説明

有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法および有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】有機EL素子の製造における、プロセス圧力が大気圧から真空に及ぶ製造ラインにおいて、巻き取り回数が少ないロールトゥーロールラインを構成できる有機EL素子の製造方法を提供することにある。
【解決手段】少なくとも、可撓性フィルム上に、第一電極、一以上の有機機能層、第二電極、を順次形成する工程、および、封止フィルム貼合工程から構成される有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記各工程が、大気圧プロセス工程と、真空プロセス工程からなり、この間にプロセス圧力を大気圧から真空に、また真空から大気圧に置換するプロセス圧力置換工程を有し、該プロセス圧力置換工程が、挟持型ゲートバルブを備えたチャンバーを真空ポンプで排気することで構成される有機EL素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)の製造方法および有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機物質を使用した有機EL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子や書き込み光源アレイとしての用途が有望視されており、活発な研究開発が進められている。有機EL素子は、一対のフィルム上に形成された陽極と陰極との間に、厚さ僅か0.1μm程度の有機発光物質を含有する有機化合物層(単層部または多層部)で構成する薄膜型の全固体素子である。この様な有機EL素子に2〜20V程度の比較的低い電圧を印加すると、有機化合物層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られることが知られており、次世代の平面ディスプレイや照明として期待されている技術である。さらに、最近発見されたリン光発光を利用する有機ELでは、以前の蛍光発光を利用するそれに比べ原理的に約4倍の発光効率が実現可能であることから、その材料開発を始めとし、発光素子の層構成や電極の研究開発が世界中で行われている。
【0003】
この様に、有機EL素子は薄膜型の素子であるため、1個または複数個の有機EL素子をフィルム上に形成した有機ELパネルをバックライト等の面光源として利用した場合には、面光源を備えた装置を容易に薄型にすることができる。また、画素としての有機EL素子をフィルム上に所定個数形成した有機ELパネルをディスプレイパネルとして用いて表示装置を構成した場合には視認性が高い、視野角依存性がないなど、液晶表示装置では得られない利点がある。
【0004】
一方、有機EL素子の有機化合物層を形成する際には、蒸着法、スパッタ法、CVD、PVD、溶剤を用いた塗布法等の様々な方法が使用できるが、これらの方法の中で、製造工程の簡略化、製造コストの低減、加工性の改善、バックライトや照明光源等のフレキシブルな大面積素子への応用等の観点からは塗布法等の湿式成膜法が有利であることが知られている。例えば、特開2002−170676号公報に枚葉のガラスフィルム上にスピンコート法により有機化合物層を形成する方法が記載されている。特開2003−142260号公報に枚葉のフィルム上にインクジェット方式で順次有機化合物層を形成する方法が記載されている。これらの方式はいずれもフィルムとして枚葉フィルムを使用しているため大面積フルカラー表示素子を作製するのは装置が大きくなり、コストも高くなるという欠点を有している。このため、固体発光型の大面積フルカラー表示素子や書き込み光源アレイとしての用途が有望視されている有機EL素子について、特許文献1、特許文献2等に記載されているように、安価な製造方法とされているロールトゥーロール方式により作製する方法が検討されている。
【0005】
例えば、透光性基板としてプラスチックフィルムを使用し、このプラスチックフィルム上に陰極と、有機物質からなる一つまたは複数の発光層と、陽極層を設けた有機ELディスプレイを製造する方法として、有機物質からなる一つまたは複数の発光層のパターニングおよび陰極のパターニングを真空蒸着方式でロールトゥーロール方式により作製する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。また、有機発光層にポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子材料中に低分子の発光色素を分散または溶解させたものや、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリアルキルフルオレン誘導体等の高分子材料を使用し、適当な溶媒を用いることで塗布法により巻き取り生産をする方法が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0006】
有機ELの開発動向としては、塗布可能な有機機能材料の開発は飛躍的に進歩しているのに対して、塗布可能な電極材料の開発は進んではいるものの有機ELの必要スペックを満たすレベルのものはできていない状況である。このような状況下でロールトゥーロール方式により有機ELを製造しようとした場合、有機機能材料は塗布に代表される大気圧プロセスで成膜出来るものの、電極材料は依然として蒸着法、スパッタ法に代表される真空プロセスが必要不可欠な状況である。大気圧でのロールトゥーロールライン、真空でのロールトゥーロールラインといったように、独立でみれば世の中に技術は存在してはいるため、大気圧と真空で別ラインにすることで有機EL素子はロールトゥーロールでも作製可能である。しかしながら、別ラインとする場合は必ず中間在庫として巻き取り工程を有することになるが、例えば、有機層形成後に巻き取る場合においては、巻き取り時のフィルムの表裏擦れによる有機層ダメージはショートや発光不良を引き起こす可能性があるため、フィルムの表裏が接触しないような非接触巻き取り技術が必要となり、巻き取り張力、巻き取り速度等を制御、管理が複雑となり生産性が上がらないといった課題がある。
【0007】
特許文献1、特許文献2に記載のロールトゥーロール方式による有機EL素子の作製は生産効率の向上の点からは好ましい方法であるが次の欠点を有している。特許文献1における技術は、蒸着でのロールトゥーロール方式により有機ELを製造するものであるが、有機層から電極まで全てが真空プロセスで成膜されること、巻き出しから巻き取りまでが真空装置内というキャンロールタイプであることから、生産性、設備コスト、材料利用効率が課題として挙げられる。特許文献2では、有機層をウェットプロセスで形成した後に絶縁保護層を設けて巻き取りを行った後に陰極層を形成するものであるが、陰極層形成についての具体的な記載がない上、有機層を保護するために素子機能という観点では不要な絶縁保護層を形成しているため、生産性、素子特性の両面が懸念される。
【0008】
そのような状況下において、プロセス圧力が大気圧から真空といった広範囲に及ぶ製造ラインにおいても、巻き取り工程を必要としない、あるいは、巻き取り回数が少ないロールトゥーロールラインのニーズが高まっている現状である。
【特許文献1】国際公開第01/5194号パンフレット
【特許文献2】特開2006−294536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、有機EL素子の製造における、プロセス圧力が大気圧から真空といった広範囲に及ぶ製造ラインにおいても、巻き取り工程を必要としない、あるいは、巻き取り回数が少ないロールトゥーロールラインを構成することのできる有機EL素子の製造方法、またこれに用いるプロセス圧力置換工程を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は以下の手段により達成される。
【0011】
1.少なくとも、可撓性フィルム上に、第一電極、一以上の有機機能層、第二電極、を順次形成する工程、および、封止フィルム貼合工程から構成される有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記各工程が、
大気圧環境下で可撓性フィルムに処理を行う大気圧プロセス工程と、
真空環境下で可撓性フィルムに処理を行う真空プロセス工程とから構成され、
かつ、
大気圧プロセス工程と真空プロセス工程の間にプロセス圧力を大気圧から真空に、又真空から大気圧に置換するプロセス圧力置換工程を有し、
該プロセス圧力置換工程が、
挟持型ゲートバルブを備えたチャンバー内に、可撓性フィルムを導入した状態でゲートバルブがこれを挟持することで形成される疑似密閉空間を、真空ポンプで排気することで構成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0012】
2.前記大気圧プロセス工程が、1×10Pa以上であり、前記真空プロセス工程が1×10−3Pa以下であることを特徴とする前記1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0013】
3.前記プロセス圧力置換工程が、圧力置換機能を有する複数のチャンバーからなり、段階的に圧力を置換することを特徴とする前記1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0014】
4.前記大気圧プロセス工程が、第一電極が形成された連続可撓性フィルムにドライ方式で洗浄するドライ洗浄工程を含むことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0015】
5.前記大気圧プロセス工程が、第一電極が形成された連続可撓性フィルムの第一電極上にウェットプロセスで有機機能層の少なくとも一層を成膜する有機機能層成膜工程を含むことを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0016】
6.前記真空プロセス工程が、連続可撓性フィルムの必要領域上にドライプロセスで第二電極を成膜する第二電極成膜工程を含むことを特徴とする前記1〜5のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0017】
7.前記大気圧プロセス工程が、窒素ガス雰囲気下で行われることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0018】
8.前記真空プロセス工程が、連続可撓性フィルムにウェットプロセスで成膜された有機機能層を熱処理する有機機能層熱処理工程を含むことを特徴とする前記1〜7のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0019】
9.封止フィルム貼合工程に続き、連続可撓性フィルムに作製された有機エレクトロルミネッセンス素子を製品サイズに断裁する連続可撓性フィルム断裁工程を行うことを特徴とする前記1〜8のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0020】
10.前記連続可撓性フィルム断裁工程が空気雰囲気下で行われることを特徴とする前記9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0021】
11.前記1〜10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法により作製される有機エレクトロルミネッセンス素子の発光機構がリン光発光に基づくものであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、大気圧下でのウェットプロセスによる有機層形成から真空下でのドライプロセスによる第二電極形成、さらには封止フィルム貼合工程までを、連続したラインで巻き取ることなく、また巻き取り回数を減らして、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を作製することができ、特に、有機機能層の形成段階あるいは第二電極の形成段階までの巻き取り工程が不要あるいは回数を減らせるので、巻き取り時に問題となる基材の表裏擦れやクラックが防止でき、良品の歩留まりが向上し、生産性が向上する。
【0023】
また、本発明により、有機層はウェットプロセスにより形成することが可能となり、設備コスト、材料コストの低減を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
【0025】
本発明は、少なくとも、可撓性フィルム上に、第一電極、一以上の有機機能層、第二電極、を順次形成する工程、および、封止フィルム貼合工程から構成される有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、各工程が、大気圧環境下で可撓性フィルムに処理を行う大気圧プロセス工程と、真空環境下で可撓性フィルムに処理を行う真空プロセス工程とから構成され、前記工程の中、大気圧プロセス工程と真空プロセス工程との間に、それぞれの工程のプロセス圧力を大気圧から真空に、また真空から大気圧に置換するプロセス圧力置換工程を有する、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であり、該プロセス圧力置換工程が、挟持型ゲートバルブを備えたチャンバー内において、可撓性フィルムを導入した状態でゲートバルブがこれを挟持して、これにより疑似密閉空間を形成したのち、これを真空ポンプで排気することで、大気圧を真空状態に変換することにより行われることを特徴とするものである。
【0026】
本発明では、大気圧プロセス工程(大気圧環境)から真空プロセス工程(真空環境)へ、また逆に真空環境から大気圧環境に導入するプロセス圧力置換工程として、挟持型ゲートバルブを用いた方法を採用している。帯状可撓性支持体(ウェブ)の長手方向の一部をその全幅に亘って、上下からゲートバルブを用いて挟み込んだ後、減圧して、ゲートバルブによって形成される空間(チャンバー)の真空度を確保するクランプ方式に基づくものである。その際にゲートバルブによって挟持された部分では搬送が止まり、搬送はここでは断続的になるためアキュームレータを併用して用いることが好ましい。搬送の停止時には、アキュームレータにウェブを蓄積し、ゲートバルブを開いたときにこれを次工程の例えばより高真空側へ送り込む方式として、連続的に搬送を行うことができる。
【0027】
本発明において、前記大気圧プロセス工程が、1×10Pa以上であり、前記が1×10−3Pa以下である。
【0028】
以下、図を用いて本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法について説明する。
【0029】
図1は、有機EL素子の層構成の一例を示す概略断面図である。図1の(a)は封止膜が形成された有機EL素子の構成層を示す概略断面図である。図1の(b)は接着剤を介して封止フィルムを貼着することで形成された有機EL素子の構成層を示す概略断面図である。
【0030】
図1の(a)に示される有機EL素子の層構成につき説明する。図中、1aは有機EL素子を示す。有機EL素子1aは、基材101上に、第一電極102と、正孔輸送層103と、発光層104と、電子注入層105と、第二電極106と、封止層107とをこの順番に有している。
【0031】
図1の(b)に示される有機EL素子の層構成に付き説明する。
【0032】
図中、1bは有機EL素子を示す。有機EL素子1bは、基材101上に、第一電極102と、正孔輸送層103と、発光層104と、電子注入層105と、第二電極106と、接着剤層108と、封止フィルム109とをこの順番に有している。本図に示される有機EL素子において、第一電極102と正孔輸送層103の間に正孔注入層(不図示)を設けてもよい。又、発光層104と電子注入層105との間に電子輸送層(不図示)を設けてもよい。本図に示される有機EL素子1aおよび有機EL素子1bでは、第一電極102と基材101との間にガスバリア膜(不図示)を設けてもかまわない。
【0033】
本発明は、図1の(a)、図1の(b)に示される有機EL素子1a(1b)の製造方法およびこれらの製造方法により作製された有機EL素子に関するものである。
【0034】
本図に示す有機EL素子の層構成は一例を示したものであるが、他の代表的な有機EL素子の層構成としては次の構成が挙げられる。
【0035】
(1)基材/陽極/発光層/電子輸送層/陰極/封止層
(2)基材/陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極/封止層
(3)基材/陽極/正孔輸送層(正孔注入層)/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極/封止層
(4)基材/陽極/陽極バッファー層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極/封止層
有機EL素子を構成している各層については後に説明する。
【0036】
図2は有機EL素子を作製する工程の一例を示す模式図である。なお、本図で示す製造工程の説明は、有機EL素子の一例として、帯状可撓性支持体上にガスバリア層、第一電極、正孔輸送層、発光層、電子注入層、第二電極、封止フィルムを貼着の順番に各層が形成されている照明用(面発光)有機EL素子の場合について行う。本図では、第一電極形成工程は省略してある。
【0037】
図2中、2aは有機EL素子の製造工程を示す。製造工程2aは、帯状可撓性支持体(フィルム)の供給工程3と、正孔輸送層を形成する正孔輸送層形成工程4と、発光層を形成する発光層形成工程5と、電子輸送層形成工程6からなっている。
【0038】
この例では電子輸送層形成後、一旦、帯状可撓性支持体は巻き取り部7において巻き取られる。
【0039】
図2中、製造工程2bにおいて、製造工程2aにおいて一旦巻き取られた、電子輸送層形成後の帯状可撓性支持体はさらに、帯状可撓性支持体の供給部8から、電子注入層を形成する電子注入層形成工程9と、さらに、第二電極を形成する第二電極形成工程10と、封止層を形成する封止層形成工程11を経て有機EL素子として巻き取られ、その後断裁され個別の素子が形成され電気回路が実装され有機エレクトロルミネッセンスパネルが形成される。
【0040】
本図で示される製造装置は、供給工程3から発光層形成工程5さらに電子輸送層形成工程6迄を連続して大気圧条件下で行い、一旦巻き取った後、電子注入層形成工程9から第二電極形成工程10迄を減圧条件下で行う場合を示している。また、封止層形成工程11は減圧条件あるいは不活性ガス充填条件である。
【0041】
帯状可撓性支持体の供給工程3では、繰り出し部301と表面処理部302とを有している。繰り出し部301では、例えば、ガスバリア膜と第一電極を含む陽極層とがこの順番で既に形成された帯状可撓性支持体Aが巻き芯に巻き取られたロール状態で供給される。3a1は帯状可撓性支持体の元巻きロールを示す。
【0042】
表面処理部302は洗浄表面改質処理装置や、帯電防止手段を有しているがここでは帯電防止手段は省略されている。洗浄表面改質処理装置は、有機機能層塗布前に供給工程3から送られる帯状可撓性支持体Aの第一電極(不図示)表面の洗浄改質を行うため、例えば、低圧水銀ランプ、エキシマランプ、プラズマ洗浄装置等を使用し、例えば、低圧水銀ランプの場合、波長184.2nmの低圧水銀ランプを、照射強度5〜20mW/cmで、距離5〜15mmで照射する。
【0043】
また、帯電防止手段は、非接触式除電防止装置、接触式除電防止装置等からなり、例えば、非接触式のイオナイザーや、除電ロールまたはアース接続した導電性ブラシ等を用いて行われる。非接触式帯電防止装置は帯状可撓性支持体Aの第一電極面側に使用し、接触式帯電防止装置帯状可撓性支持体Aの裏面側に使用することが好ましい。
【0044】
図ではこれら細部は省略されているが、帯状可撓性支持体Aはロールから巻き出されて、正孔輸送層形成工程に入る。
【0045】
正孔輸送層形成工程4においては、帯状可撓性支持体Aを保持するバックアップロール4aと、バックアップロール4aに保持された帯状可撓性支持体Aに正孔輸送層形成用塗布液を塗布する第一湿式塗布機4bと、帯状可撓性支持体A上の第一電極上に形成された正孔輸送層の溶媒を除去する第一乾燥装置4cと、溶媒が除去された正孔輸送層を加熱する第一加熱処理装置4dとを有している。ここで帯電防止手段を設けてもよいが図では省略されている。
【0046】
第一湿式塗布機4bによる正孔輸送層形成用塗布液は、例えば、既に形成されている第一電極の片方の端部の一部を除いて第一電極上に塗布される。
【0047】
第一湿式塗布機4bは、パターン化されて形成されている第一電極のパターンに合わせて第一電極上に発光層をパターン塗布するため、例えば、インクジェット方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、マスクを用いたスプレー塗布方式等に使用する各種塗布装置を使用することが可能である。
【0048】
第一乾燥装置4cは、加熱された気流による溶媒の除去を行う乾燥処理装置であり、例えば、スリットノズル形式の噴出し口から成膜面に向け高さ100mm、噴出し風速1m/s、幅手分布5%、乾燥温度100℃で実施する。
【0049】
加熱処理装置4dは、帯状可撓性支持体の裏面側から正孔輸送層を裏面伝熱方式で加熱する、例えば、複数の例えば200℃の加熱ローラを有する裏面伝熱型の加熱処理装置であり、溶媒除去後、温度200℃のヒートロールを密に並べたロール間から吸引して基板が吸着搬送され、裏面伝熱による加熱で熱処理を行うものである。この加熱処理により膜の平滑性や残留溶媒の除去、また、塗膜の硬化等を行う。
【0050】
次いで、発光層形成工程5においては、バックアップロール5aに保持された正孔輸送層を有する帯状可撓性支持体に発光層形成用塗布液を塗布する第二湿式塗布機5bと、正孔輸送層上に形成された発光層の溶媒を除去する乾燥装置5cと、溶媒が除去された発光層を加熱する加熱処理装置5dとを有している。ここでも前記同様の帯電防止手段を用いてよいが省略されている。
【0051】
第二湿式塗布機5bは第一湿式塗布機4bと同じ型式のものが好ましい。
【0052】
乾燥装置5cは乾燥装置4cと同じ構造をしている。加熱処理装置5dは第一加熱処理装置4dと同じ構造をしており、正孔輸送層上に形成された、発光層を帯状可撓性支持体の裏面側から裏面伝熱方式で加熱するようになっている。
【0053】
発光層形成工程5後に次いで電子輸送層塗布工程6にはいる。
【0054】
電子輸送層形成工程6においも、バックアップロール6aに保持された正孔輸送層、発光層を有する帯状可撓性支持体に電子輸送層形成用塗布液を塗布する第三湿式塗布機6bと、発光層上に形成された電子輸送層の溶媒を除去する乾燥装置6cと、溶媒が除去された電子輸送層を加熱する加熱処理装置6dとを有している。また、同様に帯電防止手段を用いてよい。
【0055】
本図に示される、正孔輸送層形成工程4、発光層形成工程5また電子輸送層形成工程6は湿式塗布装置、乾燥装置、加熱処理装置がそれぞれ1台の場合を示しているが、必要に応じて増加することが可能となっている。
【0056】
巻き取り部7で有機機能層各層が形成された帯状可撓性支持体を、有機機能層側を内側にして巻き芯に巻き取りロール状の帯状可撓性支持体7g(以下、帯状可撓性支持体B)とする。
【0057】
また、巻き取り前に、形成した有機機能層について、その不要部を、各層を溶解できる溶媒等を用いて拭き取る工程を設けてもよい。拭き取り工程としては、例えば、特願2008−17776号に記載されたベルト状の拭き取り装置、またブレードを用いた装置等があるが、これらを用い、予め帯状可撓性支持体上に形成されたアラインメントマークの位置に従って拭き取りを実施する。連続的に拭き取る方法が好ましく、搬送を止めて幅手方向の拭き取りを実施するときは、前後にアキューム機構等を設けて有機機能層の塗布から巻き取りまで連続して行うようにする。
【0058】
以上で、電子輸送層迄が帯状可撓性支持体上に形成される。帯状可撓性支持体Bは、次いで、注入層形成工程9にはいる。
【0059】
巻き取られた帯状可撓性支持体ロールは、一旦、収納箱に保管されるときには、減圧下(10−6〜10−2Pa)に収納される。適宜、温度をかけても良い。収納期間は1〜200時間が好ましい。これにより、素子劣化に起因する酸素や微量水分が取り除かれる。
【0060】
電子輸送層を形成したのち、一旦巻き取らず、連続して製造工程2bに送り、電子注入層形成工程を行ってもよい。このときは、この巻き取り部は設けなくともよく、有機機能層の塗布形成速度と、電子注入層の形成時の、断続的な搬送を調整するための緩衝領域としてアキューム機構を、この間に設けることで、連続して電子注入層の形成工程に送ることができる。
【0061】
図2中、製造工程2bにより、一旦巻き取られた帯状可撓性支持体に、電子注入層、第二電極の形成、さらに封止を行う。
【0062】
電子注入層形成工程9と、第二電極を形成する第二電極形成工程10、については、真空プロセス工程であり、例えば、ここでは、電子注入層形成工程9、また第二電極形成工程10を真空蒸着により行うことで説明する。
【0063】
しかしながら、電子注入層および第二電極の形成方法については、特に限定はなく、例えばスパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法などを用いることができる。
【0064】
製造工程2bにおいて、供給部8から、電子輸送層形成後の帯状可撓性支持体Bは、前記真空下において行われる電子注入層形成工程9にはいる。電子注入層形成工程9からは真空下で行われるが、供給部8については大気圧であるため、ここにはプロセス圧力置換工程が必要である。
【0065】
プロセス圧力置換工程は、大気圧プロセス工程と真空プロセス工程の間にプロセス圧力を大気圧から真空に、また逆に、真空から大気圧に置換する工程であり、本発明においては、プロセス圧力置換工程は、挟持型ゲートバルブを備えたチャンバーを用い、チャンバー内に帯状可撓性支持体を導入した状態でゲートバルブがこれを挟持して疑似密閉空間を形成して、この空間から真空ポンプで排気することで挟持型ゲートバルブにより密閉された空間を減圧としこれを維持することにより構成される。
【0066】
プロセス圧力置換工程は、基本的には、挟持型ゲートバルブとこれにより開閉されるチャンバー(バッファー室)からなっており、挟持型ゲートバルブにより密閉したチャンバー内の圧力をポンプにより減圧し調整することからなるため、帯状可撓性支持体の通過搬送されるチャンバー(バッファー室)入り口と出口に挟持型ゲートバルブが設けられている。
【0067】
製造工程2bにおいて、供給部8から、帯状可撓性支持体Bがこの挟持型ゲートバルブを備えたバッファー室を介して電子注入層形成工程9にはいる。この例では、バッファー室として挟持型ゲートバルブG1、G2、G3をそれぞれ備えたチャンバーが、二つ連続して設けられ(Ch1、Ch2)、多段階でプロセス圧力を調整している。このバッファー室においては、電子注入層形成工程9において、蒸着に必要な充分な真空度(1×10−3Pa以下)の確保のためには、バルブ位置において挟持型ゲートバルブを閉じ、可撓性支持体の搬送を停止させて、排気して減圧とするため、連続で巻き出され搬送される帯状可撓性支持体Bの搬送と停止をバッファーするための、アキューム機構を、チャンバー内部に備えている。
【0068】
アキューム機構は、概略図で示したように、一定の張力をかけるためのダンサーローラで構成される。
【0069】
図2中、2bで示される工程においては、プロセス圧力置換工程は挟持型ゲートバルブG1、チャンバーCh1、挟持型ゲートバルブG2、チャンバーCh2および挟持型ゲートバルブG3で構成され、二段階で真空度の調整が行えるようにしている。挟持型ゲートバルブG1〜G3が、チャンバーCh1の入り口、Ch1とCh2の連結部、またチャンバーCh2の出口側、即ち、電子注入層形成工程9の入り口に連結するよう備えられている。勿論チャンバーCh1、チャンバーCh2は独立にポンプで排気することができる。またここでは2段階の構成であるが、必要とされる真空度、また、効率的に搬送を行うため3段階以上、多段階設けてもよい。
【0070】
供給部から巻き出された可撓性支持体は、開いた挟持型ゲートバルブG1を介してチャンバーCh1に搬送され、一方で挟持型ゲートバルブG2は閉じているので、可撓性支持体はアキューム機構によって、チャンバーCh1内に蓄積される。
【0071】
所定量の可撓性支持体が搬送されたところで、挟持型ゲートバルブG1が閉じ、供給部から巻き出される可撓性支持体の搬送が停止すると共に、挟持型ゲートバルブG1、G2で閉じられたチャンバーCh1が排気され減圧となる。またその際、チャンバーCh2(挟持型ゲートバルブG3が閉じられた状態で)も排気され減圧(高真空)に保たれている。チャンバーCh1を減圧とし、真空状態になったところで、挟持型ゲートバルブG2が開き、真空状態のチャンバーCh2に所定量の可撓性支持体が搬送される。また、所定量搬送されたところで、また挟持型ゲートバルブG2は閉じ、チャンバーCh2に可撓性支持体がチャンバーCh2内にも設けられたアキューム機構により所定量蓄積される。次いで、電子注入層形成工程9(高真空に排気されている)との連結部を構成する挟持型ゲートバルブG3が開き、次にチャンバーCh2内に蓄積された蒸着工程を受ける所定量の可撓性支持体が、電子供給層形成工程9に送り込まれる。ここで、また挟持型ゲートバルブG3を閉じて、搬送を停止し、蒸着は架台上に可撓性支持体Bが静止した状態で蒸着工程が実施される。この間、チャンバーCh1からは、挟持型ゲートバルブG2を開くことで、所定量の可撓性支持体がチャンバーCh2に搬送される。
【0072】
この間チャンバーCh1、Ch2は所定の圧力を保つように維持される。
【0073】
電子注入層形成工程9における電子注入層の形成は、真空蒸着により架台上で、搬送が停止した状態で行われるので、アキューム機構を設けることで、この停止を吸収することができる。
【0074】
チャンバーCh1から、挟持型ゲートバルブG2を開くことにより所定量の可撓性支持体が搬送されたのち、挟持型ゲートバルブG2は閉じ、さらに、挟持型ゲートバルブG1が開いて、チャンバーCh1の減圧は解除され、所定量の可撓性支持体をアキューム機構付きのチャンバーCh1内に搬送する。所定量の可撓性支持体がチャンバー内に搬送された後、再び挟持型ゲートバルブG1は閉じて、供給部からの搬送は一旦停止し、再度チャンバーCh1をポンプで排気し減圧とする。
【0075】
ここで、チャンバーCh1、またチャンバーCh2は、ポンプでそれぞれ排気することで減圧とすることができ、チャンバーCh1はチャンバーCh2と供給部8(大気圧)とを連結し、また、チャンバーCh2はチャンバーCh1と蒸着室(高真空)との間に設置されており、段階的に、真空度を調整できるようになっている。
【0076】
各チャンバーに設けられたアキューム機構は、適宜、チャンバーCh2から電子注入層形成部9への、またチャンバーCh1からチャンバーCh2への可撓性支持体の搬送を円滑に行えるようバッファー機能を有する。
【0077】
このようにして繰り返し、所定量ずつ搬送、アキュームの各動作を所定のシーケンスを組んで行うことで、プロセス圧力を大気圧から真空状態に円滑に移行させることができる。
【0078】
ここでは供給部8から、直接、プロセス圧力置換工程に入るが、供給部とプロセス圧力置換工程の間に同様のアキューム機構を設置すれば、搬送を断続で行わずに、供給部8からの巻き出しを連続して行うことができる。
【0079】
電子注入層形成工程9、また、第二電極形成工程10は、同じ真空プロセス工程であり、ここでは、蒸着速度の違いを調整できるよう、アキューム機構を介して同じ真空槽内にそれぞれ、電子注入層形成工程、第二電極形成工程10となる二つの蒸着部が設けられている。チャンバーCh2から挟持型ゲートバルブG3を介して帯状可撓性支持体Bが搬送されると、電子注入層形成工程9において、電子注入層形成部位が支持体ホルダーに固定され静止すると、挟持型ゲートバルブG3が閉じ、蒸着原料ボートが加熱されマスク蒸着が行われる。電子注入層形成工程9では、電子注入層形成部において、電子輸送層上に電子注入層が形成され、ここで9bは蒸着装置の支持体ホルダー、9aは蒸発源容器を概略的に示している。
【0080】
第二電極形成工程10においても、その形成部位が支持体ホルダーに固定され静止すると、第二電極形成部(蒸着装置)において、電子注入層上に同様に第二電極が形成される。蒸着装置の10bは支持体ホルダー、10aはそれぞれ蒸発源容器をそれぞれ略図で示している。
【0081】
ここで、電子注入層が形成された帯状可撓性支持体Bは、アキューム機構を介して、第二電極形成工程10へ送られる構成となっている。
【0082】
第二電極が形成された帯状可撓性支持体は、引き続き、封止層形成工程11に送られる。
【0083】
封止層形成工程11は、有害成分を最小に保つため、希ガスあるいは窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で封止することが好ましく、そのため第二電極形成工程の後、封止層形成工程11を連続で行うには、同様のプロセス圧力置換工程を用いる。
【0084】
即ち、挟持型ゲートバルブG4さらにG5が閉じた状態で減圧・高真空に排気したチャンバーCh3に、蒸着工程である第二電極形成工程10から挟持型ゲートバルブG4をあけて、蒸着により第二電極が形成された可撓性支持体を所定量搬送したのち、挟持型ゲートバルブG4を閉じる。挟持型ゲートバルブG5は搬送時には閉じているが、内部のアキューム機構によりチャンバーCh3内には第二電極が形成された可撓性支持体を所定量蓄積する。次に、挟持型ゲートバルブG6、G5で閉じられ予め減圧に排気されたチャンバーCh4との連結部の挟持型ゲートバルブG5を開いて、可撓性支持体を所定量チャンバーCh4内に蓄積する。
【0085】
次いで、挟持型ゲートバルブG5を閉じた後、挟持型ゲートバルブG6を開いて、例えば窒素ガス雰囲気下に保たれた封止層形成工程11に、所定量の、第二電極まで形成された帯状可撓性支持体Bを送る。この状態ではチャンバーCh4中は窒素雰囲気となる。所定量の帯状可撓性支持体が封止層形成工程11に送られた後、再び挟持型ゲートバルブG6を閉じ(搬送停止)、再度ポンプで排気することで、チャンバーCh4を真空引きによって、減圧状態とする。
【0086】
このように所定量ずつ、断続的に搬送することで、電子注入層形成工程9および第二電極形成工程10におけるプロセス圧力を真空に保ちつつ、プロセス圧力が大気圧である、可撓性支持体供給部から、ロールトゥーロールで、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造を行うことができる。
【0087】
封止層形成工程11は、封止フィルム貼着工程であり、封止フィルム貼着工程においては、挟持型ゲートバルブG6を通して帯状可撓性支持体Bが所定量供給されるときに、帯状可撓性支持体Bに、第二極上に接着剤を塗工する塗工装置により接着剤が塗工され、圧着ロール11b2で構成される貼着部において、封止フィルムと圧着され、さらに硬化処理部(図では省略されている)により硬化を受けて密封接着・封止される。この間帯状可撓性支持体Bおよび封止フィルムは所定の量、搬送されるが、挟持型ゲートバルブG7は閉じており、窒素雰囲気は維持されたまま、アキューム機構により搬送が吸収される。所定量、封止フィルムがラミネートされた後、搬送を停止し、挟持型ゲートバルブG6が閉じられた後に、挟持型ゲートバルブG7が開き、封止フィルム貼着工程11は、開放となり、所定量の封止フィルムによりラミネートされた封止処理された有機EL素子が、取り出される。所定量を取り出した後、再び、挟持型ゲートバルブG7は閉じて、再び、窒素充填が行われ、窒素雰囲気が回復する。
【0088】
接着剤の塗工はこの例では帯状可撓性支持体Bの第二電極上に塗工されるが、封止フィルム上に塗工されてもよい。
【0089】
なお、硬化処理部は、例えば紫外線ランプ等からなり、光硬化性接着剤等を用いたとき紫外線の照射のために配置される。
【0090】
封止層形成工程11は、上記では窒素雰囲気の大気圧プロセス工程として説明したが、例えば真空中において封止を行ってもよい。この場合も、挟持型ゲートバルブを備えた(複数の)チャンバーからなるプロセス圧力置換工程により、同様の方法でコントロールすることができる。
【0091】
封止層形成工程11の後は、巻き取り部により封止の終了した有機EL素子が形成され封止フィルムが貼着された帯状可撓性支持体は一旦巻き取られてもよい。
【0092】
巻き取られたロール状の帯状可撓性支持体C(照明用(面発光)有機EL素子)は、性能維持、ダークスポット(未発光部分)等を考慮し、酸素濃度1〜100ppm、水分濃度1〜100ppmの環境下に保管することが好ましい。
【0093】
また、巻き取らずに、封止フィルム貼合工程に続き、連続可撓性フィルムに作製された有機エレクトロルミネッセンス素子を製品サイズに断裁する連続可撓性フィルム断裁工程を行ってもよい。図2において12は、断裁工程を示す。打ち抜き断裁機12aを用いて、PETに付けられたアラインメントマークを検出し、アラインメントマークの位置に従って製品サイズにカッターによって打ち抜き断裁する。12bは打ち抜き断裁機を模式的に表す。有機EL素子が打ち抜かれた後の連続可撓性フィルムはその後巻き取り機でロール状に巻き取られる。
【0094】
打ち抜き断裁され形成された素子の一例を概略で図6に示す。なお、図中、(a)は素子を上方斜めからみた図を、また、(b)はそのO−O’断面図を、(c)はP−P’断面図を示す。101は可撓性支持体である基材、102は第一電極を、102aは第一電極用取り出し電極を、103〜105は正孔輸送層、発光層、電子輸送層および正孔注入層からなる有機層を、106は第二電極を、106aは第二電極用取り出し電極、108は接着剤層、109は封止フィルムを示す。また、図中、Aは作製された素子の帯状可撓性支持体の幅手方向を、またBは搬送方向を示す。
【0095】
この可撓性フィルム断裁工程は空気雰囲気下で行われることが好ましい。製品サイズに断裁、打ち抜かれた素子に、各素子に電気回路をそれぞれ実装することで有機エレクトロルミネッセンスパネルが形成される。
【0096】
また、封止層形成工程11として、封止フィルムを貼着する代わりに、また、これに加えて封止層を電極層上に形成する方式であってもかまわない。但し、この場合は封止層の形成工程、例えば、スパッタ、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の真空プロセスによる例えば酸化珪素層等の封止層形成工程が追加される。あるいは大気圧プラズマCVD法等の大気圧プロセスの場合には、前記同様の、プロセス圧力置換工程と組み合わせた封止層形成工程が追加される。
【0097】
上記において、巻き出し部8とプロセス圧力置換工程の間に、さらにアキューム機構を、また封止工程と封止工程後の巻き取り工程12の間にアキューム機構を配置することにより、ここで断続的な巻き出し、巻き取りに対するバッファー領域が構成できるので、これにより搬送を連続して実施することができる。
【0098】
本発明のプロセス圧力置換機構は、帯状可撓性支持体を挟持型ゲートバルブにより挟持して圧力差のあるプロセス工程間を遮断するため、有機EL素子が、帯状の可撓性支持体上に、パターン化されて第一電極のパターンが形成されているときには、各パターンの間隔を、前記ゲートバルブで挟み込まれる部分(領域)を確保するため、各パターンを所定の間隔で形成しておくことが好ましい。この間隔は、素子パターンのサイズや、搬送の速度により決めることができる。
【0099】
次に、以上においてプロセス圧力置換工程に用いた挟持型ゲートバルブについて説明する。
【0100】
コンダクタンス型真空バルブの代表的なものとしては、ニップロールを多段に設置し、この部分のコンダクタンスにより真空を得る仕組みのものが古くより研究されているが、多くのものは加工面への接触を厭わない製品ラインへの適用が多い。有機ELのように加工面への接触が問題となる製品のラインへ適用する場合は、非接触状態を維持しながらも間隙をできる限り狭くする必要があり、かつ、蛇行等による加工面損傷をできる限り抑制した高精度の搬送技術も同時に必要となる。
【0101】
本発明において用いる挟持型ゲートバルブは、フィルムの全幅あるいは一部をバルブでクランプする方式である。より詳しくは、真空側と大気側との間に位置する開口を弁体により開閉する真空ゲートバルブであって、弁体は変形可能な輪状の弾性弁体であり、弾性弁体を駆動するアクチュエータにより変形させ開口の開閉を行う構成である。弾性弁体は上部弁部材および下部弁部材より構成され、駆動アクチュエータにより互いに逆方向に移動する上部押え部材および下部押え部材を有し、上部押え部材は上部弁部材に接続され、下部押え部材は下部弁部材に接続されている構成であり、さらに、弾性弁体は、ゴムから構成される。なお、弾性体の材質はゴムが望ましいが、ゴムの中でも気体透過率の低いフッ素ゴムが適している。
【0102】
図3はこの挟持型ゲートバルブを取り出した斜視図で、また図4に断面構成図でこの構造を示す。図において、202は固定盤を、203はバルブ開口を、204は上部弁部材、205は下部弁部材、206はこの支持部材を、207は上部押え部材、208は下部押え部材を示し、209は駆動アクチュエータである。
【0103】
動作について述べる。先ず、挟持型ゲートバルブの両側は真空雰囲気または大気圧雰囲気に維持されているため、ゲートバルブの弁体としての弾性弁体を構成する上部弁部材204、下部弁部材205は開口が開状態となっている。次に、この状態で、挟持型ゲートバルブの両側を例えば互いに異なる大気圧雰囲気と真空雰囲気とする場合には、駆動アクチュエータ209を駆動して、ロッドを介して上部押え部材207が矢印A方向に下がると下部押え部材208が矢印B方向に上がるため、上部押え部材207、下部押え部材208が弾性弁体(上部弁部材204、下部弁部材205)を変形させて押圧し、開口がなくなる状態となり、真空ゲートバルブの開口203は閉弁される。この状態で真空ポンプ(図示せず)を用いて真空ゲートバルブの両側のいずいずれかの雰囲気を真空状態とすることができる。その後、駆動アクチュエータを駆動してロッドを前述と逆方向に移動させると、上部押え部材207、下部押え部材208が開く方向に移動して再度開口203が形成されて開弁状態となる。
【0104】
次に、有機EL素子を構成するこれら各有機機能層において用いられる材料について説明する。
【0105】
有機機能層のうち、発光層中に含有される有機発光材料としては、カルバゾール、カルボリン、ジアザカルバゾール等の芳香族複素環化合物、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、芳香族縮合多環化合物、芳香族複素縮合環化合物、金属錯体化合物等およびこれらの単独オリゴ体あるいは複合オリゴ体等があげられるが、本発明においてはこれに限られるものではなく、広く公知の材料を用いることができる。
【0106】
また層中(成膜材料)には、好ましくは0.1〜20質量%程度のドーパントが発光材料中に含まれてもよい。ドーパントとしては、ペリレン誘導体、ピレン誘導体等公知の蛍光色素等、また、リン光発光タイプの発光層の場合、例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトナート)イリジウム、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジン)(ピコリナート)イリジウム、などに代表されるオルトメタル化イリジウム錯体等の錯体化合物が同様に0.1〜20質量%程度含有される。
【0107】
りん光発光方式は、発光層内部に発光領域をもつためか、塗布による層界面のムラによる発光ムラを比較的起こしにくい。発光層の膜厚は、1nm〜数百nmの範囲に亘る。
【0108】
正孔注入・輸送層中に用いられる材料としては、フタロシアニン誘導体、ヘテロ環アゾール類、芳香族三級アミン類、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)などに代表される導電性高分子等の高分子材料が、また、発光層に用いられる、例えば、4,4′−ジカルバゾリルビフェニル、1,3−ジカルバゾリルベンゼン等のカルバゾール系発光材料、(ジ)アザカルバゾール類、1,3,5−トリピレニルベンゼンなどのピレン系発光材料に代表される低分子発光材料、ポリフェニレンビニレン類、ポリフルオレン類、ポリビニルカルバゾール類などに代表される高分子発光材料などが挙げられる。
【0109】
電子注入・輸送層材料としては、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物もしくは以下に挙げられる含窒素五員環誘導体がある。即ち、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられる。
【0110】
有機EL素子、各有機層の膜厚は、0.05〜0.3μm程度必要であり、好ましくは0.1〜0.2μm程度である。
【0111】
また、有機層(有機EL各機能層)の形成方法としてはウェットプロセスである塗布および印刷等が好ましい。例えば、ダイコート方式、スクリーン印刷方式、フレキソ印刷方式、インクジェット方式、メイヤーバー方式、キャップコート法、スプレー塗布法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法等の塗布機の使用が可能である。これらの湿式塗布機の使用は有機化合物層の材料に応じて適宜選択することが可能となっている。
【0112】
各有機材料には溶解特性(溶解パラメータやイオン化ポテンシャル、極性)がそれぞれにあり、溶解できる溶媒には限定がある。またその際には溶解度もそれぞれ違うため、一概に濃度も決めることができないが、本発明において用いられる溶媒の種類は、成膜しようとする有機EL材料に応じて、前記の条件に適ったものを、公知の溶媒から選択すればよく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、メタノールや、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、2−メトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラリン等のパラフィン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、ピリジン、キノリン、アニリン等のアミン系溶媒、アセトニトリル、バレロニトリル等のニトリル系溶媒、チオフェン、二硫化炭素などの硫黄系溶媒が挙げられる。
【0113】
なお、使用可能な溶媒は、これらに限るものではなく、これらを二種以上混合して溶媒として用いてもよい。
【0114】
これらのうち好ましい例としては、有機EL材料において、各機能層材料によっても異なるものの、大凡について、良溶媒としては、例えば芳香族系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒などであり、好ましくは、芳香族系溶媒、エーテル系溶媒である。また、貧溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、パラフィン系溶媒などが挙げられ、なかでもアルコール系溶媒、パラフィン系溶媒である。
【0115】
また、本発明では、上記の各機能層において、反応性基をもつ有機化合物(反応性有機化合物)を用いてもよい。反応性有機化合物を用いる層としては特に制限はなく、各層に用いることができる。それぞれ各機能層に反応性基をもつそれぞれの機能をもつ有機材料を用いればよい。
【0116】
反応性有機化合物塗布層を形成後基板上で反応させ、有機分子によるネットワークポリマーを形成させ、硬化させることができる。ネットワークポリマーが生成することで、構成層のTg(ガラス転移点)調整による素子劣化の抑制させることができる。
【0117】
また、素子使用中の活性ラジカルを用いて分子の共役系の切断または生成を伴う反応を調整することにより、有機EL素子の発光波長をかえたり、特定波長の劣化を抑制すること等も可能である。
【0118】
一方、製造面では、例えば、塗布により積層する工程の場合では、下層が上層の塗布液に溶解しないことが好ましいため、下層を樹脂化し溶剤溶解性を劣化させることで、上層塗布を可能とすることができる。例えば、正孔輸送層をこのように架橋した有機層として樹脂化することで、上層として発光層を塗布する際に下層の溶解、又浸透を防止することができる。
【0119】
用いることのできる反応性基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、エチニル基、イソシアネート基、エポキシ基等が代表的には挙げられる。
【0120】
また、2つの電極のうち、第一電極である正孔の注入を行う陽極に使用される導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数をもつものが適しており、銀、金、白金、パラジウム等およびそれらの合金、酸化スズ、酸化インジウム、ITO等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。透光性であることが好ましく、透明電極としてはITOが好ましい。ITO透明電極の形成方法としては、マスク蒸着またはフォトリソパターニング等が使用できるが、これに限られるものではない。
【0121】
また、第二電極である陰極として使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数をもつものが適しており、マグネシウム、アルミニウム等。合金としては、マグネシウム/銀、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられる。また、その形成方法は、マスク蒸着、フォトリソパターニング、メッキ、印刷等が使用できるが、これに限られるものではない。
【0122】
また、本発明において、帯状の可撓性支持体としては、透明性樹脂フィルムが用いられる。透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等のフィルムが挙げられる。
【0123】
またこれら支持体上にガスバリア層を形成したガスバリアフィルムを用いることが好ましい。ガスバリア層としては例えば、厚み数nm〜数百nmの酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素等透湿度の低い材料からなる水分透過率が小さい薄膜が挙げられる。
【0124】
本発明で用いられる封止フィルムとしては、水分透過率が小さいガスバリア性の樹脂フィルムであることが好ましい。これらのフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン等の上記可撓性支持体として挙げられたフィルム上に透明な厚み数nm〜数百nmの酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素等透湿度の低い材料からなる薄膜を形成したフィルム、また、ガスバリア性の被膜である、アルミナ蒸着膜等を形成したフィルム、等が挙げられる。例えば、金属蒸着フィルムである凸版印刷製、GXフィルム、テックバリア(三菱樹脂)等のシリカ蒸着フィルム、また、アルミナ蒸着フィルム等ガスバリア層を形成した上記フィルム等を用いることができる。
【0125】
封止に用いる接着剤としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂等からなるUV硬化型接着剤組成物を用いることができ、例えば、ナガセケムテック(株)製、UVレジン XNR5516等のUV硬化型接着剤(樹脂)を用いることができる。また、勿論、熱接着型樹脂でもよい。
【0126】
本発明は、以上で説明した態様のみに限定されるものではなく、本発明の請求項1〜11に記載の構成を用いることで、有機EL素子の製造におけるような、プロセス圧力が大気圧から真空といった広範囲に及ぶ有機EL素子の製造ラインにおいても、巻き取り工程を必要としないか、あるいは、巻き取り回数が少ないロールトゥーロールラインの製造工程を構成することができる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例により、本発明の製造方法について具体的に説明する。
【0128】
先ず、幅700mm、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を準備し、準備したPETフィルム上に、大気圧プラズマ放電処理法で、トータルの膜厚で約90nmの酸化珪素からなる低密度層、中密度層、高密度層、中密度層のユニットを3層積層した透明ガスバリア性フィルムを作製した。JIS K 7129−1992に準拠した方法により水蒸気透過度を測定した結果、10−3g/(m・24h)以下であった。JIS K 7126−1987に準拠した方法により酸素透過度を測定した結果、10−3ml/(m・24hr・MPa)以下であった。
【0129】
次に、図5に概略断面図で示したスパッタ装置を用いて、ロールトゥーロールの真空チャンバー内に元巻きを導入し、アルゴン雰囲気下で、ITO膜を130nm成膜して、透明導電膜を形成した。このITO膜の表面比抵抗は、40Ω/□であった。
【0130】
次に、ITO膜の形成された面に、幅方向670mm、長手方向720mmの長方形の領域に紫外光で重合するフォトリソグラフ用の樹脂をパターン塗布し、90℃の乾燥炉を通過させたのち、位置を合わせ露光後、搬送しながら、現像、エッチング、アルカリ処理を経て、イオン交換水で洗浄後、清浄な空気を吹き付けて、十分乾燥したのち、巻き取った。各透明導電膜パターンの間隔は、後述の真空成膜プラントの各真空室(チャンバー)に差圧を形成するための挟持型ゲートバルブで挟み込まれる部分を予め確保するため60mmずつ距離をおいた。
【0131】
図2の2aの製造工程を用いて、以下の通り前記電極パターンを作製したPETフィルムを巻き取ったロール状のPETフィルムに有機機能層の塗布を行った。
【0132】
先ず、正孔輸送層形成工程4において正孔輸送層を形成した。
【0133】
正孔輸送層形成用塗布液としてポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Bytron P AI 4083)を純水で65%、メタノールで5%希釈した溶液を正孔輸送層形成用塗布液として準備した。正孔輸送層形成用塗布液の表面張力は40mN/m(協和界面化学社製:表面張力計CBVP−A3)であった。
【0134】
図2、2aの製造工程を使用し、準備された第一電極が形成されたロール状のPETフィルムに帯電除去処理を施した後、PETフィルムの有効画素上のみに、発光層形成用塗布液を温度25℃で、湿式塗布方式により乾燥後の厚みが30nmになるように成膜した。塗布機はインクジェット塗布機を使用した。
【0135】
塗布後、乾燥装置および加熱処理装置を使用して、乾燥装置ではスリットノズル形式の吐出口から成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度120℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理装置により温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、正孔輸送層を形成した。なお、搬送速度は、3m/分とした。
【0136】
次に、発光層形成工程5で、発光層を形成した。発光層形成用塗布液として、溶媒であるトルエンに対してホストであるジカルバゾール誘導体(CBP)を1質量%、ドーパントであるイリジウム錯体(Ir(ppy))を0.05質量%の比率で溶解させたものを塗布液として準備した。発光層形成用塗布液の表面張力は25℃で28mN/m(協和界面化学社製:表面張力計CBVP−A3を使用)であった。準備された、孔輸送層が形成されたロール状のPETフィルムに帯電除去処理した後、PETフィルムの有効画素上のみに、発光層形成用塗布液を温度25℃で、正孔輸送層形成工程と同様のインクジェット塗布機を使用した湿式塗布方式により乾燥膜厚が50nmになるように塗布した。塗布後、正孔輸送層塗膜の乾燥および加熱処理に使用した乾燥装置および加熱処理装置と同じ装置を使用し、乾燥装置ではスリットノズル形式の吐出口から成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理装置により温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、発光層を形成した。
【0137】
さらに、電子輸送層形成工程6において、電子輸送層を塗布した。
【0138】
電子輸送層形成用塗布液として、溶媒である乳酸エチルに対して2−(4−ビフェニリル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(t−Bu−PBD)を1質量%で溶解させたものを塗布液として準備した。電子輸送層形成用塗布液の表面張力は25℃で29mN/m(協和界面化学社製:表面張力計CBVP−A3を使用)であった。準備された発光層が形成されたロール状のPETを帯電除去処理した後、PETの有効画素上のみに、発光層形成用塗布液を温度25℃でインクジェット塗布機を使用した湿式塗布方式により乾燥膜厚が30nmになるように塗布した。
【0139】
塗布後、正孔輸送層塗膜の乾燥および加熱処理に使用した乾燥装置および加熱処理装置と同じ装置を使用し、乾燥装置ではスリットノズル形式の吐出口から成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度100℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理装置により温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、電子輸送層を形成した。
【0140】
乾燥の後に巻き取り部7において有機機能層各層がパターン形成されたPETフィルムを、電子輸送層側を内側にして巻き芯に巻き取りロール状のフィルムとして一旦巻き取った。
【0141】
その後、巻き取った電子輸送層を形成したPETフィルムのロールを、一旦、10−3Paの減圧下で室温で1日収納箱に保管した。
【0142】
次いで、電子輸送層を形成したPETフィルムのロールを、図2の2bで示される製造工程を用いて、電子注入層、第二電極等を積層して、有機EL素子を作製した。
【0143】
供給部8からPETフィルムのロールを巻き出して、図2中、2bに示したプロセス圧力置換工程を介して電子注入層形成工程9に送りだし、電子注入層の成膜をマスクを用いて蒸着により実施した。
【0144】
即ち、2図、2bの製造工程を用いて、プロセス圧力置換工程を通し、大気圧環境から真空環境への移行を行った上で、電子注入層形成工程9においてフッ化リチウム(0.5nm)をマスク蒸着し、さらに、後段の第二電極形成工程10を構成する第二真空成膜室で、アルミニウムを110nmマスク蒸着した後、封止層形成工程11を構成するラミネート室において、封止樹脂(接着剤)が40μm塗布されているガスバリア層(90nmの酸化珪素層)形成済みのPETフィルム(PET厚み80ミクロン)を用いて大気圧の窒素気流下で押圧0.1MPaで熱圧着し本硬化させることでラミネートした。
【0145】
この間、プロセス圧力置換工程における各チャンバーは挟持型ゲートバルブ(排気ポンプ)のシークェンシャルな動作により、適切な状態となるよう維持され、各工程のプロセス圧力は適切に保たれるようにした。また、供給部8からのPETフィルムのロールの巻き出し、またラミネート後の巻き取りもこれに連動し、断裁工程における打ち抜き装置12aを用いて、PETに付けられたアラインメントマークを検出し、アラインメントマークの位置に従って断裁、打ち抜いた。
【0146】
図6に概略図で示した有機EL素子が得られる。
【0147】
打ち抜かれ作製された素子の一例を概略で図6に示す。なお、図中、101はPETフィルムである基材、102はITOからなる第一電極を、102aは第一電極用取り出し電極を、103〜105は正孔輸送層、発光層、電子輸送層および正孔注入層からなる有機層を、106はアルミニウムからなる第二電極を、106aは第二電極用取り出し電極、108は接着剤層、109は封止フィルム(ガスバリア層形成済みのPETフィルム)である。
【0148】
以上により、長尺のPETフィルム上に封止された有機EL素子がロールトゥーロールで形成され本発明の有効性が確認された。
【0149】
各素子を、打ち抜いて切り出した後、電源回路を実装することで有機ELパネルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】有機EL素子の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】有機EL素子を作製する工程の一例を示す模式図である。
【図3】挟持型ゲートバルブの概略斜視図である。
【図4】挟持型ゲートバルブの断面構成図である。
【図5】実施例で用いたスパッタ装置の概略断面図である。
【図6】実施例で作製した有機EL素子の概略断面図である。
【符号の説明】
【0151】
1a、1b 有機EL素子
101 基材
102 第一電極
103 正孔輸送層
104 発光層
105 電子注入層
106 第二電極
107 封止層
108 接着剤層
109 封止フィルム
2a、2b 製造工程
3 供給工程
4 正孔輸送層形成工程
5 発光層形成工程
6 電子輸送層形成工程
7 巻き取り部
8 供給部
9 電子注入層形成工程
10 第二電極形成工程
11 封止層形成工程
202 固定盤
203 バルブ開口
204 上部弁部材
205 下部弁部材
206 支持部材
207 上部押え部材
208 下部押え部材
209 駆動アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、可撓性フィルム上に、第一電極、一以上の有機機能層、第二電極、を順次形成する工程、および、封止フィルム貼合工程から構成される有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記各工程が、
大気圧環境下で可撓性フィルムに処理を行う大気圧プロセス工程と、
真空環境下で可撓性フィルムに処理を行う真空プロセス工程とから構成され、
かつ、
大気圧プロセス工程と真空プロセス工程の間にプロセス圧力を大気圧から真空に、又真空から大気圧に置換するプロセス圧力置換工程を有し、
該プロセス圧力置換工程が、
挟持型ゲートバルブを備えたチャンバー内に、可撓性フィルムを導入した状態でゲートバルブがこれを挟持することで形成される疑似密閉空間を、真空ポンプで排気することで構成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項2】
前記大気圧プロセス工程が、1×10Pa以上であり、前記真空プロセス工程が1×10−3Pa以下であることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項3】
前記プロセス圧力置換工程が、圧力置換機能を有する複数のチャンバーからなり、段階的に圧力を置換することを特徴とする請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項4】
前記大気圧プロセス工程が、第一電極が形成された連続可撓性フィルムにドライ方式で洗浄するドライ洗浄工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項5】
前記大気圧プロセス工程が、第一電極が形成された連続可撓性フィルムの第一電極上にウェットプロセスで有機機能層の少なくとも一層を成膜する有機機能層成膜工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項6】
前記真空プロセス工程が、連続可撓性フィルムの必要領域上にドライプロセスで第二電極を成膜する第二電極成膜工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項7】
前記大気圧プロセス工程が、窒素ガス雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項8】
前記真空プロセス工程が、連続可撓性フィルムにウェットプロセスで成膜された有機機能層を熱処理する有機機能層熱処理工程を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項9】
封止フィルム貼合工程に続き、連続可撓性フィルムに作製された有機エレクトロルミネッセンス素子を製品サイズに断裁する連続可撓性フィルム断裁工程を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項10】
前記連続可撓性フィルム断裁工程が空気雰囲気下で行われることを特徴とする請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法により作製される有機エレクトロルミネッセンス素子の発光機構がリン光発光に基づくものであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−62012(P2010−62012A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226802(P2008−226802)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】