説明

有効な糸状菌株の選択

本発明はセルラーゼをより効果的に生成する及び/又は高い特異性を有するセルラーゼを生産する所望の糸状菌をスクリーニングする方法を提供する。本発明はより効果的にセルラーゼを生成する糸状菌も提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、2007年6月15日に提出された米国継続出願US60/934,677に対して優先権を主張する。該文献を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
糸状菌はセルラーゼ酵素の有効な生産者であり、これらの酵素を生産するそれらの能力が開発され続けている。セルラーゼは布製品、洗剤、製紙工業において商業的に価値のあるものであり、植物原料を発酵可能な糖類に加水分解することを必要とする、生物燃料を生成するための必要性が増加している。3つの主要な酵素活性はエキソグルカナーゼ又はセロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ、及びβ−グルコシダーゼである。これらの3つの異なるタイプのセルラーゼ酵素が相互的に作用して、セルロースをグルコースに転換する。所望の糸状菌、特に、例えばセルラーゼ酵素の高い生産性及び/又は生産等の、所望のタンパク質生産性及び/又は生産を示す糸状菌を同定することが必要とされている。
【0003】
本願発明は、少なくとも部分的に、所望の糸状菌をスクリーニングする方法において特定の指標を組み合わせることができるという発見に基づいている。従って、本願発明は、少なくとも2つのパラメーター、例えば、代謝及び炭素使用に関するパラメーターに基づく所望の糸状菌のスクリーニング方法及びこの方法から得られた糸状菌に関係する。
【0004】
幾つかの態様において、本発明は所望の糸状菌のスクリーニングのための方法を提供する。本明細書では試験糸状菌の集団は予め決定された代謝速度を有する糸状菌のサブ集団についてスクリーニングされる。この所望の糸状菌は試験している糸状菌の効果的な炭素利用を示す、予め決定された選択パラメーターにもとづいて糸状菌のサブ集団から選択される。幾つかの態様において、本発明はこのスクリーニング方法により得られた糸状菌を提供する。
【0005】
幾つかの態様において、本発明は所望の糸状菌をスクリーニングするための方法を提供する。試験糸状菌の集団は第一選択パラメーター及び第二選択パラメーターに基づいてスクリーニングされる。この第一選択パラメーターは試験している糸状菌の代謝速度を示し、第二選択パラメーターは抗生物質に耐性を示す試験している糸状菌の能力を示す。
【0006】
幾つかの態様において、本発明は所望の糸状菌をスクリーニングするための方法を提供する。ここにおいて、試験している糸状菌の集団は抗生物質に対して予め選択されており、試験している糸状菌の代謝速度を示す予め決定されている選パラメーターに基づいてスクリーニングされる。
【0007】
本発明のこれらの及び他の特徴を以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
当業者は以下の図面が説明の目的のみに使用されることを理解するであろう。
【図1】図1は41G株と比較してA83の改善されたタンパク質生成を示す。
【図2】図2はA83株と比較した41G株の特異活性の利点を示す。
【図3】図3は生産性(グレイボックス)及び/又は繁殖性(ホワイトボックス)の進化を示す。
【0009】
図4は糖化アッセイにおける41GとA83の性能を示す。
【発明の詳細な説明】
【0010】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は以下の定義及び実施例を参照して詳細に説明される。別の方法で定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術的及び科学的用語は本願発明の属する分野における当業者により通常理解されているのと同じ意味に用いる。数値範囲はこの範囲を定義している数値を含むものとする。本明細書における標題本願発明の各種側面又は態様を限定するものではなく、これらは明細書全体を参照することにより明らかにされるべきである。即ち、以下で定義される用語は明細書全体を参照することにより、より完全に定義される。
【0011】
本明細書で用いる「ポリペプチド」の語はペプチド結合により結合されたアミノ酸残基の1本の鎖から成る化合物を意味する。本明細書で用いる「タンパク質」の語は「ポリペプチド」と互換的に使用される。
【0012】
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」の語は互換的に使用され、DNA、RNA、cDNA、1本鎖又は二本鎖、及び化学修飾されたものを包含する。遺伝子コードの退縮により、1つ以上のコドンが特定のアミノ酸をコードするのに用いられ、本願発明は、特定のアミノ酸配列をコードしている全てのポリヌクレオチドを包含する。
【0013】
「回収された」、「単離された」、及び「分離された」の語は本明細書において互換的に使用され、本来関係している少なくとも1つの成分から除去されたタンパク質、細胞、核酸、アミノ酸等を意味する。
【0014】
本明細書において、「遺伝子」の語は、個々のコードセグメント(エキソン)の間の介在領域(イントロン)だけでなく、(例えば、5’未翻訳(5’UTR)又はリーダー配列及び3’UTR又は「トレーラー」配列等のコード領域の前及び後に続く領域を含んでいてもいなくてもよい)ポリペプチド鎖の生成に含まれるポリヌクレオチド(例えば、DNAセグメント)を意味する。
【0015】
本明細書で用いる「発現」の語は、遺伝子の核酸配列に基づいて生成されたポリペプチドによるプロセスを意味する。このプロセスは転写及び翻訳を含む。
【0016】
「分泌されたタンパク質」の語は、タンパク質分泌の間に細胞から放出されたポリペプチドの分布(領域)を意味する。幾つかの態様において、分泌されたタンパク質は本発明の組換融合ポリペプチドから放出又は切断されたタンパク質である。
【0017】
「分泌」の語は細胞外スペース又は周辺媒体へ宿主細胞中の膜をタンパク質が横断する選択的動きを意味する。
【0018】
本明細書において、「生成された」又は「〜の生成」の語は特に、タンパク質又は酵素に関して、タンパク質又は酵素の発現及び/又は分泌を意味する。
【0019】
本明細書において、「培養」の語は液体、半固体、又は固体培地における好適な条件下で、細胞集団を形成することを意味する。
【0020】
本明細書において、「置換された」及び「修飾された」の語は互換的に使用され、自然発生配列の欠失、置換、又は挿入を含むアミノ酸配列又は核酸配列などの配列を意味する。本発明の文脈上、置換された配列は、例えば、自然発生残基の置き換えを意味する。
【0021】
本明細書において、「修飾された酵素」の語は自然発生配列の欠失、挿入、置換、又は阻害を含む酵素を意味する。
【0022】
「変異体」の語は、参照タンパク質、例えば、自然発生又は野生型タンパク質と比較して1つ以上の異なるアミノ酸を含むタンパク質の領域を意味する。
【0023】
本明細書において「親株」の語は遺伝的多様性を引き起こす因子に曝される前に存在している糸状菌の株を意味する。幾つかの態様において、この親株は既に高繁殖性の株であるか、好ましい又は所望の性質を有している。ある因子に曝した後、この「親株」は遺伝的に多様化された試験細胞集団となる。遺伝的多様性を生成するための方法はランダムな性質があるため、多くの異なるタイプの細胞が生成されることが予測される。それゆえ、選択技術を適用したときに、数多くの異なる試験細胞が選択下におかれる。
【0024】
「試験細胞」又は「試験糸状菌の集団」の語は、本明細書において互換的
に使用され、通常、糸状菌の親株から生成された遺伝的態様性のある糸状菌を意味する。この語は試験細胞の子孫を含む。
【0025】
「改善された細胞」の語はそれらの育成性質、酵素生成のレベル、及び/又は本明細書で述べるアッセイにおいて決定される他の選択基準に対して選択される。この語は改善された細胞の任意の子孫を含む。この改善された細胞は単離することができ、新しい改善された糸状菌株を確立するために繁殖させることもできる。この改善された細胞の非限定的な例は以下の特徴を有する。(i)親細胞と比較して炭素使用効率が高い、(ii)親細胞と比較して1つ以上の炭素又は酵素の特異活性が改善されている、(iii)例えば、流入炭素1グラム当たりで生産されるタンパク質又は酵素のグラム数を測定することにより決定される全体の生産性が改善されている、(iv)通常の温度における1つ以上の態様において、又は酵素のより高い生産レベル、及び/又は(v)高い温度における親細胞よりも高いタンパク質又は酵素のレベルを維持するための能力。
【0026】
非限定的な例のように、トリコデルマレーシによるセルラーゼの生産のための通常の温度範囲は、24℃乃至28℃である。本明細書に従って、トリコデルマレーシの選択温度は25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、又は48℃である。幾つかの態様において、この培養は液相で行われる。実験の設定に依存して、選択温度の範囲を用いることができる。培養のための選択温度の選択は、成長速度、生存率、及び細胞により生産されるセルラーゼの異なるタイプ分布を含むがこれらに限定されない各種因子に依存しており、当業者により決定される。
【0027】
「セルラーゼ」又は「セルロース分解酵素」の語は本明細書において互換的に使用され、セルロース(ベータ−1,4−グルカン、又はベータ−Dグルコシド結合)ポリマーを短鎖セロオリゴサッカライドオリゴマー、セロビオース、及び/又はグルコースに加水分解する能力を意味する。通常、酵素のカテゴリーは、(i)エンドグルカナーゼ(EG)又は1,4−β−d−グルカン−4−グルカノヒドロラーゼ(EC3.2.1.4)、(ii)(セロデキストリナーゼとしても知られている)1,4−β−d−グルカングルカノヒドロラーゼ及び1,4−β−d−グルカンセロビオヒドロラーゼ(エキソ−セロビオヒドロラーゼ、CBH)(EC3.2.1.91)を含むエキソグルカナーゼ(EC3.2.1.74)、及び(iii)β−グルコシダーゼ(BG)又はβ−グルコシドグルカノヒドロラーゼ(EC3.2.1.21)を含むがこれらに限定されない。
【0028】
「エキソセロビオヒドロラーゼ(CBH)」の語は、EC3.2.1.91として分類されるセルラーゼ酵素及び/又はGHファミリー5、6、7、9、又は48に分類されているものを含むがこれらに限定されない特定のGHファミリーに置けるものを含むがこれらに限定されないセルラーゼ酵素のグループを意味する。これらの酵素はエキソグルカナーゼ又はセロビオヒドロラーゼとして知られている。CBH酵素はセルロースの還元又は非還元末端からセロビオースを加水分化する。通常、CBHIタイプ酵素は、好ましくはセルロースの還元末端からセロビオースを加水分解し、CBHIIタイプ酵素は好ましくはセルロースの非還元末端から加水分解する。
【0029】
「セロビオヒドロラーゼ活性」の語は、鎖の末端からセロビオースを放出する、セルロース、セロテトリオース、又は任意のベータ−1,4−結合したグルコース含有ポリマーのおける1,4−ベータ−D−グルコシド結合の加水分解を触媒する、1,4−D−グルカンセロビオヒドロラーゼ活性として定義される。本明細書において、セロビオヒドロラーゼ活性はLeverら、1972、Anal.Biochem.47:273−279のPHBAH法により測定されるセルロースからの水溶性還元糖の放出により決定される。セロビオヒドロラーゼのアタックのエキソグルカナーゼモード及びアタックのエンドグルカナーゼモードの間の区別はセルロース又はヒドロキシメチルセルロース(Ghose、1987、Puer&Appl.Chem.59:257−268)等の置換されたセルロースからの還元糖の放出を測定の同様の測定によりなされる。本当のセロビオヒドロラーゼは未置換セルロース対置換セルロースのおける活性の非常に高い活性を有する。
【0030】
「内性(EG)」の語はEC3.2.1.4に分類されるセルラーゼ酵素及び/又はGHファミリー5、6、7、8、9、12、17、31、44、45、48、51、61、64、74、又は81におけるものを含むがこれらに限定されない特定のGHファミリーのものを意味する。EG酵素はセルロースの内部ベータ−1,4−グルコシド結合を加水分解する。「エンドグルカナーゼ」の語は、セルロース、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース)、リケニウム、シリアルベータ−D−グルカン又はキシログルカン等の混合されたベータ−1,3−グルカンにおけるベータ−1,4結合中の1,4−ベータ−D−グルコシド結合の末端加水分解を触媒する、エンド−1,4−(1,3;1,4−)ベータ−D−グルカン4−グルカノヒドロラーゼと定義される。本明細書において、エンドグルカナーゼ活性はGhose、1987、Pure and Appl.Chem.59:257−268の手順に記載のカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いて決定される。
【0031】
「ベータグルコシダーゼ」の語はEC3.2.1.21として分類されるベータ−D−グルコシドグルコヒドロラーゼ及び/又はベータ−D−グルコースの放出伴うセロビオースの加水分解を触媒する、GHファミリー1、3、9、又は48におけるものを含むがこれらに限定されない特定のGHファミリーのものであると定義される。本明細書において、ベータグルコシド活性は、例えば、HPLCのような方法により測定される。「セルロース分解活性」の語は、エキソグルカナーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、又は両タイプの酵素、又はラビにベータグルコシド活性を含む。
【0032】
「糸状菌」の語は、当業者に糸状菌であると認識される任意の又は全ての糸状菌を意味する。通常、糸状菌は真菌微生物であり、Eumycotina亜種を形成する全ての糸状菌を含む。これらの糸状菌はキチン、ベータグルカン、及び他のポリサッカライドから構成されている細胞壁を有する栄養myliumにより特徴付けられる。幾つかの態様において、本発明の糸状菌は形態学的、生理学的、及び遺伝的に、酵母とは区別される。幾つかの態様において、この糸状菌は以下の種を含むがこれらに限定されない。アスペルギルス(Aspergillus)、アクレモニウム(Acremonium)、ウエロバシディウム(Aureobasidium)、ベアウベリア(Beauveria)、セファロスポリウム(Cephalosporium)、セリオリオポシス(Ceriporiopsis)、チャエトニウム(Chaetomium)、ペシロマイセス(Paecilomyces)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、クラビセプス(Claviceps)、コキオボウス(Cochiobolus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、チャタス(Cyathus)、エンドセイア(Endothia)、エンドセイア(Endothia)、ムコール(mucor)、フサリウム(Fusarium)、グロカジウム(Gilocladium)、フミコーラ(Humicola)、マグナポルテ(Magnaporthe)、ミセリオフィソラ(Myceliophthora)、 ミロセシウム(Myrothecium)、ムコール(Mucor)、ニューロスポラ(Neurospora)、ファニルカエテ(Phanerochaete)、ポドスポラ(Podospora)、パエシロマイセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、ピリクラリア(Pyricularia)、リゾムコール(Rhizomucor)、リゾプス(Rhizopus)、シゾフィラム(Schizophylum)、スタゴノスポラ(Stagonospora)、タラロマイセス(Talaromyces)、トリコデルマ(Trichoderma)、セルモマイセス(Thermomyces)、サーモアスクス(Thermoascus)、シエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、トリコフィトン(Trichophyton)、及びトラメテス(Trametes)、プレウロタス(Ppleurotus)。幾つかの態様において、この糸状菌はアスペルギルスニヂュランス(A.nidulans)、アスペルギルスニガー(A.niger)、アスペルギルスアワモリ(A.awomari)、例えば、NRRL3112、ATCC22342(NRRL3112)、 ATCC44733、ATCC14331及びUVK143f、アスペルギルスオリザエ(A.oryzae)、例えば、ATCC 11490、ニュロスポラクラッサ(N.crassa)、トリコデルマレーシ(Trichoderma reesei)、例えば、NRRL15709、ATCC13631、56764、56765、56466、56767、及びトリコデルマビリデ(Trichoderma viride)、例えば、ATCC32098及び3208を含むがこれらに限定されない。
【0033】
本明細書で用いる「トリコデルマ」又は「トリコデルマ株」の語は、明らかにトリコデルマ種又は株に分類されている任意の糸状菌、又は近年トリコデルマ種又は株、あるいはハイポクレア種又は株に分類された任意の糸状菌を意味する。幾つかの態様において、この種は、トリコデルマブンギルラキアタム、トリコデルマレーシ、トリコデルマビリデ、又はハイポクレアジェコリーナを含む。有機体株として用いる意図しているものは、トリコデルマロンギブラキアタム/レーシ(T.longibrachiatum/reesei)RL−P37(Sheir−Neissら、Appl.Microbiol.Biotechnology、20(1984)pp.46−53;Montenecourt B.S.、Can.、1−20、1987)、及びrut−C30(ATCCNo.56765)及びQM9414(ATCCNo.26921)等のセルラーゼ過剰生産株である。
【0034】
幾つかの態様において、本明細書は代謝のあらかじめ決められた代謝速度を有する糸状菌のサブ集団について試験糸状菌のスクリーニングにすること及びあらかじめ決められたパラメーターに基づいた糸状菌の亜種から所望の糸状菌を選択することによる、所望の糸状菌についてのスクリーニングのための方法を提供する。試験している糸状菌の集団は選択される所望の糸状菌を形成するのに好適な集団である。幾つかの態様において、試験している糸状菌の集団は通常の糸状菌の多様性の集団である。試験している糸状菌の通常の多様性集団を得るための方法は当業者に知られており、例示的方法を本明細書に記載する。幾つかの態様において、試験している糸状菌の集団は条件を含む変異体に曝した後の糸状菌の集団である。
【0035】
本発明に従って、通常の多様性の糸状菌集団は細胞のゲノムにおいて遺伝的態様性を生成する因子に糸状菌の集団を曝すことにより得ることができる。1つの態様において、遺伝的多様性を生成する因子はゲノムにおいて局所的なヌクレオチド変化を生じる変異である。親細胞及び試験細胞は当業者に知られている任意の変異により変異させられる。例えば、細胞の変異は例えば紫外線、X線、又はガンマ線の照射により達成することができる。代替的に、変異は、例えば、硝酸、ニトロソアミン、メチルニトロソグアニジン、エチルメタンスルホネート、及び5−ブロモウラシル等の塩基アナログの化学変異を伴う処置により達成することができる。1つの態様において、挿入変異は、トランスポゾン、制限酵素仲介取り込み(REMI)又はアグロバクテリウム仲介形質転換を用いて使用される。
【0036】
幾つかの態様において、親細胞又は試験細胞において遺伝的多様性を生成する因子は、ゲノムにおいて、オートポリプロイドフォーメーション、染色体リアソートメント、染色体アベラーション、クロマチドロス、ラージスケール組換え等のしかしこれらに限定されない、サイトジェニック又は染色体レベルでの、グロス変化を引き起こすサイトジェネティック因子である。そのような多くの因子が知られており、コルチサイン(通常0.1%W/vで用いられる)を含むがこれらに限定されない。
【0037】
幾つかの態様において、変異は親株又は試験株の胞子に適用され、生き残った胞子は固形培地上で平板培養される。この細胞は各種細胞密度で平板培養され、育成を促進して、各種調査又の他の手段により同定される。他の態様において、胞子以外の糸状菌微生物の他の形成も遺伝的多様性を生成する工程に用いることができる。幾つかの態様において、因子は約1乃至99.9%の致死率を生成する投与量で適用する変異である。各種態様において、因子は約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約95%の致死率を生成する投与量で適用される。幾つかの態様において、この変異因子はニトロソグアニジン(N−メチル−N‘−ニトロ−N−ニトロソグアニジン−MNNG)又はエチルメタンスルホン酸(窒素マスタードガス)である。
【0038】
試験している糸状菌の集団は、当業者において現在知られている又は後に発見されるであろう任意の手段により、あらかじめ決められた速度代謝を有する糸状菌のサブ集団についてスクリーニングすることができる。幾つかの態様において、試験している糸状菌の遺伝的多様集団は糸状菌により代謝される基質を含む培地中で培養され、あらかじめ決められた代謝速度を有する糸状菌のサブ集団が糸状菌の集団のレストのものよりも早い生育を示す糸状菌である。代謝速度を決定するために提供された基質は代謝の速度において、区別可能な違いを示すことが当業者に知られているものである。糸状菌の培養のための本分野で知られている任意の最小培地をこの培地の調製に用いることができる。幾つかの態様において、この基質は微生物分解に耐性がある。幾つかの態様において、この基質はセルロースである。幾つかの態様において、この培地はセルロース及び含み、セルロースは炭素源としての唯一のものである。幾つかの態様において、この培地は二糖類及び単糖類が実質的にフリーである。幾つかの態様において、この培地はバッチにおいて試験細胞の大きな集団の培養及びスクリーニングを可能にする固形相において実施される。幾つかの態様において、このセルロースは、非常に安定なthioxotropic gelを形成する不溶性ミクロ結晶からなる3次元マトリックスを形成する、水中でせん断力を有する、AVICEL(商標)(FMCバイオポリマー、フィラデルフィア、PA)等のミクロ結晶セルロースを含むがこれらに限定されない精製されたセルロースである。
【0039】
幾つかの態様において、サブ集団のための試験している糸状菌の集団のスクリーニングは固形相アッセイで行われる。好適な、固形相アッセイの非限定的な例としては、セルロースプレートスクリーン(CPS)である。試験する糸状菌の集団を固形相の12つの層において、培養する。培地の各層はセルロースを唯一の源として含むか、又はエネルギー又は炭素の源が限定されている。この2つの層は同じ濃度で同じ成分を含み、プレート上に調製することが好ましい。この固形培地は好ましくは、例えば、1.5%(w/v)アガーのようなアガーを含むことが好ましい。ボトム層は試験細胞の集団、好ましくは胞子を含み、上層は如何なる糸状菌も含まない。上層及と糸状菌を含む下層とを含むプレートは、糸状菌が固形培地内で育成できる時間、所定の温度でインキュベーションする。上層の厚みはプレート全体に渡り均一であり、上層の表面においてセルロースをエネルギーとして消費する糸状菌の最も早い育成となるように制御する。幾つかの態様において、糸状菌の集団に改善された細胞は、試験細胞の前記醜態の育成速度において、50th、60th、70th、80th、90th、95th、98th、のものよりも高い育成速度を示す。上層の表面を壊した試験細胞は視認でき、既知の方法で単離することができる。通常、上層の厚みの範囲は約2.5mm、5mm、7.5mm、10mm、12mm、5mm、15mm、17.5mm、20mm、25mm、乃至約30mmである。
【0040】
幾つかの態様において、この固形相アッセイは独立して、又は改善された細胞の単離促進のための選択の最後及びセルロースにおける育成速度により改善された細胞をランキングする最後にもちいることができる。幾つかの態様において、この固形相アッセイは試験糸糸状菌の集団がセルラーゼ酵素を通常生産している温度よりも高い温度で行われる。
【0041】
本発明の技術は、更に、予め決められた選択パラメーターに基づいて糸状菌のサブ集団か所望の糸状菌の選択を提供する。この予め決められた選択パラメーターは、例えば、試験糸状菌により用いられる炭素の効率のような、アッセイ可能なパラメーター又は指標でよい。炭素使用効率は、試験糸状菌により千三される1つ以上の所望のポリペプチド又は酵素の生産性、糸状菌の繁殖性、及び糸状菌により生成された酵素の特異的な活性を含むがこれらに限定されない各種パラメーターによりアッセイすることができる。幾つかの態様において、この予め決められた選択パラメーターは、例えば、通常の温度における1つ以上の例えば、又は酵素のより高い生産レベルにより、又は高い温度において親細胞よりも優れたタンパク質又は酵素生産を維持している能力により決定される熱安定性を示している。
【0042】
本発明に従って、この生産性は炭素インプット1グラム当たりから生産されるポリペプチド又は酵素の量(グラム)を測定することにより決定することができる。幾つかの態様において、インプット炭素は糸状菌に提供された炭素の量に対応している、又はそれは試験糸状菌により消費される炭素量に対応している。生産性は態様において、タンパク質の生産を測定することにより、例えば、予め決められた量の試験糸状菌が、所定の時間ごとに生産するポリペプチド又は酵素の量(グラム)を測定することにより決定することができる。幾つかの態様において、本発明の方法は、高い生産性、高い繁殖性、高い特異活性、又はこれらの任意の組合せを有するポリペプチド又は酵素を生産する糸状菌の選択を提供する。幾つかの態様において、この糸状菌は更に改善された熱安定性を有するポリペプチド又は酵素を生産する。
【0043】
本発明の所望の酵素又はポリペプチドはセルラーゼ、キシラナーゼ、グルコアミラーゼ、アミラーゼ、ラッカーゼ、ピロテアーゼ、フィターゼ、又はへミセルラーゼを含むがこれらに限定されない。幾つかの態様において、選択パラメーターはセルラーゼ、キシラナーゼ、グルコアミラーゼ、アミラーゼ、ラッカーゼ、プロテアーゼ、フィターゼ、又はヘミセルラーゼを生産する糸状菌の炭素利用効率を示している。幾つかの態様において、選択パラメーターは更に、試験糸状菌において発現しているセルラーゼ、キシラナーゼ、グルコアミラーゼ、アミラーゼ、ラッカーゼ、プロテアーゼ、フィターゼ、又はヘミセルラーゼの生産に対応している。
【0044】
幾つかの態様において、試験糸状菌の集団は予め選択された糸状菌である。この予め決められた基準は任意のアッセイ可能な基準でよく、抗生物質耐性を含むがこれらに限定されない。この抗生物質は当業者に知られており、Bialaphos、cyclohexamidine、Tunicyamin、Griseofulvin、NikkomycinZ、caspofungin、ActinomycineD、BrefeldinA、及びポリエン抗生物質を含むがこれらに限定されない。ポリエン抗生物質の好適な非限定的な例としては、nystatin及びAmphotericinBを含む。
【0045】
本発明の方法は所望の株の糸状菌をスクリーニングするために用いることができる。幾つかの態様において、試験糸状菌は、アスペルギルス(Aspergillus)、アクレモニウム(Acremonium)、アウロバシディウム(Aureobasidium)、バウベリア(Beauveria)、セファロスポリウム(Cephalosporium)、セリオプリオシス(Ceriporiopsis)、チャエトリウム(Chaetomium)、ペシロマイセス(Paecilomyces)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、クラビセプス(Claviceps)、コキオボルス(Cochiobolus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、チャタス(Cyathus)、エンドセリア(Endothia)、フラリウム(Fusarium)、ギロクラジウム(Gilocladium)、フミコーラ(Humicola)、マグナポルテ(Magnaporthe)、ミセリオフィソラ(Myceliophthora)、ミロセシウム(Myrothecium)、ムコール(Mucor)、ニューロスポラ(Neurospora)、ファネロカエテ(Phanerochaete)、ポドスポラ(Podospora)、パエシロマイセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、フィリクラリア(Pyricularia)、リゾムコール(Rhizomucor)、リゾプス(Rhizopus)、シゾフィリウム(Schizophylum)、スタゴノスポラ(Stagonospora)、タラロマイセス(Talaromyces)、トリコデルマ(Trichoderma)、セルモマイセス(Thermomyces)、セルモアスクス(Thermoascus)、シエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、トリコフィトン(Trichophyton)、トラメテス(Trametes)、及びプレウロタス(Pleurotus)からなる群より選択される。幾つかの態様において、試験糸状菌はトリコデルマ(Trichoderma)である。幾つかの態様において、試験糸状菌はトリコデルマレーシである。幾つかの態様において、この試験糸状菌は炭素源としてセルロースを利用するトリコデルマレーシである。
【0046】
幾つかの態様において、本発明は上記方法で得られた糸状菌を提供する。幾つかの態様において、この糸状菌はトリコデルマ(Trichoderma)、例えば、トリコデルマレーシである。幾つかの態様において、本発明の方法により得られた糸状菌はトリコデルマレーシであり、予め決められた活性を有するセルラーゼを生産する。この活性は改善された性質を有する株についての任意の活性でよい。幾つかの態様において、この活性は糖化である。
【0047】
幾つかの態様において、本発明は2つ以上の選択パラメーターの組合せに基づいて、試験糸状菌の集団をスクリーニングすることにより、所望の糸状菌についてスクリーニングする方法を提供する。幾つかの態様において、試験糸状菌の集団は第一の選択パラメーター及びダイに選択パラメーターの、2つの選択パラメーターに基づいて選択される。選択パラメーターの任意の組合せが糸状菌の所望の改善された株を得るために選択される。幾つかの態様において、この選択パラメーターは試験糸状菌の代謝速度であり、第二選択パラメーターは抗生物質に対する試験糸状菌の耐性能力である。幾つかの態様において、第一選択パラメーターは微生物分解に対して耐性を有する基質、例えば、セルロースの代謝速度を示す。
【0048】
幾つかの態様において、本発明は試験糸状菌の代謝速度、例えば、微生物分解に耐性を有する基質の代謝速度を示している。ここで、試験糸状菌の集団は抗生物質に対して予め決められた耐性を有する。
【0049】
本発明の側面は更に、以下の実施例において更に理解される。この実施例は本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲を逸脱せずに、材料及び方法の両方において多くの変更が可能であることは当業者に明らかである。
7.実施例
実施例7.1
変異調製、培地、及び溶液
【0050】
セルラーゼスクリーニング培地を用いて改善されたタンパク質生成を有する変異体を単離した。セルラーゼスクリーニング培地は20mlの50XVogelsストック、0.5gのAVICEL(商標)(MFCビポリマー、フィラデルフィア、PA)、及び20gのアガー、980mlのdHOを含んでいた。50XVolgesストックは、(1)300mldHO中150gのNaCitrate・2HO;10gのMgSO・7HO;及び5gのCaCl・2HO;(2)500mldHO中、250gのKHPO;(3)200mldHO中、100gのNHNOを溶解することにより調製した。この溶液を5mlのVolges微量元素溶液と一緒にして、2.5mlのVolgesビオチン溶液を添加した。Volges微量元素溶液は、1リットルのHO、50gのクエン酸、50gのZnSO・7HO、10gのFe(NH)2SO・6HO;2.5gのCuSO・5HO、0.5gのMnSO・4HO,0.5gのHBO(硼酸);及び0.5gのNaMoO・2HOを含む(Davisら、1970、Methods in Enzymology 17A、79−143;及びDavisら、2000、Neurospora、Contributions of a Model Organism、Oxford University Press、for information on Vogels minimal medium参照)。Volgesビオチン溶液は1リットルの水に0.1gのd−ビオチンを含む。振とうフラスコ中の総タンパク質生産量は、pHを5.5に維持するために100mMのピペラジン−N,N‘−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES;カルビオケム)を含む以外はIlmenら 1997、App Environ Microbiol 63、1298−1306に記載されているのと同様の50mLラクトース最小培地を含む250mlフラスコにおいて、28℃、150rpm、96時間インキュベートすることにより評価された。タンパク質アッセイはPiace(ロックフォード、IL)によるBCAアッセイを用いてTCA沈殿の後の情勢を用いて行った。
【0051】
糸状菌を培養するために当業者に知られている最小培地を用いて培養工程に用いる培地を調製することができる。
【0052】
RL−37に関係する高い繁殖性を有するトリコデルマレーシ株A83を用いて以下の実験を行った。遺伝的多様性を生成するために、細胞をメチル化化合物N−メチル−N‘−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(TNG)を用いて変異させた。(ATからGC変異、逆変異、及びフレームシフトが低い確率で生じるけれども)NTGは最も変異可能性の高いものの1つである。これは主にGCからATタイプへの塩基移動変異を誘発する。0時間から開始して、サンプルを30分ごとに採取し、利用可能な胞子の数を記録した。一旦、kill曲線が確立されると、0時間及び最終的に生き残っていた胞子の数を正しい%killを得るために用いた。例えば、50%killライブラリー及び99%killライブラリーは1.5時間及び3重量%間についての、NTGを有する奉仕のインキュベーションにより調整された。A83、T4、NY72及び41Gを含むRL−37由来の改善された株を99%killライブラリーより得た。インキュベーションの後、NTGを水で胞子を即ち、3回洗浄して除去した。アリコートを変異胞子で調製し、それらを−70℃、グリコール中で保存した。
【0053】
新しい糸状菌プレートを調製し、約1X10胞子形成単位/mlを含む胞子懸濁液を得るために用いた。胞子形成単位/mlの数はヘモサイトメーターを用いて決定した。NTGの溶液(Aldrich―4991)の溶液をDMSO中15mg/mlの濃度で新たに調製して、糸状菌胞子懸濁液に1.0mg/mlの採集濃度となるように添加した。この糸状菌胞子懸濁液をその後、室温の暗室で、99%のkillが得られるまでインキュベートした。
【0054】
T4の単離
セルラーゼスクリーニング培地を調製し、55℃の水浴中で冷却した。小さなペトリ皿(82mm)において、約100万の成熟胞子を含むアリコートをプレートの中心と端の間に半円を描くように注ぎ、10mlのセルラーゼスクリーニング培地(上で説明)を添加した。このプレートを、次いで、旋回させて、胞子がプレートの中央に分散するが、端かでには分散しないようにして、5乃至10分間固定した。25mlのセルラーゼスクリーニング培地を添加し、固定した。他の10mlのセルラーゼスクリーニング培地を添加し、このプレートを28℃で一晩インキュベートした。次の日に、このプレートの表面をチェックし、4時間毎に解剖顕微鏡を用いて育成を観察した。各ライブラリーについて、ピレートの表面にコロニーが到達するおおよその時間を決定した。
【0055】
アガー表面に到達した第一の1乃至3固体を滅菌ラザーブレードを用いて収集して、端の周りに飛び出したコロニーは無視した。このコロニーを顕微鏡で観察し、このコロニーの表面に触れるために、そしてアガーを切らないように注意深くかみそりを使用した。禁止の長編を除去し、PDA上に置き、28℃でインキュベートした。一旦成長すると、この単離体は振とうフラスコにおいて総タンパク質生成について評価した。
【0056】
スクリーニングの第一ラウンドの後、T4は親A−83と比較して約25%より多い総タンパク質を生産することがわかった(表1)。
【0057】
表1.RL−37、A−83、T4、NY27、及び41Gによる振とうフラスコ内でのタンパク質生成

【0058】
NY27の単離
前述のように、T4胞子をNTGで変異させ、99%killが得られるまで変異させた。変異胞子を10μg/mLnystainを含むPDAアガーで平板培養した。
【0059】
nystatin等のポリエン抗生物質は、糸状菌の細胞膜においてスチロール、エルゴステロースを結合して、細胞質膜をリークさせて、死に至らしめる。理論に拘束されることを意図しないけれども、改善されたタンパク質生産性は細胞膜における変化に起因する改善された分泌に寄与して、その結果、高い浸透性及び/又は流出物輸送遺伝子の過剰発現となる。
【0060】
Nystatinに耐性を有するコロニーを単離して、振とうフラスコにおいて総タンパク質生成について評価した。最も好適な変異体はNY27であり、振とうフラスコにおいてT4よりも約33%おおいタンパク質を生産していた。
【0061】
41Gの単離
NY27をNTGを用いて99%killを得るまで変異させた。変異胞子をT4の単離と同様の方法でスクリーニングした。
【0062】
セルラーゼスクリーニング培地を調整し、55℃の水浴中で冷却した。小ペトリ皿(82mm)に、約100万の胞子を含むアリコートをプレートの中央と端の間に半円を描くように分散させ、10mlのセルラーゼスクリーニング培地(前述)を添加した。このプレートを続いて、胞子がプレートの中央に分散し、端の先端まで分散しないように旋回させて、5乃至10分間固定した。25mlのセルラーゼスクリーニング培地を添加し、硬化させた。他の10mlのセルラーゼスクリーニング培地を添加し、プレートを28℃で一晩インキュベートした。次の日、解剖顕微鏡を用いて、プレートの表面を4時間ごとにチェックした。各ライブラリーのために、プレートの表面にコロニーが到達するのに好適な時間が決定された。
【0063】
アガーの表面に到達した第一の1乃至3単離体を滅菌かみそりを用いて収集し、端から飛び出しているコロニーは無視した。コロニーを顕微鏡下で観察して、かみそりを用いて、アガーをきらないように気をつけながらコロニーの表面に接触させた。胞子の小さなピースを除去し、PDA上に置き、28℃でインキュベートした。一旦成長したら、単離体を振とうフラスコ内で総タンパク質について評価した。
【0064】
変異41Gは親NY27と比較して、約25%より多いタンパク質を生成することがわかった(表1)。図1は14Lセルラーゼ発酵で、120時間、A83と41Gによる総タンパク質生成量を示している。総タンパク質はA83(対照)の総タンパク質で示している。乾燥細胞重量(DCW)はg/Lである。DCWは既知の全体ブロスをろ過して細胞分を取り除き、この細胞分を乾燥し、全体ブロス中の1リットル当たりの重量部を決定する。図2はA83対照と比較した、14リットルセルラーゼ発酵、120時間における41Gの特異活性を示す。特異生産性(DCW/LHグラム当たりのタンパク質のグラム)をA83(対象)に対する%として示す。乾燥細胞重量部(DCW)はg/Lである。図3はセルロースプレートスクリーン(CPS)及びnystatin耐性スクリーンを用いた41Gの評価及び41Gにおける、14l発酵における生産性(タンパク質のグラム/炭素のグラム/LH)及び繁殖性(タンパク質のグラム/LH)を示す。結果はA83(対照)に対する%として示す。
【0065】
100mMピペラジン−N−N‘−ビル(2−メタンスルホン酸)(PIPES;カルビオケム)以外はIlmenらによる、App Environ Microbiol 63、1298−1306に記載の培地を用いてセルラーゼ生成について、フェドバッチ発酵において14Lの発酵槽で育成した。他の方法は当業者に典型的である。図3はA83株に対する改善された繁殖性と生産性を示す。
実施例7.2糖化
【0066】
T4反応をセルロース1グラム当たり5、10、及び20ミリグラムセルラーゼを用いて産処理コーンストーバー(13%固形分、約7%セルロース)で、50℃、5日間、標準的なマイウロタイタープレートにおいて行った。平均されたA83反応サンプル(n=2で実施)と平均された別のT4サンプル(n=2及びn=4で実施)との間に違いが見られた。プレートアッセイにおいて行われたA−83をT4セルラーゼは追放した。41Gについて、2.5%(w/v)セルロースを含むPYP(希釈酸処理黄色popular)の固形を4.3%(w/v)含む8mg/gセルロースを当量のA83と14Gに添加して、168時間、密閉管において、(20分ごとに)回転させながら連続的に混合して、pH5.0、38℃でインキュベートした。PYPセルロースの糖化%を全ての時間に渡って、決定した。T4により生成されたセルラーゼを用いて、糖化%はA83に比して10乃至15%改善された。41GセルラーゼはA83セルラーゼに比して、改善された糖化%を示した(図4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた代謝速度を有する糸状菌のサブ集団のために試験糸状菌の集団をスクリーニングする工程と、予め決められた選択パラメーターに基づいて糸状菌のサブ集団から所望の糸状菌を選択する工程とを含む、所望の糸状菌をスクリーニングする方法。
【請求項2】
糸状菌のサブ集団が基質の代謝速度に基づいて糸状菌を選択することにより得られ、この基質が微生物の分解に耐えうるものである、請求項1の方法。
【請求項3】
選択パラメーターが、試験糸状菌に提供される予め決められた量の炭素に対する試験糸状菌におけるタンパク質の生産に相当する、請求項1の方法。
【請求項4】
選択パラメーターが試験糸状菌に提供される予め決められた量の炭素に対する試験糸状菌による、セルラーゼ、キシラナーゼ、グルコアミラーゼ、アミラーゼ、ラッカーゼ、プロテアーゼ、フィターゼ、又はヘミセルラーゼの生産に相当する、請求項1の方法。
【請求項5】
選択パラメーターが試験糸状菌により予め決められた量の消費炭素に対する試験している糸状菌におけるタンパク質の生産に相当する、請求項1の方法。
【請求項6】
選択パラメーターが更に試験糸状菌におけるタンパク質の生産性に対応する指標を含む、請求項1の方法。
【請求項7】
試験糸状菌におけるタンパク質の生産性が試験糸状菌の予め決められた量に対する決められた時間における試験糸状菌におけるタンパク質の生成により決定される、請求項1の方法。
【請求項8】
選択パラメーターが、試験糸状菌の予め決められた量に対する試験糸状菌において発現されたセルラーゼ、キシラナーゼ、グルコアミラーゼ、アミラーゼ、ラッカーゼ、プロテアーゼ、フィターゼ、又はヘミセルラーゼの生産に対応する指標を含む、請求項1の方法。
【請求項9】
サブ集団のために試験糸状菌集団をスクリーニングすることが固形相アッセイで行われる、請求項1の方法。
【請求項10】
試験糸状菌の集団が抗体に対して予め選択された糸状菌の集団である、請求項1の方法。
【請求項11】
試験糸状菌の集団がポリエン抗生物質に対して予め選択された糸状菌の集団である、請求項1の方法。
【請求項12】
抗体が、ナイスタチン(nystatin)、アンフォテリシン(Amphotericin)B、ビアラホス(bialaphos)、シクロヘキサミジン(cyclohexamidine)、ツニカマイシン(Tunicamycin)、グリセオフルビン(Griseofulvin)、ニッコマイシン(Nikkomycin)Z、カスポファンギン(caspofungin)、アクチノマイシン(Actinomycin)D、ブレフェルジン(Brefeldin)A、及びハイグロマイシン(hygromycin)からなる群より選択される、請求項10の方法。
【請求項13】
試験糸状菌がアスペルギルス(Aspergillus)、アクレモニウム(Acremonium)、アウロバシディウム(Aureobasidium)、ベアウベリア(Beauveria)、セファロスポリウム(Cephalosporium)、セリオプリオシス(Ceriporiopsis)、チャエトミウム(Chaetomium)、パエシロマイセス(Paecilomyces)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、クラビセプス(Claviceps)、コキオボルス(Cochiobolus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、チャタス(Cyathus)、エンドセリア(Endothia)、フサリウム(Fusarium)、ギロクラジウム(Gilocladium)、フミコーラ(Humicola)、マグナポルセ(Magnaporthe)、ミセリオフォソラ(Myceliophthora)、ミロセシウム(Myrothecium)、ムコール(Mucor)、ニューロスポラ(Neurospora)、ファネロチャエテ(Phanerochaete)、ポドスポラ(Podospora)、パエシロマイセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、フィリクラリア(Pyricularia)、リゾムコール(Rhizomucor)、リゾプス(Rhizopus)、スキゾフィラム(Schizophylum)、スタゴノスポラ(Stagonospora)、タラロマイセス(Talaromyces)、トリコデルマ(Trichoderma)、セルモマイセス(Thermomyces)、セルモアスクス(Thermoascus)、シエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、トリコフィトン(Trichophyton)、タラメテス(Trametes)、及びプレウロタス(Pleurotus)からなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項14】
試験糸状菌がトリコデルマレーシ(T.reesei)であり、これがセルロースを炭素源として使用する、請求項1の方法。
【請求項15】
試験糸状菌がセルロースを炭素源として使用する、請求項1の方法。
【請求項16】
請求項1の方法により得られた糸状菌。
【請求項17】
請求項1の方法により得られた糸状菌であって、前記糸状菌がトリコデルマレーシ(T.reesei)であり、これが予め決められた活性を有するセルラーゼの混合物を生成する、糸状菌。
【請求項18】
活性が糖化である、請求項17の糸状菌。
【請求項19】
第一選択パラメーター及び第二選択パラメーターに基づいて、試験糸状菌の集団をスクリーニング工程を含み、第一選択指標が試験糸状菌の代謝速度であり、第二選択指数が抗体に対する試験糸状菌の性能を示す、所望の糸状菌をスクリーニングする方法。
【請求項20】
前記第一選択指数が微生物の分解に耐性を有する糸状菌の集団である、請求項19の方法。
【請求項21】
予め決められた選択指標に基づいて試験糸状菌の集団をスクリーニングする方法を含む、所望の糸状菌にすいてスクリーニングする方法であって、予め決められた選択指標が試験している糸状菌の代謝速度を示し、試験している糸状菌が抗生物質に対して予め選択された糸状菌の集団である、方法。
【請求項22】
予め決められた選択指標が微生物分解に耐性を有する基質の代謝速度を示す、請求項21の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−501939(P2011−501939A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512169(P2010−512169)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/007274
【国際公開番号】WO2008/156605
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(508377015)ダニスコ・ユーエス・インク、ジェネンコー・ディビジョン (31)
【Fターム(参考)】