説明

有機発光ダイオードの形成方法およびこの方法によって製造されるデバイス

第1、第2および第3のサブピクセル領域を有する発光ダイオードデバイスの新規形成方法が提供される。この方法では、正孔注入層がアノード層の上に適用される。正孔注入材料は、導電性ポリマーとフッ素化酸ポリマーとを有する。正孔輸送層が正孔注入層の上に適用される。緑色か赤色かのどちらかである第1のエレクトロルミネセンス材料が第1のサブピクセル領域に適用される。赤色か緑色かのどちらかである第2のエレクトロルミネセンス材料が第2のサブピクセル領域に適用される。青色エレクトロルミネセンス材料が全体に適用され、それにカソードの堆積が続く。第2のエレクトロルミネセンス材料は、第1のエレクトロルミネセンス材料の色とは異なる色を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件出願は、米国特許法第119条(e)項の下に、その記載内容全体が参照により援用される、2006年12月29日出願の米国仮特許出願第60/877,723号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、一般に有機発光ダイオードの形成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機電子デバイスは、ここ数年、ますます注目を集めている。有機電子デバイスの例としては、有機発光ダイオード(「OLED」)が挙げられる。フルカラーOLEDの製造における現在の研究は、費用対効果が大きく高生産性であるカラーピクセル製造方法の開発に向けられている。モノクロディスプレイの製造の場合、スピンコーティング法が広く採用されている。しかし、フルカラーディスプレイの製造では、モノクロディスプレイの製造に使用される方法に対してある変更を通常必要とする。たとえば、フルカラー画像で表示するために、各表示ピクセルは3つのサブピクセルに分解され、そのそれぞれが三原色、すなわち赤、緑、および青の1つを発光する。
【0004】
フルカラーOLEDの代表例を図1に示す。電子デバイス100は、アノード層110からエレクトロルミネセンス層140への正孔の注入を促進するための1つまたは複数の層120および130を含む。任意選択の電子輸送層150がエレクトロルミネセンス層140とカソード層160との間に配置される。図示されていない基体が、アノード110またはカソード160に隣接して存在することができる。この基体は多くの場合アノードに隣接して存在する。
【0005】
フルカラーOLEDにおいては、エレクトロルミネセンス層140は、赤色エレクトロルミネセンス材料を含む赤色サブピクセル領域141と、緑色エレクトロルミネセンス材料を含む緑色サブピクセル領域142と、青色エレクトロルミネセンス材料を含む青色サブピクセル領域143とに分割される。デバイスに電圧を印加すると、赤色サブピクセル領域141は赤色光を発し、緑色サブピクセル領域142は緑色光を発し、青色サブピクセル領域143は青色光を発する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3つのサブピクセルへのフルカラーピクセルのこの分割は、OLEDディスプレイの製造中に異なる有機ポリマー材料を単一基体上へ堆積するために現行プロセスを修正する必要性をもたらしてきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1、第2および第3のサブピクセル領域を有するマルチカラー有機発光ダイオードの形成方法であって、
アノード層の上に正孔注入層を適用するステップであって、前記正孔注入層が1つの導電性ポリマーとフッ素化酸ポリマーとを含むステップと、
前記正孔注入層の上に正孔輸送層を適用するステップであって、前記正孔輸送層が正孔輸送材料とフラーレンとを含むステップと、
第1のサブピクセル領域に第1のエレクトロルミネセンス材料を適用するステップと、
第2のサブピクセル領域に第2のエレクトロルミネセンス材料を適用するステップと、
青色エレクトロルミネセンス材料を全体に適用するステップと、
カソードを適用するステップと
を含み、
ここで、前記第1および第2のエレクトロルミネセンス材料が、緑色エレクトロルミネセンス材料および赤色エレクトロルミネセンス材料からなる群から選択され、
ただし、前記第2のエレクトロルミネセンス材料が、前記第1のエレクトロルミネセンス材料の色とは異なる色を発する方法が提供される。
【0008】
第1、第2、および第3のサブピクセル領域を有するマルチカラー有機発光ダイオードデバイスであって、
アノードと、
導電性ポリマーとフッ素化酸ポリマーとを含む正孔注入層と、
正孔輸送材料とフラーレンとを含む、正孔輸送層と、
前記第1のサブピクセル領域中の第1のエレクトロルミネセンス層と、
前記第2のサブピクセル領域中の第2のエレクトロルミネセンス層と、
全体の青色エレクトロルミネセンス層と、
カソードと
を含み、
ここで、前記第1および第2のエレクトロルミネセンスが異なるものであり、そしてそれぞれ、緑色エレクトロルミネセンス材料および赤色エレクトロルミネセンス材料からなる群から選択される材料を含むデバイスがまた提供される。
【0009】
以上の概要および以下の詳細な説明は、単に例示的および説明的なものであり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明を限定するものではない。
【0010】
本明細書において提示される概念の理解をすすめるために、添付の図面において実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】代表的なフルカラー有機発光ダイオードデバイスの図である。
【図2】本明細書に記載されるような、新規フルカラー有機発光ダイオードデバイスの図である。
【図3】接触角の図である。
【図4】実施例2についての経時輝度のグラフである。
【図5】実施例3についての経時輝度のグラフである。 当業者であれば理解しているように、図面中の物体は、平易かつ明快にするために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。たとえば、実施形態を理解しやすいようにするために、図面中の一部の物体の寸法が他の物体よりも誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
多数の態様および実施形態を以上に説明してきたが、これらは単に例示的で非限定的なものである。本明細書を読めば、本発明の範囲から逸脱しない他の態様および実施形態が実現可能であることが、当業者には分かるであろう。
【0013】
実施形態のいずれか1つまたは複数のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。この詳細な説明では最初に、用語の定義および説明を扱い、続いて、デバイス、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、その他の層、方法、および最後に実施例を扱う。
【0014】
1.用語の定義および説明
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義または説明を行う。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「導体」およびその変形は、電位が実質的に降下することなく層材料、部材、または構造に電流が流れるような電気的性質を有する層材料、部材、または構造を意味することを意図している。この用語は、半導体を含むことを意図している。一実施形態においては、導体は、少なくとも10-6S/cmの導電率を有する層を形成する。
【0016】
用語「導電性材料」は、カーボンブラックまたは導電性金属粒子を加えなくても、本来または本質的に導電性となることができる材料を意味する。
【0017】
用語「フラーレン」は、炭素原子の六角形および五角形基からなるかご状の中空分子を意味する。ある実施形態においては、少なくとも60個の炭素原子が分子中に存在する。
【0018】
層、材料、部材、または構造に関して言及される場合、用語「正孔注入」は、そのような層、材料、部材、または構造が、比較的効率的かつ少ない電荷損失で、そのような層、材料、部材、または構造の厚さを通過する正電荷の注入および移動を促進することを意味することを意図している。
【0019】
層、材料、部材、または構造に関して言及される場合、「正孔輸送」は、そのような層、材料、部材、または構造が、比較的効率的かつ少ない電荷損失で、そのような層、材料、部材、または構造の厚さを通過する正電荷の移動を促進することを意味することを意図している。発光層が、ある程度正孔輸送特性を有する場合があるが、本明細書において使用される場合、用語「正孔輸送層」は発光層を含まない。
【0020】
用語「フッ素化酸ポリマー」は、酸性基を有し、少なくとも一部の水素がフッ素で置き換えられているポリマーを意味する。用語「酸性基」は、イオン化することによって水素イオンをブレンステッド塩基に供与することができる基を意味する。
【0021】
用語「表面エネルギー」は、材料から単位面積の表面を形成するために必要なエネルギーである。表面エネルギーの特徴の1つは、ある表面エネルギーを有する液体材料が、それより低い表面エネルギーを有する表面をぬらさないということである。液体材料に関する表面エネルギーという用語は、表面張力と同じ意味を有することを意図している。
【0022】
用語「層」は、用語「フィルム」と交換可能に使用され、希望する領域を覆うコーティングを意味する。この用語は大きさによって限定されない。この領域は、デバイス全体の大きさであってもよいし、実際の視覚的表示などの特殊な機能の領域の小ささ、または1つのサブピクセルの小ささであってもよい。層およびフィルムは、気相堆積、液相堆積(連続的技術および不連続技術)、および熱転写などの従来のあらゆる堆積技術によって形成することができる。
【0023】
用語「エレクトロルミネセンス」は、印加電圧によって励起される場合に発光する材料(発光ダイオードまたは化学セル中など)、あるいは放射エネルギーに応答し、そして印加バイアス電圧を使用してまたは使用せずに信号を発生する材料(光検出器中など)を意味する。エレクトロルミネセンス材料がある色の光を発すると言われる場合、それは材料の発光極大に関する。用語「発光極大」は、発せられる放射線の最高強度を意味することを意図している。2つ以上のエレクトロルミネセンス材料が異なる色の光を発すると言われる場合、発光極大は、少なくとも50nmだけ異なるものである。
【0024】
用語「赤色光」は、約600〜700nmの範囲の波長で発光極大を有する放射線を意味することを意図している。用語「赤色発光層」は、約600〜700nmの範囲の波長で発光極大を有する放射線を発することができる層を意味することを意図している。
【0025】
用語「青色光」は、約400〜500nmの範囲の波長で発光極大を有する放射線を意味することを意図している。用語「青色発光層」は、約400〜500nmの範囲の波長で発光極大を有する放射線を発することができる層を意味することを意図している。
【0026】
用語「緑色光」は、約500〜600nmの範囲の波長で発光極大を有する放射線を意味することを意図している。用語「緑色発光層」は、約500〜600nmの範囲の波長で発光極大を有する放射線を発することができる層を意味することを意図している。
【0027】
用語「液体組成物」は、材料が溶解して溶液が形成する液体組成物、材料が分散して分散液を形成する液体媒体、あるいは材料が懸濁して懸濁液またはエマルジョンを形成する液体媒体を意味することを意図している。用語「液体媒体」は、純液体、液体の組み合わせ、溶液、分散液、懸濁液、およびエマルジョンなどの液体材料を意味することを意図している。液体媒体は、1つまたは複数の液体が存在するかどうかとは無関係に使用される。
【0028】
本明細書において使用される場合、用語「含んでなる」、「含んでなること」、「含む」、「含むこと」、「有する」、「有すること」、またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的な包含を扱うことを意図している。たとえば、ある一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素にのみに必ずしも限定されるわけではなく、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に関して明示されず固有のものでもない他の要素を含むことができる。さらに、反対の意味で明記されない限り、「または」は、包含的なまたはを意味するのであって、排他的なまたはを意味するのではない。たとえば、条件AまたはBが満たされるのは、Aが真であり(または存在し)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)Bが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)のいずれか1つによってである。
【0029】
また、本発明の要素および成分を説明するために「a」または「an」も使用されている。これは単に便宜的なものであり、本発明の一般的な意味を提供するために行われている。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものと読むべきであり、明らかに他の意味となる場合を除けば、単数形は複数形も含んでいる。
【0030】
元素周期表中の縦列に対応する族の番号は、CRC Handbook of Chemistry and Physics、81版(2000−2001)
に見ることができる「新表記法」(New Notation)の規則を使用している。
【0031】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を使用して、本発明の実施形態の実施または試験を行うことができるが、好適な方法および材料については以下に説明する。本明細書において言及されるあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、特に明記しない限り、それらの記載内容全体が援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明的なものであって、限定を意図したものではない。
【0032】
本明細書に記載されていない程度の、具体的な材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらについては、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0033】
2.有機発光ダイオードデバイス(「OLED」)
本明細書に記載されるような新規フルカラーOLEDの一実施形態の代表例を図2に示す。電子デバイス200は、アノード層210からエレクトロルミネセンス層240への正孔の注入を促進するための正孔注入層(「緩衝層」とも呼ばれる)220および正孔輸送層230を含む。任意選択の電子輸送層250が、エレクトロルミネセンス層240とカソード層260との間に配置される。図示されていない基体が、アノード210またはカソード260に隣接して存在することができる。基体は多くの場合アノードに隣接して存在する。
【0034】
エレクトロルミネセンス層240は、図1について上に説明されたように、緑色エレクトロルミネセンス材料を含む緑色サブピクセル領域242と、赤色エレクトロルミネセンス材料を含むサブピクセル領域243とを有する。しかしながら、青色エレクトロルミネセンス材料は、青色サブピクセル領域241のみならず、サブピクセル領域245の全体にも存在する。
【0035】
3.正孔注入層
正孔注入層は、導電性ポリマーとフッ素化酸ポリマーとを含む。
【0036】
c.導電性ポリマー
一実施形態においては、導電性材料は、少なくとも1つの導電性ポリマーを含む。用語「ポリマー」は、少なくとも3つの繰り返し単位を有する化合物を意味することを意図しており、ホモポリマーおよびコポリマーを含んでいる。ある実施形態においては、導電性ポリマーは、プロトン化された形態では導電性であり、プロトン化されていない形態では非導電性である。正孔注入層が所望の仕事関数を有する限り、あらゆる導電性ポリマーを使用することができる。
【0037】
一実施形態においては、導電性ポリマーは、少なくとも1つのフッ素化酸ポリマーでドープされている。用語「ドープした」は、導電性ポリマーが、その導電性ポリマー上の電荷のバランスをとるためにポリマー酸から誘導されるポリマー対イオンを有することを意味することを意図している。
【0038】
一実施形態においては、導電性ポリマーは、フッ素化酸ポリマーと混合される。一実施形態においては、導電性ポリマーは、少なくとも1つの非フッ素化ポリマー酸でドープされ、少なくとも1つのフッ素化酸ポリマーと混合される。
【0039】
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマーは、少なくとも10-7S/cmの導電率を有する膜を形成する。導電性ポリマーが形成されるモノマーを「前駆体モノマー」と呼ぶ。コポリマーは、2種類以上の前駆体モノマーを有する。
【0040】
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマーは、チオフェン類、ピロール類、アニリン類、および多環式芳香族から選択される少なくとも1つの前駆体モノマーから生成される。これらのモノマーから生成されたポリマーは、本明細書において、それぞれ、ポリチオフェン、ポリセレノフェン、ポリ(テルロフェン)、ポリピロール、ポリアニリン、および多環式芳香族ポリマーと呼ばれる。用語「多環式芳香族」は、2つ以上の芳香環を有する化合物を意味する。これらの環は、1つまたは複数の結合によって連結している場合もあるし、互いに縮合している場合もある。用語「芳香環」は、複素環式芳香環を含むことを意図している。「多環式複素環式芳香族」化合物は、少なくとも1つの複素環式芳香環を有する。一実施形態においては、多環式芳香族ポリマーはポリ(チエノチオフェン)である。
【0041】
一実施形態においては、本発明の組成物中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮されるチオフェンモノマーは、以下の式Iを含み:
【0042】
【化1】

【0043】
式中:
Qは、S、Se、およびTeからなる群から選択され;
1は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR1基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成させてもよく、その環は場合により、1つまたは複数の二価の窒素原子、セレン原子、テルル原子、硫黄原子、または酸素原子を含んでもよい。
【0044】
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、脂肪族炭化水素から誘導される基を意味し、非置換の場合も置換されている場合もある線状、分岐、および環状の基を含んでいる。用語「ヘテロアルキル」は、アルキル基中の1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素、硫黄などの別の原子で置き換えられているアルキル基を意味することを意図している。用語「アルキレン」は、2つの結合点を有するアルキル基を意味する。
【0045】
本明細書において使用される場合、用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素から誘導される基を意味し、非置換の場合も置換されている場合もある線状、分岐、および環状の基を含んでいる。用語「ヘテロアルケニル」は、アルケニル基中の1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素、硫黄などの別の原子で置き換えられているアルケニル基を意味することを意図している。用語「アルケニレン」は、2つの結合点を有するアルケニル基を意味する。
【0046】
本明細書において使用される場合、置換基に関する以下の用語は、以下に示す式を意味する:
「アルコール」 −R3−OH
「アミド」 −R3−C(O)N(R6)R6
「アミドスルホネート」 −R3−C(O)N(R6)R4−SO3
「ベンジル」 −CH2−C65
「カルボキシレート」 −R3−C(O)O−Zまたは−R3−O−C(O)−Z
「エーテル」 −R3−(O−R5p−O−R5
「エーテルカルボキシレート」 −R3−O−R4−C(O)O−Zまたは−R3−O−R4−O−C(O)−Z
「エーテルスルホネート」 −R3−O−R4−SO3
「エステルスルホネート」 −R3−O−C(O)−R4−SO3
「スルホンイミド」 −R3−SO2−NH−SO2−R5
「ウレタン」 −R3−O−C(O)−N(R62
式中、すべての「R」基はそれぞれ同じかまたは異なるものであり:
3は単結合またはアルキレン基であり:
4はアルキレン基であり
5はアルキル基であり
6は水素またはアルキル基であり
pは0または1〜20の整数であり
Zは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、N(R54、またはR5である。
上記基はいずれも、さらに非置換の場合も置換されている場合もあり、いずれの基も、過フッ素化基などのように、1つまたは複数の水素がFで置換されていてもよい。一実施形態においては、上記アルキル基およびアルキレン基は1〜20個の炭素原子を有する。
【0047】
一実施形態においては、チオフェンモノマー中、両方のR1が一緒になって−O−(CHY)m−O−を形成し、式中、mは2または3であり、Yは、それぞれ同じかまたは異なるものであり、そして、水素、ハロゲン、アルキル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され、これらのY基は、部分的または完全にフッ素化されていてもよい。一実施形態においては、すべてのYが水素である。一実施形態においては、ポリチオフェンが、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が水素ではない。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が、少なくとも1つの水素がFで置換された置換基である。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が過フッ素化されている。
【0048】
一実施形態においては、チオフェンモノマーは式I(a)を有し:
【0049】
【化2】

【0050】
式中:
Qは、S、Se、およびTeからなる群から選択され;
7は、それぞれ同じかまたは異なるものであり、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され、但し、少なくとも1つのR7が水素ではなく、
mは2または3である。
【0051】
式I(a)の一実施形態においては、mが2であり、1つのR7が、5個を超える炭素原子のアルキル基であり、他のすべてのR7が水素である。
【0052】
式I(a)の一実施形態においては、少なくとも1つのR7基がフッ素化されている。一実施形態においては、少なくとも1つのR7基が、少なくとも1つのフッ素置換基を有する。一実施形態においては、そのR7基が完全フッ素化されている。
【0053】
式I(a)の一実施形態においては、チオフェン上の縮合脂環式環上のR7置換基によって、モノマーの水に対する溶解性が改善され、フッ素化酸ポリマーの存在下での重合が促進される。
【0054】
式I(a)の一実施形態においては、mが2であり、1つのR7が、スルホン酸−プロピレン−エーテル−メチレンであり、他のすべてのR7が水素である。一実施形態においては、mが2であり、1つのR7が、プロピル−エーテル−エチレンであり、他のすべてのR7が水素である。一実施形態においては、mが2であり、1つのR7がメトキシであり、他のすべてのR7が水素である。一実施形態においては、1つのR7が、スルホン酸ジフルオロメチレンエステルメチレン(−CH2−O−C(O)−CF2−SO3H)であり、他のすべてのR7が水素である。
【0055】
一実施形態においては、本発明の組成物中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮されるピロールモノマーは以下の式IIを含む。
【0056】
【化3】

【0057】
式IIにおいて:
1は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、アミドスルホネート、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR1基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成させてもよく、その環は場合により、1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含んでもよく;
2は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アルカノイル、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される。
【0058】
一実施形態においては、R1は、それぞれ同じかまたは異なるものであり、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、アミドスルホネート、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、ウレタン、エポキシ、シラン、シロキサン、ならびに、1つまたは複数のスルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、またはシロキサン部分で置換されたアルキルから独立して選択される。
【0059】
一実施形態においては、R2は、水素、アルキル、ならびに、1つまたは複数のスルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、またはシロキサン部分で置換されたアルキルから選択される。
【0060】
一実施形態においては、上記ピロールモノマーは置換されておらず、R1およびR2の両方が水素である。
【0061】
一実施形態においては、両方のR1が一緒になって、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される基でさらに置換された6員または7員の脂環式環を形成する。これらの基は、モノマーおよび結果として得られるポリマーの溶解性を改善することができる。一実施形態においては、両方のR1が一緒になって、アルキル基でさらに置換された6員または7員の脂環式環を形成する。一実施形態においては、両方のR1が一緒になって、少なくとも1つの炭素原子を有するアルキル基でさらに置換された6員または7員の脂環式環を形成する。
【0062】
一実施形態においては、両方のR1が一緒になって−O−(CHY)m−O−を形成し、式中、mは2または3であり、Yは、それぞれ同じかまたは異なるものであり、水素、アルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、アミドスルホネート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が水素ではない。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が、少なくとも1つの水素がFで置換された置換基である。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が過フッ素化されている。
【0063】
一実施形態においては、本発明の組成物中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮されるアニリンモノマーは以下の式IIIを含む。
【0064】
【化4】

【0065】
式中:
aは0または1〜4の整数であり;
bは1〜5の整数であり、但しa+b=5であり;
1は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR1基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成させてもよく、その環は場合により、1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、または酸素原子を含んでもよい。
【0066】
重合すると、このアニリンモノマー単位は、以下に示す式IV(a)または式IV(b)、あるいは両方の式の組み合わせを有することができる。
【0067】
【化5】

【0068】
式中、a、b、およびR1は前出の定義の通りである。
【0069】
一実施形態においては、上記アニリンモノマーは置換されておらず、a=0である。
【0070】
一実施形態においては、aが0ではなく、少なくとも1つのR1がフッ素化されている。一実施形態においては、少なくとも1つのR1が過フッ素化されている。
【0071】
一実施形態においては、本発明の組成物中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮される縮合多環式複素環式芳香族モノマーは、2つ以上の縮合芳香環を有し、その環の少なくとも1つが複素環式芳香族である。一実施形態においては、この縮合多環式複素環式芳香族モノマーは式Vを有し:
【0072】
【化6】

【0073】
式中:
Qは、S、Se、Te、またはNR6であり;
6は、水素またはアルキルであり;
8、R9、R10、およびR11は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され;
8とR9、R9とR10、およびR10とR11、のうち少なくとも1つがアルケニレン鎖を形成して5または6員の芳香環を完成させ、その環は、場合により1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含むことができる。
【0074】
一実施形態においては、上記縮合多環式複素環式芳香族モノマーは、式V(a)、V(b)、V(c)、V(d)、V(e)、V(f)、およびV(g)を有し:
【0075】
【化7】

【0076】
式中:
Qは、S、Se、Te、またはNHであり;
Tは、それぞれ同じかまたは異なるものであり、S、NR6、O、SiR62、Se、Te、およびPR6から選択され;
6は、水素またはアルキルである。
【0077】
上記縮合多環式複素環式芳香族モノマーは、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される基でさらに置換されていてもよい。一実施形態においては、これらの置換基がフッ素化されている。一実施形態においては、これらの置換基が完全フッ素化されている。
【0078】
一実施形態においては、上記縮合多環式複素環式芳香族モノマーはチエノ(チオフェン)である。このような化合物は、たとえば、Macromolecules,34,5746−5747(2001);およびMacromolecules,35,7281−7286(2002)において議論されている。一実施形態においては、このチエノ(チオフェン)は、チエノ(2,3−b)チオフェン、チエノ(3,2−b)チオフェン、およびチエノ(3,4−b)チオフェンから選択される。一実施形態においては、チエノ(チオフェン)モノマーは、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される少なくとも1つの基でさらに置換されている。一実施形態においては、これらの置換基がフッ素化されている。一実施形態においては、これらの置換基が完全フッ素化されている。
【0079】
一実施形態においては、本発明の組成物中のポリマーを形成するために使用が考慮される多環式複素環式芳香族モノマーは式VIを含み:
【0080】
【化8】

【0081】
式中:
Qは、S、Se、Te、またはNR6であり;
Tは、S、NR6、O、SiR62、Se、Te、およびPR6から選択され;
Eは、アルケニレン、アリーレン、およびヘテロアリーレンから選択され;
R6は、水素またはアルキルであり;
12は、それぞれ同じかまたは異なるものであり、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR12基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成させてもよく、その環は場合により1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含んでもよい。
【0082】
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマーは、前駆体モノマーと少なくとも1つの第2のモノマーとのコポリマーである。コポリマーに望まれる性質に悪影響を及ぼさないのであれば、あらゆる種類の第2のモノマーを使用することができる。一実施形態においては、第2のモノマーが、モノマー単位の総数を基準にしてポリマーの50%以下を構成する。一実施形態においては、第2のモノマーが、モノマー単位の総数を基準にして30%以下を構成する。一実施形態においては、第2のモノマーが、モノマー単位の総数を基準にして10%以下を構成する。
【0083】
第2のモノマーの代表的な種類としては、アルケニル、アルキニル、アリーレン、およびヘテロアリーレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。第2のモノマーの例としては、限定するものではないが、フルオレン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾチアジアゾール、フェニレンビニレン、フェニレンエチニレン、ピリジン、ジアジン類、およびトリアジン類が挙げられ、これらすべてがさらに置換されていてもよい。
【0084】
一実施形態においては、本発明のコポリマーは、最初に構造A−B−Cを有する中間前駆体モノマーを形成することによって製造され、式中、AおよびCは、同じかまたは異なっていてもよい前駆体モノマーを表し、Bは第2のモノマーを表す。このA−B−C中間前駆体モノマーは、ヤマモト(Yamamoto)、スティル(Stille)、グリニャール(Grignard)メタセシス、スズキ(Suzuki)、およびネギシ(Negishi)カップリングなどの標準的な合成有機技術を使用して調製することができる。次に、この中間前駆体モノマー単独で酸化重合させる、または1つまたは複数の別の前駆体モノマーとともに酸化重合させることによって、本発明のコポリマーが形成される。
【0085】
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマーは、2つ以上の前駆体モノマーのコポリマーである。一実施形態においては、これらの前駆体モノマーは、チオフェン、ピロール、アニリン、および多環式芳香族から選択される。
【0086】
b.フッ素化酸ポリマー
本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化され、酸性プロトンを有する酸性基を有するあらゆるポリマーであってよい。この用語は、部分フッ素化材料および完全フッ素化材料を含んでいる。一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは高フッ素化されている。用語「高フッ素化」は、炭素に結合した利用可能な水素の少なくとも50%が、フッ素で置き換えられていることを意味する。酸性基は、イオン化可能なプロトンを供給する。一実施形態においては、酸性プロトンは3未満のpKaを有する。一実施形態においては、酸性プロトンは0未満のpKaを有する。一実施形態においては、酸性プロトンは−5未満のpKaを有する。酸性基は、ポリマー主鎖に直接結合していてもよいし、ポリマー主鎖上の側鎖に結合していてもよい。酸性基の例としては、カルボン酸基、スルホン酸基、スルホンイミド基、リン酸基、ホスホン酸基、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。酸性基はすべてが同じものである場合もあるし、ポリマーが2種類以上の酸性基を有することもできる。
【0087】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは水溶性である。一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは水に対して分散性である。
【0088】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは有機溶剤でぬらすことができる。用語「有機溶剤でぬらすことができる」は、フィルムに成形した場合に有機溶剤によってぬらすことができる材料を意味する。一実施形態においては、有機溶剤でぬらすことができる材料は、40°以下の接触角でフェニルヘキサンによってぬらすことができるフィルムを形成する。本明細書において使用される場合、用語「接触角」は、図3に示される角度Φを意味することを意図している。液体媒体の液滴の場合、角度Φは、表面の面と、液滴の外側端部から表面までの線との交差部分によって定義される。さらに、角度Φは、液滴が適用された後で表面上で平衡位置に達した後で測定され、すなわち「静的接触角」である。有機溶剤でぬらすことができるフッ素化ポリマー酸のフィルムが、上記表面として示されている。一実施形態においては、接触角が35°以下である。一実施形態においては、接触角が30°以下である。接触角の測定方法は周知である。
【0089】
一実施形態においては、上記ポリマーの主鎖がフッ素化されている。好適なポリマー主鎖の例としては、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、およびそれらのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、ポリマー主鎖が高フッ素化されている。一実施形態においては、ポリマー主鎖が完全フッ素化されている。
【0090】
一実施形態においては、酸性基は、スルホン酸基またはスルホンイミド基である。スルホンイミド基は次式を有し:
−SO2−NH−SO2−R
式中、Rはアルキル基である。
【0091】
一実施形態においては、酸性基はフッ素化側鎖上にある。一実施形態においては、フッ素化側鎖は、アルキル基、アルコキシ基、アミド基、エーテル基、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0092】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化オレフィン主鎖と、ペンダントフッ素化エーテルスルホネート基、ペンダントフッ素化エステルスルホネート基、またはペンダントフッ素化エーテルスルホンイミド基とを有する。一実施形態においては、このポリマーは、1,1−ジフルオロエチレンと2−(1,1−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)アリルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマーである。一実施形態においては、このポリマーは、エチレンと、2−(2−(1,2,2−トリフルオロビニルオキシ)−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマーである。これらのコポリマーは、対応するフッ化スルホニルポリマーとして製造することができ、後にスルホン酸形態に変換することができる。
【0093】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化および部分フッ素化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)のホモポリマーまたはコポリマーである。このコポリマーはブロックコポリマーであってよい。コモノマーの例としては、ブタジエン、ブチレン、イソブチレン、スチレン、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、式VIIを有するモノマーのホモポリマーまたはコポリマーであり:
【0095】
【化9】

【0096】
式中:
bは1〜5の整数であり、
13はOHまたはNHR14であり、
14は、アルキル、フルオロアルキル、スルホニルアルキル、またはスルホニルフルオロアルキルである。
【0097】
一実施形態においては、上記モノマーは以下に示す「SFS」または「SFSI」であり:
【0098】
【化10】

【0099】
重合後、得られたポリマーを酸形態に変換することができる。
【0100】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、酸性基を有するトリフルオロスチレンのホモポリマーまたはコポリマーである。一実施形態においては、このトリフルオロスチレンモノマーは式VIIIを有し:
【0101】
【化11】

【0102】
式中:
Wは、(CF2b、O(CF2b、S(CF2b、(CF2bO(CF2bから選択され、
bは独立して1〜5の整数であり
13はOHまたはNHR14であり、
14は、アルキル、フルオロアルキル、スルホニルアルキル、またはスルホニルフルオロアルキルである。
【0103】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、式IXを有するスルホンイミドポリマーであり:
【0104】
【化12】

【0105】
式中:
fは、フッ素化アルキレン、フッ素化ヘテロアルキレン、フッ素化アリーレン、またはフッ素化ヘテロアリーレンから選択され;
nは少なくとも4である。
【0106】
式IXの一実施形態においては、Rfはパーフルオロアルキル基である。一実施形態においては、Rfはパーフルオロブチル基である。一実施形態においては、Rfはエーテル酸素を含有する。一実施形態においては、nは10を超える。
【0107】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化ポリマー主鎖および式Xを有する側鎖を含み:
【0108】
【化13】

【0109】
式中:
15は、フッ素化アルキレン基またはフッ素化ヘテロアルキレン基であり;
16は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アリール基であり;
aは0または1〜4の整数である。
【0110】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは式XIを有し:
【0111】
【化14】

【0112】
式中:
16は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アリール基であり;
cは独立して0または1〜3の整数であり;
nは少なくとも4である。
【0113】
フッ素化酸ポリマーの合成は、たとえば、A.フェイリング(Feiring)ら,J.Fluorine Chemistry 2000,105,129−135;A.フェイリング(Feiring)ら,Macromolecules 2000,33,9262−9271;D.D.デマルト(Desmarteau),J.Fluorine Chem.1995,72,203−208;A.J.アップルビー(Appleby)ら,J.Electrochem.Soc.1993,140(1),109−111;およびデマルト(Desmarteau)の米国特許第5,463,005号明細書に記載されている。
【0114】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、構造(XII)を有するエチレン系不飽和化合物から誘導される少なくとも1つの繰り返し単位を含み:
【0115】
【化15】

【0116】
式中、nは0、1、または2であり;
17〜R20は独立して、H、ハロゲン、1〜10個の炭素原子のアルキルまたはアルコキシ、Y、C(Rf’)(Rf’)OR21、R4Y、あるいはOR4Yであり;
Yは、COE2、SO22、またはスルホンイミドであり;
21は、水素であるかまたは酸に不安定な保護基であり;
f’は、それぞれ同じかまたは異なるものであり、1〜10個の炭素原子のフルオロアルキル基であるか、1つに合わせたものが(CF2eとなるかであり、eは2〜10であり;
4はアルキレン基であり;
2は、OH、ハロゲン、またはOR7であり;
7はアルキル基であり;
但し、R17〜R20の少なくとも1つが、Y、R4Y、またはOR5Yである。
4、R5、およびR17〜R20は、ハロゲンまたはエーテル酸素によって場合により置換されていてもよい。
【0117】
本明細書に記載の材料の範囲内にある構造(XII)の代表的なモノマーの一部の説明的で非限定的な例が以下に示される:
【0118】
【化16】

【0119】
式中、R21は、第3級陽イオンの形成または第3級陽イオンへの転位が可能な基であり、より典型的には1〜20個の炭素原子のアルキル基であり、最も典型的にはt−ブチルである。
【0120】
d=0の場合の構造(XII)である構造(XII−a)の化合物は、以下の式に示されるような構造(XIII)の不飽和化合物とクアドリシクラン(テトラシクロ[2.2.1.02,63,5]ヘプタン)との付加環化反応によって調製することができる。
【0121】
【化17】

【0122】
この反応は、約0℃〜約200℃の範囲の温度、より典型的には約30℃〜約150℃の範囲の温度において、ジエチルエーテルなどの不活性溶媒の非存在下または存在下で実施することができる。1つまたは複数の試薬または溶媒の沸点以上で実施される反応の場合、揮発性成分の減少を回避するために、通常は密閉反応器が使用される。より大きな値のd(すなわち、d=1または2)を有する式XIIの化合物は、d=0である式XIIの化合物をシクロペンタジエンと反応させることによって調製することができ、このことは当技術分野において周知である。
【0123】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、エチレン系不飽和炭素に結合した少なくとも1つのフッ素原子を含有する少なくとも1つのエチレン系不飽和化合物から誘導された繰り返し単位も含む。このフルオロオレフィンは2〜20個の炭素原子を含む。代表的なフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、パーフルオロ−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ−(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、CF2=CFO(CF2tCF=CF2(式中のtは1または2である)、およびRf’’OCF=CF2(式中のRf’’は1〜約10個の炭素原子の飽和フルオロアルキル基である)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、このコモノマーはテトラフルオロエチレンである。
【0124】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、シロキサンスルホン酸を含むペンダント基を有するポリマー主鎖を含む。一実施形態においては、このシロキサンペンダント基は以下の式を有し:
−OaSi(OH)b-a223-b23fSO3
式中:
aは1〜bであり;
bは1〜3であり;
22は、独立してアルキル、アリール、およびアリールアルキルからなる群から選択される非加水分解性基であり;
23は、1つまたは複数のエーテル酸素原子によって置換されていてもよい二座アルキレン基であり、但し、R23は、SiとRfとの間に直線状に配置された少なくとも2つの炭素原子を有し;
fは、1つまたは複数エーテル酸素原子によって置換されていてもよいパーフルオルアルキレン(perfluoralkylene)基である。
【0125】
一実施形態においては、ペンダントシロキサン基を有する本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化主鎖を有する。一実施形態においては、この主鎖は過フッ素化されている。
【0126】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化された主鎖および式(XIV)によって表されるペンダント基を有し、
−Og−[CF(Rf2)CF−Ohi−CF2CF2SO3H (XIV)
式中、Rf2は、F、または、非置換であるか、1つまたは複数のエーテル酸素原子によって置換されているかのいずれかであり1〜10個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、h=0または1であり、i=0〜3であり、g=0または1である。
【0127】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは式(XV)を有し
【0128】
【化18】

【0129】
式中、j≧0、k≧0、および4≦(j+k)≦199であり、Q1およびQ2はFまたはHであり、Rf2は、F、あるいは、非置換であるか、1つまたは複数のエーテル酸素原子によって置換されているかのいずれかであり1〜10個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、h=0または1であり、i=0〜3であり、g=0または1である。一実施形態においては、Rf2は−CF3であり、g=1、h=1、およびi=1である。一実施形態においては、ペンダント基が3〜10mol%の濃度で存在する。
【0130】
一実施形態においては、Q1はHであり、k≧0であり、Q2はFであり、これは、コナリー(Connolly)らの米国特許第3,282,875号明細書の教示により合成することができる。別の好ましい一実施形態においては、Q1はHであり、Q2はHであり、g=0であり、Rf2はFであり、h=1であり、I=1であり、同時継続中の米国仮特許出願第60/105,662号明細書により合成することができる。さらに別の実施形態は、ドライスデール(Drysdale)らの国際公開第9831716(A1)号パンフレット、ならびに同時継続中の米国出願のチェ(Choi)らの国際公開第99/52954(A1)号パンフレット、および米国仮特許出願第60/176,881号明細書における種々の教示により合成することができる。
【0131】
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーはコロイド形成性ポリマー酸である。本明細書において使用される場合、用語「コロイド形成性」は、水に対して不溶性であり、水性媒体中に分散させた場合にコロイドを形成する材料を意味する。コロイド形成性ポリマー酸は、通常、約10,000〜約4,000,000の範囲内の分子量を有する。一実施形態においては、このポリマー酸は約100,000〜約2,000,000の分子量を有する。コロイドの粒度は、通常2ナノメートル(nm)〜約140nmの範囲内である。一実施形態においては、このコロイドは2nm〜約30nmの粒度を有する。酸性プロトンを有するあらゆる完全フッ素化コロイド形成性ポリマー材料を使用することができる。一実施形態においては、コロイド形成性フッ素化ポリマー酸は、カルボン酸基、スルホン酸基、およびスルホンイミド基から選択される酸性基を有する。一実施形態においては、コロイド形成性フッ素化ポリマー酸はポリマースルホン酸である。一実施形態においては、コロイド形成性ポリマースルホン酸は過フッ素化されている。一実施形態においては、コロイド形成性ポリマースルホン酸はパーフルオロアルキレンスルホン酸である。
【0132】
一実施形態においては、本発明のコロイド形成性ポリマー酸は、高フッ素化スルホン酸ポリマー(「FSAポリマー」)である。「高フッ素化」は、ポリマー中のハロゲン原子および水素原子の総数の少なくとも約50%、一実施形態においては少なくとも約75%、別の一実施形態においては少なくとも約90%がフッ素原子であることを意味する。一実施形態においては、このポリマーは過フッ素化されている。用語「スルホネート官能基」は、スルホン酸基またはスルホン酸基の塩のいずれかを意味し、一実施形態においてはアルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。この官能基は、式−SO35で表され、式中のE5は「対イオン」とも呼ばれる陽イオンである。E5は、H、Li、Na、K、またはN(R1)(R2)(R3)(R4)であってよく、R1、R2、R3、およびR4は同じかまたは異なるものであり、一実施形態においては、これらはH、CH3、またはC25である。別の一実施形態においては、E5はHであり、この場合そのポリマーは「酸形態」にあると言われる。E5は、Ca++、およびAl+++などのイオンによって表されるような多価であってもよい。当業者には明らかなように、一般にMx+と表される多価対イオンの場合、対イオン1つ当たりのスルホネート官能基数が価数「x」と等しくなる。
【0133】
一実施形態においては、FSAポリマーは、主鎖に結合した反復する側鎖を有するポリマー主鎖を含み、これらの側鎖は陽イオン交換基を有する。ポリマーには、ホモポリマー、または2つ以上のモノマーのコポリマーが含まれる。通常、コポリマーは、非官能性モノマーと、後にスルホネート官能基を加水分解できるフッ化スルホニル基(−SO2F)などの陽イオン交換基またはその前駆体を有する第2のモノマーとから形成される。たとえば、第1のフッ素化ビニルモノマーと、フッ化スルホニル基(−SO2F)を有する第2のフッ素化ビニルモノマーとのコポリマーを使用することができる。可能性のある第1のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリジン(vinylidine fluoride)、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。TFEが好ましい第1のモノマーである。
【0134】
別の実施形態においては、可能性のある第2のモノマーとしては、ポリマー中に所望の側鎖を提供することができるスルホネート官能基または前駆体基を有するフッ素化ビニルエーテルが挙げられる。希望するなら、エチレン、プロピレン、およびR−CH=CH2(式中のRは、1〜10個の炭素原子の過フッ素化アルキル基である)などの追加のモノマーを、これらのポリマー中に組み込むことができる。これらのポリマーは、本明細書においてランダムコポリマーと呼ばれる種類であってよく、すなわち、コモノマーの相対濃度が可能な限り一定に維持され、それによって、ポリマー鎖に沿ったモノマー単位の分布がそれらの相対濃度および相対反応性に従う重合によって製造されるコポリマーであってよい。重合の過程中にモノマーの相対濃度を変化させることによって製造される不規則性のより低いコポリマーを使用することもできる。欧州特許出願公開第1 026 152 A1号明細書に開示されるものなどの、ブロックコポリマーと呼ばれる種類のポリマーを使用することもできる。
【0135】
一実施形態においては、本発明組成物において使用されるFSAポリマーは、高フッ素化された、一実施形態においては過フッ素化された、炭素主鎖および以下の式で表される側鎖を含み、
−(O−CF2CFRf3a−O−CF2CFRf4SO35
式中、Rf3およびRf4は独立して、F、Cl、または1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0、1、または2であり、E5は、H、Li、Na、K、またはN(R1)(R2)(R3)(R4)であり、R1、R2、R3、およびR4は同じかまたは異なるものであり、一実施形態においてはこれらはH、CH3、またはC25である。別の一実施形態においてはE5はHである。前述したように、E5は多価であってもよい。
【0136】
一実施形態においては、本発明のFSAポリマーとしては、たとえば、米国特許第3,282,875号明細書、ならびに米国特許第4,358,545号明細書および米国特許第4,940,525号明細書に開示されているポリマーが挙げられる。好ましいFSAポリマーの一例は、パーフルオロカーボン主鎖および次式で表される側鎖を含み、
−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO35
式中、Xは前出の定義の通りである。この種類のFSAポリマーは、米国特許第3,282,875号明細書に開示されており、テトラフルオロエチレン(TFE)と、過フッ素化ビニルエーテルのCF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F(パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド)(PDMOF))との共重合の後、スルホニルフルオリド基の加水分解によってスルホネート基に変換し、必要に応じてイオン交換することによってそれらを所望のイオン形態に変換することによって製造することができる。米国特許第4,358,545号明細書および米国特許第4,940,525号明細書に開示されている種類のポリマーの一例は、側鎖−O−CF2CF2SO35を有し、式中のE5は前出の定義の通りである。このポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)と、過フッ素化ビニルエーテルのCF2=CF−O−CF2CF2SO2F(パーフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド)(POPF))との共重合の後、加水分解し、さらに必要に応じてイオン交換することによって製造することができる。
【0137】
一実施形態においては、本発明組成物において使用されるFSAポリマーは、通常、約33未満のイオン交換比を有する。本明細書において、「イオン交換比」または「IXR」は、陽イオン交換基に対するポリマー主鎖中の炭素原子数として定義される。約33未満の範囲内であれば、個別の用途に応じて希望通りにIXRを変動させることができる。一実施形態においてはIXRは約3〜約33であり、別の一実施形態においては約8〜約23である。
【0138】
ポリマーの陽イオン交換能力は、多くの場合当量(EW)で表現される。本明細書の目的では、当量(EW)は、1当量の水酸化ナトリウムを中和するために必要となる、酸形態のポリマーの重量と定義される。ポリマーがパーフルオロカーボン主鎖を有し、側鎖が−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3H(またはその塩)であるスルホネートポリマーの場合、約8〜約23のIXRに相当する当量範囲は約750EW〜約1500EWとなる。このポリマーのIXRは、式:50IXR+344=EWを使用して当量と関連づけることができる。米国特許第4,358,545号明細書および米国特許第4,940,525号明細書に開示されているスルホネートポリマー、たとえば側鎖−O−CF2CF2SO3H(またはその塩)を有するポリマーに対して同じIXR範囲が使用されると、陽イオン交換基を有するモノマー単位の分子量が低いため、その当量はある程度低くなる。約8〜約23の好ましいIXR範囲の場合、その対応する当量範囲は約575EW〜約1325EWとなる。このポリマーのIXRは、式:50IXR+178=EWを使用して当量と関連づけることができる。
【0139】
FSAポリマーは、コロイド水性分散体として調製することができる。これらは、他の媒体中の分散体の形態であってもよく、そのような媒体の例としては、アルコール、テトラヒドロフランなどの水溶性エーテル、水溶性エーテルの混合物、およびそれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。この分散体を製造する際、ポリマーは酸形態で使用することができる。米国特許第4,433,082号明細書、米国特許第6,150,426号明細書および国際公開第03/006537号パンフレットには、水性アルコール性分散体の製造方法が開示されている。分散体を製造した後、濃度と分散させる液体の組成とを、当技術分野において周知の方法によって調整することができる。
【0140】
FSAポリマーを含むコロイド形成性ポリマー酸の水性分散体は、典型的には、安定なコロイドが形成されるのであれば、可能な限り小さい粒度、および可能な限り小さいEWを有する。
【0141】
FSAポリマーの水性分散体は、Nafion(登録商標)分散体として、本件特許出願人(Wilmington, DE)より市販されている。
【0142】
本明細書において前述したポリマーの一部は、非酸形態、たとえば、塩、エステル、またはフッ化スルホニルとして形成することができる。後述するように、これらは、導電性組成物を調製するために酸形態に変換される。
【0143】
c.フッ素化酸ポリマーを有する導電性ポリマー組成物の調製
本発明の導電性ポリマー組成物は、(i)フッ素化酸ポリマーの存在下で前駆体モノマーを重合させることによって;または(ii)本質的に導電性のコポリマーを最初に形成し、それをフッ素化酸ポリマーと混合することによって調製される。
【0144】
((i)フッ素化酸ポリマーの存在下での前駆体モノマーの重合)
一実施形態においては、本発明の導電性コポリマー組成物は、フッ素化酸ポリマーの存在下での前駆体モノマーの酸化重合によって形成される。一実施形態においては、前駆体モノマーは、2つ以上の導電性前駆体モノマーを含む。一実施形態においては、これらのモノマーは、構造A−B−Cを有する中間前駆体モノマーを含み、式中、AおよびCは、同じかまたは異なっていてもよい導電性前駆体モノマーを表しており、Bは、非導電性前駆体モノマーを表している。一実施形態においては、この中間前駆体モノマーは、1つまたは複数の導電性前駆体モノマーとともに重合される。
【0145】
一実施形態においては、上記の酸化重合は均一水溶液中で行われる。別の一実施形態においては、別の一実施形態においては、酸化重合は、水と有機溶剤とのエマルジョン中で行われる。一般に、酸化剤および/または触媒の適切な溶解性を得るために、ある程度の水が存在する。過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの酸化剤を使用することができる。塩化第二鉄、または硫酸第二鉄などの触媒も存在することができる。結果として得られる重合生成物は、フッ素化酸ポリマーと会合した導電性ポリマーの溶液、分散体、またはエマルジョンとなる。一実施形態においては、本来導電性ポリマーが正に帯電しており、フッ素化酸ポリマー陰イオンによって電荷のバランスがとられる。
【0146】
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマー組成物の水性分散体の製造方法は、前駆体モノマーと酸化剤との少なくとも一方が加えられるときに少なくとも一部のフッ素化酸ポリマーが存在するのであれば任意の順序で、水と、前駆体モノマーと、少なくとも1つのフッ素化酸ポリマーと、酸化剤とを混合することによって反応混合物を形成するステップを含む。
【0147】
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマー組成物の製造方法は:
(a)フッ素化酸ポリマーの水溶液または分散体を提供するステップと;
(b)ステップ(a)の溶液または分散体に酸化剤を加えるステップと;
(c)ステップ(b)の混合物に前駆体モノマーを加えるステップとを含む。
【0148】
別の一実施形態においては、酸化剤を加える前に、フッ素化酸ポリマーの水溶液または分散体に前駆体モノマーが加えられる。これに続いて、酸化剤を加える前述のステップ(b)が行われる。
【0149】
別の一実施形態においては、通常、約0.5重量%〜約4.0重量%の範囲内の全前駆体モノマーの濃度で、水と前駆体モノマーとの混合物が形成される。この前駆体モノマー混合物がフッ素化酸ポリマーの水溶液または分散体に加えられ、酸化剤を加える前述のステップ(b)が行われる。
【0150】
別の一実施形態においては、上記水性重合混合物は、硫酸第二鉄、塩化第二鉄などの重合触媒を含むことができる。この触媒は、最終ステップの前に加えられる。別の一実施形態においては、触媒は酸化剤とともに加えられる。
【0151】
一実施形態においては、重合は、水に対して混和性である共分散液体(co−dispersing liquid)の存在下で行われる。好適な共分散液体の例としては、エーテル、アルコール、アルコールエーテル、環状エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシド、アミド、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、共分散液体はアルコールである。一実施形態においては、共分散液体は、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、およびそれらの混合物から選択される有機溶剤である。一般に、共分散液体の量は約60体積%未満とすべきである。一実施形態においては、共分散液体の量は約30体積%未満である。一実施形態においては、共分散液体の量は5〜50体積%の間である。重合中に共分散液体を使用することによって、粒度が顕著に減少し、分散体の濾過性が改善される。さらに、この方法によって得られた緩衝材料は、粘度の増加が見られ、これらの分散体から作製された膜は高品質となる。
【0152】
共分散液体は、本発明の方法の任意の時点で反応混合物に加えることができる。
【0153】
一実施形態においては、重合は、ブレンステッド酸である共酸(co−acid)の存在下で行われる。この酸は、HCl、硫酸などの無機酸、あるいは酢酸またはp−トルエンスルホン酸などの有機酸であってよい。あるいは、この酸は、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸などの水溶性ポリマー酸、または前述の第2のフッ素化酸ポリマーであってよい。複数の酸の組み合わせを使用することもできる。
【0154】
共酸は、最後に加えられる酸化剤または前駆体モノマーのいずれかが加えられる前の、本発明の方法の任意の時点で反応混合物に加えることができる。一実施形態においては、共酸が加えられた後で、前駆体モノマーとフッ素化酸ポリマーとの両方が加えられ、最後に酸化剤が加えられる。一実施形態においては、共酸が加えられた後で、前駆体モノマーが加えられ、続いてフッ素化酸ポリマーが加えられ、最後に酸化剤が加えられる。
【0155】
一実施形態においては、重合は、共分散液体と共酸との両方の存在下で行われる。
【0156】
一実施形態においては、最初に、水と、アルコール共分散剤と、無機共酸との混合物を反応容器に投入する。これに、前駆体モノマー、フッ素化酸ポリマーの水溶液または分散体、および酸化剤をこの順序で加える。混合物を不安定化する可能性のある高イオン濃度局所領域の形成を防止するため、酸化剤はゆっくり滴下する。この混合物を撹拌し、次に、制御された温度において反応を進行させる。重合が完了してから、反応混合物を強酸陽イオン樹脂で処理し、撹拌し、濾過し、続いて、塩基性陰イオン交換樹脂で処理し、撹拌し、濾過する。前述したように、別の添加順序を使用することもできる。
【0157】
本発明の導電性ポリマー組成物の製造方法において、酸化剤の全前駆体モノマーに対するモル比は、一般に0.1〜2.0の範囲内であり、一実施形態においては0.4〜1.5である。フッ素化酸ポリマーの全前駆体モノマーに対するモル比は、一般に0.2〜5の範囲内である。一実施形態においては、この比は1〜4の範囲内である。全体の固形分は、一般に、重量パーセントの単位で、約1.0%〜10%の範囲内であり、一実施形態においては約2%〜4.5%の範囲内である。反応温度は、一般に約4℃〜50℃の範囲内であり、一実施形態においては約20℃〜35℃の範囲内である。場合により使用される共酸の前駆体モノマーに対するモル比は約0.05〜4である。酸化剤の添加時間は粒度および粘度に影響を与える。したがって、添加速度を遅くすることによって粒度を減少させることができる。同時に、添加速度を遅くすることによって粘度は増加する。反応時間は、一般に約1〜約30時間の範囲内である。
【0158】
(ii)本質的に導電性のポリマーとフッ素化酸ポリマーとの混合
一実施形態においては、本質的に導電性のポリマーが、フッ素化酸ポリマーとは別に形成される。一実施形態においては、これらのポリマーは、対応するモノマーを水溶液中で酸化重合させることによって調製される。一実施形態においては、酸化重合は水溶性酸の存在下で行われる。一実施形態においては、この酸は、水溶性非フッ素化ポリマー酸である。一実施形態においては、この酸は、非フッ素化ポリマースルホン酸である。この酸の一部の非限定的な例は、ポリ(スチレンスルホン酸)(「PSSA」)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)(「PAAMPSA」)、およびそれらの混合物である。酸化重合によって、正電荷を有するコポリマーが得られる場合、その酸の陰イオンが導電性ポリマーの対イオンとなる。この酸化重合は、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの酸化剤を使用して行われる。
【0159】
本発明の導電性ポリマー組成物は、本質的に導電性のポリマーをフッ素化酸ポリマーとブレンドすることによって調製される。これは、本質的に導電性のポリマーの水性分散体を、ポリマー酸の分散体または溶液に加えることによって行うことができる。一実施形態においては、この組成物は、成分を確実に混合するために、超音波処理またはマイクロ流動化を使用してさらに処理される。
【0160】
一実施形態においては、本質的に導電性のポリマーおよびフッ素化酸ポリマーの一方または両方が、固体の形態で分離される。この固体材料は、水中、あるいは他の成分の水溶液または分散体の中に再分散させることができる。たとえば、本質的に導電性のポリマーの固体を、フッ素化酸ポリマー水溶液または分散体の中に分散させることができる。
【0161】
(iii)pH調整
合成された時点では、本発明の導電性コポリマー組成物の水性分散体は、一般に非常に低いpHを有する。一実施形態においては、デバイスの性質に悪影響を与えずに、pHをより高い値に調整される。一実施形態においては、分散体のpHは約1.5〜約4に調整される。一実施形態においては、pHは3〜4の間に調整される。pHは、イオン交換、または塩基性水溶液を使用した滴定などの周知の技術を使用して調整できることが分かっている。
【0162】
一実施形態においては、重合反応の完了後、分解した化学種、副反応生成物、および未反応モノマーを除去するため、およびpHを調整するために、好適な条件下で、合成された状態の水性分散体を、少なくとも1つのイオン交換樹脂と接触させることによって、所望のpHを有する安定な水性分散体が生成される。一実施形態においては、合成された状態の水性分散体を、第1のイオン交換樹脂および第2のイオン交換樹脂と任意の順序で接触させる。合成された状態の水性分散体は、第1および第2のイオン交換樹脂の両方で同時に処理することもできるし、一方で処理した後に続いて他方で処理することもできる。
【0163】
イオン交換は、流体媒体(水性分散体など)中のイオンが、流体媒体に対して不溶性である固定された固体粒子に結合した類似の荷電イオンと交換される可逆的な化学反応である。本明細書においては、あらゆるこのような物質を意味するために用語「イオン交換樹脂」が使用される。イオン交換基が結合するポリマー支持体が架橋性を有するため、この樹脂は不溶性となる。イオン交換樹脂は、陽イオン交換体または陰イオン交換体に分類される。陽イオン交換体は、交換に利用可能な正に帯電した可動イオンを有し、典型的には、プロトンまたはナトリウムイオンなどの金属イオンを有する。陰イオン交換体は、負に帯電した交換可能なイオンを有し、典型的には水酸化物イオンを有する。
【0164】
一実施形態においては、第1のイオン交換樹脂は、プロトンイオンまたは金属イオンの形態、典型的にはナトリウムイオンの形態であってよい陽イオン酸交換樹脂である。第2のイオン交換樹脂は塩基性陰イオン交換樹脂である。プロトン交換樹脂などの酸性陽イオン交換樹脂と、塩基性陰イオン交換樹脂との両方が、本明細書に記載の方法の実施において使用が考慮されている。一実施形態においては、酸性陽イオン交換樹脂は、スルホン酸陽イオン交換樹脂などの無機酸陽イオン交換樹脂である。本明細書に記載の方法の実施において使用が考慮されるスルホン酸陽イオン交換樹脂としては、たとえば、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノール−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、ベンゼン−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。別の一実施形態においては、酸性陽イオン交換樹脂は、カルボン酸、アクリル、またはリンの陽イオン交換樹脂などの有機酸陽イオン交換樹脂である。さらに、異なる陽イオン交換樹脂の混合物を使用することができる。
【0165】
別の一実施形態においては、塩基性陰イオン交換樹脂は、第3級アミン陰イオン交換樹脂である。本明細書に記載の方法の実施において使用が考慮される第3級アミン陰イオン交換樹脂としては、たとえば、第3級アミノ化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、第3級アミノ化架橋スチレンポリマー、第3級アミノ化フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、第3級アミノ化ベンゼン−ホルムアルデヒド樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。さらに別の一実施形態においては、塩基性陰イオン交換樹脂は、第4級アミン陰イオン交換樹脂、あるいはこれらおよびその他の交換樹脂の混合物である。
【0166】
第1および第2のイオン交換樹脂は、合成された状態の水性分散体に、同時または連続のいずれかで接触させることができる。たとえば、一実施形態においては、両方の樹脂は、合成された状態の導電性コポリマーの水性分散体に同時に加えられ、少なくとも約1時間、たとえば約2時間〜約20時間の間、分散体との接触を維持する。次に、濾過することによって、イオン交換樹脂を分散体から除去することができる。フィルターのサイズは、比較的大きなイオン交換樹脂粒子が除去され、より小さな分散粒子は通過するように選択される。理論によって束縛しようと望むものではないが、イオン交換樹脂は、重合を停止させ、さらに、イオン性および非イオン性の不純物、ならびに大部分の未反応モノマーを合成された状態の水性分散体から効率的に除去すると考えられている。さらに塩基性の陰イオン交換樹脂および/または酸性の陽イオン交換樹脂は、酸性部位をより塩基性にするため、結果として分散体のpHが増加する。一般に、導電性ポリマー組成物1グラム当たり、約1〜5グラムのイオン交換樹脂が使用される。
【0167】
多くの場合、塩基性イオン交換樹脂を使用することでpHを所望の値に調整することができる。場合によっては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの溶液などの塩基性水溶液を使用して、pHをさらに調整することができる。
【0168】
4.正孔輸送層
正孔輸送層は、正孔輸送材料とフラーレンとを含む。
【0169】
あらゆる正孔輸送材料を正孔輸送層に使用することができる。一実施形態においては正孔輸送材料は、真空レベルに対して4.2eVに等しいかまたはそれ未満の光学バンドギャップと6.2eVに等しいかまたはそれ未満のHOMOレベルとを有する。
【0170】
一実施形態においては、正孔輸送材料は少なくとも1つのポリマーを含む。正孔輸送ポリマーの例としては、正孔輸送基を有するものが挙げられる。このような正孔輸送基としては、カルバゾール、トリアリールアミン、トリアリールメタン、フルオレン、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。普通に使用される正孔輸送ポリマーとしては、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(ジオキシチオフェン)、ポリアニリン、およびポリピロールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリスチレンやポリカーボネートなどのポリマー中に上述のものなどの正孔輸送分子をドープすることによって正孔輸送ポリマーを得ることもできる。
【0171】
ある実施形態においては、正孔輸送層は正孔輸送ポリマーを含む。ある実施形態においては、正孔輸送ポリマーはジスチリルアリール化合物である。ある実施形態においては、アリール基は2つ以上の縮合芳香族環を有する。ある実施形態においては、アリール基はアセンである。用語「アセン」は、本明細書において使用される場合、直線状配置で2つ以上のオルト縮合ベンゼン環を含有する炭化水素親構成要素を意味する。
【0172】
ある実施形態においては、正孔輸送ポリマーはアリールアミンポリマーである。ある実施形態においては、それは、フルオレンモノマーとアリールアミンモノマーとのコポリマーである。
【0173】
ある実施形態においては、ポリマーは架橋性基を有する。ある実施形態においては、架橋は、熱処理および/またはUVもしくは可視放射線への露光によって行うことができる。架橋性基の例としては、ビニル、アクリレート、パーフルオロビニルエーテル、1−ベンゾ−3,4−シクロブタン、シロキサン、およびメチルエステルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。架橋性ポリマーは、溶液法OLEDの製造において利点を有することができる。堆積の後で不溶性フィルムへ変換することができる層を形成するための可溶性ポリマー材料の適用は、層溶解問題を含まない多層溶液加工OLEDデバイスの製造を可能にすることができる。
【0174】
架橋性ポリマーの例は、たとえば、米国特許出願公開第2005−0184287号明細書および国際公開第2005/052027号パンフレットに見いだすことができる。
【0175】
ある実施形態においては、正孔輸送層は、9,9−ジアルキルフルオレンとトリフェニルアミンとのコポリマーであるポリマーを含む。ある実施形態においては、このポリマーは、9,9−ジアルキルフルオレンと4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)ビフェニルとのコポリマーである。ある実施形態においては、このポリマーは、9,9−ジアルキルフルオレンとTPBとのコポリマーである。ある実施形態においては、このポリマーは、9,9−ジアルキルフルオレンとNPBとのコポリマーである。ある実施形態においては、このコポリマーは、(ビニルフェニル)ジフェニルアミンおよび9,9−ジスチリルフルオレンまたは9,9−ジ(ビニルベンジル)フルオレンから選択される第3のコモノマーから製造される。
【0176】
ある実施形態においては、正孔輸送層は、式Aを有するポリマーを含み:
【0177】
【化19】

【0178】
式中、a、b、およびcは、ポリマー中のモノマーの相対割合を表し、非ゼロの整数であり、nは少なくとも2の非ゼロの整数である。ある実施形態においては、a、b、およびcは、1〜10の範囲の値を有する。ある実施形態においては、比a:b:cは、範囲(1〜4):(1〜4):(1〜2)を有する。ある実施形態においては、nは2〜500である。
【0179】
ある実施形態においては、正孔輸送層は、式Bを有するポリマーを含み:
【0180】
【化20】

【0181】
式中、a、b、およびcは、ポリマー中のモノマーの相対割合を表し、非ゼロの整数であり、nは少なくとも2の非ゼロの整数である。ある実施形態においては、a、b、およびcは、0.001〜10の範囲の値を有する。ある実施形態においては、比a:b:cは、範囲(2〜7):(2〜7):(1〜3)を有する。ある実施形態においては、nは2〜500である。
【0182】
一実施形態においては、正孔輸送材料は、式XVIを有するモノマーから製造されるポリマーを含み:
【0183】
【化21】

【0184】
式中、
RおよびYは独立して、H、D、アルキル、フルオロアルキル、アリール、フルオロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、NR”2、R’、
【0185】
【化22】

【0186】
からなる群から選択され、
R’は架橋性基であり、
R”は独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、アリール、フルオロアリール、およびR’からなる群から選択され、
Xはそれぞれ同じかまたは異なるものであり、そして脱離基であり、
ZはC、N、またはSiであり、
Qは(ZR”nbであり、
aは0〜5の整数であり、
bは0〜20の整数であり、
cは0〜4の整数であり、
qは0〜7の整数であり、そして
nは1〜2の整数である。
【0187】
ある実施形態においては、このポリマーは、式XVIのモノマーと式XVII〜XXIIからなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーとのコポリマーであり:
【0188】
【化23】

【0189】
【化24】

【0190】
【化25】

【0191】
式中、
RおよびYは独立して、H、D、アルキル、フルオロアルキル、アリール、フルオロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、NR”2、R’、
【0192】
【化26】

【0193】
からなる群から選択され、
R’は架橋性基であり、
R”は独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、アリール、フルオロアリール、およびR’からなる群から選択され、
Qは(ZR”nbであり、
Xは、それぞれ同じかまたは異なるものであることができ、そして脱離基であり、
ZはC、N、またはSiであり、
Eは(ZR”nb、O、S、Se、またはTeであり、
aは0〜5の整数であり、
bは0〜20の整数であり、
cは0〜4の整数であり、
qは0〜7の整数であり、そして
nは1〜2の整数である。
【0194】
正孔輸送層用のポリマーは一般に、3つの公知の合成ルートによって製造することができる。Yamamoto、Progress in Polymer Science、Vol.17、p.1153(1992)に記載されているような、第1の合成方法においては、モノマー単位のジハロまたはジトリフラート誘導体が、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)などの、化学量論量のゼロ価のニッケル化合物と反応させられる。Colonら、Journal of Polymer Science、Part A、Polymer chemistry Edition、Vol.28、p.367(1990)に記載されているような、第2の方法においては、モノマー単位のジハロまたはジトリフラート誘導体が、二価のニッケルイオンをゼロ価のニッケルに還元することができる化学量論量の物質の存在下に触媒量のNi(II)化合物と反応させられる。好適な物質としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウムおよびリチウムが挙げられる。米国特許第5,962,631号明細書、および国際公開第00/53565号パンフレットに記載されているような、第3の方法においては、1モノマー単位のジハロまたはジトリフラート誘導体が、テトラキス(トリフェニルホスフィン)PdまたはPd(OAc)2などの、ゼロ価または二価のパラジウム触媒の存在下に、ボロン酸、ボロン酸エステル、およびボランから選択される2つの反応性基を有する別のモノマー単位の誘導体と反応させられる。
【0195】
ある実施形態においては、正孔輸送層は、P1からP11からなる群から選択されるポリマーを含む:
【0196】
【化27】

【0197】
【化28】

【0198】
【化29】

【0199】
【化30】

【0200】
ある実施形態においては、正孔輸送層は、この層の形成の後で架橋されたP2〜P5およびP7からなる群から選択されるポリマーを含む。
【0201】
ある実施形態においては、正孔輸送層は、この層の形成の後で加熱された、P1およびP6、P8、P9、またはP11からなる群から選択されるポリマーを含む。
【0202】
一実施形態においては、正孔輸送層は非ポリマー正孔輸送材料を含む。正孔輸送分子の例としては、4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);1,1−ビス[ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4-(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1-フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチル-フェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);および、銅フタロシアニンなどの、ポルフィリン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0203】
一実施形態においては、正孔輸送層は、式XXIIIを有する材料を含み:
【0204】
【化31】

【0205】
式中、
Arはアリーレン基であり、
Ar’およびAr”は独立してアリール基から選択され、
24〜R27は独立して、水素、アルキル、アリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アリールオキシ、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルチオ、ホスフィノ、シリル、−COR、−COOR、−PO32、-OPO32、およびCNからなる群から選択され、
Rは、水素、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、およびアミノからなる群から選択され、そして
mおよびnはそれぞれ独立して、0〜5の値を有する整数であり、ここで、m+n≠0である。
【0206】
式XXIIIの一実施形態においては、Arは、直線状配置で2つ以上のオルト縮合ベンゼン環を含有するアリーレン基である。
【0207】
正孔輸送層はまたフラーレンを含む。ある実施形態においては、フラーレンは、正孔輸送材料と一緒に適用されて単層を形成する。ある実施形態においては、フラーレンは、正孔輸送層の総重量を基準として、1〜5重量%の量で存在する。
【0208】
ある実施形態においては、フラーレンは、正孔輸送材料の上に薄層として堆積される。この薄層は、溶液堆積または蒸着によって形成することができる。
【0209】
フラーレンの例としては、下に示されるC60、C60−PCMB、およびC70、
【0210】
【化32】

【0211】
ならびにC84および高級フラーレンが挙げられる。フラーレンのいずれも、C70−PCBM、C84−PCBM、および高級類似体などの、(3−メトキシカルボニル)−プロピル−1−フェニル基(「PCBM」)で誘導体化することができる。フラーレンの組み合わせを使用することができる。
【0212】
5.エレクトロルミネセンス材料
あらゆるエレクトロルミネセンス(「EL」)材料を、それらが希望する色を発する限り、使用することができる。ある実施形態においては、希望する色は、赤、緑および青から選択される。エレクトロルミネセンス材料としては、小分子有機蛍光化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、およびそれらの混合物が挙げられる。蛍光化合物の例としては、ピレン、ペリレン、ルブレン、クマリン、それらの誘導体、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属錯体の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;Petrovらの米国特許第6,670,645号明細書ならびに国際公開第03/063555号パンフレットおよび国際公開第2004/016710号パンフレットに開示されているようなフェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子、またはフェニルピリミジン配位子とのイリジウムの錯体などの、シクロメタレート化イリジウムおよび白金エレクトロルミネッセンス化合物、ならびに、たとえば、国際公開第03/008424号パンフレット、国際公開第03/091688号パンフレット、および国際公開第03/040257号パンフレットに記載されている有機金属錯体、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。電荷輸送ホスト材料と金属錯体とを含むエレクトロルミネッセンス発光層が、Thompsonらによって米国特許第6,303,238号明細書に、ならびにBurrowsおよびThompsonによって国際公開第00/70655号パンフレットおよび国際公開第01/41512号パンフレットに記載されている。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0213】
ある実施形態においては、EL材料はホスト材料と共に存在する。ある実施形態においては、このホストは電荷輸送材料である。EL/ホストシステムにおいては、EL材料は、小分子またはポリマーであることができ、ホストは独立して小分子またはポリマーであることができる。
【0214】
ある実施形態においては、EL材料は、イリジウムのシクロメタレート化錯体である。ある実施形態においては、この錯体は、フェニルピリジン、フェニルキノリン、およびフェニルイソキノリン、ならびにβ−ジエノラート内の第3の配位子から選択される2つの配位子を有する。配位子は、非置換であってもF、D、アルキル、CN、またはアリール基で置換されていることもできる。
【0215】
ある実施形態においては、EL材料は、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、およびポリスピロビフルオレンからなる群から選択されるポリマーである。
【0216】
ある実施形態においては、EL材料は、非ポリマーのスピロビフルオレン化合物およびフルオランテン化合物からなる群から選択される。
【0217】
ある実施形態においては、EL材料は、アリールアミン基を有する化合物である。一実施形態においては、EL材料は下式から選択され:
【0218】
【化33】

【0219】
式中、
Aは、それぞれ同じかまたは異なるものであり、3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり、
Qは、単結合かまたは3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり、
nおよびmは独立して、1〜6の整数である。
【0220】
上の式の一実施形態においては、各式におけるAおよびQの少なくとも1つは、少なくとも3つの縮合環を有する。一実施形態においては、mおよびnは1に等しい。一実施形態においては、Qはスチリルまたはスチリルフェニル基である。
【0221】
ある実施形態においては、Qは、少なくとも2つの縮合環を有する芳香族基である。ある実施形態においては、Qは、ナフタレン、アントラセン、クリセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、およびルブレンからなる群から選択される。
【0222】
ある実施形態においては、Aは、フェニル、トリル、ナフチル、およびアントラセニル基からなる群から選択される。
【0223】
一実施形態においては、EL材料は下式を有し:
【0224】
【化34】

【0225】
式中、
Yは、それぞれ同じかまたは異なるものであり、3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり、
Q’は、芳香族基、二価のトリフェニルアミン残基、または単結合である。
【0226】
ある実施形態においては、EL材料はアリールアセンである。ある実施形態においては、EL材料は非対称アリールアセンである。
【0227】
ある実施形態においては、EL材料はクリセン誘導体である。用語「クリセン」は、1,2−ベンゾフェナントレンを意味することを意図している。ある実施形態においては、EL材料は、アリール置換基を有するクリセンである。ある実施形態においては、EL材料は、アリールアミノ置換基を有するクリセンである。ある実施形態においては、EL材料は、2つの異なるアリールアミノ置換基を有するクリセンである。ある実施形態においては、クリセン誘導体は藍色の発光を有する。
【0228】
ある実施形態においては、ホストは、ビス−縮合環式芳香族化合物である。
ある実施形態においては、ホストはアントラセン誘導体化合物である。ある実施形態においては、この化合物は式:
An−L−An
を有し、
式中、
Anはアントラセン部分であり、
Lは二価の連結基である。
【0229】
この式のある実施形態においては、Lは、単結合、−O−、−S−、−N(R)−、または芳香族基である。ある実施形態においては、Anはモノ−またはジフェニルアントリル部分である。
【0230】
ある実施形態においては、ホストは式:
A−An−A
を有し、
式中、
Anはアントラセン部分であり、
Aは芳香族基である。
【0231】
ある実施形態においては、ホストはジアリールアントラセンである。ある実施形態においては、この化合物は対称であり、そしてある実施形態においては、この化合物は非対称である。
【0232】
ある実施形態においては、ホストは式:
【0233】
【化35】

【0234】
を有し、
式中、
1およびA2はそれぞれ同じかまたは異なるものであり、H、芳香族基、およびアルケニル基からなる群から選択されるか、またはAは、1つまたは複数の縮合芳香族環を表すことができ、
pおよびqは同じかまたは異なるものであり、1〜3の整数である。
【0235】
ある実施形態においては、アントラセン誘導体は非対称である。ある実施形態においては、p=2およびq=1である。ある実施形態においては、A1およびA2の少なくとも1つはナフチル基である。
【0236】
ある実施形態においては、ホストは、光活性層中で発光体として別のホストと組み合わせて使用することができる。
【0237】
ある実施形態においては、ホストは、少なくとも99.9%のHPLC純度、および0.01%未満の不純物吸光度を有する。用語「HPLC純度」は、物質に関する場合、高性能液体クロマトグラフィーによって測定されるように、特定物質ピーク対210〜500nmの波長範囲にわたって積分されるすべてのその他のピークの相対的な吸光度比を意味することを意図している。用語「不純物吸光度」は、450〜1000nmの範囲におけるTHF中の物質の少なくとも2%(重量/体積)溶液の最大吸光度(吸光度単位での)を意味することを意図している。
【0238】
一実施形態においては、EL材料は小分子である。一実施形態においては、EL材料は、ホスト材料と一緒に適用される。一実施形態においては、ホスト材料はポリマーである。ポリマーホスト材料の例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)が挙げられる。一実施形態においては、ホスト材料は小分子である。本明細書において使用される場合、用語「小分子」は、繰り返しモノマー単位を持たない、かつ、5000未満の分子量を有する物質を意味する。
【0239】
小分子青色EL材料の幾つかの具体例は、
【0240】
【化36】

【0241】
【化37】

【0242】
である。
小分子緑色EL材料の幾つかの例は、
【0243】
【化38】

【0244】
(この緑色EL化合物はまた、1つまたは複数のメチル置換基を有することができる)
G2:1,3,6,8−テトラキス−(4−トリメチルシラニル−フェニル)−ピレン
である。
小分子赤色発光体の幾つかの具体例は、
【0245】
【化39】

【0246】
【化40】

【0247】
【化41】

【0248】
である。
小分子ホスト材料の幾つかの例は、
【0249】
【化42】

【0250】
【化43】

【0251】
H4:N,N’−ジ(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ−(1−ナフチル)ベンジジン
である。
【0252】
6.その他の層
デバイスのその他の層は、このような層に有用であることが知られているあらゆる材料でできていることができる。本発明のデバイスは、アノード層210またはカソード層260に隣接することができる支持体または基体(図示せず)を含んでもよい。ほとんどの場合、支持体はアノード層210に隣接している。支持体は、可撓性であることも剛性であることも、有機であることも無機であることもできる。一般に、ガラスまたは可撓性有機フィルムが支持体として使用される。アノード層210は、カソード層260と比べて正孔の注入により効率的である電極である。アノードは、金属、混合金属、合金、金属酸化物または混合酸化物を含有する材料を含むことができる。好適な材料としては、2族元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、11族元素、4族、5族、および6族の元素、ならびに8〜10族の遷移元素の混合酸化物が挙げられる。アノード層210が光透過性であるべきであるなら、インジウム−スズ酸化物などの12族、13族、および14族の元素の混合酸化物を使用することができる。本明細書において使用される場合、語句「混合酸化物」は、2族元素または12族、13族、もしくは14族の元素から選択される2つ以上の異なる陽イオンを有する酸化物を意味する。アノード層210用の材料の幾つかの非限定的な具体例としては、インジウム−スズ酸化物(「ITO」)、アルミニウム−スズ酸化物、金、銀、銅、およびニッケルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アノードはまた、ポリアニリン、ポリチオフェン、またはポリピロールなどの有機材料を含むこともできる。
【0253】
アノード層210は、化学蒸着法または物理蒸着法、あるいはスピンキャスト法によって形成することができる。化学蒸着は、プラズマ化学蒸着(「PECVD」)または金属有機化学蒸着(「MOCVD」)として行うことができる。物理蒸着としては、イオンビームスパッタリングなどのスパッタリング、ならびにeビーム蒸発および抵抗蒸発のあらゆる形態を挙げることができる。物理蒸着の具体的な形態としては、高周波マグネトロンスパッタリング、および誘導結合プラズマ物理蒸着(「IMP−PVD」)が挙げられる。これらの堆積技術は、半導体製造分野において周知である。
【0254】
通常、アノード層210は、リソグラフィ作業中にパターン化される。このパターンは、希望に応じて変更することができる。これらの層は、第1の電気接触層材料を適用する前に、たとえば、第1の可撓性複合バリア構造上にパターン化されたマスクまたはレジストを配置することによってパターンで形成することができる。あるいは、これらの層は、全体の層として適用することができ(ブランケット堆積とも呼ばれる)、続いて、たとえば、パターン化されたレジスト層と湿式化学エッチングまたはドライエッチング技術とを使用してパターン化することができる。当技術分野において周知である他のパターン化方法を使用することもできる。電子デバイスがアレイ内に配置される場合、典型的にはアノード層210は、実質的に同方向に延在する長さを有する実質的に平行なストリップに成形される。
【0255】
一実施形態においては、プライマー層(図示せず)は、正孔注入層220と正孔輸送層230との間か、または正孔輸送層230とEL層240との間に存在する。プライマー層は、次の層の溶液堆積を促進する。一実施形態においては、プライマー層は、正孔注入層上への堆積を促進する。プライマー層は、正孔注入層の表面エネルギーよりも大きい表面エネルギーを有する。プライマー層は、正孔注入層からEL層への正孔の輸送を可能にし、最終デバイス性能を有意には劣化させない。
【0256】
一実施形態においては、プライマー層は、絶縁材料を含む非常に薄い層である。一実施形態においては、この層は、50Åまたはそれ未満の厚さを有する。一実施形態においては、この層は、10Åまたはそれ未満の厚さを有する。一実施形態においては、絶縁プライマー層はポリマーを含む。一実施形態においては、絶縁プライマー層は小分子材料を含む。一実施形態においては、絶縁プライマー層は、層の形成後に架橋して、次に続く層の形成に使用される溶剤への溶解性を低下させることができる反応性基を有する材料を含む。絶縁プライマー材料の例としては、ビニルおよび(メタ)アクリレートポリマーおよびオリゴマーが挙げられる。
【0257】
一実施形態においては、プライマー層は正孔輸送材料を含む。正孔輸送材料の例は上に議論されてきた。
【0258】
任意選択の層250は、電子の注入/輸送の両方を促進する機能を果たすことができるし、かつ、層界面での消光反応を防止するための閉じ込め層としても機能することができる。より具体的には、層250は、電子の移動を促進し、この層がなければ層240および260が直接接触する場合の消光反応の可能性を減少させることができる。任意選択の層250用の材料の例としては、金属キレート化オキシノイド化合物(たとえば、Alq3など);フェナントロリン系化合物(たとえば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DDPA」)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DPA」)など);アゾール化合物(たとえば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(「PBD」など)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(「TAZ」など);他の類似の化合物;またはそれらの1つまたは複数のあらゆる組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。あるいは、任意選択の層250は無機であってよく、BaO、LiF、Li2Oなどを含んでもよい。
【0259】
カソード層260は、電子または負電荷キャリアの注入に特に有効である電極である。カソード層260は、第1の電気接触層(この場合、アノード層210)よりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であることができる。一実施形態においては、用語「低い仕事関数」は、約4.4eV以下の仕事関数を有する材料を意味することを意図している。一実施形態においては、「高い仕事関数」は、少なくとも約4.4eVの仕事関数を有する材料を意味することを意図している。
【0260】
カソード層用の材料は、1族のアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Rb、Cs,)、2族金属(たとえば、Mg、Ca、Baなど)、12族金属、ランタニド(たとえば、Ce、Sm、Euなど)、およびアクチニド(たとえば、Th、Uなど)から選択することができる。アルミニウム、インジウム、イットリウム、およびそれらの組み合わせなどの材料を使用することもできる。カソード層260用の材料の非限定的な具体例としては、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユウロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム、ならびにそれらの合金および組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0261】
通常、カソード層260は、化学蒸着法または物理蒸着法によって形成される。
【0262】
他の実施形態においては、追加層が有機電子デバイス内に存在することができる。
【0263】
各構成層用の材料の選択は、高いデバイス効率を有するデバイスを提供するという目標を、デバイスの稼働寿命考慮事項、製造時間および複雑性要因、ならびに当業者に認識されている他の考慮事項とバランスさせることによって、好ましくは決定される。最適な構成要素、構成要素の構成、および組成アイデンティティの決定は、当業者にとって日常的な作業であることは理解されるであろう。
【0264】
一実施形態においては、種々の層は以下の範囲の厚さを有する:アノード210、500〜5000Å、一実施形態においては1000〜2000Å;正孔注入層220、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;正孔輸送層230、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;エレクトロルミネセンス層240、10〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;任意選択の電子輸送層250、50〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;カソード260、200〜10000Å、一実施形態においては300〜5000Å。
【0265】
動作中、適切な電源(図示せず)からの電圧がデバイス200に印加される。それによって、デバイス200の層に電流が流れる。電子は有機ポリマー層に入り、フォトンを放出する。アクティブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる、あるOLEDでは、エレクトロルミネセンス有機フィルムの個別の堆積物を、電流の流れによって独立して励起させ、個別のピクセルを発光させることができる。パッシブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる、あるOLEDでは、エレクトロルミネセンス有機フィルムの堆積物は、電気接触層の横列および縦列によって励起させることができる。
【0266】
本明細書に記載される新規OLEDに電圧が印加される場合、赤色サブピクセルは赤色光を発し、緑色サブピクセルは緑色光を発し、青色サブピクセル青色光を発する。
【0267】
7.方法
本明細書に記載される新規方法は、第1、第2および第3のサブピクセル領域を有するマルチカラー有機発光ダイオードを形成するものであって、
アノード層の上に正孔注入層を適用するステップであって、前記正孔注入層が導電性ポリマーとフッ素化酸ポリマーとを含むステップと、
正孔注入層の上に正孔輸送層を適用するステップであって、前記正孔輸送層が正孔輸送材料とフラーレンとを含むステップと、
第1のサブピクセル領域に第1のエレクトロルミネセンス材料を適用するステップと、
第2のサブピクセル領域に第2のエレクトロルミネセンス材料を適用するステップと、
青色エレクトロルミネセンス材料を全体に適用するステップと、
カソードを適用するステップと
を含み、
ここで、第1および第2のエレクトロルミネセンス材料が、緑色エレクトロルミネセンス材料および赤色エレクトロルミネセンス材料からなる群から選択され、
ただし、第2のエレクトロルミネセンス材料が、第1のエレクトロルミネセンス材料の色とは異なる色を発する方法である。
【0268】
アノードは一般に、上に議論されたように、基体上に存在する。用語「基体」は、剛性または可撓性のいずれであることができ、1つまたは複数の材料の1つまたは複数の層を含んでもよい母材を意味することを意図しており、母材としては、ガラス、ポリマー、金属、もしくはセラミック材料、またはそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0269】
ある実施形態においては、特にEL材料が液相堆積技術によって適用される場合、基体はまた、液体閉じ込め構造を含有する。閉じ込め構造は、ピクセルのウェル、バンクなどの拡散の幾何学的な障害物である。効果的であるためには、これらの構造は大きくて、堆積される材料の湿潤厚さに匹敵しなければならない。ある実施形態においては、この構造は、完全な閉じ込めには不十分であるが、印刷された層の厚さ均一性の調整を依然として可能にする。
【0270】
一実施形態においては、第1の層は、いわゆるバンク構造の上に適用される。バンク構造は、典型的にはフォトレジスト、有機材料(たとえば、ポリイミド)、または無機材料(酸化物、窒化物など)から形成される。バンク構造は、液体形態の第1の層を閉じ込めて色の混合を防止するために、および/または液体形態から乾燥する場合の第1の層の厚さ均一性を改善するために、および/または下にある特徴部を液体との接触から保護するために使用することができる。このような下にある特徴部としては、導電性トレース、導電性トレース間の間隙、薄膜トランジスタ、電極などを挙げることができる。
【0271】
一実施形態においては、正孔注入層は、アノードのある基体上への正孔注入材料の水性分散体の液相堆積によって形成される。一実施形態においては液相堆積は連続である。連続堆積技術としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、液相堆積は不連続である。不連続堆積技術としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、正孔注入層は、全体で形成され、パターン化されない。
【0272】
一実施形態においては、正孔輸送層は、液体媒体中の正孔輸送材料とフラーレンとの液相堆積によって形成される。正孔輸送層は、それが溶解しているかまたは分散している、およびそれからフィルムが形成されるあらゆる液体媒体から堆積することができる。一実施形態においては、液体媒体は本質的に、1つまたは複数の有機溶剤からなる。一実施形態においては、液体媒体は本質的に、水または水および有機溶剤からなる。一実施形態においては、有機溶剤は芳香族溶剤である。一実施形態においては、有機溶剤は、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソール、およびそれらの混合物から選択される。正孔輸送材料は、0.2〜2重量パーセントの濃度で液体媒体中に存在することができる。正孔輸送材料の他の重量百分率を、液体媒体に依存して使用することができる。正孔輸送層は、あらゆる連続または不連続液相堆積技術によって適用することができる。一実施形態においては、正孔輸送層は、スピンコーティングによって適用される。一実施形態においては、正孔輸送層は、インクジェット印刷によって適用される。液相堆積後に、液体媒体は、室温でまたは加熱しながら、空気中で、不活性雰囲気中で、または真空によって除去することができる。一実施形態においては、この層は、300℃またはそれ未満の温度に加熱される。一実施形態においては、加熱温度は170℃〜275℃である。一実施形態においては、加熱温度は170℃〜200℃である。一実施形態においては、加熱温度は190℃〜220℃である。一実施形態においては、加熱温度は210℃〜240℃である。一実施形態においては、加熱温度は230℃〜270℃である。一実施形態においては、加熱温度は270℃〜300℃である。加熱時間は温度に依存し、一般に5〜60分である。一実施形態においては、最終層厚さは5〜50nmである。一実施形態においては、最終層厚さは5〜15nmである。一実施形態においては、最終層厚さは15〜25nmである。一実施形態においては、最終層厚さは25〜35nmである。一実施形態においては、最終層厚さは35〜50nmである。一実施形態においては、正孔輸送層は、全体で形成され、パターン化されない。
【0273】
ある実施形態においては、この方法は、EL材料の堆積前に、ぬらすことができるおよびぬらすことができない領域の液体閉じ込めパターンを形成するステップをさらに含む。用語「液体閉じ込め」は、ワークピース内のまたは上の構造またはパターンを意味することを意図しており、ここで、このような1つまたは複数の構造またはパターンは、それらだけでまたは集団で、液体がワークピースの上を流れる場合に、領域または部位内に液体を抑制するかまたは導くという主要な機能を果たす。液体閉じ込めパターンは、液体媒体から堆積されるEL材料を閉じ込めるために使用される。
【0274】
一実施形態においては、液体閉じ込めパターンは、パターンで正孔輸送層の上に低い表面エネルギー材料(「LSE」)を適用することによって形成される。用語「低い表面エネルギー材料」は、低い表面エネルギーの層を形成する材料を意味することを意図している。用語「表面エネルギー」は、材料から単位面積の表面を形成するために必要なエネルギーである。表面エネルギーの特徴は、ある表面エネルギーを有する液体材料が、より低い表面エネルギーを有する表面をぬらさないことである。LSEは、正孔輸送層のそれよりも低い表面エネルギーを有する層を形成する。一実施形態においては、LSEはフッ素化材料である。LSEは、蒸着または熱転写によって適用することができる。LSEは、液体媒体から不連続液相堆積技術によって適用することができる。EL材料がLSE層のそれよりも高い表面エネルギーを有する液体媒体から堆積される場合、液体媒体は、LSEによって被覆されていない領域をぬらし、それらの領域にEL材料を堆積するであろう。
【0275】
一実施形態においては、液体閉じ込めパターンは、LSEのブランケット層を堆積することによって形成される。LSEは次にパターンで除去される。これは、たとえば、フォトレジスト技術を使用してかまたはレーザーアブレーションによって行うことができる。一実施形態においては、LSEは、熱不安定性であり、IRレーザーでの処理によって除去される。EL材料が、LSE層のそれよりも高い表面エネルギーを有する液体媒体から堆積される場合、液体媒体は、LSEによって被覆されていない領域をぬらし、それらの領域にEL材料を堆積するであろう。
【0276】
一実施形態においては、液体閉じ込めパターンは、反応性の界面活性組成物(「RSA」)を正孔輸送層に適用することによって形成される。RSAは、低い表面エネルギーを有する放射線感受性の組成物である。一実施形態においては、RSAはフッ素化材料である。放射線に露光される場合、露光および未露光領域を物理的に区別できるようにRSAの少なくとも1つの物理的性質および/または化学的性質が変化する。RSAでの処理は、処理されつつある材料の表面エネルギーを低下させる。RSAが正孔輸送層に適用された後、それは放射線にパターンで露光され、現像されて露光領域または未露光領域のいずれかが除去される。現像技術の例としては、液体媒体での処理、吸収性材料での処理、粘着性材料での処理などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。EL材料が、RSA層のそれよりも高い表面エネルギーを有する液体媒体から堆積される場合、液体媒体は、RSAによって被覆されていない領域をぬらし、それらの領域にEL材料を堆積するであろう。
【0277】
一実施形態においては、液体閉じ込めパターンは、正孔輸送層の選択領域を除去し、非被覆された正孔注入層の領域を残すことによって形成される。これは、たとえば、フォトレジスト技術を使用してかまたはレーザーアブレーションによって行うことができる。EL材料が、正孔注入層のそれよりも高い表面エネルギーを有する液体媒体から堆積される場合、液体媒体は、そのまま残る正孔輸送層の領域をぬらし、それらの領域にEL材料を堆積するであろう。
【0278】
正孔輸送層の形成の後に、および、場合により、液体閉じ込めパターンの形成の後に、第1のEL層が第1のサブピクセル領域に形成される。第1のEL層は、緑色EL材料か、または赤色EL材料であることができる、第1のEL材料を含む。一実施形態においては、第1のEL材料は、蒸着によって適用される。この材料が第1のサブピクセル領域においてのみ堆積されるように、マスクを使用することができる。一実施形態においては、液体閉じ込めパターンが存在し、第1のEL材料は、液体組成物から液相堆積によって適用される。液相堆積法は、第1のEL材料が第1のELサブピクセル領域においてのみ堆積されるように実施される。一実施形態においては、液体組成物はホスト材料をさらに含む。
【0279】
第2のEL層が次に形成される。第2のEL層は第2のEL材料を含む。第2のEL材料は、第1のEL材料と異なる限り、緑色EL材料かまたは赤色EL材料であることができる。このようにして、たとえば、第1のEL材料が緑色RL材料であるならば、第2のEL材料は赤色EL材料であろう。一実施形態においては、第2のEL材料は蒸着によって適用される。一実施形態においては、液体閉じ込めパターンが存在し、第2のEL材料は液体組成物から液相堆積によって適用される。液相堆積法は、第2のEL材料が第2のELサブピクセル領域においてのみ堆積されるように実施される。一実施形態においては、液体組成物はホスト材料をさらに含む。
【0280】
第1のEL層および場合により第2のEL層の堆積後に、青色EL材料が全体に適用される。「全体に」とは、デバイスの活性領域の実質的にすべてが被覆されることを意味する。一実施形態においては、ディスプレイ外縁のほかはすべてが青色EL材料で被覆される。このようにして、EL材料は、第3のサブピクセル領域にならびに第1および第2の(存在する場合)サブピクセル領域中の第1および第2の(存在する場合)EL材料の上に堆積される。一実施形態においては、青色EL材料は、液体組成物から連続液相堆積技術によって適用される。この場合、青色EL材料を堆積する液体組成物は、前に堆積された赤色EL材料を実質的に溶かさないものであるべきである。青色EL材料とより高いエネルギーの発光極大を有するあらゆる他のEL材料との混合が実質的に全くないことが望ましい。一実施形態においては、液体組成物はホスト材料をさらに含む。一実施形態においては、青色EL材料は、蒸着技術によって適用される。
【0281】
青色EL材料の適用後に、カソードが上記のように堆積される。ある実施形態においては、電子輸送層、および/または電子注入層は、カソードの形成前に堆積される。ある実施形態においては、デバイスは、酸素および水分への暴露を防ぐために封入される。
【0282】
電圧が本明細書に記載されるOLEDに印加される場合、第3のサブピクセルは青色光を発するが、緑色EL材料を有するサブピクセルは緑色光を発し、赤色EL材料を有するサブピクセルは赤色光を発する。
【0283】
この新規方法の一実施形態においては、第1および第2のEL層は、液体組成物から堆積によって形成され、青色EL層は蒸着法によって形成される。一実施形態においては、第1および第2のEL層は、液体組成物中の小分子EL材料およびホスト材料のインクジェット印刷または連続ノズル印刷によって形成される。青色EL層は、青色発光小分子EL材料の熱蒸着によって形成される。
【0284】
ある実施形態においては、赤色(「R」)および緑色(「G」)ピクセルは、ワンパスで2つの隣接ピクセル行を形成して印刷される。青色(「B」)ピクセルは、蒸着によって複列の間に単列として形成される。このようにしてピクセルの順番は、
R−R−B−G−G−B−R−R−B−G−G−B−R−R−B−G−G−B−R−R−B、など
である。
【0285】
シングル印刷パスはピクセルの2つの行を形成するので、印刷デバイスのそれよりも高い解像度を得ることができる。ピクセルの複列は、蒸着された青色層によって互いに分離される。
【0286】
この新規方法の一実施形態においては、アノードは、インジウム・スズ酸化物を含み、ガラス基体上にパターン化される。正孔注入層は、コロイド形成性フッ素化ポリマースルホン酸でドープされた導電性ポリマーの水性分散体から連続液相堆積技術によって形成される。正孔輸送層は、C60フラーレンを含有する架橋性正孔輸送ポリマーの非水性溶液から堆積される。この層の堆積後に、それは架橋を達成するために加熱される。液体閉じ込めパターンは、RSAの適用、UV光での画像形成、および未露光領域の洗い落としによって形成される。緑色EL小分子材料が次に、ホスト材料をさらに含む液体組成物から第1のサブピクセル領域に堆積される。赤色EL小分子材料が次に、ホスト材料をさらに含む液体組成物から第2のサブピクセル領域に堆積される。青色EL小分子材料が次に全体に蒸着される。小分子電子輸送材料が次に全体に蒸着される。小分子電子注入層が次に蒸着される。そして最後に、カソードが堆積される。
【実施例】
【0287】
本明細書に記載される概念を以下の実施例でさらに説明するが、実施例は特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0288】
実施例1
本実施例は、正孔輸送材料P5の製造を実証する。
【0289】
【化44】

【0290】
化合物2の合成
窒素の雰囲気下に、250mLの丸底フラスコに、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(25.0g、45.58ミリモル)、フェニルボロン酸(12.23g、100.28ミリモル)、Pd2(dba)3(0.42g、0.46ミリモル)、PtBu3(0.22g、1.09ミリモル)および100mLのトルエンを装入した。反応混合物を5分間撹拌し、その後KF(8.74g、150.43ミリモル)を2つに分けて加え、生じた溶液を室温で一夜撹拌した。混合物を500mLのTHFで希釈し、シリカおよびセライトのプラグを通して濾過し、揮発分を減圧下に濾液から除去した。黄色オイルを、ヘキサンを溶離液として使用してシリカゲルでフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。生成物は80.0%で白色固体として得られた(19.8g)。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ=7.78(d,J=7.82Hz,2H),7.69(d,J=7.23Hz,4H),7.60(d,J=8.29Hz,4H),7.48(t,J=7.71Hz,4H),7.36(t,J=7.34Hz,2H),2.07−2.04(m,4H),1.22−0.08(m,20H),0.81(t,J=7.10Hz,6H),0.78−0.74(m,4H)。13C NMR(126MHz,CDCl3)δ=151.96(s,2C),148.02(s,2C),142.02(s,2C),140.36(s,2C),129.03(d,2C),127.48(d,4C),127.37(d,2C),126.31(d,4C),121.83(d,2C),120.23(d,2C),55.57(s,1C),40.69(t,2C),32.03(t,2C),31.84(t,2C),30.27(t,2C),29.43(t,2C),24.08(t,2C),22.91(t,2C),14.34(q,2C)。
【0291】
【化45】

【0292】
化合物3の合成
冷却器および滴加漏斗を備えた、250mLの3口丸底フラスコをN2で30分間フラッシュした。9,9−ジオクチル−2,7−ジフェニルフルオレン(19.8g、36.48ミリモル)を加え、100mLのジクロロメタンに溶解させた。無色透明な溶液を−10℃に冷却し、20mLのジクロロメタン中の臭素(12.24g、76.60ミリモル)を滴加した。混合物を0℃で1時間撹拌し、次に室温にまで暖め、一夜撹拌した。100mLの水性10%Na223溶液を加え、反応混合物を1時間撹拌した。有機層を抜き出し、水層を100mLのジクロロメタンで3回洗浄した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固した。生じたオイルへのアセトンの添加は白色の沈殿物を与えた。濾過および乾燥すると、白色粉末が得られた(13.3g、52.2 %)。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ=7.74(d,J=7.79Hz,2H),7.58−7.55(m,4H),7.53−7.49(m,8H),2.02−1.99(m,4H),1.18−1.04(m,20H),0.77(t,J=7.14Hz,6H),0.72−0.66(m,4H)。13C NMR(126MHz,CDCl3)δ=152.14(s,2C),140.83(s,2C),140.55(s,2C),139.26(s,2C),132.13(d,4C),129.04(d,2C),126.20(d,4C),121.63(d,2C),121.58(d,2C),120.46(s,2C),55.63(s,1C),40.60(t,2C),32.03(t,2C),30.21(t,2C),29.43(t,2C),29.40(t,2C),24.06(t,2C),22.84(t,2C),14.29(q,2C)。
【0293】
【化46】

【0294】
化合物4の合成
窒素の雰囲気下に、250mLの丸底フラスコに,、3(13.1g、18.70ミリモル)、アニリン(3.66g、39.27ミリモル)、Pd2(dba)3(0.34g、0.37ミリモル)、PtBu3(0.15g、0.75ミリモル)および100mLのトルエンを装入した。反応混合物を10分間撹拌し、その後NaOtBu(3.68g、38.33ミリモル)を加え、反応混合物を室温で1日撹拌した。生じた反応混合物を3Lのトルエンで希釈し、シリカおよびセライトのプラグを通して濾過した。揮発分を蒸発させると、得られた暗褐色のオイルを、1:10の酢酸エチル:ヘキサンの混合物を溶離液として使用してシリカゲルでフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。生成物は50.2%で淡黄色粉末として得られた(6.8g)。1H NMR(500MHz,CD2Cl2)δ=7.77(d,J=7.87Hz,2H),7.34−7.58(m,8H),7.31(t,J=7.61Hz,4H),7.19(d,J=8.14Hz,4H),7.15(d,J=8.40Hz,4H),6.97(t,J=7.61Hz,2H),5.91(bs,2H),2.01−2.07(m,4H),1.23−1.07(m,20H),0.82(t,J=7.01Hz,6H),0.78−0.72(m,4H)。13C NMR(126MHz,CD2Cl2)δ=152.33(s,2C),143.63(s,2C),143.15(s,2C),140.20(s,2C),140.16(s,2C),134.66(d,2C),129.96(d,4C),128.49(d,4C),125.84(d,2C),121.69(s,2C),121.46(d,2C),120.42(d,4C),118.48(d,4C),118.35(d,2C),55.86(s,1C),41.02(t,2C),32.39(t,2C),30.63(t,2C),29.81(t,2C),29.72(t,2C),24.51(t,2C),23.20(t,2C),14.43(q,2C)。
【0295】
【化47】

【0296】
化合物5の合成
冷却器を備えた250mLの3口丸底フラスコで、4(4.00g、5.52ミリモル)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(4.68g、16.55ミリモル)、Pd2(dba)3(0.30g、0.33ミリモル)およびDPPF(0.37g、0.66ミリモル)を80mLのトルエンと組み合わせた。得られた混合物を10分間撹拌した。NaOtBu(1.17g、12.14ミリモル)を加え、混合物を80℃に4日間加熱した。生じた反応混合物を1Lのトルエンおよび1LのTHFで希釈し、シリカおよびセライトのプラグを通して濾過して不溶性塩を除去した。揮発分を蒸発させると、生じた茶色のオイルを、1:10のジクロロメタン:ヘキサンの混合物を溶離液として使用してシリカゲルでフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。乾燥後に黄色粉末が得られた(4.8g、84.8 %)。1H NMR(500MHz,CD2Cl2)δ=7.78(d,J=7.71Hz,2H),7.63−7.59(m,8H),7.39(d,J=8.88Hz,4H),7.32(t,J=7.94Hz,4H),7.17(dd,J=8.14,9.34Hz,8H),7.11(t,J=7.48Hz,2H),7.03(d,J=8.88Hz,4H),2.12−2.09(m,4H),1.24−1.10(m,20H),0.82(t,J=7.01Hz,6H),0.79−0.73(m,4H)。13C NMR(126MHz,CD2Cl2)δ=152.40(s,2C),147.89(s,2C),147.62(s,2C),147.21(s,2C),140.50(s,2C),139.91(s,2C),136.84(d,4C),132.80(s,2C),130.08(d,2C),128.52(d,2C),126.14(d,4C),125.84(d,2C),125.29(d,4C),125.02(d,4C),124.14(d,2C),121.65(d,4C),120.62(d,4C),115.43(s,2C),55.93(s,1C),41.02(t,2C),32.40(t,2C),30.63(t,2C),29.83(t,2C),29.82(t,2C),24.52(t,2C),23.22(t,2C),14.48(q,2C)。
【0297】
化合物6の合成
【0298】
【化48】

【0299】
ビス(1,5−シクロオクタジエン)−ニッケル−(0)(0.556g、2.02ミリモル)を、2,2’−ビピリジル(0.0.315g、2.02ミリモル)および1,5−シクロオクタジエン(0.219g、2.02ミリモル)のN,N−ジメチルホルムアミド(無水、4mL)溶液に加えた。生じた混合物を60℃に30分間加熱した。9,9−ジオクチル−2,7−ジベンジルフルオレン(0.0834g、0.15ミリモル)および化合物5(0.88g、0.85ミリモル)のトルエン(無水、10mL)溶液を次に、撹拌中の触媒混合物に素速く加えた。混合物を60℃で7時間撹拌した。反応混合物が室温に冷えた後、それを、ゆっくり、激しく撹拌しながら250mLのメタノールへ注ぎ込み、一夜撹拌した。15mLの濃HClを加え、引き続き1時間撹拌した。沈澱物を濾過し、次に50mLのトルエンに加え、500mLのメタノールへゆっくり注ぎ込んだ。生じた淡黄色沈澱物を1時間撹拌し、次に濾過によって単離した。この固体を、クロマトグラフィー(シリカ、トルエン)と酢酸エチルからの沈澱とによってさらに精製した。生じた物質を減圧下に乾燥させた後、淡黄色のポリマーを80%収率で単離した(0.64g)。GPC(THF、室温):Mn=80,147;Mw=262,659;Mw/Mn=2.98。
【0300】
実施例2
本実施例は、青色EL材料がフラーレンを含有する正孔輸送層の上に堆積される場合の青色ピクセルの寿命の改善を実証する。
【0301】
以下の原材料を使用した:
アノード:インジウム・スズ酸化物(ITO)
緩衝層=ポリピロールとポリマーフッ素化スルホン酸との水性分散体である、緩衝材1(25nm)。この材料は、米国特許出願公開第2005/0205860号明細書の実施例1に記載されているものに類似の手順を使用して製造した。
【0302】
正孔輸送層:
実施例2=ポリマーP5+3重量%のC60
比較例A=ポリマーP5
光活性層=13:1ホストH1:ドーパントB1
電子輸送層=トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(AlQ)
カソード=LiF/Al
OLEDデバイスは、溶液処理技術と熱蒸着技術との組み合わせによって製造した。Thin Film Devices、Inc製のパターン化されたインジウム・スズ酸化物(ITO)被覆ガラス基体を使用した。緩衝材1の水性分散体をITO表面上にスピンコーティングし、加熱して溶剤を除去した。冷却後に、基体を次に正孔輸送組成物の溶液でスピンコーティングし、次に加熱して溶剤を除去した。溶剤の除去後に、層を加熱して架橋を達成した。冷却後に、ホストおよびドーパント材料を全体に蒸着した。基体をマスクし、真空チャンバーに入れた。AlQ層を熱蒸着によって、引き続きLiFの層を堆積した。マスクを次に真空で取り換え、Alの層を熱蒸着によって堆積した。チャンバーをガス抜きし、デバイスを、ガラス蓋、乾燥剤、およびUV硬化性エポキシを使用して封入した。
【0303】
このOLEDサンプルは、それらのエレクトロルミネセンス放射輝度を長時間にわたって測定することによって特徴づけられた。
【0304】
結果を図4に示す。上方の曲線は、正孔輸送層中にフラーレンがある、実施例2の構造を有するデバイスについてのものであり、下方の曲線は、フラーレンが全くない比較デバイスについてのものである。実施例2のデバイスは、寿命の明らかな改善を示す。
【0305】
実施例3
本実施例は、フラーレンの層が正孔輸送層の上に堆積される場合に青色ピクセルの寿命の改善を実証する。
【0306】
フラーレンが正孔輸送層中に全くないことを除いて、実施例2におけるようにデバイスを構築した。実施例3において、C60の層を、青色EL材料の堆積の前に、正孔輸送層の上に堆積させた。比較Bにおいては、C60層は全くなかった。
【0307】
結果を図5に示す。上方の曲線は、フラーレンの層がある、実施例3の構造を有するデバイスについてのものであり、下方の曲線は、フラーレンが全くない比較デバイスについてのものである。実施例3のデバイスは、寿命の明らかな改善を示す。
【0308】
概要または実施例において前述したすべての行為が必要なわけではなく、特定の行為の一部は不要である場合があり、1つまたは複数のさらに別の行為が、前述の行為に加えて実施される場合があることに留意されたい。さらに、行為が列挙されている順序は、必ずしもそれらが実施される順序ではない。
【0309】
以上の明細書において、具体的な実施形態を参照しながら本発明の概念を説明してきた。しかし、当業者であれば、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱せずに種々の修正および変更を行えることが理解できよう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく説明的なものであると見なすべきであり、すべてのこのような修正は本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0310】
特定の実施形態に関して、利益、その他の利点、および問題に対する解決法を以上に記載してきた。しかし、これらの利益、利点、問題の解決法、ならびに、なんらかの利益、利点、または解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがある、あらゆる特徴が、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての重要、必要、または本質的な特徴であるとして解釈すべきではない。
【0311】
別々の実施形態の状況において、明確にするために、本明細書に記載されている特定の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔にするために、1つの実施形態の状況において説明される種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることができる。本明細書において明記される種々の範囲内の数値が使用される場合、記載の範囲内の最小値および最大値の両方の前に単語「約」が付けられているかのように近似値として記載されている。この方法では、記載の範囲よりもわずかに上およびわずかに下のばらつきを使用して、その範囲内の値の場合と実質的に同じ結果を得ることができる。また、これらの範囲の開示は、ある値の一部の成分を異なる値の一部の成分と混合した場合に生じうる分数値を含めて、最小平均値と最大平均値との間のすべての値を含む連続した範囲であることを意図している。さらに、より広い範囲およびより狭い範囲が開示される場合、ある範囲の最小値を別の範囲の最大値と一致させること、およびその逆のことが本発明の意図の範囲内となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2および第3のサブピクセル領域を有するマルチカラー有機発光ダイオードの形成方法であって、
アノード層の上に正孔注入層を適用するステップであって、前記正孔注入層が少なくとも1つの導電性ポリマーとフッ素化酸ポリマーとを含むステップと、
前記正孔注入層の上に正孔輸送層を適用するステップであって、前記正孔輸送層が正孔輸送材料と少なくとも1つのフラーレンとを含むステップと、
第1のサブピクセル領域に第1のエレクトロルミネセンス材料を適用するステップと、
第2のサブピクセル領域に第2のエレクトロルミネセンス材料を適用するステップと、
青色エレクトロルミネセンス材料を全体に適用するステップと、
カソードを適用するステップと
を含み、
ここで、前記第1および第2のエレクトロルミネセンス材料が、緑色エレクトロルミネセンス材料および赤色エレクトロルミネセンス材料からなる群から選択され、
前記第2のエレクトロルミネセンス材料が、前記第1のエレクトロルミネセンス材料の色とは異なる色を発することを条件とする方法。
【請求項2】
前記正孔注入層の導電性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリセレノフェン、ポリ(テルロフェン)、ポリピロール、ポリアニリン、および多環式芳香族化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記導電性ポリマーが、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン、ピロール、アニリンおよび環式芳香族化合物からなる群から選択される前駆体モノマーと、少なくとも1つの第2のモノマーとのコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素化酸ポリマーがコロイド形成性ポリマー酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー酸がFSAポリマーである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記正孔輸送材料が、9,9−ジアルキルフルオレンとトリフェニルアミンとのコポリマー、9,9−ジアルキルフルオレンと4,4’−ビス(ビフェニルアミノ)ビフェニルとのコポリマー、9,9−ジアルキルフルオレンとTPBとのコポリマー、および9,9−ジアルキルフルオレンとNPBとのコポリマーからなる群から選択されるコポリマーを含む少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コポリマーが、(ビニルフェニル)ジフェニルアミン、9,9−ジスチリルフルオレンおよび9,9−ジ(ビニルベンジル)フルオレンからなる群から選択される第3のコモノマーをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記正孔輸送材料が、式XVI〜XXII:
【化1】

(式中、
RおよびYは独立して、H、D、アルキル、フルオロアルキル、アリール、フルオロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、NR”2、R’、
【化2】

からなる群から選択され、
R’は架橋性基であり、
R”は独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、アリール、フルオロアリール、およびR’からなる群から選択され、
Xは脱離基であり、それぞれの出現時に同じかまたは異なるものであり、
ZはC、N、またはSiであり、
Qは(ZR”nbであり、
aは0〜5の整数であり、
bは0〜20の整数であり、
cは0〜4の整数であり、
qは0〜7の整数であり、および
nは1〜2の整数である)、
【化3】

【化4】

【化5】

(式中
RおよびYは独立して、H、D、アルキル、フルオロアルキル、アリール、フルオロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、NR”2、R’、
【化6】

からなる群から選択され、
R’は架橋性基であり、
R”は独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、アリール、フルオロアリール、およびR’からなる群から選択され、
Qは(ZR”nbであり、
Xは脱離基であり、それぞれの出現時に同じかまたは異なるものであることができ、
ZはC、N、またはSiであり、
Eは(ZR”nb、O、S、Se、またはTeであり、
aは0〜5の整数であり、
bは0〜20の整数であり、
cは0〜4の整数であり、
qは0〜7の整数であり、そして
nは1〜2の整数である)
を有するモノマーから製造されるポリマーまたはコポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記正孔輸送材料が、P1〜P11:
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

からなる群から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記正孔輸送材料が、
【化12】

(式中、
Arはアリーレン基であり、
Ar’およびAr”は独立して、アリール基から選択され、
24〜R27は独立して、水素、アルキル、アリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アリールオキシ、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルチオ、ホスフィノ、シリル、−COR、−COOR、−PO32、-OPO32、およびCNからなる群から選択され、
Rは、水素、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、およびアミノからなる群から選択され、そして
mおよびnは、それぞれ独立して0〜5の値を有する整数であり、ここで、m+n≠0である)
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのフラーレンが前記正孔輸送材料の上に層として堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のエレクトロルミネセンス材料が、G1およびG2からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のエレクトロルミネセンス材料が、R1〜R6からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第3のエレクトロルミネセンス材料が、B1〜B3からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のエレクトロルミネセンス材料が第1の液体組成物から液相堆積によって適用され、第2のエレクトロルミネセンス材料が第2の液体組成物から液相堆積によって適用され、そして青色エレクトロルミネセンス材料が蒸着によって適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
液体閉じ込め構造またはバンク構造を適用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
第1、第2、および第3のサブピクセル領域を有するマルチカラー有機発光ダイオードデバイスであって、
アノードと、
少なくとも1つの導電性ポリマーとフッ素化酸ポリマーとを含む正孔注入層と、
正孔輸送材料と少なくとも1つのフラーレンとを含む、正孔輸送層と、
前記第1のサブピクセル領域中の第1のエレクトロルミネセンス層と、
前記第2のサブピクセル領域中の第2のエレクトロルミネセンス層と、
全体に青色エレクトロルミネセンス層と、
カソードと
を含み、
ここで、前記第1および第2のエレクトロルミネセンスが異なるものであり、そしてそれぞれ、緑色エレクトロルミネセンス材料および赤色エレクトロルミネセンス材料からなる群から選択される材料を含むデバイス。
【請求項18】
前記正孔輸送材料が架橋ポリマーである、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記フラーレンが、C60、C60−PCBM、C70、C70−PCBM、C84、C84-PCBM、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記フラーレンが前記正孔輸送材料の上に層を構成する、請求項17に記載のデバイス。
【請求項21】
正孔輸送材料と少なくとも1つのフラーレンとを含む正孔輸送層。
【請求項22】
前記正孔輸送材料が、
9,9−ジアルキルフルオレンとトリフェニルアミンとのコポリマー、9,9−ジアルキルフルオレンと4,4’−ビス(ビフェニルアミノ)ビフェニルとのコポリマー、9,9−ジアルキルフルオレンとTPBとのコポリマー、および9,9−ジアルキルフルオレンとNPBとのコポリマーからなる群から選択されるコポリマーを含む少なくとも1つのポリマー、または
9,9−ジアルキルフルオレンとトリフェニルアミンとのコポリマー、9,9−ジアルキルフルオレンと4,4’−ビス(ビフェニルアミノ)ビフェニルとのコポリマー、9,9−ジアルキルフルオレンとTPBとのコポリマー、および9,9−ジアルキルフルオレンとNPBとのコポリマーからなる群から選択されるコポリマーであって、それぞれが、(ビニルフェニル)ジフェニルアミン、9,9−ジスチリルフルオレンおよび9,9−ジ(ビニルベンジル)フルオレンからなる群から選択される第3のコモノマーを含むコポリマーを含む少なくとも1つのポリマー
を含む、請求項21に記載の正孔輸送層。
【請求項23】
前記フラーレンが、C60、C60−PCBM、C70、C70−PCBM、C84、C84−PCBM、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項22に記載の正孔輸送層。
【請求項24】
前記フラーレンが前記正孔輸送材料の上に層を構成する、請求項21に記載の正孔輸送層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−515260(P2010−515260A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544122(P2009−544122)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/026516
【国際公開番号】WO2008/082665
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】