説明

有機発光ダイオード、並びにその使用

本発明は、改善された寿命及び負電荷キャリアの改善された輸送を示す有機発光ダイオード(OLED)に関する。前記有機発光ダイオードは、負電荷キャリアの輸送及び還元に関する安定性がトリアリール化されたルイス酸単位、特にペルアリール化されたボラン単位により決定される有機半導体材料をベースとする。これにより、発光層の改善された寿命が生じ、これは一方でデバイスの寿命を延長し、運転の間の明度の後調節を抑制する。さらに、本発明は、トリアリール化されたルイス酸、例えばペルアリール化されたボラン単位により発光層中の発光区域の状態及び発光色に適切に影響を及ぼすことができる有機発光ダイオードに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された寿命及び負電荷キャリアの改善された輸送を示す有機発光ダイオード(OLED)に関する。
【0002】
例えばポリアリーレンビニレン又はポリパラフェニレン(特にポリフルオレン及び/又はポリスピロフルオレン)からなる基本骨核を有する半導体材料をベースとし、前記成分に対して付加的に他の発色団及び/又はトリアリールアミン誘導体の成分も重合により組み込まれているか又はブレンドの形で導入されているOLEDは公知である。前記発色団は、原則として、生じるエレクトロルミネッセンススペクトルにおいて著しく長波長の、つまり主に緑又は赤の発光帯を生じさせる。このトリアリールアミン単位は、一般に、有機発光ダイオードの前記発光スペクトルに関してわずかな影響を及ぼし、かつ特に共役ポリマー鎖を介する正電荷の輸送のため及び/又は有機半導体材料の酸化安定性のために用いられる。
【0003】
OLEDの活性層のための上記の有機半導体材料を用いて、現在では、可能なCIE色度座標の大きな領域をカバーすることができ、かつ比較的高い、商業的利用のために重要な輝度及び効率を達成することができる。しかしながら、今までは、前記ポリマーOLEDの運転寿命は、市場で受け入れられるためにはなお短すぎる。これは、短波長の、つまり青及び白に発光する発光ダイオードに及び/又はいわゆるパッシブマトリックスディスプレーのような表示装置に、特に該当する。
【0004】
ポリマーOLEDの運転寿命における根本的な問題は、半導体の有機材料の還元安定性である。このことは、従って、有機半導体材料において、電荷輸送が個々の酸化及び還元によって行われ、その際、電荷輸送に関与するサブユニットは、前記素子の運転寿命の間に一般に何十億回も酸化又は還元されなければならないために重要である。このようなプロセスの間の不可逆な化学的劣化により、電荷輸送特性の悪化及び同時に輝度の低下が生じる。
【0005】
従って、本発明の課題は、半導体有機材料の高いレドックス安定性を有する有機発光ダイオードを提供し、それにより前記有機発光ダイオードは延長された運転寿命を有することにある。
【0006】
本発明の主題は、少なくとも部分的にトリアリール置換されたルイス酸単位が重合によって組み込まれかつ/又はポリマー成分としてブレンドの形で混合されている活性層の有機半導体材料を有する有機発光ダイオード又は発光表示装置である。さらに、本発明の主題は、照明目的の、及び/又はカラーフィルタ又は構造化されたRGB画素の発光体層をベースとする、モノクロ、多色又はフルカラーの有機発光表示装置用の、並びにパッシブマトリックスディスプレー用の、前記有機発光ダイオードの使用である。
【0007】
有機発光ダイオードは、少なくとも1つの基板、透明な下側電極層、少なくとも1つの活性層及び上側の電極層を有する。有利に、前記有機発光ダイオードは不所望な環境の影響に対してカプセル化されている。
【0008】
「重合によって組み込まれかつ/又はポリマー成分としてブレンドの形で混合される」とは、この関連で、トリアリール置換されたルイス酸単位が、他の単位、例えばポリアリーレンビニレン又はポリパラフェニレン(特にポリフルオレン及び/又はポリスピロフルオレン)単位とのコポリマーの形で共重合されているか、又はトリアリール置換されたルイス酸単位がポリマーとして少なくとも1種の他のポリマーの有機半導体材料と混合される(ブレンドされる)ことによりブレンドとして存在すると解釈される。この両者の選択肢は一緒に同時に存在していてもよいため、一方で、複数のポリマー、特にトリアリール置換されたルイス酸単位を有するポリマーの材料からなるブレンドが存在し、他方ではトリアリール置換されたルイス酸を有する繰返単位を有するコポリマーが存在する。
【0009】
このトリアリール−ルイス酸単位は、負電荷キャリアの輸送を改善し、負電荷キャリアの輸送の際に必然的に生じる電気化学的還元に関するポリマーの安定性を高める。
【0010】
ルイス酸は、電子対受容体であり、つまり不完全な電子配置を有する分子又はイオンであり、これは電子対つまり負の電荷を受け取ることができる。トリアリール−ルイス酸単位は、特に、コポリマーの有機半導体材料の電子輸送する成分として使用するのに適している、それというのもこの成分は負電荷を受け取ることができるだけでなく、アリール基によって安定化されているためである。
【0011】
適当なルイス酸は、例えば中心原子としてホウ素又はアルミニウム原子を有するルイス酸であり、その際、挙げられるアルミニウム−ルイス酸は安定性の理由から付加的に芳香族系に対する錯体による逆供与が提供されなければならない。中心原子としてホウ素を有するトリアリール−ルイス酸が特に適している、それというのもボラナートアニオンは還元安定性であるためである。共役した炭化水素系の高活性ラジカルカルバニオンとは反対に、この場合に不可逆な二次反応は予想されない。このコンセプトは、例えばトリメシチルボランのサイクリックボルタンメトリー測定によって確認され、これはトリアリールボラン単位の完全に可逆反応を示す。
【0012】
安定な電子輸送単位としてのトリアリール−ルイス酸単位の使用は、正電荷用の安定な正孔輸送単位としてのトリアリールアミン誘導体の既に公知の使用と同様に、負電荷用に使用することができる。負又は正電荷キャリアはルイス酸中心原子又は窒素原子で安定化されるにもかかわらず、炭素骨核の共役を介して次の安定化するサブユニットへの電荷輸送が可能である。これはトリアリールアミン誘導体に対して以前から公知であり、かつ両方とも公開前の出願のDE 103 20 713.9及び10 2004 001 865. 0による負電荷用の輸送材料としての純粋なトリアリールボランポリマーを用いた最初の成果によって確認されている。
【0013】
トリアリール化されたルイス酸単位がボラン単位であるのが有利である。
【0014】
このアリール置換基は同じ又は異なることができる。アリール置換基とは、(ホモ)芳香族又はヘテロ芳香族化合物であると解釈される。一般に、3つのアリール置換基の少なくとも2つは、ポリマー主鎖の部分であるため、このポリマー主鎖は、有機半導体材料の少なくとも1つのポリマー構成単位の−Ar−B(Ar)−Arの構成単位を有する。
【0015】
一実施態様の場合に、OLEDの少なくとも1つの活性層の有機半導体材料は、アリーレンビニレン単位及び/又はp−フェニレン誘導体単位の繰返単位50%と、繰返単位1〜50%、有利にトリアリール置換されたルイス酸単位1〜30%、特に有利に1〜20%とを有する。この場合、パラフェニレン誘導体単位としてフルオレン誘導体単位及び/又はポリスピロフルオレン単位を使用する場合が特に有利である。
【0016】
他の実施態様の場合に、OLEDの少なくとも1つの活性層の有機半導体材料は、さらに、トリアリールアミン誘導体単位の繰返単位1〜49%、特にトリアリールアミン単位の繰返単位1〜30%、特に有利に1〜20%を有する。
【0017】
一実施態様の場合に、トリアリール化されたルイス酸単位は有機半導体材料中で青色発光を示すか又はこのルイス酸単位は発光スペクトルに顕著な影響を与えない(30nmより小さなシフト)。
【0018】
本発明の一実施態様の場合に、トリアリール化されたルイス酸単位は電子供与体置換されているため、発色団中心が生じかつ、発光の長波長へのシフトが行われる。
【0019】
本発明の特に有利な実施態様の場合には、トリアリールアミン単位及びトリアリールボラン単位が、少なくとも1つの活性層の有機半導体材料中で組み合わされているため、例えば所定のマルチプレックスレート、パルス周波数及び/又は輝度においてパッシブマトリックス制御用の所定のドライバー条件に関する効率及び運転寿命を最適化する。
【0020】
本発明の場合には、トリアリールボラン−電子輸送単位の使用により、全体の電流に関する負電荷キャリアの割合を最適化し、それにより有機発光ダイオード並びに前記層内の再結合区域の状態を最適化することができる。
【0021】
本発明の特に有利な実施態様の場合には、トリアリールルイス酸(例えばトリアリールボラン)単位は、半導体コポリマーのエレクトロルミネッセンスに本質的には影響を与えず、この付加的な電子輸送成分にもかかわらずポリアリーレンビニレン基本骨核又はポリパラフェニレン基本骨核の発光及び場合により存在する発色団成分の発光がこのスペクトルの優位を占める。これは、単純なトリアリール置換基、例えばフェニル又はメシチルの場合に期待される、それというのもこれらの孤立した単位自体のエレクトロルミネッセンスは青色領域にあるためである。
【0022】
他方で、ルイス酸中心原子のトリアリールリガンドが電子供与体置換されていてもよく、それによりこの単位を長波長にシフトした発光を示す発色団中心に変えることができる。この種の構造を有するOLEDは広帯域に変更された放射光で発光する。
【0023】
この有機発光ダイオード又は発光表示装置は、アクティブマトリックス制御又はパッシブマトリックス制御を備えたモノクロ、多色又はフルカラーの有機エレクトロルミネッセンス表示装置用に使用することができる。
【0024】
有利な実施態様の場合には、白色発光体とカラーフィルタとをベースとするか又は構造化されたRGB画素の発光体層をベースとするフルカラー有機エレクトロルミネッセンス表示装置のために使用することができる。
【0025】
最後に、前記OLEDは本発明の場合に、ルイス酸単位の含有量がパッシブマトリックスディスプレーにおけるパルスされたドライバー条件に合わされて使用することができる。
【0026】
本発明は、初めて、共役炭化水素ポリマーの不十分な還元安定性の問題を克服する、活性層の有機半導体材料中の電子輸送単位としてトリアリールルイス酸成分を有する有機発光ダイオードを提供する。ペルアリール化されたルイス酸単位によって、活性層の全体の有機半導体材料の長時間可逆的な還元性が達成され、それにより運転において発光ダイオードの延長された寿命が達成される。さらに、例えばトリアリールルイス酸単位としてのトリアリールボラン単位の割合の適切な変更により、効率の改善及び/又は有機半導体材料からなる活性層内部の発光区域の状態の制御が可能となる。
【0027】
本発明は、改善された寿命及び負電荷キャリアの改善された輸送を示す有機発光ダイオード(OLED)に関する。前記有機発光ダイオードは、負電荷キャリアの輸送及び還元に関する安定性がトリアリール化されたルイス酸単位、特にペルアリール化されたボラン単位により決定される有機半導体材料をベースとする。これにより、発光層の改善された寿命が生じ、これは一方でデバイスの寿命を延長し、運転の間の明度の後調節を抑制する。さらに、本発明は、トリアリール化されたルイス酸、例えばペルアリール化されたボラン単位により発光体層中の発光区域の状態及び発光色に適切に影響を及ぼすことができる有機発光ダイオードに関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にトリアリール置換されたルイス酸単位が重合によって組み込まれかつ/又はポリマー成分としてブレンドの形で混合されている活性層の有機半導体材料を有する有機発光ダイオード又は発光表示装置。
【請求項2】
ルイス酸単位がボラン単位である、請求項1記載の有機発光ダイオード。
【請求項3】
アリール置換基は同じ又は異なり、少なくとも1つの多核のアリール置換基が設けられている、請求項1又は2記載の有機発光ダイオード。
【請求項4】
有機半導体材料が、アリーレンビニレン単位及び/又はパラフェニレン誘導体単位の繰返単位を少なくとも50%、及びトリアリール置換されたルイス酸単位の繰返単位を1〜50%含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の有機発光ダイオード。
【請求項5】
パラフェニレン誘導体単位が少なくとも部分的にフルオレン誘導体単位及び/又はポリスピロフルオレンである、請求項1から4までのいずれか1項記載の有機発光ダイオード。
【請求項6】
有機半導体材料がトリアリールアミン誘導体単位の繰返単位1%〜49%を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の有機発光ダイオード。
【請求項7】
有機半導体材料中のトリアリール化されたルイス酸単位が青色発光を示す、請求項1から6までのいずれか1項記載の有機発光ダイオード。
【請求項8】
有機半導体材料中のトリアリール化されたルイス酸単位が、有機半導体材料の発光スペクトルに関して30nmより小さなシフトの幅で影響を及ぼす、請求項1から7までのいずれか1項記載の有機発光ダイオード。
【請求項9】
有機半導体材料中のトリアリール化されたルイス酸単位が、有機半導体材料の発光スペクトルにおいて付加的に長波長にシフトした発光帯を生じさせることにより、前記ルイス酸単位は完全に又は部分的に発色団として作用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の有機発光ダイオード。
【請求項10】
広帯域の白色光を製造するための、請求項1から9までのいずれか1項記載の有機発光ダイオードの使用。
【請求項11】
照明目的のための、請求項1から9までのいずれか1項記載の有機発光ダイオードの使用。
【請求項12】
アクティブマトリックス制御又はパッシブマトリックス制御を備えたモノクロ、多色又はフルカラーの有機エレクトロルミネッセンス表示装置のための、請求項1から9までのいずれか1項記載の有機発光ダイオードの使用。
【請求項13】
白色発光体とカラーフィルタとをベースとするか又は構造化されたRGB画素の発光体層をベースとするフルカラー有機エレクトロルミネッセンス表示装置のための、請求項12記載の使用。
【請求項14】
ルイス酸単位の含有量がパッシブマトリックスディスプレーにおけるパルスされたドライバー条件に合わされている、請求項1から9までのいずれか1項記載のOLEDの使用。

【公表番号】特表2007−531993(P2007−531993A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505547(P2007−505547)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051349
【国際公開番号】WO2005/096402
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Wernerwerkstrasse 2, D−93049 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】