説明

有機フッ素化合物の分析方法

【課題】製品中等に含有される有害な有機フッ素化合物を効率的に、かつ精度良く分析する優れた有機フッ素化合物の分析方法を提供する。
【解決手段】分析試料中に、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、およびそれらの塩から選ばれるいずれかの有機フッ素化合物が含有される場合に、有機フッ素化合物を選択的に抽出可能である抽出工程と、抽出工程で得られた抽出物を600〜1300℃で10〜60分水蒸気分解する分解工程と、分解工程で得られた分解物中のフッ化物イオンの有無または含有量を分析する分析工程とを有することを特徴とする有機フッ素化合物の分析方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機フッ素化合物の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機フッ素化合物はその耐熱性、耐薬品性、安定性などから工業的に広く用いられてきた。しかし、昨今その難分解性、生体蓄積性、環境残留性が懸念されており、特にパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)については、2008年6月よりEUにおいて規制が始まるとともに、POPs条約への追加検討が行われている。したがって、PFOSの代替、分析技術の確立が急務となっている。
【0003】
PFOSの分析方法としては、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)や高速液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)による方法が用いられている。しかし、主に環境水や生体に残留したPFOSを対象とした分析方法であるため、電気製品等の工業製品中のPFOSを測定するためにはその抽出方法、濃縮方法といった前処理が煩雑となる。また、分析にも熟練を要するため簡便さの点で課題が残る。特に、分析対象の数の増加と共に分析の迅速化が求められている昨今、このような従来法はその普及、適用に限界がある。
【0004】
公知の有機フッ素化合物の分解方法としては、特許文献1に、密閉容器内での金属触媒を用いた熱水分解方法が開示されている。また、特許文献2には、土壌に含有された有機塩素系化合物を水蒸気分解する土壌の処理装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−306736号公報
【特許文献2】特開2006−35218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
もっとも、特許文献1の方法では、分解時間が長時間となること、有機フッ素化合物を全て分解してしまうため目的化合物以外のフッ素化合物を含有する場合には定量性に欠けることといった課題が残る。そして、密閉容器や金属触媒を用いることから簡便性にも欠ける。また、分解されたフッ化物イオンは分析を経ず、回収利用に留まっている。
【0006】
また、特許文献2の方法は、土壌に含有された有機塩素系化合物に限定されたものであり、製品の樹脂等に含有された難分解性のフッ素化合物については記載がない。また、特許文献2に記載された短時間の分解条件ではフッ化物イオンへと分解することは出来ないといった課題が挙げられる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、製品中等に含有される有害な有機フッ素化合物を効率的に、かつ精度良く分析する優れた有機フッ素化合物の分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の有機フッ素化合物の分析方法は、分析試料中に、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、およびそれらの塩から選ばれるいずれかの有機フッ素化合物が含有される場合に、前記有機フッ素化合物を選択的に抽出可能である抽出工程と、前記抽出工程で得られた抽出物を600〜1300℃で10〜60分水蒸気分解する分解工程と、前記分解工程で得られた分解物中のフッ化物イオンの有無または含有量を分析する分析工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記分析方法において、前記有機フッ素化合物がパーフルオロオクタンスルホン酸およびその塩から選ばれるいずれかの有機フッ素化合物であることが望ましい。
【0010】
上記分析方法において、前記有機フッ素化合物がパーフルオロオクタン酸およびその塩から選ばれるいずれかの有機フッ素化合物であることが望ましい。
【0011】
上記分析方法において、前記抽出工程と前記分解工程の間に、さらに前記抽出工程で得られた抽出物を吸着剤にて回収する回収工程を有することが望ましい。
【0012】
上記分析方法において、前記分解工程が常圧下で行われることが望ましい。
【0013】
上記分析方法において、前記分析工程において、イオンクロマトグラフ法、キャピラリー電気泳動法、あるいは吸光光度法のうちのいずれか一つのフッ化物イオン測定法を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製品中等に含有される有害な有機フッ素化合物を効率的に、かつ精度良く分析する優れた有機フッ素化合物の分析方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態の有機フッ素化合物の分析方法の工程図である。まず、製品、樹脂や化合物などの分析試料が準備される。次に、抽出工程において、分析試料中の分析対象となる有機フッ素化合物、すなわち、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、およびそれらの塩から選ばれるいずれかの有機フッ素化合物を、有機溶剤等を用いて選択的に抽出する。次に、分解工程において、抽出工程で得られた抽出物を、600〜1300℃で10〜60分の条件で水蒸気分解する。次に、分析工程において、分解工程で得られた分解物中のフッ化物イオンの有無または含有量を、吸光光度法等のフッ化物イオン測定法を用いることで分析する。このようにして、分析試料中の、分析対象となる有機フッ素化合物の有無、またはその有機フッ素化合物の含有量を分析結果として得る。
【0017】
まず、本実施の形態において分析対象とされる有機フッ素化合物であるパーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、およびそれらの塩について説明する。
【0018】
パーフルオロアルキルスルホン酸は、アルキルスルホン酸のアルキル部分に結合する水素がフッ素で置換された化合物であり、その炭素数に応じてパーフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロプロパンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロペンタンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロノナンスルホン酸、パーフルオロデカンスルホン酸などが挙げられる。これらは直鎖状、分岐状いずれでも構わない。
【0019】
また、パーフルオロアルキルスルホン酸の塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩などの多くの塩基性化合物が挙げられる。これらは炭素数、結合する塩基性官能基はいずれでも構わず、上記の例に何ら限定されるものではない。
【0020】
パーフルオロアルキルカルボン酸は、アルキルカルボン酸のアルキル部分に結合する水素がフッ素で置換された化合物であり、その炭素数に応じてパーフルオロ酢酸、パーフルオロプロピオン酸、パーフルオロブタン酸、パーフルオロペンタン酸、パーフルオロヘキサン酸、パーフルオロヘプタン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロノナン酸、パーフルオロデカン酸などが挙げられる。これらは直鎖状、分岐状いずれでも構わない。
【0021】
また、パーフルオロアルキルカルボン酸の塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩などの多くの塩基性化合物が挙げられる。これらは炭素数、結合する塩基性官能基はいずれでも構わず、上記の例に何ら限定されるものではない。
【0022】
抽出工程における抽出手段は、樹脂中、製品中、化合物中にパーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸およびその塩が含有される場合にこれらの有機フッ素化合物を抽出することができる方法であれば良い。具体的には、粉砕した樹脂、製品、化合物を、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸を溶解しうる有機溶剤、界面活性剤を含有する水溶液等に浸漬し、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸を抽出する。
【0023】
有機溶剤としては、分解時にパーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸との混同を避けるため、フッ素を含有せず、かつパーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸を溶解するものであればいずれでも良い。具体的には、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、メタノール、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0024】
水溶液としては、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸の抽出量を増やすため、界面活性剤を含有する水溶液が好ましい。界面活性剤を含有する水溶液も同上の理由により、フッ素を含有しないものであればいずれの塩を含有していても構わない。界面活性剤は陰イオン、陽イオン、非イオン、両性イオン界面活性剤のいずれでも良い。陰イオン性界面活性剤の具体例としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステル、リグニンスルホン酸ナトリウムが、陽イオン界面活性剤としては塩化アルキルトリメチルアンモニウムが、非イオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、両性界面活性剤としてはアルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドなどが挙げられる。しかし、上記の例に何ら限定されるものではなく、界面活性剤であればいずれでも構わない。
【0025】
なお、抽出効率は低下するが、純水を用いることも可能である。
【0026】
本抽出手段により、テフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン等の樹脂、製品中に含有されるフッ素系高分子材料を取り除く事が出来、分解物を分析(測定)する時に、本実施の形態の分析方法の対象としているパーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸等以外のフッ素系高分子による測定精度の低下を避けることが出来る。
【0027】
なお、得られた抽出液をそのまま分解に用いても構わないが、分析効率の面及び、測定感度向上の面からパーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸抽出液を乾燥により濃縮させた後、次の分解工程に進むことが望ましい。乾燥方法はパーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸が揮発しない温度、圧力であればいずれでも構わない。
【0028】
分解工程は600℃度以上1300℃以下、より好ましくは800℃以上1200℃以下において、不活性ガス、水蒸気存在下でおこなう。600℃より低温ではフッ化物イオンへの分解が促進されず、また1300℃より高温では分解効率に変化は見られないためエネルギー的に不利という問題点を有する。一方、800℃以上1200℃以下の温度範囲では投入エネルギーに対して最も効率的に分解することができるという利点がある。なお、大気雰囲気で行うことを必ずしも排除するものではないが、試料が酸化されることを防止するためには、不活性ガス雰囲気で行うことが望ましい。
【0029】
不活性ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられるが、上記の例に何ら限定されるものではない。反応容器は600℃以上1300℃以下の反応温度に耐えられるものであればいずれでも構わない。反応時間はパーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロオクタン酸がフッ化物イオンへと分解する時間であれば特に制約されず、10分から60分程度で十分であるが、一定時間経過すると分解が終了し、それ以上進行しないことから、15分から30分がより好ましい。但し、10分以下においてはフッ化物イオンへの分解が完全なものとはならない。このため、定性分析においては10分未満でもよいが、定量分析においては精度確保の観点から10分以上反応時間を確保することが好ましい。分解には水蒸気以外の反応媒体は特に必要とされないが、鉄、銅、鉛、アルミニウム、亜鉛等の金属粉等の触媒存在下でおこなわれても構わない
【0030】
図2は、分解工程で用いる装置の一例を示す模式断面図である。この装置は燃焼管分解装置である。管状電気炉10中に合成石英製導入管12が挿入されており、合成石英製導入管12には加熱のためのヒータ14が挿入されている。ヒータ14による加熱温度は温度計16によりモニタされる。合成石英製導入管12の管内には、合成石英製のボート18に載せた分析試料20が載置可能となっている。そして、合成石英製導入管12の一端側からフィルタ22を介して、例えば不活性ガスと水蒸気との混合ガス24を導入することが可能となっている。また、他端にはインピンジャー26が設けられ、分析試料20が混合ガスと反応して生成された分解物の回収が可能となっている。
【0031】
なお、この燃焼管分解装置は、開放系となっており常圧下で分解処理を行うよう構成されている。分解工程は必ずしも常圧下で行うことに限られないが、常圧下で行うことにより、高温での分解処理を簡易かつ安全に行うことが可能となるため望ましい。
【0032】
分解工程に続く分析工程は、分解物中のフッ化物イオンを分析することが出来る方法であればいずれでも良く、具体的には、イオンクロマトグラフ質量分析法、吸光光度法、キャピラリー電気泳動法などが挙げられる。簡便に分析をおこなうことが出来る点で、アルフッソン法などによる吸光光度法による分析がより好ましい。
【0033】
図3は、本実施の形態の変形例の有機フッ素化合物の分析方法の工程図である。この変形例では、抽出工程と分解工程の間に、さらに抽出工程で得られた抽出物を吸着剤にて回収する回収工程が設けられている。
【0034】
抽出工程で得られた抽出液について、さらに、分析効率をあげ、測定感度向上させる観点からパーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸抽出液を活性炭やイオン交換樹脂等吸着剤等に吸着することによって回収する事が好ましい。吸着剤は上記吸着剤に限定されるものではなく、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸を吸着するものであり、また分解時にパーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸との混同を避けるためその構造にフッ素を含有しないものであればいずれの吸着剤でも構わない。
【0035】
以上、本実施の形態によれば、選択的に分析対象となる有機フッ素化合物を抽出するため、製品中等に含有される有害な有機フッ素化合物を効率的かつ精度良く分析することが可能となる。また、常圧下での分析も可能であり、かつ、簡易なイオン測定法で分析可能なため簡便性にも富む。また、精度の高い定量分析も可能となる。
【0036】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、有機フッ素化合物の分析方法、分析装置等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる有機フッ素化合物の分析方法、分析装置等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0037】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての有機フッ素化合物の分析方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0039】
(実施例1)
パーフルオロオクタンスルホン酸を10ppm含有している塗料からメタノールを用いてパーフルオロオクタンスルホン酸を抽出し、1000℃にて15分間高温水蒸気分解を行った。回収されたフッ化物イオンを吸交光度法により分析したところ、呈色によりフッ化物イオンを含有していることを示した。
【0040】
(実施例2)
パーフルオロオクタンスルホン酸を10ppm含有している塗料からメタノールを用いてパーフルオロオクタンスルホン酸を抽出し、活性炭に吸着させた後、1000℃にて15分間高温水蒸気分解を行った。回収されたフッ化物イオンをイオンクロマトグラフ質量分析法により分析したところ、パーフルオロオクタンスルホン酸を15ppm含有しているという結果が得られた。
【0041】
(実施例3)
パーフルオロオクタンスルホン酸を10ppm含有している塗料からメタノールを用いてパーフルオロオクタンスルホン酸を抽出し、抽出液を60℃、大気圧下で6時間乾燥・濃縮させた後、1000℃にて15分間高温水蒸気分解を行った。回収されたフッ化物イオンをイオンクロマトグラフ質量分析法により分析したところ、パーフルオロオクタンスルホン酸を20ppm含有しているという結果が得られた。
【0042】
(実施例4)
パーフルオロオクタン酸を50ppm含有しているフッ素樹脂を凍結粉砕し、メタノールを用いてパーフルオロオクタン酸を抽出し、活性炭に吸着させた後、1000℃にて15分間高温水蒸気分解を行った。回収されたフッ化物イオンをイオンクロマトグラフ質量分析法により分析したところ、パーフルオロオクタンスルホン酸を45ppm含有しているという結果が得られた。
【0043】
(実施例5)
パーフルオロオクタン酸を50ppm含有しているフッ素樹脂を凍結粉砕し、ラウリル硫酸ナトリウムを10mM/L含有する水溶液を用いてパーフルオロオクタン酸を抽出し、活性炭に吸着させた後、1000℃にて15分間高温水蒸気分解を行った。回収されたフッ化物イオンをイオンクロマトグラフ質量分析法により分析したところ、パーフルオロオクタン酸を45ppm含有しているという結果が得られた。
【0044】
(実施例6)
パーフルオロオクタンスルホン酸を1ppm含有しているプリント基板を凍結粉砕し、メタノールを用いてパーフルオロオクタンスルホン酸を抽出し、活性炭に吸着させた後、1000℃にて15分間高温水蒸気分解を行った。回収されたフッ化物イオンをイオンクロマトグラフ質量分析法により分析したところ、パーフルオロオクタンスルホン酸を1ppm含有しているという結果が得られた。
【0045】
(実施例7)
パーフルオロオクタンスルホン酸を50ppm含有しているフッ素樹脂を凍結粉砕し、メタノールを用いてパーフルオロオクタンスルホン酸を抽出し、活性炭に吸着させた後、600℃にて10分間高温水蒸気分解を行った。回収されたフッ化物イオンをイオンクロマトグラフ質量分析法により分析したところ、パーフルオロオクタンスルホン酸を35ppm含有しているという結果が得られた。
【0046】
(実施例8)
パーフルオロオクタンスルホン酸を50ppm含有しているフッ素樹脂を凍結粉砕し、メタノールを用いてパーフルオロオクタンスルホン酸を抽出し、活性炭に吸着させた後、800℃にて10分間高温水蒸気分解を行った。回収されたフッ化物イオンをイオンクロマトグラフ質量分析法により分析したところ、パーフルオロオクタンスルホン酸を60ppm含有しているという結果が得られた
【0047】
(実施例9)
パーフルオロオクタンスルホン酸を50ppm含有しているフッ素樹脂を凍結粉砕し、メタノールを用いてパーフルオロオクタンスルホン酸を抽出し、活性炭に吸着させた後、1200℃にて10分間高温水蒸気分解を行った。回収されたフッ化物イオンをイオンクロマトグラフ質量分析法により分析したところ、パーフルオロオクタンスルホン酸を48ppm含有しているという結果が得られた
【0048】
(実施例10)
パーフルオロオクタンスルホン酸を50ppm含有しているフッ素樹脂を凍結粉砕し、メタノールを用いてパーフルオロオクタンスルホン酸を抽出し、活性炭に吸着させた後、1300℃にて10分間高温水蒸気分解を行った。回収されたフッ化物イオンをイオンクロマトグラフ質量分析法により分析したところ、パーフルオロオクタンスルホン酸を53ppm含有しているという結果が得られた。
【0049】
(比較例1)
パーフルオロオクタンスルホン酸を50ppm含有している塗料からメタノールを用いてパーフルオロオクタンスルホン酸を抽出し、活性炭に吸着させた後、500℃にて無触媒条件下で30分間高温水蒸気分解を行った。回収されたフッ化物イオンを吸交光度法により分析したところ、呈色しなかったことから、フッ化物イオンの含有は確認されなかった。
【0050】
(比較例2)
パーフルオロオクタンスルホン酸を50ppm含有している塗料からメタノールを用いてパーフルオロオクタンスルホン酸を抽出し、活性炭に吸着させた後、1000℃にて無触媒条件下で5分間高温水蒸気分解を行った。回収されたフッ化物イオンをイオンクロマトグラフ質量分析法により分析したところ、パーフルオロオクタンスルホン酸を5ppm含有しているという結果が得られた。
【0051】
(比較例3)
パーフルオロオクタンスルホン酸を50ppm含有しているフッ素樹脂を1000℃にて15分間高温水蒸気分解を行った。回収されたフッ化物イオンをイオンクロマトグラフ質量分析法により分析したところ、パーフルオロオクタンスルホン酸を10000ppm含有しているという結果が得られた。これはパーフルオロオクタンスルホン酸と同時にフッ素樹脂が水蒸気分解されてフッ化物イオンとなったためである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態の有機フッ素化合物の分析方法の工程図である。
【図2】実施の形態の分解工程で用いる装置の一例を示す模式断面図である。
【図3】実施の形態の変形例の有機フッ素化合物の分析方法の工程図である。
【符号の説明】
【0053】
10 管状電気炉
12 合成石英製導入管
14 ヒータ
16 温度計
18 ボート
20 分析試料
22 フィルタ
24 混合ガス
26 インピンジャー



【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析試料中に、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、およびそれらの塩から選ばれるいずれかの有機フッ素化合物が含有される場合に、前記有機フッ素化合物を選択的に抽出可能である抽出工程と、
前記抽出工程で得られた抽出物を600〜1300℃で10〜60分水蒸気分解する分解工程と、
前記分解工程で得られた分解物中のフッ化物イオンの有無または含有量を分析する分析工程と、
を有することを特徴とする有機フッ素化合物の分析方法。
【請求項2】
前記有機フッ素化合物がパーフルオロオクタンスルホン酸およびその塩から選ばれるいずれかの有機フッ素化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機フッ素化合物の分析方法。
【請求項3】
前記有機フッ素化合物がパーフルオロオクタン酸およびその塩から選ばれるいずれかの有機フッ素化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機フッ素化合物の分析方法。
【請求項4】
前記抽出工程と前記分解工程の間に、さらに前記抽出工程で得られた抽出物を吸着剤にて回収する回収工程を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項に記載の有機フッ素化合物の分析方法。
【請求項5】
前記分解工程が常圧下で行われることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項に記載の有機フッ素化合物の分析方法。
【請求項6】
前記分析工程において、イオンクロマトグラフ法、キャピラリー電気泳動法、あるいは吸光光度法のうちのいずれか一つのフッ化物イオン測定法を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項に記載の有機フッ素化合物の分析方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−294010(P2009−294010A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146470(P2008−146470)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】