説明

有機溶剤の除去方法及び除去装置

【課題】 活性炭素繊維(ACF)を充填した低沸点有機溶剤除去装置であって、排ガス中からの有機溶剤除去効率を高めると共に、ACFの持つ吸着能力を最大限に発揮させて、ランニングコスト及び装置製作費用を縮減させた有機溶剤の除去装置を提供する。
【解決手段】 ACF6が充填される第1吸着槽Aと、前記ACF6と同一又は異なるACF26が充填される第2吸着槽Bであって、第2吸着槽に充填されるACFの質量(M2)が第1吸着槽に充填されるACFの質量(M1)を基準とする質量比(M2/M1)で0.05〜0.25のACF26が充填される第2吸着槽Bと、前記第1吸着槽Aと、第2吸着槽Bとを連結する連結管24と、前記連結管24に介装される凝縮器25と、前記第1吸着槽A及び第2吸着槽Bにそれぞれ設けられるスチーム注入手段15、35とを有する有機溶剤の除去装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場等から排出される高濃度の有機溶剤を含む少流量の被処理ガスから溶剤を効率的且つ低コストで分離除去する有機溶剤の除去方法及び除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器製造工場、金属加工工場等における洗浄装置、フィルムコーター装置等の排ガス等の中に含まれる、塩化メチレン、トリクロロエチレン等の比較的沸点の低い有機溶剤を含有する排ガス等は、そのまま大気中に放出すると環境汚染を引き起こすことから、溶剤の除去処理が行われる。
【0003】
従来、有機溶剤を含むガスから溶剤の分離除去を行う溶剤除去装置がある。この装置は、吸着工程で吸着材に有機溶剤を吸着させ、吸着材の吸着量が飽和に達する前に脱着工程に切替え、水蒸気によって吸着材から有機溶剤を脱着回収し、吸着材を再生し、再度吸着工程に用いる溶剤除去装置が主に使用されている。この有機溶剤に用いる吸着材として、従来の活性炭等の吸着材に比べ溶剤の吸脱着が早く行われる活性炭素繊維(ACF)を用いる溶剤除去装置が使用されている。ACFは、従来の活性炭に比べ乾燥が速く行われる性質があるため、従来必要とされている水蒸気による脱着工程後の乾燥工程が、被処理ガスにより吸着工程と同時にできる。そのため、吸着材としてACFを用いる溶剤除去装置は、実質的に乾燥工程を独立して設ける必要が無く、省略できるという利点がある。
【0004】
しかし、高濃度の有機溶剤を含む少流量の被処理ガスから有機溶剤を除去する場合、処理すべき有機溶剤の量に比例してACFの量が増す。更に、ACFの量に対する被処理ガスの流量が少ないため吸着工程で吸着と同時に行われる乾燥が充分に行われず、ACFとしてのACFが水分を含む状態で使用されることになる。そのため、ACFの吸着効率が低下し、溶剤除去装置から排出される排出ガスに含まれる有機溶剤の含有量が増加してしまうという問題がある。
【0005】
この問題を改善するために、特許文献1に記載されるような、高濃度有機溶剤を含む被処理ガスを外気で希釈することによって被処理ガスの流量を増大させ、吸着工程での吸着材の乾燥を促進する方法が一般的に行われている。しかし、吸着材に対する有機溶剤の飽和吸着量は、被処理ガスに含まれる有機溶剤の濃度に比例する。そのため、高濃度の有機溶剤を含む被処理ガスを外気により希釈する方法には、処理効率が低下する問題がある。
【0006】
また、特許文献2には、脱着工程と吸着工程の間に乾燥工程を設置する方法が開示されている。しかし、この方法は、同量の吸着材を充填させた吸着缶を並列に3つ使用して各工程を行うことになり、使用する吸着材の量が増加し、設備コストが増加してしまうという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3183381号公報 (段落[0005])
【特許文献2】特開昭61−35822号公報 (第1頁右下欄第4行〜第2頁左上欄第9行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、吸着材としてACFを充填する有機溶剤吸着槽を備える低沸点有機溶剤除去装置において、高濃度の有機溶剤を含有する排ガス中の有機溶剤の除去効率を高めると共に、ACFの持つ吸着能力を最大化させて、ランニングコスト及び装置製作費用を縮減させる有機溶剤の除去方法及び除去装置を提供することを目的としている。即ち、処理済ガス中の有機溶剤濃度が従来技術と同等の場合は、吸着槽に充填されるACFの全体量を縮減できること、吸着槽に充填されるACFの全体量が従来技術と同等の場合は、処理済ガス中の有機溶剤濃度を低減できることを、本発明は目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため検討を重ねた。その結果、被処理ガスに含まれる有機溶剤を活性炭素繊維に吸着させ、有機溶剤を分離除去する有機溶剤除去装置を、第1吸着槽と第2吸着槽とで構成し、これら2槽を直列に配置すると共に、第1吸着槽と第2吸着槽とに充填される活性炭素繊維の質量比を所定の範囲にし、更に、前記第1吸着槽と第2吸着槽とを連結する連結管に凝縮器を介装することにより、吸着量が増加し且つ第2吸着槽出口の有機溶剤排出濃度を低下することのできる有機溶剤の除去装置を実現できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
上記課題を解決する本発明は以下に記載するものである。
【0011】
〔1〕 活性炭素繊維が充填される第1吸着槽と、
前記活性炭素繊維と同一又は異なる活性炭素繊維が充填される第2吸着槽であって、第2吸着槽に充填される活性炭素繊維の質量(M2)が第1吸着槽に充填される活性炭素繊維の質量(M1)を基準とする質量比(M2/M1)で0.05〜0.25の活性炭素繊維が充填される第2吸着槽と、
前記第1吸着槽と、第2吸着槽とを連結する連結管と、
前記連結管に介装される凝縮器と、
前記第1吸着槽及び第2吸着槽にそれぞれ設けられるスチーム注入手段と、
を有する有機溶剤の除去装置。
【0012】
〔2〕 〔1〕に記載の有機溶剤の除去装置を用いる被処理ガス中の有機溶剤の除去方法であって、
有機溶剤を3000ppm以上含む被処理ガスを第1吸着槽に供給してその内部に充填される活性炭素繊維に有機溶剤を吸着させると共に、活性炭素繊維に含まれる凝縮水の乾燥を行うことにより、500ppm以下の有機溶剤と水分を含む第1吸着槽処理ガスを得、次いでこの第1吸着槽処理ガスを凝縮器に供給して第1吸着槽処理ガス中の水分を凝縮分離して系外に排出すると共に、前記水分を分離した第1吸着槽処理ガスを第2吸着槽に供給して第2吸着槽の内部に充填される活性炭素繊維に第1吸着槽処理ガスが含む有機溶剤を吸着させると共に、この活性炭素繊維が含む水分を乾燥させることにより、有機溶剤濃度が100ppm以下の第2吸着槽処理ガスを系外に排出させる吸着工程と、
第1吸着槽に供給する被処理ガスの供給を停止した後、スチーム注入手段により第1吸着槽及び第2吸着槽内にスチームを供給して、第1吸着槽及び第2吸着槽内に充填されている各活性炭素繊維の吸着有機溶剤を脱着させることにより、前記有機溶剤を吸着している各活性炭素繊維を前記供給したスチームが凝縮して生ずる凝縮水を含む活性炭素繊維に再生させると共に、前記脱着させた有機溶剤を系外に取出す脱着工程と、
を交互に繰返す被処理ガス中の有機溶剤の除去方法。
【0013】
〔3〕 第1吸着槽に充填された活性炭素繊維が、比表面積1200m2/g以上2000m2/g以下、平均細孔直径1〜4nm、全細孔容積0.2〜0.8cm3/gの活性炭素繊維である〔2〕に記載の有機溶剤の除去方法。
【0014】
〔4〕 第2吸着槽に充填された活性炭素繊維が、比表面積600m2/g以上1400m2/g未満、平均細孔直径0.5〜3nm、全細孔容積0.1〜0.6cm3/gの活性炭素繊維である〔2〕に記載の有機溶剤の除去方法。
【0015】
〔5〕 第1吸着槽に供給する被処理ガスが、沸点が30〜70℃の有機溶剤を5000〜100000ppm含む被処理ガスである〔2〕に記載の有機溶剤の除去方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る有機溶剤の除去装置は、被処理ガスに含まれる有機溶剤を分離除去する有機溶剤吸着槽を、第1吸着槽と第2吸着槽の2槽を直列に配置すると共に、第1吸着槽と第2吸着槽に充填される活性炭素繊維の質量比を所定の範囲にし、更には、前記第1吸着槽と第2吸着槽とを連結する連結管に介装される凝縮器を備えて、第1吸着槽が排出する水蒸気を外部に排出するように構成しているので、比較的少量の被処理ガスで第2吸着槽を充分乾燥でき、その結果、第2吸着槽処理ガス中の有機溶剤排出濃度を100ppm以下の低濃度に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】被処理ガスに含まれる有機溶剤濃度と、活性炭素繊維への有機溶剤の飽和吸着量との関係の等温吸着曲線を示すグラフである。
【図2】本発明の有機溶剤の除去装置の一例を示すシステムフロー図である。
【図3】本発明の有機溶剤の除去装置の他の例を示すシステムフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
上述のように、有機溶剤の除去装置を、
被処理ガスに含まれる有機溶剤を吸着材である活性炭素繊維(ACF)に吸着させ、有機溶剤を分離除去する2つの有機溶剤吸着槽を直列に第1吸着槽及び第2吸着槽として配置する装置であって、
前記第1吸着槽に充填されるACFの質量(M1)と、前記ACFと同一又は異なるACFの第2吸着槽に充填される質量(M2)との質量比(M2/M1)を0.05〜0.25、好ましくは0.1〜0.25とし、更に、
前記第1吸着槽と、第2吸着槽とを連結する連結管と、
前記連結管に介装される凝縮器と、
前記第1吸着槽及び第2吸着槽にそれぞれ設けられるスチーム注入手段と、
を有する装置
とすることにより、以下のように、ACFの吸着能力を最大限発揮させる事が出来る。
【0020】
図1は、被処理ガスに含まれる有機溶剤濃度と、ACFへの有機溶剤の飽和吸着量との関係の等温吸着曲線を示すグラフである。
【0021】
図1に示すように、ACFへの有機溶剤の飽和吸着量は被処理ガスに含まれる有機溶剤濃度に比例する。そのため、高濃度の有機溶剤を含有する被処理ガスに対する場合に、高い飽和吸着率を得ることができ、高い処理効率が期待できる。例えば、吸着材として比表面積1500m2/gのフェノール系ACFを使用する場合、被処理ガス中の有機溶剤(塩化メチレン)濃度が5000ppm以上、好ましくは10000〜100000ppm含まれる有機溶剤含有被処理ガスに対しては、ACFの飽和吸着量は35%以上が見込める。
【0022】
以下、ACFを充填する吸着槽にスチームを供給して、ACFに吸着されている有機溶剤を脱着除去する脱着工程と、前記スチームを供給して有機溶剤を脱着除去したACFに被処理ガスを供給することにより、スチームが凝縮して湿潤状態のACFを乾燥させながら、被処理ガス中の有機溶剤を、一部湿潤状態にあるACFに吸着させる吸着工程と、を有する有機溶剤の除去方法について考える。
【0023】
このような一部湿潤状態にあるACFを用いる有機溶剤の除去方法にあっては、吸着工程は、ACFの乾燥と、有機溶剤の吸着が同時に起きているので、吸着現象は複雑で、通常の乾燥したACFの吸着現象とは異なる。
【0024】
上記のような除去方法においては、有機溶剤を含む被処理ガスから有機溶剤をACFで吸着除去する場合、被処理ガス中の有機溶剤の濃度が高くなる程、吸着すべき有機溶剤の量に比してACFの使用量が増加する。この場合、ACFの使用量に対する被処理ガスの流量は相対的に少なくなる。その結果、吸着工程において湿潤状態のACFを乾燥させるのに必要な流量が与えられず、ACFが水分過多になる。その結果、特に吸着工程の初期における有機溶剤の吸着効率が低下してしまう。
【0025】
即ち、上記除去方法においては、ACFに対する有機溶剤の飽和吸着量とACFの含水量との間には、ある平衡関係が存在している。従って、ACFの含水量に対して吸着槽の出口から排出される処理ガス中の有機溶剤濃度は、平衡な値に保たれる。
【0026】
従来の有機溶剤処理方式では、ACFを乾燥させるのに必要な被処理ガスの流量を得ると共に、有機溶剤吸着槽の出口における有機溶剤(塩化メチレン)濃度を低く保つ為、希釈ガスを導入し、有機溶剤吸着槽に導入する被処理ガスに含まれる有機溶剤濃度を5000ppm未満、実際には1000ppm以下にしなくてはならない。この場合、飽和吸着量は図1を参照すれば18%程度しか見込めない。即ち、従来法では、有機溶剤が低濃度のガスを処理しているため、ACFの吸着能力をわざわざ半分程度に落としていることになる。
【0027】
一方、本発明の有機溶剤の除去方法では、第1吸着槽から排出される低濃度の有機溶剤を含有する第1吸着槽処理ガスが、第2吸着槽で更に処理される。そのため、第1吸着槽に高濃度の有機溶剤を含む被処理ガスを導入できる。第1吸着槽の入口における被処理ガス中の有機溶剤濃度は5000ppm以上であることが好ましく、更に好ましくは10000〜100000ppmである。被処理ガス中の有機溶剤の濃度を5000ppm以上とすることで、図1のグラフに従ってACFへの有機溶剤の飽和吸着量が30%以上になり、高い吸着効率で処理を行うことができる。
【0028】
この操作だけを考えれば、ACFを充填した第1吸着槽は、従来の有機溶剤処理方式と比較して2倍のACFの吸着能力を引き出す事が出来ることになる。
【0029】
このことを逆に言うと、ACFの充填量が半分に減ると言う事であり、設備費は当然ながら、ACFを再生するユーティリティーも半減すると言う事である。
【0030】
具体的には、第1吸着槽中のACF充填量と、第2吸着槽中のACF充填量との合計量は、1槽のみの従来の有機溶剤吸着槽中のACF充填量に対して52.5〜62.5質量%、少なくとも60〜62.5質量%に低減する。
【0031】
このACF充填量の低減に比例して、ACF再生用に関わるエネルギーも低減する。
【0032】
なお、第1吸着槽から排出される有機溶剤を含有する第1吸着槽処理ガス中の有機溶剤濃度は10〜1000ppmにすることが好ましく、100〜200ppmにすることがより好ましい。
【0033】
本発明の有機溶剤の除去方法で用いる被処理ガス中に含まれる有機溶剤としては、沸点が30〜70℃の塩化メチレン、クロロホルム、1,1-ジクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系有機溶剤、メチラール、メチル-t-ブチルエーテル等のエーテル又はアセタール系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤などが適している。
【0034】
本発明の有機溶剤の除去装置によれば、第1吸着槽と、第2吸着槽とを連結する連結管には凝縮器が介装され、これにより第1吸着槽処理ガスの中の水分量が低減されているので、第2吸着槽の脱着処理後のACFを乾燥させるのに、有利なものになっている。凝縮器における入口と出口の温度降下は、15〜35℃が好ましく、20〜35℃が更に好ましい。凝縮器により、第1吸着槽処理ガスの中の水分量の35〜65%が除去される。
【0035】
また、第1吸着槽に充填されるACFと、第2吸着槽に充填されるACFとの質量比を上述の範囲にすることで、第2吸着槽に導入される第1吸着槽処理ガスの流量は、脱着処理後の第2吸着槽のACFを乾燥させるのに充分な流量となる。
【0036】
よって、第2吸着槽においては、脱着処理後、従来の方法のように乾燥工程を独立して設けなくとも、吸着工程において第1吸着槽処理ガスにより、第2吸着槽のACFが速やかに乾燥され、効率よく溶剤除去を行うことができる。
【0037】
第1吸着槽のACFの質量(M1)と第2吸着槽のACFの質量(M2)との質量比(M2/M1)が0.05未満の場合は、第2吸着槽での有機溶剤の吸着処理が不充分であり、第2吸着槽処理ガス中に含まれる有機溶剤の量が多くなるので好ましくない。第1吸着槽のACFの質量(M1)と第2吸着槽のACFの質量(M2)との質量比(M2/M1)が0.25を超える場合は、第2吸着槽のACFの乾燥に必要な第1吸着槽処理ガス流量が与えられず乾燥不足となる。その結果、第2吸着槽のACFが水分過多になるため吸着効率が低下し、第2吸着槽から排出される処理ガス(処理済ガス)に含まれる有機溶剤の含有量が増加してしまうため、好ましくない。
【0038】
以上のように、本発明の有機溶剤の除去方法及び装置は、吸着材であるACFの利用効率を高め、ACFの使用量を軽減し、惹いては装置を小型化するという目的を実現するものである。
【0039】
次いで、本発明の形態を説明する。
【0040】
図2は本発明の有機溶剤の除去装置の一例を示すシステムフロー図である。本発明の有機溶剤の除去装置は、大きく別けて、(A) 有機溶剤のACFへの吸着及びACFからの脱着がバッチ処理で行うことができ、有機溶剤を分離除去できる第1吸着槽と、(B) 前記第1吸着槽で処理済のガス(第1吸着槽処理ガス)中に含まれる有機溶剤のACFへの吸着及びACFからの脱着をバッチ処理で行うための第2吸着槽とから構成される吸着除去手段系列を有する。
【0041】
図2に示すように、本例の有機溶剤の除去装置においては、有機化合物の吸着除去操作が可能な吸着除去手段系列を二系列設ける。一方の吸着除去手段系列(第1吸着槽A、第2吸着槽B)で有機化合物を吸着させる操作を行う。その間、他方の吸着除去手段系列(第1吸着槽A’、第2吸着槽B’)で吸着された有機化合物を脱着させて除去する操作を行う。一方の系列の吸着除去能力が予め設定された限度以下になると、吸着された有機化合物を一方の吸着除去手段系列で脱着させて除去する操作を行い、その間、他方の吸着除去手段系列で有機化合物を吸着させる操作を行うことを、交互に行う。
【0042】
一方の吸着除去手段系列(第1吸着槽A、第2吸着槽B)と、他方の吸着除去手段系列(第1吸着槽A’、第2吸着槽B’)とは、その機能は実質的に同一であるので、それぞれが有する機械要素も実質的に同一である。したがって、以下の説明においては、同一の機能を果たす機械要素に関しては、ダッシュ記号(’)を付すことで、両者を互いに区別するものとする。
【0043】
図2に示されるように、工場、作業場からの排出ガス等の有機溶剤を5000ppm以上、好ましくは10000〜100000ppm含有する被処理ガスは、ブロワ2により第1吸着槽導入ライン4を搬送されて、第1吸着槽AにおけるACF6を充填した第1吸着槽主体8へ導入される。
【0044】
ACF6としては、吸着能力が、ACF1gに対する有機溶剤の吸着量で0.05〜0.5gであり、比表面積が、1200〜2000m2/gであるACFが好ましく、比表面積は、1400〜2000m2/gがより好ましく、1450〜1600m2/gが特に好ましい。
【0045】
図1によれば、被処理ガスの有機溶剤濃度が1000ppm以上では、比表面積が大きいほど吸着率が高くなる。そのため、被処理ガスの有機溶剤濃度が1000ppm以上では、比表面積が1200m2/g以上の場合、溶剤の吸着率が高くなるので更に好ましい。比表面積がこの1200m2/g以上の値であれば、従来の溶剤除去装置では除去できなかった、高分子量の有機化合物も捕集することができるので好ましい。但し、比表面積が2000m2/gを超えると、平均細孔径が大きくなりすぎ、溶剤分子と細孔の相互作用が弱く、溶剤が漏れやすくなる傾向がある。
【0046】
なお、第1吸着槽AにおけるACF6の吸着量は、平均細孔直径及び全細孔容積との相関が高い。そのため、ACF6は、その平均細孔直径が1〜4nmの範囲にあることが好ましく、3〜4nmのものが更に好ましい。また、ACF6は、その全細孔容積が0.3〜0.6cm3/gのものが好ましく、0.5〜0.6cm3/gのものがより好ましい。
【0047】
本発明で使用するACFは、ACF6及び後述のACF26の何れについても、吸着したい有機化合物に適した平均細孔直径、全細孔容積、比表面積を持つものを、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、セルロース系及びフェノール系などの種類を問わず使用できる。これら本発明で使用するACFでは、特にフェノール系ACFでは、比表面積が大きいほど平均細孔直径が大きくなるため、分子径の大きな高分子も吸着、脱着が可能となり、細孔を閉塞することが無く、ACFの吸着性能低下を抑えることができる。
【0048】
第1吸着槽主体8は、2槽以上の複数槽(本例では2槽)配置されており、例えば2槽の場合は、吸入バルブ10、10’及び排出バルブ12、12’の交互の切替え、及び蒸気バルブ14、14’の交互の切替えにより、絶えず、何れかの第1吸着槽主体8、8’において、吸着又は脱着が行われるように構成されている。
【0049】
以下、主として、一方の第1吸着槽Aについて説明する。
【0050】
吸着工程は、スチーム加熱による脱着工程の後に、特別な冷却・乾燥用ガスを用いた冷却・乾燥処理を施さずに行ってもよい。特に、ACF6は、ミクロポアが外部表面に存在するため、有機溶剤含有ガスを被処理ガスとして導入するだけで、冷却・乾燥が進行し、その吸着活性が徐々に高まる。
【0051】
後述する吸着工程において第1吸着槽主体8に吸着された有機溶剤は、脱着工程において、第1吸着槽側スチーム導入ライン16、蒸気バルブ14、スチーム注入手段15を通じて第1吸着槽主体8へスチームを導入することにより脱着され、それによってACF6が再生され且つ有機溶剤含有第1吸着槽脱着ガスが生成される。なお、再生されたACF6は、前記注入されたスチームが凝縮した水分を含む湿潤状態で再生されている。
【0052】
有機溶剤含有第1吸着槽脱着ガスは、第1吸着槽側脱着ガスバルブ18、第1吸着槽側回収ライン20を通じて後述の有機溶剤含有第2吸着槽脱着ガスと共に凝縮器22へ導入され、ここで冷却水による凝縮処理が行われて、凝縮分として回収有機溶剤が得られる。他方、未凝縮分は、被処理ガスに混入される(図2のX)。
【0053】
吸着工程においては、被処理ガスは第1吸着槽Aに送られ、ここで有機溶剤の吸着が行われると同時進行して第1吸着槽処理ガスが排出される。この第1吸着槽処理ガスは、第1吸着槽処理ガス輸送ライン(第1吸着槽と第2吸着槽とを連結する連結管)24を通じて、凝縮器25に送られる。
【0054】
第1吸着槽処理ガスは、前記脱着工程で注入したスチームが凝縮して湿潤状態にあるACF6を乾燥させて第1吸着槽Aから排出されるガスである。従って、第1吸着槽処理ガスは水分を飽和状態近くまで含む。この水分を含む第1吸着槽処理ガスは、凝縮器25でスチームに由来する蒸気を凝縮分離された後、第2吸着槽Bに導入される。
【0055】
凝縮器25で凝縮分離される水分量は、第1吸着槽処理ガスに含まれる全水分量の少なくとも30%以上が好ましい。第2吸着槽Bにおいては、第1吸着槽処理ガス中に含まれる有機溶剤が吸着除去された第2吸着槽処理ガスが外部に排出される。
【0056】
第1吸着槽主体8と同様に、第2吸着槽主体28も、2槽以上の複数槽(本例では2槽)配置されており、例えば2槽の場合は、吸入バルブ30、30’及び排出バルブ32、32’の交互の切替え、及び蒸気バルブ34、34’の交互の切替えにより、何れかの第2吸着槽主体28、28’において、吸着又は脱着が行われるように構成されている。
【0057】
以下、主として、一方の第2吸着槽Bについて説明する。
【0058】
ACF26としては、吸着能力が、ACF1gに対する有機溶剤の吸着量で0.05〜0.5gであり、比表面積が、600m2/g以上1400m2/g未満であるACFが好ましく、比表面積は、700m2/g以上1400m2/g未満がより好ましく、1100〜1350m2/gが更に好ましく、1200〜1350m2/gが特に好ましい。
【0059】
なお、第1吸着槽AにおけるACF6の吸着量は、平均細孔直径及び全細孔容積との相関が高い。そのため、ACF6は、その平均細孔直径が1〜4nmの範囲にあることが好ましく、3〜4nmのものが更に好ましい。また、ACF6は、その全細孔容積が0.3〜0.6cm3/gのものが好ましく、0.5〜0.6cm3/gのものがより好ましい。
【0060】
また、ACF26は、その平均細孔直径が0.5〜3nm、全細孔容積が0.1〜0.6cm3/gのものが好ましく、平均細孔直径が1〜2.5nm、全細孔容積が0.2〜0.4cm3/gのものが更に好ましい。
【0061】
以上のようなACF6とACF26との組合せにすることにより、前述したように、ACFの吸着能力を最大限発揮させる事が出来る。
【0062】
第2吸着槽主体28に吸着された有機溶剤は、第2吸着槽側スチーム導入ライン36、蒸気バルブ34、スチーム注入手段35を通じて第2吸着槽主体28へスチームを導入することにより脱着され、それによってACFが再生され且つ有機溶剤含有第2吸着槽脱着ガスが生成される。この有機溶剤含有第吸着槽槽脱着ガスは、第2吸着槽側脱着ガスバルブ38、第2吸着槽側回収ライン40を通じて前述の有機溶剤含有第1吸着槽脱着ガスと共に凝縮器22へ導入され、ここで冷却水による凝縮処理が行われて、凝縮分として回収有機溶剤が得られる。他方、未凝縮分は、被処理ガスに混入される(図2のX)。
【0063】
吸着工程において、有機溶剤が吸着除去されて排出される第2吸着槽処理ガスは、有機溶剤濃度が100ppm以下、好ましくは60ppm以下、更に好ましくは30ppm以下に制御された清浄化ガスとして系外に排出される。
【0064】
なお、第2吸着槽処理ガスは、必要に応じ、第2吸着槽処理ガス輸送ライン42を通じて、有機溶剤を吸着処理することのできるバックアップ処理槽(不図示)に導入しても良い。
【0065】
バックアップ処理槽としては、耐熱紙等に吸着材を担持したシートをハニカム状に加工してなる多数の通路を有する、回転できるドラム型有機溶剤処理機構となっているバックアップ処理槽主体を備えたものが挙げられる。バックアップ処理槽に担持される吸着材としては、ACF、ゼオライトなどが挙げられる。
【0066】
また、図2の例では、凝縮器25、25’の2つの凝縮器を設けているが、図3の例のように、1つの凝縮器25を設けて、吸着工程と脱着工程の切換時に、この凝縮器25を切換えて使用するようにしても良い。図3の例は、設備コストが低減でき、更に好ましい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
なお、ACFの比表面積、平均細孔直径及び全細孔容積は、全自動ガス吸着量測定装置(Quantachrome Instruments社製AUTOSORB−1)を用いて、以下の条件で測定した。
吸着ガス:窒素
吸着温度:液体窒素温度(−196℃)
測定範囲:P/P0=0.00〜0.99
比表面積は、得られた吸着等温線からBET法を用いて算出した。全細孔容積は、相対圧1.0近傍の吸着量の液体換算により算出した。平均細孔直径は、全細孔容積と比表面積から、下式(1)に従って算出した。
平均細孔直径=4×全細孔容積÷比表面積・・・(1)
[実施例1]
図3、表1及び下記の条件に示すように、ACF6を充填した第1吸着槽A、ACF26を充填した第2吸着槽Bを用い、有機溶剤として20000ppmの塩化メチレン(沸点40℃)を含有する被処理ガスを3Nm3/minで8分吸着処理した。この吸着処理後のACF6及び26は、ACF再生用蒸気量13kg/hで6分脱着処理した。なお、2系列の吸着除去手段を用いて、吸着・脱着処理を交互に行うことで、被処理ガスを連続的に処理した。
【0069】
第1吸着槽Aにおいて用いたACF6は、充填質量(M1)が5kg、比表面積が1500m2/g、平均細孔直径が1.5nm、全細孔容積が0.55cm3/gであった。第2吸着槽Bにおいて用いたACF26は、充填質量(M2)が0.5kg、比表面積が1300m2/g、平均細孔直径が0.5nm、全細孔容積が0.3cm3/gであった。第1吸着槽Aと第2吸着槽BとのACF充填質量比(M2/M1)は0.1であった。なお、ACF6及び26の何れもフェノール系ACF(東邦化工建設社製)を用いた。
【0070】
第1吸着槽Aと、第2吸着槽Bとを連結する連結管24に介装された凝縮器25における入口と出口の温度降下は、20℃に設定した。
【0071】
この吸脱着試験における、吸着処理開始後1hrの第1吸着槽処理ガス中の塩化メチレン濃度(処理済ガス濃度)と、吸着処理1hrに亘っての有機溶剤排出量の総量(有機溶剤排出量)と、ACF再生用蒸気量の測定結果を表1に示す。その結果、第2吸着槽処理ガス(処理済ガス)中の有機溶剤の濃度は10ppmと低く、塩化メチレン排出量も7g/hと低いものであった。
【0072】
また、ACF再生用蒸気量は25kg/hと少なく、脱着処理は効率の良いものであった。
【0073】
[実施例2]
表1及び下記の条件に示すように、ACF6及びACF26の何れも、比表面積を1500m2/gにし、平均細孔直径を1.5nm、全細孔容積を0.55cm3/gにした以外は、実施例1と同様に操作した。
【0074】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中の塩化メチレン濃度は50ppmと低く、塩化メチレン排出量も35g/hと低いものであった。
【0075】
また、ACF再生用蒸気量は25kg/hと少なく、脱着処理は効率の良いものであった。
【0076】
[実施例3]
表1及び下記の条件に示すように、ACF6及び26の何れもピッチ系ACF(東邦化工建設社製)を用いた以外は、実施例1と同様に操作した。
【0077】
第1吸着槽Aにおいて用いたACF6は、充填質量(M1)が5kg、比表面積が1500m2/g、平均細孔直径が1.3nm、全細孔容積が0.5cm3/gのピッチ系ACFであった。第2吸着槽Bにおいて用いたACF26は、充填質量(M2)が0.5kg、比表面積が1500m2/g、平均細孔直径が1.3nm、全細孔容積が0.5cm3/gのピッチ系ACFであった。第1吸着槽Aと第2吸着槽BとのACF充填質量比(M2/M1)は0.1であった。
【0078】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中の塩化メチレン濃度は50ppmと低く、塩化メチレン排出量も35g/hと低いものであった。
【0079】
また、ACF再生用蒸気量は27kg/hと少なく、脱着処理は効率の良いものであった。
【0080】
[実施例4]
表1及び下記の条件に示すように、ACF6及び26の何れもPAN系ACF(東邦化工建設社製)を用いた以外は、実施例1と同様に操作した。
【0081】
第1吸着槽Aにおいて用いたACF6は、充填質量(M1)が5kg、比表面積が1500m2/g、平均細孔直径が1.3nm、全細孔容積が0.5cm3/gのPAN系ACFであった。第2吸着槽Bにおいて用いたACF26は、充填質量(M2)が0.5kg、比表面積が1500m2/g、平均細孔直径が1.3nm、全細孔容積が0.5cm3/gのPAN系ACFであった。第1吸着槽Aと第2吸着槽BとのACF充填質量比(M2/M1)は0.1であった。
【0082】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中の塩化メチレン濃度は80ppmと低く、塩化メチレン排出量も56g/hと低いものであった。
【0083】
また、ACF再生用蒸気量は29kg/hと少なく、脱着処理は効率の良いものであった。
【0084】
[実施例5]
表1及び下記の条件に示すように、ACF6にフェノール系ACF(東邦化工建設社製)を用い、ACF26にPAN系ACF(東邦化工建設社製)を用いた以外は、実施例1と同様に操作した。
【0085】
第1吸着槽Aにおいて用いたACF6は、充填質量(M1)が5kg、比表面積が1500m2/g、平均細孔直径が1.5nm、全細孔容積が0.55cm3/gのフェノール系ACFであった。第2吸着槽Bにおいて用いたACF26は、充填質量(M2)が0.5kg、比表面積が1500m2/g、平均細孔直径が1.3nm、全細孔容積が0.5cm3/gのPAN系ACFであった。第1槽Aと第2吸着槽BとのACF充填質量比(M2/M1)は0.1であった。
【0086】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中の塩化メチレン濃度は80ppmと低く、塩化メチレン排出量も56g/hと低いものであった。
【0087】
また、ACF再生用蒸気量は27kg/hと少なく、脱着処理は効率の良いものであった。
【0088】
【表1】

【0089】
[比較例1]
表2及び下記の条件に示すように、ACFを充填した吸着槽1槽のみで、吸脱着処理した以外は、実施例1と同様に操作した。
【0090】
有機溶剤吸着槽において用いたACFは、充填質量が5.5kg、比表面積が1500m2/g、平均細孔直径が1.5nm、全細孔容積が0.55cm3/gであった。
【0091】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中の塩化メチレン濃度は200ppmと高くなり、塩化メチレン排出量も140g/hと高いものとなった。
【0092】
また、ACF再生用蒸気量は33kg/hと多く、脱着処理は効率の悪いものであった。
【0093】
[実施例6]
表2及び下記の条件に示すように、被処理ガス中の塩化メチレン濃度を50000ppmとした以外は、実施例1と同様に操作した。
【0094】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中の塩化メチレン濃度は20ppmと低く、塩化メチレン排出量も7g/hと低いものであった。
【0095】
また、ACF再生用蒸気量は25kg/hと少なく、脱着処理は効率の良いものであった。
【0096】
[比較例2]
表2及び下記の条件に示すように、ACFを充填した吸着槽1槽のみで、吸脱着処理した以外は、実施例6と同様に操作した。
【0097】
有機溶剤吸着槽において用いたACFは、充填質量が8kg、比表面積が1500m2/g、平均細孔直径が1.5nm、全細孔容積が0.55cm3/gであった。
【0098】
この吸脱着試験の結果、実施例6に比べ多量のACFを使用しているにも拘らず、処理済ガス中の塩化メチレン濃度は500ppmと高くなり、塩化メチレン排出量も175g/hと高いものとなった。
【0099】
また、ACF再生用蒸気量は33kg/hと多く、脱着処理は効率の悪いものであった。
【0100】
[実施例7]
表2及び下記の条件に示すように、有機溶剤として20000ppmのクロロホルム(沸点61℃)を含有する被処理ガスを用いた以外は、実施例1と同様に操作した。
【0101】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中のクロロホルム濃度は50ppmと低く、クロロホルム排出量も28g/hと低いものであった。
【0102】
また、ACF再生用蒸気量は25kg/hと少なく、脱着処理は効率の良いものであった。
【0103】
[比較例3]
表2及び下記の条件に示すように、ACFを充填した吸着槽1槽のみで、吸脱着処理した以外は、実施例7と同様に操作した。
【0104】
有機溶剤吸着槽において用いたACFは、充填質量が8kg、比表面積が1500m2/g、平均細孔直径が1.5nm、全細孔容積が0.55cm3/gであった。
【0105】
この吸脱着試験の結果、実施例7と比較して多量のACFを使用しているにも拘らず、処理済ガス中のクロロホルム濃度は300ppmと高くなり、クロロホルム排出量も170g/hと高いものとなった。
【0106】
また、ACF再生用蒸気量は33kg/hと多く、脱着処理は効率の悪いものであった。
【0107】
【表2】

【0108】
[実施例8]
表3及び下記の条件に示すように、被処理ガス流量を220Nm3/hとし、被処理ガスの流量増加に伴い、ACF充填量を第1吸着槽A(M1)で6kg、第2吸着槽B(M2)で0.6kg[第1槽Aと、第2槽BとのACF充填質量比(M2/M1)…0.1]、全体(M1+M2)で6.6kgとした以外は、実施例1と同様に操作した。
【0109】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中の塩化メチレン濃度は10ppmと低く、塩化メチレン排出量も10g/hと低いものであった。
【0110】
また、ACF再生用蒸気量は29kg/hと、使用したACF量の増加に伴い実施例1と比較すると増加してはいるものの、脱着処理効率は十分に良いものであった。
【0111】
[比較例4]
表3及び下記の条件に示すように、ACFを充填した吸着槽1槽のみで、吸脱着処理した以外は、実施例8と同様に操作した。
【0112】
有機溶剤吸着槽において用いたACFは、充填質量が12kg、比表面積が1500m2/g、平均細孔直径が1.5nm、全細孔容積が0.55cm3/gであった。
【0113】
この吸脱着試験の結果、12kgと大量のACFを使用してさえ、処理済ガス中の塩化メチレン濃度は300ppmと高くなり、塩化メチレン排出量も300g/hと高いものとなった。
【0114】
また、ACF再生用蒸気量は52kg/hと多く、脱着処理は効率の悪いものであった。
【0115】
【表3】

【0116】
[実施例9]
表4及び下記の条件に示すように、ACF充填量を第1吸着槽A(M1)で5kg、第2吸着槽B(M2)で0.3kg[第1吸着槽Aと、第2吸着槽BとのACF充填質量比(M2/M1)…0.06]、全体(M1+M2)で5.3kgとした以外は、実施例1と同様に操作した。
【0117】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中の塩化メチレン濃度は10ppmと低く、塩化メチレン排出量も7g/hと低いものであった。
【0118】
また、ACF再生用蒸気量は23kg/hであり、脱着処理は効率の良いものであった。
【0119】
[比較例5]
表4及び下記の条件に示すように、ACF充填量を第1吸着槽A(M1)で5kg、第2吸着槽B(M2)で0.2kg[第1吸着槽Aと、第2吸着槽BとのACF充填質量比(M2/M1)…0.04]、全体(M1+M2)で5.2kgとした以外は、実施例1と同様に操作した。
【0120】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中の塩化メチレン濃度は150ppmと高くなり、塩化メチレン排出量も105g/hと高いものであった。
【0121】
[実施例10]
表4及び下記の条件に示すように、ACF充填量を第1吸着槽A(M1)で5kg、第2吸着槽B(M2)で1kg[第1吸着槽Aと、第2吸着槽BとのACF充填質量比(M2/M1)…0.2]、全体(M1+M2)で6kgとした以外は、実施例1と同様に操作した。
【0122】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中の塩化メチレン濃度は20ppmと低く、塩化メチレン排出量も14g/hと低いものであった。
【0123】
また、ACF再生用蒸気量は24kg/hと少なく、脱着処理は効率の良いものであった。
【0124】
[比較例6]
表4及び下記の条件に示すように、ACF充填量を第1吸着槽A(M1)で4.5kg、第2吸着槽B(M2)で1.5kg(第1吸着槽Aと、第2吸着槽BとのACF充填質量比(M2/M1)…0.333]、全体(M1+M2)で6kgとした以外は、実施例1と同様に操作した。
【0125】
この吸脱着試験の結果、ACF再生用蒸気量は23kg/hと少なく、脱着処理は効率の良いものではあったが、第2吸着槽Bの乾燥が不充分になり、その結果、処理済ガス中の塩化メチレン濃度は150ppmと高くなり、塩化メチレン排出量も105g/hと高いものとなった。
【0126】
【表4】

【0127】
[実施例11]
表2及び下記の条件に示すように、有機溶剤として20000ppmのメチラール(沸点42.5℃)]を含有する被処理ガスを用いた以外は、実施例1と同様に操作した。
【0128】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中のメチラール濃度は80ppmと低く、メチラール排出量も49g/hと低いものであった。
【0129】
また、ACF再生用蒸気量は29kg/hであり、脱着処理は効率の良いものであった。
【0130】
[実施例12]
表2及び下記の条件に示すように、有機溶剤として20000ppmの酢酸メチル(沸点54℃)を含有する被処理ガスを用いた以外は、実施例1と同様に操作した。
【0131】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中の酢酸メチル濃度は80ppmと低く、酢酸メチル排出量も48g/hと低いものであった。
【0132】
また、ACF再生用蒸気量は28kg/hと少なく、脱着処理は効率の良いものであった。
【0133】
[実施例13]
表2及び下記の条件に示すように、有機溶剤として20000ppmのアセトン(沸点56.5℃)を含有する被処理ガスを用いた以外は、実施例1と同様に操作した。
【0134】
この吸脱着試験の結果、処理済ガス中のアセトン濃度は50ppmと低く、アセトン排出量も24g/hと低いものであった。
【0135】
また、ACF再生用蒸気量は28kg/hと少なく、脱着処理は効率の良いものであった。
【0136】
【表5】

【符号の説明】
【0137】
A、A’ 第1吸着槽
B、B’ 第2吸着槽
2 ブロワ
4 第1吸着槽導入ライン
6、6’、26、26’ ACF
8、8’ 第1吸着槽主体
10、10’、30、30’ 吸入バルブ
12、12’、32、32’ 排出バルブ
14、14’、34、34’ 蒸気バルブ
15、15’、35、35’ スチーム注入手段
16 第1吸着槽側スチーム導入ライン
18 第1吸着槽側脱着ガスバルブ
20 第1吸着槽側回収ライン
22、25、25’ 凝縮器
24 第1吸着槽処理ガス輸送ライン
28、28’ 第2吸着槽主体
36 第2吸着槽側スチーム導入ライン
38 第2吸着槽側脱着ガスバルブ
40 第2吸着槽側回収ライン
42 第2吸着槽処理ガス輸送ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭素繊維が充填される第1吸着槽と、
前記活性炭素繊維と同一又は異なる活性炭素繊維が充填される第2吸着槽であって、第2吸着槽に充填される活性炭素繊維の質量(M2)が第1吸着槽に充填される活性炭素繊維の質量(M1)を基準とする質量比(M2/M1)で0.05〜0.25の活性炭素繊維が充填される第2吸着槽と、
前記第1吸着槽と、第2吸着槽とを連結する連結管と、
前記連結管に介装される凝縮器と、
前記第1吸着槽及び第2吸着槽にそれぞれ設けられるスチーム注入手段と、
を有する有機溶剤の除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機溶剤の除去装置を用いる被処理ガス中の有機溶剤の除去方法であって、
有機溶剤を3000ppm以上含む被処理ガスを第1吸着槽に供給してその内部に充填される活性炭素繊維に有機溶剤を吸着させると共に、活性炭素繊維に含まれる凝縮水の乾燥を行うことにより、500ppm以下の有機溶剤と水分を含む第1吸着槽処理ガスを得、次いでこの第1吸着槽処理ガスを凝縮器に供給して第1吸着槽処理ガス中の水分を凝縮分離して系外に排出すると共に、前記水分を分離した第1吸着槽処理ガスを第2吸着槽に供給して第2吸着槽の内部に充填される活性炭素繊維に第1吸着槽処理ガスが含む有機溶剤を吸着させると共に、この活性炭素繊維が含む水分を乾燥させることにより、有機溶剤濃度が100ppm以下の第2吸着槽処理ガスを系外に排出させる吸着工程と、
第1吸着槽に供給する被処理ガスの供給を停止した後、スチーム注入手段により第1吸着槽及び第2吸着槽内にスチームを供給して、第1吸着槽及び第2吸着槽内に充填されている各活性炭素繊維の吸着有機溶剤を脱着させることにより、前記有機溶剤を吸着している各活性炭素繊維を前記供給したスチームが凝縮して生ずる凝縮水を含む活性炭素繊維に再生させると共に、前記脱着させた有機溶剤を系外に取出す脱着工程と、
を交互に繰返す被処理ガス中の有機溶剤の除去方法。
【請求項3】
第1吸着槽に充填された活性炭素繊維が、比表面積1200m2/g以上2000m2/g以下、平均細孔直径1〜4nm、全細孔容積0.2〜0.8cm3/gの活性炭素繊維である請求項2に記載の有機溶剤の除去方法。
【請求項4】
第2吸着槽に充填された活性炭素繊維が、比表面積600m2/g以上1400m2/g未満、平均細孔直径0.5〜3nm、全細孔容積0.1〜0.6cm3/gの活性炭素繊維である請求項2に記載の有機溶剤の除去方法。
【請求項5】
第1吸着槽に供給する被処理ガスが、沸点が30〜70℃の有機溶剤を5000〜100000ppm含む被処理ガスである請求項2に記載の有機溶剤の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−183462(P2012−183462A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47260(P2011−47260)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000221812)東邦化工建設株式会社 (8)
【Fターム(参考)】