説明

有機性残渣由来の植物伝染病防除剤及び真菌性外用剤

【課題】 薬害無しに、農作物の伝染病や動物の真菌性皮膚疾患に対して有効な植物伝染病防除剤及び真菌性外用剤を低コストで提供する。
【解決手段】 処理槽1内には処理媒質として微生物(有効菌)が固着された多孔質体、例えば、おがくず等の木質チップを使用した菌床3と共に茶殻が収容される。菌床3としての処理媒質として、リグニン分解菌、耐熱放線菌、白色腐朽性担子菌、セルロース分解菌、嫌気性有芽胞桿菌群、糸状菌、蛋白分解菌及び枯草菌の混合物をおがくずに定着させたものを使用する。8はガス排出管で、処理槽1内に発生した水蒸気を含んだガス(窒素・炭酸ガス)を槽外に排出できるようになっている。排気されたガスの水蒸気は、冷却装置10により結露され廃水処理が可能な清浄水(以下、茶殻処理水という)となり、ガス成分は浄化槽(図示せず)を通過させて無害な空気にして排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ゴミ等の有機性残渣を微生物分解して得られる処理水を用いた植物伝染病防除剤及び真菌性外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農作物等に発症する植物伝染病や家畜等の動物に発症する病疫に対して、各種薬剤が使用されているが、これらは化学薬品を合成して作られているため、副作用や残留物質が問題となっていた。また、価格も高価なものが多く、経営の安定しない農・畜産家では使用し難い状況があった。
【0003】
例えば、青枯病は、細菌による植物病害で、きゅうり等の農作物を侵す病害である。この病気に侵されると、葉が急に枯れだし、早い場合には、一週間ほどで枯死する病気の進行が非常に急激な病害であり、しかも収穫が始まる頃から発生する農作物栽培上影響の大きい病害である。青枯病の病原菌は土中で長期間生存するため、病害を防除するには、クロルピクリン剤等で土壌消毒する必要がある。しかし、このような殺菌法では、土壌中に存在する有用な微生物までも殺菌してしまうため、土壌中の生態系を大きく変化させ、土壌病原菌の新たな発生を助長し、病害を激発させてしまう可能性がある。そこで、化学合成殺菌剤に代えて、例えば、カニ殻とシュウドモナス・フルオレッセンスとの混合物からなる青枯病防除材(特許文献1参照。)等が提案されている。
【0004】
また、動物の寄生生物や白癬菌等によって引き起こされる真菌性皮膚疾患には、例えば、オレイン酸銅を活性成分として含む抗真菌作用を有する組成物(特許文献2参照。)等が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特許第2770119号公報
【特許文献2】特開平10−53522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、薬害無しに、農作物の伝染病や動物の真菌性皮膚疾患に対して有効な植物伝染病防除剤及び真菌性外用剤を低コストで提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、生ゴミ等の有機性残渣を微生物分解した際に得られる処理水が、農作物の伝染病及び動物の真菌性皮膚病に対して拮抗作用を示すことを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)有機性残渣を微生物分解した際に得られる処理水を主成分とする植物伝染病防除剤。
(2)有機性残渣を微生物分解した際に得られる処理水を主成分とする真菌性外用剤。
(3)有機性残渣が茶殻を含むことを特徴とする前記(1)記載の植物伝染病防除剤。
(4)有機性残渣が茶殻を含むことを特徴とする前記(2)記載の真菌性外用剤。
(5)微生物が、少なくともリグニン分解菌、耐熱放線菌、白色腐朽性担子菌、セルロース分解菌、嫌気性有芽胞桿菌群、糸状菌、蛋白分解菌及び枯草菌の複合物であることを特徴とする前記(1)又は前記(3)記載の植物伝染病防除剤。
(6)微生物が、少なくともリグニン分解菌、耐熱放線菌、白色腐朽性担子菌、セルロース分解菌、嫌気性有芽胞桿菌群、糸状菌、蛋白分解菌及び枯草菌の複合物であることを特徴とする前記(2)又は前記(4)記載の真菌性外用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下の優れた効果がある。
(1)薬害無しに、農作物の植物伝染病を効果的に防除することができる。
(2)薬害無しに、動物の真菌性疾病を効果的に治療することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
図1は本発明に係る生ゴミ処理装置の一実施例を示す模式図である。
【実施例1】
【0010】
図1において、1は常法により固液分離した後の茶殻を微生物(有効菌)と共に投入して消滅処理する生ゴミ処理装置の消滅処理槽で、筒状に形成されると共に、その内部には複数の攪拌羽根2aを備えた攪拌体2が回転可能に軸承されている。処理槽1内には処理媒質として微生物(有効菌)が固着された多孔質体、例えば、おがくず等の木質チップを使用した菌床3と共に茶殻が収容される。5は攪拌体2を駆動するモーターである。尚、本実施例では、菌床3としての処理媒質として、リグニン分解菌、耐熱放線菌、白色腐朽性担子菌、セルロース分解菌、嫌気性有芽胞桿菌群、糸状菌、蛋白分解菌及び枯草菌の混合物をおがくずに定着させたものを使用した。また、この消滅処理槽1には茶殻を投入するための投入口4が設けられている。図中、9はヒーターである。尚、本発明の茶殻の発酵温度は、適宜の温度に設定可能であるが20℃〜60℃が好ましい。
【0011】
攪拌体2は、駆動チェーン5aを介してモーター5の駆動により回転し、内部の菌床3を攪拌できるようになっている。処理槽1の一端部にはブロア6に連結された外気導入管7が設けられ、処理槽1の菌床3内に外気を強制的に導入することができるようにされている。この場合、攪拌体2の回転作動に連動させて、菌床3を攪拌しながら送気することが望ましい。8はガス排出管で、処理槽1内に発生した水蒸気を含んだガス(窒素・炭酸ガス)を槽外に排出できるようになっている。排気されたガスの水蒸気は、冷却装置10により結露され廃水処理が可能な清浄水(以下、茶殻処理水という)となり、ガス成分は浄化槽(図示せず)を通過させて無害な空気にして排出される。
【0012】
上記処理装置に、一日約30kgの茶殻を約40日間にわたって合計900kg投入し、発酵処理を行なったところ、茶殻の残滓はほとんど発生せず、投入された茶殻は、ほぼ完全に茶殻処理水とガス(窒素・炭酸ガス)に分解された。尚、実施例装置では茶殻の他、畜糞、有機物汚泥、焼酎粕、貝殻等も処理することができる。
【実施例2】
【0013】
青枯病が発生したビニールハウス内のきゅうりに、前記茶殻処理水を潅注した。2週間後には、青枯病の蔓延が止まったばかりか、侵された茎が活力を取り戻し、新しい葉、芽が次々と生い繁った。発病時の茎の断面は導通組織が崩れ、水や養分の補給が断たれた状態であった。ところが、茶殻処理水の摂取により導通組織が蘇生した。これは、茶殻処理水の制菌力、抗酸化力が作用したためと考えられる。そこで、茶殻処理水をイオンクロマトグラフィーにて解析した結果、臭素(Br)含有量が24.84mg/lという高い数値を示した。すなわち、茶殻処理水には強い殺菌効果が認められた。尚、青枯病のみならず、うどん粉病、菌核病、立枯れ病、べと病(露菌病)等の他の植物の伝染病にも充分な治癒効果を示した。
【実施例3】
【0014】
次に、真菌性皮膚疾患に伴う脱毛が疑われる幼犬(生後1.5〜2ヶ月頃より脱毛、フケ発生)の患部に茶殻処理水を毎日塗布した。塗布開始から数日目よりフケが治まり、約1週間目より発毛した。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明で得られた茶殻処理水はコストも低廉で、畜舎内への散布によって、伝染病の予防等を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る生ゴミ処理装置の一実施例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0017】
1 消滅処理槽
2 攪拌体
2a攪拌羽根
3 菌床
4 投入口
5 モーター
5a駆動チエーン
6 ブロア
7 外気導入管
8 ガス排出管
9 ヒーター
10冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性残渣を微生物分解した際に得られる処理水を主成分とする植物伝染病防除剤。
【請求項2】
有機性残渣を微生物分解した際に得られる処理水を主成分とする真菌性外用剤。
【請求項3】
有機性残渣が茶殻を含むことを特徴とする請求項1記載の植物伝染病病防除剤。
【請求項4】
有機性残渣が茶殻を含むことを特徴とする請求項2記載の真菌性外用剤。
【請求項5】
微生物が、少なくともリグニン分解菌、耐熱放線菌、白色腐朽性担子菌、セルロース分解菌、嫌気性有芽胞桿菌群、糸状菌、蛋白分解菌及び枯草菌の複合物であることを特徴とする請求項1又は請求項3記載の植物伝染病防除剤。
【請求項6】
微生物が、少なくともリグニン分解菌、耐熱放線菌、白色腐朽性担子菌、セルロース分解菌、嫌気性有芽胞桿菌群、糸状菌、蛋白分解菌及び枯草菌の複合物であることを特徴とする請求項2又は請求項4記載の真菌性外用剤。

【図1】
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【公開番号】特開2006−249016(P2006−249016A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69448(P2005−69448)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(504401857)
【Fターム(参考)】