説明

有機エレクトロルミネセンス素子のための材料

本発明は、4,4’-置換スピロビフルオレンに関し、優秀な特性のゆえに有機エレクトロルミネッセンス素子のための機能性材料として適切である。さらに、本発明は、4,4’-置換スピロビフルオレンの製造方法とこれら化合物の有機エレクトロルミネッセンス素子での使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優秀な特性のゆえに、有機エレクトロルミネッセンス素子における機能性材料として適切である4,4’-置換スピロビフルオレンに関する。さらに、本発明は、4,4’-置換スピロビフルオレンの製造方法とこれら化合物の有機エレクトロルミネッセンス素子での使用にも関する。
【0002】
有機エレクトロルミネセンス素子の一般的構造は、たとえば、US 4539507、US 5151629、EP 0676461およびWO 98/27136に記載されている。しかしながら、これらの素子では更なる改善がなお必要とされる。
【0003】
1.駆動寿命は、特に、青色もしくは緑色発光の場合に、未だ短く、その結果、これまでは単純な商業用途を達成することができるだけであった。
【0004】
2.使用される化合物は、ある場合には、共通の有機溶媒にかろうじて可溶性なだけであるが、それは、合成中のそれらの精製をより困難とするのみならず、溶液からの材料の加工と電子素子製造設備の清掃をより困難とする。
【0005】
3.使用される材料、特に、先行技術によるスピロビフルオレン材料は、低い三重項エネルギーを有することが多い。これは、三重項状態から発光する材料との組み合わせで発光の消光を生じ、ひいては、効率の低下を生じる。
【0006】
JP 2006/256982 および WO 2002/051850は、スピロビフルオレン単位の2,2’-位置を介して結合する部分共役スピロビフルオレン化合物を記載している。
【0007】
DE 19804310 および EP 676461は、スピロビフルオレン単位の2,2’,7,7’,4,4’-位置を介して結合する部分共役スピロビフルオレン化合物を記載している。
【0008】
特に、優秀な加工可能性が、これら材料の優位性として言及される。しかしながら、電子特性に関しては、エレクトロルミネッセンスは適当な高い電圧の適用により観察されると報告されているだけであり、電圧、効率および寿命については、コメントはない。
【0009】
有機エレクトロルミネッセンス素子のための材料は、入手可能であるが、熱的に安定で、有機電子素子における良好な効率と長い寿命を生じ、素子の製造と駆動において再現可能な結果が得られ、合成により容易に入手可能な改善された材料への需要が、引き続き存在する。さらに、改善は、正孔および電子輸送材料においても必要である。
【0010】
スピロビフルオレン材料は、その非常に良好なフィルム形成性と高いガラス転移温度に基づいて、気相堆積OLEDにおける使用だけでなく、スピロビフルオレンポリマーにおける溶液からの使用または可溶性スピロビフルオレン分子としての使用のための主な優位性を有する。しかしながら、通常の結合(2,2’-位置、2,7-位置)に基づいて、それらは、パラ結合したビフェニルブリッジを常に含み、それゆえの最小の共役を含み、バンドギャップの調整可能性を減じる。これは、特に、トリアリールアミンダイマーの場合に明らかであり、ここで、各場合に、一のトリアリールアミン上の二個のアリール単位は、第2のトリアリールアミン単位とスピロ結合し、その結果、非架橋トリアリールアミンよりも小さいバンドギャップを有することとなる。
【0011】
非対称スピロ化合物は、公知であり、調製することができるが、困難さを伴って、良好な収率と純度で合成により入手することができるだけである。
【0012】
4,4’-置換 スピロビフルオレンは、正孔および電子伝導体のみならず発光エミッターも、パラ結合したビフェニルブリッジを形成することなく、それゆえ上記不都合を生ぜずにスピロ結合することを可能とする。たとえば、これは、緑色もしくは青色三重項発光を消光しない正孔輸送スピロ材料を可能とするが、非常に小さなトリフェニルアミンもしくはトリトリルアミンとは逆に、良好なフィルム形成性とより高いガラス転移温度を有する。同じ作用は、電子伝導体のために使用することができるが、その三重項エネルギーに関するビフェニルブリッジの同様な不都合が観察されてきた。深青色エミッターと三重項エミッターのためのマトリックス材料が同様に可能である。
【0013】
本発明は、以下の式Iの化合物に関する。
【化1】

【0014】
式中:使用される記号は、以下の意味を有する:
Rは、出現毎に同一であるか異なり、F、CN、NO、ArNAr、NAr、C(=O)Ar、ArC(=O)Ar、C(=O)R、P(=O)Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CR、または1以上の非芳香族基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれ;ここで、同一の窒素もしくは燐原子に結合する二個の基Arは、単結合もしくはB(R、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)およびP(=O)Rから選ばれるブリッジにより、互いに連結してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、OH、CN、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2〜40個のC原子を有するアルケニル基(夫々は、1以上のRにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、C=S、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、OもしくはSで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)より成る基から選ばれ;ここで、加えて、基Rの近隣の位置にある各Rは、Rが芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である場合には、基Rに連結する二価基であることができ;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CNおよび1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族炭化水素基(加えて、1以上のH原子は、D、F、CNで置き代えられてよい)、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基より成る基から選ばれ;ここで、二個以上の隣接する置換基Rは、互いに共有結合により連結されてもよく、Rが芳香族もしくは複素環式芳香族基に包含される場合には、一以上の二価の脂肪族炭化水素単位により連結されてもよい。
【0015】
モノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族単位は、好ましくは、5〜60個、特に、好ましくは、5〜40個、より好ましくは、5〜30個、さらにより好ましくは、5〜20個、さらにより好ましくは、6〜14個、最も好ましくは、6〜12個の芳香族環原子を含む。本発明の意味での芳香族環構造は、6〜60個のC原子を含む。本発明の意味での複素環式芳香族環構造は、1〜60個のC原子と少なくとも一つのヘテロ原子を環構造中に含むが、ただし、C原子とヘテロ原子の合計は、少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。本発明の意味での芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、必ずしもアリールもしくはヘテロアリール基のみを含む構造ではなく、加えて、複数のアリールもしくはヘテロアリール基は、たとえば、C、NまたはO原子のような短い非芳香族単位により中断されていてもよい構造を意味するものと解される。このように、たとえば、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン、ベンゾフェノン等のような構造も、本発明の目的のための芳香族環構造を意味するものと解される。同様に、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、複数のアリールもしくはヘテロアリール基が互いに単結合により連結した構造、たとえば、ビフェニル、ターフェニルもしくはビピリジンを意味するものと解される。
【0016】
本発明による芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の例は、各場合に、上記基R、好ましくは、基Rの非芳香族代表基により置換されてよく、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造上で所望の任意の位置を介して連結してもよく、以下を含む:ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンズアントラセン、ベンゾフェナントレン、ジベンゾアントラセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-もしくはトランス-インデノフルオレン、シス-もしくはトランス-インドロカルバゾール、シス-もしくはトランス-インデノカルバゾール、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾール。
【0017】
本発明の目的のために、直鎖、分岐あるいは環状アルキル基は、好ましくは、1〜40個のC原子を、より好ましくは、1〜20個のC原子をまたは3〜40個のC原子を、より好ましくは、3〜20個のC原子を夫々有するアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を夫々意味するものと解される。環状アルキル基は、モノ-、ビ-あるいはポリ-環状アルキル基であり得る。個々の-CH-または-CH-基は、N、NH、OもしくはSで置き代えられてよい。好ましいものは、基メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル(1-メチルプロピル)、tert-ブチル、イソ-ペンチル、n-ペンチル、tert-ペンチル(1,1-ジメチルプロピル)、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル(ネオペンチル)、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、1,2-ジメチルブチル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、1-メチルブチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルおよびオクチニルである。
【0018】
直鎖、分岐あるいは環状アルコキシ基もしくはチオアルコキシ基は、OまたはS原子を介して化合物の残部に結合する上記定義のとおりのアルキル基を意味するものと解される。
【0019】
好ましいアルコキシ基は、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシまたは2-メチルブトキシである。
【0020】
1〜20個または3〜20個の炭素原子を有する本発明の脂肪族炭化水素は、好ましくは、直鎖、分岐あるいは環状アルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり、一以上の炭素原子は、O、NもしくはSで置き代えられてよい。さらに、一以上の水素原子は、フッ素で置き代えられてよい。1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素の例は、上記基である。
【0021】
芳香族もしくは複素環式芳香族炭化水素は、好ましくは、5〜20個、より、好ましくは、5〜10個、最も好ましくは、5〜6個の芳香族環原子を含む。単位が芳香族単位であるならば、環原子として、好ましくは、6〜20個、より好ましくは、6〜10個、最も好ましくは、6個の炭素原子を含む。単位が複素環式芳香族単位であるならば、好ましくは、5〜20個、より好ましくは、5〜10個、最も好ましくは、5個の芳香族環原子を含み、その中の少なくとも一つはヘテロ原子である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。ここで、芳香族もしくは複素環式芳香族単位は、単純な芳香族環、すなわち、ベンゼン、または単純な複素環式芳香族環、たとえば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または縮合アリールもしくはヘテロアリール基、たとえば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフランおよびインドール等を意味するものと解される。
【0022】
したがって、芳香族もしくは複素環式芳香族単位の本発明の例は、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造のためのすでに上記言及した基である。
【0023】
基Rの近隣位置にある各Rが、基Rに連結する二価単位であるならば、二価単位は、好ましくは、-C(R-単位であり、ここで、Rは、1〜20個、好ましくは、1〜10個、より好ましくは、1〜6個、最も好ましくは、1〜3個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、または、5〜20個、より好ましくは、5〜10個、最も好ましくは、5もしくは6個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族炭化水素基である。Rは、各場合に、特に、好ましくは、同一であるか異なり、好ましくは、出現ごとに同一であり、メチルもしくはフェニルである。この場合、基RとRは一緒になって、好ましくは、以下から選ばれる二価基を形成する:
【化2】

【0024】
式中、破線は、対応するRとRが入る位置でのスピロビフルオレンへの結合を表し、フェニル基上の破線または窒素原子上の破線は、置換基としてRが入る原子への結合を表すことを意図している。
【0025】
本発明の更なる具体例では、式Iの化合物のRは、好ましくは、各場合に、同一か異なり、NAr、C(=O)R、RC=CR、または1以上の非芳香族基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有するモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれ;ここで、加えて、同一の窒素原子に結合する二個の基Arは、単結合もしくはC(R、C=O、O、SおよびN(R)から選ばれるブリッジにより、連結してよい。
【0026】
本発明のなお更なる具体例では、式Iの化合物のRは、好ましくは、互いに同一であり、NArまたは5〜20個の芳香族環原子を有するモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。より好ましいRは、NAr、または5〜20個の、より好ましくは、6〜12個の芳香族環原子を有するモノあるいはポリ環状複素環式芳香族環構造であり;ここで、一以上の環原子は、窒素原子である。換言すれば、Rは、電子欠損複素環式芳香族基である。したがって、よりさらに好ましいものは、その少なくとも一つがN原子である6個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族基であるか、その少なくとも二つがヘテロ原子、好ましくは、その一つがN原子である5個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族基である。それらの好ましい例は、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、キノリン、イソキノリン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾールである。Rは、最も好ましくは、置換あるいは非置換1,3,5-トリアジンまたはベンズイミダゾールである。
【0027】
本発明のなお更なる具体例では、式Iの化合物のRは、好ましくは、以下の基より成る群から選ばれる。
【化3−1】

【化3−2】

【0028】
式中:基中の破線は、基がこの位置で結合することを示すことを意図し、基ArとRは、上記と同じ意味を有することを意図し、ここで、sとqは、夫々、互いに独立して、0または1であり、ここで、s=0もしくはq=0に対しては、そのRはHで置き代えられる。Eは、C(R、NR、O、C=O、S、S=OおよびS(O)より成る基から選ばれる。
【0029】
本発明のなお更なる具体例では、Rは、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基より成る基から選ばれ;ここで、加えて、基Rの近隣の位置にある各Rは、基Rの芳香族もしくは複素環式芳香族環構造に連結してもよい二価基であることができる。
【0030】
二価の脂肪族炭化水素単位は、好ましくは、二個の芳香族もしくは複素環式芳香族炭化水素基に互いに結合し、好ましくは、-CH-(CH-CH-基であり、ここで、hは、0、1、2または3であり、多価である場合には、好ましくは、三価もしくは四価単位であり、4〜10個のC原子を有する脂肪族基である。これら単位の一以上、好ましくは、一個のCH基は、NH、OもしくはSで置き代えられてよく、一以上、好ましくは、一個のCH基は、Nで置き代えられてよい。
【0031】
本発明のなお更なる具体例では、Arは、好ましくは、5〜14個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。
【0032】
本発明のなお更なる具体例では、式Iの化合物は、以下の式IIまたはIIIにより特徴付けられる。
【化4】

【0033】
式中:記号RおよびRは、上記具体例と同じ意味を有する。上記言及した好ましい具体例は、式IIおよびIIIの化合物にもあてはまる。
【0034】
前記本発明の具体例または好ましい範囲または定義は、所望により互いに組み合わせることができる。
【0035】
一般式Iのさらに好ましい化合物は、以下の構造式にしたがう。
【化5−1】

【化5−2】

【化5−3】

【化5−4】

【化5−5】

【化5−6】

【0036】
本発明の化合物は、当業者に公知の合成工程により調製することができる。使用される、出発物質は、好ましくは、4,4’-ジブロモ-1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレンであり、スキーム1に示されるプロセスにより調製することができる。
【0037】
スキーム1
【化6】

【0038】
このために、1,2-ジブロモベンゼンと1-メトキシ-3-ジブロモベンゼンが、第一工程でグリニャール反応で互いにカップルし、2-ブロモ-5’-メトキシビフェニルを得る。これらの二個の分子は、引き続き臭素原子の脱離により、ブチルリチウムの存在中でCO基を介して互いにカップルする。夫々2’-位での引き続く臭素化の後、環化が酸の存在下実行され、4,4’-ジブロモ-1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレンを得る。
【0039】
スキーム2
【化7】

【0040】
スキーム2は、4,4’-ジブロモ-1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレンからの本発明の化合物の調製のための四つの異なる可能性を示す。最初の二つの場合は、出発物質が対応するボロン酸と反応するスズキカップリングを含む。第三の反応は、ハートウイッグ-ブーフバルト反応である。最後の場合は、再び、スピロビフルオレンのボロン酸誘導体が複素環式芳香族塩化物と反応するスズキカップリングを含む。両方の反応型は当業者に知られ、文献に数多く記載されてきた。全スキームの共通の特徴は、たとえば、N-フェニル-5-クロロテトラゾールとHとの反応による、メトキシ基の還元的除去である。
【0041】
本発明は、さらに、反応性脱離基、特に、塩素、臭素、沃素、トリフレート、トシレート、ボロン酸もしくはボロン酸エステルによって4,4’-位で置換された、スピロビフルオレンもしくはスピロビフルオレン誘導体が、特に、パラジウム触媒によるスズキカップリングまたはパラジウム触媒によるハートウイッグ-ブフバルトカップリングによって、官能化芳香族化合物もしくは一あるいは二置換アミンにカップリングすることを特徴とする一般式I〜IIIの化合物の調製方法に関する。
【0042】
本発明は、さらに、少なくとも一つの式I、IIもしくはIIIの化合物と少なくとも一つのさらなる化合物を含む混合物に関する。ここで、さらなる化合物は、たとえば、発光化合物、たとえば、燐光エミッターおよび/またはホスト材料であり得る。
【0043】
溶液から本発明の化合物を加工するためには、化合物の溶液と処方が必要である。したがって、本発明は、さらに、少なくとも一つの式I、IIもしくはIIIの化合物と少なくとも一つの溶媒、好ましくは、有機溶媒を含む処方または溶液に関する。
【0044】
本発明は、さらに、電子素子における上記に定義される本発明の化合物の使用に関する。
【0045】
本発明は、さらに、少なくとも一つの上記に定義される本発明の化合物を含む電子素子に関する。
【0046】
電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機光受容器若しく有機レーザーダイオード(O-laser)より成る群から選ばれる。
【0047】
有機エレクトロルミネセンス素子は、陽極、陰極および少なくとも一つの発光層を含み、少なくとも一つの層は、少なくとも一つの式I〜IIIの化合物を含む正孔輸送もしくは注入層、発光層、電子輸送層もしくは他の層であり得る。
【0048】
さらに好ましいのは、複数の発光化合物が同一の層または異なる層中で使用されることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子である。これらの化合物は、特に、好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光波長を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光もしくは燐光を発することができる少なくとも一つのさらなる発光化合物が、発光層中で式I〜IIIの化合物に加えて使用される。特に好ましいものは、3層構造であって、少なくとも一つの層は式I〜IIIの化合物を含み、層は青色、緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光を呈する(基本構造については、たとえば、WO 05/011013参照。)。広帯域エミッターが、同様に白色発光OLEDのために使用することができる。
【0049】
陰極、陽極および発光層とは別に、有機エレクトロルミネッセンス素子は、更なる層を含んでもよい。これらは、たとえば、正孔注入層、正孔輸送層、電子障壁層、励起子障壁層、正孔障壁層、電子輸送層、電子注入層、有機もしくは無機P/N接合および/または電荷生成層である(T. Matsumoto et al., Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer, IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5))。しかしながら、これらの層の夫々は、必ずしも存在しなくてもよいことが指摘されねばならない。代替として、ホスト材料は、電子輸送層中で電子輸送材料として同時に機能してもよい。同様に、有機エレクトロルミネッセンス素子は、別の正孔輸送層を含まず、発光層が正孔注入層もしくは陽極に直接隣接しないことが好ましいかもしれない。さらに、式I〜IIIの化合物が、発光層におけるホストとして、また、置換基に応じて、正孔輸送層および/または正孔注入層における正孔伝導化合物(純粋物質もしくは混合物として)または電子輸送層における電子伝導化合物(純粋物質もしくは混合物として)として使用することが好ましいかもしれない。
【0050】
本発明の好ましい具体例では、式I〜IIの化合物は、正孔輸送材料および/または正孔注入材料として使用される。ここで、発光層は、蛍光もしくは燐光層であり得る。これは、特に、Rが-NArもしくは-Ar-NArならば、あてはまる。化合物は、次いで、好ましくは、正孔輸送層および/または正孔注入層中で使用される。本発明の意味での正孔注入層は、陽極に直接に隣接する層である。本発明の意味での正孔輸送層は、正孔注入層と発光層との間にある層である。式I〜IIIの化合物が、正孔輸送あるいは正孔注入材料として使用されるならば、それらは、電子受容体化合物、たとえば、F-TCNQ(テトラフルオロテトラシアノキノジメタン)またはEP 1476881もしくはEP 1596445に記載されるような化合物でドープされることが好まれてよい。
【0051】
式I〜IIIの化合物が、正孔輸送層中の正孔輸送材料として使用されるならば、100%割合、すなわち純粋物質としてのこの化合物に使用が好ましいかもしれない。
【0052】
本発明の具体例では、式I〜IIIの化合物は、正孔輸送もしくは注入層中で、ヘキサアザトリフェニレン誘導体、特に、ヘキサシアノキサアザトリフェニレン(たとえば、EP 1175470にしたがう)を含む層と組み合わせて使用される。したがって、好ましいものは、たとえば、以下に見られる組み合わせである:陽極-ヘキサアザトリフェニレン誘導体-正孔輸送層であって、正孔輸送層は、一以上の式I〜IIIの化合物を含むもの。この構造では、同様に、複数の連続する正孔輸送層を使用することもでき、少なくとも一つの正孔輸送層は、少なくとも一つの式I〜IIIの化合物を含む。さらに、好ましい組み合わせは、以下に見られる:陽極-正孔輸送層-ヘキサアザトリフェニレン誘導体-正孔輸送層であって、二個の正孔輸送層の少なくとも一つは、一以上の式I〜IIIの化合物を含む。この構造では、同様に、一つの正孔輸送層に代えて複数の連続する正孔輸送層を使用することもでき、少なくとも一つの正孔輸送層は、少なくとも一つの式I〜IIIの化合物を含む。
【0053】
式I〜IIIの化合物が、蛍光および燐光OLEDのための電子輸送材料および/または正孔障壁材料として使用されるのが、さらに好ましい。これは、特に、Rが電子欠損複素環式芳香族基、たとえば、トリアジンもしくはベンズイミダゾールを表すかまたは含み、またはカルボニル置換基を含むならば、この場合である。
【0054】
本発明の好ましい具体例では、式I〜IIIの化合物が発光層中で蛍光および燐光化合物のためのマトリックス材料として使用される。ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子は、一つの発光層または複数の発光層を含んでもよく、少なくとも一つの発光層は、マトリックス材料として、少なくとも一つの本発明の化合物を含む。
【0055】
式I〜IIIの化合物が、発光層中で発光化合物のためのマトリックス材料として使用されるならば、一以上の燐光材料(三重項エミッター)と組み合わせて使用するのが好ましい。本発明による化合物の構造は、高い三重項水準を有し、それゆえ燐光エレクトロルミネッセンス素子における使用のために非常に高度に適している。本発明の意味での燐光は、相対的に高いスピン多重度、すなわちスピン多重度>1を有する状態、特に、励起三重項状態からのルミネッセンスを意味するものと解される。本発明の目的のために、第二、第三遷移金属群からの金属を含むルミネッセンス錯体、特に、すべてのイリジウムおよび白金錯体とすべてのルミネッセンス銅錯体は、燐光化合物とみなされるべきである。ここで、燐光化合物は、可視スペクトル全域で、特に、赤色、オレンジ色、黄色、緑色もしくは青色で発光する化合物であり得る。
【0056】
式I〜IIIの化合物もしくは好ましい具体例と発光化合物の混合物は、エミッターとマトリックス材料の全混合物を基礎として、式I〜IIIの化合物を、99〜1重量%、好ましくは、98〜10重量%、特に好ましくは、97〜60重量%、特に95〜80重量%含む。対応して、混合物は、エミッターとマトリックス材料の全混合物を基礎として、エミッターを、1〜99重量%、好ましくは、2〜90重量%、特に、好ましくは、3〜40重量%、特に、5〜20重量%含む。
【0057】
さらに好ましい本発明の具体例は、さらなるマトリックス材料と組み合わせた燐光エミッターのためのマトリックス材料としての式I〜IIIの化合物の使用である。式I〜IIIの化合物と組み合わせて使用することのできる特に適切なマトリックス材料は、たとえば、WO 04/013080、WO 04/093207、WO 06/005627もしくはWO 2010/006680による芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシドあるいは芳香族スルホキシドもしくはスルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえば、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)または、WO 05/039246、 US 2005/0069729、 JP 2004/288381、 EP 1205527 もしくは WO 08/086851に記載されたカルバゾール誘導体、たとえば、WO 07/063754 または WO 08/056746によるインドロカルバゾール誘導体、たとえば、EP 1617710、 EP 1617711、 EP 1731584、 JP 2005/347160によるアザカルバゾール誘導体、たとえば、WO 07/137725によるバイポーラーマトリックス材料、たとえば、WO 05/111172によるシラン、たとえば、WO 06/117052によるアザカルバゾールもしくはボロン酸エステル、たとえば、WO 2010/015306、 WO 07/063754もしくは WO 08/056746によるトリアジン誘導体、または、たとえば、EP 652273 もしくは WO 09/062578による亜鉛錯体、たとえば、未公開出願DE 102008056688.8によるジアザシロールあるいはテトラアザシロール誘導体または未公開出願DE 102009022858.6,によるジアザホスホール誘導体または未公開出願DE 102009023155.2.およびDE 102009031021.5.によるインデノカルバゾール誘導体である。
【0058】
適切な燐光化合物(三重項エミッター)は、適切な励起により、好ましくは、可視域で発光する化合物を含み、加えて、20より大で、好ましくは、38より大で、84より小な、特に好ましくは、56より大で、80より小な原子番号を有する少なくとも一つの原子を含む。使用される燐光発光エミッターは、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀および金またはユウロピウムを含む化合物、特に、イリジウムもしくは白金を含む化合物である
上記エミッターの例は、出願WO 00/70655、WO 01/41512、 WO 02/02714、WO 02/15645、EP1191613、EP1191612、EP1191614、WO 05/033244 、WO 05/019373およびUS2005/0258742により明らかにされる。また、適切なものは、たとえば、未公開出願EP 10006208.2 および DE 102010027317にしたがう錯体である。一般的に燐光OLEDのために先行技術で使用され、有機エレクトロルミネッセンス分野で当業者により知られるあらゆる燐光化合物が適切であり、当業者は進歩性を必要とすることなく、さらなる燐光錯体を使用することができる。
【0059】
本発明の具体例では、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、別の正孔注入層および/または正孔輸送層および/または正孔障壁層および/または電子輸送層を含まず、換言すれば、たとえば、WO 05/053051に記載されているとおり、発光層は、正孔注入層もしくは陽極に直接隣接し、および/または発光層は、電子輸送層もしくは電子注入層もしくは陰極に直接隣接する。さらに、たとえば、WO 09/030981に記載されているとおり、発光層中の金属錯体と同一または類似する金属錯体を、発光層に直接隣接する正孔輸送もしくは正孔注入材料として使用することも可能である。
【0060】
本発明のさらなる具体例では、式I〜IIIの化合物は、発光層中に、特に、少なくとも一つのさらなる化合物との混合物中に使用される。混合物中での式I〜IIIの化合物は、発光化合物(ドーパント)であることが好ましい。好ましいホスト材料は、その発光が式I〜IIIの化合物よりも短い波長範囲であるか、発光しない有機化合物である。
【0061】
発光層の混合物中の式I〜IIIの化合物の割合は、0.1.0〜99.0重量%、好ましくは、0.5〜50.0重量%、特に好ましくは、1.0〜20.0重量%、特に、1.0〜10.0重量%である。対応して、層中のホスト材料の割合は、1.0〜99.9重量%、好ましくは、50.0〜99.5重量%、特に好ましくは、80〜99.9重量%、特に90.0〜99.0重量%である。
【0062】
適切なホスト材料は、種々なクラスの物質である。好ましいホスト材料は、オリゴアリーレン(たとえば、EP 676461にしたがう2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレンもしくはジナフチルアントラセン)、特に、縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン(たとえば、DPVBiもしくはEP 676461にしたがうスピロ-DPVBi)、ポリポダル金属錯体(たとえば、WO 04/081017にしたがう)、正孔伝導化合物(たとえば、WO 04/058911にしたがう)、電子伝導化合物、特に、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド等(たとえば、WO 05/084081もしくはWO 05/084082にしたがう)、アトロプ異性体(たとえば、EP1655359にしたがう)、ボロン酸誘導体(たとえば、WO 06/177052にしたがう)またはベンズアントラセン誘導体(たとえば、WO 08/145239にしたがう)またはベンズフェナントレン誘導体(たとえばWO 09/069566に従い、未公開出願DE 102009005746.3にしたがう)のクラスから選択される。特に、好ましいホスト材料は、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体、オリゴアリーレンビニレン、ケトン、ホスフィンオキシドおよびスルホキシドのクラスから選択される。非常に、特に、好ましいホスト材料は、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、ベンズフェナントレンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体のクラスから選択される。
【0063】
陰極は、好ましくは、低い仕事関数を有する金属、たとえば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属あるいはランタノイド金属(たとえば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)のような種々の金属を含む金属合金もしくは多層構造を含む。多層構造の場合、たとえばAgのような比較的高い仕事関数を有する金属を前記金属に加えて使用することもでき、たとえば、Mg/Ag、Ca/AgもしくはBa/Agのような金属の組み合わせが一般的に使用される。好ましいものは、同様に金属合金であり、特に、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属および銀を含む合金であり、特に、好ましくは、MgとAgの合金である。高い誘電定数を有する物質の薄い中間層を金属陰極と有機半導体との間に挿入することも好ましい。この目的のために適切なものは、たとえば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属フッ化物だけでなく対応する酸化物もしくは炭酸塩であり(たとえば、LiF、LiO、CsF、CsCO、BaF、MgO、NaF等)、また、たとえば、リチウムキノリナート(Liq)等のこれら金属の有機錯体である。この層の厚さは、好ましくは、0.5〜5nmである。
【0064】
陽極は、好ましくは、高い仕事関数を有する材料を含む。陽極は、好ましくは、真空に対して4.5eV超の高い仕事関数を有する。この目的に適切なものは、一方で、たとえば、Ag、PtもしくはAuのような高還元電位を有する金属である。他方で、金属/金属酸化物電極(たとえば、Al/Ni/NiO、Al/PtO)も好ましいかもしれない。いくつかの用途では、少なくとも一つの電極は、有機材料の照射(O−SC)もしくは光のアウトカップリング(OLED/PLED、O−laser)の何れかを可能とするために、透明であるか、部分的に透明でなければならない。ここで、好ましい陽極材料は、伝導性混合金属酸化物である。特に、好ましいものは、インジウム錫酸化物(ITO)もしくはインジウム亜鉛酸化物(IZO)である。さらに好ましいものは、伝導性のドープされた有機材料、特に、伝導性のドープされたポリマーである。
【0065】
素子は、(用途に応じて)対応して構造化され、接点を供給され、このタイプの素子の寿命は水および/または空気の存在で劇的に短くなることから、最後に、気密に封入される。
【0066】
更に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用され、材料は、10−5mbar未満、好ましくは、10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で真空気相堆積されることを特徴とする。しかしながら、初期圧力は、さらにより低くても、たとえば、10−7mbar未満であってもよいことが留意されねばならない。
【0067】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で、適用される。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)プロセスであって、材料は、直接ノズルにより適用され、それにより構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al.、 Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0068】
更に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷あるいはオフセット印刷、特に、好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)、インクジェット印刷あるいはノズル印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。可溶性の式I〜IIIの化合物がこの目的のために必要とされる。高い溶解度は、適切な化合物の置換により得ることができる。
【0069】
本発明による化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子における使用に関して、先行技術を凌駕する以下の驚くべき優位性を有する。
【0070】
1.対応する素子の量子効率は、同等の置換基がスピロビフルオレンの2,2’-位に結合する先行技術にしたがうシステムと比べてより高い。この理由は、ことによると、消光効果が、パラ結合ビフェニルブリッジとフィルム中のより大きな幾何学的無秩序の不在に基づき減少するからである。
【0071】
2.対応する素子の安定性は、先行技術にしたがうシステムと比べてより高く、これは、特に厚い膜の使用時の、特に、顕著により長い寿命から明らかである。
【0072】
3.本発明の化合物の正孔輸送および/または正孔注入層中の正孔輸送材料としての使用に関して、電圧は、対応する正孔輸送または正孔注入層の層厚により依存しないことが明らかである。逆に、先行技術にしたがう材料では、相対的に厚い層厚の正孔輸送および/または正孔注入層の場合に、電圧のより大きな増加が得られ、このため、今度は、OLEDにおけるより低いパワー効率を生じる。
【0073】
4.しかしながら、特に、本発明の化合物の結晶性が、改善される。先行技術にしたがう化合物は、いくつかの場合で、工業的大量生産で起こるように、気相堆積中の気相堆積源上で結晶化し、そのために、拡張気相堆積源の閉塞を生じるが、この現象は、本発明の化合物の場合には、まったく観察されないか、最小限だけである。したがって、本発明の化合物は、先行技術にしたがう化合物よりも大量生産での使用のためにより適切である。
【0074】
5.高い三重項水準は、本発明の化合物の青色および緑色燐光エレクトロルミネッセンス素子での使用のためにも適切にするが、対応する2,2’-置換スピロビフルオレン誘導体は、この目的のためにより適切ではない。
【0075】
本出願のテキストと以下の例は、OLEDと対応する表示素子に関して、本発明の化合物の使用に向けられる。説明の制限にもかかわらず、当業者は、さらなる発明性を要することなく、本発明の化合物を他の電子素子でのさらなる使用のために用いることができる。
【0076】
本発明は、以下の例により詳細に説明されるが、それにより限定することを望むものではない。当業者は説明に基づいて開示された範囲のすべての発明を実施することができ、発明性を要することなく、本発明のさらなる化合物を合成し、それを電子素子に使用し、本発明のプロセスを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は典型的なPLDE素子の構造を示す。
【図2】図2はレイアウトを示す。
【図3】図3は典型的な測定設備を示す。
【0078】

次の合成は、他に断らない限り、無水溶媒中で、保護ガス雰囲気下で行われる。出発物質として使用される4,4’-ジブロモ-1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレンは、X. Cheng et al., Organic Letters 2004, 6(14), 2381-2383.に従って合成することができる
例1:4,4’-ビス(ナフチル-1-イル)-1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレンの合成:
【化8】

【0079】
300mlのトルエン、100mlのジオキサンと400mlの水の混合物中の25.5g(120ミリモル)のリン酸三カリウム、913mg(3ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンと、次いで、112mg(05.ミリモル)の酢酸パラジウム(II)が、26.7g(50ミリモル)の4,4’-ジブロモ-1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレンと22.4g(130ミリモル)の1-ナフチルボロン酸の十分に攪拌された懸濁液に添加され、混合物は、引き続き、還流下、16時間加熱される。冷却後、沈殿した固形物は吸引ろ過され、50mlのトルエンで三度、50mlのエタノール:水(1:1、v:v)で三度、100mlのエタノールで三度洗浄され、引き続きDMF(約10ml/g)から三度再結晶化される。収率:20g(31ミリモル)で65%。純度99.9%(HPLC)。
【0080】
例2:4,4’-ビス(ナフチル-1-イル)-9,9'-スピロビフルオレンの合成:
【化9】

【0081】
31.5g(50ミリモル)の4,4’-ビス(ナフチル-1-イル)-1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレン、18.1g(100ミリモル)の1-フェニル-5-クロロテトラゾールと27.6g(200ミリモル)のKCOの十分に攪拌された懸濁液が、還流下250mlのアセトン中で、18時間加熱される。冷却後、沈殿した固形物は吸引ろ過され、乾燥される。固形物は、200mlのトルエン中に溶解され、6gの5%Pd/Cが添加され、混合物は、水素雰囲気下で、40℃で8時間攪拌される。溶媒除去後、残留物は、50mlのエタノール:水(1:1、v:v)で三度、100mlのエタノールで三度洗浄され、引き続きDMF(約10ml/g)から三度再結晶化される。収率:18.7g(33ミリモル)で69%。純度99.9%(HPLC)。
【0082】
例3:4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)-1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレンの合成:
【化10】

【0083】
190μl(1ミリモル)のジ-tert-ブチルホスフィンクロリドと、次いで、112mg(0.5ミリモル)の酢酸パラジウム(II)が、500mlのトルエン中の19.7g(37ミリモル)の4,4’-ジブロモ-1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレン、10.2g(60ミリモル)のジフェニルアミンと7.7g(80ミリモル)のソジウムtert-ブトキシドの懸濁液に添加され、混合物は、引き続き、還流下、5時間加熱される。60℃まで冷却後、500mlの水が添加され、有機相が分離され、シリカゲルでろ過され、真空中80℃で実質的に蒸発幹固され、300mlのエタノールが、次いで、添加される。冷却後、固形物は吸引ろ過される。ジオキサン(約8ml/g)から五度の再結晶化。収率:18.8g(26.5ミリモル)で72%。純度87%(HPLC)。
【0084】
例4:4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレンの合成:
【化11】

【0085】
35.5g(50ミリモル)の4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)-1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレン、18.1g(100ミリモル)の1-フェニル-5-クロロテトラゾールと27.6g(200ミリモル)のKCOの十分に攪拌された懸濁液が、還流下250mlのアセトン中で、18時間加熱される。冷却後、沈殿した固形物は吸引ろ過され、乾燥される。固形物は、200mlのトルエン中に溶解され、6gの5%Pd/Cが添加され、混合物は、水素雰囲気下で、40℃で8時間攪拌される。溶媒除去後、残留物は、50mlのエタノール:水(1:1、v:v)で三度、100mlのエタノールで三度洗浄され、引き続きDMF(約10ml/g)から三度再結晶化される。収率:21.1g(32.43ミリモル)で65.0%。純度99.9%(HPLC)。
【0086】
例4:1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレン4,4’-ボロン酸の合成:
【化12】

【0087】
73.7ml(184ミリモル)のn-ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M)が、−78℃まで冷却された950mlのジエチルエーテル中の48g(90ミリモル)の4,4’-ジブロモ-1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレン溶液に滴下される。反応混合物は−78℃で30分間攪拌される。反応混合物は室温にされ、−78℃に再冷却され、50mlのジエチルエーテル中の26.4ml(234ミリモル)のトリメチルボレートが、次いで、迅速に添加される。−10℃まで暖めた後、混合物は、90mlの2N塩酸を使用して加水分解される。有機相は分離され、水で洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥され、蒸発乾固される。残留物は、200mlのn-ヘプタンに入れられ、無色の固形物は吸引ろ過され、n-ヘプタンで洗浄され、真空乾燥される。収率240.5g(870ミリモル)、理論値の97%;H-NMRによる純度87%。
【0088】
例6:4,4-ビス-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレンの合成
【化13】

【0089】
23.2g(50ミリモル)の1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレン-4,4’-ボロン酸、29.5g(110ミリモル)の2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンと44.6g(210ミリモル)の燐酸三カリウムが、500mlのトルエン、500mlのジオキサンと500mlの水中に懸濁される。913mg(3ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンと、次いで、112mg(0.5ミリモル)の酢酸パラジウム(II)が、この懸濁液に添加され、反応混合物は還流下16時間加熱される。冷却後、有機相が分離され、シリカゲルでろ過され、200mlの水で三度洗浄され、引き続き、蒸発幹固される。残留物は、トルエンとジクロロメタン/イソプロパノールから再結晶化され、最後に高真空中(p=10−5mbar、T=385℃)で昇華される。収率は36.4g(43ミリモル)で理論値の87.5%に対応する。H-NMRによる純度98%。
【0090】
例7:4,4’-ビス(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9,9'-スピロビフルオレンの合成:
【化14】

【0091】
41.9g(50ミリモル)の4,4-ビス-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1,1’-ジメトキシ-9,9'-スピロビフルオレン、18.1g(100ミリモル)の1-フェニル-5-クロロテトラゾールと27.6g(200ミリモル)のKCOの十分に攪拌された懸濁液が、還流下250mlのアセトン中で、18時間加熱される。冷却後、沈殿した固形物は、吸引ろ過され、乾燥される。固形物は、200mlのトルエン中に溶解され、6gの5%Pd/Cが添加され、混合物は、水素雰囲気下で、40℃で8時間攪拌される。溶媒除去後、残留物は、50mlのエタノール:水(1:1、v:v)で三度、100mlのエタノールで三度洗浄され、引き続きDMF(約10ml/g)から三度再結晶化される。収率:25.6g(32.96ミリモル)で66.0%。純度99.9%(HPLC)。
【0092】
使用例
例8〜12および比較例1〜5:
4,4’-置換スピロビフルオレン材料の効果を証明するために、OLED素子は、本発明のために溶液から製造される。ここで、第一に、材料を混合することは比較的簡単であり、第二に、発光層(EML)の厚さは、輸送材料がEML中にも存在せねばならない他の製造プロセスの場合よりも、一般的には、非常に大きい(溶液からのEMLは、典型的には60〜80nm、気相堆積は20〜40nm)。しかしながら、これら輸送材料の濃度は、一般的には、〜20重量%の範囲で変化し、発光の完全な消光は期待することはできない。しかしながら、4,4’-置換スピロビフルオレンと2,2’-置換スピロビフルオレンとの比較は、効率の体系的改善を4,4’-結合材料の場合において実証することが可能となる。
【0093】
溶液加工OLEDの製造は、また、低分子のためのポリマー発光ダイオード(PLED)に基づいている。これは、すでに文献に何度も記載されている(たとえば、WO 04/037887)。典型的な素子は、図1に示される構造を有し、中央層3は任意であることに注意すべきである。図1の数は、以下の意味を有する:
1:ITO(インジウム錫酸化物)
2:PEDOT障壁層、約80nm
3:中間層、約20nm
4:EML、約80nm
5:Ba/Al陰極、3nm/150nm
溶液加工OLEDの製造のために、以下の手順が続く:
テクノプリント社で特に製造された基板が、試験素子の構成のために特に設計されたレイアウトで使用される(図2、左側の図:ガラス支持板に適用されたITO構造、右側の図:ITO、気相堆積陰極および随意の導線の金属化を有する完全な電子的構造)。ITO構造(インジウム錫酸化物、透明導電性陽極)は、2×2mm大きさの4画素が、製造工程の最後で気相堆積陰極により得られるようなパターンでスパッタリングによりソーダライムガラスに適用される。
【0094】
基板は、クリーンルーム内で脱イオン水と洗剤(デコネックス15PF)で洗浄され、ついで、UV/オゾンプラズマ処理により活性化される(UVP社製15分UVオゾン光検査機)。80nmのPEDOT層(PEDOTは、ポリチオフェン誘導体(バイトロン PVAI4083sp)H.C.Stack,Goslar製、水性分散液として供される。)が、次いで、同様に、クリーンルーム内で、スピンコーティングにより適用される。必要とされるスピン速度は、希釈度と特定のスピンコーターの形状(典型的には80nmで4500rpm)に依存する。層から残留水を除去するために、基板は、ホットプレート上で10分間180℃で加熱により乾燥される。ついで、必要ならば、不活性ガス(窒素またはアルゴン)雰囲気下、まず、20nmの中間層(典型的には、正孔支配ポリマー、ここでは、メルク製HIL−012)と、ついで80nmのポリマー層が、トルエン溶液(中間層濃度は、5g/l、低分子の固体濃度は12〜30mg/ml)から適用される。二枚の層は少なくとも10分間180℃で加熱により乾燥される。Ba/Al陰極が、ついで、気相堆積マスク(アルドリッチ製高純度金属、特に、99.99%バリウム(注文番号474711);レスカー社等製気相堆積ユニット、典型的真空レベルは5×10−6mbar)により指示されるパターンで気相堆積される。最後に、素子は、特に、空気と周囲湿度から陰極を保護するために密封され、その後、特性決定される。
【0095】
このために、素子は、基板サイズに合わせて特別に製造されたホルダーに把持され、ばね接点で供される。アイレスポンスフィルターを有するフォトダイオードは、外部光からの影響を排除するために測定ホルダー上に直接置くことができる。典型的な測定設備は、図3に示される。図3の数は、以下の意味を有する:
6:電位計(キースレー617)
7:光強度測定のための測定設備(UDT265輝度センサー)
8:矢は、測定されるべき光強度を示す(hv)
9:光強度が測定される素子
10:電圧計(キースレー199DMM)
11:電流計(キースレー199DMM)
12:電圧源(キースレー230)
電圧は、典型的には、0から最大20Vまで、0.2V刻みで増加され、再度減少される。各測定点で素子の電流と得られた光電流がフォトダイオードにより測定される。こうして、試験素子のIULデータが得られる。ここで、最も重要なパラメータは、測定された最大効率(cd/Aでの“max.eff.”)である。
【0096】
さらに、試験素子の色と正確なエレクトロルミネセンススペクトルを知るために、100cd/mに対して要求される電圧が、最初の測定後に再度適用され、フォトダイオードがスペクトル測定ヘッドにより置き代えられる。これは、光学繊維により分光計(オセアン オプティック製)に結合している。色座標(CIE:国際照明委員会、1931年からの標準オブザーバー)は、測定されたスペクトルから導出することができる。
【0097】
材料の利用可能性のために、特に、重要なのは、素子の寿命である。これは、初期輝度が設定されるように(たとえば、1000cd/m)、最初の評価に非常に類似する測定セットアップで測定される。この輝度に必要とされる電流は、一定に保たれ、電圧は典型的には増加し、輝度は減少する。寿命は輝度が初期輝度の半分に低下したときに到達される。
【0098】
使用される材料の構造が、明確さのために以下に示される。
【化15】

【0099】
本発明を説明するために、まず、中間層のない緑色三重項エミッターが、例8と9および比較例1と2で製造される。層の組成は、各場合に、バインダ一として30%ポリスチレン(アルファ エーサー社製GPC標準、200,000g/モル)から成るマトリックス中の8%の三重項エミッター(TEG、メルク社製)、20%の電子伝導体(EL1とEL2、いずれもメルク社製)、30%の広バンドギャップ三重項マトリックス(TMM−004、メルク社製)および20%の正孔伝導体である。使用される正孔伝導体は、一方は4,4’結合化合物(例4にしたがう)と他方で対応する2,2’-結合化合物である。結果は、表1に示される。使用された正孔伝導体(先行技術にしたがう2,2’-結合化合物と本発明の4,4-’結合化合物)は、明確さのために以下に示される。
【化16】

【表1】

【0100】
第2の一連の実験(例10と11および比較例3と4)では、層中のエミッター濃度は、20重量%増加している。他の点では、素子構造は、例8と9および比較例1と2と同一である。より高いエミッター濃度に基づいて、エミッターが消光分子に直接近接して位置する可能性が増加する。予期したとおり、4,4-’構成ブロックにより達成することができる効率に関する影響は、結果的に同様に増加している。この増加したエミッター濃度の結果は、表2に示される。
【表2】

【0101】
第3の一連の実験(例12および比較例5)では、正孔伝導体に代えて、4,4-’構造中の電子伝導体(例7にしたがう)が、2,2’構造中の電子伝導体と比較される。正孔伝導体はこの場合使用されないことから、中間層(HIL−012、メルク社製)が使用される。三重項エミッター(先行例のとおりのTEG、20重量%、)とは別に、EMLは、再度、広バンドギャップマトリックス(TMM−004、メルク社製)とバインダーとしてポリスチレンを含む。この場合は、三重項層は、PEDOTと直接接触していないことから、寿命は、また、ここで測定される。他の点では、素子構造は、前記例と同一である。4,4-’結合材料は、また、この重要なパラメーターに関しても有利な効果を有することはここで明らかである。この一連の実験の結果は表3に示される。使用された電子伝導体(先行技術にしたがう2,2’-結合化合物と本発明の4,4-’結合化合物)は、明確さのために以下に示される。
【化17】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物。
【化1】

(式中:使用される記号は、以下の意味を有する:
Rは、出現毎に同一であるか異なり、F、CN、NO、ArNAr、NAr、C(=O)Ar、C(=O)R、P(=O)Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=C(R、または1以上の非芳香族基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれ;ここで、同一の窒素もしくは燐原子に結合する二個の基Arは、単結合もしくはB(R)、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)およびP(=O)Rから選ばれるブリッジにより、互いに連結してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、OH、CN、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2〜40個のC原子を有するアルケニル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、C=S、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、OもしくはSで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)より成る基から選ばれ;ここで、加えて、基Rの近隣の位置にある各Rは、Rが芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である場合には、基Rに連結する二価基であることができ;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CNおよび1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族炭化水素基(加えて、1以上のH原子は、F、CNで置き代えられてよい)、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基より成る基から選ばれ;ここで、二個以上の隣接する置換基Rは、互いに共有結合により連結されてもよく、また、Rが芳香族もしくは複素環式芳香族炭化水素基に包含される場合には、一以上の二価の脂肪族炭化水素単位により連結されてもよい。)
【請求項2】
Rは、NAr、C(=O)R、RC=CRおよび1以上の非芳香族基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有するモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれ;ここで、加えて、同一の窒素原子に結合する二個の基Arは、単結合もしくはC(R、C=O、O、SおよびN(R)から選ばれるブリッジにより、連結してよい、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Rは、出現毎に同一であるか異なり、好ましくは、同一であり、NArまたは5〜20個の芳香族環原子を有するモノあるいはポリ環状芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、複素環式芳香族環構造中の一以上のヘテロ原子は、好ましくは、窒素原子である、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
Rは、同一であるか異なり、以下の基より成る群から選ばれる、請求項1〜3何れか1項記載の化合物。
【化2−1】

【化2−2】

【化2−3】

(式中:基中の破線は、基がこの位置で結合することを示すことを意図し、基Ar、R、RおよびRは、先行する請求項と同じ意味を有することを意図し、sとqは、夫々、互いに独立して、0または1であり、ここで、s=0もしくはq=0に対しては、そのRはHで置き代えられ、Eは、C(R、NR、O、C=O、S、S=OおよびS(O)より成る基から選ばれる。)
【請求項5】
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基より成る基から選ばれ;ここで、加えて、基Rの近隣の位置にある各Rは、基Rの芳香族もしくは複素環式芳香族環構造に連結してもよい二価基であることができる、請求項1〜4何れか1項記載の化合物。
【請求項6】
Arは、5〜14個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である、請求項1乃至5何れか1項記載の化合物。
【請求項7】
以下の式IIまたはIIIにより特徴付けられる、請求項1乃至6何れか1項記載の化合物。
【化3】

(式中:記号RおよびRは、先行する請求項と同じ意味を有する。)
【請求項8】
反応性脱離基、特に、塩素、臭素、沃素、トリフレート、トシレート、ボロン酸もしくはボロン酸エステルによって4,4’-位で置換された、スピロビフルオレンもしくはスピロビフルオレン誘導体が、特に、パラジウム触媒によるスズキカップリングまたはパラジウム触媒によるハートウイッグ-ブーフバルトカップリングによって、官能化芳香族化合物もしくは一あるいは二置換アミンにカップリングすることを特徴とする、請求項1〜7何れか1項記載の化合物の調製方法。
【請求項9】
請求項1〜7何れか1項記載の少なくとも一つの化合物と少なくとも一つのさらなる化合物を含む混合物。
【請求項10】
請求項1〜7何れか1項記載の少なくとも一つの化合物または請求項9記載の混合物と少なくとも一つの溶媒を含む処方または溶液。
【請求項11】
電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子における請求項1〜7何れか1項記載の化合物または請求項9記載の混合物または請求項10記載の処方もしくは溶液の使用。
【請求項12】
請求項1〜7何れか1項記載の少なくとも一つの化合物または請求項9記載の少なくとも一つの混合物を含む有機電子素子であって、電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)もしく有機光受容素子より成る群から選ばれる、有機電子素子。
【請求項13】
請求項1〜7何れか1項記載の化合物が、蛍光もしくは燐光ドーパントのための、特に、燐光ドーパントのためのホスト材料として使用されることを特徴とする、請求項12記載の、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
請求項1〜7何れか1項記載の化合物が、発光材料(ドーパント)として、正孔輸送材料として、正孔注入材料としておよび/または電子輸送材料として使用されることを特徴とする、請求項12または13記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−532902(P2012−532902A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519905(P2012−519905)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003697
【国際公開番号】WO2011/006574
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】