説明

有効成分を含む医薬組成物、及び組成物を含む創傷接触層

本発明は、親水コロイドが分散した親水性基剤を含み、該親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む、創傷被覆材、創傷接触層及び医薬組成物、並びに該組成物の創傷治療のための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬組成物及び創傷治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトのための治療に用いる多数の軟膏類及び他の組成物が知られており、数十年にわたり使用されてきた。これらの軟膏は一般的に健康な皮膚又は一部の粘膜、例えば眼などに対する用途の、半固体の組成物である。これらの軟膏及び製剤は通常、有効薬剤成分の経皮投与による局所作用又は皮膚に対する軟化作用又は保護作用を有することが想定される。
【0003】
さらに、創傷治療のための多数の軟膏が知られている。例えば、特許文献1においては、ゲルとして製剤され、少なくともゲル形成多糖類及びヘキシレングリコールを含む創傷用軟膏が記載されている。特にゲル形成多糖類としてはカルボキシメチルセルロース又はアルギン酸ナトリウムが使用されるべきである。この組成物は明らかに抗菌作用を有し、線維形成に対する毒性が無い。
【0004】
さらに、特許文献2においては、例えば創傷治療又は小穴治療の際に用いる、皮膚保護用ペーストが記載されており、該ペーストはポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、水、油、及び脂肪酸エステルを含んだゲルとして製剤される。このゲルは少なくとも20重量%の水及び少なくとも45重量%の親水コロイドを含む。
【0005】
さらには、限られた分量の水を吸収し、創傷治療に用いることが出来る親水軟膏が知られている。これらの軟膏は様々なモノグリセリド類、ジグリセリド類、及びトリグリセリド類、並びに非極性油の混合物を含み、例えばいわゆる軟膏被覆材の製造のための担体材料上のAtrauman(登録商標)に加工される。
【0006】
また、無菌創傷被覆材が特許文献3において知られており、該創傷被覆材は無菌の軟膏を含浸した担体材料及びポリビニルピロリドンの水溶性フィルムを含む。該軟膏は親水性又は疎水性軟膏であってもよい。
【0007】
特許文献4からは、滅菌可能なペースト又はクリームが知られており、該ペースト又はクリームはエマルジョン及び水不溶性ゲル形成材料を含み、該水不溶性ゲル形成材料は架橋したカルボキシメチルセルロースとすることができる。該エマルジョンはその一部に油又はろう、水、及び乳化剤を含むとされており、ここで水含有量は少なくとも40重量%に達する。
【0008】
特許文献5からは、創傷治療のための湿布が知られており、該湿布は親水コロイド粒子が分散している疎水性エラストマーマトリクスを含む。該マトリクスはさらに55から90重量%の非極性油及び10よりも高いHLB値を有する界面活性剤を含むとされている。
【特許文献1】欧州特許第621 031号
【特許文献2】欧州特許第107 526号
【特許文献3】欧州特許第65 399号
【特許文献4】WO 96/036,315
【特許文献5】WO 01/070,285
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術を出発点として、本発明の目的は、創傷より放出された滲出液を吸収することが出来、また有効成分の放出により創傷の治癒過程を最適に補助することが出来る製剤を提案することである。さらに、創傷滲出液を吸収することが出来、また創傷又は該創傷周辺の皮膚に有効成分を運ぶことが出来、そこで長期間にわたり該有効成分の放出物が放出されるべきである、創傷接触層が提案される。さらには、創傷より分泌された滲出液を吸収することが出来、有効成分を運ぶことが出来、また湿潤な創傷治癒環境を提供することが出来、結果として最適に創傷の治癒を補助することが出来る創傷接触層が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、少なくとも1種の放出可能な創傷治癒物質を含む、1から50重量%の親水コロイドが分散する50から99重量%の親水性基剤を含み、0.5から50重量%の該親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む医薬組成物によって達成される。これらの目的はさらに、このような組成物と該組成物のための担体材料とを含む創傷接触層によって達成される。
【0011】
以降、本発明に関し、全ての含有量データは、特に断りがない限り、医薬組成物の総重量に対する重量パーセントとして理解されるべきである。また、本発明による親水性基剤は、それが単相又は多相の組成物であり、少なくとも1種の乳化剤の含有の結果として、エマルジョンとして存在し又はエマルジョンを形成し得る医薬組成物として理解されるべきである。そのようなエマルジョンは、少なくとも1つの水相及び/又はゲル相並びに少なくとも1つの油相を含むエマルジョンでもよい。
【0012】
本組成物の1つの長所は、親水性基剤中に分散した親水コロイドの含有によって、この組成物が非常に速やかに大量の液体、例えば創傷からの滲出液を吸収し得ることである。該親水性基剤は液体と接触した際に短時間にエマルジョンを形成し、その際、エマルジョン中の水が第2のステップで該基剤中の分散した親水コロイドによって吸収される。この工程は並行的に起きてもよい。どのような場合でも、生成中のエマルジョンのほかに、親水コロイドは第2の液体リザーバを形成する。これに関し、創傷治癒物質の放出は特に創傷滲出液の吸収によって制御される。創傷滲出液は親水性基剤又は親水コロイドによって吸収されるほど、創傷治癒物質がより放出される。従って、該親水コロイドは、液体リザーバ、及び制御された方法で該創傷治癒物質を放出する該創傷治癒物質の貯蔵庫である。
【0013】
前記医薬組成物の第2の好ましい態様においては、該組成物は10重量%未満の水、特に5重量%未満の水を含み、非常に特別に好ましくは水を含まない。特に、前記親水性基剤は10重量%未満の水、特に5重量%未満の水を含み、非常に特別に好ましくは水を含まない。この親水性基剤は従って単相混合物として存在し、少なくとも1種の乳化剤の存在の結果、例えば水が添加された際にエマルジョンを形成し得る。以降、本発明と関連して、これは該親水性基剤が微量の水を含み得るが、水含有量は該親水性基剤の質量に対し最大で1重量%であるべきことを意味する。
【0014】
他の好ましい態様においては、前記組成物は、クリームの、クリーム基剤の、又は軟膏の親水性基剤を含む。前記親水性基剤は特に親水性クリーム若しくはクリーム基剤、又は親水性軟膏である。本出願の文脈において、軟膏は単相系と理解されるべきであるが、クリームは二層又は多相系である。これらの製剤の正確な区別並びにさらなる製剤の分類はドイツ薬局方DAB9及びその注釈書において提供されており、それはここでも明確に参照される。
【0015】
また、前記組成物はさらに1から40重量%の非極性脂質類を含む親水性基剤を含むことが特に規定される。該組成物は、さらに10から40重量%、さらに特に10から30重量%の非極性脂質類、また、さらに非常に特別に好ましくは10から25重量%の非極性脂質類を有する親水性基剤を特に含む。
【0016】
本発明の範囲において、「脂質」は、脂肪類、油類、ろう類、その他の総称として用いられる。「油相」及び「脂質相」という語も同義語として用いられる。脂質類は特にその極性によって区別される。水に対する界面張力を脂質及び/又は脂質相の極性の指標として採用することが既に提案されている。これは、当の脂質相の極性が大きいほど、この脂質相と水との間の界面張力が低いことを意味する。表面張力は本発明において任意の油成分の極性の可能な指標として考えられる。界面張力はここで、2相間の界面に位置する1メートルの長さを有する仮想の線上に働く力である。この界面張力の物理単位は伝統的に力−長さの関係に従って算出され、通常mN/m(ミリニュートン割るメータ)で与えられる。これは界面を減ずる傾向を示す時に正符号を有する。逆の場合、これは負の符号を有する。本発明によれば、脂質類は特に水に対する界面張力が20mN/m未満に達する場合、極性であるとみなされ、水に対する界面張力が30mN/m超に達する場合、非極性であるとみなされる。水に対する表面張力が20から30mN/mの間にある脂質類は一般的に中極性とみなされる。
【0017】
非極性脂質類は分岐及び非分岐炭化水素類及び炭化水素ろう類、特にワセリン、ペトロラタム、パラフィン油、鉱油、ポリイソブテン、ろう、又はその組み合わせの群から選択される脂質類である。
【0018】
非極性脂質成分に加えて、本発明の親水性基剤は極性及び中極性脂質類も含み得る。極性又は中極性脂質類は、例えば、脂肪酸トリグリセリド類;脂肪酸ジグリセリド類;脂肪酸モノグリセリド類;又はジグリセロール若しくはトリグリセロールの完全若しくは部分脂肪酸エステル類等のグリセロールオリゴマー類の脂肪酸エステル類;の群からのものである。特に、トリ−、ジ−、及びモノグリセリド類は飽和及び/又は不飽和の、分岐及び/又は非分岐の、8から24、特に12から18個のC原子の鎖長を有するアルカンカルボキシレート類のエステル類であってよい。脂肪酸トリグリセリド類、脂肪酸ジグリセリド類、脂肪酸モノグリセリド類は、例えば合成、半合成及び天然の脂肪類又は油類の群から有利に選択され得る。
【0019】
本発明と関連して、一部に極性又は非極性脂質類及び0.5から40重量%、特に0.5−30重量%の濃度の少なくとも1種の乳化剤を含む混合物も特に親水性基剤と考えてよく、それによって該親水性基剤における中極性及び非極性脂質類の該非極性脂質類に対する比率は、全脂質含有量に基づいて1:1超、特に2:1超、非常に特別には3:1から10:1の間である。
【0020】
特に、本発明の組成物は、該組成物の総重量に対し20−80重量%のモノ−、ジ−及び/若しくはトリグリセリド類、並びに/又はグリセロールオリゴマー類の完全若しくは部分エステル類を含む親水性基剤を有する。該親水性基剤は特に、該組成物の総重量に対し30−70重量%、非常に特別には40−70重量%のモノ−、ジ−及び/若しくはトリグリセリド類、並びに/又はグリセロールオリゴマー類の完全若しくは部分エステル類を含む。この場合、該組成物が10−50重量%のモノ−、ジ−及び/又はトリグリセリド類、並びに10−30重量%のグリセロールオリゴマー類、特にジグリセロール又はトリグリセロールの部分エステル類を含むと特に好都合である。
【0021】
さらなる特に好ましい態様においては、本発明の組成物は、該組成物の総重量に対し40−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類及び/又はグリセロールオリゴマー類、特にジグリセロール又はトリグリセロール、の部分エステル類と、15−30重量%の非極性脂質類と、0.5−30重量%の乳化剤とを有する親水性基剤を含む。
【0022】
さらなる特に好ましい態様においては、本発明の組成物は40−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類及び/又はグリセロールオリゴマー類、特にジグリセロール又はトリグリセロールの部分エステル類と、15−30重量%の非極性脂質類と、0.5−30重量%の乳化剤と、1−50重量%の親水コロイドとを含む親水性基剤を有し、該親水コロイドは該親水性基剤中に分散し、少なくとも放出可能な創傷治癒物質を含む。
【0023】
本発明に関し、乳化剤は、水が親水性基剤に添加された際に多相性混合物、すなわちエマルジョンが生成し得るような界面活性を特徴とする物質であると理解される。特に、本発明の組成物は、水が添加された際に、前記親水性基剤が油中水型エマルジョン(W/Oエマルジョン)、油中ゲル型エマルジョン(G/Oエマルジョン)、水中油型エマルジョン(O/Wエマルジョン)、ゲル中油型エマルジョン(O/Gエマルジョン)、水中油中水型エマルジョン(W/O/Wエマルジョン)、ゲル中油中ゲル型エマルジョン(G/O/Gエマルジョン)、水中油中ゲル型エマルジョン(G/O/Wエマルジョン)、ゲル中油中水型エマルジョン(G/O/Wエマルジョン)、油中水中油型エマルジョン(O/W/Oエマルジョン)、又は油中ゲル中油型エマルジョン(O/G/Oエマルジョン)を形成し得る少なくとも1種の乳化剤を含むべきである。さらに好ましくは、O/W若しくはW/Oエマルジョン又はO/G若しくはG/Oエマルジョンを形成することができ、またエチレン若しくはプロピレングリコール類又はエチレンプロピレングリコール類を含まない、即ちエチレン、プロピレン、又はエチレンプロピレングリコール単位を含むどのような物質も含まない乳化剤である。
【0024】
この場合、本発明の組成物は少なくとも0.5−50重量%の乳化剤、特に少なくとも0.5−40重量%の乳化剤、特に少なくとも0.5−30重量%の乳化剤、特に少なくとも1−20重量%の乳化剤、非常に特別には少なくとも1−10重量%の乳化剤を特に含み得る。
【0025】
従って、本発明のさらなる態様においては、本発明の組成物は、少なくとも1種の放出可能な創傷治癒物質を有する1から50重量%の親水コロイドが分散している、50から99重量%の親水性基剤を含み、0.5から40重量%の該親水性基剤が少なくとも1種のO/W乳化剤、特にイオン性O/W乳化剤を含む。しかし、該O/W乳化剤の代わりに非イオン性W/O乳化剤が使用されるとも規定され得る。特に、この組成物は10重量%未満の水を有し、好ましくはさらに0.5から30重量%の少なくとも1種のO/W乳化剤、特にイオン性O/W乳化剤、又はW/O乳化剤、特に非イオン性W/O乳化剤を含む親水性基剤を含む。
【0026】
本発明のさらなる態様においては、本発明の組成物は10重量%未満の水と、40重量%までの親水コロイドが分散している60から95重量%の親水性基剤とを含み、0.5から50重量%の該親水性基剤が少なくとも1種のO/W乳化剤を含む。しかし、該O/W乳化剤の代わりに非イオン性W/O乳化剤が使用されるとも規定され得る。
【0027】
O/W型の乳化剤の使用は、前記組成物が適用された際、該組成物を極めて容易に、例えば水によって創傷から完全に洗い落とすことができるという点において好都合である。
【0028】
本発明のさらなる態様においては、本発明の組成物は10重量%未満の水と、60から95重量%の親水性基剤とを含み、該親水性基剤中に5から40重量%の親水コロイドが分散しており、これが少なくとも1種の放出可能な創傷治癒物質を含み、0.5から30重量%の該親水性基剤が少なくとも1種のO/W乳化剤又は非イオン性W/O乳化剤を含む。
【0029】
本発明の組成物は、好ましくは、
【0030】
【化1】

【0031】
(J.Falbe、M.Regitz編集)第10版、Georg Thieme Verlag Stuttgart、ニューヨーク(1997)、1764頁に示された定義に従って3から18のHLB値を示す非イオン性乳化剤をさらに含み得る。本発明によれば、10から15のHLB値を示す非イオン性O/W乳化剤及び3から6のHLB値を示す非イオン性W/O乳化剤が特に好ましい。
【0032】
特に、前記乳化剤又は乳化剤群、特に非イオン性O/W乳化剤群は:
− 一般式R−O−(CH2−CH2O)n−Hを有する脂肪アルコールエトキシレート類又は一般式R−O−(CH2−CH(CH3)−O)n−Hを有する脂肪アルコールプロポキシレート類であって、ここでRが分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基であり、nが10から50の数字を表すもの;
− エトキシ化又はプロポキシ化ラノリンアルコール類;
− 一般式R−O−(CH2−CH2−O)n−R’を有するポリエチレングリコールエーテル類又は一般式R−O−(CH2−CH(CH3)−O)n−R’を有するポリプロピレングリコールエーテル類であって、ここでR及びR’が独立に分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から80の数字を表すもの;
− 一般式R−COO−(CH2−CH2−O)n−Hを有する脂肪酸エトキシレート類又は一般式R−COO−(CH2−CH(CH3)−O)n−Hを有する脂肪酸プロポキシレート類であって、ここでRが分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から40の数字を表すもの;
− 一般式R−COO−(CH2−CH2−O)n−R’を有するエステル化脂肪酸エトキシレート類又は一般式R−COO−(CH2−CH(CH3)−O)n−R’を有するエステル化脂肪酸プロポキシレート類であって、ここでR及びR’が独立に分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から80の数字を表すもの;
− 一般式R−COO−(CH2−CH2−O)n−C(O)−R’を有するエステル化脂肪酸エトキシレート類又は一般式R−COO−(CH2−CH(CH3)−O)n−C(O)−R’を有するエステル化脂肪酸プロポキシレート類であって、ここでR及びR’が独立に分岐又は非分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、nが10から80の数字を表すもの;
− 飽和及び/又は不飽和の、分岐及び/又は非分岐の脂肪酸類のポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル又はポリプロピレングリコールグリセロール脂肪酸エステルであってエトキシ化度又はプロポキシ化度が3から50であるもの;
− 3から100のエトキシ化度又はプロポキシ化度を有する、エトキシ化又はプロポキシ化ソルビタンエステル類;
− 3から150のエトキシ化度又はプロポキシ化度を有する、エトキシ化又はプロポキシ化トリグリセリド類;
− 分岐又は非分岐のアルカン酸又はアルケン酸を基盤としたポリオキシエチレンソルビトールの脂肪酸エステル類であって、例えばソルベス型の、5から100のエトキシ化度を有するもの;
の群より有利に選択され得る。
【0033】
本発明の範囲において、さらに二炭酸エステル類又は三炭酸エステル類の群からの非イオン性W/O乳化剤が有利である。マロン酸、コハク酸、及びアジピン酸のエステル類は特にこれらの中で適している。二炭酸類のエステル類がさらに好ましく、特にコハク酸のエステル類が適しており、これは飽和若しくは不飽和の、及び/若しくは直鎖又は分岐のC8−C24の脂肪アルコール類並びに/又はグリセリン及びそれらのオリゴマー、特にジグリセリン若しくはトリグリセリンで生成される。飽和し分岐したC8−C24の脂肪アルコール類並びに/又はグリセリン及びそれらのオリゴマー類との、特にジグリセリン又はトリグリセリンとのコハク酸のエステル類は、非イオン性W/O乳化剤として特に好都合であることが分かった。これらのうち極めて特別に適したものは二炭酸エステル類であり、これはコハク酸及び飽和し、分岐したC8−C24の脂肪アルコール類及びジグリセリンから生成される。このような乳化剤の一つはINCI命名法ではコハク酸イソステアリルジグリセリルと呼ばれ、‘Imwitor(登録商標)780’の製品名で入手出来る。これらの乳化剤はポリエチレングリコールが含まれていない、即ちエチレングリコールのユニットを何も含んでいないというさらなる利点を有する。
【0034】
特に、イオン性O/W乳化剤も本発明と関連したO/W乳化剤として利用することが出来る。ヒドロキシカルボン酸及び/又はトリカルボン酸を有する飽和又は不飽和の脂肪酸のモノグリセリド及び/又はジグリセリドのエステル類の群から選択される乳化剤は、O/W乳化剤として、特にイオン性O/W乳化剤として好都合である。ヒドロキシカルボン酸及び/又はトリカルボン酸を有する飽和脂肪酸類、特に乳酸及び/又はクエン酸の、部分的に中和されたモノグリセリド類及び/又はジグリセリド類のエステル類は、特にO/W乳化剤として好ましい。INCI命名法でグリセリルココエートクエン酸塩乳酸塩と呼ばれる乳酸及び/又はクエン酸のエステル類は、極めて特別に好ましい。そのような乳化剤は、例えば‘IMWITOR(登録商標)380’又は‘IMWITOR(登録商標)377’の製品名で入手出来る。これらの乳化剤はポリエチレングリコール類が含まれていない、即ちエチレングリコールのユニットを何も含んでいないというさらなる利点を有する。
【0035】
本発明によると、親水コロイドは、水に可溶性若しくは吸収性であり、及び/又は水で膨潤し、ゲルを形成する、親水性の合成又は天然ポリマー材料である材料として理解されるべきである。好ましくは、本発明の組成物は、例えばアルギン酸並びにその塩及びその誘導体、キチン又はその誘導体、キトサン又はその誘導体、ペクチン、セルロース又はセルロースエーテル若しくはセルロースエステル等のその誘導体、架橋又は非架橋カルボキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、寒天、グアールガム、又はゼラチンから選択される、合成又は天然ポリマー材料の親水コロイドを含む。セルロース又はその誘導体若しくは塩、アルギン酸又はその誘導体若しくは塩、並びにその混合物は、親水コロイドとして非常に好ましく用いられ得る。
【0036】
これらの親水コロイドは創傷治癒物質を吸収することが出来、貯蔵庫としてこの物質を貯えることが出来、また必要に応じて液体の存在下で再びそれを放出することが出来る。驚くべきことに、この液体の吸収及び有効成分の放出は水相又は油相の存在下でも起こることが明らかになった。これに関して、創傷治癒物質の放出は長期にわたり制御された方法で生ずることが特に明らかになった。さらに驚くべきことに、水相及び油相の存在により、有効成分の選択においては脂肪親和性又は親水性に関して特に制限が無いこと、即ち形成される種類のエマルジョンの結果として脂肪親和性有効成分又は親水性有効成分のどちらでも放出が増加し得ることが明らかになった。
【0037】
前記親水コロイドは繊維、並びに前記組成物中に分散する粒子及び/又は繊維の形態で存在してもよい。特に、該親水コロイドは粒子の形態で存在し得る。粒子として存在し、100から1000μmの平均粒径を有する親水コロイドが好ましい。該組成物中のゲル形成粒子の割合は該組成物の総重量に対し1から50重量%の間である。ゲル形成粒子の割合は該組成物の総重量に対し好ましくは1から40重量%、さらに好ましくは1から30重量%、非常に好ましくは1から25重量%であり得る。該組成物中の親水コロイドの割合はさらに好ましくは該組成物の総重量に対し5から40重量%の間である。この親水コロイドの割合は該組成物の総重量に対し好ましくは5から30重量%、さらに好ましくは10から25重量%、非常に好ましくは15から25重量%であり得る。
【0038】
特に好ましいのは粒子の形態で存在する親水コロイドであり、これにより該粒子は該親水コロイド粒子に対し10重量%未満、特に8重量%未満、特に5重量%未満の水含有量を有する。極めて特別に好ましいのは水を含まない粒子である。本発明との関連において、以降、これはそのゲル形成粒子が微量の水を含みうるが、水含有量は該ゲル形成粒子の質量に対し最大でも1重量%であることを意味する。
【0039】
さらに分子内及び/又は分子間で連結した又は架橋した親水コロイドが好ましく用いられ得る。これらの親水コロイドは例えば水又は生理食塩水に不溶性であり、即ち、これらの親水コロイドはこれらの液体が添加された際に膨潤し、膨潤した粒子が組成物内に分散するような内部凝集力を示す。
【0040】
特に好ましい態様によると、本発明の組成物は好ましくはセルロース誘導体又はそれらの塩、アルギン酸塩又はそれらの誘導体、キチン又はその誘導体若しくは塩の群から選択される少なくとも1種の親水コロイドを含有する。これに関して、該親水コロイドの由来は重要ではなく、即ちこれらの親水コロイドは植物若しくは動物由来の、又は合成的に、例えば微生物学的方法により製造されるものでよい。植物又は動物由来であって化学合成によって修飾された親水コロイドを用いることも可能である。
【0041】
本発明との関連において、セルロース誘導体の群は特にセルロースエーテル類及びセルロースエステル類、並びにそれらの塩類を含む。この関連において、ヒドロキシアルキルセルロース類、特に例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒドロキシブチルセルロース、非常に特別に好ましくはヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースのようなヒドロキシ−C1-6−アルキルセルロースがセルロースエーテル類として用いられる。カルボキシアルキルセルロース、特に例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、又はカルボキシブチルセルロース、非常に特別に好ましくはカルボキシメチルセルロース又はカルボキシエチルセルロースのようなカルボキシ−C1-6−アルキルセルロースがセルロースエステル類として用いられる。
【0042】
さらに好ましい態様においては、前記組成物は少なくとも2種の異なる親水コロイドを有する。ここで、この少なくとも2種の親水コロイドがセルロース誘導体類又はその塩類、特にセルロースエステル類又はそれらの塩類、アルギン酸塩類又はそれらの誘導体類、キチン又はその誘導体類若しくはその塩類から選択される場合、特に好都合であることが明らかになった。
【0043】
ポリアクリレート類又はそれらの誘導体類若しくは塩類の群から選択される合成ポリマー材料は親水コロイドとして使用することが出来る。ここで本発明の範囲においてポリアクリレートはモノマー(M1)としてアクリル酸(2−プロペン酸(CH2=CH−CO2H)及び/又はその塩を含む合成ポリマーであって、(該ポリアクリレートの総重量に対し)60重量%超のアクリル酸及び/又はその塩のモノマー率を有するものとして理解される。特に、本発明によれば、ポリアクリレート類は該ポリアクリレートの総重量に対し80重量%超、極めて好ましくは95重量%超のアクリル酸及び/又はその塩のモノマー率を有する。該ポリアクリレートはホモポリマー、コポリマー、又はブロックポリマーとして存在し得る。該ポリアクリレートがコポリマー又はブロックポリマーとして存在する場合、該ポリマー中のモノマーM1のモノマー率はいずれの場合でも該ポリアクリレートの総重量に対し60%超、特に80%超、及び極めて好ましくは95%超である。該モノマーM1の他に、これらのポリアクリレートコポリマー類又はポリアクリレートブロックポリマー類は特にα,β−不飽和エーテル類(ビニルエーテル類)、α,β−不飽和炭酸類、又はα,β−不飽和炭酸エステル類(ビニルエステル類)を含んでいてもよい。α,β−不飽和炭酸類のコモノマーM2のうち、メタクリル酸(2−メチルプロペン酸)、エタクリル酸(2−エチルプロペン酸)、クロトン酸(2−ブテン酸)、ソルビン酸(トランス−トランス−2,4−ヘキサジエン酸)、マレイン酸(シス−2−ブテン二酸)又はフマル酸(トランス−2−ブテン二酸)が特に好ましい。しかし、本発明の特に好ましい形態においては、該ポリアクリレートは、a)アクリル酸ホモポリマー;及び/又はb)i)アクリル酸及びアクリル酸塩からの、ii)メタクリル酸及びメタクリル酸塩からの、若しくはiii)アクリル酸及びメタクリル酸並びにそれらの塩類からの、コポリマー;から成るとも規定され得る。しかし、該ポリアクリレートは様々なポリアクリレート類の混合物であるともさらに規定され得る。
【0044】
この点において、前記α,β−不飽和炭酸及び前記アクリル酸は塩として中和された形態で、遊離酸として中和されていない形態で、又はその混合物で存在してもよい。中でも、アクリル酸及びアクリル酸塩から生成したポリアクリレート類は特に有効であることが示された。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩類はこの場合特に際立っている。中でも、モノマーとしてアクリル酸及び/又はアクリル酸ナトリウム若しくはカリウムを含むホモポリマー類及び/又はコポリマー類からなるポリアクリレート類は特に有効であることが示された。
【0045】
さらに、驚くべきことに、本目的は連結した及び/又は架橋したポリアクリレート類の群からの親水コロイドによって極めて特別な方法で達成される。これらのポリアクリレート類は好ましくは、a)モノマーM1から成り、架橋剤によって連結及び/又は架橋したホモポリマー;及び/又は、b)モノマーM1及びM3から成り、該モノマーM1がアクリル酸及び/又はその塩であり、該モノマーM3が該架橋剤の群から選択されるコポリマー;を含む。これは、これらのポリアクリレート類が、架橋剤により引き続き連結したポリアクリレート並びに/又はアクリル酸及び/若しくはその塩と架橋剤とで共重合したポリアクリレートを含むことを意味する。
【0046】
中でも、1分子中に少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する化合物V1;又は、縮合反応、付加反応、若しくは開環反応においてアクリル酸及び/若しくはその塩の官能基と反応し得る少なくとも2つの官能基を有する化合物V2;又は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、縮合反応、付加反応、又は開環反応においてアクリル酸及び/若しくはその塩の1つ並びに/又はα,β−不飽和コモノマー類の官能基と反応し得る少なくとも1つの官能基と、を有する化合物V3;を架橋剤として含む、連結した及び/又は架橋したポリアクリレート類は特に有効であることが示された。ここで化合物V1により、前記ポリマー類は、前記架橋剤分子のエチレン性不飽和基の、アクリル酸及び/又はその塩類の1つ及び/又はα,β−不飽和コモノマー類の1つのモノエチレン性不飽和モノマー類とのラジカル重合によって架橋され、一方、化合物V2では、前記官能基の、アクリル酸及び/若しくはその塩類の1つ又はα,β−不飽和コモノマー類の1つの官能基との縮合反応により前記ポリマーの架橋が達成される。従って化合物V3では、エチレン性不飽和基のラジカル重合により、及び前記架橋剤の官能基と官能性モノマー基との間の縮合反応により前記ポリマーの架橋が起こる。
【0047】
好ましい化合物V1はポリアクリル酸エステル類又はポリメタクリル酸エステル類であり、これはポリオール、例えばエチレングリコール(1,2−エタンジオール)、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、トリメチロールプロパン(2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール(1,2,3−プロパントリオール)、ペンタエリスライト(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール)、ポリエチレングリコール(HO−(CH2−CH2−O)n−H、n=2から20)、ポリプロピレングリコール(HO−(CH(CH3)−CH2−O)n−H、n=2から20)の;アミノアルコールの;例えばジエチレントリアミン若しくはトリエチレンテトラアミン等のポリアルキレンポリアミンの;又はアルコキシ化ポリオールの;アクリル酸又はメタクリル酸との反応によって得られる。連結したポリアクリレート類で特に好ましいのは、アルコキシ化ポリオール、特にエトキシ化ポリオール、特にエトキシ化エチレングリコール、エトキシ化プロピレングリコール、エトキシ化トリメチロールプロパン、エトキシ化1,6−ヘキサンジオール、又はエトキシ化グリセロール(平均n=1から10のヒドロキシ基当たりのnエチレンオキサイド単位)の、アクリル酸又はメタクリル酸との反応によって合成されたポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のジ−、トリ−、又はテトラエステルである化合物V1によって連結されたポリアクリレートである。さらに、ポリビニル化合物;ポリアリル化合物;ポリメチルアリル化合物;モノビニル化合物のアクリル酸エステル類又はメタクリル酸エステル類;モノアリル化合物又はモノメチルアリル化合物の、好ましくはポリオール又はアミノアルコールのモノアリル化合物又はモノメチルアリル化合物の、アクリル酸エステル類又はメタクリル酸エステル類。これに関連して、DE 195 43 366及びDE 195 43 368が参照される。
【0048】
驚くべきことに、上記目的はポリアクリレート超吸収体の群からの親水コロイドによっても達成される。本発明の範囲において、この場合、ポリアクリレート超吸収体とは、上記の特徴を備えた、少なくともその自重の15倍を生理食塩水(0.9%NaCl溶液、水)中で吸収し得るポリアクリレートとして理解される。
【0049】
超吸収体は長きにわたり現代の創傷治療において知られてきた。しかし、それらは単に創傷滲出液吸収用媒体として用いられている。これらの超吸収体がこのように用いられる場合、創傷又は創傷床の液体のバランスのみが制御される。驚くべきことに、前記ポリアクリレート超吸収体は液体を吸収し得ると共に、水相及び油相の存在下で創傷治癒物質を放出し得ることが今回見出された。この放出はまた、制御された方法で長期間にわたって起こる。
【0050】
どのような場合も、前記ポリアクリレート超吸収体は繊維又は粒子又はゲルの形態で存在し得る。該ポリアクリレート超吸収体は乾燥した又は既に膨潤した形態で存在し得る。この膨潤した形態においては、前記ポリマーはゲル様の分離した繊維又は粒子として存在する。本発明によれば、この場合、該ポリアクリレート超吸収体の群からの親水コロイドは粒子の形態で存在し、これが水、生理食塩水、又はリンゲル液と混合されて該粒子が既に膨潤した形態で存在していてもよい。
【0051】
ここで特に好ましいのはポリアクリレート超吸収体、特に850μmから300μmの粒子の割合が少なくとも55%、特に少なくとも65%、最も特別には70%(EDANA 420.2.−02による測定)である粒子として存在する連結したポリアクリレート超吸収体であった。特に、超吸収ポリアクリレート類は850μm未満の粒子の割合が全粒子中で少なくとも85%、特に少なくとも90%、極めて特別には少なくとも95%(EDANA 420.2−02による測定)であるものも好ましい。
【0052】
本発明の親水コロイドによって放出され得る創傷治癒物質として、本発明の組成物または本発明の創傷接触層は、特にビタミン類又はプロビタミン類、カロチノイド類、鎮痛剤、消毒剤、止血剤、抗ヒスタミン剤、抗菌金属類又はそれらの塩類、植物由来の創傷治癒物質又は物質混合物、植物抽出物、酵素類、成長因子類、及び酵素阻害剤、並びにこれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1種の物質を含む。
【0053】
本発明の鎮痛剤としては、特に非ステロイド系鎮痛剤、特にサリチル酸、アセチルサリチル酸及びそれらの誘導体、例えばAspirin(登録商標)、アニリン及びそれらの誘導体、アセトアミノフェン、例えばParacetamol(登録商標)、アントラニル酸及びそれらの誘導体、例えばメフェナム酸、ピラゾール又はその誘導体、例えばメタミゾール、Novalgin(登録商標)、フェナゾン、Antipyrin(登録商標)、イソプロピルフェナゾン、極めて特別に好ましくはアリール酢酸類及びそれらの誘導体、ヘテロアリール酢酸類及びそれらの誘導体、アリールプロピオン酸類及びそれらの誘導体、並びにヘテロアリールプロピオン酸類及びそれらの誘導体、例えばIndometacin(登録商標)、Diclofenac(登録商標)、Ibuprofen(登録商標)、Naxoprofen(登録商標)、Indomethacin(登録商標)、Ketoprofen(登録商標)、及びPiroxicam(登録商標)が適している。
【0054】
本発明の成長因子としては、次のものが特に言及されるべきである:aFGF(酸性線維芽細胞成長因子)、EGF(上皮成長因子)、PDGF(血小板由来増殖因子)、rhPDGF−BB(ベカプレルミン)、PDECGF(血小板由来内皮細胞成長因子)、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)、TGFα(トランスフォーミング増殖因子アルファ)、TGFβ(トランスフォーミング増殖因子ベータ)、KGF(ケラチノサイト成長因子)、IGF1/IGF2(インスリン様成長因子)及びTNF(腫瘍壊死因子)。
【0055】
本発明のビタミン類又はプロビタミン類としては、脂溶性又は水溶性ビタミン類であるビタミンA、レチノイド類の群、プロビタミンA、カロチノイド類の群、特にβ−カロチン、ビタミンE、トコフェロール類の群、特にα−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、及びα−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、及びδ−トコトリエノール、ビタミンK、フィロキノン、特にフィトメナジオン又は植物由来のビタミンK、ビタミンC、L-アスコルビン酸、ビタミンB1、チアミン、ビタミンB2、リボフラビン、ビタミンG、ビタミンB3、ナイアシン、ニコチン酸及びニコチン酸アミド、ビタミンB5、パントテン酸、プロビタミンB5、パンテノール又はデクスパンテノール、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンH、ビオチン、ビタミンB9、葉酸並びにこれらの組み合わせが適している。
【0056】
本発明によれば、殺菌薬の、殺菌性の、静菌性の、防カビ性の、殺ウイルス性の、静ウイルス性の及び/又は一般的に殺微生物性の効果を有する薬剤が消毒剤として用いられるべきである。本発明によれば、レゾルシノール、ヨウ素、ポビドンヨード、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、過酸化ベンゾイル、又は塩化セチルピリジニウムは特に適している。さらに、抗菌金属類も特に消毒剤として用いられるべきである。抗菌金属類としては、特に銀、銅又は亜鉛、及びそれらの塩類、酸化物類又は錯体類がそれらの組み合わせ又は単独で特に用いられ得る。
【0057】
本発明との関連において、カモミール抽出物、ハマメリス抽出物、例えばアメリカマンサク、キンセンカ抽出物、アロエ抽出物、例えばアロエベラ、アロエ・バーバデンシス、アロエ・フェロックス、又はアロエ・ブルガリス、緑茶抽出物、海藻抽出物、海藻抽出物、例えば紅藻又は緑藻抽出物、アボカド抽出物、没薬抽出物、例えばコンモフォラ・モルモル、竹抽出物、及びこれらの組み合わせは、特に創傷治癒物質若しくは物質混合物又は植物抽出物として用いられる。本発明によると、植物の葉、花、茎、若しくは根の抽出物又はこれらの組み合わせはこのケースとして特に理解される。
【0058】
創傷治癒物質は個別に又は異なる創傷治癒物質の混合物として用いてもよいが、特に前記親水コロイドの重量に対し0.01から30重量%、好ましくは0.01から15重量%、極めて特別には0.1から10重量%の濃度で前記組成物中に含まれる。
【0059】
従って、本発明のさらなる態様においては、本発明の組成物は50から99重量%の親水性基剤を含み、0.5から40重量%の該親水性基剤が少なくとも1種のO/W乳化剤、特にイオン性O/W乳化剤、又はW/O乳化剤、特に非イオン性W/O乳化剤を含む。該親水性基剤は1から50重量%の分散した親水コロイド含み、該親水コロイドが少なくとも1種の創傷治癒物質を含み、該創傷治癒物質はビタミン類又はプロビタミン類、カロチノイド類、鎮痛剤、消毒剤、止血剤、抗ヒスタミン剤、抗菌金属類又はそれらの塩類、植物由来の創傷治癒物質又は物質混合物、植物抽出物、酵素類、成長因子類、及び酵素阻害剤、並びにこれらの組み合わせの群から選択される。
【0060】
さらに、上記の種類の医薬組成物を有する軟膏も本発明の対象である。特に本発明の対象は、50から99重量%の親水性基剤を含み、ここに1から50重量%の親水コロイドが分散しており、これが少なくとも1種の創傷治癒物質を有し、それによって0.5から40重量%の該親水性基剤が少なくとも1種乳化剤を含む軟膏である。一方で創傷滲出物を特定の量吸収し得、他方で液体のリザーバを形成する親水コロイドの存在により創傷のために湿潤な環境が提供されることから、この軟膏は特に中程度から重度の滲出を伴う創傷に特に適用され得る。該親水コロイドは液体ディスペンサーとして、及び同時に保湿剤として、並びに創傷治癒物質のための有効成分貯蔵所として働く。
【0061】
本発明の対象は特に、10重量%未満の水を有し、60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、0.5から50重量%の該親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む軟膏である。一方で創傷滲出物をこの軟膏により特定の量吸収し得、他方で液体のリザーバを形成する親水コロイドの存在により創傷のために湿潤な環境が提供されることから、この軟膏は特に中程度から重度の滲出を伴う創傷に適用され得る。該軟膏中で該親水コロイドは液体ディスペンサーとして、及び同時に保湿剤として働く。
【0062】
特に好ましい態様においては、前記軟膏は10重量%未満の水を有し、さらに50から99重量%の親水性基剤を含み、ここに1から50重量%の親水コロイドが分散しており、これが少なくとも1種の放出可能な創傷治癒物質を含み、該親水性基剤が10から40重量%の非極性脂肪類及び0.5から40重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む。特に好ましい態様においては、10重量%未満の水を有する本発明の軟膏は、さらに50から99重量%の親水性基剤を含み、ここに1から50重量%の親水コロイドが分散しており、これが1種の放出可能な創傷治癒物質を含み、該親水性基剤が50−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類及び/又はグリセロールオリゴマー類、特にジグリセロール又はトリグリセロール、の部分エステル類と、20−35重量%の非極性脂肪類と、0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤とを含む。特に、該消毒軟膏は水を含まない。
【0063】
前記消毒軟膏は好ましくは10重量%未満の水を有し、さらに60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、該親水性基剤が20−35重量%の非極性脂肪類及び0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む。特に好ましい態様においては、10重量%未満の水を有する本発明の軟膏は、さらに60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、該親水性基剤が50−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類及び/又はグリセロールオリゴマー類、特にジグリセロール又はトリグリセロール、の部分エステル類と、25−35重量%の非極性脂肪類と、0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤とを含む。特に、該軟膏は水を含まない。
【0064】
従って、10重量%未満の水を有し、60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、0.5から50重量%の該親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む組成物の創傷治療剤製造のための使用も、本発明の対象である。該薬剤は特に、火傷又は慢性創傷の治療のためにさらに好ましく用いられる軟膏であってよい。
【0065】
さらに、10重量%未満の水を有し、50から99重量%の親水性基剤を含み、ここに1から50重量%の親水コロイドが分散しており、これが少なくとも1種の放出可能な創傷治癒物質を含み、0.6から40重量%の該親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む組成物の、火傷又は慢性創傷の治療用消毒軟膏製造のための使用も、本発明の対象である。
【0066】
本発明のさらなる工夫によると、担体材料と医薬組成物とを含む創傷接触層も本発明の対象である。本発明の対象は、担体材料と;50から99重量%の親水性基剤を含み、ここに1から50重量%の親水コロイドが分散しており、これが少なくとも1種の創傷治癒物質を含み、0.5から50重量%の該親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む医薬組成物と;を含む創傷接触層である。
【0067】
特に、前記組成物は10重量%未満の水、特に5重量%未満の水を含み、極めて特別には水を含まない。本発明の対象は特に担体材料と;10重量%未満の水を有し、60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、0.5から50重量%の該親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む組成物と;を含む創傷接触層である。該担体材料により、該創傷接触層は創傷に対し均一に適用され得る、容易に適用可能な形態を得る。従って、該組成物は該担体材料の少なくとも片側に施されるか、又は何らかの他の方法により施されると規定され得る。該組成物を該担体材料の両側に施すか、又は該組成物を該担体材料に完全に染みこませることも規定され得る。ここで本発明の創傷接触層はさらに上記組成物の全ての好ましい特性又は特徴を含み得る。
【0068】
周知の創傷接触層と比較したさらなる利点は、創傷に対する適用時、通常これは手袋を装着した熟練した人員によって行われるが、本発明の創傷接触層は手袋に接着したり、又はくっ付いたりしない。従ってこれらの創傷接触層は特に安全に扱われる。
【0069】
特に好都合なのは、組成物、特に軟膏、クリーム、又はクリーム基剤を支持体上に少なくとも50g/m2、特に少なくとも100g/m2、特に好ましくは100から450g/m2、非常に特別に好ましくは100から300g/m2の量で施すことである。
【0070】
前記創傷接触層は特に好ましくは、担体材料と;10重量%未満の水を有し、組成物が60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、該親水性基剤が20−35重量%の非極性脂肪類及び0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む組成物と;を特徴とする。特に本発明の創傷接触層は好ましくは担体材料と10重量%未満の水を有する組成物とを含み、該組成物は60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、該親水性基剤が50−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類及び/又はグリセロールオリゴマー類、特にジグリセロール又はトリグリセロール類、の部分エステル類と、20−35重量%の非極性脂肪類と、0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤とを含む。特に、該組成物は水を含まない。
【0071】
前記組成物中における脂肪酸グルセリド類の存在により、創傷周囲の皮膚、いわゆる創傷周辺皮膚は、創傷の治癒を特に促進する治療成分を供給される。
【0072】
この場合、担体材料として様々な材料が使用され得る。ポリマーフィルム類及びフォイル類、ポリマー発泡体類、及び不織布類、並びに織編生地類が用いられ得ることが特に見出された。本発明の創傷接触層には不織布及び編まれた、縦編みされた、又は織られた生地等の織編生地が使用され得る。特に好ましくは、疎水性の編まれた、縦編みされた、又は織られた、液体を吸収しない生地がこの場合使用され得る。本発明の創傷接触層はポリアミド縦編み生地を担体材料として含む。
【0073】
織物担体材料が用いられる場合、該材料は特に開口部も備え得る。即ち、該担体材料は穴部を備え得るか、又は網目状であり得る。該担体材料は縦編みされた、織られた、又は編まれた生地であって、該材料が伸長されていない状態にある時に最大の内側幅が0.3から3.0mm、好ましくは0.5から2.5mm、及び特に好ましくは0.5から2.0mmである穴を有するものと特に規定される。この穴については例えば円形、楕円形、方形、六角形、又は八角形等のどのような形態を有してもよい。これらの縦編み生地は最小20g/m2から最大120g/m2の単位面積当たり質量を有する。
【0074】
少なくとも1種の創傷治癒物質が創傷接触層によって放出されると規定し得る。これには特に殺カビ剤、殺菌剤、又は抗菌効果を有する物質が含まれる。特別な態様においては、該創傷接触層は少なくとも一種の殺カビ剤、殺菌剤、又は抗菌物質をその一部として有する親水コロイドを含む。キトサン、銀、銀錯体類、銀塩類、亜鉛、亜鉛塩類、又は亜鉛錯体類は特に適している。
【0075】
前記創傷接触層は特に好ましくは担体材料と;10重量%未満の水を有する医薬組成物であって、該組成物が60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに少なくとも1種の放出可能な創傷治癒物質を含んだ5から40重量%の親水コロイドが分散しており、該親水性基剤が20−35重量%の非極性脂肪類及び0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤を含む医薬組成物と;を特徴とする。本発明の創傷接触層は特に好ましくは担体材料と10重量%未満の水を有する組成物とを含み、該組成物は60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、該親水性基剤が50−80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類及び/又はグリセロールオリゴマー類、特にジグリセロール又はトリグリセロール、の部分エステル類と、20−35重量%の非極性脂肪類と、0.5−30重量%の少なくとも1種の乳化剤とを含む。特に、該組成物は水を含まない。
【0076】
しかし、創傷治癒剤は前記担体材料に直接施されると規定されてもよい。特に好都合な方法では、該創傷接触層のさらなる態様において、抗菌金属、好ましくは銀又は銀塩類で被覆された不織布又は編まれた、縦編みされた、若しくは織られた生地等の織編生地が担体材料として使用される。このような担体材料が用いられる場合、前記組成物は該担体材料の第1面に、該金属又は金属塩に直接施すことが出来る。ここでは、該組成物が無水であると特に好都合である。
【0077】
前記担体材料が少なくともその第1面に組成物を含むということは、該組成物が金属を備えた該担体上に直接配置されること、又はまず連続的若しくは不連続な金属層が最初に第1面に施され、続けてここに該組成物が施されることのいずれをも意味すると理解される。特に前記創傷被覆材が創傷中に詰められる場合、該組成物を両面に施すことも望ましくあり得る。この場合、金属付与が両面に施されるか又は縦編み生地を封入していると好都合である
【0078】
ここで前記組成物は特に軟膏又はクリームであり得るが、前記金属を備えた前記担体材料と患者の創傷との間の媒介物として働く。このように、創傷の金属との直接的な接触及び特にそこへの付着が確実に回避され得る。この軟膏又はクリームはさらに創傷周辺皮膚に対し治療効果を示し得る。前記創傷接触層が前記組成物によって創傷と接触した際、前記金属、例えば銀は該組成物の媒介により前記創傷被覆材から特に創傷滲出液を介して放出され、該組成物を経由して創傷に到達する。この場合、単体の銀が該金属として用いられると特に規定され得る。該金属は前記担体上に被覆物として配置することが出来、又は該担体中に浸透させることが出来る。
【0079】
本発明はさらにカバー層と創傷接触層とを有する創傷被覆材を含む。ここで該創傷接触層は親水コロイドが分散する親水性基剤を有する組成物又は軟膏を含み、該親水性基剤は少なくとも1種の乳化剤を含む。該創傷接触層はさらに親水コロイドが分散する親水性基剤を含む組成物又は軟膏を含み、該親水コロイドは少なくとも1種の放出可能な創傷治癒物質を含み、該親水性基剤は少なくとも1種の乳化剤を含む。特に、本発明はカバー層と創傷接触層とを含んだ創傷被覆材を含み、該創傷接触層は50から99重量%の親水性基剤を含んだ医薬組成物を有し、該親水性基剤に1から50重量%の親水コロイドが分散しており、該親水コロイドが少なくとも1種の放出可能な創傷治癒物質を含み、0.5から50重量%の該親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む。特に、本発明はカバー層と創傷接触層とを含んだ創傷被覆材を含み、該創傷接触層は60から95重量%の親水性基剤を含んだ10重量%未満の水を有する組成物を含み、該親水性基剤に5から40重量%の親水コロイドが分散しており、0.5から50重量%の該親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む。この関連において、本発明の創傷被覆材はさらに、特に上記創傷接触層及び上記組成物の、全ての好ましい特性又は特徴を特徴とし得る。
【0080】
特に本発明はカバー層と創傷接触層とを含む創傷被覆材を含み、該創傷接触層は担体材料と;10重量%未満の水を有し、さらに60から95重量%の親水性基剤を含み、ここに5から40重量%の親水コロイドが分散しており、0.5から50重量%の該親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む組成物と;を含む。
【0081】
本発明のさらなる発展によれば、本発明はカバー層と、吸収層と、創傷接触層とを含む創傷被覆材も含み、該創傷接触層は10重量%未満の水を有する組成物を含み、これが60から95重量%の親水性基剤を含み、その0.5から50重量%が少なくとも1種の乳化剤を含み、該親水性基剤中に5から40重量%の親水コロイドが分散している。
【0082】
本発明のさらなる発展によれば、本発明はカバー層と、吸収層と、創傷接触層とを含む創傷被覆材も含み、該創傷接触層は10重量%未満の水を有する組成物を含み、これが50から99重量%の親水性基剤を含み、その0.5から50重量%が少なくとも1種の乳化剤を含み、該親水性基剤中に1から50重量%の親水コロイドが分散しており、これが少なくとも1種の放出可能な創傷治癒物質を含む。
【0083】
前記創傷被覆材は特にカバー層としてポリマーフォイル又はポリマーフィルムを含み得る。特に好ましいのは高い水蒸気透過性を有するポリマーフィルム類である。この目的には、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリエーテルポリアミドコポリマー、ポリアクリレート又はポリメタクリレートフィルム類が特に適している。ポリウレタンフィルム、ポリエステルウレタンフィルム、又はポリエーテルウレタンフィルム類は特にポリマーフィルム類として好ましい。しかし、15から50μm、特に20から40μm、極めて特別には25から30μmの厚さを特徴とするポリマーフィルム類は極めて特別に好ましい。前記創傷被覆材の該ポリマーフィルムの水蒸気透過性は好ましくは少なくとも750g/m2/24時間、特に少なくとも1000g/m2/24時間、極めて特別には少なくとも2000g/m2/24時間である(DIN 13726による測定)。
【0084】
さらに、本発明の創傷被覆材はいわゆるアイランドドレッシングとして提供されると規定され得る。この場合、前記創傷接触層は前記カバー層よりも小さい接触領域を有する。即ち、該創傷接触層はその周囲に沿ってカバー層により囲まれる。該カバー層は、患者の皮膚に該創傷被覆材の全体が接着又はくっ付くように、感圧接着剤を有するか又は接着剤と共に提供され得る。この接着剤は表面全体にわたり、又は特定の領域に不連続に施し得る。使用される接着剤は通常の接着剤、特にアクリレート系接着剤又はポリウレタン類に基づく感圧接着剤であってもよい。これは好ましくは特にポリウレタン類、特に水性ポリウレタン類に基づくゲル性接着剤である。特に好ましくは、これは特に水性アクリレート類に基づくヒドロゲル性接着剤である。
【0085】
本発明の改良によれば、前記創傷被覆材は接着剤で完全に被覆されたカバー層を有し得る。この接着剤を備えた担体材料の水蒸気透過性は、好ましくは少なくとも1000g/m2/24時間、特に好ましくは少なくとも1200g/m2/24時間、さらに極めて好ましくは2000g/m2/24時間である(DIN EN 13726による測定)。
【0086】
本発明の創傷被覆材は、例えば三角形、円形、楕円形若しくは方形、長方形又はあらゆる相称若しくは非相称型の、どのような幾何学的形状でも提供され得る。
【0087】
本発明の創傷被覆材は異なる機能を有し得る他の層を有するとさらに規定され得る。本発明のさらなる成果によれば、該創傷被覆材は少なくとも1つのさらなる層を有する。この層は好ましくは雑菌混入に対する防護のための放出層であってよく、使用に適した状態の該創傷被覆材において前記創傷接触層の創傷と接触する側に施される。該創傷被覆材は少なくとももう1つの層を該創傷接触層と前記カバー層との間に有することも規定され得る。このさらなる層は、例えばポリウレタンで形成された吸収性親水性発泡層等の吸収層であってよい。
【0088】
従って、10重量パーセント未満の水を有し、60から95重量パーセントの親水性基剤を含み、ここに5から40重量パーセントの親水コロイドが分散しており、0.5から50重量パーセントの該親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む医薬組成物の、特に火傷又は慢性創傷の治療用の創傷接触層又は創傷被覆材製造のための使用も本発明の対象である。
【0089】
本発明の特別な態様においては、本発明の創傷被覆材は包装内に配置される。この関連おいて、該包装は無菌包装であることが特に規定される。本発明のさらなる特別な態様においては、上記種類の創傷接触層及び別の創傷被覆材を含むシステムが単一包装内に配置されることが規定される。これによって該包装は無菌包装であることが特に規定される。このシステムの特に好ましい態様においては、それぞれの個別要素又は要素各群は該包装又は無菌包装内の個別内部包装内に有る。各内部包装は無菌内部包装であることも規定され得る。
【0090】
ここに記載された本発明の他の又は好ましい態様の特徴はその個々の他の又は好ましい態様に限定されるべきでないことがここで強調されるべきである。むしろ態様の組み合わせ、並びに/又は他の及び好ましい種類の個々の特徴の組み合わせは、同様に本発明の態様に含まれるべきである。本発明は次の図面の説明により制約されると理解されるべきでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0091】
以下、本発明を図面及び実施例を参照することにより例示する。図1は創傷接触層の断面を示し、図2は、創傷被覆材の断面を示し、図3は、他の創傷被覆材の断面を示している。
【実施例】
【0092】
【表1】

【0093】
組成物1の製造:
フェーズA(成分1から6)をおよそ75−80℃において溶解し、攪拌する。次にフェーズB(成分7、2−10mmの長さを有する個々の繊維として存在する繊維)を激しい攪拌によりフェーズA中に分散させる。該軟膏塊を激しく攪拌しつつ冷却し、微細結晶構造を生成させる。該組成物の滴点は46℃である(欧州薬局方 2002、方法2.2.17に従った測定)。
【0094】
【表2】

【0095】
組成物2の製造:
フェーズA(成分1から6)をおよそ75−80℃において溶解し、攪拌する。次にフェーズB(成分7、2−10mmの長さを有する個々の繊維として存在する繊維)を激しい攪拌によりフェーズA中に分散させる。該軟膏塊を激しく攪拌下しつつ冷却し、微細結晶構造を生成させる。該組成物の滴点は48℃である(欧州薬局方 2002、方法2.2.17に従った測定)。
【0096】
3)創傷接触層1
この創傷接触層は図1に示す構造を有する。従って、該創傷接触層(10)は疎水性の100%ポリエステル縦編み生地(Theodor Preuss GmbH&Co.KG、Ubstadt−Weiher−ドイツ)から形成される担体材料(1)を特徴とし、該担体材料は両側及び/又は両面が本発明の組成物(2a及び2b)で実施例#1と同じように被覆されている。異なるのは銀をドープしたCMC繊維の代わりに銀をドープした300μmの平均粒径を有するCMC粒子を用いたことである。従って、前記組成物は実施例#1と同様な親水性基剤(13)とCMC粒子(14)とから成り、該粒子は粒子量に対して10重量%の量の放出可能な銀イオンが充填されている。この担体材料は該組成物で完全に湿っており、各面への適用量は200g/m2である。該縦編み担体生地は63g/m2(非伸長時)の単位面積当たり質量を有し、100cm当たりおよそ40個の六角形の穴(図1に示さず)を特徴とする。該開口部の最大内側幅は2mmである。前記創傷接触層は良好な凝集を特徴とし、治療対象の創傷に特に良好に適用され得る。
【0097】
4)創傷接触層2
この接触層も図1と類似した構造を特徴とする。この創傷接触層(10)では、前記組成物は実施例番号1に示された成分を特徴とする。前記担体材料(1)はおよそ90g/m2(非伸長時)の単位面積当たり質量を有する疎水性の100%ポリアミド縦編み生地(Theodor Preuss GmbH&Co.KG、Ubstadt−Weiher−ドイツ)から成り、100cm当たりおよそ46個の六角形の穴(図1に示さず)を特徴とする。該開口部の最大内側幅は0.8−1.0mmである。前記組成物の被覆重量は240g/m2である。
【0098】
前記織編担体材料は該担体材料をガイドローラで親水性組成物1、2又は銀をドープしたCMC粒子を有する類似の組成物の温かい槽(40℃)を通して移動することにより該親水性組成物で被覆される。この槽の通過後、移った過剰量の組成物はスクイージによって取り除かれる。この被覆された材料は室温にされ、組み立てられ、包装され、そして滅菌される。
【0099】
5)創傷接触層3
この創傷接触層も図1と類似した構造を特徴とする。この創傷接触層(10)では、前記組成物は実施例番号2に示された成分を特徴とする。前記担体材料(1)はおよそ80g/m2(非伸長時)の単位面積当たり質量を有する疎水性の100%ポリアミド縦編み生地(Theodor Preuss GmbH&Co.KG、Ubstadt−Weiher−ドイツ)から成り、100cm当たりおよそ40個の六角形の穴(図1に示さず)を有する。この穴の最大内側幅は1.2−1.5mmである。前記組成物の被覆重量はおよそ330g/m2である。
【0100】
前記織編生地は前記担体材料をガイドローラで親水性組成物#2の温かい槽(60℃)を通して移動することにより該親水性組成物で被覆される。この槽の通過後、移った過剰量の組成物はスクイージによって取り除かれる。この被覆材料は室温にされ、組み立てられ、包装され、そして滅菌される。
【0101】
6)創傷被覆材1
図2にいわゆるアイランドドレッシングとしての本発明の創傷被覆材(20)を示す。該創傷被覆材はカバー層(24)及び創傷接触層(21)から成る。その一部で該創傷接触層は実施例番号2の組成物(23)と類似の組成物で被覆された疎水性ポリエステル繊維不織布である担体材料(22)から成る。異なるのはこの場合銀をドープしたアルギン酸粒子が用いられることである。従って、該組成物は親水性基剤(23)から成り、ここに放出可能なイオン性の銀が充填されたアルギン酸粒子が分散している。該組成物は該ポリエステル不織布を180g/m2の被覆量で完全に被覆する(ウォータージェット補強、単位面積当たり質量50g/m2)。該創傷接触層はポリアクリレート系接着剤(25)で表面を完全に被覆されたカバー層(24)で覆われる。該カバー層は1100g/m2/24時間の水蒸気透過性を有する30μm厚のポリウレタンフィルムで、該創傷接触層の周縁部全辺を超えて広がり、該創傷接触層が該カバー層の接着性辺縁部(26a、26b)により患者の皮膚に接着し得る。該創傷接触層(22)は同時に前記接着剤(25)によって該カバー層に固定される。
【0102】
7)創傷被覆材2
本発明によるさらなる創傷被覆材(30)を図3に示す。これは図2に示す創傷被覆材(20)と比較してさらなる吸収層(37)を有する。このさらなる吸収層(37)は単位面積当たり重量500g/m2、5mm厚の親水性連続気泡ポリウレタン発泡体からなる。該吸収層はアクリレート分散接着剤によりカバー層に固定される。該カバー層は25μm厚で1200g/m2/24時間の水蒸気透過性を有するポリウレタンフィルムから成る。創傷接触層(31)は実施例番号1の組成物(33)で被覆された(150g/m2)ポリアミド縦編み生地(32)から成る。このポリアミド縦編み生地(Theodor Preuss GmbH&Co.KG、Ubstadt−Weiher−ドイツ)は100cm当たり45個の六角形の開口部(図3には示さず)を特徴とする。最大内側幅は0.8から1.0mmの間である。単位面積当たり重量は86g/m2に達する。該創傷被覆材は特に重度滲出性創傷に対し用いられるべきである。該創傷被覆材は前記組成物中のトリグリセリド類の存在により創傷周辺皮膚を治療し、長期間にわたる使用の際にも創傷にくっ付かない。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】創傷接触層の断面図である。
【図2】創傷被覆材の断面図である。
【図3】他の創傷被覆材の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1から50重量%の親水コロイドが分散する50から90重量%の親水性基剤を含み、0.5から50重量%の前記親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む、創傷治療のための医薬組成物であって、前記親水コロイドが少なくとも1種の放出可能な創傷治癒物質を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記組成物が、10重量%未満の水を含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記親水性基剤が、クリーム、クリーム基剤、又は軟膏であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記親水コロイドが、粒子の形態で存在し、前記粒子が前記親水コロイド粒子の重量に対し10重量%未満の水含有量を有することを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記親水コロイドが、セルロース類又は誘導体若しくはそれらの塩と、アルギン酸類又はそれらの誘導体若しくは塩と、ポリアクリレート類又はそれらの塩との群から選択されることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記創傷治癒物質が、ビタミン類又はプロビタミン類、カロチノイド類、鎮痛剤、消毒剤、止血剤、抗ヒスタミン剤、抗菌金属類又はそれらの塩、植物由来の創傷治癒物質又は物質混合物、植物抽出物、酵素類、成長因子類、及び酵素阻害剤、並びにこれらの組み合わせの群から選択されることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記親水性基剤が、さらに20から80重量%のモノグリセリド類、ジグリセリド類、及び/若しくはトリグリセリド類、並びに/又はグリセロールオリゴマー類の完全若しくは部分エステル類を含むことを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記親水性基剤が、さらにワセリン類、ペトロラタム類、パラフィン油類、又はろう類の群からの10から30重量%の非極性脂質類を含むことを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記乳化剤が、イオン性O/W乳化剤又は非イオン性W/O乳化剤であることを特徴とする上記請求項のうち少なくとも1項に記載の組成物。
【請求項10】
上記請求項1から9の少なくとも1項に記載の組成物を含む軟膏。
【請求項11】
上記請求項1から9のいずれか1項に記載の組成物、又は請求項10記載の軟膏と、前記組成物又は前記軟膏のための担体材料(1)とを含む創傷接触層(10、21、31)。
【請求項12】
前記担体材料(1)が、不織布、編物、縦編み生地、又は織物であることを特徴とする請求項11記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項13】
前記担体材料(1)が、疎水性の編物、縦編み生地、又は織物から成ることを特徴とする上記請求項11又は12の少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項14】
前記担体材料(1)が、縦編みポリアミド生地であることを特徴とする上記請求項1から13の少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)。
【請求項15】
請求項11から14の少なくとも1項に記載の創傷接触層(10、21、31)とカバー層(24、34)とを含む創傷被覆材(20、30)。
【請求項16】
前記創傷被覆材が、さらに前記創傷接触層(10、21、31)に隣接する吸収層(37)、特に親水性ポリウレタン発泡体を含むことを特徴とする請求項15記載の創傷被覆材(20、30)。
【請求項17】
1から50重量%の親水コロイドが分散する50から99重量%の親水性基剤を含み、0.5から50重量%の前記親水性基剤が少なくとも1種の乳化剤を含む、創傷の、特に火傷又は慢性創傷の治療のための軟膏、創傷接触層、又は創傷被覆材を製造するための、特に上記請求項1から10のうち1項に記載の組成物の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−519917(P2009−519917A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544885(P2008−544885)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012102
【国際公開番号】WO2007/068492
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(500038020)パウル ハルトマン アクチェンゲゼルシャフト (64)
【Fターム(参考)】