−iV2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1)またはN2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)メイタンシン(DM4)である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
Y”が、マレイミドまたはハロアセトアミドである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
非開裂結合を介して連結された、メイタンシノイドおよび細胞結合剤の細胞毒性コンジュゲートの調製のためのプロセスであって、細胞結合剤を式Z’−W−Q−V−Y’−D’の化合物と反応させて、式CB−(Z”−W−Q−V−Y’−D’)
式中、
Z’は、アミンまたはスルフヒドリル反応性基を表し;
Wは、1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;
Qは、適宜、芳香族または複素環式部位を表し;
Vは、1〜10個の炭素原子を有する、適宜、線状、分枝状または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり;
Y’は、チオエーテル結合を表し;
D’は、メイタンシノイドを持つスルフヒドリルを表し;
CBは、細胞結合剤を表し;
Z”は、チオエーテル結合またはアミド結合を表し;
mは、2〜8の整数である;
の細胞結合剤コンジュゲートを提供することを含むプロセス。
【請求項27】
スルフヒドリル保持メイタンシノイドが、N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1)またはN2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)メイタンシン(DM4)である、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
CBが、抗体、単鎖抗体または抗体の抗原−結合フラグメントである、請求項26に記載のプロセス。
【請求項29】
式CB−(Z”−W−Q−V−Y’−D’)の細胞結合剤コンジュゲートが精製される、請求項26〜28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
細胞結合剤と式Z’−W−Q−V−Y’−D’の化合物とが、最大で20%の有機溶媒を適宜、含有する、細胞結合剤の水性緩衝液中の溶液を、式Z’−W−Q−V−Y’−D’の化合物の有機溶媒または有機溶媒および水性緩衝液もしくは水の混合物中の溶液と混合し、反応を5分〜72時間の間進行させることによって反応する、請求項26〜29のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項31】
コンジュゲートが、クロマトグラフィ、透析、クロスフロー濾過または前記方法の組み合わせによって精製される、請求項26〜29のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
以下の構造式:
【化4】

によって表される化合物。
【請求項33】
以下の構造式:
【化5】

によって表される化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【公表番号】特表2013−506709(P2013−506709A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533123(P2012−533123)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/059620
【国際公開番号】WO2010/126551
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(504039155)イミュノジェン・インコーポレーテッド (36)
【Fターム(参考)】