説明

有機発光ディスプレイ装置

【課題】コントラスト及び耐衝撃性の向上した有機発光ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】基板10と、基板上に形成され、画像データに基づき発光する有機発光層22を有する有機発光素子20と、有機発光素子を含む基板上に形成され、前記有機発光素子を密封する密封部材30と、密封部材の両面のうち有機発光素子と対向する面に形成され、特定波長の光を選択的に吸収するための顔料を含む光吸収層51と、有機発光素子が形成された領域のうち有機発光層が形成されていない領域に対応させて、光吸収層上に形成された、光を遮断するブラックマトリックス層61とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ディスプレイ装置に係り、より詳細には、コントラスト及び耐衝撃性を向上させた有機発光ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近来、ディスプレイ装置は、携帯可能な薄型の平板ディスプレイ装置に移行する傾向にある。平板ディスプレイ装置のうち、自発光型ディスプレイ装置である有機発光ディスプレイ装置または無機発光ディスプレイ装置は、視野角が広く、コントラストに優れているだけでなく、応答速度が速いという長所を有するので、次世代ディスプレイ装置として注目されている。また、発光層の形成物質が有機物により構成される有機発光ディスプレイ装置は、無機発光ディスプレイ装置に比べて輝度、駆動電圧及び応答速度特性に優れており、多色化が可能であるという長所を有している。
【0003】
一方、平板ディスプレイ装置は、携帯が可能であって、野外で使用が可能となるよう軽量かつ薄型に製造される。しかし、野外で画像を見るとき、太陽光のような強い外光によって平板ディスプレイ装置に表示される画像のコントラストや視認性が低下する。また、室内で使用する場合であっても、室内の蛍光灯をはじめとする各種の外光により視認性が低下する。
【0004】
このような外光による視認性の低下を防止するために、従来は、平板ディスプレイ装置の全面にフィルムタイプの偏光板を付着していた。これを通じて外光が平板ディスプレイ装置に入射した後に反射されることを防止し、反射された外光の輝度を低下させることによって、外光による視認性の低下を防止するものであった。
【0005】
しかし、このような従来の平板ディスプレイ装置の場合、全面に付着されたフィルムタイプの偏光板は、複数層のフィルムを接合して製造するため、製造工程が複雑であり、コストが高く、また、厚さが増大するため、薄型のディスプレイ装置の実現が困難であった。従って、このような円偏光フィルムを使用せずに有機発光ディスプレイ装置のコントラストを向上させる必要があった。また、外部から加えられる衝撃により有機発光ディスプレイ装置が損傷を受けることを防止する必要もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コントラスト及び耐衝撃性の向上した有機発光ディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、基板と、前記基板上に形成され、画像データに基づき発光する有機発光層を有する有機発光素子と、前記有機発光素子を含む前記基板上に形成され、前記有機発光素子を密封する密封部材と、前記密封部材の両面のうち有機発光素子と対向する面に形成され、特定波長の光を選択的に吸収するための顔料を含む光吸収層と、前記有機発光素子が形成された領域のうち有機発光層が形成されていない領域に対応させて、前記光吸収層上に形成された、光を遮断するブラックマトリックス層と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記有機発光素子は、第1電極と、前記第1電極が露出するように開口部が形成された画素定義膜と、前記開口部が形成された前記第1電極上に形成された前記有機発光層と、前記有機発光層上に形成された第2電極と、を備え、前記ブラックマトリックス層は、前記光吸収層上の前記画素定義膜の前記開口部が形成されない部分に対応するように形成されうる。
【0009】
また、本発明の他の側面においては、基板と、前記基板上に形成され、画像データに基づき発光する有機発光層を有する有機発光素子と、前記有機発光素子上を含む前記基板上に形成され、前記有機発光素子を密封する密封部材と、前記有機発光素子が形成された領域のうち有機発光層が形成されない領域に対応して、前記密封部材の両面のうち有機発光素子と対向する面上に形成され、光を遮断するブラックマトリックス層と、前記ブラックマトリックス層と、前記密封部材の両面のうち有機発光素子と対向する面と、を覆い、特定波長を有する光を選択的に吸収する顔料を含む光吸収層と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のさらに他の側面においては、基板と、前記基板上に形成され、画像データに基づき発光する有機発光層を有する有機発光素子と、前記有機発光素子上を含む前記基板上に形成され、前記有機発光素子を密封する密封部材と、前記有機発光素子が形成された領域のうち有機発光層が形成されない領域に対応して、前記密封部材の両面のうち有機発光素子と対向する面上に形成され、光を遮断するブラックマトリックス層と、前記ブラックマトリックス層の間に形成され、特定波長を有する光を選択的に吸収する顔料を含む光吸収層と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記有機発光素子は、第1電極と、前記第1電極が露出するように開口部が形成された画素定義膜と、前記開口部が形成された前記第1電極上に形成された前記有機発光層と、前記有機発光層上に形成された第2電極と、を備え、前記ブラックマトリックス層は、前記密封部材の両面のうち有機発光素子に対向する面上に、前記有機発光素子の画素定義膜の前記開口部が形成されない部分に対応して形成されうる。
【0012】
また、前記光吸収層は、赤色波長領域の光を選択的に透過させる赤色顔料及び青色波長領域の光を選択的に透過させる青色顔料を含みうる。
【0013】
前記光吸収層は、550nmの波長で10%ないし90%の透光率を有しうる。
【0014】
前記ブラックマトリックス層は、5μmないし20μmの厚さを有しうる。
【0015】
前記ブラックマトリックス層は、カーボンブラック粒子及びグラファイトを含みうる。
【0016】
前記反射防止層は、外光の一部は透過して一部は反射する半透過膜と、前記半透過膜上に形成される保護膜と、を備え、前記半透過膜の屈折率は、前記保護膜の屈折率より高くありうる。
【0017】
前記保護膜は、熱硬化性樹脂、ウレタンアクリレート及びエポキシ樹脂を含みうる。
【0018】
前記半透過膜は、40ないし80%の透光率を有しうる。
【0019】
前記半透過膜は、屈折率が1.5ないし5の値を有しうる。
【0020】
前記半透過膜は、金属コロイドから形成され、金、銀またはチタンを含みうる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有機発光表示装置によれば、画像のコントラスト及び耐衝撃性を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付された図面に示す本発明に関する実施形態を参照して本発明の構成及び作用効果を詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る有機発光ディスプレイ装置の概略的な断面図を示したものである。
【0024】
有機発光ディスプレイ装置は、能動駆動(Active Matrix:AM)型と受動駆動(Passive Matrix:PM)型とに大別される。図1は、本発明の実施形態に係る有機発光ディスプレイ装置としてAM型を示しているが、本発明は、これに限定されず、PM型にも適用できる。
【0025】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る有機発光ディスプレイ装置は、基板10、有機発光素子20、密封部材30、反射防止層40、光吸収層51及びブラックマトリックス層61を備える。
【0026】
基板10は、SiOを主成分とする透明なガラス材質により形成されうるが、必ずしもこれに限定されず、透明なプラスチック材により形成されてもよい。画像が基板10方向に表示される背面発光型である場合、基板10は、透明な材質により形成される必要がある。しかし、図1に示すように、画像が密封部材30の方向に表示される前面発光型である場合は、基板10は、必ずしも透明な材質により形成される必要はない。
【0027】
基板10の上面には、基板10の平滑性及び不純物元素の浸入を遮断するために、バッファ層11を形成することができる。バッファ層11は、SiO及び/またはSiNxで形成できる。
【0028】
基板10の上面に薄膜トランジスタ(Thin Film Transister:TFT)が形成される。このTFTは、画素ごとに少なくとも一つずつ形成されるが、有機発光素子20に電気的に接続される。
【0029】
バッファ層11上に所定のパターンの半導体層12が形成される。半導体層12は、アモルファスシリコンまたはポリシリコンのような無機半導体、もしくは有機半導体により形成され、ソース領域、ドレイン領域及びチャンネル領域を備える。
【0030】
半導体層12の上部には、SiO、SiNx等から形成されるゲート絶縁膜13が形成され、ゲート絶縁膜13の上部の所定の領域にはゲート電極14が形成される。ゲート電極14は、TFTのオン/オフ信号を印加するゲートライン(図示せず)と接続されている。
【0031】
ゲート電極14の上部には層間絶縁膜15が形成され、コンタクトホールを通じてソース電極16及びドレイン電極17がそれぞれ半導体層12のソース及びドレイン領域に接続するように形成される。このように形成されたTFTは、パッシベーション膜18により覆われることによって保護される。
【0032】
パッシベーション膜18は、無機絶縁膜及び/または有機絶縁膜を使用できる。無機絶縁膜としては、SiO、SiNx、SiON、Al、TiO、Ta、HfO、ZrO、BST、PZTが含まれ、有機絶縁膜としては、汎用される高分子(PMMA、PS)、フェノール基を有する高分子誘導体、アクリル系高分子、イミド系高分子、アリールエーテル系高分子、アミド系高分子、フッ素系高分子、p−キシレン系高分子、ビニルアルコール系高分子及びこれらの混合物を含みうる。また、パッシベーション膜18は、無機絶縁膜と有機絶縁膜との複合による積層によっても形成されうる。
【0033】
パッシベーション膜18の上部には、有機発光素子のアノード電極になる第1電極21が形成され、これを覆うように、絶縁物からなる画素定義膜25が形成される。
【0034】
そして、この画素定義膜25の所定の位置に開口部24を形成した後、開口部24によって限定された領域内に有機発光素子の有機発光層22が形成される。そして、全画素を覆うように有機発光素子のカソード電極になる第2電極23が形成される。第1電極21と第2電極23との極性は、互いに逆になりうる。
【0035】
有機発光素子20は、電流が流れることによって発光して画像を表示するものであって、TFTのドレイン電極17にコンタクトホールを通じて電気的に接続された第1電極21、有機発光層22及び第2電極23を備える。
【0036】
第1電極21は、フォトリソグラフィにより形成された所定パターンによりなる。第1電極21のパターンは、PM型の場合には、互いに所定の間隔をおいたストライプ状のラインにより形成され、AM型の場合には、画素に対応する形状に形成されうる。
【0037】
第1電極21の上部に第2電極23が形成されるが、外部端子(図示せず)に接続されてカソード電極として機能できる。第2電極23は、PM型の場合には、第1電極21のパターンに直交するストライプ状であってもよく、AM型の場合には、画像が表示される活性化領域全体にわたって形成されうる。第1電極21の極性と第2電極23の極性は互いに逆になりうる。
【0038】
一方、基板10の方向に画像が表示される背面発光型である場合、第1電極21は、透明電極であり、第2電極23は、反射電極でありうる。このとき、第1電極21は、仕事関数の大きいITO、IZO、ZnO、またはInにより形成されうる。また、第2電極23は、仕事関数の小さい金属、すなわち、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Caにより形成されうる。
【0039】
図1に示すように、第2電極23の方向に画像を表示する前面発光型の有機発光素子である場合、第1電極21は反射電極で、第2電極23は透明電極でありうる。
【0040】
このとき、第1電極21をなす反射電極は、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca及びこれらの化合物で反射膜を形成した後、その上に仕事関数の大きいITO、IZO、ZnO、またはInを形成してなりうる。第2電極23をなす透明電極は、仕事関数の小さい金属、すなわち、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca及びこれらの化合物を蒸着した後、その上にITO、IZO、ZnO、またはInといった透明導電物質で補助電極層やバス電極ラインを形成してなりうる。
【0041】
また、両面発光型の場合は、第1電極21及び第2電極23の双方とも透明電極により形成されうる。
【0042】
第1電極21と第2電極23との間に介在する有機発光層22は、第1電極21と第2電極23による電気的駆動によって発光する。有機発光層22は、低分子有機物または高分子有機物を使用することができる。
【0043】
有機発光層22が低分子有機物から形成される場合、有機発光層22を中心に第1電極21の方向に正孔輸送層(Hole Transport Layer:HTL)及びホール注入層が積層され、第2電極23の方向に電子輸送層及び電子注入層が積層される。それ以外にも必要によりその他の層が積層されうる。使用可能な有機材料は、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)をはじめとして、その他の有機材料も適用可能である。
【0044】
一方、有機発光層22が高分子有機物から形成された高分子有機層の場合には、有機発光層22を中心に第1電極21の方向に正孔輸送層のみが含まれうる。正孔輸送層は、ポリエチレンジヒドロキシチオフェン(PEDOT)や、ポリアニリン(PANI)を使用してインクジェットプリンティングやスピンコーティングにより第1電極21の上部に形成され、高分子有機発光層22は、PPV、可溶性PPV’s、シアノ−PPV、ポリフルオレンなどを使用することができ、インクジェットプリンティングやスピンコーティングまたはレーザを利用した熱転写法といった通常の方法でカラーパターンを形成できる。
【0045】
有機発光素子20の上に有機発光素子20を封止するための密封部材30が形成される。密封部材30は、外部の水分や酸素などから有機発光素子20を保護するために形成する。図1に示すような前面発光型構造では、密封部材30は透明な材質からなる。そのため、ガラス基板、プラスチック基板を使用することができる。
【0046】
密封部材30の両面のうち、外部を向く面の面上には、外光の一部は透過して、一部は反射する半透過膜42が形成されている。
【0047】
半透過膜42は、屈折率が1.5ないし5の値を有するように形成されうる。
【0048】
半透過膜42は、金属コロイドの形態に形成できるが、このような金属としては、金またはチタンを利用することができる。
【0049】
半透過膜42は、スピンコーティング、ディップコーティングまたはバーコーティングにより膜を塗布した後、熱処理工程を経ることにより容易に製造可能である。
【0050】
半透過膜42は、40%ないし80%の透光率を有するように形成されうる。半透過膜42の厚さを調節するか、または金属コロイドの形成時の工程条件を調節して、このような透光率値に調整しうる。
【0051】
半透過膜42は、10nmないし10μmの厚さを有するように形成されうる。半透過膜42の厚さが厚すぎると、透過率が低下して、有機発光素子20から発生する光の効率が低下するので、半透過膜42は10μm以下に形成する。半透過膜42の厚さが薄すぎると、透過率が過度に上昇して、外光が半透過膜41を通過し、その結果、外光の反射量が増加する。
【0052】
半透過膜42上には保護膜41が形成される。保護膜41は、半透過膜42より屈折率の低い値を有するように形成する。
【0053】
保護膜41は、ウレタンアクリレートまたはエポキシ樹脂のような耐衝撃性の強い熱硬化性樹脂により形成できる。保護膜41は、透明でありうる。保護膜41は、スピンコーティング、ディップコーティングまたはバーコーティングにより膜を塗布した後、熱処理またはUVを利用した硬化工程を経て形成されうる。
【0054】
保護膜41は、10nmないし30μmの厚さを有するように形成できる。耐衝撃性を確保するために、保護膜41は、10nm以上の厚さを有するように形成する。しかし、厚すぎると、有機発光表示装置が全体的に厚くなるので、保護膜41の厚さを30μ以下に形成する。
【0055】
また、保護膜41は、耐衝撃性の強い熱硬化性樹脂から形成され、外部の衝撃によって半透過膜42が損傷することを防止する。
【0056】
一方、密封部材30上に半透過膜42と保護膜41とが重畳した構造に形成され、半透過膜42の屈折率が保護膜41の屈折率より高い構造であるので、外光の界面反射を防止できる。したがって、半透過膜42と保護膜41との組合せによって従来の円偏光板の機能を発揮させうる。特に、半透過膜42の透光率値が40%ないし80%であり、保護膜41は、透明な物質であるので、これらを組み合わせることによって従来の円偏光フィルムの同じ透過率とすることが容易にできる。
【0057】
密封部材30の両面のうち、有機発光素子20と対向する面には、選択的に光を吸収する顔料を含む光吸収層51が形成される。
【0058】
図2は、従来の円偏光フィルムを付着した有機発光ディスプレイ装置の各波長による透光率(曲線A)と、本実施形態に係る青色顔料及び赤色顔料を含む光吸収層51を付着した有機発光ディスプレイ装置の透光率(曲線B)とをそれぞれ示すグラフである。
【0059】
グラフの曲線Aを参照すれば、従来の円偏光フィルムを付着した有機発光ディスプレイ装置は、可視光線範囲で平均的に約45%の透光率を示している。
【0060】
一方、曲線Bは、光吸収層を付着した有機発光ディスプレイ装置の透光率が特定の波長、例えば、約550nmの緑色波長帯で、約450nmの青色波長帯及び約650nmの赤色波長帯の透光率より低いということを示している。
【0061】
光吸収層51は、青色顔料コバルトブルー(CoOAl)2重量%と、赤色顔料三酸化第2鉄(Fe)0.2重量%とをバインダレジンに分散して、約4μmないし5μmの厚さに塗布した後、UV(Ultra Violet)硬化して形成した。
【0062】
前記のように、赤色顔料と青色顔料とを組合せた光吸収層51は、赤色波長領域及び青色波長領域を選択的に透過させる一方、緑色波長領域を選択的に吸収して、コントラストに最も大きな影響を及ぼす輝度の高い緑色波長領域での透過率を低下させることによって、ディスプレイ装置による反射を効果的に減少させうる。
【0063】
もちろん、本発明は、このような実施形態に限定されず、光吸収層51は、緑色波長帯域である550nmで10%ないし90%の透光率を有する多様な顔料の組合せにより構成されうる。
【0064】
また、光吸収層51の厚さを調節して、所望の透過率の値を得ることができる。すなわち、透光率を高めるためには、光吸収層51を厚く形成し、透光率値を下げるためには、光吸収層51を薄く形成する。また、半透過膜42及び保護膜41の透光率を考慮して厚さを調節できる。
【0065】
特に、半透過膜42及び保護膜41の透光率を考慮する場合、光吸収層51は、550nmの領域で約10%ないし90%の透光率を有するので、光吸収層51、半透過膜41及び保護膜42を同時に使用しても透光率値を40%ないし60%に調節できる。したがって、半透過膜41、保護膜42及び光吸収層51を使用しても、従来の円偏光板の透光率値である約40%の値を維持するか、またはそれより透光率値が大きい範囲とすることができるので、外光の反射防止効果と、コントラストの向上効果を有しうる。
【0066】
ブラックマトリックス層61は、光吸収層51の密封部材30が形成される面と反対側の面に形成される。
【0067】
図1に示す通り、ブラックマトリックス層61は、有機発光素子20の非発光領域に配置されるようにパターニングされる。有機発光素子20の発光領域は、有機発光層22が配置された領域であり、非発光領域は、その他の領域である。本発明に係る実施形態においては、画素定義膜25の開口部24が第1電極21の枠を取り囲むように形成されることによって、第1電極が段差を有するように開口される。有機発光層22は、その画素定義膜25の開口部24に形成される。ブラックマトリックス層61は、光吸収層51上の、画素定義膜25に対応する位置に形成される。
【0068】
ブラックマトリックス層61は、5μmないし20μmの厚さに形成される。密封部材30上の有機発光素子20の非発光領域に対応する部分に形成された厚い膜厚を有するブラックマトリックス層61は、有機発光素子20の発光領域における外光の反射をさらに効果的に防止する。すなわち、発光領域に形成された金属電極により反射された外光が光取り出し方向(密封部材30側の方向)に進むとき、密封部材30側から突出したブラックマトリックス層61に遮断され、吸収される。
【0069】
また、ブラックマトリックス層61を厚く形成することによって、反射光の吸収量を増加させるだけでなく、密封部材30と有機発光素子20の画素部との間に一定のギャップを形成することによって、外部の衝撃に対して画素部を保護することができる。すなわち、膜厚の厚いブラックマトリックス層61は、従来、外部衝撃による画素部の保護のために画素定義膜上に形成していたスペーサを代替するものである。したがって、スペーサを画素定義膜上に形成するために行われるマスク工程を省略できるので、製造工程を単純化することができる。
【0070】
下記表1は、ブラックマトリックス層(BM)、光吸収層及び反射防止膜の条件を異ならせた有機発光ディスプレイ装置のコントラストを比較した表である。コントラストは、NISTIR 6738方法で外光150luxの環境下で白色輝度100cd/mに合わせた後、点灯及び消光時の反射輝度を測定してコントラストを評価した。
【0071】
【表1】

【0072】
試料1は、密封部材30に1μmの厚さのブラックマトリックス層61をスピンコーティングした後にパターニングして、前述の条件でコントラストを測定したものであり、試料2は、密封部材30に10μmの厚さのブラックマトリックス層61をスピンコーティングした後にパターニングして、前述の条件でコントラストを測定したものである。試料1と試料2とを比較すると、試料2のコントラストが試料1に比べて約20%向上していることが判る。
【0073】
また、試料3は、反射防止膜40及び光吸収層51が形成された密封部材30に1μm厚のブラックマトリックス層61をスピンコーティングした後にパターニングして、前述の条件でコントラストを測定したものであり、試料4は、反射防止膜40及び光吸収層51の形成された密封部材30に10μm厚のブラックマトリックス層61をスピンコーティングした後にパターニングして、前述の条件でコントラストを測定したものである。試料3と試料4とを比較すると、試料1及び試料2の場合と同様に、試料4のコントラストが試料3に比べて約20%向上したということが分かる。すなわち、前記資料によれば、光取り出し方向に位置した密封部材30側に形成されたブラックマトリックス層61の厚さを約10μmに厚くした場合、約20%のコントラストが改善されるということが判る。
【0074】
試料5は、従来の円偏光フィルムの付着された有機発光素子のコントラストを測定したものである。表1に示す通り、試料4は、試料5の従来の円偏光フィルムの付着された有機発光素子が有するコントラストを若干上回るということが分かる。従って、ブラックマトリックス層61の厚さ、光吸収層51の厚さまたは顔料の選択、及び反射防止膜40の屈折率及び厚さを適切に組合せることによって、従来の円偏光フィルムと同じであるか、またはより優れたコントラストを有する有機発光ディスプレイ装置を提供できる。
【0075】
このとき、ブラックマトリックス層61の厚さは、薄型のディスプレイ装置を実現するために20μmを超えないことが望ましく、また、前述のように、ブラックマトリックス層61がスペーサに代替する機能を有するためには、最小5μmを超えることが望ましい。また、ブラックマトリックス層61は、カーボンブラック粒子、バインダレジン及び光開始剤からなる有機物により形成されるか、または無機真空蒸着法によって形成されるグラファイト膜を使用することができ、それ以外にも、外光を吸収する物質であれば様々な材料を使用して形成することができる。
【0076】
前述したように、本実施形態に係る有機発光ディスプレイ装置は、密封部材30に選択的に光を吸収する顔料を含む光吸収層51、反射防止膜40及びブラックマトリックス層61を備えることによって、コントラストの向上効果を実現することができる。また、密封部材30の表面に耐衝撃性の強い保護膜41を採用することによって、ディスプレイ装置の外面を外部の衝撃から保護することができる。また、膜厚の厚いブラックマトリックス層61を採用することによって、外部の衝撃からディスプレイ装置の画素部を保護することができる。
【0077】
以下、図3及び図4を参考して本発明に係る他の実施形態について説明する。以下においては、図1に示した本発明の実施形態と異なる点を中心に説明し、同じ参照符号は同じ部材を示す。
【0078】
図3に示すように、本発明の実施形態に係る有機発光ディスプレイ装置は、基板10、有機発光素子20、密封部材30、反射防止層40、光吸収層52及びブラックマトリックス層62を備える。
【0079】
基板10上に形成された有機発光素子20は、第1電極21と、第1電極21が露出されるように開口部24が形成された画素定義膜25と、開口部24が形成された第1電極21上に形成された有機発光層22と、有機発光層22上に形成された第2電極23とを備える。
【0080】
有機発光素子20の上には密封部材30が形成される。密封部材30の両面のうち、有機発光素子20の反対方向を向く面には反射防止層40が形成される。反射防止層40は、外光の一部を透過し、それ以外は反射する半透過膜42と、半透過膜42より屈折率が高く、半透過膜42を覆う保護膜41を備える。
【0081】
このとき、ブラックマトリックス層62は、密封部材30の両面のうち、有機発光素子20と対向する面上の、有機発光素子20の画素定義膜25に対応する位置に形成される。そして、選択的に光を吸収する顔料を含む光吸収層52がブラックマトリックス層62を覆い、密封部材30の両面のうち有機発光素子20と対向する面に形成される。
【0082】
図4に示すように、本発明の実施形態に係る有機発光ディスプレイ装置は、基板10、有機発光素子20、密封部材30、反射防止層40、光吸収層53及びブラックマトリックス層63を備える。
【0083】
基板10に配置された有機発光素子20は、第1電極21と、第1電極21が露出されるように開口部24が形成された画素定義膜25と、開口部24が形成された前記第1電極21上に形成された有機発光層22と、有機発光層22上に形成された第2電極23を備える。
【0084】
有機発光素子20の上には密封部材30が形成され、密封部材30の両面のうち有機発光素子20の反対方向を向く面には反射防止層40が形成される。反射防止層40は、外光の一部を透過し、それ以外反射する半透過膜42と、半透過膜42より屈折率が高く、半透過膜42を覆う保護膜41を備える。
【0085】
このとき、ブラックマトリックス層63は、密封部材30の両面のうち有機発光素子20と対向する面上の、有機発光素子20の画素定義膜25に対応する位置に形成される。そして、選択的に光を吸収する顔料を含む光吸収層53がブラックマトリックス層63の間に形成される。このような構造は、赤色、緑色、青色に発光する各画素に対応して、光吸収層に含まれる顔料を多様に組合せることによって、ディスプレイ装置の表示品質をさらに向上させうる。
【0086】
本発明の実施形態による有機発光ディスプレイ装置は、密封部材30に選択的に光を吸収する顔料を含む光吸収層52、53、反射防止膜40及びブラックマトリックス層62、63を備えることによって、コントラストの向上効果を実現することができる。また、密封部材30の表面に耐衝撃性の強い保護膜41を形成することによって、ディスプレイ装置の外面を外部の衝撃から保護することができ、膜厚の厚いブラックマトリックス層62、63を採用することによって、外部の衝撃からディスプレイ装置の画素部を保護することができる。
【0087】
以上、図面に示す本発明に係る実施形態を基に説明したが、これらの実施形態は例示的なものに過ぎず、当業者であれば、これらの実施形態を基に多様な変形及び均等な他の実施形態により、本発明を実施しうるであろう。すなわち、本発明の真の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、有機発光ディスプレイ装置関連の技術分野に好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態に係る有機発光ディスプレイ装置を示す概略的な断面図である。
【図2】従来の円偏光フィルムの各波長による透光率と、本実施形態に係る青色顔料及び赤色顔料を含む光吸収層の透光率とをそれぞれ示すグラフである。
【図3】本発明の実施形態に係る有機発光ディスプレイ装置を示す概略的な断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る有機発光ディスプレイ装置を示す概略的な断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10 基板、
11 バッファ層、
12 半導体層、
13 ゲート絶縁膜、
14 ゲート電極、
15 層間絶縁膜、
16 ソース電極、
17 ドレイン電極、
18 パッシベーション膜、
20 有機発光素子、
21 第1電極、
22 有機発光層、
23 第2電極、
24 開口部、
25 画素定義膜、
30 密封部材、
40 反射防止層、
41 保護膜、
42 半透過膜、
51、52、53 光吸収層、
61、62、63 ブラックマトリックス層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成され、画像データに基づき発光する有機発光層を有する有機発光素子と、
前記有機発光素子を含む前記基板上に形成され、前記有機発光素子を密封する密封部材と、
前記密封部材の両面のうち有機発光素子と対向する面に形成され、特定波長の光を選択的に吸収するための顔料を含む光吸収層と、
前記有機発光素子が形成された領域のうち有機発光層が形成されていない領域に対応させて、前記光吸収層上に形成された、光を遮断するブラックマトリックス層と、
を備えることを特徴とする有機発光ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記有機発光素子は、第1電極と、前記第1電極が露出するように開口部が形成された画素定義膜と、前記開口部が形成された前記第1電極上に形成された前記有機発光層と、前記有機発光層上に形成された第2電極と、を備え、
前記ブラックマトリックス層は、前記光吸収層上の前記画素定義膜の前記開口部が形成されない部分に対応するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記光吸収層は、赤色波長領域の光を選択的に透過させる赤色顔料及び青色波長領域の光を選択的に透過させる青色顔料を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記光吸収層は、550nmの波長で10%ないし90%の透光率を有することを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項5】
前記ブラックマトリックス層は、5μmないし20μmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項6】
前記ブラックマトリックス層は、カーボンブラック粒子及びグラファイトからなる群から選択された一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項7】
前記密封部材の両面のうちいずれか一面に形成される反射防止層をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項8】
前記反射防止層は、外光の一部は透過して一部は反射する半透過膜と、前記半透過膜上に形成される保護膜と、を備え、
前記半透過膜の屈折率は、前記保護膜の屈折率より高いことを特徴とする請求項7に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項9】
前記保護膜は、熱硬化性樹脂から形成されたことを特徴とする請求項8に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項10】
前記保護膜は、ウレタンアクリレート及びエポキシ樹脂からなる群から選択された一つを含むことを特徴とする請求項8に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項11】
前記半透過膜は、40%ないし80%の透光率を有することを特徴とする請求項8に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項12】
前記半透過膜は、屈折率が1.5ないし5の値を有することを特徴とする請求項8に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項13】
前記半透過膜は、金属コロイドから形成されることを特徴とする請求項8に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項14】
前記半透過膜は、金、銀またはチタンを含むことを特徴とする請求項8に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項15】
基板と、
前記基板上に形成され、画像データに基づき発光する有機発光層を有する有機発光素子と、
前記有機発光素子上を含む前記基板上に形成され、前記有機発光素子を密封する密封部材と、
前記有機発光素子が形成された領域のうち有機発光層が形成されない領域に対応して、前記密封部材の両面のうち有機発光素子と対向する面上に形成され、光を遮断するブラックマトリックス層と、
前記ブラックマトリックス層と、前記密封部材の両面のうち有機発光素子と対向する面と、を覆い、特定波長を有する光を選択的に吸収する顔料を含む光吸収層と、
を備えることを特徴とする有機発光ディスプレイ装置。
【請求項16】
前記有機発光素子は、第1電極と、前記第1電極が露出するように開口部が形成された画素定義膜と、前記開口部が形成された前記第1電極上に形成された前記有機発光層と、前記有機発光層上に形成された第2電極と、を備え、
前記ブラックマトリックス層は、前記密封部材の両面のうち有機発光素子に対向する面上に、前記有機発光素子の画素定義膜の前記開口部が形成されない部分に対応して形成されたことを特徴とする請求項15に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項17】
前記密封部材の両面のうちいずれか一面に形成される反射防止層をさらに備えることを特徴とする請求項15に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項18】
基板と、
前記基板上に形成され、画像データに基づき発光する有機発光層を有する有機発光素子と、
前記有機発光素子上を含む前記基板上に形成され、前記有機発光素子を密封する密封部材と、
前記有機発光素子が形成された領域のうち有機発光層が形成されない領域に対応して、前記密封部材の両面のうち有機発光素子と対向する面上に形成され、光を遮断するブラックマトリックス層と、
前記ブラックマトリックス層の間に形成され、特定波長を有する光を選択的に吸収する顔料を含む光吸収層と、
を備えることを特徴とする有機発光ディスプレイ装置。
【請求項19】
前記有機発光素子は、第1電極と、前記第1電極が露出するように開口部が形成された画素定義膜と、前記開口部が形成された前記第1電極上に形成された前記有機発光層と、前記有機発光層上に形成された第2電極と、を備え、
前記ブラックマトリックス層は、前記密封部材の両面のうち有機発光素子に対向する面上に、前記有機発光素子の画素定義膜の前記開口部が形成されない部分に対応して形成されたことを特徴とする請求項18に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項20】
前記密封部材の両面のうちいずれか一面に形成される反射防止層をさらに備えることを特徴とする請求項18に記載の有機発光ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−218377(P2008−218377A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123849(P2007−123849)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】