説明

有害な炎症の軽減のためのオスミウム化合物

オスミウム含有化合物によるスーパーオキシド・ラジカル・アニオンの不均化の触媒反応によって、インプラントあるいは移植片に対する、または外傷あるいは感染症後の有害な炎症反応を減少させる。スーパーオキシドジスムターゼ欠損、または変異を原因とする疾患の、スーパーオキシド・ラジカル・アニオンを不均化するオスミウム含有化合物、あるいは炭酸ラジカル・アニオンの崩壊を触媒するN−オキシド重合体による治療も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、医療機器と製造方法、および前述の機器の使用一般に関する。特に本発明は、インプラント、移植片、および包帯剤の薬学的に受容可能なオスミウム化合物由来の処理、被覆加工、あるいは製造に関する。本発明はまた、インプラント、移植、および包帯剤の薬学的に受容可能なN−オキシド重合体由来の処理、被覆加工、あるいは製造に関する。
【背景技術】
【0002】
インプラントと移植片に対する有害な炎症反応。インプラントまたは移植片の免疫機構による異物としての認識は、宿主組織との接触面へのキラー細胞の動員を誘発する。これらの細胞は、宿主組織および/また移植片の細胞を破壊する化学兵器を放出する。この破壊は、破壊された細胞が走化性分子と残骸を放出し、その放出が更に動員細胞の数を増やすという、増幅されたフィードバックループを伴う過程である。
【0003】
外傷や感染後の有害な炎症。例えば皮膚、口、のど、直腸、生殖器、耳、鼻、あるいは目といった、組織の正常な細胞が破壊される炎症が、病原体の感染後も持続する場合がある。このような炎症は、繊維性組織または瘢痕組織の形成を避けるために可能な限り早く終わらせるのが望ましい。走化性分子と残骸は、外傷によって破壊された細胞や炎症細胞の化学兵器で破壊された細胞によって放出され、これらは病原体が感染した部位で持続する可能性がある。この解放は、更に炎症キラー細胞が動員される、増幅されたフィードバックループを導く。この細胞キラー化学物質の更なる放出、より多くの細胞、更に多くの走化性分子と残骸の放出は、更に多くの炎症キラー細胞を誘引する。その結果、生理的に無機能な繊維性組織または瘢痕組織の形成、そして重傷の場合には死亡する可能性がある。外傷は、過剰な熱や化学物質、あるいは日光といった、多数の細胞が破壊される任意の事象である場合がある。
【0004】
スーパーオキシドジスムターゼの欠損あるいは変異に関連する疾患。キラー細胞の蓄積の結果生じる炎症疾患とその結果生じるO・−の産生の増加の他に、公表されている医学文献は、多くの場合変異によって生じるスーパーオキシドジスムターゼの欠損あるいは異常、スーパーオキシドジスムターゼの発現に関連する、あるいはその結果生じる疾患の証拠も報告している。これらの疾患は、神経変性障害、ルー・ゲーリグ病として知られる筋萎縮性側索硬化症、アルコール性肝臓疾患、心臓血管疾患、クローン病を含む炎症性腸疾患、ペイロニー病、および接触性皮膚炎を含む。スーパーオキシドジスムターゼの欠損や正常以下の活性はO・−濃度の上昇をも生じ、拒絶反応の増幅された細胞破壊炎症サイクルを引き起こす場合がある。従って、これらは本発明のオスミウム化合物によっても治療される可能性がある。
【0005】
冠状動脈ステント、有害な炎症、および再狭窄。血管ステントはインプラントの典型例である。冠状動脈ステントのインプラントは、心臓への不十分な血液供給を緩和するために行われる。冠状動脈ステントのインプラントを受けた一部の患者は、ステントの部分の冠状動脈の内腔が狭くなる、動脈のステント再狭窄を発症する。(例として、V. RajagopalおよびS.G.Rockson、「Coronary restenosis: a review of mechanism and management」The American Journal of Medicine,2003,115(7),547−553を参照のこと)。冠状動脈幹部を含むインプラントにマクロファージと好中球が存在していることが記載されている。(例として、Welt等、「Leukocyte recruitment and expression of chemokines following different forms of vascular injury」Vasc. Med. 2003, 8(1),1−7を参照のこと)。単球/マクロファージ系統の造血細胞が、損傷形成の過程で内膜に存在しているということも報告されている。更に、マクロファージは、熱による血管損傷後に内膜の筋繊維芽細胞の前駆体になると示唆されている(Bayes−Gems等、「Macrophages, myofibroblasts and neointimal hyperplasia after coronary artery injury and repair」Atherosclerosis, 2002, 163(1), 89−98))。本発明はこれに限定されないが、報告された理論とモデルによれば(例として、Jeremy 等、「Oxidative stress, nitric oxide, and vascular disease」 J. Card. Szzrg. 2002, 17(4) 324−7、Jacobson等、「Novel NAD(P)H oxidase inhibitor suppresses angioplasty−induced superoxide and neointimal hyperplasia of rat carotid artery」 Circ. Res. 2003, 92(6), 637−43、Bleeke 等、「Catecholamine−induced vascular wall growth is dependent on generation of reactive oxygen species」 Circ. Res. 2004, 94(1), 37−45を参照)、心臓血管疾患の主要な危険因子は共通してO・−である。O・−が危険因子である心臓血管疾患は、バルーン血管形成後の再狭窄、アテローム発生、再灌流傷害、狭心症、および静脈移植血管の障害を含む。
【0006】
四酸化オスミウム、OsOの応用。四酸化オスミウム溶液は、特に顕微鏡試料の調製の生物学的染色として、広く用いられる。医学においては、関節の疾患組織の化学的除去である滑膜切除のために、関節炎の関節に注入される。
【0007】
化学的な非外科的滑膜切除、OsOの注入による関節炎の関節疾患組織の化学的除去。関節炎の関節疾患組織の化学的除去である化学的滑膜切除は、1953年以降臨床的に実践されてきた。この処置は70編以上の論文や総説といった医学文献に記述されている。この処置では、オスミウム酸としても知られるOsOを罹患関節に注入する。例として、(a) C. J. Menkes、「Is there a place for chemical and radiation synovectomy in rheumatic diseases?」 Rheumatol. Rehabil. 1979,18(2), 65−77、(b) Combe等、「Treatment of chronic knee synovitis with arthroscopic synovectomy after failure of intraarticular injection of radionuclide.」 Arthritis Rheum. 1989, 32(1), 10−14、(c) WilkeとCruz−Esteban、「Innovative treatment approaches for rheumatoid arthritis. Non−surgical synovectomy」 Baillieres Clin. Rheurrratol. 1995, 9, 787−801、(d) Hilliquin等、「Comparison of the efficacy of non−surgical synovectomy (synoviorthesis) and joint lavage in knee osteoarthritis with effusions」 Rev. Rhum. Engl. Ed. 1996, 63(2), 93−102、(e) Bessant等、「Osmic acid revisited: factors that predict a favorable response」 Rheumatology (Oxford). 2003, 42(9), 1036−43を参照のこと。
【0008】
オスミウム化合物の薬学的応用。Hinckley米国特許番号第4,346,216号は、四酸化オスミウムと炭水化物とのオスミウム(VI)化合物を反応させ、その結果生じたオスミウム炭水化物複合体を重金属中毒の治療のために、哺乳類の関節炎の関節治療に染色またはX線診断の造影剤として医薬組成物中で使用した。Bar−ShalomとBukh米国特許番号第5,908,836号および米国特許番号第5,916,880号は、皮膚の局所的な治療、しわの治療または予防、およびX線の造影剤に、オスミウムの硫酸化単糖塩の利用を提案した。
【0009】
刺激されたマクロファージからのO・−放出阻害における、オスミウム複合体の相対的不活性。Mirabelli等、「Effect of Metal Containing Compounds on Superoxide Release from Phorbol Myristate Stimulated Murine Peritoneal Macrophages: Inhibition by Auranofin and Spirogermanium」 The Journal of Rheumatology, 1988, 15(7), 1064−1069は、一連の金属複合体のマクロファージの呼吸バーストにおけるO・−放出阻害能を調査した。O・−の放出を10μMの濃度で完全に阻害した2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノセート−S(トリエチルホスフィン)の金複合体や(N,N−ジメチルアミノプロピル)−2−アザ−8,8−ジメチル−8−ゲルマノスピロ−(4,5)−デカンのゲルマニウム複合体と異なり、調査を行った三つのオスミウム複合体は、筆者によれば、効果がなかった。10μMの濃度で、ビス(ビピリジル)ジクロロオスミウム(II)による阻害は2±2%、ジクロロビス(フェナントロリン)オスミウム(II)による阻害は24±4%、10倍濃度が高い100μMの濃度でのオクタアミノ二硝酸塩−(μ−ニトリド)−ジオスミウム三硝酸塩による阻害は29±6%であった。
【0010】
N−オキシド重合体。N−オキシドは、窒素と共有的に結合する酸素を有し、酸素は窒素以外の他の原子とは共有結合していない有機化合物である。N−オキシド中の窒素は部分的あるいは全体的にプラスに帯電し、酸素は部分的あるいは全体的にマイナスに帯電している。N−オキシド中の窒素は、二重結合を二つの結合と数えて、四つの結合で近隣の原子と結合されている。官能基IとIIはN−オキシド官能基である。ピリジン−N−オキシド、III、は芳香族N−オキシドの例である。N−オキシドは窒素酸化物とは異なり、不対電子一つを有するフリー・ラジカルである。例えば、TEMPOL、IV、は窒素酸化物である。窒素酸化物中の窒素は、三つの結合のみで近隣の原子と結合されている。
【0011】
有害な石英粒子のポリ−2−ビニルピリジン−N−オキシドでの被覆加工は、珪肺症の原因となる毒性を阻害し、また、肺上皮細胞での酸化的DNA障害の毒性も阻害する。(R.P.F. Schins等、「Surface modification of quartz inhibits toxicity, particle uptake, and oxidative damage in human lung epithelial cells」 Chenr. Res. Toxicol. 15, 1166−1173 (2002)、A. M. Knaapen 等、「DNA damage in lung epithelial cells isolated from rats exposed to quartz: Role of surface reactivity and neutrophilic inflammation」 Carcinogenesis (Oxford) 23(7), 1111−1120 (2002)、 S. Labor, Z. Anca および E. Zugravu、「In vivo action of quartz on alveolar macrophage lipid peroxides」 Archives of Environmental Health 30 (10), 449−501 (1975))。
【0012】
ポリ−2−ビニルピリジン−N−オキシドは、ヒトの珪肺症治療への投与薬剤として利用されてきた。治療において、重合体の用量は、例えば吸引、静脈内あるいは筋肉への注射によって投与された。(例として、K.V. Glotova等、「Results of a clinical trial of polyvinoxide in silicosis」のMedline要旨、Gig. Tr. Prof. Zabol. 1981 (8), 14−7 ( PMII〜: 7026373)、J.D. Zhao, J. D. Liu および G. Z. Li 、「Long−term follow−up observations of the therapeutic effect of PVNO on human silicosis」Zetrtralbl. Bakteriol. Milkrobiol. Hyg. [B]. 1983 178(3), 259−62. (PMID: 6659745)、F. Prugger, B. MannerおよびH. W. Schlipkoter 「Polyvinylpyridine N−oxide (Bayer 3504, P−204, PVNO) in the treatment of human silicosis」 Wien. Klin. Wochenschr. 1984. 7, 96(23), 848−53 (PMID: 6396971)、D. M. Zislin等、「Therapeutic effectiveness of polyvinoxide in silicosis and silicotuberculosis」 Gig. Tr. Prof. Zabol. 1985, (11), 21−5, (PMID: 4085887)、T. Gurilkov および M. Stoevska 「Inhalation treatment of silicosis with Kexiping」 Probl. Khig. 1989, 14, 161−6(PMID: 2635309)を参照のこと)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の簡単な要旨)
本発明で開示されるように、発明者等はOsOとスーパーオキシド・ラジカル・アニオンの不均化の非常に効果的な触媒といった、特定のオスミウム化合物を発見した。OsOは、特にアルケンのジヒドロキシル化における有機合成化学に用いられる試薬である。オスミウムは、本発明によると有害な炎症の可能性を低減させる触媒作用を含む。有害な炎症は、例えば、移植片の健康な組織、あるいは移植片近くの宿主組織の細胞の破壊の結果生じる場合がある。このような炎症は、炎症細胞によって消費あるいは産生される化学物質によって、埋め込まれたセンサーまたはモニターで測定される分析物の濃度に望ましくない変化を生じる可能性がある。更に有害な炎症は、免疫機構のキラー細胞の化学兵器から細胞を守るための、移植されたサック中の細胞または組織あるいは臓器への栄養物および/またOの流量の減少を引き起こす可能性がある。サック中の細胞、または組織または臓器は、人体の失われたあるいは障害を受けた機能にとって代わることができる。有害な炎症反応後サック上で増殖する付着性の炎症細胞または繊維化した、あるいは傷跡が残る細胞が、サックの中の細胞を飢えさせる可能性がある。
【0014】
正常組織の多数の健康な細胞が破壊される炎症の再発を頻繁に伴う有害な炎症は、フィードバックループの分断によって回避、あるいは低減される。フィードバックループを構成する要素は、マクロファージや好中球のような炎症キラー細胞による細胞破壊ラジカル前前駆体の放出、破壊された細胞による走化性分子および/また残骸の放出、そして更なるキラー細胞の動員、更なる細胞破壊ラジカル前前駆体の放出を含む。
【0015】
医療的なまた美容のためのインプラントとここで呼ばれる「インプラント」は、広く利用され、毎年新規のインプラントが導入されている。インプラントの例は、血管インプラント、耳あるいは蝸牛インプラント、整形外科用インプラント、骨プレートとねじ、人工関節、乳房インプラント、人工喉頭インプラント、顎顔面補綴、歯科インプラント、ペースメーカー、細動除去器、ペニスインプラント、薬剤ポンプ、薬剤送達デバイス、センサーとモニター、神経刺激装置、人工尿道括約筋のような失禁緩和デバイス、眼内レンズ、人体の失われた、あるいは損なわれた機能にとって代わるような細胞や組織を中で増殖させる、水、電解質、グルコースおよび酸素透過性サックを含む。いくつかの特性の第一として、本発明は、移植片近くの健康な細胞が破壊される有害な炎症反応の回避あるいは低減する材料と方法を提供する。第二の特徴として、炎症反応に関連して、化学物質あるいは生化学物質の局所的な消費または局所的な産生が動員された炎症細胞によって変化してしまう為に起こる、あるいはこれらの細胞が局所的に生理的パラメーターを変化させてしまうために起こる、化学物質あるいは生化学物質の濃度、あるいは体温、流量、圧力といった、埋め込まれたセンサーまたはモニターによる生理的パラメーターの測定の不正確を回避あるいは低減する材料と方法を提供する。第三の特徴として、本発明は、生きた細胞また組織を内蔵し、動物の体や殊に事態の失われたまたは損傷を受けた組織、臓器または細胞の機能の代用となる、埋め込まれたサックへの、栄養である化学物質、酸素、その他の必須化学物質および生化学物質の流れを維持するための材料と方法を提供する。もし埋め込んだサックが正常な近隣の細胞を破壊する拒絶反応を引き起こすと、損傷の修復に増殖細胞が生じ、化学物質を消費し、栄養あるいは酸素といった化学物質の流れを低減させる。
【0016】
移植された臓器の例は、腎臓、膵臓、肝臓、肺、心臓、動脈および静脈、心臓弁、皮膚、角膜、様々な骨組織および骨髄を含む。移植片への有害な炎症反応は移植された臓器の障害を生じるだけでなく、臓器移植者の生命を危険にさらす場合もある。
【0017】
炭酸ラジカル・アニオン、CO・−は、キラー細胞によって放出される中間体であり、産生される最も強力な細胞キラーの分子種である。水酸ラジカル、OHは、もう一つの強力な細胞キラーである。CO・−OHは、一般的な前駆体である過酸化亜硝酸アニオン、ONOOの反応によって産生される。過酸化亜硝酸の主な生物源は、スーパーオキシド・ラジカル・アニオン、O・−、および一酸化窒素、NOの間での拡散律速反応である。
【0018】
本発明は、有害な炎症のオスミウムを含有する触媒による予防または治療を提供する。オスミウムを含有する触媒は局所的に放出、あるいは固定することができ、O・−の崩壊、殊にOとHへの不均化を加速させる。細胞を殺すことによって疾患組織の除去を意図した処置である、化学的滑膜切除のための注入投与にOsOが使われる場合と違って、本発明のオスミウムを含有する触媒は、細胞が健康か病的かに関わらず、細胞の破壊および/また関連した組織の壊死を予防、あるいは低減させる。オスミウムを含有する触媒は、有害な炎症から保護されるべき区画中あるいはその近く固定されるか、またはその区画にゆっくりと放出される場合がある。全身投与は病原と戦う体全体の能力を弱めるので、多くの応用は全身的な投与ではないが、オスミウムを含有する触媒が治療あるいは保護されるべき区画に選択的に蓄積する場合には全身的に投与することができる。
【0019】
公開された材料と方法の利用および応用による有害な炎症の治療あるいは予防の例は、例えば心臓血管ステント近くの再狭窄、移植組織、または臓器、または細胞の炎症性拒絶反応といったインプラントへの炎症反応、あるいは例えば免疫、自己免疫、関節炎疾患のような病原体による感染していない組織、または臓器の炎症、例えば機械的外傷や、化学物質、または過剰な熱、またはUV光、あるいは電離放射線によるといった原因による火傷のようは外傷の後の炎症、あるいは病原体の数が健康組織のレベルかそれ以下に減少した後の病原体感染後の皮膚、口、喉、直腸、生殖器官、耳、鼻、あるいは目の持続的な炎症、である。
【0020】
本発明のもう一つの特色によると、ステントのようなインプラントの重合体被覆のポリ−2−ビニルピリジン−N−オキシドおよびその他のN−オキシド、あるいは移植片上、近くまたは移植片中のN−オキシド重合体、あるいはインプラント上で吸収されたN−オキシドを含む膜は、細胞を破壊する炭酸ラジカル・アニオンCO・−の崩壊を触媒する可能性がある。また本発明によると、インプラントまたは移植片がポリ−2−ビニルピリジン−N−オキシドで被覆されているかあるいは含んでいる場合、増幅された細胞破壊の過程は遅延するかまたは回避される。
【0021】
(発明の詳細な説明)
用語と定義。有害な炎症あるいは有害な炎症反応は、病原体や変異を起こした細胞に対抗するための炎症以外の炎症である。
【0022】
インプラントは、体内に埋め込まれた人工材料を含む部品を意味する。人工材料は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、あるいは弾性ポリマー、セラミック、金属あるいはこれらの二つ以上を含む複合材料である場合がある。
【0023】
移植片とは、移植された組織、移植された臓器あるいは移植された細胞を意味する。移植片は同種移植片あるいは異種移植片である場合がある。同種移植片は、供与者と被移植者が同じ種に属する、ある動物から別の動物へ移植された組織あるいは臓器である。異種移植片は、供与者と被移植者が異なる種に属する、ある動物から別の動物へ移植された組織あるいは臓器である。動物は通常哺乳類であり、最も重要なのはヒトである。
【0024】
走化性は、通常キラー細胞によって損害を受けた、あるいは破壊された、損傷したまたは死んだ細胞からの化学物質および/また残骸の源へのキラー細胞の移動である。
【0025】
キラー細胞は、細胞を殺す化学物質あるいは生化学物質を産生する細胞か、あるいは実際のキラー細胞の前駆細胞である。キラー細胞は、通常白血球か白血球から形成される細胞である。マクロファージ、巨細胞、マクロファージから形成される細胞、更に好中球が、キラー細胞の例である。マクロファージは血中の単球から形成されると言われている。
【0026】
走化性動員とは、インプラントまたは移植片に向かう、局所あるいはその周辺における、キラー細胞、あるいはキラー細胞前駆体の選択的な移動によって起こることを意味する。インプラントまたは移植片を受入れている組織の破壊された細胞からの、あるいは移植組織あるいは臓器の破壊された細胞からの化学物質および/また残骸が走化性であるというのは、放出した分子および/また残骸がキラー細胞あるいはキラー細胞前駆体を更に動員することを意味する。
【0027】
プログラム細胞死は、正常な組織的細胞死であり、プログラム細胞死における死んだ細胞の構成要素は、走化性分子および/また残骸わずかにしか放出されないか、または全く放出されないように溶解されるか、そうでなければ分解される。
【0028】
固定化触媒と不溶性触媒は、不溶性の触媒、あるいは非常にゆっくりと溶解あるいは浸出する触媒を意味する。非常にゆっくりと溶解あるいは浸出する触媒は、37℃で空気と平衡状態にある0.14M NaCl、20mMリン酸緩衝液、pH7.2中で、1日で半分以下が溶解するか、そうでなければ一日で浸出する触媒である。
【0029】
血漿とは、インプラントまたは移植組織、臓器、または細胞が浸っている液体、および/また移植組織、臓器または細胞が浸っている細胞間の液体を意味する。
【0030】
インプラントの近く、あるいは移植片の近くとは、インプラントまたは移植片から5cm未満、望ましくはインプラントまたは移植片から2cm未満、最も望ましくはインプラントまたは移植片から1cm未満に位置している、インプラントまたは移植片を受入れている組織あるいは臓器の部分を意味する。
【0031】
透過性とは、透過する分子種の溶解度と拡散係数の積が10−11mol cm−1−1を越えるフィルムまたは膜であり、望ましくは10−10mol cm−1−1より大きく、最も望ましいのは10−9mol cm−1−1を越えるフィルムまたは膜である。
【0032】
ハイドロゲルとは、約pH7.2−7.4の約0.14MのNaCl水溶液中で約37℃で約3日溶解しない、水で膨れる重合体マトリックスを意味する。少なくとも20重量%の水を含み、望ましくは少なくとも40重量%の水を含み、最も望ましくは少なくとも60重量%の水を含む。重合体は通常架橋されている。
【0033】
包帯剤は、傷または手術部位のための、通常、布、織物、合成膜、ガーゼまたはそのようなもので出来た被覆剤である。包帯剤は、主に傷や手術部位などを覆って保護する、一般的には架橋ハイドロゲルのような、ゲルも含む。
【0034】
薬学的に受容可能なとは、インプラント、包帯剤、および/また本発明のオスミウム化合物が無毒でヒトと動物の治療のための利用に適切であることを意味する。このような薬学的に受容可能な構造物や組成物は、前述の利用で不適合であるような材料を含まない。
【0035】
局所的配合とは、患者の皮膚への局所的な用途を意図した、軟膏(ointment)、クリーム、皮膚軟化剤、バルム剤、軟膏(salve)、軟膏(unguent)あるいはその他の任意の製剤処方を意味する。
【0036】
本発明は、正常な組織の健康な細胞が破壊される有害な炎症を回避または減少させる治療および構造物を提供する。本発明の具体的な目的は、(a)例えば、心血管ステントの再狭窄のような、インプラントに対する有害な炎症反応、(b)移植された組織または臓器または細胞の炎症、(c)例えば、免疫疾患、自己免疫疾患、神経変性障害、ルー・ゲーリグ病として知られる筋萎縮性側索硬化症、アルコール性肝臓疾患、心臓血管疾患、クローン病を含む炎症性腸疾患、ペイロニー病、強皮症および接触性皮膚炎における、感染症を起こしていない組織または臓器の炎症、(d)障害および/また、過剰な熱および/またUVが原因のやけど、および(e)感染症の後の皮膚、口、喉、直腸、生殖器官、耳、鼻、あるいは目の炎症の回避、減少、あるいは緩和を含む。
【0037】
炎症キラー細胞の認識と動員。炎症は一般的に、白血球の例として例えば好中球、および/また単球、および/またマクロファージといった白血球細胞の動員を伴う。白血球は、強力に細胞を破壊するオキシダントの前前駆体を分泌する。理論モデルによると、本発明をこれによって限定しないが、移植片の拒絶には、通常白血球による認識が伴い、その結果、複数段階を経て、移植片のいくつかの細胞を破壊し、その後破壊された細胞の残骸によって結果としてキラー細胞の走化性動員が起こり、そしてキラー細胞が産生したオキシダントによって更に細胞を破壊する。キラー細胞の動員、分泌したオキシダントによる細胞の破壊、更なる細胞の破壊、走化性化合物および/また残骸の放出、そしてさらに多数のキラー細胞動員、の連続は、増幅されたフィードバックループをなしている。
【0038】
キラー細胞の兵器。マクロファージや好中球のような炎症細胞の細胞破壊兵器は、スーパーオキシド・ラジカルO・−と一酸化窒素NOの二つのラジカルを含む。スーパーオキシド・ラジカル・アニオンは、NADPHオキシダーゼが触媒するOのNADPHとの反応で産生される。一酸化窒素は、一酸化窒素シンターゼ(NOS)が触媒するアルギニンの反応で産生される。炎症細胞のNOS、iNOSは、誘導可能な酸化物シンターゼである。スカベンジャー反応物またはその反応をかそくさせる酵素が存在しなければこれらのラジカルは比較的寿命が長く、半減期は1秒程度かそれ以上である。このため、半減期τ1/2の積の平方根である拡散距離、L、および約10−5cmsec−1である拡散係数、D、もまた長く、大きな細胞の中心同士の距離より長距離である、30μmと同等かそれを超える場合がある。従って、近隣のキラー細胞が分泌した前前駆体は、近隣組織の細胞に到達し入ることができる。O・−NOから生じるオキシダント前駆体は、やはり半減期が長いONOOとHを含む。生理的な7.2−7.4のpHで、カタラーゼまたはペルオキシダーゼのような反応を促進する酵素が存在しない状況では、Hの場合τ1/2は≧1秒であり、L≧30μmである。ONOO前駆体は、組織や細胞中に豊富なCOと反応し、強力に酸化するCO・−と二酸化窒素ラジカルNOを生じる。Hは、遷移金属複合体と反応し水酸ラジカルOHを生じる場合があり、OHは発生した場所でグルコースおよび/またタンパク質といった任意の酸化しやすい物質と急激に反応し、HCOとさえ反応してCO・−を生じる場合がある。CO・−のτ1/2は、約1ミリ秒で、Lは約1μmである。従って、前駆体は細胞に入った後、反応してCO・−を生じCO・−は細胞の寸法近くか同程度の距離にわたって拡散するだけ十分長く存続し、酸化しやすい任意の構成要素を酸化する。こうして最初の細胞破壊が起こる。
【0039】
ONOO前駆体由来の強力な細胞破壊COとCO・−による細胞破壊の還元におけるスーパーオキシドジスムターゼおよび/またスーパーオキシドジスムターゼ模倣体の重要性。前前駆体と呼ばれる白血球が分泌する化学物質の性質と、前駆体と呼ばれるこの前前駆体から生じる化合物、そして前駆体から生じる強力な細胞破壊化学物質が知られている。白血球は二つの重要な前駆体、O・−NOを生じる。O・−はNADPHオキシダーゼが触媒するOの還元によって生じると考えられている。NOは一酸化窒素シンターゼNOSが触媒するアルギニンの酸化を通じて生じると考えられている。白血球のNOSは誘導可能な一酸化窒素シンターゼiNOSであると考えられている。
【0040】
反応1によって生じる過酸化亜硝酸アニオンONOOは、毒性の強い成分の前駆体である。
【0041】
【化1】

過酸化亜硝酸イオンは極めて安定だが、その共役過酸化亜硝酸(ONOOH,pK=6.6)は急速に分解し、酸性の溶剤中では硝酸への異性化が主要な崩壊経路である。NOへの経路中、ONOOHのかなりの部分(〜28%)は水酸ラジカルと過酸化窒素ラジカルを生じる(スキーム1)。
【0042】
【化2】

一般に受け入れられているモデルによると、細胞を破壊するCO・−は、COとの急速な反応を通じてONOOから生じる(スキーム2)。
【0043】
【化3】

これらの産物、ONOOC(O)Oの半減期(τ1/2)は100nsより短いと推定されている。この従って、この付加化合物は生体系の構成要素と反応できる前に、非反応性のNOとCOに分解するか、あるいは反応性が高く有毒なCO・−とNOに分解する。
【0044】
38℃で(k+k)=5.3s−1,k=5.3x10−1−1、CO濃度は細胞内で([HCO]=12mM)、間質液中で([HCO]=30mM)、との報告された値を適応すると、過酸化亜硝酸のCOとの反応は、生体系における過酸化亜硝酸消費の主要経路であるとの結論に達する。
【0045】
水酸ラジカルは、発生した場所で任意の分子とほとんど非選択的に反応するほどに非常に反応性が高い。一方、CO・−は反応性が低く、従ってより選択的である。従って、現在ある最良のモデルによると、しかし本発明はこれに限定されないが、おそらく形成される最も重要な細胞破壊分子種はCO・−で、NOもまた細胞を破壊するが強力さは劣る分子種である。
【0046】
ONOO発生のために得られるO・−の量は、O・−の不均化を非常に効率的に触媒する(反応2)スーパーオキシドジスムターゼ、SODの存在によって減少する。
【0047】
【化4】

従って、効率的にO・−を除去するとONOOの形成、そしてその結果、CO・−および/またNOによる細胞破壊を防ぐ。
【0048】
・−と有害な炎症。例えば、心臓血管ステントの部位での再狭窄を引き起こす長期に渡るインプラントまたは移植片に対する有害な炎症反応は、スーパーオキシド・ラジカル・アニオンの反応の下流産物と関連している。このラジカルのインビボでの接触分解は、望ましくない炎症、例えば再狭窄および/また移植された組織あるいは臓器の急性炎症拒絶反応のようなインプラントに対する炎症反応を緩和、あるいは予防する可能性がある。
【0049】
インプラント近くの有害な炎症。マクロファージや好中球のような炎症キラー細胞は、異物と認識された生物体の破壊するために進化した。これらは執拗にインプラントを破壊しようとし、ステント血管の再狭窄を引き起こす場合がある。これらは生体適合性だと言われるインプラントに接着し、インプラント上でさえも融合して、しばしばマクロファージで覆われた広い領域を形成する。長期に渡るインプラント上にこれらの細胞が存在していると、一部の整形外科インプラントやその他のインプラントは周期的に有害な炎症の再発を来すものの、通常、臨床的に許容できる低レベルの炎症を引き起こす。
【0050】
細胞を破壊するCO・−NOの前駆体である過酸化亜硝酸アニオンは、マクロファージによって産生されるラジカル、NOとO・−の二つの組み合わせによって産生される。一酸化窒素は短命であり、生体シグナル伝達物質である。それ自体は強力なオキシダントではない。O・−も強力なオキシダントではなく、一部の反応においては電子供与体還元剤としてふるまっている。NOとO・−の半減期は、>1秒と長い場合がある。この組み合わせの産物であるONOOは、具体的にはOH/CO・−NOといった中間体として、非常に酸化的なラジカルの形成によって、間接的に幅広い種類の生体分子を酸化する。
【0051】
組織的な過程であるアポトーシスによって細胞が自然に死んだ場合、その分解産物はマクロファージの化学誘因物ではない。対照的に、細胞が過酸化亜硝酸の産物によって破壊された場合には、放出される化合物および/また残骸はマクロファージにとって走化性(化学的に誘因する、あるいはさらに「動員」する)である。フィードバックループの結果、多くの細胞が破壊される再発が結果として生じる場合がある。多数の細胞を破壊すると、組織の変形を来す。より多くの細胞の破壊は、さらに多くの残骸と、さらに多くのマクロファージの動員、そしてさらに多くのマクロファージが動員されると、損傷が増幅され、病変の大きさが拡大する結果にいたる。身体のその後の損傷の修復は細胞の増殖を誘導し、ステントが原因の再狭窄の土台となる可能性がある。この自己増殖性の、ますます破壊的な過程は、述べられた材料の使用によって回避することができ、公開されたO・−の不均化および/またONOOの異性化の触媒、および/またCO・−の接触分解によって、崩壊、減速、緩和、あるいは停止させることができる。
【0052】
触媒は、埋め込む前にインプラントを被覆する、またはインプラントのコーティングの中に盛り込む、あるいはインプラントに近接した組織に組み込むことができる。二つのグループの触媒が特に有用である。第一は、O・−不均化のためのオスミウムを含むものである。第二はONOOの異性化のためのもので、ポルフィリンと遷移金属、特に鉄とマンガンのフタロシアニンを含む、固定されたONOOおよび/またNO・−透過性のヒドロゲルで、過酸化亜硝酸の硝酸異性化を触媒すること知られている。
【0053】
第三は、CO・−分解のためのもので、遷移金属のポルフィリンおよび/また環状N−オキシド誘導体、および/またN−オキシル、および/またヒドロキシルアミンを含み、固定されたCO・−および/またHCO透過性のヒドロゲルである。これらの例、特にマンガンポルフィリンは、例えばG.Fewer−Sueta等によりJ Biol. Chem. 2003, 278, 27432−27438で述べられており、窒素酸化物、N−オキシド、およびまたN−オキシルおよび/またヒドロキシルアミンの例は、共同請求者であるS. Goldstein等により、Chem:. Res. Toxicol. 2004, 17, 250−257で述べられている。
【0054】
重合体ピリジン−N−オキシド。本発明によると、ステントのようなインプラントの重合体被覆中のポリ−2−ビニルピリジン−N−オキシド、およびその他のN−オキシド、あるいは移植片上、近くあるいは移植片中の重合体N−オキシド、あるいはインプラント上に吸収されたN−オキシドを含む膜は、炭酸ラジカル・アニオンCO・−の崩壊を触媒することができる。本発明によると、インプラントあるいは移植片がポリ−2−ビニルピリジン−N−オキシドで被覆されている場合あるいは含んでいる場合には、増幅された細胞破壊過程は原則、あるいは回避される。重合体N−オキシドを含むインプラント上、または移植片中または移植片近くの膜または層の厚さは、治療上有用的になるであろう。単層の厚さの膜は既に実用的である場合がある。望ましい厚さは約10nmと約1mmの間で、さらに望ましい厚さは約10nmと約100μmの間で、最も望ましい厚さは約100nmと約20μmの間である。
【0055】
本発明の化合物のうち、窒素が環の一部である場合が望ましく、窒素が芳香環の一部である場合が最も望ましい。反復の中でN−オキシドの機能を有する重合体が望ましい。N−オキシドは、ステントのようなインプラントの被覆中に、あるいは移植片中または移植片の表面に固定されていることが望ましい。一般的にポリ−2−ビニルピリジン−N−オキシド、およびその他のN−オキシド、または石英粒子の毒性を低減させることが知られている化合物は、冠状動脈ステントにおけるステント再狭窄、また有害な炎症作用およびその他の、インプラントや移植片における細胞障害を予防、その頻度を低減すると期待される。血中、あるいは血流に曝された場合、N−オキシドかそれ以外かに関わらず、触媒は固定されて浸出せず、あるいは浸出しても非常にゆっくりであるのが望ましい。なぜなら、冠状動脈ステントの場合の冠状動脈のような血管中の急速な循環血液、あるいは例えば腎臓移植のような一部の移植片の急速な循環血液は、急激に触媒を取り除いてしまう可能性があるからである。ポリ−2−ビニルピリジン−N−オキシドであれN−オキシド結合重合体であれ、被覆材中のN−オキシドは、浸出溶液がかく乱されず、約0.14MのNaClを含む、約pH7.2の0.02Mリン酸緩衝液生理食塩水であり、37℃で試験して、浸出が約2週間の長期にわたる場合には、そのようなN−オキシドは浸出しない可能性がある。あるいは、N−オキシド被覆剤は、被覆剤中の一部のN−オキシド、望ましくは約10%以下のN−オキシドが、浸出溶液がかく乱されず、約0.14MのNaClを含む約pH7.2の0.02Mリン酸緩衝液生理食塩水であり、37℃で試験して、浸出が約2週間の長期にわたって浸出するそのようなものになる可能性がある。一般的に触媒は浸出せずに固定されて、抗生剤で安定化された血清中で4℃で、約2週間以上、望ましくは1か月以上、最も望ましくは約2か月以上の間活性を保つのが望ましい。
【0056】
ポリ(2−ビニルピリジン−N−オキシド)。四つの反復ユニット(mer)を以下に示す。
【0057】
【化5】

水溶性で、芳香環あるいは複素環の一部が窒素である様々な重合体N−オキシドは、インプラントの被覆中あるいはインプラントに、またはインプラント内に組み込むのに有用である。芳香環あるいは複素環は5つか6つの原始を含むことができる。六員環芳香族環N−オキシドと五員環複素環N−オキシドが一般的に好ましい。重合体N−オキシドは、水溶性である場合があり、その場合水溶液から不可逆的に吸収されるか、あるいは被覆剤を形作るための架橋剤とともに共被覆させ重合させる。望ましい重合体N−オキシドは、分子量が約3000から約100,000,000である場合があり、望ましい分子量は5000と5000000の間であり、10000から500000の範囲が最も望ましい。ステントの場合、架橋された重合体被覆の厚さは、37℃で血漿で平衡させ、被覆が占める容積は広がったステントの内部体積の10%未満になるようにし、広がったステントの内部体積の3%未満が望ましく、広がったステントの内部体積の1%未満が最も望ましい。重合体N−オキシドは、ポリエチレングリコールジグルシジルエーテルのように、例えば、ジ、トリ、あるいはポリエポキシドのように架橋される場合がある。
【0058】
重合体N−オキシドのファミリーは、例えば、ポリ(2−ビニルピリジン−N−オキシド)、ポリ(4−ビニルピリジン−N−オキシド)、ポリ(3−メチル−2−ビニルピリジン−オキシド)、およびポリエチレン−2,6−ピリジンジカルボン酸−オキシド)を含む。重合体あるいは単量体のN−オキシドは、例えば-CHOH基を有する環、あるいはハロゲンで置換された環、あるいはチオール、またはアミン基を有する環、または、例えば−C1,−CHCl,−CHNH,−CHSH,−COOHであるカルボン酸基、のようにアルキル化しているかあるいはアルコール基を有する。-CHNH基と-CHSH基は、室温で水溶液中でマイケル反応により二重結合に付加することが知られている。例えば−C(R)=C(R’)−C(=0)−基を有するこれらの単量体あるいは重合体は、例えば-CHNH基または-CHSH基と結合する場合がある。これによって重合体N−オキシド分子を架橋できる。-CHSH基または−CHNH基を有する単量体N−オキシドも、マイケル反応によりアクリル基あるいは類似の官能基に付加し、アクリル酸、メタクリル酸、および関連の官能基を有する重合体触媒を作り出す。
【0059】
重合体N−オキシドの膜は、金属あるいはセラミックの表面酸化物層への吸着によって便利良くインプラント上に形成することができる。一般的には、水溶液から吸着することができるような水溶液中の重合体N−オキシドの濃度は、約0.1−10重量%になる。膜は重合体N−オキシドと架橋剤の二つが共に溶解した水溶液からの共吸収によって形成することもできる。架橋剤の例は、分子量約400のポリ(エチレンオキシド)ジグリシジルエーテルである。この架橋剤とポリ(2−ビニルピリジン−N−オキシド)の望ましい重合剤/架橋剤重量比は、約30:1と約5:1の間で、約25:1と約10:1の間の重量比が最も望ましい。
【0060】
重合体被覆は、例えば、イソパノールでのステントあるいは他のインプラントを予備清浄した後、脱イオン水ですすぎ、乾燥させ、表面の有機不純物を酸化するために、それぞれ10分間RF(50−150W)プラズマ炉で、1−2mm Hg酸素分圧で酸化させ、次いで重合体、あるいは単量体の水溶液を架橋剤の溶液と共に、浸漬、スプレー、あるいは刷毛でぬるといった方法で適用し、通常室温で少なくとも24時間、膜を乾燥あるいは重合させる。
【0061】
再狭窄の病因案。本発明によれば、ステント中での繊維芽細胞や平滑筋細胞の増殖である再狭窄には炎症の過程が関わっており、その結果冠状動脈の健康な細胞の破壊が生じる。細胞の破壊は、正常な内皮細胞ではなく繊維芽細胞や平滑筋細胞の増殖によって修復され、これらの細胞は新生内膜過形成において血管の内腔を狭める病変を引き起こす結果になる。例えば、ステント合金を含む、通常は微小陽極である遷移金属の腐食性のマイクロドメインによって、あるいは余剰の突き出たステントの構造、特に、バクテリアに類似したサイズと形を有する構造によって、マクロファージや好中球のようないくつの食細胞の動員によって、新生内膜過形成が引き起こす過程が開始される可能性がある。次に、一部の化学領域および/またステント表面の突き出た局所的な構造は動員された食細胞に覆われる。これらの強力な細胞破壊分子種、ことにCO・−ラジカルは、マクロファージおよび/また好中球が産生し、最終的には食胞を破壊するONOO前駆体から産生される。この破壊は、更に多くのマクロファージおよび/また好中球を引き寄せる、走化性分子および/また残骸の放出を招く。その結果として、ステントの表面はそれらの細胞で高密度で密集することになる。個別のキラー細胞にとって、O・−NOの濃度、分泌された細胞破壊ラジカルの前前駆体は、細胞からの距離の三乗に反比例して減少する。従って、個々のマクロファージあるいは好中球は、これらの細胞が貪食する細胞をのぞけば、無力な細胞の殺し屋である。対照的に、表面がマクロファージまたは好中球で高密度で密集している場合には、これらの濃度は表面を覆ったマクロファージまたは好中球からの距離に従って直線的に減少する。したがって、ラジカルが組み合わさって、極めて有毒で細胞を殺すCO・−の前駆体であるONOOを高い収量で、またそれより低い割合でNOを、および/または強力な酸化力を有する、同時に形成され得るOHを形成する。CO・−および/またOHによる莫大な数の細胞の破壊は、病変の原因となる。繊維芽細胞と平滑筋細胞の増殖による不完全な損傷の修復は、血管の内腔の狭窄である再狭窄を引き起こす結果になる。
【0062】
移植片の急性拒絶反応における有害な炎症。上で考察したように、白血球細胞は移植片の細胞を破壊する可能性がある。移植片上にこれらの細胞が存在することによって、耐えることができ臨床的に許容できる、永続的な低水準の炎症の原因となる可能性がある。しかしながら、一部の移植では、これが炎症の再発および/また壊死の原因となる。再発および/また壊死が構成する増幅されたサイクルは、例えば、過酸化亜硝酸の反応産物、特にCO・−および/またOHといった強力なオキシダントの産生と細胞の破壊が通常伴う。
【0063】
スーパーオキシドジスムターゼの欠損、異常または変異の結果生じる疾患の治療。本発明のオスミウム含有化合物は、ほとんどがOとHへの不均化であるO・−の崩壊を加速させるため、そして、OsOの全身的な毒性なしに関節炎の間接の滑膜切除におけるOsOの利用が50年以上にわたって確立されているため、スーパーオキシドジスムターゼの欠損、異常または変異に関連した、あるいはその結果生じる疾患は、本発明のオスミウム含有化合物で治療され得る。スーパーオキシドジスムターゼの欠損、異常または変異の結果生じる、あるいはそれに関連する疾患の例は、神経変性障害、ルー・ゲーリグ病として知られる筋萎縮性側索硬化症、アルコール性肝臓疾患、心臓血管疾患、クローン病を含む炎症性腸疾患、ペイロニー病、および接触性皮膚炎を含む。
【0064】
インプラントまたは移植片上に被膜された、および/またインプラントまたは移植片上の被覆からゆっくり放出される触媒。例えば、OおよびHへの不均化によって、またOONOのNO・−への異性化のヒドロゲル結合触媒、およびCO3・−分解の効果的な触媒といった、O・−の濃度の減少を加速するオスミウム含有触媒が公開される。触媒は、インプラント付近の有害な炎症、あるいは移植片の炎症拒絶反応の予防、低減、緩和を意図するものである。触媒は、インプラント、あるいは移植された組織、臓器または細胞のなか、表面、または近くに固定化されるのが望ましい。
【0065】
これらの触媒は、細胞を破壊するCO・−および/またOHのOONO前駆体、あるいはO・−前前駆体をインプラント中、インプラント上、またはインプラント近く、あるいは移植された組織、臓器、細胞で消費され減少する反応を、インプラントまたは移植片から離れた組織、臓器中のOONOまたはO・−の濃度に実質的に影響を与えることなく加速させる。触媒はOONOまたはO・−の濃度に局所的に影響し、全身的には影響しないことが望ましい。望ましい触媒はインプラントまたは移植片から5cm以上の距離に離れた臓器または組織中のOONOまたはO・−の濃度には影響せず、望ましくはインプラントまたは移植片から2cm以上の距離に離れた臓器または組織中のOONOまたはO・−の濃度には影響せず、最も望ましくはインプラントまたは移植片から1cm以上の距離に離れた臓器または組織中のOONOまたはO・−の濃度には影響しない。
【0066】
本発明の固定化された触媒によって破壊される増幅された細胞破壊サイクルのモデルは、本発明はこれに限定されないが、以下の通りである。CO・−ラジカルとOHラジカルは細胞破壊オキシダントである。組織的な過程であるプログラムされた細胞死によって細胞が自然に死んだ場合、その分解産物はマクロファージやその他のキラー細胞の化学誘因物質ではない。対照的に、細胞がONOOの反応の産物によって破壊された場合、死んだ細胞が放出する、あるいはその残骸産物は、キラー細胞、および/また、単球、マクロファージ、および/また好中球といったキラー細胞の前駆細胞にとって走化性(化学的に誘因する、あるいは更に「動員」する)である。大量の細胞が破壊されると、大量のキラー細胞あるいはキラー細胞前駆細胞が、死んだ細胞から放出された走化性分子および/また走化性の残骸によって動員される。より大量のマクロファージが残骸で動員されると、あるいは残骸に動員されたマクロファージによって移植片がより広く覆われると、自然に生じる過酸化亜硝酸キラー・アニオンの二つの前駆体である、一酸化窒素(NO)とスーパーオキシド・ラジカル・アニオン(O・−)の局所的な産生の割合が更に拡大する。その結果は、細胞死によって増幅される、過酸化亜硝酸アニオンを介したフィードバックループで、更に多くの移植された細胞が破壊される再発の原因となる。この自己伝播的で進行的な更に破壊的なサイクルは、異性化の加速、あるいはO・−前駆体の崩壊の加速の触媒する固定化した触媒による局所的な過酸化亜硝酸アニオン濃度の減少によって、減速あるいは回避される。
【0067】
触媒は、インプラント上に埋め込みの前に固定化することができる。任意で、インプラント後、ゆっくりと放出される場合もある。あるいは、インプラントの表面上に固定化したヒドロゲル中に入れることができる。ヒドロゲルは、ONOOおよび/またNOおよび/またO・−および/またHに対して透過性であることが望ましい。触媒は、移植後に移植片の中、上、あるいは付近に組み込むことができ、あるいは、供与者から移植片を取り除いた後、しかし移植者に移植する前に、移植片の中、上、あるいは付近に組み込むことができる。触媒は、重合体に静電気的に、および/また配位的に、および/また共有的に、および/また水素結合を介して、および/また疎水結合を介して結合した、重合体結合分子またはイオンである場合がある。触媒を結合する重合体は、pH7.2の0.14M NaClを含む溶液に37℃でヒドロゲルを浸すと膨らむ重合体が望ましい。
【0068】
固定化された、あるいはゆっくりと浸出した触媒は、OONO→NOの異性化反応、あるいはONOOが生じる、その前駆体であるO・−のNOとの組み合わせ以外の任意の反応を通じて、インプラント付近、または移植片付近、または、火傷の後の皮膚のような炎症を起こした器官付近の局所的なOONOの濃度を下げることができる。O・−濃度を下げる触媒はオスミウムを含むのが望ましく、反応2を通じてO・−の不均化するのが最も望ましい。
【0069】
オスミウム含有触媒。オスミウム含有触媒は、O・−NOの組み合わせ以外の、O・−が消費される任意の反応の加速を通じてO・−濃度の減少を加速させる。オスミウム含有触媒は、O・−のOとHへの不均化である反応2を加速するのが望ましい。
【0070】
望ましいオスミウム含有触媒は、酸素、あるいは、オスミウムと酸素原子の間で結合が形成されるように、体内で酸素を含む水や水酸化アニオンまたはO・−のような、分子、イオン、ラジカルで置換される、ハライド・アニオンのような官能基を含む。少なくとも触媒の一部の酸素がオスミウムと直接結合している。オスミウムと酸素原子の間の結合は、イオン結合ともよばれる、静電気的結合、および/また共有結合、および/また配位結合である。有用な触媒である分子やイオンの例は、OsOであり、オスミウムの公式の酸化状態は(VIII)であり、分子間の結合は非イオン的であり、Ba(OsO,のような塩は、オスミウムの公式の酸化状態は(VII)であり、KOsO、BaOsO.4HO、BaOsO4,2HO、BaOsO、BaOsO、BaOsO、CaOs、CuOsO、またはZnOsOのような塩は、オスミウムの公式の酸化状態は(VI)であり、あるいはポリビニルピリジン反応四酸化オスミウムのような重合体であり、オスミウムの公式の酸化状態は(VI)であり、CaOsのような塩は、オスミウムの公式の酸化状態は(V)であり、(NHOsO、CaOsO、またはSrOsOのような塩、あるいはOsO、または水和物、または非金属OsO.nHOでn≧0.5のような金属酸化物は、オスミウムの公式の酸化状態は(IV)であり、OsCl.nHOでn≧3、またはOsBr.nHOでn≧3であるような水酸化Os(III)塩、OsCl.nHOまたはOsBr.nHOでn≧4である、および、元素であろうと合金であろうと、接触した溶液中に約1nMの濃度の溶解したオスミウム分子種を生じるに足る程度に腐食する、金属オスミウムのような水酸化Os(II)塩である。触媒化合物とその塩は、不定比化合物である場合がある。オスミウム化合物は、Alfa Asear社、Ward Hill,MAから、またはSigma Aldrich社、Milwaukee, Wlから商業的に入手可能であり、あるいは公表されている方法によって調整することができる。Scholder と Schatz (Angewandte Chemie 1963, 75, 417)は、Os(VII)をBa(OsOとして、またOs(VI)をBaOsO.4HOとして、同様にBaOsO とBaOsOとして調整した。Bavay (Revue de Chimie Mirrerale, 1975, 12(1), 24−40)は、Ba(NOがオスミウム酸溶液のBaOsO.2HOから沈澱することを示した。Chihara (Proceedings of the 5th International Conference on Thermal Analysis, V. B. Lazarev and LS. Editors, Hoyden, London, UIC (出版社), 1977, 273−5) は、空気中でCaOsOがOと反応し、775−808℃でCaOsを生じ、これが850−1000℃で分解すると不定比化合物であるCaOs6.5を生じることを示し、SrOsOは970−1020℃でやはり不定比化合物であるSrOs6.4±0.2に変換し、BaQsOは830−900℃でBaOsOに酸化されることを示した。GilloteauxとNaud, (Histochemistry, 1979, 63(2), 227−43)は、CuOsOとZnOsOの生成について述べ、ShaplyginとLazaeev (Zhurnal Neorganicheskoi Khimii 1986, 31(12), 3181−3)は、BaOsOとBaOsOの生成について述べた。
【0071】
オスミウムが少なくとも3つの酸素と結合する触媒が望ましく、オスミウムが少なくとも4つの酸素と結合する触媒が最も望ましいが、酸素が少なくとも二つの酸素原子と結合し、あるいは少なくとも二つのリガンドが生理的な条件下で水またはO・−のような小さな含酸素分子種と置換されているオスミウム複合体を含むオスミウム化合物もまた有用である。用意に置換されるリガンドは、例えばハライド、アンモニア、N−オキシド、ホスフィン・オキシド、あるいはスルホキシドである場合がある。
【0072】
オスミウム化合物の望ましい溶解度は10−9M以上で、溶解度が10−8を超えるのが最も望ましい。インプラントあるいは移植片では、非常に溶解性が高い場合、体液による表面に固定された触媒の急速な浸出を引き起こす可能性がある。これは、オスミウム化合物源と平行に達した状態で、37℃で、オスミウム含有分子、またはイオンの血清中の濃度が10−4M未満が望ましく、最も望ましいのは約10−5M未満である。
【0073】
・−不均化のための望ましいオスミウム含有触媒は、インプラントの表面または移植片の表面と接触している結晶中に、および/また移植片組織近くの宿主組織に一時的にあるいは恒久的に固定されるのが望ましい。最も望ましい触媒酸化物は、オスミウムの酸化物である。これらの酸化物は四酸化オスミウムを含み、あるいは四酸化オスミウムあるいはオスミウムのハロゲン化物の加水分解から形成され、あるいは例えば四酸化オスミウム液の還元によって形成することができる。
【0074】
均一な溶液中でのオスミウム触媒の能力の主要な指標は、速度定数kcatである。有害な炎症の抑制において重要なO・−の脱離反応の速度であり、触媒の存在下でのO・−の崩壊速度である。実施例に見られるように、2.4mMのリン酸を含むpH7.25の緩衝液中で、25℃で、OsOのkcatは、比類なく驚くほど高い。OsOのkcatは、(1.02±0.08)x10−1−1で、天然の酵素である銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ、CuZn−SODのkcatの約1/3である。CuZn−SODの分子量は32kDaで、OsOはわずか254Daであり、触媒の重量単位当たりのO・−崩壊速度である比活性は、OsOはCuZn−SODより42倍早く、明かに不均化によるO・−の脱離のための重量に基づく最高の触媒になる。OsOの比重量活性(重量単位当たりの比活性)は、約1.02x10/254=4.0x10−1−1−1で、CuZn−SODでは約9.4x10−1−1−1のみである。なぜなら、OsOの密度は約4.9g cmで、一方タンパク質の密度は約1.4g cmなので、OsOの比容積活性(単位容積当たりの比活性)は約2.0x10−1−1cm−3であり、一方CuZn−SODは、わずか約1.4x10−1−1cm−3であり、触媒に必要な容積は135倍有利である。従って、均一な触媒溶出スタント、あるいはその他のインプラントの実施例において、OsO触媒は42倍少ない重量と、約135倍小さい体積が必要となり、多いに構造を単純化し、触媒溶出インプラントの製造、例えば皮膚上への包帯剤の移植を促進する。
【0075】
最小の活性なオスミウム含有触媒であるOs2+は、三つの2,2’−ビピリジン、あるいは三つの2,2’−(4,4’−ジメチルビピリジン)と錯体を形成し、可溶なイオンはOs(bpy)2+とOs(dimebpy)2+であり、Os(bpy)2+/3+およびOs(dimebpy)2+/3+のレドックス対に用いられた酸素含有溶液中で酸化された。これらの複合体のkcatは測定限度以下であった。
【0076】
一般的に、Kcatは価数が高いオスミウム化合物で高くなる。従って、オスミウムの見かけの価数が4以上である触媒が望ましく、オスミウムの見かけの価数が6以上である触媒が最も望ましい。実施例に見られるように、Os2+またはOs3+塩の溶液のkcatは、OsOより遥かに低いが、炎症の細胞破壊CO・−またはOHのO・−前前駆体およびONOO前駆体が、触媒的に活性が低い低価数のオスミウム分子種を活性化できるよう、O・−のような活性酸素化した分子種のパルスに繰り返し曝した際に、Os2+またはOs3+塩の触媒活性は劇的に上昇する。従って、初期の触媒活性の低さにも関わらず、キラー細胞の環境下で、低価数のオスミウム触媒は活性化され、大部分はおそらく反応2を通じた不均化で、O濃度減少の加速させる強力な触媒となると期待される。
【0077】
固定化された、および/また、ゆっくりと溶解するオスミウム触媒は、触媒的なO・−の転換を高速度に維持するために利用される可能性がある。この速度は、O・−の半減期を約10秒以下に減少させるのが適当で、約1秒以下が望ましい。例えば、kcat=10−1−1の触媒では、組織あるいはキラー細胞の10−1MのO・−から保護される領域で、触媒の濃度は過剰であるべきで、10−8Mを超えることが望ましい。kcat=10−1−1であるOsOの濃度は、約10−10Mを超えるべきで、約10−9Mを超えるのが望ましい。より効果が小さいkcat=10−1−1の触媒では、濃度は約10−8M以上であるべきで、約10−7M、約10−6M以上が望ましい。このような比較的低い触媒濃度は、インプラントまたは移植片または傷に適用する包帯剤の被覆への組み込み、例えば、上述のCa、Sr、Ba、ZnまたはCu塩のような溶解性が低いオスミウム含有塩のような様々な方法で維持することができる。あるいは、オスミウム含有アニオンまたはカチオンを、イオン交換樹脂またはポリカチオン性またはポリアニオン性のヒドロゲルに保持され、ゆっくりと放出することができる。インプラントや移植片への応用での樹脂は、水和した固体マトリックスであるが、一部では、液体として鼓膜または眼に滴下するような応用も可能である。有機溶媒および水の両方に可溶であるOsOは、インプラント上、または移植片の近くまたは傷の包帯剤中の熱可塑性シリコンあるいは弾性シリコンのような有機層からゆっくりと浸出させることができ、あるいは、液体シリコンに溶解させ、軟膏として皮膚上、眼、または外部から鼓膜に適用することも可能である。あるいは、ヒドロゲル上の加水分解性の配位結合または共有結合で保持し、例えばオスミウムカチオンの加水分解によって、結合が加水分解されることによって放出することができる。例えば、架橋されたマトリックスを形成するヒドロゲルの重合体は、例えばモノアミンまたはホスフィン酸化物がゆっくりと放出される
、オスミウムとの弱い複合体を作る。あるいは、オスミウム触媒をヒドロゲル内に結合し、ヒドロゲル中で拡散しているO・−を分解し、例えば、ヒドロゲルで被膜したインプラントの組織を保護する。移植片を保護するために、O・−触媒とONOO異性化触媒をヒドロゲル内に共固定化すると好都合である。
【実施例】
【0078】
(実施例1.スーパーオキシドジスムターゼのOs触媒、特にOs(VIII/VII)触媒)
材料と方法。全ての化学物質は分析グレードであり、入手したままを使用した。OsO(4重量%水溶液)はAldrich社(Milwaukee,WI)より購入し、使用前に新たに希釈した。KOsCl・2HO・ClとOsCl・6HOは、Alfa Aesar社(Ward Hill, MA)から購入した。カタラーゼ(2mg/ml、約130,000u/ml)はBoehringer社(Mannheim, Germany)より入手した。ウシ血清アルブミン(BSA)はSigma社(St. Louis, MO)より購入した。過酸化亜硝酸は、コンピューター制御のシリンジ・ポンプ(WPIモデルSP 230IW、World Precision Instruments社(Sarasota,FL))を備えたクエンチされた流動システムで、亜硝酸を酸性化したHと反応させて他で詳細に記載されているように合成した。0.63Mの亜硝酸を0.60M Hと0.70M HClOと混合し、混合液を室温で3M NaOHでクエンチした。原液は0.11M過酸化亜硝酸と、約3%の残存Hと12%の残存亜硝酸を含む。過酸化亜硝酸の収量は302nmの吸光度で、ε=1670M−1cm−1を用いて測定した。
【0079】
光学経路が1cmのApplied Photophysics社(Leatherhead, Surrey, UK)のBio SX−17MV Sequential Stopped−Flowを用いて、急速撹拌ストップトフロー反応速度測定を行った。毎回の実験で、最終pHをストップトフロー・システムの排出口で測定した。全ての実験は25℃で行った。
【0080】
パルス放射線分解実験をVarian社(Palo Alto, CA)の7715線形加速装置で、1.5μsの5MeVの電子パルスで行った。解析ビームの光源は、200Wのキセノンランプであった。吸収スペクトルは室温で2cmのSpectrosil(R)セルで、ビームを3回セルに通して光路長6.1cmで測定した。線量はパルス当たり6−19.4Gyで、スーパーオキシド・イオンの吸収から求められたように、Oで飽和したpH7.4の20mMのギ酸を含む2.4mMリン酸緩衝液中でG(O・−)=6.lとε260=1940M−1cm−1を用いた。
【0081】
OsOは過酸化亜硝酸の崩壊に影響しない。0.01M NaOH中に520μMの過酸化亜硝酸を、OsO(0.04wt.%)を含む、および含まない0.1Mリン酸緩衝液と共に1:1の容量比で混合し、最終的にpH7.15とした。過酸化亜硝酸の崩壊は、302nmで追跡した。過酸化亜硝酸の崩壊は、OsOの存在には影響されなかった。
【0082】
OsO(あるいはその産物)は、スーパーオキシド・イオン・ラジカルの崩壊を触媒する。スーパーオキシド・イオン・ラジカル(pK=4.8)は、酸素化したpH7.2−7.4の緩衝液のパルス放射線照射によって生成した。溶液は0.02Mギ酸と2.4mMリン酸、あるいは0.2M 2−PrOHと12mMリン酸のいずれかを含む。ある実験においては、5−10μMのジメチレントリアミン5酢酸(DTPA)、あるいはカタラーゼ(75u/ml)を加えた。ギ酸あるいは2−PrOHいずれかの存在下。放射によって生成した(式3)全ての一次ラジカルは、ギ酸を加えた際に反応4−7で、2−PrOHを加えた際には反応4、8−10によってO・−に変換される。式3で式中の値は、100eVの吸収エネルギーγあたりの生成された分子種の数として定義される、分子種の放射線−化学物質収量である。
【0083】
【化6】

・−の崩壊は260nmの吸収で追跡し、10μM DTPAの存在下の二次速度式に従って、2k=(5.1±0.1)x10−1−1で、以前報告されたkの値と一致した。DTPAは通常、O・−の不均化を触媒する金属不純物をキレートするために加える。DTPAの非存在下では、O・−の崩壊は二次速度式から実際に外れ、半減期は約3倍短い。
【0084】
[O・−>[OsOでは、O・−の崩壊は一次速度式に従い、kobsは[OsOと共に直線的増加した(図1)。OsOのSOD様触媒活性の速度常数kcatは、図1の傾き、(1.02±0.08)x10−1−1〜計算し、最も反応が早いスーパーオキシドジスムターゼである、銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ、CuZn−SODのkcatの1/3と同程度に高かった。CuZn−SODの分子量は32kDaであり、OsOはわずか254Daであるため、OsOの非活性はCuZn−SODより42倍高かった。
【0085】
DTPAは通常、O・−の不均化を触媒する溶解したイオンの活性を減少させるが、OsOのSOD様活性にはわずかしか作用しない。10μMのDTPAを20mMギ酸を含む溶液に添加した場合、kcatは(7.6±0.3)x10−1−1にわずかに落ちただけであった。10μM DTPA存在下でギ酸を0.2M 2−PrOHで置き換えた場合のkcatの値でも、同様であった。(図1)。
【0086】
低濃度のOsOにカタラーゼ様の活性があるという報告があり、O・−の崩壊に75U/mLのカタラーゼの効果が記述されている。しかし、75U/mLのカタラーゼを加えても我々の実験では値は(8.1±0.3)x10−1−1のままで実質のkcatに変化しなかった。
【0087】
OsOの限界濃度で、kobsの値は1回目、50回目、あるいは100回目のパルス後も同じであり、OsO(またはその産物)は消費も変化もしていないことを示している。kobsは上述の任意の溶液に与えられたパルスの数に影響されなかった。
【0088】
保存中の触媒溶液の安定性を試験するために、OsO(5μM)をpH7.25の20mMギ酸溶液と0.2M 2−PrOH溶液中で保存した。中性のpHと25℃では、ギ酸と2−PrOHは触媒でわずかにゆっくりと酸化されただけであった。4日後、kcatはギ酸で(7.3±0.3)x10、2−PrOH溶液で(4.4±0.2)x10−1−1であった。1−2時間の長さの実験では、OsOの濃度あるいはその触媒産物は、双方の溶液で、実質的に変化はなかった。OsO、またはその触媒産物は、20mMギ酸または0.2M 2−PrOH中では極めて安定で、10μM DTPAを加えた際の触媒作用を維持した。
【0089】
SOD、およびその他の有機または有機金属化合物によるO・−の不均化の触媒は、触媒が二つの酸化状態の間を振り子のように触れる「ピンポン」機構を介して進行すると示唆されてきた。(式11と12)
【0090】
【化7】

不均化率は、式13によって、Osn+とOs(n−1)+の定常状態の近似値を推定することにより求められる。
【0091】
【化8】

律速要因がOsOまたはその派生物ではなく、O・−であった場合、崩壊は一次速度式に従い、k=(1.3±0.1)x10−1−1で、kobsは[OsOと共に直線的に増加する。kcat,=(1.02±0.08)x10−1−1であるので、k10=(8.7±0.3)x10−1−1である。
【0092】
OsOの濃度がO・−の濃度に対して過剰である場合、310nmに吸収極大を有する過渡種が観察された(ε310=2050±150M−1cm−1)。この分子種は、二次反応を介してk=(2.0±0.3)x10−1−1で崩壊し、パルスの強度あるいは[OsOには依存しなかった。我々は、過渡種はOs(n−1)(反応14、15、15a)、あるいはOsn+・−のイオン対(反応16)であると提案する。触媒的な条件下、すなわちで[Osn+<[O・−では、Os(n−1)+またはOs(n−1)+・−はO・−と反応して、それぞれ反応15または15aに従ってHを生成するが、一方、非触媒的な条件下では、二分子反応で分解する(反応16)。
【0093】
【化9】

反応11の「ピンポン」連続に関与するレドックス分子種を特定するために、我々はOsIII、OIVおよびOIVのO・−の崩壊における作用を研究した。
【0094】
20mMギ酸、2.4mMリン酸緩衝液(pH7.25)、および1.65または3.3μM OsClを含む酸素化した溶液で、パルス照射時の10μM O・−の崩壊の追跡を行った。OsCl自体は触媒活性は乏しかったが、照射の反復によって触媒活性が良いものに転換した。最初のパルスでは、OsCl添加はO・−崩壊の割合をわずかに上昇させるのみであったが、パルスを繰り返すに従ってkobsが著しく上昇し、40パルス後には平衡に達した。平衡状態において、1.65と3.3μMのOsCl存在下ではそれぞれ、kobs=1.7x10および3.4x10−1であり、結果としてkcat=1.1x10−1−1となり、OsOを添加したときに得られた実験誤差内の値としては、kcat=(1.02±0.08x10−1−1であった。同じ実験を5μM OsCl2−存在下で行った場合、系は似たような振る舞いをし、O・−の崩壊はパルスの繰り返しに従って向上したが、達した平衡状態はわずかkcat=4x10−1−1であった。OsO2−の場合、最初のパルスで得られたkcatは、10回目のパルス後に得られた値より低く約60%、すなわちkcat(1)=(5.6±0.6)x10−1−1とKcat(10)=(1.3±0.1)x10−1−1であった(図2)。
【0095】
・−に対して過剰量のOs(VI)の存在下、すなわち非触媒的な条件で、OsOを用いた非触媒的条件下で生成されるのと同じ過渡種の形成を観察した。約4μMのO・−の崩壊は、直線的に[OsO2−に依存し、k=(8.2±0.1)x10−1−1であった(図3)
これらの結果は、放射分解的に生成されたO・−とH(パルスによるO・−の不均化によって生成される(式3))は、最も効率的なレドックス対、すなわちOsVII/OsVII、に達するまでOsIII、OsIVおよびOsIVを酸化するということを示唆する。
【0096】
重要な過渡種はOsVIIである(反応17)。触媒的な条件下、すなわち[OsVIII<[O・−では、OsVIIはO・−と反応し、反応15を通じてHを生成するが、一方、非触媒的な条件下では、に分子反応に従って分解する(反応15aまたは16、特に反応17)。
【0097】
【化10】

(実施例2.炭酸ラジカル・アニオン分解の触媒)
材料。200kDの固体であるポリ−4−ビニルピリジンN−オキシド(4−PVPNO)、〜300kDの固体であるポリ−2−ビニルピリジンN−オキシド(2−PVPNO)は、Polyscienees社、Warrington, PAから購入した。低分子量の4−PVPNO、ReilIineTM 4140(40%水溶液)は、Reilly Industries社、Indianapolis, INから購入した。4−ピコリンN−オキシド(98%)は、Sigma−Aldrich社、St. Louis, MOから購入した。
【0098】
方法。パルス放射分解実験を、5−MeVのVarian社の7715線形加速装置(電子パルス0.05−1.5μs、電流200mA)を用いて行った。全ての測定は室温で、2cmのSpectrosil(登録商標)セル中で、3回の光照射(光路長6.1cm)で行った。CO3-ラジカルの生成および消失動態は、ε600=1860M−1−1を用いて、600nmの吸収を測定することによって追跡した。
【0099】
炭酸ラジカルは、0.1−0.6Mの炭酸ナトリウム(pK(HCO3)=10, I=0.5M)を含むNO飽和(〜25mM)水溶液pH10.0に照射することによって、反応系列18−20(括弧内は、分子種の放射線収率)によって生成される。
【0100】
【化11】

添加された任意の基質が欠けた状態で、CO−の崩壊は、それぞれ0.1,0.2および0.6Mの炭酸塩の存在下で21k21=(2.3±0.3)x10,(2.9±0.3)x10と(3.8±0.4)x10−1−1で二次であった。
【0101】
【化12】

2mM 4−ピコリンN−オキシドの添加によって、0.6Mの炭酸塩の存在下で3μM CO−の半減期が約50%短縮した。高濃度の炭酸塩は、4−ピコリンN−オキシドの’OHラジカルとの反応(k=3x10−1−1、Neta等、J.Phys. Chem. 1980, 84, 532−4)を防ぐために用いられる。CO−の4−ピコリンN−オキシドとの反応の速度常数は、約3x10−1−1だった。
【0102】
3種類のうちの任意のPVPNOが添加された際、CO−の収量は変化せずにそのままであり、炭酸イオンが全てのOH産物を除去したことを示している。OHは速やかにピリジンN−オキシド、またはそのメチル化誘導体である2,3または4−ピコリンN−オキシド(k=3x10−1−1)に加えるので、このことは実に驚くべきことである。実験におけるPVPNOの最高濃度は0.4%で、単量体の濃度に対応して、約32mMに対して約100mM COであり、更にOHラジカルはPVPNOではなく炭酸イオンによって除去され、OHの平均的な長さのPVPNOとの反応の速度定数は約1x10−1−1未満であった。
【0103】
しかし、CO−の崩壊速度は、3種類のうちの任意のPVPNOを加えた際に最も劇的に上昇した。消失動態は二次から一次へと変化し、kobsはPVPNO濃度が上昇するに従って増加した。(図4)
明かに、急速な崩壊がPVPNOのCO−との反応によって引き起こされている(反応22)。
【0104】
【化13】

濃度が重量%で表現されている際のPVPNOの二分子速度定数は、非常に高く、PVPNOの種類と分子量とは無関係である。従って、ReillineTMと200kDの4−PVPNOと2−PVPNOはそれぞれ、k22=(7.0±0.8)x10,(3.1±0.2)x10と(4.7±0.2)x10−1−1で、ReillineTMPVPNOの推定分子量は45±5kDである。
【0105】
1.5mMのCO3−を生成し、PVPNO濃度は>0.1重量%で、ポリマーはCO−の卓越したスカベンジャーであることを証明した約300回繰り返し与えられたパルスによって、CO3−の崩壊定数はほとんど影響されなかった。
【0106】
放射分解的に生成されたHは、結果には影響を全く与えなかった。初期濃度0.12mMのHを含む溶液が用いられた場合も、結果は変わらなかった。
【0107】
行われた一連の実験で、PVPNOの急速な消費が見られなかったことから、少なくとも一部、おそらく大部分、場合によっては全ての酸化されたラジカル破壊はCO3−ラジカルが電子をとらえた時に生じ、PVPNOは修復される。破壊の修復によって、PVPNOはCO・−分解のための触媒になる。
【0108】
我々は、プロトン化したPVPNOにおいて、ピリジニウム環の窒素原子がOH基を有することに言及する。それは、窒素酸化物RNOを形成するのにCO−と急速に反応することで知られている環状ヒドロキシアミン(RNO−H)とこの点で類似している。窒素酸化物は、オクソアンモニウム・カチオンRN=Oを形成するために、CO−と更に速く更に反応し、その分解は塩基触媒される。
【0109】
上記は本発明の望ましい実施例の全面的な詳細な説明であるが、様々な変更、修正、および同等のものが用いられる場合がある。従って、上記の説明は、添付の請求によって定義される本発明の範囲の限定として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、OsOによるO・−の不均化、あるいはその産物による触媒作用である。酸素を含ませた、pH7.25の2.4mMリン酸緩衝液中で、(■(黒四角))は0.02Mギ酸のみを含み、(●(黒丸))は0.02Mギ酸と10μM DTPAを含み、(△(白三角))はギ酸のかわりに0.2M 2−PrOHと10μM DTPAも含み、260nmにおけるO・−の吸光度でモニタリングした12μM O・−の崩壊のOsOの初期濃度における依存性。
【図2】図2は、OsO2−によるO・−の不均化の触媒作用である。酸素を含ませた、0.01Mギ酸を含むpH7.25の2.4mMリン酸緩衝液中で、(■(黒四角))は1回目のパルス後、(●(黒丸))は10回目のパルス後に260nmにおけるO・−の吸光度でモニタリングした14μM O・−の崩壊のOsO2−の初期濃度における依存性。
【図3】図3は、OsO・2−によるO・−の除去である。酸素を含ませた、0.01Mギ酸を含むpH7.25の2.4mMリン酸緩衝液中で260nmにおけるO・−の吸光度でモニタリングした、4μM O・−の崩壊のOsO2−の初期濃度における依存性。
【図4】図4は、4μM CO・−の崩壊の一次反応速度定数を、pH10.0,0.1M炭酸塩,25℃での[PVPNO]の関数として測定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に受容可能なオスミウム化合物を含む、インプラント、移植片または包帯剤。
【請求項2】
前記オスミウム化合物を制御下で放出する、請求項1に記載のインプラント、移植片または包帯剤。
【請求項3】
前記オスミウム化合物の見かけの価数が少なくとも4、6、または8である、請求項1に記載のインプラント、移植片または包帯剤。
【請求項4】
前記化合物のオスミウム原子に近接する原子のうちの少なくとも2、3または4個が酸素原子である、請求項1〜3のいずれかに記載の任意のインプラント、移植片または包帯剤。
【請求項5】
前記インプラントがステントのような血管インプラントを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のインプラント、移植片または包帯剤。
【請求項6】
前記ステントが血管ステントまたは冠状動脈ステントを含む、請求項5に記載のステント。
【請求項7】
前記インプラントが、整形外科用インプラント、美容的インプラント、生細胞を含むサック、人工内耳、あるいは化学的薬剤もしくは生化学的薬剤の温度、または流量、または圧力、または濃度をモニタリングするデバイスを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のインプラント、移植片または包帯剤。
【請求項8】
前記オスミウム化合物が、ヒドロゲル内、ポリカチオン内、またはポリアニオン内に結合している、請求項1〜7のいずれかに記載のインプラント、移植片または包帯剤。
【請求項9】
薬学的に受容可能なオスミウム化合物を含む、局所的な抗炎症組成物。
【請求項10】
制御下でオスミウム化合物を放出する、請求項9に記載の局所的な抗炎症組成物。
【請求項11】
皮膚または耳に使用するために処方された、請求項9または10に記載の局所的な抗炎症組成物。
【請求項12】
前記オスミウム化合物の見かけの価数が、4、6、または8より大きい、請求項9〜11に記載の局所的な抗炎症組成物。
【請求項13】
前記化合物のオスミウム原子に近接する原子のうちの少なくとも二つが酸素原子である、請求項9〜12のいずれかに記載の局所的な抗炎症組成物。
【請求項14】
前記化合物のオスミウム原子に近接する原子のうちの少なくとも三つまたは四つが酸素原子である、請求項13に記載の局所的な抗炎症組成物。
【請求項15】
スーパーオキシドジスムターゼ欠損に関わるか、あるいはその結果として起こる疾患の治療のためのオスミウムを含む、薬学的に受容可能な組成物を含むオスミウム化合物。
【請求項16】
スーパーオキシドジスムターゼの一つ以上の変異、または欠損に関わるか、あるいはその結果として起こる疾患の治療のためのオスミウム化合物を含む、薬学的に受容可能な組成物。
【請求項17】
神経変性障害、自己免疫疾患、アルコール性肝臓疾患、関節炎疾患、ペイロニー病、心臓血管疾患、炎症性腸疾患、クローン病、強皮症、皮膚炎、およびルー・ゲーリグ病からなる群から選択される状態の治療のための、請求項31に記載の薬学的に受容可能な組成物。
【請求項18】
前記オスミウム化合物の見かけの価数が、4、6、または8より大きい、請求項17に記載の薬学的に受容可能な化合物。
【請求項19】
前記化合物のオスミウム原子に近接する原子のうちの少なくとも二つが酸素原子である、請求項17または18に記載の薬学的に受容可能な化合物。
【請求項20】
前記化合物のオスミウム原子に近接する原子のうちの少なくとも三つまたは四つが酸素原子である、請求項36に記載の薬学的に受容可能な化合物。
【請求項21】
患者へ投与する工程を包含する、スーパーオキシドの崩壊促進化合物を含むオスミウムによって、有害な炎症を予防または治療するための方法であって、治療される組織または臓器に送達されるかあるいは近接する該オスミウム化合物の濃度が10−6M〜10−10Mの範囲である、方法。
【請求項22】
前記オスミウム化合物の濃度が10−7M〜10−9Mの範囲である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
患者が、神経変性障害、自己免疫疾患、アルコール性肝臓疾患、関節炎疾患、ペイロニー病、心臓血管疾患、炎症性腸疾患、クローン病、強皮症、皮膚炎、およびルー・ゲーリグ病からなる群から選択される状態を罹患する、請求項39または40に記載の方法。
【請求項24】
N−オキシド官能基を有する重合体を含む、インプラントまたは移植片。
【請求項25】
前記N−オキシドが、ピリジン−N−オキシドまたはピリジン−N−オキシドの誘導体、ポリ(ビニルピリジン−N−オキシド)またはポリ(2−ビニルピリジン−N−オキシド)である、請求項24に記載のインプラントまたは移植片。
【請求項26】
前記インプラントがステントである、請求項24または25に記載のインプラント。
【請求項27】
前記ステントが血管ステントである、請求項46に記載のステント。
【請求項28】
前記血管ステントが、冠状動脈ステント、腎臓、膵島またはランゲルハンス細胞、心臓、骨、皮膚、血管、肝臓、または肺である、請求項46に記載の血管ステント。
【請求項29】
薬学的に受容可能なオスミウム化合物とN−オキシド官能基を有する重合体とを含む、インプラント、移植片、または包帯剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−500548(P2007−500548A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522038(P2006−522038)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/024403
【国際公開番号】WO2005/011526
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506028214)
【出願人】(506028225)
【出願人】(506028247)
【Fターム(参考)】