説明

有機珪素化合物含有混合物及びその使用

本発明は、基材を腐食から保護するために、水中に分散可能な、再分散可能な又は可溶な混合物又は水性組成物を使用することに関し、この際、この混合物又は組成物は、水中に可溶な有機ポリマー少なくとも1種及び有機珪素化合物少なくとも1種をベースとしている。更に本発明は、水中に可溶な有機ポリマー少なくとも1種及び少なくとも1個のSi−O−Si結合及び/又は少なくとも1個のSi−Si結合を有している有機珪素化合物少なくとも1種をベースとしている、水中に分散可能な、再分散可能な又は可溶な混合物に関し、この際、水中に可溶な有機ポリマーと有機珪素化合物との合計に対する、水中に可溶な有機ポリマーの含有率は約40〜約80質量%であるか、又は有機珪素化合物はアルキルアルコキシシロキサンのオリゴマー混合物であり、この際、オリゴマー混合物は、アルキルアルコキシシロキサン50〜100質量%を含有しており、これは2〜20のオリゴ重合度を有している。更に本発明の混合物の製造法及びその使用も請求している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に可溶な有機ポリマー少なくとも1種及び有機珪素化合物少なくとも1種をベースとしている混合物を、腐食に対して基材を保護するために使用すること、水中に可溶な有機ポリマー少なくとも1種及び有機珪素化合物少なくとも1種をベースとしている混合物並びにこの混合物の製造法に関する。
【0002】
化学において腐食とは、有用物質とその環境からの物質との化学反応を称し、この際に有用物質の測定可能な変化が現れる。通常、この有用物質は金属である。しかしながらこの概念は、他の有用物質、例えばガラス、コンクリート、モルタル及び他の無機建築材料にも使用することができる。種々の種類の腐食、例えば酸素腐食(これは、酸化物層、例えば錆の形成に作用する)、水素腐食(酸腐食とも称される)、水素脆化、ガラス腐食(ここでは、飲料水用ガラス及び他のガラス物品の表面の構造変化が現れ、これは除去不可能な乳灰色の曇りにより視覚的に認識可能である)並びにバクテリアによる無酸素腐食が存在する。
【0003】
この現象を抑制するために、殊にセメント配合物中の鋼の保護のために提案されている多くの種々の腐食抑制剤が存在する。いくつかは、粉末形であり、かつこの形で又は溶液として配量可能である。
【0004】
例えば、EP1176125A1は、コンクリート中、特に修理用モルタル中で使用するための芳香族スルホン酸化合物及びその金属塩を記載している。
【0005】
GB1153178は、コンクリート配合物中の腐食抑制剤としての、水溶性クロム酸塩、硝酸塩又は亜硝酸塩と芳香族又はヘテロ環式アミンからの塩との組み合わせを記載している。殊にこの場合に、コンクリート中の高いクロリド含有率の場合には、有効にするために比較的高割合の亜硝酸塩又は硝酸塩を使用しなければならないことが欠点である。作用物質が分解反応によって徐々に消耗されることも欠点である。
【0006】
更に、JP6345512は、セメント又はポリマー変性されたセメント中での腐食抑制剤としての金属粉末、例えばZn、Al、Mgを記載している。
【0007】
これらすべての生成物は、セメント配合物中の鋼の保護のための腐食抑制剤として好適であるが、そのような建築材料配合物の撥水性に対する影響を全く又は実質的に有していない。
【0008】
この必要条件に添うために、US20040103814A1は、疎水性化剤、1種以上のアルカノールアミン及び場合による腐食抑制剤からの混合物を用いており、ここでは、疎水性化剤の特殊な必要条件が設定されている。いずれにせよこの系は液状であるので、粉末形の乾燥モルタル混合物に配量添加することはできない。更に、モルタル中で双方の機能を発揮させるためには、疎水性化剤も腐食抑制剤も配量添加しなければならない。
【0009】
疎水性化剤としてのシラン及びシロキサンは、既に数十年来公知である。これらは、通常は液状で入手されているだけであり、処理剤として、硬化されたコンクリート上に塗布される。このような処理剤は大抵スプレー法により適用されるので、更に、目標の製品消費量、即ち所望の適用度を達成するためには、屡々複数の適用工程が必要である。このことは、時間集中的であるばかりでなく、天候状態にも著しく依存する。例えば雨が降っても強風であってもならない。多量塗布可能にするために、いわゆるクリームが開発された。しかしながら、これは一般に、基材中への作用物質の劣悪な侵入特性をもたらし、このことが殊に高密度の基材、例えばコンクリートの場合には負に作用する。更に高いオリゴ重合度を有する作用物質では、基材表面の変色又は少なくとも不所望の光沢又は油性外観を提示させることがあり、この際、このことは基材中への高いオリゴマーの非侵入に帰因する。
【0010】
更に、凍結−結露塩(Frost-Tausalz)又はクロリド含有海洋環境は、特に鉄筋コンクリート並びに鋼補強物(Stahlarmierung)のコンクリート保護の場合には、疎水性化のみ以上を必要とする。それというのも、建築物体中の腐食された金属は、建造物の負荷能力を決定的に損なうからである。
【0011】
EP1205481A2から、無機基材表面の含浸のためのn−プロピルエトキシシロキサンの混合物並びにその乳液が公知である。これらの混合物は、液体形で、硬化された表面上に塗布され、この際には、屡々多数回塗布が必要であるか又は少なくとも有効である。
【0012】
EP1308428A2は、腐食抑制剤としての液状シラン又はシラン調合物の使用を記載しており、ここでは、これが実質的に硬化された基材の表面上に塗布されている。粉末形のシラン及びシラン調合物は記載されていない。
【0013】
EP0913370A1は、均質に疎水性化されたコンクリートの製造法(大量疎水性化とも称される)を開示しており、ここでは、これによってNaCl−溶液の吸収も明らかに減少されている。更に、加水分解可能な有機珪素化合物を含有する水性エマルジヨン(これは、少なくとも1種のアルコキシシラン及び場合による界面活性剤としての作用をする有機珪素化合物1種を含有している)が添加されている。この系は、液状であり、直ちに粉末形に変じることはできず、このことが殊に凝固点を下回る温度でのその貯蔵及び輸送を困難にしている。更に、このような系を含有しているコンクリート製造用の乾燥モルタル及び/又は粉末状コンパウンドを製造することは可能ではない。
【0014】
EP0228657A2は、特に水中に再分散可能な又は水溶性の無水の粉末(これは少なくとも1種の有機珪素化合物をベースとしている)を、漆喰、水硬性結合剤、粘土又は塗料への添加物として、水中に溶かされて、紛粒体の疎水性化のために、又は微粒子状無機又は有機物質の結合剤として使用することを教示している。この粉末を、セメント系の疎水性化のため及び/又はこの系を殊に無機建築材料により包囲されている金属の腐食に対して保護するために使用することは、記載されていない。更に、この粉末は、問題なく製造可能ではなく、このことが、その製造、貯蔵及び使用を更に困難にしている。
【0015】
EP0811584A1中には、オルガノポリシロキサン成分5〜15質量%、水溶性又は水分散可能な結合剤10〜40質量%及び担体粒子50〜80質量%を含有している、顆粒状疎水性化添加剤を含有している粉末形のセメント材料が記載されている。このセメント材料は、疎水性に作用する。この生成物が腐食に対する保護のために使用できることは記載されていない。疎水性に主に寄与するオルガノポリシロキサンは非常に少量でのみこの添加剤中に存在していることも、不利に作用している。従って、相応して多量を使用すべきであり、このことが、他の成分、例えば結合剤及び担体粒子による不利な効果をもたらすこともありうる。
【0016】
残念ながらこれらの全ての手段は、建造物の設置及び保存のためには充分ではなく、従って高い必要条件を満足していない。殊に、従来公知の処理剤及び手段を用いる建築用ブロック又は建造物の表面処理又は疎水性化は、これら材料、殊に鋼補強物の腐食を減少させるために充分に有効ではない。建築材料は、応力亀裂と並んで、差し当たり殊に環境−及び天候影響によって亀裂性に又は脆弱にされ、これにより、建築物体中に侵入した物質が建造物の更なる損傷をもたらすことは公知である。
【0017】
従って、殊に粉末形で乾燥処方物に添加することができるが、液状調合物としても使用可能である、腐食に対して材料を保護するための物質を提供する課題が存在する。この粉末は容易に製造可能であり、かつ貯蔵安定であることが重要である。乾燥処方物に添加するために、これは良好に湿潤化可能であるべきであり、この物質は、迅速かつ最適な分配を確保するために、良好に分散し、再分散し又は溶解すべきである。この物質は、水と一緒に撹拌されたマトリックス中でその作用効果を完全に発揮できることが重要である。更にこれは、毒性を有すべきではなく、水硬性成分と相互作用しないか又は非常に僅かにのみ相互作用して、例えば無機硬化性成分の硬化遅延化を起こさせるべきではない。
【0018】
これらの複雑な課題は意外にも、水中に可溶な有機ポリマー少なくとも1種及び有機珪素化合物少なくとも1種をベースとしているか又は水中に可溶な有機ポリマー少なくとも1種、有機珪素化合物少なくとも1種及び水を含有している組成物をベースとしている、水中に分散可能な、再分散可能な又は可溶な混合物(以後、短縮して粉末とも称される)を、腐食に対して基材を保護するために使用することによって、解決することができた。従ってこの課題は、本発明により、請求の範囲の記載に相応して有利に解決された。
【0019】
従って本発明の目的は、
少なくとも
(i) 水中に可溶な有機ポリマー少なくとも1種及び
(ii)有機珪素化合物少なくとも1種
をベースとしている、水中に分散可能な、再分散可能な又は可溶な混合物を、腐食に対する基材の保護のために使用することであり、この際、有機珪素化合物は、有機官能性シラン、ポリシラン、シランエステル、シロキサン、シリコン類(Silikone)及び/又は珪酸エステルの群から選択される。
【0020】
好ましくは、系列:ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、澱粉、澱粉誘導体、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリマレイネート、水中に可溶なセルロースエーテル、水中に可溶なポリエチレンオキシド、水中可溶な蛋白質からの成分(i)少なくとも1種をベースとしている、本発明による混合物又は本発明により使用される混合物が、いくつかの例として挙げられる。しかしながら、水中に可溶な他のポリマーも成分(i)として使用することもできる。ここで及び以後の記載で、本発明における成分(i)に関するそれぞれの開示は、成分(iii)にも当てはめることができ、相応して逆にも該当する。
【0021】
成分(ii)として、極めて多数の有機珪素化合物も使用でき、この際、本発明の範囲内で、「有機官能性」は「有機」と同一視され、このことは、珪素化合物が少なくとも1個の炭素原子を有する置換基少なくとも1個を有していることを意味している。この場合に好ましい有機珪素化合物は、有機官能性シラン、ポリシラン、シランエステル、シロキサン、シリコン類及び/又は珪酸エステルの群から選択される。殊に、挙げられている有機珪素化合物は、単一成分として、少なくとも2種の有機官能性シランからの混合物として、少なくとも2種の有機官能性シロキサンからの混合物として、又は例えば少なくとも1種の有機官能性シランと少なくとも1種の有機官能性シロキサンとからの混合物として使用されうる。ここで及び後の記載で、本発明の成分(ii)に関するその都度の開示は、成分(iv)にも当てはめることができ、相応して逆にも該当する。
【0022】
しかしながら、記載の有機珪素化合物が液体形で存在し、使用有機珪素化合物の常圧での沸点が低すぎない、好ましくは約100℃又はそれ以上である場合が、非限定的であるが、しばしば有利である。これらは水中に可溶、不溶又は部分的に可溶であることができる。この場合に屡々、水溶性を有しないか又は限られた水溶性を有している次の化合物が好ましい:例えば式Si(OR’)を有する珪酸エステル、式RSi(SiRSiR(ここで、n=0〜500個のRを有し、この際、n=0〜8が好ましい)のポリシラン、一般式又は分子式RSi(OR’)(OH)(4−c−d−e−f)/2のジ−、オリゴ−及びポリシロキサン又はそれらの混合物であることができ、ここで、c=0〜3、d=0〜2、e=0〜3、f=0〜3及びc+d+e+fの合計は最大3.5であり、この際、それぞれのR’は独立して、C−原子数1〜4を有するアルキル−又はアルコキシアルキレン基であり、特にメチル又はエチルを表し、基Rは同一又は異なるもので、C−原子数1〜22を有する分枝又は非分枝のアルキル基、C−原子数3〜10を有するシクロアルキル基、C−原子数2〜4を有するアルキレン基、C−原子数6〜18を有するアリール−、アラルキル−、アルキルアリール基を表し、この際、記載の基Rはハロゲン、例えばF又はClで、エーテル−、チオエーテル−、エステル−、アミド−、ニトリル−、ヒドロキシル−、アミン−、カルボキシル−、スルホン酸−、エポキシド−、カルボン酸アンヒドリド−及びカルボニル基で置換されていてもよく、この際、ポリシロキサンの場合には、RはOR’を表すこともできる。
【0023】
(ii)による好ましい有機珪素化合物は、殊に分子式(R")Si(OR"’)(ここで、(2y+x)=3であることを条件として、0<x<2及び0.5<y<1.5、特に1.0<x<2.0及び0.5<y<1.0であり、基R"は同一又は異なるもので、R"はC−原子数1〜18を有する線状、分枝状又は環状のアルキル基を表し、更に基R"’は同一又は異なるもので、R"’は水素又はC−原子数1〜4を有する線状の又は分枝状のアルキル基、特にH、メチル、エチル、プロピルを表す)のアルキルアルコキシシロキサンの混合物である。
【0024】
更に、(ii)による有機珪素化合物としては、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシランが好ましく、この際、アルキル基として、線状及び/又は分枝したC〜C20−アルキル基が、アルコキシ基として、線状及び/又は分枝したC〜C10−アルコキシ基が存在することができ、この際、後者としては、好ましくは、メトキシ−、エトキシ−及び/又はi−プロポキシ基が使用される。更に、アルキル基の代わりに、共重合可能なアルキレン基、例えばビニル−、アリル−及び/又は(メタ)アクリル−基を使用することもできる。
【0025】
本発明の概念における好ましい有機珪素化合物の非限定的な例は、次の系列からの有機官能性シラン又はシロキサンである:
アルコキシシランの系列、例えばヒドロゲントリメトキシシラン、ヒドロゲントリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、
アルキルシランの系列、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−及びi−プロピルトリメトキシシラン、n−及びi−プロピルトリエトキシシラン、n−及びi−ブチルトリメトキシシラン、n−及びi−ブチルトリエトキシシラン、n−及びi−ペンチルトリメトキシシラン、n−及びi−ペンチルトリエトキシシラン、n−及びi−ヘキシルトリメトキシシラン、n−及びi−オクチルトリメトキシシラン、n−及びi−オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジ−メチルジエトキシシラン、n−及びi−ブチルメチルジメトキシシラン、n−及びi−ブチルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン及びイソブチル−イソプロピルジメトキシシラン、
ビニルシランの系列、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジアルコキシシラン及びビニルトリス−(2−メトキシエトキシシラン)、
アミノアルコキシシランの系列、例えば1−アミノメチルトリメトキシシラン、1−アミノメチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノイソブチルトリメトキシシラン、3−アミノイソブチルトリエトキシシラン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、トリアミノ官能性プロピルトリメトキシシラン及び3−(4,5−ジヒドロイミダゾリル)プロピルトリエトキシシラン、
グリシドエーテル−又はグリシジルアルキル官能性アルコキシシランの系列、例えば3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、
クロロ−及びフルオロアルキル−官能性アルコキシシランの系列、例えばトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン及びトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、3−クロルプロピルトリエトキシシラン、
アクリル−又はメタクリル官能性アルコキシシランの系列、例えばアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシイソブチルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシイソブチルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシ−2−メチル−プロピルトリメトキシシラン及び3−メタクリルオキシ−2−メチル−プロピルトリエトキシシラン、
メルカプト−官能性アルコキシシランの系列、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、
スルファン−又はポリスルファン官能性アルコキシシランの系列、例えばビス−(トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルファン、ビス−(トリメトキシシリルプロピル)−テトラスルファン、ビス−(トリエトキシシリルプロピル)−ジスルファン、ビス−(トリメトキシシリルプロピル)−ジスルファン、ビス−(トリエトキシシリルプロピル)−スルファン、ビス−(トリメトキシシリルプロピル)−スルファン、ビス−(トリエトキシシリルプロピル)−ペンタスルファン及びビス−(トリメトキシシリルプロピル)−ペンタスルファン(この際、前記のモノマーオルガノシラン中で、相応して、加水分解により限定されたオリゴマーが、組成物に対して0.001〜5%の濃度で存在することができる)、
更なる有機珪素化合物、例えばベータ−ニトリルエチルトリエトキシシラン、アリールシラン、殊にフェニルトリエトキシシラン、更にジプロピルジエトキシシラン、トリフェニルシラノール並びにこれらの特に液状の縮合生成物、第4級アンモニウム塩基含有シラン、特にアミノ−官能性シラン又はシロキサンの、カルボン酸−及び無水カルボン酸−官能性シラン、ジシラン、例えばジメチルテトラアルコキシジシラン、テトラメチルジアルコキシジシラン、トリメチルトリアルコキシジシラン又はこれらの一般に相応する塩素化合物含有から得られる(共)重合体。次のものも好ましい:トリメチルシロキシ基により末端ブロックされたメチルヒドロゲンポリシロキサン、トリメチルシロキシ基で末端ブロックされた、ジメチルシロキサン−及びメチルヒドロゲンシロキサン−単位からの共重合体及び末端位単位中にそれぞれ1個のSi−結合したヒドロキシル基を有しているジメチルポリシロキサン並びに有機官能性シロキサン、例えばビニル−官能性シロキサン、アルキル−官能性シロキサン、ビニル−/アルキル−官能性シロキサン(共縮合体)、メタクリル−官能性シロキサン、アミノ−官能性シロキサン、アミノアルキル−/アルキル−官能性シロキサン、アミノアルキル−/フルオロアルキル−官能性シロキサン又は相応する共縮合体並びに、例えば、非限定的であるが、刊行物EP0590270A、EP0716127A、EP0716128A、EP0748357A、EP0760372A、EP0814110A、EP0879842A、EP0846715、EP0930342A、EP1101787A、EP1205481A、EP1304345A、WO06/081891、WO06/081892、WO06/010666、DE19649953A、DE19649955A、DE19725516A、DE19818923A、DE19823390A、DE19834990A、DE19849308A、DE19904132A、DE19908636A並びにDE10056344A中に記載されているような縮合体又はオリゴマー珪酸エステル、例えばDynasylan(R)40又はヒドロゲンシクロシロキサンを包含するDE2744726並びにDE2809871Cからのもの、例えば、いわゆるn=2〜20、殊にn=4〜6のオリゴ重合度を有するDH−化合物。
【0026】
しかしながら、記載の有機珪素化合物の製造は、Noll,Chemie und Technologie der Silicone,2.Auflage 1968,Wheinheim und Houben-Weyl,Methoden der organischen Chemie,Band E20,S.1782f, 2219f,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,1987中に記載のような方法によって行うこともできる。
【0027】
本発明によれば、本発明の混合物を、簡単かつ経済的な方法で、無機建築材料の製造の間に添加することができる。殊に、本発明による混合物又は粉末を、有利に、単一成分又は添加物質からの建築材料配合物又は使用準備のできた建築材料混合物の調合時に、建築材料配合物の引き続く加工の現場(vor Ort)で、即ち直接その場で又は使用準備のできた粉末状の建築材料混合物、例えばコンクリート−、漆喰−又はモルタル混合物の製造時に、又は建築材料配合物、例えばセメント、石灰、砂又はレオロジー補助剤用の使用準備のできた粉末状添加物の製造時に、導入又は混入することができる。
【0028】
本発明の混合物の本発明による使用は、基材、殊に金属及び/又は天然及び/又は人造の無機建築材料を腐食から保護する。好ましい金属は、鉄及び鉄合金、殊に鋼並びにアルミニウム及びアルミニウム合金である。この金属は、通常、例えばコンクリート中の鋼補強物のように、無機建築材料で包囲されている。好ましい建築材料は、モルタル、コンクリート、漆喰、継目接合配合物、煉瓦材料、壁用石材、建築用ブロック、建築部材及び/又は天然石材、例えば石灰砂岩である。
【0029】
本発明の混合物を、金属と接触し、金属を包囲又は取囲んでしている無機建築材料中及び/又はその上で使用することが有利である。無機建築材料、例えばコンクリート、殊に鉄筋コンクリート、気泡コンクリート(Porenbeton)、ガスコンクリート、フォームコンクリート(Schaumbeton)、コンクリート、モルタル、漆喰、継目接合物質からの完成建築部材(Fertigbauteil)、石灰砂岩、クリンカー、れんが、多孔質タイル及びカッヘル製の完成建築部材、テラコッタ、天然石材、繊維セメント、たたき床、粘土製品、壁、ファッサード、屋根並びに建造物、例えば橋、空港設備、住宅、工場及び公共建物、例えば駐車場、駅又は学校及び完成部材、例えばまくら木又はL−石が全く特別有利である。
【0030】
人造無機建築材料は、通常、無機結合剤を含有しており、これは、少なくともa)水硬性結合剤、殊にセメント、b)潜在的水硬性結合剤、殊に酸性の高炉鉱滓、プッゾラナ及び/又はメタカオリン(Metakaolin)及び/又はc)非水硬性結合剤(これは、空気及び水の影響下に反応する)、殊に水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを利用する。
【0031】
水硬性結合剤としては、セメント、殊に、例えば、EN 196CEM I、II、III、IV及びVによるポートランドセメント、アルファ−及び/又はベータ−半水和物及び/又は無水物の形の硫酸カルシウム及び/又は礬土溶融セメント(Tonerdeschmelzzement)が有利である。潜在的水硬性結合剤として、プッゾラナ、例えばメタカオリン、メタ珪酸カルシウム及び/又は火山スラグ、火山石灰華、トラス、煙灰、高炉鉱滓及び/又はシリカダストが使用され、これらは、カルシウム源、例えば水酸化カルシウム及び/又はセメントと一緒に水硬性に反応する。空気及び水の影響下に反応する非水硬性結合剤としては、殊に、石灰を、大抵は、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの形で使用することができる。特に、純粋なポルトランドセメント−ベース系又はポートランドセメント、礬土溶融セメント及び硫酸カルシウムからの混合物が有利であり、この際、双方の系において、場合によってはなお潜在的な水硬性及び/又は非水硬性の結合剤が添加されていてもよい。
【0032】
屡々、水と一緒に高いpH−値を生じさせる結合剤又は結合剤組み合わせ物が有利である。その表面で、それに有機珪素化合物が結合することができる酸化された受動層(Passivschicht)を有する金属と接触する際に、これが作用する。
【0033】
無機結合剤は、典型的に、屡々充填物質とも称される添加剤(Zuschlagstoff)と混合される。典型的な添加剤は、石英及び/又は炭酸塩砂及び/又は紛末、例えばケイ砂及び/又は石灰石紛、炭酸塩、珪酸塩、チョーク、層状珪酸塩及び/又は沈降珪酸である。更に、軽質充填剤、例えば、ガラス製のマイクロ中空球、ポリマー、例えばポリスチレン球、アルミノ珪酸塩、酸化珪素、アルミニウム−酸化珪素、珪酸カルシウム−水和物、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム水和物、珪酸−カルシウム−アルミニウム、珪酸カルシウム水和物、二酸化珪素及び/又は珪酸−アルミニウム−鉄−マグネシウム及び粘土、例えばベントナイトも使用することができ、この際、充填剤及び/又は軽質充填剤は、天然の又は人工的に得られる色を有することもできる。
【0034】
有機珪素化合物として疎水性化作用をするシラン製品を使用する場合には、更に目標の疎水性化効果によって、相応する鋼−又は金属補強されている設置された建築材料及び建造物の腐食特性を、−市場で慣用の腐食保護手段に比べても−なお明らかに改良することができる。
【0035】
意外にも、この混合物は、本発明による腐食抑制剤としての使用と並んで、石材強化のためにも使用することができ、この際に、疎水性及び作用効果は損なわれずに残ることも判明した。
【0036】
殊に、有機官能性シラン及び/又は有機官能性シロキサンを含有している処理剤の疎水性化及び/又は石材硬化作用と並んで、同時に、殊に金属腐食又は水及び塩と接触するコンクリートにおける腐食の腐食抑制作用を、修理用配合物中又は建築用ブロック、建築部材又は建造物の製造用の配合物中で、先に記載の粉末を使用することによって、有利に得ることができることは意想外のことである。従って本発明による使用は、有利な方法で、金属−及び石材腐食の同時の阻止をもその内容としている。
【0037】
更に、このような配合物中での本発明による粉末の適用時に、後の建築物体での良好かつ殊に一様な石材硬化特性を確認することができる。疎水性及び作用効果の双方も損なわれずに残っている。
【0038】
先に詳述されている粉末又は混合物を、本発明により建築分野での修理の目的のための無機配合物の製造のために使用する場合が更に有利である。このような適用によっても、腐食プロセスは、少なくとも時間経過で明らかに軽減されうる。
【0039】
腐食に対する本発明による保護作用は、腐食速度が、非保護材料に比べて約50%以上、好ましくは約80%以上、殊に約90%より以上も減少される場合に達成される。この腐食速度は、例えば鋼補強物の場合には、相応する非保護コンクリートに比べて観察される腐食電流によって測定される。
【0040】
混合物の固体含有率及びコンクリート中のセメント割合に対するコンクリート中の本発明による混合物の使用量は、約50質量%まで又はそれ以上であることができ、この際には、存在しうる規定処方を守ることに注意すべきである。本発明による使用のために最適な腐食保護が得られるように、この使用量を調節することが有利である。これによって、他のコンクリート特性に実質的に影響することなしに、有機珪素化合物の高い作用物質含有率を使用することができ、この際に、建築基準も問題なく保持することができる。
【0041】
混合物の固体含有率及びモルタルの乾燥分に対するモルタル中の本発明による混合物の使用量は、約0.01〜約10質量%であり、この際、特殊な用途のためには、より高い量を使用することもできる。混合物の約0.05〜約5質量%、殊に約0.1〜3質量%を使用するのが有利である。
【0042】
腐食抑制剤として意外にも良好に作用する本発明による混合物は、典型的に水硬性配合物中に混入され、この際、これは無機建築材料の製造の間に、通常は、他の成分と一緒に添加される。
【0043】
本発明による混合物は、大抵、粉末形で存在する。従ってこれは、特別簡単な及び経済的な方法で相応する乾燥モルタル、乾燥漆喰及び/又はコンクリート用の乾燥前混合物、例えばセメント、殊に変性セメント中に導入加工することができる。このことは、特別良好な配量及び後の建築材料配合物中への、かつ引き続き製造される建築用ブロック、建築部材及びこれにより得られる建造物中へのこの混合物の非常に一様な分配を可能とする。次いで、この乾燥混合物は、簡単に、現場で、規定量の水の添加下に混合し、かつ引き続き加工することができる。
【0044】
しかしながら、本発明の混合物を、建築材料配合物の調製時にも、特別な成分として混合することもできる。この実施形では、建築材料成分を、必要量の水と混合又は混練し、この際に、混合物を水の添加の直前、その間及び/又はその後に添加する場合が、屡々有利である。しかしながら、この混合物を差し当たり調合水(Anmachwasser)に加え、この方法で乾燥又は既に湿らされた配合物にミキサー中で加えることもできる。
【0045】
しかしながら前記の混合物を、溶かされた、適切には低粘性から高粘性の形で、即ちペーストの形で、得られた建築材料上に表面保護剤として、例えばスプレー、塗布、ローラかけ又はドクターによって表面的に塗布することもできる。この場合には、本発明による組成物又は調合物を、50g/mを上回る、有利には100g/mを上回る、特別有利には200g/mを上回る量で、基材表面上に塗布することができる。場合によっては、殊に所望の作用物質量が基材の低い吸収能に基づき1作業工程で適用できない場合には、例えば作業工程の間に、2時間〜約2日の乾燥時間をとって、複数回適用を行うことができる。記載の混合物が粉末として使用される場合には、この粉末を予め水中に分散させ、再分散させ又は溶かす場合がこの用途のために有利であり;このために、環境温度で揮発する他の液体を使用することもできる。
【0046】
本発明の目的物は、水中に分散可能な、再分散可能な又は可溶な混合物でもあり、これは、
(iii)水中に可溶な有機ポリマー少なくとも1種及び
(iv) 少なくとも1個のSi−O−Si結合及び/又は少なくとも1個のSi−Si結合を有している有機珪素化合物少なくとも1種
をベースとしており、
この際、有機ポリマー(iii)と有機珪素化合物(iv)との合計量に対する有機ポリマー(iii)の含有率は、約40〜約80質量%、好ましくは40〜約70質量%、殊に45〜60質量%であり、この際、少なくとも1個のSi−O−Si結合を有する有機珪素化合物は、アルキルアルコキシシロキサンのオリゴマー混合物に基づいており、このオリゴマー混合物は、アルキルアルコキシシロキサン50〜100質量%を含有し、これは、実質的に2〜20のオリゴ重合度を有し、かつ、少なくとも1個のSi−Si結合を有する有機珪素化合物はポリシランである。
【0047】
この場合に、成分(iii)の有機ポリマーとしては、成分(i)により既に前に開示されている有機ポリマーを有利に使用することができるか又は基準とすることができる。
【0048】
(iv)による少なくとも1個のSi−O−Si結合を有する有機珪素化合物としては、有利に、前記開示の成分(ii)によるもの、殊にオルガノシロキサン、例えばアルキルアルコキシシロキサン又はアルキルアルコキシシロキサン混合物及び/又はオリゴマー珪酸エステルを使用することもできる。更に、(iv)による少なくとも1個のSi−Si結合を有する有機珪素化合物として、ポリシラン1種以上を使用することができる。種々の有機珪素化合物の混合物を使用することもできる。
【0049】
記載の有機珪素化合物として、有利に、前記の成分(ii)又は(iv)のもの、殊にオルガノシロキサン、例えばアルキルアルコキシシロキサン又はアルキルアルコキシシロキサン混合物を使用することができるか、又は本発明による混合物又は粉末の製造時の出発物質として使用することができる。
【0050】
従って、本発明による混合物及び本発明による使用のための混合物にとっては、通例、有機珪素化合物が室温及び常圧で液体である場合が有利である。殊に本発明による粉末にとっては、常圧での有機珪素化合物の沸点が約100℃以上、好ましくは約125℃以上、殊に約150℃以上である場合が有利である。
【0051】
室温及び常圧で、有機珪素化合物が液体である場合には、粘度は化合物に応じて非常に低いか又は非常に高いこともありうる。しかしながら、本発明による混合物及び使用のためには、低粘度の有機珪素化合物を使用する場合が屡々有利である。これは、約1〜1000mPas、特別好ましくは約2〜200mPas、殊に約3〜50mPas、全く特別好ましくは約3〜約20mPasの粘度を有することが有利である。この粘度測定は一般にDIN53015に従って行われる。
【0052】
オリゴマーシラン又はオルガノシロキサン、例えばアルキルアルコキシシロキサンは、通常、そのオリゴ重合度並びにその構造により特徴付けられる。このことは、n−プロピルエトキシシロキサン及びその混合物の例で、後記のように説明される。これらの有機珪素化合物は、次の一般的な構造式により近似的に表すことができる:
線状n−プロピルエトキシシロキサン
【化1】

及び環状n−プロピルエトキシシロキサン
【化2】

ここで、nはオリゴ重合度を示している。即ち、オリゴ重合度は、1分子当たりのSi−単位の数を反映している。このオリゴ重合度の測定のために、本発明では、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィ(GCP−法)及び29Si−NMR−法を使用した。ここで、定義のオリゴマーに対して例えば100質量%を有するオリゴマー混合物が記載されている場合には、この値は、記載方法での相応するオリゴマーの現在の立証限界(約1%)に関連している。分枝した構造を有するオリゴマーも存在することができるが、これらは図示することが困難である。
【0053】
前記のシロキサンをより詳しく記載するために、本発明では付加的に、いわゆるM−、D−及びT−構造に準拠する。このようなシロキサン構造の命名法は、"Roempp Chemie-lexikon"-Stichwort: Silicone に示唆されている。
【0054】
更に、成分(ii)又は(iv)のオルガノシロキサンのオリゴマー混合物、殊にアルキルアルコキシシロキサンを、分子式I:
(R")Si(OR"’) (I)
として記載することもでき、ここで、特に基R"は同じ又は異なるもので、R"はC−原子数1〜18を有する線状、分枝状又は環状のアルキル基、特にメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、オクチル、ヘキサデシル、殊にn−プロピルを表し、基R"’は同じ又は異なるもので、R"’は水素又はC−原子数1〜4を有する線状又は分枝状のアルキル基、特にメチル、プロピル、ブチル、殊にエチルを表し、かつ
1.0<x<2.0 及び0.5<y<1.0である、但し、(2y+x)=3であることを条件とする。
【0055】
本発明における成分(ii)又は(iv)で、n−プロピルエトキシシロキサン混合物、例えばProtectosil(R)266を使用することが特別有利である。
【0056】
更に、本発明により使用されるオリゴマー混合物が実質的に、2〜20、特に有利には2〜10、殊に3〜6のオリゴ重合度を有するアルキルアルコキシシロキサン70〜100質量%、特に約80〜99質量%、殊に約90〜98質量%を含有する場合が有利であり得る。しかしながら、このようなオリゴマー混合物は、相応するモノマーアルキルアルコキシシランを含有していることもできる。
【0057】
殊に、成分(ii)又は(iv)の記載のオリゴマー混合物は、次の割合のアルキルアルコキシシロキサン、殊にn−プロピルエトキシシロキサンを含有することができ、この際、数値記載はそれぞれ100質量%まで、他の成分、殊に他のアルキルアルコキシシロキサンで、場合によっては、≦5質量%まで、有利には≦2質量%まで、殊に≦1質量%から検出限度までの水及び/又はアルコールの残量で補充されうる:
− M−構造を有し、n=2のオリゴ重合度を有している、アルキルアルコキシシロキサン 0〜30質量%、特別好ましくは10質量%を下回る、全く特別好ましくは0.001〜5質量%まで、殊に0.01〜1質量%、
− MD−及び/又はD−構造を有する(この際、記載の構造はn=3のオリゴ重合度を有しているアルキルアルコキシシロキサンの1分子量に相当している)、アルキルアルコキシシロキサン 8〜40質量%、特に好ましくは10〜35質量%、全く特別好ましくは15〜30質量%、
− M−及び/又はMT−及び/又はD−構造を有する(この際、記載の構造はn=4のオリゴ重合度を有しているアルキルアルコキシシロキサンの1分子量に相当している)、アルキルアルコキシシロキサン 20〜60質量%、特別好ましくは25〜55質量%、全く特別好ましくは35〜50質量%、殊に30〜45質量%、
− M−及び/又はMDT−及び/又はD−構造を有する(この際、記載の構造はn=5のオリゴ重合度を有しているアルキルアルコキシシロキサンの1分子量に相当している)、アルキルアルコキシンシロキサン 5〜35質量%、特別好ましくは8〜30質量%、全く特別好ましくは15〜25質量%、殊に10〜24質量%、
− M−及び/又はMT−及び/又はM−及び/又はD−構造を有する(この際、記載の構造はn=6のオリゴ重合度を有しているアルキルアルコキシシロキサンの1分子量に相当している)、アルキルアルコキシシロキサン 0.1〜30質量%、特別好ましくは0.5〜25質量%、全く特別好ましくは5〜20質量%。
【0058】
本発明の成分(i)又は(iv)の意味のアルキルアルコキシシロキサン含有混合物のオリゴマー混合物は、例えば−限定的ではないが−EP1205481A2の教示に従って製造することができる。更に、そこに記載の添加物を包含している、そこに記載の組成物も本発明で使用することができる。EP1205481A2の開示内容は、全体として本発明で勘案することができる。
【0059】
本発明により使用される又は粉末の製造のために使用されるアルキルアルコキシシロキサンのオリゴマー混合物、例えばProtectosil(R)266は、例えば−限定的ではないが−次の物理−化学的特性及び次のオリゴマー分布を有することができる:
引火点(EN22719) : >70℃
粘度(20℃、DIN 53015): 35mPas
密度(20℃、DIN 51757): 1.04g/cm
水含有率 : ≦0.05%
遊離アルコール : ≦0.3%
【表1】

【0060】
同様に、成分(ii)又は(iv)のアルキルアルコキシシロキサンの記載オリゴマー混合物は、6より高いオリゴ重合度を有するアルキルアルコキシシロキサン10質量%を下回る、好ましくは0〜8質量%、特別好ましくは0.001〜5質量%を含有することができ、この際、量記載値はオリゴマー混合物に対するものである。
【0061】
更に、成分(ii)、(iv)又は(vi)の意味のオリゴマー混合物は、n=7〜20のオリゴ重合度を有するアルキルアルコキシシロキサン0〜5質量%を含有しており、ここで、量記載値はオリゴマー混合物に対するものである。
【0062】
成分(ii)又は(iv)によるアルキルアルコキシシロキサンの記載オリゴマー混合物が、アルキルアルコキシシロキサン(ここで、これはn=20より高いオリゴ重合度を有する)0〜1質量%を含有する場合も好適である。
【0063】
しかしながら、本発明により成分(ii)又は(iv)として使用されるアルキルアルコキシシロキサンのオリゴマー混合物は、実質的にn=2〜6のオリゴ重合度を有するようなアルキルアルコキシシロキサン、特別好ましくはn=3〜6を有するものを含有している。
【0064】
一般に、本発明による混合物が低割合の揮発性有機化合物(VOC)を有する場合が有利であり、この際、このような化合物としては、常圧での沸点最大250℃を有するものがこれに該当する。VOC含分は、固体分に対して、好ましくは2質量%を下回って、好ましくは0.5質量%を下回って、殊に0.2質量%を下回っている。
【0065】
しかしながら、混合物はアルキルアルコキシシロキサンのオリゴマー混合物と共に少量の遊離アルコールを含有することも可能である。粉末中のこのような遊離アルコール分は、例えば比較的高い空中水分の存在時にはアルコキシ基の加水分解によって、徐々に形成されうる。この量割合は、粉末中の有機珪素化合物の量に対して遊離アルコール0〜5質量%、特に2質量%を下回って、全く特別好ましくは1質量%を下回っている。
【0066】
本発明による混合物及び本発明による使用のための混合物にとって、有機珪素化合物が水不溶性の又は限られた水溶性の水性分散液、水中に分散可能な又は再分散可能な粉末である場合が有利である。良好な水溶性の有機珪素化合物を使用する場合には、これは水中に可溶性の粉末であることが有利である。更にこの混合物は、有機珪素化合物の水溶性に無関係に、造粒された粉末であることができ、ここでは、水中に可溶な有機ポリマー及び有機珪素化合物が無機マトリックス上に貼り付けられ及び/又は吸着され、この際に、無機マトリックスの選択の場合には、貼り付けられた及び/又は吸着された化合物が、本発明による使用時に、作用効果を発揮するために、簡単に再びマトリックスから剥がれることに留意すべきである。
【0067】
水中に可溶な有機ポリマーは、それが水中に不溶性であるか又は限られた可溶性である有機珪素化合物と一緒になって、水溶液中で安定な分散液を形成する作用をする。これらの化合物を、得られる分散液が24時間後にもなお同じ物理特性、例えばpH、粘度、粒度及び色を有し、かつ分離しない、即ち分散粒子の沈殿が現れないように、相互に適合されている場合が屡々有利である。有機珪素化合物の種類に応じて、種々の水中に可溶な有機ポリマーは所望の分散安定性を生じるので、水中に可溶な有機ポリマーは、特定の有機珪素化合物にとって理想的でありうるが、他方で他の有機珪素化合物とは非相容性を示すことがありうる。従って、この水中に可溶な有機ポリマーを、有機珪素化合物と適合させるべきである。得られる水性分散液組成物を乾燥によって、水中に再分散可能である粉末に変じることを簡単に可能とする安定化系が有利である。
【0068】
典型的に好適な水中に可溶な有機ポリマーは、室温で溶けない限り固体であり、好ましくは高分子量の化合物である。天然の化合物、例えば場合により化学的に変性されている多糖類、合成の高分子量オリゴマー並びにイオン性を有しないかまたは弱いイオン性を有するポリマー及び/又は少なくとも部分的にイオン性を有しているモノマーによって、例えば水性媒体中でのラジカル重合によってその場で製造されるポリマーが、これに該当する。水中に可溶な有機ポリマー1種のみを使用するか又は種々のポリマーを相互に組み合わせることも可能である。しかしながら、水中に可溶な有機ポリマーがカルボキシル基を有しないか又は僅かな割合のみで有する場合が屡々有用である。
【0069】
有利に使用可能な多糖類及びそれらの誘導体は、冷水に可溶な多糖類及び多糖類エーテル、例えばセルロースエーテル、澱粉エーテル(アミロース及び/又はアミロペクチン及び/又はこれらの誘導体)、グアーエーテル(Guarether)及び/又はデキストリンである。合成多糖類、例えばアニオン性、非イオン性又はカチオン性のヘテロ多糖類、殊にキサンタンゴム又はウエランゴムを使用することもできる。しかしながら多糖類は、例えばカルボキシメチル−、カルボキシエチル−、ヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−、メチル−、エチル−、プロピル−、スルフェート−、ホスフェート−及び/又は長鎖アルキル基で化学的に変性されていてもよいが、変性されているべきではない。他の天然の安定化系は、アルギン酸塩、ペプチド及び/又は蛋白質、例えばゼラチン、カゼイン及び/又は大豆−タンパク質である。デキストリン、澱粉、澱粉エーテル、カゼイン、大豆−蛋白質、ゼラチン、ヒドロキシアルキル−セルロース及び/又はアルキル−ヒドロキシ−セルロースが全く特別有利である。
【0070】
合成された水中に可溶な有機ポリマーは、1種以上の保護コロイドから成っていることができ、例えば分子量2000〜400000を有するポリビニルピロリドン及び/又はポリビニルアセタール1種以上、好ましくは約70〜100モル%、殊に約80〜98モル%の加水分解度及び4%水溶液中でのヘッペル粘度(Hoeppelviskositaet)好ましくは1〜50mPas、殊に約3〜40mPas(20℃でDIN 53015に従って測定)を有する、完全−又は部分鹸化された及び/又はアミノ基、カルボン酸基及び/又はアルキル基で変性されたポリビニルアルコール並びにメラミンホルムアルデヒドスルホネート、ナフタリンホルムアルデヒド−スルホネート、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのブロックコポリマー、スチレン−マレイン酸−及び/又はビニルエーテル−マレイン酸−コポリマーから成っていることができる。
【0071】
より高い分子量のオリゴマーは、非イオン性、アニオン性、カチオン性及び/又は両性の乳化剤、例えばアルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルフェート、ヒドロキシアルカノールのスルフェート、アルキル−及びアルキルアリールジスルホネート、スルホン化された脂肪酸、ポリエトキシル化されたアルカノール及びアルキルフェノールのスルフェート及びホスフェート並びにスルホコハク酸のエステル、第4級アルキルアンモニウム−塩、第4級アルキルホスホニウム−塩、重付加生成物、例えばポリアルコキシレート、例えば線状の及び/又は分枝したC〜C22−アルカノール、アルキルフェノール、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミン、1級及び/又は2級の高級アルキル−アミン(ここで、アルキル基はそれぞれ線状の及び/又は分枝したC〜C22−アルキル基であるのが好ましい)1モル当たりエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド5〜50モルの付加生成物であることができる。場合により少量の好適な乳化剤と一緒の、合成安定化系、殊に部分鹸化され、場合により変性されたポリビニルアルコール(ここで、1種以上のポリビニルアルコールを一緒に使用することができる)が全く特別好ましい。好ましい合成安定化系は、殊に、加水分解度80〜98モル%及び4%水溶液としてのヘッペル粘度1〜50mPasを有する、変性された及び/又は変性されていないポリビニルアルコール及び/又はポリビニルピロリドンである。
【0072】
本発明の混合物において、水中に可溶な有機ポリマー複数を、例えば1種以上の天然化合物と1種以上の合成化合物とを組み合わせて使用することも可能である。
【0073】
本発明による水性組成物(分散液又はエマルジヨンとも称される)又は調合物が本発明において使用される場合に、その都度使用される有機珪素化合物と有機ポリマーとの質量比は約95:5〜5:95であり、殊に約85:15〜15:85、好ましくは約70:30〜30:70、全く特別好ましくは約60:40〜40:60であり、この際、組成物又は調合物は、組成物又は調合物100質量部当たり、水5〜95質量部、有利には10〜70質量部、特別有利には15〜60質量部、全く特別有利には20〜50質量部、殊に25〜40質量部を含有することが有利である。
【0074】
水中に可溶なポリマーが有機珪素化合物と一緒になって分散液を形成する場合には、その粒度を、ポリマーの選択、有機珪素化合物に対するポリマーの使用質量比の選択によって、全混合物の種類及び方法によると同様に、目的に合わせて調節することができる。この混合物を乾燥させて粉末にし、引き続き再び分散させるか又は再分散させる場合には、通常、再び当初の粒度を生じる。水中に分散された、分散可能又は再分散可能な混合物が、水中に分散され又は再分散される場合には、約0.1〜約50μm、殊に約0.2〜約30μmの平均粒度を有する場合が屡々有利である。混合物が粉末形で存在する場合には、約20〜約500μm、殊に約50〜約250μmの平均粒度が有利であると立証された。これがこれらの範囲外にあることもできるが、その際には、ダスト化する傾向のある小さい粒子よりも大きい粒子が屡々有利である。
【0075】
粒度の測定は、慣用の測定法を用いて実施することができ、この際に好ましくは、光散乱の方法が使用され、粒度は容量平均として記載される。
【0076】
水中に分散可能又は再分散可能な混合物は、水中に分散又は再分散される場合に、有利に、約5〜75質量%、殊に約15〜65質量%、全く特別好ましくは約30〜50質量%の固体含有率を有し、かつ典型的に、DIN 53015に従って測定された約100〜100000mPas、好ましくは約200〜25000mPas、殊に約300〜10000mPas、全く好ましくは約500〜5000mPasの粘度を有する。
【0077】
本発明による混合物又は本発明による使用のための混合物は、なお他の添加物を含有することができる。他の添加物の種類には限界がない。通常、これらは、本発明による粉末の使用時に重要な機能を有するが、このことは強制的ではない。水中に可溶な更なる有機ポリマーを添加することもでき、この際には、この場合のそれらの添加は粉末状で行うのが好ましい。
【0078】
水中に可溶な有機ポリマーと有機珪素化合物との合計に対する添加物の含有率は、実質的な限度に定められていない。従って例えば、界面活性物質の含有率は非常に小さく、混合物の固体含分に対して約0.01質量%又はそれより上、殊に約0.1質量%又はそれより上、好ましくは約1質量%又はそれより上であることができる。他方で、本発明による混合物に、実質的に大割合の添加物、例えば、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル−t−デカン酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリレート、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル、酢酸ビニル−t−デカン酸ビニル、酢酸ビニル−t−デカン酸ビニル−(メタ)アクリレート、t−デカン酸ビニル−(メチル)アクリレート、純粋(メタ)アクリレート、スチレン−アクリレート及び/又はスチレン−ブタジエンをベースとする共重合体を含有している乳化−及び/又は懸濁重合体を主剤とする充填物質又は分散液及び/又は分散粉末を混合することもできる。この場合に、本発明による材料1部当たり添加物約1000部まで、殊に約500部まで、好ましくは約100部までを添加することができる。
【0079】
好ましい添加物は、殊に、疎水性化剤、例えば脂肪酸並びにそれらの塩及びエステル、脂肪アルコール、シラン、気孔形成剤、湿潤剤、消泡剤、乳化剤、膜形成助剤、凝結−及び硬化促進剤、凝結遅延剤、増粘剤、分散剤、レオロジー調節添加剤、例えばセメント液化剤、ポリカルボキシレート、ポリカルボキシレートエーテル、ポリアクリルアミド及び/又はシックナー、腐食抑制剤、例えば安息香酸アルキルアンモニウム、アミノアルコール、グルコン酸及び/又はこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、保水剤、セルロース繊維及びセルロースエーテル、澱粉エーテル、グアーエーテル、風化、沈殿及び/又はフラッディングを減少するための添加剤、充填剤及び、混合物が粉末状である場合には、粉末集塊化及び/又は膜形成性で水不溶性の分散粉末を減少させるための添加剤及び混合物が液状である場合には、膜形成性ポリマー分散液である。
【0080】
更に添加物として、紛状及び/又は液状の消泡剤、湿潤剤、アルキル−、ヒドロキシアルキル−及び/又はアルキルヒドロキシアルキル−ポリサッカリドエーテル、例えばセルロースエーテル、澱粉エーテル及び/又はグアーエーテル(この際、アルキル−及びヒドロキシアルキル基は、典型的にC〜C−基である)、合成多糖類、例えばアニオン性、非イオン性又はカチオン性ヘテロ多糖類、殊にキサンタンゴム又はウエランゴム、セルロース繊維、分散剤、セメント液化剤、凝結促進剤、硬化促進剤、凝結遅延剤、気孔形成剤、ポリカルボキシレート、ポリカルボキシレートエーテル、ポリアクリルアミド、完全−及び/又は部分鹸化された、かつ、場合により変性されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド及びポリアルキレングリコール(ここで、アルキレン基は、典型的にC−及び/又はC−基であり、これにはブロックポリマーも数えられる)、例えば酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル−t−デカン酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリレート、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル、酢酸ビニル−t−デカン酸ビニル、酢酸ビニル−t−デカン酸ビニル−(メタ)アクリレート、t−デカン酸ビニル−(メタ)アクリレート、純粋(メタ)アクリレート、スチレン−アクリレート及び/又はスチレン−ブタジエンをベースとする分散液及び分散粉末含有共重合体、疎水性化剤、例えばシラン、シランエステル、シロキサン、シリコーン類、脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル、増粘剤、充填剤、例えば石英及び/又は炭酸塩系の砂及び/又は粉体、例えばケイ砂及び/又は石灰石紛、炭酸塩、珪酸塩、層状珪酸塩、沈降珪酸、軽質充填剤、例えばガラス製の微小孔球、ポリマー、例えばポリスチレン球、アルミノ珪酸塩、酸化珪素、アルミニウム−酸化珪素、珪酸カルシウム水和物、二酸化珪素、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム水和物、珪酸カルシウム−アルミニウム−珪酸塩、珪酸カルシウム水和物、アルミニウム−鉄−マグネシウム−珪酸塩、メタ珪酸カルシウム及び/又は火山灰並びにプッゾラナ、例えばメタカオリン及び/又は潜在的水硬性成分を添加することができる。全く特別好ましい添加物は、ポリマー分散液、分散粉末、多糖類エーテル、液化剤及び疎水性化剤、殊にシラン、シランエステル、脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルである。
【0081】
本発明の目的は、下記方法による本発明の混合物の製造法でもある:、
− 第1工程で、水中に溶かされた(i)又は(iii)による有機ポリマー少なくとも1種少なくとも10質量%(有機珪素化合物の全量に対して)を、(ii)又は(iv)による有機珪素化合物少なくとも1種と混合し、場合による残りの量の有機ポリマーを、その分散の間及び/又はその後に添加し、場合により更なる添加物を、この分散の前、間及び/又は後に添加し、かつ
− 第2工程で、第1工程で得られた分散液を乾燥させ、この際に、この乾燥の間及び/又は後に、更なる添加物を添加することができる。
【0082】
この場合に、本発明による混合物は、第1工程で、有機珪素化合物の全量に対して少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%の水溶性有機ポリマーを、有機珪素化合物と混合させることからなる本発明の方法によって製造される。この工程は、通常は水中で実施され、この際に、有機ポリマーを差し当たり水中に溶かす。場合により残っている量の有機ポリマーを、この分散又は乳化の間及び/又は後に添加する。屡々、撹拌下に混合を実施する場合が有利であり、この際に、通常は高い剪断力が有利である。この方法工程は、バッチ法で、連続的に例えば静力学的ミキサー上で、又は半連続的に、室温でも高められた温度でも行うことができる。従って第2工程用のベースとしての組成物を準備するために、本発明による使用物質を、本発明の方法の第1工程で撹拌し、分散させ、かつ乳化させることができる。
【0083】
もう一つの好ましい実施形では、有機珪素化合物を、差し当たり非イオン性、カチオン性及び/又はアニオン性の乳化剤の使用下に分散させ、この際に得られる分散液を、引き続き水溶性の有機ポリマーと混合させる。
【0084】
この分散の前、間及び/又は後に、更なる添加物を添加することができ、この際には、水相に、pH−緩衝液、例えば炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムをも添加する場合が有用でありうる。更なる好適な添加物は、例えば消泡剤及び/又は湿潤剤、低分子量のポリアルキレングリコール、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体である。
【0085】
有機珪素化合物がいくらか高い粘度を有し、室温での正確な配量が困難である場合には、配量及び分散を簡単にするために、これを加温することもできる。選択的に、粘度を調節するために、有機珪素化合物に差し当たり希釈剤を添加することもでき、この際には、この希釈剤を、引き続き例えば蒸留によって再び除去する場合が屡々有利である。希釈剤としては、除去する必要のない低粘度の有機珪素化合物を使用することもできる。
【0086】
得られる分散液を、通例は、引き続き常法で乾燥させ、この際に、この乾燥の間及び/又は後に他の添加物を加えることができ、この際に好ましくは、スプレー乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥、造粒又は急速乾燥を用いてこの乾燥を行い、かつこの際には、スプレー乾燥が特別有利であり、このスプレーを、例えばスプレー車、単一又は多物質−ノズルを用いて行うことができる。この乾燥の間及び/又は後に、粘着防止剤及び/又は充填剤、例えば珪酸アルミニウム、コロイド二酸化珪素ゲル、高熱分解法で得られた二酸化珪素、粉砕粘土、パーライト、バーミキュライト、透石膏、タルク、セメント、チョーク粉末、カルシウム/マグネシュウム−混合炭酸塩及び/又は珪藻土を添加する場合が屡々有効である。
【0087】
必要な場合には、乾燥のために好適な粘度を得るために、水性分散液を更に水で希釈することができる。乾燥温度には、原則的に実質的な限界が定められていない。しかしながら、殊に安全性の考慮から、通常は約200℃、殊に約180℃を越えてはならない。充分に効果的な乾燥を得るためには、約110℃以上、殊に約120℃以上の温度が有利である。乾燥時に形成されるガス流の排出温度は、通常は約40℃〜100℃、殊に約50℃〜90℃である。
【0088】
更に本発明の方法は、更なる添加物の添加をも内容とすることができ、この際には、当該添加物を、種類及び/又は処理技術的可能性に応じて、例えば先ず有機成分及び/又は水溶性有機ポリマー保護コロイドと混合させ、得られる水性分散液に加え及び/又は粉末として、乾燥の間及び/又は後に、得られる粉末に混入する。しかしながら液状の添加剤を乾燥の間又は後に粉末上に吹き付けることもできる。液状及び/又は水溶性の添加剤を、分散の前、間又は後に加え、粉末状の添加剤を好ましくは乾燥の間又は後に、得られた粉末と混合させるのが有利である。
【0089】
他の分散液を同様に乾燥させるべき場合には、乾燥すべき分散液を、その乾燥の前に相互に混合し、かつ一緒にスプレーし、かつ乾燥させ、同時に2成分−又は多成分ノズルを通して別々にスプレーし、かつ引き続き同時に相互に乾燥させるか、又は双方の分散液を別々にスプレーし、かつ得られる粉末を引き続き相互に混合させることが可能である。
【0090】
本発明による混合物は、殊に少なくとも1種の無機結合剤、殊に水硬性結合剤を含有している配合物(Masse)中で又は上で使用される。更に、本発明による混合物は、金属、建築材料、建築用ブロック、建築部材及び/又は建造物を腐食から保護するために使用され、この際、当該金属は、通例、無機建築材用で包囲されている。更に、本発明による混合物は、このような配合物の疎水性化のためにも、更に石材固化のためにも好適である。
【0091】
少なくとも1種の無機結合剤を含有している配合物は好ましくは次のものである:コンクリート、殊に鉄筋コンクリート、膨張コンクリート(Blaehbeton)、ガスコンクリート、繊維コンクリート、鉄筋繊維コンクリート、気泡コンクリート、吹き付けコンクリート、水中コンクリート、ローラ塗りコンクリート(Walzbeton)、遠心成形コンクリート(Schleuder-beton)、真空コンクリート、自己凝固性コンクリート(SCC)、床用コンクリート、スプリットコンクリート(Splittbeton)、ドレインコンクリート、フォームコンクリート、コンクリート、高堅牢及び超高堅牢コンクリート及び/又はガラスフォームコンクリート製の完成建築部材、れんが、テラコッタ、漆喰、例えば石膏−及び/又は石灰−及び/又はセメント−漆喰、モルタル、殊に乾燥モルタル、例えば補修−及び断熱用モルタル、継目−及びタイル接着剤、プリウッド−モルタル(Plywood-Moertel)、接着架橋用モルタル、セメント状寄せ木細工接着剤、セメント下塗り、平坦化(Nivellier)−及び/又はこて塗り(Spachtel)配合物、シーリング泥(Dichtungschlaemmen)、粉末塗料並びにコンクリート塗料、例えば鋼被覆用の又はコンクリート修復時の鉄筋コンクリートの補修用のスラリー。
【0092】
本発明による混合物は、腐食から基材を保護するために任意の基材上に塗布することができる。このような基材の非限定的な例は、無機建築材料、建築用ブロック、建築部材及び/又は建造物であり、殊にそれらが金属と接触し、金属を包囲する又は埋包する場合の無機建築材料、例えばコンクリート、石灰砂岩、花崗岩、石灰、石膏、大理石、パーライト、クリンカー、多孔質タイル及びカッヘル、天然石、たたき床、粘土製品、更に人造石、石積み壁、ファッサード、屋根並びに建造物、例えば橋、港湾設備、住宅、工業用建築物及び公共用建物、例えば駐車場、駅又は学校及び完成部材、例えばまくら木及び/又はL−石である。
【0093】
同様に、本発明による混合物は、石材硬化用の処理剤(Mittel)として又は調合物中で、かつ疎水性化用及び水による損傷から保護するための処理剤として又は調合物中で使用することができる。
【0094】
本発明による混合物は、更にケーブルの被覆のため、殊にケーブルの絶縁のため及び/又はケーブル表面の疎水性化のために使用することもできる。
【0095】
本発明の目的物は、同様に、本発明による混合物を含有している調合物又は処理剤、殊に少なくとも1種の本発明による混合物又は少なくとも1種の本発明による混合物と水を含有している又はそれらをベースとしているものである。この場合に、この混合物は、通常、調合物又は処理剤の乾燥物含分に対して、0.01〜25質量%、殊に約0.1〜10質量%、好ましくは約0.2〜5質量%の濃度で使用され、この際に、存在しうる標準処方を守ることに注意すべきである。
【0096】
本発明による調合物又は処理剤は、例えば−排他的ではないが−次のものである:補修用モルタル、セメントベースのシーラント、継目接合物質、コンクリート、殊に鉄筋コンクリート、膨張コンクリート、ガスコンクリート、繊維コンクリート、鉄筋繊維コンクリート、気泡コンクリート、吹き付けコンクリート、水中コンクリート、ローラ塗りコンクリート、遠心成形コンクリート、真空コンクリート、自己凝固性コンクリート(SCC)、たたき床コンクリート、スプリットコンクリート、ドレインコンクリート、高堅牢及び超堅牢コンクリート、ガラスフォームコンクリート、テラコッタ、石膏−及び/又は石灰−及び/又はセメント−漆喰、補修用−及び/又は断熱用モルタル、継目−及びタイル接着剤、平坦化−及びこて塗り配合物、シーリング泥、粉末染料並びにコンクリート塗料、並びに混合物を含有する水性分散液又は水溶液。
【0097】
従って、有利に本発明による方法で得られる基材、即ち、本発明による調合物、本発明による処理剤又は本発明による混合物をベースとしている建築材料、建築用ブロック、建築部材又は建造物も目的物である。
【0098】
本発明による基材をベースとしている品物も本発明の目的物に数えられる。それらの例は、本発明によるコンクリート完成部材からの品物、例えばプレハブ住宅、トンネル、橋、道路、住宅ファッサード及び容器である。
【0099】
更に、本発明の方法で得られる混合物も本発明のもう一つの目的物である。
【0100】
本発明による混合物は、それが粉末形である場合には、意外にも特別良好な取り扱い可能性、良好な流動性での貯蔵安定性において優れており、従ってこれを、液状、ペースト状又は粉末形成性でありうる他の処方物に良好に配量させることができる。
【0101】
更に、本発明により使用される混合物及び本発明による混合物は、意外にも、水中での優れた分散性、再分散性又は溶解性及び非常に良好な湿潤可能性を示すので、これは、非常に良好に配合物中に撹拌導入することができる。この混合物が粉末形である場合には、これは理論的には、水との接触時に既に数秒以内に(必要な場合には軽い撹拌により)、分散、再分散又は溶解することができる。特定の場合には、いくらか強い剪断力が必要となることもありうる。いずれにせよ、通常、乾燥モルタルの普通に行われる撹拌プロセスの際に現れる剪断力が、本発明による粉末を完全に分散又は再分散させるために充分であるので、乾燥の前に水性分散液の粒子寸法並びにこの配合物中の均質な分布が達成される。
【0102】
本発明による混合物において、通常液状の有機珪素化合物は、この有機珪素化合物が乾燥工程の間にも後にも遮蔽されているままであるように水溶性有機ポリマーによって包囲されているにもかかわらず、意外にもこれが、無機結合剤及び水と一緒の使用の際に、その作用効果を完全に発揮することができることを発見した。更に、この水溶性の有機ポリマーは、建築材料の製造の間にも後にも作用し、かつ新製コンクリート/新製モルタルの他の特性に対しても、硬化された系に対しても通常は有害に作用しない。むしろ逆に、非常に良好な加工可能性、湿潤化性、良好な分散−及び/又は再分散可能性に有利に作用する。更に、水中に可溶なこのポリマーは結合剤としても作用できるので、これによって、凝固された建築材料の物理的強度が高められる。
【0103】
従って、本発明による混合物は、有利に、特別一様な分布によっても優れており、建築物体中での特別な腐食抑制作用及びこの建築材料の良好なアルカリ安定性を抜きんでて示している。加えて、有害なクロリドイオン並びに水中に溶けている他の有害物質、例えばエトリンゲン石形成をもたらすことのある硫酸塩はこの建築材料から遠ざけられる。従ってこの混合物は、種々の建築物体の製造のため及び建造物又は建築部材の補修及び修復のために特別好適であり、この際、無機硬化性の配合物中のこのような混合物の使用の場合には、市場で慣用の処理剤に比べてなお明らかに改良された腐食保護が、建築材料で取り囲まれている鋼−又は金属補強物でも、建築用ブロック又は構造物でも得られる。
【0104】
更に、疎本発明による混合物の使用によって、水性化作用をするシラン製品の使用の際の慣用の疎水性化効果を上回って、殊にその腐食特性を、このように補強された建築用ブロック、建築部材又は構造物及び相応する鉄−又は金属補強物が、−市場で慣用の腐食抑制手段に比べても−なお明らかに改良できたことは、特別意想外のことである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】腐食試験の実施のための試験体
【図2a】試験体P1及びP2の10mm被覆を有するセンサーでの腐食電流測定曲線
【図2b】試験体P1及びP2の10mm被覆を有するセンサーでの腐食電流測定曲線
【0106】
本発明を次の実施例につき詳述するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0107】
実施例
例1
粉末1の製造
Protectosil(R)226 100gを、鹸化度88モル%及び4%溶液としてのヘプラー粘度4mPasを有するポリビニルアルコールの24質量%水溶液329.2g中で、プロペラ攪拌機を用い、1000Upmで15分間乳化させ、引き続き、水で固体含有率25質量%まで希釈した。この混合物を、2成分ノズルを有する実験室用スプレー塔で、120℃の進入温度での圧縮空気を用いてスプレーし、乾燥させた。粘結防止剤(Antibackmittel)として、高熱分解珪酸0.6質量%及び市販の炭酸塩9.4質量%(完成粉末に対して)を加えた。良好な収率で、水中に良好に再分散可能な自由流動性の白色粉末が得られ、これ自体は、指の間で擦する場合にベトつかず、従って使用されたプロピルアルコキシシロキサン混合物を、良好に埋包された形で含有している。
【0108】
例2
粉末2の製造
例1を繰り返したが、ここでは、製造された混合物を水で希釈しなかった。固体含有率は37.9質量%であり、スピンドル3を用い、20Upm及び25℃で測定されたブルックフィールド粘度は1590mPasであった。スプレーディスク(Zerstauber-scheibe)を用いて、150℃のオリフィス温度でスプレー乾燥を行った。良好な収率で、良好に湿潤可能で良好に再分散可能な、自由流動性の白色粉末が得られ、これは、水と一緒に撹拌する場合に、短時間以内に崩壊して一次粒子になった。
【0109】
例3
粉末3の製造
Protectosil(R)266からの50質量%水性の乳化剤安定化されたエマルジヨン200.0gを、鹸化度88モル%及び4%溶液としてのヘプラー粘度4mPasを有するポリビニルアルコールの24質量%水溶液329.2gと例2と同様に混合し、希釈し、乾燥させ、かつ粘結防止剤と混合させた。良好に湿潤化可能で、かつ良好に再分散可能な、自由流動性の白色粉末が得られ、これは指の間で擦する場合にベトつかず、従って使用されたシロキサンを、良好に埋包された形で含有している。
【0110】
例4
粉末4の製造
イソブチルトリエトキシシランをベースとしている液状シラン40gを、鹸化度88モル%及び4%溶液としてのへプラー粘度4mPasを有するポリビニルアルコールの24質量%水溶液595.7g中で、プロペラ攪拌機を用い、1000Upmで、15分間乳化させ、引き続き水で固体含有率25質量%まで希釈した。この混合物を、2成分ノズルを有する実験用スプレー塔で、圧縮空気を用い、120℃のオリフィス温度でスプレーし、乾燥させた。粘結防止剤として、完成粉末に対して高熱分解珪酸0.6質量%及び市販の炭酸塩9.4質量%を加えた。良好な収率で、良好に湿潤化可能で良好に再分散化可能な、自由流動性の白色粉末が得られ、これは指の間で擦する場合にもベトつかず、従って使用されたシラン調合物を良好に埋包された形で含有している。
【0111】
例5
EP0228657による粉末5〜10の製造
EP0228657に記載されている実施例と同様にして、相応するポリシロキサン又はシラン(第1表参照)を、ポリビニルアルコール水溶液(鹸化度88モル%及び4%溶液としてのへプラー粘度4mPasを有するポリビニルアルコールの24.3質量%水溶液)中で分散又は乳化させ、水で、非水性分40質量%になるまで希釈した。このスプレーバッチの安定性を、2時間及び12時間後に評価した。安定性判定基準として、第3表中に、生じた上澄み(Ueberstand)が、cmで記載されている。予備撹拌の後に、このスプレーバッチを、実験室用スプレー乾燥機(入口温度135℃、出口温度76℃)中で、2成分ノズル(空気圧3.5バール)を用いてスプレーさせ、乾燥させた。
【0112】
【表2】

【0113】
a)メチルシロキサンの代わりに、相応するプロピルシロキサンを使用した。
【0114】
b)粉末5〜7の悪い収率に基づき、これら混合物はスプレーされなかった。
【0115】
スプレーバッチは、20%ポリビニルアルコールを用いる例5aまでは安定でなかったので、スプレー乾燥の前に撹拌した。悪いスプレー可能性に基づき、例5a〜5cだけが乾燥された。
【0116】
収率は、減少性PVOH−含有率に伴ない劇的に低下し、スプレー塔中にベタつく壁付着物が増加した。粉末も、指の間で摩擦する場合にベタついており、このことは、ポリシロキサンが適切に埋包されていないことを示している。
【0117】
EP0228657の教示に従って製造されたスプレーバッチ及び粉末は、スプレーバッチ安定性、スプレー可能性に関するそれらの特性が、低い有利性であることを明らかに示している。更に、それらは非常に劣悪な湿潤化可能性及び著しく遅延された再分散性を示しており、このことは建築材料配合物中での使用性を明らかに困難にしている。従って、この組成物をベースとしている粉末は、コストのかかる方法で製造しなければならない。しかしながら、この製造法及び場合による付加的に添加される添加剤を、得られる粉末が貯蔵可能性、湿潤化可能性及び再分散可能性に関する必要条件を満足するように選択する場合には、このような組成物も、本発明による用途のために使用することができる。
【0118】
例6
使用技術的検査−セメント/砂−モルタルの吸水係数の測定
液状出発物質に比べた、粉末の腐食抑制作用並びに場合による疎水性化作用の評価のために、24時間後の水吸収係数をDIN52617に従って測定した。ポートランドセメントCEM I 42.5N 25質量%及びDIN EN 196−1による規格砂75質量%から成っているモルタル基礎混合物に、それぞれ第2表中に記載の作用物質を加え、乾燥処方物に対して12%の水と一緒に、60mmプロペラ攪拌機を用いて、950Upmの速度で60秒間撹拌した。3分の熟成時間の後に、このモルタルを再び手で短時間撹拌し、次いで、直径8cm及び高さ2cmを有するプラスチックリング型中に充填し、表面を鏝で型の高さまで取り除いた。試験体を23℃及び50%相対湿度で14日間貯蔵し、この際、これをこの1日後に取り出した。試験体の質量測定の後に、これを水中で24時間貯蔵し、引き続き表面に付着している水の除去乾燥の後に、再び質量測定を行った。質量差、試験体の表面及び水中貯蔵の時間から、DIN 52617に従って、水吸収係数ω24を計算した。この実験を、液状シラン含有作用物質を用いて、本発明により使用される粉末を用いると同様に実施した。硬化特性の顕著な変化は観察されなかった。
【0119】
第2表
24時間水浸の後のセメント/砂−モルタル中のPVOHなしに液状で使用された作用物質と比較した、粉末3及び1の水吸収係数ω24 。この水吸収係数を、DIN 52617に従って測定し、[kg/m2*0.5]で記載した。シラン−又はシロキサン量に対する作用物質量が、使用モルタル混合物の乾燥分に対してそれぞれ1.8質量%になるように、配分量を調節した。
【0120】
【表3】

【0121】
粉末2を用いて、水吸収係数を前記と同様に測定したが、ここでは、ポートランドセメントCEM I 42.5 34質量%、ケイ砂(0.1〜0.5mm)59.8質量%、水酸化カルシウム3質量%、セルロースエーテルTylose MH 10007 P4 0.2質量%及びエチレン−酢酸ビニル−コポリマーをベースとする再分散粉末3質量%から成っているモルタル基礎混合物を有するモルタルを使用し、これを水22質量%と共に撹拌した。
【0122】
第3表
24時間水浸の後のモルタル中の粉末2の水吸収係数ω24(テキスト参照)。この水吸収係数は、DIN 52617に従って測定され、[kg/m2*0.5]で記載されている。
【0123】
【表4】

【0124】
第2表からの結果は、スプレーのために使用されたポリビニルアルコールが、硬化されたモルタルの水吸収性にも、従って水吸収係数にも実質的に影響しないことを明らかに示している。更に第3表からの値は、本発明による粉末の最少量が既に水吸収性を明らかに減少させる作用をすることを示している。これによって、クロリド−含有水中のクロリド浸透も減少され、このことは、起こりうる鋼腐食を付加的に不可能とするか又は少なくとも明らかに遅延させる。
【0125】
例7
実験室試験を用いる粉末の腐食抑制作用の測定
この検査の目的は、実験室検査における抑制作用の定量測定であった。この場合には、標準法(例えばASTMによる試験)の使用を示していない。それというのも、特に珪素化合物をベースとする粉末の特有の性質は明らかにならないか又は僅かにのみ明らかになるだけであるからである。従って、実験室で、乾燥−及び湿潤サイクルを用いる周期的露候の影響を検査した。この状況下で、コンクリートの乾燥効果(これは腐食に影響する)を経過させることができる。側面長さ15cmを有する予製コンクリート立方体(これはそれぞれ、腐食速度及び腐食状態の観察のためのセンサー3個を備えている)の使用は、腐食状態の連続的検査を可能とする。使用されたコンクリート処方及び製造条件が第2〜3表中にまとめられている。この腐食試験の実施のための試験体が、図1中に記載されている。
【0126】
【表5】

【0127】
センサーとして、直径8mm及び長さ45mmを有する補強棒(Bewehrungsstabe)3本を取り付けた。これらのコンクリート被覆は10mm、28mm及び46mmであった。腐食電流の測定のために、これらのセンサーにそれぞれ1個のカソードを結合した(図1中には、1本だけのカソードが図示されている)。
【0128】
35℃での5日及び電解液中浸漬2日の湿潤/乾燥−サイクルによって、1年間の負荷の経過で現れるような露候をシュミレートした。この実験の範囲で実施される湿潤/乾燥−サイクルは、建造物で通例は1年に1〜2回現れる。従って、この実験条件下で、クロリドの浸入を著しく促進した形でシュミレートすることができる(ここでは、2週間が約1年に相当)。例1からの粉末1を用いて、2種の異なる試験体を製造した。試験体P1及びP2を、第4表に記載のコンクリート組成物の使用下に、セメント含分に対して、2%(P1)或いは4%(P2)の粉末含有率で製造した。使用粉末量は、有機珪素化合物に対して1質量%或いは2質量%の作用物質の含有率に相当する。これら試験体を4日後に取り出し、引き続き、室温及び100%の相対湿度で、7.5週間貯蔵した。引き続き、この試料のサイクル処理を開始し、この際に、試料を、それぞれ1MNaCl−水溶液中に浸漬させた。
【0129】
図2a及び2b中には、この試験体の腐食電流経過が、試験体P1(粉末1 2質量%を有する)及びP2(粉末1 4質量%を有する)の10mm被覆を有するセンサーで示されている。試験体P2は、腐食を示していない。これに反して、参照試験体P1では、最下部の補強棒位置(10mm)上で腐食の活性化が観察された。試験体P1は、時間の経過で、腐食速度の一定の減少(これは、一定の抑制作用に帰因しているといえる)を示している。しかしながら、本発明におけるデータに基づき、2質量%の粉末濃度は、有効な腐食保護作用を得るためには低すぎると評価されるはずである。これに反して、セメント含分に対して約2質量%の珪素化合物(粉末1 4質量%を有する)の活性作用物質濃度は、明らかに腐食抑制作用を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
(i)水中に可溶な有機ポリマー少なくとも1種及び
(ii)有機珪素化合物少なくとも1種
をベースとしている(この際、有機珪素化合物を、有機官能性のシラン、ポリシラン、シランエステル、シロキサン、シリコーン類及び/又は珪酸エステルの群から選択している)、水中に分散可能な、再分散可能な又は可溶な混合物少なくとも1種を、腐食に対して基材を保護するために用いる使用。
【請求項2】
有機珪素化合物を、有機官能性シラン、オリゴマー珪酸エステルを包含する有機官能性シロキサン、ポリシラン及びシリコーン類の群から選択している、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
基材は、金属並びに天然の及び/又は製造された無機建築材料であり、この際、金属は、好ましくは無機建築材料で包囲されており、これら建築材料は、好ましくは建築用ブロック、建築部材、モルタル及び/又はコンクリートである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
混合物又は組成物もしくは調合物を、無機建築材料の製造の間に添加するか又は接触させる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
(iii)水中に可溶な有機ポリマー少なくとも1種及び
(iv) 少なくとも1個のSi−O−Si結合及び/又は少なくも1個の
Si−Si結合を有している有機珪素化合物少なくとも1種
をベースとしている、水中に分散可能な、再分散可能な又は可溶な混合物であって、この際、有機ポリマー(iii)の含有率は約40〜約80質量%であり、かつ有機ポリマー(iii)と有機珪素化合物(iv)の合計に対しており、ここで、少なくとも1個のSi−O−Si結合を有する有機珪素化合物は、アルキルアルコキシシロキサンのオリゴマー混合物をベースとしており、このオリゴマー混合物は、アルキルアルコキシシロキサン50〜100質量%を含有しており、かつ、これは実質的に2〜20のオリゴ重合度を有しており、少なくとも1個のSi−Si結合を有する有機珪素化合物はポリシランである、水中に分散可能な、再分散可能な又は可溶な混合物。
【請求項6】
オリゴマー混合物は、分子式I:
(R")Si(OR"’) (I)
[式中、基R"は同じ又は異なるものであり、R"はC−原子数1〜18を有する線状、分枝状又は環状のアルキル基、特にメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、オクチル、ヘキサデシルを表し、基R"’は同じ又は異なるものであり、R"’は水素又はC−原子数1〜4を有する線状又は分枝状のアルキル基、特にメチル、エチル、プロピルを表し、
(2y+x)=3であることを条件として、1.0<x<2.0 及び0.5<y≦1.0である]のアルキルアルコキシシロキサンに対応している、請求項5に記載の混合物。
【請求項7】
混合物の製造のために使用されるアルキルアルコキシシロキサンのオリゴマー混合物は、オリゴ重合度2〜10、殊に3〜6を有するアルキルアルコキシシロキサン約70〜100質量%、殊に80〜99質量%を有している、請求項5又は6に記載の混合物。
【請求項8】
水中に可溶な有機ポリマーは、殊に加水分解度70〜100モル%及び4%水溶液としてのヘッペル粘度1〜50mPas(DIN 53015に従い、20℃で測定)を有する、変性及び/又は非変性のポリビニルアルコールの形の合成されたポリマー及び/又はポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアルキレンオキシド及び/又はポリマレイネートである、請求項5から7までのいずれか1項に記載の混合物及び請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
水中に可溶な有機ポリマーは、場合により合成により製造される、天然の及び/又は合成されたバイオポリマー及び殊に澱粉、澱粉エーテル、デキストリン、セルロースエーテル、カゼイン及び/又は大豆−蛋白質である、請求項5から8までのいずれか1項に記載の混合物及び請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
水中に分散可能な又は再分散可能な混合物は、水中に分散又は再分散する場合に、約0.1〜約50μm、殊に約0.2〜約30μmの平均粒径を有している、請求項5から9までのいずれか1項に記載の混合物及び請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
水中に分散可能な又は再分散可能な又は可溶な混合物は、約20〜約500μm、殊に約50〜約250μmの平均粒径を有している、請求項5から10までのいずれか1項に記載の混合物及び請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
混合物は、なお他の添加物、殊に疎水性化剤、例えば脂肪酸並びにそれらの塩及びエステル、脂肪アルコール、シラン、気孔形成剤、湿潤剤、消泡剤、乳化剤、膜形成助剤、硬化−及び固化促進剤、硬化遅延剤、粘稠化剤、分散剤、レオロジー調節添加剤、例えばセメント液化剤、ポリカルボキシレート、ポリカルボキシレートエーテル、ポリアクリルアミド並びに増粘剤、腐食抑制剤、例えば安息香酸アルキルアンモニウム、アミノアルコール、グルコン酸及び/又はこれらのアルカリ金属−及びアルカリ土類金属塩、保水剤、セルロール繊維並びにセルロースエーテル、澱粉エーテル、グアーエーテル、曇り、沈降及び/又は浮き色を減少するための添加剤、充填剤及び粉末集塊を減少するための添加剤、並びに膜形成性で水不溶性の分散粉末及び膜形成性のポリマー分散液を含有している、請求項5から11までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項13】
− 第1工程で、有機珪素化合物の全量に対して少なくとも10質量%の、水中に溶かされた(iii)による有機ポリマー少なくとも1種を、(iv)による有機珪素化合物少なくとも1種と混合させ、場合による残りの量の有機ポリマーを、分散の間及び/又は後に加え、場合による他の添加物を、分散の前、間及び/又は後に添加し、かつ
− 第2工程で、第1工程で得られた分散液を乾燥させる(この際、この乾燥の間及び/又は後に、更なる添加物を加えることができる)、
請求項5から12までのいずれか1項に記載の混合物を製造する方法。
【請求項14】
乾燥のための第2工程で、スプレー乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥、造粒又は急速乾燥を実施する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項5から12までのいずれか1項に記載の又は請求項13又は14に記載の方法で製造された混合物を、無機結合剤少なくとも1種、殊に水硬性結合剤を含有する配合物中及び/又はその上で使用する、請求項5から12までのいずれか1項に記載の又は請求項13又は14に記載の方法で製造された混合物の使用。
【請求項16】
少なくとも1種の無機結合剤を含有している配合物を、コンクリート、殊に鉄筋コンクリート、膨張コンクリート、ガスコンクリート、繊維コンクリート、気泡コンクリート、鉄筋繊維コンクリート、吹き付けコンクリート、水中コンクリート、ローラ塗りコンクリート、遠心成形コンクリート、真空コンクリート、自己凝固性コンクリート(SCC)、床用コンクリート、スプリットコンクリート、ドレインコンクリート、高堅牢及び超高堅牢コンクリート、ガラスフォームコンクリート、テラコッタ、石膏−及び/又は石灰−及び/又はセメント−漆喰、補修用モルタル、断熱用モルタル、継目接着剤、タイル接着剤、平坦化配合物、こて塗り配合物、シーリング泥、粉末塗料並びにコンクリート塗料の系列から選択する、請求項5から12までのいずれか1項に記載の又は請求項13又は14に記載の方法で又は請求項15に記載の方法で製造された混合物の使用。
【請求項17】
請求項5から12までのいずれか1項に記載の又は請求項13又は14に記載の方法で製造された混合物を、腐食から無機建築材料によって包囲されている金属を保護するために用いる使用。
【請求項18】
建築用ブロック、建築部材、建造物を腐食から保護するために使用する、請求項5から12までのいずれか1項に記載の又は請求項13又は14に記載の方法で製造された混合物の使用。
【請求項19】
混合物を石材硬化のための処理剤として又は調合物中で使用する、請求項5から12までのいずれか1項に記載の又は請求項13又は14に記載の方法で製造された混合物の使用。
【請求項20】
ケーブルの被覆、殊にケーブルの絶縁及び/又はケーブル表面の疎水性化のために使用する、請求項5から12までのいずれか1項に記載の又は請求項13又は14に記載の方法で製造された混合物の使用。
【請求項21】
水及び請求項5から12までのいずれか1項に記載の又は請求項13又は14に記載の方法で製造された混合物少なくとも1種をベースとしている、調合物。
【請求項22】
請求項5から12までのいずれか1項に記載の又は請求項13又は14に記載の方法で製造された混合物少なくとも1種を含有している調合物又は処理剤において、混合物は、その都度の乾燥物含分に対して約0.1〜約10質量%の濃度で、調合物中又は処理剤中に含有されている、請求項15から20までのいずれか1項に記載の使用のための調合物又は処理剤。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の調合物又は処理剤又は請求項5から12までのいずれか1項に記載の又は請求項13又は14に記載の方法で製造された混合物少なくとも1種をベースとしている、基材又は品物。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2010−525157(P2010−525157A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503435(P2010−503435)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052755
【国際公開番号】WO2008/128819
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】