説明

有効物質含有ポリマー粒子

本発明は、10-80重量%のアミノ基及び/またはカルボキシル基含有モノマーから成るビニルポリマーであって、ビニルポリマー1部あたり3-1000部の有効成分を含んでおり、20nm-8μmの範囲の粒度を有しており、ビニルポリマーの50重量%超が分子量100000ドルトン未満であるポリマーから成る、0-10のpH範囲の一部で不溶性であり該範囲の別の部分で可溶性である前記ビニルポリマーを含む有効成分含有ポリマー粒子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0-10 のpH範囲の一部で水不溶性であり該範囲の残りの部分で水溶性である20nm-8μmの粒度範囲をもつ有効成分含有ポリマー粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化重合によるプラスチック粒子の合成はより高いレベルまで開発されている。例えば、活性化表面をもつポリマー粒子は免疫診断に使用されている(e.g.DE 31 16 995)。校正標準となる粒度10μmの特別に均一な粒子は宇宙産業で商品化された最初の製品である(Vanderhoffら、US 5 106 903参照)。Ugelstadは、それ自体の体積の500倍の膨潤剤を吸収できる低分子量プラスチック粒子例えばPVCまたはポリスチレンの粒子を記載している(DE 2751867)。これらの粒子はまた作物保護剤のような有効成分で膨潤させることもできる。スチレン/アクリレート粒子基材のワクチンはUS 4225581に記載されている。特定のナノ粒子は血液-脳関門を通過することさえも可能である(US 6 117 454)。
【0003】
粒子担体が吸収されない環境はこれらの有効成分粒子に不利である。最近の特許出願に1つの例外が報告されている(未公開特許P103 53 989.1)。該特許は、(メタ)アクリレート末端基をもつグリコール酸及び乳酸の特定のオリゴエステルを含む0.01-20μmの粒度範囲のプラスチック粒子が生体吸収性有効成分担体の要件を満たすと報告している。この種の粒子は最初は水に不溶性である。しかしながら、例えば乳酸エステル基の加水分解後にこれらの粒子が水溶性成分に分解する。
【0004】
エマルションポリマーは医薬のコーティング剤として特に注目されてきた(DE 2135073)。これらのエマルションポリマーがカルボキシル基を含有するかアミノ基を含有するかに依存して、これらのポリマーから胃液抵抗性で腸液溶性の錠剤コーティング材料または胃液溶性の錠剤コーティング材料を製造することが可能である。
【0005】
これらのケースではエマルションポリマーが直接的に使用されるかまたは再分散性粉末として使用されている(DE 3208791)。
【0006】
この種の官能性アクリレート分散液は現在では皮膚治療系としても使用されている(DE 4310012)。ポリマー分散液と有効成分とを凝集させることによって製造したマイクロ粒子も記載されている(DE 4328069)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アミノ基含有(即ち、胃液溶性)またはカルボキシル基含有(即ち、腸液溶性)のエマルションポリマーは錠剤コーティングフィルムとして(即ち、粒子複合材料として)広く使用されているが、これらのエマルションポリマーを水性分散液即ち単一粒子の形態で有効成分担体として使用することは一般化していない。このような医薬担体としてはリポソームのほうが好ましいとされている。液体有効成分または分散液を標的に集中放出するための簡単な技術的方法はいまだ存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
3-1000部の有効成分と、10-80重量%のアミノ基及び/またはカルボキシル基含有モノマーから成る1部のビニルポリマーであって、pH範囲0-10の一部で不溶性であり該範囲の別の部分で可溶性であり、また、50重量%超が分子量100000ドルトン未満を有しているポリマーから構成された前記ビニルポリマーとを含む20nm-8μmの粒度範囲の有効成分含有ポリマー粒子が微粒有効成分担体として極めて適当であることがここに知見された。この場合、分子量20 000未満または5000未満を有しているビニルポリマーが特に好ましい。
【0009】
上記ビニルポリマーと有効成分とが60重量%超を占めるかまたは全部を構成するような有効成分含有ポリマー粒子が工業的に特に重要である。
【0010】
特に好ましい有効成分含有ポリマー粒子は、そのポリマー成分が、
A)20-90重量%のアクリル酸及び/またはメタクリル酸のアルキルエステルと、
B)80-10重量%のカルボキシル基及び/またはアミノ基含有モノマーと、
C)0-40重量%のA)及びB)と共重合可能な別のモノマーと、
から構成された粒子である。
【0011】
A)として挙げられるアルキルエステルは、アルキルラジカルに1-8個の炭素原子を有しているエステル、より特定的にはメチル及びエチルアクリレート及びメタクリレートである。適当な酸モノマーB)はアクリル酸、より特定的にはメタクリル酸である。別の酸モノマーはマレイン酸、フマル酸及びイタコン酸とこれらの酸のモノエステルである。
【0012】
適当なアミノ基含有モノマーB)は、例えば、ビニルイミダゾール、重合性カルボン酸のモノアルキルアミノ-及びジアルキルアミノアルキルエステルまたはモノアルキルアミノ-もしくはジアルキルアミノアルキルアミドであり、その例はジメチルアミノエチルメタクリレートである。
【0013】
適当なモノマーC)は極めて一般的なビニルモノマー、例えばヒドロキシエチルメタクリレートまたはスチレンである。
【0014】
ポリマー粒子は一般には、塩基性または酸性のモノマーB)を単独で含むであろう。
【0015】
モノマーA)、B)及びC)の量の比は有効成分の放出要件に従属する。
【0016】
特に重要な有効成分含有粒子は、ポリマー成分がモノマーA)及びB)だけから構成された粒子である。
【0017】
注目すべき例は、50重量%のエチルアクリレートと50重量%のメタクリル酸とから成るポリマー成分である。特に有利な有効成分含有ポリマー粒子は、そのポリマー成分がメタクリレートモノマーだけから構成された粒子、例えば40-80重量%のメチルメタクリレートと60-20重量%のメタクリル酸とから構成された粒子である。
【0018】
ここでもまた、有効成分を取込ませたポリマー粒子の溶解挙動が有効成分及びその官能基の疎水性にきわめて大きく左右されることに留意する必要がある。これは単純に有効成分/ポリマー粒子の量の比から生じる。
【0019】
これらの有効成分含有ポリマー粒子は一般に、1部のpH感受性ポリマーと3-1000部の有効成分とから構成されている。これは、ここで使用されるポリマー粒子がそれ自体の重量の1000倍までの有効成分を吸収できることを意味する。ポリマー粒子対有効成分の特に有利な重量比は、1:3-1:500の範囲であり、好ましくは1:5-1:300の範囲、特に1:10-1:200の範囲である。
【0020】
液体有効成分の場合、有効成分はポリマー粒子の溶媒または可塑剤の機能を果す。いくつかの場合、これは、pHが変化したときに有効成分非含有ポリマー粒子よりも速やかに水に溶解する有効成分含有粒子を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
ポリマー粒子は一般には例えばDE 2135073に記載されたようなフィード法による乳化重合によって合成される。
【0022】
この場合、粒度は乳化剤の初期存在量によって極めて容易にコントロールできる。
【0023】
この方法で20nm-500nmの範囲のポリマー粒子が得られる。
【0024】
シードラテックス法によればもっと大きい粒子が得られる(実施例2参照)。
【0025】
通例ではカルボキシル基含有エマルションポリマーは例えばラウリル硫酸ナトリウムのようなアニオン性乳化剤を用いて製造され、アミノ基含有ポリマーは例えばエトキシル化脂肪アルコールのようなカチオン性または非イオン性界面活性剤を用いて製造される。重合は一般に、不活性ガス例えば窒素下で行う。使用される開始剤は、ペルオキソ二硫酸アンモニウムまたは4,4'-ジシアノ-4,4'-アゾ吉草酸のナトリウム塩のような乳化重合に使用される系である。開始剤の使用量によってポリマーの分子量をコントロールしたい場合には、例えばt-ブチルペルピバレートのような有機過酸化物をフィードに使用することも可能である。
【0026】
しかしながら正規にはポリマーの分子量はメルカプタンのような重合調整剤を用いて調整する。この場合には、固体ポリマーを基準として0.1-10重量%、好ましくは0.3-5重量%の割合のアルカンチオール、特にチオグリコール酸またはメルカプトプロピオン酸のエステル、例えば2-エチルヘキシルチオグリコレートが挙げられる。
【0027】
もっと多い割合のメルカプタンを使用するときは特に、重合の完了後に減圧下のガス抜きによる脱臭を行うことが勧められている。大量の有効成分を吸収させるためにはポリマーの分子量のコントロールが重要である。このため、ポリマーの少なくとも一部が(例えば少なくとも50重量%、より好ましくは90重量%超) 100000ドルトン未満の分子量を有していなければならない。分子量(Mw)が30 000ドルトン未満または好ましくは20 000ドルトン未満であればもっと有利である。1000-10 000ドルトンの範囲、特に好ましくは2000-8000ドルトンの範囲の分子量が特に有利である。
【0028】
注目すべきは、これらの短鎖ポリマーが有効成分と共に、酸性pH範囲例えばpH2-3では極めて安定であるが中性からアルカリ性のpH範囲では(粒子の粒度及び有効成分含量次第で)数秒以内または数分の一秒以内に崩壊する粒子を形成することである。
【0029】
いくつかの環境では、不溶性pH範囲における有効成分含有ポリマー粒子の高い安定性が、有効成分を一種の溶媒または希釈剤として粒子内に実際に押込む浸透圧の問題である。
【0030】
例えばいったん水性分散液として形成された有効成分粒子は所与のpHで数ヶ月間安定である。粒子の粒度及び水相と粒子との密度の違いが原因で粒子の沈降またはクリーム化が生じたとしても、これらの有効成分含有ポリマー粒子は短時間の振盪によって再分散できる。
【0031】
有効成分の選択に関する制約はほとんどない。有効成分という用語は最も広義に医薬物質、化粧品有効成分、UV安定剤、香料油、獣医薬を意味し、また、きわめて一般的に生理的効果を示す物質を意味する。特に適当な有効成分は、水に対する溶解度の低い液状または油状の物質である。水に<50g/lまたは好ましくは<10g/lの溶解度を有している有効成分が特に注目に値する。固体は高温下でまたは溶媒例えば酢酸ブチルの存在下で取込ませることができる。通常は、有効成分をポリマー粒子に取込ませた後で溶媒を除去する(例えば、留去)。
【0032】
特にアミノ基または酸性基を有する有効成分に関しては、有効成分がpHをポリマー粒子の溶解範囲にすることのないように配慮しなければならない。有機溶媒中で溶解度の低い高融点物質は、制限付きでのみ有効成分として適当である。適当な場合には乳化剤の計量供給によって粒子を安定化しなければならない。しかしながら一般には乳化剤の添加は不要であるかまたは有効成分を取込ませるためにのみ必要である。
【0033】
有効成分/ポリマー比が極めて大きいときには、粒子が不溶なpH範囲、例えばカルボキシル基含有ポリマー粒子の場合にはpH3-4の範囲で、少量例えばppm範囲のバッファで水相を緩衝するのが有利であろう。しかしながら通常はバッファを全く使用しない。
【0034】
有効成分は一般に水性分散液としてポリマー粒子に取込まれる。
【0035】
組込みは撹拌装置を使用して高温で行うのが好ましい。
【0036】
液体の組込みを単なる振盪によってまたは好ましくはオーバーヘッドミキサーを使用して室温で行うこともできる。大きい剪断力の使用(ターボミキサーなど)は避けるべきである。
【0037】
本発明のpH-感受性ポリマー/有効成分の組合せが極めて安定であることに再度留意されたい。このため、有効成分がある程度まで浸透性希釈剤としてポリマー粒子によって完全に吸収されるからである。
【0038】
このような理由で、極めて微細な有効成分含有ポリマー粒子(例えば50nm径)に到達することも可能である。このような粒度はたとえ高剪断力を用いたとしても単なる分割によって到達することはできない値である。
【0039】
有効成分含有ポリマー粒子は通常は、水性分散液として直接的に使用されるであろう。しかしながらまた、特に固体有効成分の場合には、例えば有効成分含有ポリマー分散液を凍結乾燥し、このようにして微細な有効成分含有ポリマー粒子を固体として得ることも可能であり、このような粒子は有効成分を特に迅速に放出するために多様な配合物に使用できる。しかしながら通常は、有効成分含有ポリマー粒子は有効成分含有ポリマー粒子1部あたり0.25-999部の水と共に使用される。即ち、含水率20-99.9重量%、好ましくは45-95重量%の範囲の水性分散液として使用される。適当な場合には、例えばエチルp-ヒドロキシベンゾエートのような防腐剤を添加する。沈降またはクリーム化を生じた有効成分含有ポリマー分散液を振盪によって適宜再ホモジナイズすることは容易であるが、例えば、有効成分含有ポリマー粒子の密度を水相の密度に合せて調整するかまたは水溶性増粘剤で水相の粘度を向上させることによって粒子の沈降またはクリーム化を防止する措置を最初から講じることも可能である。
【0040】
有効成分含有ポリマー粒子の粒度は主として、ポリマー粒子の粒度と有効成分/ポリマー比とによって決まる。例えば、7倍量の有効成分を吸収する粒度100nmのポリマー粒子の質量(mass)は8倍に増加するであろう。これは、有効成分とポリマー粒子とが同等の密度であるならば粒径が倍増して200nmになることを意味する。これに準じて、総質量の125倍増に対応する124倍量の有効成分を吸収する粒子(100nm径)は粒径500nmに拡大するであろう(実施例2参照)。
【0041】
上述のように、pH-感受性のコントロールされたポリマー粒子は、自身の体積の1000倍という多量の有効成分を吸収でき、これは粒度の10倍増に相当する。
【0042】
従って原則的に0.02-20μmの範囲の有効成分含有ポリマー粒子を得ることができ、0.04-12μmの粒度範囲が好ましく、0.05-8μmの範囲が特に好ましい。>2-<8μmの範囲の有効成分含有ポリマー粒子によって特に有利な有効成分/ポリマー比に到達できる。有効成分含有ポリマー粒子は滑らかな表面をもつ正規の球形である。粒子は好ましくは、凝固しないで自由移動できる単一粒子であり、内部に有効成分が均一に分散している。粒子は好ましくは単分散性である。即ち、全粒子の80重量%超が同じ粒径を有している。更に、バイモードまたはマルチモードの粒度分布をもつ有効成分含有ポリマー粒子を使用することも可能である。これは、第一には水性分散液中の粒子を最小含水率で使用したい場合に有利であり、第二には例えば異なる放出条件の複数の異なる有効成分含有ポリマー粒子の分散液を調製したい場合にこの選択肢が適当である。
【0043】
これらの有効成分含有ポリマー粒子の場合、一般には粒子が可溶性になる適正なpHに到達したときに有効成分の迅速な放出が生じる。未公開特許出願P 10353989.1に記載されているような架橋性または疎水性基の漸進的加水分解に伴う有効成分の緩徐な放出は本発明に一致しない。
【0044】
これは、本発明の有効成分含有ポリマー粒子がまた、ポリマー粒子中の一般式
(I) (CH2=CR1-CO-(O-CHR2-CO-)m-O-)n-R3
[式中、R1及びR2は互いに独立にHまたはCH3であり、
mは1-20であり、
R3は、n=1の場合には炭素原子数1-18の置換または未置換のアルキルラジカル、n=2の場合には炭素原子数2-18の置換または未置換のアルキリデンラジカルを表す]のモノマー含量が1重量%未満であるという特徴を有していることを意味する。
【0045】
極めて特別に好ましい有効成分含有ポリマー粒子はポリマー成分が上記モノマー(I)を全く含まない粒子である。
【0046】
新規な有効成分含有ポリマー粒子の顕著な利点
有効成分含有粒子を構築するポリマーの化学組成が医薬配合物の錠剤コーティング材料として数十年来公知であることは有効成分含有ポリマー粒子の広範な利用のために特に重要である。何故なら、これらのポリマーが体内で辿る経路が十分に研究されているからである。この場合に使用するポリマーと錠剤コーティング材料として使用されている製品との本質的な違いは分子量である。有効成分含有プラスチック粒子のほうが短いポリマーを使用する。このような短い鎖のほうが分解が容易であることは経験から予測できる。さらに付け加えるべき点は、ポリマー粒子が大量の有効成分を吸収できるので、有効成分に対するポリマーの割合が極めて小さく、例えば1重量%未満でよいことである(実施例2参照)。
【0047】
また、有効成分含有プラスチック粒子が初期pH範囲、例えばカルボキシル基含有ポリマー粒子の場合にはpH3で極めて安定でありながら、pHが7に変化したときに実質的に瞬時に有効成分を放出することも注目すべきである。
【0048】
干渉しあう2種類の有効成分を含む2種類の異なる有効成分含有ポリマー粒子は、これらの有効成分が水不溶性であるならば同じ水性分散液中で使用することが原則的に可能であり、また、分散液の乳化剤含有量を極めて少ない量にすることが可能である。2種類の有効成分含有ポリマー粒子はもちろん別々に製造する必要がある。
【0049】
また、通常は室温で単なる振盪によって有効成分をポリマー粒子に取込ませることができるので、有効成分含有ポリマー粒子の調製に極めて高感受性の有効成分を使用できることも重要である。
【0050】
特に強調すべき付帯事項は、これらの有効成分含有ポリマー粒子が液体及び油の投与に極めて好適なことである。このようにして、一方では、分散液の所定の希釈によって有効成分の量を測定容易な所定の量(10滴、計量スプーン1杯)に調整することが可能になり、他方では、水不溶性の液体有効成分及びエキス(essence)の簡単な無アルコール投与が初めて可能になる。
【0051】
本発明はまた、10-80重量%のアミノ基及び/またはカルボキシル基含有モノマーから成るビニルポリマーであって、0-10のpH範囲の一部で不溶性であり前記範囲の別の部分で可溶性であり、50重量%超が分子量100000ドルトン未満のポリマーから構成された前記ビニルポリマーを含む水性ポリマー分散液を、ポリマー1部あたり3-1000部の有効成分で膨潤させることによって20nm-8μmの粒度範囲の有効成分含有ポリマー粒子を形成させる段階と、これらの有効成分含有ポリマー粒子を投与する段階と、を含む有効成分の投与方法を包含する。
【0052】
実施例
以下の実施例は本発明の代表例であり、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0053】
実施例D1-D3は、pH感受性ポリマー分散液、例えばカルボキシル基含有ポリマーの合成を記載する。
【0054】
実施例1-4は、有効成分含有ポリマー粒子の製造を記載し、
実施例5は、これらの粒子からの有効成分の放出を記載する。
【0055】
実施例D1
均一粒度のカルボキシル基含有ポリマーの微粒子分散液の合成
撹拌反応装置で0.1gのラウリル硫酸ナトリウムを500gの水に導入する。
【0056】
50gの1%ペルオキソ二硫酸カリウム水溶液を添加し、次いで、
105gのメチルメタクリレート、
105gのメタクリル酸、
0.6gの2-エチルヘキシルチオグリコレート、
0.2gのラウリル硫酸ナトリウム、
2gの水、
の混合物を、アルゴン下、80℃で3時間を要して計量供給する。次に混合物を80℃でさらに1時間撹拌する。細目濾布で濾過後に微粒子分散液が得られる。固体含有率:27%、pH3、粒径0.15μm。
【0057】
実施例D2
シードラテックス法による高い膨潤性のカルボキシル基含有ポリマー分散液の合成
実施例D1の装置で20gの分散液D1を600gの1%ペルオキソ二硫酸カリウム水溶液に導入する。75℃で85gのメチルメタクリレート、85gのメタクリル酸、7gのブタンチオール、0.2gのラウリル硫酸ナトリウム及び3.7gの水の混合物をこの分散液に計量供給する。
【0058】
供給の終了後、40gの水中に0.14gのペルオキソ二硫酸カリウム及び0.12gのラウリル硫酸ナトリウムを含む40℃に加温した溶液を計量供給する。次いで混合物を80℃で1時間撹拌する。
【0059】
濾過後に固体含有率21%、pH3、粒度約0.5μmの分散液が得られる。ポリマー粒子は極めて均一である。粒子は沈降するが振盪によって容易に元に戻る。90%超のポリマーの分子量が10000ドルトン未満である。
【0060】
pH変化に伴う溶解テスト:
分散液D2をpH7.0のリン酸塩バッファ溶液に滴下すると粒子は30秒以内に完全に溶解する。
【0061】
実施例D3
高い膨潤性のカルボキシル基含有ポリマーの微粒子分散液の合成
実施例D1の方法に準じて、525gの水中の0.24gのペルオキソ二硫酸カリウムと0.11gのラウリル硫酸ナトリウムとの溶液を調製する。この溶液に74gのメチルメタクリレート、73gのメタクリル酸、0.28gの2-エチルヘキシルチオグリコレート、0.2gのラウリル硫酸ナトリウム及び2gの水の混合物3gを80℃で計量供給する。次いで混合物の残りに6.5gのブタンチオールを添加し、この混合物を溶液に2時間を要して添加する。
【0062】
最後に混合物を減圧下(p=500ミリバール)で脱臭する。
【0063】
固体分23.4%、pH3の微粒子分散液が得られる。
【0064】
粒度約0.1μm。
【0065】
pH7.0のリン酸塩バッファに滴下すると粒子は1秒で溶解する。
【0066】
モデル有効成分として2-フェニルプロパノール(1)の取込み
実施例1
有効成分/ポリマー比=14.3/1
50mlの試験壜に入れた2.0gの分散液D2(0.42gのポリマーを含む)、0.1gのラウリル硫酸ナトリウム、40gの水及び6.0gの2-フェニルプロパノール(1)に車輪回転を4時間作用させる。粒度約1.2μmの安定な分散液が得られる。
【0067】
実施例2
有効成分/ポリマー比=128.6/1
0.125gの2-フェニルプロパノール(1)と0.00875gのポリマーとを含む実施例1の有効成分含有分散液1.0gに10gの水及び1.0gの2-フェニルプロパノール(1)を合わせて車輪回転を4時間作用させる。粒度2.5μm(均一)の安定な分散液が得られる。
【0068】
分散液は室温で14日間静置後に沈降した。短時間の振盪によって均質分散液が再度得られる。
【0069】
実施例3
有効成分/ポリマー比=40.8/1
0.109gの分散液D3に7.8gの水中の5mgのラウリル硫酸ナトリウム、及び、1.016gの2-フェニルプロパノール(1)を合せて車輪回転を2時間作用させる。有効成分含有ポリマーの安定な微粒子分散液が得られる。
【0070】
実施例4
有効成分/ポリマー比=3/1
1.2gの分散液D1に10mgのラウリル硫酸ナトリウム、7.0gの水及び1.0gの2-フェニルプロパノール(1)を合せて車輪回転を作用させる。安定な微粒子分散液が得られる。
【0071】
実施例5
pH変化による有効成分の放出
実施例1で得られた粒度1.2μmの有効成分含有ポリマー粒子をpH7.0のリン酸塩バッファ溶液に滴下する。粒子は1秒以内に溶解する。実施例2で得られた粒度2.5μmの有効成分含有ポリマー粒子を同様に試験する。これらの粒子もpH7.0で1秒以内に溶解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10-80重量%のアミノ基及び/またはカルボキシル基含有モノマーから成るビニルポリマーであって、0-10のpH範囲の一部で不溶性であり前記範囲の別の部分で可溶性であり、
-ビニルポリマー1部あたり3-1000部の有効成分を含んでおり、
-20nm-8μmの範囲の粒度を有しており、
-ビニルポリマーの50重量%超が分子量100000ドルトン未満のポリマーから成る前記ビニルポリマーを含む有効成分含有ポリマー粒子。
【請求項2】
前記粒子が20-99.9重量%の含水率を有している水性分散液の形態である請求項1に記載の有効成分含有ポリマー粒子。
【請求項3】
ポリマー成分が、
A)20-90重量%のアクリル酸及び/またはメタクリル酸のアルキルエステルと、
B)80-10重量%のカルボキシル基及び/またはアミノ基含有モノマーと、
C)0-40重量%のA)及びB)と共重合可能な別のモノマーと、
から成る請求項1または2に記載の有効成分含有ポリマー粒子。
【請求項4】
ポリマー成分の90重量%超が、分子量20 000ドルトン未満のポリマーから成る請求項1から3のいずれか一項に記載の有効成分含有ポリマー粒子。
【請求項5】
水に対して<10g/lの溶解度を有している液状または油状物質が有効成分として使用される請求項1から4のいずれか一項に記載の有効成分含有ポリマー粒子。
【請求項6】
10-80重量%のアミノ基及び/またはカルボキシル基含有モノマーから成るビニルポリマーであって、0-10のpH範囲の一部で不溶性であり前記範囲の別の部分で可溶性であり、50重量%超が分子量100000ドルトン未満のポリマーから構成される前記ビニルポリマーを含む水性ポリマー分散液を、ポリマーが不溶性のpH範囲において、ポリマー1部あたり3-1000部の有効成分で膨潤させることによって20nm-8μmの粒度範囲の有効成分含有ポリマー粒子を形成させる段階と、これらの有効成分含有ポリマー粒子を投与する段階とを含む有効成分の投与方法。

【公表番号】特表2007−531720(P2007−531720A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505517(P2007−505517)
【出願日】平成17年4月2日(2005.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003493
【国際公開番号】WO2005/097197
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】