説明

有機汚染を安定に自己洗浄するためのポリマー改質酵素を含むコーティング

【課題】表面上もしくはコーティング中の有機汚染の除去を促進し、維持洗浄の必要性を最小にする新規な材料もしくはコーティングを提供する。
【解決手段】ベース、前記ベースと結合した酵素、及び前記ベースと結合した第一のポリオキシエチレンを含み、前記第一のポリオキシエチレンが前記酵素とは無関係であり、前記ベース、前記酵素、及び前記第一のポリオキシエチレンが水安定化活性コーティング組成物を形成する、水安定化活性コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分を含むコーティング組成物、及び有機汚染の除去を促進するためにこの組成物を用いる方法に関する。特定の態様において、本発明は、マトリックス中の酵素安定性を向上させかつ風化を低減する、ポリマーマトリックス中の生物活性酵素の分散性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの戸外の表面は、鳥のフン、松やに、及び虫の体のような天然由来の汚染もしくは損傷に曝されている。結果として、残留している汚染は表面に不快な跡を付け、物品の外観を損なうことになる。
【0003】
従来の自己洗浄コーティング及び表面は、無機材料を除去する水ローリングもしくはシーティングをベースとしている。これらは無機よごれの除去にはある程度のレベルの効果を示すが、生物源からの汚染(これは様々なタイプの有機ポリマー、脂肪、オイル、及び蛋白質からなり、その各々はコーティングの表面下に深く拡散する)の洗浄にはあまり効果がない。従来の方法は、表面への汚染の付着を低減させ、適当なナノ複合材料を含むポリマーコーティングにより疎水性、疎油性及び超両疎性が表面に与えられる「ロータス効果」を利用してその除去を促進することを目的としている。典型的なコーティングはフッ素及び珪素ナノ複合材料を含み、優れたロールオフ特性及びとても高い水と油の接触角を有している。サンドブラストガラスのような粗い表面に用いた場合、ナノコーティングは耐汚染性を与えるフィラーとして機能する。この「消極的な」方法の欠点は、光沢の高い表面に用いるには適さないことである。それは、ロータス効果が表面粗さに基づくものであるからである。
【0004】
光触媒コーティングは有機汚染の自己洗浄を促進するものとして期待されている。太陽光を照射すると、TiO2のような光触媒は有機汚れを化学的に破壊し、次いで超親水性表面上に形成された水シートにより洗い落とされる。例として、米国特許出願公開2009/104086において、指紋汚れの分解を促進するために光触媒TiO2が用いられた。この方法の主要な欠点は、TiO2によるポリマーコーティングの酸化障害のため無機表面に用いることに限定されることである。また、この方法は、TiO2が汚れを分解するのみならず、ペイント中の樹脂も酸化するため、自動車コーティングにはあまり適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、表面上もしくはコーティング中の有機汚染の除去を促進し、維持洗浄の必要性を最小にする新規な材料もしくはコーティングに対する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の本発明の概要は、本発明に独特な革新的な特徴の一部の理解を促進するために提供され、すべてを記載するものではない。本発明の様々な態様は明細書、請求の範囲、図面及び要約書全体から理解されるであろう。
【0007】
水安定化活性コーティング材料は、前記コーティングを水中に30分以上浸した後に有機汚染の成分を分解することができ、所望によりこのコーティングは水中に30分浸した後、活性を50%以上保持する。
【0008】
コーティングはベース及びこのベースに結合した蛋白質を含む。蛋白質は所望により1以上のポリマー部分により化学的に改質されている。このコーティングは所望により、前記ベースに結合した第一のポリオキシエチレンをさらに含み、この第一のポリオキシエチレンは酵素とは無関係であり、ベース、酵素及び第一のポリオキシエチレンはすい安定化活性コーティング組成物を形成する。
【0009】
化学改質された酵素は、所望により細菌中性サーモリシン様プロテアーゼ、アミラーゼ、もしくはリパーゼのような加水分解酵素である。この酵素は、ポリマー部分により、所望によりポリオキシエチレンの少なくとも1つの分子により化学改質されている。ポリオキシエチレンは、所望により1,000〜15,000ダルトンの分子量を有する。ある態様においては、ポリオキシエチレンは前記酵素との反応前に、スクシンイミジルエステルをさらに含む。ポリマー部分は所望により、末端アミノ基のような酵素上又はリシン上のアミノ基に直接もしくは間接的に共有結合している。ある態様において、ポリマー部分は酵素によりシステインに直接もしくは間接的に共有結合している。ポリマー部分は所望により、線状であっても分枝であってもよい。ある態様において、分枝ポリマー部分は所望により、8分枝ポリオキシエチレンである。
【0010】
ベースに分散して水安定化活性コーティング組成物を形成する酵素は、1以上の蛋白質分子を含む蛋白質の粒子である。その平均粒子直径は所望により、1nm〜1μmである。
【0011】
水安定化活性コーティング材料は、所望によりベースの少なくとも1つの成分に共有結合し、又はベースに非共有結合するかもしくはベースに混合されている。そのようなコーティングは、基材上に存在する場合、所望により、このコーティングが酵素としてサーモリシンを含む場合、0.0075ユニット/cm2以上の表面活性を有する。ベースは所望により、1もしくは2パート溶媒含有系であってよく、所望によりポリウレタンを含む。
【0012】
水安定化活性コーティング材料は、所望により酵素とは独立のベースに結合した第一のポリオキシエチレンを含む。組成物は所望により、第二のポリオキシエチレンにより化学改質された酵素を含む。第一もしくは第二のポリオキシエチレンは、所望により1,000〜15,000ダルトンの分子量を有する。第一及び第二のポリオキシエチレンは、所望によりオキシエチレンの同じポリマーを有する。第一のポリオキシエチレンは、所望によりスクシンイニミジルエステルにより誘導化されている。第二のポリオキシエチレンは、所望により酵素との反応前にスクシンイニミジルエステルにより誘導化されている。
【0013】
コーティング組成物中で水風化に対する酵素の活性を安定化する方法は、酵素を1以上のポリマー部分と結合させて化学改質酵素を形成すること、及びこの化学改質酵素をベース中に分散させて水安定化活性コーティング材料を形成することを含む。この分散は所望により、平均粒子直径が1nm〜1μmである蛋白質粒子を与える。この方法は、所望により、基材を前記活性コーティング材料でコートして、前記酵素が前記活性コーティング材料と接触した有機汚染の成分を酵素的に分解できるようにすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一態様による水安定化活性コーティング組成物の形成の略図である。
【0015】
【図2】走査電子顕微鏡(A)及び蛍光顕微鏡(B)により観察した、ポリマー部分を用いずにコーティング材料に酵素を混入させた場合の2KSBコーティング材料に形成される大きな粒子を示す。
【0016】
【図3】本発明の一態様に係るベースへの化学改質酵素(A−C)及び非化学改質酵素(D)の分散を示す。
【0017】
【図4】酵素もしくはポリマー部分の非存在(A)、コーティングに分散した酵素と混合されたPEGの存在(B)、コーティング中に酵素(未改質)が混入された際に形成された大きな粒子(C),及び酵素と結合したポリマー部分の非存在に対して酵素の優れた分散を示すベース材料中のPEG化酵素の優れた分散を示す。
【0018】
【図5】示した回数水の浸漬後の残留コーティング表面活性により測定した、化学改質酵素を混入したコーティングの水安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の記載は単なる説明であり、発明の範囲、用途等を限定するものではない。本発明の限定しない規定及び用語により説明する。これらの規定及び用語は発明の範囲もしくは実施を限定するものではなく、単に説明のため用いる。
【0020】
コーティングとして有用な組成物が提供され、コーティング材料と結合した1以上の蛋白質は、所望によりコーティングを水に曝露する間もしくは曝露した後にコーティンング活性寿命を向上させるように化学改質されている。このコーティングは、耐候後に向上した寿命を示し、コーティングを穏やかに擦ることにより生物活性を容易に再生することができるという、他のコーティング材料よりもいくつかの利点を有する生物活性コーティングである。本発明の化学改質された酵素を含むコーティングの使用は、生物活性表面を規則的に延長し、並びに輝き、保護及び水流出のような他の品質を向上させる。
【0021】
本発明のコーティングは風化による活性の損失に対して耐性を示す。ここで風化とは、周囲環境もしくは実験室のいずれかにおける水、熱、UV光、もしくは他の原因への曝露を含む。本発明によるコーティングは、水中への浸漬のような水への曝露による風化に予想外の耐性を有する。このように、風化は水への浸漬を含む。
【0022】
ここではコーティングに関して説明するが、有機汚染除去を促進するためのコーティングが必要ない基材もしくは物品であってもよい。ここで「コーティング」は、1以上の基材の表面上に層をなすような材料を意味し、又は基材材料自身を含んでいてもよい。ある態様において、「コーティング」は、基材を除き、基材を覆うために用いられる材料である。本発明の方法及び組成物は、コーティングと結合した酵素と称される。当業者は、本明細書の記載が基材自身にも同様に適用可能であることを認識している。
【0023】
本発明は、有機汚染の成分を選択的に分解し、汚染の除去を促進する、酵素の触媒活性に基づいている。有機汚染の例は、有機ポリマー、脂肪、オイル、又は蛋白質を含む。本発明の組成物及び方法は、水安定化された活性コーティングによる有機汚染の活性な破壊を提供する。従来のコーティング材料は有機汚染を分解する能力を有しているが、本発明者は、このコーティングは水に曝露されると急速に不活性化され、コーティングの予想される寿命が役に立たないほどまで低下することを見出した。コーティング生物活性の安定性を促進する無限のメカニズムのうち、本発明者は、ベースと混入する前に酵素上に1以上のポリマー部分を添加すると、得られるコーティング材料の水安定性を劇的に向上させることを見出した。
【0024】
水安定化生物活性コーティング材料組成物は、化学改質された酵素と結合した又はポリマー部分と混合された酵素を有するベースを含み、所望により、ベースと結合した第一のポリオキシエチレンを含み、この第一のポリオキシエチレンは酵素とは独立のものである(すなわち、酵素に共有結合していない)。この組成物は、食品汚れ、虫汚れ、指紋、及び他の環境上若しくは人工的汚れのような有機汚染の自己洗浄用のコーティングとして有用である。
【0025】
この組成物は水安定化コーティングである。この「水安定化」とは、結合した有機汚染の自己洗浄もしくは解放に対するコーティングの活性を意味し、非化学改質蛋白質を有する同様のコーティングと比較して化学改質蛋白質の存在により活性が高まる。水安定化コーティングは所望により、水中に30分浸した後に50〜90%、若しくはそれ以上の活性を保持する。水安定化コーティングは所望により、水中の90分浸した後に15%以上の活性を保持する。
【0026】
ある態様において、この組成物は一時的コーティングである。ここで「一時的」とは、30分〜3ヶ月の間に実施可能なものと規定する。一時的の限界は、所望によりコーティングが曝される環境条件により規定される。ある態様において、一時的は、3ヶ月以下、所望により2ヶ月未満、所望により6、5、4、3、2、もしくは1週間未満、あるいはこれらの間のいずれかである。所望により、一時的は、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1日以下、あるいはこれらの間のいずれかである。ある態様において、「一時的」は本発明の組成物を基材に適用してから水と30、60、もしくは90分、もしくはそれ以上浸漬もしくは接触させるまでの間である。一時的の間の後の低下した酵素活性は、コーティングの表面を擦り、埋め込まれた酵素を表面に露出させることにより更新される。
【0027】
この組成物はベース材料を含む。ベース材料とは、1種以上の有機ポリマー材料を含む。1種以上のこれらの材料と酵素の組み合わせは、基材材料もしくはコーティングとして用いることができる水安定化生物活性材料(同意語として、蛋白質−ポリマー複合材料)を形成する。1種以上の酵素、所望により化学改質された酵素、との結合に有用なベース材料の例は、米国特許出願No.2008/0293117及び2010/0279376に記載されている。
【0028】
水安定化生物活性コーティング材料の製造は、1種以上の非水性有機溶剤型ポリマー及び酵素の水溶液を、所望により溶解することにより達成される。酵素は所望により、硬化の前に溶剤型樹脂に分散される。酵素を分散させることは、生物活性材料を含む酵素及び酵素の機能を損なう酵素の大きな凝集体(例えば直径5μm以上)を形成することと対比される。酵素は所望により、ポリマー材料に分散され、酵素が他の生物活性蛋白質と結合せず及び/又は平均的直径(例えば5μm未満)の会合した蛋白質の比較的小さな粒子を形成するようにされる。例えば、蛋白質−ポリマー複合材料における酵素粒子の平均粒子サイズは5μm未満(平均直径)、例えば1nm〜5μmである。ある態様において、平均粒子サイズは5000、4000、3000、2000、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50、25、20、15、10、5、1nm以下、あるいは0.1nm〜5000nmの間である。ある態様において、この平均粒子サイズは5、4、3、2もしくは1μmを超えない。所望により、この平均粒子サイズは1μm以下である。
【0029】
硬化性蛋白質−ポリマー組成物は所望により、2成分溶剤型(2KSB)組成物である。所望により、1成分系(1K)は同様に操作可能である。例えば、酵素はラテックスもしくはエナメルペイント、ワニス、ポリウレタンゲル、又は他のコーティング材料のようなコーティング材料に封入される。ペイントに混入される酵素の例は、米国特許第5,998,200号に記載されている。
【0030】
2成分系において、2種の成分は所望により使用、例えば硬化性蛋白質−ポリマー組成物を基材に適用する直前に混合され、生物活性クリアーコートのような酵素含有コーティングを形成する。通常、第一の成分は架橋性ポリマー樹脂を含み、第二の成分は架橋剤を含む。このように、エマルジョンが架橋性樹脂を含む第一の成分であり、架橋剤が第二の成分であり、混合されて硬化性蛋白質−ポリマー組成物を形成する。
【0031】
本発明の方法及び組成物に含まれるポリマー樹脂は、コーティングもしくは基材組成物に有用なあらゆるフィルム形成ポリマーであってよい。そのようなポリマーの例は、アミノプラスト、メラミンホルムアルデヒド、カルバメート、ポリウレタン、ポリアクリレート、エポキシド、ポリカーボネート、アルキド、ビニル、ポリアミド、ポリオレフィン、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリシロキサン、及びこれらもしくは他のポリマーの組み合わせを含む。
【0032】
ある態様において、ポリマー樹脂は架橋性である。架橋性ポリマーは特徴的な官能基を有する。そのような官能基の例は、アセトアセテート、酸、アミン、カルボキシル、エポキシ、ヒドロキシル、イソシアネート、シラン、ビニル、他の操作可能な官能基、及びこれらの組み合わせを含む。
【0033】
有機架橋性ポリマー樹脂の例は、アミノプラスト、メラミンホルムアルデヒド、カルバメート、ポリウレタン、ポリアクリレート、エポキシ、ポリカーボネート、アルキド、ビニル、ポリアミド、ポリオレフィン、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリシロキサン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0034】
所望により、架橋剤が組成物に含まれる。選ばれるか教材は、用いるポリマー樹脂に依存する。架橋剤の限定しない例は、イソシアネート官能基、エポキシ官能基、アルデヒド官能基、もしくは酸官能基のような官能基を有する化合物を含む。
【0035】
蛋白質−ポリウレタン複合材料の特定の態様において、ポリマー樹脂はヒドロキシ官能性アクリルポリマーであり、架橋剤はポリイソシアネートである。
【0036】
ポリイソシアネート、所望によりジイソシアネート、は本発明の態様に係るヒドロキシ官能性アクリルポリマーと反応する架橋剤である。脂肪族ポリイソシアネートが、自動車クリアコート用途のようなクリアコート用途のための蛋白質−ポリマー複合材料の製造方法に用いられる所望のポリイソシアネートである。脂肪族ポリイソシアネートの限定しない例は、1,4-ブチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,2-ジイソシアナトプロパン、1,3-ジイソシアナトプロパン、エチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、1,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ジフェニルメタン4,4'-ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4'-ジイソシアネートのイソシアヌレート、メチレンビス-4,4'-イソシアナトシクロヘキサン、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、イソホロンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、p-フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートのイソシアヌレート、トリフェニルメタン4,4',4"-トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及びメタキシレンジイソシアネートを含む。
【0037】
硬化手順は従来の硬化性ポリマー組成物に通常用いられているものである。例えば、熱、UV光、又はこれらの組み合わせを適用することにより硬化を達成する。所望により、酸素もしくは他の大気にさらすことによりコーティング組成物を硬化させてもよい。ある態様では、他の硬化影響因子若しくは条件を適用する必要なしに自発的に硬化される。
【0038】
蛋白質−ポリマー複合材料は所望により熱硬化性蛋白質−ポリマー複合材料である。例えば、基材もしくはコーティング材料は所望により、加熱硬化によって硬化される。所望により、硬化性組成物に熱重合開始剤が含まれる。熱重合開始剤の例は、有機ペルオキシド及びアゾ化合物のような遊離基開始剤を含む。有機ペルオキシド熱開始剤の例は、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、及びラウリルペルオキシドを含む。アゾ化合物熱開始剤の例は、2,2'-アゾビスイソブチロニトリルを含む。
【0039】
本発明の態様に係る方法において、従来の硬化温度及び硬化時間を用いることができる。例えば、特定の温度又は特定の硬化条件における硬化時間は、架橋剤官能基が硬化前に存在する総量の5%未満に低下するという基準によって決定される。架橋剤官能基はFT−IR又は他の適当な方法によって定量される。例えば、特定の温度又は特定の硬化条件における、本発明のポリウレタン蛋白質−ポリマー複合材料の硬化時間は、架橋剤官能基NCOが硬化前に存在する総量の5%未満に低下するという基準により決定される。特定の樹脂に対する硬化の程度を評価する他の方法は、当該分野において公知である。例えば、硬化は溶媒の蒸発を含み、又は化学線、例えば紫外線、電子ビーム、マイクロ波、赤外線、もしくはガンマ線への曝露による。
【0040】
蛋白質−ポリマー複合材料及び/又は有機溶媒とポリマー樹脂の混合物、水性酵素溶液、エマルジョン、及び/又は硬化性組成物の特性を改良するために、所望により1種以上の添加剤を含ませてもよい。そのような添加剤の例は、UV吸収剤、可塑剤、湿潤剤、防腐剤、界面活性剤、滑剤、顔料、充填剤、及び垂れ防止剤を含む。
【0041】
酵素を含む基材もしくはコーティングの例は、ポリマー樹脂、界面活性剤及び非水性有機溶媒の混合物であり、混合されてエマルジョンを形成する。「界面活性剤」とは、溶解される液体の表面張力を低下させる、又は2つの液体の間もしくは液体と固体の間の界面張力を低下させる表面活性剤を意味する。
【0042】
界面活性剤は、K.R.Lange, Surfactants: A Practical Handbook, Hanser Gardner Publications, 1999;及びR.M.Hill, Silicone Surfactants, CRC Press, 1999に記載されているような、両性、シリコーンベース、フルオロ界面活性剤、アニオン、カチオン及びノニオンを含む様々なものであってよい。アニオン界面活性剤の例は、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルフェート、アルキル及びアルキルアリールジスルホネート、スルホン化脂肪酸、ヒドロキシアルカノールのスルフェート、スルホスクシン酸エステル、ポリエトキシル化アルコール及びアルキルフェノールのスルフェート及びスルホネートを含む。カチオン界面活性剤の例は、4級界面活性剤及びアミノエポキシドを含む。ノニオン界面活性剤の例は、アルコキシレートアルカノールアミド、ソルビトールもしくはマンニトールの脂肪酸エステル、及びアルキルグルカミドを含む。シリコーンベース界面活性剤の例は、シロキサンポリオキシアルキレンコポリマーを含む。
【0043】
生物活性コーティングが生物材料と接触して生物汚染を形成する場合、酵素もしくは酵素の組み合わせがこの汚染と接触する。この接触は酵素の酵素活性を働かせ、汚染の成分と作用しもしくは汚染の成分を変化させ、基材もしくはコーティングからのその除去を容易にする。
【0044】
この組成物は、生物活性コーティングを形成する少なくとも1種の活性蛋白質を含む。活性蛋白質はプロテアーゼもしくは加水分解酵素のような酵素の活性を有する巨大分子である。「蛋白質」とは、ペプチド結合により共有結合し、酵素の活性を有する3以上の天然、合成、もしくは誘導体アミノ酸である。従って、「蛋白質」は3〜100個、もしくはそれ以上のアミノ酸を含み、約150〜350,000ダルトンの分子量を有する。蛋白質は、生命体のゲノムによりエンコードされた生物により産生された蛋白性分子の長さに適合する、3以上のアミノ酸の長さの隣接する分子配列を有する分子である。蛋白質の例は、酵素、抗体、受容体、輸送蛋白質、構造蛋白質、又はこれらの組み合わせを含む。蛋白質は、リガンド、医薬、抗原、もしくはハプテンのような他の物質と特異的に相互作用をすることができる。蛋白質は1種以上のホモもしくはヘテロポリマー部分の添加により化学的に改質される。「類似体」とは、ビオチニル化を除きホモもしくはヘテロポリマー基による化学改質を除く。
【0045】
蛋白質は所望により、1種以上のリン、硫黄の分子の付加もしくは除去による、又はビオチン、アビジン、フルオロフォア、ルミフォアのような側基、又は精製、検出、もしくは溶解度等の特性を変える他の側基の付加によるような、そのままのポリペプチド配列から改質される。
【0046】
この記載は酵素である蛋白質に関するものであるが、他の蛋白質活性成分も同様に可能である。酵素は所望により生物活性酵素である。生物活性酵素は生物組織、環境、もしくは食品中の分子の化学結合を開裂することができる。生物活性であるコーティングは1種以上の生物活性酵素を含む。酵素は所望により、ペプチド結合を開裂することができるプロテアーゼであり、例えばバクテリアプロテアーゼもしくはその類似体を含む。酵素として機能する蛋白質は所望により、遺伝子によりエンコードされる野生タイプのアミノ酸配列と同じである。蛋白質は、天然の有機体中の蛋白質の配列に適合するアミノ酸配列を有する場合、「野生タイプ」とよばれる。蛋白質は所望により、野生タイプ蛋白質の配列と類似の配列及び/又は構造及び/又は酵素としての構造及び機能を含む、野生タイプ酵素と機能的に等価である。機能的に等価の酵素は、野生タイプ酵素のEC分類の化学反応を触媒するような、野生タイプ酵素と類似のもしくは同じ酵素特性を有し、及び/又は配列及び/又は構造による野生タイプ酵素に関連する酵素の化学反応を触媒するような他の酵素特性を有する。酵素は、野生タイプ形態の酵素により触媒される反応(例えば、EC分類に用いられる反応)を触媒する同等の機能を含む。限定しない例として、「アミラーゼ」は、高い反応速度、低い反応速度、変化した基質特性、高いもしくは低い基質結合親和力等によるような活性が変化しても、アミラーゼ活性を保持するアミラーゼと機能的に等価物を含む。機能的に等価物の例は、野生タイプ酵素配列の突然変異体、例えば配列切断、アミノ酸置換、アミノ酸変異、及び/又は融合蛋白質等を含む。
【0047】
酵素はコーティング中もしくは上に固定され、有機汚染成分のより小さな分子への分解を触媒する。理論付けようとするものではないが、より小さな分子はコーティングの表面への接着が弱く、重力又は水、空気、もしくは他の流体による穏やかな洗浄によりコーティングからの有機汚染物質の除去が促進される。このように、本発明は表面からの有機汚染の除去用の組成物及び方法として有用である。
【0048】
酵素は通常、酵素委託(EC)番号としての標準命名法に従い記載される。使用可能な酵素の例は、EC1,オキシドレダクターゼ;EC2,トランスフェラーゼ;EC3、ヒドロラーゼ;EC4,リアーゼ;EC5、イソメラーゼ;又はEC6、リガーゼを含む。これらのカテゴリーにおける酵素は本発明の態様による組成物中に含まれ得る。
【0049】
具体的な態様において、含まれる酵素はヒドロラーゼ、例えばグルコシダーゼ、プロテアーゼ、又はリパーゼである。グルコシダーゼの非限定的例は、アミラーゼ、キチナーゼ、及びリゾチームを含む。プロテアーゼの非限定的例は、トリプシン、キモトリプシン、サーモリシン、スブチリシン、パパイン、エラスターゼ、及びプラスミノーゲンを含む。リパーゼの非限定的例は、パンクレアチンリパーゼ及びリポ蛋白リパーゼを含む。酵素として機能する蛋白質の例は、米国特許出願公開No.2010/0210745に記載されている。
【0050】
アミラーゼは、コーティング組成物のある態様において存在する酵素である。アミラーゼはでんぷんを分解する活性を有する。いくつかのタイプのアミラーゼが使用可能であり、具体的にはオリゴ糖及び多糖中の(1->4)-α−D−グルコシド結合の末端加水分解に関与するα−アミラーゼ(EC3.2.1.1)を含む。α−アミラーゼはBacillus subtilis由来であり、Genbank Accesion No.ACM91731(SEQ ID NO:1)にみられる配列、又はその類似体を有し、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列によりエンコードされる。特定の例は、Sigma Aldrich Co., St. Louis, MOより入手可能なBacillus subtilisからのα−アミラーゼである。他のα−アミラーゼは、Geobacillus stearothermophilus (Accession No:AAA22227)、Aspergillus oryzae (Accession No: CAA31220)、Homo sapiens (Accession No: BAA14130)、Bacillus amyloliquefaciens (Accession No: ADE44086)、Bacillus licheniformis (Accession No: CAA01355)、又は他の生命体もしくは類似体由来のものを含む。様々な生命体からのβ−アミラーゼ、γ−アミラーゼ、又はその類似体も同様に蛋白質−ポリマー組成物に使用可能である。
【0051】
アミラーゼ酵素の例は、1000U/g以上のプロテアーゼ活性を有し、ここで1U(ユニット)は、Zulkowskyのポテトでんぷん(例えば、190℃においてグリセロールにより処理したでんぷん、Ber. Deutsch. Chem. Ges, 1880; 13:1395)からの非蛋白質消化を作用させる酵素の量と規定される。具体的には、このアミラーゼは1,000U/g〜500,000U/g、もしくはそれ以上の活性を有する。
【0052】
プロテアーゼは所望により、サーモリシンがプロトタイププロテアーゼ(EC3.4.24.27)又はその類似体である、細菌サーモリシン様プロテアーゼのM4族のメンバーのような細菌メタロプロテアーゼである。プロテアーゼは所望により、Bacillus stearothermophilus (Bacillus thermoproteolyticus Var. Rokko)(例えば、Amano Enzyme U.S.A., Co(Elgin, IL)より入手可能な商品名"THERMOASE C160"として販売されている)、もしくはその類似体由来の細菌中性サーモリシン様プロテアーゼである。プロテアーゼは所望により、KreigらのJ. Biol. Chem., 2000; 275(40):31115-20に示されているあらゆるプロテアーゼである。プロテアーゼの具体例は、Bacillis cereus (Accession No.P05806)、Lactobacillis sp. (Accession No.Q48857)、Bacillis megaterium (Accession No.Q00891)、Bacillis sp. (Accession No.Q59223)、Alicyclobacillis acidocaldarious (Accession No.Q43880)、Bacillis caldolyticus (Accession No.P23384)、Bacillis thermoproteolyticus (Accession No.P00800)、Bacillus stearothermophilus (Accession No.P43133)、Bacillus subtilis (Accession No.P06142)、Bacillus amyloliquefaciens (Accession No.P06832)、Lysteria monocytogenes (Accession No.P34025;P23224)からのサーモリシンさまプロテアーゼを含む。
【0053】
野生タイププロテアーゼは、天然の生命体にみられるものと同じアミノ酸配列を有するプロテアーゼである。野生タイププロテアーゼの具体例は、GenBank Accession No.P06874及びSEQ ID NO:3に示され、Takagi M.ら、J. Bacteriol., 1985; 163(3):824-831及びSEQ ID NO:4に見られるヌクレオチド配列エンコードSEQ ID NO:3である。
【0054】
プロテアーゼ活性を調べる方法は公知であり、当該分野において標準的である。具体的には、プロテアーゼ蛋白質もしくはその類似体中のプロテアーゼ活性のスクリーニングは、プロテアーゼもしくはその類似体をプロテアーゼの天然もしくは合成基質と接触させ、そして基質の酵素による開裂を測定することを含む。このための基質の例は、プロテアーゼにより開裂され、当該分野によって公知の方法により容易に測定されるフォリン陽性アミノ酸及びペプチド(チロシンとして計算される)を放出するカゼインを含む。Bachem AG, Bubendorf, Switzerlandより得られる合成基質フリルアクリロイル化トリペプチド3-(2-フリルアクリロイル)-L-グリシル-L-ロイシン-L-アラニンも同様に使用可能である。
【0055】
特定のプロテアーゼの例は、10,000ユニット/gプロテアーゼもしくはそれ以上を有する。ある態様において、プロテアーゼは、1ユニットが37℃、pH7.2で反応を行った場合に、ミルクカゼインから非蛋白質消化生成物を遊離し(最終濃度0.5%)、初期の反応段階で1分あたり1μモルのチロシンに匹敵するフォリンカラーを与える酵素の量と規定されるサーモリシンである。プロテアーゼ活性は10,000PU/g〜1,500,000U/gである。より低いプロテアーゼ活性も使用可能である。プロテアーゼ活性は所望により、300,000U/gを超える。所望により、プロテアーゼ活性は300,000U/g〜2,000,000U/gもしくはそれ以上である。
【0056】
蛋白質は所望によりリパーゼである。野生タイプリパーゼは天然生命体にみられるものと同じアミノ酸配列を有するリパーゼである。野生タイプリパーゼの具体例は、GenBank Accession o.ACL68189及びSEQ ID NO:5にみられる。野生タイプリパーゼをエンコードするヌクレオチドの例は、Accession No.FJ536288及びSEQ ID NO:6にみられる。
【0057】
リパーゼ活性はユニット/グラムで規定される。1ユニットは、基質トリアセチン(Sigma-Aldrich, St.Louis, MO, Product No.90240)を用いてpH7.4、40℃において1分あたり1μモルの酢酸を加水分解する酵素の量に相当する。SEQ ID NO:5のリパーゼは200ユニット/gの活性を有する。
【0058】
リパーゼ活性を調べる方法は公知であり、当該分野において標準的である。具体的には、リパーゼ蛋白質もしくはその類似体のリパーゼ活性のスクリーニングは、リパーゼもしくはその類似体をリパーゼの天然もしくは合成基質と接触させ、そして基質の酵素による開裂を測定することを含む。このための基質の例は、トリアシルリパーゼにより開裂され、当該分野によって公知の方法により容易に測定される酪酸もしくは酢酸を放出するトリブチリン及びトリアセチンを含む。
【0059】
蛋白質は所望により、1種以上の共同因子イオン又は蛋白質と機能する。共同因子イオンは、例えば亜鉛、コバルト、又はカルシウムである。
【0060】
使用可能な蛋白質のクローニング、発現、及び精製は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2版, Vol.1-3, Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989;Current Protocols in Molecular Biology, Ausubeltら編、Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1992;及びShort Protocols in Molecular Biology, Ausubelら編、Wiley-Interscience, New York, 2002に開示されている方法により実施可能である。
【0061】
蛋白質中に存在する天然由来のアミノ酸の例は、一般的なアミノ酸であるアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、及びチロシンを含む。天然もしくは化学的に変性されたアミノ酸の誘導体も所望により存在してもよく、例えばα−アスパラギン、2−アミノブタン酸もしくは2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、2−アミノカプリン酸(2−アミノデカン酸)、6−アミノカプロン酸、α−グルタミン、2−アミノヘプタン酸、6−アミノヘキサン酸、α−アミノイソ酪酸(2−アミノアラニン)、3−アミノイソ酪酸、β−アラニン、allo-ヒドロキシリシン、allo-イソロイシン、4−アミノ−7−メチルヘプタン酸、4−アミノ−5−フェニルペンタン酸、2−アミノピメル酸、γ−アミノ−β−ヒドロキシベンゼンペンタン酸、2−アミノスベリン酸、2−カルボキシアゼチジン、β−アラニン、β−アスパラギン酸、ビフェニルアラニン、3,6-
ジアミノヘキサン酸、ブタン酸、シクロブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、N5−アミノカルボニルオルニチン、シクロペンチルアラニン、シクロプロピルアラニン、3−スルホアラニン、2,4-ジアミノブタン酸、ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、ジフェニルアラニン、N,N-ジメチルグリシン、ジアミノピメル酸、2,3-ジアミノプロパン酸、S−エチルチオシステイン、N−エチルアスパラギン、N−エチルグリシン、4−アザフェニルアラニン、4−フルオロフェニルアラニン、γ−グルタミン酸、γ−カルボキシグルタミン酸、ヒドロキシ酢酸、ピログルタミン酸、ホモアルギニン、ホモシステイン酸、ホモシステイン、ホモヒスチジン、2−ヒドロキシイソ吉草酸、ホモフェニルアラニン、ホモロイシン、ホモプロリン、ホモセリン、2−ヒドロキシペンタノン酸、5−ヒドロキシリシン、4−ヒドロキシプロリン、2−カルボキシオクタヒドロインドール、3−カルボキシイソキノリン、イソバリン、2−ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、メルカプト酢酸、メルカプトブタン酸、サルコシン、4−メチル−3−ヒドロキシプロリン、メルカプトプロパン酸、ノルロイシン、ニペコチン酸、ノルチロシン、ノルバリン、ω−アミノ酸、オルニチン、ペニシラミン(3−メルカプトバリン)、2−フェニルグリシン、2−カルボキシピペリジン、サルコシン(N−メチルグリシン)、2−アミノ−3−(4−スルホフェニル)プロピオン酸、1−アミノ−1−カルボキシシクロペンタン、3−チエニルアラニン、ε−N−トリメチルリシン、3−チアゾリルアラニン、4−カルボン酸、α−アミノ-2,4-ジオキシピリミジンプロパン酸、及び2−ナフチルアラニンである。
【0062】
蛋白質は当該分野において公知の様々な方法によって得られ、その方法の例は、細胞もしくは生命体からの単離、化学合成、核酸配列の発現、及び蛋白質の部分加水分解を含む。化学的な蛋白質合成方法は当該分野において公知であり、固相ペプチド合成及び溶液相ペプチド合成、又はHackeng,TMらのProc Natl Acad Sci USA, 1997;94(15):7845-50の方法を含む。蛋白質は天然もしくは非天然蛋白質であってよい。「天然」とは、細胞、組織もしくは生命体に内生する蛋白質を意味し、対立遺伝子型変形を含む。非天然蛋白質は天然生命体から合成された又は変性細胞、組織もしくは生命体に見られないものを含む。
【0063】
蛋白質の構造に改質もしくは変形を行ってよく、活性酵素と同じ特性を有する分子が得られる(例えば、保存アミノ酸置換)。例えば、ある種のアミノ酸は活性を損なうことなく配列中の他のアミノ酸と置換することができ、又は未改質蛋白質の活性を対価させるもしくは高めることができる。蛋白質の機能的活性を規定するのは相互作用能力及び蛋白質の特性であるから、ある種のアミノ酸配列置換を蛋白質配列中で行うことができ、同様のもしくは他の望ましい特性を有する蛋白質を得ることができる。天然の蛋白質とアミノ酸配列が100%同じではない蛋白質は類似体とよばれる。類似体は所望により、1以上のアミノ酸置換、改質、欠失、付加、又は他の変化を含み、但しそのような変化は野生タイプのものと同じタイプの活性(例えば加水分解)を有する蛋白質を形成するものであるとする。そのような変化を行う際に、アミノ酸の親水性もしくは水療インデックスが考慮される。そのような変化において、親水性もしくは水療インデックスが±2、もしくは±1、又は±0.5内にあるアミノ酸を用いて行われる。
【0064】
アミノ酸置換は所望により、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えばその疎水性、親水性、電荷、大きさ等に基づく。考慮される特性の変化を起こす置換基の例は当業者に周知であり、(当初の残基:置換基の例):(Ala:Gly,Ser)、(Arg:Lys)、(Asn:Gln,His)、(Asp:Clu,Cys,Ser)、(Gln:Asn)、(Glu:Asp)、(Gly:Ala)、(His:Asn,Gln)、(Ile:Leu,Val)、(Leu:Ile,Val)、(Lys:Arg)、(Met:Leu,Tyr)、(Ser:Thr)、(Thr:Ser)、(Tip:Tyr)、(Tyr:Trp,Phe)、及び(Val:Lle,Leu)を含む。特に、蛋白質の態様は野性タイプ蛋白質と約50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%配列が同一である類似体を含む。
【0065】
さらに上記特徴は所望により、酵素活性の低いもしくは高い蛋白質を調製する際において考慮される。例えば、蛋白質中の基質結合サイト、外部サイト、共同因子結合サイト、触媒サイト、もしくは他のサイトにおける置換基は基質に対する酵素の活性を変化させる。そのような置換基を考慮するにあたり、公知の天然もしくは天然様酵素の配列を考慮してもよい。例えば、Miki, Yら、Journal of Molecular Catalysis B:Enzymatic, 1996; 1:191-199によるような、サーモロイシン中のAsp213に対応する突然変異体も使用可能である。所望により、セリン単独もしくはG8C/N60C/S65Pの置換基と共に、L144のサーモリシンにおける置換は、野性タイプ酵素よりも5〜10倍触媒効率を高めるために使用可能である。(Yasukawa, K.及びInouye, K, Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Proteins & Proteomics, 2007; 1774-1281-1288)。N116D、Q119R、D150E及びQ225RのBacillus stearothermophilusからの細菌中性プロテアーゼにおける突然変異体並びに他の突然変異体は同様に触媒活性を高める(De Kreig,A,ら、J. Biol. Chem., 2002; 277:15432-15438)。De Kreigはまた、蛋白質の触媒活性を高めるもしくは低下させる複式置換基を教示している(Id. 及び De Kreigら、Eur J. Biochem, 2001; 268(18):4985-4991)。これら又は他のサイトにおける他の置換基は所望により、酵素活性に同じ効果をもたらす。サイト方向性突然変異生成及びDe Kreig, Eur J. Biochem, 2001;268(18):4985-4991の方法によるような蛋白質活性の選別は当該分野のレベル内であり、一般的である。
【0066】
蛋白質は所望により、野性タイプ蛋白質の類似体である。蛋白質の類似体は野性タイプ蛋白質と同じ条件においた場合に、同じ基質に対して野性タイプ酵素と同じレベルの活性を有するアミノ酸配列を有する。類似体は所望により、野性タイプ蛋白質の500%、250%、200%、150%、110%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、85%、80%、75%、70%、60%、50%、25%、10%、5%、又はこれらの間のあらゆる値を有する。類似体を形成するために野性タイプ蛋白質に対するあらゆる改質を用いてもよい。例えば、アミノ酸置換、付加、除去、架橋、ジスルフィド結合の除去もしくは付加、又は他の改質を用いて類似体を形成してよい。類似体は所望により、2以上の野性タイプ蛋白質、フラグメントの配列を含む融合蛋白質である。
【0067】
蛋白質活性を調べる方法は公知であり、当該分野において一般的である。例えば、酵素の活性の選別は、酵素を天然もしくは合成基質と接触させ、基質の酵素による開裂を測定することを含む。このための基質の例は、カゼイン(これはプロテアーゼにより開裂されて当該分野において公知の方法により容易に測定されるフォリン陽性アミノ酸及びペプチド(チロシンとして計算される)を放出する)を含む。合成基質である、Bachem AG, Bubendorf, Switzerlandより得られるフリルアクリロイル化トリペプチドである3-(2-フリルアクリロイル)-L-グリシル-L-ロイシン-L-アラニンが使用可能である。α−アミラーゼの基質の例は、長鎖炭水化物、例えばスターチを構成するアミロースもしくはアミロペクチンを含む。α−アミラーゼ活性を選抜する他の方法は、Fischer and Stein, Biochem,Prep., 1961, 8, 27-33の比色分析法を含む。当業者は様々な材料に存在する酵素の活性を調べる方法を容易に想定できるであろう。
【0068】
蛋白質は例えば組み換え体である。蛋白質をエンコードする核酸配列をクローンする、合成するもしくは得る方法は公知であり、当該分野において一般的である。同様に、細胞形質転換及び蛋白質発現の方法も同様に公知である。SEQ ID NO:1の蛋白質配列をエンコードするcDNAの例は、ヌクレオチド配列SEQ ID NO:2である。SEQ ID NO:3の蛋白質配列をエンコードするcDNAの例は、登録番号M11446及びSEQ ID NO:4のヌクレオチド配列である。SEQ ID NO:5の蛋白質配列をエンコードするcDNAの例はヌクレオチド配列SEQ ID NO:6である。
【0069】
蛋白質は、付随タグ、改質、融合蛋白質におけるような他の蛋白質、又は当該分野において公知の他の改質もしくは組み合わせにより共発現されてもよい。タグの例は、6XHis、FLAG、ビオチン、ユビキノン、SUMO、又は当該分野において公知の他のタグを含む。タグは、ファクターXa、トロンビン、Lifesensors Inc., Malvern, PAより得られるようなSUMO蛋白質、又はトリプシンを含む当該分野において公知の酵素により開裂可能な標的配列により蛋白質に結合することによるような開裂可能である。さらに、化学的開裂は同様に使用可能である。
【0070】
蛋白質発現は、例えば蛋白質核酸配列の転写、蛋白質核酸配列から転写されたRNAの転換等により達成される。核酸配列の類似体は、蛋白質に転換された際に野性タイプ蛋白質もしくは野性タイプ蛋白質の類似体を形成するあらゆる配列である。蛋白質発現は所望により、例えば大腸菌(E. Coli)、ヒーラ細胞又はチャイニーズハムスター卵巣細胞のような細胞をベースとするシステムにおいて行われる。細胞を含まない発現システムも同様に使用可能である。
【0071】
蛋白質の多くの類似体が使用可能であり、蛋白質配列の機能を高める、低下させる、又は変えないアミノ酸置換、改質、もしくは他のアミノ酸変化を含む本発明の範囲内である。いくつかの後転換改質も同様に本発明の範囲内であり、例えば非天然アミノ酸の混入、ホスホリル化、グリコシル化、ビオチン、フルオロフォア、ルミフォア、放射活性基、抗原、又は他の分子のような測基の付加を含む。
【0072】
本発明に係る蛋白質は1以上のポリマー部分の付加により化学改質されている。ポリマー部分は所望により、直鎖、分枝鎖、又はこれらの組み合わせである。このポリマー部分は所望により、ホモマー又はヘテロマーである。ポリマー部分の例は、炭水化物もしくはポリオキシエチレン(ポリエチレングリコールもしくはPEGとして知られている)の1以上の分子を含む。
【0073】
ポリマー部分の例は、限定するものではないが、ポリオキシエチレン及びポリオキシエチレン誘導体のようなポリアルキルアルコール及びグリコール(例えば酸素を含むヘテロアルキルを含む);官能化デキストランを含むデキストラン;スチレンポリマー;ポリエチレン及び誘導体;限定するものではないが、ヘパリンのポリマー、ポリガラクツロン酸、ムチン、核酸及びその類似体(改質リボースホスフェート主鎖、グルタミン酸、アスパラギン酸、合成ポリマーのカルボン酸、燐酸、およびスルホン酸誘導体のポリペプチドを含む)を含むポリアニオン;及びポリカチオン(アクリルアミド及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパントリメチルアミン、ポリ(N-エチル-4-ビニルピリジン)もしくは同様の4級化ポリピリジン、ジエチルアミノエチルポリマー及びデキストラン共役体、ポリミキシンBスルフェート、リポポリアミン、ポリ(アリルアミン)、例えば強ポリカチオンポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロリド)、ポリエチレンイミン、ポリブレン、スペルミン、スペルミジン、及びプロタミンのような蛋白質、ヒストンポリペプチド、ポリリシン、ポリアルギニン及びポリオルニチンをベースとするポリカチオンを含む);及びこれらの混合物及び誘導体を含む。好適な付加ポリマーは、Roberts, M.J.ら、(2002)"Chemistry for peptide and protein PEGylation" Adv.Drug Deliv.Rev.54, 459-476; Kinsler,O.ら、(2002)"Mono-N-terminal poly(ethylene glycol)-protein conjugates" Adv.Drug Deliv. Rev.54; 米国特許出願番号60/360,722;US 5,795,569; US 5,766,581; EP01064951; 米国特許6,340,742;WO 00176640;WO002017;EP0822199A2;WO0249673A2;US 4,002,531;US 5,183,550;5;US 5,985,263; US 5,990,237; US 6,461,802; US 6,495,659; US 6,448,369; US 6,437,025; US 5,900,461; US 6,413,507; US 5,446,090; US 5,672,662; US 6,214,966; US 6,258,351; US 5,932,462; US 5,919,455; US 6,113,906; US 5,985,236; WO9428024A1; US 6,340,742; US 6,420,339及びWO0187925A2に示されている。
【0074】
ポリオキシエチレンは一般的構造−(CH2CH2O)n−を有し、ここでnは所望により2〜2000の整数である。所望により、nは50〜500、100〜250、あるいは150〜250の整数である。ポリオキシエチレンは所望により、当該分野において公知の1以上の様々な化学物質を用いて蛋白質に結合するサイズで提供される。ポリオキシエチレンは所望により、1級アミン(例えばリシン側鎖もしくは蛋白質N末端)、チオール(システイン残基)、又はヒスチジンと共有結合している。リシンはしばしば蛋白質の表面に現れ、リシン側鎖におけるポリオキシエチレンの結合は反応生成物の混合物を形成する。N末端のpKaはリシン側鎖のpKaとは大きく異なっているため、改質するためにN末端を特異的に標的とすることが可能である。同様に、ほとんどの蛋白質は遊離システイン残基をわずかに含むため、システイン(天然もしくは人工)はポリオキシエチレンとのサイト特異的相互作用の標的とされる。
【0075】
ポリオキシエチレンは所望により、1つの末端がアルコキシ基のような比較的不活性の基で末端キャップされ、他方の末端がリンカー部分によりさらに改質されてもよいヒドロキシル基であるように末端キャップされている。「PEG」とは、ポリオキシエチレンを意味し、PEGに続く数字(下付きではない)は分子量を意味する。従って、「PEG10000」は分子量が約10,000ダルトンであるPEG部分である。本発明者は、直鎖PEG10000が他のPEG分子よりも優れていることを見出した。
【0076】
「PEG化」は、1以上のアミノ酸におけるリンカーによる1以上のPEG部分の結合による蛋白質の改質を意味する。ポリオキシエチレン(PEG)部分は、N末端α−アミノ基上の又はγ−蛋白質上のリシン残基上の求核置換(アシル化)により、例えばPEGスクシンイミジルエステルと結合する。所望により、ポリオキシエチレン部分は、PEG−アルデヒド及び還元剤、例えばシアノホウ化水素ナトリウムを用いて、蛋白質中に存在するアミノ基上での還元性アシル化によって結合する。所望により、ポリオキシエチレン部分は、例えばPEGマレイミド試薬を用いてマイケル付加反応において不対システイン残基の側鎖に結合する。リンカーに結合したポリオキシエチレン部分は所望により、JenLem Technology USA, Allen, TXより入手可能である。米国特許出願NO.2009/0306337に教示されているあらゆるPEG分子が使用可能である。米国特許出願NO.2009/0306337は蛋白質にPEG基を結合する方法も教示している。PEGは所望により、中間エステル、アミド、ウレタン、もしくは他の結合により蛋白質に結合する。
【0077】
ある態様において、蛋白質は、ポリオキシエチレン用のサイト特異的混入サイトを与えるために追加システインを混入した加水分解酵素の類似体である。ある態様において、リシンもしくはヒスチジン残基が、ポリオキシエチレンの分子の結合を阻害するように標的1級アミンを有さない他のアミノ酸で置換されている。システイン、リシン、もしくはヒスチジンのようなアミノ酸残基の選択は、所望の改質度による。所望により、US Pat No.7,642,340に記載されているように、シミュレーションコンピュータプログラムを用いてポリマーによる改質が蛋白質の機能を阻害するか否かを予想する。
【0078】
本発明において用いられる蛋白質は所望により、一置換である、すなわち蛋白質分子中の1つのアミノ酸残基に又はN−末端アミノ酸残基に結合しているただ1つのポリマー部分を有するものである。あるいは、1つの蛋白質上に2、3、4、もしくはそれ以上のポリマー部分が存在してもよい。蛋白質が1より多くのポリマー部分を含むような態様において、所望により、N末端アミノ酸残基又はアミノ酸基に同じ部分が結合する。しかしながら、個々のポリマー基は、その大きさ及び長さが互いに異なっていてよく、また蛋白質上の位置も異なっていてよい。
【0079】
水もしくは他の流体中に浸漬もしくは接触した際にコーティング組成物からの蛋白質の浸出速度を制御するために、所望により蛋白質上の1以上のサイトにおける1以上のポリマー部分の可逆的結合が用いられる。この態様において、ポリマーは共有結合されるが、例えば加熱、水洗浄、もしくは単なる時間の経過のような風化にさらされる。この結合は所望により、蛋白質とポリマーの間のもしくは蛋白質とポリマーの間に存在するリンカー内における結合である。
【0080】
本発明の方法は、コーティング材料を形成するための、ベースに混入された1以上の活性な化学改質された蛋白質を含む本発明の組成物を用いる。蛋白質は所望により、ベース材料に非共有結合及び/又は共有結合しており、又は封入された蛋白質を製造するためのような製造の間にベース材料と混合することにより又は表面に結合することによりベース材料と結合している。ある態様において、蛋白質は、蛋白質とベース材料の1以上の成分との間の直接共有相互作用により又はリンカーによる結合によってベース材料と共有結合している。
【0081】
コーティング中において蛋白質をベース材料と結合させるにはいくつかの方法がある。その1つは、共有結合を適用することである。詳細には、蛋白質の遊離アミノ基をベースの活性基に共有結合させる。そのような活性基は、アルコール、チオール、アルデヒド、カルボン酸、無水物、エポキシ、エステル、又はこれらのあらゆる組み合わせを含む。蛋白質を混入させるこの方法は独特な利点をもたらす。第1に、共有結合は蛋白質をベースに永久的につなぎ、蛋白質の浸出の少ない最終組成物の一体部分を構成する。第2に、共有結合は酵素寿命を長くする。時間と共に、蛋白質は通常、ポリペプチド鎖のほぐれのために活性を失う。共有結合のような化学結合はそのようなほぐれを有効に制限し、蛋白質の寿命を向上させる。蛋白質の寿命は通常、固定された蛋白質と物理的に吸着されたもしくは遊離の蛋白質との活性低下の量を比較することにより決定される。
【0082】
蛋白質は所望により、1:1〜1:20(酵素:ベース)の重量比でベースと結合する。所望により、蛋白質は1:2〜1:15、さらには1:4〜1:12の重量比でベースと結合する。
【0083】
蛋白質は所望により、基材中に均質に分散し、均質な蛋白質プラットフォームを形成する。
【0084】
材料に蛋白質を結合させる化学的方法は、蛋白質中及び材料成分中に存在する官能基によって異なる。そのような方法は多く存在する。例えば、蛋白質(例えば酵素)を他の物質に結合する方法は、O'SullivanらのMethods in Enzymology, 1981; 73:147-166及びErlanger, Methods in Exzymology, 1980; 70:85-104に記載されている。
【0085】
蛋白質は所望により、基材上に層をなすコーティング中に存在し、ここで蛋白質は所望により、ベース材料に取り込まれ、混合され、改質され、ベース材料もしくはベース材料上の層と一体になる。
【0086】
水安定化コーティング組成物は所望により、組成物材料の特性を変えるための1種以上の添加剤を含む。そのような添加剤の例は、米国特許出願No:13/024,794もしくは米国特許No.5,559,163に記載されているものを含むUV吸収剤もしくはラジカルスカベンジャーのような1種以上の光安定剤、可塑剤、湿潤剤、防腐剤、界面活性剤、滑剤、顔料、充填剤、及び垂れ下がり抵抗を高める添加剤を含む。
【0087】
本発明の方法は所望により、蛋白質が活性コーティング材料と接触した有機汚染の成分を酵素分解できるように、水安定化活性一時的コーティング材料により基材をコートすることを含む。基材は本発明のコーティングによりコートすることができるものであればどのような表面であってもよい。基材は所望により、厚さ10mmのポリ塩化ビニルシートの可撓性に相当する可撓性を有するものである。基材は第1の表面及び第2の表面を有し、第1の表面及び第2の表面は反対側にある。コーティングは所望により、基材の第1の面、第2の面、その両方、又は基材の全体を覆う。水安定化活性コーティングによる基材のコーティングは、コーティング上に存在する場合に有機汚染の除去もしくは開放を促進する自己洗浄表面を与える。
【0088】
基材は本発明の組成物によりコートされる能力によってのみ限定される。例えば、基材は金属、木材、天然もしくは合成ポリマー、例えばガラス繊維もしくは他のプラスチック、樹脂、ペイント、ラッカー、石、皮革、他の材料、又はこれらの組み合わせである。基材は所望により、ウッドフロアーもしくはコートされたウッドフロアーである。基材は所望により、ポリウレタン保護剤によりコートされた木材のようなサブコーティングを含み、サブコーティングはペイント、ワニス、もしくは他の保護剤である。水安定化一時的活性コーティング材料は所望により、サブコーティング材料を覆うことにより基材と接触する。
【0089】
本発明の態様に係る水安定化コーティングは、基材に対する優れた接着、環境損傷に対する保護、腐食に対する保護を与え、さらに蛋白質の活性を与える。従って、ある態様において、水安定化活性一時的材料のコーティングは、受容体、抗体もしくはレクチンのリガンド又は酵素の基質である検体の検出のような多くの用途において有用な、酵素活性を与える。特定の態様において、コーティングは汚染形成材料の1以上の成分の酵素による分解による汚染に対する耐性を与える。
【0090】
水安定化組成物が生物材料、食品材料、もしくは環境材料と接触して有機汚染を形成する場合、酵素もしくは酵素の組み合わせがこの汚染もしくはその成分と接触する。この接触は蛋白質の酵素活性を汚染成分と相互作用させて酵素により汚染成分を変え、基材もしくはコーティングからのその除去を促進する。
【0091】
本発明の態様において、蛋白質は組成物中に0.1〜50wt%、1〜30wt%、1〜20wt%、1〜10wt%、2〜8wt%、3〜6wt%の量で含まれる。
【0092】
酵素含有コーティングは通常ユニット/cm2で表される表面活性を有する。THERMOASE C160(Bacillus stearothermophilus由来のサーモリシン)のようなサーモリシンを含むコーティングは所望により、水に曝露される前に、0.0075ユニット/cm2より高い表面活性を有する。ある態様において、サーモリシン表面活性は0.0075ユニット/cm2〜0.05ユニット/cm2である。所望により、サーモリシン表面活性は0.0075ユニット/cm2〜0.1ユニット/cm2である。所望により、サーモリシン表面活性は0.01ユニット/cm2〜0.05ユニット/cm2である。Bacillis subtilis由来のα−アミラーゼを含むコーティングにおいて、水に曝露する前の典型的な表面活性は0.01ユニット/cm2より高い。ある態様において、α−アミラーゼ表面活性は0.01ユニット/cm2〜1.5ユニット/cm2である。所望により、α−アミラーゼ表面活性は0.01ユニット/cm2〜2.5ユニット/cm2である。所望により、α−アミラーゼ表面活性は0.01ユニット/cm2〜1.0ユニット/cm2である。ある態様において、α−アミラーゼ表面活性は0.01ユニット/cm2〜4.0ユニット/cm2である。酵素濃度を高めることにより、野性タイプ類似体のような比活性のより高い酵素を用いることにより、又はベース材料との結合の間の酵素活性を安定化することにより、さらに高い表面活性を達成することができる。
【0093】
本発明の汚染の除去を促進する方法は、蛋白質が活性であるあらゆる温度において機能する。所望により、本発明の方法は4℃において行われる。所望により、本発明の方法は25℃において行われる。所望により、本発明の方法は周囲温度において行われる。所望により、本発明の方法は4℃〜125℃において行われる。
【0094】
基材もしくは基材上のコーティングの材料と組み合わせた蛋白質の存在は、除去を促進するために汚染を破壊する。
【0095】
本発明の方法は、酵素が活性でありかつ有機汚染の1以上の成分を開裂することができるように、酵素を含むコーティングを提供することを含む。特定の態様において、有機汚染は昆虫、指紋、もしくは環境由来のような有機物をベースとする。
【0096】
本明細書において有機汚染とは、生命体、食品、もしくは環境要因がコーティングと接触した後に残っている汚染、マーク、もしくは残留物を意味する。有機汚染はコーティングが昆虫の体と接触した後に残っているマークもしくは残留物に限られない。他の有機汚染源の例は、昆虫の羽根、足、もしくは他の付属物、鳥の糞、食品もしくは食品の成分、指紋もしくはコーティングが生命体と接触した後に残る残留物、又は水もしくは土中に存在する細菌もしくは分子のような他の有機汚染源である。
【0097】
水安定化一時的活性コーティング材料の製造方法は、蛋白質の水溶液と市販入手可能なベース材料を、例えばプロペラ混合によりもしくは手動混合により混合して均一にもしくは不均一に化学改質された蛋白質を分散させ、水安定化一時的コーティング材料を形成することを含む。
【0098】
以下の非限定例により本発明の様々な態様を説明する。この例は説明のためであり、本発明を限定するものではない。本発明の範囲及び精神から離れることなく改変可能である。
【実施例】
【0099】
例1
水安定化活性コーティング材料の製造用の材料
【0100】
材料: Bacillus subtilis(EC3.2.1.1)からのα−アミラーゼKLEISTASE SD80、リパーゼ(Aspergillus nigerからのリパーゼA12(EC3.1.1.3))、プロテアーゼN、プロテアーゼA、Protin AY-10、B. sterothermophilus TLP(THERMOASE C160)、及びTHERMOASE GL30(B. sterothermophilusTLPの低活性製剤)をAMANO Enzyme Inc.(日本、名古屋)から得る。ウシの血清からのウシ血清アルブミン(BSA)、ジャガイモからのでんぷん、小麦からのでんぷん、マルトース、酒石酸カリウムナトリウム、3,5-ジニトロサリチル酸、Na2(PO4)、NaCl、K2(PO4)、カゼイン、トリクロロ酢酸、フォリン−チオカルトフェノール試薬、Na2(CO3)、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、チロシン、p-ニトリフェニルパルミテート、エタノール、ヨウ素、グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトヘキソース、デキストリン(10kDa及び40kDa)をSigma Chemicals Co., St. Louis, MO, USAより得る。アルミニウムパネル及び8パス湿潤フィルムアプリケーターをPaul N. Gardner Company, Inc., (Pompano Beach, FL)より購入する。オスターブレンダー(600ワット)及びマヨネーズをスーパーマーケットから得る。凍結乾燥したコオロギをFluker Laboratories (Port Allen, LA)から得る。分子量の異なるスクシンイミジルエステルを含むポリエチレングリコール(PEG)誘導体はFishersci (Pottburg, PA)より得る。
【0101】
ポリアクリレート樹脂Desmophen A870 BA及び架橋剤ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする多官能性脂肪族ポリイソシアネート樹脂Desmodur N 3600をBayer Corp (Pittsburgh, PA)より得る。界面活性剤BYK-333をBYK-Chemie(Wallingford, CT)より得る。1−ブタノール及び1−ブチルアセテートをSigma-Aldrich Co.(Missouri, USA)より得る。アルミニウムペイントテストパネルをQ-Lab Co. (Cleveland, USA)より購入する。他の試薬はすべて分析グレードである。
【0102】
例2
酵素の調製
【0103】
リパーゼ、α−アミラーゼ、及びサーモリシンを原料粉末から超遠心により調製する。α−アミラーゼについては、原料粉末(6.75g)からの150mLの溶液をDI水中で調製する。サーモリシンについては、1.5gのB. sterothermophilusサーモリシン様プロテアーゼ(TLP)の150mL溶液をDI水中で調製する。リパーゼについては、1.5gのリパーゼA12の150mL溶液をDI水中で調製する。原料粉末中の不溶な大きな不純物を200nmのPTFEフィルター上でろ過により除去する。得られた溶液の蛋白質濃度は20mg/mLであり(ブラッドフォード法により測定)、氷上で保持する。
【0104】
超遠心は55psiの圧力において150mLのAmiconセル(氷で冷却)を用い、Millipore (Billerica, MA)の30kDaカットオフの超遠心膜を用いる。超遠心を3回繰返し、各実験ごとに150mLの50mMリン酸緩衝液(PBS)、pH=7.5に戻す。最終の残っている精製した蛋白質溶液をBradford法により定量し、50mMのPBS、pH=7.5中で化学改質及びコーティング材料の製造に用いる濃度に希釈する。50、100、200もしくは300mg/mLの精製した酵素の溶液を用いてコーティングを調製する。
【0105】
例3
酵素のPEG化
精製した酵素(1mL、140mg/ml)(α−アミラーゼ、サーモリシン、又はリパーゼ)をスクシンイミジルエステルにより誘導化されたPEG(単官能性直鎖PEG10000、PEG12000、PEG20000、又は8アーム分枝PEG(NANOCS Inc.(New York, NY)より購入したPEG N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)と1:5の酵素:PEGのモル比で混合する。8アーム分枝PEGはくし型の構造を有し、10,000ダルトンの分子量を有する。各分枝は〜1,200ダルトンの分子量を有する。この8アーム分枝PEGの構造は以下のような構造である。
【化1】

反応混合物を800rpmで磁気撹拌しながら氷浴中に4時間インキュベートする。超遠心(カットオフMW50K)により副生成物を除去する。酵素濃度を、コーティング材料調製用に140mg/mlに、SDS−PAGE用に1mg/mlに、そして活性測定用に0.1mg/mlに調整する。あるものは、PEG化反応において用いるPEGについて適当な分子量カットオフのフィルターによる未反応PEGの単離をさらに含む。
【0106】
例4:コーティング材料の調製
未改質(所望により蛍光ラベルした)又はPEG改質(所望により蛍光ラベルした)α−アミラーゼ、サーモリシン、リパーゼ、又は酵素の組み合わせを、例3に記載のように溶液(600μL、140mg/ml)中で調製し、IKA RW 11 Lab-egg撹拌器により1分間激しく撹拌しながら、500μLのn−ブチルアセテート及び100μLの界面活性剤(ブチルアセテート中17%v/v)と共に2.1gのDesmodur A870に混合する。得られた白っぽいエマルジョンを0.8gのDesmophen N3600に加え、再び1分間激しく撹拌する。
【0107】
アルミニウムパネルもしくはアルミニウムホイル上に20μmの所定の厚さで、Paul N. Gardner (Pompano Bech, FL)からの8パスウェットフィルムアプリケーターを用いて、テストパネルをコーティング組成物でコートする。得られたコーティングを空気中で10分間フラッシュし、次いで70℃のオーブン中で4時間硬化させる。水安定化生物活性コーティング組成物の製造方法及びこの組成物の基材への適用方法の例を図1に示す。
【0108】
ベース材料中の酵素分散を決定するため、蛍光顕微鏡及び走査電子顕微鏡(SEM)の両者により基材上のコーティングを分析する。SEM測定では、アプリケーターを用いてヘビーデューティーReynolds Wrap(商標)アルミニウムホイル上にコートすることにより断面サンプルを調製する。完全に硬化したコーティングを裂き、得られた破断したポリマーの断面をAu−Pdでスパッターする。非化学的に改質された(PEG化ではない)酵素は5μmを超える大きな平均粒子形成を示す(図2A及びB)。対照的に、ポリオキシエチレンにより改質した酵素は大きく低下した平均粒子サイズを示し、これはベース材料中への酵素の分散を示している(図3A−C、Dは非化学的改質例である)。
【0109】
他の態様において、酵素を、共有結合した分子と同じ濃度でポリオキシエチレンと混合するが、ポリマー部分への酵素の共有結合は含まない。酵素/ポリマー部分溶液をベースと混合し、上記のようにして硬化させる。図4は、PEGと共有結合した場合及びPEGと非共有結合した場合の両方におけるベース材料中の酵素の分散を示す。図4AはPEGのみと混合したベース材料を示している。図4Bは物理的混合を示しているが、PEGと非共有結合した酵素はベース材料中に酵素が分散していることを示している。図4Cはポリマー部分が存在しない、ベース材料中の非化学的改質酵素を示しており、ベース材料中の酵素の分散を欠いていることを示している。図4Dは、ベース材料中に分散した共有結合したPEGを示しており、酵素と結合したポリマー部分が存在せずに酵素のすぐれた分散を示している。
【0110】
例5:コーティングの耐候性
例4に示すようにして形成したコートしたアルミニウムパネルを1.2cm×1.9cmのテストサイズに切り、室温においてDI水に30分撹拌しながら浸すことにより耐候試験を行う。テストパネルを取り出し、DI流水で20秒洗浄し、次いで残っている酵素活性を調べる。浸漬を2〜10回繰返し、残っている酵素活性を調べる。
【0111】
α−アミラーゼ含有コーティングをコートしたテストパネルを、6.7mM塩化ナトリウムを含む20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.9)中のαアミラーゼ基質1%w/vジャガイモでんぷんと反応させてアミド分解活性の検出により調べる。基質溶液(2mL)をコートしたテストパネル(1.2cm×1.9cm)の1つの長方形の一片に加え、25℃で3分間インキュベーションする。同じ量の形成した還元糖をUV-VIS分光計(Cary 300-Varian Inc., Walnut Creek, CA, USA)を用いて540nmで検出する。α−アミラーゼ活性の1ユニットは、室温において3分間にでんぷんから放出される1.0mgの還元糖(マルトースに対して予め検量した標準曲線から計算する)と規定される。
【0112】
サーモリシンにより調製したコーティングを、Folin and Ciocalteau, J.Biol.Chem., 1927; 73: 627-50の方法に従って蛋白質分解表面活性について調べる。すなわち、リン酸ナトリウム(0.05M; pH7.5)緩衝液溶液中の2%(w/v)カゼイン1mLを、200μlの酢酸ナトリウム、5mMの酢酸カルシウム(10mM; pH7.5)とともに基質として用いる。基質溶液を水槽に3分間浸し、37℃にする。B. sterothermophilusTLPベースコーティングをコートした1片のサンプル(1.2×1.9cm)を加え、ついで200rpmで10分間振盪して反応を開始し、1mLの110mMトリクロロ酢酸(TCA)溶液を加えることにより反応を停止させる。この混合物を37℃で30分間インキュベーションし、次いで遠心する。TCA可溶性画分400μL中のチロシンを、25%(v/v)Folin-Ciocalteau試薬及び1mLの0.5M炭酸ナトリウムを用いて660nmで測定する。1ユニットの活性は、37℃において1分あたり1.0μモルのチロシンに等しい吸光度を生ずるカゼインを加水分解する酵素の量と規定される。この結果をユニット/cm2に変換する。
【0113】
α−アミラーゼをベースとするコーティング調剤液の水安定性を示す残留活性を図5に示す。未改質α−アミラーゼを含むコーティングは2回の洗浄後、ベース活性の80パーセント以上失う。4回の洗浄後、残っている活性は検出できない。酵素をPEGと混合し(非共有結合)、混合した溶液をベース(白色バー)に分散させたコーティングにおいて、PEGを用いないで形成したコーティングと比較して、コーティングに残っている活性のレベルは高い。10回洗浄後も活性が検出可能である。α−アミラーゼへの直鎖PEG分子の共有結合は、1週間後にほぼ不活性である未改質酵素をベースとするコーティングと比較して、3回洗浄(ライトグレイバー)後に残っている酵素活性が30%より高い、活性損失に対する高い耐性を有するコーティングを形成する。α−アミラーゼが分枝PEG分子と共有結合した場合に最も高い相対活性レベルが維持される。図5は10回洗浄(ダークグレイバー)後に残っている約40%の酵素活性を示している。このデータは、コーティング組成物中におけるポリマー分子と酵素の存在が、水中の浸漬に対する耐性を与えることを示している。
【0114】
例6
有機汚染の調製、コートされた基材への適用及びコーティング調剤液の自己洗浄活性
この調製にあたって、60gの凍結乾燥したコオロギをブレンダー(Oster、600ワット)により10分間粉砕することによって粉末にする。2gのコオロギ粉末を6mLのDI水と激しく混合することにより汚染溶液を調製する。均一な間隔のテンプレートを用いてコーティング表面上に汚染を適用する。このコオロギの汚染を40℃で5分間乾燥させる。各テストパネルをガラス皿に載せ、RTにおいて300rpmで振盪させながら200mLのDI水で数回洗浄する。汚染除去の時間を記録する。誤差を小さくするため、最初と最後の時間を含めない。8つの汚染スポットの平均洗浄時間を汚染除去時間として平均する。PEG化サーモリシン含有コーティングでコートしたテストパネルは、ベース材料のみでコートしたパネルと比較して、穏やかな洗浄による改良された汚染除去を示す。
【0115】
アミラーゼ含有コーティングを、例4と同様にアルミニウムテストパネルもしくは標準コンパクトディスク上のプラスチック表面上に載せる。マヨネーズのサンプル0.3gをテストパネルの様々な部位に載せ、次いで周囲条件で2分間乾燥させ、直立させて放置する。このマヨネーズはその高い粘度に寄与する脂肪及びでんぷんのような巨大分子を含み、テストパネルを垂直に保持した場合にマヨネーズが重力によって滑り落ちることを防ぐ、コーティング表面に高い摩擦力を与える。改質α−アミラーゼを含むコーティングは乳化剤の加水分解を触媒し、汚染−コーティング界面での相分離の結果として粘度を大きく低下させ、垂直に傾けるとテストパネルから汚染が滑り落ちることとなる。
【0116】
同様に、アルミニウムテストパネルに、PEG化α−アミラーゼ、酵素を含まないPEG、又は酵素もしくはPEGを含まないコーティング(対照)をコートする。テストパネルのあるものは、汚染材料と接触させる前に、例5におけるように1〜5会水に浸す。次いで1滴のマヨネーズをパネル上に置き、パネルを垂直に設置し、マヨネーズの重力による移動を観察する。酵素を含まないコーティングもしくはPEGのみのコーティングをコートしたテストパネルでは、垂直にしてもマヨネーズは移動せず、コーティング生物活性が存在しないことを示している。しかしながら、PEG化酵素を含むコーティングは、マヨネーズがほとんど接着せず、テストパネルから移動することにより示されるように、明確な自己洗浄を示す。このコーティングの自己洗浄は、水浸漬後も維持される。
【0117】
PEG化リパーゼを含む例4のコーティングを用いてガラスもしくは透明表面からの指紋の除去を調べる。ガラス基板上にてPEG化リパーゼ含有調剤液による指紋の自己洗浄をテストする。テストパネルをPEG化リパーゼ含有ベース材料もしくは対照材料(酵素含まず)でコートし、室温において24時間インキュベートする。ある実験においては、例5におけるように、コートした表面を1〜5回水に浸す。このテストパネルにヒトの指紋を付ける又は顔の皮膚と接触させる。次いでコートしたテストパネルを120℃のオーブン中で1〜6時間インキュベートする。残っている指紋をより目視できるように、コーティングを流れるDI水(50mL/sec)で1分間洗浄し、風乾する。加熱する前に、各コーティングを同じレベルの指紋による汚染を行う。加熱後、酵素を含まないコーティングは明らかな残留汚染を示したが、PEG化リパーゼを含むコーティングは残留汚染が大きく低下し、酵素濃度が高いほど汚染低下レベルは低下している。汚染除去レベルは水に浸したテストパネルにおいても維持される。
【0118】
本明細書の記載に加えて、本発明の様々な改良は当業者に明らかである。そのような改良は請求の範囲内にある。
【0119】
特に示さない限り、すべての試薬は当該分野において公知の出処より入手可能であり、又は当業者によって合成可能である。蛋白質の調製及び精製方法は当該分野の範囲内にある。
【0120】
参考文献リスト
Harris, J. M. and Kozlowski, A. (2001), Improvement in protein PEGylation: peglated interferons for treatment of hepatitis C.J.Control Release 72, 217-224
【0121】
Veronese , F. and Harris, J. M. Eds. (2002), Peptide and protein PEGylation. Advanced Drug Delivery Review 54(4), 453-609
【0122】
Veronese, F. M.; Pasut, G. (2005), PEGylation, successful approach to drug delivery, Drug Discovery Today 10(21): 1451-1458
【0123】
Veronese, F. M.; Harris, J. M. (2002), Introduction and overview of peptide and protein pegylation, Advanced Drug Delivery Reviews 54(4): 453-456
【0124】
Domodaran V. B.; Fee C. J. (2010), Protein PEGylation: An overview of chemistry and process considerations, European Pharmaceutical Review 15(1): 18-26
【0125】
Harris, J. M.; Chess, R. B. (2003), Effect of pegylation on pharmaceuticals. Nature Reviews Drug Discovery 2, 214-221
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Rodriguez-Martinez J. A.ら、(2008) Stabilization of a-Chymotrypsin Upon PEGylation. Correlates With Reduced Structural Dynamics. Biotechnology and Bioengineering, 101, 1142-1149
【0127】
Li, J.; Kao, W. J. (2003), Synthesis of Polyethylene Glycol (PEG) Derivatives and PEGylated-Peptide Biopolymer Conjugates, Biomacromolecules 4, 1055-1067
【0128】
米国特許出願公開No. 2010/0279376
【0129】
米国特許出願公開No. 2008/0293117
【0130】
本明細書に示す特許及び文献は本発明が関係する分野におけるレベルを示すものである。これらの特許及び文献は参考として含まれる。
【0131】
前記記載は本発明の特定の態様を説明するものであり、これらに限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース、
前記ベースと結合した酵素、及び
前記ベースと結合した第一のポリオキシエチレン
を含み、前記第一のポリオキシエチレンが前記酵素とは独立であり、前記ベース、前記酵素、及び前記第一のポリオキシエチレンが水安定化活性コーティング組成物を形成する、水安定化活性コーティング組成物。
【請求項2】
前記酵素が1種以上のポリマー部分と結合して化学改質された酵素を形成する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記酵素が加水分解酵素である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記加水分解酵素が細菌中性サーモリシン様プロテアーゼ、アミラーゼ、又はリパーゼである、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマー部分が第二のポリオキシエチレンの少なくとも1つの分子である、請求項2記載の組成物。
【請求項6】
前記第一のポリオキシエチレンが1,000〜15,000ダルトンの分子量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記第一のポリオキシエチレン及び第二のポリオキシエチレンがオキシエチレンの同じポリマーを有する、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
前記第二のポリオキシエチレンが介在するウレタン結合により前記酵素に共有結合している、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
前記第二のポリオキシエチレンが分枝分子である、請求項5記載の組成物。
【請求項10】
前記分枝分子が8アームポリオキシエチレンである、請求項5記載の組成物。
【請求項11】
ベース、及び
前記ベース内に分散した化学改質された酵素
を含む水安定化活性コーティング組成物であって、前記酵素が第一のポリオキシエチレンの1以上の分子により化学的に改質されている、水安定化活性コーティング組成物。
【請求項12】
前記酵素が、1nm〜5μmの平均粒子直径を有するタンパク粒子で前記ベースに分散している、請求項11記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記ベースがポリウレタンである、請求項11記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記第一のポリオキシエチレンが1,000〜15,000ダルトンの分子量を有する、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項15】
前記第一のポリオキシエチレンが分枝分子である、請求項11記載のコーティング組成物。
【請求項16】
前記第一のポリオキシエチレンが8アームポリオキシエチレンである、請求項15記載のコーティング組成物。
【請求項17】
コーティング組成物中において水風化に対する酵素の活性を安定化する方法であって、
酵素を1以上のポリマー部分と結合させて化学改質酵素を形成すること、及び
この化学改質酵素をベース中に分散させて水安定化活性コーティング材料を形成すること
を含む方法。
【請求項18】
前記分散により、1nm〜5μmの平均粒子直径を有するタンパク粒子を与える、請求項17記載の方法。
【請求項19】
基材を前記活性コーティング材料でコートして、前記酵素が前記活性コーティング材料と接触した有機汚染の成分を酵素的に分解できるようにすることをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記酵素が加水分解酵素である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマー部分がポリオキシエチレンの少なくとも1つの分子を含む、請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記ポリオキシエチレンが1,000〜15,000ダルトンの分子量を有する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマー部分が分枝ポリオキシエチレンである、請求項17記載の方法。
【請求項24】
前記ポリマー部分が8アームポリオキシエチレンである、請求項17記載の方法。
【請求項25】
前記酵素がアミラーゼであり、前記コーティングの表面活性が0.01ユニット/cm2以上である、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−60592(P2013−60592A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−190950(P2012−190950)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(512227018)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ,デパートメント オブ バイオプロダクツ アンド バイオシステムズ エンジニアリング (1)
【Fターム(参考)】