説明

有機エレクトロニクス素子、有機光電変換素子、及び有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】バルクヘテロジャンクション層と電極の間にブロック層を、生産性の高い塗布法によって形成して、高い光電変換効率と、そのために必要な高い曲線因子と、さらにはダークスポットの発生の少なく、耐久性の高い有機エレクトロニクス素子、それを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】透明電極、対極、およびその間に有機層を有する有機エレクトロニクス素子であって、該有機層は、下記一般式(1)で表される化合物を、該有機層を形成する総固形分濃度に対して0.01〜10%含有する塗布液を、該透明電極または該対極上に塗布して、製膜された有機層であって、かつ、該製膜された有機層の上部は、該一般式(1)で表される化合物からなる自発的に配列した正孔ブロック層または電子ブロック層が形成されていることを特徴とする有機エレクトロニクス素子、有機光電変換素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロニクス素子、有機光電変換素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の化石エネルギーの高騰によって、自然エネルギーから直接電力を発電できるシステムが求められており、単結晶・多結晶・アモルファスのSiを用いた太陽電池、GaAsやCIGSなどの化合物系の太陽電池、あるいは色素増感型光電変換素子(グレッツェルセル)などが提案・実用化されている。
【0003】
しかしながら、これらの太陽電池で発電するコストは未だ化石燃料を用いて発電・送電される電気の価格よりも高いものとなっており、普及の妨げとなっていた。また、基板に重いガラスを用いなければならないため、設置時に補強工事が必要であり、これらも発電コストが高くなる一因であった。
【0004】
このような状況に対し、化石燃料による発電コストよりも低い発電コストを達成しうる太陽電池として、透明電極と対電極との間に電子供与体層(p型半導体層)と電子受容体層(n型半導体層)とが混合されたバルクヘテロジャンクション層を挟んだバルクヘテロジャンクション型光電変換素子が提案されて(例えば、特許文献1参照)いる。
【0005】
これらのバルクヘテロジャンクション型太陽電池においては、陽極・陰極以外は塗布プロセスで形成されているため、高速かつ安価な製造が可能であると期待され、前述の発電コストの課題を解決できる可能性がある。さらに、上記のSi系太陽電池・化合物半導体系太陽電池・色素増感太陽電池などと異なり、160℃より高温のプロセスがないため、安価かつ軽量なプラスチック基板上への形成も可能であると期待される。
【0006】
なお発電コストには、初期の製造コスト以外にも発電効率及び素子の耐久性も含めて算出されなければならないが、前記非特許文献1では、太陽光スペクトルを効率よく吸収するために、長波長まで吸収可能な有機高分子を用いることによって、5%を超える変換効率を達成するにいたっている。
【0007】
なお光電変換効率は、短絡電流(Jsc)×開放電圧(Voc)×曲線因子(FF)の積で算出されるが、上記のような高効率の有機薄膜太陽電池を含めて一般に有機光電変換素子は曲線因子が0.55程度と低いものに留まっており、これらをシリコン系太陽電池並みの値(0.65〜0.75)に向上できれば一層の光電変換効率を得られるものと期待される。
【0008】
曲線因子は光電変換素子の内部抵抗と密接に関わっており、曲線因子向上のためには有機薄膜の低抵抗化、電荷分離効率の向上(整流性の向上)が有効であることが知られている。
【0009】
有機光電変換素子において、バソキュプロイン(BCP)からなる正孔ブロック層を挿入することで電荷の分離効率が向上し、光電変換効率を向上できるとの開示があるが(例えば、特許文献2参照)、これらの材料は結晶性が高く溶解性が低いため、生産性の高い塗布方式に適用することは困難であるといった課題を有していた。また結晶性が高いことに起因する蒸着時の製膜性に関する課題を、置換フェナントロリン化合物で改善されるとの開示はあるが、(例えば、特許文献3参照)これらによるブロック層の形成は蒸着法であり、塗布法に適用可能かどうかについては開示がない。また、光電変換層と同時に製膜するような思想についても開示がない。
【0010】
また、塗布プロセスで作製できる正孔ブロック層としてTiOx層が開示されているが(例えば、特許文献4、非特許文献1参照)、TiOx層を形成するためには水分とチタニウムアルコキシド類を反応させる必要があり、水分によって劣化が起きる有機光電変換層の上に形成するには好ましい作製法であるとは言えず、耐久性において課題を有している。
【0011】
さらにこれらブロック層の課題としては、ブロック層は一般に最適な膜厚が1〜10nmと非常に薄く、特に生産性の高い塗布方式においては均一にこれらの層を形成することは非常に困難であった。
【0012】
他方、フッ素化したフラーレン誘導体が塗布時に表面に並ぶことを利用した有機光電変換素子を作製し、光電変換効率の向上が得られて(例えば、非特許文献2参照)いる。このフッ素化したフラーレン誘導体のサイクリックボルタンメトリーによるHOMO/LUMOレベルはフッ素化していないフラーレンのフラーレンとほとんど変わらないとの結果が得られており、バルクヘテロジャンクション層上部には実質的にはバルクヘテロジャンクション層を形成するn型半導体層と同等のHOMO準位を有するn型半導体単独からなる層が形成されることによってp型半導体(ポリヘキシルチオフェン)が陰極に接しないようになり、整流性が向上した結果、曲線因子および光電変換効率が向上したものと推定される。
【0013】
ところでバルクヘテロジャンクション層を形成するn型半導体材料であるフラーレン誘導体は、正孔も電子も輸送できることが知られており、バルクヘテロジャンクション層と同じHOMOレベルを有する層では、バルクヘテロジャンクション層を形成するn型半導体を電導する正孔をブロックすることができないため、変換効率の向上は一定のものに留まっていた。また、有機光電変換素子においては正孔だけでなく電子も逆キャリアの電極(陽極)方向に電導することも避けねばならないが、このような整流性を提供可能な電子ブロック層の形成については触れられていない。
【0014】
さらに上記のような光を電気に変換する有機光電変換素子だけでなく、電気を光に変換する有機エレクトロルミネッセンス素子においても、電気を光に変換する発光層内になるべく正孔及び電子を閉じ込めて高確率で発光させるためには上記のような正孔ブロック層や電子ブロック層を発光層の上下に設けることが有用であることは知られているが、これらの層を同時に塗布して積層膜を得るといった手法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特表平8−500701号公報
【特許文献2】特表2003−515933号公報
【特許文献3】特表2008−522413号公報
【特許文献4】特表2008−533745号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】A.Heeger:Science;vol.317(2007),p222
【非特許文献2】Adv.Mater.,vol.20(2008),p1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、バルクヘテロジャンクション層と電極の間に効果的な膜厚を有するブロック層を、生産性の高い塗布法によって形成して、高い光電変換効率と、そのために必要な高い曲線因子と、さらにはダークスポットの発生の少なく、耐久性の高い有機エレクトロニクス素子、それを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0019】
1.透明電極、対極、およびその間に有機層を有する有機エレクトロニクス素子であって、該有機層は、下記一般式(1)で表される化合物を、該有機層を形成する総固形分濃度に対して0.01〜10%含有する塗布液を塗布して、製膜された有機層であって、かつ、該製膜された有機層の上部は、該一般式(1)で表される化合物からなる自発的に配列した正孔ブロック層または電子ブロック層が形成されていることを特徴とする有機エレクトロニクス素子。
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、Rは置換または無置換の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基を表す。Lは2価の連結基を表し、単結合、酸素原子、それぞれ置換または無置換の、硫黄原子、窒素原子、珪素原子、ゲルマニウム原子、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基から選ばれるいずれかを表す。Bが正孔ブロック性の母核の場合は、有機層に用いられている最大のHOMOを有する材料よりも大きいHOMOを有しており、Bが電子ブロック性の母核の場合は、有機層に用いられている最小のLUMOを有する材料よりも小さいLUMO準位を有している。nは、1〜4の正の整数を表す。)
2.前記有機エレクトロニクス素子において、前記自発的に配列した正孔または電子ブロック層が0.5〜10nmの膜厚で形成されていることを特徴とする前記1記載の有機エレクトロニクス素子。
【0022】
3.前記一般式(1)で表される化合物が、HOMOが6.4eV以上である正孔ブロック機能を有することを特徴とする前記1又は2記載の有機エレクトロニクス素子。
【0023】
4.前記一般式(1)のBで表される構造が、カルボリン、ジアザカルバゾール、アザトリフェニレン、ナフタレンジカルボン酸ジイミド及びペリレンジカルボン酸ジイミドから選ばれる少なくとも1種の構造であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の有機エレクトロニクス素子。
【0024】
5.前記一般式(1)のBで表される構造が、下記一般式(2)で表される構造であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロニクス素子。
【0025】
【化2】

【0026】
(式中、Rは、置換または無置換の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基を表し、Lは2価の連結基を表し、単結合、酸素原子、それぞれ置換または無置換の、硫黄原子、窒素原子、珪素原子、ゲルマニウム原子、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基から選ばれるいずれかを表す。Zは芳香族環を形成する原子群を表し、Zは含窒素芳香族6員環を形成する原子群を表す。)
6.前記一般式(2)のZおよびZで表される芳香族環がともに含窒素芳香族6員環であることを特徴とする、前記5記載の有機エレクトロニクス素子。
【0027】
7.前記一般式(1)のBで表される構造が、下記一般式(3)で表される構造であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の有機エレクトロニクス素子。
【0028】
【化3】

【0029】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基を表すが、少なくとも一つは置換または無置換の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基を表す。L〜Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、単結合、酸素原子、それぞれ置換または無置換の、硫黄原子、窒素原子、珪素原子、ゲルマニウム原子、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基から選ばれるいずれかを表す。)
8.前記一般式(3)のR〜Rで表される置換基のうち少なくとも一つは、ハロゲン化アルキル基であることを特徴とする前記7記載の有機エレクトロニクス素子。
【0030】
9.前記一般式(1)で表される化合物のLUMOが3.0eV以下であることを特徴とする前記1又は2記載の有機エレクトロニクス素子。
【0031】
10.前記一般式(1)のBで表される構造が、トリアリールアミン、カルバゾール及びジベンゾフランから選ばれる少なくとも1種の構造であることを特徴とする前記9記載の有機エレクトロニクス素子。
【0032】
11.前記1〜10のいずれか1項記載の有機エレクトロニクス素子の有機層が、p型半導体材料とn型半導体材料とを含有するバルクヘテロジャンクション層であり、かつn型半導体材料としてフラーレン誘導体を含有する有機光電変換素子であることを特徴とする有機光電変換素子。
【0033】
12.前記1〜10のいずれか1項記載の有機エレクトロニクス素子の有機層が、発光ホスト材料と発光ドーパント材料とを含有するりん光発光層であり、かつドーパント材料としてイリジウム錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、バルクヘテロジャンクション層と電極の間に効果的な膜厚を有するブロック層を、生産性の高い塗布法によってバルクヘテロジャンクション層または発電層といった有機層と同時に形成し、高い光電変換効率を得ること、およびそのために必要な高い曲線因子を得ること、さらにはダークスポットの発生の少なく、耐久性の高い有機エレクトロニクス素子を得た。また、この技術は同様の層構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子においても、高い発光効率を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子を示す断面図である。
【図2】X線光電子分光法(XPS)による、深さ方向のF、N、S原子の存在比率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明者らは、有機光電変換素子における上述したような課題を見出し、その解決手段として有機層を形成する際に、前記有機層において最大のHOMOを有する材料よりも大きいHOMOを有している正孔ブロック性を有する特定の材料もしく最小のLUMOを有する材料よりも小さいLUMO準位を有している電子ブロック性を有する特定の材料を含有して塗布することによって自発的に正孔または電子ブロック層が前記有機層上に自発的に形成され、整流性の高いデバイスを得ることができることによって高い光電変換効率の有機光電変換素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0037】
本発明を更に詳しく説明する。
【0038】
(有機エレクトロニクス素子)
有機エレクトロニクス素子とは、有機物からなる薄膜層から電気に有用な特性を得る素子のことである。たとえば電気を流すと発光する有機エレクトロルミネッセンス素子や、光を照射すると発電する有機光電変換素子および電流量・電圧量を制御することができる有機薄膜トランジスタ素子などを挙げることができる。本発明においては、有機エレクトロルミネッセンス素子および有機光電変換素子、中でも有機光電変換素子において好ましく用いることができる。以下、有機光電変換素子から説明する。
【0039】
(有機光電変換素子の構成)
図1は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子の一例を示す断面図である。図1において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、基板11の一方面上に、透明電極12、電子ブロック層(正孔輸送層)17、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部14、正孔ブロック層(電子輸送層)18及び対極13が順次積層されている。
【0040】
基板11は、順次積層された透明電極12、光電変換部14及び対極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板11は、必須ではなく、例えば、光電変換部14の両面に透明電極12及び対極13を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。
【0041】
光電変換部14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0042】
図1において、基板11を介して陽極12から入射された光は、発電層14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、陽極12と陰極13の仕事関数が異なる場合では陽極12と陰極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、陽極12の仕事関数が陰極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、陽極12へ、正孔は、陰極13へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、陽極12と陰極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0043】
図1において、基板11を介して透明電極12から入射された光は、光電変換部14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極12と対極13の仕事関数が異なる場合では透明電極12と対極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、透明電極12の仕事関数が対極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、透明電極12へ、正孔は、対極13へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、透明電極12と対極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0044】
なお図1には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0045】
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
【0046】
〔励起子ブロック層、正孔ブロック層及び電子ブロック層〕
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層14と透明電極12との中間には電子ブロック層17、又は対極13との間に正孔ブロック層18を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため有している。すなわち、正孔ブロック層18があることでバルクヘテロジャンクション層14で発生した正孔は陰極(通常、対電極13)には輸送されず、また電子ブロック層17があることでバルクヘテロジャンクション層14で発生した電子は陽極(通常、透明電極12)へ輸送されることが無くなり、高い整流比・曲線因子(フィルファクター)を有する光電変換素子を得ることができる。
【0047】
これらの励起子ブロック層、正孔ブロック層及び電子ブロック層は本発明の一般式(1)で表される化合物を有機層(バルクヘテロジャンクション層)の上に塗布することにより形成することができる。
【0048】
本発明の一般式(1)で表される化合物において、Rは置換または無置換の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基を表す。
【0049】
で表される置換基は、非常に表面エネルギーの小さい置換基であるため、前記一般式(1)で表される化合物を0.01〜10%の範囲で有機層形成溶液に含有させて塗布すると、Rで表される置換基が選択的に溶液の再表面に配列するため、塗布した溶液が乾燥した際には前記一般式(1)で表される化合物からなる薄膜が、目的とする有機層の上部に自発的に生成することができる。このような効果によって、1回の製膜プロセスによって2層を同時に形成することができるといった効果を有している。より好ましくは表面エネルギーがより少ないアルキル基またはハロゲン化アルキル基であり、最も好ましくはハロゲン化アルキル基である。
【0050】
は2価の連結基を表し、単結合、酸素原子、それぞれ置換または無置換の、硫黄原子、窒素原子、珪素原子、ゲルマニウム原子、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基から選ばれるいずれかを表す。これらが複数組み合わさって連結されていても良い。好ましくは、電子または正孔ブロック性の母核Bのエネルギー準位に影響を与えにくい単結合である。
【0051】
nは、1〜4の正の整数を表す。
【0052】
Bが正孔ブロック性の母核の場合は、有機層に用いられている最大のHOMOを有する材料よりも大きいHOMOを有しており、Bが電子ブロック性の母核の場合は、有機層に用いられている最小のLUMOを有する材料よりも小さいLUMO準位を有している。
【0053】
より詳しくは、前記一般式(1)で表される化合物を含有する層を正孔ブロック層として使用するか、電子ブロック層として使用するか、また有機エレクトロニクス素子が有機光電変換素子か有機エレクトロルミネッセンス素子かによって異なる。
【0054】
正孔ブロック層として有機光電変換素子に使用する際には、隣接する有機層において最もHOMO準位が深いのはバルクヘテロジャンクション層に含まれるn型半導体材料であり、通常フラーレン誘導体である。このHOMO準位は約6.1〜6.2eVであり、正孔ブロック層として機能させるためにはこれよりも0.2〜0.3eV以上深いHOMOを有していることが好ましい。すなわち、6.4eV以上のHOMOを有していることが好ましい。
【0055】
Bは具体的には、フェナントロリン、カルボリン、ジアザカルバゾール、アザトリフェニレン、ナフタレンジカルボン酸ジイミド、又はペリレンジカルボン酸ジイミド等を挙げることができる。
【0056】
中でも一般式(2)で表されるような化合物が好ましい。式中、Rは、置換または無置換の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基を表し、Lは2価の連結基を表し、単結合、酸素原子、それぞれ置換または無置換の、硫黄原子、窒素原子、珪素原子、ゲルマニウム原子、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基から選ばれるいずれかを表す。Zは芳香族環を形成する原子群を表し、Zは含窒素芳香族6員環を形成する原子群を表す。
【0057】
このようなカルバゾール誘導体からなる母核が、キャリア移動度が高く高効率な光電変換効率の光電変換素子を提供することができる。
【0058】
より好ましくは一般式(2)においてZおよびZがともに含窒素芳香族6員環である化合物である。このような化合物はHOMOが深く、かつ高いキャリア移動度を有するために好ましい。
【0059】
さらに好ましくは、一般式(3)で表されるような、γ位に窒素原子を有する、γ−ジアザカルバゾール母核である。式中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基を表すが、少なくとも一つは置換または無置換の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基を表す。L〜Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、単結合、酸素原子、それぞれ置換または無置換の、硫黄原子、窒素原子、珪素原子、ゲルマニウム原子、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基から選ばれるいずれかを表す。
【0060】
なお有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔ブロック層として用いる場合には、隣接する有機層において最もHOMO準位が深いのは通常発光層に含まれる発光ホスト材料である。このHOMO準位は約5.5〜6.0eVであり、正孔ブロック層として機能させるためにはこれよりも0.2〜0.4eV以上深いHOMOを有していることが好ましい。すなわち、6.4eV以上のHOMOを有していることが好ましい。したがって、前述の有機光電変換素子の正孔ブロック層材料と同様の材料を有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔ブロック層として使用することができる。
【0061】
以下、本発明の一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。これらの化合物は、WO2004/095889号パンフレットおよびWO2004/053019号パンフレット等を参考として合成することができる。
【0062】
【化4】

【0063】
【化5】

【0064】
【化6】

【0065】
【化7】

【0066】
次に電子ブロック層として有機エレクトロニクス素子に使用する場合について記載する。電子ブロック層として有機エレクトロニクス素子に使用する際には、隣接する有機層において最もLUMO準位が浅いのはバルクヘテロジャンクション層に含まれるp型半導体材料であり、およそ3.7〜3.3eV程度であり、正孔ブロック層として機能させるためにはこれよりも0.2〜0.3eV以上浅いHOMOを有していることが好ましい。すなわち、3.0eV以下のLUMOを有していることが好ましい。
【0067】
このようなLUMO準位を得るためには、前記一般式(1)のBで表される構造が、トリアリールアミン、カルバゾール及びジベンゾフランから選ばれる構造であることで達成することができる。これらの構造のうち、より好ましくはトリアリールアミン構造である。なお本実施形態において電子ブロック層はバルクヘテロジャンクション層の上層に形成されるため、通常とは逆に透明電極12を陰極として使用し、対電極13を陽極として使用することが必要となる。この場合、対電極13として金やパラジウム、ニッケル等、高仕事関数の金属を用いることで逆構成の有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。
【0068】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、逆構成は一般的ではないが、必要に応じて同様に上記のような逆構成とすることで本発明の有機エレクトロニクス素子を得ることもできる。
【0069】
以下、本発明の一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。これらの化合物は、特表2008−545729号パンフレット等を参考として合成することができる。
【0070】
【化8】

【0071】
これらの材料によって形成される層は、0.5〜10nmの膜厚であることが好ましい。これ以上薄いと正孔ブロック性が不十分となり、これ以上厚いと電子輸送性が不十分となるためである。より好ましくは1〜5nmの膜厚である。膜厚は、前記一般式(1)〜(3)で表される化合物の溶液濃度や塗布時の条件、あるいはR〜Rで表される置換基のアルキル鎖長などによって制御することができる。
【0072】
なお本発明の材料はキャリアブロック性を有するが、本発明のキャリアブロック層と電極の間にさらにキャリア輸送を補助するキャリア輸送層を製膜しても良い。
【0073】
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層17としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、WO2006/019270号パンフレット等に記載のシアン化合物、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。
【0074】
また電子輸送層18としては、例えば、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。
【0075】
〔p型半導体材料〕
本発明のバルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマーが挙げられる。
【0076】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0077】
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
【0078】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、WO2008000664に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0079】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0080】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。より好ましくは、本発明のn型有機半導体材料であるフラーレン誘導体と適度な相溶性を有するような化合物(適度な相分離構造形成し得る化合物)であることが好ましい。
【0081】
他方で、より厚い膜を得るためには、一度塗布した層の上にさらに塗布することができれば、容易に厚い膜を得ることができるが、通常溶解性の良い材料からなる層の上にさらに層を溶液プロセスによって積層使用とすると、下地の層を溶かしてしまうために積層することができないという課題を有していた。したがって、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料が好ましい。
【0082】
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号、および特開2008−16834等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料などを挙げることができる。
【0083】
[n型半導体材料]
本発明のバルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0084】
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0085】
中でも[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7329709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0086】
〔バルクヘテロジャンクション層およびキャリアブロック層の形成方法〕
バルクヘテロジャンクション層とキャリアブロック層を同時に形成する方法としては、塗布法を用いることで達成することができる。具体的にはキャスト法、スピンコート法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。さらには、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法等を例示することができる。塗布法は、製造速度にも優れているが、2層を同時に製膜できることで、より生産性を向上させることができる。
【0087】
本発明では、バルクヘテロジャンクション層を形成するp型半導体材料、n型半導体材料、および前記一般式(1)〜(3)で表されるキャリアブロック層材料、および溶媒を混合して塗布するだけで、キャリアブロック層材料が表面エネルギーを推進力として自発的に表層に製膜される。単純に塗布するだけでキャリアブロック層が得られることもあるが、塗布膜内での材料の再配向を加速するために加熱や溶媒アニール、電界印加、音波や振動等の印加等を行ってもよい。中でも加熱処理が最も好ましい。
【0088】
〔その他の層〕
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔注入層、電子注入層、UV吸収層、光反射層、波長変換層などを挙げることができる。
【0089】
〔透明電極(陽極)〕
本発明の透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、通常陽極として用いることが一般的である。なお本発明において陽極とは、正孔を取り出す電極のことを意味する。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0090】
またポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
【0091】
〔対電極(陰極)〕
本発明の対電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、通常陰極として用いることが一般的である。なお本発明において陰極とは、電子を取り出す電極のことを意味する。例えば、陰極として用いる場合、対電極は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用しても良い。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。対電極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0092】
対電極の導電材として金属材料を用いれば対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0093】
また、対電極13は、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により形成でき好ましい。
【0094】
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
【0095】
〔基板〕
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0096】
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
【0097】
また、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよい。
【0098】
〔光学機能層〕
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していて良い。光学機能層としては、たとえば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層などを設けても良い。
【0099】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0100】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0101】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0102】
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物などのナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層などを挙げることができる。
【0103】
〔パターニング〕
本発明に係る電極、発電層、電子ブロック層、正孔ブロック層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0104】
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取っても良いし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしても良い。
【0105】
電極材料などの不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチング又はリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成しても良い。
【0106】
(封止)
また、作製した有機光電変換素子10が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、有機光電変換素子だけでなく有機エレクトロルミネッセンス素子などで公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上10を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
【0107】
《有機エレクトロルミネッセンス素子》
次に有機エレクトロニクス素子の第2の例として、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子ともいう)について説明する。
【0108】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の好ましい態様を説明するが、これに限定されるものではない。有機エレクトロルミネッセンス素子としては特に制限がなく、陽極と陰極と、両者に挟まれた有機層が少なくとも1層以上あり、電流を流すと発光する素子であればよい。
【0109】
有機電界発光素子の層構成の好ましい具体例を以下に示す。
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(vi)陽極/正孔輸送層/第1発光層/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第2発光層/電子輸送層/陰極
ここで、発光層は、少なくとも発光色の異なる2種以上の発光材料を含有していることが好ましく、単層でも複数の発光層からなる発光層ユニットを形成していてもよい。また、発光スタック自体が複数個積層された、タンデム構成((vi)の構成)であっても良い。また、正孔輸送層には正孔注入層、電子阻止層も含まれる。
【0110】
上記各層の材料は、前述の有機光電変換素子と同じものを使用することもできるし、公知の材料を適宜使用しても良い。以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子独自に使用する発光層についてのみ詳細に説明する。
【0111】
<発光層>
発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。前記発光層は、含まれる発光材料が前記要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あってもよい。
【0112】
各発光層間には非発光性の中間層を有していることが好ましい。
【0113】
発光層の膜厚の総和は1〜100nmの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、より低い駆動電圧を得ることができることから30nm以下である。なお、ここでいうところの発光層の膜厚の総和とは、発光層間に非発光性の中間層が存在する場合には、該中間層も含む膜厚である。
【0114】
個々の発光層の膜厚としては1〜50nmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは1〜20nmの範囲に調整することである。青、緑、赤の各発光層の膜厚の関係については、特に制限はない。
【0115】
発光層の作製には、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。
【0116】
各発光層には複数の発光材料を混合してもよく、また、りん光発光材料と蛍光発光材料を同一発光層中に混合して用いてもよい。
【0117】
発光層の構成として、ホスト化合物、発光材料(発光ドーパント化合物ともいう)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。
【0118】
有機電界発光素子の発光層に含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)におけるりん光発光のりん光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。更に好ましくはりん光量子収率が0.01未満である。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
【0119】
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、または複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機電界発光素子を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
【0120】
ホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
【0121】
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ発光の長波長化を防ぎ、なお且つ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
【0122】
次に、発光材料について説明する。
【0123】
発光材料としては、蛍光性化合物、りん光発光材料(りん光性化合物、りん光発光性化合物等ともいう)を用いる。
【0124】
前記りん光発光材料とは励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にてりん光発光する化合物であり、りん光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいりん光量子収率は0.1以上である。
【0125】
前記りん光量子収率は第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのりん光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明においてりん光発光材料を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて上記りん光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
【0126】
りん光発光材料は、有機電界発光素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0127】
具体的なイリジウム化合物としては、Organic Letter誌、vol3、No.16、2579〜2581頁(2001)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685〜1687頁(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704〜1711頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055〜3066頁(2002年)、New Journal of Chemistry.,第26巻、1171頁(2002年)、European Journal of Organic Chemistry,第4巻、695〜709頁(2004年)などに記載の化合物等を用いることができる。
【0128】
本発明においては、少なくとも一つの発光層に2種以上の発光材料を含有していてもよく、発光層における発光材料の濃度比が発光層の厚さ方向で変化していてもよい。
【実施例】
【0129】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0130】
実施例1(有機光電変換素子の正孔ブロック層として用いる例)
<比較の有機光電変換素子1の作製>
パターン形成した透明電極付ガラス基板を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に10分間の紫外線オゾン洗浄を行った。
【0131】
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を30nmの膜厚でスピンコートした後、140℃で大気中10分間加熱乾燥した。
【0132】
これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で3分間加熱処理した。クロロベンゼンにp型半導体材料として、プレクストロニクス社製プレックスコアOS2100を1.0質量%、n型半導体材料としてフロンティアカーボン社製E100(PCBM)0.8質量%を溶解した液を作製し、0.45μmのフィルタでろ過をかけながら700rpmで60秒のスピンコートを行い、室温で30分放置し、90〜100nmの厚さを有するバルクヘテロジャンクション層を得た。
【0133】
次に、上記一連の有機層を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまでに真空蒸着機内を減圧した後、フッ化リチウムを5nm、Alを80nmを蒸着した。最後に120℃で30分間の加熱を行い、比較の有機光電変換素子1を得た。なお蒸着速度はいずれも2nm/秒で蒸着し、2mm角のサイズとした。
【0134】
得られた有機光電変換素子1は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出し、有機光電変換素子1とした。
【0135】
<比較の有機光電変換素子2の作製>
前記有機光電変換素子1の作製において、バルクヘテロジャンクション層をスピンコートした後、TiOxからなる正孔ブロック層を形成した。まずエタノールにTi−イソプロポキシドを0.05mol/lになるように溶解した液を調製し、膜厚5nmとなるように塗布を行い、水蒸気量を調節した窒素中放置して電子輸送層を成膜した。
【0136】
以降は同様にして封止まで行い、有機光電変換素子2を作製した。
【0137】
<比較の有機光電変換素子3、4、および本発明の有機光電変換素子5〜8の作製>
前記有機光電変換素子1の作製において、バルクヘテロジャンクション層をスピンコートする際に、プレクストロニクス社製プレックスコアOS2100を1.0質量%、n型半導体材料としてフロンティアカーボン社製E100(PCBM)0.8質量%、および正孔ブロック層材料として表1に記載の化合物0.05%の混合溶液に変更した以外は同様にして比較の有機光電変換素子3〜8を作製した。
【0138】
得られた有機光電変換素子1〜8について、以下の評価を行った。
【0139】
(HOMO準位の測定)
アルバック・ファイ社製PHI−1800を用いて紫外線光電子分光法を用いて、HOMO準位を測定した。
【0140】
(曲線因子、変換効率の評価)
上記作製した光電変換素子に、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、エネルギー変換効率η(%)、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、曲線因子(フィルファクター、FF)を、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、平均値を求めた。なおJsc、Voc、FF、η(%)は以下の関係にある。
【0141】
式1 Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF=η(%)
(相対効率低下)
ソーラシミュレーター(AM1.5G)の光を100mW/cmの照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、初期の変換効率を測定した。さらに、この時の初期変換効率を100とし、陽極と陰極の間に抵抗を接続したまま100mW/cmの照射強度で100h照射し続けた後の変換効率を評価し、相対低下効率を算出した。
【0142】
上記作製した素子を、100Wハロゲンランプの光に1000時間暴露した。続いて、暴露後の素子について、上述の方法と同様にしてエネルギー変換効率を求め、式2に従って保持率を求め、表1に示した。
【0143】
(式2)保持率(%)=暴露後の変換効率/暴露前の変換効率×100
ソーラシミュレーターの光を100mW/cm(AM1.5G)の照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、変換効率を測定した。
【0144】
上記の比較例1の初期効率の半減期を100としたときの相対値にて他の有機光電変換素子の評価を行った。
【0145】
【表1】

【0146】
【化9】

【0147】
表1から、比較の有機光電変換素子1〜3は耐久性に劣ることがわかる。比較の有機光電変換素子4は多少改善されているが、本発明の有機光電変換素子5〜8の方が、曲線因子、変換効率が高く、さらには耐久性も高いことがわかる。
【0148】
実施例2(電子ブロック層の膜厚評価)
ガラス基板上に、前記有機光電変換素子8と同様にしてバルクヘテロジャンクション層が乾燥膜厚100nmになるようスピンコートした。すなわち、プレクストロニクス社製プレックスコアOS2100を1.0質量%、n型半導体材料としてフロンティアカーボン社製E100(PCBM)0.8質量%、および正孔ブロック層材料として例示化合物14を0.05%含有する混合溶液をスピンコートした。
【0149】
得られた基板について、深さ方向をエッチングしながら2.5nmおきにX線光電子分光法(XPS)を用いてF、N、S原子の存在比率を評価した。図2からわかるように、表面からおよそ10nm前後で正孔ブロック層材料由来のフッ素および窒素原子が消失し、バルクヘテロジャンクション層由来の硫黄原子が検出され始めたことから、正孔ブロック層の厚さは10nm以下であり、かつ、バルクヘテロジャンクション層の上部に存在することが判る。
【0150】
実施例3(有機光電変換素子の電子ブロック層として用いる例)
<比較の有機光電変換素子11の作製>
パターン形成した透明電極付ガラス基板を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に10分間の紫外線オゾン洗浄を行った。
【0151】
この透明基板上に、エタノールにTi−イソプロポキシドを0.05mol/lになるように溶解した液を調製し、膜厚5nmとなるように塗布を行い、水蒸気量を調節した窒素中放置して電子輸送層として酸化チタン膜(TiOx膜)を成膜し、大気中に30分放置した後、120℃で10分間の加熱を行った。
【0152】
これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で3分間加熱処理した。クロロベンゼンにp型半導体材料として、プレクストロニクス社製プレックスコアOS2100を1.0質量%、n型半導体材料としてフロンティアカーボン社製E100(PCBM)0.8質量%を溶解した液を作製し、0.45μmのフィルタでろ過をかけながら700rpmで60秒のスピンコートを行い、室温で30分放置し、90〜100nmの厚さを有するバルクヘテロジャンクション層を得た。
【0153】
次に、上記一連の有機層を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまでに真空蒸着機内を減圧した後、Auを80nmを蒸着した。最後に120℃で30分間の加熱を行い、比較の有機光電変換素子11を得た。なお蒸着速度はいずれも2nm/秒で蒸着し、2mm角のサイズとした。
【0154】
得られた有機光電変換素子1は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出し、有機光電変換素子11とした。
【0155】
<本発明の有機光電変換素子12の作製>
前記有機光電変換素子11の作製において、バルクヘテロジャンクション層をスピンコートする際に、プレクストロニクス社製プレックスコアOS2100を1.0質量%、n型半導体材料としてフロンティアカーボン社製E100(PCBM)0.8質量%、および電子ブロック層材料として例示化合物31を0.05%含有する混合溶液に変更した以外は同様にして比較の有機光電変換素子12を作製した。
【0156】
得られた有機光電変換素子11〜12について、実施例1と同様に曲線因子、変換効率の評価を行った。
【0157】
(LUMO準位の測定)
アルバック・ファイ社製PHI−1800を用いて紫外線光電子分光法を用いて、HOMO準位を測定した。さらに薄膜の可視光吸収末端からバンドギャップを算出し、前記HOMO準位の値からバンドギャップを減じた値をLUMO準位とした。
【0158】
【表2】

【0159】
表2から、本発明の有機光電変換素子12の方が、曲線因子、変換効率が高いことがわかる。
【0160】
実施例4(有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔ブロック層として用いる例)
(比較の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子ともいう)1の作製)
実施例1と同様に、パターン形成した透明電極付ガラス基板を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に10分間の紫外線オゾン洗浄を行った。
【0161】
このガラス基板を市販のスピンコーターに取り付け、正孔注入層PEDOT(PEDOT:PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)をスピンコート(膜厚約40nm)し、ホットプレートで200℃1時間加熱し、正孔注入層とした。更に下記組成の白色発光組成物を1mlとなるように調整し、スピンコートした(膜厚約25nm)。
【0162】
白色発光組成物
溶媒:トルエン 100質量%
ホスト材料:H−A 1質量%
青色材料:Ir−A 0.10質量%
緑色材料:Ir(ppy) 0.004質量%
赤色材料:Ir(piq) 0.005質量%
電子輸送層まで設けた基板を、大気暴露させずに、蒸着機に移動し、4×10−4Paまで減圧した。なお、タンタル製抵抗加熱ボートにフッ化リチウム、また、タングステン製抵抗加熱ボートに、アルミニウムを入れ、蒸着機内に取り付けておいた。
【0163】
まず、タンタル製抵抗熱ボートに通電し加熱し、基板上にフッ化リチウムの電子注入層を0.5nm設けた。つづいて、タングステン製タンタル加熱ボートに通電し加熱し、蒸着速度1〜2nm/秒で膜厚100nm、巾5cmの陰極を、前記透明導電膜と直交するように蒸着した。
【0164】
【化10】

【0165】
得られた比較の有機EL素子1は、封止剤(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて厚さ30μmの厚さのアルミニウムホイルと封止を行ったのち、大気中に取り出した。
【0166】
(本発明の有機EL素子2の作製)
前記の有機EL素子1の作製において、発光層組成物を以下のように変更した以外は同様にして、有機EL素子2を作製した。
【0167】
白色発光組成物
溶媒:トルエン 100質量%
ホスト材料:H−A 1質量%
青色材料:Ir−A 0.10質量%
緑色材料:Ir(ppy) 0.004質量%
赤色材料:Ir(piq) 0.005質量%
正孔ブロック材料:例示化合物14 0.02質量%
<有機EL素子の外部量子効率>
作製した有機EL素子について、23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で株式会社エーディーシー製、直流電圧・電流源R6243を用いて2.5mA/cm定電流を印加した時の2度視野角正面輝度をコニカミノルタセンシング株式会社製分光放射輝度計CS1000を用いて測定し、測定された輝度から外部取り出し量子効率(%)を測定した。
【0168】
得られた結果を表3に示す。
【0169】
【表3】

【0170】
表3から、本発明の有機EL素子の外部量子効率が向上し、良好な有機EL素子が得られていることがわかる。
【符号の説明】
【0171】
10 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子
11 基板
12 透明電極
13 対極
14 光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)
17 電子ブロック層
18 正孔ブロック層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極、対極、およびその間に有機層を有する有機エレクトロニクス素子であって、該有機層は、下記一般式(1)で表される化合物を、該有機層を形成する総固形分濃度に対して0.01〜10%含有する塗布液を塗布して、製膜された有機層であって、かつ、該製膜された有機層の上部は、該一般式(1)で表される化合物からなる自発的に配列した正孔ブロック層または電子ブロック層が形成されていることを特徴とする有機エレクトロニクス素子。
【化1】

(式中、Rは置換または無置換の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基を表す。Lは2価の連結基を表し、単結合、酸素原子、それぞれ置換または無置換の、硫黄原子、窒素原子、珪素原子、ゲルマニウム原子、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基から選ばれるいずれかを表す。Bが正孔ブロック性の母核の場合は、有機層に用いられている最大のHOMOを有する材料よりも大きいHOMOを有しており、Bが電子ブロック性の母核の場合は、有機層に用いられている最小のLUMOを有する材料よりも小さいLUMO準位を有している。nは、1〜4の正の整数を表す。)
【請求項2】
前記有機エレクトロニクス素子において、前記自発的に配列した正孔または電子ブロック層が0.5〜10nmの膜厚で形成されていることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロニクス素子。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、HOMOが6.4eV以上である正孔ブロック機能を有することを特徴とする請求項1又は2記載の有機エレクトロニクス素子。
【請求項4】
前記一般式(1)のBで表される構造が、カルボリン、ジアザカルバゾール、アザトリフェニレン、ナフタレンジカルボン酸ジイミド及びペリレンジカルボン酸ジイミドから選ばれる少なくとも1種の構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の有機エレクトロニクス素子。
【請求項5】
前記一般式(1)のBで表される構造が、下記一般式(2)で表される構造であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロニクス素子。
【化2】

(式中、Rは、置換または無置換の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基を表し、Lは2価の連結基を表し、単結合、酸素原子、それぞれ置換または無置換の、硫黄原子、窒素原子、珪素原子、ゲルマニウム原子、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基から選ばれるいずれかを表す。Zは芳香族環を形成する原子群を表し、Zは含窒素芳香族6員環を形成する原子群を表す。)
【請求項6】
前記一般式(2)のZおよびZで表される芳香族環がともに含窒素芳香族6員環であることを特徴とする、請求項5記載の有機エレクトロニクス素子。
【請求項7】
前記一般式(1)のBで表される構造が、下記一般式(3)で表される構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の有機エレクトロニクス素子。
【化3】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基を表すが、少なくとも一つは置換または無置換の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基を表す。L〜Lはそれぞれ独立に2価の連結基を表し、単結合、酸素原子、それぞれ置換または無置換の、硫黄原子、窒素原子、珪素原子、ゲルマニウム原子、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基から選ばれるいずれかを表す。)
【請求項8】
前記一般式(3)のR〜Rで表される置換基のうち少なくとも一つは、ハロゲン化アルキル基であることを特徴とする請求項7記載の有機エレクトロニクス素子。
【請求項9】
前記一般式(1)で表される化合物のLUMOが3.0eV以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の有機エレクトロニクス素子。
【請求項10】
前記一般式(1)のBで表される構造が、トリアリールアミン、カルバゾール及びジベンゾフランから選ばれる少なくとも1種の構造であることを特徴とする請求項9記載の有機エレクトロニクス素子。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の有機エレクトロニクス素子の有機層が、p型半導体材料とn型半導体材料とを含有するバルクヘテロジャンクション層であり、かつn型半導体材料としてフラーレン誘導体を含有する有機光電変換素子であることを特徴とする有機光電変換素子。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項記載の有機エレクトロニクス素子の有機層が、発光ホスト材料と発光ドーパント材料とを含有するりん光発光層であり、かつドーパント材料としてイリジウム錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−219212(P2010−219212A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62887(P2009−62887)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】