説明

有機性廃液の処理装置および有機性廃液の処理システム

【課題】有機性廃液を効率良くアンモニアストリッピング処理できるアンモニアストリッピング装置を提供する。
【解決手段】反応塔2内の有機性廃液Wの処理液の液面Pよりも上方に有機性廃液Wの原水を散水装置4のスプレーノズル7から散水する。反応塔2内の有機性廃液Wの処理液を循環装置21にて散水装置4へと循環させる。反応塔2内の有機性廃液Wの処理液が散水装置4にて再び反応塔2内の有機性廃液Wの処理液の液面Pよりも上方に散水させる。有機性廃液Wの処理液が空気に気液接触してアンモニアを除去できる。反応塔2内の有機性廃液Wからアンモニアをより効率良く分離できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを含有する有機性廃液を処理する有機性廃液の処理装置および有機性廃液の処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、C/N比(Carbon−NitrogenRatio、炭素率)が低く、高濃度のアンモニアを含有する有機性廃液からアンモニアを除去する場合には、いわゆるアンモニアストリッピングと呼ばれる処埋方法が経済的およびスペース的に有効である。そして、このアンモニアストリッピングは、有機性廃液のpHを9以上13以下に調整して、この有機性廃液中のアンモニウムイオンを遊離アンモニアとしてから空気に気液接触させることにより、この有機性廃液中のアンモニアを気相へと放散処埋する。
【0003】
このとき、有機性廃液と接触した空気量に応じてアンモニアが除去される。さらに、この有機性廃液の温度を常温以上に加温して調整したり、この有機性廃液を接触させる空気の代わりに水蒸気としてのスチームとすることにより、有機性廃液の液相からのアンモニア遊離を促進できる。
【0004】
また、アンモニアストリッピングによって排出される高濃度のアンモニアを含むガスは、スクラバなどを用いてアンモニアを分離したり、燃焼設備などに導入して燃焼処理している。
【0005】
そして、この種の有機性廃液の処理装置としてのアンモニアストリッピング装置としては、いわゆるスプレー塔と呼ばれるものがある。このスプレー塔と呼ばれるアンモニアストリッピング装置は、複数の反応槽が区画形成されたハウジングを備えている。このハウジングの各反応槽内の上方には、スプレーノズルが取り付けられている。そして、これらスプレーノズルから、アンモニアを含有する有機性廃液が反応槽内へと噴霧されている。また、これら各反応槽に貯留された有機性廃液には、アルカリ剤として水酸化ナトリウム(NaOH)が添加されてpHが調整されている。
【0006】
さらに、これら各反応槽は、直列に設置されており最も上流側の反応槽内に噴霧されて貯留された有機性廃液が順次下流側の反応槽内へと噴霧されて貯留されるように構成されている。また、これら各反応槽は、最も下流側の反応槽内に吹き込まれた空気あるいは水蒸気としてのスチームが各反応槽間に設けられた開口を介して、順次上流側の反応槽内へと吹き込まれるように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
また、この種のアンモニアストリッピング装置としては、多段に設けられており、第1室、第2室および第3室が直列に区画形成されている。さらに、これら第1室、第2室および第3室それぞれの内部には、これら第1室、第2室および第3室それぞれの内部に貯留される有機性は廃液を攪拌させる円板が回転可能に取り付けられている。
【0008】
そして、第1室へと流入された有機性廃液は、この第1室から順次第2室および第3室へと越流した後、この第3室から外部へと排出される。また、第3室へと吹き込まれた空気は、この第3室から第2室および第1室へと順次吹き込まれた後、この第1室から排出されてデミスタ装置へと送られる構成が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
一方、循環型社会や新エネルギ開拓などの社会情勢において、パイオマスのエネルギ利用、特にメタン発酵が注目されている。メタン発酵後の消化液や、メタン発酵後の脱水濾液は、C/N比が低く、アンモニア性窒素を比較的多く含んでおり、これらメタン発酵後の消化液や、メタン発酵後の脱水濾液のアンモニア性窒素除去方法としては、いわゆるアンモニアストリッピングが適正である。
【0010】
そこで、この種の有機性廃液を処理する装置としては、この有機性廃液からアンモニアを分離して回収するアンモニア回収工程を備えている。そして、このアンモニア処理工程の前処理として、有機性廃液をメタン発酵させて、この有機性廃液からメタンを回収するメタン発酵工程が設置されている。さらに、このメタン発酵工程の前後にアンモニア処理工程が設置された構成も知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2001−104943号公報(第3−4頁、図1)
【特許文献2】特開平10−57947号公報(第3−5頁、図1)
【特許文献3】特開2002−113494号公報(第3−4頁、図1および図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、メタン発酵後の消化液や、メタン発酵後の脱水濾液は、同時に数百から数万のSSを含んでおり、また、曝気によって激しい発泡が生じる特徴がある。そして、この特徴は消化汚泥および消化汚泥の脱水濾液に限らず、有機性廃液の特徴でもある。
【0012】
さらに、スプレー塔と呼ばれるアンモニアストリッピング装置では、有機性廃液に含まれているSSや、この有機性廃液に添加されるアルカリ剤により発生するスケールによって、スプレーノズルに詰まりが生じるおそれがあるとともに、各反応槽内に充填材を設置する場合には、これら充填材にも詰まりが生じてしまうおそれがある。
【0013】
また、多段につながれたアンモニアストリッピング装置では、第1室、第2室および第3室内の円板の回転によって、これら第1室、第2室および第3室内の有機性廃液に激しい発泡が生じるおそれがあり、これら発泡が空気とともに第1室、第2室および第3室の外部へと流出してしまうおそれがあるので、有機性廃液からアンモニアを効率良く分離するのが容易ではないという問題を有している。
【0014】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、有機性廃液からアンモニアを効率良く分離できる有機性廃液の処理装置および有機性廃液の処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1記載の有機性廃液の処理装置は、アンモニアを含有する有機性廃液を散水して、この有機性廃液を空気および水蒸気のいずれかに接触させて前記有機性廃液からアンモニアを除去して処理水にする有機性廃液の処理装置であって、前記有機性廃液が貯留される反応槽と、この反応槽に貯留された前記有機性廃液の液面よりも上方に前記有機性廃液を散水する散水手段と、前記反応槽に貯留された前記有機性廃液を前記散水手段へと循環させる循環手段とを具備したものである。
【0016】
そして、反応槽に貯留された有機性廃液の液面よりも上方に有機性廃液を散水する散水手段へと、反応槽に貯留された有機性廃液を循環手段が循環させる。この結果、反応槽に貯留された有機性廃液が散水手段によって再び反応槽に貯留された有機性廃液の液面よりも上方に散水される。したがって、有機性廃液の散水によって、この有機性廃液が空気および水蒸気のいずれかに接触させてアンモニアが除去されるから、反応槽内に貯留された有機性廃液からアンモニアをより効率良く分離できる。
【0017】
請求項2記載の有機性廃液の処理装置は、請求項1記載の有機性廃液の処理装置において、反応槽に貯留された有機性廃液の液面に向けて空気および水蒸気のいずれかを吹き込む吹込手段を具備したものである。
【0018】
そして、反応槽に貯留された有機性廃液の液面に向けて空気および水蒸気のいずれかを吹込手段が吹き込む。この結果、反応槽に貯留された有機性廃液の発砲が抑制される。よって、散水手段から散水された有機性廃液が効率良く気液接触するため、この有機性廃液からアンモニアをより効率良く分離できる。
【0019】
請求項3記載の有機性廃液の処理装置は、請求項1または2記載の有機性廃液の処理装置において、反応槽に貯留された有機性廃液中に空気および水蒸気のいずれかを吹き込む吹込手段を具備したものである。
【0020】
そして、反応槽に貯留された有機性廃液中に空気および水蒸気のいずれかを吹込手段が吹き込む。この結果、反応槽に貯留された有機性廃液の発砲が抑制される。よって、散水手段から散水された有機性廃液が効率良く気液接触するため、この有機性廃液からアンモニアをより効率良く分離できる。
【0021】
請求項4記載の有機性廃液の処理装置は、請求項1ないし3いずれか記載の有機性廃液の処理装置において、散水手段は、有機性廃液を散水させるスプレーノズルを備えているものである。
【0022】
そして、散水手段のスプレーノズルから有機性性廃液を散水させることにより、この有機性廃液をより効率良く気液接触させることができるので、この有機性廃液からより効率良くアンモニアを分離できる。また、反応槽に貯留された有機性廃液を循環手段にて散水手段へと循環させたので、散水手段のスプレーノズルの目詰まりを防止できる。
【0023】
請求項5記載の有機性廃液の処理装置は、請求項1ないし3いずれか記載の有機性廃液の処理装置において、反応槽に取り付けられ、散水手段にて散水される有機性廃液が当る当て板を具備したものである。
【0024】
そして、散水手段にて散水される有機性廃液が、反応槽に取り付けられた当て板に当てられて散水される。このため、この有機性廃液が効率良く気液接触するように散水できるとともに、目詰まりなどが生じ得ないので、散水手段の損傷を確実に防止できる。
【0025】
請求項6記載の有機性廃液の処理システムは、請求項2ないし5いずれか記載の有機性廃液の処理装置を複数具備し、これら複数の有機性廃液の処理装置に順次有機性廃液を散水させてアンモニアを除去させて、下流側の前記有機性廃液の処理装置から前記有機性廃液を排出させるとともに、この下流側の有機性廃液の処理装置の反応槽へと吹き込んだ空気および水蒸気のいずれかを、上流側の前記有機性廃液の処理装置の反応槽へと吹き込ませて、上流側の前記有機性廃液の処理装置から前記空気および水蒸気のいずれかを排出させるものである。
【0026】
そして、請求項2ないし5いずれか記載の複数の有機性廃液の処理装置に順次有機性廃液を散水させてアンモニアを除去させて、最も下流側の有機性廃液の処理装置から有機性廃液を排出させる。同時に、最も下流側の有機性廃液の処理装置の反応槽へと吹き込んだ空気および水蒸気のいずれかを、順次上流側の有機性廃液の処理装置の反応槽へと吹き込ませて、最も上流側の有機性廃液の処理装置から空気および水蒸気のいずれかを排出させる。この結果、複数の有機性廃液の処理装置へと散水される有機性廃液の流れと、これら複数の有機性廃液の処理装置へと吹き込まれる空気および水蒸気のいずれかの流れとが対向する。したがって、これら複数の有機性廃液の処理装置に散水される有機性廃液におけるアンモニアの含有量が少ない順に、アンモニアの気液接触量の少ない空気および水蒸気のいずれかが段階的に接触する。よって、これら複数の有機性廃液の処理装置による有機性廃液からのアンモニアの分離をより効率良くできる。
【0027】
請求項7記載の有機性廃液の処理システムは、請求項1ないし5いずれか記載の有機性廃液の処理装置と、有機性廃液をメタン発酵処理する発酵処理手段と、前記有機性廃液の処理装置にて処理された処理水を前記発酵処理手段へと返送する返送手段とを具備し、前記有機性廃液の処置装置の散水手段は、前記発酵処理手段にてメタン発酵処理された前記有機性廃液を前記有機性廃液の処理装置の反応槽へと散水するものである。
【0028】
そして、請求項1ないし5いずれかに記載の有機性廃液の処理装置の散水手段が、この有機性廃液の処理装置の反応槽へと発酵処理手段にてメタン発酵処理された有機性廃液を散水する。同時に、この有機性廃液の処理装置にて処理された処理水を返送手段にて発酵処理手段へと返送する。この結果、発酵処理手段にてメタン発酵させた有機性廃液を有機性廃液の処理装置にてさらに可溶化できるとともに、この有機性廃液の処理装置によって、発酵処理手段でのメタン発酵の阻害要因となるアンモニアが分離された処理水を発酵処理手段でのメタン発酵の原料とできる。したがって、この発酵処理手段による有機性廃液のメタン発酵をより効率良くできる。
【0029】
請求項8記載の有機性廃液の処理システムは、請求項1ないし7いずれか記載の有機性廃液の処理システムにおいて、有機性廃液の温度を60℃以上85℃以下に加熱する加熱手段を具備し、散水手段は、前記加熱手段にて加熱された前記有機性廃液を散水するものである。
【0030】
そして、有機性廃液の温度が60℃より低い場合には、この有機性廃液中の浮遊物質量や有機物を効率良く減少できない。また、この有機性廃液の温度が85℃より高い場合には、この有機性廃液の加熱に要するエネルギ量の増加や、この加熱に伴って有機性廃液が蒸発してしまうので、この有機性廃液を効率良く処理できない。したがって、加熱手段にて有機性廃液の温度を60℃以上85℃以下に加熱してから散水手段にて反応槽へと散水させることによって、この有機性廃液中の浮遊物質量や有機物を効率良く処理できる。
【発明の効果】
【0031】
請求項1記載の有機性廃液の処理装置によれば、反応槽に貯留された有機性廃液の液面よりも上方に有機性廃液を散水する散水手段へと、反応槽に貯留された有機性廃液を循環手段が循環させる。この結果、反応槽に貯留された有機性廃液が散水手段によって再び反応槽に貯留された有機性廃液の液面よりも上方に散水される。したがって、有機性廃液の散水によって、この有機性廃液が空気および水蒸気のいずれかに接触させてアンモニアが除去されるから、反応槽内に貯留された有機性廃液からアンモニアをより効率良く分離できる。
【0032】
請求項2記載の有機性廃液の処理装置によれば、反応槽に貯留された有機性廃液の液面に向けて空気および水蒸気のいずれかを吹込手段が吹き込む。この結果、反応槽に貯留された有機性廃液の発砲を抑制できる。よって、散水手段から散水された有機性廃液が効率良く気液接触するため、この有機性廃液からアンモニアをより効率良く分離できる。
【0033】
請求項3記載の有機性廃液の処理装置によれば、反応槽に貯留された有機性廃液中に空気および水蒸気のいずれかを吹込手段が吹き込む。この結果、反応槽に貯留された有機性廃液の発砲を抑制できる。よって、散水手段から散水された有機性廃液が効率良く気液接触するため、この有機性廃液からアンモニアをより効率良く分離できる。
【0034】
請求項4記載の有機性廃液の処理装置によれば、散水手段のスプレーノズルから有機性性廃液を散水させることにより、この有機性廃液をより効率良く気液接触させることができるとともに、反応槽に貯留された有機性廃液を循環手段にて散水手段へと循環させたので、この有機性廃液からより効率良くアンモニアを分離できる。
【0035】
請求項5記載の有機性廃液の処理装置によれば、散水手段にて散水される有機性廃液が、反応槽に取り付けられた当て板に当てられて散水される。このため、この有機性廃液が効率良く気液接触するように散水できるとともに、目詰まりなどが生じ得ないので、散水手段の損傷を確実に防止できる。
【0036】
請求項6記載の有機性廃液の処理システムによれば、請求項2ないし5いずれか記載の複数の有機性廃液の処理装置に順次有機性廃液を散水させてアンモニアを除去させて、最も下流側の有機性廃液の処理装置から有機性廃液を排出させる。同時に、最も下流側の有機性廃液の処理装置の反応槽へと吹き込んだ空気および水蒸気のいずれかを、順次上流側の有機性廃液の処理装置の反応槽へと吹き込ませて、最も上流側の有機性廃液の処理装置から空気および水蒸気のいずれかを排出させる。この結果、複数の有機性廃液の処理装置へと散水される有機性廃液の流れと、これら複数の有機性廃液の処理装置へと吹き込まれる空気および水蒸気のいずれかの流れとが対向する。したがって、これら複数の有機性廃液の処理装置に散水される有機性廃液におけるアンモニアの含有量が少ない順に、アンモニアの気液接触量の少ない空気および水蒸気のいずれかが段階的に接触する。よって、これら複数の有機性廃液の処理装置による有機性廃液からのアンモニアの分離をより効率良くできる。
【0037】
請求項7記載の有機性廃液の処理システムによれば、請求項1ないし5いずれかに記載の有機性廃液の処理装置の散水手段が、この有機性廃液の処理装置の反応槽へと発酵処理手段にてメタン発酵処理された有機性廃液を散水する。同時に、この有機性廃液の処理装置にて処理された処理水を返送手段にて発酵処理手段へと返送する。この結果、発酵処理手段にてメタン発酵させた有機性廃液を有機性廃液の処理装置にてさらに可溶化できるとともに、この有機性廃液の処理装置によって、発酵処理手段でのメタン発酵の阻害要因となるアンモニアが分離された処理水を発酵処理手段でのメタン発酵の原料とできる。したがって、この発酵処理手段による有機性廃液のメタン発酵をより効率良くできる。
【0038】
請求項8記載の有機性廃液の処理システムによれば、加熱手段にて60℃以上85℃以下の温度に加熱した有機性廃液を散水手段にて反応槽へと散水させることにより、この有機性廃液中の浮遊物質量や有機物を効率良く処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の有機性廃液の処理装置の第1の実施の形態の構成を図1を参照して説明する。
【0040】
図1において、1は有機性廃液の処理装置としてのアンモニアストリッピング装置であり、このアンモニアストリッピング装置1は、アンモニアを含有する有機性廃液Wの原水を処理、すなわちこの有機性廃液Wからアンモニアを分離する。具体的に、このアンモニアストリッピング装置1は、有機性廃液Wを散水して、この有機性廃液Wを空気あるいは水蒸気であるスチームに気液接触させて、この有機性廃液Wからアンモニアを分離して除去して処理水にする。
【0041】
ここで、この有機性廃液Wは、数百から数万mg/lのアンモニアを含有するとともに、数百から数万mg/lの浮遊物質量(Suspended Solid:SS)濃度を有するし尿、浄化槽汚泥、下水あるいは畜産糞尿などである。すなわち、この有機性廃液Wは、曝気によって激しい発泡が生じる特性を有している。このため、アンモニアストリッピング装置1は、有機性廃液Wの発泡を抑制しながら、この有機性廃液Wを安定した液質の処理液にする。
【0042】
また、このアンモニアストリッピング装置1は、上下方向に軸方向を有する有底円筒状の反応槽としてのスプレー塔である反応塔2を備えている。この反応塔2は、球面状の底面部3を備えている。また、この反応塔2の内部には、所定量の有機性廃液Wが貯留されて滞留される。さらに、この反応塔2には、この反応塔2内に貯留された有機性廃液WのpHを測定するpH測定手段としてのpH計2aが取り付けられている。また、この反応塔2には、この反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの温度を測定する温度測定手段としての温度計2bが取り付けられている。なお、この有機性廃液WのpHおよび温度は、アンモニアストリッピング装置1でのアンモニアストリッピングの影響因子である。
【0043】
そして、この反応塔2には、この反応塔2内に貯留された有機性廃液Wを、この反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの液面Pよりも上方である反応塔2内に散水させる散水手段としての散水装置4が取り付けられている。言い換えると、この散水装置4は、反応塔2内の上部から有機性廃液Wを散水する。また、この散水装置4は、有機性廃液Wの原水を反応塔2内へと引き込む有機性廃液流入管としての散水ラインである散水配管5を備えている。この散水配管5には、この散水配管5へと流れ込む有機性廃液Wを反応塔2内へと圧送して散水させる圧送手段としての原水ポンプである散水ポンプ6が取り付けられている。また、この散水配管5の一端である下流端は、反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの液面Pよりも上方の反応塔2の内周面に取り付けられたスプレーノズル7の基端側に連通接続されている。
【0044】
ここで、このスプレーノズル7は、粒径の小さい液滴を噴霧することで気液界面を大きくしてアンモニアストリッピングの効率を上げるためのものである。すなわち、このスプレーノズル7としては、SSなどを含む有機性廃液Wを対象としたアンモニアストリッピングの場合に、液滴の粒径を小さくすることと、SSなどによる閉塞が生じないこととの両方の機能を持ち合わせた無閉塞型が望ましい。
【0045】
具体的に、このスプレーノズル7としては、無閉塞型スプレーノズル(株式会社いけうち製 YYPシリーズ)が望ましい。この無閉塞型スプレーノズルは、低い液圧にもかかわらず広角の扇形塘霧を発生できる、霧化性能、スプレーパターンあるいは流量分布が煩雑であり打力も劣るが、目詰まりしにくいといった特性がある。また、この無閉塞型スプレーノズルは、消泡用スプレーノズルとしても使用できる。また、スプレーノズル7としては、無閉塞型スプレーノズル例(株式会社いけうち製 TAAシリーズ)も望ましい。この無閉塞型スプレーノズルは、インボリュート形の理想的旋流室設計により、低水圧でも安定したスプレーパターンである管状の空円錐噴霧を発生できる。また、この無閉塞型スプレーノズルは、スラリ液の噴霧にも使用できる。
【0046】
そして、スプレーノズル7は、先端が閉塞された有底円筒状の本体部8を備えている。この本体部8の先端側の周面部には、この本体部8の径方向に向けて開口した半円状の比較的孔径の大きい開口部としての散水口9が設けられている。この散水口9は、本体部8の先端側が円弧状に形成されており、本体部8の基端側が直線状に形成されている。そして、スプレーノズル7は、このスプレーノズル7の散水口9を下方、すなわち反応塔2の底面部3側に向けた状態で、この反応塔2の内周面に突設されている。
【0047】
さらに、散水装置4には、この散水装置4にて散水する有機性廃液WのpHを調整するpH調整手段としてのpH調整剤注入装置11が取り付けられている。このpH調整剤注入装置11は、pH調整剤を引き込んで、散水装置4の散水配管5内を流れる有機性廃液WへとpH調整剤を供給して添加するpH調整ラインとしてのpH調整配管12を備えている。このpH調整配管12には、このpH調整配管12へと流れ込むpH調整剤を圧送して散水装置4の散水配管5内へと供給する圧送手段としてのpH調整ポンプ13が取り付けられている。なお、このpH調整配管12の一端である下流端は、散水配管5の下流側に連通接続されている。
【0048】
また、散水装置4の散水配管5には、この散水配管5にて散水される有機性廃液Wを加熱する加熱手段としてのヒータ14が取り付けられている。このヒータ14は、散水配管5を通過する有機性廃液Wの液温を自動調整する。ここで、このヒータ14は、散水配管5におけるpH調整剤注入装置11のpH調整配管12の下流端が接続された位置よりも下流側に取り付けられている。
【0049】
そして、このヒータ14は、散水装置4の散水配管5にて散水する有機性廃液Wの温度を60℃以上85℃以下に加熱して温度制御する。したがって、この散水装置4の散水配管5からは、ヒータ14にて60℃以上85℃以下に加熱された有機性廃液Wが散水される。このとき、このヒータ14の代わりに、スチームを有機性廃液W中に吹き込んで、この有機性廃液Wの温度を所定の温度に加熱して調整する加熱手段とすることもできる。
【0050】
さらに、この散水装置4には、この散水装置4にて散水する有機性廃液Wによる反応塔2内での有機性廃液Wの発泡を抑制させて消失させる消泡手段としての非常用の消泡剤注入装置15が取り付けられている。この消泡剤注入装置15は、消泡剤を引き込んで、散水装置4の散水配管5内を流れる有機性廃液Wへと消泡剤を供給して添加する消泡ラインとしての消泡配管16を備えている。そして、この消泡配管16には、この消泡配管16へと流れ込む消泡剤を圧送して散水装置4の散水配管5内へと供給する圧送手段としての消泡ポンプ17が取り付けられている。なお、この消泡配管16の下流端は、pH調整剤注入装置11のpH調整配管12が接続された箇所よりも散水配管5の上流側に連通接続されている。
【0051】
さらに、散水装置4には、反応塔2内に貯留された有機性廃液Wを循環させる循環手段としての循環装置21が取り付けられている。この循環装置21は、反応塔2内に貯留された有機性廃液Wが供給されて、この反応塔2内に貯留された有機性廃液Wよりも上方へと再び返送させる。また、この循環装置21は、反応塔2内の有機性廃液Wを散水配管5へと引き込む循環ラインとしての循環配管22を備えている。この循環配管22には、この循環配管22へと流れ込む有機性廃液Wを、散水配管5を介して反応塔2内へと圧送して循環させる圧送手段としての循環ポンプ23が取り付けられている。
【0052】
また、この循環配管22の一端である上流端は、反応塔2の底面部3に取り付けられて、この反応塔2内に連通接続されている。さらに、この循環配管22の他端である下流端は、散水配管5におけるヒータ14よりも下流側に連通接続されている。ここで、この循環配管22の下流端は、散水配管5における散水ポンプ6よりも上流側に連結されている。
【0053】
一方、反応塔2には、この反応塔2内に空気あるいはスチームを吹き込む吹込手段としての吹込装置25が取り付けられている。この吹込装置25は、この吹込装置25にて吹き込んだ空気あるいはスチームを反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの液面Pに沿って吹き付ける。言い換えると、この吹込装置25は、この吹込装置25にて吹き込んだ空気あるいはスチームを、反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの液面Pに向けて吹き付けて、散水装置4のスプレーノズル7から散水される有機性廃液Wに気液接触させる。
【0054】
そして、この吹込装置25は、空気あるいはスチームを反応塔2内へと吹き込む直線状の吹込ラインとしての吹込配管26を備えている。この吹込配管26には、この吹込配管26へと吹き込まれた空気あるいはスチームを、反応塔2内へと吹き込む圧送手段としての吹込ブロワ27が取り付けられている。また、この吹込配管26の一端である下流端は、反応塔2の周面部に連通接続されている。さらに、この吹込配管26の下流端は、反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの液面Pに沿った位置に水平に取り付けられている。
【0055】
一方、反応塔2の上側には、この反応塔2内に漂う空気およびスチームを通過させて、この反応塔2内に漂う有機性廃液Wの微小粒子であるミストを分離するミストセパレータ31が取り付けられている。このミストセパレータ31は、反応塔2の上側を閉塞するように取り付けられている。そして、このミストセパレータ31は、反応塔2内に漂う空気あるいはスチームから、この反応塔2内に漂う有機性廃液Wのミストを分離して、これら空気あるいはスチームを排出させる。
【0056】
さらに、このミストセパレータ31の下流側には、このミストセパレータ31にて分離された空気あるいはスチームであるアンモニアを含有した排ガスを燃焼処理する排ガス処理手段としての排ガス処理装置32が取り付けられている。そして、この排ガス処理装置32の下流側には、排ガス処理装置32によるアンモニアを含有する排ガスの燃焼処理により、この排ガスに加えられた熱を回収する熱回収手段としての排ガス放出手段であるガス熱回収設備33が取り付けられている。このガス熱回収設備33は、排ガス処理装置32にて燃焼処理されたアンモニアを含有する排ガスを大気に放出させる。
【0057】
一方、反応塔2には、この反応塔2内に貯留され、この反応塔2内でアンモニアが分離されて除去された有機性廃液Wの処理液を排出させる排出手段としての排出装置35が取り付けられている。この排出装置35は、反応塔2内の処理液を、この反応塔2の外部へと排出させる排出ラインとしての排出配管36を備えている。この排出配管36には、この排出配管36へと流れ込む処理液を系外へと圧送して排出させる圧送手段としての処理水ポンプである排出ポンプ37が取り付けられている。また、この排出配管36の一端である上流端は、反応塔2の底面部3に取り付けられており、循環装置21の循環配管22の上流端に対向している。
【0058】
さらに、この排出配管36の他端である下流端には、この排出配管36から排出される処理液から熱を回収する廃液熱回収手段としての液熱回収設備41が取り付けられている。この液熱回収設備41は、この液熱回収設備41にて回収した熱を、散水装置4の散水配管5へと引き込まれる前の有機性廃液Wの原水に加えて、この有機性廃液Wの原水を加熱する。すなわち、この液熱回収設備41には、散水装置4の散水配管5へと引き込まれる前の有機性廃液Wの原水が流入されて排出されている。
【0059】
ここで、この液熱回収設備41を通過して、この液熱回収設備41にて加熱された有機性廃液Wの原水は、ガス熱回収設備33へと流入されて排出される。すなわち、このガス熱回収設備33は、排ガス処理装置32での燃焼処理にて加熱されたアンモニアを含有する排ガスから回収した熱を、液熱回収設備41にて加熱された有機性廃液Wの原水に加えて、この有機性廃液Wの原水をさらに加熱する。そして、このガス熱回収設備33を通過して、このガス熱回収設備33にて加熱された有機性廃液Wの原水は、散水装置4の散水配管5の上流端へと供給される。
【0060】
次に、上記第1の実施の形態の有機性廃液の処理装置による有機性廃液の処理方法としての有機性廃液からのアンモニア性窒素分離方法を説明する。
【0061】
まず、吹込装置25の吹込ブロワ27による圧送により空気あるいはスチームを、吹込配管26から反応塔2内へと吹き込ませる。
【0062】
この後、し尿、浄化槽汚泥、下水あるいは畜産糞尿などの有機性廃液Wの原水を散水装置4の散水配管5に流入させて、この有機性廃液Wの原水をヒータ14にて60℃以上85℃以下の温度に加熱してから、この有機性廃液Wの原水を散水装置4の散水ポンプ6による圧送にてスプレーノズル7から反応塔2内に散水させる。
【0063】
このとき、pH調整剤注入装置11によって散水装置4の散水配管5を通過する有機性廃液WにpH調整剤を注入して、この有機性廃液WのpHを所定の値に自動調整する。
【0064】
そして、散水装置4のスプレーノズル7から散水された有機性廃液Wは、反応塔2内に吹き込まれた空気あるいはスチームに気液接触して、この有機性廃液W中のアンモニアが分離される。
【0065】
この後、空気あるいはスチームによる気液接触によりアンモニアが分離された有機性廃液Wは、反応塔2内に貯留されるとともに、循環装置21の循環ポンプ23による圧送により散水装置4の散水配管5へと循環される。
【0066】
このとき、この散水装置4による有機性廃液Wの散水によって、反応塔2内の有機性廃液Wが異常発泡した場合には、消泡剤注入装置15の消泡ポンプ17による圧送によって消泡剤を散水装置4の散水配管5内の有機性廃液Wに添加する。
【0067】
一方、反応塔2内での有機性廃液Wの気液接触がなされた後の空気あるいはスチームは、反応塔2の上側へと上昇してから、この反応塔2内に漂う有機性廃液Wの微小粒子がミストセパレータ31にて分離された後に排出される。
【0068】
さらに、このミストセパレータ31から排出された空気あるいはスチームであるアンモニアを含有した排ガスは、排ガス処理装置32にて燃焼処理された後、ガス熱回収設備33へと排出される。
【0069】
このとき、このガス熱回収設備33によって、排ガス処理装置32での燃焼処理により排ガスに加えられた熱が回収される。
【0070】
そして、このガス熱回収設備33にて熱が回収された排ガスは、大気へと放出される。
【0071】
さらに、反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの処理液は、排出装置35の排出ポンプ37による圧送によって排出配管36を介して液熱回収設備41へと排出される。
【0072】
このとき、この液熱回収設備41によって、有機性廃液Wの処理液の熱が回収される。
【0073】
そして、この液熱回収設備41にて熱が回収された有機性廃液Wの処理液は、河川などへと放流される。
【0074】
さらに、この液熱回収設備41によって回収された熱は、この液熱回収設備41へと供給されて排出される有機性廃液Wの原水へと加えられて、この原水が加熱される。
【0075】
また、この液熱回収設備41によって加熱された有機性廃液Wの原水は、ガス熱回収設備33へと供給されて、このガス熱回収設備33にて回収した熱が加えられて加熱される。
【0076】
この後、このガス熱回収設備33にて加熱された有機性廃液Wの原水は、散水装置4の散水配管5へと供給されて、この散水装置4のスプレーノズル7から反応塔2内に散水される。この結果、有機性廃液Wの連続処理が可能となる。
【0077】
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、反応塔2内に貯留される有機性廃液Wの処理液を循環装置21にて散水装置4の散水配管5へと循環させた。この結果、この反応塔2内に貯留される有機性廃液Wの処理液が再び散水装置4のスプレーノズル7から散水される。したがって、反応塔2内に貯留される有機性廃液Wの処理液のスプレーノズル7からの散水により、この有機性廃液Wの処理液を再びアンモニアストリッピング処理できる。よって、反応塔2による有機性廃液Wのアンモニアストリッピング処理をより効率良く良好にできるとともに、複数の反応槽を備えた有機性廃液の処理装置に比べ、設置スペースを小さくできる。
【0078】
この結果、数百から数万mg/lのアンモニアを含有するとともに、数百から数万mg/lの浮遊物質量濃度を有するし尿、浄化槽汚泥、下水あるいは畜産糞尿などの有機性廃液Wであっても、この有機性廃液Wを効率良くアンモニアストリッピング処理できる。
【0079】
さらに、吹込装置25によって空気あるいはスチームを反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの液面Pに沿って吹き付けて、これら空気あるいはスチームを反応塔2内に供給させた。この結果、散水装置4のスプレーノズル7から散水される有機性廃液Wを吹込装置25にて吹き込んだ空気あるいはスチームによって巻き上げることができる。
【0080】
したがって、散水装置4のスプレーノズル7から散水される有機性廃液Wによる、反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの液面への落下を抑制できる。この結果、散水装置4のスプレーノズル7から散水される有機性廃液Wへの空気あるいはスチームの気液接触をより効率良くできる。このため、この有機性廃液Wからのアンモニアの分離をより効率良くできるので、この有機性廃液Wのアンモニア性窒素の除去率を向上できる。同時に、吹込装置25によって空気あるいはスチームを反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの液面Pに沿って吹き付けたことにより、この反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの発泡を抑制できる。
【0081】
また、散水装置4の散水配管5から供給される有機性廃液Wを無閉鎖型のスプレーノズル7から反応塔2内に散水させた。このため、反応塔2内への有機性廃液Wの散水をより均等かつ細かく散水できるとともに、この有機性廃液Wを反応塔2内に適切に散布できる。
【0082】
よって、この反応塔2内に散水される有機性廃液Wによる空気あるいはスチームへの気液接触をより効率良くできるから、この反応塔2内での有機性廃液Wのアンモニアストリッピング処理をより効率良くできる。同時に、反応塔2内に貯留された有機性廃液Wを循環装置21にて散水装置4へと循環させたので、この散水装置4のスプレーノズル7の目詰まりを防止できる。
【0083】
さらに、散水装置4にて反応塔2へと散水する有機性廃液Wのストリッピング温度が60℃より低い場合には、図2に示すように、この有機性廃液Wの原水に対するSSの変化率が小さく、図3に示すように、この有機性廃液Wに対するCODCrの変化率が小さいから、この有機性廃液W中のSSやCODCrを効率良く減少できない。これに対し、この有機性廃液Wの温度を60℃以上とした場合には、図2および図3に示すように、この有機性廃液Wの原水に対するSSおよびCODCrそれぞれの変化率が次第に大きくなる。
【0084】
また、この有機性廃液Wの原水の温度をヒータ14にて85℃より高く加熱した場合には、この有機性廃液Wの加熱に要するエネルギ量が増加し過ぎるとともに、この有機性廃液Wの加熱に伴って、この有機性廃液Wが蒸発してしまうので、この有機性廃液Wを効率良く処理できない。したがって、この有機性廃液Wをヒータ14にて60℃以上85℃以下の温度に加熱して温度制御して反応塔2へと散水することによって、この有機性廃液W中のSSの減少およびCODCrの処理のそれぞれが効率良くできる。
【0085】
なお、上記第1の実施の形態では、散水装置4のスプレーノズル7から有機性廃液Wを反応塔2内に散水させたが、図4に示す第2の実施の形態のように、散水装置4の散水配管5の下流側を反応塔2内に突出させて、この散水配管5の下流端から散水される有機性廃液Wを、反応塔2内に設置された円形平板状の拡散手段としての当て板43の一主面としての表面に当てて拡散させることもできる。
【0086】
ここで、この当て板43は、反応塔2の径方向に沿った面方向を有しており、この反応塔2内における中心軸状に設置されている。また、この当て板43は、反応塔2内に貯留される有機性廃液Wの処理液の液面よりも上方に設置されている。さらに、散水装置4の散水配管5の下流側は、反応塔2内の当て板43よりも上方に位置している。また、この散水配管5は、この散水配管5の下流端が当て板43の上面の中心上に位置するように設置されている。したがって、この当て板43は、散水装置4の散水配管5の下流端から散水される有機性廃液Wが、この当て板43の上面の上方に散水させて、この有機性廃液Wが当て板43の上面の中心に当って均等に拡散させる。
【0087】
この結果、散水装置4の散水配管5の下流端から散水される有機性廃液Wを、反応塔2内に設置された当て板43よりも上方に散水させて、この有機性廃液Wを当て板43の上面に当てて均等に拡散させることにより、この有機性廃液Wを反応塔2内で効率良く拡散できる。したがって、この反応塔2内における有機性廃液Wによる空気あるいはスチームへの気液接触をより効率良くできるから、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0088】
さらに、散水装置4の散水配管5の下流端から散水される有機性廃液Wを、反応塔2内の当て板43の上面に当てて拡散させることにより、散水装置4の目詰まりなどが生じ得なくなる。このため、この散水装置4の損傷を確実に防止できるとともに、アンモニアストリッピング装置1による有機性廃液Wの処理をより容易に連続させて継続できる。
【0089】
また、図5に示す第3の実施の形態のように、当て板43の面方向を上下方向に沿わせた状態で、この当て板43を反応塔2内に設置させることもできる。この場合、散水装置4の散水配管5の下流端から散水される有機性廃液Wが当て板43の表面の中央に当って拡散されるように、この散水配管5の下流側を反応塔2内に突出させる。すなわち、この散水配管5の下流端は、当て板43の表面の同心状となるように、この当て板43の表面に対向している。
【0090】
この結果、散水装置4の散水配管5の下流端から散水される有機性廃液Wを、反応塔2内の当て板43の表面に当てて拡散させることにより、この有機性廃水Wを反応塔2内で効率良く拡散できる。したがって、この反応塔2内における有機性廃液Wによる空気あるいはスチームへの気液接触をより効率良くできるから、上記第2の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0091】
さらに、当て板43の面方向を上下方向に沿わせたので、反応塔2内での有機性廃液Wのアンモニアストリッピング処理により生じるアンモニアを含んだ排ガスの上昇を当て板43が阻害しにくい。したがって、反応塔2内で生じたアンモニアを含んだ排ガスの排出をより効率良くできるから、この反応塔2内での有機性廃液Wのアンモニアストリッピング処理をより効率良くできる。
【0092】
次に、本発明の第4の実施の形態を図6を参照して説明する。
【0093】
この図6に示す有機性廃液の処理システムとしてのアンモニアストリッピング処理システム51は、基本的には図1に示すアンモニアストリッピング装置1を複数、例えば3台備えたものである。すなわち、このアンモニアストリッピング処理システム51の最も上流側に設置された第1のアンモニアストリッピング装置1の反応塔2である反応槽としての第1の反応塔52には、散水装置4、pH調整剤注入装置11、消泡剤注入装置15、循環装置21、吹込装置25、ミストセパレータ31、排ガス処理装置32およびガス熱回収設備33のそれぞれが取り付けられている。
【0094】
また、この第1の反応塔52の下流側に設置された第2のアンモニアストリッピング装置1の反応塔2である反応槽としての第2の反応塔53には、散水装置4、循環装置21、吹込装置25およびミストセパレータ31のそれぞれが取り付けられている。さらに、この第2の反応塔53の下流側である最も下流側に設置された第3のアンモニアストリッピング装置1の反応塔2である反応槽としての第3の反応塔54には、散水装置4、循環装置21、吹込装置25、ミストセパレータ31、排出装置35および液熱回収設備41のそれぞれが取り付けられている。
【0095】
そして、第2の反応塔53の散水装置4の散水配管5の上流端は、第1の反応塔52の底面部3に連通接続されている。すなわち、この第2の反応塔53の散水装置4は、第1の反応塔52内に貯留された有機性廃液Wの処理液を排出させる排出手段として機能する。また、この第2の反応塔53の散水装置4は、第1の反応塔52内に貯留された有機性廃液Wの処理液を排出させて、この有機性廃液Wの処理液を第2の反応塔53内へと散水させる。
【0096】
さらに、第1の反応塔52の吹込装置25の吹込配管26の下流端は、第2の反応塔53の上端に連通接続されている。すなわち、この第1の反応塔52の吹込装置25は、第2の反応塔53内でのアンモニアストリッピング処理により生じ、この第2の反応塔53のミストセパレータ31により分離されて排出されたアンモニアを含有する排ガスを、第1の反応塔52内に吹き込む。
【0097】
また、第3の反応塔54の散水装置4の散水配管5の上流端は、第2の反応塔53の底面部3に連通接続されている。また、この第3の反応塔54の散水装置4は、第2の反応塔53内に貯留された有機性廃液Wの処理液を排出させて、この有機性廃液Wの処理液を第3の反応塔54内へと散水させる。さらに、第2の反応塔53の吹込装置25の吹込配管26の下流端は、第3の反応塔54の上端に連通接続されている。すなわち、この第2の反応塔53の吹込装置25は、第3の反応塔54のミストセパレータ31から排出されたアンモニアを含有する排ガスを、第2の反応塔53内に吹き込む。したがって、これら第1の反応塔52、第2の反応塔53および第3の反応塔54のそれぞれは、直列的に接続されて多段に連結されている。
【0098】
次に、上記第4の実施の形態のアンモニアストリッピング処理システムによる有機性廃液の処理方法を説明する。
【0099】
まず、第1の反応塔52内に散水された有機性廃液Wは、この第1の反応塔52内でアンモニアストリッピング処理された後に、この第1の反応塔52から排出されて第2の反応塔53内に散水される。
【0100】
さらに、この第2の反応塔53内に散水された有機性廃液Wは、この第2の反応塔53内でアンモニアストリッピング処理された後に、この第2の反応塔53から排出されて第3の反応塔54内に散水される。
【0101】
この後、この第3の反応塔54内に散水された有機性廃液Wは、この第3の反応塔54内でアンモニアストリッピング処理された後に、この第3の反応塔54から液熱回収設備41へと排出される。
【0102】
一方、第3の反応塔54内に吹き込まれた空気あるいはスチームは、この第3の反応塔54内での有機性廃液Wの気液接触の後に、この第3の反応塔54内から排出されて第2の反応塔53内へと吹き込まれる。
【0103】
また、この第2の反応塔53内に吹き込まれた空気あるいはスチームは、この第2の反応塔53内での有機性廃液Wの気液接触の後に、この第2の反応塔内53から排出されて第1の反応塔52内へと吹き込まれる。
【0104】
さらに、この第1の反応塔52内に吹き込まれた空気あるいはスチームは、この第1の反応塔52内での有機性廃液Wの気液接触の後に、系外である排ガス処理装置32へと排出される。
【0105】
上述したように、上記第4の実施の形態によれば、第1の反応塔52内にて処理された有機性廃液Wを、第2の反応塔53および第3の反応塔54へと順次散水させて処理させる。このため、第2の反応塔53内には第1の反応塔52内に散水される有機性廃液Wよりもアンモニア含有濃度の低い有機性廃液Wが散水される。さらに、第3の反応塔54内には第2の反応塔53内に散水される有機性廃液Wよりもさらにアンモニア含有濃度の低い有機性廃液Wが散水される。
【0106】
そこで、第3の反応塔54内へと吹き込まれる空気あるいはスチームを、第2の反応塔53内へと吹き込ませた後、この第2の反応塔53内へと吹き込まれる空気あるいはスチームを、第1の反応塔52内へと吹き込ませる。すなわち、これら複数の第1の反応塔52、第2の反応塔53および第3の反応塔54へと散水される有機性廃液Wの流れと、これら複数の第1の反応塔52、第2の反応塔53および第3の反応塔54へと吹き込まれる空気あるいはスチームの流れを対向させる。
【0107】
この結果、これら第1の反応塔52、第2の反応塔53および第3の反応塔54へと散水される有機性廃液Wにおけるアンモニアの含有量が少ない順に、アンモニアの気液接触量の少ない空気あるいはスチームを段階的に接触させることができる。したがって、これら複数の第1の反応塔52、第2の反応塔53および第3の反応塔54による有機性廃液Wのアンモニアストリッピング処理をより効率良くできる。よって、この有機性廃液Wからのアンモニアの除去効率をより向上できる。
【0108】
次に、本発明の第5の実施の形態を図7を参照して説明する。
【0109】
この図7に示すアンモニアストリッピング処理システム61は、アンモニアストリッピング装置1へと供給される有機性廃液Wの原液を前処理としてメタン発酵させるとともに、このアンモニアストリッピング装置1にて処理された有機性廃液Wの処理液を固形物と濾液とに固液分離させる有機性廃液の処理システムである。
【0110】
そして、アンモニアストリッピング装置1の上流側には、このアンモニアストリッピング装置1へと供給される有機性廃液Wの原液をメタン発酵させてメタン発酵処理する発酵処理手段としてのメタン発酵装置62が設置されている。このメタン発酵装置62には、返送手段としての処理液返送装置63が取り付けられている。この処理液返送装置63は、上流側がアンモニアストリッピング装置1に接続されており、下流側がメタン発酵装置62に接続されている。すなわち、この処理液返送装置63は、アンモニアストリッピング装置1でのアンモニアストリッピング処理にて処理された有機性廃液Wの処理液の全部または一部、すなわち少なくとも一部をメタン発酵装置62へと返送させる。
【0111】
よって、このメタン発酵装置62は、メタン発酵の阻害要因となるアンモニアの含有量が比較的低い有機性廃液Wの処理液を用いて、この有機性廃液Wをメタン発酵させる。さらに、アンモニアストリッピング装置1は、メタン発酵装置62にてメタン発酵処理された有機性廃液Wの原液が散水装置4から反応塔2内へと散水されて、この有機性廃液Wの原液をアンモニアストリッピング処理する。
【0112】
さらに、このアンモニアストリッピング装置1の下流側には、このアンモニアストリッピング装置1にて処理された有機性廃液Wの処理液を固液分離する固液分離手段としての固液分離装置64が設置されている。この固液分離装置64は、アンモニアストリッピング装置1にて処理された有機性廃液Wの処理液を濾過などによって固形物と濾液とに固液分離する。ここで、この固液分離装置64にて固液分離された後の濾液は、下水道などへと放流されたり、高度処理されたりする。また、この固液分離装置64にて固液分離された固形物は、コンポスト化、すなわち肥料化されて、コンポストとしての肥料とされる。
【0113】
上述したように、上記第5の実施の形態によれば、有機性廃液Wをメタン発酵装置62にてメタン発酵させてから、この有機性廃液Wをアンモニアストリッピング装置1にてアンモニアストリッピング処理させる。このとき、このアンモニアストリッピング装置1にてアンモニアストリッピング処理された有機性廃液Wの処理液を処理液返送装置63にてメタン発酵装置62へと返送させる。
【0114】
この結果、このメタン発酵装置62にてメタン発酵させた有機性廃液Wを、アンモニアストリッピング装置1にてさらに可溶化できる。このため、このアンモニアストリッピング装置1でのアンモニアストリッピング処理にて可溶化された有機性廃液Wの処理液からメタンガスを回収できる。同時に、このアンモニアストリッピング装置1によって、メタン発酵装置62でのメタン発酵であるメタン生成の阻害要因となるアンモニアが分離された、アンモニア濃度の低い有機性廃液Wの処理液をメタン発酵装置62でのメタン発酵の原料にできる。したがって、このメタン発酵装置62による有機性廃液Wのメタン発酵をより効率良くできるとともに、アンモニアストリッピング装置1による有機性廃液Wのアンモニアストリッピング処理をより効率良くできる。
【0115】
よって、尿、浄化槽汚泥、下水あるいは畜産糞尿などの汚泥や生ごみなどの有機性廃棄物を原料としたメタン発酵後の有機性廃液Wであっても、この有機性廃液Wをメタン発酵装置62、アンモニアストリッピング装置1および処理液返送装置63によって効率良くアンモニアストリッピング処理できる。
【0116】
なお、上記第5の実施の形態では、アンモニアストリッピング装置1にてアンモニアストリッピング処理された後の有機性廃液Wの処理液を固液分離装置64にて固液分離させたが、図8に示す第6の実施の形態のように、有機性廃液Wの原水をメタン発酵装置62へと供給させ、このメタン発酵装置62にてメタン発酵処理された有機性廃液Wの処理液をアンモニアストリッピング装置1にてアンモニアストリッピング処置した後に処理液返送装置63にて再度メタン発酵装置62へと返送させて、このメタン発酵装置62にてメタン発酵処理された有機性廃液Wの処理液を固液分離装置64にて固液分離させることもできる。
【0117】
また、上記各実施の形態では、アンモニアストリッピング装置1の反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの処理液の水面に向けて空気あるいはスチームを吹込装置25にて吹き付けたが、これら空気あるいはスチームを吹込装置25により反応塔2内の有機性廃液W中に吹き込むこともできる。この結果、反応塔2内に散水装置4にて散水された有機性廃液Wの落下を効率良く防止できるので、この散水装置4から散水された有機性廃液Wを効率良く空気あるいはスチームに気液接触できる。よって、この有機性廃液Wのアンモニアストリッピング処理をより効率良くできる。
【実施例】
【0118】
次に、上記有機性廃液からのアンモニア性窒素分解の実施例について説明する。
【0119】
(実験例1)
まず、アンモニアストリッピング装置1の確立および処理特性の把握について試験した。そして、この試験には、図1に示すアンモニアストリッピング装置1を用いた。ここで、このアンモニアストリッピング装置1の反応塔2は、内部容積が14lであり、散水ポンプ6および排出ポンプ37の出力を4.8ml/分以上480ml/分以下とした。また、循環ポンプ23の出力を20l/分×18mとし、吹込ブロワ27の出力を200l/分×20kPaとし、ヒータ71の出力を6kWとした。
【0120】
そして、このアンモニアストリッピング装置1の反応塔2内の有機性廃液Wを循環装置21にて循環させて、散水装置4の無閉塞型のスプレーノズル7から散水させて、この有機性廃液Wを、吹込装置25にて反応塔2に吹き込んだ空気に気液接触させた。さらに、この有機性廃液Wの気液接触により生じるアンモニアを含有した排ガスは、ミストセパレータ31を通過させて燃焼処理させた。
【0121】
また、反応塔2内に散水される有機性廃液Wの液温およびpHのそれぞれは、ヒータ71およびpH調整剤注入装置11によって自動調整させた。
【0122】
そして、アンモニアストリッピング装置1を連続運転させて、このアンモニアストリッピング装置1の反応塔2内に有機性廃液Wの原水を連続的に投入して散水させるとともに、この反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの処理液を排出装置35によって連続的に引き抜いた。
【0123】
このとき、有機性廃液Wの原水としては、メタン発酵処理された後に脱水濾過させたメタン発酵消化液の脱水濾液と、メタン発酵処理された後のメタン発酵消化液を用いた。
【0124】
さらに、アンモニアストリッピング装置1のアンモニアストリッピング条件としては、表1に示すように、有機性廃液Wの液温を60℃、70℃、80℃および85℃と段階的に変化させて回分試験した。このとき、この有機性廃液WのpHは、試験開始前に所定値であるpH12に調整するだけで、試験開始後のpH変動に伴う再調整をしなかった。また、このときの気液比を300に固定した。なお、この気液比は、反応塔2内に送風される空気の積算送風量/反応塔2内に散水される有機性廃液Wの液量である。
【0125】
【表1】

【0126】
この結果、図9に示すように、有機性廃液Wの温度が高いほど、この有機性廃液WのNH−N除去率が向上した。
【0127】
また、表2に示すように、有機性廃液WのpHを無調整、9、10、11および12と段階的に変化させて回分試験した。このとき、有機性廃液Wの液温を80℃とし、気液比を300に固定した。
【0128】
この結果、図10に示すように、有機性廃液WのNH−N除去率は、初期pHが10以上でほぼ一定となった。これはpH10において、アンモニウムイオンのほとんどが遊離アンモニアとなっていると考えられる。また、pH無調整、pH9ではやや劣るものの、各pH間でのNH−N除去率の大きな変化は見られなかった。
【0129】
さらに、図11に示すように、初期pHが10以上の場合は、若干pHが低下したものの大きな変化は見られなかった。一方、初期pHが無調整あるいは9の場合には、処理開始15分後にpHが9.3に上昇し、以降9.3以上9.6以下を維持した。
【0130】
また、有機性廃液Wとして消化汚泥脱水濾液を用いて、この有機性廃液W中のIC(全炭酸)の経時変化を測定したところ、図12に示すように、この有機性廃液W中の消化汚泥および脱水濾液などは、この有機性廃液Wが嫌気性処理液の場合にNHがHCOと釣り合って存在する。このため、この有機性廃液Wを加温してアンモニアストリッピング処理すると、NH+HCO→NH↑+CO+HOの反応が起こる。このため、pH詞整の有無に関わらず、NH−N除去効率が余り変化しない結果となった。
【0131】
さらに、表3に示すように、反応塔2内に散水される有機性廃液Wと、この反応塔2内に吹き込まれる空気との気液比を150、300および450と段階的に変化させて回分試験した。このとき、有機性廃液Wの初期pHを10に調整するとともに、この有機性廃液Wの液温を80℃に固定した。ここで、この回分試験での有機性廃液Wの散水回数は、(反応塔2内を循環する有機性廃液Wの処理液の積算循環液量)/(反応塔2内に散水される有機性廃液Wの原水の液量)とした。
【0132】
【表2】

【0133】
【表3】

【0134】
この結果、図13に示すように、気液比が大きいほど、NH−N除去率が向上した。
【0135】
さらに、上記回分試験におけるNH−N以外の除去特性について検討した。
【0136】
まず、アンモニアストリッピングに伴うSSの変化として、図14に示すように、有機性廃液Wの液温が80℃であり、気液比が300であり、有機性廃液Wの初期pHが無調整である条件で、有機性廃液Wをメタン発酵消化液として、この有機性廃液Wをアンモニアストリッピング処理した際におけるSSの経時変化を測定した。
【0137】
結果として、有機性廃液Wの液温を80℃まで上昇させたことと、この有機性廃液Wのアンモニアストリッピング処理によって、この有機性廃液WのpHが9以上まで上昇したことによって、メタン発酵処理された後の有機性廃液W中のSSが可溶化されたと考えられる。
【0138】
また、この有機性廃液Wのアンモニアストリッピングに伴うCOD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)Mnの変化は、図15に示すように、この有機性廃液Wの液温を80℃まで上昇させたことと、この有機性廃液Wのアンモニアストリッピング処理によって、この有機性廃液WのpHが9以上まで上昇したことによって、この有機性廃液W中の有機物の低分子化、易分解性有機物の分解、揮発性有機物の揮発などが生じたためと考えられる。
【0139】
さらに、この有機性廃液Wのアンモニアストリッピングに伴う有機態窒素の変化を、この有機性廃液WのT−N分析値とNH−N分析値との差から算出した。この結果、図16に示すように、有機性廃液W中の有機態窒素の減少は、アミンなどの揮発性有機態窒素の揮発、有機物の分解により発生したアンモニア性窒素のストリッピング処理によるものと考えられる。
【0140】
(実験例2)
次いで、アンモニアストリッピング装置1を連続運転させて、このアンモニアストリッピング装置1を連続試験した。
【0141】
このとき、このアンモニアストリッピング装置1のアンモニアストリッピング条件としては、表4に示すように、反応塔2内の有機性廃液Wと空気との気液比を150、300および450と段階的に変化させた。このとき、有機性廃液Wの液温を85℃に固定した。ここで、気液比は、(反応塔2内への空気の送風量)/(有機性廃液Wの原水の反応塔2内への投入量)である。
【0142】
【表4】

【0143】
この結果、図17に示すように、気液比が大きいほど、NH−N除去率が向上した。
【0144】
また、表5に示すように、反応塔2内への有機性廃液Wの散水回数を、30、41および58と段階的に変化させた。このとき、有機性廃液Wの液温を85℃に固定するとともに、気液比を300に固定した。ここで、散水回数は、(反応塔2内を循環する有機性廃液Wの処理液の循環液量)/(反応塔2内へと散水される有機性廃液Wの原水の投入量)である。
【0145】
【表5】

【0146】
この結果、図18に示すように、散水回数、すなわち循環回数が大きいほど、NH−N除去率が向上した。
【0147】
さらに、上記連続試験におけるNH−N以外の除去特性について検討した。
【0148】
まず、有機性廃液Wの液温が85℃であり、気液比が300であり、有機性廃液Wの初期pHが無調整である条件で、有機性廃液Wをメタン発酵消化液あるいは、メタン発酵消化液の脱水濾液として、これら有機性廃液Wをアンモニアストリッピングした際の水質を測定した。
【0149】
ここで、アンモニアストリッピング処理をすると有機性廃液Wの原水の一部が蒸気して排出されてしまうため、〔除去率={原水濃度−処理液濃度×(1−蒸発率)/100}/原水濃度〕、〔蒸発率=蒸発水量/原水量〕と定義した。
【0150】
【表6】

【0151】
【表7】

【0152】
この結果、NH−Nとともに、SS、Org−N(T−NとNH−Nとの差)、ICおよびT−CODcrが減少していることが確認できた。さらに、NH−N除去量とIC減少量がほぼ一致していることが確認できた。また、有機性廃液Wの処理液についてはSSが減少し、S−CODcrが増加していることからアンモニアストリッピング処理により、有機性廃液W中のSSが可溶化したと考えられる。
【0153】
(実験例3)
次いで、有機性廃液Wの液温を85℃とし、気液比を300とし、有機性廃液Wの初期pHを無調整とした条件で、吹込装置25による空気の送風方法を変化させて、この有機性廃液Wのアンモニアストリッピング連続試験をした。ここで、この有機性廃液Wとしては、メタン発酵消化液の脱水濾液を用いた。
【0154】
【表8】

【0155】
この結果、表8に示すように、反応塔2内に貯留された有機性廃液Wの液面下近傍に全量、またはこの液面下に一部を送風した場合には、NH−N除去率が向上した。これは有機性廃液Wの液面下に送風することにより生じる発泡や液の飛散によって気液界面が増加してアンモニアストリッピングの効率が向上したことに起因すると考えられる。
【0156】
また、このときに生じる有機性廃液Wの発泡は、散水装置4のスプレーノズル7からの有機性廃液Wの散水によって抑制されるから、この発泡が排ガスとともに反応塔2外へと流出されることはなかった。なお、反応塔2の底面部3に全量を送風した場合には、激しい発泡が生じ、散水装置4のスプレーノズル7からの有機性廃液Wの散水では消泡できず、消泡剤注入装置15による消泡剤の添加などが必要となる。
【0157】
(実験例4)
次に、メタン発酵装置62とアンモニアストリッピング装置1とを組み合わせたアンモニアストリッピング処理システム61の構築について試験した。
【0158】
具体的には、図7に示すように、メタン発酵装置62によりメタン発酵処埋された後の有機性廃液Wの消化液をアンモニアストリッピング装置1へと投入させた。そして、このアンモニアストリッピング装置1にてアンモニアストリッピング処理された有機性廃液Wの処理液の一部を処理液返送装置63にてメタン発酵装置62へと返送し、この有機性廃液Wの残りを固液分離装置64や既設処理場などの次行程へと移送させた。
【0159】
そして、有機性廃液Wの処理液の返送比を1および0とした場合の各工程での水質を測定した。ここで、この返送比は、(アンモニアストリッピング装置1からメタン発酵装置62への有機性廃液Wの処理液の返送量)/(メタン発酵装置62へと投入される有機性廃液Wの原水量)である。
【0160】
【表9】

【0161】
【表10】

【0162】
この結果、表9および表10に示すように、アンモニアストリッピング装置1により処理された有機性廃液Wの処理液をメタン発酵装置62へと返送させることにより、このメタン発酵装置62内におけるメタン生成の阻害物質であるNH−N濃度が低下した。さらに、アンモニアストリッピング装置1により処理された有機性廃液Wの処理液のSS、NH−N、TCODcr濃度のそれぞれも低下した。
【0163】
次いで、メタン発酵装置62に投入する有機性廃液Wの原水(投入基質)当りのメタン回収量を測定した。
【0164】
【表11】

【0165】
この結果、表11に示すように、アンモニアストリッピング装置1にて処理された有機性廃液Wの処理液をメタン発酵装置62へと返送させることにより、投入基質あたりのメタン回収量が増加した。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の第1の実施の形態の有機性廃液の処理装置を示す説明図である。
【図2】同上有機性廃液の処理装置にて処理する有機性廃液の温度とSSの変化率との関係を示す2次グラフである。
【図3】同上有機性廃液の処理装置にて処理する有機性廃液の温度とCODCrの変化率との関係を示す2次グラフである。
【図4】本発明の有機性廃液の処理装置の第2の実施の形態を示す説明図である。
【図5】本発明の有機性廃液の処理装置の第3の実施の形態を示す説明図である。
【図6】本発明の有機性廃液の処理システムの第4の実施の形態を示す説明図である。
【図7】本発明の有機性廃液の処理システムの第5の実施の形態を示す説明図である。
【図8】本発明の有機性廃液の処理システムの第6の実施の形態を示す説明図である。
【図9】本発明の有機性廃液の処理装置の実施例での回分試験による液温とアンモニア除去率との関係を示す2次グラフである。
【図10】同上有機性廃液の処理装置の回分試験による初期pH値とアンモニア除去率との関係を示す2次グラフである。
【図11】同上有機性廃液の処理装置の回分試験による処理時間とpHとの関係を示す2次グラフである。
【図12】同上有機性廃液の処理装置の回分試験による処理時間とIC除去率との関係を示す2次グラフである。
【図13】同上有機性廃液の処理装置の回分試験による気液比とアンモニア除去率との関係を示す2次グラフである。
【図14】同上有機性廃液の処理装置の回分試験による処理時間とSS除去率との関係を示す2次グラフである。
【図15】同上有機性廃液の処理装置の回分試験による処理時間とCODMn除去率との関係を示す2次グラフである。
【図16】同上有機性廃液の処理装置の回分試験による処理時間とOrg−N除去率との関係を示す2次グラフである。
【図17】同上有機性廃液の処理装置の連続試験による気液比とアンモニア除去率との関係を示す2次グラフである。
【図18】同上有機性廃液の処理装置の連続試験による循環回数とアンモニア除去率との関係を示す2次グラフである。
【符号の説明】
【0167】
1 有機性廃液の処理装置としてのアンモニアストリッピング装置
2 反応槽としての反応塔
4 散水手段としての散水装置
7 スプレーノズル
14 加熱手段としてのヒータ
21 循環手段としての循環装置
25 吹込手段としての吹込装置
43 当て板
51 有機性廃液の処理システムとしてのアンモニアストリッピング処理システム
52 反応槽としての第1の反応塔
53 反応槽としての第2の反応塔
54 反応槽としての第3の反応塔
61 有機性廃液の処理システムとしてのアンモニアストリッピング処理システム
62 発酵処理手段としてのメタン発酵装置
63 返送手段としての処理液返送装置
P 液面
W 有機性廃液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを含有する有機性廃液を散水して、この有機性廃液を空気および水蒸気のいずれかに接触させて前記有機性廃液からアンモニアを除去して処理水にする有機性廃液の処理装置であって、
前記有機性廃液が貯留される反応槽と、
この反応槽に貯留された前記有機性廃液の液面よりも上方に前記有機性廃液を散水する散水手段と、
前記反応槽に貯留された前記有機性廃液を前記散水手段へと循環させる循環手段と
を具備したことを特徴とした有機性廃液の処理装置。
【請求項2】
反応槽に貯留された有機性廃液の液面に向けて空気および水蒸気のいずれかを吹き込む吹込手段を具備した
ことを特徴とした請求項1記載の有機性廃液の処理装置。
【請求項3】
反応槽に貯留された有機性廃液中に空気および水蒸気のいずれかを吹き込む吹込手段を具備した
ことを特徴とした請求項1または2記載の有機性廃液の処理装置。
【請求項4】
散水手段は、有機性廃液を散水させるスプレーノズルを備えている
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか記載の有機性廃液の処理装置。
【請求項5】
反応槽に取り付けられ、散水手段にて散水される有機性廃液が当る当て板を具備した
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか記載の有機性廃液の処理装置。
【請求項6】
請求項2ないし5いずれか記載の有機性廃液の処理装置を複数具備し、
これら複数の有機性廃液の処理装置に順次有機性廃液を散水させてアンモニアを除去させて、下流側の前記有機性廃液の処理装置から前記有機性廃液を排出させるとともに、
この下流側の有機性廃液の処理装置の反応槽へと吹き込んだ空気および水蒸気のいずれかを、上流側の前記有機性廃液の処理装置の反応槽へと吹き込ませて、上流側の前記有機性廃液の処理装置から前記空気および水蒸気のいずれかを排出させる
ことを特徴とした有機性廃液の処理システム。
【請求項7】
請求項1ないし5いずれか記載の有機性廃液の処理装置と、
有機性廃液をメタン発酵処理する発酵処理手段と、
前記有機性廃液の処理装置にて処理された処理水を前記発酵処理手段へと返送する返送手段とを具備し、
前記有機性廃液の処置装置の散水手段は、前記発酵処理手段にてメタン発酵処理された前記有機性廃液を前記有機性廃液の処理装置の反応槽へと散水する
ことを特徴とした有機性廃液の処理システム。
【請求項8】
有機性廃液の温度を60℃以上85℃以下に加熱する加熱手段を具備し、
散水手段は、前記加熱手段にて加熱された前記有機性廃液を散水する
ことを特徴とした請求項1ないし7いずれか記載の有機性排液の処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−231126(P2006−231126A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45952(P2005−45952)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000101374)アタカ工業株式会社 (55)
【出願人】(501344821)株式会社アクアテック (4)
【Fターム(参考)】