説明

有機レーザ装置

【課題】再現性に優れた方法で作製することが可能であり、所望の波長のレーザ光が得られ、かつ、小型軽量のレーザ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】一対の電極間に発光層を有する発光素子が形成された第1の基板と、レーザ色素を含むレーザ媒体が設けられた第2の基板とを対向して配置し、一対の電極のうち、発光層とレーザ媒体の間に位置する電極は透光性を有する構成とする。このような構成とすることにより、レーザ媒体と光源とが一体となっているレーザ装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を用いたレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光通信などの多様な分野でレーザ光が用いられている。レーザ光源としては、固体レーザ、半導体レーザ、気体レーザ、液体レーザ(例えば、色素レーザ)など、種々のレーザ光源がある。中でも半導体レーザは、小型軽量、高効率、低電圧で動作可能であり、多方面で実用化されている。ただし、媒体として無機化合物を用いている固体レーザ、半導体レーザ、気体レーザなどは、発振波長が媒体固有の波長となるため、発振波長の選択肢が限られており、所望の波長のレーザ光を得ることが難しい。
【0003】
一方、レーザ媒体として有機化合物の溶液を用いている色素レーザは、使用する色素や共振器の形状の調節によって、発振波長を自由に選択することができる。しかしながら、色素の劣化を防ぐため色素溶液を循環させるための大がかりな装置が必要なこと、及びレーザ媒体の他に光源を設けなければならず更に大がかりな装置となることから、操作性、利便性に乏しい。
【0004】
そこで、レーザ媒体の色素を溶液ではなく薄膜とすることでこの難点を解決する提案がなされてきた。最も直接的な解決手段は、レーザ共振器構造を有機発光ダイオード(有機EL素子)の内部に設置し、直接電流励起することである。このような構成を有するレーザ光源は、可視光領域での発光波長を選択でき、且つ外付けの大がかりな励起光源装置を必要としない。また、当該有機発光ダイオードを封止することにより水分などの侵入を防止して色素薄膜の劣化を防止することができる。そのため、色素溶液の場合よりも簡便に劣化を防止することができる。しかしながら、高性能の有機ELディスプレイが実用化された現在においても、電流注入型有機レーザ装置は実用化されていない。電流注入型有機レーザ装置の技術的障壁は以下の2課題である。
【0005】
第1に、有機EL素子における有機薄膜の膜厚は100nmから500nm程度である。そのため、有機薄膜を挟んで設置される電極間距離が短いため膜面と垂直方向に共振器構造を構成した場合、共振器の光利得が小さくなる。また、電極による光吸収が大きいため更に光利得を失うことになる。さらに、光の伝搬方向を膜面と平行にした導波路型共振器構造を採用した場合であっても、両面の電極による光吸収損失が大きい。
【0006】
第2に、当該電流注入型有機レーザ装置は、有機EL素子の発光層をレーザ発振が行われる層とすることが必須である。また、有機EL素子を構成する全ての有機薄膜による光吸収損失を無くすことも必須である。しかしながら、このような条件に合う物質を選択して作製した有機EL素子において高輝度、高効率、高安定性動作を全て達成することは困難である。
【0007】
このように、レーザ媒体を色素薄膜とし、且つ直接電流注入によってレーザ発振を行う電流注入型有機レーザ装置を実用化するのは困難である。そこで、光共振器を組み込んだ色素薄膜をコンパクトな外部光源で間接励起する手法が提示されている(非特許文献1および非特許文献2参照)。しかしながら、いずれの例においても、光共振器付き色素薄膜のサイズに対応したコンパクトな光源を用いることには成功していないのが実情である。
【0008】
また、有機EL素子を励起光源とすることで、励起光源をコンパクトにして有機レーザ装置を完成しようと試みた提案がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−208173号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】I. D. Samuel, G. A. Turnbull, ”Organic Semiconductor Lasers”, Chem. Rev., 2007, 107, 1272−1295.
【非特許文献2】Y. Yang, G. A. Turnbull, I. D. W. Samuel, ”Hybrid optoelectronics: A polymer laser pumped by a nitride light−emitting diode”, Appl. Phys. Lett., 92, 163306 (2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に開示されている構成は、有機EL素子と、分布帰還共振器を備えた色素薄膜とを、ガラス基板の両面に位置合わせを行って同時に形成する必要があること、基板の両側に配置された有機薄膜を両側から保護封止する必要があることなど、複雑な作業工程を要する。つまり、有機薄膜レーザ装置製作上の解決すべき課題は山積しているのが実情である。
【0012】
よって、本発明の一態様は、再現性に優れた方法で作製することが可能であり、所望の波長のレーザ光が得られ、かつ、小型軽量の有機レーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような難点を全て解決して有機EL素子励起の有機レーザを完成させるべく鋭意工夫考案の結果、以下のような有機レーザ装置を開発した。当該有機レーザ装置は、レーザ発振部を発光素子の光射出側電極の外側に近接して設置し、ガラス基板を介在させることのない間接励起方式を採用している。当該有機レーザ装置によって、上述の全ての困難は克服可能であり、外形上は直接電流励起型レーザ装置とほぼ同一の、シート状の有機レーザが実現可能であることが判明した。
【0014】
また、当該有機レーザ装置が有する発光素子として、技術の完成度が高い有機EL素子を利用するのが好ましい。当該有機EL素子の射出光を高い光結合効率で有機EL素子の面状透明電極に近接して設置した「光共振器を組み込んだ固体薄膜レーザ媒体」に導入すれば、有機EL素子内部にレーザ媒体を組み込んだ場合とほぼ等しい電流励起効率でレーザ色素分子を励起できるからである。有機EL素子を有する有機レーザ装置において、光を射出する透明電極が露出したトップエミッション型の有機EL素子の上面位置に、あらかじめ別の基板上に作製しておいた光共振器付きの薄膜状のレーザ媒体を近接して設置することで、有機EL素子からの射出光を全て共振器内のレーザ媒体に結合させることが可能となる。当該有機レーザ装置の作製工程は、有機EL素子の作製と、光共振器を組み込んだレーザ媒体の作製とを、別々に独立して行った後、貼り合わせる工程を有する。当該工程は、技術的な困難度もはるかに少なく、再現性に優れ、安価で量産可能な工程である。また、有機EL素子の作製と、光共振器を組み込んだレーザ媒体の作製とを、別々に独立して行うことができるため、有機EL素子の作製方法について特に制限されることがなく、最も特性のよい構造および最も生産性に優れた作製方法を用いることができる。また、レーザ媒体の作製方法に関しても特に制限がなく、最も特性のよい構造および最も生産性に優れた作製方法を用いることができる。よって、最も特性のよい構造の有機EL素子と、最も特性のよい構造のレーザ媒体を用いて、有機レーザ装置を作製することができ、優れた特性の有機レーザ装置を得ることができる。
【0015】
即ち、上記有機レーザ装置は基板上に形成された一対の電極と有機薄膜で構成され、片方の電極が透明である発光素子と、別の基板上に形成された光共振器を組み込んだレーザ媒体とを対向して設置することを特徴とする、有機レーザ装置である。
【0016】
つまり、本発明の一態様は、一対の電極間に発光層を有する発光素子が設けられた第1の基板と、有機化合物を含むレーザ媒体が設けられた第2の基板と、を対向して配置し、一対の電極のうち、発光層とレーザ媒体の間に位置する電極は透光性を有することを特徴とする有機レーザ装置である。
【0017】
上記構成において、レーザ媒体に、光共振器が組み込まれている有機レーザ装置も本発明の一態様である。なお、当該光共振器としては、ファブリーペロー型共振器、分布帰還型(DFB)共振器、ブラッグ反射型(DBR)共振器、ウイスパーギャラリーモード型共振器、円環型共振器、フォトニック結晶型共振器、およびこれらの共振器を連結して構成される共振器などを適用することができる。
【0018】
また、上記構成において、レーザ媒体の中に光を閉じこめるために、レーザ媒体と第2の基板の間に、透光性を有する低誘電体膜、または、透光性を有する誘電体の積層膜などを設けてもよい。
【0019】
また、上記構成において、第2の基板におけるレーザ媒体が設けられた面の裏面には、反射膜が設けられていることが好ましい。
【0020】
また、上記構成において、一対の電極のうち、発光層と第1の基板の間に位置する電極は、反射電極であることが好ましい。または、発光素子と第1の基板の間若しくは第1の基板における発光素子が設けられた面の裏面に、反射膜が設けられていることが好ましい。
【0021】
また、上記構成において、発光素子とレーザ媒体の距離は、1mm以下であることが好ましい。
【0022】
また、上記構成において、発光素子およびレーザ媒体は、第1の基板と、第2の基板と、第1の基板および第2の基板を貼り合わせるシール材と、によって封止されていることが好ましい。
【0023】
なお、上記構成において、発光素子の発光波長は、レーザ媒体を高効率で励起することができる波長となるよう発光材料とレーザ媒体の材料の組み合わせを選択する。
【0024】
また、上記構成において、発光素子の発光材料は有機化合物であることが好ましい。特に、発光材料は燐光性化合物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様を適用することにより、再現性に優れた方法で作製することが可能であり、小型軽量であり、シート状のレーザ装置を得ることができる。また、所望の波長のレーザ光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】有機レーザ装置を説明する図。
【図2】有機レーザ装置を説明する図。
【図3】発光素子を説明する図。
【図4】発光素子を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略することがある。
【0028】
(実施の形態1)
本実施の形態の有機レーザ装置は、レーザ媒体と、光源とが一体となっているレーザ装置である。光源としては、発光素子を用いる。発光素子は面状光源である。また、光源に対向する領域にレーザ媒体であるレーザ色素を含む膜が形成されている。レーザ媒体であるレーザ色素を含む膜が形成されている基板上には、光共振器が組み込まれていることが好ましい。レーザ媒体内の光共振器の配置は特に限定されず、レーザ媒体の内部に配置されていてもよく、レーザ媒体の基板側やレーザ媒体の表面側に配置されていてもよい。
【0029】
このような構成のレーザ装置は、発光素子からの光により、レーザ媒体であるレーザ色素を励起し、レーザ光を発振する。
【0030】
また、発光素子が形成されている基板とレーザ媒体が形成されている基板は、発光素子が形成されている面と、レーザ媒体が形成されている面とが内側になるよう、対向して配置されている。つまり、発光素子とレーザ媒体は、2つの基板間に位置するように配置されている。なお、発光素子とレーザ媒体の距離は、1mm以下である。好ましくは、0.6mm以下である。このように発光素子とレーザ媒体の距離が短いことにより、発光素子の発光面と、レーザ媒体の受光面とを近接させることができ、光結合効率が向上する。
【0031】
また、発光素子やレーザ媒体が形成されている領域の外周部には、基板を貼り合わせるためのシール材が設けられている。このような構成とすることにより、外部からの水分の侵入が抑制され、発光素子およびレーザ媒体の信頼性を向上させることができる。すなわち、発光素子からの光をレーザ媒体に高い光結合率で導入するため、シール材によって2枚の基板を固定すると共に、外気からの密封の効果を発現させることが、本実施の形態の有機レーザ装置の優れた特徴である。
【0032】
本実施の形態の有機レーザ装置について、図1を用いて詳細に説明する。図1(A)は有機レーザ装置の断面図、図1(B)は平面図である。
【0033】
図1において、第1の基板1001上には、発光素子1002が形成されている。発光素子1002は一対の電極(第1の電極1111と第2の電極1113)間に発光層1112を有している。第2の基板1003上には、レーザ媒体1004が形成されている。第1の基板1001と第2の基板1003は、発光素子1002が形成されている面と、レーザ媒体1004が形成されている面とが内側になるよう、対向して配置されている。つまり、発光素子1002とレーザ媒体1004は、第1の基板1001と、第2の基板1003との間に位置するように配置されている。そして、発光素子1002やレーザ媒体1004が形成されている領域の外周部には、第1の基板1001と第2の基板1003を貼り合わせるためのシール材1005が設けられている。第1の基板1001、第2の基板1003、シール材1005で囲まれた空間1006には、充填材が充填されていることが好ましい。当該充填材としては、不活性気体(窒素やアルゴン等)やシール材を適用することが可能である。特に、空間1006に乾燥剤が設けられ、不活性気体が充填されていることが好ましい。このような構成にすることにより、空間1006に水分が侵入することを防止することができ、発光素子およびレーザ媒体の劣化を防止することができる。
【0034】
発光素子1002とレーザ媒体1004の距離は、1mm以下である。好ましくは、0.6mm以下である。このように発光素子1002とレーザ媒体1004の距離が短いことにより、発光素子1002の発光面と、レーザ媒体1004の受光面とを近接させることができ、光結合効率が向上する。
【0035】
また、レーザ媒体1004が形成されている領域は、発光素子1002が形成されている領域よりも広いことが好ましい。発光素子1002からの光は、指向性が低く、発光素子1002の形成された領域よりも広がる。そのため、発光素子1002よりも広い領域にレーザ媒体1004を形成することにより、発光素子1002からの光を効率よくレーザ媒体1004が吸収することができる。
【0036】
また、第2の基板1003上のレーザ媒体1004には、光共振器が組み込まれていることが好ましい。図2(A)の例示では、光共振器1007は、第2の基板1003とレーザ媒体1004の間に設けているが、必ずしもこの配置に限られるものではない。
【0037】
第1の基板1001、第2の基板1003としては、種々の基板を用いることができる。具体的には、ガラス、プラスチックなどを用いることができる。特に、第2の基板1003としては低屈性率である基板を用いることが好ましい。低屈折率の基板を用いることで、レーザ媒体1004からの光がレーザ媒体1004中に閉じこめられやすくなるため好ましい。
【0038】
また、図2(B)に示すように、第2の基板1003とレーザ媒体1004の間に、透光性を有する低誘電体膜、または、透光性を有する誘電体の多層膜などを設けることができる。透光性を有する誘電体材料としては、酸化珪素、酸化タンタル、酸化チタン、フッ素系ポリマーなどが挙げられる。図2(B)では、透光性を有する低誘電体膜1008を設けた例を示す。このような構成とすることにより、レーザ媒体1004の中に光を閉じこめることができる。
【0039】
また、図2(C)に示すように、第2の基板1003のレーザ媒体1004が形成されている面の裏面に、誘電体の多層膜、銀(Ag)やアルミニウム(Al)を含む膜などの反射膜1009が形成されていることが好ましい。
【0040】
また、発光素子1002と第1の基板1001の間、または、第1の基板1001における発光素子1002が設けられた面の裏面には、反射膜が形成されていることが好ましい。また、発光素子1002の発光層1112と第1の基板1001の間に位置する電極は反射電極である構成とすることが好ましい。図2(D)では、一例として、第1の基板1001における発光素子1002が設けられた面の裏面に反射膜1010を設けた例を示す。また、第1の基板1001のみならず第2の基板1003にも反射膜を設けることがより好ましい。
【0041】
このように反射膜が形成されていることにより、発光素子1002からの光が外部へ漏れることを防ぎ、レーザ媒体1004へ、効率良く照射することができる。なお、第2の基板1003上に光共振器が組み込まれている場合には光共振器内への光の閉じこめ効果が大きくなり好ましい。
【0042】
図1及び図2では、第1の基板1001および第2の基板1003は平面として表しているが、それに限定されず、基板の一部または全面に曲面を有していてもよい。曲面を有する基板を用いる場合、レーザ媒体であるレーザ色素を含む膜の膜厚を変化させないようにすることが好ましい。また、基板は、可撓性を有していてもよい。可撓性のある基板を用いる場合についてもレーザ媒体であるレーザ色素を含む膜の膜厚を変化させないようにすることが好ましい。
【0043】
発光素子1002の発光材料としては、無機化合物を用いても良いし、有機化合物を用いても良い。発光素子1002は、レーザ媒体であるレーザ色素を励起することができる波長の光を発光する必要がある。よって、材料の選択肢が多く、所望の発光波長の光を得ることができる有機化合物を発光材料として用いることが好ましい。
【0044】
発光材料として有機化合物を用いる場合、燐光を発光する化合物(以下、燐光性化合物という)や蛍光を発光する化合物(以下、蛍光性化合物という)を用いることができる。燐光性化合物は、蛍光性化合物よりも発光効率が高いため、好ましい。
【0045】
燐光性化合物としては、有機金属錯体が挙げられる。例えば、青色系の発光材料として、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)(アセチルアセトナート)(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0046】
また、蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−(tert−ブチル)ペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,13−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0047】
なお、発光素子1002の発光層1112としては、上述した発光材料(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ホスト材料としては、各種のものを用いることができ、発光性の物質よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。なお、本明細書中において、HOMO準位又はLUMO準位が高いとは、そのエネルギーレベルが大きいことを意味し、HOMO準位又はLUMO準位が低いとは、そのエネルギーレベルが小さいことを意味する。例えば、−5.5eVのHOMO準位を有する物質Aは、−5.2eVのHOMO準位を有する物質BよりHOMO準位が0.3eV低く、−5.7eVのHOMO準位を有する物質CよりHOMO準位が0.2eV高いと言うことができる。
【0048】
ホスト材料としては、具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物や、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称:BANT)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB3)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12−ジメトキシ−5,11−ジフェニルクリセンなどの縮合芳香族化合物、N,N−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:CzA1PA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、N,9−ジフェニル−N−{4−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フェニル}−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPBA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、NPB(またはα−NPD)、TPD、DFLDPBi、BSPBなどの芳香族アミン化合物などを用いることができる。
【0049】
また、ホスト材料は複数種を混合して用いることができる。例えば、上述の物質を主構成物質として、結晶化を抑制するためにルブレン等の結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。また、発光性の物質へのエネルギー移動をより効率良く行うためにNPB、又はAlq等をさらに添加してもよい。
【0050】
発光材料を他の物質に分散させた構成とすることにより、発光層1112の結晶化を抑制することができる。また、発光材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0051】
また、発光材料として高分子化合物を用いることができる。具体的には、青色系の発光材料として、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)(略称:POF)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)](略称:PF−DMOP)、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−[N,N’−ジ−(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]}(略称:TAB−PFH)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(略称:PPV)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル)](略称:PFBT)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−alt−co−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレン)]などが挙げられる。また、橙色〜赤色系の発光材料として、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン](略称:MEH−PPV)、ポリ(3−ブチルチオフェン−2,5−ジイル)(略称:R4−PAT)、ポリ{[9,9−ジヘキシル−2,7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}、ポリ{[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−ビス(1−シアノビニレンフェニレン)]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}(略称:CN−PPV−DPD)などが挙げられる。
【0052】
また、発光素子1002は、レーザ色素を励起することができる波長の光を発光する必要があるため、レーザ色素の発光波長よりも短波長の発光とすることが必要である。
【0053】
レーザ媒体1004に含まれるレーザ色素としては、種々の有機化合物を用いることができる。スチルベン系、クマリン系(クマリン440、クマリン450、クマリン460、クマリン480、クマリン515、クマリン540など)、ローダミン系(ローダミン560、ローダミン590、ローダミン610、ローダミン640など)、キサンテン系、シアニン系(DOC、DODC、DOTC、DTC、DTDC、DTTC、HIC、HIDC、HITCなど)、オキサジン系(オキサジン725など)、フルオレセイン系(フルオレセイン二ナトリウム塩など)などを用いることができる。また、オキサゾール、オキサジアゾール、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(略称:DCM)、ピリジン、ピロメテン、フルオレセン、キトン赤、ポリ−p−フェニレンビニレン、オリゴチオフェンなど、およびそれらの誘導体などを用いることができる。
【0054】
なお、光源として用いる発光素子1002は一つのレーザ媒体について一つとは限らず、複数の発光素子を設置してもよい。
【0055】
レーザ媒体であるレーザ色素を含む膜は、レーザ色素を他の材料に分散させた構成としてもよい。その場合、分散させるための材料(ホスト材料)としては、レーザ発振波長の光を吸収しない材料を用いることが好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのようなレーザ色素と相互作用しない材料を用いることができる。また、例えば、ポリビニルカルバゾールやビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジンなどのようなレーザ色素へエネルギー移動できる材料を用いることができる。
【0056】
また、レーザ色素を含む膜は、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、真空蒸着法などの乾式法や、インクジェット法、スピンコート法などの湿式法を用いて形成することができる。
【0057】
また、レーザ媒体1004が形成されている第2の基板1003上に、光共振器を組み込むことが好ましい。図2(A)の例示では、光共振器1007は、第2の基板1003とレーザ媒体1004の間に設けているが、必ずしもこの配置に限られるものではない。
【0058】
光共振器1007の構造としては、種々の構造のものを用いることができる。例えば、ファブリーペロー型共振器、分布帰還型(DFB)共振器、ブラッグ反射型(DBR)共振器、ウイスパーギャラリーモード型共振器、円環型共振器、フォトニック結晶型共振器、およびこれらの共振器を連結して構成される共振器などが挙げられる。
【0059】
光共振器1007の形成方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、ファブリーペロー型共振器、分布帰還型(DFB)共振器、ブラッグ反射型(DBR)共振器などの回折格子型共振器を用いる場合、図2(A)に示すように、予め形成した誘電体の回折格子上にレーザ媒体1004を形成してもよい。また、他の回折格子型共振器の形成方法としては、メタルマスクなどを利用してレーザ色素を含む膜を所望の領域に成膜する方法、一面に成膜したレーザ色素を含む膜の一部をフォトリソグラフィなどで除去する方法、予め所望のパターンに形成したレーザ色素を含む膜をナノインプリント法を用いて転写する方法、光の干渉縞を利用したフォトリソグラフィ法などが挙げられる。
【0060】
本実施の形態の有機レーザ装置は、薄膜状であり、小型軽量である。よって、様々な用途に使用することができる。
【0061】
また、本実施の形態の有機レーザ装置は、レーザ媒体として有機化合物を用いているため、所望の波長のレーザ光を得ることができる。
【0062】
また、本実施の形態の有機レーザ装置は、光源である発光素子と、レーザ媒体とが、第1の基板、第2の基板、およびシール材に囲まれた領域の中に設けられた構成となっている。このような構成とすることにより、外部からの水分の侵入が抑制され、発光素子およびレーザ媒体の信頼性を向上させることができる。
【0063】
また、本実施の形態の有機レーザ装置は、外見上は通常用いられる封止された有機EL素子と形状が同様である。これは、レーザ発振の容易さを格段に向上させることとともに、2枚の基板上に形成した部分構造を貼り合わせると同時に封止を実現するという、製造技術上の極めて大きな進歩性を有している。
【0064】
(実施の形態2)
本実施の形態では、発光素子の一態様について、図3を用いて詳細に説明する。
【0065】
本実施の形態の発光素子は、一対の電極間に複数の層を有する。当該複数の層は、電極から離れたところに発光領域が形成されている。つまり、電極から離れた部位でキャリアの再結合が行われるように、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層を組み合わせて積層されたものである。
【0066】
本実施の形態において、発光素子は、第1の電極102と、第2の電極104と、第1の電極102と第2の電極104の間に設けられたEL層103と、から構成されている。なお、本実施の形態では第1の電極102は陽極として機能し、第2の電極104は陰極として機能するものとして、以下、説明をする。つまり、第1の電極102の方が第2の電極104よりも電位が高くなるように、第1の電極102と第2の電極104間に電圧を印加したときに、発光が得られるものとして、以下、説明をする。
【0067】
第1の基板1001は、発光素子の支持体として用いられる。第1の基板1001としては、例えばガラス、またはプラスチック、金属などを用いることができる。なお、発光素子の支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0068】
第1の電極102としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上であることが好ましい)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して、インクジェット法、スピンコート法などにより作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0069】
また、第1の電極102と接する層として、後述する複合材料を含む層を用いた場合には、第1の電極102として、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムを含む合金(AlSi)等を用いることができる。また、仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成することができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金はスパッタリング法により形成することも可能である。また、銀ペーストなどをインクジェット法などにより成膜することも可能である。
【0070】
本実施の形態で示すEL層103は、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115を有している。なお、EL層103は、発光層を有していればよく、その他の層の積層構造については特に限定されない。つまり、EL層103は、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質、発光性の高い物質(発光材料)等を含む層を適宜組み合わせて構成すればよい。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等を適宜組み合わせて構成することができる。各層を構成する材料について以下に具体的に示す。
【0071】
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、酸化モリブデンや酸化バナジウム、酸化ルテニウム、酸化タングステン、酸化マンガン等を用いることができる。この他、低分子の有機化合物としては、フタロシアニン(略称:HPc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン系の化合物、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ビス[4−[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル]−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等が挙げられる。
【0072】
また、正孔注入層111として、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。なお、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させたものを用いることにより、電極の仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶことができる。つまり、第1の電極102として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料を用いることができる。これらの複合材料は、正孔輸送性の高い物質と、アクセプター性物質とを共蒸着することにより形成することができる。
【0073】
なお、本明細書中において、複合とは、単に2つの材料を混合させるだけでなく、複数の材料を混合することによって材料間での電荷の授受が行われ得る状態になることを言う。
【0074】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0075】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、MTDATA、TDATA、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体や、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチル−アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物を挙げることができる。
【0076】
また、アクセプター性物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0077】
また、正孔注入層111としては、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることができる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0078】
また、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物と、上述したアクセプター性物質を用いて複合材料を形成し、正孔注入層111として用いてもよい。
【0079】
正孔輸送層112は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、低分子の有機化合物として、NPB(またはα−NPD)、TPD、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0080】
また、上述した正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を正孔輸送層112として用いても良い。
【0081】
また、正孔輸送層112として、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。
【0082】
発光層113は、発光性の高い物質(発光材料)を含む層であり、実施の形態1で示したように種々の材料を用いることができる。例えば、発光性の高い物質としては、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。特に、燐光性化合物は、蛍光性化合物よりも発光効率が高いため、好ましい。
【0083】
また、発光層113は、発光材料(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。また、発光材料を分散させるための物質は複数種を混合して用いてもよい。発光材料を他の物質に分散させた構成とすることにより、発光層113の結晶化を抑制することができる。また、発光材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0084】
また、発光層113として高分子化合物を用いてもよい。
【0085】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、例えば、低分子の有機化合物として、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体が挙げられる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ01)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物も用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0086】
また、電子輸送層114として、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などを用いることができる。
【0087】
電子注入層115は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入性の高い物質としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を用いることができる。例えば、電子輸送性の高い物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたもの、例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いることができる。なお、電子注入層として、電子輸送性の高い物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたものを用いることにより、第2の電極104からの電子注入が効率良く行われるためより好ましい。
【0088】
第2の電極104を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下であることが好ましい)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成することができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金はスパッタリング法により形成することも可能である。また、銀ペーストなどをインクジェット法などにより成膜することも可能である。
【0089】
また、第2の電極104と電子輸送層114の間に、電子注入を促す機能を有する層である電子注入層115を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を第2の電極104として用いることができる。これら導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。
【0090】
また、EL層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0091】
例えば、上述した材料のうち、高分子化合物を用いて湿式法でEL層103を形成してもよい。または、低分子の有機化合物を用いて湿式法で形成することもできる。また、低分子の有機化合物を用いて真空蒸着法などの乾式法を用いてEL層103を形成してもよい。
【0092】
また、電極についても、ゾル−ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いて湿式法で形成してもよい。また、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式法を用いて形成しても良い。
【0093】
以上のような構成を有する本実施の形態に係る発光素子は、第1の電極102と第2の電極104の間に生じた電位差により電流が流れ、EL層103において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。
【0094】
発光は、第1の電極102または第2の電極104のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極102または第2の電極104のいずれか一方または両方は、透光性を有する電極である。
【0095】
例えば、図3(A)に示すように、第1の基板1001上に、陽極として機能する第1の電極102、EL層103、陰極として機能する第2の電極104を積層した構成の場合、発光は第2の電極104を通って取り出されるため、第2の電極104は透光性を有する電極である必要がある。
【0096】
また、図3(B)に示すように、第1の基板1001上に、陰極として機能する第2の電極104、EL層103、陽極として機能する第1の電極102を積層した構成の場合、発光は第1の電極102を通って取り出されるため、第1の電極102は透光性を有する電極である必要がある。
【0097】
なお、第1の電極102と第2の電極104の間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されない。発光領域と金属とが近接することによって生じる消光を防ぐように、第1の電極102および第2の電極104から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成であれば、上記以外のものでもよい。
【0098】
つまり、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等からなる層と、発光層とを適宜組み合わせて構成すればよい。
【0099】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0100】
(実施の形態3)
本実施の形態では、発光素子の一態様について、図4を用いて詳細に説明する。本実施の形態では、複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(以下、積層型素子という)について説明する。この発光素子は、第1の電極と第2の電極の間に、複数の発光ユニットを有する積層型発光素子である。各発光ユニットの構成としては、実施の形態2で示したEL層の構成と同様な構成を用いることができる。つまり、実施の形態2で示した発光素子は、1つの発光ユニットを有する発光素子である。本実施の形態では、複数の発光ユニットを有する発光素子について説明する。
【0101】
図4において、第1の電極501と第2の電極502の間には、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512が電荷発生層513を介して積層されている。
【0102】
第1の電極501と第2の電極502は実施の形態2と同様なものを適用することができる。また、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構成であってもよく、その構成は実施の形態2で示したEL層の構成と同様なものを適用することができる。
【0103】
電荷発生層513は、第1の電極501と第2の電極502間に電圧を印加したときに、一方の側の発光ユニットに電子を注入し、他方の側の発光ユニットに正孔を注入する層であり、単層でも複数の層を積層した構成であってもよい。複数の層を積層した構成としては、正孔を注入する層と電子を注入する層とを積層する構成であることが好ましい。
【0104】
正孔を注入する層としては、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化レニウム、酸化ルテニウム等の半導体や絶縁体を用いることができる。あるいは、正孔輸送性の高い物質に、アクセプター性物質が添加された構成であってもよい。正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む層は、実施の形態2で示した複合材料で構成されており、アクセプター性物質として、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)や、酸化バナジウムや酸化モリブデンや酸化タングステン等の金属酸化物を含む。正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物、オリゴマー、デンドリマー、ポリマーなど、種々の化合物を用いることができる。なお、正孔輸送性の高い物質としては、正孔移動度が10−6cm/Vs以上であるものを適用することが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。
【0105】
電子を注入する層としては、酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸セシウム等の絶縁体や半導体を用いることができる。あるいは、電子輸送性の高い物質に、ドナー性物質が添加された構成であってもよい。ドナー性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属または元素周期表における第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いることができる。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、インジウム(In)、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物をドナー性物質として用いてもよい。電子輸送性の高い物質としては、実施の形態2で示した材料を用いることができる。なお、電子輸送性の高い物質としては、電子移動度が10−6cm/Vs以上であるものを適用することが好ましい。但し、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。電子輸送性の高い物質とドナー性物質とを有する複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。
【0106】
また、電荷発生層513として、実施の形態2で示した電極材料を用いることもできる。例えば、正孔輸送性の高い物質と金属酸化物を含む層と透明導電膜とを組み合わせて形成しても良い。なお、光取り出し効率の点から、電荷発生層513は透光性の高い層とすることが好ましい。
【0107】
いずれにしても、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512に挟まれる電荷発生層513は、第1の電極501と第2の電極502間に電圧を印加したときに、一方の側の発光ユニットに電子を注入し、他方の側の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。例えば、第1の電極501の電位の方が第2の電極502の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層513は、第1の発光ユニット511に電子を注入し、第2の発光ユニット512に正孔を注入するものであればいかなる構成でもよい。
【0108】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、同様に、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層513で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での発光が可能である。よって、本実施の形態で示す積層型発光素子を光源として用いることにより、レーザ媒体を励起するための高輝度の光を発光することができる。また、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。よって、レーザ媒体に均一に光を照射することができる。
【0109】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0110】
1001 第1の基板
1002 発光素子
1003 第2の基板
1004 レーザ媒体
1005 シール材
1006 空間
1007 光共振器
1008 低誘電体膜
1009 反射膜
1010 反射膜
1111 第1の電極
1112 発光層
1113 第2の電極
102 第1の電極
103 EL層
104 第2の電極
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
501 第1の電極
502 第2の電極
511 第1の発光ユニット
512 第2の発光ユニット
513 電荷発生層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に発光層を有する発光素子が設けられた第1の基板と、
有機化合物を含むレーザ媒体が設けられた第2の基板と、を対向して配置し、
前記一対の電極のうち、前記発光層と前記レーザ媒体の間に位置する電極は透光性を有することを特徴とする有機レーザ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記レーザ媒体は、光共振器が組み込まれていることを特徴とする有機レーザ装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記光共振器は、ファブリーペロー型共振器、分布帰還型(DFB)共振器、ブラッグ反射型(DBR)共振器、ウイスパーギャラリーモード型共振器、円環型共振器、フォトニック結晶型共振器、およびこれらの共振器を連結して構成される共振器のいずれか一であることを特徴とする有機レーザ装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、
前記レーザ媒体と前記第2の基板の間には、透光性を有する低誘電体膜、または、透光性を有する低誘電体膜の積層膜が設けられていることを特徴とする有機レーザ装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記第2の基板における前記レーザ媒体が設けられた面の裏面には、反射膜が設けられていることを特徴とする有機レーザ装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、
前記一対の電極のうち、前記発光層と前記第1の基板の間に位置する電極は、反射電極であることを特徴とする有機レーザ装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、
前記発光素子と前記第1の基板の間には、反射膜が設けられていることを特徴とする有機レーザ装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、
前記第1の基板における前記発光素子が設けられた面の裏面には、反射膜が設けられていることを特徴とする有機レーザ装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項において、
前記発光素子と前記レーザ媒体の距離は、1mm以下であることを特徴とする有機レーザ装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項において、
前記発光素子および前記レーザ媒体は、前記第1の基板と、前記第2の基板と、前記第1の基板および前記第2の基板を貼り合わせるシール材と、によって封止されていることを特徴とする有機レーザ装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項において、
前記発光素子の発光材料は、有機化合物であることを特徴とする有機レーザ装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記発光材料は、燐光性化合物であることを特徴とする有機レーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−80948(P2010−80948A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196340(P2009−196340)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】