説明

有機性廃棄物処理装置及び有機性廃棄物処理方法

【課題】減菌処理が容易にでき、また、撹拌パドルにかかる負荷を軽減することができる有機性廃棄物処理装置を提供する。
【解決手段】この有機性廃棄物処理装置1は、有機性廃棄物を破砕混合して微生物により発酵分解処理する発酵処理槽10と、発酵処理槽10に減菌処理用の過熱蒸気を送出する過熱蒸気送出手段30と、を備え、発酵処理槽10は、下方の断面が円弧状をなす底面部を有した箱体であって、底面部の内壁に配設された複数の固定刃と、底面部の円弧の中心に軸線が位置するよう回転可能に配設された回転軸13と、回転軸13に配設され、複数の固定刃と協働して有機廃棄物を破砕する攪拌水平羽根15、15、・・・を先端部に有し、しかもこれら攪拌水平羽根の板面は回転軸13の軸線方向に対し所定の捻り角を有した攪拌パドル14、14、・・・と、を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの紙おむつの廃棄処理に好適なものであって、減菌処理を行う有機性廃棄物処理装置及び有機性廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、使用済みの紙おむつなどの有機性廃棄物を処理する装置は、これまでに、種々のものが実用化されたり提案されたりしている。本願発明者の一人が発明者として含まれる特許文献1には、有機性廃棄物を発酵分解処理する発酵処理装置において、発酵分解処理を短時間に大量に行うため、発酵処理槽の内側に複数の固定刃を配設し、回転軸に固設された撹拌パドルと協働して有機性廃棄物を効率的に破砕するものが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−57946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、病院や特別養護施設から出される使用済みの紙おむつの中には感染性病原菌が混入している可能性があるので、その減菌処理には感染性廃棄物処理と同等な処理が望まれている。感染性廃棄物処理には、マイクロウェーブによる方式などが実用化されているが、そのような方式の装置は高価なうえ、使用済みの紙おむつの廃棄処理に適用するには悪臭や汚れの対策が難しいので、紙おむつの処理を行う方式として一般には普及しなかった。
【0005】
また、紙おむつは、撹拌し破砕するものとしては体積が大きく強度も大きい。従って、撹拌するとき、撹拌パドルに負荷がかかり易く、そのため処理が止まったり極端な場合には機械が破損したりする可能性もある。
【0006】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、減菌処理が容易にでき、また、撹拌パドルにかかる負荷を軽減することができる有機性廃棄物処理装置及び有機性廃棄物処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の有機性廃棄物処理装置は、有機性廃棄物を破砕混合して微生物により発酵分解処理する発酵処理槽と、減菌処理用の過熱蒸気を送出する過熱蒸気送出手段と、を備え、発酵処理槽により発酵分解処理された処理物を過熱蒸気送出手段の過熱蒸気により減菌処理することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の有機性廃棄物処理装置は、請求項1に記載された有機性廃棄物処理装置において、前記発酵処理槽は、下方の断面が円弧状をなす底面部を有した箱体であって、底面部の内壁に配設された複数の固定刃と、底面部の円弧の中心に軸線が位置するよう回転可能に配設された回転軸と、回転軸に配設され、複数の固定刃と協働して有機廃棄物を破砕する攪拌水平羽根を先端部に有し、しかも攪拌水平羽根の板面は回転軸の軸線方向に対し所定の捻り角を有した攪拌パドルと、を備えてなることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の有機性廃棄物処理装置は、請求項2に記載された有機性廃棄物処理装置において、前記捻り角は10〜20°の範囲にあることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の有機性廃棄物処理装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載された有機性廃棄物処理装置において、前記過熱蒸気送出手段の過熱蒸気を前記発酵処理槽に送出することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の有機性廃棄物処理装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載された有機性廃棄物処理装置において、減菌処理槽と、発酵処理槽により発酵分解処理された処理物を減菌処理槽に搬送する搬送手段と、を更に設け、前記過熱蒸気送出手段の過熱蒸気を前記減菌槽に送出することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の有機性廃棄物処理装置は、請求項5に記載された有機性廃棄物処理装置において、前記減菌処理槽は、下方の断面が円弧状をなす底面部を有した箱体であって、底面部の円弧の中心に軸線が位置するよう回転可能に配設された回転軸と、回転軸に配設され、攪拌水平羽根を先端部に有し、しかも攪拌水平羽根の板面は回転軸の軸線方向に対し所定の捻り角を有した攪拌パドルと、を備えてなることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の有機性廃棄物処理方法は、有機性廃棄物を破砕混合して微生物により発酵分解処理する工程と、発酵分解処理された処理物を過熱蒸気により減菌処理する工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の有機性廃棄物処理方法は、請求項7に記載された有機性廃棄物処理方法において、前記発酵分解処理は、アルカリ剤を添加して行うことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の有機性廃棄物処理方法は、請求項7に記載された有機性廃棄物処理方法において、前記減菌処理は、200℃〜600℃の過熱蒸気を発酵分解処理された処理物に送出することにより行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有機性廃棄物処理装置によれば、発酵分解処理物に過熱蒸気を当てることにより容易に減菌処理が可能になる。また、減菌処理槽の撹拌水平羽根の板面が回転軸の軸線方向に対して捻り角を有するようにすることで、発酵分解処理物が回転方向と軸線方向に撹拌され、均一に過熱蒸気に触れて十分に減菌される。また、発酵分解処理では、撹拌パドルにかかる負荷を軽減することが可能になる。本発明の有機性廃棄物処理方法によれば、過熱蒸気により減菌処理することで感染性病原菌が混入していても有機性廃棄物を処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の望ましい実施形態に係る有機性廃棄物処理装置1の概略構成図である。有機性廃棄物処理装置1は、投入された使用済みの紙おむつなどの有機性廃棄物を破砕混合して微生物により発酵分解処理する発酵処理槽10と、発酵処理槽10に減菌処理用の過熱蒸気を送出する過熱蒸気送出手段30と、を備える。また、有機性廃棄物処理装置1は、外気を加熱して温風を発酵処理槽10へ供給する温風供給手段42と、水道水を加熱して発生した蒸気を過熱蒸気送出手段30に送る蒸気発生手段43と、発酵処理槽10の不要な気体(発酵分解処理で発生したガスなど)を後述の脱臭手段45に送る排気ブロワ44と、不要な気体を触媒により脱臭処理して排気ガスとして大気中に排出する脱臭手段45と、発酵処理槽10の後述の回転軸13を回転させるモータ46と、を備えている。
【0018】
図2、図3は発酵処理槽10(及びその周辺)を示すものであって、それぞれ、正面視の断面図、左側面視の断面図である。発酵処理槽10は、下方の断面が円弧状をなす底面部11を有した箱体である。発酵処理槽10は、箱体の上面のいずれかの箇所に有機性廃棄物が投入される投入口(図示せず)を有している。箱体の内部空間が発酵や攪拌のための空間となる。そして、有機性廃棄物を破砕するために底面部11の内壁に配設された複数の固定刃12、12、・・・と、底面部11の円弧の中心に軸線が位置するよう回転可能に配設された回転軸13と、回転軸13に配設され、攪拌したり複数の固定刃12、12、・・・と協働して有機廃棄物を破砕したりする攪拌水平羽根15、15、・・・を先端部に有し、しかも攪拌水平羽根15、15、・・・の板面は回転軸13の軸線方向に対し所定の捻り角θを有した攪拌パドル14、14、・・・と、を備えている。なお、固定刃12、12、・・・は、底面部11の最下点と回転軸13の中心とを結ぶ線の左右30〜60°の範囲に配設されている。
【0019】
撹拌パドル14、14、・・・は、より具体的には、4個有り、回転軸13にその軸線方向に並設されるとともに、それぞれが回転方向に所定角度(ほぼ90°)ずつずれて配設されている。
【0020】
撹拌パドル14、14、・・・の撹拌水平羽根15、15、・・・の板面は、より具体的には、全て、回転軸13の1の方向(図2では右方向)に対して反時計方向に捻られている。すなわち、それぞれの撹拌水平羽根15、15、・・・の1の方向側の端は他の方向(図2では左方向)の端に対して反時計方向に角度(捻り角θ)をなす。捻り角θを有すると、処理中の有機性廃棄物(以下、処理物と呼ぶ)は回転軸13の回転方向に応じてその軸線方向に移動する。それにより、捻り角θがないものと比べ、撹拌水平羽根15、15、・・・及び撹拌パドル14、14、・・・にかかる負荷を小さくすることができる。ここで、捻り角θを有すると、回転軸13の回転方向への処理物の撹拌能力は落ちるが、処理物の軸線方向への移動があり、更には後に詳述するように軸線方向にも撹拌される。実験の結果、捻り角θが10〜20°の範囲にあると、全体の撹拌能力が低下することなく負荷を小さくできることが確認された。また、発酵分解処理と減菌処理が完了した処理物が排出される処理物排出口(図示せず)が発酵処理槽10の端部に取り付けられている場合は、処理物を処理物排出口の方に寄せて取り出すことができる。
【0021】
なお、撹拌水平羽根15、15、・・・の板面は、半分が反時計方向に捻られ、半分が時計方向に捻られるようにすることもできる。そうすると、回転軸13の回転に応じて処理物は中央に寄ったり両端に寄ったりして撹拌される。そして、処理物排出口が発酵処理槽10の中央部に取り付けられている場合は、発酵分解処理(及び、後述の減菌処理)が完了すると処理物を処理物排出口の方に寄せて取り出すことができる。
【0022】
それぞれの撹拌水平羽根15、15、・・・の中央部には固定刃12、12、・・・の形状に対応した凹所15a、15a、・・・が設けられている。撹拌水平羽根15が固定刃12の位置に来たとき、その凹所15aの内側に固定刃12が通る(噛み合わさる)ようにしている。この噛み合わせにより、処理物が破砕される。また、それぞれの撹拌水平羽根15、15、・・・は、いずれかの軸線方向に傾斜している。すなわち、それぞれの撹拌水平羽根15、15、・・・の端と端は回転軸13の中心からの長さが異なり、図3で示すようにその差εを有する。従って、撹拌水平羽根15、15、・・・が底面部11に来たとき、その内壁面からの距離が端と端で異なるようになる。これは、内壁面との間に処理物の固まりが挟まった場合に、それが距離が大きい方に逃げて取れ易くするためである。例えば、内壁面からの距離は一端において5mmであり、他端において7mmとなる。
【0023】
発酵処理槽10には、これにより発酵分解処理された処理物を減菌処理するために、過熱蒸気送出手段30が箱体本体10Aの上面の開口のない部分に取り付けられている。蒸気発生手段43から送られた蒸気はここで加熱され、過熱蒸気が発酵処理槽10に送出される。過熱蒸気は高温状態(例えば200℃〜600℃)の水蒸気であり、その粒子が極めて細かく、熱量が高い。過熱蒸気送出手段30は、例えば、電気抵抗による発熱を利用したものや電磁誘導による発熱を利用したものがある。
【0024】
次に、有機性廃棄物処理装置1の全体の処理フローを説明する。先ず、発酵処理槽10に、発酵剤を溜めておく。発酵剤としては、人糞、尿及び吸水ポリマーに含まれる澱粉質、蛋白質、脂質、アンモニアなどを分解し得るものであり、かつ、人間に害を与えない安全性が確認された微生物を使用する。また、感染性病原菌は嫌気性のものが多いため、発酵分解処理を好気性条件下で行うこととし、発酵剤は好気性のものとする。また、吸水ポリマーの加水分解を促進するために、アルカリ剤(消石灰など)を添加して最適なpH(例えば7.5〜8.5)にすることが望ましい。
【0025】
次に、有機性廃棄物が投入口40aから発酵処理槽10に投入される。病院や特別養護施設などから出された使用済みの紙おむつなどは感染性病原菌が混入している可能性があるので、収納したごみ袋ごとに投入される。投入された有機性廃棄物は、回転軸13に配設された撹拌パドル14、14、・・・により撹拌され、複数の固定刃12、12、・・・と撹拌水平羽根15、15、・・・の凹所15a、15a、…とにより破砕される。そして、有機性廃棄物(処理物)は撹拌かつ細かく破砕され、最適な温度(例えば35〜45℃)下で、発酵分解が進行する。発酵分解が完了する時間は、例えば20時間である。
【0026】
この発酵分解は、処理物を撹拌かつ破砕しながら行う。それにより、処理物の温度分布が均一になり、また、空気に均一に触れるようになって発酵分解が促進されることとなり、短時間に発酵分解させることができるようになる。回転軸13は、1〜2rpmの割合で回転する。その回転に従った撹拌水平羽根15の動きにより、処理物は回転軸13の回転方向と軸線方向に撹拌される。すなわち、回転軸13が時計方向に回転(1の方向(図2では右方向)を法線として)をすると、処理物は回転しながら1の方向に移動し、反時計方向に回転をすると、処理物は回転しながら他の方向(図2では左方向)に移動する。こうして、時計方向と反時計方向の回転を繰り返すことにより、処理物はより破砕され、かつ、発酵分解もより進行する。
【0027】
発酵分解処理が完了すると、発酵分解処理物は、過熱蒸気送出手段30から送出された過熱蒸気により減菌処理される。過熱蒸気送出手段30から送出された200℃〜600℃の過熱蒸気は密閉された発酵処理槽10に充満し、発酵処理槽10は無酸素状態になる。この無酸素状態の中で減菌処理が行われるので、200℃〜600℃の高温であっても爆発の危険性がなく、酸化による化学変化も防止される。
【0028】
この減菌処理は、発酵分解処理物を撹拌しながら行う。回転軸13は、発酵分解処理と同様に、1〜2rpmの割合で回転し、時計方向と反時計方向の回転を繰り返し、発酵分解処理物は回転方向と軸線方向に撹拌される。それにより、発酵分解処理物が均一に過熱蒸気に触れるようになって減菌されない部分をなくすことができる。
【0029】
発酵分解処理において嫌気性の感染性病原菌の多くは死滅するが、この減菌処理において、嫌気性、好気性を問わず全ての種類の感染性病原菌が減菌させられる。過熱蒸気による減菌処理の結果、病原菌を10−4〜10−6の率で減少させることが可能である。減菌処理が完了すると、発酵分解処理物は常温程度になるように冷却され、その後、処理物排出口から取り出される。減菌処理、冷却、排出に要する時間は、例えば4時間である。
【0030】
発酵処理槽10において発酵分解処理により発生したガス(例えば硫化水素やアンモニアなど)、及び減菌処理により熱量を失った過熱蒸気は、排気ブロワ44を介して脱臭手段45に送られ、脱臭処理されて大気中に排出される。
【0031】
以上説明したように、有機性廃棄物処理装置1は、発酵分解処理物に過熱蒸気を当てることにより容易に減菌処理が可能になる。撹拌水平羽根15、15、・・・の板面が回転軸13の軸線方向に対して捻り角θを有するようにすることで、発酵分解処理物が回転方向と軸線方向に撹拌され、均一に過熱蒸気に触れて十分に減菌される。また、発酵分解処理では、撹拌パドル14、14、・・・にかかる負荷も軽減され、紙おむつのように有機性廃棄物として体積が大きく強度も大きいものであっても、必要とするトルクが小さくて済むので、処理が止まったり機械が破損したりするのを防止することができる。また、この有機性廃棄物処理装置1は、発酵分解処理のための槽と減菌処理のための槽とを共用している形なので、コンパクトに小型である。
【0032】
なお、発酵分解処理と減菌処理の順序を逆にすることも考えられるが、有機性廃棄物に付着した糞や尿に含まれる塩類が存在する状態で200℃〜600℃の高温処理を行うと、それが処理槽を腐食させる危険性がある。従って、過熱蒸気で処理を行う前には、発酵分解処理を行う方がよい。
【0033】
次に、本発明の望ましい別の実施形態に係る有機性廃棄物処理装置2を説明する。図4は有機性廃棄物処理装置2の概略構成図である。この有機性廃棄物処理装置2は、投入された使用済みの紙おむつなどの有機性廃棄物を破砕混合して微生物により発酵分解処理する発酵処理槽10と、発酵分解処理物を過熱蒸気により減菌処理する減菌処理槽20と、減菌処理槽20に過熱蒸気を送出する過熱蒸気送出手段30と、発酵処理槽10により発酵分解処理された処理物を減菌処理槽20に搬送する搬送手段である搬送スクリュ41と、を備える。また、有機性廃棄物処理装置2は、外気を加熱して温風を発酵処理槽10へ供給する温風供給手段42と、水道水を加熱して発生した蒸気を発生させて過熱蒸気送出手段30に送る蒸気発生手段43と、発酵処理槽10の不要な気体を後述の脱臭手段45に送る排気ブロワ44と、その不要な気体と減菌処理槽20の熱量を失った過熱蒸気とを触媒により脱臭処理して排気ガスとして大気中に排出する脱臭手段45と、発酵処理槽10の後述の回転軸13を回転させるモータ46と、搬送スクリュ41の回転軸と減菌処理槽20の後述の回転軸とを回転させるモータ46aと、を備えている。
【0034】
発酵処理槽10は、有機性廃棄物処理装置1のものと同様である。なお、発酵分解処理が完了した発酵分解処理物は減菌処理槽20において減菌処理されるので、発酵分解処理が完了すると発酵分解処理物を搬送スクリュ41の方に寄せ、それを搬送スクリュ41が減菌処理槽20に搬送する。
【0035】
減菌処理槽20は、発酵処理槽10とほぼ同様の構造になっている。すなわち、減菌処理槽20は、下方の断面が円弧状をなす底面部を有した箱体である。箱体の内部空間が減菌処理や攪拌のための空間となる。そして、その底面部の円弧の中心に軸線が位置するよう回転可能に配設された回転軸と、その回転軸に配設され、攪拌水平羽根を先端部に有し、しかも攪拌水平羽根の板面は回転軸の軸線方向に対し所定の捻り角を有した攪拌パドルと、を備えている。但し、減菌処理槽20は固定刃を有さず、撹拌水平羽根の中央部には凹所はない。
【0036】
蒸気発生手段43から送られた蒸気は過熱蒸気送出手段30で加熱され、過熱蒸気が減菌処理槽20に送出される。過熱蒸気送出手段30は、前述のものと同様である。
【0037】
次に、有機性廃棄物処理装置2の全体の処理フローを説明する。発酵処理槽10における発酵処理は前述のものと同様である。発酵分解処理が完了すると、発酵分解処理物は搬送スクリュ41により減菌処理槽20に搬送される。そして、発酵分解処理物は、過熱蒸気送出手段30から送出された過熱蒸気により減菌処理される。過熱蒸気送出手段30から送出された200℃〜600℃の過熱蒸気は密閉された減菌処理槽20に充満し、減菌処理槽20は無酸素状態になり、その中で減菌処理が行われる。
【0038】
この減菌処理は、発酵分解処理物を撹拌しながら行う。回転軸は、発酵分解処理と同様に、1〜2rpmの割合で回転し、時計方向と反時計方向の回転を繰り返し、発酵分解処理物は回転方向と軸線方向に撹拌される。それにより、発酵分解処理物が均一に過熱蒸気に触れるようになって減菌されない部分をなくすことができる。この減菌処理において、嫌気性、好気性を問わず全ての種類の感染性病原菌が減菌させられる。過熱蒸気による減菌処理の結果、病原菌を10−4〜10−6の率で減少させることが可能である。減菌処理が完了すると、発酵分解処理物は常温程度になるように冷却され、その後、処理物排出口40bから取り出される。減菌処理、冷却、排出に要する時間は、例えば4時間である。
【0039】
発酵処理槽10において発酵分解処理により発生したガスは排気ブロワ44を介して脱臭手段45に送られ、脱臭処理されて大気中に排出される。また、排気ブロワ44が止まった状態で、減菌処理により熱量を失った過水蒸気は、脱臭手段45を通って大気中に排出される。
【0040】
以上説明したように、有機性廃棄物処理装置2は、前述の有機性廃棄物処理装置1と同様の効果を得ることができる。但し、減菌処理槽20を発酵処理槽10とは別に備えているので、有機性廃棄物処理装置1よりも大型化する。
【0041】
その一方、有機性廃棄物処理装置2は、減菌処理槽20での減菌処理中に次のバッチの有機性廃棄物を発酵処理槽10に投入できるので効率的な有機性廃棄物処理が可能である。また、発酵処理槽10での発酵分解処理物は発酵処理槽10に投入された有機性廃棄物よりも容積は小さくなっているので、減菌処理槽20を発酵処理槽10よりも小さくしている。それにより、過熱蒸気送出手段30から減菌処理槽20に送出される必要な過熱蒸気の量を少なくすることができる。また、前述の有機性廃棄物処理装置1よりも大型化する点を和らげることができる。
【0042】
以上、本発明の望ましい実施形態に係る有機性廃棄物処理装置と有機性廃棄物処理方法について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、実施形態に記載した以外の部材を付加できるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の望ましい実施形態に係る有機性廃棄物処理装置の概略構成図である。
【図2】同上の有機性廃棄物処理装置の発酵処理槽を示す正面視の断面図である。
【図3】同上の有機性廃棄物処理装置の発酵処理槽を示す左側面視の断面図である。
【図4】本発明の望ましい別の実施形態に係る有機性廃棄物処理装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0044】
1、2 有機性廃棄物処理装置
10 発酵処理槽
20 減菌処理槽
30 過熱蒸気送出手段
11 発酵処理槽の底面部
12 固定刃
13 発酵処理槽の回転軸
14 発酵処理槽の撹拌パドル
15 発酵処理槽の撹拌パドルの撹拌水平羽根
θ 捻り角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を破砕混合して微生物により発酵分解処理する発酵処理槽と、
減菌処理用の過熱蒸気を送出する過熱蒸気送出手段と、
を備え、
発酵処理槽により発酵分解処理された処理物を過熱蒸気送出手段の過熱蒸気により減菌処理することを特徴とする有機性廃棄物処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された有機性廃棄物処理装置において、
前記発酵処理槽は、下方の断面が円弧状をなす底面部を有した箱体であって、底面部の内壁に配設された複数の固定刃と、底面部の円弧の中心に軸線が位置するよう回転可能に配設された回転軸と、回転軸に配設され、複数の固定刃と協働して有機廃棄物を破砕する攪拌水平羽根を先端部に有し、しかも攪拌水平羽根の板面は回転軸の軸線方向に対し所定の捻り角を有した攪拌パドルと、を備えてなることを特徴とする有機性廃棄物処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載された有機性廃棄物処理装置において、
前記捻り角は10〜20°の範囲にあることを特徴とする有機性廃棄物処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された有機性廃棄物処理装置において、
前記過熱蒸気送出手段の過熱蒸気を前記発酵処理槽に送出することを特徴とする有機性廃棄物処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載された有機性廃棄物処理装置において、
減菌処理槽と、発酵処理槽により発酵分解処理された処理物を減菌処理槽に搬送する搬送手段と、を更に設け、
前記過熱蒸気送出手段の過熱蒸気を前記減菌槽に送出することを特徴とする有機性廃棄物処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載された有機性廃棄物処理装置において、
前記減菌処理槽は、下方の断面が円弧状をなす底面部を有した箱体であって、底面部の円弧の中心に軸線が位置するよう回転可能に配設された回転軸と、回転軸に配設され、攪拌水平羽根を先端部に有し、しかも攪拌水平羽根の板面は回転軸の軸線方向に対し所定の捻り角を有した攪拌パドルと、を備えてなることを特徴とする有機性廃棄物処理装置。
【請求項7】
有機性廃棄物を破砕混合して微生物により発酵分解処理する工程と、
発酵分解処理された処理物を過熱蒸気により減菌処理する工程と、
を備えることを特徴とする有機性廃棄物処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載された有機性廃棄物処理方法において、
前記発酵分解処理は、アルカリ剤を添加して行うことを特徴とする有機性廃棄物処理方法。
【請求項9】
請求項7に記載された有機性廃棄物処理方法において、
前記減菌処理は、200℃〜600℃の過熱蒸気を発酵分解処理された処理物に送出することにより行うことを特徴とする有機性廃棄物処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−144317(P2007−144317A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342963(P2005−342963)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000252506)和田金属工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】