説明

有機物含有廃水処理システムおよび有機物含有廃水の処理方法

【課題】多量のエネルギーを加えることなく有機物含有廃水を減容化するとともに、放流や再利用に適した良質の処理水を得ること。
【解決手段】有機物含有廃水の処理システムであって、有機物含有廃水を加熱することにより蒸発濃縮する蒸発器21と当該蒸発器21によって蒸発させた気体を凝縮する凝縮器22とを備えた蒸発濃縮装置20と、前記蒸発濃縮装置20の前記凝縮器22により得られる凝縮水を活性汚泥により処理する活性汚泥処理装置30と、を有することを特徴とする有機物含有廃水処理システム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物含有廃水処理システムおよび有機物含有廃水の処理方法に関し、より詳しくは、廃水を減容化するとともに良質の処理水を得る有機物含有廃水処理システムおよび有機物含有廃水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高濃度な有機物や汚染物質を含む廃水をそのまま下水道放流や生物処理ができない場合、廃水を蒸発濃縮処理により減容化し、産業廃棄物として引き取り処理が行われている。一般に、このような蒸発濃縮処理では、特許文献1では、多板型蒸発乾燥器を用いた加熱により廃水を濃縮・減容化し、蒸発させた水蒸気を系外に放出している。特許文献2では、ドラム型乾燥器の表面に廃水を供給して濃縮乾燥し、残存固形分を回収すると共に、蒸発した有害な有機物を燃焼無害化している。また、水蒸気を凝縮器により冷却した凝縮水として排出する場合もある。さらに、特許文献3では、蒸発器と凝縮器との間に蒸留塔を設置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−216498号公報
【特許文献2】特開2005−326053号公報
【特許文献3】特開2005−125156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、濃縮処理に用いる蒸発濃縮装置では、廃水を加熱中に生じる突沸や発泡によって水蒸気中に廃水の飛沫が混入する場合がある。このため、凝縮水の水質を悪化させ処理水の放流や再利用に支障が出るという問題が生じる。また、蒸発器と凝縮器との間に蒸留塔を設置した場合、水の沸点に近い沸点を示す有機物の分離は困難であり、さらに、蒸留に多量のエネルギーを必要とするという問題がある。
本発明の目的は、多量のエネルギーを加えることなく有機物含有廃水を減容化するとともに、放流や再利用に適した良質の処理水を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、[1]〜[15]に係る発明が提供される。
[1]請求項1に係る発明は、有機物含有廃水の処理システムであって、有機物含有廃水を加熱することにより蒸発濃縮する蒸発器と当該蒸発器によって蒸発させた気体を凝縮する凝縮器とを備えた蒸発濃縮装置と、前記蒸発濃縮装置の前記凝縮器により得られる凝縮水を活性汚泥により処理する活性汚泥装置と、を有することを特徴とする有機物含有廃水処理システムである。
[2]請求項2に係る発明は、前記活性汚泥装置は、前記凝縮水中の有機物を活性汚泥中の微生物によって分解する生物処理と分離膜による固液分離処理とが行われる曝気槽を備えた膜分離活性汚泥装置であることを特徴とする請求項1に記載の有機物含有廃水処理システムである。
[3]請求項3に係る発明は、前記分離膜は、多孔性中空糸を構成部材とする膜濾過ユニットを含むことを特徴とする請求項2に記載の有機物含有廃水処理システムである。
[4]請求項4に係る発明は、前記活性汚泥装置で発生する余剰汚泥の少なくとも一部を前記有機物含有廃水と混合するための第1の回収配管を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機物含有廃水処理システムである。
[5]請求項5に係る発明は、前記蒸発濃縮装置は、前記蒸発器から取り出した前記有機物含有廃水の一部を、加熱器を経由して再び当該蒸発器に供給する循環ポンプを備えるフラッシュ型蒸発濃縮装置であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の有機物含有廃水処理システムである。
[6]請求項6に係る発明は、前記蒸発器により得られた濃縮水を蒸発乾燥する蒸発乾燥器を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の有機物含有廃水処理システムである。
[7]請求項7に係る発明は、前記蒸発乾燥器は、前記濃縮水を乾燥空間内に設けられた複数のディスクの表面で乾燥する多板層型乾燥器であることを特徴とする請求項6に記載の有機物含有廃水処理システムである。
[8]請求項8に係る発明は、前記活性汚泥装置で発生する余剰汚泥の少なくとも一部を前記蒸発器により得られた濃縮水と混合するための第2の回収配管を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の有機物含有廃水処理システムである。
【0006】
[9]請求項9に係る発明は、有機物含有廃水の処理方法であって、有機物含有廃水を加熱することにより蒸発濃縮するとともに蒸発させた気体を凝縮する蒸発濃縮工程と、前記蒸発濃縮工程により得られる凝縮水を活性汚泥により処理する活性汚泥処理工程と、を有することを特徴とする有機物含有廃水の処理方法である。
[10]請求項10に係る発明は、前記活性汚泥処理工程は、前記凝縮水中の有機物を前記活性汚泥中の微生物によって分解する生物処理と、当該生物処理された当該凝縮水と当該活性汚泥とを多孔性中空糸を構成部材とする膜濾過ユニットによって分離する固液分離処理と、を有することを特徴とする請求項9に記載の有機物含有廃水の処理方法である。
[11]請求項11に係る発明は、前記活性汚泥処理工程で発生する余剰汚泥の少なくとも一部を前記有機物含有廃水と混合することを特徴とする請求項9又は10に記載の有機物含有廃水の処理方法である。
[12]請求項12に係る発明は、前記蒸発濃縮工程において、循環ポンプを用いて前記有機物含有廃水の一部を蒸発器から抜き取り、加熱器を経由して再び当該蒸発器に供給することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の有機物含有廃水の処理方法である。
[13]請求項13に係る発明は、前記蒸発濃縮工程において得られた濃縮水を蒸発乾燥することを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の有機物含有廃水の処理方法である。
[14]請求項14に係る発明は、前記濃縮水を、乾燥空間内に設けられた複数のディスクの表面で乾燥することを特徴とする請求項13に記載の有機物含有廃水の処理方法である。
[15]請求項15に係る発明は、前記活性汚泥処理工程で発生する余剰汚泥の少なくとも一部を前記蒸発濃縮工程により得られた濃縮水と混合することを特徴とする請求項9乃至14のいずれか1項に記載の有機物含有廃水の処理方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多量のエネルギーを加えることなく廃水を減容化するとともに、放流や再利用に適した良質の処理水を得ることができる。
また、本発明によれば、蒸発装置において飛沫同伴があっても、膜分離活性汚泥装置によって凝縮水中の有機物濃度を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】有機物含有廃水処理システムの第1の実施形態を説明する概略図である。
【図2】有機物含有廃水処理システムの第2の実施形態を説明する概略図である。
【図3】有機物含有廃水処理システムの第3の実施形態を説明する概略図である。
【図4】有機物含有廃水処理システムの第4の実施形態を説明する概略図である。
【図5】有機物含有廃水処理システムの第5の実施形態を説明する概略図である。
【図6】従来の有機物含有廃水処理の一例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、有機物含有廃水処理システムの第1の実施形態を説明する概略図である。
図1に示す有機物含有廃水処理システム1は、外部から導入される木材チップの蒸煮排水等の有機物含有廃水(被処理水)を貯留する原水槽10と、原水槽10に貯留された被処理水を蒸発濃縮処理する蒸発濃縮装置20とを有している。蒸発濃縮装置20は、被処理水を加熱することにより蒸発濃縮する蒸発器21と蒸発器21によって蒸発させた気体を凝縮する凝縮器22とから構成されている。さらに、蒸発濃縮装置20の凝縮器22により得られる凝縮水に含まれた有機物を活性汚泥により処理する活性汚泥装置30を有している。
【0011】
次に、有機物含有廃水処理システム1の処理の流れを説明する。
図1に示すように、有機物含有廃水(被処理水)は、外部から配管11を介して原水槽10に導入され貯留される。原水槽10に貯留された被処理水は、配管12を介して、先ず蒸発濃縮装置20の蒸発器21に供給され、加熱によって蒸発処理される。
蒸発器21による蒸発処理で蒸発した気体は、凝縮器22による凝縮処理で凝縮水となり、配管25を介して活性汚泥装置30に供給される。
【0012】
活性汚泥装置30では、凝縮器22から導入された凝縮水中の有機物を活性汚泥中の微生物によって分解する生物処理が行われる。凝縮水中の有機物含有量は生物処理により低減し、放流または再利用に適した良質な処理水として系外に排出される。また、活性汚泥による生物処理で生じた余剰汚泥は、系外に取り出され、処分される。
尚、活性汚泥装置30により処理された処理水は、そのまま放出される以外に、例えば、蒸発濃縮装置20の蒸発器21や凝縮器22の洗浄水等としての再利用が可能である。
一方、蒸発器21の蒸発処理により、被処理水と比較して減容化された濃縮水が得られる。濃縮水は配管26を介して系外に取り出され、産業廃棄物として、残存固形分の回収や燃焼処理等が行われる。
次に、有機物含有廃水処理システム1を構成する各装置について説明する。
【0013】
(蒸発濃縮装置20)
蒸発濃縮装置20は、特に限定されず、例えば、一般廃水の減容化、濃縮回収等の目的で使用されている公知の装置を用いることができる。例えば、蒸発器や蒸発方式の分類では、ジャケット型、カランドリア型、強制循環式フラッシュ型、薄膜上昇流型、薄膜下降流型等が挙げられる。電熱部の形状による分類では、例えば、プレート型、垂直管型、水平管型等が挙げられる。さらに、大型の装置としては、多段フラッシュ型、多重効用型等が上げられる。
【0014】
具体的には、竪チューブ型蒸発器を備えたVFC型蒸発濃縮装置(Vertical Tube Falling−film Concentrator)、外部に設けた加熱器によって循環ポンプで循環される被処理液を加熱し蒸発缶に入ったところでフラッシュ蒸発させるFFC型蒸発濃縮装置(Forced−Circulation Flash Concentrator)、竪チューブ型の蒸発器内加熱部を備えチューブ外側の熱源によって被処理液をチューブ内で沸騰撹拌させるVRC型蒸発濃縮装置(Vertical Tube Rising−film Concentrator)等が挙げられる。
本実施の形態では、蒸発濃縮装置20として、強制循環式フラッシュ型蒸発濃縮装置であるFFC型蒸発濃縮装置を使用している。強制循環式フラッシュ型蒸発濃縮装置は、有機物含有廃水(被処理水)の処理において、活性汚泥装置30から生じる余剰汚泥を含め、比較的汚れに強く洗浄しやすい点で好適である。
【0015】
(活性汚泥装置30)
活性汚泥装置30は、通常、活性汚泥中の好気性微生物に酸素を与えて被処理水中の有機物を分解する生物処理が行われる曝気槽(図示せず)を備えている。方式により、例えば、標準活性汚泥法、長時間エアーレーション法、オキシデーションディッチ(OD)法、ステップエアーレーション法、膜分離活性汚泥法等が挙げられる。
本実施の形態では、活性汚泥装置30としては、膜分離活性汚泥法による有機物含有廃水の処理が行われる膜分離活性汚泥装置が好ましい。膜分離活性汚泥法は、生物処理と膜濾過による物理処理を組み合わせた処理法である。その種類は、活性汚泥槽の中に直接精密濾過膜や限外濾過膜を浸漬して処理水をポンプで吸引濾過する方法、精密濾過膜または限外濾過膜を活性汚泥槽の外部に設置し、活性汚泥をポンプで外部循環させながら加圧濾過する方法が挙げられる。
【0016】
本実施の形態では、膜分離活性汚泥装置において、有機物を含有する凝縮水中に空気を送り込む散気装置と分離膜を備えた同じ曝気槽内で、凝縮水中の有機物を活性汚泥中の微生物によって分解する生物処理と分離膜による固液分離処理とが行われる。通常、曝気槽には膜濾過ユニットが浸漬して配置されている。膜濾過ユニットには、中空糸膜を用いるタイプと平膜を用いるタイプがある。中空糸膜を用いる膜濾過ユニットは、平膜を用いる膜濾過ユニットに比べて、膜の集積密度が高いのでユニットがコンパクトであり、曝気空気量が少ない利点があり、本実施の形態に好適である。
【0017】
この中空糸膜を用いる膜濾過ユニットは、通常、多数の多孔性中空糸膜を同一平面上に平行に並べたシート状の中空糸膜エレメントを、所要の間隔をおいて複数枚並べて得られる中空糸膜モジュールと、この中空糸膜モジュールの下方に配された散気発生装置とを備えている。中空糸膜モジュールは、複数枚の中空糸膜エレメントからなる、全体の形状が略直方体を呈している。中空糸膜エレメントを用いる中空糸膜モジュールの材料としては、例えば、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、PVDF(ポリビニリデンフロライド)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、セラミックス等が挙げられる。
【0018】
尚、膜分離活性汚泥処理装置は、原水を曝気槽において活性汚泥により生物学的に浄化する。BOD(生物化学的酸素要求量)に換算される有機物は、膜濾過ユニットの散気管から放出される空気により好気的に酸化され分解される。
【0019】
(第2の実施形態)
図2は、有機物含有廃水処理システムの第2の実施形態を説明する概略図である。第1の実施形態と同様な構成については同じ符号を付し、その説明を省略する。
図2に示す有機物含有廃水処理システム2は、図1に示す有機物含有廃水処理システム1と同様に、原水槽10、蒸発器21と凝縮器22とから構成された蒸発濃縮装置20、活性汚泥装置30を有している。さらに、蒸発濃縮装置20の蒸発器21により減容された濃縮水を貯留する濃縮水槽40と、濃縮水槽40に貯留された濃縮水を蒸発乾燥処理する蒸発乾燥器50とを備えている。
【0020】
有機物含有廃水処理システム2では、凝縮器22により生じた凝縮水に含まれる有機物を活性汚泥装置30により処理するルートとは別に、蒸発器21により減容された濃縮水に含まれる有機物等は、蒸発乾燥器50により乾燥処理される。
蒸発乾燥器50としては特に限定されず、例えば、ドラムドライヤやディスクドライヤ等の間接加熱式蒸発装置が挙げられる。本実施の形態では、ディスクドライヤが好ましく、特に、乾燥空間内に設けられた複数のディスクの表面で乾燥する多板層型乾燥器を用いることが好ましい。
【0021】
有機物含有廃水処理システム2では、蒸発器21により減容された濃縮水は、配管26を介して濃縮水槽40に送られ貯留され、その後、配管45を介して蒸発乾燥器50に供給される。蒸発乾燥器50では、濃縮水中の水分及び蒸発性有機成分をさらに蒸発させると共に、加熱表面に残存する固形物を回収され、産業廃棄物として廃棄される。蒸発した有機物を含む排気は燃焼させて無害化される。
【0022】
(第3の実施形態)
図3は、有機物含有廃水処理システムの第3の実施形態を説明する概略図である。第1の実施形態と同様な構成については同じ符号を付し、その説明を省略する。
図3に示す有機物含有廃水処理システム3は、図1に示す有機物含有廃水処理システム1と同様に、原水槽10、蒸発器21と凝縮器22とから構成された蒸発濃縮装置20、活性汚泥装置30を有している。さらに、活性汚泥装置30で発生する余剰汚泥の少なくとも一部を、有機物含有廃水(被処理水)が貯留された原水槽10に供給し、被処理水と混合するための第1の回収配管36を有している。
【0023】
活性汚泥装置30で発生する余剰汚泥は、一般に含水率が高い(約99%)ので、シックナー(沈降槽)による濃縮や脱水機による脱水が必要である。しかしながら、本実施形態では、活性汚泥装置30で発生する余剰汚泥を原水槽10又は、後述するように濃縮水槽40に供給することによって、シックナー及び脱水機の設置が不要となる。
尚、余剰汚泥の供給先としては、原水槽10又は濃縮水槽40のいずれでもよいが、原水(被処理水)のほうが濃縮水より量が多く余剰汚泥の混合による影響が少ない。したがって、濃縮水槽40より原水槽10が好ましい。
【0024】
(第4の実施形態)
図4は、有機物含有廃水処理システムの第4の実施形態を説明する概略図である。第1の実施形態及び第2の実施形態と同様な構成については同じ符号を付し、その説明を省略する。
図4に示す有機物含有廃水処理システム4は、図1に示す有機物含有廃水処理システム1と同様に、原水槽10、蒸発器21と凝縮器22とから構成された蒸発濃縮装置20、活性汚泥装置30を有している。さらに、図2に示す有機物含有廃水処理システム2と同様に、蒸発濃縮装置20の蒸発器21により減容された濃縮水を貯留する濃縮水槽40と、濃縮水槽40に貯留された濃縮水を蒸発乾燥処理する蒸発乾燥器50とを備えている。
図4に示すように、有機物含有廃水処理システム4は、活性汚泥装置30で発生する余剰汚泥の少なくとも一部を、有機物含有廃水(被処理水)が貯留された原水槽10に供給し、被処理水と混合するための第1の回収配管36を有している。これにより、余剰汚泥を脱水処理するためのシックナー(沈降槽)等の設置が不要となる。
【0025】
(第5の実施形態)
図5は、有機物含有廃水処理システムの第5の実施形態を説明する概略図である。第1の実施形態及び第2の実施形態と同様な構成については同じ符号を付し、その説明を省略する。
図5に示す有機物含有廃水処理システム5は、図1に示す有機物含有廃水処理システム1と同様に、原水槽10、蒸発器21と凝縮器22とから構成された蒸発濃縮装置20、活性汚泥装置30を有している。さらに、図2に示す有機物含有廃水処理システム2と同様に、蒸発濃縮装置20の蒸発器21により減容された濃縮水を貯留する濃縮水槽40と、濃縮水槽40に貯留された濃縮水を蒸発乾燥処理する蒸発乾燥器50とを備えている。
図5に示すように、有機物含有廃水処理システム5は、活性汚泥装置30で発生する余剰汚泥の少なくとも一部を、蒸発器21により得られた濃縮水を貯留する濃縮水槽40に供給し、濃縮水と混合するための第2の回収配管37を有している。これにより、余剰汚泥を脱水処理するためのシックナー(沈降槽)等の設置が不要となる。濃縮水槽40内で濃縮水と混合された余剰汚泥は、濃縮水とともに配管45を介して蒸発乾燥器50に供給され、蒸発乾燥処理により減容され、固形物は産業廃棄物として処分される。
【0026】
本実施の形態の有機物含有廃水処理システムが適用可能な有機物含有廃水は特に限定されない。例えば、木材チップの蒸煮排水、顔料・インク廃水、切削・研磨廃水、高濃度界面活性剤含有廃水等の洗浄廃水、めっき廃水等が挙げられる。特に、CODが5,000〜100,000ppmの高濃度有機物含有廃水の処理に好適である。
【0027】
本実施の形態が適用される有機物含有廃水処理システムによれば、蒸発濃縮装置20において、廃水を加熱中に生じた突沸や発泡による飛沫同伴があっても、凝縮水中に混入した有機物を、活性汚泥装置30によって処理することにより、活性汚泥装置30を設けない従来の装置と比較して、有機物濃度を低減できる。また、蒸発濃縮装置20における蒸発・濃縮・凝縮処理により有機物濃度が低減した凝縮水を活性汚泥装置30に導入することにより、蒸発濃縮処理を行わない場合と比較して、活性汚泥による生物処理の負担を軽減し、効率的に放流や再利用に適した処理水が得られる。
【0028】
特に、活性汚泥装置30として膜分離活性汚泥装置を用いると、同一の槽(曝気槽)内において凝縮水中の有機物を活性汚泥中の微生物によって分解する生物処理と、生物処理された凝縮水と活性汚泥とを多孔性中空糸を構成部材とする膜濾過ユニットによって分離する固液分離処理とを行うことができる。これにより、標準活性汚泥処理と比較して、装置の規模をコンパクトにできるとともに、良質の処理水を得ることができる。
【0029】
また、蒸発濃縮装置20により被処理水は減容化される。そして、減容化された濃縮水を蒸発乾燥器50に導入することにより、減容化処理を行わない場合と比較して、蒸発乾燥器50による蒸発乾燥処理に要するエネルギー(スチーム使用量、電力使用量)が低減する。これにより、多量のエネルギーを加えることなく有機物含有廃水から生じる産業廃棄物の処理を行うことができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をより具体的に説明する。尚、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されない。
【0031】
(実施例1)
木材チップの蒸煮排水を含む有機物含有廃水を、第4の実施態様(図4)が適用される有機物含有廃水処理システム4により、以下の条件で処理した。
先ず、木材チップの蒸煮排水を含み、水温20°Cの有機物含有廃水(被処理水:pH中性)を、配管11を介して40m/d(day)の条件で原水槽10に導入した。被処理水に関するデータは以下の通りである。
・BOD(生物化学的酸素要求量):3,300ppm
・COD(化学的酸素要求量):78,000ppm
・全窒素含有量:180ppm
・全リン含有量:30ppm
・懸濁物質含有量:7,700ppm
【0032】
次に、配管12を介し、原水槽10中の被処理水を40m/dの条件で蒸発濃縮装置20に供給し、下記の条件で蒸発濃縮処理を行った。蒸発濃縮装置20として、強制循環型フラッシュ蒸発濃縮装置(カツラギ工業株式会社製)を使用した。
・スチーム(圧力05MPaG)使用量:20.6ton/d(857kg/h×24h/d)
・電力(200V、60Hz、3φ)使用量:26.6kWh/d
・冷却水流量:90m/h
その結果、蒸発器21より5.7m/dの濃縮水が得られ、蒸発濃縮装置20に供給された被処理水の(1/7)の容積に減容化された。また、凝縮器22より54.9m/dの凝縮水が得られた。
【0033】
続いて、蒸発濃縮装置20の凝縮器22より得られた凝縮水を、配管25を介し、549m/dの条件で活性汚泥装置30に供給した。活性汚泥装置30には、凝縮水中の有機物を活性汚泥中の微生物によって分解する生物処理と膜濾過ユニット(三菱レイヨン株式会社製)(図示せず)の分離膜による固液分離処理とが行われる曝気槽(図示せず)が備えられている。ここで、活性汚泥装置30の曝気槽の容量は10mである。膜濾過ユニットは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製中空糸を構成部材とする分離膜を10枚用いている。分離膜1枚の膜面積は15mであり、膜濾過ユニット全体の膜面積は150mである。また、膜濾過ユニットによる凝縮水の濾過LVは0.4m/dである。尚、活性汚泥装置30に供給する凝縮水のBODは170ppmである。
その結果、活性汚泥装置30の活性汚泥による生物処理と分離膜による固液分離処理とがなされた凝縮水(処理水)のBODは20ppm未満に低下した。
尚、活性汚泥装置30の電力(200V、60Hz、3φ)使用量は、120kWh/dである。
【0034】
一方、蒸発濃縮装置20の蒸発器21より得られた濃縮水を、配管26を介して濃縮水槽40に貯留し、その後、配管45を介し、5.7m/dの条件で蒸発乾燥器50に供給した。蒸発乾燥器50として、多板層型乾燥器(株式会社西村鐵工所製)を使用した。蒸発乾燥器50の運転条件は以下の通りである。
・スチーム(圧力0.5MPaG)使用量:7.4ton/d
・電力(200V、60Hz、3φ)使用量:170kWh/d(7.1kW×24h/d)
その結果、2ton/dの乾燥物が産業廃棄物として得られた。
【0035】
尚、活性汚泥装置30の活性汚泥による生物処理により生じた余剰汚泥(含水率99%)を、第1の回収配管36を介し、0.2m/dの条件で原水槽10へ移送した。結果を表1にまとめた。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示す結果から、本実施の形態が適用される有機物含有廃水処理システム4によれば、蒸発濃縮装置20で得られた凝縮水中に混入した有機物を、活性汚泥装置30によって処理することにより、有機物濃度を低減できる。また、蒸発濃縮装置20における蒸発・濃縮・凝縮処理により有機物濃度が低減した凝縮水を活性汚泥装置30に導入することにより、活性汚泥による生物処理の負担を軽減し、効率的に処理水が得られる。
【0038】
(比較例1)
木材チップの蒸煮排水を含む有機物含有廃水を、図6に示した従来の有機物含有廃水処理に基づき、以下の条件で処理した。
図6は、従来の有機物含有廃水処理の一例を説明する概略図である。従来の有機物含有廃水処理では、有機物含有廃水(被処理水)は配管101を介して原水槽100に導入される。原水槽100の被処理水は、所定の条件で配管102を介して蒸発乾燥器200に供給されて蒸発乾燥処理される。蒸発乾燥器200により処理された被処理水の蒸発物はベント配管201を介し、排気として大気中に放出される。また、減容された濃縮水は廃棄配管202により産業廃棄物として廃棄処理操作に送られる。
【0039】
先ず、実施例1と同様に、木材チップの蒸煮排水を含み、水温20°Cの有機物含有廃水(被処理水:pH中性)を、配管101を介して40m/d(day)の条件で原水槽100に導入した。
続いて、配管102を介し、原水槽100中の被処理水を40m/dの条件で蒸発乾燥器200に供給し、下記の条件で蒸発乾燥処理を行った。蒸発乾燥器200として、実施例1と同様に、多板層型乾燥機(株式会社西村鐵工所製)を使用した。蒸発乾燥器200の運転条件は以下の通りである。
【0040】
・スチーム(圧力0.5MPaG)使用量:52ton/d
・電力(200V、60Hz、3φ)使用量:1,200kWh/d(50kW×24h/d)
その結果、2ton/dの乾燥物が産業廃棄物として得られた。なお、蒸発乾燥器200の運転に使用したユーティリティ使用量(スチーム使用量、電力使用量)を、実施例1の結果と併記して表2にまとめた。
【0041】
【表2】

【0042】
表2に示す結果から、蒸発濃縮装置20により被処理水に減容化処理を行う場合(実施例1:第4の実施の形態)と比較して、蒸発乾燥器50による蒸発乾燥処理に大量のエネルギー(スチーム使用量、電力使用量)が必要であることが分かる。
【符号の説明】
【0043】
1,2,3,4,5…有機物含有廃水処理システム、10,100…原水槽、20…蒸発濃縮装置、21…蒸発器、22…凝縮器、30…活性汚泥装置、36…第1の回収配管、37…第2の回収配管、40…濃縮水槽、50,200…蒸発乾燥器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有廃水の処理システムであって、
有機物含有廃水を加熱することにより蒸発濃縮する蒸発器と当該蒸発器によって蒸発させた気体を凝縮する凝縮器とを備えた蒸発濃縮装置と、
前記蒸発濃縮装置の前記凝縮器により得られる凝縮水を活性汚泥により処理する活性汚泥装置と、
を有することを特徴とする有機物含有廃水処理システム。
【請求項2】
前記活性汚泥装置は、前記凝縮水中の有機物を活性汚泥中の微生物によって分解する生物処理と分離膜による固液分離処理とが行われる曝気槽を備えた膜分離活性汚泥装置であることを特徴とする請求項1に記載の有機物含有廃水処理システム。
【請求項3】
前記分離膜は、多孔性中空糸を構成部材とする膜濾過ユニットを含むことを特徴とする請求項2に記載の有機物含有廃水処理システム。
【請求項4】
前記活性汚泥装置で発生する余剰汚泥の少なくとも一部を前記有機物含有廃水と混合するための第1の回収配管を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機物含有廃水処理システム。
【請求項5】
前記蒸発濃縮装置は、前記蒸発器から取り出した前記有機物含有廃水の一部を、加熱器を経由して再び当該蒸発器に供給する循環ポンプを備えるフラッシュ型蒸発濃縮装置であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の有機物含有廃水処理システム。
【請求項6】
前記蒸発器により得られた濃縮水を蒸発乾燥する蒸発乾燥器を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の有機物含有廃水処理システム。
【請求項7】
前記蒸発乾燥器は、前記濃縮水を乾燥空間内に設けられた複数のディスクの表面で乾燥する多板層型乾燥器であることを特徴とする請求項6に記載の有機物含有廃水処理システム。
【請求項8】
前記活性汚泥装置で発生する余剰汚泥の少なくとも一部を前記蒸発器により得られた濃縮水と混合するための第2の回収配管を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の有機物含有廃水処理システム。
【請求項9】
有機物含有廃水の処理方法であって、
有機物含有廃水を加熱することにより蒸発濃縮するとともに、蒸発させた気体を凝縮する蒸発濃縮工程と、
前記蒸発濃縮工程により得られる凝縮水を活性汚泥により処理する活性汚泥処理工程と、
を有することを特徴とする有機物含有廃水の処理方法。
【請求項10】
前記活性汚泥処理工程は、前記凝縮水中の有機物を前記活性汚泥中の微生物によって分解する生物処理と、当該生物処理された当該凝縮水と当該活性汚泥とを多孔性中空糸を構成部材とする膜濾過ユニットによって分離する固液分離処理と、を有することを特徴とする請求項9に記載の有機物含有廃水の処理方法。
【請求項11】
前記活性汚泥処理工程で発生する余剰汚泥の少なくとも一部を前記有機物含有廃水と混合することを特徴とする請求項9又は10に記載の有機物含有廃水の処理方法。
【請求項12】
前記蒸発濃縮工程において、循環ポンプを用いて前記有機物含有廃水の一部を蒸発器から抜き取り、加熱器を経由して再び当該蒸発器に供給することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の有機物含有廃水の処理方法。
【請求項13】
前記蒸発濃縮工程において得られた濃縮水を蒸発乾燥することを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の有機物含有廃水の処理方法。
【請求項14】
前記濃縮水を、乾燥空間内に設けられた複数のディスクの表面で乾燥することを特徴とする請求項13に記載の有機物含有廃水の処理方法。
【請求項15】
前記活性汚泥処理工程で発生する余剰汚泥の少なくとも一部を前記蒸発濃縮工程により得られた濃縮水と混合することを特徴とする請求項9乃至14のいずれか1項に記載の有機物含有廃水の処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−75269(P2013−75269A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217485(P2011−217485)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000232863)日本錬水株式会社 (75)
【Fターム(参考)】