説明

有機架橋型アルコキシシラン縮合物、その硬化物及びその製造方法

【課題】 ゾルゲル法により得られるアルコキシシラン縮合物であるにも拘らず、柔軟性が高く強度に優れたアルコキシシラン硬化物からなる自立膜を形成することが可能なアルコキシシラン縮合物、並びにその製造方法を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)〜(4):
【化1】


[式(1)〜(4)中、Xは1価の加水分解性基、Rは2価の有機基を示す。]
でそれぞれ表されるT、T、T及びTサイト骨格成分からなる有機架橋型アルコキシシラン縮合物であって、29Si−NMRにおける、前記T、T、T及びTサイト骨格成分にそれぞれ相当するシグナルの積分値(T、T、T、T)が下記数式:
/(T+T+T+T)≦0.6
/(T+T+T+T)≧0.4
/(T+T+T+T)≦0.2
/(T+T+T+T)≦0.03
で表される条件を満たしていることを特徴とする有機架橋型アルコキシシラン縮合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機基を含むケイ素酸化物の骨格からなる有機架橋型アルコキシシラン縮合物、その有機架橋型アルコキシシラン縮合物を硬化してなる硬化物、並びにそのその有機架橋型アルコキシシラン縮合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック材料やセラミックス材料のハードコート剤、半導体の電気絶縁体、液晶表示素子の保護膜、塗料の硬化剤等としてアルコキシシラン縮合物及びその硬化物が注目されており、このようなアルコキシシラン縮合物に関する研究が積極的に行われてきた。
【0003】
そのような研究の一つとして、特開平7−48454号公報(特許文献1)においては、テトラアルコキシシランを加水分解脱水重縮合してポリシロキサンオリゴマーを合成する際に、加水分解脱水重縮合後にその重縮合時より高温に加熱してテトラアルコキシシランモノマーを除去する方法が開示されている。また、特開平9−110985号公報(特許文献2)においては、有機トリアルコキシシランを加水分解及び縮合して有機トリアルコキシシラン縮合物を合成する際に、40℃以上の状態で露点5℃以下の不活性気体の雰囲気中で反応を進行させる方法が開示されている。さらに、特開2002−265605号公報(特許文献3)においては、比較的多量の水を用いて乾燥不活性ガスを流しながらテトラアルコキシシランの加水分解・重縮合反応を進行させることにより、モノマー残量が少なく、高分子量で安定であり、構造の制御されたテトラアルコキシシラン縮合物を合成する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、従来ゾルゲル法によりアルコキシシラン縮合物を製造する際に用いられてきたアルコキシシランはテトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等の4官能性アルコキシシラン、或いはメチルトリメトキシシラン等の3官能性アルコキシシランであり、それらを用いて得たアルコキシシラン縮合物を硬化してなる硬化物はいずれも骨格構造が硬く柔軟性が乏しいため、単独で自立膜の状態を保持することは困難であり、基板上に被覆形成した薄膜(いわゆるコート膜)としてしか利用できないという問題があった。
【特許文献1】特開平7−48454号公報
【特許文献2】特開平9−110985号公報
【特許文献3】特開2002−265605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ゾルゲル法により得られるアルコキシシラン縮合物であるにも拘らず、柔軟性が高く強度に優れたアルコキシシラン硬化物からなる自立膜を形成することが可能なアルコキシシラン縮合物、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、シリカ原料として有機架橋型アルコキシシランを用いると共に線状構造が優先して形成されるように重合制御することにより、架橋密度をある程度低く維持しつつ高分子量化したアルコキシシラン縮合物が得られるようになり、それを用いることによって柔軟性が高く強度に優れたアルコキシシラン硬化物からなる自立膜を形成することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第一の有機架橋型アルコキシシラン縮合物は、下記一般式(1)〜(4):
【0008】
【化1】

【0009】
[式(1)〜(4)中、Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ1価の加水分解性基を示し、Rはケイ素原子に結合した炭素原子を有する2価の有機基を示す。]
でそれぞれ表されるT、T、T及びTサイト骨格成分からなる有機架橋型アルコキシシラン縮合物であって、29Si−NMRにおける、前記T、T、T及びTサイト骨格成分にそれぞれ相当するシグナルの積分値(T、T、T、T)が下記数式:
/(T+T+T+T)≦0.6
/(T+T+T+T)≧0.4
/(T+T+T+T)≦0.2
/(T+T+T+T)≦0.03
で表される条件を満たしていることを特徴とするものである。
【0010】
このような本発明の第一の有機架橋型アルコキシシラン縮合物は、下記一般式(5):
【0011】
【化2】

【0012】
[式(5)中、X及びRはそれぞれ式(1)〜(4)中のX及びRと同義である。]
で表される第一の有機架橋型アルコキシシランの加水分解及び縮合反応により得られたものであることが好ましい。
【0013】
本発明の第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物は、下記一般式(1)〜(4):
【0014】
【化3】

【0015】
[式(1)〜(4)中、Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ1価の加水分解性基を示し、Rはケイ素原子に結合した炭素原子を有する2価の有機基を示す。]
でそれぞれ表されるT、T、T及びTサイト骨格成分と、
下記一般式(6)〜(10):
【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
[式(6)〜(10)中、X及びRはそれぞれ式(1)〜(4)中のX及びRと同義であり、Rはケイ素原子に結合した炭素原子を有する1価の有機基を示す。]
でそれぞれ表されるD、D、D、S及びSサイト骨格成分のうちの少なくとも一つの骨格成分と、
からなる有機架橋型アルコキシシラン縮合物であって、29Si−NMRにおける、前記T、T、T、T、D、D、D、S及びSサイト骨格成分にそれぞれ相当するシグナルの積分値(T、T、T、T、D、D、D、S、S)が下記数式:
(T+D+S)/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≦0.6
(T+D+S)/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≧0.4
(T+D)/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≦0.2
/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≦0.03
で表される条件を満たしていることを特徴とするものである。
【0019】
このような本発明の第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物は、下記一般式(5):
【0020】
【化6】

【0021】
[式(5)中、X及びRはそれぞれ式(1)〜(4)中のX及びRと同義である。]
で表される第一の有機架橋型アルコキシシランと、
下記一般式(11):
【0022】
【化7】

【0023】
[式(11)中、X、R及びRはそれぞれ式(6)〜(10)中のX、R及びRと同義である。]
で表される第二の有機架橋型アルコキシシラン及び/又は下記一般式(12):
【0024】
【化8】

【0025】
[式(12)中、X、R及びRはそれぞれ式(6)〜(10)中のX、R及びRと同義である。]
で表される第三の有機架橋型アルコキシシランと、
の加水分解及び縮合反応により得られたものであることが好ましい。
【0026】
上記本発明の第一、第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物としては、ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量が1400以上であるものが好ましい。なお、ここでいう重量平均分子量は、以下の測定条件の下でGPC(ゲルパーエミーションクロマトグラフィー)によって求めた値である。
<測定条件>
装置:東ソー株式会社製 HLC−8120GPC、
検出条件:RI:Pol(+)、Res(0.5s)、
カラム:TSKgel SuperAW500 1本、TSKgel SuperAW3000 1本、
ガードカラム:AW-H 1本、
流速:0.6ml/min、
注入量:30μl、
カラム温度:40℃、
溶離液:2−メトキシエタノール溶液(10mM LiBr+10mM H3PO4)、
標準物質:昭和電工株式会社製 Shodex Standard M-75 ポリメチルメタクリレート(1990,6820,20600,49600,218000,659000,1950000)。
【0027】
また、本発明の有機架橋型アルコキシシラン硬化物は、上記本発明の第一又は第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を硬化せしめたものである。
【0028】
さらに、本発明の第一の有機架橋型アルコキシシラン縮合物の製造方法は、前記第一の有機架橋型アルコキシシランと、第一の有機架橋型アルコキシシラン1モルに対して0.3〜50モルの有機溶媒、0.5〜4モルの水及び0.005〜0.03モルの酸触媒とを含有する混合物を、不活性雰囲気中10℃以下の温度で混合した後、不活性雰囲気中50〜90℃で混合して前記本発明の第一の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を得ることを特徴とする方法である。
【0029】
また、本発明の第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物の製造方法は、前記第一の有機架橋型アルコキシシランと、前記第二の有機架橋型アルコキシシラン及び/又は前記第三の有機架橋型アルコキシシランと、第一〜第三の有機架橋型アルコキシシラン1モルに対して0.3〜50モルの有機溶媒、0.5〜4モルの水及び0.005〜0.03モルの酸触媒とを含有する混合物を、不活性雰囲気中10℃以下の温度で混合した後、不活性雰囲気中50〜90℃で混合して前記本発明の第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を得ることを特徴とする方法である。
【0030】
なお、本発明の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を用いることによって柔軟性が高く強度に優れた自立膜を形成することが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、シリカ原料として有機架橋型アルコキシシランを用いると共に線状構造が優先して形成されるように重合制御して得た有機架橋型アルコキシシラン縮合物は、架橋密度がある程度低く維持された状態で高分子量化されているため、そのようなアルコキシシラン縮合物を硬化せしめた際にもシロキサン結合(Si−O−Si)のサイトが減少して骨格の架橋密度が下がり、結果として得られる有機架橋型アルコキシシラン硬化物に十分な柔軟性が付与されて優れた強度を有する自立膜の形成が可能となったものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ゾルゲル法により得られるアルコキシシラン縮合物であるにも拘らず、柔軟性が高く強度に優れた有機架橋型アルコキシシラン硬化物からなる自立膜を形成することが可能な有機架橋型アルコキシシラン縮合物、並びにその製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0033】
先ず、本発明の第一の有機架橋型アルコキシシラン縮合物について説明する。すなわち、本発明の第一の有機架橋型アルコキシシラン縮合物は、下記一般式(1)〜(4):
【0034】
【化9】

【0035】
でそれぞれ表されるT、T、T及びTサイト骨格成分からなる有機架橋型アルコキシシラン縮合物であり、有機基に結合しているケイ素原子が酸素原子を介して架橋した構造を有している。
【0036】
上記一般式(1)〜(4)中、Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ1価の加水分解性基を示す。このような加水分解性基としては、低級アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基)、水酸基、低級アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜5のアシルオキシ基)、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子、沃素原子)等が挙げられ、中でも重合反応(加水分解及び縮合反応)が制御し易いという観点から低級アルコキシ基及び/又は水酸基が好ましい。また、上記一般式(1)〜(4)中、Rはケイ素原子に結合した炭素原子を有する2価の有機基を示し、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)、トリメチレン基(−CH2CH2CH2−)、テトラメチレン基(−CH2CH2CH2CH2−)、1,2−ブチレン基(−CH(C25)CH−)、1,3−ブチレン基(−CH(CH3)CH2CH2−)、フェニレン基(−C64−)、ビフェニレン基(−C64−C64−)、ジエチルフェニレン基(−C24−C64−C24−)、ビニレン基(−CH=CH−)、プロペニレン基(−CH2−CH=CH2−)、ブテニレン基(−CH2−CH=CH−CH2−)、アミド基(−CO−NH−)、ジメチルアミノ基(−CH2−NH−CH2−)、トリメチルアミン基(−CH2−N(CH3)−CH2−)等が挙げられ、中でも合成の容易さという観点からメチレン基、エチレン基、フェニレン基、ビフェニレン基が好ましい。
【0037】
そして、本発明の第一の有機架橋型アルコキシシラン縮合物においては、29Si−NMRにおける、前記T、T、T及びTサイト骨格成分にそれぞれ相当するシグナルの積分値(T、T、T、T)が下記数式:
/(T+T+T+T)≦0.6
/(T+T+T+T)≧0.4
/(T+T+T+T)≦0.2
/(T+T+T+T)≦0.03
で表される条件を満たしていることが必要である。
【0038】
このような29Si−NMRスペクトルにおける前記T、T、T及びTサイト骨格成分に相当するシグナルの積分値(T、T、T、T)は、それぞれT、T、T及びTサイト骨格成分の存在割合に相当しており、上記数式におけるTの値が上記範囲外の場合は、縮合物における線状構造が少なくなり、十分な強度を有する有機架橋型アルコキシシラン硬化物を得ることができない。また、上記数式におけるT及びTの値が上記範囲外の場合は、線状構造より3次元網目構造が優先して形成され、架橋密度が高くなるため、十分な柔軟性を有する有機架橋型アルコキシシラン硬化物を得ることができない。さらに、上記数式におけるTの値が上記範囲外の場合は、未反応モノマーが多くなり、十分な高分子量を有する有機架橋型アルコキシシラン縮合物が得られない。
【0039】
このような本発明の第一の有機架橋型アルコキシシラン縮合物は、下記一般式(5):
【0040】
【化10】

【0041】
で表される第一の有機架橋型アルコキシシランの加水分解及び縮合反応により得られたものであることが好ましく、加水分解縮合物の機械的特性としての糸曳き性という観点から、ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量が1400以上(より好ましくは8000〜100000)であるものが好ましい。なお、上記一般式(5)中のX及びRは、それぞれ式(1)〜(4)中のX及びRと同義である。このような第一の有機架橋型アルコキシシランは、加水分解及び縮合反応によりTサイト骨格成分となるものであり、その反応の進行度に応じて前記T、T、T又はTサイト骨格成分となる。このような第一の有機架橋型アルコキシシランとしては、合成が容易であるという観点から、以下に示すものが好ましいものとして挙げられる。
【0042】
【化11】

【0043】
次に、本発明の第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物について説明する。すなわち、本発明の第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物は、
(i)前記一般式(1)〜(4)でそれぞれ表されるT、T、T及びTサイト骨格成分と、
(ii)下記一般式(6)〜(10):
【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
でそれぞれ表されるD、D、D、S及びSサイト骨格成分のうちの少なくとも一つの骨格成分と、
からなる有機架橋型アルコキシシラン縮合物であり、有機基に結合しているケイ素原子が酸素原子を介して架橋した構造を有している。
【0047】
上記一般式(6)〜(10)中、X及びRはそれぞれ式(1)〜(4)中のX及びRと同義である。また、上記一般式(6)〜(10)中、Rはケイ素原子に結合した炭素原子を有する1価の有機基を示し、炭素数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基等)、炭素数1〜10のアルケニル基(ビニル基等)、アリール基(フェニル基、ビフェニル基等)、メルカプトアルキル基(メルカプトプロピル基等)等が挙げられる。
【0048】
そして、本発明の第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物においては、29Si−NMRにおける、前記T、T、T、T、D、D、D、S及びSサイト骨格成分にそれぞれ相当するシグナルの積分値(T、T、T、T、D、D、D、S、S)が下記数式:
(T+D+S)/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≦0.6
(T+D+S)/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≧0.4
(T+D)/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≦0.2
/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≦0.03
で表される条件を満たしていることが必要である。
【0049】
このような29Si−NMRスペクトルにおける前記T、T、T、T、D、D、D、S及びSサイト骨格成分に相当するシグナルの積分値(T、T、T、T、D、D、D、S、S)は、それぞれT、T、T、T、D、D、D、S及びSサイト骨格成分の存在割合に相当しており、上記数式における(T+D+S)の値が上記範囲外の場合は、縮合物における線状構造が少なくなり、十分な強度を有する有機架橋型アルコキシシラン硬化物を得ることができない。また、上記数式における(T+D)及びTの値が上記範囲外の場合は、線状構造より3次元網目構造が優先して形成され、架橋密度が高くなるため、十分な柔軟性を有する有機架橋型アルコキシシラン硬化物を得ることができない。さらに、上記数式における(T+D+S)の値が上記範囲外の場合は、未反応モノマーが多くなり、十分な高分子量を有する有機架橋型アルコキシシラン縮合物が得られない。
【0050】
このような本発明の第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物は、
(i)前記一般式(5)で表される第一の有機架橋型アルコキシシランと、
(ii)下記一般式(11):
【0051】
【化14】

【0052】
で表される第二の有機架橋型アルコキシシラン及び/又は下記一般式(12):
【0053】
【化15】

【0054】
で表される第三の有機架橋型アルコキシシランと、
の加水分解及び縮合反応により得られたものであることが好ましく、加水分解縮合物の機械的特性としての糸曳き性という観点から、ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量が1400以上(より好ましくは8000〜100000)であるものが好ましい。なお、上記一般式(11)及び(12)中のX、R及びRは、それぞれ式(6)〜(10)中のX、R及びRと同義である。
【0055】
前記第二の有機架橋型アルコキシシランは、加水分解及び縮合反応によりDサイト骨格成分となるものであり、その反応の進行度に応じて前記D、D又はDサイト骨格成分となる。このような第二の有機架橋型アルコキシシランとしては、加水分解縮合物の架橋密度を下げることができるという観点から、以下に示すものが好ましいものとして挙げられる。
【0056】
【化16】

【0057】
また、前記第三の有機架橋型アルコキシシランは、加水分解及び縮合反応によりSサイト骨格成分となるものであり、その反応の進行度に応じて前記S又はSサイト骨格成分となる。このような第三の有機架橋型アルコキシシランとしては、加水分解縮合物の架橋密度を下げることができるという観点から、以下に示すものが好ましいものとして挙げられる。
【0058】
【化17】

【0059】
次に、本発明の有機架橋型アルコキシシラン縮合物の製造方法について説明する。すなわち、本発明の第一の有機架橋型アルコキシシラン縮合物の製造方法は、前記第一の有機架橋型アルコキシシランと、第一の有機架橋型アルコキシシラン1モルに対して0.3〜50モルの有機溶媒、0.5〜4モルの水及び0.005〜0.03モルの酸触媒とを含有する混合物を、不活性雰囲気中10℃以下の温度で混合した後、不活性雰囲気中50〜90℃で混合して前記本発明の第一の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を得ることを特徴とする方法である。
【0060】
また、本発明の第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物の製造方法は、前記第一の有機架橋型アルコキシシランと、前記第二の有機架橋型アルコキシシラン及び/又は前記第三の有機架橋型アルコキシシランと、第一〜第三の有機架橋型アルコキシシラン1モルに対して0.3〜50モルの有機溶媒、0.5〜4モルの水及び0.005〜0.03モルの酸触媒とを含有する混合物を、不活性雰囲気中10℃以下の温度で混合した後、不活性雰囲気中50〜90℃で混合して前記本発明の第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を得ることを特徴とする方法である。
【0061】
このような本発明の第一又は第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物の製造方法によれば、有機架橋型アルコキシシランが加水分解及び縮合反応する過程において線状構造が優先して形成されるように重合制御され、前述の本発明の第一又は第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物が効率良くかつ確実に得られる。
【0062】
ここで用いられる有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、グリセリン等が挙げられ、シリカ原料の溶解性の観点からメタノール又はエタノールが好ましい。また、かかる有機溶媒の量(仕込み量)は、有機架橋型アルコキシシラン1モルに対して0.3〜50モル(より好ましくは20〜40モル)であることが必要である。有機溶媒の量が上記下限未満では加水分解及び縮合反応の際に線状構造が優先して形成されなくなり、他方、上記上限を超えると反応時間が過度に長くなる。
【0063】
また、上記有機溶媒と共に用いる水の量(仕込み量)は、有機架橋型アルコキシシラン1モルに対して0.5〜4モル(より好ましくは1.2〜3モル)であることが必要である。水の量が上記下限未満では加水分解が不十分となって高分子量を有するアルコキシシラン縮合物が得られず、他方、上記上限を超えると加水分解及び縮合反応の際に線状構造が優先して形成されなくなる。
【0064】
さらに、本発明で使用される酸触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸といった鉱酸や、酢酸、蟻酸といった有機酸が挙げられ、かかる酸触媒の量(仕込み量)は、有機架橋型アルコキシシラン1モルに対して0.005〜0.03モル(より好ましくは0.02〜0.03モル)であることが必要である。酸触媒の量が上記下限未満では加水分解が不十分となって高分子量を有するアルコキシシラン縮合物が得られず、他方、上記上限を超えると加水分解及び縮合反応の際に線状構造が優先して形成されなくなる。
【0065】
上記本発明の製造方法においては、有機架橋型アルコキシシランを不活性雰囲気中で加水分解及び縮合反応せしめるが、かかる不活性気体としては、安全性等の観点から、酸素等の支燃性のガスを含まない窒素、アルゴン、ネオンが好ましい。また、かかる不活性気体としては、露点が5℃以下(より好ましくは−5℃以下)の乾燥気体であることが好ましく、一旦5℃以下に冷却して凝縮した水滴を除去した不活性気体や、アルミナゲル、シリカゲル、塩化カルシウム等の吸湿剤を充填した充填層を通過させ除湿した不活性気体等が好適に使用される。
【0066】
そして、本発明の製造方法においては、反応容器に原料を仕込む以前に容器内を不活性雰囲気にしておくことが好ましく、アルコキシシラン縮合物の製造が終了するまで常時反応容器内に不活性気体を流して不活性雰囲気としておく必要がある。反応条件に悪影響を及ぼす空気中の水蒸気(湿度)が反応容器内に進入すると、加水分解及び縮合反応の際に線状構造が優先して形成されなくなる。なお、かかる不活性気体の流量は、仕込み原料1m3あたり100〜3000m3/hであることが好ましい。
【0067】
また、本発明の製造方法においては、先ず、上記有機架橋型アルコキシシラン、有機溶媒、水及び酸触媒を含有する混合物を不活性雰囲気中10℃以下(より好ましくは0〜10℃)の温度で混合し、初期の加水分解及び重縮合反応をゆっくり進行させる。この時の温度が10℃を超えていると、加水分解及び重縮合反応が進行し過ぎて線状構造が優先して形成されなくなる。また、10℃以下の温度で混合する時間は、用いる有機架橋型アルコキシシラン及びその量にもよるが、通常5〜60分、好ましくは10〜40分程度である。
【0068】
次に、本発明の製造方法においては、得られた混合物を更に不活性雰囲気中50〜90℃(より好ましくは60〜80℃)で混合し、加水分解及び重縮合反応を進行させつつ加水分解反応で生じたアルコール及び縮合反応で生じた水を留去して、本発明の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を含有するゾル溶液を得る。この時の温度が50℃未満では、溶媒が残存し、目的とする有機架橋型アルコキシシラン縮合物が得られない。他方、この時の温度が90℃を超えていると、加水分解及び縮合反応の際に線状構造が優先して形成されなくなる。また、50〜90℃の温度で混合する時間は、用いる有機架橋型アルコキシシラン及びその量にもよるが、通常30分〜10時間、好ましくは1時間〜3時間程度である。
【0069】
次に、本発明の有機架橋型アルコキシシラン硬化物について説明する。すなわち、本発明の有機架橋型アルコキシシラン硬化物は、上記本発明の第一又は第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を硬化せしめたものである。このような本発明の有機架橋型アルコキシシラン硬化物の形状は特に制限されず、粒子状であってもよいが、本発明の有機架橋型アルコキシシラン硬化物は十分な柔軟性を有しているため自立膜を形成することができるという特徴を有しているため、自立膜を構成していることが好ましい。このように本発明の有機架橋型アルコキシシラン硬化物を自立膜とすることにより、引張り破断強度が1MPa以上、かつ、引張り破断伸び率が10%以上という強度に優れた自立膜が好適に得られる。なお、本発明の有機架橋型アルコキシシラン硬化物を膜状とする際の膜厚は特に制限されないが、自立膜とする場合は0.01〜2mmの膜厚であることが好ましい。膜厚が0.01mm未満では自立しなくなる傾向にある。
【0070】
上記本発明の第一又は第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を硬化せしめる具体的な方法も特に制限されないが、本発明の有機架橋型アルコキシシラン硬化物からなる自立膜を製造する場合は、以下に説明するいわゆるゾルゲル法が好ましく採用される。すなわち、上記本発明の第一又は第二の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を含有するゾル溶液を膜状とし、溶媒を除去すると共に前記アルコキシシラン縮合物を更に重合せしめることにより、本発明の有機架橋型アルコキシシラン硬化物からなる自立膜が得られる。
【0071】
なお、上記のゾル溶液を膜状とする方法は特に制限されず、型にキャストする方法や各種コーティング方法で基板に塗布する方法が好適に採用される。なお、各種のコーティング方法としては、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター等を用いて塗布することができ、また、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング等も可能である。さらに、ゾル溶液をインクジェット法により塗布してもよい。
【0072】
さらに、膜状としたゾル溶液から溶媒を除去する際、室温又は必要に応じて通常50〜150℃程度(特に好ましくは60〜80℃)に加熱し、通常1〜48時間程度(特に好ましくは15〜24時間)の時間をかけて乾燥させることが好ましい。
【0073】
また、上記のゾル溶液を膜状とする際に、ゾル溶液に有機溶媒を添加して希釈してもよい。有機溶媒を添加することによりゾル溶液の粘度や固形分が低下するため、膜状化する過程における粘度変化を少なくすることができ、得られる有機架橋型アルコキシシラン硬化物における均一性をより向上させることができる傾向にある。なお、このような有機溶媒としては、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、CHCl3、CH2Cl2、C2H4Cl2等を用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
(実施例1〜4)
撹拌機、温度計及び気体導入管を付けた4つロフラスコ(容量:200ml)の側面からガンヒーターを用いて加熱しながら、シリカゲルを充填した乾燥管を通した窒素ガス(以下、乾燥窒素ガスという)を気体導入管からフラスコ内に流し、装置内を乾燥窒素ガス雰囲気として乾燥させた。その後、フラスコを室温まで冷却し、十分乾燥したフラスコ内にシリカ源として1,4-BTEB(以下、BTEBという)を入れ、次にエタノール、6N-HCl及び蒸留水の混合物を加えた。なお、BTEBに対する塩酸及びエタノールのモル比がそれぞれ表1に示すモル比となるように配合し、さらに各実施例においてBTEBに対する水のモル比を1.0〜2.0の間で変化させて複数の試験を行った。例えば、HCl/BTEB=0.005、エタノール/BTEB=40、H2O/BTEB=1.0の場合、各成分の仕込み量は、BTEB=2.01g、6N-HCl=9.21×10-3g、エタノール=9.21g、H2O=8.27×10-2gとした。
【0076】
フラスコ内にBTEB、エタノール、6N-HCl及び蒸留水を添加後、氷浴を用いて液温0〜5℃で10分間フラスコ内の混合物を撹拌した後、氷浴をはずしてさらに液温10℃以下で10分間撹拌した。その後、80℃のオイルバス中でフラスコ内の混合物を加熱しながら撹拌し、1時間30分間反応を進行せしめてBTEB縮合物を含有する無色透明の粘性液体(ゾル溶液)を得た。なお、この際、撹拌速度150rpm、乾燥窒素ガス流量を360ml/minとした。
【0077】
【表1】

【0078】
各実施例で得られたBTEB縮合物のポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量をGPCにより測定した。得られた結果を図1に示す。図1に示した通り、得られたBTEB縮合物の重量平均分子量はいずれも1400以上であり、最大40900の高分子量体であった。
【0079】
また、実施例2及び3で得られたBTEB縮合物の29Si-NMRスペクトルを測定し、そのシグナルの積分値の比に基づいてBTEB縮合物中のT、T、T及びTサイト骨格成分の存在割合を求めた。得られた結果を表2に示す。表2に示した通り、得られたBTEB縮合物においては、3次元構造を示すT構造の形成は抑制されて線状構造を示すT構造が優先的に形成されており、縮重合反応が精密に制御されたことが確認された。
【0080】
【表2】

【0081】
次に、上記各実施例で得られた粘性液体に4gのエタノールを混合し、5分間スターラーで撹拌した後、5cmΦのテフロンシャーレに注いだ。そして、乾燥機を用いて60℃で24時間乾燥せしめることによって、直径5cm、膜厚200〜500μmのBTEB硬化物からなる自立膜を得た。
【0082】
そして、実施例2及び3で得られた自立膜から5×50mm角の短冊状の試験片を切り取り、万能試験機(INSTRON社製、INSTRON-5564)を使用し、試験片の下端を固定した後に試験片の上端を引っ張り速度120mm/minで引き上げて自立膜の引張り破断強度及び引張り破断伸び率を測定した。得られた結果は以下の通りである。以下の結果から明らかなように、本発明の有機架橋型アルコキシシラン硬化物からなる膜状体は、柔軟性が高くかつ強度に優れた自立膜であることが確認された。
【0083】
(引張り破断強度)(引張り破断伸び率)
実施例2(r=1.5) 2.2MPa 20%
実施例3(r=1.0) 2.3MPa 17%。
【0084】
(実施例5〜8)
シリカ源としてBTEBと1,4-BDEB(以下、BDEBという)との混合物(実施例5)或いはBTEBと1,4-BMEB(以下、BMEBという)との混合物(実施例6〜8)を用い、シリカ源に対する塩酸、エタノール及び水のモル比をそれぞれ表3に示すモル比とし、さらに各実施例においてシリカ源の混合比(モル比)を表3に示す範囲で変化させるようにした以外は実施例1〜4と同様にして、BTEBとBDEBとの縮合物(実施例5)或いはBTEBとBMEBとの縮合物(実施例6〜8)を含有する無色透明の粘性液体(ゾル溶液)を得た。
【0085】
【表3】

【0086】
各実施例で得られた縮合物のポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量をGPCにより測定した。実施例5において得られたBTEBとBDEBとの縮合物の重量平均分子量を図2に、実施例6〜8においてr=H2O/Si=1.0(モル比、一定)として得られたBTEBとBMEBとの縮合物の重量平均分子量を図3に、実施例7において得られたBTEBとBMEBとの縮合物の重量平均分子量を図4に、それぞれ示す。図2〜4に示した通り、得られた縮合物の重量平均分子量はいずれも1400以上であり、最大51300の高分子量体であった。
【0087】
また、実施例5で得られたBTEBとBDEBとの縮合物及び実施例6〜8で得られたBTEBとBMEBとの縮合物の29Si-NMRスペクトルを測定し、そのシグナルの積分値の比に基づいて縮合物中の(T+D+S)、(T+D+S)、(T+D)及びTサイト骨格成分の存在割合を求めたところ、いずれも下記数式:
(T+D+S)/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≦0.6
(T+D+S)/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≧0.4
(T+D)/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≦0.2
/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≦0.03
で表される条件を満たしていることが確認された。
【0088】
次に、上記各実施例で得られた粘性液体を用いて実施例1〜4と同様にしてBTEBとBDEBとの硬化物(実施例5)或いはBTEBとBMEBとの硬化物(実施例6〜8)からなる自立膜を得た。そして、実施例5及び8で得られた自立膜について実施例1〜4と同様にして引張り破断強度及び引張り破断伸び率を測定した。得られた結果を図5に示す。図5に示した結果から明らかなように、本発明の有機架橋型アルコキシシラン硬化物からなる膜状体は、柔軟性が高くかつ強度に優れた自立膜であり、BDEB又はBMEBを混合することによって引張り破断強度及び引張り破断伸び率が更に向上することが確認された。
【0089】
(比較例1)
シリカ源としてテトラエトキシシラン(以下、TEOSという)を用い、シリカ源に対する塩酸のモル比を0.1、エタノールのモル比を10.0及び水のモル比を1.8とした(TEOS=3.47g、6N-HCl=0.28g、エタノール=7.65g、H2O=0.54g)以外は実施例1〜4と同様にして、TEOS縮合物を含有する無色透明の粘性液体(ゾル溶液)を得た。比較例1で得られたTEOS縮合物のポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量をGPCにより測定したところ、重量平均分子量は11700であった。
【0090】
次に、比較例1で得られた粘性液体を用いて実施例1〜4と同様にしてTEOS硬化物からなる膜状体を得たところ、得られた膜状体は非常に脆くて自立膜を保持できるものではなく、引張り破断強度及び引張り破断伸び率の測定に耐え得られなかった。
【0091】
(比較例2)
シリカ源としてTEOSとメチルトリエトキシシラン(以下、MTESいう)との混合物(混合モル比=1:1)を用い、シリカ源に対する塩酸のモル比を0.1、エタノールのモル比を2.0及び水のモル比を1.5とした以外は実施例1〜4と同様にして、TEOSとMTESとの縮合物を含有する無色透明の粘性液体(ゾル溶液)を得た。比較例2で得られたTEOSとMTESとの縮合物のポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量をGPCにより測定したところ、重量平均分子量は3300であった。
【0092】
次に、比較例2で得られた粘性液体を用いて実施例1〜4と同様にしてTEOSとMTESとの硬化物からなる膜状体を得た。そして、比較例2で得られた膜状体について実施例1〜4と同様にして引張り破断強度及び引張り破断伸び率を測定し、得られた結果を実施例3、実施例5、実施例8及び比較例1で得られた結果と共に表4に示す。表4に示した結果から明らかなように、本発明の有機架橋型アルコキシシラン硬化物からなる膜状体は柔軟性が高くかつ強度に優れた自立膜であるのに対して、比較例2で得られたTEOSとMTESとの硬化物からなる膜状体は特に引張り破断伸び率が劣るものであることが確認された。
【0093】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本発明によれば、ゾルゲル法により得られるアルコキシシラン縮合物であるにも拘らず、柔軟性が高く強度に優れた有機架橋型アルコキシシラン硬化物からなる自立膜を形成することができる有機架橋型アルコキシシラン縮合物を得ることが可能となる。したがって、このような本発明の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を用いて得た本発明の有機架橋型アルコキシシラン硬化物からなる自立膜は、電解質膜、ガス分離膜、選択的透過膜等としての応用が拡大される非常に有用な材料である。また、本発明の製造方法によれば、このように優れた特性を有する有機架橋型アルコキシシラン縮合物を、効率良くかつ確実に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施例1〜4で得られたBTEB縮合物の重量平均分子量を示すグラフである。
【図2】実施例5において得られたBTEBとBDEBとの縮合物の重量平均分子量を示すグラフである。
【図3】実施例6〜8においてr=H2O/Si=1.0(モル比、一定)として得られたBTEBとBMEBとの縮合物の重量平均分子量を示すグラフである。
【図4】実施例7において得られたBTEBとBMEBとの縮合物の重量平均分子量を示すグラフである。
【図5】実施例5及び8で得られた自立膜について引張り破断強度及び引張り破断伸び率を測定した結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)〜(4):
【化1】

[式(1)〜(4)中、Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ1価の加水分解性基を示し、Rはケイ素原子に結合した炭素原子を有する2価の有機基を示す。]
でそれぞれ表されるT、T、T及びTサイト骨格成分からなる有機架橋型アルコキシシラン縮合物であって、29Si−NMRにおける、前記T、T、T及びTサイト骨格成分にそれぞれ相当するシグナルの積分値(T、T、T、T)が下記数式:
/(T+T+T+T)≦0.6
/(T+T+T+T)≧0.4
/(T+T+T+T)≦0.2
/(T+T+T+T)≦0.03
で表される条件を満たしていることを特徴とする有機架橋型アルコキシシラン縮合物。
【請求項2】
下記一般式(5):
【化2】

[式(5)中、X及びRはそれぞれ式(1)〜(4)中のX及びRと同義である。]
で表される第一の有機架橋型アルコキシシランの加水分解及び縮合反応により得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載の有機架橋型アルコキシシラン縮合物。
【請求項3】
ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量が1400以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機架橋型アルコキシシラン縮合物。
【請求項4】
下記一般式(1)〜(4):
【化3】

[式(1)〜(4)中、Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれ1価の加水分解性基を示し、Rはケイ素原子に結合した炭素原子を有する2価の有機基を示す。]
でそれぞれ表されるT、T、T及びTサイト骨格成分と、
下記一般式(6)〜(10):
【化4】

【化5】

[式(6)〜(10)中、X及びRはそれぞれ式(1)〜(4)中のX及びRと同義であり、Rはケイ素原子に結合した炭素原子を有する1価の有機基を示す。]
でそれぞれ表されるD、D、D、S及びSサイト骨格成分のうちの少なくとも一つの骨格成分と、
からなる有機架橋型アルコキシシラン縮合物であって、29Si−NMRにおける、前記T、T、T、T、D、D、D、S及びSサイト骨格成分にそれぞれ相当するシグナルの積分値(T、T、T、T、D、D、D、S、S)が下記数式:
(T+D+S)/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≦0.6
(T+D+S)/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≧0.4
(T+D)/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≦0.2
/(T+T+T+T+D+D+D+S+S)≦0.03
で表される条件を満たしていることを特徴とする有機架橋型アルコキシシラン縮合物。
【請求項5】
下記一般式(5):
【化6】

[式(5)中、X及びRはそれぞれ式(1)〜(4)中のX及びRと同義である。]
で表される第一の有機架橋型アルコキシシランと、
下記一般式(11):
【化7】

[式(11)中、X、R及びRはそれぞれ式(6)〜(10)中のX、R及びRと同義である。]
で表される第二の有機架橋型アルコキシシラン及び/又は下記一般式(12):
【化8】

[式(12)中、X、R及びRはそれぞれ式(6)〜(10)中のX、R及びRと同義である。]
で表される第三の有機架橋型アルコキシシランと、
の加水分解及び縮合反応により得られたものであることを特徴とする、請求項4に記載の有機架橋型アルコキシシラン縮合物。
【請求項6】
ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量が1400以上であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の有機架橋型アルコキシシラン縮合物。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を硬化せしめたものであることを特徴とする有機架橋型アルコキシシラン硬化物。
【請求項8】
前記第一の有機架橋型アルコキシシランと、第一の有機架橋型アルコキシシラン1モルに対して0.3〜50モルの有機溶媒、0.5〜4モルの水及び0.005〜0.03モルの酸触媒とを含有する混合物を、不活性雰囲気中10℃以下の温度で混合した後、不活性雰囲気中50〜90℃で混合して請求項2に記載の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を得ることを特徴とする有機架橋型アルコキシシラン縮合物の製造方法。
【請求項9】
前記第一の有機架橋型アルコキシシランと、前記第二の有機架橋型アルコキシシラン及び/又は前記第三の有機架橋型アルコキシシランと、第一〜第三の有機架橋型アルコキシシラン1モルに対して0.3〜50モルの有機溶媒、0.5〜4モルの水及び0.005〜0.03モルの酸触媒とを含有する混合物を、不活性雰囲気中10℃以下の温度で混合した後、不活性雰囲気中50〜90℃で混合して請求項5に記載の有機架橋型アルコキシシラン縮合物を得ることを特徴とする有機架橋型アルコキシシラン縮合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−63166(P2006−63166A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246226(P2004−246226)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】