説明

有機化合物の使用

本発明は、組織ブラジキニンレベルの上昇によって調節される疾患を予防し、その進行を遅延させ、または処置する方法であって、温血動物に治療上有効量のレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を単独で、または例えば(i)ACR阻害剤間もしくはその薬学的に許容される塩;または(ii)アンギオテンシンIIレセプターブロッカーもしくはその薬学的に許容される塩との組合せで投与することを含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
天然酵素レニンは、腎臓から血液に移行し、血中でアンギオテンシノーゲンを切断して、デカペプチドアンギオテンシンIを遊離させ、後者は次いで肺、腎臓および他の臓器で切断されて、オクタペプチドアンギオテンシンIIを生じる。該オクタペプチドは動脈血管収縮によって直接的に、そして細胞外液量の増加を伴う副腎からのナトリウムイオン放出ホルモンアルドステロンの放出によって間接的に、血圧を上昇させる。この上昇はアンギオテンシンIIの作用に起因し得る。レニン酵素活性の阻害剤は、アンギオテンシンIの形成の減少をもたらす。その結果、アンギオテンシンIIの生産量が減少する。当該活性ペプチドホルモンの生産減少は、例えばレニン阻害剤の低血圧効果の直接の原因である。
【背景技術】
【0002】
レニン阻害剤をより広汎な治療適用にも使用することができると、さらなる評価がなされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明者らは、驚くべきことに、レニン阻害剤、特にアリスキレンが、組織ブラジキニンレベルを上昇させる能力を有するため、それを心臓の疾患、特に虚血性心臓疾患または虚血性心臓損傷の予防、その進行の遅延または処置に使用することができることを見出した。より驚くべきことに、この効果はこれまで、高用量のACE阻害剤でのみ示されており(Hypertension, May 1995; 25: 1014 - 1020参照)、NEP阻害剤のような他の薬剤では示されておらず(J Pharmacol. Experimental Therapeutics, 1999, vol. 289, No.1, 295-303参照)、したがってブラジキニンレベルに対するレニン阻害剤のこの効果は、極めて強烈である。
【0004】
したがって、本発明は、組織ブラジキニンレベルの上昇によって調節される疾患を予防し、その進行を遅延させ、または処置する方法であって、温血動物に治療上有効量のレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法に関する。
【0005】
本明細書において使用するとき、組織ブラジキニンレベルの上昇によって調節される疾患は、特に心臓における組織ブラジキニンレベルの上昇によって調節される疾患を意味する。組織ブラジキニンレベルの上昇によって、当該疾患が処置され、その進行が遅延され、または予防され得る。これらは心臓の疾患であり、心臓の代謝および虚血ストレスに耐える心筋の能力に対する効果を含み得る。典型的に、該疾患は虚血性心臓疾患および虚血性心臓損傷を含む。心臓に対するキニンの効果は完全には理解されていないが、それらは十分に検証されており、治療利益に明白に関連している(例えば、Spillmann F, Van Linthout S, Schultheiss HP, Tschope C. Cardioprotective mechanisms of the kallikrein-kinin system in diabetic cardiopathy. Curr Opin Nephrol Hypertens 2006; 15:22-29; Park SS, Zhao H, Mueller RA, Xu Z. Bradykinin prevents reperfusion injury by targeting mitochondrial permeability transition pore through glycogen synthase kinase 3beta. J Mol Cell Cardiol 2006; 40:708-716; Koch M, Spillmann F, Dendorfer A, Westermann D, Altmann C, Sahabi M, Linthout SV, Bader M, Walther T, Schultheiss HP, Tschope C. Cardiac function and remodeling is attenuated in transgenic rats expressing the human kallikrein-1 gene after myocardial infarction. Eur J Pharmacol 2006; 550:143-148; Griol-Charhbili V, Messadi-Laribi E, Bascands JL, Heudes D, Meneton P, Giudicelli JF, Alhenc-Gelas F, Richer C. Role of tissue kallikrein in the cardioprotective effects of ischemic and pharmacological preconditioning in myocardial ischemia. Faseb J 2005; 19:1172-1174参照)。血管新生を促進するブラジキニンの潜在的能力も報告されている(Peter Gohlke, Ingo Kuwer, Angela Schnell, Kerstin Amann, Gerhard Mall, and Thomas Unger. Blockade of Bradykinin B2 Receptors Prevents the Increase in Capillary Density Induced by Chronic Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitor Treatment in Stroke-Prone Spontaneously Hypertensive Rats. Hypertension, Jan 1997; 29: 478 - 482参照)。心臓における血管新生の促進は、虚血性心臓疾患の治療に有益であり得る。
【0006】
さらに、本発明によって、レニン阻害剤と(i)ACE阻害剤または(ii)アンギオテンシンIIレセプターブロッカーとの組合せが各単独成分のみの治療よりも相加または相乗効果を有することが示された。好ましい組合せ成分は本明細書に記載のACE阻害剤である。
【0007】
したがって、本発明はさらに、組織ブラジキニンレベルの上昇によって調節される疾患を予防し、その進行を遅延させ、または処置する方法であって、温血動物に治療上有効量のレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩と
(i)ACE阻害剤もしくはその薬学的に許容される塩;または
(ii)アンギオテンシンIIレセプターブロッカーもしくはその薬学的に許容される塩との組合せを投与することを含む方法を提供する。
【0008】
本発明の他の対象、特徴、利点および局面は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から当業者に明らかとなる。しかし、下記記載、添付の特許請求の範囲および具体的な実施例は本発明の好ましい態様を示すが、説明のみを目的としていると理解されるべきである。本発明の精神および範囲内で、多様な変更および修飾が下記記載から当業者に容易に理解されるであろう。略語は当該技術分野において一般に知られているものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に列挙するものは本発明の局面を説明するために本明細書において使用した多くの用語の定義である。しかし、本明細書において使用される定義および略語は、当該技術分野において一般に知られているものであり、特定の場合について異なる定義がされていない限り、本明細書を通じて使用される用語に適用される。
【0010】
用語「予防」は、本明細書に記載の状態の発症を予防するために健常人に予防的に投与することを意味する。さらに、「予防」なる用語は、処置される状態の前段階にある患者に、予防的に投与することを意味する。
【0011】
用語「進行の遅延」は、本明細書において使用するとき、対応する状態の前形態を有する患者を診断して、処置するその状態の前段階である患者に投与することを意味する。
【0012】
用語「処置」は、疾患、状態または障害と闘う目的での患者の管理および治療と理解される。
【0013】
用語「治療上有効量」は、組織、系または動物(ヒトを含む)の所望の生物学的または医学的応答を惹起する薬剤または治療剤の量を意味し、研究者または臨床医によって探索される。
【0014】
用語「相乗」は、本明細書において使用するとき、本発明の有効成分を個別に含む個々の方法および組成物から得られる効果の合計よりも、本発明の方法、組合せ剤および医薬組成物によって得られる効果が大きいことを意味する。
【0015】
用語「温血動物または患者」は、本明細書において交換可能なように使用され、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、サル、ウサギ、マウスおよび実験動物を含むが、これらに限定されない。好ましい動物はヒトである。
【0016】
用語「薬学的に許容される塩」は、医薬において一般に使用される、非毒性の塩を意味し、当該技術分野において周知の方法に準じて製造することができる。
【0017】
レニン阻害剤、特にアリスキレンとACE阻害剤またはアンギオテンシンIIレセプターブロッカーまたはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩の「組合せ剤」なる用語は、1個の医薬組成物として、または同一の単位投与形態の一部として、該成分を共に投与することを意味する。組合せ剤はまた、別個に、しかし同じ治療レジメンの一部として、レニン阻害剤、特にアリスキレンとACE阻害剤またはアンギオテンシンIIレセプターブロッカーまたはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩を各々投与することを含む。別個に投与するとき、必ずしも実質的に同じ時点で該成分を投与する必要はないが、そうすることが好ましい。したがって、組合せ剤はまた、例えば、別個の用量または投与形態として、同時に、レニン阻害剤、特にアリスキレンとACE阻害剤またはアンギオテンシンIIレセプターブロッカーまたはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩を投与することを意味する。組合せ剤はまた、異なる時点での何れかの順序での別個の投与を含む。
【0018】
本発明に適用されるレニン阻害剤は、インビボでレニン阻害活性を有し、したがって例えば組織ブラジキニンレベルの上昇によって調節される疾患の予防、その進行の遅延または処置用治療剤として、薬学的有用性を有する何れかのものである。特に、本発明は米国特許第5,559,111号;第6,197,959号および第6,376,672号に記載のレニン阻害剤に関する。
【0019】
レニン阻害剤は、異なる構造的特徴を有する化合物を含む。例えば、ジテキレン(化学名:[1S−[1R*,2R*,4R*(1R*,2R*)]]−1−[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]−L−プロリル−L−フェニルアラニル−N−[2−ヒドロキシ−5−メチル−1−(2−メチルプロピル)−4−[[[2−メチル−1−[[(2−ピリジニルメチル)アミノ]カルボニル]ブチル]アミノ]カルボニル]ヘキシル]−N−アルファ−メチル−L−ヒスチジンアミド);テルラキレン(化学名:[R−(R*,S*)]−N−(4−モルホリニルカルボニル)−L−フェニルアラニル−N−[1−(シクロヘキシルメチル)−2−ヒドロキシ−3−(1−メチルエトキシ)−3−オキソプロピル]−S−メチル−L−システインアミド);およびザンキレン(化学名:[1S−[1R*[R*(R*)],2S*,3R*]]−N−[1−(シクロヘキシルメチル)−2,3−ジヒドロキシ−5−メチルヘキシル]−アルファ−[[2−[[(4−メチル−1−ピペラジニル)スルホニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−アミノ]−4−チアゾールプロパンアミド)、好ましくは各々の場合において、その塩酸塩から選択される化合物を意味していてもよい。
【0020】
好ましい本発明のレニン阻害剤は、式(I)および(II)
【化1】

のRO66−1132およびRO66−1168、または各々の場合において、その薬学的に許容される塩を含む。
【0021】
特に、本発明は、式
【化2】

〔式中、Rはハロゲン、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;Rはハロゲン、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;RおよびRは独立して、分枝鎖状C3−6アルキルであり;Rはシクロアルキル、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルオキシ−C1−6アルキル、C1−6アミノアルキル、C1−6アルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6ジアルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルアミノ−C1−6アルキル、HO(O)C−C1−6アルキル、C1−6アルキル−O−(O)C−C1−6アルキル、HN−C(O)−C1−6アルキル、C1−6アルキル−HN−C(O)−C1−6アルキルまたは(C1−6アルキル)N−C(O)−C1−6アルキルである〕
のδ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド誘導体またはその薬学的に許容される塩であるレニン阻害剤に関する。
【0022】
アルキルとして、Rは直鎖状または分枝鎖状であってよく、好ましくは1〜6個のC原子、特に1または4個のC原子を含む。例は、メチル、エチル、n−およびi−プロピル、n−、i−およびt−ブチル、ペンチルおよびヘキシルである。
【0023】
ハロゲンアルキルとして、Rは直鎖状または分枝鎖状であってよく、好ましくは1〜4個のC原子、特に1または2個のC原子を含む。例は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2−クロロエチルおよび2,2,2−トリフルオロエチルである。
【0024】
アルコキシとして、RおよびRは直鎖状または分枝鎖状であってよく、好ましくは1〜4個のC原子を含む。例は、メトキシ、エトキシ、n−およびi−プロピルオキシ、n−、i−およびt−ブチルオキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシである。
【0025】
アルコキシアルキルとして、Rは直鎖状または分枝鎖状であってよい。アルコキシ基は好ましくは、1〜4個、特に1または2個のC原子を含み、アルキル基は好ましくは1〜4個のC原子を含む。例は、メトキシメチル、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、5−メトキシペンチル、6−メトキシヘキシル、エトキシメチル、2−エトキシエチル、3−エトキシプロピル、4−エトキシブチル、5−エトキシペンチル、6−エトキシヘキシル、プロピルオキシメチル、ブチルオキシメチル、2−プロピルオキシエチルおよび2−ブチルオキシエチルである。
【0026】
1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシとして、Rは直鎖状または分枝鎖状であってよい。アルコキシ基は好ましくは、1〜4個、特に1または2個のC原子を含み、アルキルオキシ基は好ましくは、1〜4個のC原子を含む。例は、メトキシメチルオキシ、2−メトキシエチルオキシ、3−メトキシプロピルオキシ、4−メトキシブチルオキシ、5−メトキシペンチルオキシ、6−メトキシヘキシルオキシ、エトキシメチルオキシ、2−エトキシエチルオキシ、3−エトキシプロピルオキシ、4−エトキシブチルオキシ、5−エトキシペンチルオキシ、6−エトキシヘキシルオキシ、プロピルオキシメチルオキシ、ブチルオキシメチルオキシ、2−プロピルオキシエチルオキシおよび2−ブチルオキシエチルオキシである。
【0027】
好ましい態様において、Rはメトキシ−またはエトキシ−C1−4アルキルオキシであり、Rは好ましくはメトキシまたはエトキシである。特に好ましいものは、Rが3−メトキシプロピルオキシであり、Rがメトキシである式(III)の化合物である。
【0028】
分枝鎖アルキルとして、RおよびRは好ましくは、3〜6個のC原子を含む。例は、i−プロピル、i−およびt−ブチル、ならびにペンチルおよびへキシルの分枝鎖状異性体である。好ましい態様において、式(III)の化合物のRおよびRは、各々の場合において、i−プロピルである。
【0029】
シクロアルキルとして、Rは好ましくは、3〜8個の環炭素原子を含んでいてよく、3または5個が特に好ましい。いくつかの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロオクチルである。シクロアルキルは所望により、アルキル、ハロ、オキソ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオール、アルキルチオ、ニトロ、シアノ、ヘテロシクリルなどのような1個以上の置換基で置換されていてもよい。
【0030】
アルキルとして、Rは直鎖状または分枝鎖状アルキルであってよく、好ましくは1〜6個のC原子を含む。アルキルの例は、上記に列挙している。メチル、エチル、n−およびi−プロピル、n−、i−およびt−ブチルが好ましい。
【0031】
1−6ヒドロキシアルキルとして、Rは直鎖状または分枝鎖状であってよく、好ましくは2〜6個のC原子を含む。いくつかの例は、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、2−、3−もしくは4−ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチルおよびヒドロキシヘキシルを含む。
【0032】
1−6アルコキシ−C1−6アルキルとして、Rは直鎖状または分枝鎖状であってよい。アルコキシ基は好ましくは、1〜4個のC原子を含み、アルキル基は好ましくは、2〜4個のC原子を含む。いくつかの例は、2−メトキシエチル、2−メトキシプロピル、3−メトキシプロピル、2−、3−もしくは4−メトキシブチル、2−エトキシエチル、2−エトキシプロピル、3−エトキシプロピル、および2−、3−もしくは4−エトキシブチルである。
【0033】
1−6アルカノイルオキシ−C1−6アルキルとして、Rは直鎖状または分枝鎖状であってよい。アルカノイルオキシ基は、好ましくは1〜4個のC原子を含み、アルキル基は好ましくは、2〜4個のC原子を含む。いくつかの例は、ホルミルオキシメチル、ホルミルオキシエチル、アセチルオキシエチル、プロピオニルオキシエチルおよびブチロイルオキシエチルである。
【0034】
1−6アミノアルキルとして、Rは直鎖状または分枝鎖状であってよく、好ましくは2〜4個のC原子を含む。いくつかの例は、2−アミノエチル、2−もしくは3−アミノプロピルおよび2−、3−もしくは4−アミノブチルである。
【0035】
1−6アルキルアミノ−C1−6アルキルおよびC1−6ジアルキルアミノ−C1−6アルキルとして、Rは直鎖状または分枝鎖状であってよい。アルキルアミノ基は好ましくは、C1−4アルキル基を含み、該アルキル基は好ましくは2〜4個のC原子を有する。いくつかの例は、2−メチルアミノエチル、2−ジメチルアミノエチル、2−エチルアミノエチル、2−エチルアミノエチル、3−メチルアミノプロピル、3−ジメチルアミノプロピル、4−メチルアミノブチルおよび4−ジメチルアミノブチルである。
【0036】
HO(O)C−C1−6アルキルとして、Rは直鎖状または分枝鎖状であってよく、アルキル基は好ましくは、2〜4個のC原子を含む。いくつかの例は、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシプロピルおよびカルボキシブチルである。
【0037】
1−6アルキル−O−(O)C−C1−6アルキルとして、Rは直鎖状または分枝鎖状であってよく、アルキル基は好ましくは、互いに独立して1〜4個nC原子を含む。いくつかの例は、メトキシカルボニルメチル、2−メトキシカルボニルエチル、3−メトキシカルボニルプロピル、4−メトキシ−カルボニルブチル、エトキシカルボニルメチル、2−エトキシカルボニルエチル、3−エトキシカルボニルプロピル、および4−エトキシカルボニルブチルである。
【0038】
N−C(O)−C1−6アルキルとして、Rは直鎖状または分枝鎖状であってよくアルキル基は好ましくは、2〜6個のC原子を含む。いくつかの例は、カルボアミドメチル、2−カルボアミドエチル、2−カルボアミド−2,2−ジメチルエチル、2−もしくは3−カルボアミドプロピル、2−、3−もしくは4−カルボアミドブチル、3−カルボアミド−2−メチルプロピル、3−カルボアミド−1,2−ジメチルプロピル、3−カルボアミド−3−エチルプロピル、3−カルボアミド−2,2−ジメチルプロピル、2−、3−、4−もしくは5−カルボアミドペンチル、4−カルボアミド−3,3−もしくは−2,2−ジメチルブチルを含む。
【0039】
したがって、好ましいものは、アリスキレンとも知られる式
【化3】

〔式中、Rは3−メトキシプロピルオキシであり;Rはメトキシであり;RおよびRはイソプロピルである〕
を有する式(III)の化合物δ−アミノ−γ−ヒドロキシ−ω−アリール−アルカン酸アミド誘導体またはその薬学的に許容される塩;化学的定義、2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)フェニル]−オクタンアミドである。
【0040】
用語「アリスキレン」は、具体的に定義されていないとき、遊離塩基とその塩、特に薬学的に許容される塩、最も好ましくはヘミフマル酸塩の両方として理解される。
【0041】
アンギオテンシンIIレセプターブロッカーは、アンギオテンシンIIレセプターのATレセプターサブタイプと結合するが、レセプターの活性化を起さない活性剤であると理解される。ATレセプターの阻止の結果として、例えばこれらのアンタゴニストを抗高血圧剤として使用することができる。
【0042】
本発明の組合せ剤に使用することができる好適なアンギオテンシンIIレセプターブロッカーは、異なる構造的特徴を有するATレセプターアンタゴニストを含み、好ましいものは非ペプチド構造を有するものである。例えば、バルサルタン(EP 443983)、ロサルタン(EP253310)、カンデサルタン(EP 459136)、エプロサルタン(EP 403159)、イルベサルタン(EP 454511)、オルメサルタン(EP 503785)、タソサルタン(EP539086)、テルミサルタン(EP 522314)、式
【化4】

の化合物E−4177、式
【化5】

の化合物SC−52458、および式
【化6】

の化合物ZD−8731、または各々の場合において、その薬学的に許容される塩から選択される化合物を意味し得る。
【0043】
好ましいATレセプターアンタゴニストは、市販されているものであり、最も好ましいものは、バルサルタンまたはその薬学的に許容される塩である。
【0044】
ACE阻害剤によるアンギオテンシンIからアンギオテンシンIIへの酵素的分解の阻止は、血圧制御を遂行するための選択肢の一つであり、したがって高血圧を処置のための治療方法を提供する。
【0045】
本発明の組合せ剤に使用する好適なACE阻害剤は、例えば、アラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラット、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナプリラット、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、テモカプリルおよびトランドラプリル、または各々の場合において、その薬学的に許容される塩から選択される化合物である。
【0046】
好ましいACE阻害剤は、市販されているものであり、最も好ましいものはベナゼプリルおよびエナラプリルである。
【0047】
好ましくは、本発明の組合せ剤は、レニン阻害剤、例えばアリスキレン、特にそのヘミフマル酸塩と、ACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリル、またはアンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えばバルサルタン、またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩を含む。
【0048】
最も好ましいものは、アリスキレン、特にそのヘミフマル酸塩と、バルサルタンまたはその薬学的に許容される塩を含む本発明の組合せ剤である。
【0049】
上記のとおり、組み合わせる化合物は、その薬学的に許容される塩として存在していてもよい。これらの化合物が、例えば少なくとも1個の塩基性中心、例えばアミノ基を有するとき、酸付加塩を形成してもよい。同様に、少なくとも1個の酸性基(例えばCOOH)を有する化合物は、塩基との塩を形成してもよい。
【0050】
化合物が、例えばカルボキシ基とアミノ基の両方を含むとき、さらに対応する分子内塩を形成してもよい。
【0051】
対応する有効成分または薬学的に許容される塩はまた、水和物または例えばその結晶化に使用する他の使用する溶媒を含む溶媒和物の形態で使用してもよい。
【0052】
さらに、本発明は、拡張機能不全または拡張期心不全の予防、その進行の遅延または処置用医薬組成物であって、レニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩、好ましくはヘミフマル酸塩形のアリスキレンと、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0053】
他の局面において、本発明はさらに、組織ブラジキニンレベルの上昇によって調節される疾患の予防、その進行の遅延または処置用医薬組成物であって、レニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩、好ましくはヘミフマル酸塩形のアリスキレンと、
(i)ACE阻害剤、好ましくはベナゼプリルまたはエナラプリル、または各々の場合において、その薬学的に許容される塩;または
(ii)アンギオテンシンIIレセプターブロッカー、好ましくはバルサルタンまたはその薬学的に許容される塩;
および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0054】
上記のとおり、レニン阻害剤、特にアリスキレン、好ましくはそのヘミフマル酸塩を、単独で、またはACE阻害剤、例えばベナゼプリルまたはエナラプリル、またはアンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えばバルサルタン、またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩との組合せにおいて、医薬組成物として共投与することができる。何れかの常套の投与形態と共に、通常薬学的に許容される担体または希釈剤と共に、該成分を投与することができる。
【0055】
本発明の医薬組成物は、ヒトを含む哺乳類への経腸、例えば経口または直腸、経皮および非経腸投与に適したものである。レニン阻害剤、特にアリスキレン、好ましくはそのヘミフマル酸塩を、単独で、またはACE阻害剤、例えばベナゼプリルまたはエナラプリル、またはアンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えばバルサルタン、またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩との組合せにおいて含む経口投与用医薬組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル剤、粉末、ミクロエマルジョン、単位投与パケット等の形態を取ることができる。好ましいものは、有効成分と:a)希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑沢剤、例えばシリカ、タルカム、ステアリン酸、そのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤についてはc)結合剤、例えばケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン;所望によりd)崩壊剤、例えばデンプン、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩、または発泡性混合物;および/またはe)吸着剤、着色剤、風味剤および甘味剤とを含む錠剤およびゼラチンカプセル剤である。注射用組成物は、好ましくは水性等張液または懸濁液であり、座薬は有利には、脂肪エマルジョンまたは懸濁液から調製する。
【0056】
本組成物は、滅菌することができ、そして/または保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調節のための塩および/またはバッファーのようなアジュバントを含んでいてもよい。さらに、他の治療上有用な物質を含んでいてもよい。該組成物は常套の混合、造粒またはコーティング方法によってそれぞれ製造し、有効成分約0.1−90%、好ましくは約1−80%を含む。
【0057】
有効成分の用量は、多様な要因、例えば投与形態、恒温動物の種、年齢および/または個体の状態に依存し得る。
【0058】
本発明の医薬組合せ剤の有効成分の好ましい投与量は、治療上有効な投与量であり、とりわけ商業的に入手可能であるものである。
【0059】
通常、経口投与の場合、例えば体重約75kgの患者について、1日約1mg〜約360mgの用量が推定される。
【0060】
例えば、体重約75kgのヒトを含む温血動物に投与するアリスキレンの用量、特にレニン活性の阻害、例えば血圧の低下に有効な用量は、約3mg〜約3g、好ましくは約10mg〜約1g、例えば20〜200mg/ヒト/日であり、好ましくは例えば同じサイズであってよい1〜4回の用量に分割する。通常、小児には成人用量の約半分を投与する。各個体に必要な用量は、例えば有効成分の血清濃度を測定して、最適なレベルに調節することによって、モニターすることができる。単回用量は、例えば75mg、150mgまたは300mg/成人患者である。
【0061】
ACE阻害剤の場合、好ましいACE阻害剤の単位用量形態は、例えば約5mg〜約20mg、好ましくは5mg、10mg、20mgまたは40mgのベナゼプリル;約6.5mg〜100mg、好ましくは6.25mg、12.5mg、25mg、50mg、75mgまたは100mgのカプトプリル;約2.5mg〜約20mg、好ましくは2.5mg、5mg、10mgまたは20mgのエナラプリル;約10mg〜約20mg、好ましくは10mgまたは20mgのフォシノプリル;約2.5mg〜約4mg、好ましくは2mgまたは4mgのペリンドプリル;約5mg〜約20mg、好ましくは5mg、10mgまたは20mgのキナプリル;または約1.25mg〜約5mg、好ましくは1.25mg、2.5mgまたは5mgのラミプリルを含む、例えば錠剤またはカプセル剤である。好ましいものは、1日3回投与である。
【0062】
アンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えばバルサルタンは、カプセル剤または錠剤のような好適な単位投与形態で供給され、治療上有効量のアンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えば約20〜約320mgのバルサルタンを含み、これを患者に適用することができる。有効成分の適用は1日3回までであってよく、例えばアンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えばバルサルタンの1日用量20mgまたは40mgから開始し、80mg/日、さらに160mg/日と漸増し、そして最終的には320mg/日まで増加させることができる。好ましくは、アンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えばバルサルタンは、用量80mgまたは160mgで各々1日1回または1日2回適用する。対応する用量を、例えば朝、昼または夕方に摂取することができる。
【0063】
上記用量は、本発明の有効成分の治療上有効量を包含する。
【0064】
本発明は別個に投与してもよい化合物の組合せ剤による予防、進行の遅延または処置方法に関するため、本発明はまた、別個の医薬組成物を組み合わせたキット形態に関する。該キットは、例えば2種の別の医薬組成物:(1)レニン阻害剤、特にアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物;および(2)ACE阻害剤、例えばベナゼプリルまたはエナラプリル、またはアンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えばバルサルタン、またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物を含んでいてもよい。(1)と(2)のそれぞれの量は、別々に同時に投与したときに有利な治療効果が得られるものである。該キットは、別々の組成物を含むための容器、例えば分離したビンまたは分離した金属箔容器を含み、各区画が例えば(1)または(2)を含む複数投与形態(例えば錠剤)を含む。別のキットは、有効成分含有投与形態を分離するよりもむしろ、別個の投与形態を含む全薬物を含む別個の各区画を含んでいてもよい。このタイプのキットの例は、各個々のブリスターが、医薬組成物(1)を含む第1(またはそれ以上)の錠剤と、医薬組成物(2)を含む第2(またはそれ以上)の錠剤の2個(またはそれ以上)の錠剤を含むブリスター包装物である。典型的に、該キットは別個の成分の投与のための指示書を含んでいる。別個の成分が好ましくは別の投与形態(例えば経口と非経口)で投与され、別の投与間隔で投与され、または処方医師によって組合せ剤の個々の成分の用量決定が必要なとき、キット形態が特に有利である。したがって本発明において、キットは:
(1)第1の投与形態において、治療上有効量のレニン阻害剤、特にアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物;
(2)第2の投与形態において、投与によって有利な治療効果が得られる量のACE阻害剤、例えばベナゼプリルまたはエナラプリル、またはアンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えばバルサルタン、またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体または希釈剤を含む組成物;および
(3)該第1および第2の投与形態を含む容器
を含む。
【0065】
レニン阻害剤、例えばアリスキレンの作用は、特に実験的に、インビトロ試験によってアンギオテンシンIの形成の減少を多様な系(ヒト血漿、精製ヒトレニンと合成または天然レニン基質)で測定することによって、示され得る。
【0066】
レニンがその基質について種特異性を示すため、ヒトレニン阻害剤は常套のインビボ動物モデルにおいて効果的に試験することができない。この問題を回避するため、ヒトレニンまたはヒトアンギオテンシノーゲン遺伝子を有するようにトランスジェニックラットを発生させる。ヒトレニンはラットアンギオテンシノーゲンを有効に切断しないが、同様に、ラットレニンはヒトアンギオテンシノーゲンをほとんど切断しない。その結果、シングルトランスジェニックラット(すなわちヒトアンギオテンシノーゲンまたはレニンのいずれかのトランスジェニック)は正常血圧である。しかし、交配種のとき、ダブルトランスジェニック(dTGR)子孫が例えば高血圧および拡張機能不全を生じ、7または8週齢以上には生存しない。
【0067】
レニン阻害剤、例えばアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を単独で、またはACE阻害剤、例えばベナゼプリルまたはエナラプリル、またはアンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えばバルサルタン、または各々の場合においてその薬学的に許容される塩との組合せで、多様な投与経路によって投与することができる。最大応答を誘導する単独または特定の組合せの各治療剤の最適な薬剤レベルを決定するため、各薬剤を広汎な用量にわたって試験することができる。これらの試験について、群あたり少なくとも6動物から成る処置群を用いることが好ましい。個々の成分を評価するときと同じ時点で組合せ処置群の効果を測定するように各試験を実施することが最も好ましい。薬剤の効果は投与後速やかに観察され得るが、慢性状態の応答を観察することが好ましい。長期間の試験は、代償性反応が完全に発生するのに十分な期間であり、したがって観察された効果は維持または持続効果を示す試験系の実際の応答を十分に示している。
【0068】
したがって、ヒトレニンとヒトアンギオテンシノーゲン(dTGR)を発現するダブルトランスジェニックラットのブラジキニンレベルに対する効果について、レニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を単独で、またはACE阻害剤またはアンギオテンシンIIレセプターブロッカーまたはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩を試験することができる。例えば、疾患発症前(予防デザイン)または疾患発症後(処置デザイン)、動物をアリスキレン(1mg/kg/日〜30mg/kg/日)で処理することができる。
【0069】
同様に、マウスren−2(レニン)遺伝子を発現するRen−2トランスジェニックラットのブラジキニンレベルに対する効果について、レニン阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を単独で、またはACE阻害剤、またはアンギオテンシンIIレセプターブロッカー、または各々の場合においてその薬学的に許容される塩との組合せで、試験することができる。これらのラットはストレプトゾトシン注射によって糖尿病とすることができ、冠状動脈をライゲーション(結索する)ことによって拡張機能不全を誘導して、心筋梗塞を誘導させることができる。次の1ヶ月にわたって、心臓線維症および拡張機能不全が発生する。例えば、疾患発症前(予防デザイン)または疾患発症後(処置デザイン)、動物をアリスキレン(1mg/kg/日〜60mg/kg/日)で処理することができる。
【0070】
例えば、6週齢メス異種トランスジェニック(mRen−2)ラット27匹に、0.1クエン酸バッファー、pH4.5で希釈した55mg/kgストレプトゾトシンを尾静脈注射によって投与して、糖尿病を誘導する。非糖尿病ラットにクエン酸バッファーのみを注射する[Campbell DJ, Kelly DJ, Wilkinson-Berka JL, Cooper ME, Skinner SL. Increased bradykinin and “normal” angiotensin peptide levels in diabetic Sprague-Dawley and transgenic (mRen-2) 27 rats. Kidney Int 1999; 56:211-221.]。糖尿病ラットおよび非糖尿病ラットをランダム化し、6〜7週齢から16週間、薬剤を投与しないか、アリスキレン(10mg/kg/日、浸透圧ミニポンプによる)を投与する。ミニポンプは2週間毎に交換し、ミニポンプ内のアリスキレンの量をラットの体重に従って調節する。糖尿病ラットには2−4単位のインシュリン(Ultratard, Novo Nordisk, Denmark)を2日毎(週3回)に皮下注射する。数週間にわたってラットの血中グルコースレベルが継続的に上昇したとき(>33.3mmol/L)、ラットに3単位/日注射する。グルコースレベルが33.3mmol/Lに低下したとき、ラットに2〜4単位インシュリン/2日を投与する。薬剤処置の16週後、ラットをケタミン(75mg/kg)とキシラジン(10mg/kg)の組合せで麻酔し、ペプチドアッセイのために血液と組織を採取する。既出のとおりに、ペプチドを測定する[Lawrence AC, Eving, Kladis A, Campbell DJ. An alternative strategy for the radioimmunoassay of angiotensin peptides using amino-terminal-directed antisera: measurement of eight angiotensin peptides in human plasma. J Hypertens 1990; 8:715-724; Campbell DJ, Lawrence AC, Towrie A, Kladis A, Valentijn AJ. Differential regulation of angiotensin peptide levels in plasma and kidney of the rat. Hypertension 1991; 18:763-773; Campbell DJ, Kladis A, Duncan A-M. Nephrectomy, converting enzyme inhibition and angiotensin peptides. Hypertension 1993; 22:513-522; Campbell DJ, Kladis A, Duncan A-M. Bradykinin peptides in kidney, blood, and other tissues of the rat. Hypertension 1993; 21:155-165; Campbell DJ, Kladis A, Duncan A-M. Effects of converting enzyme inhibitors on angiotensin and bradykinin peptides. Hypertension 1994; 23:439-449; Campbell DJ, Rong P, Kladis A, Rees B, Skinner SL. angiotensin and bradykinin peptides in the TGR(mRen-2)27 rat. Hypertension 1995; 25:1014-1020]。ペプチドアッセイのために左腎のみを採取する。心臓は、心室(右心室および左心室)を意味する。心臓のAng Iレベルは、アッセイの検出限界未満である。
【0071】
4群のラットが存在する:
1. 非糖尿病対照。
2. 非糖尿病、アリスキレン10mg/kg/日投与。
3. 糖尿病対照。
4. 糖尿病、アリスキレン10mg/kg/日投与。
【0072】
糖尿病の影響:ブラジキニンペプチド
糖尿病によって腎臓中のBK−(1−9)レベルが上昇することは知られているが、血液、心臓、肺および脳のBK−(1−9)レベルには影響しない。糖尿病は血液または何れかの組織中のBK−(1−7)レベルまたはBK−(1−7)/(1−9)比には影響しない。BK−(1−9)はブラジキニン−(1−9)の略語である。ブラジキニン−(1−9)はブラジキニン配列の1〜9アミノ酸配列を意味すると理解され、これは本件においてブラジキニンの完全配列である。BK−(1−7)またはブラジキニン−(1−7)は、ブラジキニンの断片形態であり、2個のC末端アミノ酸を欠く。
【0073】
アリスキレンの影響:ブラジキニンペプチド
アリスキレンは、BK−(1−7)/(1−9)比は変化させずに、非糖尿病ラットと糖尿病ラットの両方の心臓のBK−(1−7)レベルおよびBK−(1−9)レベルを上昇させることが知られている。アリスキレンは血液、腎臓、肺または脳のブラジキニンペプチドには影響しないが、糖尿病ラットの血中BK−(1−7)/(1−9)比を上昇させる(非糖尿病ラットではそうではない)。
【0074】
アリスキレンの影響:ブラジキニンペプチドレベル
非糖尿病ラットと糖尿病ラットの両方での心臓のBK−(1−7)レベルおよびBK−(1−9)レベルの上昇は興味深く、この組織でのブラジキニンペプチド形成の増加またはBK−(1−7)およびBK−(1−9)代謝の減少の何れかを示している。
【0075】
非糖尿病ラットと糖尿病ラットの両動物モデルにおけるカリクレインキニン系およびブラジキニンの抗肥大および心臓保護作用は十分に実証されており、このことは、例えば虚血性、酸化性、炎症性および/または血動力学的損傷から心臓を保護することによる、アリスキレン治療の治療的利益に寄与するヒト治療を示唆する。心臓ブラジキニンペプチドに対するアリスキレンの組織特異的効果によって、アリスキレンは単独で、または例えばACE阻害剤との組合せで、血管神経性浮腫を引き起こす可能性を極力低くしている。
【0076】
要約データ:ペプチドレベルに対するアリスキレンの効果
【表1】

【0077】
心臓ブラジキニンペプチド
【表2】

【0078】
糖尿病の影響(無薬剤療法)
糖尿病はBK−(1−7)レベルもしくはBK−(1−9)レベル、またはBK−(1−7)/(1−9)比に影響しなかった。
【0079】
対照ラットにおける薬剤療法の効果
対照ラットにおいて、アリスキレンは心臓BK−(1−7)レベルおよびBK−(1−9)レベルを上昇させた。薬剤療法はBK−(1−7)/(1−9)比に影響しなかった。
【0080】
糖尿病ラットにおける薬剤療法の影響
糖尿病ラットにおいて、アリスキレンは心臓BK−(1−7)レベルおよびBK−(1−9)レベルを上昇させた。薬剤療法は、BK−(1−7)/(1−9)比に影響しなかった。
【0081】
さらに、レニン阻害剤、例えばアリスキレン、特にそのヘミフマル酸塩と、ACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリルまたはアンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えばバルサルタン、またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩の組合せ剤によっても、治療効果が得られることを見出した。
【0082】
レニン阻害剤、例えばアリスキレン、特にそのヘミフマル酸塩と、ACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリルまたはアンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えばバルサルタン、またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩による組合せ療法によって、組織ブラジキニンレベルの上昇によって調節される疾患の予防、その進行の遅延または処置に有効な治療が可能となる。
【0083】
本発明はさらに、組織ブラジキニンレベルの上昇によって調節される疾患の予防、その進行の遅延または処置用医薬の製造のための、レニン阻害剤、例えばアリスキレン、特にそのヘミフマル酸塩と、ACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリルまたはアンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えばバルサルタン、またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0084】
したがって、本発明の他の態様は、組織ブラジキニンレベルの上昇によって調節される疾患の予防、その進行の遅延または処置用医薬の製造のための、レニン阻害剤、例えばアリスキレンの単独での、またはACE阻害剤、例えばベナゼプリルもしくはエナラプリルまたはアンギオテンシンIIレセプターブロッカー、例えばバルサルタン、またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩との組合せでの使用に関する。
【0085】
上記説明は、好ましい態様を含め、本発明を十分に開示している。本明細書に具体的に記載されている態様の修飾および改良は、特許請求の範囲に含まれる。さらに詳述することなく、上記説明を用いて、当業者は本発明を完全に実施することができると考えられる。したがって、本明細書の実施例は、本発明のある局面の単なる説明として構成され、如何なる方法においても本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0086】
製剤実施例1:
コーティングなしのアリスキレン150mg(遊離塩基)錠剤の組成物、mg/単位。
【表3】

【0087】
コーティングなしのアリスキレン150mg(遊離塩基)錠剤の組成物、重量%。
【表4】

【0088】
コーティングなしのアリスキレン150mg(遊離塩基)錠剤の組成物、mg/単位(内部相と外部相に分割した)。
【表5】

【0089】
コーティングなしのアリスキレン150mg(遊離塩基)錠剤の組成物、重量%(内部相と外部相に分割した)。
【表6】

【0090】
製剤実施例2:
アリスキレン(投与形態3)フィルムコーティング錠の組成、mg/単位。
【表7】

【0091】
投与形態1、2および3は、例えば次のとおりに製造することができる:
1)有効成分と添加物を混合し、造粒液で該成分を造粒する;
2)得られた顆粒を乾燥させる;
3)乾燥させた顆粒と、外部相賦形剤を混合する;
4)得られた混合物を圧縮して、錠剤コアとして固体経口投与形態を形成させる;そして
5)所望により、得られた錠剤コアをコーティングしてフィルムコーティング錠を得る
【0092】
造粒液はメタノール、エタノールと水の混合物、エタノール、水およびイソプロパノールの混合物、または上記混合物中ポリビニルピロリドン(PVP)溶液であってよい。好ましいエタノールと水の混合物は、約50/50〜約99/1(%w/w)の範囲であり、最も好ましくは約94/6(%w/w)である。好ましいエタノール、水およびイソプロパノールの混合物は約45/45/5〜約98/1/1(%w/w/w)、最も好ましくは約88.5/5.5/6.0〜約91.5/4.5/4.0(%w/w/w)の範囲である。好ましい上記混合物中PVP溶液の濃度は、約5〜約30重量%、好ましくは約15〜約25重量%、より好ましくは約16〜約22%の範囲である。
【0093】
当該技術分野において使用される造粒、乾燥および混合の多数の既知の方法、例えば流動床でのスプレー造粒、高度剪断機中での湿式造粒、溶融造粒、流動床乾燥機での乾燥、自由落下式混合機または回転式混合機の混合、1杵式またはロータリー式打錠機による打錠に注目する。
【0094】
顆粒の製造は、有機造粒プロセスに好適な標準的設備によって実施することができる。最終ブレンドの製造および打錠も、標準的設備によって実施することができる。
【0095】
例えば、工程(1)は、高度せん断造粒機、例えばCollette Gralによって実施することができ;工程(2)は流動床乾燥機で実施することができ;工程(3)は自由落下混合機(例えば容器ブレンダー、タンブルブレンダー)によって実施することができ;工程(4)は乾燥圧縮法、例えばロータリー打錠機を用いて実施することができる。
【0096】
製剤実施例3(フィルムコーティング剤):
【表8】

*)処理中に除去される
【0097】
フィルムコーティング錠は、例えば次のとおりに製造することができる:
バルサルタン、微結晶セルロース、クロスポビドン、コロイド状無水シリカ/コロイド状二酸化ケイ素/エアロジル200の一部、二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムの混合物を拡散ミキサーで予混合し、スクリーニングミルで篩過する。得られた混合物を拡散ミキサーで再度予混合し、ローラー打錠機で打錠し、スクリーニングミルで篩過する。得られた混合物に、コロイド状無水シリカ/コロイド状二酸化ケイ素/エアロジル200の残りを加え、最終ブレンドを拡散ミキサーで製造する。全混合物をロータリー打錠機で打錠し、孔あきパン中でDiolack淡赤を用いて錠剤をフィルムコーティングする。
【0098】
製剤実施例4(フィルムコーティング錠):
【表9】

フィルムコーティング錠を、例えば実施例3に記載のとおりに製造する。
【0099】
製剤実施例5(フィルムコーティング錠):
【表10】

*)オパドライ(登録商標)褐色OOF16711着色剤の組成は下表に示す。
**)処理中に除去される。
【0100】
オパドライ組成:
【表11】

フィルムコーティング錠を、例えば実施例3に記載のとおりに製造する。
【0101】
製剤実施例6(カプセル剤):
【表12】

【0102】
カプセル剤は例えば、次のとおりに製造することができる:
造粒/乾燥:
精製水に溶解させたポビドンとラウリル硫酸ナトリウムから成る造粒液で、バルサルタンと微結晶セルロースを流動床造粒機でスプレー造粒する。得られた顆粒を流動床乾燥機で乾燥させる。
摩砕/ブレンド:
乾燥させた顆粒を、クロスポビドンとステアリン酸マグネシウムと共に摩砕する。塊をコニカルスリュー(conical srew)タイプのミキサーで約10分間ブレンドする。
カプセル充填:
温度および湿度条件制御下で、空の硬ゼラチンカプセルにブレンドしたバルク顆粒を充填する。充填したカプセルを塵埃除去し、目視検査し、重量を確認し、品質保証部が検査する。
【0103】
製剤実施例7(カプセル剤):
【表13】

本カプセル剤を、例えば実施例6に記載のとおりに製造する。
【0104】
製剤実施例8(硬ゼラチンカプセル剤):
【表14】

【0105】
製剤実施例9(硬ゼラチンカプセル剤):
【表15】

【0106】
成分(1)および(2)は、成分(3)と(4)の水溶液と共に造粒する。成分(5)と(6)を乾燥顆粒に加え、該混合物をサイズ1の硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0107】
本明細書に記載されているすべての文献および特許は、本明細書に全体が記載されているように、その全体において参照により本明細書の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織ブラジキニンレベルの上昇によって調節される疾患を予防し、その進行を遅延させ、または処置する方法であって、温血動物に治療上有効量のレニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法。
【請求項2】
レニン阻害剤が式(III)
【化1】

〔式中、Rはハロゲン、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;Rはハロゲン、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;RおよびRは独立して、分枝鎖状C3−6アルキルであり;Rはシクロアルキル、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルオキシ−C1−6アルキル、C1−6アミノアルキル、C1−6アルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6ジアルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルアミノ−C1−6アルキル、HO(O)C−C1−6アルキル、C1−6アルキル−O−(O)C−C1−6アルキル、HN−C(O)−C1−6アルキル、C1−6アルキル−HN−C(O)−C1−6アルキルまたは(C1−6アルキル)N−C(O)−C1−6アルキルである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩から選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
レニン阻害剤が式
【化2】

〔式中、Rが3−メトキシプロピルオキシであり;Rがメトキシであり;RおよびRがイソプロピルである〕
を有する式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項2の方法。
【請求項4】
式(IV)の化合物がヘミフマル酸塩の形態である、請求項3の方法。
【請求項5】
疾患が虚血性心臓疾患および虚血性心臓損傷から選択される、請求項1〜4の何れかの方法。
【請求項6】
組織ブラジキニンレベルの上昇によって調節される疾患の予防、その進行の遅延または処置用医薬組成物であって、レニン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項7】
レニン阻害剤が式(III)
【化3】

〔式中、Rはハロゲン、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;Rはハロゲン、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;RおよびRは独立して、分枝鎖状C3−6アルキルであり;Rはシクロアルキル、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルオキシ−C1−6アルキル、C1−6アミノアルキル、C1−6アルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6ジアルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルアミノ−C1−6アルキル、HO(O)C−C1−6アルキル、C1−6アルキル−O−(O)C−C1−6アルキル、HN−C(O)−C1−6アルキル、C1−6アルキル−HN−C(O)−C1−6アルキルまたは(C1−6アルキル)N−C(O)−C1−6アルキルである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩から選択される、請求項6の医薬組成物。
【請求項8】
レニン阻害剤が式
【化4】

〔式中、Rが3−メトキシプロピルオキシであり;Rがメトキシであり;RおよびRがイソプロピルである〕
を有する式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項7の医薬組成物。
【請求項9】
式(IV)の化合物がヘミフマル酸塩の形態である、請求項8の医薬組成物。
【請求項10】
疾患が虚血性心臓疾患および虚血性心臓損傷から選択される、請求項6〜9の何れかの医薬組成物。
【請求項11】
組織ブラジキニンレベルの上昇によって調節される疾患の予防、その進行の遅延または処置用医薬組成物の製造のための、レニン阻害剤の使用。
【請求項12】
レニン阻害剤が式(III)
【化5】

〔式中、Rはハロゲン、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;Rはハロゲン、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり;RおよびRは独立して、分枝鎖状C3−6アルキルであり;Rはシクロアルキル、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルオキシ−C1−6アルキル、C1−6アミノアルキル、C1−6アルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6ジアルキルアミノ−C1−6アルキル、C1−6アルカノイルアミノ−C1−6アルキル、HO(O)C−C1−6アルキル、C1−6アルキル−O−(O)C−C1−6アルキル、HN−C(O)−C1−6アルキル、C1−6アルキル−HN−C(O)−C1−6アルキルまたは(C1−6アルキル)N−C(O)−C1−6アルキルである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩から選択される、請求項11の使用。
【請求項13】
レニン阻害剤が式
【化6】

〔式中、Rが3−メトキシプロピルオキシであり;Rがメトキシであり;RおよびRがイソプロピルである〕
を有する式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項12の使用。
【請求項14】
式(IV)の化合物がヘミフマル酸塩の形態である、請求項13の使用。
【請求項15】
疾患が虚血性心臓疾患および虚血性心臓損傷から選択される、請求項11〜14の何れかの使用。

【公表番号】特表2010−518147(P2010−518147A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549418(P2009−549418)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051807
【国際公開番号】WO2008/098992
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】