説明

有機半導体マトリックス材料、有機半導体および電子部品用のn‐ドーパントとしての金属錯体の使用、並びにドーパントおよびリガンドとそれらの製造方法

本発明は、電気特性を変えるために有機半導体マトリックス材料にドープするためのn‐ドーパントとしての金属錯体の使用に関し、該化合物はマトリックス材料へのn‐ドーパントとなる。高い導電率を達成しながら低い還元電位を有するマトリックス材料であっても、n‐ドープ有機半導体を提供するために、少なくとも16の価電子数の、好ましくは中性のまたは荷電した遷移金属原子として、中心原子を有する、中性で電子に富む金属錯体を、ドーパント化合物として用いることが提案される。該錯体は特に多核であり、少なくとも1つの金属‐金属結合を有している。少なくとも1つのリガンドは中心原子とπ錯体を形成してもよい;それは架橋リガンド、特にhpp、ボレート、カルボランまたはトリアザシクロアルカンでもよく、または少なくとも1つのカルバニオン‐炭素原子またはグループC(カルベン)、Si(シリレン)、Ge(ゲルミレン)、Sn、Pbから選択される二価原子を含有してもよい。本発明は、更に、新規のn‐ドーパントおよびそれらの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、電気特性を変えるために有機半導体マトリックス材料にドープするためのドーパントとしての金属錯体の使用に関し、該化合物はマトリックス材料へのn‐ドーパントとなる;それは、有機マトリックス材料およびn‐ドーパントとしての金属錯体を含有した有機半導体、並びにn‐ドーパントとして金属錯体でドープされた有機半導体を装備した電子機器にも関する。本発明は更に、n‐ドーパントおよびリガンドとそれらの製造方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
無機半導体、例えばシリコン半導体の場合のように、ドープすることで、電気特性、特に導電性に関して有機半導体を変えることが知られている。そのプロセスでは、最初にかなり低い導電率を増すように、および、用いられるドーパントの性質に応じて、半導体のフェルミ準位に変化を生じさせるように、電荷キャリアがマトリックス材料で生み出される。こうした関係から、ドーピングは電荷輸送層の導電率を増すことで、オーム損を減少させ、接点および有機層間における電荷キャリアの通過性に改善をもたらす。有機マトリックス材料においては、無機ドーパントはその高い拡散係数のために通常不利であるが、それはそれらが電子機器の機能および安定性を損なうからである。加えて、ドーパントを供給するように、半導体マトリックス材料で化学反応によりドーパントを放出することが知られている。しかしながら、こうして放出されたドーパントの酸化電位は、様々な用途、例えば特に有機発光ダイオード(OLED)で、不十分であることが多い。更に、ドーパントが放出されると、他の化合物および/または原子、例えば水素原子が生み出され、その結果としてドーピング層または対応電子機器の特性が損なわれてしまう。
【0003】
更には、ドーパントとして用いられる有機化合物は、問題の用途で十分に低い酸化電位を有していないことが多いのである。
【発明の具体的説明】
【0004】
このように、本発明は、マトリックス材料にいかなる妨害影響もおよぼすことなく、有機発光ダイオード(OLED)用の電子輸送材料を製造する上で十分に低い酸化電位を特に有し、更にはマトリックス材料で電荷キャリアの数に有効な増加をもたらし、好ましくは比較的取り扱いやすい、有機半導体マトリックス材料にドープするための、特に電子機器を製造するための、n‐ドーパントとして金属錯体を提供する問題に基づいている。加えて、ドーパントを製造するために適したリガンドおよび方法を提供することが、本発明の目的である。
【0005】
これらの目的は、独立請求項の特徴により、特に中性で電子に富む金属錯体の使用により達成される。加えて、該問題は、n‐ドーパントとしてこの種の中性で電子に富む金属錯体の化合物による有機半導体の提供で解決される。好ましい態様は従属請求項から知ることができる。
【0006】
電子に富む金属錯体が有機半導体マトリックス材料用のn‐ドーパントとして中性形で用いられるという事実の結果として、これまでに知られていた有機ドナー化合物の場合より著しく強いドナーが得られる。更に、有機化合物の形をとる他のn‐ドーパントと比較して、中性で電子に富む金属錯体の提供により、適切な中心原子を選択することで、化合物のドナー特性を変え、ひいてはその酸化電位を変えることが可能となる。こうして、好ましいことに、本発明のn‐ドーパントは非常に低い酸化電位を有している。該錯体は好ましくは少なくとも1つの有機リガンドを有しているが、それに限定されることはない。特に、本発明のn‐ドーパントの使用は電荷輸送層の導電率を実質的に増加させ、および/または接点および有機層間における電荷キャリアの通過性が電子機器としての利用上著しく改善されうる。
【0007】
本発明に従い用いられる金属錯体は、好ましくは単独分子であり、そのため好ましくは、互いの化学結合および/またはマトリックスおよび/または他の成分への結合により固定されていない単独分子として、関係する半導層に存在している。そこで、金属中心原子の価電子は、金属原子と直接結合していない錯体の価電子を除いて、好ましくは、錯体のリガンドと錯体の金属原子から実質的にまたは完全にもたらされ、好ましくは少なくとも実質的に閉じられた、リガンドにより形成される配位圏内に、これらは配置されている。好ましくは、錯体の全金属原子または金属錯体の外側圏の全金属原子は、非金属リガンド、好ましくは有機リガンドへ配位されている。言うまでもなく、所望により金属錯体を固定するために、個々の金属錯体が各場合で互いにまたは他の成分、例えばマトリックス材料と結合されていてもよい。この目的のためには、リガンドは、例えば、互いに直線または分岐状に反応してオリゴマーまたはポリマーを形成する、不飽和基のような、連結されうる適切な官能基を有してもよい。
【0008】
錯化中心原子は16以上、例えば18、19、20、21またはそれ以上の価電子の価電子VEの形式数を有しうる。中心原子は、この場合に、特に第一遷移金属周期の金属原子、第二遷移金属周期の金属原子または第三遷移金属周期の金属原子である。それとは独立してまたはそれと組み合わせて、本発明の錯体は、中心原子間で少なくとも1つの金属‐金属結合を有する、少なくとも二核の錯体でもよく、その結果として、金属錯体の中心原子で高い電子密度を有した、特に電子に富む金属錯体が、各場合に提供されうる。
【0009】
電子に富む金属錯体の中心原子として中性または荷電遷移金属原子を有することが、特に好ましい。中心原子は、例えば、第一遷移金属周期のグループの金属原子(スカンジウム〜亜鉛)、または第二遷移金属周期の金属(イットリウム〜カドミウム)、例えばロジウム、パラジウム、銀およびカドミウム、または第三遷移金属周期の金属、例えばランタニドおよびアクチニド系列である。中心原子は特に第7〜第10族からの金属である。少なくとも1つの中心原子の遷移金属は、各場合において下記元素:V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nd、Ta、Mo、W、Rh、Ir、Pd、Ptのうち1つでよい。遷移金属原子は、特に好ましくは、グループMn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選択され、例えばグループFe、Co、Niから選択される。加えて、遷移金属原子はグループCr、Mo、Wから選択してもよい。遷移金属原子は、グループV、Nb、TaまたはグループIr、Pt、Au、Hgからも選択しうる。しかしながら、様々な用途向けには、錯体の金属中心原子で価電子の少ない形式数または金属中心原子で低い電子密度を有する金属錯体も用いてよい。
【0010】
本発明に従い用いられる中性金属錯体において、遷移金属原子は中性原子としてまたは荷電遷移金属原子として、好ましくは0〜3の形式電荷、例えば0、1または2の形式電荷を有して存在し、中心原子が第一遷移金属周期からの原子であることは特に可能である。第一、第二または第三遷移金属周期からの原子である、中心原子の電荷は、0以外でもよい。
【0011】
中心原子と結合している少なくとも1、2以上、または全部のリガンド原子(ドナー原子)は、芳香族六員環の一部である芳香族窒素原子以外でもよく、その場合の窒素原子とは隣接原子、特に炭素原子と二重結合を有するものをいう。錯体化学では、ピリジン、ピリミジン、ピリダジンまたはピラジンがこのようなリガンドとしてよく用いられている。中心原子と結合している少なくとも1、2以上、または全部のリガンド原子は、所望により、例えばピロールまたはイミダゾール環のような五員環の芳香族窒素原子以外でもよい。しかしながら、これらの場合に、置換基の芳香環は配位窒素原子またはN原子含有の置換基を有しなくてよい。特に、ピリジン、2,2′;6′,2″‐ターピリジンまたは2,2′‐ビピリジンの窒素原子とは異なる、特に4,4′,5,5′‐テトラメチル‐2,2′‐ビピリジンとは異なる、少なくとも1つの中心原子と結合している少なくとも1つのリガンド原子が存在してもよい。上記の事項は、各場合において、置換または非置換リガンドに当てはまる。特に、上記の事項は、CrまたはRu錯体に当てはまる。しかしながら、言うまでもなく、この種のリガンドは本発明から通常除外されない;所望により、ドナー原子のうち1、2以上、または全部が上記の特徴を有してもよい。
【0012】
特に、少なくとも1つのリガンドは少なくとも二座または三座でもよく、中心原子と結合しているリガンドのドナー原子のうち少なくとも1、2またはそれ以上は窒素以外でもよい。
【0013】
少なくとも1つのリガンドの少なくとも1、2またはそれ以上のドナー原子、または錯体のドナー原子のうち1、2、3または4以上、または全部は、例えば、sp‐配置窒素原子、例えば上記のものに包含されない置換または非置換アルキルアミン部分の窒素原子である。中性金属錯体の少なくとも1つの中心原子と結合しているリガンド原子のうち1、2以上、例えば3、4または全部は、所望により、芳香族窒素原子とは異なり、または一般の窒素とは異なる。これとは独立してまたは同時に、錯体の少なくとも1つまたは全部の中心原子のドナー原子のうち1、2、3、4以上、または全部は、酸素以外でもよいが、これは必須ではない。
【0014】
好ましくは、中心原子と結合している少なくとも1つのリガンド原子は、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、S、Se、Teおよび所望によりOからなる群より選択され、中心原子と結合しているリガンド原子のうち2、3、4以上、または全部はその群から選択しうる。好ましくは、ドナー原子のうち少なくとも1、2、3、4以上、または全部は、B、C、Si、Ge、Sn、S、P、Se、As、Sb、Te(所望によりNを含む)からなる群より選択され、特にグループB、C、S、P、Se(所望によりNを含む)から選択される。言うまでもなく、加えて、リガンド原子のうち少なくとも1つは、各場合において、グループSi、Ge、Sn、As、Sb、Teから選択してもよい。
【0015】
中心原子と結合しているリガンド原子のうち少なくとも1、2、3または4以上、特に全部は、窒素より低い電気陰性度を有してもよい(Nに関するAllred-Rochowの電気陰性度:3.07)。
【0016】
言うまでもなく、中心原子と結合しているリガンド原子(ドナー原子)に関する上記の内容は、単核金属錯体のみならず、例えば多核錯体の場合で、中心原子と結合しているリガンド原子が1つの中心原子だけでもよいが、2または3つの中心原子と結合している多核金属錯体にも当てはまる。この場合に、関与するリガンドは単座リガンドでも、または二座、三座もしくは多座リガンドでもよく、その場合に、異なるリガンド原子が本発明の金属錯体の異なる金属原子と結合して、その際に、例えば架橋リガンドを形成してもよい。言うまでもなく、各場合において好ましくは遷移金属原子である、中性であるかまたは荷電している、好ましくは2の、しかし3以上でもよい、中心原子を有した多核金属錯体の場合には、金属‐金属結合が2以上の中心原子間で存在しうる。価電子に関するかぎり、これらの金属‐金属結合は形式上単結合に相当するが、所望により金属‐金属多重結合にも相当し、金属原子間の電子密度が金属‐金属単結合の場合より低いときはいつでも、金属‐金属結合が存在しうる。言うまでもなく、多核金属錯体の他の金属原子は本発明の目的からリガンド原子として理解すべきでない。
【0017】
金属錯体のドナー原子のうち少なくとも1、所望により2、3または4以上、または全部は、ヘテロ環式不飽和環の成分でもよく、該へテロ原子は、好ましくは、金属錯体の中心原子と結合している原子である。へテロ原子は特にN、S、PまたはSe原子であり、所望によりO原子でもよいが、それに限定されない。ヘテロ環式不飽和環は所望により別のヘテロ原子を含有してもよく、それは第一ヘテロ原子以外でもよい。金属錯体は、リガンド原子のうち1、2、3、4以上、または全部を、このようなヘテロ環式不飽和環の成分として有することができる。ヘテロ環式不飽和環は5、6または7環原子を有してよいが、それに限定されない。
【0018】
好ましくは、錯体のドナー原子のうち1、2、3、4以上、または全部は、リガンドの芳香環または共役‐例えばメソメリー‐系の成分であり、そこでは例えば1または2の多重結合原子と、ドナー原子が結合しうる。
【0019】
以下では、化合物のいくつか有利な種類が更に詳細に記載されている:
π錯体
1つの有利な態様によると、中性金属錯体の少なくとも1つのリガンドが中心原子とπ錯体を形成している。π錯体のリガンドは多重結合、即ち二重結合または三重結合で中心原子と配位でき、ここで多重結合とは例えばC‐C、C‐O、C‐N、S‐O、N‐Oであるが、それに限定されない。π錯体を形成するリガンドは、中心金属原子とπ錯体を形成するメソメリーまたは芳香系を有してもよい。π錯体は、例えば、二重または三重結合のような2‐電子ドナー、アリル基またはη‐1‐3‐シクロヘキシニル基のような3‐電子ドナー、ブタジエンまたはシクロブタジエン基のような4‐電子ドナー、η‐1‐5‐シクロヘキサジエニル基のような5‐電子ドナー、または特にベンゼン核、シクロペンタジエニルアニオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、シクロヘプタトリエニルトリアニオン、シクロオクタジエニルジアニオン等のような6‐電子ドナー基を含有してもよい。言うまでもなく、錯体は、中心原子とπ錯体を形成する、2以上のリガンドも有してよい。特に、錯体は、特に直線的に、中心原子と配位しうる、中心原子とπ錯体を形成する2つのリガンドを含んでもよい。言うまでもなく、π錯体は、π電子系で中心原子と配位していない、別のリガンドも含んでよい。この種のリガンドは、例えば、カルボニル、ホスフィン類などであるが、これらに限定されない。更に言うまでもなく、π錯体は、π結合系で中心原子と配位する、2または所望によりそれ以上のリガンドも有してよく、特にπ電子系では電子の数に関しておよび/または配位原子の数、特に芳香族π錯体の場合では環原子の数に関して、これらのリガンドは互いに異なっている。中心原子は、例えば、πベンゼンリガンドおよび/またはπシクロペンタジエニルリガンドにより、または、異なって置換されている2つのπシクロペンタジエニルリガンドもしくは2つのπベンゼンリガンド、例えばジベンゼン鉄、あるいは一方でシクロペンタジエニルまたはベンゾリガンド、および他方で二重または三重結合が所望によりヘテロ原子も有した二重または三重結合で錯化するリガンドにより配位されている。π錯体として、ビスシクロペンタジエニル錯体はη錯体でもよいが、それに限定されない。
【0020】
一般的に、錯体のリガンドのうち1、2以上または全部は、グループ1〜10から選択しうる(特に一または二価アニオンまたはカチオンとしての化合物5)。親化合物1〜10において、C、CR、CR、C、CR、CR基のうち1、2以上または可能であれば全部が、適切な同一または異なるヘテロ原子で等電子的または非等電子的に置換されうる。特に、基CRまたはCのうち1または2以上はPで置き換えうる。同時にまたは一方で、基CRまたはCRのうち1または2以上はSで置き換えうる。次の元素がヘテロ原子として用いうる:B、Al、Ga、In、N、P、As、Sb、Bi、Si、Ge、Sn、Pb、O、S、Se、Te、所望によりOを除く。特に、ヘテロ原子はグループB、Al、Gaから選択される。更に、ヘテロ原子は特にグループN、P、As、Biから、好ましくはN、P、Asから選択してもよい。加えて、ヘテロ原子はグループSi、Ge、Sn、Pbから、特にグループSi、Geから選択してもよい。しかも、ヘテロ原子はグループO、S、Se、Teから、特にグループO、S、Seから選択してもよい。特に、挙げられたグループからのヘテロ原子は、各場合において、第三主族周期(特に13〜16の原子番号)または第四主族周期(特に31〜34の原子番号)の原子でもよい。
【化1】

【0021】
親化合物1〜10の基Rは、同一または異なる、開鎖または環もしくは環系の成分であり、好ましくはシクロアルキルを含むアルキル、アリール、または上記のヘテロ原子から選択される。アルキルまたはアリール基は、同一でもまたは異なってもよい、上記リストからの1以上のヘテロ原子で、完全にまたは部分的に置換されうる。言うまでもなく、上記の基Rのみならず、本発明の全般にわたる基も、不飽和または芳香環で+I効果および/または+M効果(またはNの代わりにP)を有するものでよい。一般的に言うと、本発明による化合物のR基は、例えばC=C、C=N結合などを含む、不飽和基も有してよい。
【0022】
錯体の中心原子は、各場合において、グループMn、Fe、Co、Ni、Cu、ZnまたはグループCr、Mo、Wから選択され、特に好ましくはグループFe、Co、Niから選択されるもの、例えばFeまたはCoを有する錯体である。中心原子は、族6または7〜10の異なる金属原子でもよい。
【0023】
特に、リガンドのうち1、2または全部は各場合においてシクロペンタジエニルまたはベンゼンであるか、あるいは化合物3、4および5の群からまたは化合物6、8および9の群、特に化合物8から選択され、または化合物7、10の群から選択され、ここでリガンドは各場合において置換されているかまたは非置換である。
【0024】
一般的な外輪型錯体および多核錯体
1つの有利な態様によると、本発明の金属錯体は多核金属錯体である。特に、金属錯体は、少なくとも2つの金属中心原子と結合する、少なくとも1、2、3または4または所望により更に多くのリガンドを有した、多核金属錯体でもよい。金属錯体はこの場合に1、2またはそれ以上の金属‐金属結合も有してよく、これは各場合において金属‐金属単結合または金属‐金属多重結合である。多核錯体は2、3または更には4以上の金属中心原子を有してよい。該錯体は、好ましくは、20を超える、あるいは10以下の金属原子、または6もしくは4以下、特に3以下の金属原子を含有しない。金属錯体は、各場合において、好ましくは単独分子である。多核錯体は、特にカルボニルまたはシクロペンタジエニル錯体である。
【0025】
多核金属錯体の金属原子は、好ましくは、特に第6または第7〜第10族からの、例えばグループCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Wから選択される、主としてまたは全体として遷移金属原子である。
【0026】
この種の金属錯体は例えばいわゆる外輪型錯体65であり、各場合において1つのリガンド原子を両金属中心原子に結合させる1、2、3、4またはそれ以上の二座リガンドで、2つの金属中心原子、特に遷移金属中心原子が架橋されている。金属原子はこの場合に通常4重、所望により5重またはそれ以上で配位されている:
【化2】

一方または双方の金属中心原子Mは、特にM‐M結合へ軸周辺(末端)で配置される、カルボニル、ホスフィンまたはその他のような少なくとも1つの別なリガンドで、各場合で互いに独立して、所望により錯化されている。
【0027】
特に、多核金属錯体は、グループMn、Fe、Co、Ni、Cu、Znからの少なくとも1つの原子、特にグループFe、Co、Niからの原子、またはグループCr、Mo、Wから選択される少なくとも1つの原子、特にMo、Wを有し、好ましくは中性金属錯体の全中心原子が同一である。一般的に、Mはいかなる金属原子でもよいが、特に遷移金属原子、例えば第一、第二または第三遷移金属周期からの遷移金属原子または第6もしくは第7〜第10遷移金属族からの原子である。この関係において、両金属原子Mは、各場合で、互いに同一でもまたは異なってもよい。
【0028】
2つの金属中心原子を一緒に架橋する二座リガンドRYXの代わりに、架橋リガンドのうち1以上が、単座リガンド、例えばカルボニル、RCN、置換もしくは非置換ホスフィン類またはその他で置き換えられることも可能であり、ここで置換基Rは水素を含むいかなる有機残基でもよく、特に炭化水素残基または置換もしくは非置換アルキル残基、特にC1またはC10アルキル残基、特にC1〜C4またはC6である。
【0029】
金属原子に結合するリガンド原子Xのうち少なくとも1つ、それ以上または全部は、グループF、Cl、Br、I、O、S、Se、N、P、例えばハロゲンから選択され、好ましくはグループO、S、Se、N、Pから選択され、特に好ましくはグループS、Se、N、Pから選択され、ここでリガンド原子のうち少なくとも1、2、3または4、または全部がN以外でもよい。しかしながら、Xは異なる適切な原子でもよい。金属原子に結合する様々な原子Xは、リガンド内または錯体内で同一でもまたは異なってもよい。このことは、2つの金属原子を架橋する二座リガンドとして、異なるリガンドL、L′も用いうることを意味している。原子Yは、好ましくは主族からの元素、特に主族からの二、三または四価元素である。原子Yは好ましくはグループB、C、N、O、Si、P、S、As、Se、Sb、Teから選択され、特に好ましくはグループO、S、Se、N、P、Cから選択され、特にグループS、Se、N、P(所望によりO)から選択されるが、これらに限定されない。
【0030】
好ましくは、少なくとも1つのリガンド、リガンドのうち2つ、それ以上または全部は、ハライド類、カルボキシレート類、ホルムアミジネート類、アニオン類を含めたピリミド‐ピリミジン類、特に置換または非置換ピリミド〔1,2‐a〕ピリミジンまたはそれらのアニオン類、特にhpp(hpp:1,3,4,6,7,8‐ヘキサヒドロ‐2H‐ピリミド〔1,2‐a〕ピリミジンのアニオン)、およびグアニジネート類、所望によりジケトネート類の群から選択される。この関係において、リガンドは各場合で互いに同一でもまたは異なってもよい。特に、少なくとも1つのリガンドは、カルボキシレート、ホルムアミジネート、ピリミド‐ピリミジン、特にhpp、またはグアニジンである。特に、錯体の全リガンドが各場合においてカルボキシレート、ホルムアミジネート、ピリミド‐ピリミジン、特にhpp、またはグアニジンであり、錯体の全リガンドが好ましくは同一である。リガンドは、特に好ましくは、カルボキシレート類、ホルムアミジネート類、ピリミド‐ピリミジン類およびグアニジネート類の群から選択される。YおよびX基、特にカルボキシレート類、ホルムアミジネート類、ピリミド‐ピリミジン類およびグアニジネート類、所望によりジケトネート類は各々置換されているかまたは非置換である;それらは、例えば、例えば各場合にC1〜C10またはそれ以上、特にC1〜C6またはC2〜C4の、置換または非置換アルキル残基または炭化水素残基、または他の置換基を有してもよい。
【0031】
しかしながら、この点において、および一般的に本発明の関係において、“アルキル残基”という用語はシクロアルキル残基、特にシクロヘプチル、シクロヘキシルまたはシクロペンチル残基も含む。
【0032】
上記リストの中では、構造タイプ65a、65b、65cおよび65dが好ましく、これらは以下で更に詳細に記載されている:
【化3】

タイプ65a
上記において
‐構造要素a〜eは:a=‐CR‐、b=‐CR‐、c=‐CR‐、d=‐CR‐およびe=‐CR10‐を意味し、ここでR、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、同時にまたは互いに独立して、H、C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐ORである;好ましくは、R、R、R、R、R=HおよびR、R、R、R、R10=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐OR、または
‐所望により、aまたはbまたはeまたはdはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐所望により、aおよびdまたはbおよびeはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐cにおいて、CはSiで置き換えられる、
‐式中、結合b‐dおよびc‐eまたはb‐dおよびa‐cは、同時にまたは互いに独立して、不飽和でもよい、
‐式中、結合b‐d、a‐cおよびc‐eは、同時にまたは互いに独立して、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の一部でもよい、または
‐式中、結合b‐d、a‐cおよびc‐eは、同時にまたは互いに独立して、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族または縮合芳香族環系の一部でもよい、
‐式中、原子Eは、好ましくはグループN、P、As、Sbから選択される、主族からの元素であるが、これらに限定されない、
‐式中、構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の成分でもよい、または
‐構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族環系の成分でもよい、
‐式中、金属Mは遷移金属、好ましくはWまたはMoである;
【0033】
【化4】

タイプ65b
上記において
‐構造要素a〜fは:a=‐CR‐、b=‐CR‐、c=‐CR‐、d=‐CR‐、e=‐CR10‐およびf=‐CR1112‐を意味し、ここでR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12は、水素、C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐ORである;好ましくは、R、R、R、R、R、R11=HおよびR、R、R、R、R10、R12=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐OR;R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12=Hの構造65bはこれから除外される、または
‐構造要素cおよび/またはdにおいて、CはSiで置き換えうる、または
‐所望により、aまたはbまたはeまたはfはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐所望により、aおよびfまたはbおよびeはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、
‐式中、結合a‐c、b‐d、c‐eおよびd‐fは、但し同時にa‐cおよびc‐e、同時にb‐dおよびd‐fであることはないが、不飽和でもよい、
‐式中、結合a‐c、b‐d、c‐eおよびd‐fは、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の一部でもよい、または
‐式中、結合a‐c、b‐d、c‐eおよびd‐fは、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族または縮合芳香族環系の一部でもよい、
‐式中、原子Eは、好ましくはグループN、P、As、Sbから選択される、主族からの元素であるが、これらに限定されない、
‐式中、構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の成分でもよい、または
‐構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族環系の成分でもよい、
‐式中、金属Mは遷移金属、好ましくはWまたはMoである;
【0034】
【化5】

タイプ65c
上記において
‐構造要素a〜fは:a=‐CR‐、b=‐CR‐、c=‐CR‐、d=‐CR‐、e=‐CR10‐およびf=‐CR1112‐を意味し、ここでR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12は、同時にまたは互いに独立して、H、C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐ORである;好ましくは、R、R、R、R、R、R11=HおよびR、R、R、R、R10、R12=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐OR、または
‐cまたはeにおいて、CはSiで置き換えうる、または
‐所望により、aまたはbまたはdまたはfはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐所望により、aおよびdまたはbおよびfはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、
‐式中、結合a‐c、c‐e、e‐fおよびb‐dは、但し同時にa‐c、c‐eおよびe‐f、同時にa‐cおよびc‐e、同時にc‐eおよびe‐fであることはないが、不飽和でもよい、
‐式中、結合a‐c、c‐e、e‐fおよびb‐dは、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の一部でもよい、または
‐結合a‐c、c‐e、e‐fおよびb‐dは、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族または縮合芳香族環系の一部でもよい、
‐式中、原子Eは、好ましくはグループN、P、As、Sbから選択される、主族からの元素であるが、これらに限定されない、
‐式中、構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の成分でもよい、または
‐構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族環系の成分でもよい、
‐式中、金属Mは遷移金属、好ましくはWまたはMoである;または
【0035】
【化6】

タイプ65d
上記において
‐構造要素a〜gは:a=‐CR‐、b=‐CR‐、c=‐CR‐、d=‐CR‐、e=‐CR10‐、f=‐CR1112‐およびg=‐CR1314‐を意味し、ここでR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、同時にまたは互いに独立して、H、C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐ORである;好ましくは、R、R、R、R、R、R11、R13=HおよびR、R、R、R、R10、R12、R14=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐OR、または
‐c、dおよびfにおいて、但し同時にdおよびfであることはないが、CはSiで置き換えうる、または
‐所望により、aまたはbまたはeまたはgはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐所望により、aおよびgまたはbおよびeはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、
‐式中、結合a‐c、c‐e、b‐d、d‐fおよびf‐gは、但し同時にa‐cおよびc‐e、同時にb‐d、d‐fおよびf‐g、同時にb‐dおよびd‐f、同時にd‐fおよびf‐gであることはないが、不飽和でもよい、
‐式中、結合a‐c、c‐e、b‐d、d‐fおよびf‐gは、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の一部でもよい、または
‐結合a‐c、c‐e、b‐d、d‐fおよびf‐gは、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族または縮合芳香族環系の一部でもよい、
‐式中、原子Eは、好ましくはグループN、P、As、Sbから選択される、主族からの元素であるが、これらに限定されない、
‐式中、構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の成分でもよい、または
‐構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族環系の成分でもよい、
‐式中、金属Mは遷移金属、好ましくはWまたはMoである。
【0036】
構造65a〜65dの残基Rに関して、上記のように、構造65の定義が用いうる。構造65a〜65dを製造するために用いられるリガンドも、本発明に従う。
【0037】
別の錯体リガンド
好ましくは、リガンドのうち少なくとも1、2以上、または全部は、ボレート類、カルボラン類、トリアザシクロアルカン類、トリアザシクロアルケン類、ピロール類、チオフェン類、ピラゾール類、イミダゾール類、チアゾール類、オキサゾール類、ピリジン類、ピリダジン類、ピリミジン類、ピラジン類の群から選択される。特に、リガンドのうち少なくとも1、2以上、または全部は、ボレート類、カルボラン類の群から選択される。リガンドのうち少なくとも1つ、それ以上、または全部は、トリアザシクロアルカン類、トリアザシクロアルケン類、所望により他のアミン類の群から選択してもよい。リガンドのうち少なくとも1、2以上、または全部は、ピロール類、チオフェン類、ピラゾール類、イミダゾール類、チアゾール類、および所望によりオキサゾール類の群から選択してよい。リガンドのうち少なくとも1、2以上、または全部は、ピリジン類、ピリダジン類、ピリミジン類、ピラジン類の群から選択してよい。リガンドは各場合において同一でもまたは異なってもよく、各場合において上記グループのうち1つからまたは上記グループのうち2以上から選択してもよい。特に、一リガンドがボレート類およびカルボラン類の群から選択される場合はいつでも、他のリガンドは、例えば置換または非置換シクロペンタジエニル、ベンゼン、シクロヘプタトリエニルイオンのような、アレーンまたはアレーニルπ‐リガンドでもよい。
【0038】
各錯体の中心原子は、各場合において、グループMn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選択しても、またはグループCr、Mo、Wから選択してもよく、特に好ましくはグループFe、Co、Niから選択され、例えばFeまたはCoを有する錯体がある。中心原子は、族6または7〜10の金属原子でもよい。
【0039】
カルボラン類
好ましいカルボラン類は、タイプ〔R、〔R2−、〔R10102−のものであり、ここでRはいかなる置換基でもよく、特にアルキル置換基、特にC1‐6の低級アルキル置換基である。置換基Rは、各場合において、同一でもまたは異なってもよい。
【0040】
ボレート類
リガンドがボレートアニオンであれば、ボレートは好ましくは一般構造15(表2)を有し、ここでRはいかなる置換基でもよく、好ましくはH、アルキル、特にC‐Cの低級アルキル、またはアリール、特にベンジル、または一般的に炭化水素残基である。言うまでもなく、置換基Rはヘテロ原子、特にN、Oまたはハロゲンも有してよい。R′はいかなる置換基でもよく、好ましくはアルキル、特にC‐Cの低級アルキル、またはアリールであり、ここでR′は特にN、O、ハロゲンのようなヘテロ原子を有してもよい。R′は純粋な炭化水素でもよい。R″の場合は、Rに関する説明が当てはまる。様々な置換基R、R′またはR″は、各場合において、同一でもまたは異なってもよい。2つの置換基R″は、環系の一部、特に同一環系の一部、好ましくは骨格、即ち親構造に縮合された環系の一部でもよい。環系は飽和、不飽和の、特に芳香族でもよい。Eは少なくとも二価の原子であり、グループO、S、Se、Teから選択され、所望によりグループO、S、Seから選択され、またはグループS、SeおよびTeから選択される。様々な環系の基Eは、各場合において、同一でもまたは異なってもよい。Xは“スペーザー”であり、ここで所望によりX基のうち1、2または3つは化合物15で欠けてもよい。Xは、ヘテロ原子置換基含有または非含有の分岐または非分岐アルキル鎖、特に1〜6、とりわけC‐CまたはC‐Cのアルキル鎖、ヘテロ置換アリール置換基を含めたアリール置換基、ヘテロ原子含有または非含有の縮合アリール置換基、ヘテロ原子含有または非含有のアルキルアリール置換基、またはヘテロ原子である。ヘテロ原子は、各場合において、好ましくはグループN、P、S、Se、Ge、Snから選択されるが、それに限定されない。化合物15における様々な基Xは、各場合において、同一でもまたは異なってもよい。Xは、好ましくはアルキル鎖、特に好ましくはC‐Cの低級アルキル鎖である。Yはドナーとして作用しうるヘテロ原子または炭素原子であり、好ましくはグループN、P、S、Se、Ge、Snから選択され、所望によりグループN、P、S、Seから選択されるか、またはグループP、S、Se、Ge、Snから選択される。化合物15において、様々なドナー原子Yは、各場合において、同一でもまたは異なってもよい。Yは、環または環系、特に不飽和環または環系、例えば芳香族またはヘテロ芳香族環系の一部である。ドナーとして作用しうるヘテロまたは炭素原子Yを有した環は、好ましくは5〜7、例えば5または6の環原子を含んでいる。ドナー原子Yを含む環は、各場合に、同一のまたは異なる、2または3のような、より多くのヘテロ原子を有してもよい。ヘテロ原子は、各場合に、例えばN原子でもよく、または少なくとも1つのN原子を有してもよい。
【0041】
特に、ボレートは、3より少ない、2または1、または0の酸素ドナー原子を有してもよい。
【0042】
特に、ボレートは化合物11、12、13、14または16のうち1つであり、ここで金属錯体は異なるボレートリガンド、特に化合物11、12、13、14、16の群からの異なるボレートリガンドを有してもよい。
【0043】
この関係において、Y原子は、一般的にボレート類、特に化合物15のボレート類のように、各場合において、ピロール、インドール、カルバゾール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、チアゾールまたはオキサゾール環の成分でもよい。Y原子のうち1以上は、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、キノキサリン、プテリジンまたはプリン環の成分でもよく、ここで中心原子に結合しているドナー原子Yは五または六員環の成分でもよい。一般的に、Yは(ヘテロ)芳香環の成分でもよい。上記の環は、各場合において、一部または完全に飽和してもよい。一般的に、Yは三〜八員、特に三、三〜六員、特に五または六員環の成分である。Yは、特に環として、ヘテロ原子O、N、P、S、Se、Ge、Sn、特にヘテロ原子O、N、P、Sを有してよい。Cはこの関係でカルバニオンを形成しうる;C、GeおよびSiはカルベン類(C(II))、ゲルミレン類(Ge(II))およびシリレン類(Si(II))を形成しうる。環は好ましくは、ドナー原子Yと共役した、1または2の多重結合を有している。
【化7】

【0044】
言うまでもなく、化合物15の残基Yは同一でもまたは異なってもよい。
【0045】
化合物15あるいは化合物11、12、13、14または16のうち1つに関して、ボレートは所望により二座のみでもまたは単座リガンドのみでもよく、X‐Y基のうち1または2つは、互いに独立して、Hを含む一置換基Rで各場合に置き換えられ、2つの置換基Rが飽和または不飽和環を形成してもよい。そのプロセスで、三座ボレートリガンドが、特に外観上、中心原子へ配位してもよい。
【0046】
化合物15において、B原子は所望によりAlまたはGa原子でも置き換えられる。
【0047】
カルボランまたはボレート‐金属錯体、特に化合物11、12、13、14、16の中心原子は、好ましくはグループCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、特にグループFe、Co、Niから選択しうる;金属原子はグループCr、Mo、Wからも選択しうる;それは例えばCr、MoまたはW、または遷移金属族7〜10の金属でもよい。
【0048】
三脚型リガンド
別の有利な態様によると、中性金属錯体のリガンドのうち少なくとも1、2または全部は下記の三脚型リガンド18でもよい:
【化8】

このように、それは、関与する錯体の少なくとも1つの中心金属原子と結合し、スペーサーの機能を有する別の原子または基を介して中心原子と結合した、3つのリガンド原子を有している。式15による化合物はこの種の三脚型リガンドである。しかしながら、言うまでもなく、化合物15の中心B原子は、例えば、C、Si、PまたはAs原子で置き換えられるが、それに限定されない。一般的に、式18による三脚型リガンドは適切な中心原子Zを有し、これは主族の元素でも、遷移金属原子でもよい。それとは独立して、Zは金属原子、特に主族の金属原子でもよい。Zは少なくとも三価の原子である。Zは好ましくは炭素であるが、それは特にBまたはPでもよい。その他については、ボレート類に関して上記されたことが、基R、XおよびYに当てはまる。特に、基‐X‐Yは化合物11、12、13、14および/または16のように形成されうる。
【0049】
特に、三脚型リガンドにおいて、Yは通常ドナーとして作用しうる原子でもあり、これはヘテロ原子でもまたは炭素原子でもよい。三脚型リガンドのヘテロ原子のうち少なくとも1つ、それ以上または全部は、好ましくはグループN、P、S、Se、Ge、Sn、所望によりSiから選択されるが、それに限定されない。ドナー原子は各場合において電荷、特に負電荷を有してよい;それは例えばカルバニオン炭素である。ドナー原子はその最大原子価より低い原子価でもよい;それは例えばカルベン‐炭素原子、ゲルミレン‐ゲルマニウム原子、シリレン‐ケイ素原子、Sn(II)またはPb(II)原子でもよい。好ましくは、リガンドの少なくとも1つのドナー原子は、カルバニオン‐炭素原子またはその最大原子価より低い原子、特にC、Ge、Siである;これは、特に好ましくは、リガンドの全ドナー原子に当てはまる。Yは所望により環または環系の成分でもよい。三脚型リガンドのドナー原子は好ましくは互いに同一でもよいが、それらは互いに異なってもよい。
【0050】
リガンドは、好ましくは、少なくとも1つの金属中心原子と結合したカルバニオン‐炭素原子として、少なくとも1または2つのドナー原子、またはリガンドに関しては、各場合に、多重結合がドナー原子の自由電子と共役しうる、芳香族または非芳香族の、好ましくは不飽和環の成分である、グループC(カルベン)、Si(シリレン)、Ge(ゲルミレン)、所望によりSnまたはPbから選択される形式上二価の原子を有している。ドナー原子を有する環は、好ましくはグループN、P、As、S、SeまたはTe、特にN、S、Seから選択される、少なくとも1または2つの別なヘテロ原子を好ましくは有し、これらは各場合において同一でもまたは異なってもよい。
【0051】
トリアザシクロアルカン類
【化9】

本発明の金属錯体のリガンドのうち1、2、それ以上または全部は、トリアザシクロアルカン類、特に一般式17のものでもよく、ここでm、n、oは整数、好ましくは各場合に互いに独立して0〜6、好ましくは0〜4、特に好ましくは各場合に互いに独立して1または2である。m、nおよびoは、各場合に互いに同一でもまたは異なってもよい。置換基Rはいかなる残基でもよく、好ましくはアルキル残基、特にC‐Cの低級アルキル残基、またはアリール残基であり、水素も含む。アルキルまたはアリール残基は置換されてもまたは非置換でもよい。残基は互いに同一でもまたは異なってもよい。置換基Rの全部またはいくつかは自由電子対でもよく、その結果としてリガンドは形式上1以上の負電荷を有している。残基R′はいかなる置換基でもよく、好ましくは水素、アルキルまたはアリールである;この関係の詳細に関しては、残基Rに関する説明が必要な変更を加えた上で当てはまる。様々なR′は同一でもまたは異なってもよい。言うまでもなく、トリアザシクロアルカン類のN原子のうち1以上は、グループP、As、Sbから選択される原子で置き換えうる。トリホスファシクロアルカン類がここでは好ましい。
【0052】
言うまでもなく、m、nおよび/またはoが2以上の整数である場合には、環式リガンドのヘテロ原子間の上記基は不飽和でもよく、例えばトリアザ(ヘテロ)シクロアルケン類、ジアルケン類、トリアルケン類などを形成している。置換基Rおよび/またはR′のアルキルまたはアリール残基は、各場合にヘテロ原子も有してよい。
【0053】
フラーレン類
加えて、リガンドのうち少なくとも1、2または全部が、錯体の中心原子と結合したBuckminsterフラーレン類である、錯体が好ましい。Buckminsterフラーレン類は、特にC60および/またはC70フラーレン類である。これらフラーレン類の誘導体、特に置換フラーレン類も、ここに包含される。この関係において、フラーレン類は最終的に置換シクロペンタジエニルリガンドを形成するが、それは後者がシクロペンタジエニル環で中心金属原子を錯化するからである。
【0054】
ハサミ型リガンド
加えて、錯体の中心金属原子に対し三座リガンドとして作用する、いわゆるハサミ型リガンドが、特に好ましい。特に、このようなハサミ型リガンドは、中心原子と子午線的に結合しうる。ハサミ型リガンドは、特に6‐電子ドナーである。(形式上非錯化の)ハサミ型リガンドは中性でも、または荷電、好ましくは負荷電でもよい。
【0055】
好ましくは、錯体のハサミ型リガンドのうち1、2または全部は、下記式の一般構造27、27a、28または28aを有している;錯体のハサミ型リガンドのうち1、2または全部は、例えば、構造27もしくは28、または27aもしくは28aのうち一方を有している。特に、錯体の全リガンドが構造27、27a、28または28aを有してもよい。言うまでもなく、錯体のハサミ型リガンドは同一でもまたは異なってもよい。このように、ハサミ型リガンドは、ヘテロ原子ZまたはC=原子(カルバニオン)が中心金属原子と結合した中心環と、ヘテロ原子Zを有する環へ架橋原子または架橋原子団Xを介して結合された、2つの別なリガンド原子Yを有している。所望により、化合物27、27a、28または28aのリガンドにおける基Xのうち1以上は欠けてもよい。リガンド27、27a、28または28a内の基Xおよび/またはYは、各場合において同一でもまたは異なってもよい。特に、ハサミ型リガンドの中間リガンド原子を有した環は五員または六員環であり、これは所望により1以上のヘテロ原子を有するが、そのうち1つはドナー原子でもよい。この場合にX‐Y基のうち一方または双方は、同様に、各場合でY原子に加えて別のヘテロ原子を有しうる、環または環系の成分、特に五または六員環の成分でもよい。Y原子は、各場合に、炭素原子でもよい。ハサミ型リガンドのうち少なくとも1、2または3つのドナー原子Y、Y′およびZ、あるいは少なくとも2つのハサミ型リガンドを有する錯体のドナー原子のうち1、2または3以上は、窒素以外でもよい。ハサミ型リガンドは、各場合に6以外の環原子数を有する、1つのリガンド原子を含有した少なくとも1または2以上の環、特に五員環を有してもよい。その環は中間リガンド原子Zを有した環でもよく、またはそれはX‐Y基の一方を形成してもよい。すべてのドナー原子は五員環の成分でもよく、これは各場合に不飽和または芳香族でもよい。
【化10】

【0056】
リガンドのうち1、2またはそれ以上のドナー原子、または錯体の全ドナー原子は、各場合において、芳香環または共役不飽和系の成分でもよい。これは、特に、ドナー原子S、C(II)(カルベン)、C(カルバニオン)、Si(II)および/またはGe(II)に当てはまる。低価ドナー原子、例えばカルベン、ゲルミレン、シリレンのような二価ドナー原子の場合に、ドナー原子は、特に、好ましくは空のまたは最大に占有されていないドナー原子の軌道と共役している、N、P、As、Ab、S、Se、Teのような、自由電子対を有する1または2つのへテロ原子と隣接してもよい。これは、ハサミ型リガンドと、下記の単座または二座リガンドとの双方に当てはまる。
【0057】
化合物27、27a、28、28aにおいて、Yは、好ましくはグループN、P、O、S、Se、Te、C、Si、Ge、Sn、Pbから選択される、例えばグループC、N、P、O、S、Seから選択される、ドナーとして作用しうるヘテロ原子または炭素原子であるが、それに限定されない。Y原子はN以外でもよい。2つのY原子は同一でもまたは異なってもよい。Yは環または環系の一部でもよい。特に、Yは炭素原子、例えばカルバニオンまたはカルベン炭素原子、またはGe原子、特にゲルミレン(Ge(II))、またはSi原子、特にシリレン(Si(II))、またはイオウ原子である。
【0058】
Zは、好ましくはグループC、N、P、O、Sから選択される、ドナーとして作用しうるヘテロ原子または炭素原子である。Y原子のうち少なくとも1つがN原子であるならば、ZはN以外でもよい。特に、Zは炭素原子、例えばカルバニオンまたはカルベン炭素原子、またはGe原子、特にゲルミレン(Ge(II))、またはSi原子、特にシリレン(Si(II))、またはイオウ原子である。
【0059】
Xは“スペーザー”であり、いかなる少なくとも二価の原子または原子団でもよい。特に、Xは、分岐または非分岐アルキル鎖、特にC‐C、好ましくはC‐Cまたは1もしくは2つの原子を有する低級アルキル鎖であり、ここでXはヘテロ原子を有しなくても、または1以上のヘテロ原子を有してもよい。ヘテロ原子は架橋の成分でもよい。Xはアリール置換基、例えばヘテロ原子含有または非含有の縮合アリール置換基、例えばヘテロ原子含有または非含有のアルキル‐アリール置換基でもよい。Xは単一のヘテロ原子、例えばO、S、N、P等でもよい。Rはいかなる置換基でもよく、好ましくはH、アルキル、特にC‐Cの低級アルキル、またはアリールである。アルキルまたはアリール残基は置換または非置換であり、所望により1以上のヘテロ原子を有している。個々の置換基Rは同一でもまたは異なってもよい。2つの置換基Rは、芳香族を含めた、飽和、不飽和である環の一部でもよく、好ましくは骨格と縮合した環系の一部でもよい。Rに関する説明はR′にも当てはまり、R′は特に水素以外の原子または原子団である。置換基R′は、各場合において、互いに同一でもまたは異なってもよい。
【0060】
Eは、各場合において、グループC、Si、Ge、Sn、Pbから選択される、好ましくはグループC、Si、Geから選択される原子、例えば各場合で酸化状態(II)の、特にCまたはGeでもよい。ドナー原子Eはカルベン、ゲルミレンまたはシリレンリガンドを形成してもよい;好ましくは、2つのドナー原子Eは各場合においてビス‐カルベン、ビス‐ゲルミレンまたはビス‐シリレンリガンド、またはこれらドナー原子との混合リガンドを形成している。E原子を有するハサミ型リガンドの環は、好ましくは、所望によりEとは別に、好ましくは各場合に環、好ましくは不飽和または芳香環の成分である、少なくとも1または2つの別なヘテロ原子を有している。別なヘテロ原子は、所望により二重結合のような不飽和系を介して、好ましくはE原子と結合している。ヘテロ原子は特にNまたはSである。ドナー原子Eを(特にカルベンC(II)、Ge(II)、Si(II)として)有する環は、2つの追加N原子、2つのS原子、または1つのNおよび1つのS原子を有してよい。
【0061】
少なくとも1、2以上のまたは排他的にハサミ型リガンドを有する錯体は、好ましくは、グループCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選択される、好ましくはグループMn、Fe、Co、Niから選択される、特に好ましくはグループFe、Co、Niから、所望によりMnを含めて選択される、少なくとも1つの中心原子を有している。少なくとも1つの中心原子はグループCr、Mo、Wから選択され、例えばMoまたはW、所望によりCrである。中心原子は通常第7〜第10遷移金属族の原子でもよい;この関係において、それはCrまたはRu以外でもよいが、これは必須ではない。
【0062】
特に、化合物20〜26および29〜37は、所望によりCrまたはRu以外である、上記の中心原子を有してもよい。しかしながら、化合物20〜26および29〜37は、第一、第二または第三遷移金属周期のグループから選択される異なる中心原子も有してよい。
【0063】
リガンドは化合物20〜24の群から選択してもよく、末端五員環の原子SまたはNのうち1以上は各場合にSe、Teまたは所望によりO、またはP、AsまたはSbで置き換えうる。化合物20〜24の五員環の二重結合のうち1以上は、所望により飽和してもよい。Eは、各場合において、特にカルベン炭素C(II)、Ge(II)(ゲルミレン)またはSi(II)(シリレン)、所望によりOである。
【0064】
ハサミ型リガンドは更に化合物25または26の群から選択してもよく、化合物26の中間五員環のS原子または末端五員環のS原子のうち一方もしくは双方はSeまたはTe原子、所望によりOでもよい。該系の二重結合のうち1以上は飽和してもよい。それは、各場合において、特にカルベン炭素C(II)、Ge(II)またはSi(II)である。
【0065】
例えば、リガンドは化合物29、30、31の群から選択してもよいが、ここでS原子のうち1以上はSeまたはTe、所望によりOで置き換えてもよく、N原子のうち1以上はP、AsまたはSbで置き換えてもよい。Eは、各場合において、特にカルベン炭素C(II)、Ge(II)またはSi(II)である。
【0066】
ハサミ型リガンドは化合物32〜34の群から選択してもよく、ここでEは特に二価C(カルベン)、Si(シリレン)またはGe(ゲルミレン)原子である。N原子のうち1以上はP、AsまたはSbで置き換えてもよい。S原子のうち1以上はSeまたはTe、または所望によりOで置き換えてもよい。
【0067】
ハサミ型リガンドは更に化合物35、36または37の群から選択してもよく、ここでEは好ましくは二価炭素原子(カルベン)、Si(II)またはGe(II)である。N原子のうち少なくとも1つはP、AsまたはSbで置き換えてもよい。S原子のうち少なくとも1つはSeまたはTe、または所望によりOで置き換えてもよい。
【0068】
化合物19〜26および29〜37、特に化合物20〜26および29〜37の群からのリガンドが、グループC、Si、Ge、Sn、Pbから選択される、特にグループC、Si、Geから選択される二価リガンド原子Eを有しているならば、錯体の中心原子は好ましくはコバルト、特にCo(II)またはRu、特にRu(0)である。
【0069】
加えて、リガンドは一般構造45、45a、46、46aの二座リガンドでもよい。X‐Y基は特にヘテロドナー原子としてYを有するヘテロ環式環を形成してもよく、該環は好ましくは五または六員環である。Z、XおよびYの原子または原子団と置換基RおよびR′に関するかぎり、ハサミ型リガンドに関する上記コメントが参照しうる。
【0070】
特に、錯体のリガンドのうち1、2または全部は化合物45、45a、46、46aの群から選択してもよく、例えば化合物45または45aまたは46または46aであり、ここでハサミ型リガンドに関する上記の説明が基Z、X、Yに当てはまる。
【0071】
特に、錯体のリガンドのうち1、2または全部は化合物38〜44および47〜56の群から、特に化合物39〜44および47〜56の群から選択してもよく、ハサミ型リガンドに関する上記の説明が必要な変更を加えた上で基RおよびEに当てはまる。特に、ここでも、リガンドは二価ドナー原子S、C、Si、Ge、Sn、Pb、特にドナー原子C、Si、Ge含有の環を有してもよく、結果的に対応するカルバニオン類、カルベン類、シリレン類またはゲルミレン類が存在する。
【化11】

【0072】
特に、一般構造27、27a、28、28a、45、45a、46、46aのうち1つのリガンドは、C(カルバニオン)またはC(II)(カルベン)としてZ原子を有してもよい。特に、リガンド原子Yの一方または双方は、グループC、Si、Ge、Sn、Pbから選択され、特にC、Si、Geから選択されるE原子でもよく、Eは(リガンド内で)二価である。
【0073】
化合物27、27a、28、28a、45、45a、46、46aのうち1つのドナー原子Yはチオフェン環のイオウ原子でもよく、これは所望によりSeまたはTe、または所望によりOで置き換えうる。
【0074】
加えて、リガンドは化合物40、41、42、43の群から選択され、各場合においてNはP、AsまたはSbで置き換えてもよく、Sは各場合においてSe、Te、所望によりOで置き換えてもよい。
【0075】
加えて、リガンドは化合物47、48、49、50、51、52の群から、特に化合物49、50、51、52の群から選択され、各場合においてSはSeまたはTe、所望によりOで置き換えてもよく、NはP、As、Sbで置き換えてもよい。
【0076】
リガンドは化合物53、54、55および56の群から選択してもよく、ここでSはSe、Te、または所望によりOで置き換えてもよく、NはP、AsまたはSbで置き換えてもよく、Eは好ましくはC(II)(カルベン)、Si(II)(シリレン)またはGe(II)(ゲルミレン)である。
【0077】
加えて、リガンドのうち少なくとも1つ、それ以上または全部は、化合物57〜64の群から選択され、特に化合物59〜64の群から選択され、ハサミ型リガンドに関する説明が必要な変更を加えた上でE、R、R′に当てはまる。ハサミ型リガンドに関するYまたはZについての説明は、炭素またはヘテロドナー原子としてXに当てはまる。特に、化合物58は、所望により置換された、シクロペンタジエニルアニオン、チオフェン、ピロール、セレノフェン、ホスフェンまたはフランでもよい。Eは、好ましくは、C(カルベン)、Si(シリレン)、Ge(ゲルミレン)、Sn、Pbの群からの、好ましくはグループC、Si、Geから選択される二価原子である。Eは特にC(カルバニオン)でもよい。所望により、化合物57〜64のうち1以上の二重結合は飽和してもよい。
【0078】
タイプ27、27aおよび28、28aの化合物、特に化合物19〜26および29〜37、特に20〜26および29〜37、および化合物45、45a、46、46a、特に化合物38〜44および47〜56、39〜44および47〜56、および化合物57〜64、特に化合物59〜64において、好ましくはドナー原子を有する環のうち少なくとも1、それ以上または全部は、各場合において、1、2または3以上、好ましくは4以上の炭素原子含有の炭化水素基、好ましくは非置換アルキル基または置換アルキル基を有している。該基中におけるC原子の数は、好ましくは4〜20または4〜10であり、各場合において、例えば4〜6を含む。好ましくは、環のうち少なくとも1、2または全部は、水素またはメチル基と比べて強い+I効果およびまたは+M効果を示す、少なくとも1つの置換基で置換されている。好ましくは、ドナー原子のうち少なくとも1、2または全部は、それと共役した+M置換基を有している。好ましくは、環のうち1、2以上または全部は、少なくとも1つのアルキル基、または同様のもしくは更に強い+I効果を有した基で置換されている。言うまでもなく、環のうち1つ、それ以上または全部は、N‐アルキルまたはN‐ジアルキル置換基(またはNの代わりにP)のような+M置換基を有してもよく、上記されたことがアルキルに当てはまる。
【化12】

【0079】
言うまでもなく、中心原子のうち少なくとも1つまたは全部が2以上の置換基を有している場合に、該置換基のうち2つまたは全部は各場合において同一の置換基タイプに属するか、または同一である。
【0080】
イオン化電位/酸化電位
本発明の金属錯体は、好ましくは、気相中で≦6.4eV、好ましくは≦6eV、特に≦5.5eVのイオン化電位を有している。特に、気相中における錯体のイオン化電位は≦5.0eVまたは≦4.5eVである。
【0081】
本発明に従い用いられる化合物の気相イオン化電位Ipgはテトラチアフルバレン(TTF)と比較して定められ、例えば、それはIpg=6.4eVである(R.Gleiter,E.Schmidt,D.O.Cowan,J.P.Ferraris,J.Electr.Spec.Rel.Phenom.,2,207(1973)参照)。
【0082】
TTFの酸化電位はFe/Fe+(フェロセン/フェロセニウム)に対してE1/2(ox)=−0.09Vである(M.Iyoda,T.Takano,N.Otani,K.Ugawa,M.Yoshida,H.Matsuyama,Y.Kuwatani,Chem.Lett.,1310(2001))。対照のその値に加えて、フェロセン/フェロセニウムに対する本発明のn‐ドーパントのレドックス電位は≦−0.09V、好ましくは≦−0.6V、特に好ましくは≦−1.1V、例えば≦−1.6Vまたは≦−2.1Vであるが、それに限定されることはない。
【0083】
フェロセン/フェロセニウムに対する酸化電位は、例えば、シクロボルタンメトリー法で定められる。この場合の電位は用いられる電解質系とは主に無関係であり、IUPAC勧告に従い定められる(Gritzner,G;Kuta,J.Pure Appl.Chem.,1984,56,461-466)。電解質系は十分に大きな電気化学窓を有していなければならず、ドナー化合物は十分に可溶性でなければならない。適切な電解質系の例はアセトロニトリル/1M LiClO/Pt電極であるが、他の適切な電解質系も用いうる。
【0084】
蒸気圧
本発明に従い用いられる錯体の蒸気圧は、特に30℃で<10−3Pa、例えば≦5×10−4Paまたは≦1×10−4Paである。
【0085】
各場合に用いられる本発明のn‐ドーパントおよび/または各場合に用いられる錯体は空気中で安定なこともある;所望により、各場合に用いられる本発明のn‐ドーパントおよび/または錯体は空気中で不安定なこともある。
【0086】
本発明のn‐ドーパント錯体およびそれらリガンドの合成
一般論
本発明のn‐ドーパント金属錯体は、例えば、該化合物を直接合成するかまたは塩を還元することにより合成され、その際に得られた中性金属錯体はカチオンとして塩中に存在している。アニオンはいかなる適切なアニオンでもよく、例えばハロゲン、ペルクロレート、サルフェートなどである。還元は例えば電気化学的または化学的に行われるが、それに限定されない。還元は例えば電気結晶化で行ってもよく、こうして得られた生成物は、作用電極で回収しうるが、後で精製できる。しかしながら、本発明の錯体は特にこのような電気結晶化ステップを用いることなく製造してもよい。
【0087】
合成プロセス
本発明の錯体は公知のプロセスを用いて合成しうる;一部の場合、それらは市販されている。本発明の錯体のリガンドおよび錯体自体の合成は、例えば文献の下記部分で記載され、その各々が参考のため全体で本出願に組み込まれる。言うまでもなく、文献の引用部分は例示にすぎず、リガンドおよび錯体はほとんどの場合で他の適切なプロセスによっても合成しうる。
【0088】
外輪型錯体
外輪型錯体は、他の外輪型錯体からリガンド置換(F.A.Cotton,J.G.Norman Jr.,J.Coord.Chem.,1(1970)161-72;F.A.Cotton,D.J.Timmons,Polyhedron,17(1998)179-84)、金属ハライドおよびアニオン性リガンドからの塩複分解(F.A.Cotton,D.J.Timmons,Polyhedron,17(1998)179-84)、カチオン性外輪型錯体の還元(F.A.Cotton,P.Huang,C.A.Murillo,X.Wang,Inorg.Chem.Commun.,6(2003)121-6)により、または金属化合物およびリガンドのレドックス反応(T.A.Stephenson,E.Bannister,G.Wilkinson,J.Chem.Soc.(1964)2538-41)で単離しうる。
【0089】
加えて、新規プロセスが開発され、それによるとタイプ65a‐dの外輪型錯体が一段階合成プロセスで効率的に単離しうる。この目的のためには、65a‐dで示されたリガンドの遊離塩基との対応無機金属塩および適切な強い還元剤が、反応が完全に生じるまで、適切な有機溶媒中で加熱還流される。用いられる適切な溶媒は、好ましくは、形成された錯体が十分な安定性を示すもの、好ましくはジアルキルエーテル、環状エーテル、環状および開鎖ポリエーテル、例えば1,4‐ジオキサン、ジメトキシエタンなど、芳香族化合物およびそれらの混合物である。適切な還元剤は、例えば、塩基金属、好ましくはナトリウム、カリウムおよびセシウムのようなアルカリ金属である。無機副産物の分離後、錯体が結晶化、沈殿または昇華により単離される。
【0090】
新規の一段階合成法によれば、タイプWの錯体へ至る時間および資源節約アクセス法を切り開けるのである。
【0091】
一部の実施態様が以下で示されている:
【0092】
リガンドおよびそれらの前駆体の合成
例1:
1.イミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジンヒドロペルクロレート
製造プロセスは文献で記載された方法に従った(M.Kunstlinger,E.Breitmaier,Synthesis,1983(2),161-162)。公知方法とは異なり、過塩素酸を加えることにより、生成物をイミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジンヒドロペルクロレートとして単離した。
Fp.195℃
H‐NMR(500MHz,CDCN)〔ppm〕:
8.99‐8.96(m,2H);7.98(d,1H);7.93(d,1H);7.58(dd,1H)
MS:m/z=119〔M〕
【0093】
2.5,6,7,8‐テトラヒドロ‐イミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジン
イミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジンヒドロペルクロレート4.2gを、Hの供給下、パラジウム活性炭入り酢酸溶液中で8時間加熱した。次の濾過、溶媒の除去およびジエチルエーテルの添加により、無色結晶の形で5,6,7,8‐テトラヒドロ‐イミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジンヒドロアセテートを得、これをエタノールから再結晶化した。
収量:3.21g
Fp.65℃
H‐NMR(500MHz,DMSO‐d)〔ppm〕:
6.97(d,1H);6.91(d,1H);3.90(t,2H);3.25(t,2H);1.98(quint.,2H)
5,6,7,8‐テトラヒドロ‐イミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジンをアルカリ性エタノール溶液中で放出させた。
収量:3.08g
Fp.110℃
H‐NMR(500MHz,DMSO‐d)〔ppm〕:
6.51(d,1H);6.36(d,1H);6.09(s,1H);3.80(t,2H);3.16(t,2H);1.90(quint.,2H)
MS:m/z=123〔M〕
【0094】
例2:
1.2‐アミノ‐4,6‐ジメチル‐1,4,5,6‐テトラヒドロピリミジン
2‐アミノ‐4,6‐ジメチルピリミジン1gを、Hの供給下、触媒としてパラジウム活性炭入り塩酸環境(2M HCl)中で14時間加熱した。次の濾過、溶媒の除去およびジエチルエーテルの添加により、2‐アミノ‐4,6‐ジメチル‐1,4,5,6‐テトラヒドロピリミジン塩酸塩を得、これをi‐プロパノール/ジエチルエーテルから再結晶化し、真空中で乾燥させた。
収量:1.03g
Fp.129℃
H‐NMR(500MHz,DMSO‐d)〔ppm〕:
8.14(s,2H);6.81(s,2H);3.48(m,2H);1.98(d,1H);1.14(d,6H);1.10(d,1H)
2‐アミノ‐4,6‐ジメチル‐1,4,5,6‐テトラヒドロピリミジンをアルカリ性エタノール溶液中で放出させた。
H‐NMR(500MHz,DMSO‐d)〔ppm〕:
3.46(m,2H);1.98(m,1H);1.13(d,6H);1.10(d,1H)
【0095】
2.2,4‐ジメチル‐3,4‐ジヒドロ‐2H‐ピリミド〔1,2‐a〕ピリミジンヒドロペルクロレート
2‐アミノ‐4,6‐ジメチル‐1,4,5,6‐テトラヒドロピリミジン0.66gを、等モル量の1,1,3,3‐テトラメトキシプロパンと共に過塩素酸を加えて、メタノール溶液中で沸点まで還流した。溶媒を除去し、ジエチルエーテルの層で残渣を覆うことにより、2,4‐ジメチル‐3,4‐ジヒドロ‐2H‐ピリミド〔1,2‐a〕ピリミジンヒドロペルクロレートを得、それを濾取し、真空中で乾燥させた。
収量:0.46g
H‐NMR(500MHz,DMSO‐d)〔ppm〕:
9.86(s,1H);8.75(dd,1H);8.55(dd,1H);6.99(dd,1H);4.43(m,1H);3.76(m,1H);2.29(m,1H);1.69(quar,1H);1.57(d,3H);1.27(d,3H)
【0096】
3.2,4‐ジメチル‐1,3,4,6,7,8‐ヘキサヒドロ‐2H‐ピリミド〔1,2‐a〕ピリミジン
2,4‐ジメチル‐3,4‐ジヒドロ‐2H‐ピリミド〔1,2‐a〕ピリミジンヒドロペルクロレート0.5gを、Hの供給下、パラジウム活性炭入り酢酸溶液中で8時間加熱した。次の濾過、溶媒の除去およびジエチルエーテルの添加により、無色結晶の形で2,4‐ジメチル‐1,3,4,6,7,8‐ヘキサヒドロ‐2H‐ピリミド〔1,2‐a〕ピリミジンヒドロアセテートを得、これをエタノールから再結晶化した。
収量:0.37g
Fp.101℃
H‐NMR(500MHz,DMSO‐d)〔ppm〕:
7.47(s,1H);7.09(s,1H);3.50‐3.55(m,1H);3.43‐3.39(m,1H);3.35‐3.21(m,3H);3.05‐3.03(m,1H);2.11(m,1H);1.95‐1.91(m,1H);1.78‐1.71(m,1H);1.37‐1.30(quar,1H);1.24(d,3H);1.14(d,3H)
2,4‐ジメチル‐1,3,4,6,7,8‐ヘキサヒドロ‐2H‐ピリミド〔1,2‐a〕ピリミジンをアルカリ性エタノール溶液中で放出させた。
収量:0.1g
Fp.133℃
H‐NMR(500MHz,DMSO‐d)〔ppm〕:
3.24‐3.16(m,3H);3.16‐3.14(m,1H);3.09‐2.93(m,1H);2.86‐2.83(m,1H);1.89‐1.85(m,1H);1.77‐1.73(m,1H);1.65‐1.58(m,1H);1.17‐1.10(m,4H);0.97(d,3H)
MS:m/z=167〔M〕
【0097】
例3:
1.ベンゾイミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジンヒドロペルクロレート
製造プロセスは文献で記載された方法に従った(M.Kunstlinger,E.Breitmaier,Synthesis,1983(2),161-162)。これとは異なり、過塩素酸を加えることにより、生成物をベンゾイミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジンヒドロペルクロレートとして単離した。
Fp.245℃
H‐NMR(500MHz,DMSO‐d)〔ppm〕:
9.98(dd,1H);9.26(dd,1H);8.60(d,1H);7.95(d,1H);7.86‐7.81(m,2H);7.73(t,1H)
【0098】
2.1,2,3,4‐テトラヒドロ‐ベンゾイミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジン
ベンゾイミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジンヒドロペルクロレート0.602gを、Hの供給下、パラジウム活性炭入り塩酸溶液(2M HCl)中で9時間加熱した。次の濾過、溶媒の除去およびジエチルエーテルの添加により、無色結晶の形で1,2,3,4‐テトラヒドロ‐ベンゾイミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジン塩酸塩を得、これをエタノールから再結晶化した。
収量:0.18g
Fp.212℃
H‐NMR(500MHz,DMSO‐d)〔ppm〕:
12.62(s,1H);9.18(s,1H);7.47(m,1H);7.38(m,1H);7.27(m,1H);4.08(t,2H);3.48(m,2H);2.14(quint.,2H)
MS:m/z=174〔M〕
【0099】
1,2,3,4‐テトラヒドロ‐ベンゾイミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジンをアルカリ性エタノール溶液中で放出させた。
Fp.190℃
H‐NMR(500MHz,DMSO‐d)〔ppm〕:
7.13‐7.07(m,3H);6.92(m,1H);6.85(m,1H);3.96(t,2H);3.31(t,2H);2.03(quint.,2H)
MS:m/z=173〔M〕
【0100】
タイプMの錯体の一般合成
MCl(WCl,1.00g,3.07mmol)、少なくとも2当量の各リガンド(9.21mmol)および過剰のカリウム(約1g)をTHF50ml中で還流する。次いで、それを冷却させ、母液を濾過する。濾液を乾燥するまで濃縮し、トルエンで抽出する。生成物をヘキサンで褐色固体物として沈殿させ、濾過により単離し、高真空下で乾燥させる。収率約30%
【0101】
例4:
テトラキス〔テトラヒドロ‐イミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジナト〕二タングステン‐II
【化13】

リガンド5,6,7,8‐テトラヒドロ‐イミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジン1.13gで上記のような合成
H‐NMR(500MHz,C)〔ppm〕:
6.7‐6.2(br,2H);3.8‐3.3(br,4H);1.9‐1.3(br,2H)
【0102】
例5:
テトラキス〔ジメチル‐1,3,4,6,7,8‐ヘキサヒドロ‐2H‐ピリミド〔1,2‐a〕ピリミジナト〕二タングステン‐II
【化14】

リガンド2,4‐ジメチル‐1,3,4,6,7,8‐ヘキサヒドロ‐2H‐ピリミド〔1,2‐a〕ピリミジン1.54gで上記のような合成
H‐NMR(500MHz,C)〔ppm〕:
3.5‐2.6(br,4H);2.0‐1.3(br,4H);1.3‐0.9(br,6H)
ESI‐MS:m/z=184〔M+3OH〕
【0103】
例6:
テトラキス〔テトラヒドロ‐ベンゾ〔4,5〕イミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジナト〕二タングステン‐II
【化15】

リガンド1,2,3,4‐テトラヒドロ‐ベンゾイミダゾ〔1,2‐a〕ピリミジン1.54gで上記のような合成
一般合成法の修正により、この生成物をヘキサンで母液から沈殿させる。単離された固体物はトルエンに不溶性である。
H‐NMR(500MHz,THF‐d8)〔ppm〕:
6.60(m,br,1H);6.55(m,br,1H);6.40(m,br,1H);6.34(m,br,1H);3.72(br,2H);3.42(br,2H);1.77(br,2H)
【0104】
カルベン類
N‐へテロ環式カルベン類NHCを合成するための多くの標準法、即ちイミダゾールプロセス、チオケトンプロセスおよび酸化銀プロセス(金属移動プロセス)が、文献で知られている。この事項に関しては、W.A.Herrmann,Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.41(2002)1290-1309;W.A.Herrmann,C.Kocher,Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.36(1997)2162-87;A.H.Cowley,J.Organomet.Chem.,617-8(2001)105-9;T.Westkamp,V.P.W.Bohm,W.A.Herrmann,J.Organomet.Chem.,600(2000)12-22参照。
【0105】
チオケトンプロセスは、シリレン類およびゲルミレン類にも用いうる原理に実質上基づいている。しかしながら、GeClまたはSiClの代わりに、チオホスゲンが用いられ、次いでカリウム、ナトリウムアマルガムまたはKCで還元する(N.Kuhn,T.Kratz,Synthesis(1993)561;F.E.Hahn,L.Wittenbecher,R.Boese,D.Blaser,Chem.Eur.J.,5(1999)1931-5)。イミダゾールプロセスでは、N‐置換イミダゾール親物質が最初に単離される。次いで第二窒素原子が通常アルキルハライドで四級化され、最終ステップでイミダゾリウム塩が適切な塩基(KOBu、CsCO、BuLiなど)でカルベンへ反応させられる(例えば:A.J.Arduengo III,R.L.Harlow,M.Kline,J.Am.Chem.Soc.,113(1991)361-3;M.R.Grimmet,Adv.Heterocyclic Chemistry,12(1970)105 and 134参照)。
【0106】
酸化銀プロセスはイミダゾールプロセスの変法である。この場合には、酸化銀が塩基として用いられる。カルベン形の銀錯体。これはカルベンを他の金属へ移動させうる(金属移動)(Q.-X.Liu,F.-B.Xu,Q.-S.Li,X.-S.Zeng,X.-B.Leng,Y.L.Chou,Z.-Z.Zhang,Organometallics,22(2003)309-14;T.Ramnial,C.D.Abernethy,M.D.Spicer,I.D.McKenzie,I.D.Gay,J.A.C.Clyburne,Inorg.Chem.,42(2003)1391-3)。
【0107】
シリレン類
N‐へテロ環式シリレン類の合成は、対応ゲルミレン類の場合と類似している。しかしながら、塩化ケイ素(IV)が用いられ、これは次に還元ステップもなければならないことを意味している(例えば、M.Denk,R.Lennon,R.Hayshi,R.West,A.V.Belyakov,H.P.Verne,A.Haaland,M.Wagner,N.Metzler,J.Am.Chem.Soc.,116(1994)2691-2;B.Gehrhus,M.F.Lappert,J.Organomet.Chem.,617-8(2001)209-23参照)。
【0108】
ゲルミレン類
へテロ環式ゲルミレン類(N,S)は、通常、公知方法に従い、対応ジイミン類、ジアミン類、アミノチオール類またはジチオール類を金属化し、次いでそれらを塩化ゲルマニウム(II)と反応させることにより単離しうる(J.Pfeiffer,M.Noltemeyer,A.Meller,Z.Anorg.Allg.Chem.,572(1989)145-50;A.Meller,C.-P.Grabe,Chem.Ber.,118(1985)2020-9;J.Pfeiffer,W.Maringgele,M.Noltemeyer,A.Meller,Chem.Ber.,122(1989)245-52;O.Kuhl,P.Lonnecke,J.Heinicke,Polyhedron,20(2001)2215-22)。
【0109】
金属錯体の合成は、例えば:O.Kuhl,P.Lonnecke,J.Heinicke,Inorg.Chem.,42(2003)2836-8;W.A.Herrmann,M.Denk,J.Behm,W.Scherer,F.-R.Klingan,H.Bock,B.Solouki,M.Wagner,Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.31(1992)1485で記載されている。
【0110】
π周辺部
π周辺部リガンドおよびそれらの金属化合物には、多数の化合物と、ひいてはそれらを合成する多くの異なる方法が存在している。以下は例として挙げられている:
シクロペンタジエニル:C.Janiak,H.Schumann,Adv.Organomet.Chem.,33(1991)331;J.Okuda,Top.Curr.Chem.,160(1991)99;N.J.Coville,K.E.du Plooy,W.Pickl,Coord.Chem.Rev.,116(1992)1;R.L.Halterman,Chem.Rev.,92(1992)965;M.L.Hays,T.P.Hanusa,Adv.Organomet.Chem.,40(1996)117;S.Brydges,L.E.Harrington,M.J.McGlinchey,Coord.Chem.Rev.,233-4(2002)75;T.Cuenca,P.Royo,Coord.Chem.Rev.,193-5(1999)447-98
【0111】
アレーン類:A.S.Abd-El-Aziz,Coord.Chem.Rev.,233-4(2002)177;A.S.Abd-El-Aziz,Coord.Chem.Rev.,203(2000)219;R.D.Pike,D.A.Sweigart,Coord.Chem.Rev.,187(1999)183
【0112】
シクロヘプタトリエニル:M.L.H.Green,D.P.K.Ng,Chem.Rev.,95(1995)439;M.Tamm,B.Dressel,R.Frohlich,J.Org.Chem.,65(2000)6795;M.Tamm,T.Bannenberg,R.Dressel,R.Frohlich,D.Kunz,Organometallics,20(2001)900;M.Tamm,T.Bannenberg,R.Frohlich,S.Grimme,M.Gerenkamp,Dalton Trans.(2004)482-91;M.Tamm,B.Dressel,T.Lugger,R.Frohlich,S.Grimme,Eur.J.Inorg.Chem.(2003)1088
【0113】
シクロオクタテトラエンジイル:F.T.Edelmann,D.M.M.Freckmann,H.Schumann,Chem.Rev.,102(2002)1851;P.W.Roesky,Eur.J.Inorg.Chem.(2001)1653
【0114】
アレーンFeCp:これらは、フェロセンから、アレーン置換、次いで還元により、またはCpFe(CO)Brをアレーンと反応させ、次いで還元により構築される:J.-R.Hamon,D.Astruc,P.Michaud,J.Am.Chem.Soc.,103(1981)758-66。他のアレーン遷移金属‐金属Cp錯体、例えば金属原子Mn、Co、Ni、Cu、Znまたは更にはCr、Mo、Wを有するものも、同様に単離しうる。
【0115】
ボレート類
特に、化合物11〜14および16によるボレート類は下記合成法により製造しうるが、例えば他の適切な合成法も各場合に可能である。言うまでもなく、他の三脚型リガンドも所望により類似合成法により得られる:
【0116】
ピラゾールの構築:
合成は、通常、β‐ジケトンをヒドラジンと反応させて行われる:M.B.Smith,J.March,March’s Advanced Organic Chemistry,Wiley,New York,5th edition,1193
【0117】
キレートリガンドの構築:
第一変法によると、合成は、例えばS.Trofimenko,J.Am.Chem.Soc.,89(1967)3170で記載されているように、ピラゾールをKBHと反応させることにより行われる。
【0118】
一方、キレートリガンドは、ホウ酸トリメチルエステルおよびグリニャール化合物をイソボロニン酸へ反応させ、次いでそれをピラゾールおよびピラゾレートと反応させることにより、多段階合成プロセスで得られる:F.R.Bean,J.R.Johnson,J.Am.Chem.Soc.,54(1932)4415;E.Khotinsky,M.Melamed,Chem.Ber.,42(1909)3090;H.R.Snyder,J.A.Kuck,J.R.Johnson,J.Am.Chem.Soc.,60(1938)105;D.L.Reger,M.E.Tarquini,Inorg.Chem.,21(1982)840
【0119】
本発明に従い用いられる金属錯体の構築は、例えば:S.Trofimenko,J.Am.Chem.Soc.,88(1966)1842;C.A.Kilner,E.J.L.McInnes,M.A.Leech,G.S.Beddard,J.A.K.Howard,F.E.Mabbs,D.Collison,A.J.Bridgeman,M.A.Halcrow,Dalton Trans.(2004)236-43;S.Trofimenko:Scorpionates:The Coordination Chemistry of Polypyrazolylborate Ligands,Imperial College Press,London 1999;S.Trofimenko,Chem.Rev.,93(1993)943;S.Trofimenko,Chem.Rev.,72(1972)497;S.Trofimenko,J.Am.Chem.Soc.,89(1967)3170;S.Trofimenko,J.Am.Chem.Soc.,89(1967)6288;A.Paulo,J.D.G.Correia,M.P.C.Campello,I.Santos,Polyhedron,23(2004)331-60;S.Trofimenko,Polyhedron,23(2004)197-203で記載されている。
【0120】
ホウ素の代わりに炭素架橋原子を有する対応リガンドは、C.Pettinari,A.Cingolani,G.G.Lobbia,F.Marchetti,D.Martini,M.Pellei,R.Pettinari,C.Santini,Polyhedron,23(2004)451-69に従い得られる。
【0121】
2‐イミダゾリジンチオンをベースにしたリガンドおよび錯体は、J.K.Voo,C.D.Incarvito,G.P.A.Yap,A.L.Rheingold,C.G.Riordan,Polyhedron,23(2004)405-12;H.M.Alvarez,J.M.Tanski,D.Rabinovich,Polyhedron,23(2004)395-403;C.A.Dodds,M.Jagoda,J.Reglinski,M.D.Spicer,Polyhedron,23(2004)445-50に従い得られる。
【0122】
カルボラン類
カルボラン系の構築には特別な条件を通常要する。一部の例は市販されている。
【0123】
対応合成法は、例えば、R.A.Wiersboeck,M.F.Hawthorne,J.Am.Chem.Soc.,86(1964)1642-3;J.A.Dupont,M.F.Hawthorne,J.Am.Chem.Soc.,86(1964)1643;L.J.Todd,A.R.Burke,A.R.Garber,H.T.Silverstein,B.N.Storhoff,Inorg.Chem.,9(1970)2175-9で記載されている。
【0124】
対応金属錯体の合成は、例えば、J.Bould,John D.Kennedy,G.Ferguson,F.T.Deeney,G.M.O’Riordan,T.R.Spalding,Dalton Trans.(2003)4557-64で記載されていた。
【0125】
トリアザシクロアルカン類
窒素原子の置換基は、親物質のトリスアンモニウムブロミドから、アルキル化またはアリール化により単離しうる。次いで、それらは金属前駆体と反応させられる。例えば:R.Zhou,C.Wang,Y.Hu,T.C.Flood,Organometallics,16(1997)434;L.Wang,C.Wang,R.Bau,T.C.Flood,Organometallics,15(1996)491;L.Wang,J.R.Sowa Jr.,C.Wang,R.S.Lu,P.G.Gasman,T.C.Flood,Organometallics,15(1996)4240;S.M.Yang,M.C.W.Chan,K.K.Cheung,C.M.Che,S.M.Peng,Organometallics,16(1997)2819;S.M.Yang,W.C.Cheng,S.M.Peng,K.K.Cheung,C.M.Che,Dalton Trans.(1995)2955;A.L.Gott,P.C.McGowan,T.J.Podesta,C.W.Tate,Inorg.Chim.Acta,357(2004)689-98参照。
【0126】
三脚型リガンド
三脚型リガンドクラスの化合物もその広い多様性で特徴付けられる。本発明に従い用いられる化合物に関する一部の合成法が、以下で記載されていた:
【0127】
特にカルベンドナー原子を有する、カルベンベースリガンド:H.Nakai,Y.Tang,P.Gantzel,K.Meyer,Chem.Comm.(2003)24-5;X.Hu,I.Castro-Rodriguez,K.Meyer,J.Am.Chem.Soc.,125(2003)12237-45;U.Kernbach,M.Ramm,P.Luger,W.P.Fehlhammer,Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.,35(1996)310-2
【0128】
特にNドナー原子を有する、窒素ベースリガンド:T.Ruther,N.Braussaud,K.J.Cavell,Organometallics,20(2001)1247-50;L.Peters,N.Burzlaff,Polyhedron,23(2004)245-51;V.V.Karambelkar,R.C.diTargiani,C.D.Incarvito,L.N.Zakharov,A.L.Rheingold,C.L.Stern,D.P.Goldberg,Polyhedron,23(2004)471-80;D.L.Reger,J.R.Gardiner,M.D.Smith,Polyhedron,23(2004)291-9;M.Scarpellini,J.C.Toledo Jr.,A.Neves,J.Ellena,E.E.Castellano,D.W.Franco,Inorg.Chim.Acta,357(2004)707-15
【0129】
特にPドナー原子を有する、リンベースリガンド:H.A.Mayer,W.C.Kaska,Chem.Rev.,94(1994)1239;B.C.Janssen,A.Asam,G.Huttner,V.Sernau,L.Zsolnai,Chem.Ber.,127(1994)501;H.Heidel,J.Scherer,A.Asam,G.Huttner,V.Sernau,L.Zsolnai,Chem.Ber.,127(1994)501;H.Heidel,J.Scherer,A.Asam,G.Huttner,O.Walter,L.Zsolnai,Chem.Ber.,128(1995)293;S.Beyreuther,J.Hunger,G.Huttner,S.Mann,L.Zsolnai,Chem.Ber.,129(1996)745;J.C.Thomas,J.C.Peters,Polyhedron,23(2004)489-97
【0130】
特にSドナー原子を有する、イオウベースリガンド:H.M.Alvarez,J.M.Tanski,D.Rabinovich,Polyhedron,23(2004)395-403
【0131】
本発明に従い用いうるメタロトリホスリガンドの製造は:O.Kuhl,S.Blaurock,J.Sieler E.Hey-Hawkins,Polyhedron,20(2001)2171-7;G.S.Ferguson,P.T.Wolczanski,L.Parkanyi,M.C.Zonneville,Organometallics,7(1988)1967;S.M.Baxter,G.S.Ferguson,P.T.Wolczanski,J.Am.Chem.Soc.,110(1988)4231で記載されていた。
【0132】
フラーレン類
一般的に、シクロペンタジエニルリガンドと同様に行えるが、それに限定されない。この目的のため、金属化種が金属前駆体と反応させうる。例えば:L.A.Rivera-Rivera,G.Crespo-Roman,D.Acevedo-Acevedo,Y.Ocasio-Delgado,J.E.Cortes-Figueroa,Inorg.Chim.Acta,357(2004)881-7参照。
【0133】
ハサミ型リガンド
本発明の金属錯体で用いうるハサミ型リガンドの合成に関しては、例えば:A.M.Magill,D.S.McGuinness,K.J.Cavell,G.J.P.Britovsek,V.C.Gibson,A.J.P.White,D.J.Williams,A.H.White,B.W.Skelton,J.Organomet.Chem.,617-8(2001)546-60参照。
【0134】
カルベンベースハサミ型リガンド:該リガンド系は2,6‐ジブロモピリジンおよびN‐置換イミダゾールから高温合成により合成しうる:R.S.Simons,P.Custer,C.A.Tessier,W.J.Youngs,Organometallics,22(2003)1979-82;J.A.Loch,M.Albrecht,E.Peris,J.Mata,J.W.Faller,R.H.Crabtree,Organometallics,21(2002)700;M.Poyatos,J.A.Mata,E.Falomir,R.H.Crabtree,E.Peris,Organometallics,22(2003)1110-4;A.A.D.Tulloch,A.A.Danopoulos,S.Winston,S.Kleinhenz,G.Eastham,Dalton Trans.(2000)4499;A.A.Danopoulos,A.A.D.Tulloch,S.Winston,G.Eastham,M.B.Hursthouse,Dalton Trans.(2003)1009-15
【0135】
特にPドナー原子を有する、リンベースハサミ型リガンドは、例えばW.V.Dahlhoff,S.M.Nelson,J.Chem.Soc.(A)(1971)2184;L.Barloy,S.Y.Ku,J.A.Osborn,A.DeCian,J.Fisher,Polyhedron,16(1997)291;B.D.Steffey,A.Miedamer,M.L.Maciejewski-Farmer,P.R.Bernatis,A.M.Herring,V.S.Allured,V.Caperos,D.L.DuBois,Organometallics,13(1994)4844;C.Hahn,A.Vitagliano,F.Giordano,R.Taube,Organometallics,17(1998)2060;G.Vasapollo,C.F.Nobile,A.Sacco,J.Organomet.Chem.,296(1985)435-41;G.Jin,H.M.Lee,I.D.William,J.Organomet.Chem.,534(1997)173;G.Jin,H.M.Lee,H.P.Xin,I.D.William,Organometallics,15(1996)5453;T.Karlen,P.Dani,D.M.Grove,P.Steenwinkel,G.Van Koten,Organometallics,15(1996)5687に従い、二級ホスファニドとの塩複分解により、α,α′‐キシレン‐またはルチジンジハライドから単離しうる。
【0136】
二座リガンド
本発明に従い用いうる、カルベンドナー原子を有したビスカルベン類は、M.Poyatos,M.Sanau,E.Peris,Inorg.Chem.,42(2003)2572-6に従い製造しうる。合成は既に上記された文献の引用どおりである。
【0137】
単座リガンド
合成は既に上記された文献の引用どおりである。この種のリガンドは、一部の場合で、市販されている。
【0138】
マトリックス材料
本発明において、電子輸送材料のような有機半導体用に適したn‐ドーパント、例えば、OLED、電界効果トランジスターまたは有機太陽電池のような光電子機器を含めた電子機器で通常用いられるものが記載されている。半導体は、好ましくは、本質的に電子伝導性である。
【0139】
マトリックス材料は、部分的に(>10または>25重量%)または実質的に(>50重量%または>75重量%)または完全に金属フタロシアニン錯体、Buckminsterフラーレン、所望によりポルフィリン錯体、特に金属ポルフィリン錯体、オリゴチオフェン、オリゴフェニル、オリゴフェニレン ビニレンまたはオリゴフルオレン化合物からなり、オリゴマーは、好ましくは、2〜500またはそれ以上、好ましくは2〜100または2〜50または2〜10のモノマー単位を含んでなる。オリゴマーは、>4、>6>または>10またはそれ以上のモノマー単位、特に上記範囲で、即ち、例えば4または6〜10のモノマー単位、6または10〜100のモノマー単位または10〜500のモノマー単位も含んでよい。モノマーまたはオリゴマーは置換されてもまたは非置換でもよく、上記オリゴマーからのブロックまたは混合ポリマーも存在してよい。マトリックスは、標準ポリマー層の場合のように、様々な鎖長のオリゴマーの混合物でもよい。
【0140】
マトリックス材料は、トリアリールアミン単位の化合物でも、またはスピロビフルオレン化合物でもよい。上記のマトリックス材料は、互いに組み合わせて、所望により他のマトリックス材料と組み合わせて存在してもよい。マトリックス材料は、減少したイオン化エネルギーを有する、またはマトリックス材料のイオン化エネルギーを減少させる、アルキルまたはアルコキシ残基のような電子押出置換基を有してもよい。
【0141】
マトリックス材料として用いられる金属フタロシアニン錯体またはポルフィリン錯体は、主族またはB族からの金属原子を有しうる。金属原子Meは各場合において4、5または6重に配位し、例えばオキソ(Me=O)、ジオキソ(O=Me=O)、イミン、ジイミン、ヒドロキソ、ジヒドロキソ、アミノまたはジアミノ錯体の形で存在しうるが、それらに限定されない。フタロシアニン錯体またはポルフィリン錯体は各場合において部分的に水素添加されてもよいが、メソメリー環系であれば、好ましいことに該プロセスで妨害されることはない。中心原子として、フタロシアニン錯体は、例えばマグネシウム、亜鉛、鉄、ニッケル、コバルト、マグネシウム、銅またはバナジウム酸化物(=VO)を含有しうる。同一または他の金属原子、またはオキソ金属原子が、ポルフィリン錯体の場合に存在してもよい。
【0142】
以下のものも、n‐ドープ可能なマトリックス材料として用いうる:キノリナト錯体、例えばアルミニウムまたは主族からの他の金属のもの;キノリナトリガンドが置換されていることも可能である。特に、マトリックス材料はトリス(8‐ヒドロキシキノリナト)アルミニウムである。Oおよび/またはNドナー原子を有する他のアルミニウム錯体も、所望により用いうる。
【化16】

BPhen=バソフェナントロリン
トリス(8‐ヒドロキシキノリナト)アルミニウム (4,7‐ジフェニル‐1,10‐
フェナントロリン)C2416
【化17】

ビス(2‐メチル‐8‐キノリノラト)‐4‐(フェニルフェノラト)アルミニウム(III)
【0143】
キノリナト錯体は例えば1、2または3つのキノリナトリガンドを含有してもよく、例えば上記Al錯体のように、他のリガンドは好ましくはOおよび/またはNドナー原子で中心原子へ錯化している。
【0144】
フェナントロリン類も、置換されてまたは非置換で、特にアリール置換、例えばフェニルまたはナフチル置換されて、マトリックス材料として用いうる。特に、Bphenがマトリックス材料として用いうる。
【0145】
ヘテロ芳香族化合物、例えば、特にトリアゾール類、所望によりピロール類、イミダゾール類、トリアゾール類、ピリジン類、ピリミジン類、ピリダジン類なども、マトリックス材料として用いうる。ヘテロ芳香族化合物は、好ましくは置換され、特にアリール置換、例えばフェニルまたはナフチル置換されている。特に、下記のトリアゾールがマトリックス材料として用いうる。
【化18】

3‐(4‐ビフェニリル)‐4‐フェニル‐5‐tert‐ブチルフェニル‐1,2,4‐トリアゾール
3027
【0146】
用いられるマトリックス材料は、好ましくは、金属フタロシアニン錯体、特にZnPc、ポルフィリン錯体またはBuckminsterフラーレン、特にフラーレンC60から完全になる。
【0147】
言うまでもなく、上記のマトリックス材料は、本発明の関係で、互いにまたは他の材料と混合して用いてもよい。言うまでもなく、他の適切な有機マトリックス材料も、それらが半導性を有していれば用いうる。
【0148】
ドーピング濃度
本発明は更に、n‐ドーパントとして本発明の金属錯体を含有した有機半導体に関する。ドーパントは、好ましくは、マトリックス分子またはポリマーマトリックス分子のモノマー単位に対して≦1:1のドーピング濃度で、好ましくは1:2以下、特に好ましくは1:5以下または1:10以下のドーピング濃度で存在している。ドーピング濃度は、1:1〜1:100,000以下の範囲内、特に1:5〜10,000または1:10〜1,000の範囲内、例えば1:10〜1:100または1:25〜1:50の範囲内であるが、それに限定されない。
【0149】
ドーピングの実施
本発明に従い用いられるn‐ドーパントでの各マトリックス材料のドーピングは、下記プロセスの1つまたは組合せにより行える:
a)マトリックス材料用の一原料およびドーパント用の原料で真空中混合蒸発させる
b)基板へマトリックス材料およびn‐ドーパントを連続付着させ、次いで、特に熱処理により、ドーパントを内部拡散させる
c)n‐ドーパントの溶液を用いてマトリックス層にドープし、次いで、特に熱処理により、溶媒を蒸発させる
d)表面へ塗布されたドーパントの層によりマトリックス材料の層に表面ドープする
e)マトリックス分子およびドーパントの溶液を調製し、次いで溶媒の蒸発または脱水のようにな常法によりこの溶液の層を作製する
【0150】
ドーピングは、所望により、前駆化合物からドーパントを蒸発させる形をとってもよく、これはドーパントが加熱および/または照射されたときに放出される。前駆化合物として、ドーパントが放出されたときにCO、窒素などを開裂するカルボニル化合物、二窒素化合物などを用いることが各場合に可能であるが、塩、例えばハライドなどのような他の適切な前駆体も用いうる。照射は、各場合に電磁線、特に可視光、UV光またはIR光、例えばレーザー光により、または他のタイプの光線により行える。照射は蒸発に必要な熱を実質的にすべて発することができる;例えば、励起状態へ移すことで、錯体の解離により化合物の蒸発を促すために、化合物、前駆体または化合物錯体、例えば電荷移動錯体の特定帯域へ標的照射することも可能である。しかしながら、解離せずに所定条件下で蒸発しうるほど、または基板へ塗布しうるほど、特に錯体が十分に安定でもよい。言うまでもなく、ドーピングを行うために適した他のプロセスも用いうる。
【0151】
様々な用途に適した、本発明による有機半導体のn‐ドープ層は、こうして作製しうる。
【0152】
半導層
本発明に従い用いられる金属錯体で、所望により形状が直線的でもよい半導層、例えば導電路、接点などが作製しうる。金属錯体は、この場合に、マトリックス材料として作用しうる他の化合物と一緒に、n‐ドーパントとして用いられ、ドーピング比は1:1以下である。本発明に従い用いられる金属錯体は、各場合に他の化合物または成分と共に、但し高割合で、金属錯体:化合物の比率が>1:1の比率、例えば≧2:1、≧5:1、≧10:1または≧20:1またはそれ以上の比率となるように存在しうる。他の成分は、各場合において、ドープ層を作製する際にマトリックス材料として用いうる種類の一つでもよいが、これに限定されない。本発明に従い用いられる金属錯体は、所望により、実質的に純粋な形で、例えば純粋層の形で存在してもよい。
【0153】
本発明の金属錯体を含有したまたは該金属錯体から実質的もしくは完全になる部分は、特に、有機半導体および/または無機半導体と導電的に接触してよい;例えば、この種の基板上にそれが配置しうる。
【0154】
本発明によると、上記の金属錯体は、例えば≦1:1または≦1:2の比率で、または先に説明されたように、好ましくはn‐ドーパントとして用いられる。本発明に従いn‐ドーパントとして金属錯体が用いられると、例えば、フラーレンC60がマトリックスとして用いられる場合には、室温で10−5S/cm以上、例えば10−3S/cm以上の範囲内、例えば10−1S/cmの導電率を有する半導層を得ることが可能である。フタロシアニン亜鉛がマトリックスとして用いられた場合には、10−8S/cmより高い導電率、例えば10−6S/cmが得られる。これまでは、有機ドナーでこのマトリックスにドープすることは不可能であったが、それはマトリックスの還元電位が低すぎたからである。他方、未ドープフタロシアニン亜鉛の導電率は最大で10−10S/cmである。
【0155】
言うまでもなく、本発明の金属錯体による層または構造は、各場合において、この種の1種以上の異なる錯体を含有してもよい。
【0156】
電子機器
特に層または電線路の形で配置しうる、n‐ドープ有機半導体を製造する上で、本発明の有機化合物を用いると、それらを含有した様々な電子機器がn‐ドープ有機半導体層で製造されうるため、これも本発明に包含される。本発明の目的のため、“電子機器”という用語は光電子機器も含んでいる。本発明の化合物によると、機器の電気機能的に有効な面の電気特性、例えばその導電性、発光特性などが、有利に変更させうる。n‐ドーパントとして本発明の金属錯体を用いると、例えば、ドープ層の導電性および/またはドープ層への接点の荷電キャリアの注入を改善することが可能である。
【0157】
本発明には、特に有機発光ダイオード(OLED)、有機太陽電池、有機ダイオード、とりわけ高い整流比、例えば10〜10、好ましくは10〜10または10〜10を有するもの、および本発明の中性金属錯体を用いて製造される有機電界効果トランジスターを包含する。
【0158】
電子機器では、有機マトリックス材料をベースにした、本発明によるn‐ドープ層が、以下の層構造で存在しうるが、例えば、個別層の基材またはマトリックス材料は好ましくは各場合において有機である:
M‐i‐n:M層が金属ベース接点を形成し、例えばITO、Au、Ag、Alなどである、金属‐アイソレーター‐n‐ドープ半導体。トップ接点はn‐ドープ層とオーム接点を形成し、例えばAlからなる。“i”層は未ドープ層を表わす。
【0159】
n‐i‐M:M‐i‐n構造に関して記載されたことが当てはまる;しかしながら、後者との差異は、オーム接点が基板上に設けられていることである。
【0160】
p‐i‐n:p‐ドープ半導体‐アイソレーター‐n‐ドープ半導体;
n‐i‐p:n‐ドープ半導体‐アイソレーター‐p‐ドープ半導体;“i”も同じく未ドープ層であり、“p”はp‐ドープ層である。接点材料はここではホール注入性である‐この場合には、ITOまたはAuの層または接点が、例えばp側に設けられる‐または電子注入性である‐この場合には、ITO、AlまたはAgの層または接点がn側に設けられる。
【0161】
上記の構造において、i層は必要であれば省略してもよく、その結果としてp‐nまたはn‐p転移の層連続が得られる。
【0162】
しかしながら、本発明のドーパントの使用は上記の態様に限定されない;特に、層構造は追加の適切な層を導入することにより補充または修正しうる。特に、この種の層連続のOLEDは、各場合において、本発明のn‐ドーパントを用いて、特にp‐i‐n構造またはそれと逆のもので構築されうる。
【0163】
本発明のn‐ドーパントの助けで、特に金属‐アイソレーター‐n‐ドープ半導体タイプ(m‐i‐n)‐または所望によりp‐i‐nタイプ‐の有機ダイオードが、例えばフタロシアニン亜鉛をベースとして、製造しうる。これらのダイオードは10以上の整流比を示す。加えて、本発明のドーパントを用いると、p‐n転移の電子機器が製造され、その際に各場合においてn‐ドープ側と同様の半導体がpで用いられ(ホモ‐p‐n転移)、本発明による金属錯体がn‐ドープ半導体に用いられる。この種の部品も本発明に包含される。
【0164】
金属錯体は電子機器で本発明に従い用いられるが、層、導電路、ポイント接点などでも、後者が他の部品に勝るならば、例えば純粋または実質的に純粋な形で注入層として用いられる。
【0165】
実施態様
本発明による電子に富む中性金属錯体が提供されるが、ここで金属錯体は各場合において例えば以下である:
MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、M‐(ターピリジン);MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、Mhpp;MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWであり、互いに同一であるかまたは互いに異なる、C1〜C10のアルキルを各場合に有する、M(アルキルCOO)F;MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、M(グアニジネート);MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、M(ホルムアミジネート);MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、M(カルボキシレート);MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、M(ハライド);MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、ビス(η‐シクロペンタジエニル)‐M;MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、ベンゼン‐M‐(η‐シクロペンタジエニル);リガンドが化合物20〜37のうち1つであり、E=‐C‐、‐Ge‐または‐Si‐で、少なくとも1つのR、2以上または全部のRが好ましくは各場合に水素、メチルまたはエチルである、Fe(リガンド)。Feの代わりに、中心原子は特に各場合でCr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWでもよい。加えて、化合物21、22、23、24が特に用いられ、ここでRは水素またはメチルである。Eはこの場合で特に‐C‐または‐Ge‐であり、その結果として対応ビスカルベンリガンドまたはビスゲルミレンリガンドが存在する。言うまでもなく、所望によりリガンドの水素原子のうち1以上は、アルキル残基を含めた他の残基で置き換えてもよい。
【0166】
例えば、化合物11〜14、16のうち1つによる金属錯体が製造されることも可能であり、ここでRおよびR″は各場合にメチルで、Eは各場合にSである。中心原子はFeである。一方、中心原子は各場合においてCr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである。
【0167】
製造されると、金属錯体はマトリックス材料と同時に蒸発される。本態様によると、マトリックス材料は各場合においてフタロシアニン亜鉛またはフラーレンC60である。真空蒸発ユニットで基板へ付着される層が1:10のn‐ドーパント対マトリックス材料のドーピング比を有するように、n‐ドーパントおよびマトリックス材料が蒸発させられる。
【0168】
本発明のn‐ドーパントで各場合にドープされた有機半導体の層は、ガラス基板上に配置されたITO層(酸化インジウムスズ)へ適用される。本発明のn‐ドープ有機半導体層が適用された後、有機発光ダイオードを製造するために、例えば適切な金属の蒸着により、金属カソードが適用される。言うまでもなく、有機発光ダイオードはいわゆる逆転層構造を有してもよく、層の順序は:ガラス基板‐金属カソード‐n‐ドープ有機層‐透明導電トップ層(例えばITO)である。言うまでもなく、具体的用途に応じて、別な層が上記の個別層の間に設けられてもよい。
【実施例】
【0169】
例1:
中性コバルト錯体 コバルト‐ビス(フェニレン‐1‐イル‐2,6‐ジピリジル)(リガンド:化合物29)を常法で製造した。
【0170】
中性錯体を保護ガス下でアンプル中に密封した。次いで酸素を除去しながら、蒸発源をこの材料で満たした。ドーパント:マトリックス材料ドーピング比1:10のドープ層を、マトリックス材料としてZnPcで、マトリックスおよびドーパントの混合蒸発により作製した。こうしてドープされたZnPc層を有する薄膜電界効果トランジスターでは、正ゲート電圧でソースドレイン電流の増加がみられた。これは、ZnPc層で、主用電荷キャリアとして電子の存在を証明している。こうして、それが確かにn‐ドープ半導体であることが示された。
【0171】
同じことが、必要な変更を加えた上で、ルテニウム錯体 Ru‐ビス(ピリジン‐2,6‐ジ(1H2H‐N‐イミダゾリル))(リガンド:E=‐C‐の化合物23)にも当てはまる。
【0172】
例2:
亜鉛フタロシアニン(ZnPc)の層を金属錯体〔Cr(hpp)〕でドープした。ドープ層を高真空下でZnPcマトリックスおよびドーパントCr(hpp)の混合蒸発により作製した。マトリックス中ドーパントの濃度は1.9mol%であった。ドーパントの昇華温度は160℃であった。ドープ層は4×10−6S/cmの高導電率を示した。70℃で該層を硬化させることにより、導電率を6×10−5S/cmに上げることができた。その導電率の活性化エネルギーは0.27eVであった。
【0173】
例3:
フラーレンC60の層を金属錯体コバルトセンでドープした。まず最初に、フラーレンの純粋層を高真空下で昇華により作製した。その層は1×10−7S/cmの低導電率を有していた。次いで、ドープ層を容器へ入れたが、そこにはコバルトセンで満たされた蒸発器が存在していた。容器を窒素で満たした。コバルトセンをその容器中で加熱して昇華させた。フラーレン層の表面上に付着したコバルトセンは、そこで薄い高ドープ層の形成に至った。該層で測定されたクロス電流は、該プロセスで3桁の大きさに増加した。したがって、高ドープ層の導電率は少なくとも1×10−4S/cmであった。次いで、こうしてドープされたフラーレン層を真空室へ戻した。そこでも、少なくとも2×10−5S/cmの高導電率が測定され続けた。こうして、観察された導電率の増加が確かにフラーレンのドーピングのせいであることが証明されたが、それは形成された純粋な中性コバルトセンの層が高真空下でそれらの蒸気圧のせいで不安定なためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属錯体が有機半導体マトリックス材料へのn‐ドーパントとなる、電気特性を変えるために有機半導体マトリックス材料にドープするためのドーパントとしての金属錯体の使用、または電気機能的に有効な部分が金属錯体を含有した電子機器を製造するための金属錯体の使用であって、
金属錯体が中性で電子に富む金属錯体であることを特徴とする使用。
【請求項2】
中心原子が中性または荷電遷移金属原子である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
錯体の少なくとも1つの中心原子が16以上の価電子の形式数を有し、および/または錯体が多核で、錯体の2金属中心原子間で少なくとも1つの金属‐金属結合を有している、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
中心原子に結合するリガンドの少なくとも1つのドナー原子が、六員環の成分としての芳香族窒素原子とは異なる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
中心原子に結合するドナー原子のうち少なくとも1つ、それ以上または全部が、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、S、Se、Teからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
少なくとも1つのリガンドが中心原子とπ錯体を形成している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
金属錯体が多核金属錯体であり、そこでは、リガンドの少なくとも1つ、それ以上または全部が、各場合において、少なくとも2つの金属中心原子に配位している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
錯体のリガンドの少なくとも1つまたは全部が、ハライド類、カルボキシレート類、ホルムアミジネート類、ピリミド‐ピリミジン類,hppおよびグアニジネート類の群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
少なくとも1つのリガンドが、ボレート類、カルボラン類、トリアザシクロアルカン類、トリアザシクロアルケン類、ピロール類、チオフェン類、ピラゾール類、イミダゾール類、チアゾール類、オキサゾール類またはフラーレン類の化合物の群に属する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
少なくとも1つのボレートリガンドが下記化合物11、12、13、14、16のうち1つであり、ここでR、R′およびR″が、互いに独立して、水素を含むいずれかの置換基であり、R、R′およびR″が各場合において同一でもまたは異なってもよく、Eが少なくとも二価の原子または原子団である:
【化1】

請求項9に記載の使用。
【請求項11】
少なくとも1つの金属中心原子に結合している少なくとも1つのドナー原子が、カルバニオン‐炭素原子、またはリガンドに関しては、C(カルベン)、Si(シリレン)、Ge(ゲルミレン)、Sn、Pbの群から選択される形式上二価の原子である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
各場合に芳香または非芳香環の成分であり、ドナー原子を有する環がN、P、As、S、SeまたはTeである別のヘテロ原子を有した、カルバニオン‐炭素原子として、またはリガンドに関しては、C(カルベン)、Si(シリレン)、Ge(ゲルミレン)の群から選択される形式上二価の原子として、少なくとも1つの金属中心原子に結合した少なくとも1または2つのドナー原子を、リガンドが有している、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
少なくとも1つのリガンドが、式27、27a、28、28a、45、45a、46または46aの化合物である:
【化2】

上記において、Rは、各場合に互いに独立して、水素を含むいずれかの置換基であり、Xはドナーとして作用しうるヘテロ原子または炭素原子であり、Xは少なくとも二価の原子または原子団であり、ここで1または2つのXは所望により欠いてもよく、ZおよびYは各場合にドナーとして作用しうる炭素またはヘテロ原子であり、ここでZおよびYと2つのY原子は各場合において互いに同一でもまたは互いに異なってもよい、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
少なくとも1つのリガンドが、下記化合物20〜26、29〜37のうち1つである:
【化3】

上記において、Rは、各場合に互いに独立して、水素を含むいずれかの置換基であり、EはグループC、Si、Ge、Sn、Pbから選択される原子であり、各場合にP、AsまたはSbが、互いに独立して、Nの代わりに存在してもよく、SeまたはTeが、各場合に互いに独立して、Sの代わりに存在してもよい、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
少なくとも1つのリガンドが、下記化合物39〜44、47〜56のうち1つである:
【化4】

上記において、Rは、各場合に互いに独立して、水素を含むいずれかの置換基であり、RおよびR′は同一でもまたは異なってもよく、EはC、Si、Ge、Sn、Pbの群から選択される原子であり、Xはドナーとして作用しうるヘテロ原子または炭素原子であり、各場合に互いに独立して、P、AsまたはSbがNの代わりに存在してもよく、SeまたはTeが、各場合に互いに独立して、Sの代わりに存在してもよい、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
EがC(カルベン)、Si(シリレン)、Ge(ゲルミレン)の群から選択される、請求項14または15に記載の使用。
【請求項17】
少なくとも1つのリガンドが、下記化合物59〜64のうち1つである:
【化5】

上記において、Rは、各場合に互いに独立して、水素を含むいずれかの置換基であり、EはC、Si、Ge、Sn、Pbの群から選択される原子であり、Xはドナーとして作用しうるヘテロ原子または炭素原子であり、各場合にP、AsまたはSbが、各場合に互いに独立して、Nの代わりに存在してもよく、SeまたはTeが、各場合に互いに独立して、Sの代わりに存在してもよい、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
少なくとも1つのリガンドが化合物19、38、57または58のうち1つであり、ここでRは、各場合に互いに独立して、水素を含むいずれかの置換基であり、Xはドナーとして作用しうるヘテロ原子または炭素原子であり、各場合にP、AsまたはSbが、各場合に互いに独立して、Nの代わりに用いられてもよい、請求項1〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
ドナー原子を有する環のうち少なくとも1つ、それ以上または全部が、C2‐20の置換または非置換アルキル置換基を少なくとも1以上有している、請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
少なくとも1つのリガンドが、下記一般構造を有する三脚型リガンドである:
【化6】

上記において、RはHを含むいずれかの置換基であり、ここでRは構造配列‐X‐Yと同一でもよく、Xはヘテロ原子含有または非含有の少なくとも二価の原子または原子団を表わし、ここでXは各場合に同一でもまたは異なってもよく、Yはドナーとして作用しうるヘテロ原子または炭素原子であり、ここでYは同一でもまたは異なってもよく、環の一部でもよく、ここでZは、三脚型リガンドの中心原子として、金属原子を含むいずれかの原子である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
Yが、グループC、N、P、S、Se、Ge、Snからの原子である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
錯体が:MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、Mhpp;MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWであり、互いに同一であるかまたは互いに異なる、C1〜C10のアルキルを各場合に有する、M(アルキルCOO)F;MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、M(グアニジネート);MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、M(ホルムアミジネート);MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、M(カルボキシレート);MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、M(ハライド);MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、ビス(η‐シクロペンタジエニル)M;MがCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、MoまたはWである、ベンゼン‐M‐(η‐シクロペンタジエニル)であり、所望によりリガンドの水素原子のうち1以上が、アルキル残基を含めた他の残基で置き換えうる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
金属錯体が気相中で6eV未満のイオン化電位を有するか、または金属錯体が≦−0.09Vのフェロセン/フェロセニウム(Fe/Fe+)に対する酸化電位(E1/2)oxを有している、請求項1〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
基板に配置された電気接触層または電線路の形をとる、請求項1〜23に記載された金属錯体を用いて製造された半導体。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれか一項に記載された1種以上の中性金属錯体が、n‐ドーパントとして用いられることで特徴付けられる、少なくとも1種の有機マトリックス化合物およびn‐ドーパントを含有した有機半導体。
【請求項26】
ドーパント対マトリックス分子のモルドーピング比またはドーパント対ポリマーマトリックス分子のモノマー単位のドーピング比が、1:1〜1:100,000である、請求項25に記載の有機半導体。
【請求項27】
請求項1〜23のいずれか一項に記載された少なくとも1種以上の中性金属錯体が、n‐ドーパントとして用いられることで特徴付けられる、有機マトリックス分子およびn‐ドーパントを含有した有機半導体の製造方法。
【請求項28】
電気的に有効な部分が、請求項1〜23のいずれか一項に記載された中性金属錯体のうち少なくとも1種以上を用いて製造されることで特徴付けられる、電気機能的に有効な部分を有する電子機器。
【請求項29】
電気的に有効な部分が、請求項1〜23のいずれか一項に記載された中性金属錯体のうち少なくとも1種以上を用いて、半導体マトリックス材料の電気特性を変えるために、少なくとも1種のn‐ドーパントでドープされた有機半導体マトリックス材料を有していることで特徴付けられる、請求項28に記載の電子機器。
【請求項30】
請求項1〜23のいずれか一項に記載された少なくとも1種以上の中性金属錯体でドープされた半導体有機材料が、電子機器の電気的有効部分を構成している、有機発光ダイオード(OLED)、光電池、有機太陽電池、有機ダイオードまたは有機電界効果トランジスターの形をとる、請求項29または30に記載の電子機器。
【請求項31】
【化7】

タイプ65a
上記において
‐構造要素a〜eは:a=‐CR‐、b=‐CR‐、c=‐CR‐、d=‐CR‐およびe=‐CR10‐を意味し、ここでR、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、同時にまたは互いに独立して、H、C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐ORである;好ましくは、R、R、R、R、R=HおよびR、R、R、R、R10=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐OR、または
‐所望により、aまたはbまたはeまたはdはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐cにおいて、CはSiで置き換えられる、
‐式中、結合b‐dおよびc‐eまたはb‐dおよびa‐cは、同時にまたは互いに独立して、不飽和でもよい、
‐式中、結合b‐d、a‐cおよびc‐eは、同時にまたは互いに独立して、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の一部でもよい、または
‐式中、結合b‐d、a‐cおよびc‐eは、同時にまたは互いに独立して、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族または縮合芳香族環系の一部でもよい、
‐式中、原子Eは、好ましくはグループN、P、As、Sbから選択される、主族からの元素であるが、これらに限定されない、
‐式中、構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の成分でもよい、または
‐構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族環系の成分でもよい、
‐式中、金属Mは遷移金属、好ましくはWまたはMoである;
【化8】

タイプ65b
上記において
‐構造要素a〜fは:a=‐CR‐、b=‐CR‐、c=‐CR‐、d=‐CR‐、e=‐CR10‐およびf=‐CR1112‐を意味し、ここでR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12は、水素、C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐ORである;好ましくは、R、R、R、R、R、R11=HおよびR、R、R、R、R10、R12=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐OR;R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12=Hの構造65bはこれから除外される、または
‐構造要素cおよび/またはdにおいて、CはSiで置き換えうる、または
‐所望により、aまたはbまたはeまたはfはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐所望により、aおよびfまたはbおよびeはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、
‐式中、結合a‐c、b‐d、c‐eおよびd‐fは、但し同時にa‐cおよびc‐e、同時にb‐dおよびd‐fであることはないが、不飽和でもよい、
‐式中、結合a‐c、b‐d、c‐eおよびd‐fは、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の一部でもよい、または
‐式中、結合a‐c、b‐d、c‐eおよびd‐fは、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族または縮合芳香族環系の一部でもよい、
‐式中、原子Eは、好ましくはグループN、P、As、Sbから選択される、主族からの元素であるが、これらに限定されない、
‐式中、構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の成分でもよい、または
‐構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族環系の成分でもよい、
‐式中、金属Mは遷移金属、好ましくはWまたはMoである;
【化9】

タイプ65c
上記において
‐構造要素a〜fは:a=‐CR‐、b=‐CR‐、c=‐CR‐、d=‐CR‐、e=‐CR10‐およびf=‐CR1112‐を意味し、ここでR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12は、同時にまたは互いに独立して、H、C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐ORである;好ましくは、R、R、R、R、R、R11=HおよびR、R、R、R、R10、R12=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐OR、または
‐cまたはeにおいて、CはSiで置き換えうる、または
‐所望により、aまたはbまたはdまたはfはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐所望により、aおよびdまたはbおよびfはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、
‐式中、結合a‐c、c‐e、e‐fおよびb‐dは、但し同時にa‐c、c‐eおよびe‐f、同時にa‐cおよびc‐e、同時にc‐eおよびe‐fであることはないが、不飽和でもよい、
‐式中、結合a‐c、c‐e、e‐fおよびb‐dは、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の一部でもよい、または
‐結合a‐c、c‐e、e‐fおよびb‐dは、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族または縮合芳香族環系の一部でもよい、
‐式中、原子Eは、好ましくはグループN、P、As、Sbから選択される、主族からの元素であるが、これらに限定されない、
‐式中、構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の成分でもよい、または
‐構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族環系の成分でもよい、
‐式中、金属Mは遷移金属、好ましくはWまたはMoである;または
【化10】

タイプ65d
上記において
‐構造要素a〜gは:a=‐CR‐、b=‐CR‐、c=‐CR‐、d=‐CR‐、e=‐CR10‐、f=‐CR1112‐およびg=‐CR1314‐を意味し、ここでR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、同時にまたは互いに独立して、H、C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐ORである;好ましくは、R、R、R、R、R、R11、R13=HおよびR、R、R、R、R10、R12、R14=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐OR、または
‐c、dおよびfにおいて、但し同時にdおよびfであることはないが、CはSiで置き換えうる、または
‐所望により、aまたはbまたはeまたはgはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐所望により、aおよびgまたはbおよびeはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、
‐式中、結合a‐c、c‐e、b‐d、d‐fおよびf‐gは、但し同時にa‐cおよびc‐e、同時にb‐d、d‐fおよびf‐g、同時にb‐dおよびd‐f、同時にd‐fおよびf‐gであることはないが、不飽和でもよい、
‐式中、結合a‐c、c‐e、b‐d、d‐fおよびf‐gは、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の一部でもよい、または
‐結合a‐c、c‐e、b‐d、d‐fおよびf‐gは、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族または縮合芳香族環系の一部でもよい、
‐式中、原子Eは、好ましくはグループN、P、As、Sbから選択される、主族からの元素であるが、これらに限定されない、
‐式中、構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の成分でもよい、または
‐構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族環系の成分でもよい、
‐式中、金属Mは遷移金属、好ましくはWまたはMoである;
の群から選択される構造を有している、有機半導体マトリックス材料にドープするためのドーパント。
【請求項32】
(a)有機溶媒中、還元剤の存在下で、中心原子Mの無機金属塩を請求項38に記載されたリガンドの遊離塩基と反応させ、加熱還流し;
(b)反応および乾燥後に得られたドーパント生成物を単離する;
ステップからなる、請求項31に記載されたドーパントの製造方法。
【請求項33】
溶媒が、エーテル、芳香族溶媒またはそれらの混合液である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
エーテルが、ジアルキルエーテル、環状エーテル、環状および/または開鎖ポリエーテルである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
還元剤が塩基金属である、請求項32〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
塩基金属がナトリウム、カリウムおよび/またはセシウムである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
単離が、結晶化、沈殿および/または昇華により行われる、請求項32〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
【化11】

タイプ65a′
上記において
‐構造要素a〜eは:a=‐CR‐、b=‐CR‐、c=‐CR‐、d=‐CR‐およびe=‐CR10‐を意味し、ここでR、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、同時にまたは互いに独立して、H、C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐ORである;好ましくは、R、R、R、R、R=HおよびR、R、R、R、R10=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐OR;ここでR〜R10=Hの構造65a′はこれから除外され、RおよびR=アリールの構造65a′はこれから除外され、ここで構造65a′においてRおよびR10はいつもHである、′または
‐所望により、aまたはbまたはeまたはdはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐所望により、aおよびdまたはbおよびeはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐cにおいて、CはSiで置き換えられる、
‐式中、結合b‐dおよびc‐eまたはb‐dおよびa‐cは、同時にまたは互いに独立して、不飽和でもよく、結合b‐d、a‐cおよびc‐eは、同時にまたは互いに独立して、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の一部でもよいが、c‐e=シクロヘキシルおよびシクロヘキセニルのリガンドはこれから除外される、または
‐式中、結合b‐d、a‐cおよびc‐eは、同時にまたは互いに独立して、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族または縮合芳香族環系の一部でもよいが、b‐d、a‐cおよびc‐eがベンゼンの成分であるリガンドはこれから除外される、
‐式中、原子Eは、好ましくはグループN、P、As、Sbから選択される、主族からの元素であるが、これらに限定されない、
‐式中、構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の成分でもよい、または
‐構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族環系の成分でもよい、
‐式中、金属Mは遷移金属、好ましくはWまたはMoである;
【化12】

タイプ65b′
上記において
‐構造要素a〜fは:a=‐CR‐、b=‐CR‐、c=‐CR‐、d=‐CR‐、e=‐CR10‐およびf=‐CR1112‐を意味し、ここでR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12は、水素、C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐ORである;好ましくは、R、R、R、R、R、R11=HおよびR、R、R、R、R10、R12=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐OR;R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12=Hの構造65bはこれから除外され、R、R10、R11およびR12=フェニル、メチル、アリル、RSCH‐およびROCH‐のリガンドはこれから除外され、R=フェニル、R10=H、R11=フェニル、R12=Hのリガンドはこれから除外され、R=フェニルのリガンドはこれから除外され、R、R、R、R=フェノキシのリガンドはこれから除外される、または
‐構造要素cおよび/またはdにおいて、CはSiで置き換えうる、または
‐所望により、aまたはbまたはeまたはfはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐所望により、aおよびfまたはbおよびeはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、
‐式中、結合a‐c、b‐d、c‐eおよびd‐fは、同時にa‐cおよびc‐e、同時にb‐dおよびd‐fであることはないが、不飽和でもよい、
‐式中、結合a‐c、b‐d、c‐eおよびd‐fは、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の一部でもよい、または
‐式中、結合a‐c、b‐d、c‐eおよびd‐fは、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族または縮合芳香族環系の一部でもよいが、a‐c、b‐d、c‐eおよびd‐fがベンゼンの成分であるリガンドはこれから除外される、
‐式中、原子Eは、好ましくはグループN、P、As、Sbから選択される、主族からの元素であるが、これらに限定されない、
‐式中、構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の成分でもよいが、a‐E‐b=シクロペンチルおよびピラニルの成分でR〜R12=アルキルのリガンドはこれから除外される、または
‐構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族環系の成分でもよい、
‐式中、金属Mは遷移金属、好ましくはWまたはMoである;
【化13】

タイプ65c′
上記において
‐構造要素a〜fは:a=‐CR‐、b=‐CR‐、c=‐CR‐、d=‐CR‐、e=‐CR10‐およびf=‐CR1112‐を意味し、ここでR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12は、同時にまたは互いに独立して、H、C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐ORである;好ましくは、R、R、R、R、R、R11=HおよびR、R、R、R、R10、R12=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐OR;R〜R12=Hのリガンドはこれから除外される、または
‐cまたはeにおいて、CはSiで置き換えうる、または
‐所望により、aまたはbまたはdまたはfはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐所望により、aおよびdまたはbおよびfはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、
‐式中、結合a‐c、c‐e、e‐fおよびb‐dは、但し同時にa‐c、c‐eおよびe‐f、同時にa‐cおよびc‐e、同時にc‐eおよびe‐fであることはないが、不飽和でもよい、
‐式中、結合a‐c、c‐e、e‐fおよびb‐dは、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の一部でもよい、または
‐結合a‐c、c‐e、e‐fおよびb‐dは、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族または縮合芳香族環系の一部でもよいが、E=Nで同時にe‐fおよび/またはb‐d=ベンゼンまたはナフタレンの一部であるリガンドはこれから除外され、E=Nで同時にR=R=フェニルのリガンドはこれから除外され、E=NでR=フェニル、ベンジルのリガンドはこれから除外される、
‐式中、原子Eは、好ましくはグループN、P、As、Sbから選択される、主族からの元素であるが、これらに限定されず、E=Nで同時に不飽和結合が1より多い七員環を有するリガンドはこれから除外される、
‐式中、構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の成分でもよい、または
‐構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族環系の成分でもよい、
‐式中、金属Mは遷移金属、好ましくはWまたはMoである;または
【化14】

タイプ65d′
上記において
‐構造要素a〜gは:a=‐CR‐、b=‐CR‐、c=‐CR‐、d=‐CR‐、e=‐CR10‐、f=‐CR1112‐およびg=‐CR1314‐を意味し、ここでR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、同時にまたは互いに独立して、H、C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐ORである;好ましくは、R、R、R、R、R、R11、R13=HおよびR、R、R、R、R10、R12、R14=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、‐NRまたは‐OR、または
‐c、dおよびfにおいて、但し同時にdおよびfであることはないが、CはSiで置き換えうる、または
‐所望により、aまたはbまたはeまたはgはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、または
‐所望により、aおよびgまたはbおよびeはNRでもよい:R=C‐C20アルキル、C‐C20シクロアルキル、C‐C20アルケニル、C‐C20アルキニル、アリール、ヘテロアリール、
‐式中、結合a‐c、c‐e、b‐d、d‐fおよびf‐gは、但し同時にa‐cおよびc‐e、同時にb‐d、d‐fおよびf‐g、同時にb‐dおよびd‐f、同時にd‐fおよびf‐gであることはないが、不飽和でもよく、但しb‐dおよびf‐gが同時に不飽和であるリガンドはこれから除外される、
‐式中、結合a‐c、c‐e、b‐d、d‐fおよびf‐gは、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の一部でもよい、または
‐結合a‐c、c‐e、b‐d、d‐fおよびf‐gは、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族または縮合芳香族環系の一部でもよいが、c‐eおよびf‐gが同時にベンゼン環の一部であるリガンドはこれから除外される、
‐式中、原子Eは、好ましくはグループB、C、N、O、Si、P、S、As、Se、Sb、Teから選択される、特に好ましくはグループS、Se、N、Pから選択される、主族からの元素であるが、これらに限定されない、
‐式中、構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、N、P、Si、Ge、Snも含有しうる飽和または不飽和環系の成分でもよい、または
‐構造要素a‐E‐bは、所望により、ヘテロ元素O、S、Se、Nも含有しうる芳香族環系の成分でもよい、
‐式中、金属Mは遷移金属、好ましくはWまたはMoである;
からなる群より選択される、金属錯体用のリガンド。
【請求項39】
請求項32〜37に記載されたドーパントの製造方法における、請求項38に記載されたリガンドの使用。

【公表番号】特表2007−526640(P2007−526640A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501110(P2007−501110)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際出願番号】PCT/DE2005/000372
【国際公開番号】WO2005/086251
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(504432747)ノバレット、アクチェンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】NOVALED AG
【Fターム(参考)】