説明

有機圧電体、超音波振動子、超音波探触子および超音波画像検出装置

【課題】本発明の目的は、圧電特性に優れかつ加工性に優れる有機圧電体および超音波振動子を提供することであり、さらに高解像度の画像が得られる超音波画像検出装置を与える超音波探触子および高解像度の画像が得られる超音波画像検出装置を提供することにある。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレタン、または一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレアであることを特徴とする有機圧電体。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送信、受信して超音波検査を行う超音波画像検出装置ならびにそれに用いられる超音波探触子、超音波振動子および有機圧電体に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探蝕子などのセンサーに用いられる圧電体としては、無機圧電体および有機圧電体が知られている。
【0003】
無機圧電体を用いた無機圧電材料としては、例えば水晶、LiNbO、LiTaO、KNbOなどの単結晶、ZnO、AlNなどの薄膜、Pb(Zr,Ti)O系などの焼結体を分極処理した無機圧電材料が知られている。
【0004】
しかしながら、これら無機材質の圧電材料は、弾性スティフネスが高く、機械的損失係数が高い、密度が高く誘電率も高いなどの性質がある。
【0005】
有機圧電体を用いた有機圧電材料としては、例えば、フッ化ビニリデンの重合体あるいは共重合体、シアン化ビニリデンの重合体あるいは共重合体を用いた有機圧電材料が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
また、蒸着重合で得られたポリ尿素膜からなる有機圧電材料(特許文献2参照)、尿素樹脂、ポリエステルなどの非フッソ系樹脂とフッ化ビニリデンの重合体などのフッソ系重合体の微粒子とを含有する有機圧電材料(特許文献3参照)などが知られている。
【0007】
有機圧電体は、無機材質の圧電体に対して、薄膜化、大面積化等の加工性に比較的優れ、任意の形状、形態の物が作ることができ、弾性率が低い、誘電率が低い等の特徴を持つため、センサーとしての使用に際しては、高感度な検出を可能とする特徴を持っている。
【0008】
他方、近年では、超音波探触子から被検体内へ送信された超音波の周波数(基本周波数)成分ではなく、その高調波周波数成分によって被検体内の内部状態の画像を形成するハーモニックイメージング(Harmonic Imaging)技術が研究、開発されている。
【0009】
このハーモニックイメージング技術は、(1)基本周波数成分のレベルに比較してサイドローブレベルが小さく、S/N比(signal to noise ratio)が良くなってコントラスト分解能が向上すること、(2)周波数が高くなることによってビーム幅が細くなって横方向分解能が向上すること、(3)近距離では音圧が小さくて音圧の変動が少ないために多重反射が抑制されること、および、(4)焦点以遠の減衰が基本波並みであり高周波を基本波とする場合に較べて深速度を大きくとれることなどの様々な利点を有しており、高精度な診断を可能としている。
【0010】
そして、有機圧電体は、高周波特性、広帯域特性を必要とする上記ハーモニックイメージング技術における圧電材料に用いられる圧電体として適している。
【0011】
また、上記のような有機圧電体の音響インピーダンスは生体のそれに近いという特徴があり、被検体が生体の場合、音響整合がとりやすいという利点を有している。
【特許文献1】2008−171935号公報
【特許文献2】2006−225565号公報
【特許文献3】2008−36202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、生体を被検体として、血流検査等の動的超音波診断を行う場合には、上記有機圧電体を用いた超音波探触子でも、受信感度が充分でなく、高解像度の画像を得ることは困難であり、また圧電材料を作製する際の加工性が不十分であり、圧電材料を作製することが難しい、などの問題があった。
【0013】
本発明の目的は、圧電特性に優れかつ加工性に優れる有機圧電体および超音波振動子を提供することであり、さらに高解像度の画像が得られる超音波画像検出装置を与える超音波探触子および高解像度の画像が得られる超音波画像検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレタン、または一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレアであることを特徴とする有機圧電体。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R、RおよびRは、炭素数2〜4であるアルキレン基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
2.1に記載の有機圧電体を含有する圧電材料と、電極とを有することを特徴とする超音波振動子。
3.前記超音波振動子が、受信用超音波振動子であることを特徴とする2に記載の超音波振動子。
4.2または3に記載の超音波振動子を具備することを特徴とする超音波探触子。
5.4に記載の超音波探触子を具備することを特徴とする超音波画像検出装置。
【0017】
また、下記の構成も好ましい手段である。
6.上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレタン、または一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレアであって、屈折率が1.65〜1.75であることを特徴とする有機圧電体。
7.前記一般式(1)のXがOまたはSであり、RおよびRがプロピレン基であることを特徴とする1に記載の有機圧電体。
8.前記一般式(2)のXがOまたはSであり、Rがプロピレン基であることを特徴とする1に記載の有機圧電体。
9.前記有機圧電体を分極処理して得られたことを特徴とする圧電材料。
10.9に記載の圧電材料と電極とを有することを特徴とする受信用超音波振動子。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記手段により、圧電特性に優れかつ加工性に優れる有機圧電体および超音波振動子が提供でき、さらに高解像度の画像が得られる超音波画像検出装置を与える受信特性に優れた超音波探触子、および高解像度の画像が得られる超音波画像検出装置が提供できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、有機圧電体であって、上記一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレタン、ポリ(チオ)ウレアあることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、特に上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレタン、または一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレアである圧電体を含有する圧電材料を用いることで、受信特性に優れた超音波振動子、超音波探触子が得られ、それにより高解像度の画像が得られる超音波画像検出装置が提供できた。
【0021】
有機圧電体とは、機械的力や歪みを加えることにより、電荷を発生する正圧電効果または、電界を加えると力や歪みを発生する逆圧電効果を有する有機物質をいう。
【0022】
〈一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレタン〉
上記一般式(1)中、R、Rは各々独立に、炭素数2〜4であるアルキレン基を表す。アルキレン基としては、直鎖のアルキレン基であっても、分岐アルキレン基であってもよいが、直鎖アルキレン基が好ましい。炭素数2〜4とは分岐している炭素も含めてアルキレン基の全ての炭素数が2〜4であることをいう。
【0023】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレタン(以下単に、本発明のポリウレタンと称する場合もある)は、炭素数2〜4である脂肪族の多価アルコールと、炭素数2〜4である脂肪族のジイソシアネートまたは炭素数2〜4である脂肪族のジチオイソシアネートとの反応により合成することができる。
【0024】
炭素数2〜4である脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。炭素数2〜4である脂肪族のジイソシアネートまたはジチオイソシアネートとしては、1,2−ジイソシアナトエタン、1,3−ジイソシアナトプロパン、1,4−ジイソシアナトブタン、1,2−ジチオイソシアナトエタン、1,3−ジチオイソシアナトプロパン、1,4−ジチオイソシアナトブタンが挙げられる。
【0025】
炭素数2〜4である脂肪族多価アルコールと、炭素数2〜4である脂肪族ジイソシアネートまたはジチオイソシアナトとの反応は、DMF溶媒中で脂肪族多価アルコールと脂肪族ジイソシアネートを等モルで、また脂肪族多価アルコールと脂肪族ジチオイソシアネートを等モル添加し、2時間から4時間撹拌することにより行われる。
【0026】
本発明のポリウレタンの分子量(質量平均分子量Mw)10,000以上であることが好ましく、さらに10,000以上、60,000以下であることが好ましく、特に20,000〜60,000であることが特に好ましい。
【0027】
質量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値である。東ソー社製高速液体クロマトグラフィーHLC−8220に東ソー社製カラムTSKgel α−M(7.8mmI.D.×30cm)を2本装填し、展開溶媒にN,N−ジメチルホルムアミドを用い、流速1.0ml/分、40℃にて行い、検出器は示差屈折率検出器として測定した値である。
【0028】
分子量の調整は、上記の反応時間を調整することにより行うことができる。
【0029】
本発明のポリウレタンの例としては、一般式(1)のXがOおよびXの各々に対して、RおよびRがエチレン基のもの、RおよびRがプロピレン基のもの、RおよびRがブチレン基のもの、Rがエチレン基でRがプロピレン基のもの、Rがエチレン基でRがブチレン基のもの、Rがプロピレン基でRがエチレン基のもの、Rがプロピレン基でRがブチレン基のもの、Rがブチレン基でRがエチレン基のもの、Rがブチレン基でRがプロピレン基のものを繰り返し単位としてポリウレタンが挙げられる。
【0030】
これらの中でも特に、XがOまたはSで、RおよびRがプロピレン基であるものが、得られる画像の解像度の面から、特に好ましい。
【0031】
〈一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレア〉
上記一般式(2)中、Rは炭素数2〜4であるアルキレン基を表す。
【0032】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレア(以下単に、本発明のポリウレアと称する場合もある)は、ホスゲンまたはチオホスゲンと炭素数2〜4の脂肪族ジアミン化合物との反応で得ることができる。また、炭素数2〜4である脂肪族ジアミン化合物と、炭素数2〜4である脂肪族ジイソシアネートとの反応(脂肪族としては同じものを用いる)により合成することもできる。
【0033】
上記脂肪族ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミンが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、1,2−ジイソシアナトエタン、1,3−ジイソシアナトプロパン、1,4−ジイソシアナトブタンが挙げられる。
【0034】
チオホスゲンと炭素数2〜4の脂肪族ジアミン化合物との反応は、1MNaOH水溶液/トルエン混合溶媒中でジアミンとチオホスゲン等モルを2〜4時間撹拌することにより、行うことができる。
【0035】
炭素数2〜4である脂肪族ジアミン化合物と、炭素数2〜4である脂肪族ジイソシアネートとの反応との反応は、DMF中で脂肪族ジアミン化合物と脂肪族ジイソシアネートを等モル2時間から4時間撹拌することにより行われる。この場合、本発明のポリウレアは、炭素数2〜4である脂肪族ジアミン化合物と、炭素数2〜4である脂肪族ジイソシアネートとの炭素数が同じものを使用することにより得られる。
【0036】
本発明のポリウレアの分子量(質量平均分子量Mw)は、10,000以上であることが好ましく、20,000〜60,000であることが好ましい。
【0037】
分子量の調整は、上記の反応時間を調整することにより行うことができる。
【0038】
本発明のポリウレアは、一般式(2)のXがOおよびXの各々に対して、Rがエチレン基のもの、プロピレン基のもの、ブチレン基のものが挙げられる。
【0039】
これらの中でも特に、XがOまたはSで、Rがプロピレン基であるものが、得られる画像の解像度の面から、特に好ましい。
【0040】
尚、本発明において、繰り返し単位を有するとは、一般式(1)または(2)で表される単位が連続して、主鎖を形成していることをいう。
【0041】
(超音波振動子)
本発明の超音波振動子は、本発明の有機圧電体を含有する圧電材料と、電極とを有する。
【0042】
圧電材料は、必要に応じ、有機圧電体を膜状にし、分極処理を施すことで得られるが、さらに延伸処理、アニール処理が施されていてもよい。これらの処理は併用してなされてもよい。
【0043】
有機圧電体の膜を作製する方法としては、溶融・流延法、上記有機圧電体を溶解してなる溶液を基板上に塗布し、乾燥して得る方法、上記有機圧電体の原料化合物を用いて従来公知の溶液重合塗布法などにより高分子膜を形成する方法が挙げられる。
【0044】
分極処理の方法としては、従来公知の直流電圧印加処理、交流電圧印加処理またはコロナ放電処理方法が適用され得る。例えば、コロナ放電処理法による場合には、コロナ放電処理は、市販の高電圧電源と電極からなる装置を使用して処理することができる。
【0045】
放電条件は、機器や処理環境により異なるので適宜条件を選択すればよいが、高電圧電源の電圧としては−1〜−20kV、電流としては1〜80mA、電極間距離としては、1〜10cm、印加電圧としては、0.5〜2.0MV/mである条件が好ましい。
【0046】
分極処理に用いられる電極としては、従来から用いられている針状電極、線状電極(ワイヤー電極)、網状電極を用いることができる。分極処理は、超音波振動子が有する、下述する電極を付す前に行ってもよいし、電極を付した後に、当該電極を使用して分極処理を行ってもよい。
【0047】
延伸処理としては、種々の公知の方法を採用することができる。延伸処理は、所定形状の有機圧電体膜が破壊されない程度に一軸・二軸方向に延伸することができる。延伸倍率としては、2〜10倍、好ましくは2〜6倍の範囲で行うことができる。例えば、本発明の化合物を、溶媒に溶解した液をガラス板などの基板上に流延し、常温にて溶媒を乾燥させ、所望の厚さのフィルムを得て、このフィルムを室温で所定の倍率の長さに延伸する方法などが挙げられる。
【0048】
アニール処理は、加熱処理であり、例えば100℃〜200℃で加熱する方法が挙げられる。アニール処理としては、膜状の有機圧電体を加熱処理することが好ましく、有機圧電体の膜を、膜を担持する基材と共に加熱してもよいし、膜(フィルム状)のみを加熱雰囲気中で加熱してもよい。加熱時間としては、上記温度で1分から60分間加熱する方法が挙げられる。
【0049】
本発明に係る圧電材料としては、本発明の圧電体単体であってもよいし、他の有機圧電体を混合したものであってもよい。
【0050】
本発明の有機圧電体と共に、併用可能な他の有機圧電体としては、混合した場合に層分離を起こさない有機圧電体を選択して用いることができる。他の有機圧電体の割合は、10質量%以下が好ましく、0〜5質量%が好ましい。
【0051】
他の有機圧電体としては、本発明の有機圧電体の双極子モーメント量を増加させる作用を有する電子吸引性基を持つ、重合性化合物により形成した有機高分子材料であることが好ましい。このような有機高分子材料であれば、双極子モーメント量を増加させる作用を有することから、圧電材料(膜)として用いた場合、優れた圧電特性を得ることができる。
【0052】
本発明の超音波振動子は、本発明の有機圧電体を含有する圧電材料に電極を付したものであるが、対向する一対の電極間に、有機圧電材料を有する態様が好ましい。
【0053】
本発明の有機圧電体は、超音波振動子に用いられる場合、形成された膜の状態で、分極処理が施されて、使用されるが、膜としては、上記のようにさらに延伸処理が施されたものであることが好ましい。
【0054】
(屈折率)
本発明においては、上記(1)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレタン、または一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレアであって、屈折率nが1.65〜1.75のものが圧電体として好ましい態様である。
【0055】
屈折率nは、下記の方法により測定した値である。
【0056】
40μmになるように成膜した高分子膜の膜厚を膜厚測定器(ULBAC社、Dectak 8)を用いてサブミクロンオーダーで測定し、続いて、エリプソメーター(Woollam社、VASE)により室温で高分子膜の偏光測定を行う。
【0057】
膜厚測定値と偏光測定値についてコーシーモデルによるデータ解析を行うことで高分子膜の屈折率を求める。上記で用いる光の波長は、ナトリウムのD線の発光波長である波長589.3nmである。
【0058】
(電極)
超音波振動子に付される電極に用いられる材料としては、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)などが挙げられる。
【0059】
圧電材料に電極を付す方法としては、例えば、チタン(Ti)やクロム(Cr)などの下地金属をスパッタ法により0.02〜1.0μmの厚さに形成した後、上記金属元素を主体とする金属およびそれらの合金からなる金属材料、さらには必要に応じ一部絶縁材料をスパッタ法、その他の適当な方法で1〜10μmの厚さに形成する方法が挙げられる。
【0060】
電極形成はスパッタ法以外でも、微粉末の金属粉末と低融点ガラスとを混合した導電ペーストをスクリーン印刷やディッピング法、溶射法で形成することもできる。
【0061】
さらに、圧電材料の膜の両面に形成した電極間に、所定の電圧を供給し、圧電材料の膜を分極処理することができる。
【0062】
超音波振動子は、超音波探触子に用いられる場合、基板と共に用いられることが好ましい。基板としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマーのようなプラスチック板またはフィルムでもよいし、これらの素材の表面をアルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素等で覆ったものでもよい。
【0063】
またアルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素単体、希土類のハロゲン化物の単結晶の板またはフィルムでもかまわない。
【0064】
本発明に係る超音波振動子は、超音波探触子に用いられる場合、受信用超音波振動子として、または送信用超音波振動子として用いられるが、特に受信用超音波振動子として用いられることが好ましい態様である。
【0065】
図1を用いて、本発明の超音波振動子を説明する。
【0066】
超音波振動子10は、圧電材料1の両側に電極2が配置されている。電極2は、必要に応じ、圧電材料1の全面にわたり配置されてもよいし、有機圧電材料1の一部分に配置されてもよい。
【0067】
(超音波探触子)
本発明の超音波探触子は、本発明の超音波振動子を具備したものである。超音波探触子は、超音波振動子として、送信用超音波振動子と受信用超音波振動子とを具備することが好ましい。
【0068】
本発明の超音波探触子は、送信用超音波振動子および受信用超音波振動子の少なくとも一方が本発明の超音波振動子であることが必要であるが、特に少なくとも受信用超音波振動子が本発明の超音波振動子であることが好ましい。
【0069】
本発明においては、超音波の送受信の両方を一つの振動子で担ってもよいが、より好ましくは、送信用と受信用で振動子は分けて超音波探触子内に構成されることが好ましい。
【0070】
本発明の超音波振動子以外の超音波振動子を用いる場合、それは従来公知のセラミックス無機圧電材料でも、有機圧電材料でもよい。
【0071】
送信用振動子と、受信用振動子の配列としては、各々を上下に配置する配列および並列に配置する配列のどちらでもよいが、上下に配置して積層する構造が好ましい。
【0072】
積層する場合の送信用振動子および受信用振動子の厚さとしては、40〜150μmであることが好ましい。
【0073】
本発明の超音波探触子は、必要に応じバッキング層、音響整合層、音響レンズなどを具備することが好ましい。
【0074】
図2に本発明の超音波探触子の好ましい態様の例を示す。超音波探触子20は、バッキング層6上に、送信用圧電材料5に電極2が付された送信用超音波振動子12を有し、送信用超音波振動子12上に基板7を有し、基板7上に受信用有機圧電材料11に電極2が付された受信用超音波振動子13を有し、さらにその上に音響整合層8および音響レンズ9を有する構成を有する。
【0075】
(超音波画像検出装置)
本発明の超音波探触子は、種々の態様の超音波診断装置に用いることができる。例えば、図3に示すような超音波画像検出装置において好適に使用することができる。図3は、本発明の超音波画像検出装置の主要部の構成を示す概念図である。
【0076】
超音波画像検出装置は、例えば、生体などの被検体に対して超音波を送信し、被検体で反射した超音波をエコー信号として受信する超音波振動子が配列されている超音波探触子(プローブ)を備えている。また当該超音波探触子に電気信号を供給して超音波を発生させるとともに、当該超音波探触子の各超音波振動子が受信したエコー信号を受信する送受信回路と、送受信回路の送受信制御を行う送受信制御回路を備えている。
【0077】
さらに、送受信回路が受信したエコー信号を被検体の超音波画像データに変換する画像データ変換回路を備えている。また当該画像データ変換回路によって変換された超音波画像データでモニタを制御して表示する表示制御回路と、超音波画像検出装置全体の制御を行う制御回路を備えている。
【0078】
制御回路には、送受信制御回路、画像データ変換回路、表示制御回路が接続されており、制御回路はこれら各部の動作を制御している。そして、超音波探触子の各超音波振動子に電気信号を印加して被検体に対して超音波を送信し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる反射波を超音波探触子で受信する。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0080】
(一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリウレタンの合成)
(X=Oの場合)
(有機圧電体1−1の合成)
300mlフラスコにDMFを50mlにエチレングリコールを5mmol、1,2−ジイソシアナトエタン5mmolを添加した。続いて、温度を60℃に上昇させ、4時間撹拌した。ここへ、エタノール10mlを添加することにより重合反応を停止させた。続いて、溶液を10mlに濃縮した。この溶液をメタノール:水=8:2溶液中に滴下し、懸濁液を得た。続いて、遠心分離器で4000rpm、30分間処理し、上澄み液を除去した。沈殿物を減圧乾燥し、有機圧電体1−1を得た。
【0081】
(有機圧電体1−2〜1−14の合成)
有機圧電体1−1の合成において、使用する脂肪族多価アルコールと脂肪族ジイソシアナトの組み合わせをエチレングリコールと1,4−ジイソシアナトブタンとすることで有機圧電体膜1−2を、エチレングリコールと1,5−ジイソシアナトペンタンとすることで有機圧電体膜1−3を、1,3−プロパンジオールと1,2−ジイソシアナトエタンとすることで有機圧電体膜1−4を、1,3−プロパンジオールと1,3−ジイソシアナトプロパンとすることで有機圧電体膜1−5を、1,3−プロパンジオールと1,4−ジイソシアナトブタンとすることで有機圧電体膜1−6を、1,3−プロパンジオールと1,5−ジイソシアナトペンタンとすることで有機圧電体膜1−7を、1,4−ブタンジオールと1,2−ジイソシアナトエタンとすることで有機圧電体膜1−8を、1,4−ブタンジオールと1,4−ジイソシアナトブタンとすることで有機圧電体膜1−9を、1,4−ブタンジオールと1,5−ジイソシアナトペンタンとすることで有機圧電体膜1−10を、1,5−ペンタンジオールと1,2−ジイソシアナトエタンとすることで有機圧電体膜1−11を、1,5−ペンタンジオールと1,3−ジイソシアナトプロパンとすることで有機圧電体膜1−12を、1,5−ペンタンジオールと1,4−ジイソシアナトブタンとすることで有機圧電体膜1−13を、1,5−ペンタンジオールと1,5−ジイソシアナトペンタンとすることで有機圧電体膜1−14を得た。
【0082】
(有機圧電体1−21〜1−25の合成)
(X=Sの場合)
有機圧電体1−1の合成において、脂肪族多価アルコールと脂肪族ジチオイソシアナトを用いることで合成することができる。脂肪族多価アルコールと脂肪族ジチオイソシアナトの組み合わせをエチレングリコールと1,2−ジチオイソシアナトエタンとすることで有機圧電体膜1−21を、1,3−プロパンジオールと1,3−ジチオイソシアナトプロパンとすることで有機圧電体膜2−22を、1,4−ブタンジオールと1,4−ジチオイソシアナトブタンとすることで有機圧電体膜1−23を得た。有機圧電体1−22の合成において、反応時間を30分間とすることで、有機圧電体膜1−24を、反応時間を5時間とすることで、有機圧電体膜1−25を得た。
【0083】
一般式(1)で表される繰り返し単位を有することは、IR測定、H−NMR測定、13C−NMR測定により確認した。
【0084】
(一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリウレアの合成)
(XがSの場合)
(有機圧電体2−1の合成)
300mlフラスコにDMFを50mlホルムアルデヒド5mmol、チオウレア5mmolを添加した。
【0085】
続いて、4時間の還流処理を行うと、白色の固体が析出した。ろ過・減圧乾燥により白色固体を得た。得られた固体をDMFに溶解させ、本DMF溶液をメタノール:水=8:2溶液中滴下し、懸濁液を得た。続いて、遠心分離器で4000rpm、30分間処理し、上澄み液を除去した。沈殿物を減圧乾燥し、有機圧電体2−1を得た。
【0086】
(有機圧電体2−2の合成)
300mlビーカー中に1MNaOH水溶液50mlを入れ、エチレンジアミン5mmolを添加した。これに、トルエン50mlで希釈したチオホスゲン5mmolを撹拌しながら添加した。10分撹拌したところで、白色の固体が析出し始めた。さらに室温下3時間撹拌後、ろ過・減圧乾燥を行い、白色固体を得た。得られた固体をDMFに溶解させた。続いて、DMF溶液をメタノール:水=8:2溶液中に滴下し、懸濁液を得た。続いて、遠心分離器で4000rpm、30分間処理し、上澄み液を除去した。沈殿物を減圧乾燥し、有機圧電体2−2を得た。
【0087】
(有機圧電体2−3〜2−7の合成)
有機圧電体2−2の合成において、エチレンジアミンの変わりに、1,3−ジアミノプロパンを用い有機圧電体2−3を、1,4−ジアミノブタンを用い有機圧電体2−4を、1,5−ジアミノペンタンを用い有機圧電体2−5を、1,6−ジアミノヘキサンを用い有機圧電体2−6を、1,7−ジアミノヘプタンを用い有機圧電体2−7を得た。
【0088】
(有機圧電体2−8の合成)
有機圧電体2−2の合成において、エチレンジアミンの変わりに、1,3−ジアミノベンゼンを用いることで有機圧電体2−8を得た。
【0089】
<XがOの場合>
(有機圧電体2−11の合成)
300mlフラスコにDMFを50mlホルムアルデヒド(東京化成製)5mmol、ウレア(東京化成製)5mmolを添加した。続いて、4時間の還流処理を行うこと、白色の固体が析出した。ろ過・減圧乾燥により白色固体を得た。
【0090】
得られた固体をDMFに溶解させ、本DMF溶液をメタノール:水=8:2溶液中滴下し、懸濁液を得た。
【0091】
続いて、遠心分離器で4000rpm、30分間処理し、上澄み液を除去した。沈殿物を減圧乾燥し、有機圧電体2−11を得た。
【0092】
(有機圧電体2−12〜2−17の合成)
100mlフラスコ中に脂肪族ジイソシアネート5mmol、DMFを50ml添加した。ここへ、脂肪族ジイソシアネートと同じメチレン鎖数の脂肪族ジアミンを5mmol添加した。室温で4時間撹拌後メタノールを10ml添加し、反応を停止させた。
【0093】
続いて、反応溶液をエバポレーターで10mlまで濃縮した。続いて、本濃縮溶液をメタノール:水=8:2溶液中滴下し、懸濁液を得た。続いて、遠心分離器で4000rpm、30分間処理し、上澄み液を除去した。
【0094】
沈殿物を減圧乾燥し、有機圧電体12を得た。ここで、使用する脂肪族ジアミンとしてエチレンジアミンを用い有機圧電体2−12を、1,3−プロパンジアミンを用い有機圧電体2−13を、1,4−ブタンジアミンを用い有機圧電体2−14を、1,5−ペンタンジアミンを用い有機圧電体2−15を、1,6−ヘキサンジアミンを用い有機圧電体2−16を、1,7−ヘプタンジアミンを用い有機圧電体2−17を得た。
【0095】
(有機圧電体2−18、19、20の合成)
有機圧電体2−2の合成において、エチレンジアミンの変わりに、1,3−ジアミノベンゼンを用いることで有機圧電体2−18を得た。
【0096】
有機圧電体2−13の合成において反応時間を30分とすることで、有機圧電体2−19を、反応時間を5時間とすることで、有機圧電体2−20を得た。
【0097】
(有機圧電体2−21)
有機圧電体2−21のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)樹脂はクレハKFポリマー(呉羽化学製)を用いた。一般式(2)で表される繰り返し単位を有することは、IR測定、H−NMR測定、13C−NMR測定により確認した。
【0098】
[分子量測定方法]
質量平均分子量Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値である。東ソー社製高速液体クロマトグラフィーHLC−8220に東ソー社製カラムTSKgel α−M(7.8mmI.D.×30cm)を2本装填し、検出器は示差屈折率検出器として測定を行った。展開溶媒にN,N−ジメチルホルムアミドを用い、流速1.0ml/分、40℃にて行った。
【0099】
[屈折率測定]
屈折率nは、下記の方法により測定した値である。約40μmになるように成膜した高分子膜の膜厚を膜厚測定器(ULBAC社、Dectak 8)を用いてサブミクロンオーダーで測定した。続いて、エリプソメーター(Woollam社、VASE)により室温で高分子膜の偏光測定を行った(使用光の波長は、589.3nm)。
【0100】
膜厚測定値と偏光測定値についてコーシーモデルによるデータ解析を行うことで高分子膜の屈折率nを求めた。
【0101】
(超音波振動子の作製)
上記のようにして得られた有機圧電体各々について、粉末0.97gを60℃に加熱したジメチルホルムアミド(以下DMF)5mlに溶解した。この溶液をガラス板上に塗布した。その後、常温にて溶媒を乾燥させ、厚さ120μmのフィルムを得た。
【0102】
このフィルムを室温で4倍に延伸した後、延伸した長さを保ったまま135℃1時間熱処理を行い、有機圧電体膜1−1〜1−14、1−21〜1−25、2−1〜2−8および2−11〜2−21を得た。得られた有機圧電体膜の両面に表面抵抗が1Ω以下になるようにアルミニウムを蒸着塗布して表面電極付の試料を得た。
【0103】
続いて、この電極に室温にて、0.1Hzの交流電圧を印加しながら分極処理を行い、超音波振動子1−1〜1−14、1−21〜1−25、2−2〜2−8および2−12〜2−21を得た。分極処理は低電圧から行い、最終的に電極間電場が50MV/mになるまで徐々に電圧をかけた。(2−1および2−11は、膜の割れが大であり、振動子は作製せず)
[圧電特性評価方法]
圧電定数d31、d33および残留分極を測定し、圧電特性、受信感度の指標とした。圧電定数d31、d33は、膜厚40μmの高分子膜試料をレーザー変位計による強誘電体評価システム(東陽テクニカ、強誘電体評価システムFCE−1/1A型)により測定した値とした。尚、面内方向振動の圧電定数がd31、面外方向振動の圧電定数がd33である。
【0104】
残留分極は、高分子膜の分極処理において電極間電場が50MV/mとなった際に記録されたD−Eヒステリシスから読み取った。D−Eヒステリシス上、E=0V/mにおける単位面積当たりの電荷量C/mの値が残留分極Prである。
【0105】
[加工性評価方法]
薄膜を作製し、この膜から所定の大きさの圧電体とするために切断した際の膜の変形を観察し、これを加工性の指標とした。
【0106】
具体的には、厚さ40μm、20cm×20cmのフィルムを作製し、押切カッターで2cm×2cmの大きさに切断した。このとき、ひび割れが見られた膜の加工性を×とした。また、ひび割れが見られなかったカッター切断後の膜の辺の伸び率が1%以下の膜の加工性を○、伸び率が1%を超えた膜の加工性を△とした。
【0107】
なお、切断膜の伸び率は、100×{切断後の辺の長さ(cm)−2(cm)}/2(cm)と定義する。高分子膜の伸び率が1.0%以上になると、膜両面に電極を設けた後の切断加工プロセスにおいて、膜・電極間接着面で解離が起こりやすくなるため、伸び率が1%以上の場合は加工性は不十分であると評価した。
【0108】
上記評価結果を下記表1〜4に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
【表3】

【0112】
【表4】

【0113】
表1〜4から、本発明の圧電体、超音波振動子は圧電特性に優れ、かつ加工性に優れることが判る。また、特開2006−225565号の実施例に記載のような、真空排気系を備えた蒸着重合用の装置を用いることなく、必要とする形状の超音波振動子を得ることができることが分かる。
【0114】
(超音波探触子、超音波画像検出装置)
上記で作製した、超音波振動子を用い図3に示す構成を有する超音波探触子1−1〜1−14、1−21〜1−25、2−2〜2−7、2−12〜17、2−19〜2−21を作製し、これらの超音波探触子を用い、図4に示す構成を有する超音波画像検出装置を作製した。これらの超音波画像検出装置を用い、流動血中プラークの観察を行い、解像度を以下のランクで評価した。
◎:流動血中プラーク確認良好。画像飛び、ノイズ無し
○:流動血中プラーク確認良好。やや画像飛びあり
△:流動血中プラーク確認不良。画像飛び、ノイズあり
×:流動血中プラーク確認不可。画像飛び、ノイズともに激しい
結果を表5、表6に示す。
【0115】
【表5】

【0116】
【表6】

【0117】
上記表に示すように、本発明の超音波振動子以外の超音波振動子を用いた1−10、1−12〜1−14、2−6〜2−7、2−16〜2−17では、プラークの確認をすることが全く出来なかった。また、2−19は、プラークの形状を確認することはできたが、クリアでない、画像飛びが目立つという問題が見られた。
【0118】
表5、表6から、本発明の本発明の超音波探触子を用いた、超音波画像検出装置は、動的超音波画像検出を良好に行うことができ、解像度に優れることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の超音波振動子の例の模式断面図である。
【図2】本発明の超音波探触子の例の模式断面図である。
【図3】本発明の超音波画像検出装置の主要部の構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0120】
1 有機圧電材料
2 電極
5 送信用圧電材料
6 バッキング層
7 基板
8 音響整合層
9 音響レンズ
10 超音波振動子
11 受信用有機圧電材料
12 送信用超音波振動子
13 受信用超音波振動子
20 超音波探触子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレタン、または一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリ(チオ)ウレアであることを特徴とする有機圧電体。
【化1】

(式中、R、RおよびRは、炭素数2〜4であるアルキレン基を表す。Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の有機圧電体を含有する圧電材料と、電極とを有することを特徴とする超音波振動子。
【請求項3】
前記超音波振動子が、受信用超音波振動子であることを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子。
【請求項4】
請求項2または3に記載の超音波振動子を具備することを特徴とする超音波探触子。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波探触子を具備することを特徴とする超音波画像検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−114122(P2010−114122A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282962(P2008−282962)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】