説明

有機エレクトロルミネセンス表示装置

【課題】 有機ELパネル自体にタッチパネル機能を併せて持たせることが可能な有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】 データラインDを有する列信号駆動回路34と、選択ラインWを有する行走査駆動回路36と、画素Pxを有する表示パネル32とを具備する有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置であって、画素は、有機EL素子8と、駆動用の有機薄膜トランジスタ10と、選択用のスイッチング有機薄膜トランジスタ11と、位置検出用の有機薄膜トランジスタ38とを有し、位置検出用のトランジスタは、一方の端子が有機EL素子の入力側または出力側に接続され、他方の端子が列信号駆動回路に接続され、ゲートが行走査駆動回路に接続されてなり、画素が外的な力を受けた際、位置検出用の有機薄膜トランジスタにおける電圧の変化を検出することにより、当該画素の位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル機能を有するフレキシブルな有機エレクトロルミネセンス表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、将来の表示装置として携帯性や収容性に優れてフレキシブル性のある表示装置の開発が盛んに行われており、中でも薄いプラスチック基板等のフレキシブル基板上に、有機薄膜トランジスタ(以下「有機TFT」:[Thin Film Transistor]とも称す)や有機エレクトロルミネセンス素子(以下「有機EL素子」とも称す)や選択用のスイッチング有機薄膜トランジスタ素子(以下「有機TFT素子」とも称す)を有する有機エレクトロルミネセンス表示装置(以下「有機EL表示装置」とも称す)が知られている。
【0003】
図5はこの有機EL表示装置の1つの画素の概略図を示し、図6はこの有機EL表示装置の1つの画素の回路図を示す。この有機EL表示装置2は、例えばプラスチック基板等よりなる薄い可撓性のあるフレキシブル基板4上に、例えばSiO 等よりなる絶縁膜6を形成し、この絶縁膜6上に有機EL素子8と、これを駆動する駆動用の有機TFT素子10と、上記駆動用の有機TFT素子10をスイッチングするスイッチング有機TFT素子11とを並列させて設けることにより形成されている。上記構造により1つの画素Pxが形成され、この画素Pxが縦横にマトリクス状に配列される。上記有機EL素子8は、上下の透明電極12、14の間に、発光層16や正孔輸送層18等を介在させて形成されるが、この構成に限定されず、種々の構造のものを用いることができる。
【0004】
上記した1画素Pxの回路構成は、図6に示すように、上記駆動用の有機TFT10の入力側は電源ライン20に接続され、この出力側は上記有機EL素子8の一方の電極に接続される。この有機EL素子8の他方の電極は接地されている。また、上記駆動用の有機TFT10のゲートは、選択用のスイッチング有機TFT11の出力に接続される。このスイッチング有機TFT11の入力は、データラインDに接続され、このゲートは選択ラインWに接続される。また上記電源ライン20と上記駆動用の有機TFT10のゲートとの間には、保持容量22(図5中では記載を省略)が接続され、データを一定期間保持できるようになっている。
【0005】
ところで、最近にあっては、上記した有機EL表示装置にタッチパネル機能を併せ持つようにした装置が提案されている(特許文献1)。このタッチパネル機能を有する有機EL表示装置は、上記特許文献1に示されるように、例えば通路の有機ELパネルの表面、或いは裏面に例えば抵抗変化方式やスイッチング方式で動作するタッチパネルを貼り付けることにより構成されており、特に、タッチパネルを有機ELパネルの裏面側へ貼り付ける構造は、前面側に貼り付ける構造と比較して表示品質が優れる、という特性を有している。
【0006】
【特許文献1】特開2001−343908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように、タッチパネル機能を持たせるために、有機ELパネルにタッチパネルを貼り付ける構成では、全体として部品点数が増大するのみならず、両パネルの貼り付け工程も行わなければならず、組み立て工程数も増大してしまう。
また抵抗変化方式のタッチパネルは温度特性が悪く、例えば車内等の使用において信頼性が欠ける、という問題もあった。更には、タッチパネルを有機ELパネルの裏面側に貼り付ける方法では、押圧力は有機ELパネルを介してタッチパネル側へ伝達されることになるため、押圧力の検出感度が十分ではない場合もあった。
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、有機ELパネル自体にタッチパネル機能を併せて持たせることにより、部品点数を減少できるのみならず、検出感度と温度特性を向上させることが可能な有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、有機EL素子について鋭意研究した結果、この有機EL素子自体が外力(押圧力)による物理的変形に応じて、その電気特性が変化し、この電気特性の変化を位置的に検出するようにすれば、タッチパネル機能を併せ持たせることができる、という知見を得ることにより本発明に至ったものである。
【0009】
請求項1に係る発明は、複数のデータラインを列方向に有する列信号駆動回路と、前記複数のデータラインと交わる複数の選択ラインを、行方向に有する行走査駆動回路と、前記複数のデータラインと前記複数の選択ラインとの各交点にそれぞれ対応してマトリクス状に配置された各画素を有する表示パネルと、を具備する有機エレクトロルミネセンス表示装置であって、前記画素は、有機エレクトロルミネセンス素子と、前記有機エレクトロルミネセンス素子を駆動する駆動用の有機薄膜トランジスタと、前記駆動用の有機薄膜トランジスタを選択する選択用のスイッチング有機薄膜トランジスタと、前記画素の位置を検出する位置検出用の有機薄膜トランジスタと、を有し、前記位置検出用の有機薄膜トランジスタは、2つの端子と1つのゲートとを有すると共に、一方の前記端子が前記有機エレクトロルミネセンス素子の入力側または出力側に接続され、他方の前記端子が前記列信号駆動回路に接続され、前記ゲートが前記行走査駆動回路に接続されてなり、前記画素が外的な力を受けた際、前記画素に対応する前記駆動用の有機薄膜トランジスタに流れる電流の変化を、前記画素に対応する前記位置検出用の有機薄膜トランジスタにおける電圧の変化とし、この電圧の変化を前記列信号駆動回路で検出することにより、当該画素の位置を特定することを特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置である。
この場合、例えば請求項2に規定するように、前記有機エレクトロルミネセンス表示装置は、可撓性を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る有機EL表示装置によれば、有機ELパネル自体にタッチパネル機能を併せて持たせることができ、部品点数を減少できるのみならず、検出感度と温度特性を向上させることができる。
また部品点数が少なくなって、従来行われていたパネル同士を貼り合わせる貼り合わせ工程が不要になるので、その分、組み立て工程数を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係る有機EL表示装置の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る有機EL表示装置の画素配列を示す平面図、図2は本発明の有機EL表示装置の1つの画素を示す概略図、図3は有機EL表示装置中の1つの画素を示す回路図である。尚、図1乃至図3において、図5及び図6に示す構成と同一構成部分については同一符号を付して説明する。
【0012】
図1に示すように、本発明の有機EL表示装置30は、表示パネル32を有しており、この表示パネル32には、縦横にマトリクス状に複数の画素Pxが配列されている。またこの表示パネル30の一側と、これに直交する他側とには、列信号駆動回路34と行走査駆動回路36とがそれぞれ配列されている。上記列信号駆動回路34からは、上記表示パネル32に向けて列方向に延びる複数のデータラインD1〜Diが延びており、また行走査駆動回路36からは、上記表示パネル32に向けて行方向に延びる複数の選択ラインW1〜Wkが延びており、上述したように両ラインの交点が画素Pxとなっている。
【0013】
そして、更に本発明の特徴として、上記列信号駆動回路34からは、上記各データラインD1〜Diに対応して、位置検出用のデータラインY1〜Yiが列方向に延びると共に、上記行走査駆動回路36からは、上記各選択ラインW1〜Wkに対応して、位置検査用の選択ラインX1〜Xkが延びており、それぞれ対応する画素に接続されている。
またこの表示パネル32は、各画素Pxに対応させて図示しない電源ラインが接続されて表示用の電力を供給できるようになっている。上記表示パネル32、或いは表示パネル32のみならず、列信号駆動回路34や行走査駆動回路36は、図5において説明したように、可撓性のあるプラスチック基板のようなフレキシブル基板4をベースとして、このベース上に形成される。そして、この1つの画素Pxは、有機EL素子8、駆動用の有機TFT10及び選択用のスイッチング有機TFT11の外に、図2及び図3に示すように本発明の特徴とする位置検出用の有機薄膜トランジスタ(以下「有機TFT」とも称す)38が設けられる。この位置検出用の有機TFT38は、図5中に示すような構成において、図2に示す様に更に1つ横に併設されることになる。
【0014】
ここで1つの画素の具体的な回路は図3に示すように形成される。図3(A)は第1実施例を示し、図3(B)は第2実施例を示す。また、ここでは各ラインD1〜Di、Y1〜Yi、W1〜Wk、X1〜Xkを代表して、それぞれ”D”、”Y”、”W”及び”X”として表している。すなわち、上記駆動用の有機TFT10の入力側は電源ライン20に接続され、この出力側は上記有機EL素子8の一方の電極に接続される。この有機EL素子8の他方の電極は接地されている。また、上記駆動用の有機TFT10のゲートは、選択用のスイッチング有機TFT11の出力に接続される。このスイッチング有機TFT11の入力は、データラインDに接続され、このゲートは選択ラインWに接続される。また上記電源ライン20と上記駆動用の有機TFT10のゲートとの間には、保持容量22(図2中では記載を省略)が接続され、データを一定期間保持できるようになっている。
【0015】
そして、新たに設けられた本発明の特徴とする位置検出用の有機TFT38は、その一方の入力が上記駆動用の有機TFT10の出力側に接続されている。具体的には、図3(A)に示す場合には、上記位置検出用の有機TFT38の一方の入力は、上記駆動用の有機TFT10の出力側と上記有機EL素子8の入力側との間に接続されている。また、図3(B)に示す場合には、上記位置検出用の有機TFT38の一方の入力は、上記有機EL素子8の出力側に抵抗40を介設し、この抵抗40の入力側に接続されている。
またこの位置検出用の有機TFT38の出力は、上記位置検出用のデータラインYに接続されている。更にこの位置検出用の有機TFT38のゲートは、上記位置走査用の選択ラインXに接続されている。
【0016】
以上のように構成された有機EL表示装置30において、列信号駆動回路34からは各データラインD1〜Diに表示用のデータ信号が順次印加され、そして、行走査駆動回路36からの走査信号により画素Pxが選択されると、当該選択された画素の有機EL素子8にデータに基づく画像が表示されることになる。この点は、従来装置も同様である。
【0017】
さて、ここで上記駆動用の有機TFT10を流れる電流が、後述するように外的な力、例えば押圧力による変形で変化すると、その変動量は上記位置検出用の有機TFT38の位置検出用のデータラインYに電圧の変化として表れ、これを列信号駆動回路34側で検出することにより、当該画素の位置を特定することができる。この場合、位置走査用の選択ラインXには、行走査駆動回路36側より走査信号が周期的に加えられており、上述のようにこの画素を特定することができるようになっている。
ここで上記駆動用の有機TFT10の変形に対する電気的特性の変化について説明する。図4は駆動用の有機TFTの変形に対する電気的特性の変化を示すグラフである。図4中において、横軸に変形量(=曲率半径)を示し、縦軸に電流及び移動度の変化を示している。
【0018】
この図4より明らかなように、この駆動用の有機TFT10を曲げて変形させることにより、移動度、すなわちこのトランジスタを流れる電流が大きく変動している。従って、この電流は、図3に示す回路から明らかなように、抵抗の要素を有する有機EL素子8及び抵抗40(図3(B)の場合)に流れているので、この有機EL素子8の両端の電圧変化、或いは抵抗40の両端の電圧変化を位置検出用のデータラインYにて検出して、この駆動用の有機TFT10の変形した画素Pxの位置を特定することができる。このようにして有機ELパネルにタッチパネルの機能を併せ持たせることができる。
【0019】
このように、有機ELパネル自体にタッチパネル機能を併せて持たせることができ、部品点数を減少できるのみならず、検出感度と温度特性を向上させることができる。
また部品点数が少なくなって、従来行われていたパネル同士を貼り合わせる貼り合わせ工程が不要になるので、その分、組み立て工程数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る有機EL表示装置の画素配列を示す平面図である。
【図2】本発明の有機EL表示装置の1つの画素を示す概略図である。
【図3】有機EL表示装置中の1つの画素を示す回路図である。
【図4】駆動用の有機TFTの変形に対する電気的特性の変化を示すグラフである。
【図5】従来の有機EL表示装置の1つの画素を示す概略図である。
【図6】従来の有機EL表示装置の1つの画素の回路図を示す。
【符号の説明】
【0021】
4…フレキシブル基板、8…有機エレクトロルミネセンス(EL)素子、10…駆動用の有機薄膜トランジスタ(TFT)、11…選択用のスイッチング有機薄膜トランジスタ(TFT)、30…有機エレクトロルミネセンス(EL)素子、32…表示パネル、34…列信号駆動回路、36…行走査駆動回路、38…位置検出用の有機薄膜トランジスタ(TFT)、40…抵抗、Px…画素、D,D1〜Di…データライン、W,W1〜Wk…選択ライン、Y,Y1〜Yi…位置検出用のデータライン、X,X1〜Xk…位置走査用の選択ライン。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデータラインを列方向に有する列信号駆動回路と、
前記複数のデータラインと交わる複数の選択ラインを、行方向に有する行走査駆動回路と、
前記複数のデータラインと前記複数の選択ラインとの各交点にそれぞれ対応してマトリクス状に配置された各画素を有する表示パネルと、
を具備する有機エレクトロルミネセンス表示装置であって、
前記画素は、
有機エレクトロルミネセンス素子と、
前記有機エレクトロルミネセンス素子を駆動する駆動用の有機薄膜トランジスタと、
前記駆動用の有機薄膜トランジスタを選択する選択用のスイッチング有機薄膜トランジスタと、
前記画素の位置を検出する位置検出用の有機薄膜トランジスタと、を有し、
前記位置検出用の有機薄膜トランジスタは、2つの端子と1つのゲートとを有すると共に、一方の前記端子が前記有機エレクトロルミネセンス素子の入力側または出力側に接続され、他方の前記端子が前記列信号駆動回路に接続され、前記ゲートが前記行走査駆動回路に接続されてなり、
前記画素が外的な力を受けた際、前記画素に対応する前記駆動用の有機薄膜トランジスタに流れる電流の変化を、前記画素に対応する前記位置検出用の有機薄膜トランジスタにおける電圧の変化とし、この電圧の変化を前記列信号駆動回路で検出することにより、当該画素の位置を特定することを特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置。
【請求項2】
前記有機エレクトロルミネセンス表示装置は、可撓性を有することを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−34006(P2007−34006A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218720(P2005−218720)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】